(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036071
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240308BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240308BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
H01L29/78 652L
H01L29/78 652N
H01L29/78 652P
H01L29/78 653A
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
H01L29/78 652T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140785
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 洋平
(57)【要約】
【課題】 ゲート配線を分断することなく好適にソース電極と周辺電極とを接続する。
【解決手段】 半導体装置であって、ソース電極と周辺電極の間の範囲で半導体基板の上面に接するフィールド絶縁膜と、前記フィールド絶縁膜の上部に配置されているとともにゲート電極とゲートパッドとを接続しているゲート配線と、前記ゲート配線を覆っている層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜の上部を通って前記ソース電極から前記周辺電極まで伸びているブリッジ配線、を有する。半導体基板内に、前記ソース電極に接する位置から前記周辺電極に接する位置まで伸びている延出部を備えたp型のボディ層が設けられている。前記ゲート配線を横断する第1方向における前記ソース電極と前記周辺電極の間の間隔L1と、前記第1方向における前記ブリッジ配線の幅L2が、前記ブリッジ配線の範囲内のいずれの位置でもL2<L1の関係を満たす。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置であって、
ゲート型スイッチング素子が設けられている素子領域(20)を有する半導体基板(12)と、
前記素子領域内の前記半導体基板の上面に接するソース電極(30)と、
前記半導体基板の上部に配置されているゲートパッド(49)と、
前記ソース電極から間隔をあけた位置で前記半導体基板の前記上面に接する周辺電極(42)と、
前記ソース電極と前記周辺電極の間の範囲で前記半導体基板の前記上面に接するフィールド絶縁膜(40)と、
前記フィールド絶縁膜の上部に配置されており、前記ソース電極の外周縁に沿って伸びており、前記ゲート型スイッチング素子のゲート電極と前記ゲートパッドとを接続しているゲート配線(44)と、
前記ゲート配線を覆っている層間絶縁膜(46)と、
前記層間絶縁膜の上部を通って前記ソース電極から前記周辺電極まで伸びており、前記層間絶縁膜によって前記ゲート配線から絶縁されているブリッジ配線(50)、
を有し、
前記ゲート型スイッチング素子が、
前記半導体基板の内部に設けられており、前記ソース電極に接する位置から前記周辺電極に接する位置まで伸びている延出部(62e)を備えたp型のボディ層(62)と、
前記ボディ層に対して下側から接するn型のドリフト層(64)、
を有し、
前記半導体基板を上から見たときに前記ゲート配線を横断する方向を第1方向とし、前記第1方向における前記ソース電極と前記周辺電極の間の間隔を間隔L1とし、前記第1方向における前記ブリッジ配線の幅を幅L2としたときに、前記ブリッジ配線の範囲内のいずれの位置でもL2<L1の関係が満たされる、
半導体装置。
【請求項2】
前記ブリッジ配線に、前記半導体基板を上から見たときに前記第1方向に対して交差する方向に沿って伸びるスリットが設けられている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ボディ層が、
コンタクトp層と、
前記コンタクトp層よりもp型不純物濃度が低いとともに前記コンタクトp層に対して下側から接する低濃度p層、
を有し、
