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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036082
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】リニア振動モータ
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
B06B1/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140802
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 哲也
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107AA09
5D107AA13
5D107BB08
5D107CC09
5D107CC10
5D107DD03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】小型化や長寿命化を実現するリニア振動モータを提供する。
【解決手段】リニア振動モータ1Aは、固定体10と、固定体に対して中心軸方向に往復動する可動体20と、を備える。可動体は、中心軸方向で対向する上側バックヨーク21及び下側バックヨーク22と、上側バックヨークと下側バックヨークとの間に設けられたポールピース23,上側マグネット31,下側マグネット32とを含む。固定体は、磁性材料によって形成され可動体を取り囲むケース11を含む。上側バックヨークの外面21bから下側バックヨークの外面22bまでの中心軸方向に沿う距離をヨーク対向間隔L1とし、ケース11の上端面11aから下端面11bまでの中心軸方向に沿う距離をケース全長L2としたとき、ヨーク対向間隔L1は、ケース全長L2と同一である。また、可動体は、磁気的吸引力によって、固定体の内部で往復動可能に保持される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定体と、前記固定体に対して中心軸方向に往復動する可動体と、を備えるリニア振動モータであって、
前記可動体は、前記中心軸方向で対向する第1外側ヨーク及び第2外側ヨークと、第1外側ヨークと第2外側ヨークとの間に設けられた内側ヨークと、前記内側ヨークと前記第1外側ヨークとの間に設けられた第1磁石と、前記内側ヨークと前記第2外側ヨークとの間に設けられた第2磁石と、を含み、
前記固定体は、磁性材料によって形成され前記可動体を取り囲むケースと、前記ケースと前記可動体との間に設けられたコイル部と、を含み、
前記第1外側ヨークは、前記第1磁石と対向する内面と、当該内面とは反対側の外面と、を備える板状部材であり、
前記第2外側ヨークは、前記第2磁石と対向する内面と、当該内面とは反対側の外面と、を備える板状部材であり、
前記ケースは、前記中心軸方向の一方側に位置する第1端面と、前記中心軸方向の他方側に位置する第2端面と、を備える筒状部材であり、
前記第1外側ヨークの前記外面から前記第2外側ヨークの前記外面までの前記中心軸方向に沿う距離をヨーク対向間隔とし、前記ケースの前記第1端面から前記ケースの前記第2端面までの前記中心軸方向に沿う距離をケース全長としたとき、前記ヨーク対向間隔は、前記ケース全長と同一であるか、前記ケース全長よりも短く、
前記可動体は、磁気的吸引力によって、前記固定体の内部で往復動可能に保持される、
リニア振動モータ。
【請求項2】
前記第1外側ヨークは、前記第1磁石よりも大径であって、前記第1外側ヨークの周縁部は、前記第1磁石の周囲に張り出しており、
前記第2外側ヨークは、前記第2磁石よりも大径であって、前記第2外側ヨークの周縁部は、前記第2磁石の周囲に張り出している、
請求項1に記載のリニア振動モータ。
【請求項3】
前記可動体は、前記第1外側ヨークの前記外面に重ねられた第1ウエイトと、前記第2外側ヨークの前記外面に重ねられた第2ウエイトと、を含む、
請求項1に記載のリニア振動モータ。
【請求項4】
前記ケースは、前記中心軸方向の一端に設けられた第1リブと、前記中心軸方向の他端に設けられた第2リブと、を備え、
前記第1リブは、前記ケースの内側に向かって張り出して、前記第1端面を形成し、
前記第2リブは、前記ケースの内側に向かって張り出して、前記第2端面を形成している、
請求項1に記載のリニア振動モータ。
【請求項5】
