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特開2024-36142眼科撮影装置、および眼科撮影プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036142
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】眼科撮影装置、および眼科撮影プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/14 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
A61B3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140887
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】水戸 慎也
(72)【発明者】
【氏名】片岡 暁
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 譲治
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB02
4C316AB06
4C316AB11
4C316AB16
4C316FB24
4C316FY06
4C316FY08
4C316FY09
4C316FY10
(57)【要約】
【課題】眩しさを低減できる眼科撮影装置、および眼科撮影プログラムを提供する。
【解決手段】被検眼を撮影する眼科撮影装置であって、可視光を出射する可視光源と、前記可視光を被検眼に投光する投光光学系と、前記投光光学系によって投光される前記可視光を前記被検眼に対して走査させる走査手段と、前記被検眼によって反射された前記可視光を受光する受光光学系と、前記受光光学系によって受光した前記可視光を検出して撮像信号を出力する撮像素子と、前記撮像信号に基づいて前記被検眼のカラー画像を取得する画像取得手段と、前記走査手段を制御し、前記可視光を広い領域に走査させる広域走査と、前記可視光を前記広域走査よりも狭い領域に走査させる狭域走査とで走査領域を切り換える制御手段と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼を撮影する眼科撮影装置であって、
可視光を出射する可視光源と、
前記可視光を被検眼に投光する投光光学系と、
前記投光光学系によって投光される前記可視光を前記被検眼に対して走査させる走査手段と、
前記被検眼によって反射された前記可視光を受光する受光光学系と、
前記受光光学系によって受光した前記可視光を検出して撮像信号を出力する撮像素子と、
前記撮像信号に基づいて前記被検眼のカラー画像を取得する画像取得手段と、
前記走査手段を制御し、前記可視光を広い領域に走査させる広域走査と、前記可視光を前記広域走査よりも狭い領域に走査させる狭域走査とで走査領域を切り換える制御手段と、を備えることを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項2】
前記投光光学系は、前記可視光をスリット状に投光し、
前記走査手段は、前記スリット状の前記可視光を前記被検眼に対して走査させることを特徴とする請求項1に記載の眼科撮影装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記走査領域の切り換えに合わせて、前記撮像素子の露光時間を変更することを特徴とする請求項1または2に記載の眼科撮影装置。
【請求項4】
前記画像取得手段は、複数枚の前記カラー画像が加算処理されることで生成された加算カラー画像を取得し、
前記制御手段は、前記走査領域の切り換えに合わせて、前記加算処理される前記カラー画像の加算枚数を変更することを特徴とする請求項1または2に記載の眼科撮影装置。
【請求項5】
赤外光を出射する赤外光源をさらに備え、
前記投光光学系は、前記可視光および前記赤外光を被検眼に投光し、
前記走査手段は、前記可視光および前記赤外光を前記被検眼に対して走査させ、
前記受光光学系は、前記被検眼によって反射した前記可視光および前記赤外光を受光し、
