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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036133
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】位置推定システムおよび位置推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20240308BHJP
   G16Y 20/10 20200101ALI20240308BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
G16Y20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140874
(22)【出願日】2022-09-05
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
2.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】597124316
【氏名又は名称】学校法人東北工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】工藤 栄亮
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA09
5J062BB05
5J062CC18
5J062FF01
5J062FF06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】無線端末の位置を高精度に推定する位置推定システムを提供する。
【解決手段】既知の位置にあり、1つまたは複数のセンサにより測定されたセンサ情報を取得する、複数のセンサ付き無線端末Cn(n:2以上の自然数)と、未知の位置にあり、1つまたは複数のセンサにより測定されたセンサ情報を取得するセンサ付き無線端末Xと、無線端末Xの位置を推定する位置推定装置と、を有する位置推定システムであって、
前記位置推定装置は、無線端末Cnの位置情報と、無線端末Cnから受信したセンサ情報および前記センサ情報を受信して得られる受信信号情報と、無線端末Cnから前記センサ情報を受信した時点における環境情報とを利用して、無線端末Xから受信したセンサ情報および前記センサ情報を受信して得られる受信信号情報と、無線端末Xから前記センサ情報を受信した時点における環境情報とに基づき、無線端末Xの位置を推定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既知の位置にあり、1つまたは複数のセンサにより測定されたセンサ情報を取得する、複数のセンサ付き無線端末Cn(n:2以上の自然数)と、
未知の位置にあり、1つまたは複数のセンサにより測定されたセンサ情報を取得するセンサ付き無線端末Xと、
前記無線端末Xの位置を推定する位置推定装置と、を有し、
前記位置推定装置は、
前記無線端末Cnから送信される前記センサ情報を受信し、前記センサ情報を受信時の受信信号情報を取得するとともに、前記無線端末Xから送信される前記センサ情報を受信し、前記センサ情報を受信時の受信信号情報を取得する受信部と、
1つまたは複数の環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記無線端末Cnの位置情報と、前記受信部で得られた前記無線端末Cnの前記センサ情報および前記受信信号情報と、前記無線端末Cnから前記センサ情報を受信した時点における前記環境情報とを利用して、前記受信部で得られた前記無線端末Xの前記センサ情報および前記受信信号情報と、前記無線端末Xから前記センサ情報を受信した時点における前記環境情報とに基づき、前記無線端末Xの位置を推定する位置推定部と、
を備えたことを特徴とする位置推定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の位置推定システムにおいて、
前記位置推定装置は、
前記環境情報取得部で得られた前記環境情報に基づき、前記無線端末Cnの位置情報と、前記受信部で得られた前記無線端末Cnの前記センサ情報および前記受信信号情報と、を対応させるテーブルを作製するデータベース作成部を備えたことを特徴とする位置推定システム。
【請求項3】
請求項2に記載の位置推定システムにおいて、
前記位置推定部は、前記受信部で得られた前記無線端末Xの前記センサ情報および前記受信信号情報と、前記無線端末Xから前記センサ情報を受信した時点における前記環境情報と類似する環境情報を有する、前記データベース作成部で作製した前記テーブルの情報と、を比較して誤差が最小となる位置を特定することにより、前記無線端末Xの位置を推定することを特徴とする位置推定システム。
【請求項4】
請求項1に記載の位置推定システムにおいて、
