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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003617
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】短距離無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 48/08 20090101AFI20240105BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20240105BHJP
   H04W 92/18 20090101ALI20240105BHJP
   H04W 76/10 20180101ALI20240105BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20240105BHJP
   H04W 4/02 20180101ALI20240105BHJP
   H04W 4/40 20180101ALI20240105BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
H04W48/08
H04W84/10 110
H04W92/18
H04W76/10
H04W88/06
H04W4/02
H04W4/40
H04M11/00 301
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102874
(22)【出願日】2022-06-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】野辺 啓太
(72)【発明者】
【氏名】柴森 一浩
(72)【発明者】
【氏名】水野谷 一
【テーマコード(参考)】
5K067
5K201
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067DD20
5K067DD34
5K067EE02
5K067EE38
5K067JJ52
5K201BA01
5K201CC04
5K201EB07
5K201EC06
5K201ED04
5K201ED08
(57)【要約】
【課題】最新の法規制に準拠しつつ、携帯通信端末と車載通信端末とを短距離無線通信で接続することが可能な短距離無線通信システムを提供する。
【解決手段】管理サーバ3は、最新の法規制情報を取得し記憶する記憶部17を備え、携帯通信端末1から無線通信オン要求を受信した場合に、記憶部17に記憶された最新の法規制情報に基づいて、車載通信端末2から受信した車体6の現在位置が、短距離無線通信が許可されている地域に含まれるか否かを判定し、短距離無線通信が許可されている地域に前記現在位置が含まれると判定した場合は、前記短距離無線通信オン要求を車載通信端末2に送信し、短距離無線通信が許可されている地域に前記現在位置が含まれないと判定した場合は、前記短距離無線通信オン要求を車載通信端末2に送信しない。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に搭載された車載通信端末と、
前記車載通信端末と短距離無線通信回線で接続可能な携帯通信端末とを備えた短距離無線通信システムにおいて、
通信ネットワークを介して前記車載通信端末と前記携帯通信端末とに接続された管理サーバを備え、
前記携帯通信端末は、前記車載通信端末と短距離無線通信回線で接続する際に、無線通信オン要求を前記管理サーバに送信し、
前記管理サーバは、
最新の法規制情報を取得し記憶する記憶部を備え、
前記携帯通信端末から前記無線通信オン要求を受信した場合に、前記記憶部に記憶された最新の法規制情報に基づいて、前記車載通信端末から受信した前記車体の現在位置が、短距離無線通信が許可されている地域に含まれるか否かを判定し、
短距離無線通信が許可されている地域に前記現在位置が含まれると判定した場合は、前記無線通信オン要求を前記車載通信端末に送信し、
短距離無線通信が許可されている地域に前記現在位置が含まれないと判定した場合は、前記無線通信オン要求を前記車載通信端末に送信しない
ことを特徴とする短距離無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の短距離無線通信システムにおいて、
