(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036069
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】濃度補正プロファイル作成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
B41J2/01
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140783
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】袴田 純一
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA06
2C056EB29
2C056EB41
2C056EC28
2C056EC79
(57)【要約】
【課題】生産性を維持しつつ、ノズル毎の吐出量のばらつきを抑えた濃度ムラ補正を行う。
【解決手段】インクを吐出するノズルを複数配列したインクジェットヘッド31と、インクジェットヘッド31の各ノズルからの吐出量のばらつきを取得する濃度プロファイル取得部81と、用紙毎に設定された最大ドロップに応じて印刷画像を形成する画像形成部87と、濃度補正プロファイルにより印刷画像の濃度補正を行う濃度補正部86と、を備えた画像形成装置に適用されたインクジェット印刷装置1において、ノズル列毎の濃度ムラの目標濃度を基準に濃度補正プロファイルを生成する第1濃度補正プロファイル生成部82と、最大ドロップと補正後の最大ドロップ数の比から上限濃度補正係数を算出する上限濃度補正係数算出部84と、上限濃度補正係数をもとに濃度補正プロファイルを補正する第2濃度補正プロファイル生成部85と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルを複数配列したインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの各ノズルからの吐出量のばらつきを取得する濃度プロファイル取得部と、用紙毎に設定された最大ドロップに応じて印刷画像を形成する画像形成部と、濃度補正プロファイルにより印刷画像の濃度補正を行う濃度補正部と、を備えた画像形成装置に適用された濃度補正プロファイル生成装置において、
ノズル列毎の濃度ムラの目標濃度を基準に濃度補正プロファイルを生成する第1濃度補正プロファイル生成部と、
最大ドロップと補正後の最大ドロップ数の比から上限濃度補正係数を算出する上限濃度補正係数算出部と、
上限濃度補正係数をもとに濃度補正プロファイルを補正する第2濃度補正プロファイル生成部と、
を備えることを特徴とする濃度補正プロファイル生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷画像の濃度を補正するためのプロファイルを作成する濃度補正プロファイル作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送される用紙に対して、画像データに基づいてインクジェットヘッドのノズルによりインクを吐出して印刷を行うライン型のインクジェット記録装置がよく知られている。
【0003】
このインクジェットヘッドは、加工精度によりノズル毎のインク吐出量にばらつきがあり濃度ムラが発生することがある。
【0004】
特許文献1には、ヘッド内の最も濃度の低い画像の濃度に合わせる様、吐出されるインク滴数を変更する方法で、濃度ムラの補正を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、濃度の低い方に濃度を合わせる為、全体的に印字濃度が薄くなってしまう。
【0007】
また、少ないドロップに合わせたままで濃度を上げる為には、最大ドロップを増やす方法も考えられるが、同じ位置に多くのドロップを着弾させるために用紙の搬送速度を落とす必要があり生産性が低下してしまうといった課題があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、生産性を維持しつつ、ノズル毎の吐出量のばらつきを抑えた濃度ムラ補正を行う濃度補正プロファイル作成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る濃度補正プロファイル作成装置の特徴は、
