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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036189
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】ハンドル及び建具
(51)【国際特許分類】
   E05C 1/06 20060101AFI20240308BHJP
   E05B 1/00 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
E05C1/06 B
E05B1/00 311H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140967
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 英樹
(57)【要約】
【課題】主たる目的は、台座を小型化することができ、シーリング作業の作業性を向上することにある。別の目的は、外観品質を向上することにある。
【解決手段】ハンドルは、固定部材が挿通される取付孔を有し、前記固定部材を用いて前記枠体又は前記障子に固定される台座と、外周面に凹状の溝部が設けられた嵌合部を有し、前記台座に対して相対回転可能に支持されるハンドルベースと、前記嵌合部が嵌合される嵌合穴部を有し、前記ハンドルベースに対して相対回転不能に連結されるハンドル部とを備え、前記嵌合部の外周面には、前記固定部材の挿通経路との干渉を回避するための溝部が設けられている。
【選択図】図5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、前記枠体に対して開閉可能に支持される障子とを備える建具に用いるハンドルであって、
固定部材が挿通される取付孔を有し、前記固定部材を用いて前記枠体又は前記障子に固定される台座と、
嵌合部を有し、前記台座に対して相対回転可能に支持されるハンドルベースと、
前記嵌合部が嵌合される嵌合穴部を有し、前記ハンドルベースに対して相対回転不能に連結されるハンドル部と、
を備え、
前記嵌合部の外周面には、前記固定部材の挿通経路との干渉を回避するための溝部が設けられている
ことを特徴とするハンドル。
【請求項2】
請求項1に記載のハンドルであって、
前記溝部は、前記嵌合部の直径方向で一対設けられ、
前記嵌合穴部の内面には、前記一対の溝部にそれぞれ係合する一対の突起が設けられ、
前記一対の突起は、それぞれ肉抜きされたアーチ形状を有する
ことを特徴とするハンドル。
【請求項3】
請求項2に記載のハンドルであって、
前記嵌合部の外周面には、さらに、前記直径方向に対する法線方向に位置する凸部及び凹部が設けられ、
前記嵌合穴部の内面には、さらに、前記凸部が係合される係合凹部と、前記ハンドル部の外周面から該内面まで貫通するねじ穴と、が設けられ、
前記ハンドル部は、前記一対の突起が前記一対の溝部に係合し、前記係合凹部に前記凸部が係合され、前記ねじ穴に螺合された留めねじが前記凹部に突き当てられることで、前記ハンドルベースと固定される
ことを特徴とするハンドル。
【請求項4】
請求項1に記載のハンドルであって、
前記台座の外周面は、円形又は楕円形に形成されている
ことを特徴とするハンドル。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のハンドルであって、
前記固定部材は、前記ハンドルによって覆い隠される
ことを特徴とするハンドル。
【請求項6】
枠体と、前記枠体に対して開閉可能に支持される障子とを備える建具に用いるハンドルであって、
固定部材が挿通される取付孔を有し、前記固定部材を用いて前記枠体又は前記障子に固定される台座と、
嵌合部を有し、前記台座に対して相対回転可能に支持されるハンドルベースと、
前記嵌合部が嵌合される嵌合穴部を有し、前記ハンドルベースに対して相対回転不能に連結されるハンドル部と、
を備え、
前記固定部材は、前記ハンドルによって覆い隠される
ことを特徴とするハンドル。
【請求項7】
請求項6に記載のハンドルであって、
前記ハンドル部の外周面は、楕円形に形成され、
前記台座の外周面は、楕円形に形成され、
前記ハンドル部の外周面と前記台座の外周面とが略面一に配置される
ことを特徴とするハンドル。
【請求項8】
