(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036149
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】無線受信機
(51)【国際特許分類】
H04L 27/00 20060101AFI20240308BHJP
H04B 5/48 20240101ALI20240308BHJP
H04B 1/59 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
H04L27/00 Z
H04B5/02
H04B1/59
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140898
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】515226803
【氏名又は名称】株式会社アドバンストアールエフデザイン
(72)【発明者】
【氏名】田中 喜好
【テーマコード(参考)】
5K012
【Fターム(参考)】
5K012AC08
5K012AC10
5K012AD01
(57)【要約】
【課題】無線タグからのデータを読み取るには、無線タグに向けて電波を送信し、タグからの応答を受信する専用のリーダを用いる必要があった。タグが応答を送信するときには、リーダからの無変調信号に変調を行う。現代では様々な電波が空間を飛び交っているため、これらにタグが変調を行えば、特別な送信機を設けなくとも済む可能性があるが、任意波形で変調された信号にデータを変調した信号波形から、データを復調するのは極めて困難であり、如何に当該任意波形を除去するかが課題となっている。
【解決手段】送信波を受信し直交復調して出力される複素成分であるI信号成分30とQ信号成分31及び、再送信波を受信し直交復調して出力される複素成分であるI信号成分37とQ信号成分38を、複素相関検出回路39に入力し、相関検出出力40から復調データ43を出力する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の無線通信信号を通過させる第一のバンドパスフィルタを通した後に直交復調を行い出力される第一の複素信号と、前記第一の無線通信信号に特定データを変調して送信される第二の無線通信信号を通過させる第二のバンドパスフィルタを通した後に直交復調を行い出力される第二の複素信号を入力し、両者の複素相関を求める複素相関検出手段を設け、当該相関検出出力から前期特定データを復調出力することを特徴とする無線受信機。
【請求項2】
第一の複素信号と第二の複素信号の相関値を検出するに際して、特定の位相回転を行う時間関数を乗じることを特徴とする請求項1の無線受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的な無線通信信号に対して特定の周波数の搬送波と特定のデータで再変調した信号を受信し、当該特定データを復調するための受信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線を用いて個体の識別を行う無線タグは様々なところで用いられており、その識別はリーダーと呼ばれる識別装置から送信される電波から発電した電力を用い、リーダー~送信される搬送波に識別データを変調して再送信したものを、リーダーで受信して識別データを読み取るものである。
【0003】
リーダーの送信波が変調されている場合、これにタグで識別データの変調を行ったときには、瞬時瞬時に振幅と位相が変化する搬送波に対して識別データの変調を行うこととなり、その変調出力は非常に複雑なものになり、これを受信して識別データを復調するには困難を伴う。
【0004】
そのため、リーダーから無線タグへのデータ送信時には、
図1に示すように、プリアンブル1に続き、コマンド2およびパラメータ3と変調された信号の送信を行うが、無線タグからのデータ送信時には、無変調4の搬送波のみ送信する。無線タグは、この搬送波に個別の識別データから成る応答5を変調して送信することとなる。
【0005】
特許文献1の
図2で示される無線タグリーダライタと無線タグの通信におけるコマンド のやりとりのタイミングならびに、非特許文献1のFigure17に示されるhandoverタイミングでのInterrogator(即ち無線タグリーダライタ)の変調データ波形でも示されるように、無線タグがデータを送信するときには無線タグリーダライタは無変調の電波を無線タグに向けて送信する。無線タグはその搬送波に識別データを変調して再送信することとなる。搬送波に識別データを変調しているため、受信側では一般的な復調方法で識別データを容易に復調することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】国際標準化規格ISO/IEC 18000-6:2004(E)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
変調された無線信号に、個別の識別データを更に変調した場合、識別データを変調する時点の搬送波波形及び元の変調波形が明らかになっていれば、逆演算することで復調を行うことも可能であるが、単に変調波形による振幅と位相の変動だけでなく、電波伝搬による振幅と位相の変動が加わるため、不明な変動項目が多くなり識別データを復調することは極めて困難となる。
【0009】
任意波形で変調された無線信号に、個別の識別データを更に変調した信号から、不明な変動項目を除去するが可能となり、識別データを復調することができれば、特にリーダから電波を送信せずとも、空間に飛び交っている電波に無線タグが識別データを変調すればよいこととなる。そのため、任意波形変調成分を如何に除去するかが課題となる。
【0010】
本発明は上記課題を解決し、専用のリーダを必要とせず識別データを読み取れる受信機の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明では、