前記車載通信端末は、前記車体の位置情報を前記管理サーバに定期的に送信し、
前記管理サーバは、
前記携帯通信端末から前記無線通信オン要求を受信した場合に、前記車載通信端末から最後に受信した前記車体の位置情報である過去位置情報が、短距離無線通信が許可されている地域に含まれる場合に、前記過去位置情報を前記車載通信端末に送信し、
前記車載通信端末は、前記過去位置情報から前記車体の現在位置情報までの移動距離が所定の閾値以下である場合は短距離無線通信をオンにし、前記移動距離が前記閾値を上回る場合は、短距離無線通信をオンにせず、前記現在位置情報を前記管理サーバに送信する
ことを特徴とする短距離無線通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載の短距離無線通信システムにおいて、
前記車体に搭載された車載モニタを備え、
前記車載モニタは、前記通信ネットワークが使用できないことを前記車載通信端末が検知した場合に、短距離無線通信を手動でオンにするための操作メニューを表示する
ことを特徴とする短距離無線通信システム。
【請求項4】
請求項1に記載の短距離無線通信システムにおいて、
前記車載通信端末は、短距離無線通信をオンにしてから一定距離を移動した場合、または、短距離無線通信をオンにしてから一定時間が経過した場合に、短距離無線通信をオフにする
ことを特徴とする短距離無線通信システム。
【請求項5】
請求項1に記載の短距離無線通信システムにおいて、
前記車体に搭載された車載モニタを備え、
前記車載通信端末は、
短距離無線通信が有効である無線通信有効モードと、短距離無線通信がオフでかつ短距離無線通信をオンに切替可能である無線通信停止モードと、短距離無線通信がオフでかつ短距離無線通信をオンに切替不能である無線通信禁止モードとを有し、
前記無線通信有効モードまたは前記無線通信停止モードから前記無線通信禁止モードへの切替は、前記携帯通信端末または前記車載モニタの操作により可能であるが、
前記無線通信禁止モードから前記無線通信有効モードまたは前記無線通信停止モードへの切替は、前記携帯通信端末または前記車載モニタの操作では不能である
ことを特徴とする短距離無線通信システム。
【請求項6】
請求項1に記載の短距離無線通信システムにおいて、
前記携帯通信端末は、所定の操作で有効化することが可能な第1信号を記憶し、前記第1信号が有効化されている状態で前記無線通信オン要求を送信する操作が行われた場合は、前記無線通信オン要求を前記管理サーバに送信せず、前記無線通信オン要求を送信できないことを端末画面上で報知し、
前記車載通信端末は、車載モニタまたはサービスツール上の所定の操作で有効化することが可能な第2信号を記憶し、前記第2信号が有効化されている状態で前記管理サーバから無線通信オン要求を受信した場合は、無線通信をオンにせず、短距離無線通信をオンにできないことを前記管理サーバを介して前記携帯通信端末に報知し、
前記管理サーバは、所定の操作で有効化することが可能な第3信号を記憶し、前記第3信号が有効化されている状態で前記携帯通信端末から前記無線通信オン要求を受信した場合は、前記無線通信オン要求を前記車載通信端末に送信せず、短距離無線通信をオンにできないことを前記携帯通信端末に報知する
ことを特徴とする短距離無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯通信端末と車載通信端末とを短距離無線通信で接続する短距離無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
IoT機器の発展により、工事現場には多数の無線通信機器が存在する。これらの機器の多くが無免許で使用できる短距離無線通信を使用しており、通信帯域を共有しているため、相互の電波干渉による通信性能低下が懸念される。
【0003】
一方、建設機械において、スマートフォンなどの携帯通信端末と車体を短距離無線通信で接続して車体診断機能を実現することが求められているが、既存の機器への電波干渉による影響を最小限に抑える必要がある。加えて、各国における通信規制によっては短距離無線機能の通信帯域を制限したり、場合によっては短距離無線通信の使用自体を禁止することを求められる場合もある。このような背景から、車体側の短距離無線通信の動作状態を法規制への準拠を確認しつつ、無線を使って任意に切り替える手段が求められる。
【0004】