前記延出部において、前記コンタクトp層が前記ソース電極に接する位置から前記周辺電極に接する位置まで伸びている、
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体基板が炭化シリコンによって構成されている、請求項1または2に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、半導体装置に関する。
【0002】
特許文献1に開示の半導体装置の半導体基板は、ゲート型スイッチング素子が設けられている素子領域を有する。素子領域内の半導体基板の上面に、ソース電極が設けられている。また、ソース電極から間隔をあけた位置に、周辺電極が設けられている。ソース電極と周辺電極の間の範囲では、半導体基板の上面がフィールド絶縁膜によって覆われている。フィールド絶縁膜の上部に、ゲート配線が配置されている。ゲート配線は、ゲート電極とゲートパッドを接続している配線である。ゲート配線は、層間絶縁膜によって覆われている。ゲート配線は、ソース電極の外周縁に沿って伸びている。また、ソース電極の周辺には、ゲート配線が分断された分断領域が設けられている。分断領域には、ソース電極と周辺電極とを接続するブリッジ配線(言い換えると、短絡電極)が配置されている。ゲート型スイッチング素子は、半導体基板の内部に、p型のボディ層とn型のドリフト層を有している。ボディ層は、ソース電極に接する位置から周辺電極に接する位置まで伸びている延出部を備えている。ドリフト層は、ボディ層に対して下側から接している。
【0003】
素子領域の外側のドリフト層内で、アバランシェ降伏が生じる場合がある。素子領域の外側のドリフト層内でアバランシェ降伏が生じると、アバランシェ電流がドリフト層の上部のボディ層(すなわち、延出部)を介してソース電極へ流れる。アバランシェ電流が流れることによって延出部の電位が上昇すると、延出部とゲート配線の間の電位差が大きくなり、フィールド絶縁膜に高電圧が印加される。高電圧によってフィールド絶縁膜が破損する場合がある。これに対し、特許文献1の半導体装置では、延出部が、ソース電極だけでなく周辺電極にも接している。すなわち、延出部は、フィールド絶縁膜の両側に配置されたソース電極と周辺電極とに接している。周辺電極は、ブリッジ配線を介してソース電極に接続されている。したがって、アバランシェ電流は、延出部を介してソース電極と周辺電極に分散して流れる。このようにアバランシェ電流が分散して流れることで、延出部の電位上昇が抑制され、フィールド絶縁膜の破損が抑制される。このように、特許文献1の半導体装置では、アバランシェ降伏が生じたときにフィールド絶縁膜の破損が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の半導体装置では、分断領域においてゲート配線が分断されている。このため、分断されたゲート配線どうしが導通するようにゲート電極やその他の配線を設ける必要がある。このため、レイアウトに制約が生じ、素子領域の面積が小さくなる場合がある。本明細書では、ゲート配線を分断することなく好適にソース電極と周辺電極とを接続する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する半導体装置は、ゲート型スイッチング素子が設けられている素子領域を有する半導体基板と、前記素子領域内の前記半導体基板の上面に接するソース電極と、前記半導体基板の上部に配置されているゲートパッドと、前記ソース電極から間隔をあけた位置で前記半導体基板の前記上面に接する周辺電極と、前記ソース電極と前記周辺電極の間の範囲で前記半導体基板の前記上面に接するフィールド絶縁膜と、前記フィールド絶縁膜の上部に配置されており、前記ソース電極の外周縁に沿って伸びており、前記ゲート型スイッチング素子のゲート電極と前記ゲートパッドとを接続しているゲート配線と、前記ゲート配線を覆っている層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜の上部を通って前記ソース電極から前記周辺電極まで伸びており、前記層間絶縁膜によって前記ゲート配線から絶縁されているブリッジ配線、を有する。前記ゲート型スイッチング素子が、前記半導体基板の内部に設けられており、前記ソース電極に接する位置から前記周辺電極に接する位置まで伸びている延出部を備えたp型のボディ層と、前記ボディ層に対して下側から接するn型のドリフト層、を有する。前記半導体基板を上から見たときに前記ゲート配線を横断する方向を第1方向とし、前記第1方向における前記ソース電極と前記周辺電極の間の間隔を間隔L1とし、前記第1方向における前記ブリッジ配線の幅を幅L2としたときに、前記ブリッジ配線の範囲内のいずれの位置でもL2<L1の関係が満たされる。