図2に示すような概略構成において、任意波形で変調された送信波7をアンテナ8で受信し、トランジスタ9により受信により流れる高周波電流14をスイッチングする。トランジスタ9の入力には変調データ13が入力され、この変調データ13に従ってスイッチングされる。この変調データ13に発振回路10の出力に個別データ11を変調回路11で変調した出力である。無線タグはアンテナ8に接続されるこれらの回路から成る。スイッチングされた高周波電流14は、送信波7を変調データ13によって変調された再送信波15として送信され、受信機16で受信する。トランジスタ9は他の非線形素子でも実現可能であり、高周波電流14に変調データ13で変調できれば良い。
【0012】
図3は無線信号の周波数スペクトラムを示したもので、送信波17に対して、上下それぞれf1だけ周波数が離れたところに再送信波18と再送信波19が現れる。周波数f1は、
図2の発振回路10の発振周波数に相当する。
図2の変調データ13は、発振回路10の周波数に対して識別データ11で変調した信号であるため、識別データ11の周波数成分に相当する周波数帯域幅の広がりを持つ。再送信波18及び再送信波19は、送信波17に対して変調データ13で変調した出力であるため、送信波17本来の周波数帯域幅よりも変調データ13の周波数帯域幅の広がりに相当する分、更に広がりを増したものとなる。
【0013】
受信機では、再送信波18と再送信波19のどちらか一方を受信すれば良いため、片方の再送信波のみ通過させるバンドパスフィルタを通すことで、目的とする受信信号のみを受信することが可能となる。
【0014】
図4は送受信される無線信号の流れと、その信号波形を数式で示した図である。送信機20からの送信波21は、搬送波周波数fcに任意の波形x(t)で変調されたもので、x(t)は複素数である。無線タグに相当する再送信端末22では送信波21に対して識別データを含む信号で変調して再送信波23を送信する。再送信波23は、送信波21の搬送波周波数fcから上下f1だけシフトした周波数で、識別データ信号y(t)で変調された信号となる。y(t)は複素数である。
【0015】
受信機24で再送信波23を受信し識別データを復調するためには、受信機24にとって未知の任意波形x(t)を除去する必要がある。そのため、受信機24に、送信波21を受信しx(t)を復調する手段を設ける。送信波21の搬送波をキャリア再生回路で再生し、直交するキャリア成分を用いて直交復調することで、実数及び虚数成分から成るx’(t)を取り出すことができる。
【0016】
しかしながら、受信機で取り出したこの複素成分x’(t)は、厳密にはx(t)とは一致しない。送信機からの伝搬路による時間遅延や直交成分の位相差が加わることになる。これらの変動要因は既知ではなく、しかも容易に求めることができない。そのため、受信機24で受信する再送信波23からx’(t)を単純に加減乗除してもx(t)を除去することはできない。
【0017】
厳密なx(t)を求めることはできないが、x’(t)との間に高い相関値を持つ場合が必ず存在する。時間Tの区間における位相変動も考慮した相関値は以下の数式で表される。
【0018】
【0019】
相関検出時間Tに比べて識別データ信号y(t)の変動が緩やかな場合、受信機24で受信する再送信波23とx’(t)との相関値Q(τ)は、以下の数式で表され、y(t)の値に応じて変動する波形となる。
【0020】
【0021】
送信波の受信波形x’(t)と、再送信波の受信波形との相関値を求めることで、識別データ信号y(t)波形を取り出すことができ、データタイミングを再生することによって、識別データを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】リーダおよびタグの送信信号のタイミングを示した図面。
【
図3】送信波および再送信波のスペクトラムを示した図面。
【
図4】送受信される信号の流れと信号波形を数式で示した図面。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【実施例0024】
図5は本発明の実施例を示したもので、受信アンテナ25で送信波を受信し、LNA26で増幅した後、フィルタ27で送信波の中心周波数fcを中心として必要な帯域幅の信号のみを通過させる。発振器28は、周波数fcの正弦波を発振し、直交復調器29に供給する。フィルタ27の出力は、直交復調器29で復調され、I信号成分30とQ信号成分31を出力する。
【0025】
受信アンテナ32では、再送信波を受信し、LNA33で増幅した後、フィルタ34で再送信波の中心周波数frを中心として必要な帯域幅の信号のみを通過させる。発振器35は、周波数frの正弦波を発振し、直交復調器36に供給する。フィルタ34の出力は、直交復調器36で復調され、I信号成分37とQ信号成分38を出力する。直交復調は線形変換であるため、フィルタ27及びフィルタ34に変えて、ベースバンド信号であるI信号成分30とQ信号成分31及びI信号成分37とQ信号成分38にフィルタを挿入しても等価となる。
【0026】
それぞれの直交復調器出力であるI信号成分30とQ信号成分31およびI信号成分37とQ信号成分38は、複素相関検出回路39に入力され、相関出力40を出力する。相関出力40は、再送信端末の識別データ信号に相当する。この相関出力40はタイミング抽出回路41に入力され、識別データのクロックタイミングを抽出する。
【0027】
タイミング抽出回路41の出力は、判定回路42に入力され、相関出力40からデータを判定し、復調データ43を出力する。
本発明は、任意の波形で変調された無線信号でも、無線タグからのデータを読み取ることができることから、電波を送信するリーダを用いずとも、空間を飛び交っている様々な電波を利用することでデータを読み取ることが可能となり、様々な場所で容易にタグからのデータを読み取るシステムに利用できる。
1:プリアンブル信号、2:コマンド信号、3:パラメータ信号、4:無変調信号、5:応答信号、6:送信機、7:送信波、8: アンテナ、9:トランジスタ、10: 発振回路、11:識別データ、12: 変調回路、13:変調データ、14: 高周波電流、15: 再送信波、16: 受信機、17:送信波、18: 再送信波、19: 再送信波、20: 送信機、21:送信波、22:再送信端末、23:再送信波、24:受信機、25:受信アンテナ、26:LNA、27:フィルタ、28:発振器、29:直交復調器、30:I信号成分、31:Q信号成分、32:受信アンテナ、33:LNA、34:フィルタ、35:発振器、36:直交復調器、37:I信号成分、38:Q信号成分、39:複素相関検出器、40:相関出力、41:タイミング抽出回路、42:判定回路、43:復調データ