(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036184
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】体調不良者検知システム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20240308BHJP
G01N 1/02 20060101ALI20240308BHJP
G01N 1/26 20060101ALI20240308BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G01N1/02 W
G01N1/26
G08B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140959
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】西野 優希
(72)【発明者】
【氏名】藤本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】久保田 謙三
【テーマコード(参考)】
2G052
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
2G052AA03
2G052AA34
2G052AB01
2G052AB11
2G052AB16
2G052AB25
2G052AB27
2G052AC12
2G052AD02
2G052AD22
2G052AD42
2G052BA14
2G052CA04
2G052CA14
2G052EA03
2G052ED01
2G052ED03
2G052ED09
2G052GA09
2G052GA28
2G052GA29
2G052JA06
2G052JA07
2G052JA08
5C086AA22
5C086AA45
5C086CA01
5C086FA17
5C086FA18
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA09
5C087AA10
5C087AA19
5C087DD03
5C087DD23
5C087DD31
5C087EE11
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG09
5C087GG10
5C087GG70
5C087GG83
(57)【要約】
【課題】好適に体調不良者を特定できる体調不良者検知システムを提供する。
【解決手段】屋内空間2の空気に含まれる、前記屋内空間2を利用する利用者の体調についての成分を捕集する捕集部(濃縮ユニット32)と、前記捕集部(濃縮ユニット32)が捕集した成分に基づいて、体調不良者の有無を検出する体調不良検出部(体調検出装置40)と、前記屋内空間2の在室者を検出する在室者検出部(在室者検出装置50)と、前記体調不良検出部(体調検出装置40)の検出結果と、前記在室者検出部(在室者検出装置50)の検出結果と、に基づいて、前記体調不良者を特定可能な体調不良者特定部(制御装置70)と、を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内空間の空気に含まれる、前記屋内空間を利用する利用者の体調についての成分を捕集する捕集部と、
前記捕集部が捕集した成分に基づいて、体調不良者の有無を検出する体調不良検出部と、
前記屋内空間の在室者を検出する在室者検出部と、
前記体調不良検出部の検出結果と、前記在室者検出部の検出結果と、に基づいて、前記体調不良者を特定可能な体調不良者特定部と、
を具備する、
体調不良者検知システム。
【請求項2】
前記体調不良検出部及び前記在室者検出部は、複数回検出を行い、
前記体調不良者特定部は、
前記体調不良検出部の複数の検出結果と、前記在室者検出部の複数の検出結果と、に基づいて、
前記体調不良者がいると判定された前記屋内空間の在室者から、前記体調不良者がいないと判定された前記屋内空間の在室者を差し引く処理を行うことで、前記体調不良者を特定する、
請求項1に記載の体調不良者検知システム。
【請求項3】
前記体調不良者特定部により特定された体調不良者に関する情報を表示する表示部を具備する、
請求項1又は請求項2に記載の体調不良者検知システム。
【請求項4】
前記体調不良者特定部は、
前記体調不良検出部の検出結果と、前記在室者検出部の検出結果と、に基づいて、
前記体調不良者がいると判定された前記屋内空間の在室者を、体調不良可能性者に設定し、
前記表示部は、
前記体調不良可能性者に関する情報を表示する、
請求項3に記載の体調不良者検知システム。
【請求項5】
前記体調不良者検知システムは、複数の前記屋内空間に適用され、
前記体調不良者特定部は、
複数の前記屋内空間を前記在室者が行き来した場合、当該在室者が行き来した複数の前記屋内空間における前記体調不良検出部の検出結果と、前記在室者検出部の検出結果と、に基づいて、前記体調不良者の特定を行う、
請求項1に記載の体調不良者検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体調不良者を特定可能な体調不良者検知システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、体調不良者を特定可能な技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の呼気検査装置は、内部に流路が形成されたエアウェイ部材、流路内を流通する空気の二酸化炭素濃度を測定するためのガスセンサ、及び流路と連通されるストロー状のマウスピースを具備する。前記呼気検査装置を利用する場合、被検者は、前記呼気検査装置を手に持ってマウスピースをくわえて呼吸する。前記呼気検査装置は、流路内を流通する被検者の呼気の二酸化炭素濃度をガスセンサで測定することで、体調不良であるか否か(慢性閉塞性肺疾患を発症しているか否か)を検査する。
【0004】