【0007】
この半導体装置では、ブリッジ配線が、ゲート配線を覆っている層間絶縁膜の上部を通ってソース電極から周辺電極まで伸びている。したがって、ゲート配線を分断することなく、ブリッジ配線によってソース電極と周辺電極を接続することができる。また、この構造では、層間絶縁膜がゲート配線を覆っているので、層間絶縁膜がゲート配線の形状に沿って段差部を有している。したがって、ブリッジ配線が層間絶縁膜の段差部を覆っている。半導体装置が発熱したときに、ブリッジ配線によって段差部に高い熱応力が加わる。段差部に加わる熱応力が過大となると、ブリッジ配線下の層間絶縁膜やゲート配線が破損する。ブリッジ配線から段差部に加わる熱応力は、ゲート配線を横断する第1方向におけるブリッジ配線の幅が広いほど大きくなる。上記の半導体装置では、第1方向におけるソース電極と周辺電極の間の間隔を間隔L1とし、第1方向におけるブリッジ配線の幅を幅L2としたときに、ブリッジ配線の範囲内のいずれの位置でもL2<L1の関係が満たされる。このように幅L2が小さく設定されているので、ブリッジ配線から段差部に加わる熱応力が過大となることが防止される。したがって、この半導体装置では、ブリッジ配線下の層間絶縁膜やゲート配線の破損を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
上記の半導体装置においては、前記ブリッジ配線に、前記半導体基板を上から見たときに前記第1方向に対して交差する方向に沿って伸びるスリットが設けられていてもよい。
【0010】
この構成によれば、L2<L1の関係を容易に得ることができる。
【0011】
上記の半導体装置においては、前記ボディ層が、コンタクトp層と、前記コンタクトp層よりもp型不純物濃度が低いとともに前記コンタクトp層に対して下側から接する低濃度p層、を有していてもよい。前記延出部において、前記コンタクトp層が前記ソース電極に接する位置から前記周辺電極に接する位置まで伸びていてもよい。
【0012】
この構成によれば、抵抗が低いコンタクトp層内をアバランシェ電流が流れることができ、延出部の電位上昇をより効果的に抑制できる。
【0013】
上記の半導体装置においては、前記半導体基板が炭化シリコンによって構成されていてもよい。
【0014】
図1に示す実施形態の半導体装置10は、半導体基板12を有している。半導体基板12は、SiC(すなわち、炭化シリコン)により構成されている。但し、半導体基板12は、Si、GaN等の他の半導体によって構成されていてもよい。半導体基板12は、素子領域20と周辺領域22を有している。素子領域20は、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field effect transistor)が設けられている領域である。素子領域20は、半導体基板12の中央部に配置されている。周辺領域22は、素子領域20の周囲の領域である。周辺領域22は、素子領域20と半導体基板12の外周面12cとの間に配置されている。なお、以下では、半導体基板12の上面12aに平行な一方向をx方向といい、上面12aに平行でx方向と直交する方向をy方向という。
【0015】
図1、2に示すように、半導体基板12の上面12aには、ソース電極30が設けられている。ソース電極30は、素子領域20内に配置されている。ソース電極30は、素子領域20内で半導体基板12の上面12aに接している。
【0016】
図2に示すように、半導体基板12の下面12bには、ドレイン電極32が設けられている。ドレイン電極32は、素子領域20と周辺領域22に跨って分布している。ドレイン電極32は、素子領域20と周辺領域22内で半導体基板12の下面12bに接している。