インクを吐出するノズルを複数配列したインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの各ノズルからの吐出量のばらつきを取得する濃度プロファイル取得部と、用紙毎に設定された最大ドロップに応じて印刷画像を形成する画像形成部と、濃度補正プロファイルにより印刷画像の濃度補正を行う濃度補正部と、を備えた画像形成装置に適用された濃度補正プロファイル生成装置において、
ノズル列毎の濃度ムラの目標濃度を基準に濃度補正プロファイルを生成する第1濃度補正プロファイル生成部と、
最大ドロップと補正後の最大ドロップ数の比から上限濃度補正係数を算出する上限濃度補正係数算出部と、
上限濃度補正係数をもとに濃度補正プロファイルを補正する第2濃度補正プロファイル生成部と、
を備えることにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る濃度補正プロファイル作成装置の特徴によれば、生産性を維持しつつ、ノズル毎の吐出量のばらつきを抑えた濃度ムラ補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示すインクジェット印刷装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図3】従来技術による濃度補正を説明した説明図である。(a)は、下方から見たインクジェットヘッド31Kを示しており、(b)は、濃度プロファイルを示しており、(c)は、濃度補正プロファイルを示している。
【
図4】本発明の実施形態に係るインクジェット印刷装置における濃度補正を説明した説明図である。(a)は、第1濃度補正プロファイル生成部により生成された濃度補正プロファイルの一例を示した図であり、(b)は、第2濃度補正プロファイル生成部により補正された濃度補正プロファイルの一例を示した図であり、(c)は、濃度補正プロファイルを用いた補正後の濃度ファイルの一例を示した図である。
【
図5】本発明に係る画像形成装置が適用されたインクジェット印刷装置の濃度補正処理の処理内容を示したフローチャートである。
【
図6】本発明に係る画像形成装置が適用されたインクジェット印刷装置の印刷処理の処理内容を示したフローチャートである。
【
図7】本発明の変形例1に係るインクジェット印刷装置の濃度補正プロファイルの一例を示した図である。
【
図8】本発明の変形例2に係るインクジェット印刷装置の濃度補正プロファイルの一例を示した図である。(a)は、下方から見たインクジェットヘッド31Kを示しており、(b)は、濃度プロファイルを示しており、(c)は、濃度補正プロファイルを示している。
【
図9】本発明の変形例3に係るインクジェット印刷装置の濃度補正プロファイルの一例を示した図である。(a)は、下方から見たインクジェットヘッドを示しており、(b)は、濃度プロファイルを示しており、(c)は、濃度補正プロファイルを示しており、(d)は、補正後の濃度プロファイルを示しており、(e)は、つなぎ目補正を行うための濃度補正プロフィルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一若しくは同等の部位や構成要素には、同一若しくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0013】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
<インクジェット印刷装置1の構成>
以下に添付図面を参照して、本発明に係る濃度補正プロファイル作成装置が適用されたインクジェット印刷装置1の実施形態を詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット印刷装置1の概略構成図、
図2は、
図1に示すインクジェット印刷装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【0016】
