(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036062
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/14 20060101AFI20240308BHJP
A61B 3/10 20060101ALN20240308BHJP
【FI】
A61B3/14
A61B3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140773
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 将大
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亮輔
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB16
4C316FA06
4C316FB02
4C316FC01
(57)【要約】
【課題】被検眼に対する装置本体の相対位置を調整する際、変位態様が異なる5つの入力要素(X,Y,Z,θ,φ)による入力操作を片手で直感的に行うことができる眼科装置を提供すること。
【解決手段】装置本体18と、入力操作ユニット1と、制御部20と、を備える眼科装置10であって、装置本体18は、被検眼Eを基準としたときの左右軸方向駆動機構と、上下軸方向駆動機構と、前後軸方向駆動機構と、上下軸回りの首振り駆動機構31と、左右軸回りの俯仰駆動機構41と、を有する。入力操作ユニット1は、装置本体18の左右軸Xと上下軸Yと前後軸Zの三次元位置の調整操作を行うジョイスティック13を有する第1レバー入力操作機構5と、検者がレバーを把持する片手を使って装置本体18の首振り角度θと俯仰角度φの調整操作を行う第1滑り板機構7と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼に対する観察光学系を内蔵する装置本体と、前記被検眼に対する前記装置本体の相対位置関係を調整する際に検者により操作される入力操作ユニットと、前記入力操作ユニットに有する操作量センサにより検出される操作量情報に応じて前記装置本体の駆動制御を行う制御部と、を備える眼科装置であって、
前記装置本体は、前記被検眼を基準としたときの左右軸方向駆動機構と、上下軸方向駆動機構と、前後軸方向駆動機構と、上下軸回りの首振り駆動機構と、左右軸回りの俯仰駆動機構と、を有し、
前記入力操作ユニットは、前記装置本体の左右軸Xと上下軸Yと前後軸Zの三次元位置の調整操作を行うレバーを有するレバー入力操作機構と、検者が前記レバーを把持する片手を使って前記装置本体の首振り角度θと俯仰角度φの調整操作を行う角度入力操作機構と、を有する
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
請求項1に記載された眼科装置において、
前記入力操作ユニットは、前記レバー入力操作機構から前記角度入力操作機構に入力操作を切り替えるとき、所定の切替操作に基づいて、前記レバー入力操作機構による入力要素であるX,Y,Zの軸座標を固定すると同時に、前記角度入力操作機構による首振り角度θと俯仰角度φの入力操作を許可する入力要素切替手段を有する
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項3】
請求項2に記載された眼科装置において、
前記入力要素切替手段は、前記所定の切替操作を前記レバーの押し下げ操作とし、前記押し下げ操作によりレバーケースに対する前記レバー入力操作機構のX軸方向とZ軸方向への傾動をロックし、押し下げていた前記レバーから手を放すと前記ロックを解除するレバー操作ロック構造を有する
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項4】
請求項3に記載された眼科装置において、
前記角度入力操作機構を、前記検者の片手によって操作される入力操作部材と共に移動する角度入力板と、首振り角度θを検出する首振り角度検出板と、俯仰角度φを検出する俯仰角度検出板と、を重ね合わせた滑り板機構とする
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項5】
請求項4に記載された眼科装置において、
前記レバー入力操作機構は、前記レバーとして、手放すと直立位置に復帰するレバーを有する第1レバー入力操作機構であり、
前記滑り板機構は、前記レバーが貫通するレバー貫通穴を有し、前記レバーを押し下げている前記検者の片手のうち小指球又は拳輪を前記入力操作部材に接触させて行う左右方向と前後方向の移動操作を角度入力操作とする第1滑り板機構である
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項6】
請求項4に記載された眼科装置において、
前記レバー入力操作機構は、前記レバーとして、所定角度以下の傾斜角度領域で手放したとき、直立位置に復帰しないでそのときの傾斜角度を保持するレバーを有する第2レバー入力操作機構であり、
前記滑り板機構は、前記レバーに前記入力操作部材が固定され、前記入力操作部材以外の各板にはレバー貫通穴を有し、前記レバーを押し下げたままで行うレバー傾動操作を角度入力操作とする第2滑り板機構である
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項7】
請求項2に記載された眼科装置において、
前記入力要素切替手段を、X,Y,Zの軸方向位置の入力操作を許可する第1切替位置と、首振り角度θと俯仰角度φの入力操作を許可する第2切替位置と、を有する入力要素切替スイッチとし、
前記角度入力操作機構を、前記入力要素切替スイッチへの切替操作により首振り角度θと俯仰角度φの入力操作を許可する切替状態とし、当該切替状態で行われる前記レバーに対する左右軸Xと上下軸Yと前後軸Zの三次元位置の入力操作のうち2つの入力操作を、首振り角度θの入力操作と俯仰角度φの入力操作とに振り分けたレバー入力操作機構とする
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載された眼科装置において、
前記レバー入力操作機構と前記角度入力操作機構を有する遠隔用入力操作ユニットを、前記制御部へ出力する前記操作量情報を無線通信より送信するリモート操作装置のタブレット端末に設ける