特許文献1に記載の呼気検査装置を使用することで、体調不良者を特定することは可能である。しかしながら、上記呼気検査装置で検査を行う場合、被検者は、意識的に行動する(呼気検査装置を持って呼吸する)必要があり、検査に手間がかかる。このため、より好適に(被検者が意識することなく)体調不良者を特定できる技術が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、好適に体調不良者を特定できる体調不良者検知システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、屋内空間の空気に含まれる、前記屋内空間を利用する利用者の体調についての成分を捕集する捕集部と、前記捕集部が捕集した成分に基づいて、体調不良者の有無を検出する体調不良検出部と、前記屋内空間の在室者を検出する在室者検出部と、前記体調不良検出部の検出結果と、前記在室者検出部の検出結果と、に基づいて、前記体調不良者を特定可能な体調不良者特定部と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記体調不良検出部及び前記在室者検出部は、複数回検出を行い、前記体調不良者特定部は、前記体調不良検出部の複数の検出結果と、前記在室者検出部の複数の検出結果と、に基づいて、前記体調不良者がいると判定された前記屋内空間の在室者から、前記体調不良者がいないと判定された前記屋内空間の在室者を差し引く処理を行うことで、前記体調不良者を特定するものである。
【0010】
請求項3においては、前記体調不良者特定部により特定された体調不良者に関する情報を表示する表示部を具備するものである。
【0011】
請求項4においては、前記体調不良者特定部は、前記体調不良検出部の検出結果と、前記在室者検出部の検出結果と、に基づいて、前記体調不良者がいると判定された前記屋内空間の在室者を、体調不良可能性者に設定し、前記表示部は、前記体調不良可能性者に関する情報を表示するものである。
【0012】
請求項5においては、前記体調不良者検知システムは、複数の前記屋内空間に適用され、前記体調不良者特定部は、複数の前記屋内空間を前記在室者が行き来した場合、当該在室者が行き来した複数の前記屋内空間における前記体調不良検出部の検出結果と、前記在室者検出部の検出結果と、に基づいて、前記体調不良者の特定を行うものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
請求項1においては、好適に体調不良者を特定することができる。
【0015】
請求項2においては、体調不良者がいると判定された屋内空間の在室者から、体調不良者がいないと判定された屋内空間の在室者を差し引く処理を行うことで、体調不良者を好適に絞り込むことができる。
【0016】
請求項3においては、特定された体調不良者に関する情報を表示することで、体調不良者がいることを報知することができる。
【0017】
請求項4においては、体調不良者の特定に至らない場合でも、体調不良者の可能性があるとしてある程度絞り込まれた体調不良可能性者の情報を報知することができる。
【0018】
請求項5においては、複数の屋内空間における検出結果を用いて、好適に体調不良者を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る体調不良者検知システムが適用された建物を示す図。
【
図2】(a)体調不良者検知システムの構成を示す図。(b)濃縮ユニットの構成を示す図。
【
図3】(a)検出器のセンサを示す図。(b)センサがにおい成分に反応する様子を示す図。
【
図4】(a)通気工程を示す図。(b)濃縮工程を示す図。(c)検出工程を示す図。
【
図6】体調不良者検知処理における照合結果の一例を示す表。
【
図7】(a)複数の利用者が在室する屋内空間において「体調不良」と判定されている例を示す図。(b)上記(a)の状態から、1人の利用者が退室した屋内空間において「正常」と判定されている例を示す図。
【
図8】(a)複数の利用者が在室する屋内空間において「正常」と判定されている例を示す図。(b)上記(a)の状態から、1人の利用者が入室した屋内空間において「体調不良」と判定されている例を示す図。
【
図9】複数の屋内空間のうち第二空間において「体調不良」と判定されている例を示す図。
【
図10】
図9に示す状態で第二空間に在室していた利用者が第一空間に入室し、第一空間において「体調不良」と判定されている例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明においては、図中に記した矢印に従って、上下方向を定義する。
【0021】
以下では、
図1を参照して、本実施形態に係る体調不良者検知システム20が設けられる建物1の構成について説明する。
【0022】
建物1は、例えば、複数の屋内空間2を有するオフィスビルである。屋内空間2は、仕切り壁等により区画される。屋内空間2は、例えば建物1で働く従業員等の利用者により利用される。以下では、複数の屋内空間2を区別する必要がある際には、各空間を「第一空間2A」及び「第二空間2B」と称して説明し、特に区別する必要がない場合は単に「屋内空間2」と称して説明する。なお、複数の屋内空間2としては、第一空間2A及び第二空間2Bの2つの空間に限定されず、3つ以上の空間を採用可能である。
【0023】
建物1には、屋外空間(建物1の外部の空間)から空気を導入するための給気口(不図示)が設けられる。また、屋内空間2には、内部空間の空気を排出するための排気口2aが設けられる。
【0024】
図1及び
図2(b)に示すように、上述の如く構成される建物1は、換気システム10を具備する。換気システム10は、建物1の換気を行うためのものである。換気システム10は、換気経路11及び換気扇12を具備する。
【0025】
図2(b)に示す換気経路11は、屋内空間2から屋外空間へ向けて空気が流通可能な経路である。換気経路11は、排気口2aと屋外空間とを接続するように設けられる。換気経路11は、ダクトを適宜接続することで構成される。換気経路11は、排気口2a及び後述する換気扇12を接続する第一経路11aと、換気扇12及び屋外空間を接続する第二経路11bと、を具備する。換気扇12は、第一経路11aを介して排気口2aから屋内空間の空気を吸引し、当該空気を第二経路11bを介して屋外空間へと送り出す。屋内空間2には、所定の経路を介して給気口から外気が導入される。こうして換気扇12は、建物1の換気を行うことができる。
【0026】
次に、
図1及び
図2を参照して、体調不良者検知システム20の構成について説明する。
【0027】
体調不良者検知システム20は、建物1の利用者のうち、屋内空間2に在室する者(在室者)の体調の良否を判定すると共に、体調不良の者(体調不良者)を特定するものである。体調不良者検知システム20は、後述するように、屋内空間の空気に含まれる人の呼気からにおい成分を検出し、当該におい成分に基づいて体調を判定することができる。体調不良者検知システム20は、濃縮システム30、体調検出装置40、在室者検出装置50及び表示器60を具備する。
【0028】
図1及び