以下の説明において、ユーザが位置する
図1の紙面表方向を左方向、紙面裏方向を右方向とする。また、
図1における、ユーザから視て、上下を上下方向とする。また、
図1において破線で示す経路が、印刷媒体である用紙PAが搬送される搬送経路Rである。用紙PAの搬送方向を前後方向とする。以下の説明における上流は前方向であり、下流は後ろ方向を意味する。
【0017】
図1又は
図2に示すように、インクジェット印刷装置1は、給紙部2と、吸引搬送部3と、印刷部4と、排紙部6と、スキャン部7と、機器制御部8とを備える。
【0018】
給紙部2は、印刷媒体である用紙PAの給紙を行う。給紙部2は、給紙台11と、給紙ローラ12と、レジストローラ13とを備える。
【0019】
給紙台11は、印刷に用いられる用紙PAが積載される。
【0020】
給紙ローラ12は、給紙台11に積載された用紙PAを1枚ずつピックアップしてレジストローラ13に向けて搬送する。給紙ローラ12は、給紙台11の上側に配置されている。給紙ローラ12は、図示しないモータにより回転駆動される。
【0021】
レジストローラ13は、給紙ローラ12により搬送されてきた用紙PAを一旦止めた後、吸引搬送部3に向けて搬送する。レジストローラ13は、給紙ローラ12の下流側に配置されている。レジストローラ13は、図示しないモータにより回転駆動される。
【0022】
吸引搬送部3は、レジストローラ13から搬送されてきた用紙PAを印刷部4や排紙部6に向け搬送する。吸引搬送部3は、搬送ベルト21と、駆動ローラ22と、従動ローラ23~25と、ベルト駆動モータ26と、プラテンプレート27と、吸引ファン28とを備える。
【0023】
搬送ベルト21は、駆動ローラ22および従動ローラ23~25に掛け渡される環状の無端ベルトである。搬送ベルト21には、用紙PAを吸着保持するための貫通穴である吸気孔が、搬送ベルト21の搬送方向に沿って所定の間隔で形成されている。搬送ベルト21は、吸引ファン28の駆動により吸気孔に発生する負圧(吸着力)により、用紙PAを搬送ベルト21上に吸着保持する。
【0024】
搬送ベルト21は、駆動ローラ22の回転駆動により、
図1における時計回り方向に回転する。これにより、搬送ベルト21は、無端移動することで用紙PAを右方向へ搬送する。
【0025】
駆動ローラ22および従動ローラ23~25は、搬送ベルト21が掛け渡されるものである。駆動ローラ22は、ベルト駆動モータ26により回転駆動され、搬送ベルト21を回転させる。従動ローラ23~25は、搬送ベルト21を介して駆動ローラ22に従動する。従動ローラ23は、駆動ローラ22と略同じ高さで、駆動ローラ22から左右方向に所定間隔だけ離間して配置されている。従動ローラ24,25は、駆動ローラ22および従動ローラ23の下方において、互いに左右方向に所定間隔だけ離間して、略同じ高さに配置されている。
【0026】
ベルト駆動モータ26は、駆動ローラ22を回転駆動させる。
【0027】
プラテンプレート27は、駆動ローラ22と従動ローラ23との間において搬送ベルト21の下側に配置され、搬送ベルト21の下面を摺動可能に支持する。
【0028】
吸引ファン28は、プラテンプレート27の下方に配置され、下方向への気流を生じさせる。
【0029】
印刷部4は、吸引搬送部3により搬送される用紙PAに印刷を行う。印刷部4は、吸引搬送部3の上側に設けられている。印刷部4は、インクジェット印刷装置1の筐体(図示せず)内に固定されている。印刷部4は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)のインクジェットヘッド31K,31C,31M,31Yと、ヘッドホルダ32を備える。
【0030】
インクジェットヘッド31K,31C,31M,31Yは、色ごとに千鳥格子状に配置されている。インクジェットヘッド31K,31C,31M,31Yは、下部にノズルを複数有しており、吸引搬送部3により吸引されながら搬送される用紙PAに対して、ノズルからインクを吐出することにより印刷する。ノズルは、左右方向(主走査方向)に直線的に配置されたノズル列を形成する。
【0031】
ヘッドホルダ32は、吸引搬送部3の上方において、インクジェットヘッド31を保持する。ヘッドホルダ32は、中空状の略直方体形状に形成されている。
