(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036122
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】電子装置の製造方法およびそれに用いられる導電性部材ならびに電子装置
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20240308BHJP
H05K 7/06 20060101ALI20240308BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20240308BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20240308BHJP
H05K 3/36 20060101ALI20240308BHJP
H01R 12/58 20110101ALI20240308BHJP
H02K 5/24 20060101ALN20240308BHJP
【FI】
H05K3/34 505Z
H05K7/06 C
H05K1/18 B
H05K1/14 H
H05K3/36 B
H01R12/58
H02K5/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140858
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 理生
【テーマコード(参考)】
5E223
5E319
5E336
5E344
5H605
【Fターム(参考)】
5E223AB25
5E223AC21
5E223AC23
5E223BA07
5E223BB01
5E223CB25
5E223DA05
5E223DB01
5E223DB08
5E223DB14
5E223DB25
5E319AA02
5E319AB01
5E319BB01
5E319CC33
5E319CC53
5E319CD25
5E319GG20
5E336AA01
5E336BC04
5E336CC04
5E336CC60
5E336EE03
5E336GG30
5E344AA01
5E344BB02
5E344CD14
5E344DD03
5E344EE30
5H605AA04
5H605BB05
5H605CC06
5H605EC08
(57)【要約】
【課題】電子機器部材に対して複数の導電性部材のそれぞれを、所望の接続箇所に容易に接続することができる電子装置の製造方法と、導電性部材と、電子装置とを提供する。
【解決手段】端子15、湾曲部19、および、湾曲部19の動きを拘束するはんだ27を備えたバスバー13を用意する。第1電子機器部材3aに一つ以上のバスバー13が取り付けられ、湾曲部19にはんだ27が形成された状態で、一つ以上のバスバー13の端子15を、第2電子機器部材3bにおける開口部7bに位置合わせをし、端子15を開口部7bに接続する。湾曲部19に形成されているはんだ27を、湾曲部19から排除する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電子機器部材に取り付けられた導電性部材を、第2電子機器部材に電気的に接続させた電子装置の製造方法であって、
端子、前記端子に繋がる弾性部、および、前記弾性部に形成され、前記弾性部の動きを拘束する固定部材を備えた前記導電性部材を用意する工程と、
前記第1電子機器部材に一つ以上の前記導電性部材が取り付けられ、前記弾性部に前記固定部材が形成された状態で、一つ以上の前記導電性部材の前記端子を、前記第2電子機器部材における接続箇所に位置合わせをする工程と、
前記端子を前記接続箇所に接続する工程と、
前記弾性部に形成されている前記固定部材を、前記弾性部から排除する工程と
を備えた、電子装置の製造方法。
【請求項2】
前記導電性部材における前記固定部材として、はんだを使用し、
前記端子を、前記第2電子機器部材における前記接続箇所に位置合わせをする工程では、前記弾性部の下方に前記端子が位置する態様で、前記端子が前記第2電子機器部材における前記接続箇所に位置合わせされ、
前記端子を前記接続箇所に接続する工程では、前記固定部材としての前記はんだを溶融させ、溶融した前記はんだが、重力によって前記弾性部から前記端子にまで導かれることで、前記端子が前記はんだによって前記接続箇所に接続され、
前記固定部材を前記弾性部から排除する工程では、溶融した前記はんだが、重力によって前記弾性部から前記端子にまで導かれることで、前記弾性部から排除される、請求項1記載の電子装置の製造方法。
【請求項3】
前記導電性部材における前記固定部材として、蝋を使用し、
