(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036169
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】ガス処理システム
(51)【国際特許分類】
F23G 7/06 20060101AFI20240308BHJP
B01D 53/38 20060101ALI20240308BHJP
B01D 53/76 20060101ALI20240308BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
F23G7/06 A
B01D53/38 150
B01D53/76 ZAB
B01D53/86 222
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140930
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】迫田 耕二
【テーマコード(参考)】
3K078
4D002
4D148
【Fターム(参考)】
3K078AA04
3K078BA06
3K078BA24
3K078CA21
4D002AA32
4D002AB02
4D002AC10
4D002BA05
4D002CA11
4D002HA08
4D148AA06
4D148AB02
4D148AC03
4D148AC04
4D148BA03Y
4D148BA07Y
4D148BA11Y
4D148BA23Y
4D148BA30Y
4D148BA31Y
4D148BA32Y
4D148BA33Y
4D148BA34Y
4D148BA36Y
4D148BA41Y
4D148BA45Y
4D148CC54
(57)【要約】
【課題】 塗装乾燥炉から排出された排ガスを処理するときの熱エネルギーロス低減を図るのに有効なガス処理技術を提供しようとするものである。
【解決手段】 ガス処理システム101は、塗装後のワークWを乾燥処理する塗装乾燥炉10と、塗装乾燥炉10から排出された排ガスGaの一部Gbが戻される燃焼室21を有し、燃焼室21における燃焼処理で生成した乾燥用ガスGdを塗装乾燥炉10へ供給する燃焼装置20と、排ガスGaのうち燃焼室21に戻されなかった残ガスGcに含まれる臭気成分を除去する脱臭処理部30と、残ガスGcに含まれる窒素酸化物を除去する脱硝処理部40と、脱臭処理部30及び脱硝処理部40による処理で生成した回収ガスGfを燃焼室に送るガス戻し経路60と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装後のワークを乾燥処理する塗装乾燥炉と、
上記塗装乾燥炉から排出された排ガスの一部が戻される燃焼室を有し、上記燃焼室における燃焼処理で生成した乾燥用ガスを上記塗装乾燥炉へ供給する燃焼装置と、
上記排ガスのうち上記燃焼室に戻されなかった残ガスに含まれる臭気成分を除去する脱臭処理部と、
上記残ガスに含まれる窒素酸化物を除去する脱硝処理部と、
上記脱臭処理部及び上記脱硝処理部による処理で生成した脱臭・脱硝ガスを上記燃焼室と上記塗装乾燥炉の少なくとも一方に送るガス戻し経路と、
を備える、ガス処理システム。
【請求項2】
上記脱臭処理部と上記脱硝処理部を兼務する脱臭・脱硝装置を備え、
上記脱臭・脱硝装置は、上記残ガスを上記塗装乾燥炉よりも高温で燃焼処理する処理ユニットと、上記処理ユニット内に充填された還元触媒と、上記処理ユニット内に還元剤を注入する注入装置と、を有し、上記残ガスに含まれる臭気成分を除去する脱臭処理と、上記残ガスに含まれる窒素酸化物を除去する脱硝処理と、を上記処理ユニット内で並行して行うように構成されている、請求項1に記載のガス処理システム。
【請求項3】
上記脱臭・脱硝装置の処理ユニット内には、蓄熱体が設けられている、請求項2に記載のガス処理システム。
【請求項4】
上記ガス戻し経路には、補助脱硝装置が設けられており、
上記補助脱硝装置は、上記脱臭・脱硝装置で生成した脱臭・脱硝ガスを燃焼処理する処理ユニットと、上記処理ユニット内に充填された還元触媒と、上記処理ユニット内に還元剤を注入する注入装置と、を有する、請求項2に記載のガス処理システム。
【請求項5】
上記脱臭処理部は、上記残ガスを上記塗装乾燥炉よりも高温で燃焼処理する処理ユニットを有する脱臭装置であり、