【0032】
排紙部6は、印刷部4にて印刷された用紙PAが排紙される。
【0033】
スキャン部7は、光源ランプと、画像を結像する集光レンズとミラーなどの光学系と、CCDなどの光電変換部とを有しており、印刷部4により印刷された調整用パターンを読み取る。
【0034】
機器制御部8は、例えば、CPUやRAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成され、給紙部2と、吸引搬送部3と、印刷部4と、排紙部6と、スキャン部7との動作を制御する。
【0035】
機器制御部8は、その機能上、濃度プロファイル取得部81と、第1濃度補正プロファイル生成部82と、濃度補正プロファイル記憶部83と、上限濃度補正係数算出部84と、第2濃度補正プロファイル生成部85と、濃度補正部86と、画像形成部87と、を有している。
【0036】
濃度プロファイル取得部81は、インクジェットヘッド31K,31C,31M,31Yの各ノズルからの吐出量のばらつきを取得する。
【0037】
第1濃度補正プロファイル生成部82は、インクジェットヘッド31K,31C,31M,31Yのノズル列毎の濃度ムラの目標濃度を基準に濃度補正プロファイルを生成する。
【0038】
濃度補正プロファイル記憶部83は、第1濃度補正プロファイル生成部82により、生成され、後述する第2濃度補正プロファイル生成部85により補正された濃度補正プロファイルを記憶する。
【0039】
上限濃度補正係数算出部84は、最大ドロップと補正後の最大ドロップ数の比から上限濃度補正係数を算出する。
【0040】
第2濃度補正プロファイル生成部85は、上限濃度補正係数算出部84により算出された上限濃度補正係数をもとに濃度補正プロファイルを補正する。
【0041】
濃度補正部86は、濃度補正プロファイル記憶部83に記憶された濃度補正プロファイルにより印刷画像の濃度補正を行う。
【0042】
画像形成部87は、用紙毎に設定された最大ドロップに応じて印刷画像を形成する。
【0043】
図3は、従来技術による濃度補正を説明した説明図である。(a)は、下方から見たインクジェットヘッド31Kを示しており、(b)は、濃度プロファイルを示しており、(c)は、濃度補正プロファイルを示している。なお、インクジェットヘッド31K,31C,31M,31Yは同一構成を有するので、ここでは、インクジェットヘッド31Kを例に挙げて説明する。
【0044】
図3(a)に示すように、インクジェットヘッド31Kには、下部に左右方向(主走査方向)に直線的に配置されたノズル列31Kaが形成されている。
【0045】
図3(b)に示すインクジェットヘッド31Kのノズル列31Kaの濃度プロファイル101のように、目標濃度Tgに対して濃度のばらつきがあるとする。
【0046】
従来技術では、
図3(c)に示すように、目標濃度Tgのノズルは濃度補正係数閾値coeff2を「1.0」とし、目標濃度Tgより薄いノズルは濃度補正係数閾値coeff2より大きくなるように、また、目標濃度Tgより濃いノズルは濃度補正係数閾値coeff2より小さくなるように濃度補正プロファイル201を生成する。
【0047】
ここで、インクジェットヘッド31Kの最大ドロップ数が「5」で、濃度補正後の最大ドロップ数は「6」、吸引搬送部3による用紙PAの搬送速度は「6」ドロップに対応した速度とする。
【0048】
このとき、印刷部4が濃度100(%)のベタ画像を印刷しようとすると、coeff2で「5」ドロップで印刷し、濃度補正係数閾値coeff1が「1.2」であるとすると、「6」(=5×1.2)ドロップで印刷し、濃度補正係数coeff1閾値を超えると、「7」ドロップを使用して印刷する場合が生じる可能性がある。
【0049】
吸引搬送部3による用紙PAの搬送速度は「6」ドロップに対応した速度であるので、「7」ドロップを使用して印刷する場合、搬送速度を低下させて印刷する必要があり、生産性が低下するという問題がある。
【0050】
そこで、本発明の実施形態に係るインクジェット印刷装置1では、補正後の最大ドロップ数が「6」を超える可能性のあるノズル範囲(濃度補正係数閾値coeff1を超える範囲)を圧縮することにより、生産性を維持しつつ、ノズル毎の吐出量のばらつきを抑えた濃度ムラ補正を行う。
