(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036097
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】アンテナ装置、給電装置、及び給電方法
(51)【国際特許分類】
H01Q 3/36 20060101AFI20240308BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20240308BHJP
H02J 50/20 20160101ALI20240308BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20240308BHJP
【FI】
H01Q3/36
H01Q21/06
H02J50/20
H02J50/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140824
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 正明
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA09
5J021AB06
5J021DB03
5J021FA06
5J021FA13
5J021GA02
5J021HA00
(57)【要約】
【課題】受電電力が大きくなるように、受電アンテナの位置に応じてアレイアンテナの複数のアンテナ素子における送電信号の位相調節量を容易に計算可能なアンテナ装置、給電装置、及び給電方法を提供する。
【解決手段】アンテナ装置は、第1軸及び第2軸に沿って二次元的に配置される複数のアンテナ素子を有し、受電アンテナに向けて送電信号を送電するアレイアンテナと、前記複数のアンテナ素子に供給される送電信号の位相を前記第1軸方向及び前記第2軸方向において調節する位相調節部と、前記位相調節部が前記送電信号の位相を前記第1軸方向及び前記第2軸方向において調節する位相調節量を前記受電アンテナの受電電力に基づいて制御する制御部であって、前記受電アンテナの受電電力が大きくなるように、前記第1軸方向及び前記第2軸方向の各々における3つの前記アンテナ素子の前記位相調節量を設定して、二次関数の放物線補間で前記二次元的に配置される前記複数のアンテナ素子の前記位相調節量を設定する制御部とを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸及び第2軸に沿って二次元的に配置される複数のアンテナ素子を有し、受電アンテナに向けて送電信号を送電するアレイアンテナと、
前記複数のアンテナ素子に供給される送電信号の位相を前記第1軸方向及び前記第2軸方向において調節する位相調節部と、
前記位相調節部が前記送電信号の位相を前記第1軸方向及び前記第2軸方向において調節する位相調節量を前記受電アンテナの受電電力に基づいて制御する制御部であって、前記受電アンテナの受電電力が高くなるように、前記第1軸方向及び前記第2軸方向の各々における3つの前記アンテナ素子の前記位相調節量を設定して、二次関数の放物線補間で前記二次元的に配置される前記複数のアンテナ素子の前記位相調節量を設定する制御部と
を含む、アンテナ装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1軸方向における前記3つのアンテナ素子のうちの中央の前記アンテナ素子の前記位相調節量を第1基準位相に設定するとともに、前記第1軸方向における前記3つのアンテナ素子のうちの両端の2つの前記アンテナ素子の前記位相調節量を、第1位相間隔を有する複数の位相のいずれかに設定した状態で、前記二次関数の放物線補間で前記二次元的に配置される前記複数のアンテナ素子の前記位相調節量を設定して、前記第1位相間隔を有する複数の位相のうちで前記受電アンテナの受電電力が最大になる第1の組み合わせの位相を求め、
前記第2軸方向における前記3つのアンテナ素子のうちの中央の前記アンテナ素子の前記位相調節量を第2基準位相に設定するとともに、前記第2軸方向における前記3つのアンテナ素子のうちの両端の2つの前記アンテナ素子の前記位相調節量を、第2位相間隔を有する複数の位相のいずれかに設定した状態で、前記二次関数の放物線補間で前記二次元的に配置される前記複数のアンテナ素子の前記位相調節量を設定して、前記第2位相間隔を有する複数の位相のうちで前記受電アンテナの受電電力が最大になる第2の組み合わせの位相を求め、
前記第1軸方向における前記3つのアンテナ素子のうちの中央の前記アンテナ素子の前記位相調節量を前記第1基準位相に設定するとともに、前記第1軸方向における前記3つのアンテナ素子のうちの両端の2つの前記アンテナ素子の前記位相調節量を、前記第1の組み合わせの位相に対して前記第1位相間隔よりも小さい第3位相間隔を有する複数の位相のいずれかに設定した状態で、前記二次関数の放物線補間で前記二次元的に配置される前記複数のアンテナ素子の前記位相調節量を設定して、前記第3位相間隔を有する複数の位相のうちで前記受電アンテナの受電電力が最大になる第3の組み合わせの位相を求め、
前記第2軸方向における前記3つのアンテナ素子のうちの中央の前記アンテナ素子の前記位相調節量を前記第2基準位相に設定するとともに、前記第2軸方向における前記3つのアンテナ素子のうちの両端の2つの前記アンテナ素子の前記位相調節量を、前記第2の組み合わせの位相に対して前記第2位相間隔よりも小さい第4位相間隔を有する複数の位相のいずれかに設定した状態で、前記二次関数の放物線補間で前記二次元的に配置される前記複数のアンテナ素子の前記位相調節量を設定して、前記第4位相間隔を有する複数の位相のうちで前記受電アンテナの受電電力が最大になる第4の組み合わせの位相を求める、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第2軸方向における前記3つのアンテナ素子のうちの中央の前記アンテナ素子の前記位相調節量を第2基準位相に設定するとともに、前記第1軸方向における前記3つのアンテナ素子のうちの両端の2つの前記アンテナ素子の前記位相調節量を前記第1の組み合わせの位相に設定した状態で、前記第2の組み合わせの位相を求め、
前記第1軸方向における前記3つのアンテナ素子のうちの中央の前記アンテナ素子の前記位相調節量を前記第1基準位相に設定するとともに、前記第2軸方向における前記3つのアンテナ素子のうちの両端の2つの前記アンテナ素子の前記位相調節量を前記第2の組み合わせの位相に設定した状態で、前記第3の組み合わせの位相を求め、
前記第2軸方向における前記3つのアンテナ素子のうちの中央の前記アンテナ素子の前記位相調節量を前記第2基準位相に設定するとともに、前記第1軸方向における前記3つのアンテナ素子のうちの両端の2つの前記アンテナ素子の前記位相調節量を前記第3の組み合わせの位相に設定した状態で、前記第4の組み合わせの位相を求める、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1軸方向において、前記中央のアンテナ素子の前記位相調節量を前記第1基準位相に設定するとともに、前記両端の2つのアンテナ素子の前記位相調節量を前記第3の組み合わせの位相に設定した状態で、前記二次関数の放物線補間によって前記二次元的に配置される前記複数のアンテナ素子について設定される前記位相調節量と、
前記第2軸方向において、前記中央のアンテナ素子の前記位相調節量を前記第2基準位相に設定するとともに、前記両端の2つのアンテナ素子の前記位相調節量を前記第4の組み合わせの位相に設定した状態で、前記二次関数の放物線補間によって前記二次元的に配置される前記複数のアンテナ素子について設定される前記位相調節量と
を前記二次元的に配置される前記複数のアンテナ素子の各々について加算した合計の位相調整量を算出する、請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1基準位相及び前記第2基準位相は、ゼロである、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記二次元的に配置される複数のアンテナ素子は、前記第1軸及び前記第2軸の各々に沿って奇数個配置されており、
前記第1軸方向における前記3つのアンテナ素子は、前記第1軸方向における中心及び両端に位置する3つのアンテナ素子であり、
前記第2軸方向における前記3つのアンテナ素子は、前記第2軸方向における中心及び両端に位置する3つのアンテナ素子である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記二次関数の放物線補間は、二次関数の内挿補間である、請求項6に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
第1軸及び第2軸に沿って二次元的に配置される複数のアンテナ素子を有し、受電アンテナに向けて送電信号を送電するアレイアンテナと、
電波発生源と、
前記アレイアンテナと前記電波発生源との間に設けられ、前記電波発生源から前記複数のアンテナ素子に供給される送電信号の位相を前記第1軸方向及び前記第2軸方向において調節する位相調節部と、
前記位相調節部が前記送電信号の位相を前記第1軸方向及び前記第2軸方向において調節する位相調節量を前記受電アンテナの受電電力に基づいて制御する制御部であって、前記受電アンテナの受電電力が高くなるように、前記第1軸方向及び前記第2軸方向の各々における3つの前記アンテナ素子の前記位相調節量を設定して、二次関数の放物線補間で前記二次元的に配置される前記複数のアンテナ素子の前記位相調節量を設定する制御部と
を含む、給電装置。
【請求項9】
第1軸及び第2軸に沿って二次元的に配置される複数のアンテナ素子を有し、受電アンテナに向けて送電信号を送電するアレイアンテナと、
電波発生源と、
前記アレイアンテナと前記電波発生源との間に設けられ、前記電波発生源から前記複数のアンテナ素子に供給される送電信号の位相を前記第1軸方向及び前記第2軸方向において調節する位相調節部と
を含む、給電装置において、
前記位相調節部が前記送電信号の位相を前記第1軸方向及び前記第2軸方向において調節する位相調節量を前記受電アンテナの受電電力に基づいて制御し、
前記受電アンテナの受電電力が高くなるように、前記第1軸方向及び前記第2軸方向の各々における3つの前記アンテナ素子の前記位相調節量を設定して、二次関数の放物線補間で前記二次元的に配置される前記複数のアンテナ素子の前記位相調節量を設定する、給電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ装置、給電装置、及び給電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、受電機器の方向を検出する第1の検出手段と、第1の検出手段によって検出された受電機器の方向に無線で給電電力を放射する第1の放射、及び、給電電力を放射する方向を定められた範囲で変更しながら無線で給電電力を放射する第2の放射を行うよう、給電電力を放射する放射部を制御する制御手段とを有する給電機器がある。放射部は、アレイアンテナである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、受電アンテナにおける受電電力が大きくなるように、受電機器の受電アンテナの位置に応じて、アレイアンテナに含まれる複数のアンテナ素子が送電する送電信号の位相を調節するためには、膨大な計算量が必要になる。しかしながら、従来の給電機器(給電装置)は、このような問題を解決していない。
【0005】