枠体と、前記枠体に対して開閉可能に支持される障子と、前記枠体又は前記障子に取り付けられるハンドルとを備える建具であって、
前記ハンドルは、
固定部材が挿通される取付孔を有し、前記固定部材を用いて前記枠体又は前記障子に固定される台座と、
外周面に凹状の溝部が設けられた嵌合部を有し、前記台座に対して相対回転可能に支持されるハンドルベースと、
前記嵌合部が嵌合される嵌合穴部を有し、前記ハンドルベースに対して相対回転不能に連結されるハンドル部と、
を有し、
前記嵌合部の外周面には、前記固定部材の挿通経路との干渉を回避するための溝部が設けられている
ことを特徴とする建具。
【請求項9】
枠体と、前記枠体に対して開閉可能に支持される障子と、前記枠体又は前記障子に取り付けられるハンドルとを備える建具であって、
前記ハンドルは、
固定部材が挿通される取付孔を有し、前記固定部材を用いて前記枠体又は前記障子に固定される台座と、
嵌合部を有し、前記台座に対して相対回転可能に支持されるハンドルベースと、
前記嵌合部が嵌合される嵌合穴部を有し、前記ハンドルベースに対して相対回転不能に連結されるハンドル部と、
を有し、
前記固定部材は、前記ハンドルによって覆い隠されている
ことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体で障子を回動可能に支持した建具に用いるハンドル及び該ハンドルを備える建具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばビルの外壁に設置される換気用の建具として、枠体に障子を回動可能に支持した開閉窓やすべり出し窓等の建具がある。このような建具は、グレモンハンドルと呼ばれる障子の開閉操作部を備える場合がある(例えば特許文献1参照)。グレモンハンドルは、例えば障子の框体に固定された台座でハンドル部を支持したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6291319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のグレモンハンドルは、台座が角型に構成され、全体として相当な大きさを有する。このため、この構成では、框体の見込み面に取り付けられた台座がガラス側へと大きく張り出している。その結果、この構成では、ガラス周りのシーリングをする際にハンドル部が邪魔になるため、ハンドル部を一旦取り外してからシーリング作業を行う必要があり、作業性が低い。また、このような構成では、台座が大きく目立つため、建具全体の外観品質を低下させる要因にもなっている。特に、いわゆる隠し框と呼ばれる框体では、台座が一層目立ち、外観品質が一層低下する。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、主たる目的は、台座を小型化することができ、シーリング作業の作業性を向上することができるハンドル及び該ハンドルを備える建具を提供することにある。本発明の別の目的は、外観品質を向上することができるハンドル及び該ハンドルを備える建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係るハンドルは、枠体と、前記枠体に対して開閉可能に支持される障子とを備える建具に用いるハンドルであって、固定部材が挿通される取付孔を有し、前記固定部材を用いて前記枠体又は前記障子に固定される台座と、嵌合部を有し、前記台座に対して相対回転可能に支持されるハンドルベースと、前記嵌合部が嵌合される嵌合穴部を有し、前記ハンドルベースに対して相対回転不能に連結されるハンドル部と、を備え、前記嵌合部の外周面には、前記固定部材の挿通経路との干渉を回避するための溝部が設けられている。
【0007】
本発明の第2態様に係るハンドルは、枠体と、前記枠体に対して開閉可能に支持される障子とを備える建具に用いるハンドルであって、固定部材が挿通される取付孔を有し、前記固定部材を用いて前記枠体又は前記障子に固定される台座と、嵌合部を有し、前記台座に対して相対回転可能に支持されるハンドルベースと、前記嵌合部が嵌合される嵌合穴部を有し、前記ハンドルベースに対して相対回転不能に連結されるハンドル部と、を備え、前記固定部材は、前記ハンドルによって覆い隠される。このような構成によれば、台座を固定するための固定部材を覆い隠すためのカバー部材が不要となってコストを低減でき、さらに外観品質も向上する。
【0008】