図2(b)に示す濃縮システム30は、屋内空間からの空気に含まれる在室者の体調についての成分を捕集するためのものである。体調についての成分は、在室者の体の状態を判定可能な成分である。体調についての成分には、例えば、在室者の体調に応じて(例えば、罹患する前後で)特性が変化する成分等が含まれる。本実施形態の濃縮システム30では、体調についての成分として、在室者の呼気に含まれるにおい成分を捕集する。また、濃縮システム30は、後述する捕集工程でにおい成分を継続して捕集することで、当該におい成分を集めて濃縮する。
図2(b)に示すように、濃縮システム30は、換気経路11(第一経路11a)に設けられ、屋内空間2の排気口2aと換気扇12との間に配置される。なお、
図2(b)では、排気口2aと換気扇12とを接続する第一経路11aを紙面左右方向に延びる直線状に記載している。
【0029】
濃縮システム30は、第一空間2A及び第二空間2Bのそれぞれに設置される(
図9を参照)。濃縮システム30は、流通経路31、濃縮ユニット32、加熱ユニット33、第一バルブ34、第二バルブ35及び制御部36を具備する。
【0030】
流通経路31は、屋内空間からの空気が流通可能な経路である。流通経路31は、ダクトを適宜接続することで構成される。流通経路31は、換気経路11のうち、屋内空間2の排気口2aと換気扇12とを接続する第一経路11aから分岐するように設けられる。こうして流通経路31は、換気経路11を介して屋内空間2と連通される。また、流通経路31の中途部は、二股に分岐する。二股に分岐した経路のうち、一方の経路は、換気経路11の流通経路31との分岐部分よりも下流側と合流するように設けられる。また、他方の経路は、後述する体調検出装置40と接続される。
【0031】
以下では、換気経路11から流通経路31が分岐する部分を「第一分岐部分P1」と称する。また、流通経路31が二股に分岐する部分を「第二分岐部分P2」と称する。また、二股に分岐した経路のうち、第二分岐部分P2から換気経路11へ合流する経路を「合流経路31a」と称する。また、二股に分岐した経路のうち、第二分岐部分P2と体調検出装置40とを接続する経路を「接続経路31b」と称する。
【0032】
濃縮ユニット32は、におい成分(在室者の体調についての成分)を捕集する部分である。濃縮ユニット32は、流通経路31に設けられ、第一分岐部分P1と第二分岐部分P2との間に配置される。濃縮ユニット32は、空気が通過可能に構成される。濃縮ユニット32は、例えば、容器に所定の成分を吸着可能な担体(本実施形態ではにおい成分を吸着可能なシリカゲル等)を充填すること等によって構成される。本実施形態の濃縮ユニット32は、比較的低温(例えば、常温)である場合に、におい成分を捕集(吸着)して濃縮することができる。また、濃縮ユニット32に捕集されたにおい成分は、当該濃縮ユニット32が比較的高温(例えば、60℃程度)である場合に、濃縮ユニット32から分離される。
【0033】
加熱ユニット33は、濃縮ユニット32を加熱するためのものである。加熱ユニット33は、例えば、濃縮ユニット32の近傍に配置されたヒーター等によって構成される。加熱ユニット33により濃縮ユニット32を加熱することで、におい成分の検出(後述する検出工程)を行う際に、濃縮ユニット32からにおい成分が分離し易くすることができる。
【0034】
第一バルブ34は、換気経路11及び流通経路31における空気の流通状態を切り替えるためのものである。第一バルブ34は、流通経路31の第一分岐部分P1に設けられる。第一バルブ34は、換気経路11及び流通経路31をそれぞれ開閉可能に構成される。第一バルブ34は、換気経路11を開放すると共に流通経路31を閉塞する第一状態と、換気経路11を閉塞すると共に流通経路31を開放する第二状態と、に切り替え可能に構成される。
【0035】
第二バルブ35は、濃縮ユニット32を通過した空気の流通先(流通経路31における空気の流通状態)を切り替えるためのものである。第二バルブ35は、流通経路31の第二分岐部分P2(濃縮ユニット32及び体調検出装置40の間)に設けられる。第二バルブ35は、合流経路31a及び接続経路31bをそれぞれ開閉可能に構成される。第二バルブ35は、合流経路31aを開放すると共に接続経路31bを閉塞する第三状態と、合流経路31aを閉塞すると共に接続経路31bを開放する第四状態と、に切り替え可能に構成される。
【0036】
制御部36は、加熱ユニット33、第一バルブ34及び第二バルブ35を制御するためのものである。制御部36は、CPU等の演算処理装置、並びにRAMやROM等の記憶装置等を具備する。制御部36は、体調不良者検知システム20を動作させるための種々のプログラム等を前記記憶装置に格納している。制御部36は、加熱ユニット33、第一バルブ34、第二バルブ35及び体調検出装置40へ信号を送信可能に構成される。
【0037】
制御部36は、加熱ユニット33に信号を送信することで、加熱ユニット33による濃縮ユニット32の加熱及び加熱の停止を切り替えることができる。制御部36は、第一バルブ34に信号を送信することで、第一状態及び第二状態を切り替えることができる。制御部36は、第二バルブ35に信号を送信することで、第三状態及び第四状態を切り替えることができる。制御部36は、体調検出装置40へ信号を送信することで、体調検出装置40の動作(後述するにおい成分の検出等)の開始及び停止を切り替えることができる。
【0038】
体調検出装置40は、濃縮ユニット32が捕集したにおい成分(在室者の体調についての成分)を検出するためのものである。体調検出装置40は、流通経路31の濃縮ユニット32よりも下流側に設けられる。より詳細には、体調検出装置40は、流通経路31の接続経路31bの下流側端部に設けられる。体調検出装置40は、第一空間2A及び第二空間2Bのそれぞれに設置される(
図2(b)及び
図9を参照)。体調検出装置40は、濃縮ユニット32による検出の準備(後述する濃縮工程)が整うごとに検出を行う。
【0039】
図3(a)に示すように、体調検出装置40は、におい成分に反応する複数のセンサ41を具備する。複数のセンサ41は、互いに間隔をあけて配置される。複数のセンサ41は、におい成分に応じて異なる反応を示すように構成される。例えば、複数のセンサ41のうち、一部のセンサ41は、特定のにおい成分に対して強い反応を示して色濃く光る。これに対し、他のセンサ41は、前記特定のにおい成分に対して弱い反応を示したり(薄く光ったり)、反応を示さない(光らない)。
【0040】
上述の如く構成される体調検出装置40は、におい成分を検出する際に、流通経路31内の空気をポンプ(不図示)で吸引してセンサ41に吹き付ける。
図3(b)に示すように、センサ41は、吹き付けられた空気に含まれるにおい成分に応じて反応する。例えば、センサ41は、色濃く光ったり(
図3(b)に示す上から1列目のセンサ41参照)、薄い色で光る(