無線を使った切替に関する技術として、例えば車の電子キーが挙げられる。特許文献1によれば、電子キーが車体側からの起動信号を受信した場合に、電子キーのID情報を車体に送信し、車体側は正しいID情報であればキーロックを解除するという機能を実現している。
【0005】
また、短距離無線通信を使用可能(オン)にする場合、各国法規制への準拠が必要となるが、特許文献2では、通信規制データ(無線通信が許可されている地域とそうでない地域とを区分けしたデータマップ)と車体の現在位置とを比較し、通信規制されていない地域に車体が位置する場合に無線通信を許可し、通信規制されている地域に車体が位置する場合は無線通信を禁止する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5365979号公報
【特許文献2】特開2008-121203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術は、事前にペアリングされた車体と電子キーとの通信によりキーロックを解除するという機能を実現しているが、法規制を考慮していないため、通信規制されている地域において短距離無線通信が使用される可能性がある。
【0008】
また、特許文献2の手法では、通信規制データを車体側で記憶しておく必要があるため、通信規制データが最新のものに更新されていなかった場合に、新たに通信規制されることになった地域において誤って無線通信を許可してしまう可能性がある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、最新の法規制に準拠しつつ、携帯通信端末と車載通信端末とを短距離無線通信で接続することが可能な短距離無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、車体に搭載された車載通信端末と、前記車載通信端末と短距離無線通信回線で接続可能な携帯通信端末とを備えた短距離無線通信システムにおいて、通信ネットワークを介して前記車載通信端末と前記携帯通信端末とに接続された管理サーバを備え、前記携帯通信端末は、前記車載通信端末と短距離無線通信回線で接続する際に、無線通信オン要求を前記管理サーバに送信し、前記管理サーバは、最新の法規制情報を取得し記憶する記憶部を備え、前記無線通信オン要求を受信した場合に、前記記憶部に記憶された最新の法規制情報に基づいて、前記車載通信端末から受信した前記車体の現在位置が、短距離無線通信が許可されている地域に含まれるか否かを判定し、短距離無線通信が許可されている地域に前記現在位置が含まれると判定した場合は、前記短距離無線通信オン要求を前記車載通信端末に送信し、短距離無線通信が許可されている地域に前記現在位置が含まれないと判定した場合は、前記短距離無線通信オン要求を前記車載通信端末に送信しないものとする。
【0011】
以上のように構成した本発明によれば、短距離無線通信が許可されている地域に車体が存在していると管理サーバが判定した場合に限り、携帯通信端末が発信した無線通信オン要求が管理サーバを経由して車載通信端末に受信される。これにより、最新の法規制に準拠しつつ、携帯通信端末と車載通信端末とを短距離無線通信で接続することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る短距離無線通信システムによれば、最新の法規制に準拠しつつ、携帯通信端末と車載通信端末とを短距離無線通信で接続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態における短距離無線通信システムの構成を示す図
図2】本発明の実施形態における短距離無線通信システムの機能ブロック図
図3】本発明の第1の実施例における短距離無線通信システムの処理を示すフローチャート
図4】本発明の第2の実施例における短距離無線通信システムの処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各図中、同等の要素には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【実施例0015】
図1は、本発明の第1の実施例における短距離通信システムの構成を示す図である。大第1の実施例における短距離無線通信システムは、携帯通信端末1と、車載通信端末2と、管理サーバ3とを備えている。
【0016】