【0051】
図4は、本発明の実施形態に係るインクジェット印刷装置1における濃度補正を説明した説明図である。(a)は、第1濃度補正プロファイル生成部82により生成された濃度補正プロファイルの一例を示した図であり、(b)は、第2濃度補正プロファイル生成部85により補正された濃度補正プロファイルの一例を示した図であり、(c)は、濃度補正プロファイルを用いた補正後の濃度ファイルの一例を示した図である。
【0052】
第1濃度補正プロファイル生成部82は、インクジェットヘッド31K,31C,31M,31Yのノズル列毎の濃度ムラの目標濃度Tgを基準に、
図4(a)に示す濃度補正プロファイル301を生成する。
【0053】
そして、上限濃度補正係数算出部84は、最大ドロップ数dropmax1と補正後の最大ドロップ数dropmax2の比から上限濃度補正係数coefflimitを算出する。具体的には、上限濃度補正係数算出部84は、補正後の最大ドロップ数dropmax2を最大ドロップ数dropmax1で除算することにより、上限濃度補正係数coefflimitを算出する。
【0054】
第2濃度補正プロファイル生成部85は、上限濃度補正係数算出部84により算出された上限濃度補正係数coefflimitをもとに濃度補正プロファイルを補正する。具体的には、補正前の濃度補正係数をcoeffbeforeとし、補正後の濃度補正係数coeffafterとすると、第2濃度補正プロファイル生成部85は、補正前の濃度補正係数をcoeffbeforeが濃度補正係数閾値coeff2(ここでは、「1.0」)を超える場合には、下記の(数式1)を用いて、補正後の濃度補正係数coeffafterを算出する。
【0055】
coeffafter=coeffbefore×(coefflimit/coeffmax)・・・(数式1)
ここで、coeffmaxを濃度補正プロファイルの最大値である最大濃度補正係数とする。
【0056】
また、第2濃度補正プロファイル生成部85は、補正前の濃度補正係数をcoeffbeforeが濃度補正係数閾値coeff2(ここでは、「1.0」)以下の場合には、下記の(数式2)を用いて、補正後の濃度補正係数coeffafterを算出する。
【0057】
coeff
after=coeff
before・・・(数式2)
第2濃度補正プロファイル生成部85は、ノズル全てについて、濃度補正係数coeff
afterを算出することにより、
図4(b)に示す濃度補正プロファイル401,402を得る。
【0058】
図4(b)に示すように、ノズルN1~N2の間が補正前の濃度補正係数coeff
beforeが濃度補正係数閾値coeff2を超えている区間であり、この区間については、濃度補正プロファイル402が採用される。
【0059】
また、ノズルN1~N2以外は、補正前の濃度補正係数coeffbeforeが濃度補正係数閾値coeff2以下の区間であるため、この区間については、濃度補正プロファイル401が採用される。
【0060】
濃度補正部86は、濃度補正プロファイル記憶部83に記憶された濃度補正プロファイルにより濃度補正を行う。
【0061】
図4(c)に示した例では、ノズルN1~N2の間が補正前の濃度補正係数coeff
beforeが濃度補正係数閾値coeff2を超えている区間であり、この区間については、濃度補正プロファイル402を用いて濃度補正を行うことで、処理結果は濃度プロファイル502のようになる。
【0062】
一方、ノズルN1~N2以外は、補正前の濃度補正係数coeffbeforeが濃度補正係数閾値coeff2以下の区間であるため、この区間については、濃度補正プロファイル401を用いて濃度補正を行うことで、処理結果は濃度プロファイル501のようになる。
【0063】
<インクジェット印刷装置1の作用>
図5は、本発明に係る画像形成装置が適用されたインクジェット印刷装置1の濃度補正処理の処理内容を示したフローチャートである。
【0064】
図5に示すように、ステップS101において、印刷部4は、調整用パターン印刷を実行する。
【0065】
ステップS103において、スキャン部7は、印刷部4により印刷された調整用パターンを読み取る。