前記位置推定部は、前記受信部で得られた前記無線端末Cnの前記センサ情報および前記受信信号情報と、前記環境情報取得部で得られた前記環境情報と、を入力信号とし、前記無線端末Cnの位置情報を教師データとして機械学習を用いる方法によりニューラルネットワークを作製するとともに、
前記受信部で得られた前記無線端末Xの前記センサ情報および前記受信信号情報と、前記無線端末Xから前記センサ情報を受信した時点における前記環境情報とを、前記ニューラルネットワークの入力信号として、前記無線端末Xの位置を推定することを特徴とする位置推定システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の位置推定システムにおいて、
前記受信信号情報には、受信信号電力、RSSI、受信波包絡線レベル、遅延時間の情報のうちの1つまたは複数を含むことを特徴とする位置推定システム。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の位置推定システムにおいて、
前記センサ情報には、磁力センサ、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、気圧センサ、カメラ撮像装置により得られる情報のうちの1つまたは複数を含むことを特徴とする位置推定システム。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の位置推定システムにおいて、
前記環境情報には、時刻、ドアの位置および開閉、エアコンの位置および設定、照明の位置および設定、天候の情報のうちの1つまたは複数を含むことを特徴とする位置推定システム。
【請求項8】
未知の位置にあり、1つまたは複数のセンサにより測定されたセンサ情報を取得するセンサ付き無線端末Xの位置を推定する方法であって、
既知の位置にあり、1つまたは複数のセンサにより測定されたセンサ情報を取得する、複数のセンサ付き無線端末Cn(n:2以上の自然数)から送信される前記センサ情報を受信し、前記センサ情報を受信時の受信信号情報を取得するステップと、
前記無線端末Cnから送信される前記センサ情報を受信した時点における1つまたは複数の環境情報を取得するステップと、
前記無線端末Xから送信される前記センサ情報を受信し、前記センサ情報を受信時の受信信号情報を取得するステップと、
前記無線端末Xから送信される前記センサ情報を受信した時点における1つまたは複数の環境情報を取得するステップと、
前記無線端末Cnの位置情報と、前記無線端末Cnの前記センサ情報および前記受信信号情報と、前記無線端末Cnから前記センサ情報を受信した時点における前記環境情報とを利用して、前記無線端末Xの前記センサ情報および前記受信信号情報と、前記無線端末Xから前記センサ情報を受信した時点における前記環境情報とに基づき、前記無線端末Xの位置を推定するステップと、
を含むことを特徴とする位置推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末の位置を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線端末の位置を推定する方法としては、屋外ではGPS(Global Positioning System)を用いる方法が広く利用されているが、屋内では衛星からの電波を受信することは困難であり、GPSを用いる位置推定も困難である。無線LAN(Local Area Network)が広く普及し、屋内でも無線LANからの受信信号電力を用いて位置を推定する方法があるが、電波は、反射・回折・散乱によって多重波として受信され、フェージングと呼ばれる大きな変動が発生するため、受信信号電力のみで、高精度な位置推定を行うことは困難である。一方、IoT(Internet of Things)の普及により、各種センサからの情報を得ることも可能であり、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、気圧センサ、磁力センサなどのセンサによって得られる情報は位置に依存する。そこで、既知の位置にある無線端末のセンサにより得られるセンシング情報および受信信号情報を用いてデータベースを作製し、位置を推定すべき無線端末のセンサにより得られるセンシング情報および受信信号情報と比較することにより、高精度な位置推定を行うことが可能となる。
【0003】
例えば、特許文献1では、既知の位置におけるモバイルデバイスの環境センサにより得られたセンシング情報を用いて、未知の位置におけるモバイルデバイスの位置推定を行う方法が開示されている。ここでセンシング情報として、磁力計、周囲光検出器、カメラ撮像装置、マイクロフォン、温度センサ、大気圧センサ、から得られる情報のうちの1つまたは複数を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2014-533352
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらのセンシング情報は、時間により変動し、さらに例えば、ドアの位置および開閉、エアコンの位置や設定、照明の位置や設定、天候等の環境情報によっても変動してしまうため、データベースを常に更新しないと位置推定精度が劣化してしまう欠点がある。