本発明の第3態様に係る建具は、枠体と、前記枠体に対して開閉可能に支持される障子と、前記枠体又は前記障子に取り付けられるハンドルとを備える建具であって、前記ハンドルは、固定部材が挿通される取付孔を有し、前記固定部材を用いて前記枠体又は前記障子に固定される台座と、外周面に凹状の溝部が設けられた嵌合部を有し、前記台座に対して相対回転可能に支持されるハンドルベースと、前記嵌合部が嵌合される嵌合穴部を有し、前記ハンドルベースに対して相対回転不能に連結されるハンドル部と、を有し、前記嵌合部の外周面には、前記固定部材の挿通経路との干渉を回避するための溝部が設けられている。
【0009】
本発明の第4態様に係る建具は、枠体と、前記枠体に対して開閉可能に支持される障子と、前記枠体又は前記障子に取り付けられるハンドルとを備える建具であって、前記ハンドルは、固定部材が挿通される取付孔を有し、前記固定部材を用いて前記枠体又は前記障子に固定される台座と、嵌合部を有し、前記台座に対して相対回転可能に支持されるハンドルベースと、前記嵌合部が嵌合される嵌合穴部を有し、前記ハンドルベースに対して相対回転不能に連結されるハンドル部と、を有し、前記固定部材は、前記ハンドルによって覆い隠されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、台座を小型化することができ、シーリング作業の作業性を向上することができる。また、外観品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る建具を室内側から見た正面図である。
図2図1に示す建具の横断面図である。
図3】グレモンハンドル及びその周辺部を拡大した斜視図である。
図4】グレモンハンドルを室外側から見た正面図である。
図5A】グレモンハンドルのハンドル部以外の構成要素の分解斜視図である。
図5B図5Aに示すグレモンハンドルの斜視図である。
図5C図5Bに示すグレモンハンドルを別の角度から見た斜視図である。
図6】グレモンハンドルの断面図である。
図7A】台座及びハンドルベースの底面図である。
図7B】台座及びハンドルベースの平面図である。
図8A】ハンドル部の要部を拡大した斜視図である。
図8B】ハンドル部にハンドルベースを嵌合した状態を示す図である。
図9】グレモンハンドルを縦框の室内側見付け面に取り付けた構成例の建具の要部を拡大した横断面図である。
図10A】第2実施形態に係るグレモンハンドルのハンドル部以外の構成要素の分解斜視図である。
図10B図10Aに示すグレモンハンドルの斜視図である。
図10C図10Bに示すグレモンハンドルを別の角度から見た斜視図である。
図11】第2実施形態に係るハンドル部にハンドルベースを嵌合した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るハンドルについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1及び図2に示すように、第1実施形態に係る建具10は、建物躯体の開口部に固定される枠体12と、枠体12の開口部13に開閉可能に取り付けられた障子14とを備える。本実施形態では、障子14を見込み方向で室外側へと開くことができる縦すべり出し窓の建具10を例示する。建具10は、開閉窓でもよいし、横すべり出し窓等でもよい。
【0014】
枠体12は、上枠12aと、下枠12bと、左右の縦枠12c,12dとを四周枠組みすることで矩形の開口部13を形成したものである。各枠12a~12dは、アルミニウム合金等の金属材料又は塩化ビニル樹脂(PVC)等の樹脂材料の押出形材である。各枠12a~12dは、金属形材の室内側に樹脂形材を装着した複合構造でもよい。枠体12は、くぎやねじ等の固定具を用いて建物躯体に固定される。
【0015】
本出願において、見込み方向とは建具10の室内外方向、つまり室内側から室外側に向かう方向又はその逆方向(図中に矢印Zで示す方向)をいい、見込み面とは見込み方向に沿って延在する面をいう。見付け方向とは見込み方向に直交する方向であり、上下方向に長尺な縦枠12c等の場合はその長手方向に直交する左右方向(図中に矢印Xで示す方向)をいい、左右方向に長尺な上枠12a等の場合はその長手方向に直交する上下方向(図中に矢印Yで示す方向)をいう。見付け面とは見付け方向に沿った面をいう。枠内側とは、枠状部材である枠体12等の内側部分をいう。枠外側とは、枠状部材である枠体12等の外側部分をいう。枠内方向とは、枠状部材の枠外側から枠内側に向かう方向をいう。枠外方向とは、枠状部材の枠内側から枠外側に向かう方向をいう。
