(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036194
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】軟磁性材料および電子部品
(51)【国際特許分類】
H01F 1/24 20060101AFI20240308BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240308BHJP
B22F 1/052 20220101ALI20240308BHJP
B22F 1/08 20220101ALI20240308BHJP
B22F 1/065 20220101ALI20240308BHJP
B22F 1/105 20220101ALI20240308BHJP
B22F 1/10 20220101ALI20240308BHJP
【FI】
H01F1/24
B22F1/00 Y
B22F1/052
B22F1/08
B22F1/065
B22F1/105
B22F1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140973
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健二
(72)【発明者】
【氏名】安彦 世一
(72)【発明者】
【氏名】小林 茂
(72)【発明者】
【氏名】小柴 寿人
(72)【発明者】
【氏名】大湊 和也
【テーマコード(参考)】
4K018
5E041
【Fターム(参考)】
4K018BA16
4K018BB01
4K018BB03
4K018BB04
4K018BB07
4K018BD01
4K018CA07
4K018GA03
4K018GA04
4K018KA44
5E041BB01
5E041BB05
5E041BD12
5E041NN06
(57)【要約】
【課題】優れた流動性を確保しつつ、材料ロスを低減すること。
【解決手段】本発明の一態様である軟磁性材料は、複数のピークトップを有する粒度頻度分布をもつ粉粒体からなり、前記粉粒体は、複数の軟磁性金属粒子を含有する複合粒子の集合体であって、前記複合粒子の粒度が45μm以上300μm未満である中位粉粒体を含み、前記中位粉粒体の平均円形度は、0.7以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のピークトップを有する粒度頻度分布をもつ粉粒体からなり、
前記粉粒体は、複数の軟磁性金属粒子を含有する複合粒子の集合体であって、前記複合粒子の粒度が45μm以上300μm未満である中位粉粒体を含み、
前記中位粉粒体の平均円形度は、0.7以上である
ことを特徴とする軟磁性材料。
【請求項2】
前記粒度頻度分布を前記複数のピークトップの各々に対応するピークトップを有する複数のピークに分離すると、前記複数のピークは、ピークトップに対応する粒度が最も大きい第1ピークと、ピークトップに対応する粒度が前記第1ピークの次に大きい第2ピークとを含み、
前記複数のピークの総面積に対する前記第2ピークのピーク面積の比Aβは、0.20以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の軟磁性材料。
【請求項3】
前記複数のピークは、ピークトップに対応する粒度が前記第2ピークよりも小さい第3ピークをさらに1つ以上有し、
前記複数のピークの総面積に対する1つ以上の前記第3ピークのピーク面積の合計の比Aγは、0.15以下であり、
前記比Aγは、前記複数のピークの総面積に対する前記第1ピークのピーク面積の比Aαと、前記比Aβとの双方よりも小さい
ことを特徴とする請求項2に記載の軟磁性材料。
【請求項4】
前記粉粒体の積算粒度分布では、90%の積算頻度に対応した粒度であるD90を、10%の積算頻度に対応した粒度であるD10で除して得られる比D90/D10は、20.0以下である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の軟磁性材料。
【請求項5】
前記粉粒体の積算粒度分布では、50%の積算頻度に対応した粒度であるD50は、200μm以上である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の軟磁性材料。
【請求項6】
前記D50は、650μm以下である
ことを特徴とする請求項5に記載の軟磁性材料。
【請求項7】