ことを特徴とする眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検眼に対して検査部を所定の位置にアライメントして検査を行う眼科装置であって、操作装置と検出装置と制御装置を有する。操作装置は、X,Y,Z方向の少なくも1方向に検査部を移動させるための操作部材を備え、その操作部材は検査部を1方向に移動させるために2自由度の入力が可能である。検出装置は、操作部材の一方の自由度に関する傾動角度を検出する第1センサと、操作部材の他方の自由度に関するスライド位置を検出する第2センサとを備える。制御装置は、第1センサと第2センサの一方のセンサで検出された操作量に基づいて検査部を微動させ、第1センサと第2センサの他方のセンサで検出された操作量に基づいて検査部を粗動させる装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来装置は、被検眼に対する装置本体の相対位置を調整する際、操作部材へ入力する操作形態として、X軸方向の傾動及びスライドと、Y軸方向周りの回動と、Z軸方向の傾動及びスライドによる5種類の入力操作形態となっている。しかし、X軸方向とZ軸方向の傾動及びスライドをX軸移動とZ軸移動の微動と粗動に振り分けている。このため、被検眼に対する装置本体の相対位置を変更する変位態様としては、三軸方向の移動による3つの入力要素(X,Y,Z)による入力操作ができるに過ぎない。
【0005】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、被検眼に対する装置本体の相対位置を調整する際、変位態様が異なる5つの入力要素(X,Y,Z,θ,φ)による入力操作を片手で直感的に行うことのできる眼科装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本開示の眼科装置は、被検眼に対する観察光学系を内蔵する装置本体と、被検眼に対する装置本体の相対位置関係を調整する際に検者により操作される入力操作ユニットと、入力操作ユニットに有する操作量センサにより検出される操作量情報に応じて装置本体の駆動制御を行う制御部と、を備える。装置本体は、被検眼を基準としたときの左右軸方向駆動機構と、上下軸方向駆動機構と、前後軸方向駆動機構と、上下軸回りの首振り駆動機構と、左右軸回りの俯仰駆動機構と、を有する。入力操作ユニットは、装置本体の左右軸Xと上下軸Yと前後軸Zの三次元位置の調整操作を行うレバーを有するレバー入力操作機構と、検者がレバーを把持する片手を使って装置本体の首振り角度θと俯仰角度φの調整操作を行う角度入力操作機構と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の眼科装置によれば、被検眼に対する装置本体の相対位置を調整する際、変位態様が異なる5つの入力要素(X,Y,Z,θ,φ)による入力操作を片手で直感的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示に係る眼科装置の一例としての実施例1の眼科装置(眼底カメラ)の全体構成を示す説明図である。
【
図2】眼科装置における制御系の構成を示すブロック図である。
【
図3】眼科装置における角度変更機構(首振り駆動機構、俯仰駆動機構)の構成を示す説明図である。
【
図4】首振り駆動機構における湾曲レール上の駆動機構(駆動モータ、ウォームギヤ)を上下方向の上側から見た位置関係を示す説明図である。
【
図5】俯仰駆動機構のガイド機構におけるガイド輪部と湾曲アームとの位置関係を示す説明図である。
【
図6】俯仰駆動機構における湾曲アーム上の駆動機構(駆動モータ、ウォームギヤ)を左右方向から見た位置関係を示す説明図である。
【
図7】眼科装置の入力操作ユニットを示す全体斜視図である。
【
図8】眼科装置の入力操作ユニットを示す縦断面図である。
【
図9】入力操作ユニットのうち角度入力操作機構の一例である第1滑り板機構を示す断面図である。
【
図11】第1滑り板機構を構成する入力操作部材、角度入力板、首振り角度検出板、俯仰角度検出板を示す平面図である。
【
図12】第1滑り板機構の入力操作部材を操作する検者の手の部位を示す説明図である。
【
図13】黄斑を有する眼底画像のモニタ表示例を示す説明図である。
【
図14】実施例1の制御部において黄斑の位置を異ならせて眼底画像を撮影する場合の入力操作処理の流れを示すフローチャートである。
【
図15】実施例2の眼科装置における入力操作ユニットを示す縦断面図である。
【
図16】入力操作ユニットのうち角度入力操作機構の他例である第2滑り板機構を示す断面図である。
【
図18】実施例2の制御部において黄斑の位置を異ならせて眼底画像を撮影する場合の入力操作処理の流れを示すフローチャートである。
【
図19】実施例3の眼科装置における入力操作ユニットを示す斜視図である。
【
図20】実施例4の眼科装置とタブレット端末の全体構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る眼科装置を実施するための形態として、眼科装置を眼底カメラとする実施例1~4について、図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、被検眼Eを基準としたときの左右方向の軸を左右軸Xで示し、上下方向の軸(鉛直方向の軸)を上下軸Yで示し、左右軸X及び上下軸Yと直交する奥行き方向の軸を前後軸Zで示す。そして、上下軸Yを中心とする軸回り角度を首振り角度θで示し、左右軸Xを中心とする軸回り角度を俯仰角度φで示す。
【実施例0010】
まず、
図1を参照して実施例1の眼科装置10の全体構成を説明する。実施例1の眼科装置10は、眼底カメラとされており、被検眼Eの眼情報として眼底像を取得できる。この眼科装置10は、
図1に示すように、ベース11と、このベース11上で前後左右方向(水平方向)と上下方向とに移動可能に搭載された架台12と、を備える。架台12には、ジョイスティック13が設置されている。架台12は、ジョイスティック13が操作されることにより、ベース11上において前後左右上下に移動される。ジョイスティック13の上端部には、操作ボタン13aが配置されており、これを押すことが眼底像を撮像する操作となる。
【0011】
ベース11には、上下方向に伸びる支柱14が設けられている。その支柱14には、顎受部15と額当部16と外部固視灯17とが設けられている。顎受部15と額当部16とは、測定時に後述する装置本体18(観察撮影光学系19)に対する被検者(患者)の顔すなわち被検眼Eの位置を固定する。顎受部15は、被検者が顎を載せる箇所となり、額当部16は、被検者が額を宛がう箇所となり、それぞれベース11に対して上下方向に移動可能とされる。外部固視灯17は、被検眼Eを固視(視線を固定)させるための光源である。この眼科装置10では、被検者が額当部16に額を宛がいつつ顎受部15に顎を載せて装置本体18に対峙した状態で、外部固視灯17が適宜されて被検眼Eの検査、観察、撮影等を行うものとされている。
【0012】
架台12上には、装置本体18(測定ヘッド)が設けられている。装置本体18は、観察撮影光学系19や制御部20(
図2参照)を収容するもので、角度変更機構30を介して架台12に支持されている。装置本体18は、角度変更機構30により、架台12上において上下左右に振ることが可能とされ、収容する観察撮影光学系19による被検眼眼底の観察位置、撮影位置の変更が可能とされている。以下では、装置本体18(観察撮影光学系19)を上下方向に振ることを「俯仰」と言い、左右方向に振ることを「首振り」という。この角度変更機構30の構成については後述する。