前記ケースは、前記中心軸方向に同軸で並ぶ第1ケース部材と第2ケース部材とから構成され、
前記第1ケース部材と前記第2ケース部材との間には、前記内側ヨークを囲む環状の隙間が設けられている、
請求項1に記載のリニア振動モータ。
【請求項6】
前記可動体は、前記第1外側ヨーク,前記第2外側ヨーク,前記内側ヨーク,前記第1磁石及び前記第2磁石を貫くシャフトを含む、
請求項1に記載のリニア振動モータ。
【請求項7】
前記コイル部は、非磁性材料によって形成されたボビンと、前記ボビンに巻かれたコイルと、を含み、
前記可動体は、前記ボビンの内側に配置されている、
請求項1に記載のリニア振動モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニア振動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々な機器に振動モータや振動アクチュエータ等の振動発生装置が搭載されている。例えば、スマートフォン等の通信機器には、電話の着信やメールの受信を知らせるための振動を発生させる振動発生装置が搭載されている。また、スタイラスペン(タッチペン)等の入力機器やスマートゴーグル等のVR機器にも振動発生装置が搭載されている。
【0003】
特許文献1には、上記のような振動発生装置の一例である振動アクチュエータが記載されている。特許文献1に記載されている振動アクチュエータは、固定体と、固定体内に振動可能に収容された可動体と、を備えている。可動体は、固定体の上下に設けられた上側板ばね及び下側板ばねによって、振動方向に移動可能に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-108891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
板ばね等の弾性部材によって可動体が支持される振動発生装置では、固定体と可動体との間に弾性部材を配置するための空間を確保する必要があり、装置が大型化する虞がある。また、可動体の過剰な移動や長期間に亘る移動の繰り返しによって弾性部材が疲労し、塑性変形したり、破断したりする虞がある。
【0006】
本発明の目的は、リニア振動モータの小型化や長寿命化を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るリニア振動モータは、固定体と、前記固定体に対して中心軸方向に往復動する可動体と、を備える。前記可動体は、前記中心軸方向で対向する第1外側ヨーク及び第2外側ヨークと、第1外側ヨークと第2外側ヨークとの間に設けられた内側ヨークと、前記内側ヨークと前記第1外側ヨークとの間に設けられた第1磁石と、前記内側ヨークと前記第2外側ヨークとの間に設けられた第2磁石と、を含む。前記固定体は、磁性材料によって形成され前記可動体を取り囲むケースと、前記ケースと前記可動体との間に設けられたコイル部と、を含む。前記第1外側ヨークは、前記第1磁石と対向する内面と、当該内面とは反対側の外面と、を備える板状部材であり、前記第2外側ヨークは、前記第2磁石と対向する内面と、当該内面とは反対側の外面と、を備える板状部材である。前記ケースは、前記中心軸方向の一方側に位置する第1端面と、前記中心軸方向の他方側に位置する第2端面と、を備える筒状部材である。そして、前記第1外側ヨークの前記外面から前記第2外側ヨークの前記外面までの前記中心軸方向に沿う距離をヨーク対向間隔とし、前記ケースの前記第1端面から前記ケースの前記第2端面までの前記中心軸方向に沿う距離をケース全長としたとき、前記ヨーク対向間隔は、前記ケース全長と同一であるか、前記ケース全長よりも短い。また、前記可動体は、磁気的吸引力によって、前記固定体の内部で往復動可能に保持される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リニア振動モータの小型化や長寿命化が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係るリニア振動モータの外観斜視図である。
図2図2は、図1に示されるリニア振動モータの縦断面図である。
図3図3は、図2に示されるコイルに順方向で通電したときの可動体の動きを示す断面図である。
図4図4は、図2に示されるコイルに逆方向で通電したときの可動体の動きを示す断面図である。
図5図5は、第1実施形態に係るリニア振動モータの一変形例を示す断面図である。
図6図6は、第1実施形態に係るリニア振動モータの他の一変形例を示す断面図である。