前記粉粒体の積算粒度分布では、90%の積算頻度に対応した粒度であるD90は、850μm以下である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の軟磁性材料。
【請求項8】
前記複合粒子の断面の面積に対して前記複数の軟磁性金属粒子が占める面積の割合は、60%以上である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の軟磁性材料。
【請求項9】
前記粉粒体の積算粒度分布では、90%の積算頻度に対応した粒度であるD90を、10%の積算頻度に対応した粒度であるD10で除して得られる比D90/D10は、5.0以上11.0以下であり、
前記粉粒体の積算粒度分布では、50%の積算頻度に対応した粒度であるD50は、200μm以上460μm以下であり、
前記粉粒体から選択された100粒以上の前記複合粒子のうち、最小径Dminに対する最大径Dmaxの比Dmax/Dminが2.0以下となる前記複合粒子の割合は、80%以上である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の軟磁性材料。
【請求項10】
前記複合粒子は、前記複数の軟磁性金属粒子を結着するバインダを含有し、
前記バインダの硬度は、前記軟磁性金属粒子の硬度の0.25倍以下であり、
前記軟磁性金属粒子は、非晶質軟磁性粒子であり、
前記複数の軟磁性金属粒子の積算粒度分布では、90%の積算頻度に対応した粒度であるD90pは、150μm以下である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の軟磁性材料。
【請求項11】
請求項1~3のいずれか一つに記載の軟磁性材料を含む
ことを特徴とする電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟磁性材料および電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インダクタ、リアクトル、トランス、チョークコイル等の電子部品に圧粉磁心が使用されている。一般に、圧粉磁心は、軟磁性粉末とバインダとを含有する造粒粉等の軟磁性材料を、金型内に充填して加圧することによって製造される。このような圧粉磁心を使用した電子部品は、情報機器等の様々な電子・電気機器に組み込まれている。近年では、ハイブリッド自動車のコンバータ等、大電力または大型な電子・電気機器への適用に向けて、上記電子部品の開発が行われている。
【0003】
また、圧粉磁心の製造には、多量の軟磁性材料が使用される。例えば、圧粉磁心の大型化に伴い、軟磁性材料の使用量が増大する。さらには、圧粉磁心の製造に使用する軟磁性材料の粒度として、より大きな粒度が許容される。これに応じ、目標の粒度をより大きくして軟磁性材料を造粒した場合、得られる軟磁性材料には、当該目標の粒度を有する造粒粉と、当該目標の粒度よりも小さい粒度を有する造粒粉とが混在し、しかも、これらの造粒粉の形状は不定形となっていることがある。この場合、軟磁性材料に含まれる造粒粉の粒度のばらつきが大きくなるため、当該軟磁性材料の粒度分布は、より広くなる。
【0004】
しかし、軟磁性材料の粒度分布が広いほど、軟磁性材料の流動性は低下する恐れがあり、これに起因して、圧粉磁心の製造時に金型内の軟磁性材料に充填むら等の問題が生じる場合がある。すなわち、軟磁性材料の流動性の低下は、圧粉磁心の製造性や歩留まりを低下させる原因になり得る。なお、上述した軟磁性材料等、複数の粒子を含む粉粒体や粉末の流動性を高めるための手法として、例えば、特許文献1~3に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3-114522号公報
【特許文献2】特開2019-033227号公報
【特許文献3】特開2018-210820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、軟磁性材料の流動性を高めるためには、上記の特許文献1~3に開示されたもの以外に、振動ふるい等を用いて軟磁性材料を分級することにより、軟磁性材料の粒度を揃えて粒度分布を狭くすることが有効である。しかしながら、上記のように軟磁性材料の粒度分布を狭くした場合、造粒された軟磁性材料のうち、分級によって除外される軟磁性材料の割合が増大するため、圧粉磁心の製造における軟磁性材料のロス(以下、材料ロスという)が増大して歩留まりが低下するという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みなされ、優れた流動性を確保しつつ、材料ロスを低減することができる軟磁性材料および電子部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一態様に係る軟磁性材料は、複数のピークトップを有する粒度頻度分布をもつ粉粒体からなり、前記粉粒体は、複数の軟磁性金属粒子を含有する複合粒子の集合体であって、前記複合粒子の粒度が45μm以上300μm未満である中位粉粒体を含み、前記中位粉粒体の平均円形度は、0.7以上である。