前記端子を、前記第2電子機器部材における前記接続箇所に位置合わせをする工程では、前記弾性部の下方に前記端子が位置する態様で、前記端子が前記第2電子機器部材における前記接続箇所に位置合わせされ、
前記端子を前記接続箇所に接続する工程では、前記端子が前記第2電子機器部材における前記接続箇所に位置合わせされた状態で、溶融したはんだを前記接続箇所に供給することで、前記端子が前記はんだによって前記接続箇所に接続され、
前記固定部材を前記弾性部から排除する工程では、前記接続箇所に供給された溶融した前記はんだの熱が前記弾性部に伝導して前記蝋が溶融し、溶融した前記蝋が、重力によって前記弾性部から前記端子にまで導かれることで、前記弾性部から排除される、請求項1記載の電子装置の製造方法。
【請求項4】
前記端子を、前記第2電子機器部材における前記接続箇所に位置合わせをする工程では、前記接続箇所に形成された開口部に、前記端子が挿通される、請求項1~3のいずれか1項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項5】
第1電子機器部材と第2電子機器部材とを電気的に接続する導電性部材であって、
端子と
前記端子に繋がるように形成され、前記第1電子機器部材と前記第2電子機器部材との間に接続された状態で、前記第1電子機器部材と前記第2電子機器部材との間に生じる応力を吸収する弾性部と、
前記弾性部に形成され、前記弾性部の動きを拘束する固定部材と
を備えた、導電性部材。
【請求項6】
前記固定部材の融点は、350℃~400℃である、請求項5記載の導電性部材。
【請求項7】
前記固定部材は、はんだを含む、請求項6記載の導電性部材。
【請求項8】
前記固定部材は、蝋を含む、請求項6記載の導電性部材。
【請求項9】
前記弾性部は、湾曲形状、屈曲形状、ジグザグ形状およびらせん形状の少なくともいずれかの形状を含む、請求項5~8のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項10】
第1電子機器部材に取り付けられた導電性部材を第2電子機器部材に電気的に接続させた電子装置であって、
前記導電性部材は、
前記第2電子機器部材における接続箇所に接続された端子と、
前記端子に繋がる弾性部と
を備え、
前記弾性部における前記端子側に位置する部分がはんだに覆われている、電子装置。
【請求項11】
第1電子機器部材に取り付けられた導電性部材を第2電子機器部材に電気的に接続させた電子装置であって、
前記導電性部材は、
前記第2電子機器部材における接続箇所に接続された端子と、
前記端子に繋がる弾性部と
を備え、
前記端子は前記接続箇所にはんだによって接続され、
前記はんだは、蝋に覆われている、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置の製造方法およびそれに用いられる導電性部材ならびに電子装置に関し、特に、弾性部を有する導電性部材を備えた電子装置の製造方法と、そのような導電性部材と、そのような導電性部材を適用した電子装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置では、一の電子機器部材と他の電子機器部材とを電気的に接続するために、たとえば、バスバー等が用いられている。電子装置には、一の電子機器部材として、モータ等が適用され、他の電子機器部材として、そのモータ等を制御するスイッチング素子等の半導体素子が実装された回路基板が適用された電子装置がある。
【0003】
このような電子装置では、半導体素子の発熱等または外部からの振動等によって、バスバーには応力が作用することがある。このため、バスバーには、応力を吸収する弾性部が設けられる。このような、電子装置を開示した特許文献の例として、たとえば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子装置には、弾性部を備えたバスバー等の導電性部材が複数設けられている態様の電子装置がある。このような電子装置では、バスバー等の導電性部材を電子機器部材に電気的に接続する際に、導電性部材が弾性部によって撓むことがある。このため、複数の導電性部材を備えた電子装置では、複数の導電性部材を、電子機器部材におけるそれぞれの所望の接続箇所に接続させる作業が難しくなり、煩雑になるという問題がある。
【0006】