図7図7は、第2実施形態に係るリニア振動モータの縦断面図である。
図8図8は、第3実施形態に係るリニア振動モータの縦断面図である。
図9図9は、第4実施形態に係るリニア振動モータの縦断面図である。
図10図10は、図9に示されるコイルに通電したときの可動体の動きを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態を説明するために参照する全ての図面において、同一又は実質的に同一の構成や要素には同一の符号を用いる。また、一度説明した構成や要素については、原則として繰り返しの説明は行わない。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係るリニア振動モータ1Aの外観斜視図である。図2は、リニア振動モータ1Aの断面図である。なお、図2に示されている断面は、図1に示されている中心軸Cに沿うリニア振動モータ1Aの縦断面である。
【0012】
<リニア振動モータの概要>
本実施形態に係るリニア振動モータ1Aの用途は特に限定されない。リニア振動モータ1Aは、例えば、通信機器,入力機器,VR機器に搭載される。これらの機器に搭載されたリニア振動モータ1Aは、例えば、使用感や臨場感等を与えるための振動を発生させる振動発生装置として機能する。
【0013】
図1図2に示されるように、リニア振動モータ1Aは、固定体10及び可動体20を備えている。可動体20は、固定体10の内側で中心軸Cの方向に往復動する。固定体10の内部で可動体20が往復動することにより、固定体10及び可動体20を含むリニア振動モータ1Aの全体が振動する。以下の説明では、中心軸Cの方向を“中心軸方向”,“上下方向”又は“振動方向”と呼ぶ場合がある。もっとも、かかる呼称は説明の便宜上の呼称であり、中心軸Cの方向を上下方向や鉛直方向に限定するものではない。例えば、リニア振動モータ1Aが何らかの機器に搭載されたときに、中心軸Cが水平になることもある。
【0014】
<可動体>
図2に示されるように、可動体20は、第1外側ヨーク21,第2外側ヨーク22,内側ヨーク23,第1磁石31,第2磁石32及びシャフト40を備えている。第1外側ヨーク21,第1磁石31,内側ヨーク23,第2磁石32及び第2外側ヨーク22は、この順で中心軸方向(上下方向)に一列に並んでおり、シャフト40はこれらの中心を貫いている。
【0015】
別の見方をすると、第1外側ヨーク21と第2外側ヨーク22とは、中心軸方向(上下方向)で対向している。内側ヨーク23は、対向する第1外側ヨーク21と第2外側ヨーク22との間に設けられている。この結果、第1磁石31は、内側ヨーク23と第1外側ヨーク21との間に設けられ、第2磁石32は、内側ヨーク23と第2外側ヨーク22との間に設けられている。これらヨークや磁石は、シャフト40によって貫かれ、かつ、一体化している。
【0016】
一体化された第1外側ヨーク21,第2外側ヨーク22,内側ヨーク23,第1磁石31及び第2磁石32は、上下方向においてシャフト40の中央に位置している。別の見方をすると、第1外側ヨーク21,第2外側ヨーク22,内側ヨーク23,第1磁石31及び第2磁石32の集合体の中心は、シャフト40の中心と一致している。
【0017】
以下の説明では、第1外側ヨーク21を“上側バックヨーク21”と呼び、第2外側ヨーク22を“下側バックヨーク22”と呼び、内側ヨーク23を“ポールピース23”と呼ぶ場合がある。また、第1磁石31を“上側マグネット31”と呼び、第2磁石32を“下側マグネット32”と呼ぶ場合がある。
【0018】
<バックヨーク、ポールピース>
上側バックヨーク21,下側バックヨーク22及びポールピース23は、磁性材料によって形成された板状部材である。より特定的には、上側バックヨーク21,下側バックヨーク22及びポールピース23は、磁性材料によって形成された円環状の板状部材である。
【0019】
上側バックヨーク21は、上側マグネット31と対向する内面21aと、内面21aとは反対側の外面21bと、を備えている。同様に、下側バックヨーク22は、下側マグネット32と対向する内面22aと、内面22aとは反対側の外面22bと、を備えている。
【0020】
<上側マグネット、下側マグネット>
上側マグネット31及び下側マグネット32は、リング型の永久磁石であって、上下方向に磁化されている。上側マグネット31と下側マグネット32とは、互いの同極同士が対向する向きで並んでいる。より特定的には、上側マグネット31と下側マグネット32とは、互いのS極同士が対向する向きで並んでいる。
【0021】