【0013】
装置本体18には、対物レンズ部18aと接眼レンズ部18bとが設けられている。対物レンズ部18aは、観察撮影光学系19の対物レンズが鏡筒に収容されて構成され、被検眼Eに対向して配置される。接眼レンズ部18bは、観察撮影光学系19の接眼レンズが鏡筒に収容されて構成され、検者が被検眼Eの観察等を行う箇所となる。
【0014】
また、装置本体18には、スチルカメラ21と撮像装置22とが取り外し可能に接続されている。スチルカメラ21は、観察撮影光学系19を経て被検眼Eの眼底の静止画像を撮影し、検査の目的等に応じてCCD(Charge Coupled Device)を搭載したデジタルカメラ、(例えば35mmの)フィルムカメラ、インスタントカメラ等が用いられる。撮像装置22は、観察撮影光学系19を経て眼底の動画像等を撮影するもので、テレビカメラ等が用いられる。そして、スチルカメラ21や撮像装置22は、デジタル撮像方式のものを用いた場合、眼科装置10における記録媒体や外部に設けられたコンピュータ等の画像記録装置等で取得した画像データを保存できる。
【0015】
装置本体18では、検者側にモニタ23が設けられている。このモニタ23は、撮像装置22により取得した動画像(その信号)を表示するもので、被検眼Eの眼底像を表示できる。モニタ23は、薄型で軽量であることが好ましく、一例として液晶表示装置(LCDモニタ)で構成してタッチパネル式の表示画面とされている。実施例1のモニタ23は、装置本体18における被検者側の面に設けられることで、前後方向に直交する面に沿うものとされている。モニタ23には、その画面中央を原点とするXY座標系が眼底像に重ねて表示され、画面に触れた位置に対応する座標値が表示される。また、モニタ23には、制御部20の制御下で、観察撮影光学系19からの画像データに基づく被検眼Eの眼底の画像や、操作部としてのソフトウェアキー等が適宜表示される。
【0016】
入力操作ユニット1は、被検眼Eに対する装置本体18の相対位置関係を調整する際に検者により操作されるユニットである。この入力操作ユニット1は、装置本体の左右軸Xと上下軸Yと前後軸Zの三次元位置の調整操作を行うジョイスティック13(レバー)を有する第1レバー入力操作機構5と、検者がジョイスティック13を把持する片手を使って装置本体18の首振り角度θと俯仰角度φの調整操作を行う第1滑り板機構7と、を有する。なお、第1レバー入力操作機構5(レバー入力操作機構の一例)と第1滑り板機構7(角度入力操作機構の一例)の詳しい構成の説明は後述する。
【0017】
次に、
図2を参照して制御部20の構成を説明する。眼科装置10の制御部20は、
図2に示すように、記憶部25または内蔵する内部メモリ20aに記憶したプログラムを、例えばRAM(Random Access Memory)上に展開することにより、眼科装置10の動作を統括的に制御する。内部メモリ20aは、RAM等で構成される。記憶部25は、ROM(Read Only Memory)やEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等で構成される。なお、制御部20は、ベース11や架台12の内部等に設けられる。
【0018】
制御部20は、観察撮影光学系19における測定用の光学系の光源やアライメント用の光学系の光源およびセンサ等が接続されて適宜それらを制御する。そして、観察撮影光学系19における測定に必要な光学系の動作部が接続されて、適宜それらを駆動(移動も含む)させる。また、制御部20には、入力操作ユニット1と、モニタ23と、記憶部25と、架台位置センサ26と、首振りセンサ27と、俯仰センサ28と、距離センサ29と、三次元位置駆動部36と、角度駆動部46と、が接続されている。そして、制御部20は、入力操作ユニット1に有する操作量センサにより検出される操作量情報に応じて装置本体18の被検眼Eに対する相対位置を変更する駆動制御を行う。
【0019】
入力操作ユニット1は、ユニットに有する操作量センサからの操作量情報を制御部20に出力する。操作量センサとしては、第1レバー入力操作機構5に、X軸ポテンショメータ24aと、Z軸ポテンショメータ24bと、Y軸ロータリーエンコーダ24cと、を有する。そして、第1滑り板機構7に、首振り入力ポテンショメータ24dと、俯仰入力ポテンショメータ24eと、を有する。
【0020】
X軸ポテンショメータ24aは、ジョイスティック13をX軸方向(横方向)に傾けたときの傾斜角度を検出する。Z軸ポテンショメータ24bは、ジョイスティック13をZ軸方向(前後方向)に傾けたときの傾斜角度を検出する。Y軸ロータリーエンコーダ24cは、ジョイスティック13をY軸回りに右回転又は左回転したときの回転角度を検出する。
【0021】
首振り入力ポテンショメータ24dは、首振り角度θを検出する首振り角度検出板73をX軸方向(横方向)にスライド移動させたときのスライド移動量を検出する。俯仰入力ポテンショメータ24eは、俯仰角度φを検出する俯仰角度検出板74をX軸方向(前後方向)にスライド移動させたときのスライド移動量を検出する。
【0022】
架台位置センサ26は、
図3に示すように、架台12がベース11上において前後方向の所定位置にあることを検出し、その信号を制御部20に出力する。架台位置センサ26は、架台12の側面に固定配置された架台側接点26aと、ベース11の側面に固定配置されたベース側接点26bと、を有する。
【0023】
首振りセンサ27は、
図3に示すように、装置本体18が首振り基準位置(センター位置)に位置していることを検出し、その信号を制御部20に出力する。その首振り基準位置は、角度変更機構30の後述する首振り駆動機構31において、回転軸線31aを回転中心とする第2基部42の回転可能な範囲の中心としている。首振りセンサ27は、後述するウォーム38(湾曲レール33)の上面に設けられたレール側センサ部27aと、支持板部34a(第2基部42)の下面に設けられた回転側センサ部27bと、を有する。
【0024】
俯仰センサ28は、
図3に示すように、装置本体18が俯仰基準位置(センター位置)に位置していることを検出し、その信号を制御部20に出力する。その俯仰基準位置は、角度変更機構30の俯仰駆動機構41において、中心軸線43aを回転中心とする湾曲アーム43上でのガイド機構44の移動可能な範囲の中心としている。実施例1の俯仰基準位置は、装置本体18が収容する観察撮影光学系19の光軸Oを水平にする位置としている。俯仰センサ28は、湾曲アーム43に設けられたアーム側センサ部28aと、ガイド機構34の支持板部34aの下面に設けられた本体側センサ部28bと、を有する。
【0025】