【0009】
(2)上記(1)に記載の軟磁性材料では、前記粒度頻度分布を前記複数のピークトップの各々に対応するピークトップを有する複数のピークに分離すると、前記複数のピークは、ピークトップに対応する粒度が最も大きい第1ピークと、ピークトップに対応する粒度が前記第1ピークの次に大きい第2ピークとを含み、前記複数のピークの総面積に対する前記第2ピークのピーク面積の比Aβは、0.20以上であってもよい。
【0010】
(3)上記(2)に記載の軟磁性材料では、前記複数のピークは、ピークトップに対応する粒度が前記第2ピークよりも小さい第3ピークをさらに1つ以上有し、前記複数のピークの総面積に対する1つ以上の前記第3ピークのピーク面積の合計の比Aγは、0.15以下であり、前記比Aγは、前記複数のピークの総面積に対する前記第1ピークのピーク面積の比Aαと、前記比Aβとの双方よりも小さくてもよい。
【0011】
(4)上記(1)~(3)のいずれか一つに記載の軟磁性材料では、前記粉粒体の積算粒度分布では、90%の積算頻度に対応した粒度であるD90を、10%の積算頻度に対応した粒度であるD10で除して得られる比D90/D10は、20.0以下であってもよい。
【0012】
(5)上記(1)~(3)のいずれか一つに記載の軟磁性材料では、前記粉粒体の積算粒度分布では、50%の積算頻度に対応した粒度であるD50は、200μm以上であってもよい。
【0013】
(6)上記(5)に記載の軟磁性材料では、前記D50は、650μm以下であってもよい。
【0014】
(7)上記(1)~(3)のいずれか一つに記載の軟磁性材料では、前記粉粒体の積算粒度分布では、90%の積算頻度に対応した粒度であるD90は、850μm以下であってもよい。
【0015】
(8)上記(1)~(3)のいずれか一つに記載の軟磁性材料では、前記複合粒子の断面の面積に対して前記複数の軟磁性金属粒子が占める面積の割合は、60%以上であってもよい。
【0016】
(9)上記(1)~(3)のいずれか一つに記載の軟磁性材料では、前記粉粒体の積算粒度分布では、90%の積算頻度に対応した粒度であるD90を、10%の積算頻度に対応した粒度であるD10で除して得られる比D90/D10は、5.0以上11.0以下であり、前記粉粒体の積算粒度分布では、50%の積算頻度に対応した粒度であるD50は、200μm以上460μm以下であり、前記粉粒体から選択された100粒以上の前記複合粒子のうち、最小径Dminに対する最大径Dmaxの比Dmax/Dminが2.0以下となる前記複合粒子の割合は、80%以上であってもよい。
【0017】
(10)上記(1)~(3)のいずれか一つに記載の軟磁性材料では、前記複合粒子は、前記複数の軟磁性金属粒子を結着するバインダを含有し、前記バインダの硬度は、前記軟磁性金属粒子の硬度の0.25倍以下であり、前記軟磁性金属粒子は、非晶質軟磁性粒子であり、前記複数の軟磁性金属粒子の積算粒度分布では、90%の積算頻度に対応した粒度であるD90pは、150μm以下であってもよい。
【0018】
(11)本発明の一態様に係る電子部品は、上記(1)~(3)のいずれか一つに記載の軟磁性材料を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明の上記態様によれば、優れた流動性を確保しつつ、材料ロスを低減することができる軟磁性材料および電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る軟磁性材料の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る軟磁性材料の粒度頻度分布の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る軟磁性材料に含まれる複合粒子の断面の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施例1~15および比較例1~4の各々における平均円形度C