つまり、上側マグネット31のN極は、上側バックヨーク21と対向しており、上側マグネット31のS極は、ポールピース23と対向している。また、下側マグネット32のN極は、下側バックヨーク22と対向しており、下側マグネット32のS極は、ポールピース23と対向している。
【0022】
<固定体>
図2に示されるように、固定体10は、ケース11,コイル部12,上カバー13及び下カバー14を備えており、可動体20を収容している。
【0023】
<ケース>
ケース11は、磁性材料によって形成された筒状部材であって、可動体20を取り囲んでいる。より特定的には、ケース11は、磁性材料によって形成された円筒状部材である。
【0024】
ケース11は、中心軸方向の一方側(上側)に位置する第1端面11aと、中心軸方向の他方側(下側)に位置する第2端面11bと、を備えている。以下の説明では、第1端面11aを“上端面11a”と呼び、第2端面11bを“下端面11b”と呼ぶ場合がある。
【0025】
なお、上記形状を有するケース11は、例えば、帯状の鉄板やケイ素鋼板などを丸めて端部同士を連結することによって形成することができる。
【0026】
<コイル部>
コイル部12は、ボビン15及びコイル16を備えており、ケース11と可動体20との間に設けられている。つまり、ケース11は、コイル部12を介して可動体20を取り囲んでいる。別の見方をすると、可動体20,コイル部12及びケース11は、この順で径方向内側から径方向外側に向かって配置されている。
【0027】
ボビン15は、非磁性材料によって円筒状に形成されており、可動体20は、ボビン15の内側に配置されている。別の見方をすると、ボビン15は、可動体20を挿通可能な内径を有する円筒体である。なお、ボビン15の内周面と可動体20の外周面との間には、エアギャップが存在している。
【0028】
ボビン15は、環状のコイル保持部15aを備えている。コイル保持部15aは、ボビン15の全周に亘って形成された溝であり、コイル16は、コイル保持部15aに巻かれている。
【0029】
<上カバー、下カバー>
上カバー13及び下カバー14は、非磁性材料によって形成されている。上カバー13及び下カバー14は、例えば、ボビン15と同一の材料によって形成される。上カバー13は、ケース11の上端に装着されており、下カバー14は、ケース11の下端に装着されている。
【0030】
ケース11の上端に装着された上カバー13は、ケース11の一方の開口部を閉塞するとともに、可動体20及びコイル部12の上側を覆っている。ケース11の下端に装着された下カバー14は、ケース11の他方の開口部を閉塞するとともに、可動体20及びコイル部12の下側を覆っている。
【0031】
<ヨーク対向間隔、ケース全長>
図2に示されている矢印L1は、ヨーク対向間隔を示している。また、図2に示されている矢印L2は、ケース全長を示している。図2より、ヨーク対向間隔L1は、上側バックヨーク21の外面21bから下側バックヨーク22の外面22bまでの中心軸方向に沿う距離であることが理解できる。また、ケース全長L2は、ケース11の上端面11aからケース11の下端面11bまでの中心軸方向に沿う距離であることが理解できる。
【0032】
ヨーク対向間隔L1は、ケース全長L2と同一である(L1=L2)。この結果、上側バックヨーク21の外周面21cは、ケース11の内周面上端部11cと対向している。また、下側バックヨーク22の外周面22cは、ケース11の内周面下端部11dと対向している。
【0033】
<磁気的吸引力>
上側バックヨーク21,下側バックヨーク22とケース11との上記のような位置関係により、可動体20を往復動可能に保持する磁気的吸引力が得られる。より特定的には、上側マグネット31,上側バックヨーク21,ケース11及びポールピース23を含む磁気回路を通る磁束によって磁気的吸引力F1が得られる。また、下側マグネット32,下側バックヨーク22,ケース11及びポールピース23を含む磁気回路を通る磁束によって磁気的吸引力F2が得られる。
【0034】
可動体20は、磁気的吸引力F1,F2により、固定体10の内部で往復動可能(上下動可能)に保持される。別の見方をすると、コイル16に通電されていないとき、可動体20は、その中心が固定体10の中心と一致する位置で浮遊する。以下の説明では、コイル16に通電されていないときの可動体20の位置を“ニュートラルポジション”と呼ぶ場合がある。
【0035】
<可動体の動き>
