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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036172
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20240308BHJP
   F21V 29/56 20150101ALI20240308BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240308BHJP
【FI】
F21S2/00 377
F21V29/56
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140937
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松島 竹夫
(57)【要約】
【課題】複数の発光素子間の光出力の均一性を高められる光源装置を提供する。
【解決手段】光源装置は、一方の主面に複数の発光素子が配置された基板と、前記基板の他方の主面に接合され、冷媒が流通する渦巻状の流路を内部に含む冷却板と、を備え、前記冷却板は、前記冷媒の流入口と、前記冷媒の流出口と、前記流入口に接続され、前記冷媒が前記冷却板の外から内に向かって流れる第一流路と、前記第一流路と前記流出口に接続され、前記第一流路を通過した前記冷媒が前記冷却板の内から外に向かって流れる第二流路と、を含み、前記第一流路と前記第二流路は、前記冷却板の外から内に向かって交互に配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面に複数の発光素子が配置された基板と、前記基板の他方の主面に接合され、冷媒が流通する渦巻状の流路を内部に含む冷却板と、を備え、
前記冷却板は、
前記冷媒の流入口と、
前記冷媒の流出口と、
前記流入口に接続され、前記冷媒が前記冷却板の外から内に向かって流れる第一流路と、
前記第一流路と前記流出口に接続され、前記第一流路を通過した前記冷媒が前記冷却板の内から外に向かって流れる第二流路と、を含み、
前記第一流路と前記第二流路は、前記冷却板の外から内に向かって交互に配置されることを特徴とする、光源装置。
【請求項2】
前記第一流路と前記第二流路は、
前記第一流路及び前記第二流路の前記冷媒の進行方向左側に位置する第一ストリップと、前記第一流路および前記第二流路の前記冷媒の進行方向右側に位置する第二ストリップによって区画されていることを特徴とする、請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記第一流路が前記第二流路に接続する接続領域において、前記第一ストリップと前記第二ストリップは、それぞれ端部を有し、
前記冷却板の主面の法線方向からみて、前記端部の少なくとも一つは、丸みのある形状を有することを特徴とする、請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記渦巻状の流路において、流路幅は、流路厚みより大きい形状であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記基板の厚みと前記冷却板の基部の厚みの合計をt、前記流路のピッチをPw、前記発光素子の寸法をL1とするとき、(1)式を満たすことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の光源装置。
【数1】
【請求項6】
前記流路のピッチPwは前記発光素子のピッチP以下であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項7】
前記渦巻状の流路部分において、前記第一流路の流路幅は、第二流路の流路幅と略同一であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項8】
前記流出口からの熱伝導が抑制されるように、前記流入口は前記流出口に対して離間した位置にあることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項9】
前記発光素子に電力を供給する電力供給部は、前記冷却板の主面上において、前記流路のない領域に重なることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項10】