図3(b)に示す上から2列目のセンサ41参照)。体調検出装置40は、このようなにおい成分に応じたセンサ41の反応パターン(反応するセンサ41や色の濃さ等が異なる情報)を取得することで、におい成分を検出することができる。なお、センサ41に吹き付けた空気は、体調検出装置40から所定の経路を通って屋外空間へと排出される。
【0041】
また、体調検出装置40は、におい成分の検出結果から在室者の体調を判定可能に構成される。具体的には、在室者が罹患すると(体調が変化すると)、呼気に含まれるにおい成分が変化する。例えば、罹患により肝機能が低下して、肝臓で有害物質を分解しきれずに呼気のにおい成分が変化する(特有のにおいがする)ようになる。したがって、罹患した後の呼気の反応パターンには、罹患により生じたにおい成分の変化があらわれることとなる。体調検出装置40は、こうした体調変化が生じた後の反応パターンの特徴を予め記憶している。例えば、体調検出装置40は、所定の疾病にかかった場合に複数のセンサ41の中の一部のセンサ41で所定の色が強く出る等の特徴を予め記憶している。
【0042】
体調検出装置40は、におい成分の検出結果(反応パターンの取得結果)に前記特徴があらわれているか否かを判定する。例えば、一部のセンサ41で所定の色の濃さが閾値を超えているか否かを判定する。これによって体調検出装置40は、におい成分の検出結果から在室者の体調(体調が悪いか否か)を判定することができる。
【0043】
体調不良者検知システム20は、上述した濃縮システム30や体調検出装置40等を動作させることで、屋内空間2を換気したり、在室者の体調の判定を行うことができる。以下では、
図2から
図4までを参照し、濃縮システム30及び体調検出装置40の動作について説明する。
【0044】
図4に示すように、制御部36は、第一バルブ34等の動作を制御することで空気の流通状態を切り替えて、当該流通状態が異なる複数の工程を実行することができる。具体的には、制御部36は、通気工程、濃縮工程及び検出工程を実行することができる。
【0045】
通気工程は、換気システム10を用いて屋内空間2の通気を行うための工程である。制御部36は、後述する濃縮工程及び検出工程を実行しない場合に通気工程を実行する。
図4(a)に示すように、制御部36は、通気工程を行う場合に、加熱ユニット33及び体調検出装置40の動作を停止させる。また、制御部36は、第一バルブ34を第一状態に切り替えて、換気経路11(第一経路11a)を開放すると共に流通経路31を閉塞する。
【0046】
換気システム10の換気扇12(
図2(a)を参照)は、この状態で動作することで、屋内空間2からの空気を換気経路11のみを流通させて屋外空間へ排出する(流通経路31を介さずに通気する)。こうして制御部36は、通気工程によって屋内空間2を換気することができる。
【0047】
濃縮工程は、濃縮ユニット32がにおい成分を捕集して濃縮するための工程である。制御部36は、在室者から呼気のにおい成分を捕集する場合に濃縮工程を実行する。このとき、
図4(b)に示すように、制御部36は、加熱ユニット33及び体調検出装置40の動作を通気工程に引き続いて停止させる。また、制御部36は、第一バルブ34を第二状態に切り替えて、換気経路11を閉塞すると共に流通経路31を開放する。また、制御部36は、第二バルブ35を第三状態に切り替えて、合流経路31aを開放すると共に接続経路31bを閉塞する。
【0048】
濃縮工程では、換気扇12(
図2(b)を参照)の動作により、屋内空間2の空気が換気経路11(第一分岐部分P1)から流通経路31へ流入する。このとき、屋内空間2の空気は、換気経路11を流通することなく、全て流通経路31へ流入する。当該空気は、濃縮ユニット32を通過する。濃縮ユニット32は、加熱ユニット33で加熱されておらず比較的低温となっているため、におい成分を捕集可能な状態となっている。したがって、濃縮ユニット32は、濃縮工程で屋内空間2からの空気に含まれるにおい成分を捕集(濃縮)する。濃縮ユニット32を通過した空気は、合流経路31aを介して換気経路11へ戻されて換気扇12へと吸引され、屋外空間へと排出される。こうして制御部36は、濃縮工程でにおい成分を濃縮ユニット32によって捕集すると共に、屋内空間2の換気を行う。また、制御部36は、濃縮工程で体調検出装置40へ空気が流通しないようにして、体調検出装置40への空気の供給を停止する。
【0049】
検出工程は、濃縮ユニット32で捕集(濃縮)したにおい成分を検出するための工程である。制御部36は、在室者から呼気のにおい成分を捕集した後で検出工程を実行する。このとき、
図4(c)に示すように、制御部36は、加熱ユニット33を動作させて濃縮ユニット32を加熱する。また、制御部36は、第一バルブ34の状態(第二状態)を維持する。また、制御部36は、第二バルブ35を第四状態に切り替えて、合流経路31aを閉塞すると共に接続経路31bを開放する。また、体調検出装置40は、前記ポンプの動作により流通経路31内の空気を吸引する。
【0050】
これによって、屋内空間2からの空気は、換気経路11(第一分岐部分P1)から流通経路31へ流入する。当該空気は、濃縮ユニット32を通過する。ここで、濃縮ユニット32は、加熱ユニット33で加熱されて比較的高温(例えば、60℃)となっている。このため、濃縮工程で濃縮ユニット32に捕集されたにおい成分は、濃縮ユニット32から分離している。したがって、濃縮ユニット32を空気が通過することで、におい成分は、下流側へと流通する。当該におい成分は、接続経路31bを流通して体調検出装置40へ吸引される。体調検出装置40は、こうして吸引したにおい成分をセンサ41に吹き付けて反応パターン(
図3(b)参照)を取得することで、におい成分を検出する。体調検出装置40は、当該におい成分の検出結果に体調変化が生じた後の反応パターンの特徴に基づいて在室者の体調の良否を判定可能である。制御部36は、上記検出結果を、後述する制御装置70に送信する。
【0051】
制御部36は、上記判定を行った後で
図4(a)に示す通気工程を実行する。こうして制御部36は、通気工程、濃縮工程及び検出工程を繰り返し行って、連続的に体調の判定を実行することができる。
【0052】
図1及び
図2(b)に示す在室者検出装置50は、建物1の屋内空間2の在室者を検出するものである。在室者検出装置50は、取得された情報に基づいて、在室者を特定することができる。在室者検出装置50は、第一空間2A及び第二空間2Bのそれぞれに設置される(
図2(b)及び
図9を参照)。
【0053】
本実施形態では、在室者検出装置50として、屋内空間2に入室した利用者が、自身の操作により屋内空間2に在室することを登録するシステムを用いる例を説明する。在室者検出装置50としては、スマートフォン等の端末を用いた在席管理システムを採用可能である。