上記のとおり、可動体20は、板ばね等の弾性部材の弾性力ではなく、磁力(磁気的吸引力)によって、図2に示されている位置(ニュートラルポジション)に保持される。別の見方をすると、可動体20は、磁気ばねによって固定体10の内部で往復動可能に保持される。したがって、固定体10の内部に板ばね等の弾性部材を配置するための空間を確保する必要はない。また、板ばね等の弾性部材が変形したり、破断したりする虞もない。
【0036】
図3は、図2に示されているコイル16に第1方向(順方向)で通電したときの可動体20の動きを示す断面図である。図4は、図2に示されているコイル16に第1方向とは逆の第2方向(逆方向)で通電したときの可動体20の動きを示す断面図である。
【0037】
図2に示されているコイル16に順方向で通電すると、可動体20は、上向きの推力(ローレンツ力)を受ける。この結果、図2に示されている可動体20は、同図に示されている位置(ニュートラルポジション)から図3に示されている位置(アッパーポジション)に移動する。つまり、可動体20が上昇する。
【0038】
図2に示されているコイル16に逆方向で通電すると、可動体20は、下向きの推力(ローレンツ力)を受ける。この結果、図2に示されている可動体20は、同図に示されている位置(ニュートラルポジション)から図4に示されている位置(ロアポジション)に移動する。つまり、可動体20が降下する。
【0039】
したがって、コイル16への通電方向を一定周期で反転させると、固定体10の内部で可動体20が上下方向に往復動し、振動が発生する。
【0040】
ここで、磁気的吸引力F1,F2は、アッパーポジション(図3)に移動した可動体20に対して、当該可動体20をニュートラルポジション(図2)に戻すように作用する。また、磁気的吸引力F1,F2は、ロアポジション(図4)に移動した可動体20に対して、当該可動体20をニュートラルポジション(図2)に戻すように作用する。
【0041】
したがって、図3に示されているコイル16への通電方向が順方向から逆方向に切り替えられると、可動体20に、下向きのローレンツ力に加えて、下向きの磁気的吸引力F1,F2が作用する。つまり、可動体20により大きな下向きの推力が作用する。一方、図4に示されているコイル16への通電方向が逆方向から順方向に切り替えられると、可動体20に、上向きのローレンツ力に加えて、上向きの磁気的吸引力F1,F2が作用する。つまり、可動体20により大きな上向きの推力が作用する。この結果、リニア振動モータ1Aの振動特性(例えば、振動強度や応答性)が向上する。
【0042】
(変形例1)
図5は、第1実施形態に係るリニア振動モータ1Aの一変形例を示す断面図である。図5に示されている上側バックヨーク21は、上側マグネット31よりも大径である。この結果、上側バックヨーク21の周縁部は、上側マグネット31の縁を越えて上側マグネット31の周囲に張り出している。同様に、図5に示されている下側バックヨーク22は、下側マグネット32よりも大径である。この結果、下側バックヨーク22の周縁部は、下側マグネット32の縁を越えて下側マグネット32の周囲に張り出している。
【0043】
別の見方をすると、図5に示されている上側バックヨーク21の外周面21cは、図2に示されている上側バックヨーク21の外周面21cに比べて、ケース11の内周面上端部11cに近接している。同様に、図5に示されている下側バックヨーク22の外周面22cは、図2に示されている下側バックヨーク22の外周面22cに比べて、ケース11の内周面下端部11dに近接している。
【0044】
つまり、図5に示されているリニア振動モータ1Aでは、図2に示されているリニア振動モータ1Aに比べて、バックヨーク21,22とケース11との間のギャップが縮小されている。したがって、可動体20により大きな(より強い)磁気的吸引力が作用する。
【0045】
(変形例2)
図6は、第1実施形態に係るリニア振動モータ1Aの他の一変形例を示す断面図である。図6に示されている上側バックヨーク21には第1ウエイト51が取り付けられており、下側バックヨーク22には第2ウエイト52が取り付けられている。
【0046】
第1ウエイト51は、上側バックヨーク21と同一又は略同一の形状を備えており、上側バックヨーク21の外面21bに重ねられている。第2ウエイト52は、下側バックヨーク22と同一又は略同一の形状を備えており、下側バックヨーク22の外面22bに重ねられている。
【0047】
シャフト40の上端は、第1ウエイト51に挿入されており、シャフト40の下端は、第2ウエイト52に挿入されている。つまり、シャフト40は、上側バックヨーク21,上側マグネット31,ポールピース23,下側マグネット32及び下側バックヨーク22に加えて、第1ウエイト51及び第2ウエイト52をも貫いている。