前記冷却板は本体と蓋体とを含み、前記本体は金属無垢板から構成されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項11】
前記流路を区画するストリップの材料は、前記基板の他方の面に接合される基部の材料と同じであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDやLD等の発光素子を複数用いた光源装置が、様々な分野で利用されている。発光素子は発光とともに発熱する。発熱によって発光素子の温度が上昇すると、発光素子の発光効率が低下する。そこで、複数の発光素子を配置した基板を冷却板に接合し、発光素子の温度上昇を抑えることが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、発光素子ではない半導体素子に視点を移すと、半導体素子の冷却機構には様々な種類が存在する。電力半導体素子を、冷媒を通流させる流路を有する冷却板で挟むように幾層にもわたって積層し、電力半導体素子を冷却する方法が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-175871号公報
【特許文献2】特開平7-307423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LEDやLD等の発光素子を複数用いた光源装置は、印刷用インクの乾燥、紫外線硬化樹脂による電子部品等の接着、又は感光性レジストへの露光においても使用される。これらの技術分野では、市場から光源装置の被照射面における照度均一化が要求されている。照度均一化を図るには、複数の発光素子間の光出力を均一化する必要がある。
【0006】
そこで、複数の発光素子間の光出力の均一性を高められる光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、発光素子の温度が発光素子の光出力に影響を与えることに着目し、発光素子間の温度均一化を図ることで、光出力の均一性を高めることを検討した。本発明者の鋭意研究の結果、発光素子間の温度均一化のために、複数の発光素子を配置した基板と接する冷却板の設計の最適化を着想し、以下の光源装置を案出した。
【0008】
本発明の光源装置は、一方の主面に複数の発光素子が配置された基板と、前記基板の他方の主面に接合され、冷媒が流通する渦巻状の流路を内部に含む冷却板と、を備え、
前記冷却板は、
前記冷媒の流入口と、
前記冷媒の流出口と、
前記流入口に接続され、前記冷媒が前記冷却板の外から内に向かって流れる第一流路と、
前記第一流路と前記流出口に接続され、前記第一流路を通過した前記冷媒が前記冷却板の内から外に向かって流れる第二流路と、を含み、
前記第一流路と前記第二流路は、前記冷却板の外から内に向かって交互に配置される。
【0009】
はじめに、本明細書で用いられる用語について説明する。本明細書において、「主面」とは、板状の物体を構成する表面のうち、他の面よりもはるかに面積の広い面を指す。本明細書において、板状の物体である「基板」と「冷却板」は、それぞれ、対向する二つの主面を有する。
【0010】
本明細書において、単に、「流路」と表現するとき、「流路」は「第一流路」と「第二流路」を包含する。
【0011】
基板と冷却板は他の物を介することなく直接接合する以外に、基板と冷却板との間に、熱伝導性グリスなどの熱伝導性を有する材料を介在させることがある。本明細書において、このような「熱伝導性を有する材料」は、冷却板を構成する一部として取り扱う。
【0012】
上述した前記光源装置は、複数の発光素子が配置された基板のうち、発光素子の配置された主面と反対側の主面に冷却板を接合する。これにより、複数の発光素子の光を取り出しながら、複数の発光素子を冷却できる。さらに、各発光素子と冷却板との間隔が均一であるため、各発光素子に対して、より均一な冷却効果を得られる。
【0013】
しかしながら、冷却板をより詳細に分析すれば、冷媒が流通する流路を内部に含む冷却板の場合、冷却板の冷却効果は、前記流路の配置によって局所的に異なってくる。特に、流入口に近い冷媒は、未だ熱を吸収していないため温度が比較的低く、冷却効果が大きい。これに対し、流出口に近い冷媒は、既に多くの熱を吸収しているため温度が比較的高く、冷却効果が小さい。よって、流入口に近い第一流路に近い発光素子は、流出口に近い第二流路に近い発光素子に比べて冷却されやすく、この冷却効果の違いが発光素子の光出力差となるおそれがある。