【0066】
ステップS105において、濃度プロファイル取得部81は、インクジェットヘッド31K,31C,31M,31Yの各ノズルからの吐出量のばらつきを取得する。
【0067】
ステップS107において、第1濃度補正プロファイル生成部82は、インクジェットヘッド31K,31C,31M,31Yのノズル列毎の濃度ムラの目標濃度を基準に濃度補正プロファイルを生成する。
【0068】
ステップS109において、上限濃度補正係数算出部84は、最大ドロップと補正後の最大ドロップ数の比から上限濃度補正係数を算出する。
【0069】
ステップS111において、第2濃度補正プロファイル生成部85は、上限濃度補正係数算出部84により算出された上限濃度補正係数をもとに濃度補正プロファイルを補正する。
【0070】
図6は、本発明に係る画像形成装置が適用されたインクジェット印刷装置1の印刷処理の処理内容を示したフローチャートである。
【0071】
図5に示すように、ステップS201において、濃度補正部86は、濃度補正プロファイル記憶部83に記憶された濃度補正プロファイルにより印刷画像の濃度補正を行い、画像形成部87は、印刷画像データを形成する。
【0072】
ステップS203において、印刷部4は、印刷画像データに基づいて、吸引搬送部3により搬送される用紙PAに印刷を行う。
【0073】
<変形例1>
本発明の実施形態に係るインクジェット印刷装置1では、補正後の最大ドロップ数が「6」を超える可能性のあるノズル範囲を圧縮することにより、生産性を維持しつつ、ノズル毎の吐出量のばらつきを抑えた濃度ムラ補正を行ったがこれに限らない。
【0074】
図7は、本発明の変形例1に係るインクジェット印刷装置1の濃度補正プロファイルの一例を示した図である。
【0075】
図7に示すように、最低濃度補正係数coeff
minを設定し、最低濃度補正係数coeff
minを基準に上限濃度補正係数に収まるように圧縮するようにしてもよい。
【0076】
具体的には、第1濃度補正プロファイル生成部82は、インクジェットヘッド31K,31C,31M,31Yのノズル列毎の濃度ムラの最低濃度補正係数coeffminを基準に濃度補正プロファイルを生成する。
【0077】
<変形例2>
また、最大ドロップを超える区間のみ補正するようにしてもよい。
【0078】
図8は、本発明の変形例2に係るインクジェット印刷装置1の濃度補正プロファイルの一例を示した図である。(a)は、下方から見たインクジェットヘッド31Kを示しており、(b)は、濃度プロファイルを示しており、(c)は、濃度補正プロファイルを示している。なお、インクジェットヘッド31K,31C,31M,31Yは同一構成を有するので、ここでは、インクジェットヘッド31Kを例に挙げて説明する。
【0079】
図8(a)に示すように、インクジェットヘッド31Kには、下部に左右方向(主走査方向)に直線的に配置されたノズル列31Kaが形成されている。
【0080】
図8(b)に示すように、ここでは、インクジェットヘッド31Kのノズル列31Kaの濃度プロファイル601のように、目標濃度Tgに対して濃度のばらつきがあるとする。
【0081】
本発明の変形例2に係るインクジェット印刷装置1では、
図8(c)に示すように、ノズル領域NA1,NA2は、濃度補正係数閾値coeff2を超えているが、最大ドロップ数drop
max1を超えていない領域である。
【0082】
この領域については、第2濃度補正プロファイル生成部85は、上限濃度補正係数算出部84により算出された上限濃度補正係数をもとに濃度補正プロファイルを補正しないこととしてもよい。
【0083】
一方、
図8(c)に示すように、ノズル領域NA3,NA4は、濃度補正係数閾値coeff2を超えており、かつ最大ドロップ数drop
max1も超えている領域である。
【0084】
この領域については、第2濃度補正プロファイル生成部85は、上限濃度補正係数算出部84により算出された上限濃度補正係数をもとに濃度補正プロファイルを補正する。
【0085】
<変形例3>
上述したように、インクジェットヘッド31Kは千鳥格子状に配置されているが、ヘッドのつなぎ目で濃度差がないように隣接ヘッドも補正するようにしてもよい。