【0016】
図2に示すように、縦枠12c,12dは、それぞれ枠内側見込み面16の室内側端部から枠内側に突出した突出片18を有する。突出片18は、障子14の戸当たりとなる板片であり、先端にタイト材20が装着されるポケット部が設けられている。突出片18は、上枠12a及び下枠12bにも設けられている。
【0017】
図2及び図3に示すように、障子14は、框体22で面材24を保持した構成である。
【0018】
面材24は、スペーサを介して一対のガラス板24a,24bを間隔を隔てて対面配置した2層の複層ガラスである。面材24は、1層又は3層以上のガラス板で構成されてもよい。
【0019】
框体22は、上框22aと、下框22bと、縦框22c,22dとを四周框組みして面材24を保持したものである。各框22a~22dは、アルミニウム合金等の金属材料又は塩化ビニル樹脂(PVC)等の樹脂材料の押出形材である。各框22a~22dは、金属形材の室内側に樹脂形材を装着した複合構造でもよい。本実施形態の框体22は、枠体12の突出片18の裏側(室外側)に隠された構成、いわゆる隠し框構成となっている(図1及び図2参照)。
【0020】
各框22a~22dは、枠内側を向いた開口溝22eをそれぞれ有し、開口溝22eで面材24の外周縁部を保持している。面材24の外周縁部は、開口溝22eを構成する室内外の側壁との間がバックアップ材23及びシール材25で保持されている。バックアップ材23は、例えばスポンジ状の部材であり、面材24の縁部に沿って延在している。シール材25は、バックアップ材23の開口側を封止する部材であり、例えば不定形のシーリング材を塗布したものである。図2では、縦框22c,22dの開口溝22e及びその周辺部の構成を例示しているが、上框22a及び下框22bの開口溝22e及びその周辺部の構成も同様なものでよい。
【0021】
障子14は、例えば上框22a及び下框22bがそれぞれ上枠12a及び下枠12bと所定のアーム部材を介して連結されることで見込み方向に開閉可能である。障子14は、一方の縦框22cが吊元側となり、他方の縦框22dが戸先側となる。
【0022】
戸先側の縦框22dの枠内側見込み面26には、グレモンハンドル28が取り付けられている。グレモンハンドル28は、グレモン錠を施解錠するためのハンドルを構成する。グレモン錠は、例えばグレモンハンドル28の操作によって縦框22dの長手方向に沿って配置されたリンケージバーを移動させ、所定の係合ピンを縦枠12dに固定された錠受け部材に係脱させるものであり、一般的な構造のものでよい。
【0023】
次に、第1実施形態に係るグレモンハンドル28の具体的な構成例を説明する。
【0024】
図3図8Bに示すように、グレモンハンドル28は、台座30と、ハンドルベース32と、ハンドル部34と、ばね機構部36とを有する。
【0025】
図5A図5Cに示すように、台座30は、障子14の縦框22dに固定される金属又は樹脂の部品である。つまり台座30は、グレモンハンドル28の縦框22dに対する固定部となる。台座30は、軸中心に貫通孔30aが形成され、平面視で楕円形のリング構造を成している。台座30には、貫通孔30aの側部に直径方向で一対の取付孔30b,30cが形成されている。各取付孔30b,30cは、ねじ38がそれぞれ挿通される。ねじ38は、台座30を縦框22dの枠内側見込み面26に固定するための固定部材である。
【0026】
図5A図5Cに示すように、ハンドルベース32は、嵌合部40と、軸部41とを有する。
【0027】
嵌合部40は、ハンドル部34と嵌合され、一体的に連結される金属又は樹脂の部品である。嵌合部40は、略八角柱形状に形成され、外周面には凸部40a及び凹部40bと、一対の溝部40c,40dとが形成されている。
【0028】
凸部40aと凹部40bは、嵌合部40の直径方向に位置する2面にそれぞれ形成され、互いに背合わせに配置されている。溝部40c,40dは、嵌合部40の軸方向に沿う円弧状の溝部である。溝部40c,40dは、凸部40a及び凹部40bと直交する直径方向に位置する2面にそれぞれ形成され、互いに背合わせに配置されている。つまり嵌合部40の外周面には、直径方向で一対の溝部40c,40dが設けられ、さらにその法線方向に凸部40a及び凹部40bが位置している。
【0029】