携帯通信端末1は、例えば作業者4が携帯しているスマートフォンやタブレットで構成され、短距離無線通信を介して車載通信端末2と通信可能であり、主にセルラー通信回線やインターネットで構成される通信ネットワーク5を介して管理サーバ3と通信可能である。車載通信端末2は車体6に搭載され、主に有線接続で車内ネットワーク(図示せず)に接続されており、車内ネットワークを介して車体システム7に接続される。車載通信端末2は、通信ネットワーク5を介して管理サーバ3と通信可能である。図1において、車体6として油圧ショベルを例示しているが、車体6の種類は特に限定されない。
【0017】
車体6の通常動作時は、車載通信端末2の短距離無線通信はオフ(無効)になっている。携帯通信端末1は、短距離無線通信で車載通信端末2に接続する際に、通信ネットワーク5を経由して管理サーバ3に無線通信オン要求を送信する。管理サーバ3は、無線通信オン要求を車載通信端末2に送信しても問題ないかを車体6の位置情報などを基に判断する。無線通信オン要求を受信した車載通信端末2は、短距離無線通信をオン(有効)に設定し、車載通信端末2との通信接続に必要な情報(接続情報)を管理サーバ3経由で携帯通信端末1に送信する。携帯通信端末1は、車載通信端末2に短距離無線通信で接続し、車体6からモニタリングデータを受信する。作業者4は、車体6から受信したモニタリングデータを参考にメンテナンス作業等を行う。携帯通信端末1は、車載通信端末2および車体システム7に対してパラメータ設定や操作を行うことも可能である。携帯通信端末1は無線で車載通信端末2に接続されるため、キャブ内の通信ポートへの有線接続が不要であり、作業者4はエンジンルームなどのキャブ外でも配線を気にせずに作業できる。
【0018】
図2は、短距離無線通信システムの機能ブロック図である。管理サーバ3は、最新の法規制情報を取得し記憶する記憶部17と、車載通信端末2から受信した車体6の現在位置に基づき車体6が稼働している地域(稼働地域)を判定する許可地域判定部8と、携帯通信端末1からの無線通信オン要求を受けて稼働地域を各国の最新の法規制に基づく通信許可国リストと照合して通信可否を判定する無線通信可否判定部9と、無線通信オン要求を車載通信端末2に送信する無線通信オン要求送信部10と、接続情報を携帯通信端末1に送信する接続情報送信部11と有する。
【0019】
車体6には、車載通信端末2の他に、車載モニタ12、車載モニタ12を制御するモニタコントローラ13、作業者4の操作に応じてモニタコントローラ13への指示を入力可能なユーザインタフェース14が搭載されている。これら機器の機能については後述する。また、サービスツール15および管理サーバ操作端末16については、後の実施例で説明する。
【0020】
図3は、短距離無線通信システムの処理を示すフローチャートである。以下、各ステップについて順に説明する。
【0021】
まず、作業者4は、短距離無線通信で接続する先の車体6を特定できる情報を携帯通信端末1に入力し、通信ネットワーク5を通じて管理サーバ3に無線通信オン要求を送信する(ステップS101)。このとき、携帯通信端末1に固有の情報(例えばMACアドレス)を合わせて送信してもよい。
【0022】
管理サーバ3は、携帯通信端末1からの無線通信オン要求を受信したか否かを判定する(ステップS102)。無線通信オン要求を受信した場合は、通信ネットワーク5を通じて車載通信端末2に位置要求を送信する(ステップS103)。位置要求を受信した車載通信端末2は、車体6の現在位置を管理サーバ3に送信する(ステップS104)。
【0023】
車体6の現在位置を取得した管理サーバ3は、短距離無線通信が許可されている地域に車体6が存在するか否か(無線通信可否)を判定する(ステップS105)。なお、ステップS103に代えて、車載通信端末2が使用している通信キャリアに車体6の現在位置を問い合わせてもよいし、管理サーバ3に登録されている顧客情報から車体6の現在位置を推定してもよい。
【0024】
短距離無線通信が可能と判定した管理サーバ3は、車載通信端末2に無線通信オン要求を送信する(ステップS106)。ここで、携帯通信端末1に固有の情報を取得している場合は、合わせて車載通信端末2に送信してもよい。これにより、通信接続を要求している特定の携帯通信端末1にのみ通信接続を許可することが可能となる。
【0025】
短距離無線通信が不可と判定した管理サーバ3は、短距離無線通信の不許可を携帯通信端末1に報知する(ステップS107)。短距離無線通信の不許可を報知された携帯通信端末1は、短距離無線通信が使用不可であることを端末画面に表示し、作業者4に報知する(ステップS108)。