本発明は、そのような問題点を解決するためになされたものであり、一つの目的は、電子機器部材に対して複数の導電性部材のそれぞれを、所望の接続箇所に容易に接続することができる電子装置の製造方法を提供することであり、他の目的は、そのような電子装置の製造に用いられる導電性部材を提供することであり、さらに他の目的は、そのような導電性部材を適用した電子装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電子装置の製造方法は、第1電子機器部材に取り付けられた導電性部材を、第2電子機器部材に電気的に接続させた電子装置の製造方法であって、以下の工程を備えている。端子、端子に繋がる弾性部、および、弾性部に形成され、弾性部の動きを拘束する固定部材を備えた導電性部材を用意する。第1電子機器部材に一つ以上の導電性部材が取り付けられ、弾性部に固定部材が形成された状態で、一つ以上の導電性部材の端子を、第2電子機器部材における接続箇所に位置合わせをする。端子を接続箇所に接続する。弾性部に形成されている固定部材を、弾性部から排除する。
【0008】
本発明に係る導電性部材は、第1電子機器部材と第2電子機器部材とを電気的に接続する導電性部材であって、端子と弾性部と固定部材とを備えている。弾性部は、端子に繋がるように形成され、第1電子機器部材と第2電子機器部材との間に接続された状態で、第1電子機器部材と第2電子機器部材との間に生じる応力を吸収する。固定部材は、弾性部に形成され、弾性部の動きを拘束する。
【0009】
本発明に係る一の電子装置は、第1電子機器部材に取り付けられた導電性部材を第2電子機器部材に電気的に接続させた電子装置である。導電性部材は、端子と弾性部とを備えている。端子は、第2電子機器部材における接続箇所に接続されている。弾性部は、端子に繋がっている。弾性部における端子側に位置する部分がはんだに覆われている。
【0010】
本発明に係る他の電子装置は、第1電子機器部材に取り付けられた導電性部材を第2電子機器部材に電気的に接続させた電子装置である。導電性部材は、端子と弾性部とを備えている。端子は、第2電子機器部材における接続箇所に接続されている。弾性部は、端子に繋がっている。端子は接続箇所にはんだによって接続されている。はんだは、蝋に覆われている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電子装置の製造方法によれば、まず、弾性部に固定部材が形成された状態で、一つ以上の導電性部材の端子が、第2電子機器部材における接続箇所に位置合わせをされる。これにより、導電性部材の端子の位置合わせが容易になる。また、端子が接続箇所に接続された後に、弾性部に形成されている固定部材が、弾性部から排除される。これにより、導電性部材に作用する応力を緩和することができる。
【0012】
本発明に係る導電性部材によれば、導電性部材は、端子と弾性部と固定部材とを備え、固定部材は、弾性部に形成され、弾性部の動きを拘束する。これにより、導電性部材の端子の位置合わせが容易になる。
【0013】
本発明に係る一の電子装置によれば、導電性部材における固定部材としてはんだが適用されている。これにより、導電性部材の端子の位置合わせが容易になる。そのはんだが、弾性部から端子の接続箇所へ導かれて弾性部から排除されることで、導電性部材に作用する応力を緩和することができる。
【0014】
本発明に係る他の電子装置によれば、導電性部材における固定部材として蝋が適用されている。これにより、導電性部材の端子の位置合わせが容易になる。その蝋が、弾性部から端子の接続箇所へ導かれて弾性部から排除されることで、導電性部材に作用する応力を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態1に係る電子装置に適用されるバスバーの構造を示す斜視図である。
【
図2】同実施の形態において、
図1に示すバスバーの構造を示す側面図である。
【
図3】同実施の形態において、
図1に示すバスバーの構造を説明するための斜視図である。
【
図4】同実施の形態において、電子装置の製造方法の一工程を示す部分斜視図である。
【
図5】同実施の形態において、
図4に示す工程の後に行われる工程を示す部分斜視図である。
【
図6】同実施の形態において、
図5に示す工程における一断面図である。
【
図7】同実施の形態において、
図6に示す工程の後に行われる工程を示す一断面図である。
【
図8】同実施の形態において、
図7に示す工程の後に行われる工程を示す部分斜視図である。
【
図9】比較例に係る電子装置の製造方法の一工程を示す部分斜視図である。
【
図10】
図9に示す工程の後に行われる工程を示す部分斜視図である。
【
図11】実施の形態2に係る電子装置に適用されるバスバーの構造を示す側面図である。
【
図12】同実施の形態において、電子装置の製造方法の一工程を示す一断面図である。
【
図13】同実施の形態において、
図12に示す工程の後に行われる工程を示す一断面図である。