嵌合部40の一端面には、円筒状の回転軸部40eが突出形成されている。回転軸部40eは、台座30の貫通孔30aに挿入され、開口端部が外側に折れ曲がるようにかしめ加工されたフランジ部40fが形成される(図6参照)。これにより嵌合部40は、台座30に対して相対回転可能に支持され、且つ抜け止めされる。嵌合部40の軸中心には、回転軸部40eから中央付近まで延在する連結穴40gが形成されている。連結穴40gは、例えば六角形状の内面を有する。
【0030】
軸部41は、一端部に連結部41aが形成され、他端部に駆動部41bが形成された金属シャフトである。連結部41aは、連結穴40gに嵌合される部分であり、例えば六角形状の外面を有する。連結部41aが連結穴40gに圧入され、これにより軸部41が嵌合部40と一体化される。嵌合部40及び軸部41は、一部品で形成されてもよい。駆動部41bは、例えば四角形状の外面を有する。駆動部41bは、台座30から突出するように設けられ、ハンドル部34の回動操作をグレモンハンドル28が連結されるグレモン錠の他の機構に伝達するための駆動軸となる。
【0031】
図3図4図8A及び図8Bに示すように、ハンドル部34は、ハンドルベース32と連結されるハンドル軸部44と、人手によって操作される操作部45とを有する。なお、図8Bは、台座30及びばね機構部36の図示を省略し、ハンドル部34とハンドルベース32との嵌合状態のみを図示したものであり、図11も同様である。
【0032】
ハンドル軸部44は、開口端部が台座30の外形と略同一の楕円形を有するスカート状の筒部である。図4に示すように、ハンドル軸部44の外周面は、台座30の外周面と略面一に配置される。これによりハンドル部34と台座30は、見かけ上一体に形成された一部品の外観を形成し、高い外観品質を有する。この際、ハンドル軸部44は、台座30を縦框22dに固定する一対のねじ38を覆い隠すため、外観品質が一層向上する。
【0033】
ハンドル軸部44の内側には、嵌合部40が嵌合される嵌合穴部46が形成されている。本実施形態の嵌合部40は、略八角形状である。一方、嵌合穴部46は、略円形の肉抜き構造である。そこで、嵌合穴部46の内面には、係合凹部46a及びねじ穴46bと、一対の突起46c,46dとが設けられている。
【0034】
係合凹部46aは、嵌合部40の凸部40aが係合される凹みである。ねじ穴46bは、留めねじ48が螺合される。留めねじ48は、イモネジと呼ばれる頭部を持たないねじである。ねじ穴46bは、ハンドル軸部44の外周面から嵌合穴部46まで貫通している。突起46c,46dは、それぞれアーチ状に膨らんだプレートで形成された肉抜き構造の突起である。突起46c,46dは、それぞれ嵌合部40の溝部40c,40dに係合される。ハンドル部34は、係合凹部46a及びねじ穴46bはハンドル軸部44の直径方向に配置され、その法線方向に突起46c,46dが設けられている。これによりハンドル部34は、ハンドルベース32に対して互いに直交方向、つまり十字方向にある4点で支持された状態で相対回転不能に連結される。
【0035】
図5Aに示すように、ばね機構部36は、ハンドル部34が回動操作され、開位置又は閉位置となった際に操作者に操作感を付与するものである。ばね機構部36は、一対の樹脂ばね36a,36bと、樹脂ナット36cとを有する。樹脂ナット36cは、ハンドルベース32の軸部41の連結部41aと駆動部41bとの間に設けられた断面四角形状の受け面41cに嵌合される。樹脂ばね36a,36bは、軸部41の外面に当接する円弧状の膨出部を有する。樹脂ばね36a,36bは、樹脂ナット36cを挟み込むように配置される。樹脂ばね36a,36b及び樹脂ナット36cは、台座30の内側に収容され、裏板50を用いて軸部41から抜け止めされる。
【0036】
グレモンハンドル28は、ハンドル部34が回動操作されると軸部41が軸周りに回転し、その受け面41cに嵌合された樹脂ナット36cも一体的に回転する。ここで、樹脂ナット36cは、その外周面に形成された溝部が樹脂ばね36a,36bの膨出部を乗り越える際、弾性変形した樹脂ばね36a,36bの反発力によって所定のクリック感を受ける。これによりグレモンハンドル28は、ハンドル部34の回動操作に所定の操作感が付与される。
【0037】
次に、グレモンハンドル28の組付方法及び縦框22dに対する取付方法の一例を説明する。
【0038】