【0026】
車載通信端末2は、管理サーバ3から無線通信オン要求を受信したか否かを判定する(ステップS109)。無線通信オン要求を受信した場合は、短距離無線通信をオン(有効)にし(ステップS110)、接続情報を管理サーバ3に送信する(ステップS111)。ここでいう接続情報は、例えばIDとパスワードなどを指す。
【0027】
車載通信端末2から接続情報を受信した管理サーバ3は、当該接続情報を携帯通信端末1に送信する(ステップS112)。接続情報を受信した携帯通信端末1は、短距離無線通信を使って車載通信端末2に接続する(ステップS113)。車載通信端末2は、管理サーバ3から携帯通信端末1の固有情報を受信している場合は、接続を試みてきた携帯通信端末1の固有情報と比較し、両者が一致したときにのみ接続を許可する。
【0028】
なお、国によっては軍用回線や気象衛星などとの干渉を防ぐため、短距離無線通信の帯域を一部使用禁止にしている場合がある。また、それ以外の国では使える帯域が多いほうが通信性能は高くなることから、できるだけ多くの帯域を使って通信できるようにしたいという要求がある。そこで、短距離無線通信自体の使用を許可/禁止する構成を、例えば特定の帯域の使用を許可/禁止する構成と読み替えてもよい。
【0029】
また、対象となる車体6が国境付近で稼働している場合、GPSなどの衛星測位システムの情報だけでは稼働地域を誤って判定してしまうことが考えられる。そこで、国境から一定距離以内で車体6が稼働している場合は、管理サーバ3によって判定された稼働地域が正しいか否かを問い合わせる画面を車載モニタ12上に表示し、作業者4によって正しいことが確認された場合は無線通信をオンに切り換え、正しいことが確認されなかった場合は実際の稼働地域を管理サーバ3に送信し、当該稼働地域において無線通信が可能か否かを管理サーバ3に判定させるように構成してもよい。または、国境線から一定距離以内で車体6が稼働している場合は無線通信をオンにしないように構成しても良い。
【0030】
また、短距離無線通信は必要なときのみオンにしておきたいという要求があるため、通信が切断されたら短距離無線通信をオフにするような構成も考えられる。しかし、そのような構成では電波状況などにより切断されるたびに再接続に時間がかかるため、短距離無線通信を使った機能の利便性が低くなってしまう。したがって、例えば車体6のキースイッチがオンになっている間や、日付が変わるまでの間など、短距離無線通信を使った機能を使用するのに十分な時間だけ無線通信オンを維持するように構成してもよい。また、短距離無線通信をオンにした状態で国境線をまたいでしまうリスクを考え、一定距離を移動したら短距離無線通信をオフに切り換えてもよい。
【0031】
第1の実施例では、車体6に搭載された車載通信端末2と、車載通信端末2と短距離無線通信回線で接続可能な携帯通信端末1とを備えた短距離無線通信システムにおいて、通信ネットワーク5を介して車載通信端末2と携帯通信端末1とに接続された管理サーバ3を備え、携帯通信端末1は、車載通信端末2と短距離無線通信回線で接続する際に、無線通信オン要求を管理サーバ3に送信し、管理サーバ3は、最新の法規制情報を取得し記憶する記憶部17を備え、携帯通信端末1から前記無線通信オン要求を受信した場合に、記憶部17に記憶された最新の法規制情報に基づいて、車載通信端末2から受信した車体6の現在位置が、短距離無線通信が許可されている地域に含まれるか否かを判定し、短距離無線通信が許可されている地域に前記現在位置が含まれると判定した場合は、前記無線通信オン要求を車載通信端末2に送信し、短距離無線通信が許可されている地域に前記現在位置が含まれないと判定した場合は、前記無線通信オン要求を車載通信端末2に送信しない。
【0032】
以上のように構成した第1の実施例によれば、短距離無線通信が許可されている地域に車体6が存在していると管理サーバ3が判定した場合に限り、携帯通信端末1が発信した無線通信オン要求が管理サーバ3を経由して車載通信端末2に受信される。これにより、最新の法規制に準拠しつつ、携帯通信端末1と車載通信端末2とを短距離無線通信で接続することが可能となる。
【0033】
また、第1の実施例における車載通信端末2は、短距離無線通信をオンにしてから一定距離を移動した場合、または、短距離無線通信をオンにしてから一定時間が経過した場合に、短距離無線通信をオフにする。これにより、短距離無線通信の利便性を向上するとともに、短距離無線通信をオンにした状態で車体6が短距離無線通信が許可されていない地域に侵入することを防ぐことが可能となる。