上記脱硝処理部は、上記脱臭装置で生成した脱臭ガスを受け入れて燃焼処理する処理ユニットと、上記処理ユニット内に充填された還元触媒と、上記処理ユニット内に還元剤を注入する注入装置と、を有する脱硝装置である、請求項1に記載のガス処理システム。
【請求項6】
上記燃焼室に導入される外気を脱臭・脱硝ガスまたは脱臭ガスとの間の熱交換によって加熱する熱交換器を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のガス処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装乾燥炉から排出される排ガスを処理するガス処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、自動車ボディであるワークを塗装後に塗装乾燥炉で乾燥処理するガス処理システムが記載されている。このガス処理システムでは、加温装置の燃焼バーナーで生成した高温ガスが塗装乾燥炉に乾燥用として供給される一方で、塗装乾燥炉で発生した排ガスの大半を加温装置に戻すように構成されている。また、塗装乾燥炉から排出された排ガスは、サイクロン装置でヤニが分離された後に燃焼装置で燃焼処理されたのち、その全量が屋外排気されるように構成されている。
【0003】
塗装乾燥炉では、ワークの乾燥処理に伴って塗料に起因する揮発性有機化合物(VOC)やヤニなどが発生する。揮発性有機化合物は、乾燥によって臭気を伴う性質を有する臭気成分である。加温装置から塗装乾燥炉に供給される高温ガスには、燃焼時に生成した窒素酸化物が含まれている。なお、窒素酸化物は、燃焼装置における燃焼処理でガス中の臭気成分が分解されるときにおいても同様に生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、塗装乾燥炉で発生する排ガスを処理するこの種のガス処理技術においては、屋外排気量を極力抑えることにより熱エネルギー効率を高めることが課題とされている。引用文献1のガス処理システムの場合、燃焼装置から排出された高温ガスを塗装乾燥炉に戻すことができれば、熱エネルギーロスを低減するのに有効である。ところが、燃焼装置から排出された高温ガスには前述のように窒素酸化物が含まれており、この高温ガスをそのまま塗装乾燥炉に戻すと、塗装乾燥炉での窒素酸化物の濃度が高くなり、このことが要因で塗装品質に悪影響を及ぼすという問題が生じ得る。このため、塗装乾燥炉から排出された排ガスから臭気成分のみならず窒素酸化物をも除去することによって、熱エネルギーロスを低減することが可能になる。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、塗装乾燥炉から排出された排ガスを処理するときの熱エネルギーロス低減を図るのに有効なガス処理技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
塗装後のワークを乾燥処理する塗装乾燥炉と、
上記塗装乾燥炉から排出された排ガスの一部が戻される燃焼室を有し、上記燃焼室における燃焼処理で生成した乾燥用ガスを上記塗装乾燥炉へ供給する燃焼装置と、
上記排ガスのうち上記燃焼室に戻されなかった残ガスに含まれる臭気成分を除去する脱臭処理部と、
上記残ガスに含まれる窒素酸化物を除去する脱硝処理部と、
上記脱臭処理部及び上記脱硝処理部による処理で生成した脱臭・脱硝ガスを上記燃焼室と上記塗装乾燥炉の少なくとも一方に送るガス戻し経路と、
を備える、ガス処理システム、
にある。
【発明の効果】
【0008】
上述の態様のガス処理システムにおいて、塗装後のワークを乾燥処理する塗装乾燥炉から排出された排ガスは、その一部が燃焼室に戻され、燃焼室に戻されなかった残ガスは脱臭処理部及び脱硝処理部で処理される。残ガスに含まれる臭気成分は脱臭処理部で除去され、残ガスに含まれる窒素酸化物は脱硝処理部で除去される。そして、脱臭処理部及び脱硝処理部による処理で生成した脱臭・脱硝ガスは、ガス戻し経路を通じて燃焼室と塗装乾燥炉の少なくとも一方に送られる。
【0009】
ここで、脱臭・脱硝ガス自体には窒素酸化物が殆ど含まれていない。このため、脱臭・脱硝ガスを燃焼室や塗装乾燥炉に送っても、塗装乾燥炉で窒素酸化物の濃度が塗装品質を低下させる程度まで高くなるのを防ぐことができる。したがって、脱臭・脱硝ガスを回収することで屋外排気量を減らすことができ、その分だけ熱エネルギーロスを低減することができる。