そこで、受電電力が大きくなるように、受電アンテナの位置に応じてアレイアンテナの複数のアンテナ素子における送電信号の位相調節量を容易に計算可能なアンテナ装置、給電装置、及び給電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態のアンテナ装置は、第1軸及び第2軸に沿って二次元的に配置される複数のアンテナ素子を有し、受電アンテナに向けて送電信号を送電するアレイアンテナと、前記複数のアンテナ素子に供給される送電信号の位相を前記第1軸方向及び前記第2軸方向において調節する位相調節部と、前記位相調節部が前記送電信号の位相を前記第1軸方向及び前記第2軸方向において調節する位相調節量を前記受電アンテナの受電電力に基づいて制御する制御部であって、前記受電アンテナの受電電力が大きくなるように、前記第1軸方向及び前記第2軸方向の各々における3つの前記アンテナ素子の前記位相調節量を設定して、二次関数の放物線補間で前記二次元的に配置される前記複数のアンテナ素子の前記位相調節量を設定する制御部とを含む。
【発明の効果】
【0007】
受電電力が大きくなるように、受電アンテナの位置に応じてアレイアンテナの複数のアンテナ素子における送電信号の位相調節量を容易に計算可能なアンテナ装置、給電装置、及び給電方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の給電装置100と受電装置50との一例を示す図である。
【
図2】実施形態の給電装置100の構成の一例を示す図である。
【
図3A】遠距離送電を想定した各アンテナ素子から同一方向へ電波を放射する場合の二次元的な位相分布を示す図である。
【
図3B】近距離送電を想定した各アンテナ素子から同一方向へ電波を放射する場合の二次元的な位相分布を示す図である。
【
図4】X軸に沿って一次元的に配置される(2N+1)個のアンテナ素子111を有するアレイアンテナ110と、受電アンテナ51との位置関係の一例をXZ座標に示す図である。
【
図5】X軸に沿って一次元的に配置される(2N+1)個のアンテナ素子111についての正規化経路差長θ
iXの設定の仕方の一例を説明する図である。
【
図6A】二次関数の放物線補間による正規化経路差長の設定方法の一例を説明する図である。
【
図6B】二次関数の放物線補間による正規化経路差長の設定方法の一例を説明する図である。
【
図6C】二次関数の放物線補間による正規化経路差長の設定方法の一例を説明する図である。
【
図6D】二次関数の放物線補間による正規化経路差長の設定方法の一例を説明する図である。
【
図7A】二次関数の放物線補間による正規化経路差長の設定方法の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7B】二次関数の放物線補間による正規化経路差長の設定方法の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7C】二次関数の放物線補間による正規化経路差長の設定方法の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7D】二次関数の放物線補間による正規化経路差長の設定方法の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8A】シミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図8B】シミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図9A】シミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図9B】シミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図9C】シミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図9D】シミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図10】実施形態の変形例の給電装置100M及びアンテナ装置100MAを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示のアンテナ装置、給電装置、及び給電方法を適用した実施形態について説明する。
【0010】
<実施形態>
図1は、実施形態の給電装置100と受電装置50との一例を示す図である。
図2は、実施形態の給電装置100の構成の一例を示す図である。
【0011】
以下では、XYZ座標系を用いて説明する。平面視とはXY平面視のことである。また、X軸は第1軸の一例であり、Y軸は第2軸の一例であり、Z軸は第3軸の一例である。
【0012】
<給電装置100、受電装置50、RSSI検出器60、及びRSSI比較器70の接続関係及び構成>
図1には、アレイアンテナ110に対向して配置される受電装置50を示す。アレイアンテナ110は、複数のアンテナ素子111を有し、複数のアンテナ素子111がX軸及びY軸に沿ってアレイ状に配置されている。アレイアンテナ110は、超多素子フェイズドアレイである。超多素子フェイズドアレイとしてのアレイアンテナ110が含むアンテナ素子111の数は、一例として200個から1000個程度である。
【0013】
アレイアンテナ110と受電装置50とのZ方向の距離(対向距離)は、一例として1m~2m程度である。給電装置100は、アレイアンテナ110から準ミリ波帯ワイヤレス給電で受電装置50に送電信号を送電する。アレイアンテナ110が受電装置50に送電信号を送電することは、アレイアンテナ110が受電装置50に給電することと同義である。
【0014】
受電装置50は、複数の受電アンテナ51を有する。
図1では、複数のアンテナ素子111、及び、複数の受電アンテナ51の配置を見えやすく示すが、実際には、複数の受電アンテナ51は、複数のアンテナ素子111と同様に、X軸及びY軸に沿ってアレイ状に配置されている。
【0015】
アレイアンテナ110は、複数のアンテナ素子111から出力される電波がビームを形成し、送電信号としてのビームの角度を走査することにより、受電装置50の複数の受電アンテナ51のうちのいずれか1つに送電信号を送電する。
【0016】
受電装置50は、アレイアンテナ110から受電アンテナ51で受電した送電信号の電力を給電対象物10に供給する。給電対象物10は、電力を消費する装置等であれば、どのようなものであってもよい。一例として、1つの受電アンテナ51に対して、1つの給電対象物10が接続されている。
【0017】
受電装置50の各受電アンテナ51の出力側には、RSSI(Received Signal Strength Indicator)検出器60が接続されている。
図1では、RSSI検出器60は、1つの受電アンテナ51から給電対象物10に電力を出力する出力ケーブルに接続されている状態を示すが、実際には、各受電アンテナ51に接続される出力ケーブルに接続されており、各受電アンテナ51が受電する受電電力を検出することができる。
【0018】
RSSI検出器60の出力側には、RSSI比較器70が接続されている。RSSI比較器70は、制御装置150から出力される制御信号によって制御されるように構成されている。制御装置150からRSSI比較器70に入力される制御信号は、後述する位相セットインデックスを含み、RSSI比較器70は、位相セットインデックスとRSSI値を表すデータとを関連付けて制御装置150に出力する。なお、RSSI比較器70と制御装置150の間は、ケーブルで接続されることによってデータを伝送可能に構成であってもよく、無線通信等でデータを伝送可能に構成であってもよい。
【0019】
<給電装置100の構成>
給電装置100は、
図2に示すように、アレイアンテナ110、フェーズシフタ120、マイクロ波発生源130、及び制御装置150を含む。実施形態のアンテナ装置100Aは、給電装置100からマイクロ波発生源130を除いたものである。なお、
図1では、フェーズシフタ120、及び、マイクロ波発生源130を省略している。
【0020】
<アレイアンテナ110の構成>
アレイアンテナ110は、一例として(N+1)×(N+1)個のアンテナ素子111を含む。Nは2以上の整数である。(N+1)×(N+1)個のアンテナ素子111は、X方向(第1軸方向)に(N+1)個配列され、Y方向(第2軸方向)に(N+1)個配列される。すなわち、(N+1)×(N+1)個のアンテナ素子111は、(N+1)行×(N+1)列で配列されている。X方向の-N番目(#-N)からN番目(#N)を示す。アンテナ素子111は、平面視で矩形状のパッチアンテナである。アレイアンテナ110は、アンテナ素子111の-Z方向側にグランド電位に保持されるグランド板を有していてもよい。なお、一例として、(N+1)×(N+1)個のアンテナ素子111の位置の中心は、XYZ座標系の原点と一致している。(N+1)×(N+1)個のアンテナ素子111の位置の中心は、アレイアンテナの基準位置の一例である。
【0021】
フェーズシフタ120は、(N+1)×(N+1)個のアンテナ素子111の各々に対して1個ずつ接続されている。フェーズシフタ120は、位相を調節する位相調節部の一例であり、位相シフタの一例である。各フェーズシフタ120には、同一位相の送電信号が供給される。また、(N+1)×(N+1)個のフェーズシフタ120が(N+1)×(N+1)個のアンテナ素子111にそれぞれ出力する送電信号の位相は互いに異なる。このため、(N+1)×(N+1)個のアンテナ素子111から放射される電波が形成するビームの角度を水平方向及び垂直方向に制御することができる。
【0022】
(N+1)×(N+1)個のアンテナ素子111から放射される電波が形成するビームは、アレイアンテナ110が出力するビームと同義である。また、アレイアンテナ110が出力するビームは、アンテナ装置100A及び給電装置100が出力するビームと同義である。ビームは、送電信号である。
【0023】
マイクロ波発生源130は、(N+1)×(N+1)個のフェーズシフタ120に接続されており、所定の電力のマイクロ波を供給する。マイクロ波発生源130は、電波発生源の一例である。マイクロ波の周波数は、一例として準ミリ波の24GHz帯の周波数である。なお、ここでは給電装置100がマイクロ波発生源130を含む形態について説明するが、マイクロ波に限られるものではなく、所定の周波数の電波であればよい。
【0024】
<制御装置150の構成>
制御装置150は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力インターフェース、及び内部バス等を含むコンピュータによって実現される。
【0025】
制御装置150は、二次関数の放物線補間を利用して、すべてのフェーズシフタ120に設定する位相調節量を求め、求めた位相調節量を各フェーズシフタ120に設定する。制御装置150は、メモリ150Aを有し、求めた位相調節量を格納する。また、制御装置150は、位相調節量を求める過程で生じる正規化経路差長をメモリ150Aに格納する。正規化経路差長は、位相調節量に相当する物理量であり、詳細については後述する。
【0026】
<送電信号位相分布の比較(比較用の説明)>
ここで、
図3Aと
図3Bを用いて、遠距離送電と近距離送電で各アンテナ素子から受電アンテナに向けて電波を放射する場合の位相分布を示す図である。ここでは、
図1に示す複数のアンテナ素子111を有するアレイアンテナ110及び受電アンテナ51と同様に、複数のアンテナ素子を有する比較用のアレイアンテナと、比較用の受電アンテナとが対向する場合における、遠距離送電と近距離送電での送電(通信)の違いについて説明する。
図3A及び
図3Bと、以下で示す式(1)~(6)を用いた説明は、比較用のアレイアンテナと、比較用の受電アンテナとについての説明であり、実施形態には含まれない。
【0027】
図3Aは、遠距離送電を想定した各アンテナ素子から同一方向へ電波を放射する場合の二次元的な位相分布を示す図である。遠距離送電とは、受電アンテナまでの距離が波長に対して十分長く、各アンテナ素子から見た受電アンテナの方向が同一とみなせる場合の送電である。受電アンテナがアレイアンテナの各アンテナ素子の正面方向に位置するため、アンテナ素子間の位相差はゼロとなる。このため、遠距離送電を想定した各アンテナ素子から同一方向へ電波を放射する場合の位相は、同一位相となる。
【0028】