【0014】
前記光源装置では、流入口に近い第一流路と流出口に近い第二流路を、冷却板の外から内に向かって交互に配置している。これにより、冷却板において、第二流路の冷媒から第一流路の冷媒へ熱の移動が発生し、第一流路を流れる冷媒と第二流路を流れる冷媒の温度差が小さくなる。その結果、冷却板の温度がより均一化し、前記複数の発光素子をより均等に冷却できる。
【0015】
前記第一流路と前記第二流路は、
前記第一流路及び前記第二流路の前記冷媒の進行方向左側に位置する第一ストリップと、前記第一流路および前記第二流路の前記冷媒の進行方向右側に位置する第二ストリップによって区画されていても構わない。本明細書において、「ストリップ」は、薄く細長い帯状の物体を表す。二つのストリップによって第一流路と第二流路が区画される。
【0016】
前記第一流路が前記第二流路に接続する接続領域において、前記第一ストリップと前記第二ストリップは、それぞれ端部を有し、
前記冷却板の主面の法線方向からみて、前記端部の少なくとも一つは、丸みのある形状を有しても構わない。これにより、冷媒が乱流になりにくく、冷却効率が向上する。
【0017】
前記渦巻状の流路において、流路幅は、流路厚みより大きい形状であっても構わない。流路幅が流路厚みより大きいと、冷却板の厚みが限られるなか、冷媒量を増やし、冷却効率を高めることができる。
【0018】
前記基板の厚みと前記冷却板の基部の厚みの合計をt、前記流路のピッチをPw、前記発光素子の寸法をL1とするとき、(1)式を満たしても構わない。詳細は後述するが、このような冷却板の寸法設計により、第一流路35aと第二流路35b間の冷媒の温度差による冷却効率の違いが、発光素子の熱吸収に与える影響を抑えることができる。
【数1】
【0019】
前記流路のピッチPwは前記発光素子のピッチP以下であっても構わない。
【0020】
前記渦巻状の流路部分において、前記第一流路の流路幅は、第二流路の流路幅と略同一であっても構わない。「略同一」とは、第一流路の流路幅の第二流路の流路幅の差異(絶対値)が、第一流路の流路幅に対して10%以内にあることを示す。なお、第一流路の流路幅の第二流路の流路幅の差異(絶対値)が、第一流路の流路幅に対して5%以内にあるとより好ましく、3%以内にあるとさらに好ましい。
【0021】
前記流出口からの熱伝導が抑制されるように、前記流入口は前記流出口に対して離間した位置にあっても構わない。流入口付近の第一流路を流れる冷媒が、流出口付近の第二流路を流れる冷媒から熱を受け取ることが抑制される。これにより、流入口付近の第一流路を流れる冷媒が、発光素子の温度低下に寄与しない熱の吸収を防ぐことができる。その結果、効果的な冷却を行うことができる。
【0022】
前記発光素子に電力を供給する電力供給部は、前記冷却板の主面上において、前記流路のない領域に重なっても構わない。冷却板には、流路のある領域と流路のない領域がある。電力供給部が流路のない領域に重なることを許容することにより、流路の配置を、発光素子の冷却を優先した配置にできる。その結果、効果的な冷却を行うことができる。
【0023】
前記冷却板は本体と蓋体とを含み、前記本体は金属無垢板から構成されても構わない。ここで、前記本体が、前記発光素子が配置された基板に接合されても構わないし、又は、前記蓋体が、前記発光素子が配置された基板に接合されても構わない。前記流路を区画するストリップの材料は、前記基板の他方の面に接合される基部の材料と同じであっても構わない。一例として、冷却板の本体を構成するストリップと基部は、一枚の金属板を削り出して形成される。これにより、本体内に材料の接合部がなく、本体の強度と熱伝導率が向上する。
【発明の効果】
【0024】
複数の発光素子間の光出力の均一性を高められる光源装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第一実施形態の光源装置の斜視図である。
図2】第一実施形態の光源装置の斜視図である。
図3】冷却板の-Z側から冷却板の本体を見た図である。
図4A図3の第一流路と第二流路の接続領域の拡大図である。
図4B】第一流路と第二流路の接続領域の参考形態を示す図である。
図5】第一実施形態の光源装置の断面図である。
図6】基板の主面の法線方向に、+Z側から光源装置を見た図である。
図7】流入口が流出口に近接する冷却板の本体を示す図である。
図8】第二実施形態の冷却板の本体を示す図である。