【0017】
図2に示すように、半導体基板12の上面12aには、フィールド絶縁膜40が設けられている。フィールド絶縁膜40は、周辺領域22内で上面12aを覆っている。
【0018】
図1に示すように、半導体基板12の上面12aには、ゲートパッド49とゲート配線44が設けられている。なお、
図1では、ゲートパッド49とゲート配線44を斜線ハッチングにより示している。ゲート配線44は、ソース電極30の外周縁に沿って伸びている。ゲート配線44は、ソース電極30の周囲を一巡する環形状を有しており、ゲートパッド49に接続されている。ゲート配線44は、ソース電極30及び後述する周辺電極42から絶縁されている。図示していないが、ゲートパッド49は絶縁膜上に配置されており、半導体基板12から絶縁されている。
図2に示すように、ゲート配線44は、ゲートパッド49と後述するゲート電極38とを接続する配線である。ゲート配線44は、フィールド絶縁膜40上に配置されている。ゲート配線44は、フィールド絶縁膜40によって半導体基板12から絶縁されている。ゲート配線44は、下層44aと上層44bを有している。下層44aは、ポリシリコンによって構成されている。下層44aは、フィールド絶縁膜40の上面に接している。上層44bは、AlSi(すなわち、アルミニウムとシリコンの合金)により構成されている。上層44bは、下層44aの上面に接している。
【0019】
図2に示すように、半導体基板12の上面12aには、層間絶縁膜46が設けられている。層間絶縁膜46は、周辺領域22内で上面12aとフィールド絶縁膜40の表面を覆っている。また、層間絶縁膜46は、ゲート配線44の下層44aの表面の一部を覆っている。層間絶縁膜46は、その上面に段差部46b-1~46b-4を有する。段差部46b-1、46b-4は、フィールド絶縁膜40の端部上に形成されている段差部である。段差部46b-2、46b-3は、下層44aの形状に沿って生じている段差部である。下層44aの上部の層間絶縁膜46には、コンタクトホール46aが設けられている。上層44bは、コンタクトホール46aを含む範囲内で層間絶縁膜46上に設けられている。上層44bは、コンタクトホール46a内で下層44aの上面に接している。
【0020】
層間絶縁膜46は、周辺領域22から素子領域20に跨って分布している。素子領域20内の層間絶縁膜46は、ソース電極30によって覆われている。素子領域20内の層間絶縁膜46には、複数のコンタクトホールが設けられている。ソース電極30は、各コンタクトホール内で半導体基板12の上面12aに接している。周辺領域22内の層間絶縁膜46には、コンタクトホール46cが設けられている。コンタクトホール46cを含む範囲内の層間絶縁膜46の上部に、周辺電極42が配置されている。周辺電極42は、コンタクトホール46c内で半導体基板12の上面12aに接している。周辺電極42は、ソース電極30から間隔を空けた位置に配置されている。
図1に示すように、周辺電極42は、ソース電極30の周囲を一巡する環形状を有している。図示していないが、コンタクトホール46cは周辺電極42に沿った環形状を有している。したがって、周辺電極42は、ソース電極30の周囲を一巡する範囲で半導体基板12の上面12aに接している。
図2に示すように、周辺電極42とソース電極30の間の範囲では、フィールド絶縁膜40が半導体基板12の上面12aに接している。したがって、ゲート配線44は、周辺電極42とソース電極30の間に配置されている。
【0021】
図2に示すように、周辺領域22内では、半導体基板12の上部に絶縁保護膜48が設けられている。絶縁保護膜48は、ポリイミドによって構成されている。絶縁保護膜48は、ソース電極30の外周部、周辺電極42、層間絶縁膜46、及び、ゲート配線44の上層44bを覆っている。なお、
図1では、絶縁保護膜48の図示を省略している。
【0022】
図1、2に示すように、素子領域20内の半導体基板12の上面12aには、複数のトレンチ34が設けられている。
図1に示すように、各トレンチ34は、上面12aにおいてy方向に長く伸びている。複数のトレンチ34は、上面12aにおいてx方向に間隔を空けて配置されている。