【0006】
本発明の目的は、既知の位置にある無線端末のセンサにより得られるセンシング情報および受信信号情報と環境情報とを用いて、未知の位置にある無線端末の位置を高精度に推定する位置推定システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、第1発明に係る位置推定システムは、
既知の位置にあり、1つまたは複数のセンサにより測定されたセンサ情報を取得する、複数のセンサ付き無線端末Cn(n:2以上の自然数)と、
未知の位置にあり、1つまたは複数のセンサにより測定されたセンサ情報を取得するセンサ付き無線端末Xと、
前記無線端末Xの位置を推定する位置推定装置と、を有し、
前記位置推定装置は、
前記無線端末Cnから送信される前記センサ情報を受信し、前記センサ情報を受信時の受信信号情報を取得するとともに、前記無線端末Xから送信される前記センサ情報を受信し、前記センサ情報を受信時の受信信号情報を取得する受信部と、
1つまたは複数の環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記無線端末Cnの位置情報と、前記受信部で得られた前記無線端末Cnの前記センサ情報および前記受信信号情報と、前記無線端末Cnから前記センサ情報を受信した時点における前記環境情報とを利用して、前記受信部で得られた前記無線端末Xの前記センサ情報および前記受信信号情報と、前記無線端末Xから前記センサ情報を受信した時点における前記環境情報とに基づき、前記無線端末Xの位置を推定する位置推定部と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る位置推定システムは、第1発明において、
前記位置推定装置は、
前記環境情報取得部で得られた前記環境情報に基づき、前記無線端末Cnの位置情報と、前記受信部で得られた前記無線端末Cnの前記センサ情報および前記受信信号情報と、を対応させるテーブルを作製するデータベース作成部を備えたことを特徴とする。
【0009】
第3発明に係る位置推定システムは、第2発明において、
前記位置推定部は、前記受信部で得られた前記無線端末Xの前記センサ情報および前記受信信号情報と、前記無線端末Xから前記センサ情報を受信した時点における前記環境情報と類似する環境情報を有する、前記データベース作成部で作製した前記テーブルの情報と、を比較して誤差が最小となる位置を特定することにより、前記無線端末Xの位置を推定することを特徴とする。
【0010】
第4発明に係る位置推定システムは、第1発明において、
前記位置推定部は、前記受信部で得られた前記無線端末Cnの前記センサ情報および前記受信信号情報と、前記環境情報取得部で得られた前記環境情報と、を入力信号とし、前記無線端末Cnの位置情報を教師データとして機械学習を用いる方法によりニューラルネットワークを作製するとともに、
前記受信部で得られた前記無線端末Xの前記センサ情報および前記受信信号情報と、前記無線端末Xから前記センサ情報を受信した時点における前記環境情報とを、前記ニューラルネットワークの入力信号として、前記無線端末Xの位置を推定することを特徴とする。
【0011】
第5発明に係る位置推定システムは、第1発明乃至第4発明において、
前記受信信号情報には、受信信号電力、RSSI、受信波包絡線レベル、遅延時間の情報のうちの1つまたは複数を含むことを特徴とする。
【0012】
第6発明に係る位置推定システムは、第1発明乃至第4発明において、
前記センサ情報には、磁力センサ、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、気圧センサ、カメラ撮像装置により得られる情報のうちの1つまたは複数を含むことを特徴とする。
【0013】
第7発明に係る位置推定システムは、第1発明乃至第4発明において、
前記環境情報には、時刻、ドアの位置および開閉、エアコンの位置および設定、照明の位置および設定、天候の情報のうちの1つまたは複数を含むことを特徴とする。
【0014】
第8発明に係る位置推定方法は、
未知の位置にあり、1つまたは複数のセンサにより測定されたセンサ情報を取得するセンサ付き無線端末Xの位置を推定する方法であって、
既知の位置にあり、1つまたは複数のセンサにより測定されたセンサ情報を取得する、複数のセンサ付き無線端末Cn(n:2以上の自然数)から送信される前記センサ情報を受信し、前記センサ情報を受信時の受信信号情報を取得するステップと、
前記無線端末Cnから送信される前記センサ情報を受信した時点における1つまたは複数の環境情報を取得するステップと、
前記無線端末Xから送信される前記センサ情報を受信し、前記センサ情報を受信時の受信信号情報を取得するステップと、
前記無線端末Xから送信される前記センサ情報を受信した時点における1つまたは複数の環境情報を取得するステップと、
