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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036140
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】超純水製造装置および超純水製造方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/42 20230101AFI20240308BHJP
   B01J 39/04 20170101ALI20240308BHJP
   B01J 41/04 20170101ALI20240308BHJP
   B01J 39/16 20170101ALI20240308BHJP
   B01J 41/12 20170101ALI20240308BHJP
   B01J 47/028 20170101ALI20240308BHJP
   B01J 47/04 20060101ALI20240308BHJP
   B01J 49/08 20170101ALI20240308BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20240308BHJP
   B01J 31/28 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C02F1/42 A
C02F1/42 B
B01J39/04
B01J41/04
B01J39/16
B01J41/12
B01J47/028
B01J47/04
B01J49/08
C02F1/32
B01J31/28 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140883
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】椙原 健司
(72)【発明者】
【氏名】津田 晃彦
(72)【発明者】
【氏名】菅原 広
【テーマコード(参考)】
4D025
4D037
4G169
【Fターム(参考)】
4D025AA04
4D025BA08
4D025BA13
4D025BB03
4D025BB04
4D025BB09
4D025BB16
4D025DA01
4D025DA04
4D025DA05
4D025DA10
4D037AA03
4D037BA18
4D037CA03
4D037CA15
4G169AA03
4G169BA22A
4G169BC75A
4G169CA01
4G169CA10
4G169CA11
4G169DA06
(57)【要約】
【課題】製造される超純水の水質を維持しながら、コスト削減や環境負荷軽減を実現する。
【解決手段】超純水製造装置1は、第1のイオン交換装置11と、第1のイオン交換装置11の下流側に配置された第2のイオン交換装置12とを含むイオン交換装置ユニット10を有し、第1のイオン交換装置11は、カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂が互いに分離した状態で充填された樹脂再利用型のイオン交換装置であり、第2のイオン交換装置12は、カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂が混合された状態で充填された樹脂非再利用型のイオン交換装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を処理して超純水を製造する超純水製造装置であって、
第1のイオン交換装置と、前記第1のイオン交換装置の下流側に配置された第2のイオン交換装置とを含むイオン交換装置ユニットを有し、
前記第1のイオン交換装置は、カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂が互いに分離した状態で充填された樹脂再利用型のイオン交換装置であり、前記第2のイオン交換装置は、カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂が混合された状態で充填された樹脂非再利用型のイオン交換装置である、超純水製造装置。
【請求項2】
前記イオン交換装置ユニットの上流側に配置された紫外線酸化装置を有する、請求項1に記載の超純水製造装置。
【請求項3】
前記第2のイオン交換装置における前記被処理水の空間速度は、前記第1のイオン交換装置における前記被処理水の空間速度よりも大きい、請求項1に記載の超純水製造装置。
【請求項4】
前記第2のイオン交換装置における前記空間速度は、前記第1のイオン交換装置における前記空間速度の20倍未満である、請求項3に記載の超純水製造装置。