【
図14】同実施の形態において、
図13に示す工程の後に行われる工程を示す一断面図である。
【
図15】各実施の形態において、第1変形例に係る導電性部材を適用した電子装置の製造方法の一工程を示す一断面図である。
【
図16】各実施の形態において、
図15に示す工程の後に行われる工程を示す一断面図である。
【
図17】各実施の形態において、第2変形例に係る導電性部材の構造を示す一側面図である。
【
図18】各実施の形態において、第3変形例に係る導電性部材の構造を示す一側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1
(導電性部材)
まず、電子機器に適用する導電性部材の一例として、バスバーについて説明する。
図1および
図2に示すように、導電性部材11としてのバスバー13は、端子15および弾性部17を備えている。
図3に示すように、バスバー13では、弾性部17として、湾曲部19が形成されている。なお、
図3では、固定部材25を省いたバスバー13の構造が示されている。湾曲部19は、端子15に繋がっている。
【0017】
湾曲部19には、湾曲部19の動きを拘束する固定部材25が形成されている。固定部材25の一例として、はんだ27が湾曲部19を覆うように形成されている。後述するように、最終的には、大部分のはんだ27は、湾曲部19から排除されることになる。
【0018】
(電子装置の製造方法と電子装置)
次に、上述した複数のバスバー13によって電気的に接続される電子装置の製造方法の一例について説明する。
【0019】
電子装置を構成する電子機器部材3として、基板5aを有する第1電子機器部材3aと基板5bを有する第2電子機器部材3bとを用意する(
図4参照)。また、第1電子機器部材3aと第2電子機器部材3bとの電気的な接続に必要とされる複数のバスバー13を用意する(
図4参照)。
【0020】
図4に示すように、複数のバスバー13のそれぞれは、基板5aにおける所定の位置に取り付けられる。ここでは、複数のバスバー13のそれぞれは、基板5aに設けられた対応する開口部7aに取り付けられる。バスバー13における湾曲部19には、はんだ27が形成されている。バスバー13では、湾曲部19の動きが、はんだ27によって拘束された状態にある。
【0021】
次に、基板5aに取り付けられた複数のバスバー13のそれぞれの端子15を、基板5bに接続箇所7として設けられた対応する開口部7bに位置合わせをする。次に、
図5に示すように、複数のバスバー13のそれぞれの端子15を、対応する開口部7bに挿通させる。
【0022】
このとき、湾曲部19の動きが、はんだ27によって拘束された状態にある。これにより、バスバー13の端子15が、一旦、位置合わせされた位置から動いたり、端子15が変形等することが抑制されて、それぞれのバスバー13の端子15を、対応する開口部7bに容易に挿通させることができる。
【0023】
次に、湾曲部19に形成されたはんだ27に対して、対応する開口部7bに挿通された端子15が下方に位置するように、電子機器部材3を配置する。すなわち、
図6に示すように、端子15が、はんだ27よりも重力方向の下側に位置するように、電子機器部材3の姿勢を調整する。次に、たとえば、はんだごて(図示せず)を端子15に当接し、湾曲部19に伝導する熱によって、湾曲部19を覆うはんだ27を溶融させる。
【0024】
図7に示すように、溶融したはんだは、重力によって端子15を伝って開口部7bに流れ込む。こうして、
図8に示すように、導電性部材11としてのバスバー13の端子15が、第2電子機器部材3bに電気的に接続されて、電子装置1が製造される。なお、
図7に示すように、湾曲部19における端子15側に位置する部分には、はんだ27の一部(はんだ27a)が残されることがある。
【0025】
上述した導電性部材11を適用した電子装置1の製造方法では、導電性部材11の端子15の位置合わせを容易に行うことができる。このことについて、比較例に係る電子装置の製造方法と比べて説明する。
【0026】
図9に示すように、比較例に係る電子装置101の製造方法では、まず、基板105aに複数のバスバー113が取り付けられた第1電子機器部材103aが用意される。複数のバスバー113のそれぞれには、弾性部117が設けられている。次に、複数のバスバー113のそれぞれの端子115を、第2電子機器部材103bの基板105bにおける対応する開口部107に位置合わせをし、
図10に示すように、それぞれの端子115を、対応する開口部107に挿通させる。
【0027】
このとき、