図9】第三実施形態の光源装置の断面図である。
図10】第四実施形態の光源装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面を参照しながら光源装置の各実施形態を説明する。なお、本明細書に開示された各図面は、あくまで模式的に図示されたものである。すなわち、図面上の寸法比と実際の寸法比とは必ずしも一致しておらず、また、各図面間においても寸法比は必ずしも一致していない。
【0027】
図面はXYZ座標系を参照して説明される。本明細書において、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載される。また、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。すなわち、本明細書において、単に「X方向」と記載されている場合には、「+X方向」と「-X方向」の双方が含まれる。Y方向及びZ方向についても同様である。
【0028】
<第一実施形態>
[光源装置の概要]
図1を参照しながら、光源装置の第一実施形態が説明される。図1は、光源装置100の斜視図である。図1に示されるように、光源装置100は、基板10と冷却板30を有する。基板10の主面及び冷却板30の主面は、それぞれ、XY平面に沿って延びるように示されている。そして、基板10及び冷却板30の厚み方向がZ方向となるように示されている。
【0029】
基板10の一方の主面には複数の発光素子2が配置されている。図1では、複数の発光素子2のうちのひとつに対し、符号「2」を付している。詳細は後述するが、本実施形態の複数の発光素子2は、互いに等ピッチを形成するように配置されている。具体的には、基板10上で、一つの発光素子2を中心として、その周囲かつ前記一つの発光素子2から等距離に配置された6点に、隣の発光素子2が配置されている。6点に配置された発光素子2は正六角形の頂点を構成する。これにより、XY平面上において、各発光素子2が等ピッチで配置される。しかしながら、複数の発光素子2は、必ずしも、正六角形の頂点を構成するように配置されなくても構わない。例えば、複数の発光素子2は、正方形の頂点を構成するように配置されても構わない。さらに、複数の発光素子2は、等ピッチで配置されなくても構わない。例えば、複数の発光素子2は、正多角形でない多角形(正六角形でない六角形、又は、長方形等)の頂点を構成するように配置されても構わない。
【0030】
基板10の他方の主面に、冷却板30が接合される。冷却板30は、その内部に、冷媒を通流させる流路を含む。流路の詳細は、後述する。冷媒は、供給管41から冷却板30に供給され、冷却板30の内部の流路を通り、冷却板30から排出管42へ排出される。供給管41及び排出管42は、光源装置100に含まれない。冷却板30は、本体30aと、本体30aに接合される蓋体30bとを有する。詳細は後述するが、本体30aと蓋体30bが接合されることにより、流路が内部に形成される。
【0031】
発光素子2の光は、+Z方向に出射される。出射側(+Z側)から-Z方向に発光素子2をみたとき、発光素子2は正方形を呈する。しかしながら、発光素子2の形状は特に限定されず、例えば、矩形、円形又は楕円形を呈しても構わない。発光素子2は、図1に示されるような、基板上に複数の発光素子が実装されたチップタイプの発光素子に限らない。例えば、一個の発光素子、若しくは、複数の発光素子群がパッケージされたパッケージタイプの発光素子でも構わない。発光素子2の寸法L1は、特に限定されないが、チップタイプの場合、例えば、0.3mm以上3mm以下であっても構わないし、パッケージタイプの場合、1mm以上15mm以下であっても構わない。なお、発光素子2の寸法L1は、発光素子2の最長辺の長さ又は最大直径で表される。
【0032】
発光素子2は、固体発光素子であるとよい。本実施形態では、発光素子2はLEDであるが、発光素子2として半導体レーザ素子(LD)を使用しても構わない。発光素子2の発光波長は特に限定されず、例えば、可視光、紫外光、又は赤外光を発光しても構わない。
【0033】
発光素子2がチップタイプの場合、又は、パッケージタイプの場合に拘わらず、基板10に配置される発光素子2の数は、特に限定されない。両方の場合において、一つの冷却板に接合される基板に積載される発光素子2の総数は、20個以上であるとよく、好ましくは50個以上であるとよく、より好ましくは100個以上であるとよい。基板10に配置される発光素子2の数は、5000個以下であるとよく、好ましくは、1000個以下であるとよく、より好ましくは500個以下であるとよい。