距離センサ29は、装置本体18から被検者の顔までの距離、すなわち両者の間隔を検出し、その信号を制御部20に出力する。実施例1の距離センサ29は、装置本体18において、最も被検者側へと突出した箇所となる対物レンズ部18aから被検者の顔までの距離を検出する。距離センサ29は、例えば、装置本体18における被検者と対向する面に設けられており、少なくとも角度変更機構30の動作時において装置本体18と被検者の顔との距離(間隔)を連続的に検出し、その検出結果を制御部20に出力する。
【0026】
三次元位置駆動部36は、左右軸方向駆動機構に有するX軸駆動モータ36aと、上下軸方向駆動機構に有するY軸駆動モータ36bと、前後軸方向駆動機構に有するZ軸駆動モータ36cと、を備えている。ここで、左右軸方向駆動機構及び前後軸方向駆動機構はピニオンラック機構等によりスライド移動させるもので、また、上下軸方向駆動機構は雌雄ネジ機構等により昇降移動させるものであり、何れの機構も周知である(例えば、特開2008-61715号公報等を参照)。よって、これらの駆動機構の図示、並びに説明を省略する。
【0027】
角度駆動部46は、後述する角度変更機構30の首振り駆動機構31に有する首振り角度駆動モータ46aと、後述する角度変更機構30の俯仰駆動機構41に有する俯仰角度駆動モータ46bと、を備えている。
【0028】
次に、
図3~
図6を参照して角度変更機構30の構成について説明する。角度変更機構30は、首振り駆動機構31と俯仰駆動機構41とを備える。首振り駆動機構31は、俯仰駆動機構41を左右に振ることが可能とされており、俯仰駆動機構41を介して装置本体18を水平方向に回転可能すなわち首振りを可能とする。俯仰駆動機構41は、装置本体18を上下方向に回転可能すなわち俯仰を可能とする。
【0029】
首振り駆動機構31は、第1基部32と湾曲レール33とガイド機構34と駆動機構35とを有する。首振り駆動機構31では、上下方向にのびる回転軸線31aが設定されている。その回転軸線31aは、首振り駆動機構31による首振り動作の回転中心となるもので、観察撮影光学系19よりも前後方向の前側でその観察撮影光学系19の光軸Oと交差する位置関係とされている(
図3参照)。
【0030】
第1基部32は、架台12において湾曲レール33が取り付けられる箇所となるものであり、架台12と一緒にベース11上で前後左右方向(水平方向)と上下方向とに移動可能とされている。
【0031】
湾曲レール33は、首振り駆動機構31における移動を案内するものであり、実施例1では板状の部材が湾曲されて形成されており、回転軸線31aを曲率中心とする円弧とされている(
図4参照)。このため、湾曲レール33は、回転軸線31a(その延長線)の水平方向での位置を被検眼Eの瞳孔中心Epに合わせることで、その瞳孔中心Ep(
図3、
図4参照)を曲率中心とする円弧を描く位置関係にできる。湾曲レール33は、第1基部32に固定されている。
【0032】
ガイド機構34は、装置本体18を湾曲レール33に沿って移動可能とするものであり、湾曲レール33に対応して設けられている。ガイド機構34は、支持板部34aと複数のガイド輪部34bとを有する。支持板部34aは、対応する湾曲レール33に沿って設けられた板状の部材であり、各ガイド輪部34bを回転可能に支持するとともに俯仰駆動機構41(その後述する第2基部42)に固定される。
【0033】
各ガイド輪部34bは、車輪状とされており、湾曲レール33の両端縁33aに宛がわれることで、各端縁33aに沿って移動可能とされている。各ガイド輪部34bは、湾曲レール33に対して少なくとも3つ設けられ、前後方向の前側と後側との一方に少なくとも1つ、他方に少なくとも2つ配置することで、湾曲レール33を前後方向で挟む位置関係とされている。実施例1のガイド機構34は、4つのガイド輪部34bを前側と後側とに2つずつ配置している。このため、ガイド機構34は、湾曲レール33上で回転軸線31aを回転中心とする回転方向に装置本体18を移動させることができる。
【0034】
ガイド機構34では、駆動機構35による首振り動作のフェールセーフ装置としての回転ストッパが設けられており、湾曲レール33に対する回転可能な範囲が制限されている。この回転ストッパは、湾曲レール33上でのガイド機構34の移動可能な範囲を制限するもので、実施例1では、湾曲レール33に凸状部を設けており、その凸状部がガイド機構34に接触することで湾曲レール33上でのガイド機構34の移動を制限する。回転ストッパは、首振りセンサ27が検出する首振り基準位置(センター位置)を中心として左右双方の回転方向に等しい角度範囲とする位置に設けられている。これにより、ガイド機構34は、湾曲レール33の回転軸線31aを回転中心とする回転方向へと、所定の範囲内で装置本体18を移動させることができる。
【0035】
駆動機構35は、湾曲レール33上でガイド機構34を移動させるとともに、その湾曲レール33上における任意の位置でガイド機構34を停止(固定)させるもので、湾曲レール33とガイド機構34とに対応して設けられている。駆動機構35は、首振り角度駆動モータ46aとウォームギヤ37とを有する。首振り角度駆動モータ46aは、駆動機構35においてガイド機構34を移動させるための駆動力を出力する駆動装置であり、実施例1ではステッピングモータを用いている。首振り角度駆動モータ46aは、ガイド機構34の支持板部34aに取り付けられており、ガイド機構34とともに湾曲レール33上を移動可能とされている。首振り角度駆動モータ46aは、制御部20の制御下で駆動され、駆動されることにより出力軸を適宜回転させる。
【0036】
ウォームギヤ37は、ウォーム38とホイール39とを有する。ウォーム38は、ねじ歯車であり、外周面にウォーム側ギヤ歯38aが設けられている。ウォーム38は、首振り角度駆動モータ46aの出力軸に取り付けられており、首振り角度駆動モータ46aが駆動されると出力軸とともに回転駆動される。
【0037】
ホイール39は、はす歯(斜歯)歯車(ウォームホイール)であり、ウォーム38と協働してウォームギヤ37を構成する。ホイール39は、上下方向に直交する方向にのびる板状部材とされ、湾曲レール33上に設けられている。ホイール39では、ウォーム38側の(前後方向で被検者とは反対側)の外縁部39aが、回転軸線31aを中心とする円弧に沿うものとされている(
図4参照)。その外縁部39aには、ホイール側ギヤ歯39bが設けられている。ホイール側ギヤ歯39bは、ウォーム38のウォーム側ギヤ歯38aを噛み合わせることが可能とされている。
【0038】
この駆動機構35は、制御部20の制御下で首振り角度駆動モータ46aが駆動されると、その出力軸に取り付けられたウォーム38が回転駆動し、ホイール39の外縁部39aの接線方向への駆動力としてホイール39へと伝達する。すると、駆動機構35は、ウォーム38をガイド機構34の支持板部34aに固定しているとともに、ホイール39を湾曲レール33に固定しているので、湾曲レール33上でガイド機構34を移動させることができる。このように、ウォームギヤ37は、首振り角度駆動モータ46aが出力する回転力を、回転軸線31aを中心としてホイール39を回転させる回転力に変換する。そして、実施例1の駆動機構35は、首振り角度駆動モータ46aにステッピングモータを用いているので、エンコーダ等を組み合わせることで湾曲レール33上の任意の位置にガイド機構34を移動させたり留めたりすることができる。これにより、駆動機構35は、装置本体18に収容した観察撮影光学系19の光軸Oの被検眼Eの光軸OEに対する水平面上での首振り角度θを調整できる。