【実施例0034】
本発明の第2の実施例について、第1の実施例との相違点を中心に説明する。第1の実施例では、短距離無線通信の可否を判定する際に、管理サーバ3から車載通信端末2に位置要求を送信し、位置要求を受信した車載通信端末2が車体6の現在位置を管理サーバ3に送信する。そのため、短距離無線通信をオンにするまでの処理時間、および通信ネットワーク5における通信コストが増加する。第2の実施例はこの点を考慮したものである。
【0035】
車載通信端末2は、管理サーバ3に車体6の位置情報を定期的に送信している。第2の実施例では、この定期的に送信される位置情報を使って無線通信可否判定の補助を行う。この手順を図4を用いて説明する。
【0036】
図4は、第2の実施例における短距離無線通信システムの処理を示すフローチャートである。以下、各ステップについて順に説明する。
【0037】
まず、作業者4は、短距離無線通信で接続する先の車体6を特定できる情報を携帯通信端末1に入力し、通信ネットワーク5を通じて管理サーバ3に無線通信オン要求を送信する(ステップS201)。
【0038】
管理サーバ3は、携帯通信端末1からの無線通信オン要求を受信したか否かを判定する(ステップS202)。無線通信オン要求を受信した場合は、車載通信端末2から最後に受信した位置情報が示す位置(過去位置)での無線通信可否を判定する(ステップS203)。無線通信可能と判定した場合は、条件付き無線通信オン要求および過去位置を車載通信端末2に送信する(ステップS204)。無線通信不可と判定した場合は、車載通信端末2に位置要求を送信する(ステップS205)。この処理は図3のステップS103と同じである。
【0039】
車載通信端末2は、管理サーバ3から条件付き無線通信オン要求を受信したか否かを判定する(ステップS206)。条件付き無線通信オン要求を受信した車載通信端末2は、管理サーバ3から受信した過去位置から現在位置までの移動距離が所定の閾値以下か否かを判定し(ステップS207)、所定の閾値以下であれば短距離無線通信をオンにする(ステップS208)。ここでいう閾値は、例えば車体6が過去位置の稼働現場内から移動していないとみなすことができる距離に設定される。ステップS208に続く処理は、図3に示すステップS111以降の処理と同じである。
【0040】
過去位置から現在位置までの移動距離が閾値を上回る場合は、車体6が別の現場に移動し、または国外へ輸送されたと想定されるため、管理サーバ3に現在位置を送信し(ステップS209)、再度無線通信可否判定を行う。ステップS209に続く処理は、図3に示すステップS105以降の処理と同じである。
【0041】
第2の実施例における車載通信端末2は、車体6の位置情報を管理サーバ3に定期的に送信し、管理サーバ3は、携帯通信端末1から無線通信オン要求を受信した場合に、車載通信端末2から最後に受信した車体6の位置情報である過去位置情報が、短距離無線通信が許可されている地域に含まれる場合に、前記過去位置情報を車載通信端末2に送信し、車載通信端末2は、前記過去位置情報から車体6の現在位置情報までの移動距離が所定の閾値以下である場合は短距離無線通信をオンにし、前記移動距離が前記閾値を上回る場合は、短距離無線通信をオンにせず、前記現在位置情報を管理サーバ3に送信する。
【0042】
以上のように構成した第2の実施例によれば、短距離無線通信が許可された過去位置の近傍(同一国、同一現場など)で車体6が稼働している限りは、管理サーバ3から車載通信端末2への位置要求の送信、および車載通信端末2から管理サーバ3への位置情報の送信が省略される。その結果、短距離無線通信をオンにするまでの処理時間、および通信ネットワーク5における通信コストを抑制することが可能となる。
【実施例0043】
本発明の第3の実施例について、第1の実施例との相違点を中心に説明する。第1の実施例の構成では、通信ネットワーク5を介して短距離無線通信を有効(オン)に設定する。しかし、車体6の稼働状態などの物理的な条件により、携帯通信端末1または車載通信端末2と通信ネットワーク5との通信ができない(基地局との接続が確立できない)場合がある。その場合、短距離無線通信を有効(オン)に設定することができなくなる。そこで、手動で短距離無線通信を有効(オン)に設定するバックアップ手段が求められる。第3の実施例はこの要求を考慮したものである。