前記撮像素子は、前記可視光および前記赤外光を検出して前記撮像信号を出力することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の眼科撮影装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記可視光源と前記赤外光源とでそれぞれ独立して発光時間または発光タイミングを制御することを特徴とする請求項5に記載の眼科撮影装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記赤外光を前記広域走査させ、前記可視光は狭域走査させることを特徴とする請求項6に記載の眼科撮影装置。
【請求項8】
被検眼を撮影する眼科撮影装置であって、
可視光を出射する可視光源と、
赤外光を出射する赤外光源と、
前記可視光および前記赤外光を被検眼に投光する投光光学系と、
前記投光光学系によって投光される前記可視光および前記赤外光を前記被検眼に対して走査させる走査手段と、
前記被検眼によって反射した前記可視光および前記赤外光を受光する受光光学系と、
前記受光光学系によって受光された前記可視光および前記赤外光を検出して撮像信号を出力する撮像素子と、
前記撮像信号に基づいて前記被検眼のカラー画像を取得する画像取得手段と、を備えることを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項9】
被検眼を撮影する眼科撮影装置において実行される眼科撮影プログラムであって、前記眼科撮影装置の制御手段によって実行されることで、
可視光源から出射され、投光光学系によって投光される可視光を前記被検眼に対して走査させる走査ステップと、
前記被検眼によって反射し、受光光学系によって受光された前記可視光を検出して撮像信号を出力する撮像ステップと、
前記撮像信号に基づいて前記被検眼のカラー画像を取得する画像取得ステップと、
前記走査ステップにおいて、前記可視光を広域に走査させる広域走査と、前記可視光を前記広域よりも狭い狭域に走査させる狭域走査とで走査領域を切り換える制御ステップと、を前記眼科撮影装置に実行させることを特徴とする眼科撮影プログラム。
【請求項10】
被検眼を撮影する眼科撮影装置において実行される眼科撮影プログラムであって、前記眼科撮影装置の制御手段によって実行されることで、
可視光源および赤外光源から出射され、投光光学系によって投光される可視光および赤外光を前記被検眼に対して走査させる走査ステップと、
前記被検眼によって反射し、受光光学系によって受光された前記可視光および前記赤外光を検出して撮像信号を出力する撮像ステップと、
前記撮像信号に基づいて前記被検眼のカラー画像を取得する画像取得ステップと、
を前記眼科撮影装置に実行させることを特徴とする眼科撮影プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼を撮影する眼科撮影装置、および眼科撮影プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
走査部(スキャナーなど)によって光を走査させることで被検眼を撮影する眼科撮影装置(例えば、レーザ光を走査させる走査型レーザ検眼鏡等)が知られている(特許文献1参照)。これらの装置では、例えば、点状の光やスリット状の光が走査される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭61-048940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、新しいレーザ光凝固装置として、眼科撮影装置とレーザ治療装置が一体となった眼科装置が開発されている。このような装置では毛細血管瘤等の病変部をカラー画像で観察することが望ましい。
【0005】
しかしながら、カラー画像を取得するためには被検眼に可視光を照射してカラー撮影を行う必要があり、被検者にとっては眩しく負担であった。
【0006】
本開示は、従来技術の問題点に鑑み、カラー撮影における被検者の眩しさを低減できる眼科撮影装置、および眼科撮影プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0008】
(1) 被検眼を撮影する眼科撮影装置であって、可視光を出射する可視光源と、前記可視光を被検眼に投光する投光光学系と、前記投光光学系によって投光される前記可視光を前記被検眼に対して走査させる走査手段と、前記被検眼によって反射された前記可視光を受光する受光光学系と、前記受光光学系によって受光した前記可視光を検出して撮像信号を出力する撮像素子と、前記撮像信号に基づいて前記被検眼のカラー画像を取得する画像取得手段と、前記走査手段を制御し、前記可視光を広い領域に走査させる広域走査と、前記可視光を前記広域走査よりも狭い領域に走査させる狭域走査とで走査領域を切り換える制御手段と、を備えることを特徴とする。