【請求項5】
前記第1のイオン交換装置における前記アニオン交換樹脂の充填量は、前記第1のイオン交換装置における前記カチオン交換樹脂の充填量と同量以上である、請求項1から4のいずれか1項に記載の超純水製造装置。
【請求項6】
前記第1のイオン交換装置は、白金族金属担持樹脂が前記カチオン交換樹脂と分離した状態でさらに充填されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の超純水製造装置。
【請求項7】
前記白金族金属担持樹脂と前記アニオン交換樹脂は、互いに分離かつ隣接した状態で1つの樹脂塔に充填されているか、または、それぞれ別の樹脂塔に充填されている、請求項6に記載の超純水製造装置。
【請求項8】
前記第1のイオン交換装置は、前記被処理水が前記アニオン交換樹脂と前記白金族金属担持樹脂とをこの順に流れるように構成されている、請求項7に記載の超純水製造装置。
【請求項9】
前記アニオン交換樹脂と前記白金族金属担持樹脂は、混合された状態で1つの樹脂塔に充填されている、請求項6に記載の超純水製造装置。
【請求項10】
請求項1から4のいずれか1項に記載の超純水製造装置を用いて超純水を製造する超純水製造方法であって、
前記第1のイオン交換装置から前記カチオン交換樹脂と前記アニオン交換樹脂とを抜き出し、該抜き出した樹脂を再生する工程と、
前記再生した樹脂を前記第1のイオン交換装置に戻し、前記第1のイオン交換装置に前記被処理水を通水して処理水を得る工程と、含む超純水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超純水製造装置および超純水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶デバイスの製造プロセスでは、洗浄工程など様々な用途に、不純物が高度に除去された超純水が用いられている。超純水は、一般に、原水(河川水、地下水、工業用水など)を、前処理システム、一次純水システム、および二次純水システム(サブシステム)で順次処理することで製造されるが、そのうち一次純水システムやサブシステムの中には、内部にイオン交換樹脂が充填されたイオン交換装置を備えたものがある。特にサブシステムでは、超純水に対する厳しい水質要求(例えば、金属濃度がpg/Lレベル)を満たすために、それぞれ高度に精製されたカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とが混床で充填された非再生型イオン交換装置(カートリッジポリッシャー)が好適に用いられている。
【0003】
このような非再生型イオン交換装置では、イオン交換樹脂の性能が低下すると、被処理水に含まれる金属イオンなどのイオン成分が除去されずに処理水中にリークしてしまい、超純水の水質が要求するレベルを満たさなくなる。そのため、従来から、イオン交換樹脂の適切な交換時期を把握するために、イオン交換樹脂の性能を評価する方法がいくつか提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-154634号公報
【特許文献2】特許第6806202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、交換された使用済みのイオン交換樹脂は、SDGs(持続可能な開発目標)の観点からも、繰り返し再生されて再利用されることが望ましい。しかしながら、上述した混床式のイオン交換樹脂(カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂との混合物)を再生するには、まずカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とに分離する必要があるが、その分離工程は技術的に難易度が高く、品質管理やコストの面でも課題が多い。したがって、使用済みの混床式のイオン交換樹脂は、超純水製造に求められる極めて高い品質に再生することが難しく、その大部分が再利用されずに廃棄されているのが現状である。近年、半導体需要の高まりから、その製造プロセスで使用される超純水の使用量は増加する傾向にあり、それに伴ってイオン交換樹脂の使用量すなわち廃棄量も増加する傾向にあるため、そのような廃棄量の増加に対する何らかの対策が求められている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、製造される超純水の水質を維持しながら、コスト削減や環境負荷軽減を実現する超純水製造装置および超純水製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明の超純水製造装置は、被処理水を順次処理して超純水を製造する超純水製造装置であって、第1のイオン交換装置と、第1のイオン交換装置の下流側に配置された第2のイオン交換装置とを含むイオン交換装置ユニットを有し、第1のイオン交換装置は、カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂が互いに分離した状態で充填された樹脂再利用型のイオン交換装置であり、第2のイオン交換装置は、カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂が混合された状態で充填された樹脂非再利用型のイオン交換装置である。