【0044】
第3の実施例におけるモニタコントローラ13は、作業者4による車載モニタ12上の操作に応じて、車載モニタ12上に「手動での無線通信オン」の操作メニューを表示することができる。作業者4が当該操作メニューを選択すると、車載通信端末2は短距離無線通信をオンに設定し、接続情報を車載モニタ12上に表示する。この場合の接続情報は、例えば携帯通信端末1のカメラで読み取り可能な画像コード(バーコードや二次元コード)で表示される。
【0045】
手動での無線通信オンを可能とした第3の実施例では、作業者4は事前に管理サーバ3から最新の通信規制状況を入手し、通信禁止国で短距離無線通信をオンにしないように注意する必要がある。手動での無線通信オンが最新の法規制に準拠しているか否かを事後的に確認するため、手動で無線通信がオンにされた場合にその旨とオンにされた位置情報を車載通信端末2が記録し、通信ネットワーク5が使用可能になった後に管理サーバ3に通知してもよい。
【0046】
また、車載通信端末2が通信ネットワーク5が使用できないこと(例えば通信圏外)を検知した場合に、モニタコントローラ13が車載モニタ12上に「手動での無線通信オン」の操作メニューを表示し、通信ネットワーク5が再び使用可能になった後に当該操作メニューを消すように構成してもよい。
【0047】
第3の実施例における短距離無線通信システムは、車体6に搭載された車載モニタ12を備え、車載モニタ12は、通信ネットワーク5が使用できないことを車載通信端末2が検知した場合に、短距離無線通信を手動でオンにするための操作メニューを表示する。
【0048】
以上のように構成した第3の実施例によれば、車載通信端末2が通信ネットワーク5を使用できない場合に、作業者4は速やかに手動で短距離無線通信をオンにすることが可能となる。
【実施例0049】
本発明の第4の実施例について、第3の実施例との相違点を中心に説明する。第3の実施例では、作業者4による手動での無線通信オンが可能であるため、作業者4の不注意により最新の法規制に違反して短距離無線通信が使用される可能性がある。第4の実施例はこの点を考慮したものである。
【0050】
第4の実施例における車載通信端末2は、作業者4による手動での無線通信オンを禁止する動作モードを有する。すなわち、車載通信端末2は、短距離無線通信をオン(有効)に設定した動作モードである「無線通信有効モード」、短距離無線通信をオフ(無効)に設定しかつ無線通信オン要求によりオン(有効)に設定可能な動作モードである「無線通信停止モード」、および短距離無線通信をオフ(無効)に設定しかつオン(有効)への切り替えを許可しない動作モードである「無線通信禁止モード」の3つの動作モードを有する。
【0051】
無線通信停止モードから無線通信有効モードへの切り替えは、第1の実施例で説明した通りである。無線通信停止モードから無線通信禁止モードへの切り替えは、車載モニタ12上の操作メニューにより、または、携帯通信端末1から通信ネットワーク5を介して行う。無線通信有効モードから無線通信禁止モードへの切り替えは、車載モニタ12上の操作メニューにより、または、携帯通信端末1から通信ネットワーク5または短距離無線通信を介して行うよ。無線通信禁止モードから無線通信停止または無線通信有効への切り替えは、工場設定への初期化や設計用コマンド以外では許可しない。
【0052】
なお、無線通信禁止モードのときに車載通信端末2が無線通信オン要求を受信した場合、車載通信端末2が短距離無線通信をオンできないことを管理サーバ3経由で携帯通信端末1に報知してもよい。また、無線通信禁止の情報を管理サーバ3が持っている場合は、携帯通信端末1から無線通信オン要求を受信した管理サーバ3は、無線通信可否判断を行わずに携帯通信端末1に短距離無線通信が不可であることを報知する。また、特定の車体6の短距離無線通信を禁止するか否かの情報を管理サーバ3管理サーバ3に持たせ、所有者やサービスマンの携帯通信端末1から当該情報を変更できるようにしてもよい。
【0053】
第4の実施例における短距離無線通信システムは、車体6に搭載された車載モニタ12を備え、車載通信端末2は、短距離無線通信がオンである無線通信有効モードと、短距離無線通信がオフでかつ短距離無線通信をオンに切替可能である無線通信停止モードと、短距離無線通信がオフでかつ短距離無線通信をオンに切替不能である無線通信禁止モードとを有し、前記無線通信有効モードまたは前記無線通信停止モードから前記無線通信禁止モードへの切替は、前記携帯通信端末または前記車載モニタの操作により可能であるが、前記無線通信禁止モードから前記無線通信有効モードまたは前記無線通信停止モードへの切替は、前記携帯通信端末または前記車載モニタの操作では不能である。