2と安息角φとの相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る軟磁性材料および電子部品の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、本発明は限定されない。また、図面は模式的な例であり、図面中の各要素の寸法間の関係、各要素の寸法の比率、その他の寸法に関する条件は、現実の製品とは異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の間の関係や比率が異なる場合がある。また、各図面において、実質的に同一の要素には同一符号が付されている。
【0022】
(軟磁性材料の構成)
まず、本発明の一実施形態に係る軟磁性材料の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る軟磁性材料の一例を示す図である。
図1としては、本実施形態に係る軟磁性材料1の外観を示すOM(光学顕微鏡)写真が示されている。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る軟磁性材料1は、含有する粒子の粒度範囲が広い粉粒体、例えば、複数のピークトップを有する粒度頻度分布をもつ粉粒体10からなる。詳細には、粉粒体10は、粒度範囲が広い軟磁性の複合粒子11の集合体である。例えば、
図1に示すように、粉粒体10に含まれる複数の複合粒子11は、比較的粒度が大きい複合粒子11αの群と、粒度が中程度の複合粒子11βの群と、比較的粒度が小さい複合粒子11γの群と、に分類され得る。なお、粒度が中程度の複合粒子11βは、上記の複合粒子11αと複合粒子11γとの間の粒度を有する複合粒子である。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態に係る軟磁性材料の粒度頻度分布の一例を示す図である。本実施形態に係る軟磁性材料1において、粉粒体10は、複数のピークトップ、すなわち、複数の頻度の極大値を有する粒度頻度分布20をもつ。粒度頻度分布20は、これに複数含まれるピークトップ別に、複数のピークに分離することができる。これら分離された複数のピークが各々有する各ピークトップは、分離前の粒度頻度分布20に含まれる複数のピークトップの各々に対応している。詳細には、この粒度頻度分布20は、乾式のレーザ回折式の粒度分布測定装置により測定される。粒度頻度分布20は、各ピークを対数正規分布で表現した場合に、ピークトップの数と同じ数のピークの和で近似される。すなわち、粒度頻度分布20は、各ピークを対数正規分布で表現した場合に、ピークトップの数と同じ数のピークに分離して表現できる。例えば、
図2に示すように、粒度頻度分布20は、第1ピーク21と第2ピーク22と第3ピーク23との和である。
【0025】
第1ピーク21は、粒度頻度分布20に含まれる複数のピークのうち、ピークトップに対応する粒度が最も大きいピークである。詳細には、
図2に示すように、第1ピーク21は、粒度D
αにおいてピークトップ21tを有する。このピークトップ21tに対応する粒度D
αは、第2ピーク22のピークトップ22tに対応する粒度D
βと、第3ピーク23のピークトップ23tに対応する粒度D
γと、の双方よりも大きい。
【0026】
第2ピーク22は、粒度頻度分布20に含まれる複数のピークのうち、ピークトップに対応する粒度が第1ピーク21の次に大きいピークである。詳細には、
図2に示すように、第2ピーク22は、粒度D
βにおいてピークトップ22tを有する。このピークトップ22tに対応する粒度D
βは、第1ピーク21のピークトップ21tに対応する粒度D
αよりも小さく、第3ピーク23のピークトップ23tに対応する粒度D
γよりも大きい。
【0027】
第3ピーク23は、粒度頻度分布20に含まれる複数のピークのうち、ピークトップに対応する粒度が上記第2ピーク22よりも小さいピークである。詳細には、
図2に示すように、第3ピーク23は、粒度D
γにおいてピークトップ23tを有する。このピークトップ23tに対応する粒度D
γは、第1ピーク21のピークトップ21tに対応する粒度D
αと、第2ピーク22のピークトップ22tに対応する粒度D
βと、の双方よりも小さい。
【0028】
また、本実施形態に係る軟磁性材料1において、粉粒体10は、