【0034】
一つの冷却板に接合される基板10の寸法は、X/Y方向それぞれに50mm以上であるとよく、80mm以上であるとより好ましい。基板10の寸法は、X/Y方向それぞれに500mm以下であるとよく、200mm以下であるとより好ましい。
【0035】
光源装置100は、発光素子2の各々に電力を供給するための電力供給部5を有する。本実施形態において、電力供給部5は、外部電源に接続可能に構成される給電コネクタである。光源装置100は、光源装置100を構成する複数の発光素子2に対し、分担して電力を供給できるように、4つの電力供給部5を備える。
【0036】
図2は、光源装置100の斜視図である。ただし、図2では、流路35が確認できるように、蓋体30bを取り去った状態を示す。冷却板30の本体30aは、冷媒の流入口31と、冷媒の流出口32と、を有する。流入口31は供給管41に接続され、流出口32は排出管42に接続される。使用する冷媒は限定されない。冷媒は、液体であると好ましく、例えば、水であると好ましい。しかしながら、冷媒は、水以外の液体であっても構わない。冷媒は気体を含む液体であっても構わない。冷媒は、気体であっても構わない。
【0037】
図3は、冷却板30の主面の法線に沿って、冷却板30の-Z側から+Z方向に本体30aを見た図である。流入口31、流出口32及び流路35を認識し易くするため、水が流れない部分にハッチングを施している。後述する図4A図4B図7及び図8も、同様のハッチングを施している。
【0038】
[渦巻状の流路]
図3を参照しながら流路35について説明する。流路35は、流入口31に接続される第一流路35aと、流出口32に接続される第二流路35bを有する。流路35のうち、流入口31の近傍及び流出口32の近傍を除く大部分は、渦巻状を呈する。第一流路35aは、冷媒が冷却板30の外から内に向かって流れる部分を含み、第二流路35bは、冷媒が冷却板30の内から外に向かって流れる部分を含む。第一流路35aは、点P1で第二流路35bに接続される。点P1は、渦巻の中心点といえる。
【0039】
第一流路35aと第二流路35bは、冷却板30の外から中心点P1に向かって、交互に配置される。この理由を説明する。流路35を流れる冷媒は、下流に向かうほど熱を吸収し、高温になる。よって、第二流路35bを流れる冷媒は、第一流路35aを流れる冷媒よりも高温となりやすい。しかしながら、第一流路35aと第二流路35bが交互に配置されると、第二流路35bの冷媒から第一流路35aの冷媒へ熱の移動が発生し、第一流路35aを流れる冷媒と第二流路35bを流れる冷媒の温度差が小さくなる。二つの流路(35a,35b)を流れる冷媒の温度差が小さくなると、冷却板30に接合される基板10、延いては複数の発光素子2を均等に冷却できる。
【0040】
図3に示されるように、渦巻状の流路35は、冷却板30の-Z側から+Z方向に本体30aを見たとき、全体として角がない略円形(又は、略楕円形)の渦巻状を呈する。渦巻状の流路35は全体として角がないために、冷媒が円滑に流れることができる。しかしながら、渦巻状の流路に、全体として角のある部分を含む形状(例えば、多角形)を呈しても構わない。
【0041】
第一流路35aと第二流路35bは、薄く長い、渦巻状のストリップによって区画されることで形成される。図3に示されるように、ストリップは、第一流路35a及び第二流路35bの進行方向左側(冷媒の進む方向に対して左側)に位置する第一ストリップ36と、第一流路35aおよび第二流路35bの進行方向右側(冷媒の進む方向に対して右側)に位置する第二ストリップ37と、を有する。
【0042】
図3に示されるように、第一ストリップ36及び第二ストリップ37は、それぞれ、本体30aの一部から突出し、中心点P1の回りを巻かれる形状を呈する。第一ストリップ36及び第二ストリップ37が、第一流路35a及び第二流路35bを区画する。なお、三つ以上のストリップによって流路35が区画されても構わない。例えば、流入口31と流出口32の組み合わせを2セット設けるようにストリップを配置しても構わない。
【0043】
図4Aは、図3の、第一流路35aが第二流路35bに接続する接続領域C1の拡大図である。第一ストリップ36は、接続領域C1において端部36eを有する。第二ストリップ37は、接続領域C1において端部37eを有する。流路(35a,35b)の渦巻の中心点P1は、端部36eと端部37eとを結ぶ線分LSの中点に位置する。