【0010】
以上のごとく、上述の態様によれば、塗装乾燥炉から排出された排ガスを処理するときの熱エネルギーロス低減を図るのに有効なガス処理技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1のガス処理システムの概略構成図。
【
図2】実施形態2のガス処理システムの概略構成図。
【
図3】実施形態3のガス処理システムの概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0013】
上述の態様のガス処理システムは、上記脱臭処理部と上記脱硝処理部を兼務する脱臭・脱硝装置を備え、上記脱臭・脱硝装置は、上記残ガスを上記塗装乾燥炉よりも高温で燃焼処理する処理ユニットと、上記処理ユニット内に充填された還元触媒と、上記処理ユニット内に還元剤を注入する注入装置と、を有し、上記残ガスに含まれる臭気成分を除去する脱臭処理と、上記残ガスに含まれる窒素酸化物を除去する脱硝処理と、を上記処理ユニット内で並行して行うように構成されているのが好ましい。
【0014】
このガス処理システムでは、脱臭処理部と脱硝処理部を兼務する脱臭・脱硝装置が使用される。この脱臭・脱硝装置の処理ユニットの処理空間で残ガスが塗装乾燥炉よりも高温で燃焼処理される。このとき、脱臭処理については臭気成分が高温燃焼により分解除去される。また、脱硝処理については還元触媒の存在下で還元剤が注入されることによって窒素酸化物が分解除去される。このようなガス処理システムによれば、脱臭・脱硝装置を使用することで、脱臭処理と脱硝処理を個別の装置で行う場合に比べて、装置コストを低く抑えることができる。
【0015】
上述の態様のガス処理システムにおいて、上記脱臭・脱硝装置の処理ユニット内には、蓄熱体が設けられているのが好ましい。
【0016】
このガス処理システムによれば、蓄熱体によって処理ユニット内の高温状態を維持することができ、燃焼処理に要する燃料使用量を少なく抑えることができる。また、蓄熱体を使用することで脱臭・脱硝装置から排出される脱臭・脱硝ガスの温度を低く抑えることができる。
【0017】
上述の態様のガス処理システムにおいて、上記ガス戻し経路には、補助脱硝装置が設けられており、上記補助脱硝装置は、上記脱臭・脱硝装置で生成した脱臭・脱硝ガスを燃焼処理する処理ユニットと、上記処理ユニット内に充填された還元触媒と、上記処理ユニット内に還元剤を注入する注入装置と、を有するのが好ましい。
【0018】
このガス処理システムによれば、脱臭・脱硝装置で生成した脱臭・脱硝ガスに対して、さらに補助脱硝装置で窒素酸化物を除去する脱硝処理が行われる。この脱硝処理については、脱臭・脱硝装置の場合と同様に、還元触媒の存在下で還元剤が注入されることによって窒素酸化物が分解除去される。したがって、脱硝処理が脱臭・脱硝装置と補助脱硝装置の二段階で行われる。これにより、回収する脱臭・脱硝ガスに含まれる窒素酸化物の濃度をより低く抑えることができる。
【0019】
上述の態様のガス処理システムにおいて、上記脱臭処理部は、上記残ガスを上記塗装乾燥炉よりも高温で燃焼処理する処理ユニットを有する脱臭装置であり、上記脱硝処理部は、上記脱臭装置で生成した脱臭ガスを受け入れて燃焼処理する処理ユニットと、上記処理ユニット内に充填された還元触媒と、上記処理ユニット内に還元剤を注入する注入装置と、を有する脱硝装置であるのが好ましい。
【0020】
このガス処理システムによれば、脱臭装置における脱臭処理で生成した脱臭ガスに対して、脱硝装置で窒素酸化物を除去する脱硝処理が行われる。脱臭装置における脱臭処理については臭気成分が高温燃焼により分解除去される。また、脱硝装置における脱硝処理については還元触媒の存在下で還元剤が注入されることによって窒素酸化物が分解除去される。これにより、脱臭装置が既存設備である場合、既存設備を活用して脱硝装置を追加するのみで対応可能であり、設備改造に要するコストを低く抑えることができる。
【0021】
上述の態様のガス処理システムは、上記燃焼室に導入される外気を脱臭・脱硝ガスまたは脱臭ガスとの間の熱交換によって加熱する熱交換器を備えるのが好ましい。
【0022】
このガス処理システムによれば、熱交換器を設けることによって、脱臭・脱硝ガスまたは脱臭ガスの熱エネルギーを外気に回収することができ、これにより燃焼室における燃料の使用量を減らすことができる。
【0023】