【0008】
また、本発明の超純水製造方法は、上記の超純水製造装置を用いて超純水を製造する超純水製造方法であって、第1のイオン交換装置からカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを抜き出し、抜き出した樹脂を再生する工程と、再生した樹脂を第1のイオン交換装置に戻し、第1のイオン交換装置に被処理水を通水して処理水を得る工程と、含んでいる。
【0009】
このような超純水製造装置および超純水製造方法によれば、第1のイオン交換装置によりイオン成分が十分に除去された水が第2のイオン交換装置に供給されるため、第2のイオン交換装置の負荷を低減することができる。その結果、第2のイオン交換装置と同様のイオン交換装置が単独で用いられる場合に比べて、処理水量および処理水質が同じであっても、第2のイオン交換装置におけるイオン交換樹脂の充填量を少なくすることができる。また、第1のイオン交換装置では、使用済みのイオン交換樹脂をカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂に分離する工程が不要になるため、比較的低コストでイオン交換樹脂を再生して再利用することが可能になる。こうして、イオン交換装置ユニット全体での混床式のイオン交換樹脂の使用量(廃棄量)を低減することが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
以上、本発明によれば、製造される超純水の水質を維持しながら、コスト削減や環境負荷軽減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態に係る超純水製造装置の概略構成図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係るイオン交換装置ユニットの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る超純水製造装置の概略構成図である。図1(b)は、本実施形態の超純水製造装置を構成するイオン交換装置ユニットの概略構成図である。なお、図示した超純水製造装置およびイオン交換装置ユニットの構成は、単なる一例であり、本発明を制限するものではない。
【0014】
超純水製造装置1は、一次純水タンク2と、ポンプ3と、熱交換器4と、紫外線酸化装置5と、イオン交換装置ユニット10と、膜脱気装置6と、限外ろ過(UF)膜装置7とを有している。これらは、二次純水システム(サブシステム)を構成し、一次純水システム(図示せず)で製造された一次純水を順次処理して超純水を製造し、その超純水をユースポイント8に供給するものである。
【0015】
一次純水タンク2に貯留された被処理水(一次純水)は、ポンプ3により送出され、熱交換器4に供給される。熱交換器4を通過して温度調節された被処理水は、紫外線酸化装置5に供給されて紫外線を照射され、これにより、被処理水中の全有機炭素(TOC)が分解される。その後、被処理水は、イオン交換装置ユニット10においてイオン交換処理により金属イオンなどのイオン成分が除去された後、膜脱気装置6において溶存ガスが除去され、UF膜装置7において微粒子が除去される。こうして得られた超純水は、一部がユースポイント8に供給され、残りが一次純水タンク2に返送される。一次純水タンク2には、必要に応じて、一次純水システム(図示せず)から一次純水が供給される。
【0016】
一次純水タンク2、ポンプ3、熱交換器4、紫外線酸化装置5、膜脱気装置6、およびUF膜装置7としては、超純水製造装置のサブシステムにおいて一般的に用いられているものを使用することができる。一方、超純水製造装置のサブシステムにおいて用いられるイオン交換装置としては、非再生型混床式イオン交換装置(カートリッジポリッシャー)が一般的であるが、本実施形態では、単一のイオン交換装置ではなく、イオン交換樹脂の充填形態が異なる2種類のイオン交換装置11,12が用いられている。すなわち、第1のイオン交換装置11と、その下流側で第1のイオン交換装置11に直列に接続された第2のイオン交換装置12とからなるイオン交換装置ユニット10が用いられている。
【0017】