【0048】
図6に示されているリニア振動モータ1Aでは、図2に示されているリニア振動モータ1Aに比べて、可動体20の重量が増加している。したがって、より大きな振動や、より強い振動が得られる。
【0049】
なお、第1ウエイト51は、図5に示されている上側バックヨーク21に取り付けることもできる。また、第2ウエイト52は、図5に示されている下側バックヨーク22に取り付けることもできる。
【0050】
第1ウエイト51及び第2ウエイト52の重量は、必要に応じて増減させることができる。第1ウエイト51及び第2ウエイト52の重量は、これらの外径を変更したり、厚みを変更したり、素材を変更したりすることによって増減させることができる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明の他の一実施形態について説明する。図7は、本実施形態に係るリニア振動モータ1Bの断面図である。より特定的には、図7は、本実施形態に係るリニア振動モータ1Bの中心軸Cに沿う縦断面図である。
【0052】
本実施形態に係るリニア振動モータ1Bは、第1実施形態に係るリニア振動モータ1A(図2)と同一の基本構造を備えている。そこで、リニア振動モータ1Aと同一又は実質的に同一の構造については説明を省略し、リニア振動モータ1Aと異なる構造についてのみ説明する。
【0053】
図7に示されるように、リニア振動モータ1Bのケース11は、第1リブ61及び第2リブ62を備えている。第1リブ61は、ケース11の中心軸方向の一端に設けられており、第2リブ62は、ケース11の中心軸方向の他端に設けられている。
【0054】
第1リブ61は、ケース11の径方向内側に向かって張り出しており、上カバー13とボビン15とに挟まれている。同様に、第2リブ62は、ケース11の径方向内側に向かって張り出しており、下カバー14とボビン15とに挟まれている。
【0055】
別の見方をすると、第1リブ61及び第2リブ62は、可動体20に向かって張り出している。より特定的には、第1リブ61は、上側バックヨーク21に向かって張り出しており、第2リブ62は、下側バックヨーク22に向かって張り出している。
【0056】
リニア振動モータ1Bでは、上側バックヨーク21に向かって張り出している第1リブ61の外面によってケース11の上端面11aが形成されている。また、下側バックヨーク22に向かって張り出している第2リブ62の外面によってケース11の下端面11bが形成されている。同時に、第1リブ61の内周面によって、上側バックヨーク21の外周面21cと対向するケース11の内周面上端部11cが形成されている。また、第2リブ62の内周面によって、下側バックヨーク22の外周面22cと対向するケース11の内周面下端部11dが形成されている。
【0057】
つまり、リニア振動モータ1Bでは、図5に示されているリニア振動モータ1Aと同様に、バックヨーク21,22とケース11との間のギャップが縮小されている。この結果、可動体20により大きな(より強い)磁気的吸引力が作用する。
【0058】
なお、第1リブ61及び第2リブ62は、プレス加工によって形成されている。より特定的には、第1リブ61及び第2リブ62は、径方向内側に向けて折り曲げられたケース11の一部である。
【0059】
もっとも、別部品によって第1リブ61及び第2リブ62が形成される実施形態もある。例えば、他の一実施形態では、ケース11の両端に溶接されたり、接着されたりした円環状の板部材によって第1リブ61や第2リブ62が形成される。
【0060】
(第3実施形態)
次に、本発明の他の一実施形態について説明する。図8は、本実施形態に係るリニア振動モータ1Cの断面図である。より特定的には、図8は、本実施形態に係るリニア振動モータ1Cの中心軸Cに沿う縦断面図である。
【0061】
本実施形態に係るリニア振動モータ1Cは、第2実施形態に係るリニア振動モータ1B(図7)と同一の基本構造を備えている。そこで、リニア振動モータ1Bと同一又は実質的に同一の構造については説明を省略し、リニア振動モータ1Bと異なる構造についてのみ説明する。
【0062】
図8に示されるように、リニア振動モータ1Cのケース11は、第1ケース部材71と第2ケース部材72とから構成されている。第1ケース部材71及び第2ケース部材72は、磁性材料によって形成された円筒状部材であって、中心軸方向(上下方向)に同軸で並んでいる。