【0039】
俯仰駆動機構41は、第2基部42と湾曲アーム43とガイド機構44と駆動機構45とを有する。俯仰駆動機構41では、左右方向にのびる中心軸線43aが設定されている。その中心軸線43aは、俯仰駆動機構41による俯仰動作の回転中心となるもので、首振り駆動機構31の回転軸線31a(その延長線)と観察撮影光学系19の光軸Oとが交差する位置を通りつつ、左右方向にのびる位置関係とされている(
図3参照)。
【0040】
第2基部42は、首振り駆動機構31により水平方向に回転可能とされるとともに、湾曲アーム43が取り付けられる箇所となるものである。実施例1の第2基部42は、ガイド機構34の支持板部34aに固定されており、支持板部34aとともに湾曲レール33上を移動可能とされている。
【0041】
湾曲アーム43は、俯仰駆動機構41における移動を案内するものであり、実施例1では板状の部材が湾曲されて形成されており、中心軸線43a(
図3参照)を曲率中心とする円弧とされている。湾曲アーム43は、下端が第2基部42の取付部分42aにそれぞれ取り付けられており、その取付部分42aから前後方向の後側へ向かうに連れて上下方向の上側にのびる円弧を描いている。このため、湾曲アーム43は、左右方向に直交する面上での中心軸線43aの位置を被検眼Eの瞳孔中心Epに合わせることで、その瞳孔中心Epを曲率中心とする円弧を描く位置関係にできる。
【0042】
ガイド機構44は、装置本体18を湾曲アーム43に沿って移動可能とするものであり、湾曲アーム43に対応して設けられている。ガイド機構44は、支持板部44aと複数のガイド輪部44bとを有する。支持板部44aは、対応する湾曲アーム43に沿って設けられた板状の部材であり、ガイド輪部44bを回転可能に支持するとともに装置本体18に固定される。
【0043】
各ガイド輪部44bは、車輪状とされており、湾曲アーム43の両端縁43bに宛がわれることで、各端縁43b上に沿って移動可能とされている。各ガイド輪部44bは、湾曲アーム43に対して少なくとも3つ設けられ、上下方向の上側と下側との少なくとも一方に少なくとも1つ、他方に少なくとも2つ配置することで、湾曲アーム43を挟む位置関係とされている。このため、各ガイド輪部44bは、湾曲アーム43に沿って移動することができ、中心軸線43aを回転中心とする回転方向にガイド機構44を移動させることができる。実施例1のガイド機構44は、4つのガイド輪部44bを前側と後側とに2つずつ配置しており、各ガイド輪部44bで湾曲アーム43を挟むことで、湾曲アーム43上で装置本体18を支持している。
【0044】
ガイド機構44では、駆動機構45による俯仰動作のフェールセーフ装置としての移動ストッパが設けられている。この移動ストッパは、湾曲アーム43上でのガイド機構44の移動可能な範囲を制限するもので、実施例1では、湾曲アーム43に凸状部を設けており、その凸状部がガイド機構44に接触することで湾曲アーム43上でのガイド機構44の移動を制限する。移動ストッパは、俯仰センサ28が検出する俯仰基準位置(センター位置)を中心として上下双方の回転方向に等しい角度範囲とする位置に設けられている。
【0045】
駆動機構45は、湾曲アーム43上でガイド機構44を移動させるとともに、その湾曲アーム43上における任意の位置でガイド機構44を停止(固定)させるもので、
図6に示すように、湾曲アーム43とガイド機構44とに対応して設けられている。駆動機構45は、俯仰角度駆動モータ46bとウォームギヤ47とを有する。俯仰角度駆動モータ46bは、駆動機構45においてガイド機構44を移動させるための駆動力を出力する駆動装置であり、実施例1ではステッピングモータを用いている。俯仰角度駆動モータ46bは、ガイド機構44の支持板部44aに取り付けられており、ガイド機構44とともに湾曲アーム43上を移動可能とされている。俯仰角度駆動モータ46bは、制御部20の制御下で駆動され、駆動されることにより出力軸を適宜回転させる。
【0046】
ウォームギヤ47は、ウォーム48とホイール49とを有する。ウォーム48は、ねじ歯車であり、外周面にウォーム側ギヤ歯48aが設けられている。ウォーム48は、俯仰角度駆動モータ46bの出力軸に取り付けられており、俯仰角度駆動モータ46bが駆動されると出力軸とともに回転駆動される。
【0047】
ホイール49は、はす歯(斜歯)歯車(ウォームホイール)であり、ウォーム48と協働してウォームギヤ47を構成する。ホイール49は、左右方向に直交する板状部材とされ、湾曲アーム43上に設けられている。ホイール49では、ウォーム48側の(前後方向で被検者とは反対側)の外縁部49aが、中心軸線43aを中心とする円弧に沿うものとされている。その外縁部49aには、ホイール側ギヤ歯49bが設けられている。このホイール側ギヤ歯49bは、ウォーム48のウォーム側ギヤ歯48aを噛み合わせることが可能とされている。
【0048】
この駆動機構45は、制御部20の制御下で俯仰角度駆動モータ46bが駆動されると、その出力軸に取り付けられたウォーム48が回転駆動し、ホイール49の外縁部49aの接線方向への駆動力としてホイール49へと伝達する。すると、駆動機構45は、ウォーム48をガイド機構44の支持板部44aに固定しているとともに、ホイール49を湾曲アーム43に固定しているので、湾曲アーム43上でガイド機構44を移動させることができる。このように、ウォームギヤ47は、俯仰角度駆動モータ46bが出力する回転力を、中心軸線43aを中心としてホイール49を回転させる回転力に変換する。そして、実施例1の駆動機構45は、俯仰角度駆動モータ46bにステッピングモータを用いているので、エンコーダ等を組み合わせることで湾曲アーム43上の任意の位置にガイド機構44を移動させたり留めたりすることができる。これにより、駆動機構45は、装置本体18に収容した観察撮影光学系19の光軸Oの被検眼Eの光軸OEに対する鉛直面上での俯仰角度φを調整できる。
【0049】
次に、
図7~
図12を参照して実施例1の入力操作ユニット1の構成を説明する。実施例1の入力操作ユニット1は、第1レバー入力操作機構5と第1滑り板機構7とを組み合わせ、被検眼Eに対する装置本体18の相対位置を調整するときに操作するアライメント調整ユニットである。
【0050】
第1レバー入力操作機構5は、
図7及び
図8に示すように、装置本体18の左右軸Xと上下軸Yと前後軸Zの三次元位置の調整操作を行うジョイスティック13と、レバーケース50に内蔵されたジョイスティック13の取り付け支持構造と、を備える機構である。
【0051】
ジョイスティック13は、