図2に示すように、各トレンチ34の内面は、ゲート絶縁膜36によって覆われている。各トレンチ34内には、ゲート電極38が配置されている。各ゲート電極38は、ゲート絶縁膜36によって半導体基板12から絶縁されている。各ゲート電極38の上面は、層間絶縁膜46によって覆われている。層間絶縁膜46によって、各ゲート電極38はソース電極30から絶縁されている。
図1に示すように、各トレンチ34のy方向における両端部は、ゲート配線44の下部に配置されている。各ゲート電極38は、各トレンチ34のy方向における両端部において、その上部のゲート配線44に接続されている。したがって、各ゲート電極38は、ゲート配線44を介してゲートパッド49に接続されている。
【0023】
図2に示すように、半導体基板12は、複数のソース層60、ボディ層62、ドリフト層64、バッファ層66、ドレイン層68、及び、複数のFLR(field limiting ring)69を有している。
【0024】
複数のソース層60は、n型層であり、素子領域20内に配置されている。各ソース層60は、対応するトレンチ34の側面の上端部においてゲート絶縁膜36に接している。各ソース層60は、ソース電極30にオーミック接触している。
【0025】
ボディ層62は、p型層である。ボディ層62は、素子領域20内に配置された主要部と、素子領域20から周辺領域22まで伸びる延出部62eを有している。ボディ層62は、コンタクトp層62aと低濃度p層62bを有している。コンタクトp層62aは、低濃度p層62bよりも高いp型不純物濃度を有している。低濃度p層62bは、コンタクトp層62aに対して下側から接している。素子領域20内では、コンタクトp層62aは、ソース層60の間に配置されている。素子領域20内のコンタクトp層62aは、ソース電極30にオーミック接触している。素子領域20内では、低濃度p層62bは、コンタクトp層62aとソース層60に対して下側から接している。低濃度p層62bは、ソース層60の下側でゲート絶縁膜36に接している。ソース層60は、低濃度p層62bによってドリフト層64から分離されている。ボディ層62の延出部62eは、ソース電極30に接する位置から周辺電極42に接する位置まで伸びている。延出部62eでは、コンタクトp層62aが半導体基板12の上面12aを含む範囲に分布しており、低濃度p層62bがコンタクトp層62aに対して下側から接している。延出部62eのコンタクトp層62aは、ソース電極30と周辺電極42にオーミック接触している。
【0026】
ドリフト層64は、ソース層60よりもn型不純物濃度が低いn型層である。ドリフト層64は、素子領域20と周辺領域22に跨って分布している。ドリフト層64は、ボディ層62の低濃度p層62bの下側に配置されている。ドリフト層64は、素子領域20と周辺領域22内において、低濃度p層62bに対して下側から接している。素子領域20内では、ドリフト層64は、低濃度p層62bの下側でゲート絶縁膜36に接している。また、ドリフト層64は、周辺電極42よりも外周面12cに近い範囲では、半導体基板12の上面12aまで分布している。
【0027】
バッファ層66は、ドリフト層64よりもn型不純物濃度が高いn型層である。バッファ層66は、素子領域20と周辺領域22に跨って分布している。バッファ層66は、素子領域20と周辺領域22内において、ドリフト層64に対して下側から接している。
【0028】
ドレイン層68は、バッファ層66よりもn型不純物濃度が高いn型層である。ドレイン層68は、素子領域20と周辺領域22に跨って分布している。ドレイン層68は、素子領域20と周辺領域22内において、バッファ層66に対して下側から接している。ドレイン層68は、素子領域20と周辺領域22内において、ドレイン電極32にオーミック接触している。
【0029】
各FLR69は、p型層であり、周辺電極42よりも外周面12cに近い位置に配置されている。各FLR69は、上面12aを含む範囲に分布している。図示していないが、各FLR69は、半導体基板12を上から見たときに素子領域20を囲む環形状を有している。各FLR69の周囲は、ドリフト層64によって囲まれている。
【0030】
図1に示すように、ゲート配線44の上部の一部に、ブリッジ配線50が設けられている。