【0054】
具体的には、在室者が、端末からインターネット回線を利用して所定のWEBサイトにアクセスし、屋内空間2内の座席に付された情報と、在室者を特定可能な情報(個人の情報)と、を関連付けることで、屋内空間2内の座席の利用状況を登録するシステムを採用可能である。上記在席管理システムとしては、在室者が端末に情報の入力を行うことで座席の利用状況を登録するものを採用可能である。また、座席に設置されたカード等に、端末をかざす(タッチする)ことで、自動で座席の利用状況を登録するものも採用可能である。
【0055】
なお、在席管理システムとしては、インターネット回線を利用するものに限定されない。例えば、タイムカードによる勤怠管理装置等、屋内空間2内に設置される装置を用いたシステムも採用可能である。
【0056】
図2(a)に示す表示器60は、体調不良者に関する情報を提示するための機器である。表示器60としては、例えば建物1の利用者(在室者)や、建物1の管理者等が携帯するスマートフォン等の端末を採用可能である。なお、表示器60としては、スマートフォンに限定されず、タブレット型の端末や、パーソナルコンピュータ等を採用可能である。
【0057】
制御装置70は、各種の情報の処理を実行可能なものである。制御装置70としては、例えばコンピュータ(サーバ等)を採用可能である。制御装置70は、CPU等の演算処理装置、並びにRAMやROM等の記憶装置等を具備する制御装置70は、インターネット回線を利用して他の機器(体調検出装置40、在室者検出装置50及び表示器60)との通信が可能である。制御装置70は、建物1内に設置されたものでもよく、建物1の外部に設置されたもの(外部サーバ、クラウドサーバ等)でもよい。
【0058】
上述の如く構成される体調不良者検知システム20が適用された建物1の屋内空間2は、在室者により適宜使用される。ここで、屋内空間2の在室者には、体調不良者が含まれる可能性がある。体調不良者検知システム20は、屋内空間2の使用時における在室者の呼気からにおい成分を捕集し、体調検出装置40によって在室者の体調の良否を判定すると共に、在室者に体調不良者が含まれる場合に体調不良者を特定する体調不良者検知処理を実行可能である。
【0059】
以下では、
図5に示すフローチャートを用いて、体調不良者検知処理について説明する。体調不良者検知は、制御装置70により実行される。体調不良者検知処理は、例えば換気システム10が動作している間、常時実行される。なお、以下では、1つの屋内空間2に対して体調不良者検知処理を実行する場合の説明を行う。
【0060】
ステップS11において、制御装置70は、在室者検出装置50の検出結果に基づいて、屋内空間2内の在室者の特定を行う。より詳細には、制御装置70は、前回の体調検出装置40による検出(n-1回目の検出)の終了から、今回の処理において実行される体調検出装置40による検出(n回目の検出)の開始までの間の期間における在室者検出装置50の検出結果を取得し、在室者検出装置50により検出された在室者全員を、本処理の対象となる「在室者」として特定する。また、制御装置70は、上記特定した在室者の記録を行う。制御装置70は、ステップS11の処理を実行した後、ステップS12の処理へ移行する。
【0061】
ステップS12において、制御装置70は、体調検出装置40による検出を実行すると共に、検出結果を取得する。制御装置70は、制御部36に対して通信を行うことで、濃縮システム30を動作させて、体調検出装置40による検出を実行する。
【0062】
具体的には、ステップS12において、制御装置70(制御部36)は、濃縮システム30による濃縮工程及び検出工程を実行することで、体調検出装置40による検出を行う(
図4を参照)。すなわち、ステップS12の処理が開始されれば、制御部36は、通気工程から濃縮工程に濃縮システム30の動作を切り替える(
図4(b)を参照)。
【0063】
また、制御部36は、上記検出工程が終了した後、体調検出装置40の検出結果を制御装置70に送信する(
図4(c)を参照)。制御装置70は、上記体調検出装置40の検出結果を取得すると共に、検出結果の記録を行う。また、制御装置70(制御部36)は、ステップS12の処理の終了後、通気工程を実行するように濃縮システム30の動作を制御する。制御装置70は、ステップS12の処理を実行した後、ステップS13の処理へ移行する。
【0064】
ステップS13において、制御装置70は、屋内空間2における体調不良者の有無を判定する。具体的には、制御装置70は、体調検出装置40の検出結果に、体調不良を示す反応パターンの特徴があらわれている場合に、「体調不良」(屋内空間2に体調不良者がいる)と判定する。一方、制御装置70は、体調検出装置40の検出結果に、体調不良を示す反応パターンの特徴があらわれていない場合、「正常」(屋内空間2に体調不良者はいない)と判定する。制御装置70は、上記判定結果の記録を行う。制御装置70は、「体調不良」と判定した場合、ステップS14の処理へ移行する。一方、制御装置70は、「正常」と判定した場合、ステップS11の処理へ移行する(戻る)。
【0065】
ステップS14において、制御装置70は、今回の処理において記録された各検出結果等(ステップS11の在室者の検出結果、及びステップS13の体調不良者の判定結果)と、一定期間(例えば1日)のうち、今回の処理より前に記録された各検出結果等と、を照合すると共に、照合結果に矛盾がないかを判定する。
【0066】
ステップS14において、各検出結果の照合を行うことで、在室者に含まれる体調不良者を絞り込み、特定することができる。以下では、
図6から
図8までを用いて、ステップS14で行われる処理(照合等)について説明する。以下の説明では、3人の在室者(在室者A~C)の絞り込みを行う例を説明する。
【0067】
図6に示す表は、一定期間(1日)における在室者の検出結果(ステップS11の在室者の検出結果)、体調不良者の判定結果(ステップS13の判定結果)、及び照合結果の関係を示すものである。この表では、1回目~8回目の体調不良者検知処理の結果を示している。なお、以下の説明において、「体調不良者検知処理の回数」は、体調不良者検知処理が終了するか、処理の途中で開始(ステップS11)まで戻された回数を指す。
【0068】
図6に示す表のうち1回目~4回目では、体調不良者の判定結果は「体調不良」である。制御装置70は、「体調不良」と判定された際に屋内空間2に在室している者を、「体調不良可能性者」であると判定し、照合結果として記録する。上記表に示す例では、在室者A~Cが「体調不良可能性者」であると判定される。
【0069】
また、