【0044】
二つの端部(36e,37e)は、いずれも、丸みのある形状であり、角がない。端部が角形状である場合(図4B)、冷媒の流れは急峻にその方向を転換し、乱流化しやすい。これに対し、図4Aに示される丸みのある端部(36e,37e)の場合、冷媒の流れは滑らかにその方向を転換し、乱流化しにくい。
【0045】
流路幅Wnは、流路35を形成するために対向配置される第一ストリップ36と第二ストリップ37から等距離にある中間線LIに直交する線LO上における、第一ストリップ36と第二ストリップ37の間隔で表される。流路幅の偏差は小さい方が好ましい。流路幅の偏差が大きいと、流路幅の狭いところで流速が上がり、流路幅の広いところで流速が下がるため、乱流化しやすい。これに対し、流路幅の偏差が小さいと、流速が一定になり、乱流化しにくい。
【0046】
図4Aに示す、W1、W2及びW3はいずれも流路幅である。流路幅(W1,W2,W3)の偏差(それぞれの位置における流路幅と平均流路幅Wxとの差)は、小さいほど好ましい。端部(36e,37e)の丸みが流路幅の偏差を小さくする。なお、平均流路幅Wxは、渦巻状部分の流路における流路幅を複数個所(例えば、5箇所)測定した平均値によって求められる。
【0047】
図4Bは、接続領域C1における流路形状の参考形態である。図4Bでは、図4Aの場合とは異なり、第一ストリップ36の端部36e及び第二ストリップ37の端部37eは角を有する。端部(36e,37e)が角を有する場合、冷媒の流れる方向に対して流路幅が変化する。つまり、流路幅の偏差が図4Aの場合と比べて大きくなる。そのため、図4Bに示す接続領域C1では、図4Aに比べて冷媒が乱流化しやすい。
【0048】
接続領域C1に限らず、第一流路35a及び第二流路35bの全体において、流路幅は一定である方が好ましい。第一流路35aの流路幅は、第二流路35bの流路幅と略同一であると好ましい。渦巻状の流路部分において、流路幅の偏差は、5mm以内であると好ましく、3mm以内であるとより好ましく、1mm以内であるとさらに好ましい。
【0049】
第二ストリップ37の端部37eと、第一ストリップ36の端部36eのいずれか一方が丸みのある形状を呈しても構わない。
【0050】
図5は、光源装置100の一部分を拡大して示した断面図である。図5は、冷却板30の主面に直交し、かつ、流路35における冷媒の進行方向に直交する面における断面図である。
【0051】
図5に示されるように、冷却板30の本体30aは、厚み方向に、ストリップ(36,37)と、ストリップ(36,37)の基部30dを含む。本実施形態において、本体30aは金属無垢板から構成されている。即ち、ストリップ(36,37)と、ストリップ(36,37)の基部30dは、一枚の金属板を削り出して形成されている。よって、ストリップ(36,37)及び基部30dは同じ材料であるから、両者の間に熱膨張差が存在せず、熱膨脹差の違いによる熱歪みを受けない。さらに、ストリップ(36,37)と基部30dの間に接合部が存在しないから、接合部における強度低下がなく、基板10の熱を冷却板30に熱伝導しやすい。
【0052】
冷却板30の本体30aは、他の方法で製造されても構わない。本体30aは、例えば、第一ストリップ36及び第二ストリップ37を基部30dに溶接や接着剤などで接合されても構わない。基部30dに第一ストリップ36及び第二ストリップ37を嵌入する溝を形成し、本体30aは、当該溝に、第一ストリップ36及び第二ストリップ37を嵌入することにより構成しても構わない。第一ストリップ36及び第二ストリップ37及び基部30dを3D造形法により形成しても構わない。
【0053】
上述した本体30aの形成方法を、冷却板30の蓋体30bに適用しても構わない。図5では、ストリップ(36,37)を有する本体30aが、基板10に接合されているが、これに限らない。本体30aに代えて、ストリップ(36,37)を有さない蓋体30bが、基板10に接合されても構わない。
【0054】