図3は、ブリッジ配線50の拡大図を示している。なお、
図3では、見易さのため、ブリッジ配線50、ソース電極30及び周辺電極42をドットのハッチングにより示している。また、
図4、5は、
図3のIV-IV線及びV-V線における断面図である。
図4、5に示すように、ブリッジ配線50が設けられている範囲内では、ゲート配線44が下層44aのみによって構成されている。すなわち、この範囲内では、下層44aの上部に上層44bが設けられていない。また、この範囲内では、層間絶縁膜46にコンタクトホール46aが設けられておらず、下層44aの上面全体が層間絶縁膜46に覆われている。
図3~5に示すように、ブリッジ配線50は、層間絶縁膜46の上部(すなわち、ゲート配線44の上部)を通ってソース電極30から周辺電極42まで伸びている。したがって、ブリッジ配線50は、層間絶縁膜46の段差部46b-1~46b-4を覆っている。ブリッジ配線50は、層間絶縁膜46によってゲート配線44から絶縁されている。
【0031】
図3に示すように、ブリッジ配線50には、y方向に伸びる2つのスリット52a、52bが設けられている。スリット52a、52b内には、層間絶縁膜46上にブリッジ配線50が設けられていない。スリット52aはブリッジ配線50の一方の端部から+y方向に向かって伸びている。スリット52aは、ブリッジ配線50とソース電極30の境界に沿って伸びている。スリット52bはブリッジ配線50の他方の端部から-y方向に向かって伸びている。スリット52bは、ブリッジ配線50と周辺電極42の境界に沿って伸びている。スリット52aの先端部とスリット52bの先端部のy方向における位置は一致している。このため、ブリッジ配線50は、ソース電極30に接続されている部分50aと周辺電極42に接続されている部分50bとを有する。部分50aと部分50bは、y方向に沿って繋がっている。
【0032】
図3に示す範囲では、x方向は半導体基板12を上から見たときにゲート配線44を横断する方向であり、y方向は半導体基板12を上から見たときにゲート配線44が伸びる方向である。
図3において、間隔L1は、x方向におけるソース電極30と周辺電極42の間の間隔を示している。
図3において、幅L2aは、x方向における部分50aの幅を示している。また、幅L2bは、x方向における部分50bの幅を示している。また、以下では、y方向の任意の位置におけるゲート配線44のx方向の幅を、幅L2という。部分50aの範囲内ではL2=L2aであり、部分50bの範囲内ではL2=L2bである。
図3から明らかなように、L2a<L1であり、L2b<L1である。すなわち、ブリッジ配線50が存在するy方向の範囲内のいずれの位置においても、L2<L1の関係が満たされる。
【0033】
半導体装置10の使用時には、ドレイン電極32がソース電極30よりも高電位となる向きでドレイン電極32とソース電極30の間に電圧が印加される。また、各ゲート電極38の電位がゲートパッド49を介して制御される。各ゲート電極38の電位がゲート閾値よりも高い電位に制御されると、ゲート絶縁膜36近傍のボディ層62にチャネルが形成され、チャネルによってソース層60がドリフト層64に接続される。このため、ソース電極30から、ソース層60、チャネル、ドリフト層64、バッファ層66及びドレイン層68を介してドレイン電極32へ電子が流れる。すなわち、MOSFETがオンする。各ゲート電極38の電位がゲート閾値よりも低い電位に引き下げられると、チャネルが消失し、MOSFETがオフする。
【0034】
MOSFETがオフすると、ドリフト層64が空乏化し、ドリフト層64内で高電界が生じる。ドリフト層64内で高電界が生じることで、ドリフト層64内でアバランシェ降伏が生じる場合がある。