図1に示すように、形状が不定形な複合粒子11の集合体である。この粉粒体10をふるいにより分級すると、粉粒体10は、複合粒子11の粒度が45μm以上300μm未満である中位粉粒体を含む。粉粒体10の流動性向上の観点から、この中位粉粒体の平均円形度は、0.7以上である。また、この平均円形度の上限は、1.0である。
【0029】
本明細書において、平均円形度は、複数の複合粒子11における円形度の平均値であり、複数の複合粒子11の各々について算出した各円形度を合計し、得られた合計値を、円形度を算出した複合粒子11の個数で除することによって算出される。複合粒子11の円形度は、デジタルマイクロスコープ等を用いて、対象とする複合粒子11の2次元画像を取得し、この2次元画像内における複合粒子11の面積および周囲長を導出し、得られた面積および周囲長をもとに算出する。
【0030】
また、本実施形態に係る軟磁性材料1の流動性は、粉粒体10の流動性であり、粉粒体10の安息角によって評価する。粉粒体10の安息角が小さいほど粉粒体10の流動性は高く、粉粒体10の安息角が大きいほど粉粒体10の流動性は低い。粉粒体10の安息角は、JIS Z 2504に準拠した手法により、円形の基底板上に、当該基底板に対して過剰な量の粉粒体10を堆積させ、これによって円錐形状に堆積した粉粒体10の堆積高さと当該基底板の半径とをもとに算出される。圧粉磁心の製造に適した粉粒体10の流動性を確保するという観点から、粉粒体10の安息角は、36°以下であることが好ましく、35°以下であることがより好ましく、34°以下であることがさらに好ましい。なお、軟磁性材料1が高い流動性を有すると、ブロッキングやラットホール現象等の予期せぬ粉体トラブルの発生を防止することができ、圧粉磁心の生産性を高めることができる。
【0031】
また、本実施形態に係る粉粒体10の粒度頻度分布20(
図2参照)において、第1ピーク21のピーク面積A
1と、第2ピーク22のピーク面積A
2と、第3ピーク23のピーク面積A
3との間には、以下に示す関係が成立することが好ましい。
【0032】
詳細には、粒度頻度分布20に少なくとも第1ピーク21と第2ピーク22とが含まれる場合、粒度頻度分布20の全ピーク面積に対する第2ピーク22のピーク面積A
2の比(以下、ピーク面積比A
βという)は、0.20以上であることが好ましい。ここで、粒度頻度分布20の全ピーク面積は、粒度頻度分布20に含まれる複数のピークの総面積である。例えば
図2に示すように、粒度頻度分布20が第1ピーク21と第2ピーク22と第3ピーク23とからなる場合、上記全ピーク面積は、ピーク面積A
1とピーク面積A
2とピーク面積A
3との総和(A
1+A
2+A
3)になる。この場合、ピーク面積比A
βは、次式によって算出される。
A
β=A
2/(A
1+A
2+A
3)
【0033】
また、粒度頻度分布20に少なくとも第1ピーク21と第2ピーク22と1つ以上の第3ピーク23とが含まれる場合、粒度頻度分布20の全ピーク面積に対する1つ以上の第3ピーク23のピーク面積A
3の合計の比(以下、ピーク面積比A
γという)は、0.15以上であることが好ましい。例えば
図2に示すように、粒度頻度分布20が第1ピーク21と第2ピーク22と1つの第3ピーク23とからなる場合、ピーク面積比A
γは、次式によって算出される。
A
γ=A
3/(A
1+A
2+A
3)
【0034】
また、粒度頻度分布20がピークトップを4つ以上有する場合には、これら4つ以上のピークトップに対応して粒度頻度分布20に含まれる4つ以上のピークのうち、第1ピーク21と第2ピーク22とを除く2つ以上のピークの全てを、第3ピーク23とみなす。この場合、ピーク面積A3は、これら2つ以上の第3ピーク23の面積の合計で与えられる。
【0035】
さらに、上述した第3ピーク23のピーク面積比A
γは、第1ピーク21のピーク面積比A
αと、第2ピーク22のピーク面積比A
βと、の双方よりも小さいことが好ましい。ここで、上記ピーク面積比A
αは、粒度頻度分布20の全ピーク面積に対する第1ピーク21のピーク面積A
1の比である。例えば
図2に示すように、粒度頻度分布20が第1ピーク21と第2ピーク22と第3ピーク23とを有する場合、ピーク面積比A
αは、次式によって算出される。
A
α=A
1/(A
1+A
2+A
3)
【0036】