以下、上述の態様のガス処理システムの具体的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1のガス処理システム101は、塗装乾燥炉10と、燃焼装置20と、脱臭・脱硝装置50と、熱交換器70と、を主体として構成されている。このガス処理システム101は、塗装乾燥炉10から排出された排ガスGaを処理するためのものである。
【0025】
1.塗装乾燥炉10の構造
塗装乾燥炉10は、塗装後の自動車ボディであるワークWを乾燥する乾燥炉である。この塗装乾燥炉10は、炉内温度が例えば160~200℃程度となるような高温状態で運転される。このため、塗装乾燥炉10では、塗料に起因する高温の排ガスGaが発生する。この排ガスGaは、炉内で塗料がガス化した煙状のものであり、揮発性有機化合物、その他の臭気ガス、及びヤニを含む。揮発性有機化合物は、典型的には、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドを主成分とするものである。この揮発性有機化合物は、一般的に「VOCガス」とも称呼される。また、この排ガスGaには、燃焼室21で発生した窒素酸化物(以下、「NOX」という。)が含まれている。なお、本明細書では、便宜上、VOCガスとその他の臭気ガスをあわせたガスを、単に「臭気成分」と記載して説明する。
【0026】
2.燃焼装置20の構造
燃焼装置20は、燃焼室21、燃焼バーナー22及び吸引ファン23を有する。塗装乾燥炉10から排出された排ガスGaの一部である部分ガスGbが燃焼室21に戻される。熱エネルギーロスを極力抑えるためには、排ガスGaに対する部分ガスGbの比率を増やすのが好ましい。燃焼室21には、部分ガスGbを燃料である液化天然ガス(以下、「LNG」という。)を使用して外気とともに燃焼処理する燃焼バーナー22が設けられている。この燃焼室21では、燃焼処理によって、例えば160~200℃程度の乾燥用ガスGdが生成する。
【0027】
燃焼室21で生成した乾燥用ガスGdは、吸引ファン23で吸気されて塗装乾燥炉10へ供給され、この塗装乾燥炉10で乾燥用ガスGdがワークWの乾燥に使用される。このとき、乾燥用ガスGdには、燃焼室21における燃焼処理で空気と窒素が結合して発生したNOXが含まれている。したがって、塗装乾燥炉10から排出された排ガスGaには、この乾燥用ガスGdに起因するNOXが含まれている。このNOXは、所謂「サーマルNOX」と称される。
【0028】
3.脱臭・脱硝装置50の構造
脱臭・脱硝装置50は、塗装乾燥炉10から排出された排ガスGaのうち燃焼室21に戻されなかった残ガスGcを受け入れて処理する装置である。残ガスGcは、排ガスGaと同一のガス組成を有するものであり、臭気成分及びNOXを含むガスである。脱臭・脱硝装置50は、内部に残ガスGcを燃焼処理する処理空間を有する処理ユニット50aを備えている。この処理ユニット50aの処理空間には、燃焼処理のための燃焼バーナー51が設けられており、さらに還元触媒(「NOX還元触媒」ともいう。)52と蓄熱体53が充填されている。また、この脱臭・脱硝装置50は、処理ユニット50aの内部に還元剤Aを注入する注入装置54を備えている。注入装置54から注入された還元剤Aは、処理ユニット50aの処理空間を流れる残ガスGcに添加される。
【0029】
燃焼バーナー51は、LNGを燃料に使用して残ガスGcを燃焼処理するためのものである。脱臭・脱硝装置50は、処理ユニット50aの処理空間の温度が例えば800~900℃程度となるような高温状態で運転される。これにより、処理ユニット50aの処理空間では、残ガスGcを燃焼バーナー51で燃焼処理することで、この残ガスGcに含まれる臭気成分を除去する脱臭処理が行われる。ここでいう「臭気成分を除去する脱臭処理」とは、管理基準値を下回るレベルまで臭気成分を低減させる処理を意味する。したがって、脱臭処理後のガスには、臭気成分が管理基準値以下の濃度で残留していてもよいし、或いは臭気成分が全く含まれていなくてもよい。一方で、この燃焼処理は、臭気成分を燃焼分解によって除去できる一方で、NOXを新たに生成する要因になる。このときに生成するNOXは、燃焼室21の場合と同様にサーマルNOXである。なお、脱臭・脱硝装置50は、燃焼室21に比べて燃焼温度が高いため、NOXの含有比率が燃焼室21に比べて大幅に上回ることが知られている。
【0030】