図3Bは、近距離送電を想定した各アンテナ素子から同一方向へ電波を放射する場合の二次元的な位相分布を示す図である。近距離送電とは、各アンテナ素子から受電アンテナまでの経路差がアンテナ素子位置に対して線形に変化しないほど大きく、各アンテナ素子から送電する送電信号の位相を調節する必要がある場合の送電である。受電アンテナがアンテナアレイの中心位置と対向している場合、中心のアンテナ素子に比較して周辺のアンテナ素子から受電アンテナまでの距離が長くなるため、位相調節量が変化していることが分かる。
【0029】
近距離送電では、
図3Bに示すように、各アンテナ素子が出力する電波の位相を適切に調節することによって、受電アンテナの位置において、すべてのアンテナ素子から到達する電波の位相が等しくなり、受電アンテナの受電電力が最大化される。
【0030】
アレイアンテナが超多素子フェイズドアレイである場合には、各アンテナ素子から受電アンテナまでの経路差を推定して、各アンテナ素子で電波の位相を調節する位相調節量を設定するには、各アンテナ素子単体からのテスト信号送信、受電アンテナ側での位相測定、位相測定値の送電側への帰還が必要となるため、このような直接的な方法では計算量が膨大となり実現は困難となる。また、アンテナ素子単体からの送電信号は微弱であるため測定精度も十分ではないという問題も生じる。具体的には、次のようにして各アンテナ素子で電波の位相を調節する位相調節量を求めることになる。
【0031】
ここで、超多素子フェイズドアレイが、X方向×Y方向に(2N+1)個×(2N+1)個のアレイアンテナを有する場合に、各アンテナ素子のインデックスを(iX,iY)とし、その座標点の(X,Y,Z)座標を(diX,diY,0)とする。アレイアンテナの中心座標は(0,0,0)である。アンテナ素子のインデックス(整数)の範囲は、-N≦iX≦N、-N≦iY≦Nとなる。Nは1以上の整数である。また、受電アンテナの位置する座標を(TX,TY,TZ)とすると、各アンテナ素子から受電アンテナまでの距離は、次式(1)で表される。
【0032】
【0033】
アレイアンテナの中心から受電アンテナまでの距離をリファレンス距離Rrefとすると、リファレンス距離Rrefは、次式(2)で表される。
【0034】
【0035】
リファレンス距離Rrefに対する経路差長τiX,iYは、次式(3)で表される。
【0036】
【0037】
経路差長τiX,iYを波長λで正規化した正規化経路差長ηiX,iYは、次式(4)のようになる。
【0038】
【0039】
各アンテナ素子から受電アンテナまでの間では、正規化経路差長ηiX,iYに応じた(2π以上の回転を含む)位相変位が得られるので、この位相変位をキャンセルするようにアンテナ素子が出力する電波に位相調節量を与える。アンテナ素子での位相調節量を複素数表示すると、次式(5)で表される。
【0040】
【0041】
この複素数の位相ω(iX,iY)は、次式(6)で表される。
【0042】
【0043】
複素数の位相ω(iX,iY)の範囲は[-π,π]で表される。
【0044】
このような複素数の位相ω(iX,iY)を超多素子フェイズドアレイとしてのアレイアンテナの各アンテナ素子について求めるのは、計算量が膨大となり実現は困難となる。
【0045】
そこで、実施形態では、受電電力が大きくなるように、受電アンテナの位置に応じてアレイアンテナ110の複数のアンテナ素子111における送電信号の位相調節量を容易に計算可能なアンテナ装置100A、給電装置100、及び給電方法を提供する。以下で詳細について説明する。
【0046】
説明を簡単にするために、X軸に沿って一次元的に配置される(2N+1)個のアンテナ素子を考える。
図4は、X軸に沿って一次元的に配置される(2N+1)個のアンテナ素子111を有するアレイアンテナ110と、受電アンテナ51との位置関係の一例をXZ座標に示す図である。
【0047】
アンテナ素子111のインデックスをiXとし、(X,Z)座標を(diX,diZ)とする。diZ=0である。アレイアンテナ110の中心座標は(0,0)である。アンテナ素子111のインデックスiX(整数)の範囲は、-N≦iX≦Nである。また、受電アンテナ51の(X,Z)座標を(TX,TZ)とする。
【0048】
各アンテナ素子111から受電アンテナ51までの距離RiXは、次式(7)で表される。
【0049】
【0050】
アレイアンテナ110の中心から受電アンテナ51までの距離をリファレンス距離Rrefとすると、リファレンス距離Rrefは、次式(8)で表される。
【0051】
【0052】
リファレンス距離Rrefに対する経路差長τiXは、次式(9)で表される。
【0053】
【0054】
距離RiXとリファレンス距離Rrefをそれぞれ変形すると、次式(10)及び次式(11)が得られる。
【0055】
【0056】
【0057】
ここで、次式(12)で表されるテーラー展開公式に、式(10)及び式(11)を当て嵌めると、次式(13)及び次式(14)が得られる。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
式(13)及び式(14)において、2番目の項まで考慮すると、経路差長τiXは、次式(15)で表すことができる。
【0062】
【0063】
このように、X軸に沿って一次元的に配置される(2N+1)個のアンテナ素子111について経路差長τiXを2次関数で表すことができる。したがって、アンテナ素子111のインデックスiXに関して、経路差長τiXを波長で正規化した正規化経路差長θiXも2次関数で表すことができる。X軸に沿って一次元的に配置される(2N+1)個のアンテナ素子111のうちの中心のアンテナ素子111のインデックスiXは、0である。X軸に沿って一次元的に配置される(2N+1)個のアンテナ素子111のうちの中心のアンテナ素子111から受電アンテナ51までの距離は、リファレンス距離Rrefとなるため、インデックスiXが0であるアンテナ素子111についての正規化経路差長θ(0)は0である。インデックスiXが0であるアンテナ素子111についての正規化経路差長θ(0)に相当する位相は、第1基準位相の一例である。
【0064】
図5は、X軸に沿って一次元的に配置される(2N+1)個のアンテナ素子111についての正規化経路差長θ
iXの設定の仕方の一例を説明する図である。
図5に示すように、インデックスi
Xが-NとNの両端のアンテナ素子111と、インデックスi
Xが0の中心のアンテナ素子111との3点を用いて、二次関数の放物線補間でX軸に沿って一次元的に配置される(2N+1)個のアンテナ素子111の正規化経路差長θ
iXを設定する。3点のアンテナ素子111のインデックスi
Xを(i
s,i
m,i
e)とし、それぞれの正規化経路差長の候補(θ
is,θ
im,θ
ie)から、残りのアンテナ素子111に対する正規化経路差長の候補θ
X(i)を二次関数の放物線補間によって次式(16)のように推定する。
【0065】
【0066】
ここで、係数cs(i),cm(i),及びce(i)は、次式(17)で与えられる。
【0067】
【0068】
具体的には、is=-N、im=0、及びie=Nと設定する。リファレンス距離の位置にあるim=0のアンテナ素子111については、正規化経路差長θ(0)が常に0になる。このため、両端の2つのアンテナ素子111について、複数の正規化経路差長の候補θ(-N)及びθ(N)を用意してグリッドサーチを行うことによって、複数の正規化経路差長の候補θ(-N)及びθ(N)の中から最良の正規化経路差長を探索する。
【0069】
アレイアンテナ110のX方向及びY方向の対称性から、上述の式(7)~式(17)についての考え方は、Y軸に沿って一次元的に配置される(2N+1)個のアンテナ素子111についても同様である。
【0070】
Y方向においても、Y方向における(2N+1)個のアンテナ素子111のうちの中心に位置するアンテナ素子111については、リファレンス距離の位置にあるため、正規化経路差長の候補が常に0になる。このため、Y方向においても、両端の2つのアンテナ素子111について、複数の正規化経路差長の候補θ(-N)及びθ(N)を用意してグリッドサーチを行うことによって、複数の正規化経路差長の候補θ(-N)及びθ(N)の中から最良の正規化経路差長θ(-N)及びθ(N)を探索する。
【0071】
そして、X方向とY方向の正規化経路差長の和を取ることによって得られる二次元配置のアレイアンテナ110用の正規化経路差長θ(iX,iY)を次式(18)のように設定する。
【0072】
【0073】
さらに、正規化経路差長θ(iX,iY)を次式(19)で位相調節量wiX,iYに変換して、二次元的に配置される(2N+1)個×(2N+1)個のアンテナ素子111の各々に接続されるフェーズシフタ120で位相調節量wiX,iYで電波の位相を調節して、送電信号を送電する。
【0074】
【0075】
そして、
図1に示すRSSI検出器60において、受電アンテナ51で受電する送電信号のRSSI値を検出し、RSSI比較器70から出力されるRSSI値を制御装置150で取り込み、複数の正規化経路差長の候補θ(-N)及びθ(N)の中から、最良の正規化経路差長θ(-N)及びθ(N)を抽出すればよい。
【0076】
<二次関数の放物線補間による正規化経路差長の具体的な設定方法>
図6A乃至
図6Dは、二次関数の放物線補間による正規化経路差長の設定方法の一例を説明する図である。ここでは、インデックスi
Xのアンテナ素子111をX方向でi番目(-N≦i≦N)と称し、インデックスi
Yのアンテナ素子111をY方向でi番目(-N≦i≦N)と称す場合がある。また、ここでは、正規化経路差長の設定方法について説明するが、正規化経路差長は、位相と比例関係にあるため、正規化経路差長を設定することは、位相を設定することに相当し、さらに位相調節量を設定することに相当する。
【0077】
<X方向における粗な正規化経路差長でのグリッドサーチ(
図6A)>
まず、
図6Aに示すように、X方向における両端に位置するアンテナ素子111について、正規化経路差長の粗い5つずつの正規化経路差長の候補θ
X(-N)及びθ
X(N)を用意して、二次関数の放物線補間を行うことで、X方向における-N+1番目から-1番目、及び、1番目~N-1番目までに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長を算出する。これにより、X方向における-N番目からN番目までに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長が求まる。なお、X方向の0番目のアンテナ素子111については、正規化経路差長θ
X(0)は常に0である。X方向の0番目のアンテナ素子111についての正規化経路差長θ
X(0)に相当する位相は、第1基準位相の一例である。
【0078】
X方向における粗な正規化経路差長でのグリッドサーチで用いるX方向の-N番目の複数の正規化経路差長の候補θX(-N)は、0と、0を挟んだ上下2つずつの値との合計5つの値である。5つの正規化経路差長の候補θX(-N)は、粗な正規化経路差長ずつ離れた値を有する。5つの正規化経路差長の候補θX(-N)についての粗な正規化経路差長は、粗な位相間隔に相当し、第1位相間隔の一例である。
【0079】
X方向における粗な正規化経路差長でのグリッドサーチで用いるX方向のN番目の複数の正規化経路差長の候補θX(N)は、0と、0を挟んだ上下2つずつの値との合計5つの値である。5つの正規化経路差長の候補θX(N)は、粗な正規化経路差長ずつ離れた値を有する。5つの正規化経路差長の候補θX(N)についての粗な正規化経路差長は、粗な位相間隔に相当し、第1位相間隔の一例である。X方向の-N番目の正規化経路差長の候補θX(-N)についての粗な正規化経路差長と、X方向のN番目の正規化経路差長の候補θX(N)についての粗な正規化経路差長とは等しい。
【0080】
X方向の-N番目の正規化経路差長の候補θX(-N)を5つの値のいずれか1つに設定し、X方向のN番目の正規化経路差長の候補θX(N)を5つの値のいずれか1つに設定し、かつ、0番目のアンテナ素子111についての正規化経路差長θX(0)を0に設定した状態で、二次関数の放物線補間でX方向におけるすべてのアンテナ素子111の正規化経路差長θiXを算出する。
【0081】