第1のイオン交換装置11は、カチオン交換樹脂からなる上層Cとアニオン交換樹脂からなる下層Aとを内部に含む樹脂塔11aを有し、上層Cと下層Aは、樹脂塔11aの内部を上下に仕切るスクリーン11bによって互いに分離されている。換言すると、第1のイオン交換装置11は、樹脂塔11a内にカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とが互いに分離した状態で充填された複床式イオン交換装置であり、以下に示すように、樹脂塔11a内のイオン交換樹脂を再生して再利用する樹脂再利用型のイオン交換装置である。
【0018】
第1のイオン交換装置11では、樹脂塔11a内のイオン交換樹脂が長期間の使用により飽和状態に達すると、再生済みのイオン交換樹脂と交換される。このとき、イオン交換樹脂のみが交換されてもよく、樹脂塔11aごと交換されてもよい。飽和状態に達した使用済みのイオン交換樹脂(カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂)は、樹脂塔11aから抜き出されて再生工場に送られ、再生剤(酸とアルカリ)により再生された後、高度に精製(洗浄)される。そして、次回以降の交換時に、第1のイオン交換装置11に戻されて再び使用される。こうして、第1のイオン交換装置11のイオン交換樹脂は、繰り返し再生されて再利用されるが、これを容易にするために、本実施形態では、樹脂塔11a内にカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が互いに分離して充填されている。イオン交換樹脂の交換は、超純水製造装置1の運転中にも行えることが好ましく、そのために、第1のイオン交換装置11を構成する樹脂塔11aの数は1つに限定されず、複数であってもよい。この場合、複数の樹脂塔11aは並列に接続されていることが好ましい。
【0019】
なお、イオン交換樹脂を再生して再利用する方法としては、例えば、第1のイオン交換装置11からイオン交換樹脂を抜き出さずに再生する方法を用いてもよく、すなわち、第1のイオン交換装置11が、樹脂塔11aに再生剤を導入してイオン交換樹脂を再生する再生手段を備えていてもよい。ただし、再生手段による再生時に不純物混入によりイオン交換樹脂が汚染される可能性があるため、上述したように、第1のイオン交換装置11からイオン交換樹脂を抜き出し、それを超純水製造装置1から独立した再生工場に持ち込んで再生することが好ましい。このことは、専門の再生工場において蓄積された技術やノウハウを活用してイオン交換樹脂を高品質に再生することが可能になる点でも有利である。
【0020】
第2のイオン交換装置12は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とからなる混合層Mを内部に含む樹脂塔12aを有している。換言すると、第2のイオン交換装置12は、樹脂塔12a内にカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とが混合された状態で充填された混床式イオン交換装置であり、以下に示すように、樹脂塔12a内のイオン交換樹脂を再利用せずに廃棄する樹脂非再利用型のイオン交換装置である。すなわち、第2のイオン交換装置12は、超純水製造装置のサブシステムにおいて一般的に用いられるカートリッジポリッシャーと同様の構成を有している。
【0021】
第2のイオン交換装置12では、樹脂塔12a内のイオン交換樹脂が長期間の使用により飽和状態に達すると、新品のイオン交換樹脂と交換される。このとき、イオン交換樹脂のみが交換されてもよく、樹脂塔12aごと交換されてもよい。飽和状態に達した使用済みのイオン交換樹脂は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とに分離することが技術的に難しく、品質管理やコストの面でも課題が多いことから、再生されずにそのまま廃棄される。イオン交換樹脂の交換は、超純水製造装置1の運転中にも行えることが好ましく、そのために、第2のイオン交換装置12を構成する樹脂塔12aの数は1つに限定されず、複数であってもよい。この場合、複数の樹脂塔12aは並列に接続されていることが好ましい。
【0022】