図8に示すように、スイッチ取付け部材51aを有するレバー内筒軸51と、把持部52aと基部52bを有するレバー外筒軸52と、レバー内筒軸51に対してレバー外筒軸52を回転可能に支持する上下一対のベアリング53と、を備える。そして、レバー内筒軸51の下端部には、フレーム支持軸54と、フレーム支持軸54に対してコイルバネ55を介して上下動可能に設けられた可動軸56と、有する。さらに、可動軸56の下端部は球面56aとされ、レバーケース50に固定された受部材57の擦り鉢状凹面57aにコイルバネ55の付勢力にて圧接している。よって、傾けた状態のジョイスティック13から手を放すと、コイルバネ55の付勢力により可動軸56の球面56aが受部材57の擦り鉢状凹面57aの底部の位置に戻り、ジョイスティック13が原点復帰する。また、ジョイスティック13に下向きの力を加えると、コイルバネ55を縮めてフレーム支持軸54と可動軸56の隙間分だけ押し下げられる。そして、押し下げられたジョイスティック13から下向きに加えた力を抜くと、コイルバネ55の付勢力にて押し上げられて元の位置に戻る。
【0052】
フレーム支持軸54には、X軸傾動フレーム58とZ軸傾動フレーム59とが固定される。X軸傾動フレーム58は、レバーケース50に対して2分割のX軸傾動ピン60によりピン軸を中心として傾動可能に設けられる。Z軸傾動フレーム59は、レバーケース50に対して2分割のZ軸傾動ピン61によりピン軸を中心として傾動可能に設けられる。
【0053】
X軸傾動ピン60には、
図7に示すように、ジョイスティック13をX軸方向(横方向)に傾けたときの傾斜角度を検出するX軸ポテンショメータ24aが設けられる。Z軸傾動ピン61には、
図8に示すように、ジョイスティック13をZ軸方向(前後方向)に傾けたときの傾斜角度を検出するZ軸ポテンショメータ24bが設けられる。さらに、基部52bにスリット板62が水平配置で設けられる。そして、スリット板62には、
図8に示すように、ジョイスティック13をY軸回りに右回転又は左回転したときの回転角度を検出するY軸ロータリーエンコーダ24cが配置される。
【0054】
ここで、入力操作ユニット1は、第1レバー入力操作機構5から第1滑り板機構7に入力操作を切り替えるとき、所定の切替操作に基づいて、第1レバー入力操作機構5による入力要素であるX,Y,Zの軸座標を固定すると同時に、第1滑り板機構7による首振り角度θと俯仰角度φの入力操作を許可する入力要素切替手段を有する。なお、入力要素切替手段は、第1滑り板機構7から第1レバー入力操作機構5に入力操作を戻すとき、所定の切替操作を戻す操作に基づいて、第1滑り板機構7による首振り角度θと俯仰角度φの入力操作を遮断すると同時に、第1レバー入力操作機構5による入力操作を許可する。
【0055】
実施例1での入力要素切替手段は、所定の切替操作を、ジョイスティック13を押し下げるレバー押し下げ操作とする。そして、レバー押し下げ操作によりレバーケース50に対する第1レバー入力操作機構5のX軸方向とZ軸方向への傾動をロックし、押し下げていたジョイスティック13から手を放すとロックを解除するレバー操作ロック構造63を有する。レバー操作ロック構造63は、
図7に示すように、X軸傾動ピン60に設けられたピニオン63aと、レバーケース50に設けられ、レバー押し下げ操作によりピニオン63aと噛み合うラックギヤ63bと、によって構成されている。つまり、レバー押し下げ操作によりX軸傾動ピン60の動作をロックすることでX軸座標を固定する。なお、図示を省略するが、Z軸傾動ピン61に対してもX軸傾動ピン60と同様に、レバー操作ロック構造63が設けられる。
【0056】
入力操作ユニット1の第1滑り板機構7は、
図9及び
図10に示すように、ジョイスティック13が架台12に取り付けられる位置であって、架台12を構成する2枚の架台プレート板12aに挟まれた位置に配置される。第1滑り板機構7は、ジョイスティック13がY軸方向に貫通するレバー貫通穴70を有することで、第1レバー入力操作機構5とは分離独立しつつも、ジョイスティック13の真下位置に配置される角度入力操作機構である。この第1滑り板機構7は、検者の片手によって操作される入力操作部材71と共に移動する角度入力板72と、首振り角度θを検出する首振り角度検出板73と、俯仰角度φを検出する俯仰角度検出板74と、を重ね合わせた機構としている。
【0057】
入力操作部材71は、合成樹脂材等により成形され、内面にジョイスティック13が貫通するレバー貫通穴70を有し、外面に下側円筒の外径よりも上側円筒外径を小径とする段差円筒形状を有する部材とされる。この段差円筒形状は、ジョイスティック13を押し下げている検者の片手のうち小指球又は拳輪を入力操作部材71に接触させて行う左右方向と前後方向のスライド操作性を配慮して決めている。なお、小指球とは、
図12(a)に示すように、手のひら領域のうち小指から延長する手首に近い領域をいう。拳輪とは、
図12(b)に示すように、握り拳を作ったときに小指から手首までの側面領域をいう。
【0058】
角度入力板72は、
図11(a)に示すように、入力操作部材71が一体に固定された方形状板であって、3個の首振り角度入力ピン75と3個の俯仰角度入力ピン76が板上面から下方に向かって突出して設けられている。両角度入力ピン75,76の下方突出量は、首振り角度検出板73の板厚と俯仰角度検出板74の板厚を合わせた量としている。そして、角度入力板72のX軸方向に対向する二辺を72a,72bとすると、辺72aに沿う位置に首振り角度入力ピン75を2個設け、辺72bに沿う位置に首振り角度入力ピン75を1個設けている。角度入力板72のZ軸方向に対向する二辺を72c,72dとすると、72cに沿う位置に俯仰角度入力ピン76を2個設け、辺72dに沿う位置に1個設けている。
【0059】
首振り角度検出板73は、
図11(b)に示すように、角度入力板72の下面に接して配置された方形状板であって、第1ピン長穴75a、第2ピン長穴75b、第3ピン逃げ穴76cが形成されている。首振り角度検出板73のX軸方向に対向する二辺を73a,73bとすると、第1ピン長穴75aは、辺73aに沿う位置に形成され、2個の首振り角度入力ピン75に係合する穴径と穴長を有する。第2ピン長穴75bは、辺73bに沿う位置に形成され、1個の首振り角度入力ピン75に係合する穴径と穴長を有する。首振り角度検出板73のZ軸方向に対向する二辺を73c,73dとすると、第3ピン逃げ穴76cは、辺73c側に2個、辺73d側に1個形成され、3個の俯仰角度入力ピン76がX軸方向にスライド移動してもこれを吸収する大きな穴径を有する。よって、首振り角度検出板73は、首振り角度入力ピン75からX軸方向にスライド入力を受けるとX軸方向にスライド移動する。
【0060】
首振り角度検出板73には、
図10に示すように、検出板のスライド移動をX軸方向に制限するX軸制限板73fが設けられる。そして、首振り角度検出板73のX軸の平行な一辺には、ラックギヤ73gが設けられ、ラックギヤ73gと噛み合うピニオンギヤ73hに首振り入力ポテンショメータ24dが設けられる。よって、首振り入力ポテンショメータ24dは、首振り角度検出板73をX軸方向(横方向)にスライド移動させたときのスライド移動量を検出する。