X方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長の候補θX(-N)及びθX(N)が5つずつあるため、二次関数の放物線補間でX方向におけるすべてのアンテナ素子111の正規化経路差長θiXを25通り算出することができる。なお、アンテナ素子111は、Y方向に(2N+1)個存在するため、各インデックスiXについて、インデックスiXが等しいアンテナ素子111がY方向に(2N+1)個存在する。Y方向に配置され、インデックスiXが等しいアンテナ素子111については、すべて等しい正規化経路差長θiXに設定される。
【0082】
次に、Y方向におけるアンテナ素子111の正規化経路差長θiYを、Y方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θY(-N)及びθY(N)の初期値によってY方向の-N番目からN番目までの(2N+1)個のアンテナ素子111について二次関数の放物線補間で得られる正規化経路差長θiYに設定する。この状態で、25通りの二次関数の放物線補間でX方向におけるすべてのアンテナ素子111について算出した正規化経路差長θiXを設定して、送電信号を送電し、RSSI比較器70から25通りのX方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長の候補θX(-N)及びθX(N)の組み合わせについてのRSSI値を取得する。なお、25通りのX方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長の候補θX(-N)及びθX(N)の組み合わせには、各組み合わせを特定するインデックスである位相セットインデックスが付与される。
【0083】
なお、Y方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θY(-N)及びθY(N)の初期値を用いる代わりに、Y方向の-N番目からN番目までの(2N+1)個のアンテナ素子111について正規化経路差長θiYの(2N+1)個の初期値を用いてもよい。
【0084】
そして、25通りの組み合わせの中から、RSSI値が最も高いX方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θX(-N)及びθX(N)の組み合わせを求めればよい。このようにして求まるX方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θX(-N)及びθX(N)の組み合わせは、第1の組み合わせの一例である。このようにして求まるX方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θX(-N)及びθX(N)に相当する位相は、第1の組み合わせの位相の一例である。
【0085】
X方向における粗な正規化経路差長でのグリッドサーチで求めた第1の組み合わせのX方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θX(-N)及びθX(N)によって、最終的に求めるX方向の-N番目からN番目までの正規化経路差長に対して、緩やかにフィッティングさせたX方向の(2N+1)個の位相調節量を得ることができる。
【0086】
<Y方向における粗な正規化経路差長でのグリッドサーチ(
図6B)>
次に、
図6Bに示すように、Y方向における両端に位置するアンテナ素子111について、正規化経路差長の粗い5つずつの正規化経路差長の候補θ
Y(-N)及びθ
Y(N)を用意して、二次関数の放物線補間を行うことで、Y方向における-N+1番目から-1番目、及び、1番目~N-1番目までに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長を算出する。これにより、Y方向における-N番目からN番目までに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長が求まる。なお、Y方向の0番目のアンテナ素子111については、正規化経路差長θ
Y(0)は常に0である。Y方向の0番目のアンテナ素子111についての正規化経路差長θ
Y(0)に相当する位相は、第2基準位相の一例である。Y方向の0番目のアンテナ素子111は、X方向の0番目のアンテナ素子111と同一であり、X方向に(2N+1)個、Y方向に(2N+1)個配置されるアンテナ素子111の中心に位置する1個のアンテナ素子111である。
【0087】
Y方向における粗な正規化経路差長でのグリッドサーチで用いるY方向の-N番目の複数の正規化経路差長の候補θY(-N)は、0と、0を挟んだ上下2つずつの値との合計5つの値である。5つの正規化経路差長の候補θY(-N)は、粗な正規化経路差長ずつ離れた値を有する。5つの正規化経路差長の候補θY(-N)についての粗な正規化経路差長は、粗な位相間隔に相当し、第2位相間隔の一例である。なお、一例として、Y方向における粗な正規化経路差長は、X方向における粗な正規化経路差長と等しい。すなわち、ここでは、第1位相間隔と第2位相間隔とが等しい形態について説明する。
【0088】
Y方向における粗な正規化経路差長でのグリッドサーチで用いるY方向のN番目の複数の正規化経路差長の候補θY(N)は、0と、0を挟んだ上下2つずつの値との合計5つの値である。5つの正規化経路差長の候補θY(N)は、粗な正規化経路差長ずつ離れた値を有する。5つの正規化経路差長の候補θY(N)についての粗な正規化経路差長は、粗な位相間隔に相当し、第2位相間隔の一例である。Y方向の-N番目の正規化経路差長の候補θY(-N)についての粗な正規化経路差長と、Y方向のN番目の正規化経路差長の候補θY(N)についての粗な正規化経路差長とは等しい。
【0089】
Y方向の-N番目の正規化経路差長の候補θY(-N)を5つの値のいずれか1つに設定し、Y方向のN番目の正規化経路差長の候補θY(N)を5つの値のいずれか1つに設定し、かつ、0番目のアンテナ素子111についての正規化経路差長θY(0)を0に設定した状態で、二次関数の放物線補間でY方向におけるすべてのアンテナ素子111の正規化経路差長θiYを算出する。
【0090】
Y方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長の候補θY(-N)及びθY(N)が5つずつあるため、二次関数の放物線補間でY方向におけるすべてのアンテナ素子111の正規化経路差長θiYを25通り算出することができる。なお、アンテナ素子111は、X方向に(2N+1)個存在するため、各インデックスiYについて、インデックスiYが等しいアンテナ素子111がX方向に(2N+1)個存在する。X方向に配置され、インデックスiYが等しいアンテナ素子111については、すべて等しい正規化経路差長θiYに設定される。
【0091】
次に、X方向におけるアンテナ素子111の正規化経路差長θ
iXを、
図6Aの処理で求めたX方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θ
X(-N)及びθ
X(N)の第1の組み合わせによってX方向の-N番目からN番目までの(2N+1)個のアンテナ素子111について二次関数の放物線補間で得られる正規化経路差長θ
iXに設定する。この状態で、25通りの二次関数の放物線補間でY方向におけるすべてのアンテナ素子111について算出した正規化経路差長θ
iYを設定して、送電信号を送電する。また、RSSI比較器70から25通りのY方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長の候補θ
Y(-N)及びθ
Y(N)の組み合わせについてのRSSI値を取得する。なお、25通りのY方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長の候補θ
Y(-N)及びθ
Y(N)の組み合わせには、各組み合わせを特定するインデックスである位相セットインデックスが付与される。
【0092】
そして、25通りの組み合わせの中から、RSSI値が最も高いY方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θY(-N)及びθY(N)の組み合わせを求めればよい。このようにして求まるY方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θY(-N)及びθY(N)の組み合わせは、第2の組み合わせの一例である。このようにして求まるY方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θY(-N)及びθY(N)に相当する位相は、第2の組み合わせの位相の一例である。
【0093】
Y方向における粗な正規化経路差長でのグリッドサーチで求めた第2の組み合わせのY方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θY(-N)及びθY(N)によって、最終的に求めるY方向の-N番目からN番目までの正規化経路差長に対して、緩やかにフィッティングさせたY方向の(2N+1)個の位相調節量を得ることができる。
【0094】
<X方向における密な正規化経路差長でのグリッドサーチ(
図6C)>
次に、
図6Cに示すように、X方向における両端に位置するアンテナ素子111について、正規化経路差長の密な5つずつの正規化経路差長の候補θ
X(-N)及びθ
X(N)を用意して、二次関数の放物線補間を行うことで、X方向における-N+1番目から-1番目、及び、1番目~N-1番目までに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長を算出する。これにより、X方向における-N番目からN番目までに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長が求まる。なお、X方向の0番目のアンテナ素子111については、正規化経路差長θ
X(0)は常に0である。X方向の0番目のアンテナ素子111についての正規化経路差長θ
X(0)に相当する位相は、第1基準位相の一例である。
【0095】
X方向における密な正規化経路差長でのグリッドサーチで用いるX方向の-N番目の正規化経路差長の複数の候補θ
X(-N)は、
図6Aの処理で求めた第1の組み合わせのうちの-N番目の正規化経路差長θ
X(-N)と、-N番目の正規化経路差長θ
X(-N)を挟んだ上下2つずつの値との合計5つの値である。5つの正規化経路差長の候補θ
X(-N)は、-N番目の正規化経路差長θ
X(-N)を中心として、密な正規化経路差長ずつ離れた値を有する。5つの正規化経路差長の候補θ
X(-N)についての密な正規化経路差長は、密な位相間隔に相当し、第3位相間隔の一例である。密な正規化経路差長は、
図6Aに示す粗な正規化経路差長よりも小さい。すなわち、第3位相間隔は、第1位相間隔よりも小さい。
【0096】
X方向における密な正規化経路差長でのグリッドサーチで用いるX方向のN番目の正規化経路差長の複数の候補θ
X(N)は、
図6Aの処理で求めた第1の組み合わせのうちのN番目の正規化経路差長θ
X(N)と、N番目の正規化経路差長θ
X(N)を挟んだ上下2つずつの値との合計5つの値である。5つの正規化経路差長の候補θ
X(N)は、第1の組み合わせのうちのN番目の正規化経路差長θ
X(N)を中心として、密な正規化経路差長ずつ離れた値を有する。5つの正規化経路差長の候補θ
X(N)についての密な正規化経路差長は、密な位相間隔に相当し、第3位相間隔の一例である。X方向の-N番目の正規化経路差長の候補θ
X(-N)についての密な正規化経路差長と、X方向のN番目の正規化経路差長の候補θ
X(N)についての密な正規化経路差長とは等しい。
【0097】
X方向の-N番目の正規化経路差長の候補θX(-N)を5つの値のいずれか1つに設定し、X方向のN番目の正規化経路差長の候補θX(N)を5つの値のいずれか1つに設定し、かつ、0番目のアンテナ素子111についての正規化経路差長θX(0)を0に設定した状態で、二次関数の放物線補間でX方向におけるすべてのアンテナ素子111の正規化経路差長θiXを算出する。