流路厚みH2は、流路幅W4よりも小さい。すなわち、各流路間の間隔を相対的に狭めることで、流路間の熱輸送を維持しやすい。例えば、図5に示すように流路断面を扁平形状にすることで、流路幅を拡大して熱輸送を促進させつつ、流路厚みH2を相対的に小さくすることで流路間の熱輸送を維持しやすい。また、流路35を形成する断面形状は、円形など、任意の形状が採用できる。しかしながら、流路間の熱輸送を促進させる観点から、流路間を隔てる第一ストリップ36及び第二ストリップ37は、主面に直行する方向に平坦な形状を有することが望ましい。また、第一ストリップ36及び第二ストリップ37により形成される各流路は、等間隔に形成されることが望ましい。
【0055】
基板10の厚みT1と冷却板30の基部30dの厚みT3の合計厚みをt、流路35のピッチをPw、発光素子2の寸法をL1とするとき、光源装置100は、(1)式を満たしても構わない。
【0056】
【数2】
【0057】
各発光素子2の熱は、-Z方向に拡散すると同時に±Y方向に拡散する。合計厚みtが大きくなるほど、熱は±Y方向に拡散する。(1)式を満たすとき、熱の±Y方向への拡散は、流路35のピッチPw以上に拡大することになる。その結果、いずれの発光素子2においても発生した熱は±Y方向への拡散により、隣接する二つの流路(第一流路35a及び第二流路35b)に到達し、第一流路35aを流れる冷媒と第二流路35bを流れる冷媒の両方に吸収される。このような寸法設計により、第一流路35aと第二流路35bにおける冷媒の温度差による冷却効率の違いが発光素子2の熱吸収に与える影響を抑えることができる。合計厚みtは、例えば、1.8mm以上あるとよい。
【0058】
光源装置100は、さらに、(2)式を満たしても構わない。
【数3】
【0059】
第一流路35aと第二流路35bにおける冷媒の温度差による冷却効率の違いが発光素子2の熱吸収に与える影響を抑えるためには、各発光素子2からの熱が、隣接する二つの流路(第一流路35a及び第二流路35b)の全体に拡散するような合計厚みtであればよい。また、合計厚みtが厚くなるほどコストが上昇し、空間を占有することから、合計厚みが(2)式を満たすように光源装置100を設計すると効果に冷却できる。合計厚みtは、例えば、4.7mm以下であるとよい。
【0060】
流路35のピッチPwは、発光素子2のピッチP図5参照)以下であっても構わない。流路35のピッチPwは、例えば、3mm以上15mm以下であり、5mm以上10mm以下であると好ましい。発光素子2のピッチPは、例えば、4mm以上20mm以下であり、5mm以上15mm以下であると好ましく、6mm以上10mm以下であるとより好ましい。
【0061】
隣り合う発光素子2間の距離D1は、例えば、4mm以上20mm以下であり、6mm以上10mm以下であると好ましい。流路幅W4(又は、平均流路幅Wx)は、例えば、5mm以上19mm以下であり、6mm以上10mm以下であると好ましい。ストリップ(36,37)の厚みT2は、例えば、0.5mm以上3mm以下であり、0.8mm以上1.5mm以下であるとより好ましい。
【0062】
図5に示されるように、光源装置100における冷却板の本体30aの流路(35a,35b)の断面において、流路(35a,35b)の角部39は丸く形成されている。これにより、冷媒は、流路(35a,35b)内を円滑に流れるようになる。
【0063】
図6は、基板10の主面の法線方向に、+Z側から光源装置100を見た図である。冷却板30の内部にある流路を破線で示す。流路35は冷却板30の全域に配置できるとは限らない。本実施形態では、図6に示されるように、冷却板30の四隅に、流路35が配置されない領域が存在する。なお、流路35の配置されない領域が、冷却板30の四隅以外に存在しても構わない。
【0064】
図6の基板10に視点を移すと、基板10上の電力供給部5は、冷却板30の主面上において、主に、流路35のない領域(冷却板30の四隅)に重なるような位置にある。電力供給部5の発熱量は発光素子2の発熱量に比べて無視できる程度であることから、できるだけ、発熱量の大きい発光素子2を、流路35のある領域に重なるように配置する一方で、電力供給部5を、流路35のない領域にまで重なるように配置する。つまり、流路35を、発光素子2の冷却を優先した配置にすることにより、効果的な冷却を行うことができる。
【0065】
[流入口と流出口の配置]
図3に示されるように、本実施形態の光源装置100において、流入口31は流出口32に対して渦巻状の流路を挟んだ位置にある。つまり、流入口31は流出口32から離間した位置にある。流入口31を流出口32から離間させることの効果を、図7を参照しながら説明する。
【0066】