【0063】
さらに、第1ケース部材71と第2ケース部材72との間には、可動体20を取り囲む環状の隙間73が設けられている。別の見方をすると、第1ケース部材71と第2ケース部材72とは、隙間73を介して上下に並んでいる。つまり、ケース11の上下方向の中央に、環状のスリットが設けられている。
【0064】
可動体20がニュートラルポジションにあるとき、ポールピース23が設けられている可動体20の上下方向中央は、ケース11の上下方向中央と同じ高さに位置する。一方、隙間73の幅(上下方向の寸法)は、可動体20の移動ストロークと同等か、それよりも狭い。つまり、隙間73は、ポールピース23を常に取り囲んでおり、ポールピース23は、隙間73と常に対向している。
【0065】
ここで、ポールピース23とケース11とが対向している場合、両者の間に、可動体20の移動方向と垂直な方向に作用する磁気的吸引力F3が発生する。すると、可動体20の往復動(上下動)が磁気的吸引力F3によって阻害される虞がある。
【0066】
これに対し、ポールピース23を取り囲む隙間73がケース11に設けられている本実施形態のリニア振動モータ1Cでは、磁気的吸引力F3が低減されるので、振動特性が向上する。さらに、ポールピース23と第1ケース部材71との間や、ポールピース23と第2ケース部材72との間に、可動体20の移動方向と平行な成分を含む磁気的吸引力が発生し、可動体20の往復動(上下動)が安定することが見込まれる。なお、かかる効果は、隙間73がケース11の全周に亘って設けられていなくとも得られる。もっとも、隙間73がケース11の全周に亘って設けられている本実施形態では、上記効果がより顕著になる。
【0067】
(第4実施形態)
次に、本発明の他の一実施形態について説明する。図9は、本実施形態に係るリニア振動モータ1Dの断面図である。より特定的には、図9は、本実施形態に係るリニア振動モータ1Dの中心軸Cに沿う縦断面図である。
【0068】
本実施形態に係るリニア振動モータ1Dは、第2実施形態に係るリニア振動モータ1B(図7)と同一の基本構造を備えている。そこで、リニア振動モータ1Bと同一又は実質的に同一の構造については説明を省略し、リニア振動モータ1Bと異なる構造についてのみ説明する。
【0069】
図9に示されるように、リニア振動モータ1Dでは、ヨーク対向間隔L1がケース全長L2よりも短い。別の見方をすると、可動体20がニュートラルポジションにあるとき、上側バックヨーク21の外周面21cはケース11の内周面上端部11cと対向せず、下側バックヨーク22の外周面22cはケース11の内周面下端部11dと対向しない。
【0070】
図10に示されるように、コイル16への通電によって可動体20が上昇すると、上側バックヨーク21の外周面21cは、ケース11の内周面上端部11cに近接する一方、下側バックヨーク22の外周面22cは、ケース11の内周面下端部11dからさらに離間する。図示は省略するが、コイル16への通電によって可動体20が降下すると、下側バックヨーク22の外周面22cは、ケース11の内周面下端部11dに近接する一方、上側バックヨーク21の外周面21cは、ケース11の内周面上端部11cからさらに離間する。
【0071】
別の見方をすると、可動体20が上昇すると、上側バックヨーク21に作用する磁気的吸引力F1は強まる一方、下側バックヨーク22に作用する磁気的吸引力F2は弱まる。これに対し、可動体20が降下すると、下側バックヨーク22に作用する磁気的吸引力F2は強まる一方、上側バックヨーク21に作用する磁気的吸引力F1は弱まる。
【0072】
つまり、一定の移動ストロークの範囲内では、上側バックヨーク21に作用する磁気的吸引力F1の増減と、下側バックヨーク22に作用する磁気的吸引力F2の増減とが相殺される。この結果、可動体20を保持する磁気ばねのばね定数の変化が小さくなり、振動特定が安定する。
【0073】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。また、各実施形態に係るリニア振動モータの構造は、適宜に組み合わせることができる。例えば、リニア振動モータ1Cのケース11に設けられている隙間73(図8)を他のリニア振動モータ1A,1B,1Dのケース11に設けてもよい。リニア振動モータ1Aに設けられている第1ウエイト51や第2ウエイト52(図6)を他のリニア振動モータ1B,1C,1Dに設けてもよい。リニア振動モータ1B,1C,1Dが備える上側バックヨーク21及び下側バックヨーク22をリニア振動モータ1Aが備える上側バックヨーク21及び下側バックヨーク22(図5)に置換してもよい。