本形態の脱臭・脱硝装置50では、この脱臭処理と並行して、残ガスGcを還元剤Aの注入状態で還元触媒52と接触させつつ燃焼バーナー51で燃焼処理することで、この残ガスGcに含まれるNOXを除去する脱硝処理が行われる。このとき、ガスGc中のNOXが高温下で分解され、窒素と水に還元される。ここでいう「NOXを除去する脱硝処理」とは、管理基準値を下回るレベルまでNOXを低減させる処理を意味する。したがって、脱硝処理後のガスには、NOXが管理基準値以下の濃度で残留していてもよいし、或いはNOXが全く含まれていなくてもよい。このように、脱臭・脱硝装置50は、残ガスGcに含まれる臭気成分を除去する脱臭処理と、残ガスGcに含まれるNOXを除去する脱硝処理と、を1つの処理ユニット50aで並行して行うものであり、脱臭処理を行う脱臭処理部30と、脱硝処理を行う脱硝処理部40と、を兼務するように構成されている。
【0031】
ここで、脱臭・脱硝装置50が生成する脱臭・脱硝ガスGfは、残ガスGcから臭気成分とNOXがともに除去されたガスである。したがって、この脱臭・脱硝ガスGfを燃焼室21から塗装乾燥炉10に戻しても、塗装乾燥炉10で高濃度のNOXが要因で塗装品質に悪影響が生じにくい。そこで、本形態のガス処理システム101は、脱臭・脱硝装置50の下流側のガス経路50bから分岐して、このガス経路50bと燃焼室21を接続する接続経路60を備えている。
【0032】
4.還元剤Aと還元触媒52の組み合わせ
還元剤Aとして、典型的には、アンモニア、炭化水素類、水素などを使用することができる。還元剤Aにアンモニアを使用する場合には、例えば、バナジウム-チタニア担体、貴金属系触媒、ゼオライト系触媒、鉄鉱石触媒、活性コークス触媒の中から選択されたものを還元触媒52として使用できる。還元剤Aに炭化水素類を使用する場合には、例えば、ゼオライト系触媒とアルミナ系触媒のいずれかを還元触媒52として使用できる。還元剤Aに水素を使用する場合には、例えば、貴金属-疎水性担体を還元触媒52として使用できる。
【0033】
なお、還元触媒52と蓄熱体53は、互いに分離された別体構造であってもよいし、或いは、一体構造であってもよい。還元触媒52と蓄熱体53が一体構造の場合、還元触媒52が担持される担体の一部或いは全部を蓄熱体53として使用してもよい。
【0034】
接続経路60は、脱臭・脱硝装置50の脱臭処理部30及び脱硝処理部40による処理で生成した脱臭・脱硝ガスGfを燃焼室21に送るガス戻し経路である。この接続経路60は、典型的には、ガス経路50bと燃焼室21をガス流通可能に接続する配管などによって構成される。この接続経路60によれば、ガス経路50bを流れる脱臭・脱硝ガスGfの一部を燃焼室21に送ることができる。これにより、脱臭・脱硝ガスGfは、燃焼室21を経由して塗装乾燥炉10に供給される。
【0035】
なお、燃焼室21でもNOXが生成されるが、このときの生成ガス中のNOXの含有比率は、前述のような燃焼温度の違いによって、残ガスGcの燃焼処理で生じる生成ガス中のNOXの含有比率を大幅に下回る。したがって、脱臭・脱硝装置50で生成された、NOXが殆ど含まれていない脱臭・脱硝ガスGfを燃焼室21に送ったとしても、塗装乾燥炉10でNOXの濃度を高める要因になりにくい。
【0036】
ガス経路50bを流れる脱臭・脱硝ガスGfの残部は、熱交換器70に送られる。熱交換器70は、燃焼室21に導入される外気を脱臭・脱硝ガスGfとの間の熱交換によって加熱する機能を有する。また、この熱交換器70の下流経路には、熱交換後の脱臭・脱硝ガスGfを屋外排気するための吸引ファン71が設けられている。熱交換器70を設けることによって、脱臭・脱硝ガスGfの熱エネルギーを外気に回収することができ、これにより燃焼バーナー22で燃料として使用するLNGの使用量を減らすことができる。
【0037】
上述の実施形態1によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0038】
実施形態1のガス処理システム101において、塗装後のワークWを乾燥処理する塗装乾燥炉10から排出された排ガスGaは、その一部Gbが燃焼室21に戻され、燃焼室21に戻されなかった残ガスGcは、脱臭・脱硝装置50(脱臭処理部30及び脱硝処理部40)で処理される。残ガスGcに含まれる臭気成分は脱臭処理部30で除去され、残ガスに含まれるNOXは脱硝処理部40で除去される。そして、脱臭・脱硝装置50で生成した脱臭・脱硝ガスGfは、接続経路60を通じて燃焼室21に送られる。