図6に示す表のうち5回目~8回目では、体調不良者の判定結果は「正常」である。この場合は、制御装置70は、「正常」と判定された際に屋内空間2に在室している者を、体調不良可能性者でない(正常である)あると判定し、照合結果として記録する。上記表に示す例では、在室者B、Cが「正常」であると判定される。
【0070】
制御装置70は、「体調不良可能性者」と判定された在室者A~Cから、「正常」と判定された在室者B、Cを差し引くことで、「体調不良可能性者」の絞り込みを行う。上記表に示す例では、「体調不良可能性者」の絞り込みが行われた結果、在室者Aが残る。
【0071】
また、制御装置70は、体調不良可能性者が一人に絞り込まれた場合、当該絞り込まれた者(この例では在室者A)を体調不良者として特定する。なお、体調不良者が複数人いる場合も想定される。この場合は、体調不良可能性者を一人に絞り込むことができない。この場合、制御装置70は、所定回数以上、体調不良可能性者と判定された複数の在室者を、体調不良者として特定する。
【0072】
上述した例のように、ステップS14において、制御装置70は、ステップS11の在室者の検出結果と、ステップS13の体調不良者の判定結果と、を用いた照合を行い、体調不良者の絞り込みを行うことができる。以下では、
図7及び
図8を用いて、ステップS14における照合の一例を説明する。
【0073】
図7(a)は、ある回の体調不良者検知処理における屋内空間2の状況を示している。
図7(a)に示す例では、在室者A~Cが在室している例を示している。また、この例では、ステップS13の判定結果として、「体調不良」と判定されている。この場合、制御装置70は、在室者A~Cが「体調不良可能性者」であると判定する。
【0074】
図7(b)は、
図7(a)に示す例よりも後の回の体調不良者検知処理における屋内空間2の状況を示している。この例では、在室者Aが屋内空間2から退出し(不在となり)、在室者B、Cが在室している。また、この例では、ステップS13の判定結果として、「正常」と判定されている。
【0075】
この場合、制御装置70は、「体調不良可能性者」の在室者A~Cから、「正常」の在室者B、Cを除いた者である在室者Aが、体調不良者であることを特定する。
【0076】
また、以下では
図8を用いて、
図7とは異なる絞り込みのパターンを説明する。
図8(a)は、屋内空間2に在室者B、Cが在室しており、ステップS13の判定結果として、「正常」と判定されている。
【0077】
図8(b)は、
図8(a)に示す例よりも後の回の屋内空間2の状況を示している。この例では、在室者Aが屋内空間2に入室している。すなわち、屋内空間2には在室者A~Cが在室している。また、この例では、ステップS13の判定結果として、「体調不良」と判定されている。この場合、制御装置70は、在室者A~Cが「体調不良可能性者」であると判定する。
【0078】
この場合でも、制御装置70は、「体調不良可能性者」の在室者A~Cから、「正常」の在室者B、Cを除いた者である在室者Aが、体調不良者であることを特定する。
【0079】
制御装置70は、上述のように照合を行った後、今回の処理における照合結果と、以前の処理の照合結果と、に矛盾があるか否かの判定を行う。制御装置70が「矛盾がある」と判定する例としては、例えば体調不良者として特定された在室者が、一定期間(1日)における他の処理において正常と判定されている場合等が挙げられる。制御装置70は、照合結果に矛盾がないと判定した場合、ステップS15の処理へ移行する。一方、制御装置70は、照合結果に矛盾があると判定した場合、ステップS11の処理へ移行する(戻る)。なお、この場合、制御装置70は、今回の処理における照合結果を破棄等し、以降の処理で使用しない。
【0080】
ステップS15において、制御装置70は、ステップS14の照合結果に基づいて、表示器60に「体調不良可能性者」の情報を表示する。ここで、ステップS15において表示される「体調不良可能性者」は、一定期間(1日)に行われた処理において、体調不良可能性者と判定された在室者全員(例えば在室者A~C)から、今回の処理の時点で、「正常」と判定されている在室者(例えば在室者B)を差し引いた者(例えば在室者A、C)である。すなわち、ステップS15で表示される「体調不良可能性者」は、一定期間において1回でも体調不良可能性者と判定された者であって、今回の処理の時点で「正常」と判定されていない者である。上記情報を表示することで、表示器60を閲覧可能な利用者に対して、体調不良可能性者がいることを報知することができる。制御装置70は、ステップS15の処理を実行した後、ステップS16の処理へ移行する。
【0081】
ステップS16において、制御装置70は、ステップS14の照合結果に基づいて、体調不良者が特定されているか否かを判定する。制御装置70は、体調不良者が特定されていると判定した場合、ステップS17の処理へ移行する。一方、制御装置70は、体調不良者が特定されていないと判定した場合、ステップS11の処理へ移行する(戻る)。
【0082】
ステップS17において、制御装置70は、ステップS14において特定された体調不良者の情報を表示器60に表示する。これにより、表示器60を閲覧可能な利用者に対して、体調不良者が特定されたことを報知することができる。なお、この場合、制御装置70は、複数の屋内空間2が表示された平面図に、体調不良者が在室している屋内空間2を特定するようなアイコンを表示させるようにしてもよい(
図2(a)を参照)。制御装置70は、ステップS17の処理を実行した後、体調不良者検知処理を終了する。
【0083】
上述のように、本実施形態に係る体調不良者検知システム20は、屋内空間2に含まれる呼気のにおい成分を検出して体調の良否を判定することができる。これによって、在室者が意識することなく(体調を判定するための動作を行うことなく、例えば、体調検出装置40に息を吹きかけることなく)、体調の良否を判定することができる。
【0084】
また、体調不良者検知システム20は、体調不良者の判定結果(体調検出装置40の検出結果)と、在室者検出装置50の検出結果と、を用いた絞り込み(ステップS14の処理)を行うことで、体調不良者の特定を行うことができる。これにより、屋内空間2に複数の在室者が在室している場合でも、体調不良者の特定を行うことができる。これにより、体調不良者がいることを報知したり、体調不良者に対して医療機関等で精密な検査を受けるきっかけを作ることができる。
【0085】
ここで、本実施形態のように、在室者が意識することなく(無意識で)におい成分を検出できるようにすると、当該におい成分の濃度によっては体調検出装置40(検出工程)でにおい成分を検出できないことが懸念される。この点に関し、体調不良者検知システム20では、濃縮工程で屋内空間2に含まれる呼気のにおい成分を濃縮している。これにより、検出工程で体調検出装置40に吸引されるにおい成分の濃度を高めて、におい成分を確実に検出することができる。