前記無線端末Cnの位置情報と、前記無線端末Cnの前記センサ情報および前記受信信号情報と、前記無線端末Cnから前記センサ情報を受信した時点における前記環境情報とを利用して、前記無線端末Xの前記センサ情報および前記受信信号情報と、前記無線端末Xから前記センサ情報を受信した時点における前記環境情報とに基づき、前記無線端末Xの位置を推定するステップと、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、既知の位置にある無線端末のセンサにより得られるセンサ情報だけでなく、時刻、ドアの位置および開閉、エアコンの位置および設定、照明の位置および設定、天候などの環境情報も加えてデータベースを作製し、位置を推定すべき無線端末のセンサにより得られるセンサ情報とデータベースの情報とを比較することにより、高精度な位置推定を行うことが可能となる。
【0016】
さらに、位置推定に用いるデータベースの元となる既知の位置におけるセンサ情報と位置を推定すべき無線端末に接続されたセンサ情報との取得時刻に差がある場合でも、環境情報を得ることにより、適切なデータベースを作製することが可能となり、より高精度な位置推定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る位置推定システムを説明するシステム構成図の一例を示した模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る位置推定システムにおける位置推定装置の機能構成を示した機能ブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る位置推定システムにおいて、位置推定装置で実行される処理手順の一例を示したフローチャート図である。
図4】本発明の実施形態に係る位置推定システムにおいて、実験データを測定する環境の一例を示した模式図である。
図5】本発明の実施形態に係る位置推定システムにおいて、実験データの測定結果の一例を示した図である。
図6】本発明の実施形態に係る位置推定システムにおいて、実験データの測定結果の一例を示した図である。
図7】本発明の実施形態に係る位置推定システムにおいて、実験環境における位置推定結果の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下に述べる実施形態により限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る位置推定システムについて、システム構成図の一例を示したものである。
【0020】
<システム構成>
図1に示すように、位置推定システム1は、既知の位置にあり、1つまたは複数のセンサにより測定されたセンサ情報を取得するセンサ付き無線端末C1、C2、C3と、未知の位置にあり、1つまたは複数のセンサにより測定されたセンサ情報を取得するセンサ付き無線端末Xと、1つまたは複数の環境情報を取得する無線端末Eと、無線通信機能を備えた位置推定装置20と、を有している。
【0021】
位置推定装置20は、一般的なコンピュータ装置であり、無線通信を介して無線端末からデータを取得できるように、通信制御を行う機能を有している。また位置推定装置20は、センサ付き無線端末C1、C2、C3およびセンサ付き無線端末Xから無線通信を経由してセンサ情報を受信し、また無線端末Eから無線通信を経由して環境情報を受信する構成としている。ここで無線通信の方式として、例えば国際標準の規格(IEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax, ZigBee, LPWA, Bluetooth等)に従った無線通信方式を使用することができる。
【0022】
本実施形態においては、センサ付き無線端末を3個(C1、C2、C3)の構成としているが、3個に限定されず、最低2個以上あればよい。また環境情報を取得する無線端末Eを1個の構成としているが、2個以上あってもよい。さらに、環境情報を取得する端末として、無線端末Eの代わりに、無線機能を備えていない端末が、例えばインターネットを介して位置推定装置20に接続するような構成としてもよい。
【0023】
さらに位置推定装置20については、その機能の一部を、例えばインターネットを介してクラウド上に構築するような構成とすることも可能である。
【0024】
<機能構成1>
次に、図2に示す機能ブロック図を用いて位置推定装置20の機能構成について説明する。図2に示すように、位置推定装置20は、受信部21、環境情報取得部22、データベース作成部23、位置推定部24を備えている。
【0025】
受信部21は、センサ付き無線端末C1、C2、C3から送信されるセンサ情報を受信し、前記センサ情報を受信時の受信信号情報を取得する。また受信部21は、センサ付き無線端末Xから送信されるセンサ情報を受信し、前記センサ情報を受信時の受信信号情報を取得する。
【0026】
ここで上記のセンサ情報には、磁力センサ、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、気圧センサ、カメラ撮像装置により得られる情報などがあり、これらの情報のうちの1つまたは複数の組合せを含んでいる。
【0027】