【0039】
ここで、脱臭・脱硝ガスGf自体にはNOXが殆ど含まれていない。このため、脱臭・脱硝ガスGfを燃焼室21に送っても、塗装乾燥炉10でNOXの濃度が塗装品質を低下させる程度まで高くなるのを防ぐことができる。したがって、脱臭・脱硝ガスGfを回収することで屋外排気量を減らすことができ、その分だけ熱エネルギーロスを低減することができる。
【0040】
上述のように、実施形態1によれば、塗装乾燥炉10から排出された排ガスGaを処理するときの熱エネルギーロス低減を図ることができる。
【0041】
実施形態1のガス処理システム101では、脱臭処理部30と脱硝処理部40を兼務する脱臭・脱硝装置50が使用される。この脱臭・脱硝装置50の処理ユニット50aの処理空間で残ガスGcが燃焼室21よりも高温(したがって、塗装乾燥炉10よりも高温)で燃焼処理される。このとき、脱臭処理については臭気成分が高温燃焼により分解除去される。また、脱硝処理については還元触媒52の存在下で還元剤Aが注入されることによってNOXが分解除去される。このようなガス処理システム101によれば、脱臭・脱硝装置50を使用することで、脱臭処理と脱硝処理を個別の装置で行う場合に比べて、装置コストを低く抑えることができる。
【0042】
実施形態1のガス処理システム101によれば、蓄熱体53によって処理ユニット50a内の高温状態を維持することができ、燃焼処理に要する燃料使用量(LNGの使用量)を少なく抑えることができる。また、蓄熱体53を使用することで脱臭・脱硝装置50から排出される脱臭・脱硝ガスGfの温度を低く抑えることができる。
【0043】
上述の実施形態1に特に関連する変更例では、必要に応じて、脱臭・脱硝装置50の処理ユニット50a内に充填されている蓄熱体53が省略された構造を採用することができる。
【0044】
次に、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0045】
(実施形態2)
図2に示されるように、実施形態2のガス処理システム102は、補助脱硝装置55が追加されている点で、実施形態1のガス処理システム101と相違している。この補助脱硝装置55は、ガス経路50bと燃焼室21を接続する接続経路60に設けられている。
【0046】
補助脱硝装置55は、脱臭・脱硝装置50で生成した脱臭・脱硝ガスGfを燃焼処理する処理空間を内部に有する処理ユニット55aと、処理ユニット55aの内部に充填された還元触媒57と、処理ユニット55aの処理空間に還元剤Aを注入する注入装置58と、を有する。還元触媒57は、脱臭・脱硝装置50で使用する還元触媒52と同種のものである。脱臭・脱硝ガスGfは、接続経路60を流れる過程において補助脱硝装置55で処理される。したがって、補助脱硝装置55の処理ユニット55aの処理空間で、脱臭・脱硝ガスGfに対して脱硝処理がなされる。この脱硝処理では、脱臭・脱硝ガスGf中のNOXが高温下で分解され、窒素と水に還元される。そして、補助脱硝装置55で生成した脱臭・脱硝ガスGf’が回収ガスとして燃焼室21に送られる。
【0047】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0048】
実施形態2のガス処理システム102によれば、脱臭・脱硝装置50で生成した脱臭・脱硝ガスGfに対して、さらに補助脱硝装置55でNOXを除去する脱硝処理が行われる。この脱硝処理については、脱臭・脱硝装置50の場合と同様に、還元触媒57の存在下で注入装置80から還元剤Aが注入されることによってNOXが分解除去される。したがって、脱硝処理が脱臭・脱硝装置50と補助脱硝装置55の二段階で行われる。これにより、回収する脱臭・脱硝ガスGf’に含まれるNOXの濃度をより低く抑えることができる。また、補助脱硝装置55で燃焼処理を生じる熱量分だけ、燃焼室21で燃料として使用するLNGの使用量を抑えることができる。
【0049】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0050】
(実施形態3)
図3に示されるように、実施形態3のガス処理システム103は、互いに別個の装置である脱臭装置30と脱硝装置40を有する点で、実施形態1のガス処理システム101と相違している。このガス処理システム103は、実施形態1の脱臭・脱硝装置50の脱臭処理部30と脱硝処理部40を分離させたようなシステムであり、脱臭処理部30の脱臭機能を脱臭装置30が担い、脱硝処理部40の脱硝機能を脱硝装置40が担うように構成されている。