図9に示すように、バスバー113のそれぞれに設けられている弾性部117が変形すると、バスバー113の端子115が動いたり、振動したりするなどして、それぞれの端子115を対応する開口部107に位置合わせをするのが難しくなる。また、一旦、位置合わせされた端子115が、位置合わせされた位置からずれてしまうことがある。
【0028】
この作業は、バスバー113の数(端子115の数)が増えるにしたがって煩雑になる。また、この煩雑な作業に伴って、バスバー113も損傷しやすくなる。その結果、電子装置101の製造に時間を要することになる。また、電子装置101の生産コストの上昇を招くことになる。
【0029】
比較例に係る電子装置101の製造方法に対して、実施の形態に係る電子装置1の製造方法では、バスバー13における湾曲部19には、はんだ27が形成されている。はんだ27は、湾曲部19の動きを拘束する固定部材25として湾曲部19に形成されている。このため、複数のバスバー13のそれぞれの端子15を、第2電子機器部材3bの基板5bにおける対応する開口部7bに位置合わせを行う際には、バスバー13の湾曲部19の動きが、はんだ27によって拘束された状態にある。
【0030】
これにより、湾曲部19の変形が抑制されて、バスバー13の端子15が動いたり、振動したりするなどして、バスバー13の端子15が、一旦、位置合わせされた位置から動いたり、端子15が変形等することが抑制される。その結果、それぞれの端子15を、対応する開口部7bに容易に位置合わせをして開口部7bに挿通させることができ、製造時間の短縮化を図ることができる。さらに、生産コストの低減に寄与することができる。
【0031】
また、端子15と基板5bとの電気的な接続には、湾曲部19の動きを拘束していたはんだ27が使用される。湾曲部19に形成されていたはんだ27は、溶融されて、湾曲部19から端子15(開口部7b)へ流れ込むことで、湾曲部19から排除されることになる。このことで、導電性部材11は、弾性部17としての機能を有することになる。
【0032】
これにより、電子装置1において、たとえば、電子機器部材3(第1電子機器部材3aまたは第2電子機器部材3b)からの発熱または外部からの振動等に伴い、バスバー13に作用する応力を、弾性部17としての湾曲部19に吸収させることができ、電子装置1の動作の安定化に寄与することができる。さらに、電子装置1の長寿命化にも寄与することができる。
【0033】
実施の形態2
(導電性部材)
図11に示すように、導電性部材11の他の例としてのバスバーは、端子15および弾性部17(湾曲部19)を備えている。湾曲部19には、湾曲部19の動きを固定する固定部材25としての蝋29が、湾曲部19を覆うように形成されている。後述するように、最終的には、蝋29は、湾曲部19から排除されることになる。
【0034】
(電子装置の製造方法と電子装置)
次に、上述した複数のバスバー13によって電気的に接続される電子装置の製造方法の一例について説明する。
【0035】
まず、前述した
図14に示す工程と同様に、第1電子機器部材3aの基板5aにおける所定の位置に複数のバスバー13が取り付けられる。次に、基板5aに取り付けられた複数のバスバー13のそれぞれの端子15を、基板5bに設けられた対応する開口部7bに位置合わせをする。次に、前述した
図5に示す工程と同様に、複数のバスバー13のそれぞれの端子15を、対応する開口部7bに挿通させる。
【0036】
このとき、
図12に示すように、端子15が、蝋29よりも重力方向の下側に位置するように、電子機器部材3の姿勢を調整する。次に、
図13に示すように、溶融したはんだ31を開口部7bへ供給する。溶融したはんだ31の熱が湾曲部19へ伝導することで、蝋29が溶融する。
図14に示すように、溶融した蝋29は、重力によって湾曲部19から端子15を伝ってはんだ31を覆うように流れる。こうして、バスバー13の端子15が、第2電子機器部材3bに電気的に接続されて、電子装置1が製造される。
【0037】
上述した電子装置1の製造方法では、バスバー13における湾曲部19には、湾曲部19の動きを拘束する蝋29が形成されている。このため、複数のバスバー13のそれぞれの端子15を、基板5bにおける対応する開口部7bに位置合わせを行う際には、バスバー13の湾曲部19の動きが、蝋29によって拘束された状態にある。
【0038】
これにより、前述した電子装置1と同様に、それぞれの端子15を、対応する開口部7bに容易に位置合わせをして開口部7bに挿通させることができ、製造時間の短縮化を図ることができる。さらに、生産コストの低減に寄与することができる。
【0039】
また、湾曲部19の動きを拘束していた蝋29は、溶融されて、はんだ31を覆うように下方に流れることで、湾曲部19から排除されることになる。このことで、導電性部材11は、弾性部17としての機能を有することになる。