図2の矢印100、102は、ゲート配線44の下部のドリフト層64内でアバランシェ降伏が生じた場合のアバランシェ電流の経路を示している。ゲート配線44の下部のドリフト層64内でアバランシェ降伏が生じると、矢印100に示すように、アバランシェ電流がボディ層62の延出部62eを通ってソース電極30へ流れる。ソース電極30へ流れるアバランシェ電流が大きいと、ゲート配線44の下部の延出部62eの電位が上昇し、延出部62eとゲート配線44の間に高電圧が印加される。これにより、延出部62eとゲート配線44の間のフィールド絶縁膜40が破損する場合がある。これに対し、本実施形態では、延出部62eが、ゲート配線44を挟んでソース電極30の反対側に位置する周辺電極42に接続されている。周辺電極42はブリッジ配線50を介してソース電極30に接続されているので、周辺電極42はソース電極30と同じ電位を有している。したがって、アバランシェ電流は、矢印102に示すように周辺電極42へも流れる。すなわち、延出部62eにおいて、アバランシェ電流が矢印100、102に示すように分散して流れる。これにより、延出部62eの電位上昇が抑制され、フィールド絶縁膜40の破損が防止される。
【0035】
また、半導体装置10の使用時に、半導体装置10が発熱する。このため、半導体装置10の使用中に半導体装置10が熱膨張と熱収縮を繰り返す。したがって、ブリッジ配線50と層間絶縁膜46との線膨張係数の差により、層間絶縁膜46に熱応力が繰り返し加わる。特に、層間絶縁膜46の段差部46b-1~46b-4にブリッジ配線50によって高い熱応力が加わる。段差部に繰り返し熱応力が加わることで、層間絶縁膜46やゲート配線44が破損する場合がある。
図6は、比較例の半導体装置のブリッジ配線50の断面図を示している。
図6では、ブリッジ配線50にスリットが設けられておらず、ブリッジ配線50がx方向においてソース電極30から周辺電極42まで伸びている。言い換えると、
図6では、ブリッジ配線50の幅L2が、ソース電極30と周辺電極42の間の間隔L1と等しい。このようにブリッジ配線50がx方向においてソース電極30から周辺電極42まで伸びていると、ブリッジ配線50から段差部に極めて高い熱応力が加わる。このため、
図6では、段差部46b-1~46b-4に加わる熱応力によって層間絶縁膜46やゲート配線44が破損し易い。これに対し、本実施形態では、
図3に示すように、スリット52a、52bによってブリッジ配線50のx方向の幅L2が、ブリッジ配線50の範囲内全域で、ソース電極30と周辺電極42の間の間隔L1よりも小さい。言い換えると、ブリッジ配線50の範囲内に、幅L2が間隔L1と等しい箇所が存在しない。このため、ブリッジ配線50から段差部に加わる熱応力が抑制される。したがって、本実施形態では、層間絶縁膜46やゲート配線44の熱応力による破損を抑制できる。
【0036】
また、本実施形態では、ブリッジ配線50がゲート配線44の上部を通ってソース電極30と周辺電極42を接続している。このため、ブリッジ配線50が設けられている箇所でゲート配線44が分断されていない。このため、ゲート配線44を比較的高い自由度でレイアウトすることができ、その結果、素子領域20を広く設けることができる。
【0037】
なお、
図3に示すブリッジ配線50の形状は一例である。ブリッジ配線の範囲全体でL2<L1の関係が満たされれば、ブリッジ配線50の形状として種々の形状を採用することができる。例えば、ブリッジ配線50が
図7、8に示す形状であってもよい。なお、
図7、8では、見易さのため、ブリッジ配線50、ソース電極30及び周辺電極42をドットのハッチングにより示している。
図7、8でも、ブリッジ配線50にスリット52が設けられていることで、ブリッジ配線50の範囲内のいずれの位置でもL2<L1の関係が満たされている。
【0038】
また、上述した実施形態では、素子領域内にトレンチ型のゲート電極を有するゲート型スイッチング素子が設けられていた。しかしながら、素子領域内にプレーナ型のゲート電極を有するゲート型スイッチング素子が設けられていてもよい。また、上述した実施形態では、素子領域内に設けられているスイッチング素子がMOSFETであったが、素子領域内に他のスイッチング素子(例えば、IGBT(insulated gate bipolar transistor)等)が設けられていてもよい。
【0039】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0040】
10:半導体装置、30:ソース電極、38:ゲート電極、40:フィールド絶縁膜、42:周辺電極、44:ゲート配線、46:層間絶縁膜、49:ゲートパッド、50:ブリッジ配線、62:ボディ層、62e:延出部