【0098】
X方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長の候補θ
X(-N)及びθ
X(N)が5つずつあるため、25通りの二次関数の放物線補間でX方向におけるすべてのアンテナ素子111の正規化経路差長θ
iXを算出することができる。特に、
図6Cでは、
図6Aの処理で求めた第1の組み合わせの-N番目及びN番目の正規化経路差長θ
X(-N)及びθ
X(N)を中心とした密な正規化経路差長で実現される5つの値を用いて、さらに狭い範囲で、より密にアンテナ素子111の正規化経路差長θ
iXを算出することができる。なお、アンテナ素子111は、Y方向に(2N+1)個存在するため、各インデックスi
Xについて、インデックスi
Xが等しいアンテナ素子111がY方向に(2N+1)個存在する。Y方向に配置され、インデックスi
Xが等しいアンテナ素子111については、すべて等しい正規化経路差長θ
iXに設定される。
【0099】
次に、Y方向におけるアンテナ素子111の正規化経路差長θ
iYを、
図6Bの処理で求めたY方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θ
Y(-N)及びθ
Y(N)の第2の組み合わせによってY方向の-N番目からN番目までの(2N+1)個のアンテナ素子111について得られる正規化経路差長θ
iYに設定する。この状態で、25通りの二次関数の放物線補間でX方向におけるすべてのアンテナ素子111について算出した正規化経路差長θ
iXを設定して、送電信号を送電し、RSSI比較器70から25通りのX方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長の候補θ
X(-N)及びθ
X(N)の組み合わせについてのRSSI値を取得する。
図6Cでは、
図6Aの処理で求めた第1の組み合わせの-N番目及びN番目の正規化経路差長θ
X(-N)及びθ
X(N)を中心とした密な正規化経路差長で実現される5つの値を用いて、さらに狭い範囲で、より重点的にグリッドサーチを行うことができる。なお、25通りのX方向の-N番目及びN番目の密な正規化経路差長の候補θ
X(-N)及びθ
X(N)の組み合わせには、各組み合わせを特定するインデックスである位相セットインデックスが付与される。
【0100】
そして、25通りの組み合わせの中から、RSSI値が最も高いX方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θX(-N)及びθX(N)の組み合わせを求めればよい。このようにして求まるX方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θX(-N)及びθX(N)の組み合わせは、第3の組み合わせの一例である。このようにして求まるX方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θX(-N)及びθX(N)に相当する位相は、第3の組み合わせの位相の一例であり、X方向において、最終的に求まる-N番目及びN番目の正規化経路差長θX(-N)及びθX(N)である。
【0101】
X方向における密な正規化経路差長でのグリッドサーチで求めた第3の組み合わせのX方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θX(-N)及びθX(N)によって、最終的に求めるX方向の-N番目からN番目までの正規化経路差長に対して、タイトにフィッティングさせたX方向の(2N+1)個の位相調節量を得ることができる。
【0102】
<Y方向における密な正規化経路差長でのグリッドサーチ(
図6D)>
次に、
図6Dに示すように、Y方向における両端に位置するアンテナ素子111について、正規化経路差長の密な5つずつの正規化経路差長の候補θ
Y(-N)及びθ
Y(N)を用意して、二次関数の放物線補間を行うことで、Y方向における-N+1番目から-1番目、及び、1番目~N-1番目までに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長を算出する。これにより、Y方向における-N番目からN番目までに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長が求まる。なお、Y方向の0番目のアンテナ素子111については、正規化経路差長θ
Y(0)は常に0である。Y方向の0番目のアンテナ素子111についての正規化経路差長θ
Y(0)に相当する位相は、第2基準位相の一例である。
【0103】
Y方向における密な正規化経路差長でのグリッドサーチで用いるY方向の-N番目の正規化経路差長の複数の候補θ
Y(-N)は、
図6Bの処理で求めた第2の組み合わせのうちの-N番目の正規化経路差長θ
Y(-N)と、-N番目の正規化経路差長θ
Y(-N)を挟んだ上下2つずつの値との合計5つの値である。5つの正規化経路差長の候補θ
Y(-N)は、-N番目の正規化経路差長θ
Y(-N)を中心として、密な正規化経路差長ずつ離れた値を有する。5つの正規化経路差長の候補θ
Y(-N)についての密な正規化経路差長は、密な位相間隔に相当し、第4位相間隔の一例である。密な正規化経路差長は、
図6Bに示す粗な正規化経路差長よりも小さい。すなわち、第4位相間隔は、第2位相間隔よりも小さい。また、一例として、Y方向における密な正規化経路差長は、X方向における密な正規化経路差長と等しい。すなわち、ここでは、第3位相間隔と第4位相間隔とが等しい形態について説明する。
【0104】
Y方向における密な正規化経路差長でのグリッドサーチで用いるY方向のN番目の正規化経路差長の複数の候補θ
Y(N)は、
図6Bの処理で求めた第2の組み合わせのうちのN番目の正規化経路差長θ
Y(N)と、N番目の正規化経路差長θ
Y(N)を挟んだ上下2つずつの値との合計5つの値である。5つの正規化経路差長の候補θ
Y(N)は、第2の組み合わせのうちのN番目の正規化経路差長θ
Y(N)を中心として、密な正規化経路差長ずつ離れた値を有する。5つの正規化経路差長の候補θ
Y(N)についての密な正規化経路差長は、密な位相間隔に相当し、第4位相間隔の一例である。Y方向の-N番目の正規化経路差長の候補θ
Y(-N)についての密な正規化経路差長と、Y方向のN番目の正規化経路差長の候補θ
Y(N)についての密な正規化経路差長とは等しい。
【0105】
Y方向の-N番目の正規化経路差長の候補θY(-N)を5つの値のいずれか1つに設定し、Y方向のN番目の正規化経路差長の候補θY(N)を5つの値のいずれか1つに設定し、かつ、0番目のアンテナ素子111についての正規化経路差長θY(0)を0に設定した状態で、二次関数の放物線補間でY方向におけるすべてのアンテナ素子111の正規化経路差長θiYを算出する。
【0106】
Y方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長の候補θ
Y(-N)及びθ
Y(N)が5つずつあるため、25通りの二次関数の放物線補間でY方向におけるすべてのアンテナ素子111の正規化経路差長θ
iYを算出することができる。特に、
図6Dでは、
図6Bの処理で求めた第2の組み合わせの-N番目及びN番目の正規化経路差長θ
Y(-N)及びθ
Y(N)を中心とした密な正規化経路差長で実現される5つの値を用いて、さらに狭い範囲で、より密にアンテナ素子111の正規化経路差長θ
iYを算出することができる。なお、アンテナ素子111は、X方向に(2N+1)個存在するため、各インデックスi
Yについて、インデックスi
Yが等しいアンテナ素子111がX方向に(2N+1)個存在する。X方向に配置され、インデックスi
Yが等しいアンテナ素子111については、すべて等しい正規化経路差長θ
iYに設定される。
【0107】
次に、X方向におけるアンテナ素子111の正規化経路差長θ
iXを、
図6Cの処理で求めたX方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θ
X(-N)及びθ
X(N)の第3の組み合わせによってX方向の-N番目からN番目までの(2N+1)個のアンテナ素子111について得られる正規化経路差長θ
iXに設定する。この状態で、25通りの二次関数の放物線補間でY方向におけるすべてのアンテナ素子111について算出した正規化経路差長θ
iYを設定して、送電信号を送電し、RSSI比較器70から25通りのY方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長の候補θ
Y(-N)及びθ
Y(N)の組み合わせについてのRSSI値を取得する。
図6Dでは、
図6Bの処理で求めた第2の組み合わせの-N番目及びN番目の正規化経路差長θ
Y(-N)及びθ
Y(N)を中心とした密な正規化経路差長で実現される5つの値を用いて、さらに狭い範囲で、より重点的にグリッドサーチを行うことができる。なお、25通りのY方向の-N番目及びN番目の密な正規化経路差長の候補θ
Y(-N)及びθ
Y(N)の組み合わせには、各組み合わせを特定するインデックスである位相セットインデックスが付与される。
【0108】
そして、25通りの組み合わせの中から、RSSI値が最も高いY方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θY(-N)及びθY(N)の組み合わせを求めればよい。このようにして求まるY方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θY(-N)及びθY(N)の組み合わせは、第4の組み合わせの一例である。このようにして求まるY方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θY(-N)及びθY(N)に相当する位相は、第4の組み合わせの位相の一例であり、Y方向において、最終的に求まる-N番目及びN番目の正規化経路差長θY(-N)及びθY(N)である。
【0109】
Y方向における密な正規化経路差長でのグリッドサーチで求めた第4の組み合わせのY方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θY(-N)及びθY(N)によって、最終的に求めるY方向の-N番目からN番目までの正規化経路差長に対して、タイトにフィッティングさせたY方向の(2N+1)個の位相調節量を得ることができる。
【0110】
<フローチャート>
図7A乃至
図7Dは、二次関数の放物線補間による正規化経路差長の設定方法の処理の一例を示すフローチャートである。
図7A乃至
図7Dに示す処理は、制御装置150が実行する。
【0111】
<X方向における粗な正規化経路差長でのグリッドサーチ(
図7A)>
まず、
図7Aに示すように、制御装置150は、X方向における両端に位置するアンテナ素子111について、正規化経路差長の粗い5つずつの正規化経路差長の候補θ
X(-N)及びθ
X(N)を用意する(ステップS11)。25通りの正規化経路差長の候補θ
X(-N)及びθ
X(N)の組み合わせが用意される。
【0112】
制御装置150は、X方向の両端の正規化経路差長をステップS11で用意した25通りの正規化経路差長の候補θX(-N)及びθX(N)の組み合わせのうちの1つの組み合わせの正規化経路差長の候補θX(-N)及びθX(N)に設定する(ステップS12)。
【0113】
制御装置150は、ステップS12で設定したX方向の両端の正規化経路差長θX(-N)及びθX(N)と、0番目のアンテナ素子111についての正規化経路差長θX(0)とを用いて、二次関数の放物線補間を行うことで、X方向における-N+1番目から-1番目までと、1番目からN-1番目までとに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長を算出する(ステップS13)。これにより、X方向における-N番目からN番目までに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長が求まる。なお、X方向の0番目のアンテナ素子111についての正規化経路差長θX(0)は常に0である。