【0074】
シャフト40は省略することができる。上側マグネット31及び下側マグネット32は、互いのN極同士が対向する向きで配置してもよい。
【0075】
本技術は以下のような構成をとることが可能である。
【0076】
(1)
固定体と、前記固定体に対して中心軸方向に往復動する可動体と、を備えるリニア振動モータであって、
前記可動体は、前記中心軸方向で対向する第1外側ヨーク及び第2外側ヨークと、第1外側ヨークと第2外側ヨークとの間に設けられた内側ヨークと、前記内側ヨークと前記第1外側ヨークとの間に設けられた第1磁石と、前記内側ヨークと前記第2外側ヨークとの間に設けられた第2磁石と、を含み、
前記固定体は、磁性材料によって形成され前記可動体を取り囲むケースと、前記ケースと前記可動体との間に設けられたコイル部と、を含み、
前記第1外側ヨークは、前記第1磁石と対向する内面と、当該内面とは反対側の外面と、を備える板状部材であり、
前記第2外側ヨークは、前記第2磁石と対向する内面と、当該内面とは反対側の外面と、を備える板状部材であり、
前記ケースは、前記中心軸方向の一方側に位置する第1端面と、前記中心軸方向の他方側に位置する第2端面と、を備える筒状部材であり、
前記第1外側ヨークの前記外面から前記第2外側ヨークの前記外面までの前記中心軸方向に沿う距離をヨーク対向間隔とし、前記ケースの前記第1端面から前記ケースの前記第2端面までの前記中心軸方向に沿う距離をケース全長としたとき、前記ヨーク対向間隔は、前記ケース全長と同一であるか、前記ケース全長よりも短く、
前記可動体は、磁気的吸引力によって、前記固定体の内部で往復動可能に保持される、リニア振動モータ。
【0077】
(2)
前記第1外側ヨークは、前記第1磁石よりも大径であって、前記第1外側ヨークの周縁部は、前記第1磁石の周囲に張り出しており、
前記第2外側ヨークは、前記第2磁石よりも大径であって、前記第2外側ヨークの周縁部は、前記第2磁石の周囲に張り出している、(1)に記載のリニア振動モータ。
【0078】
(3)
前記可動体は、前記第1外側ヨークの前記外面に重ねられた第1ウエイトと、前記第2外側ヨークの前記外面に重ねられた第2ウエイトと、を含む、(1)又は(2)に記載のリニア振動モータ。
【0079】
(4)
前記ケースは、前記中心軸方向の一端に設けられた第1リブと、前記中心軸方向の他端に設けられた第2リブと、を備え、
前記第1リブは、前記ケースの内側に向かって張り出して、前記第1端面を形成し、
前記第2リブは、前記ケースの内側に向かって張り出して、前記第2端面を形成している、(1)~(3)のいずれかに記載のリニア振動モータ。
【0080】
(5)
前記ケースは、前記中心軸方向に同軸で並ぶ第1ケース部材と第2ケース部材とから構成され、
前記第1ケース部材と前記第2ケース部材との間には、前記内側ヨークを囲む環状の隙間が設けられている、(1)~(4)のいずれかに記載のリニア振動モータ。
【0081】
(6)
前記可動体は、前記第1外側ヨーク,前記第2外側ヨーク,前記内側ヨーク,前記第1磁石及び前記第2磁石を貫くシャフトを含む、(1)~(5)のいずれかに記載のリニア振動モータ。
【0082】
(7)
前記コイル部は、非磁性材料によって形成されたボビンと、前記ボビンに巻かれたコイルと、を含み、
前記可動体は、前記ボビンの内側に配置されている、(1)~(6)のいずれかに記載のリニア振動モータ。
【符号の説明】
【0083】
1A,1B,1C,1D…リニア振動モータ、10…固定体、11…ケース、11a…第1端面(上端面)、11b…第2端面(下端面)、11c…内周面上端部、11d…内周面下端部、12…コイル部、13…上カバー、14…下カバー、15…ボビン、15a…コイル保持部、16…コイル、20…可動体、21…第1外側ヨーク(上側バックヨーク)、21a…内面、21b…外面、21c…外周面、22…第2外側ヨーク(下側バックヨーク)、22a…内面、22b…外面、22c…外周面、23…内側ヨーク(ポールピース)、31…第1磁石(上側マグネット)、32…第2磁石(下側マグネット)、40…シャフト、51…第1ウエイト、52…第2ウエイト、61…第1リブ、62…第2リブ、71…第1ケース部材、72…第2ケース部材、73…隙間、C…中心軸、F1,F2,F3…磁気的吸引力、L1…ヨーク対向間隔、L2…ケース全長
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10