【0086】
また、体調検出装置40は、複数の疾病ごとににおい成分の反応パターンの特徴を予め記憶しておけば、におい成分から複数の疾病を検出することができる。また、反応パターンと疾病との関係(特徴)をデータベース化し、体調検出装置40に最新の情報を提供可能に構成すれば、今後新たに発生する疾病を速やかに検出することができる。
【0087】
また、体調不良者検知システム20は、換気経路11から分岐する流通経路31を用いることで、換気経路11を利用して屋内空間2からの空気を濃縮ユニット32及び体調検出装置40へ供給することができる。これにより、体調不良者検知システム20専用の開口部を屋内空間2に設けることなく、屋内空間2からの空気を濃縮ユニット32等に容易に供給することができる。
【0088】
また、検出工程では、加熱ユニット33で濃縮ユニット32を加熱している(
図4(c)参照)。このように、検出工程で濃縮ユニット32からにおい成分が分離し易くなるように濃縮ユニット32の状態を変化させることで、体調検出装置40でにおい成分を検出する時間を短縮することができる。
【0089】
以上、体調不良者検知システム20が実行する処理について説明した。なお、本実施形態に係る処理は一例であり、体調不良者検知システム20が実行する処理は上述した例に限定されるものではなく、任意の処理を追加又は変更してもよい。また、上記説明で例示した具体的な数値は一例であり、任意に変更することが可能である。
【0090】
例えば、上述した例では、ステップS13における判定において、1回の体調検出装置40の検出結果に基づいて、「体調不良」又は「正常」の判定を行うようにしたが、このような例に限定されない。例えば、複数回(例えば2回以上)の体調検出装置40の検出結果に基づいて、「体調不良」又は「正常」の判定を行うようにしてもよい。具体的には、体調検出装置40の検出結果において複数回、体調不良を示す反応パターンの特徴があらわれていない場合に、「正常」と判定するようにしてもよい。
【0091】
また、体調不良者検出処理において、ステップS11で「在室者」を特定するための期間は、上述した例に限定されず、換気システム10の換気能力等に応じて適宜設定可能である。具体的には、上述した例では、ステップS11において、前回の体調検出装置40による検出(n-1回目の検出)の終了から、今回の処理において実行される体調検出装置40による検出(n回目の検出)の開始までの間の期間において、在室者検出装置50により検出された在室者全員を「在室者」として特定したが、このような例に限定されない。例えば、上記期間を、n-1回目の検出よりも前(例えば数分前)からn回目の検出の開始までの間の期間としてもよい。
【0092】
また、上述した例では、体調検出装置40により体調不良者の検出(判定)を行う例を示したが、このような例に限定されず、制御装置70により体調不良者の判定を行うようにしてもよい。この場合は、制御装置70は、体調検出装置40(センサ41)によるにおい成分の検出結果を取得し、上記検出結果に基づいて、体調不良者の判定を行う。
【0093】
また、上述した例は、1つの屋内空間2に対して体調不良者検知処理を実行する場合を説明したが、このような例に限定されない。体調不良者検知システム20は、複数の屋内空間2に対しても体調不良者検知処理を実行可能である。
【0094】
以下では、
図9及び
図10を用いて、第一空間2A及び第二空間2Bに対して体調不良者検知処理を実行する例を説明する。この場合、制御装置70は、第一空間2A及び第二空間2Bにそれぞれ設けられた体調検出装置40及び在室者検出装置50の検出結果を取得する。また、以下の例では、5人の在室者(在室者A~E)がいるものとする。
【0095】
なお、以下では、1つの屋内空間2に対して体調不良者検知処理を実行する場合の処理と同様な点は適宜省略し、異なる点のみを説明する。具体的には、
図5に示すフローチャートのうち、主としてステップS14の照合の内容について説明する。
【0096】
図9では、ある回の体調不良者検知処理における第一空間2A及び第二空間2Bの状況を示している。
図9に示す例では、第一空間2Aに、在室者D、Eが在室している。この例では、第一空間2Aは、ステップS13の判定結果として「正常」と判定されている。
【0097】
また、
図9に示す例では、第二空間2Bに、在室者A~Cが在室している。この例では、第二空間2Bは、ステップS13の判定結果として「体調不良」と判定されている。この場合、制御装置70は、第二空間2Bにおいて、在室者A~Cが「体調不良可能性者」であると判定する。
【0098】
図10は、
図9に示す例よりも後の回の体調不良者検知処理における第一空間2A及び第二空間2Bの状況を示している。
図10に示す例では、第二空間2Bに、在室者はおらず、ステップS13の判定結果として「正常」と判定されている。
【0099】
また、
図10に示す例では、第一空間2Aに、在室者A、D、Eが在室しており、第一空間2Aに対して、「体調不良」の判定がされている。すなわち、
図10に示す例では、「正常」と判定されていた第一空間2Aに、第二空間2Bにおいて「体調不良可能性者」と判定された在室者Aが入室したことで、第一空間2Aに対して「体調不良」の判定がされている。この場合、制御装置70は、在室者Aが、体調不良者であることを特定する。
【0100】
上述のように、体調不良者検知システム20は、複数の屋内空間2に対して適用されている場合、各屋内空間2の在室者の出入りの検出結果に基づいて、体調不良者の特定を行うことができる。これにより、効率的に体調不良者の特定を行うことが可能である。すなわち、上述した例のように、在室者の数が比較的多い場合でも、各屋内空間2の在室者の出入りの検出結果を用いて、比較的早期に体調不良者の特定を行うことができる。また、複数の屋内空間2での判定結果を用いて体調不良者の特定を行うことで、特定の精度を向上させることができる。
【0101】
以上の如く、本実施形態に係る体調不良者検知システム20は、
屋内空間2の空気に含まれる、前記屋内空間2を利用する利用者の体調についての成分を捕集する捕集部(濃縮ユニット32)と、
前記捕集部(濃縮ユニット32)が捕集した成分に基づいて、体調不良者の有無を検出する(ステップS12)体調不良検出部(体調検出装置40)と、
前記屋内空間2の在室者を検出する(ステップS11)在室者検出部(在室者検出装置50)と、
前記体調不良検出部(体調検出装置40)の検出結果と、前記在室者検出部(在室者検出装置50)の検出結果と、に基づいて、前記体調不良者を特定可能な体調不良者特定部(制御装置70)と、