【0051】
脱臭装置30は、残ガスGcを塗装乾燥炉10よりも高温で燃焼処理する処理空間を内部に有する処理ユニット30aを備えている。この処理ユニット30aの処理空間には、燃焼処理のための燃焼バーナー31が設けられており、さらに蓄熱体32が充填されている。
【0052】
ガス処理システム103は、脱臭装置30の下流側のガス経路30bから分岐して、このガス経路30bと燃焼室21を接続する接続経路60を備えており、この接続経路60上に脱硝装置40が設けられている。
【0053】
脱硝装置40は、脱臭装置30で生成した脱臭ガスGeを受け入れて燃焼処理する処理空間を内部に有する処理ユニット40aと、処理ユニット40a内に充填された還元触媒42と、処理ユニット40a内に還元剤Aを注入する注入装置43と、を備えている。還元触媒42は、実施形態1の還元触媒52と同種のものである。
【0054】
ガス経路30bを流れる脱臭ガスGeの残部は、熱交換器70に送られる。熱交換器70では、燃焼室21に導入される外気が脱臭ガスGeとの間の熱交換によって加熱される。
【0055】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0056】
実施形態3のガス処理システム103によれば、脱臭装置30における脱臭処理で生成した脱臭ガスGeに対して、脱硝装置40でNOXを除去する脱硝処理が行われる。脱臭装置30における脱臭処理については臭気成分が高温燃焼により分解除去される。また、脱硝装置40における脱硝処理については還元触媒42の存在下で還元剤Aが注入されることによってNOXが分解除去される。これにより、脱臭装置30が既存設備である場合、既存設備を活用して脱硝装置40を追加するのみで対応可能であり、設備改造に要するコストを低く抑えることができる。
【0057】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0058】
上述の実施形態3に特に関連する変更例では、必要に応じて、脱臭装置30の処理ユニット30a内に充填されている蓄熱体32が省略された構造を採用することができる。
【0059】
本発明は、上述の形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、上述の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0060】
上述の形態では、接続経路60を通じて燃焼室21のみに脱臭・脱硝ガスGf,Gf’を送る場合について例示したが、脱臭・脱硝ガスGf,Gf’の送り先は燃焼室21に限定されるものではない。例えば、接続経路60を通じて塗装乾燥炉10のみに脱臭・脱硝ガスGf,Gf’を送る構造や、接続経路60を通じて塗装乾燥炉10と燃焼室21の両方に並行して脱臭・脱硝ガスGf,Gf’を送る構造を採用することもできる。
【0061】
上述の形態では、還元剤Aと還元触媒42,52,57を組わせて使用する場合について例示したが、これに代えて、還元剤Aのみを使用するようにしてもよい。例えば、無触媒選択還元法のように、還元剤Aとしてアンモニア、尿素、シアヌル酸などを使用する場合には、還元触媒42,52,57を要することなく脱硝処理を行うことができる。
【0062】
上述の形態では、自動車ボディ用の塗装乾燥炉から排出された排ガスを処理するガス処理技術について例示したが、この塗装乾燥炉の用途は特に限定されるものではなく、例えば、自動車ボディ以外の他の車両部品や、自動車以外の他の分野のワークなどの乾燥に使用されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 塗装乾燥炉
20 燃焼装置
21 燃焼室
30 脱臭装置(脱臭処理部)
30a,40a,50a,55a 処理ユニット
32,53 蓄熱体
40 脱硝装置(脱硝処理部)
42,52,57 還元触媒
43,54,58 注入装置
50 脱臭・脱硝装置
55 補助脱硝装置
60 接続経路(ガス戻し経路)
70 熱交換器
101,102,103 ガス処理システム
A 還元剤
Ga 排ガス
Gb 部分ガス(排ガスの一部)
Gc 残ガス
Ge 脱臭ガス
Gd 乾燥用ガス
Gf,Gf’ 脱臭・脱硝ガス
W ワーク