【0061】
俯仰角度検出板74は、
図11(c)に示すように、首振り角度検出板73の下面に接して配置された方形状板であって、第1ピン長穴76a、第2ピン長穴76b、第3ピン逃げ穴75cが形成されている。俯仰角度検出板74のZ軸方向に対向する二辺を74c,74dとすると、第1ピン長穴76aは、辺74cに沿う位置に形成され、2個の俯仰角度入力ピン76に係合する穴径と穴長を有する。第2ピン長穴76bは、辺74dに沿う位置に形成され、1個の俯仰角度入力ピン76に係合する穴径と穴長を有する。俯仰角度検出板74のX軸方向に対向する二辺を74a,74bとすると、第3ピン逃げ穴75cは、辺74a側に2個、辺74b側に1個形成され、3個の首振り角度入力ピン75がZ軸方向にスライド移動してもこれを吸収する大きな穴径を有する。よって、俯仰角度検出板74は、俯仰角度入力ピン76からZ軸方向にスライド入力を受けるとZ軸方向にスライド移動する。
【0062】
俯仰角度検出板74には、
図10に示すように、検出板のスライド移動をZ軸方向に制限するZ軸制限板74fが設けられる。そして、俯仰角度検出板74のZ軸の平行な一辺には、ラックギヤ74gが設けられ、ラックギヤ74gと噛み合うピニオンギヤ74hに俯仰入力ポテンショメータ24eが設けられる。よって、俯仰入力ポテンショメータ24eは、俯仰角度検出板74をZ軸方向(前後方向)にスライド移動させたときのスライド移動量を検出する。
【0063】
このように、第1滑り板機構7は、ジョイスティック13を押し下げている検者の片手のうち小指球又は拳輪を入力操作部材71に接触させて行う左右方向と前後方向の移動操作を角度入力操作とする滑り板機構である。そして、装置本体18の首振り角度θを調整するとき角度入力板72をX軸方向にスライド移動させると、首振り角度検出板73のみがX軸方向にスライド移動する。また、装置本体18の俯仰角度φを調整するとき角度入力板72をZ軸方向にスライド移動させると、俯仰角度検出板74のみがZ軸方向にスライド移動する。
【0064】
次に、
図13及び
図14を参照して眼底画像の撮影作用の一例を説明する。
図14に示すフローチャートの各ステップについて説明する。
【0065】
ステップS1では、スタートに続き、検者はジョイスティック13を把持し、モニタ23に映し出される眼底画像(
図13を参照)を見ながらXYZの三次元位置調整を行う。実施例1の場合、X軸の位置調整はジョイスティック13を横に傾けて行い、Z軸の位置調整はジョイスティック13を前後に傾けて行う。このとき、制御部20は、角度20分割速度増減電動制御則に基づいて、ジョイスティック13の傾き角度と傾き時間によりX軸方向の動作量とZ軸方向の動作量を決める。また、Z軸の位置調整は、ジョイスティック13を右回転(装置本体18の上昇)や左回転(装置本体18の下降)をすることで行う。このとき、制御部20は、回転操作量に比例したY軸方向の昇降動作量を決める。
【0066】
ステップS2では、ステップS1でのXYZの三次元位置調整に続き、黄斑を中心とした眼底画像をジョイスティック13の上面に設けられた操作ボタン13aを押し下げることで撮影する。
【0067】
ステップS3では、ステップS2での眼底画像の撮影に続き、ジョイスティック13を押し下げ、XYZの三次元調整位置をロックする。ここで、XYZの三次元調整位置をロックする理由は、X,Y,Z,θ,φという5つの入力要素があるとき、同時に操作ができると、X,Y,Zの入力要素とθ,φの入力要素のどちらが効いているのか、眼底画像を見ている検者は認識しづらい。よって、(X,Y,Z入力)と(θ,φ入力)の入力切替手段があると、検者が(X,Y,Z入力)と(θ,φ入力)のどちらであるかを容易に認識できることによる。
【0068】
ステップS4では、ステップS3でのXYZの三次元調整位置のロックに続き、入力操作部材71を手前に移動し、装置本体18の俯仰角度φを上向き(測定部である装置本体18は下がる)にする。つまり、検者が片手を使ってジョイスティック13を押し下げたままで、入力操作部材71をZ軸方向にスライドさせる。この検者による俯仰角度入力操作があると、俯仰角度検出板74は、角度入力板72に設けられた俯仰角度入力ピン76からZ軸方向にスライド入力を受けてZ軸方向にスライド移動する。このスライド移動量を俯仰入力ポテンショメータ24eが検出すると制御部20は、俯仰入力ポテンショメータ24eからの操作量情報に基づいて、俯仰駆動機構41に有する俯仰角度駆動モータ46bを駆動させる。俯仰角度駆動モータ46bの駆動により装置本体18の俯仰角度φが上向きに制御される。
【0069】
ステップS5では、ステップS4での俯仰角度φの上向き調整に続き、黄斑の上部の眼底画像をジョイスティック13の上面に設けられた操作ボタン13aを押し下げることで撮影する。
【0070】
ステップS6では、ステップS5での黄斑の上部眼底画像の撮影に続き、入力操作部材71をさらに左方向に移動し、装置本体18の首振り角度θを左向きにする。つまり、検者が片手を使ってジョイスティック13を押し下げたままで、入力操作部材71をX軸方向にスライドさせる。この検者による首振り角度入力操作があると、首振り角度検出板73は、角度入力板72に設けられた首振り角度入力ピン75からX軸方向にスライド入力を受けてX軸方向にスライド移動する。このスライド移動量を首振り入力ポテンショメータ24dが検出すると制御部20は、首振り入力ポテンショメータ24dからの操作量情報に基づいて、首振り駆動機構31に有する首振り角度駆動モータ46aを駆動させる。首振り角度駆動モータ46aの駆動により装置本体18の首振り角度θが左向きに制御される。
【0071】
ステップS7では、ステップS6での首振り角度θの左向き調整に続き、黄斑の上部・右側の眼底画像をジョイスティック13の上面に設けられた操作ボタン13aを押し下げることで撮影する。
【0072】
このように、被検眼Eに対する装置本体18の相対位置を調整する際、検者の操作感覚と装置本体18の動きが合うように、入力操作部材71を左右に動かすX軸方向のスライド操作を、首振り角度θの入力操作としている。そして、入力操作部材71を前後に動かすZ軸方向のスライド操作を、俯仰角度φの入力操作としている。よって、被検眼Eに対する装置本体18の相対位置を調整する際、5つの入力要素(X,Y,Z,θ,φ)による入力操作を検者の片手を使って直感的に行うことができる。
【0073】
例えば、眼底カメラであってXYZによる三次元位置調整のみが可能である場合、眼底画像としては、被検者によって黄斑の位置を中心部位置とする予め決められた眼底画像が取得されるだけである。このため、黄斑の位置を異ならせ、黄斑周囲の複数の眼底画像を取得したいという要求に応えることができない。
【0074】