を具備するものである。
【0102】
このように構成することにより、好適に体調不良者を特定することができる。すなわち、在室者が意識することなく(例えば体調検出装置40に息を吹きかける等、意識的に体調を判定するための動作を行うことなく)、体調の良否を判定すると共に、体調不良者の特定を行うことができる。また、体調不良検出部(体調検出装置40)の判定結果と、在室者検出部(在室者検出装置50)の検出結果と、を用いることで、屋内空間2に複数の在室者が在室している場合でも、体調不良者の特定を行うことができる。
【0103】
また、前記体調不良検出部(体調検出装置40)及び前記在室者検出部(在室者検出装置50)は、複数回検出を行い、
前記体調不良者特定部(制御装置70)は、
前記体調不良検出部(体調検出装置40)の複数の検出結果と、前記在室者検出部(在室者検出装置50)の複数の検出結果と、に基づいて、
前記体調不良者がいると判定された前記屋内空間2の在室者から、前記体調不良者がいないと判定された前記屋内空間2の在室者を差し引く処理(ステップS14)を行うことで、前記体調不良者を特定するものである。
【0104】
このように構成することにより、体調不良者がいると判定された屋内空間2の在室者から、体調不良者がいないと判定された屋内空間2の在室者を差し引く処理を行うことで、体調不良者を好適に絞り込むことができる。
【0105】
また、体調不良者検知システム20は、
前記体調不良者特定部(制御装置70)により特定された体調不良者に関する情報を表示する(ステップS17)表示部(表示器60)を具備するものである。
【0106】
このように構成することにより、特定された体調不良者に関する情報を表示することで、体調不良者がいることを報知することができる。また、体調不良者に対して医療機関等で精密な検査を受けるきっかけを作ることができる。
【0107】
また、前記体調不良者特定部(制御装置70)は、
前記体調不良検出部(体調検出装置40)の検出結果と、前記在室者検出部(在室者検出装置50)の検出結果と、に基づいて、
前記体調不良者がいると判定された前記屋内空間2の在室者を、体調不良可能性者に設定し、
前記表示部(表示器60)は、
前記体調不良可能性者に関する情報を表示する(ステップS15)ものである。
【0108】
このように構成することにより、体調不良者の特定に至らない場合でも、体調不良者の可能性があるとしてある程度絞り込まれた体調不良可能性者の情報を報知することができる。
【0109】
また、体調不良者検知システム20は、複数の前記屋内空間2に適用され、
前記体調不良者特定部(制御装置70)は、
複数の前記屋内空間2(第一空間2A、第二空間2B)を前記在室者が行き来した場合、当該在室者が行き来した複数の前記屋内空間2(第一空間2A、第二空間2B)における前記体調不良検出部(体調検出装置40)の検出結果と、前記在室者検出部(在室者検出装置50)の検出結果と、に基づいて、前記体調不良者の特定を行うものである。
【0110】
このように構成することにより、複数の屋内空間2における検出結果を用いて、好適に体調不良者を特定することができる。
【0111】
なお、本実施形態に係る濃縮ユニット32は、本発明に係る捕集部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る体調検出装置40は、本発明に係る体調不良検出部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る在室者検出装置50は、本発明に係る在室者検出部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る表示器60は、本発明に係る表示部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る制御装置70は、本発明に係る体調不良者特定部の実施の一形態である。
【0112】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0113】
例えば、本実施形態では、在室者検出装置50として、屋内空間2に入室した利用者が、自身の操作により屋内空間2に在室することを登録するシステム(在席管理システム)を用いた例を示したが、在室者検出装置50としてはこのような態様に限定されない。
【0114】
在室者検出装置50としては、例えば、ビーコン等の信号を発信する端末と、スマートフォン等の上記信号を検知可能な端末と、を用いたシステムを採用可能である。この場合、屋内空間2にビーコンを設置し、建物1の利用者が携帯するスマートフォンがビーコンの信号を検知した場合に、在室者の検知を行う。
【0115】
また、在室者検出装置50としては、例えば、予め設定された利用者の固有の情報を用いた入退出者管理システムを採用可能である。上記入退出者管理システムとしては、ICカードやQRコード(登録商標)、顔認証、指紋認証の技術を用いたものを採用可能である。
【0116】
また、在室者検出装置50としては、例えば、屋内空間2の入口等に設置されたカメラを用いて、在室者を検出するシステムを採用可能である。在室者検出装置50としては、その他、GPSを利用したもの等、在室者を検出可能な種々のシステムを採用可能である。
【0117】
また、本実施形態では、体調不良者検知システム20を、オフィスビルに適用した例を示したが、体調不良者検知システム20の適用対象は特に限定されるものではない。体調不良者検知システム20は、例えば、宿泊施設、商業施設、運動施設、高齢者施設(介護施設)、寮及び住宅等に適用することができる。
【0118】
また、体調不良者検知システム20は、必ずしも換気システム10を利用する必要はない。体調不良者検知システム20は、例えば、空調システムを利用してもよい。この場合、体調不良者検知システム20は、例えば、空調設備と建物1の屋内空間2とを接続する配管(空調経路)に設けることができる。また、体調不良者検知システム20は、室内(1つの部屋の中)で空気を循環させるシステムを利用してもよい。
【0119】
また、体調不良者検知システム20は、必ずしも建物1に設置された空調設備(換気システム10や空調システム等)を利用する必要はない。体調不良者検知システム20は、例えば、屋内空間2に設置される空気清浄機等の機器を利用してもよい。この場合、濃縮システム30や体調検出装置40を、上記機器に内蔵させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0120】
20 体調不良者検知システム
30 濃縮システム
40 体調検出装置
50 在室者検出装置
60 表示機器
70 制御装置