図5A及び図6に示すように、先ず、台座30を所定の治具で位置決め固定する。この際、台座30は、楕円形であるため、真円形状に比べて外周面を治具で固定し易いという利点がある。続いて、ワッシャ52を通した嵌合部40の回転軸部40eを台座30の貫通孔30aに挿入し、回転軸部40eの先端から2枚のワッシャ53,54をさらに通す。次いで、台座30の内側から所定のかしめ工具を挿入し、回転軸部40eの先端をかしめ変形させてフランジ部40fを形成する。これにより嵌合部40が台座30に対して相対回転可能に支持される。
【0039】
次に、軸部41の連結部41aを嵌合部40の連結穴40gに圧入し、嵌合部40と軸部41とを連結する。続いて、軸部41の受け面41cに樹脂ナット36cを挿入し、さらに樹脂ナット36cと台座30の内周面との間に樹脂ばね36a,36bを嵌め込み、裏板50で閉塞する。
【0040】
以上によりハンドルベース32、台座30、及びばね機構部36が一体化されたアセンブリ部品が組み立てられる(図5A図6参照)。このようなアセンブリ部品を縦框22dに取り付ける際は、先ず、台座30の取付孔30b,30cにねじ38を通して台座30を縦框22dに固定する。
【0041】
この際、溝部40c,40dは、取付孔30b,30cへのねじ38の挿通経路との干渉を回避するための機能も有する(図7B参照)。このため、ねじ38及びこれを締結するための工具、例えばドライバーは、溝部40c,40dを通して嵌合部40に干渉することを避けることができ、円滑にねじ38を締結することができる。つまり嵌合部40が工具によるねじ38の締結作業の邪魔になることがなく、作業効率が高い。
【0042】
最後に、ハンドルベース32の嵌合部40をハンドル部34の嵌合穴部46に嵌合し、留めねじ48で締結する。これによりグレモンハンドル28の組付作業及び縦框22dに対する取付作業が完了する。
【0043】
以上のように、本実施形態のグレモンハンドル28は、嵌合部40が取付孔30b,30cへのねじ38の挿通経路との干渉を回避するための溝部40c,40dを有する。このため、台座30は、取付孔30b,30cを貫通孔30aで支持される嵌合部40に可能な限り近づけた位置に形成でき、台座30の外形を小型化することができる。その結果、図7Aに示すように、グレモンハンドル28は、楕円形の台座30の長軸aを最小限の大きさに抑えることができ、これに応じて短軸bも抑制するこができる。このため、台座30は、面材24側に張り出すことを抑制でき、面材24の室内側表面に対向する部位がその外周面の1点(点c)のみとなる(図2及び図3も参照)。このため、グレモンハンドル28は、シール材25の施工作業の邪魔になることが抑えられ、その際の台座30の外周面に対するマスキング作業も容易となる。しかも建具10は、グレモンハンドル28の台座30が小型化されることで、その外観品質も向上する。
【0044】
また、当該グレモンハンドル28は、ハンドル部34とハンドルベース32との連結構造が簡便なため、ハンドル部34の交換が容易で、その形状変更も柔軟であり、多様なバリエーションの意匠を採用できる。例えば、本実施形態では、ハンドル軸部44の外周面が台座30の外周面と略面一に配置される構成を例示したが、ハンドル軸部44は台座30の外周面をスカート状に覆い隠す構成としてもよい。また、より細いハンドルを採用することで、意匠性の一層の向上が可能となり、同時に図2に示すような隠し框構造での面材24の可視面積も増大させることができる。
【0045】
図8A及び図8Bに示すように、当該グレモンハンドル28では、ハンドルベース32の嵌合部40に嵌合するハンドル部34の突起46c,46dが肉抜きされたアーチ形状を有する。このため、突起46c,46dは、例えば中実な片持ち状の突起で構成した場合に比べて根本部分への負荷がかかり難くて耐久性が向上する。さらに突起46c,46dは、アーチ形状であることでどの角度で溝部40c,40dに当接しても面接触を維持でき、ハンドル部34とハンドルベース32との間のがたつきを抑制できる。
【0046】
しかも当該グレモンハンドル28は、一対の突起46c,46dと直交する方向に係合凹部46a及びねじ穴46bを配置したことで、ハンドル部34とハンドルベース32とが十字方向で4点支持される。その結果、グレモンハンドル28は、ハンドル部34とハンドルベース32との間のがたつきを一層抑制できる。
【0047】
他方、当該グレモンハンドル28は、台座30を縦框22dに固定するねじ38がハンドル部34のハンドル軸部44によって覆い隠される。このため、グレモンハンドル28は、ねじ38を覆い隠すためのカバー部材を別途必要としない。このため、グレモンハンドル28は、部品点数の削減によるコスト低減と外観品質の向上とを両立できる。