【0114】
制御装置150は、Y方向の-N番目からN番目までの(2N+1)個のアンテナ素子111について得られる正規化経路差長θiYを初期値に設定し、ステップS13で求めたX方向における-N番目からN番目までに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長と組み合わせて、すべてのフェーズシフタ120に二次元的な位相調節量を設定する(ステップS14)。
【0115】
制御装置150は、マイクロ波発生源130に送電信号を送電させる(ステップS15)。
【0116】
制御装置150は、RSSI比較器70からRSSI値を取得し、-N番目及びN番目の正規化経路差長の候補θX(-N)及びθX(N)の組み合わせを表す位相セットインデックスと関連付けて、メモリ150Aに格納する(ステップS16)。
【0117】
制御装置150は、ステップS11で用意した25通りの正規化経路差長の候補θX(-N)及びθX(N)の組み合わせから1つずつ選択し、ステップS12~S16の処理を繰り返し実行する。これにより、ステップS11で用意した25通りの正規化経路差長の候補θX(-N)及びθX(N)の組み合わせのすべてについて、RSSI値が取得される。制御装置150は、ステップS11で用意した25通りの正規化経路差長の候補θX(-N)及びθX(N)の組み合わせについて、ステップS12~S16の処理を繰り返し実行し終えると、フローをステップS17に進める。
【0118】
制御装置150は、25通りの組み合わせの中から、RSSI値が最も高いX方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θX(-N)及びθX(N)の組み合わせ(第1の組み合わせ)を求め、メモリ150Aに格納する(ステップS17)。
【0119】
制御装置150は、ステップS17の処理を終えると、フローを
図7Bに示すステップS21に進める。
【0120】
<Y方向における粗な正規化経路差長でのグリッドサーチ(
図7B)>
まず、
図7Bに示すように、制御装置150は、Y方向における両端に位置するアンテナ素子111について、正規化経路差長の粗い5つずつの正規化経路差長の候補θ
Y(-N)及びθ
Y(N)を用意する(ステップS21)。25通りの正規化経路差長の候補θ
Y(-N)及びθ
Y(N)の組み合わせが用意される。
【0121】
制御装置150は、Y方向の両端の正規化経路差長をステップS21で用意した25通りの正規化経路差長の候補θY(-N)及びθY(N)の組み合わせのうちの1つの組み合わせの正規化経路差長の候補θY(-N)及びθY(N)に設定する(ステップS22)。
【0122】
制御装置150は、ステップS22で設定したY方向の両端の正規化経路差長θY(-N)及びθY(N)と、0番目のアンテナ素子111についての正規化経路差長θY(0)とを用いて、二次関数の放物線補間を行うことで、Y方向における-N+1番目から-1番目までと、1番目からN-1番目までとに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長を算出する(ステップS23)。これにより、Y方向における-N番目からN番目までに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長が求まる。なお、Y方向の0番目のアンテナ素子111についての正規化経路差長θY(0)は常に0である。
【0123】
制御装置150は、X方向の-N番目からN番目までの(2N+1)個のアンテナ素子111について得られる正規化経路差長θiXを、ステップS17の処理で求まったX方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θX(-N)及びθX(N)の組み合わせ(第1の組み合わせ)によって得られる正規化経路差長θiXに設定し、ステップS23で求めたY方向における-N番目からN番目までに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長と組み合わせて、すべてのフェーズシフタ120に二次元的な位相調節量を設定する(ステップS24)。
【0124】
制御装置150は、マイクロ波発生源130に送電信号を送電させる(ステップS25)。
【0125】
制御装置150は、RSSI比較器70からRSSI値を取得し、-N番目及びN番目の正規化経路差長の候補θY(-N)及びθY(N)の組み合わせを表す位相セットインデックスと関連付けて、メモリ150Aに格納する(ステップS26)。
【0126】
制御装置150は、ステップS21で用意した25通りの正規化経路差長の候補θY(-N)及びθY(N)の組み合わせから1つずつ選択し、ステップS22~S26の処理を繰り返し実行する。これにより、ステップS21で用意した25通りの正規化経路差長の候補θY(-N)及びθY(N)の組み合わせのすべてについて、RSSI値が取得される。制御装置150は、ステップS21で用意した25通りの正規化経路差長の候補θY(-N)及びθY(N)の組み合わせについて、ステップS22~S26の処理を繰り返し実行し終えると、フローをステップS27に進める。
【0127】
制御装置150は、25通りの組み合わせの中から、RSSI値が最も高いY方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θY(-N)及びθY(N)の組み合わせ(第2の組み合わせ)を求め、メモリ150Aに格納する(ステップS27)。
【0128】
制御装置150は、ステップS27の処理を終えると、フローを
図7Cに示すステップS31に進める。
【0129】
<X方向における密な正規化経路差長でのグリッドサーチ(
図7C)>
まず、
図7Cに示すように、制御装置150は、X方向における両端に位置するアンテナ素子111について、正規化経路差長の密な5つずつの正規化経路差長の候補θ
X(-N)及びθ
X(N)を用意する(ステップS31)。25通りの正規化経路差長の候補θ
X(-N)及びθ
X(N)の組み合わせが用意される。正規化経路差長の候補θ
X(-N)は、ステップS17で求めた第1の組み合わせの正規化経路差長θ
X(-N)と、正規化経路差長θ
X(-N)を挟んだ上下2つずつの値との合計5つの値である。正規化経路差長の候補θ
X(N)は、ステップS17で求めた第1の組み合わせの正規化経路差長θ
X(N)と、正規化経路差長θ
X(N)を挟んだ上下2つずつの値との合計5つの値である。
【0130】
制御装置150は、X方向の両端の正規化経路差長をステップS31で用意した25通りの正規化経路差長の候補θX(-N)及びθX(N)の組み合わせのうちの1つの組み合わせの正規化経路差長の候補θX(-N)及びθX(N)に設定する(ステップS32)。
【0131】
制御装置150は、ステップS32で設定したX方向の両端の正規化経路差長θX(-N)及びθX(N)と、0番目のアンテナ素子111についての正規化経路差長θX(0)とを用いて、二次関数の放物線補間を行うことで、X方向における-N+1番目から-1番目までと、1番目からN-1番目までとに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長を算出する(ステップS33)。これにより、X方向における-N番目からN番目までに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長が求まる。なお、X方向の0番目のアンテナ素子111についての正規化経路差長θX(0)は常に0である。
【0132】
制御装置150は、Y方向の-N番目からN番目までの(2N+1)個のアンテナ素子111について得られる正規化経路差長θiYを、ステップS27の処理で求まったY方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θY(-N)及びθY(N)の組み合わせ(第2の組み合わせ)によって得られる正規化経路差長θiYに設定し、ステップS33で求めたX方向における-N番目からN番目までに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長と組み合わせて、すべてのフェーズシフタ120に二次元的な位相調節量を設定する(ステップS34)。
【0133】
制御装置150は、マイクロ波発生源130に送電信号を送電させる(ステップS35)。
【0134】
制御装置150は、RSSI比較器70からRSSI値を取得し、-N番目及びN番目の正規化経路差長の候補θX(-N)及びθX(N)の組み合わせを表す位相セットインデックスと関連付けて、メモリ150Aに格納する(ステップS36)。
【0135】
制御装置150は、ステップS31で用意した25通りの正規化経路差長の候補θX(-N)及びθX(N)の組み合わせから1つずつ選択し、ステップS32~S36の処理を繰り返し実行する。これにより、ステップS31で用意した25通りの正規化経路差長の候補θX(-N)及びθX(N)の組み合わせのすべてについて、RSSI値が取得される。制御装置150は、ステップS31で用意した25通りの正規化経路差長の候補θX(-N)及びθX(N)の組み合わせについて、ステップS32~S36の処理を繰り返し実行し終えると、フローをステップS37に進める。
【0136】
制御装置150は、25通りの組み合わせの中から、RSSI値が最も高いX方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θX(-N)及びθX(N)の組み合わせ(第3の組み合わせ)を求め、メモリ150Aに格納する(ステップS37)。
【0137】
制御装置150は、ステップS37の処理を終えると、フローを
図7Dに示すステップS41に進める。
【0138】
<Y方向における密な正規化経路差長でのグリッドサーチ(
図7D)>
まず、
図7Dに示すように、制御装置150は、Y方向における両端に位置するアンテナ素子111について、正規化経路差長の密な5つずつの正規化経路差長の候補θ
Y(-N)及びθ
Y(N)を用意する(ステップS41)。25通りの正規化経路差長の候補θ
Y(-N)及びθ
Y(N)の組み合わせが用意される。正規化経路差長の候補θ
Y(-N)は、ステップS27で求めた第2の組み合わせの正規化経路差長θ
Y(-N)と、正規化経路差長θ
Y(-N)を挟んだ上下2つずつの値との合計5つの値である。正規化経路差長の候補θ
Y(N)は、ステップS27で求めた第2の組み合わせの正規化経路差長θ
Y(N)と、正規化経路差長θ
Y(N)を挟んだ上下2つずつの値との合計5つの値である。
【0139】
制御装置150は、Y方向の両端の正規化経路差長をステップS41で用意した25通りの正規化経路差長の候補θY(-N)及びθY(N)の組み合わせのうちの1つの組み合わせの正規化経路差長の候補θY(-N)及びθY(N)に設定する(ステップS42)。
【0140】
制御装置150は、ステップS42で設定したY方向の両端の正規化経路差長θY(-N)及びθY(N)と、0番目のアンテナ素子111についての正規化経路差長θY(0)とを用いて、二次関数の放物線補間を行うことで、Y方向における-N+1番目から-1番目までと、1番目からN-1番目までとに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長を算出する(ステップS43)。これにより、Y方向における-N番目からN番目までに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長が求まる。なお、Y方向の0番目のアンテナ素子111についての正規化経路差長θY(0)は常に0である。
【0141】