(2) 被検眼を撮影する眼科撮影装置であって、可視光を出射する可視光源と、赤外光を出射する赤外光源と、前記可視光および前記赤外光を被検眼に投光する投光光学系と、前記投光光学系によって投光される前記可視光および前記赤外光を前記被検眼に対して走査させる走査手段と、前記被検眼によって反射した前記可視光および前記赤外光を受光する受光光学系と、前記受光光学系によって受光された前記可視光および前記赤外光を検出して撮像信号を出力する撮像素子と、前記撮像信号に基づいて前記被検眼のカラー画像を取得する画像取得手段と、を備えることを特徴とする。
(3) 被検眼を撮影する眼科撮影装置において実行される眼科撮影プログラムであって、前記眼科撮影装置の制御手段によって実行されることで、可視光源から出射され、投光光学系によって投光される可視光を前記被検眼に対して走査させる走査ステップと、前記被検眼によって反射し、受光光学系によって受光された前記可視光を検出して撮像信号を出力する撮像ステップと、前記撮像信号に基づいて前記被検眼のカラー画像を取得する画像取得ステップと、前記走査ステップにおいて、前記可視光を広域に走査させる広域走査と、前記可視光を前記広域よりも狭い狭域に走査させる狭域走査とで走査領域を切り換える制御ステップと、を前記眼科撮影装置に実行させることを特徴とする。
(4) 被検眼を撮影する眼科撮影装置において実行される眼科撮影プログラムであって、前記眼科撮影装置の制御手段によって実行されることで、可視光源および赤外光源から出射され、投光光学系によって投光される可視光および赤外光を前記被検眼に対して走査させる走査ステップと、前記被検眼によって反射し、受光光学系によって受光された前記可視光および前記赤外光を検出して撮像信号を出力する撮像ステップと、前記撮像信号に基づいて前記被検眼のカラー画像を取得する画像取得ステップと、を前記眼科撮影装置に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、カラー撮影における被検者の眩しさを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】走査型眼科撮影装置の概略構成図である。
図2】被検眼の撮影方法について説明するための図である。
図3】広域撮影と狭域撮影について説明するための図である。
図4】可視光と赤外光の併用撮影について説明するための図である。
図5】制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施例>
以下、本開示に係る典型的な実施例の1つを図面に基づいて説明する。一例として、本実施例では、レーザ治療部70を備えた走査型眼科撮影装置1について説明を行う(図1参照)。つまり、本実施例の走査型眼科撮影装置1は、光を走査させて被検眼Eの組織の画像を撮影するための構成と、撮影された画像に基づいて治療レーザ光を組織に照射するための構成を共に備える。しかし、走査型眼科撮影装置1の構成を変更することも可能である。例えば、走査型眼科撮影装置1は、レーザ治療部70を備えていなくてもよい。また、光を走査させて被検眼の組織の画像を撮影するための構成と、治療レーザ光を組織に照射するための構成が、別々の筐体に設けられていてもよい。また、レーザ治療部70の代わりに、固視標を投影する固視投影光学系が設けられてもよいし、眼底のOCTデータを取得するOCT光学系が設けられてもよい。
【0012】
なお、本実施例では、被検眼Eの眼底Erを撮影する走査型眼科撮影装置1を例示する。しかし、眼底以外の組織(例えば前眼部等)を撮影する場合にも、本実施例で例示する技術の少なくとも一部を採用できる。
【0013】
図1を参照して、本実施例の走査型眼科撮影装置1の概略構成について説明する。走査型眼科撮影装置1は、可視光源2、赤外光源3、投光光学系10、走査部20、撮像素子30、受光光学系40、光路分岐部50、制御部60、およびレーザ治療部70等を備える。
【0014】