【0040】
これにより、前述した電子装置1と同様に、バスバー13に作用する応力を、弾性部17としての湾曲部19に吸収させることができ、電子装置1の動作の安定化に寄与することができる。さらに、電子装置1の長寿命化にも寄与することができる。
【0041】
(導電性部材の形状のバリエーション)
(第1変形例)
各実施の形態においては、導電性部材11としてのバスバー13における弾性部17として、湾曲部19を例に挙げて説明した。弾性部17の形状としては湾曲部19に限られない。
図15に示すように、たとえば、湾曲部19と屈曲部20とを組み合わせた弾性部17を備えたバスバー13を適用してもよい。
【0042】
この場合には、端子15が重力下方に位置する姿勢において、屈曲部20が上側に位置し、なだらかな湾曲部19が下側に位置する配置構造とされる。はんだ27が、屈曲部20から湾曲部19の一部を覆うように形成されていることで、弾性部17の動きが拘束される。これにより、上述したバスバー13と同様に、端子15を、対応する開口部7bに容易に位置合わせをして開口部7bに挿通させることができる。
【0043】
次に、
図16に示すように、屈曲部20等に形成されていたはんだ27は、はんだごて(図示せず)から伝導する熱によって溶融し、屈曲部20から湾曲部19を経て端子15(開口部7b)へ流れ込むことで、屈曲部20等から排除されることになる。これにより、上述したバスバー13と同様に、導電性部材11は、弾性部17としての機能を有することになり、電子装置1の動作の安定化と長寿命化とに寄与することができる。なお、はんだ27の替わりに、蝋を形成するようにしてもよい。
【0044】
(第2変形例)
導電性部材11として、
図17に示すように、屈曲部を組み合わせたジグザグ部21を備えた導電性部材11を適用してもよい。この場合、ジグザグ部21の動きを拘束するとともに、ジグザグ部21から排除され得る適切な量のはんだがジグザグ部21に形成される。また、はんだの替わりに、蝋を形成するようにしてもよい。
【0045】
(第3変形例)
導電性部材11として、
図18に示すように、らせん部23を備えた導電性部材11を適用してもよい。この場合、らせん部23の動きを拘束するとともに、らせん部23から排除され得る適切な量のはんだがらせん部23に形成される。また、はんだの替わりに、蝋を形成するようにしてもよい。
【0046】
なお、導電性部材11の形状として、バスバー態様の形状を例に挙げて説明した。導電性部材11の形状としては、バスバー態様の形状に限られず、たとえば、弾性部を備えたピン態様の形状を有する導電性部材を適用してもよい。また、弾性部を備えたコネクタ態様の導電性部材11を適用してもよい。
【0047】
さらに、導電性部材11の弾性部17に形成される固定部材25として、はんだ27または蝋29を例に挙げた。固定部材25としては、端子を接続箇所に接合する際の熱によって溶融することができれば、はんだ27または蝋29に限られず、たとえば、350℃~400℃程度の熱によって溶融することができる、たとえば、樹脂等の固定部材を適用してもよい。
【0048】
また、固定部材25としては、端子15を接続する前では、弾性部17の動きを拘束し、端子15が接続された後では、弾性部17から取り除くことができれば、融点に関係なく他の部材も適用することができる。
【0049】
さらに、導電性部材11の端子15が接続される接続箇所として、基板5(5b)に形成された開口部7bを例に挙げた。接続箇所としては、開口部7bに限られず、たとえば、電極パッド等であってもよい。
【0050】
また、導電性部材11が電気的に接続される電子機器部材3としては、たとえば、モータまたはモータを使用した電動アクチュエータ等も適用することができる。導電性部材11における弾性部17によって、モータまたは電動アクチュエータの駆動に伴う振動等を吸収することができる。
【0051】
なお、各実施の形態において説明した導電性部材を備えた電子装置については、必要に応じて種々組み合わせることが可能である。
【0052】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、バスバー等の導電性部材を備えた電子装置に有効に利用される。
【符号の説明】
【0054】
1 電子装置、3 電子機器部材、3a 第1電子機器部材、3b 第2電子機器部材、5、5a、5b 基板、7 接続箇所、7a、7b 開口部、11 導電性部材、13 バスバー、15 端子、17 弾性部、19 湾曲部、21 ジグザグ部、23 らせん部、25 固定部材、27、27a、31 はんだ、29 蝋。