これに対し、実施例1の眼科装置10の場合、変位態様が異なる5つの入力要素(X,Y,Z,θ,φ)による入力操作が可能であるため、上記のように、黄斑の位置を異ならせた複数の眼底画像を取得することができる。このように、複数の眼底画像を取得できる結果、検査精度の向上や被検者に対する適切な処置の確保に繋ぐことができる。
【0075】
以上説明したように、実施例1の眼科装置10にあっては、下記に列挙する効果を奏する。
【0076】
(1)装置本体18と、入力操作ユニット1と、制御部20と、を備える眼科装置10であって、装置本体18は、被検眼Eを基準としたときの左右軸方向駆動機構と、上下軸方向駆動機構と、前後軸方向駆動機構と、上下軸回りの首振り駆動機構31と、左右軸回りの俯仰駆動機構41と、を有する。入力操作ユニット1は、装置本体18の左右軸Xと上下軸Yと前後軸Zの三次元位置の調整操作を行うレバー(ジョイスティック13)を有する第1レバー入力操作機構5と、検者がレバーを把持する片手を使って装置本体18の首振り角度θと俯仰角度φの調整操作を行う角度入力操作機構(第1滑り板機構7)と、を有する。このため、被検眼Eに対する装置本体の相対位置を調整する際、変位態様が異なる5つの入力要素(X,Y,Z,θ,φ)による入力操作を片手で直感的に行うことができる。
【0077】
(2)入力操作ユニット1は、レバー入力操作機構(第1レバー入力操作機構5)から角度入力操作機構(第1滑り板機構7)に入力操作を切り替えるとき、所定の切替操作に基づいて、レバー入力操作機構による入力要素であるX,Y,Zの軸座標を固定すると同時に、角度入力操作機構による首振り角度θと俯仰角度φの入力操作を許可する入力要素切替手段を有する。このため、5つの入力要素(X,Y,Z,θ,φ)による入力操作を片手で行う検者が切替操作を行うことによって、(X,Y,Z)の入力操作を行っているのか、(θ,φ)の入力操作を行っているのか、を明確に認識することができる。
【0078】
(3)入力要素切替手段は、所定の切替操作をレバー(ジョイスティック13)の押し下げ操作とし、押し下げ操作によりレバーケース50に対する第1レバー入力操作機構5のX軸方向とZ軸方向への傾動をロックし、押し下げていたレバーから手を放すとロックを解除するレバー操作ロック構造63を有する。このため、レバー(ジョイスティック13)による(X,Y,Z)の入力操作に引き続き、レバー押し下げ操作を行うだけで円滑に(θ,φ)の入力操作へと切り替えることができる。加えて、レバー(ジョイスティック13)に連動するレバー操作ロック構造63により、レバー押し下げ操作によりX,Zの軸座標をメカニカルに固定できるし、レバー手放し操作によりメカニカルな固定を解除できる。
【0079】
(4)角度入力操作機構を、検者の片手によって操作される入力操作部材71と共に移動する角度入力板72と、首振り角度θを検出する首振り角度検出板73と、俯仰角度φを検出する俯仰角度検出板74と、を重ね合わせた滑り板機構(第1滑り板機構7)とする。この滑り板機構を採用することにより、装置本体18の首振り角度θを調整するとき角度入力板72をX軸方向にスライド移動させると、首振り角度検出板73のみがX軸方向にスライド移動する。また、装置本体18の俯仰角度φを調整するとき角度入力板72をZ軸方向にスライド移動させると、俯仰角度検出板74のみがZ軸方向にスライド移動する。このため、レバー(ジョイスティック13)を把持している検者の片手によって入力操作部材71をスライド操作することで、装置本体18の首振り角度θと俯仰角度φを調整することができる。
【0080】
(5)レバー入力操作機構は、レバー(ジョイスティック13)として、手放すと直立位置に復帰するレバーを有する第1レバー入力操作機構5である。滑り板機構は、レバーが貫通するレバー貫通穴70を有し、レバーを押し下げている検者の片手のうち小指球又は拳輪を入力操作部材71に接触させて行う左右方向と前後方向の移動操作を角度入力操作とする第1滑り板機構7である。このため、首振り角度θと俯仰角度φの角度入力操作を、レバー(ジョイスティック13)を押し下げたままで入力操作部材71をスライド移動させるという簡単な片手操作とすることができる。即ち、検者の片手のうち、レバーを把持している状態で余っている小指球又は拳輪を入力操作部材71に接触させて行うスライド移動を角度入力操作にすることができる。
実施例2は、レバーが直立位置に復帰しないタイプのレバー入力操作機構であり、しかも、首振り角度θと俯仰角度φの角度入力操作を、レバーを押し下げたままで行うレバー傾動操作とする例である。
入力操作部材71は、合成樹脂材等により成形され、内面にレバー固定穴77を有し、外面に下側円筒の外径よりも上側円筒外径を小径とする段差円筒形状を有する部材とされる。
ステップS4’では、ステップS3でのXYZの三次元調整位置のロックに続き、押し下げたままのジョイスティック13を手前に引くことで、装置本体18の俯仰角度φを上向き(測定部である装置本体18は下がる)にする。つまり、検者が片手を使ってジョイスティック13を押し下げて入力操作部材71を角度入力板72に圧接させておき、圧接させたままで、ジョイスティック13により入力操作部材71をZ軸方向に傾動させる。この検者による俯仰角度入力操作があると、俯仰角度検出板74は、角度入力板72に設けられた俯仰角度入力ピン76からZ軸方向にスライド入力を受けてZ軸方向にスライド移動する。このように、俯仰角度φの角度入力操作を、ジョイスティック13を押し下げたままで前後方向に傾動させるという簡単な片手操作とすることができる。
ステップS6’では、ステップS5での黄斑の上部眼底画像の撮影に続き、入力操作部材71を左方向に移動し、首振り角度θを左向きにする。つまり、検者が片手を使ってジョイスティック13を押し下げ、押し下げたままのジョイスティック13をX軸方向に傾動させる。この検者による首振り角度入力操作があると、首振り角度検出板73は、角度入力板72に設けられた首振り角度入力ピン75からX軸方向にスライド入力を受けてX軸方向にスライド移動する。このように、首振り角度θの角度入力操作を、ジョイスティック13を押し下げたままで左右方向に傾動させるという簡単な片手操作とすることができる。
(6)レバー入力操作機構は、レバー(ジョイスティック13)として、所定角度以下の傾斜角度領域で手放したとき、直立位置に復帰しないでそのときの傾斜角度を保持するレバーを有する第2レバー入力操作機構5’である。滑り板機構は、レバーに入力操作部材71が固定され、入力操作部材以外の各板にはレバー貫通穴70を有し、レバーを押し下げたままで行うレバー傾動操作を角度入力操作とする第2滑り板機構7’である。このため、首振り角度θと俯仰角度φの角度入力操作を、レバー(ジョイスティック13)を押し下げたままで左右方向や前後方向に傾動させるという簡単な片手操作とすることができる。即ち、入力操作部材71をレバーに固定すると共に、レバー押し下げ操作を入力切替操作としたことで、押し下げたレバーの左右方向傾動と押し下げたレバーの前後方向傾動を、首振り角度検出板73と俯仰角度検出板74のスライド移動に変換させることができる。