【0054】
以上のように構成した第4の実施例によれば、車載通信端末2に無線通信禁止モードを設け、携帯通信端末1または車載モニタ12の操作による無線通信禁止モードから無線通信有効モードまたは無線通信停止モードへの切替を不能とすることにより、作業者4の不注意により最新の法規制に違反して短距離無線通信が使用されることを防止することが可能となる。
【実施例0055】
本発明の第5の実施例について、第1の実施例との相違点を中心に説明する。例えば高精度な施工のためのIoT機器に絶対に干渉を与えたくないなどの理由から、短距離無線通信が許可されている地域であっても、短距離無線通信を使用できないようにしたい場合がある。第5の実施例はこの点を考慮したものである。
【0056】
第5の実施例における携帯通信端末1、車載通信端末2、および管理サーバ3は、それぞれ、短距離無線通信の使用の試みを却下するか否かの信号(無線通信使用却下信号)を記憶している。
【0057】
携帯通信端末1の無線通信使用却下信号は、携帯通信端末1上での所定の操作で有効化することができる。携帯通信端末1は、無線通信使用却下信号が有効化されている状態で無線通信オン要求を送信する操作が行われた場合、無線通信オン要求を送信できないことを端末画面上で報知する。
【0058】
車載通信端末2の無線通信使用却下信号は、車載モニタ12またはサービスツール15上の所定の操作で有効化することができる。車載通信端末2は、無線通信使用却下信号が有効化されている状態で無線通信オン要求を受信した場合は、短距離無線通信をオンにせず、短距離無線通信をオンにできないことを管理サーバ3を介して携帯通信端末1に報知する。
【0059】
管理サーバ3の無線通信使用却下信号は、パソコンやタブレットからなる管理サーバ操作端末16上の所定の操作により有効化することができる。管理サーバ3は、無線通信使用却下信号が有効化されている状態で無線通信オン要求を受信した場合は、無線通信可否判定を行わず、短距離無線通信をオンにできないことを携帯通信端末1に報知する。
【0060】
第5の実施例における携帯通信端末1は、所定の操作により有効化することが可能な第1信号(無線通信使用却下信号)を記憶し、前記第1信号が有効化されている状態で無線通信オン要求を送信する操作が行われた場合は、前記無線通信オン要求を管理サーバ3に送信せず、前記無線通信オン要求を送信できないことを端末画面上で報知し、車載通信端末2は、車載モニタ12またはサービスツール15上の所定の操作で有効化することが可能な第2信号(無線通信使用却下信号)を記憶し、前記第2信号が有効化されている状態で管理サーバ3から前記無線通信オン要求を受信した場合は、短距離無線通信をオンにせず、短距離無線通信をオンにできないことを管理サーバ3を介して携帯通信端末1に報知し、管理サーバ3は、所定の操作で有効化することが可能な第3信号(無線通信使用却下信号)を記憶し、前記第3信号が有効化されている状態で携帯通信端末1から前記無線通信オン要求を受信した場合は、前記無線通信オン要求を車載通信端末2に送信せず、短距離無線通信をオンにできないことを携帯通信端末1に報知する。
【0061】
以上のように構成した第5の実施例によれば、携帯通信端末1、車載通信端末2、および管理サーバ3が記憶している無線通信使用却下信号のいずれかを有効化することにより、短距離無線通信が許可されている地域であっても、短距離無線通信を使用できなくすることが可能となる。
【0062】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、本発明は必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…携帯通信端末、2…車載通信端末、3…管理サーバ、4…作業者、5…通信ネットワーク、6…車体、7…車体システム、8…許可地域判定部、9…無線通信可否判定部、10…無線通信オン要求送信部、11…接続情報送信部、12…車載モニタ、13…モニタコントローラ、14…ユーザインタフェース、15…サービスツール、16…管理サーバ操作端末、17…記憶部。
図1
図2
図3
図4