本明細書において、粒度頻度分布は、JIS Z 8825-1に基づいて乾式粒度分布計により得られた体積基準の粒度分布である。また、ピーク面積は、粒度頻度分布のグラフ(Y軸:頻度、X軸:粒度)に含まれるピークトップの数に応じて対数正規分布の関数を用いたカーブフィッティング処理を実行し、これによって得られた解(ピークの曲線を表す関数)を、粒度の常用対数を取った上で粒度範囲(測定範囲)を指定して積分することによって導出される。なお、ピーク面積は、X軸を粒度の常用対数(10を底とする対数)に設定し、Y軸を頻度に設定したグラフ(粒度頻度分布のX軸の値を粒度の対数の値に置換したグラフ)に含まれるピークトップの数に応じて正規分布の関数を用いたカーブフィッティング処理を実行し、これによって得られた解(ピークの曲線を表す関数)を、粒度範囲(測定範囲)を指定して積分することによっても上記と同じ結果が導出される。
【0037】
また、本実施形態に係る軟磁性材料1(
図1参照)において、粉粒体10の積算粒度分布におけるD10、D50、D90は、以下に示す関係を満足することが好ましい。ここで、D10は、粉粒体10の10%の積算頻度に対応した粒度である。D50は、粉粒体10の50%の積算頻度に対応した粒度(メジアン径)である。D90は、粉粒体10の90%の積算頻度に対応した粒度である。これらのD10(x10)、D50(x50)、D90(x90)は、JIS Z 8825-1に基づいて乾式粒度分布計により得られた体積基準の積算粒度分布(例えば、ふるい下積算分布に対応する出力)から得られる。また、積算頻度は、粒度頻度分布において、小さな粒度から大きな粒度に向けて積算した頻度である。
【0038】
詳細には、粉粒体10に含まれる複合粒子11の粒度の上限は、粉粒体10を使用して製造される圧粉磁心の寸法に応じて設定されることが好ましい。例えば、粉粒体10において、D90は、850μm以下であることが好ましい。すなわち、小粒度から大粒度に向けて体積基準の粒度頻度分布における頻度を積算して得られる積算頻度が90%に達する際の複合粒子11の粒度は、850μm以下であることが好ましい。D90をD10で除して得られる比D90/D10は、粒度頻度分布の幅を示す。粉粒体10の流動性をより高める場合には、比D90/D10は、20.0以下であることが好ましく、15.0以下であることがより好ましく、11.0以下であることがさらに好ましい。この場合、圧粉磁心の形状の自由度も高めることもできる。また、圧粉磁心の歩留まりをより高める場合には、比D90/D10は、2.0以上であることが好ましく、3.0以上であることがより好ましく、5.0以上であることがさらに好ましい。この場合、圧粉磁心の密度の増加によって磁気特性を高めることもできる。
【0039】
また、高い生産性で比較的大きな圧粉磁心を製造する場合には、D50は、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、150μm以上であることがさらに好ましく、200μm以上であることが最も好ましい。高い生産性で比較的小さな圧粉磁心を製造する場合には、D50は、650μm以下であることが好ましく、600μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましく、460μm以下であることが最も好ましい。この場合、圧粉磁心の形状の自由度を高めることもできる。特に、上記の比D90/D10が5.0以上11.0以下である場合、D50は、200μm以上460μm以下であることが好ましい。
【0040】
また、粉粒体10の流動性を高めるという観点から、粉粒体10に含まれる複数の複合粒子11の最小粒度(以下、最小径Dminという)に対する最大粒度(以下、最大径Dmaxという)の比Dmax/Dminは、2.0以下であることが好ましい。特に、粉粒体10から無作為に選択された100粒以上の複合粒子11のうち、上記比Dmax/Dminが2.0以下となる複合粒子11の割合は、80%以上であることがより好ましい。上記比Dmax/Dminが2.0以下となる複合粒子11の割合の上限は、100%である。
【0041】
本明細書において、最大径Dmaxは、デジタルマイクロスコープ等を用いて撮像された粉粒体10中の複合粒子11の画像において、複合粒子11の輪郭線上における任意の2点間距離が最大となる長さである。最小径Dminは、上記と同様の複合粒子11の画像において、互いに平行な2直線によって複合粒子11の輪郭線を挟んだときの、当該2直線間の距離が最小となる長さである。
【0042】
また、本実施形態に係る軟磁性材料1において、上述した粉粒体10は、複数の軟磁性金属粒子を含有する複合粒子11の集合体である。
図3は、本発明の一実施形態に係る軟磁性材料に含まれる複合粒子の断面の一例を示す図である。