可視光源2および赤外光源3は、組織の画像を撮影するための光(撮影光)を出射する。可視光源2および赤外光源3には、例えば、レーザ光源、SLD(スーパー・ルミネッセント・ダイオード)光源、LED等の少なくともいずれかを用いることができる。可視光源2および赤外光源3には、点状の光源が用いられてもよい。本実施例の可視光源2および赤外光源3は、被検眼Eの組織(本実施例では瞳)と共役な位置に配置される。可視光源2は、可視光を出射する光源である。可視光源2は、例えば、可視光の波長帯域にスペクトル分布のピーク波長がある光源である。赤外光源3は、赤外光(近赤外光など)を出射する光源である。赤外光源3は、例えば、赤外光(不可視光)の波長帯域にスペクトル分布のピーク波長がある光源である。可視光源2によって可視光(白色光)を出射する場合、カラー撮影が容易に行われる。赤外光源3によって赤外光を出射する場合、無散瞳状態での撮影が容易に行われる。
【0015】
投光光学系10は、可視光源2および赤外光源3から出射された撮影光(可視光および赤外光)を被検眼Eの眼底Erに投光する。投光光学系10は、撮影光の光路の上流側(つまり、可視光源2および赤外光源3側)から順に、ダイクロイックミラー4、スリット板11、レンズ15、および対物レンズ18を備える。なお、本実施例において、レンズ15および対物レンズ18は投光光学系10と受光光学系40とで共用される。スリット板11とレンズ15との間の光路上には、光路分岐部50が設けられている。また、レンズ15と対物レンズ18の間の光路上には、走査部20およびハーフミラー17が設けられている。光路分岐部50および走査部20は、投光光学系10の一部と捉えることもできる。
【0016】
スリット板11は、可視光源2および赤外光源3から出射された撮影光の一部を遮蔽することで、撮影光をスリット状光束に変換する。つまり、スリット板11は、撮影光をスリット状光束に変換する光束変換素子として機能する。スリット板11は、例えば、眼底共役位置上に配置される。本実施例のスリット板11は、走査部20によるスリット状光束の走査方向に交差(本実施例では直交)する方向に延びるスリットを有し、走査方向にはスリット幅を有する。スリット板11からの光は、レンズ15および光路分岐部50を通過して、走査部20へ入射される。
【0017】
なお、スリット板11以外の光学素子を光束変換素子として採用することも可能である。例えば、光束変換素子として、可視光源2および赤外光源3と眼底共役位置との間に配置されたシリンドリカルレンズを採用し、眼底共役位置において撮影光をライン状に集光させてもよい。その結果、眼底Er上において照明光がライン状に成形される。
【0018】
レンズ15は、可視光源2および赤外光源3から出射された撮影光を、対物レンズ18の前側焦点位置にて一旦結像させる。レンズ15は、1つのレンズによって構成されていてもよいし、一群のレンズによって構成されていてもよい。
【0019】
対物レンズ18は、走査部20から入射する撮影光を被検眼Eの眼底Erに導光する。また、対物レンズ18は、被検眼Eの眼底Erによって反射された撮影光の戻り光(反射光)を、走査部20に戻す。対物レンズ18は、1つのレンズによって構成されていてもよいし、一群のレンズによって構成されていてもよい。本実施例では、対物レンズ18によって、走査部20は被検眼Eの瞳孔と共役な位置に配置されている。対物レンズ18は、撮影光の光路のうち、走査部20よりも下流側(詳細には、ハーフミラー17よりも下流側)、且つ被検眼Eよりも上流側に配置されている。
【0020】
走査部20は、投光光学系10によって投光される撮影光を、被検眼Eの組織(本実施例では眼底Er)上で走査させる。前述したように、走査部20は、投光光学系10と受光光学系40の共通光路に配置されている。本実施例の走査部20は、撮影光のスリット状光束を、スリット(の長さ)方向に交差(本実施例では直交)する方向に走査させる。つまり、走査部20は、例えば、スリット状の撮影光をスリットの幅方向に走査させる。走査方向は、例えば、鉛直方向であってもよいし、水平方向であってもよい。走査部20を構成する素子には、反射ミラー(例えば、ガルバノミラー、ポリゴンミラー、またはレゾナントスキャナ)、または、光の進行方向を変化させる音響光学素子等の少なくともいずれかを用いることができる。また、走査部20は、複数の素子(例えば、撮影光をX方向に走査する素子と、撮影光をY方向に走査する素子)を備えていてもよい。
【0021】