【0086】
図9は、本発明の変形例3に係るインクジェット印刷装置1の濃度補正プロファイルの一例を示した図である。(a)は、下方から見たインクジェットヘッド31K1,31K2を示しており、(b)は、濃度プロファイルを示しており、(c)は、濃度補正プロファイルを示しており、(d)は、補正後の濃度プロファイルを示しており、(e)は、つなぎ目補正を行うための濃度補正プロフィルを示している。なお、インクジェットヘッド31K,31C,31M,31Yは同一構成を有するので、ここでは、インクジェットヘッド31K1,31K2を例に挙げて説明する。
【0087】
図9(a)に示すように、インクジェットヘッド31K1には、下部に左右方向(主走査方向)に直線的に配置されたノズル列31K1aが形成されている。 インクジェットヘッド31K2には、下部に左右方向(主走査方向)に直線的に配置されたノズル列31K2aが形成されている。インクジェットヘッド31K1と、インクジェットヘッド31K2とは、ノズル領域NA5においてオーバーラップしている。
【0088】
図9(b)に示すように、ここでは、インクジェットヘッド31K1のノズル列31K1aの濃度プロファイル801のように、目標濃度Tgに対して濃度のばらつきがあるとする。また、インクジェットヘッド31K2のノズル列31K2aの濃度プロファイル802のように、目標濃度Tgに対して濃度のばらつきがあるとする。
【0089】
本発明の変形例3に係るインクジェット印刷装置1では、第2濃度補正プロファイル生成部85は、上限濃度補正係数算出部84により算出された上限濃度補正係数coefflimitをもとに濃度補正プロファイルを補正する。
【0090】
図9(c)に示すように、補正前の濃度補正係数coeff
beforeが濃度補正係数閾値coeff2を超えている区間については、濃度補正プロファイル902が採用され、補正前の濃度補正係数coeff
beforeが濃度補正係数閾値coeff2以下の区間については、濃度補正プロファイル901が採用されている。
【0091】
ここで、
図9(d)に示すように、ヘッドのつなぎ目N4において、補正の度合いが異なると、つなぎ目部分に濃度差が生じることになる。すなわち、濃度が不連続になる可能性がある。
【0092】
そこで、第2濃度補正プロファイル生成部85は、
図9(e)に示すようにつなぎ目N4で濃度が連続になるようにノズル領域NA6において補正し、濃度補正プロファイル112を得る。
【0093】
(付記)
本出願は、以下の発明を開示する。
【0094】
(付記1)
インクを吐出するノズルを複数配列したインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの各ノズルからの吐出量のばらつきを取得する濃度プロファイル取得部と、用紙毎に設定された最大ドロップに応じて印刷画像を形成する画像形成部と、濃度補正プロファイルにより印刷画像の濃度補正を行う濃度補正部と、を備えた画像形成装置に適用された濃度補正プロファイル装置において、
ノズル列毎の濃度ムラの目標濃度を基準に濃度補正プロファイルを生成する第1濃度補正プロファイル生成部と、
最大ドロップと補正後の最大ドロップ数の比から上限濃度補正係数を算出する上限濃度補正係数算出部と、
上限濃度補正係数をもとに濃度補正プロファイルを補正する第2濃度補正プロファイル生成部と、
を備えることを特徴とする濃度補正プロファイル装置。
【0095】
これにより、ノズル列毎の濃度ムラの目標濃度を基準に濃度補正プロファイルと、上限濃度補正係数をもとにした濃度補正プロファイルを持つことで、生産性を維持しつつ(印刷速度を落として濃度を保つ様な方法ではないため)、ノズル毎の吐出量のばらつきを抑えた濃度ムラ補正を行う事が出来る。
【符号の説明】
【0096】
1 インクジェット印刷装置
2 給紙部
3 吸引搬送部
4 印刷部
6 排紙部
7 スキャン部
8 機器制御部
31 インクジェットヘッド
32 ヘッドホルダ
81 濃度プロファイル取得部
82 第1濃度補正プロファイル生成部
83 濃度補正プロファイル記憶部
84 上限濃度補正係数算出部
85 第2濃度補正プロファイル生成部
86 濃度補正部
87 画像形成部