また上記の受信信号情報には、受信信号電力、RSSI (Received Signal Strength Indicator)、受信波包絡線レベル、遅延時間の情報などがあり、これらの情報のうちの1つまたは複数の組合せを含んでいる。
【0028】
環境情報取得部22は、無線端末Eから送信される環境情報を受信する。なお本実施形態においては、環境情報を取得する端末として無線端末Eを想定しているが、環境情報を取得する端末として、無線端末Eの代わりに、無線機能を備えていない端末が、例えばインターネットを介して位置推定装置20に接続するような構成としてもよい。さらに環境情報取得部22は、無線端末Eから送信される環境情報を取得することに限定されず、例えば手動で設定される環境情報を取得するような構成としてもよい。
【0029】
ここで上記の環境情報には、時刻、ドアの位置および開閉、エアコンの位置および設定、照明の位置および設定、天候の情報などがあり、これらの情報のうちの1つまたは複数の組合せを含んでいる。
【0030】
データベース作成部23は、センサ付き無線端末C1、C2、C3の位置情報と、受信部21で得られたセンサ付き無線端末C1、C2、C3の前記センサ情報および前記受信信号情報と、環境情報取得部22で得られた前記環境情報と、を関連付けるデータベースを構築する。
【0031】
またデータベース作成部23は、例えば、環境情報取得部22で得られた前記環境情報に基づき、センサ付き無線端末C1、C2、C3の位置情報と、受信部21で得られたセンサ付き無線端末C1、C2、C3の前記センサ情報および前記受信信号情報と、を対応させるテーブルを作製する。
【0032】
位置推定部24は、センサ付き無線端末C1、C2、C3の位置情報と、受信部21で得られたセンサ付き無線端末C1、C2、C3の前記センサ情報および前記受信信号情報と、センサ付き無線端末C1、C2、C3から前記センサ情報を受信した時点における前記環境情報とを利用して、受信部21で得られたセンサ付き無線端末Xの前記センサ情報および前記受信信号情報と、センサ付き無線端末Xから前記センサ情報を受信した時点における前記環境情報とに基づき、センサ付き無線端末Xの位置を推定する。
【0033】
さらに詳細には、位置推定部24は、受信部21で得られたセンサ付き無線端末Xの前記センサ情報および前記受信信号情報と、センサ付き無線端末Xから前記センサ情報を受信した時点における前記環境情報と類似する環境情報を有する、データベース作成部23で作製した前記テーブルの情報と、を比較して誤差が最小となる位置を特定することにより、センサ付き無線端末Xの位置を推定する。
【0034】
ここで、上記に述べた“誤差が最小となる位置を特定する方法”については、例えば、最小平均二乗誤差推定(MMSE:Minimum Mean Square Error)を用いて高精度な位置推定が可能であることが開示されている。(“マルチ情報を用いる最小誤差屋内位置推定法”、平成29年東北地区若手研究者研究発表会、YS29-3-3-2, pp.75-76, 2017年3月)
【0035】
<機能構成2>
また図2に示す機能ブロック図には図示されていないが、ニューラルネットワークを用いてセンサ付き無線端末Xの位置を推定する構成とすることも可能である。この場合は、データベース作成部23では、学習で利用するデータベースを作成する。
【0036】
位置推定部24は、受信部21で得られたセンサ付き無線端末C1、C2、C3の前記センサ情報および前記受信信号情報と、環境情報取得部22で得られた前記環境情報と、を入力信号とし、センサ付き無線端末C1、C2、C3の位置情報を教師データとして機械学習を用いる方法によりニューラルネットワークを作製する。
【0037】
次に位置推定部24では、受信部21で得られたセンサ付き無線端末Xの前記センサ情報および前記受信信号情報と、センサ付き無線端末Xから前記センサ情報を受信した時点における前記環境情報とを、前記ニューラルネットワークの入力信号として、センサ付き無線端末Xの位置を推定する。
【0038】
ここで、上記に述べた“ニューラルネットワークを用いて位置を推定する方法”については、例えば、ニューラルネットワークの学習アルゴリズムであるバックプロパゲーション(誤差逆伝播法)を用いて、高精度な位置推定が可能であることが開示されている。(“マルチセンシング情報を用いる機械学習屋内位置推定法”、平成31年度東北地区若手研究者研究発表会)
【0039】
<処理手順>
次に、図3に示すフローチャート図を用いて、本システムの実行するプロセスについて説明する。図3は、位置推定装置20で実行される処理手順の一例(上記の機能構成1を前提にした場合)を示したフローチャート図である。
【0040】
<ステップS10>
センサ付き無線端末Cn(n:2以上の自然数)は、既知の位置にあり、1つまたは複数のセンサにより測定されたセンサ情報を取得するものであり、このステップS10では、複数のセンサ付き無線端末Cnから送信される前記センサ情報を受信し、前記センサ情報を受信時の受信信号情報を取得する。
【0041】