撮像素子30は、投光光学系10によって投光されて眼底Erによって反射された撮影光の戻り光を受光し、撮像信号を出力する。撮像素子30は、可視光および赤外光を検出する。撮像素子30は、被検眼Eの眼底Erと共役な位置に配置されている。本実施例の撮像素子30には、スリット状の反射光を受光する二次元撮像素子が用いられている。なお、撮像素子30の構成を変更することも可能である。例えば、撮影光のスポットを二次元状に走査させる走査型眼科撮影装置の場合には、撮像素子30として点状の受光素子が用いられてもよい。また、例えば、撮影光のラインを一次元状に走査させる走査型眼科撮影装置の場合には、一次元受光素子(例えば、ラインカメラ等)が用いられてもよい。
【0022】
受光光学系40は、眼底によって反射された撮影光の戻り光を、撮像素子30に導光する。本実施例の受光光学系40は、撮影光の光路の下流側(つまり、被検眼E側)から順に、対物レンズ18、レンズ15、レンズ41を備える。前述したように、本実施例では、レンズ15および対物レンズ18は、投光光学系10と受光光学系40とで共用される。レンズ41は、被検眼Eの眼底によって反射された撮影光の戻り光を、撮像素子30上で結像させる。レンズ15とレンズ41の間の光路上には、光路分岐部50が設けられている。また、対物レンズ18とレンズ15の間の光路上には、ハーフミラー17および走査部20が設けられている。光路分岐部50および走査部20は、受光光学系40の一部と捉えることもできる。
【0023】
光路分岐部50は、可視光源2および赤外光源3から出射されて投光光学系10によって眼底に投光される撮影光(本実施例ではスリット状光束)を通過(または透過)させる。また、光路分岐部50は、眼底Erによって反射された撮影光の戻り光を反射させて、受光光学系40の独立光路へ戻り光が導かれる。その後、レンズ41によって集光された戻り光は、撮像素子30へ照射される。光路分岐部50は、穴あきミラー、ハーフミラー等の種々のビームスプリッタのうち、いずれかであってもよい。
【0024】
なお、光路分岐部50の構成を変更することも可能である。例えば、光路分岐部50は、投光光学系10によって眼底に投光される撮影光を反射し、眼底によって反射された撮影光の戻り光を透過させて撮像素子30に向けて導光してもよい。
【0025】
可視光源2から出射された可視光はダイクロイックミラー4を透過し、赤外光源3から出射された赤外光はダイクロイックミラー4によって反射されることで、可視光と赤外光の光路は同軸となる。可視光と赤外光を含む撮影光は、スリット板11、光路分岐部50、レンズ15を通過し、走査部20によって偏向された後、対物レンズ18を介して被検眼Eへ照射される。対物レンズ18は、前眼部に形成される射出瞳を介して、撮影光を眼底Erへ導く。走査部20の駆動に応じて、撮影光は射出瞳の位置で旋回される。撮影光は、眼底Erで反射又は散乱される。その結果として、眼底からの戻り光(散乱・反射光)が、瞳孔から平行光として出射される。眼底Erからの戻り光は、対物レンズ18、走査部20、レンズ15、光路分岐部50、レンズ41を介して撮像素子30に受光される。
【0026】
制御部60は、走査型眼科撮影装置1における各種制御処理を行う。制御部60は、制御を司るコントローラであるCPU61と、プログラムおよびデータ等を記憶することが可能な記憶部62を備える。記憶部62には、被検眼の撮影を実行するための眼科撮影プログラム等が記憶されている。なお、制御部およびコントローラの数は1つに限定されない。例えば、画像の撮影を制御するための制御部と、レーザ治療部70によるレーザ治療を制御するための制御部が協働して処理を行ってもよい。制御部60には、例えば、表示部65と操作部66が接続される。表示部65は、撮像素子30によって取得された画像等を表示する。操作部66は、検者の操作を受け付け、操作に応じた操作信号を制御部60に出力する。操作部60は、例えば、マウス、タッチパネル、ジョイスティック、またはキーボードなどの種々のユーザインターフェイスである。
【0027】
レーザ治療部70は、治療光源71、エイミング光源72、フォーカス調整部73、および治療光走査部74を備える。治療光源71は、治療レーザ光を出射する。エイミング光源72は、眼底に照射される治療レーザ光の照射状態(例えば、治療レーザ光のスポットの大きさおよびフォーカス等)を示すエイミング光を出射する。治療レーザ光の光軸とエイミング光の光軸は、同軸とされる。フォーカス調整部73は、被検眼Eの組織(本実施例では眼底)における治療レーザ光およびエイミング光のフォーカスを調整する。フォーカス調整部73には、例えば、フォーカシングレンズを光軸方向に移動させる構成等を採用できる。治療光走査部74は、治療レーザ光およびエイミング光を眼底上で走査させる。なお、本実施例では、治療レーザ光およびエイミング光は、ハーフミラー17によって反射されて眼底に照射される。また、眼底Erによって反射されたエイミング光の一部は、ハーフミラー17を透過して撮像素子30に導光される。