【0048】
ところで、グレモンハンドル28は、図9に示す建具10Aのように、縦框22dの枠内側見込み面26以外、例えば縦框22cの室内側見付け面55に取り付けてもよい。この場合もグレモンハンドル28は、台座30が小型化されていることで、室内側から視認した際に台座30が目立つことがなく、高い外観品質が得られる。
【0049】
次に、第2実施形態に係るグレモンハンドル60について説明する。
【0050】
第2実施形態に係るグレモンハンドル60において、上記した第1実施形態に係るグレモンハンドル28と同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。なお、グレモンハンドル60についても、縦框22dや縦框22cに対する取付構造は上記したグレモンハンドル28と同一又は同様でよいため、図1図3及び図9中に括弧書きで符号60を付して当該取付構造の説明を省略する。
【0051】
図10A図11に示すように、本実施形態のグレモンハンドル60は、上記したグレモンハンドル28と比べて、ハンドルベース32及びハンドル部34とは構成が異なるハンドルベース62及びハンドル部64を備える。
【0052】
ハンドルベース62は、上記したハンドルベース32の嵌合部40とは構成の異なる嵌合部66を有する。嵌合部66は、四角柱形状に形成され、外周面には凸部40a及び凹部40bは設けられているが、溝部40c,40dは設けられていない。なお、嵌合部66は、回転軸部40e、フランジ部40f、及び連結穴40gを有する点は図6に示すハンドルベース32と同様である。
【0053】
ハンドル部64は、上記したハンドル部34の嵌合穴部46とは構成の異なる嵌合穴部68を有する。本実施形態の場合、嵌合部66は四角形状であり、嵌合穴部68も四角形状の穴である。嵌合穴部68の内面には、係合凹部46aと、留めねじ48が螺合されるねじ穴46bは設けられているが、突起46c,46dは設けられていない。なお、本実施形態の台座30の外周面は、例えば円形であり、ハンドル部64のハンドル軸部44の外周面もこれと略面一に配置される円形である。本実施形態の台座30及びハンドル軸部44も、上記したグレモンハンドル28の台座30及びハンドル軸部44と同様な楕円形でもよい。
【0054】
従って、本実施形態のグレモンハンドル60では、台座30の平面視で嵌合部66の側方に取付孔30b,30cが設けられる構成となるが(図10B参照)、台座30が円形に構成されたことで、面材24側に張り出す量は1点のみの最小限なものとなる。このため、当該グレモンハンドル60においても、シール材25の施工作業が容易となる。また、当該グレモンハンドル60においても、ハンドル軸部44と台座30とが小型の円形に形成されるため、その外観品質が向上する。さらに当該グレモンハンドル60においても、台座30を縦框22dに固定するねじ38がハンドル部64のハンドル軸部44によって覆い隠されるため、部品点数の削減によるコスト低減と外観品質の向上とを両立できる。
【0055】
本発明の第1態様に係るハンドルは、枠体と、前記枠体に対して開閉可能に支持される障子とを備える建具に用いるハンドルであって、固定部材が挿通される取付孔を有し、前記固定部材を用いて前記枠体又は前記障子に固定される台座と、嵌合部を有し、前記台座に対して相対回転可能に支持されるハンドルベースと、前記嵌合部が嵌合される嵌合穴部を有し、前記ハンドルベースに対して相対回転不能に連結されるハンドル部とを備え、前記嵌合部の外周面には、前記固定部材の挿通経路との干渉を回避するための溝部が設けられている。このような構成によれば、台座の外形を最小限に抑えて小型化することができ、面材のシーリング作業の作業性が向上し、外観品質も向上する。
【0056】
前記溝部は、前記嵌合部の直径方向で一対設けられ、前記嵌合穴部の内面には、前記一対の溝部にそれぞれ係合する一対の突起が設けられ、前記一対の突起は、それぞれ肉抜きされたアーチ形状を有する構成としてもよい。そうすると、突起の耐久性が向上すると共に、溝部に対する面接触を維持できることでハンドル部とハンドルベースとの間のがたつきを抑制できる。
【0057】