ここで上記のセンサ情報には、磁力センサ、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、気圧センサ、カメラ撮像装置により得られる情報などがあり、これらの情報のうちの1つまたは複数の組合せを含んでいる。
【0042】
また上記の受信信号情報には、受信信号電力、RSSI (Received Signal Strength Indicator)、受信波包絡線レベル、遅延時間の情報などがあり、これらの情報のうちの1つまたは複数の組合せを含んでいる。
【0043】
<ステップS20>
センサ付き無線端末Cnから送信される前記センサ情報を受信した時点における環境情報を取得する。この環境情報は1つまたは複数個あり、時刻、ドアの位置および開閉、エアコンの位置および設定、照明の位置および設定、天候の情報などがあり、これらの情報のうちの1つまたは複数の組合せを含んでいる。
【0044】
また上記の環境情報として、例えば無線端末Eから送信される情報や、手動で設定される情報がある。
【0045】
<ステップS30>
センサ付き無線端末Cnの位置情報と、センサ付き無線端末Cnから受信した前記センサ情報および前記センサ情報を受信して得られる受信信号情報と、センサ付き無線端末Cnから前記センサ情報を受信した時点における前記環境情報と、を関連付けるデータベースを構築する。
【0046】
さらに詳細には、例えば、ステップS20で得られた前記環境情報に基づき、センサ付き無線端末Cnの位置情報と、ステップS10で得られたセンサ付き無線端末Cnの前記センサ情報および前記受信信号情報と、を対応させるテーブルを作製する。
【0047】
<ステップS40>
センサ付き無線端末Xは、未知の位置にあり、1つまたは複数のセンサにより測定されたセンサ情報を取得するものであり、このステップS40では、センサ付き無線端末Xから送信される前記センサ情報を受信し、前記センサ情報を受信時の受信信号情報を取得する。
【0048】
ここで上記のセンサ情報には、磁力センサ、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、気圧センサ、カメラ撮像装置により得られる情報などがあり、これらの情報のうちの1つまたは複数の組合せを含んでいる。
【0049】
また上記の受信信号情報には、受信信号電力、RSSI、受信波包絡線レベル、遅延時間の情報などがあり、これらの情報のうちの1つまたは複数の組合せを含んでいる。
【0050】
<ステップS50>
センサ付き無線端末Xから送信される前記センサ情報を受信した時点における環境情報を取得する。この環境情報は1つまたは複数個あり、時刻、ドアの位置および開閉、エアコンの位置および設定、照明の位置および設定、天候の情報などがあり、これらの情報のうちの1つまたは複数の組合せを含んでいる。
【0051】
また上記の環境情報として、例えば無線端末Eから送信される情報や、インターネットを介して送信される情報、手動で設定される情報がある。
【0052】
<ステップS60>
ステップS30で制作したセンサ付き無線端末Cnに関する前記テーブルの情報を利用して、センサ付き無線端末Xの前記センサ情報および前記受信信号情報と、センサ付き無線端末Xから前記センサ情報を受信した時点における前記環境情報とに基づき、センサ付き無線端末Xの位置を推定する。
【0053】
さらに詳細には、ステップS40で得られたセンサ付き無線端末Xの前記センサ情報および前記受信信号情報と、センサ付き無線端末Xから前記センサ情報を受信した時点における前記環境情報と類似する環境情報を有する、ステップS30で作製した前記テーブルの情報と、を比較して誤差が最小となる位置を特定することにより、センサ付き無線端末Xの位置を推定する。
【0054】
以上で説明した処理手順(ステップS10~ステップS60)は、上記の機能構成1を前提にしたものであり、データベースを利用してセンサ付き無線端末Xの位置を推定する方法を示したものである。
【0055】
また上記の機能構成2を前提にする場合は、すなわちニューラルネットワークを利用してセンサ付き無線端末Xの位置を推定する方法の場合には、上記のステップS30およびステップS60を次のように置き換えることにより可能となる。
【0056】
<ステップS30の置換処理>
センサ付き無線端末C1、C2、C3の前記センサ情報および前記受信信号情報と、環境情報取得部22で得られた前記環境情報と、を入力信号とし、センサ付き無線端末C1、C2、C3の位置情報を教師データとして機械学習を用いる方法によりニューラルネットワークを作製する。
【0057】
<ステップS60の置換処理>
センサ付き無線端末Xの前記センサ情報および前記受信信号情報と、センサ付き無線端末Xから前記センサ情報を受信した時点における前記環境情報とを、前記ニューラルネットワークの入力信号として、センサ付き無線端末Xの位置を推定する。
【0058】
以上で説明したステップS10からステップS60を、例えばコンピュータプログラムで実行させるように構成することも可能である。
【0059】
<実施例>
次に、図4図7を用いて、実験環境において実験データを測定して位置推定した結果について説明する。図4は、実験データを測定する環境の一例を示した模式図である。