【0028】
<広域カラー撮影>
走査型眼科撮影装置1によって広域のカラー眼底画像を撮影するときの制御動作について説明する。広域カラー眼底画像を撮影する場合、制御部60は、走査部20によってスリット状の可視光を眼底Er上で走査させる。眼底Erで反射した可視光の戻り光は、受光光学系40(および走査部20)によって受光され、撮像素子30によって検出される。撮像素子30は、撮像信号を制御部60に出力する。制御部60は、撮像素子30によって出力された撮像信号に基づいてスリット状の二次元画像を取得する(図2参照)。撮像素子30は、走査部20の走査に応じた周期で反射光の検出を行うことによって、撮影領域の異なる複数フレームの画像を取得する。制御部60は、この複数フレームの画像を走査の順番に並べることで1枚の広域なカラー眼底画像P1を生成する。
【0029】
広域カラー眼底画像P1の撮影は、強い光量の可視光を眼底の広域に走査して撮影するため、被検者にとって眩しく感じられ、負担となる。特に、動画撮影においては、強い光量の可視光を長時間繰り返し眼底に照射する必要があるため、被検者にとっては大きな負担となる。
【0030】
<狭域カラー撮影>
本実施例の走査型眼科撮影装置1は、広域カラー眼底画像P1の他に、狭域カラー眼底画像の撮影を行うことができる。狭域カラー眼底画像を撮影する場合、制御部60は、可視光の走査領域(画角)を広域カラー撮影時(広域走査時)よりも狭くして狭域走査を行う。例えば、図3(a)に示すように、制御部60は、走査領域を一部(例えば、走査距離bの3分の1)の領域に限定する(図3(b)参照)。これによって、観察する必要のない領域に可視光が当たらなくなり、被検者は眩しさを感じ難くなる。
【0031】
また、制御部60は、走査領域の切り換えに合わせて撮影素子30の露光時間を変更してもよい。例えば、走査距離bの広域カラー撮影にT秒かかるとすると、走査距離をn分の1(例えば、3分の1)に切り換えて狭域カラー撮影を行う場合、制御部60は露光時間をn倍(例えば、3倍)にしてもよい。このように、制御部60は、走査領域を小さくするほど、露光時間を大きくすることによって、同じ撮影時間T秒で広域カラー眼底画像P1よりも輝度の大きい狭域カラー眼底画像P2を取得できる。なお、制御部60は、走査距離をn分の1にして露光時間をn倍にした場合、光量を小さくしてもよい。例えば、制御部60は、光量をn分の1にしてもよい。これによって、撮影時間(撮影速度)と画像の輝度を変えずに被検者の眩しさを抑えることができる。
【0032】
また、制御部60は、狭域カラー撮影において、狭域カラー眼底画像P2を複数枚取得し、これらを加算処理することで加算カラー画像を生成してもよい。例えば、図3(c)に示すように、制御部60は、広域カラー撮影の3分の1の走査距離で露光時間の同じ複数の狭域カラー眼底画像P2(P21,P22,P23)を取得し、これらの狭域カラー眼底画像P2を加算処理することで狭域の加算カラー画像P3を取得してもよい。この場合、制御部60は、走査領域の切り換えに合わせて画像の加算枚数を変更してもよい。例えば、制御部60は、広域走査のn分の1(例えば、3分の1)の走査距離の狭域走査を行う場合は加算枚数をn枚(例えば、3枚)に変更してもよい。このように、制御部60は、走査領域が小さくなるほど、加算枚数を多くすることによって、同じ撮影時間T秒で広域カラー眼底画像P1よりも輝度の大きい狭域カラー眼底画像P3を取得できる。なお、制御部60は、走査領域をn分の1にして同じ露光時間の画像をn枚加算する場合、光量を小さくしてもよい。例えば、制御部60は、光量をn分の1にしてもよい。これによって、撮影時間(撮影速度)と画像の輝度を変えずに被検者の眩しさを抑えることができる。
【0033】
以上のように、走査領域を小さくし、同じ撮影時間で露光時間を長くする、または、より多くの枚数を撮影して加算することで、被検者の眩しさを低減しつつ十分な明るさのカラー撮影を行うことができる。
【0034】
<可視光と赤外光の併用撮影>