前記嵌合部の外周面には、さらに、前記直径方向に対する法線方向に位置する凸部及び凹部が設けられ、前記嵌合穴部の内面には、さらに、前記凸部が係合される係合凹部と、前記ハンドル部の外周面から該内面まで貫通するねじ穴とが設けられ、前記ハンドル部は、前記一対の突起が前記一対の溝部に係合し、前記係合凹部に前記凸部が係合され、前記ねじ穴に螺合された留めねじが前記凹部に突き当てられることで、前記ハンドルベースと固定される構成としてもよい。そうすると、ハンドル部とハンドルベースとが十字方向で4点支持され、相互間のがたつきを一層抑制できる。
【0058】
前記台座の外周面は、円形又は楕円形に形成されていてもよい。そうすると、台座が面材側に張り出す部分が1点となり、面材のシーリング作業の作業性が一層向上する。
【0059】
前記固定部材は、前記ハンドル部によって覆い隠される構成としてもよい。そうすると、ねじを覆い隠すためのカバー部材が不要となってコストを低減でき、さらに外観品質も向上する。
【0060】
本発明の第2態様に係るハンドルは、枠体と、前記枠体に対して開閉可能に支持される障子とを備える建具に用いるハンドルであって、固定部材が挿通される取付孔を有し、前記固定部材を用いて前記枠体又は前記障子に固定される台座と、嵌合部を有し、前記台座に対して相対回転可能に支持されるハンドルベースと、前記嵌合部が嵌合される嵌合穴部を有し、前記ハンドルベースに対して相対回転不能に連結されるハンドル部とを備え、前記固定部材は、前記ハンドルによって覆い隠される。このような構成によれば、台座を固定するためのねじを覆い隠すためのカバー部材が不要となってコストを低減でき、さらに外観品質も向上する。
【0061】
前記ハンドル部の外周面は、楕円形に形成され、前記台座の外周面は、楕円形に形成され、前記ハンドル部の外周面と前記台座の外周面とが略面一に配置される構成としてもよい。そうすると、外観品質が一層向上する。
【0062】
本発明の第3態様に係る建具は、枠体と、前記枠体に対して開閉可能に支持される障子と、前記枠体又は前記障子に取り付けられるハンドルとを備える建具であって、前記ハンドルは、固定部材が挿通される取付孔を有し、前記固定部材を用いて前記枠体又は前記障子に固定される台座と、外周面に凹状の溝部が設けられた嵌合部を有し、前記台座に対して相対回転可能に支持されるハンドルベースと、前記嵌合部が嵌合される嵌合穴部を有し、前記ハンドルベースに対して相対回転不能に連結されるハンドル部と、を有し、前記嵌合部の外周面には、前記固定部材の挿通経路との干渉を回避するための溝部が設けられている。このような構成によれば、台座の外形を最小限に抑えて小型化することができ、面材のシーリング作業の作業性が向上し、外観品質も向上する。
【0063】
本発明の第4態様に係る建具は、枠体と、前記枠体に対して開閉可能に支持される障子と、前記枠体又は前記障子に取り付けられるハンドルとを備える建具であって、前記ハンドルは、固定部材が挿通される取付孔を有し、前記固定部材を用いて前記枠体又は前記障子に固定される台座と、嵌合部を有し、前記台座に対して相対回転可能に支持されるハンドルベースと、前記嵌合部が嵌合される嵌合穴部を有し、前記ハンドルベースに対して相対回転不能に連結されるハンドル部と、を有し、前記固定部材は、前記ハンドルによって覆い隠されている。このような構成によれば、台座を固定するためのねじを覆い隠すためのカバー部材が不要となってコストを低減でき、さらに外観品質も向上する。
【0064】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0065】
建具10(10A)が例えばすべり出し窓の場合等では。グレモンハンドル28,60は上框22a又は下框22bに取り付けられてもよい。また、グレモンハンドル28,60は、框体22ではなく、枠体12の各枠12a~12dに取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10,10A 建具、12 枠体、12a 上枠、12b 下枠、12c,12d 縦枠、14 障子、22 框体、22a 上框、22b 下框、22c,22d 縦框、24 面材、25 シール材、28,60 グレモンハンドル、30 台座、30b,30c 取付孔、32,62 ハンドルベース、34,64 ハンドル部、38 ねじ、40 嵌合部、40a 凸部、40b 凹部、40c,40d 溝部、46,68 嵌合穴部、46a 係合凹部、46b ねじ穴、46c,46d 突起、48 留めねじ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図11