制御装置150は、X方向の-N番目からN番目までの(2N+1)個のアンテナ素子111について得られる正規化経路差長θiXを、ステップS37の処理で求まったX方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θX(-N)及びθX(N)の組み合わせ(第3の組み合わせ)によって得られる正規化経路差長θiXに設定し、ステップS43で求めたY方向における-N番目からN番目までに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長と組み合わせて、すべてのフェーズシフタ120に二次元的な位相調節量を設定する(ステップS44)。
【0142】
制御装置150は、マイクロ波発生源130に送電信号を送電させる(ステップS45)。
【0143】
制御装置150は、RSSI比較器70からRSSI値を取得し、-N番目及びN番目の正規化経路差長の候補θY(-N)及びθY(N)の組み合わせを表す位相セットインデックスと関連付けて、メモリ150Aに格納する(ステップS46)。
【0144】
制御装置150は、ステップS41で用意した25通りの正規化経路差長の候補θY(-N)及びθY(N)の組み合わせから1つずつ選択し、ステップS42~S46の処理を繰り返し実行する。これにより、ステップS41で用意した25通りの正規化経路差長の候補θY(-N)及びθY(N)の組み合わせのすべてについて、RSSI値が取得される。制御装置150は、ステップS41で用意した25通りの正規化経路差長の候補θY(-N)及びθY(N)の組み合わせについて、ステップS42~S46の処理を繰り返し実行し終えると、フローをステップS47に進める。
【0145】
制御装置150は、25通りの組み合わせの中から、RSSI値が最も高いY方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θY(-N)及びθY(N)の組み合わせ(第4の組み合わせ)を求め、メモリ150Aに格納する(ステップS47)。
【0146】
制御装置150は、ステップS47の処理を終えると、ステップS37で求めたX方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θX(-N)及びθX(N)について、ステップS33で求めたX方向における-N番目からN番目までに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長と、ステップS47で求めたY方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θX(-N)及びθX(N)について、ステップS43で求めたY方向における-N番目からN番目までに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長とに基づいて、すべてのフェーズシフタ120に二次元的な位相調節量を設定する(ステップS48)。
【0147】
以上で、制御装置150は、一連の処理を終える。この後は、制御装置150によって各フェーズシフタ120に設定された位相調節量を用いて、アレイアンテナ110から送電信号を送電すれば、受電アンテナ51は、受電電力が最も高い状態で送電信号を受電することができる。
【0148】
【0149】
図8Aは、
図3Aに位相分布を示した遠距離送電を想定した複数のアンテナ素子から、アレイアンテナの正面に対して角度を有する方向の近距離に位置する受電アンテナに対して、経路差を考慮せずに送電した場合の位相の分布と、受電アンテナにおける受電電力の利得を示す図である。
図8Aに示すように、アレイアンテナの二次元的に配置される複数のアンテナ素子が出力する電波の位相は、平面的な分布であり、受電アンテナにおける受電電力の利得は、28.3dBiであった。
【0150】
図8Bは、
図3Bに位相分布を示した近距離送電を想定した複数のアンテナ素子から、アレイアンテナの正面に対して角度を有する方向の近距離に位置する受電アンテナに対して、経路差を考慮して送電した場合の位相の分布と、受電アンテナにおける受電電力の利得を示す図である。
図8Bに示すように、アレイアンテナの二次元的に配置される複数のアンテナ素子が出力する電波の位相は、三次元的な分布であり、受電アンテナにおける受電電力の利得は、34.6dBiであった。
図8Bに示す位相分布は、近距離に位置する受電アンテナに対して、各アンテナ素子について理想的な位相調節量を計算した場合の位相分布であり、計算量は膨大になるが、各アンテナ素子の位相調節量は理想的な値に設定されるため、34.6dBiという受電電力の利得は、理想的な状態で得られる指標値である。
【0151】
図9Aは、X方向の-N番目からN番目までの(2N+1)個のアンテナ素子111についてステップS17で求めたX方向における粗な間隔の正規化経路差長に設定するとともに、Y方向の-N番目からN番目までの(2N+1)個のアンテナ素子111について得られる正規化経路差長θ
iYを初期値に設定した状態で、近距離に位置する受電アンテナ51に対して送電した場合の位相の分布と、受電アンテナ51における受電電力の利得を示す図である。
図9Aに示すように、二次元的に配置される複数のアンテナ素子111が出力する電波の位相は、平面的な分布であり、受電アンテナ51における受電電力の利得は、17.9dBiであった。X方向の粗な位相調節のみであるため、受電アンテナ51における受電電力の利得は低い。
【0152】
図9Bは、X方向の-N番目からN番目までの(2N+1)個のアンテナ素子111についてステップS17で求めたX方向における粗な間隔の正規化経路差長に設定するとともに、Y方向の-N番目からN番目までの(2N+1)個のアンテナ素子111についてステップS27で求めたY方向における粗な間隔の正規化経路差長に設定した状態で、近距離に位置する受電アンテナ51に対して送電した場合の位相の分布と、受電アンテナ51における受電電力の利得を示す図である。
図9Bに示すように、二次元的に配置される複数のアンテナ素子111が出力する電波の位相は、三次元的な分布であり、受電アンテナ51における受電電力の利得は、28.7dBiであった。X方向及びY方向の粗な位相調節であるため、受電アンテナ51における受電電力の利得は、
図9Aの場合よりは高いが、
図8Bに示す理想状態に比べると低い。
【0153】
図9Cは、X方向の-N番目からN番目までの(2N+1)個のアンテナ素子111についてステップS37で求めたX方向における密な間隔の正規化経路差長に設定するとともに、Y方向の-N番目からN番目までの(2N+1)個のアンテナ素子111についてステップS27で求めたY方向における粗な間隔の正規化経路差長に設定した状態で、近距離に位置する受電アンテナ51に対して送電した場合の位相の分布と、受電アンテナ51における受電電力の利得を示す図である。
図9Cに示すように、二次元的に配置される複数のアンテナ素子111が出力する電波の位相は、三次元的な分布であり、受電アンテナ51における受電電力の利得は、31.7dBiであった。X方向のみが密な位相調節であり、Y方向は粗な位相調節であるため、受電アンテナ51における受電電力の利得は、
図9Bに比べて3dBの改善であった。
【0154】
図9Dは、X方向の-N番目からN番目までの(2N+1)個のアンテナ素子111についてステップS37で求めたX方向における密な間隔の正規化経路差長に設定するとともに、Y方向の-N番目からN番目までの(2N+1)個のアンテナ素子111についてステップS47で求めたY方向における密な間隔の正規化経路差長に設定した状態で、近距離に位置する受電アンテナ51に対して送電した場合の位相の分布と、受電アンテナ51における受電電力の利得を示す図である。
図9Dに示すように、二次元的に配置される複数のアンテナ素子111が出力する電波の位相は、三次元的な分布であり、受電アンテナ51における受電電力の利得は、34.1dBiであった。X方向及びY方向の密な位相調節であるため、受電アンテナ51における受電電力の利得は、
図9Bに示したX方向及びY方向の粗な位相調節の場合に比べて、5.4dB高くなった。また、
図8Bに示す理想状態に比べて0.5dB低いだけであり、二次関数の放物線補間で計算量を大幅に減らして求めた位相調節量によって、理想状態に匹敵する受電電力の利得が得られることを確認できた。
【0155】
<効果>
アンテナ装置100Aは、X軸及びY軸に沿って二次元的に配置される複数のアンテナ素子111を有し、受電アンテナ51に向けて送電信号を送電するアレイアンテナ110と、複数のアンテナ素子111に供給される送電信号の位相をX方向及びY方向において調節するフェーズシフタ120と、フェーズシフタ120が送電信号の位相をX方向及びY方向において調節する位相調節量を受電アンテナ51の受電電力に基づいて制御する制御装置150であって、受電アンテナ51の受電電力が高くなるように、X方向及びY方向の各々における3つのアンテナ素子111の位相調節量を設定して、二次関数の放物線補間で二次元的に配置される複数のアンテナ素子111の位相調節量を設定する制御装置150とを含む。このように、複数のアンテナ素子111に供給される送電信号の位相調節量をX軸及びY軸に沿って二次関数の放物線補間で求めることで、非常に少ない計算量で、複数のアンテナ素子111に供給される送電信号の位相調節量を計算可能である。
【0156】
したがって、受電電力が大きくなるように、受電アンテナ51の位置に応じてアレイアンテナ110の複数のアンテナ素子111における送電信号の位相調節量を容易に計算可能なアンテナ装置100Aを提供することができる。
【0157】
また、制御装置150は、X方向における3つのアンテナ素子111のうちの中央のアンテナ素子111の位相調節量を第1基準位相に設定するとともに、X方向における3つのアンテナ素子111のうちの両端の2つのアンテナ素子111の位相調節量を、第1位相間隔を有する複数の位相のいずれかに設定した状態で、二次関数の放物線補間で二次元的に配置される複数のアンテナ素子111の位相調節量を設定して、第1位相間隔を有する複数の位相のうちで受電アンテナ51の受電電力が最大になる第1の組み合わせの位相を求める。また、制御装置150は、Y方向における3つのアンテナ素子111のうちの中央のアンテナ素子111の位相調節量を第2基準位相に設定するとともに、Y方向における3つのアンテナ素子111のうちの両端の2つのアンテナ素子111の位相調節量を、第2位相間隔を有する複数の位相のいずれかに設定した状態で、二次関数の放物線補間で二次元的に配置される複数のアンテナ素子111の位相調節量を設定して、第2位相間隔を有する複数の位相のうちで受電アンテナ51の受電電力が最大になる第2の組み合わせの位相を求める。また、制御装置150は、X方向における3つのアンテナ素子111のうちの中央のアンテナ素子111の位相調節量を第1基準位相に設定するとともに、X方向における3つのアンテナ素子111のうちの両端の2つのアンテナ素子111の位相調節量を、第1の組み合わせの位相に対して第1位相間隔よりも小さい第3位相間隔を有する複数の位相のいずれかに設定した状態で、二次関数の放物線補間で二次元的に配置される複数のアンテナ素子111の位相調節量を設定して、第3位相間隔を有する複数の位相のうちで受電アンテナ51の受電電力が最大になる第3の組み合わせの位相を求める。また、制御装置150は、Y方向における3つのアンテナ素子111のうちの中央のアンテナ素子111の位相調節量を第2基準位相に設定するとともに、Y方向における3つのアンテナ素子111のうちの両端の2つのアンテナ素子111の位相調節量を、第2の組み合わせの位相に対して第2位相間隔よりも小さい第4位相間隔を有する複数の位相のいずれかに設定した状態で、二次関数の放物線補間で二次元的に配置される複数のアンテナ素子111の位相調節量を設定して、第4位相間隔を有する複数の位相のうちで受電アンテナ51の受電電力が最大になる第4の組み合わせの位相を求める。
【0158】