次に、可視光と赤外光を併用した撮影方法について説明する。上記の説明ではカラー眼底画像を取得する場合に可視光のみを用いていたが、可視光と赤外光を被検眼Eに同時に照射することで眩しさを抑えつつ画像の輝度を大きくすることができる。
【0035】
例えば、制御部60は、可視光源2と赤外光源3とでそれぞれ独立して発光時間または発光タイミングを制御し、赤外光を広域で走査させる間に、可視光を狭域で走査させるようにしてもよい。例えば、図4(a)に示すようにスリット状の撮影光を走査する場合、制御部60は、走査領域全体(K1~K6)を走査する間、常に赤外光原3をONにして赤外光を照射させる。一方、制御部60は、領域K1、K2までは可視光源2をOFF、領域K3だけ可視光源2をON、その後、領域K4、K5、K6では再び可視光源2をOFFにする(図4(b)参照)。つまり、領域K1、K2では赤外光のみが照射され、領域K3では赤外光と可視光の両方が照射され、領域K4、K5、K6では赤外光のみが照射される(図4(c)参照)。これによって、制御部60は、一部の領域K3ではカラー眼底画像を取得することができ、全体の領域K1~K6では赤外眼底画像を取得することができる。このように、制御部60は、赤外光と可視光を併用して撮影することで、照射部位(治療部位)が写る狭域のカラー眼底画像を取得しつつ、眼底(走査領域)全体が写る広域の赤外眼底画像も取得することができる。なお、赤外光と可視光の両方を照射する領域K3では、赤外光のみを照射する領域よりも赤外光の光量を小さくしてもよい。
【0036】
なお、可視光と赤外光を照射する場合、被検者の眩しさは可視光のみの場合と変わらないが、赤外光を照射することで画像の輝度を大きくできるため、その分、制御部60は可視光の光量を下げてもよい。これによって、制御部60は、可視光のみで撮影した場合よりも低光量の可視光で被検者の負担を軽減させつつ、十分な明るさのカラー眼底画像を取得することができる。
【0037】
<制御動作>
続いて、図5のフローチャートを用いて走査型眼科撮影装置1の制御動作の一例を説明する。
【0038】
(ステップS1:アライメント)
まず、制御部60は、図示無き駆動部によって被検眼(患者眼)に対するレーザ治療部70の位置関係を調整(アライメント)する。例えば、制御部60は、検者の操作部66への操作に基づいて駆動部を制御する。
【0039】
(ステップS2:広域カラー撮影)
制御部60は、前述のように、可視光を走査領域全体に走査させて被検眼の広域カラー眼底画像P1を撮影する。制御部60は、取得した広域カラー眼底画像P1を表示部65に表示させる。
【0040】
(ステップS3:照射位置の設定)
検者(術者)は、表示部65に表示された広域カラー眼底画像P1を確認しながら操作部66を操作し、治療レーザ光の照射位置を設定する。このとき、検者は治療レーザ光の照射禁止領域を設定してもよい。また、検者は、照射位置の設定と合わせて、狭域カラー眼底画像P2を撮影するための可視光の走査領域を設定してもよい。
【0041】
(ステップS4:狭域カラー撮影)
制御部60は、広域カラー撮影から狭域カラー撮影に切り換える。狭域カラー撮影では前述のように走査領域の一部にのみ可視光を走査させてカラー眼底画像の撮影を行う。例えば、制御部60は、ステップS3において設定された照射位置を含む走査領域に可視光を照射し、それ以外の走査領域には可視光を照射させずに撮影を行う。なお、制御部60は、ステップS3において、狭域カラー眼底画像を撮影するための走査領域が設定されている場合は、設定された走査領域にのみ可視光を照射させて撮影を行う。制御部60は、治療が終わるまで狭域カラー眼底画像(動画)の撮影を行い、取得された画像をリアルタイムで順次表示部65に表示させる。
【0042】
(ステップS5:治療レーザ光の照射)
制御部60は、レーザ治療部70によって被検眼に照準光を照射する。検者は、表示部65に表示された狭域カラー眼底画像P2の動画に映る照準光によって照射位置を最終的に確認しながら、治療レーザ光の照射を開始させる。制御部60は、撮像素子30によって取得された狭域カラー眼底画像P2に基づいてトラッキングを行いながら、設定された眼底上の照射位置に対して治療レーザ光を照射する。検者は、表示部65に表示された狭域カラー眼底画像P2によってレーザ照射中または照射後の照射部位の様子を確認することができる。
【0043】