このような構成によれば、第2のイオン交換装置12には、第1のイオン交換装置11によりイオン成分が十分に除去された水(第1のイオン交換装置11の処理水)が被処理水として供給されるため、第2のイオン交換装置12の負荷を低減することができる。その結果、第2のイオン交換装置12と同様のカートリッジポリッシャーが単独で用いられる従来の構成に比べて、処理水量および処理水質が同じであっても、第2のイオン交換装置12における空間速度を高くすることができ、すなわち、イオン交換樹脂の充填量を少なくすることができる。また、第1のイオン交換装置11では、樹脂塔11a内にカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が互いに分離して充填されているため、使用済みのイオン交換樹脂を分離する工程が不要になり、比較的低コストでイオン交換樹脂を再生して再利用することが可能になる。こうして、上述した従来の構成に比べて、イオン交換装置ユニット10全体での混床式のイオン交換樹脂の使用量(廃棄量)を低減することができ、コスト削減や環境負荷軽減を実現することができる。
【0023】
また、第2のイオン交換装置12の負荷が低減されることは、イオン交換樹脂の長寿命化につながり、結果的に、イオン交換樹脂の交換頻度を減らすことにつながる。イオン交換樹脂の交換時には、要求水質を満たす超純水が得られるまで立ち上げ運転を行う必要があるが、イオン交換樹脂の交換頻度が減ることで、その立ち上げ運転の回数を減らすことができ、加えて、イオン交換樹脂の交換に伴う汚染の影響を低減することができる。したがって、従来のようにカートリッジポリッシャーを単体で用いる代わりに、2つのイオン交換装置11,12からなるイオン交換装置ユニット10を用いることで、長期にわたって良好な水質の超純水を安定的に供給することも可能になる。
【0024】
混床式のイオン交換樹脂の使用量(廃棄量)をできるだけ少なくするという観点から、第1のイオン交換装置11におけるイオン交換樹脂の充填量に比べて、第2のイオン交換装置12におけるイオン交換樹脂の充填量を少なくすることが好ましい。すなわち、第1のイオン交換装置11と第2のイオン交換装置12とで処理水量が同じであることから、イオン交換装置ユニット10は、被処理水の空間速度が第1のイオン交換装置11よりも第2のイオン交換装置11で大きくなるように構成されていることが好ましい。ただし、イオン交換装置ユニット10全体でイオン交換樹脂の総量をそのままに、第2のイオン交換装置12におけるイオン交換樹脂の充填量を少なくしすぎると、すなわち、第2のイオン交換装置12における空間速度を大きくしすぎると、十分なイオン交換性能が得られなくなり、従来のカートリッジポリッシャー単体の場合と同じ処理水量および処理水質を維持することができなくなる。そのため、第2のイオン交換装置12におけるイオン交換樹脂の充填量は少なすぎないことが好ましく、すなわち、第2のイオン交換装置12における空間速度は、第1のイオン交換装置11における空間速度に対して大きすぎないことが好ましく、例えば、20倍未満であることが好ましい。
【0025】
一方で、第1のイオン交換装置11におけるイオン交換樹脂の充填量については、アニオン交換樹脂の充填量がカチオン交換樹脂の充填量と同量以上であることが好ましい。これは、第1のイオン交換装置11の上流側の紫外線酸化装置5において被処理水中のTOCが炭酸に分解されることから、第1のイオン交換装置11のイオン負荷の大部分が炭酸であると考えられるためである。
【0026】
なお、図1(b)では、第1のイオン交換装置11の樹脂塔11aが第2のイオン交換装置12の樹脂塔12aよりも大きく描かれているが、これは本発明を制限するものではない。例えば、第2のイオン交換装置12の樹脂塔12aの容積が第1のイオン交換装置11の樹脂塔11aの容積よりも大きくてもよく、両者が同じであってもよい。すなわち、第1のイオン交換装置11と第2のイオン交換装置12におけるイオン交換樹脂の充填量は、どちらが大きくてもよく、同じであってもよい。また、各イオン交換装置11,12におけるイオン交換樹脂の充填量そのものも特に限定されず、被処理水の水質や処理水(超純水)に要求される水質に応じて適宜調整することができる。
【0027】
図示した構成では、第1および第2のイオン交換装置11,12はいずれも、被処理水が樹脂塔11a,12aの内部を上向きに流れるようになっているが、被処理水の流れ方向はこれに限定されず、下向きであってもよい。また、第1のイオン交換装置11の樹脂塔11a内でのカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の位置は逆であってもよく、すなわち、スクリーン11bの上部にアニオン交換樹脂が充填され、下部にカチオン交換樹脂が充填されていてもよい。したがって、第1のイオン交換装置11における被処理水の通水順は、図示したアニオン交換樹脂(下層A)およびカチオン交換樹脂(上層C)の順に限定されるものではない。さらに、第1のイオン交換装置11は、図示した複床式のものに限定されず、例えば、カチオン交換樹脂のみが充填されたカチオン交換樹脂塔と、アニオン交換樹脂のみが充填されたカチオン交換樹脂塔とが直列に接続された2床2塔式のものであってもよい。すなわち、第1のイオン交換装置11のカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂は、それぞれ別の樹脂塔に充填されていてもよい。なお、このような場合も、被処理水の通水順は特に限定されず、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂のどちらが先でもよい。