【0060】
図4の上図は、センサ付き無線端末の外観を示したものであり、下図は実験環境を示したものである。本実験環境において、Coordinator (C)は位置推定装置であり、End device (E)はセンサ付き無線端末であり、C-E間は近距離無線通信(ZigBee)を利用して実験データを測定している。本実験環境は、東北工業大学八木山キャンパスの校舎の廊下に設定した。本実験環境では、位置推定装置を固定位置に配置し、位置推定装置から5m間隔でセンサ付き無線端末を配置して、各センサ付き無線端末においてセンサ情報取得して、そのセンサ情報を位置推定装置に送信するようにしている。位置推定装置では、そのセンサ情報を受信するとともに、受信した際の受信信号情報を取得するようにしている。
【0061】
図5は、実験データの測定結果の一例を示したものである。位置推定装置から5m間隔で配置された各センサ付き無線端末において、センサ情報として温度(temperature)と照度(illumination)を取得し、そのセンサ情報を位置推定装置に送信する。位置推定装置ではそのセンサ情報を受信するとともに、受信した際の受信信号情報(Received signal power)を測定する。図5は、位置推定装置が各センサ付き無線端末から受信した温度(temperature)と照度(illumination)、および測定した受信信号情報(Received signal power)について、横軸を位置推定装置~各センサ付き無線端末間の距離としてグラフ表示したものである。
【0062】
図6は、実験データの測定結果の一例を示したものであり、環境情報を“時刻”と設定したケースを示したものである。位置推定装置から35mの位置に配置されたセンサ付き無線端末において、センサ情報として温度(temperature)と照度(illumination)を取得し、そのセンサ情報を位置推定装置に送信する。位置推定装置ではそのセンサ情報を受信するとともに、受信した際の受信信号情報(Received signal power)を取得する。図6は、位置推定装置が当該センサ付き無線端末から受信した温度(temperature)と照度(illumination)、および取得した受信信号情報(Received signal power)について、横軸を時刻としてグラフ表示したものである。本実験環境は、東北工業大学八木山キャンパスの校舎の廊下で測定したものであり、時刻により温度や照度の値が変化していることが示されているが、例えば教室のドアの開閉により値が変動しているものと推察される。
【0063】
本実験環境では、位置を推定すべき無線端末Xが上記センサ付き無線端末の配置されている地点を移動することを前提とし、ニューラルネットワークを用いて無線端末Xの位置を推定する。ここでニューラルネットワークは、位置推定装置からの距離と高度を求める2つの独立した、N個の中間層と出力層からなるニューラルネットワークを仮定する。
【0064】
位置推定装置では、上記実験データとして得られたセンサ情報および受信信号情報を学習データとして、各センサ付き無線端末(学習データセット用無線端末)の実際の位置(距離と高度)を教師データとして学習させる。例えば、教師データの位置と出力の差の2乗に対して、全学習データセット分の和が誤差の上限値を超えたら再度全学習データセットを用いて学習し、誤差の上限値を下回った場合に学習を終了する。その後、学習したニューラルネットワークを用いて無線端末Xの位置を推定する。
【0065】
図7は、実験環境における位置推定結果の一例を示したものであり、上記の実験環境を用いて推定した位置と、実際の位置との一致確率の一例を示した図である。図7に示すように、学習データセット用無線端末に対する位置推定の一致確率については、“時間情報なし”と“時間情報あり”のいずれの場合も98%以上であることから学習が良好に行われていることが評価される。
【0066】
また無線端末Xに対する位置推定の一致確率については、“時間情報なし”の場合は26.1%であったが、“時間情報あり”の場合は37.8%であり、“時間情報なし”の場合と比較して高い一致確率が得られた。
【0067】
以上から、本発明によれば、位置を推定すべき無線端末のセンサにより得られるセンサ情報および受信信号情報、ならびに時間情報などの環境情報とを基に、既知の位置にある無線端末のセンサにより得られるセンサ情報および受信信号情報だけでなく、時間情報などの環境情報も利用することにより、高精度な位置推定を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0068】
1…位置推定システム
10…センサ付き無線端末X
11…センサ付き無線端末C1
12…センサ付き無線端末C2
13…センサ付き無線端末C3
14…センサ付き無線端末E
20…位置推定装置
21…受信部
22…環境情報取得部
23…データベース作成部
24…位置推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7