このため、X方向における粗な正規化経路差長でのグリッドサーチで求めた第1の組み合わせのX方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θX(-N)及びθX(N)によって、最終的に求めるX方向の-N番目からN番目までの正規化経路差長に対して、緩やかにフィッティングさせたX方向の(2N+1)個の位相調節量を得ることができる。また、Y方向における粗な正規化経路差長でのグリッドサーチで求めた第2の組み合わせのY方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θY(-N)及びθY(N)によって、最終的に求めるY方向の-N番目からN番目までの正規化経路差長に対して、緩やかにフィッティングさせたY方向の(2N+1)個の位相調節量を得ることができる。また、X方向における密な正規化経路差長でのグリッドサーチで求めた第3の組み合わせのX方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θX(-N)及びθX(N)によって、最終的に求めるX方向の-N番目からN番目までの正規化経路差長に対して、タイトにフィッティングさせたX方向の(2N+1)個の位相調節量を得ることができる。また、Y方向における密な正規化経路差長でのグリッドサーチで求めた第4の組み合わせのY方向の-N番目及びN番目の正規化経路差長θY(-N)及びθY(N)によって、最終的に求めるY方向の-N番目からN番目までの正規化経路差長に対して、タイトにフィッティングさせたY方向の(2N+1)個の位相調節量を得ることができる。この結果、二次関数の放物線補間で計算量を大幅に減らした状態で、X方向及びY方向の密な位相間隔を利用して、各アンテナ素子111に供給される送電信号の位相調節量を求めることができ、受電アンテナ51における受電電力を増大させることができる。
【0159】
また、制御装置150は、Y方向における3つのアンテナ素子111のうちの中央のアンテナ素子111の位相調節量を第2基準位相に設定するとともに、X方向における3つのアンテナ素子111のうちの両端の2つのアンテナ素子111の位相調節量を第1の組み合わせの位相に設定した状態で、第2の組み合わせの位相を求め、X方向における3つのアンテナ素子111のうちの中央のアンテナ素子111の位相調節量を第1基準位相に設定するとともに、Y方向における3つのアンテナ素子111のうちの両端の2つのアンテナ素子111の位相調節量を第2の組み合わせの位相に設定した状態で、第3の組み合わせの位相を求め、Y方向における3つのアンテナ素子111のうちの中央のアンテナ素子111の位相調節量を第2基準位相に設定するとともに、X方向における3つのアンテナ素子111のうちの両端の2つのアンテナ素子111の位相調節量を第3の組み合わせの位相に設定した状態で、第4の組み合わせの位相を求める。
【0160】
このため、X方向において最終的に求める-N番目からN番目までの正規化経路差長に対して緩やかにフィッティングさせた状態で、Y方向において最終的に求める-N番目からN番目までの正規化経路差長に対して緩やかにフィッティングさせることができる。また、Y方向において最終的に求める-N番目からN番目までの正規化経路差長に対して緩やかにフィッティングさせた状態で、X方向において最終的に求める-N番目からN番目までの正規化経路差長に対してタイトにフィッティングさせることができる。また、X方向において最終的に求める-N番目からN番目までの正規化経路差長に対してタイトにフィッティングさせた状態で、Y方向において最終的に求める-N番目からN番目までの正規化経路差長に対してタイトにフィッティングさせることができる。この結果、二次元的に配置される複数のアンテナ素子111の位相調節量をより高精度に設定して、受電アンテナ51における受電電力を増大させることができる。
【0161】
また、制御装置150は、X方向において、中央のアンテナ素子111の位相調節量を第1基準位相に設定するとともに、両端の2つのアンテナ素子111の位相調節量を第3の組み合わせの位相に設定した状態で、二次関数の放物線補間によって二次元的に配置される複数のアンテナ素子111について設定される位相調節量と、Y方向において、中央のアンテナ素子111の位相調節量を第2基準位相に設定するとともに、両端の2つのアンテナ素子111の位相調節量を第4の組み合わせの位相に設定した状態で、二次関数の放物線補間によって二次元的に配置される複数のアンテナ素子111について設定される位相調節量とを二次元的に配置される複数のアンテナ素子111の各々について加算した合計の位相調整量を算出する。
【0162】
このため、X方向において最終的に求める-N番目からN番目までの正規化経路差長に対してタイトにフィッティングさせた-N番目からN番目までの正規化経路差長と、Y方向において最終的に求める-N番目からN番目までの正規化経路差長に対してタイトにフィッティングさせた-N番目からN番目までの正規化経路差長との合計の位相調整量を用いて、アレイアンテナ110から受電アンテナ51に送電信号を送電でき、受電アンテナ51における受電電力を増大させることができる。
【0163】
また、第1基準位相及び第2基準位相は、ゼロであるので、二次関数の放物線補間による計算がさらに容易になり、X方向及びY方向の密な位相間隔を利用して、各アンテナ素子111に供給される送電信号の位相調節量を求めることができ、受電アンテナ51における受電電力を増大させることができる。
【0164】
また、二次元的に配置される複数のアンテナ素子111は、X軸及びY軸の各々に沿って奇数個配置されており、X方向における3つのアンテナ素子111は、X方向における中心及び両端に位置する3つのアンテナ素子111であり、Y方向における3つのアンテナ素子111は、Y方向における中心及び両端に位置する3つのアンテナ素子111である。
【0165】
このため、X方向及びY方向において、中心に位置するアンテナ素子111に対する対称性を利用して、二次関数の放物線補間による計算がより容易になり、X方向及びY方向の密な位相間隔を利用して、各アンテナ素子111に供給される送電信号の位相調節量を求めることができ、受電アンテナ51における受電電力を増大させることができる。
【0166】
また、二次関数の放物線補間は、二次関数の内挿補間であるため、両端のアンテナ素子111の間に位置するアンテナ素子111に供給される送電信号の位相調節量を内挿補間で容易に求めることができ、受電アンテナ51における受電電力を増大させることができる。
【0167】
給電装置100は、X軸及びY軸に沿って二次元的に配置される複数のアンテナ素子111を有し、受電アンテナ51に向けて送電信号を送電するアレイアンテナ110と、マイクロ波発生源130と、アレイアンテナ110とマイクロ波発生源130との間に設けられ、マイクロ波発生源130から複数のアンテナ素子111に供給される送電信号の位相をX方向及びY方向において調節するフェーズシフタ120と、フェーズシフタ120が送電信号の位相をX方向及びY方向において調節する位相調節量を受電アンテナ51の受電電力に基づいて制御する制御装置150であって、受電アンテナ51の受電電力が高くなるように、X方向及びY方向の各々における3つのアンテナ素子111の位相調節量を設定して、二次関数の放物線補間で二次元的に配置される複数のアンテナ素子111の位相調節量を設定する制御装置150とを含む。このように、複数のアンテナ素子111に供給される送電信号の位相調節量をX軸及びY軸に沿って二次関数の放物線補間で求めることで、非常に少ない計算量で、複数のアンテナ素子111に供給される送電信号の位相調節量を計算可能である。
【0168】
したがって、受電電力が大きくなるように、受電アンテナ51の位置に応じてアレイアンテナ110の複数のアンテナ素子111における送電信号の位相調節量を容易に計算可能な給電装置100を提供することができる。
【0169】
給電方法は、X軸及びY軸に沿って二次元的に配置される複数のアンテナ素子111を有し、受電アンテナ51に向けて送電信号を送電するアレイアンテナ110と、マイクロ波発生源130と、アレイアンテナ110とマイクロ波発生源130との間に設けられ、電波発生源から複数のアンテナ素子111に供給される送電信号の位相をX方向及びY方向において調節するフェーズシフタ120とを含む、給電装置100において、フェーズシフタ120が送電信号の位相をX方向及びY方向において調節する位相調節量を受電アンテナ51の受電電力に基づいて制御し、受電アンテナ51の受電電力が高くなるように、X方向及びY方向の各々における3つのアンテナ素子111の位相調節量を設定して、二次関数の放物線補間で二次元的に配置される複数のアンテナ素子111の位相調節量を設定する。このように、複数のアンテナ素子111に供給される送電信号の位相調節量をX軸及びY軸に沿って二次関数の放物線補間で求めることで、非常に少ない計算量で、複数のアンテナ素子111に供給される送電信号の位相調節量を計算可能である。
【0170】
したがって、受電電力が大きくなるように、受電アンテナ51の位置に応じてアレイアンテナ110の複数のアンテナ素子111における送電信号の位相調節量を容易に計算可能な給電方法を提供することができる。
【0171】
なお、以上では、アンテナ素子111がX方向及びY方向に(2N+1)個ずつ配置される形態について説明したが、アンテナ素子111のX方向及びY方向における数は異なっていてもよい。例えば、アンテナ素子111がX方向に(2N+1)個配置されるとともに、Y方向に(2M+1)個配置されてもよい。この場合に、Mは1以上の整数であり、M≠Nである。
【0172】
また、アンテナ素子111がX方向及びY方向に(2N+1)個ずつ(奇数個ずつ)配置される形態について説明したが、アンテナ素子111のX方向及びY方向における数は偶数であってもよい。
【0173】
また、以上では、二次関数の放物線補間で用いる3つのアンテナ素子111のうちの中央のアンテナ素子111が(2N+1)個のアンテナ素子111のうちの中心(-N番目からN番目のうちの0番目)である形態について説明したが、-1番目や1番目のように、中心からずれていてもよい。ずれた分は、式(7)~式(19)で調整すればよい。
【0174】
また、以上では、X方向及びY方向における粗及び密な正規化経路差長でのグリッドサーチにおいて、X方向およびY方向における-N+1番目から-1番目、及び、1番目~N-1番目までに位置するアンテナ素子111についての正規化経路差長について、用意した25通り毎に内挿補間(算出)を行う形態について説明したが(S13、S23、S33、S43)、予めグリッドサーチの正規化経路差長の候補に対してあらかじめ内挿による位相を計算してメモリに格納しておいてもよい。この場合、計算負荷をさらに低減することができる。
【0175】
<変形例>
図10は、実施形態の変形例の給電装置100M及びアンテナ装置100MAを示す図である。給電装置100Mは、アレイアンテナ110、フェーズシフタ120、マイクロ波発生源130、及び制御装置150Mを含む。制御装置150Mは、RSSI比較器70を内蔵する。
【0176】
制御装置150Mに内蔵されたRSSI比較器70は、受電アンテナ51の前に配置可能なプローブ60Mに接続されている。プローブ60Mは、RSSI比較器70とケーブルを介して接続されてデータを伝送可能に構成されている。プローブ60Mは、受電アンテナ51の前に配置された状態で、受電アンテナ51で受電する送電信号のRSSI値を検出することができ、RSSI値を表すデータをRSSI比較器70に伝送する。
【0177】
このように、給電装置100M及びアンテナ装置100MAは、RSSI比較器70を内蔵する制御装置150Mを含む構成であってもよい。なお、プローブ60MとRSSI比較器70の間は、ケーブルで接続されてデータを伝送する構成に限らず、無線通信等でデータを伝送する構成であってもよい。
【0178】
以上、本開示の例示的な実施形態のアンテナ装置、給電装置、及び給電方法について説明したが、本開示は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0179】
50 受電装置
51 受電アンテナ
60 RSSI検出器
70 RSSI比較器
100A、100MA アンテナ装置
100、100M 給電装置
110 アレイアンテナ
111 アンテナ素子
120 フェーズシフタ
130 マイクロ波発生源
150、150M 制御装置
150A メモリ