図7は、流入口31が流出口32から離間していない冷却板の本体40aを示す図である。流入口31が流出口32に近接するため、領域R1内で、それぞれの流路(35a,35b)を流れる冷媒間で熱移動Tmが生じる。図7では、熱移動の方向を太い矢印で示し、太い矢印のうちの一つに「Tm」を付している。
【0067】
具体的には、流入口31及び流出口32を含む領域R1内で第一流路35aを流れる冷媒は、領域R1内の第二流路35bを流れる冷媒から熱を受け取る。これによって、第一流路35aにおける冷媒の温度が上昇する。領域R1内で第二流路35bを流れる冷媒は、領域R1内で第一流路35aを流れる冷媒に熱を与える。これによって、第二流路35bにおける冷媒の温度が低下する。
【0068】
しかしながら、領域R1内の第二流路35bの近くに、発光素子2はない。それゆえ、領域R1内において、第二流路35bにおける冷媒の温度を低下させる必要性がない。それどころか、領域R1内で第一流路35aにおける冷媒の温度が上昇するため、冷媒の冷却能力を低下させることになる。
【0069】
これに対し、図3に示すように、流入口31が流出口32から離間した位置にあると、流入口31付近を流れる冷媒が、流出口32付近を流れる冷媒から熱を受け取ることがない。そして、均一に冷却させたい領域で、第一流路35aと第二流路35bを隣接させることができる。その結果、第一流路35aを流れる冷媒が、発光素子2の温度低下に寄与しない熱の吸収を防ぎ、冷却能力の低下を抑えられる。
【0070】
<第二実施形態>
第二実施形態の光源装置を説明する。第一実施形態の光源装置と相違する事項を中心に説明する。以下に説明の無い事項については、第一実施形態の光源装置と同様の特徴を有する。第三実施形態以降も同様に、既出の光源装置と同様の特徴を有する事項については、説明を省略する。
【0071】
図8は、第二実施形態の光源装置における冷却板の本体50aを示す図である。本体50aでは、図7と同様に流入口31が流出口32から離間していない状態であるが、流入口31と流出口32との間に、断熱部51を有する。断熱部51は、断熱部51以外の本体50aの材料に比べて、熱伝導率の小さい材料で構成されている。断熱部51が存在するため、流出口32付近の第二流路35bの冷媒から、流入口31付近の第一流路35aの冷媒への熱移動が妨げられる。これにより、第一流路35aを流れる冷媒が、発光素子2の温度低下に寄与しない熱の吸収を防ぎ、冷却能力の低下を抑えられる。
【0072】
<第三実施形態>
図9は、第三実施形態の光源装置の断面図である。光源装置300における冷却板の本体30aの流路(35a,35b)の断面において、流路(35a,35b)の角部39は丸く形成されておらず、角張っている。隣り合う流路との間隔T2が、冷却板の厚み方向(Z方向)で一様となり、隣り合う流路間の熱の移動を促進できる。
【0073】
<第四実施形態>
図10は、第四実施形態の光源装置の断面図である。光源装置400における冷却板の本体30aの流路(35a,35b)の断面において、流路(35a,35b)は略円形である。流路(35a,35b)の断面において角がない形状であるため、流路(35a,35b)内の冷媒の流れは、乱流になりにくい。
【0074】
以上で第一実施形態~第四実施形態と各実施形態の変形例を説明した。しかしながら、本発明は、上述した各実施形態及び各実施形態の変形例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、上述の各実施形態又は変形例を組み合わせることができる。さらに、各実施形態及び変形例に対して、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の変更又は改良を加えても構わない。
【符号の説明】
【0075】
2 :発光素子
5 :電力供給部
10 :基板
30 :冷却板
30a,40a,50a :(冷却板の)本体
30b :(冷却板の)蓋体
30d :(冷却板の)基部
31 :流入口
32 :流出口
35 :流路
35a :第一流路
35b :第二流路
36 :第一ストリップ
36e :(第一ストリップの)端部
37 :第二ストリップ
37e :(第二ストリップの)端部
39 :流路断面における流路の角部
41 :供給管
42 :排出管
51 :断熱部
100,300,400 :光源装置
C1 :(第一流路と第二流路の)接続領域
P1 :中心点
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10