以上のように、本実施例の走査型眼科撮影装置1は、可視光の走査を広域走査と狭域走査で切り換えることによって、被検者の眩しさを抑えて負担を軽減させつつ、被検眼の観察に必要なカラー眼底画像を取得することができる。したがって、例えば、動画ではなく画像1枚のカラー撮影においては、高光量であっても照射時間が短く被検者の負担が比較的小さいため、広域カラー撮影による眼底全体の観察が可能である。また、レーザ治療時の観察においては、毛細血管瘤や凝固斑のなどの治療レーザ光を照射する部位のみカラー動画でリアルタイムに観察できればよいため、狭域カラー撮影によって被検者の眩しさを抑えた撮影が可能である。また、本実施例の走査型眼科撮影装置1は、走査領域を狭域に切り換えることによって、露光時間を延ばしたり、画像を複数枚撮影して加算したりしても撮影速度を低下させずに被検者の眩しさを抑えた撮影をすることができる。撮影速度を低下させないことによって、眼の動きによる画像の劣化が生じる可能性を少なくできる。
【0044】
なお、ステップS4において、狭域カラー眼底画像P2を撮影する場合、前述のように可視光と赤外光の併用撮影を行ってもよい。例えば、制御部60は、広域の走査領域では赤外光を走査させて赤外眼底画像の撮影を行い、狭域の走査領域では可視光と赤外光の両方を走査させてもよい。画像の輝度を大きくするために被検眼に照射する可視光の光量を大きくすると被検者の負担が増加するが、赤外光では眩しさをほとんど感じないため、被検者への負担が小さい。したがって、可視光と赤外光を併用して撮影することで、被検者に大きな負担を与えずに、カラー画像の輝度を大きくすることができる。また、制御部60は、照射部位以外の広域の走査領域で取得された広域の赤外眼底画像をトラッキングに用いることで、より安定したレーザ照射を行うことができる。
【0045】
なお、可視光と赤外光を共に照射したときのカラー眼底画像の色合いは、可視光のみのカラー眼底画像とは多少異なるが、レーザ照射中の組織変化の確認やトラッキングなどのために輝度の大きい画像を早く撮影したい場合は有用である。
【0046】
<変容例>
なお、赤外光と可視光を併用して眼底を撮影する場合、走査型眼科撮影装置1は、赤外光を受光する撮像素子と、可視光を受光する撮像素子の2つの撮像素子を備えてもよい。この場合、2つの撮像素子によって得られた赤外眼底画像とカラー眼底画像を加算処理することで、輝度の大きい眼底画像を取得することができる。また、制御部60は、赤外光による赤外眼底画像と、可視光によるカラー眼底画像を分けて取得することができる。
【0047】
なお、以上の実施例では、可視光源2と赤外光源3の共通光路に配置された共通の走査部20によって可視光と赤外光を被検眼に対して走査させたが、これに限らない。例えば、走査型眼科撮影装置1は2つの走査部を備え、可視光と赤外光をそれぞれ別の走査部で走査させるようにしてもよい。この場合、制御部60は、可視光源2および赤外光源3の発光時間または発光タイミングの制御に限らず、2つの走査部をそれぞれ独立して制御することで、可視光を狭域で走査させ、赤外光を広域で走査させるようにしてもよい。
【0048】
なお、以上の説明において、走査領域全体の一部のみで可視光と赤外光を併用して撮影を行ったが、これに限らない。例えば、走査領域全体で可視光と赤外光を併用して撮影を行ってもよい。この場合、赤外光によって光量を確保できるため、可視光の光量を小さくしてもよい。これによって、低光量で被検者の負担を抑えつつ走査領域全体のカラー画像を取得できる。
【0049】
なお、図5のフローチャートにおいて、ステップS5でレーザ治療をした後に再度広域なカラー眼底画像P1を撮影してもよい。これによって、レーザ治療中は狭域撮影によって被検者の負担を抑えつつ、レーザ治療前後の眼底全体のカラー眼底画像を取得できるため、治療前後の眼底の状態を比較し易い。
【0050】
なお、以上の実施例において、制御部60は、撮像素子30によって取得された撮像信号に基づいて画像を生成する画像生成部として機能したが、これに限らない。例えば、制御部60は、撮像素子30によって取得された撮像信号に基づいて別(外部)の制御部によって生成された画像を取得する画像取得部として機能してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 走査型眼科撮影装置
2 可視光源
3 赤外光源
4 ダイクロイックミラー
10 投光光学系
20 走査部
30 撮像素子
40 受光光学系
50 光路分岐部
60 制御部
70 レーザ治療部
図1
図2
図3
図4
図5