【0028】
上述したように、超純水製造装置1の構成は図示した構成に限定されず、したがって、イオン交換装置ユニット10の設置位置も、図示した位置に限定されるものではない。例えば、膜脱気装置6が省略され、それにより、サブシステムの最も下流側のUF膜装置7のすぐ上流側にイオン交換装置ユニット10が設置されてもよい。また、膜脱気装置6とUF膜装置7が省略され、それにより、サブシステムの最も下流側にイオン交換装置ユニット10が設置されてもよい。また、第1のイオン交換装置11の処理水(第2のイオン交換装置12の被処理水)中のイオン成分濃度を変化させないものであれば、第1のイオン交換装置11と第2のイオン交換装置12との間に別の装置が設けられていてもよい。
【0029】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態に係るイオン交換装置ユニットの概略構成図である。本実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、イオン交換装置ユニットの構成、具体的には、第1のイオン交換装置の構成を変更した変形例である。以下では、本実施形態の第1のイオン交換装置のうち第1の実施形態と異なる構成のみ説明する。
【0030】
本実施形態の第1のイオン交換装置11は、樹脂塔11a内にカチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂と分離した状態で充填された白金族金属担持樹脂をさらに含んでいる。具体的には、第1のイオン交換装置11の樹脂塔11a内のスクリーン11bとアニオン交換樹脂からなる下層Aとの間に、白金族金属担持樹脂からなる中間層Pが形成されている。白金族金属担持樹脂は、白金族金属が担体としてのアニオン交換樹脂に担持されたものであり、過酸化水素を水と酸素とに分解する触媒作用を有している(2H→2HO+O)。そのため、第1のイオン交換装置11は、被処理水を白金族金属担持樹脂に接触させることで、被処理水に含まれる金属イオンなどのイオン成分だけでなく、過酸化水素も除去することができる。白金族金属担持樹脂に用いられる白金族金属としては、触媒活性に優れ、比較的安価であることから、パラジウムを用いることが好ましい。
【0031】
本実施形態の第1のイオン交換装置11では、被処理水がアニオン交換樹脂(下層A)と白金族金属担持樹脂(中間層P)とカチオン交換樹脂(上層C)とをこの順に流れるようになっているが、被処理水の通水順はこれに限定されるものではない。ただし、白金族金属による過酸化水素の除去効率は、アニオン負荷が少ないほど向上することが知られている。そのため、樹脂塔11a内でのカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の位置は特に限定されないが、白金族金属担持樹脂の位置は、被処理水の流れ方向においてアニオン交換樹脂の下流側であることが好ましい。また、この場合、上述したように白金族金属担持樹脂の担体がアニオン交換樹脂であることから、白金族金属担持樹脂とアニオン交換樹脂は互いに隣接していることが好ましい。これにより、再生時に白金族金属担持樹脂とアニオン交換樹脂を一括して取り扱うことができ、再生工程を簡略化することができる。一方で、このような観点から、白金族金属担持樹脂とアニオン交換樹脂は、予め混合された状態で樹脂塔11aに充填されていてもよい。
【0032】
なお、本実施形態においても、第1のイオン交換装置11のカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂は、それぞれ別の樹脂塔に充填されていてもよく、アニオン交換樹脂と白金族金属担持樹脂も、それぞれ別の樹脂塔に充填されていてもよい。ただし、省スペース化と再生時の取り扱い性の観点から、少なくともアニオン交換樹脂と白金族金属担持樹脂は、1つの同じ樹脂塔に充填されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0033】
1 超純水製造装置
2 一次純水タンク
3 ポンプ
4 熱交換器
5 紫外線酸化装置
10 イオン交換装置ユニット
11 第1のイオン交換装置
11a 樹脂塔
A 下層
C 上層
P 中間層
12 第2のイオン交換装置
12a 樹脂塔
M 混合層
6 膜脱気装置
7 限外ろ過膜装置
8 ユースポイント
図1
図2