図3としては、粉粒体10から選択された一粒の複合粒子11の断面を示すSEM写真が示されている。
図4は、
図3に示す複合粒子の断面の拡大図である。
図4としては、
図3に示す複合粒子11の断面のうち、破線によって囲まれる一部領域を拡大したSEM写真が示されている。
【0043】
図3、4に示すように、複合粒子11は、複数の軟磁性金属粒子12を含有する。1粒毎の複合粒子11において、複数の軟磁性金属粒子12は、各々互いに、バインダ(図示せず)によって結着されている。これら複数の軟磁性金属粒子12の各粒度は、造粒される複合粒子11の粒度を超えない限り、特に制限されない。圧粉磁心の磁気特性を高めるために、複合粒子11に含まれる軟磁性金属粒子12の密度を高めるという観点から、複数の軟磁性金属粒子12の積算粒度分布におけるD90pは、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることがさらに好ましい。このD90pは、5μm以上であってもよい。本明細書において、D90pは、複合粒子11に含まれる複数の軟磁性金属粒子12の積算粒度分布において、90%の積算頻度に対応した粒度である。当該D90pは、JIS Z 8825-1に基づいて乾式粒度分布計により測定された体積基準の積算粒度分布(例えば、ふるい下積算分布に対応する出力)から得られる。
【0044】
また、複数の軟磁性金属粒子12の各々の形状は、球状であってもよいし、非球状であってもよい。当該非球状の形状は、例えば、鱗片状、楕円球状、液滴状、針状といった形状異方性を有する形状であってもよいし、特段の形状異方性を有しない不定形であってもよい。不定形な軟磁性金属粒子12としては、例えば、球状をなす複数の軟磁性金属粒子12が互いに接して結合したもの、他の形状をなす複数の軟磁性金属粒子12同士が部分的に埋没するように結合したもの等が挙げられる。
【0045】
また、圧粉磁心の磁気特性を高めるために、複合粒子11に含まれる軟磁性金属粒子12の密度を高めるという観点から、複合粒子11の断面における複数の軟磁性金属粒子12の占積率は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。上記複数の軟磁性金属粒子12の占積率は、複合粒子11の断面の面積に対して、複数の軟磁性金属粒子12が占める面積の割合である。
【0046】
上述した複数の軟磁性金属粒子12の各々は、例えば、結晶質軟磁性粒子、非晶質軟磁性粒子またはナノ結晶軟磁性粒子である。結晶質軟磁性粒子は、組織が結晶相からなる軟磁性の金属粒子である。非晶質軟磁性粒子は、非晶質相の体積が組織全体の50%を超える軟磁性の金属粒子である。ナノ結晶軟磁性粒子は、組織全体の少なくとも50%を超える部分にナノ結晶組織を有する軟磁性の金属粒子である。なお、ナノ結晶組織は、平均結晶粒径が1nm~60nmの結晶粒が母相中に分散した組織である。鉄損をより低減する場合には、複数の軟磁性金属粒子12は、非晶質相を含む軟磁性粒子であることが好ましい。非晶質相を含む軟磁性粒子としては、非晶質軟磁性粒子と、非晶質相中に1nm~60nmの結晶粒が分散したナノ結晶軟磁性粒子とが挙げられる。
【0047】
上記結晶質軟磁性粒子の材料としては、例えば、Fe-Si-Cr系合金、Fe-Ni系合金、Fe-Co系合金、Fe-V系合金、Fe-Al系合金、Fe-Si系合金、Fe-Si-Al系合金、カルボニル鉄および純鉄等が挙げられる。上記非晶質軟磁性粒子の材料としては、例えば、鉄基非晶質合金等が挙げられる。鉄基非晶質合金としては、例えば、Fe-Si-B系合金、Fe-P-C系合金、Co-Fe-Si-B系合金等が挙げられる。上記ナノ結晶軟磁性粒子の材料としては、例えば、Fe-Cu-M-Si-B系合金、Fe-M-B系合金、Fe-Cu-M-B系合金等が挙げられる。なお、これらの材料において、Mは、Nb、Zr、Ti、V、Mo、Hf、Ta、Wからなる群より選ばれる1種類以上の金属元素である。また、複数の軟磁性金属粒子12は、1種類の材料から構成されてもよいし、複数種類の材料から構成されてもよい。コストを低減しつつ磁気特性を高める観点からは、複数の軟磁性金属粒子12は、60~100原子%のFeを含むことが好ましい。
【0048】
バインダは、1粒毎の複合粒子11の含有成分のうち、複数の軟磁性金属粒子12を結着する成分である。複合粒子11の絶縁性(延いては圧粉磁心の製造に使用される粉粒体10の絶縁性)を高めるという観点から、当該バインダは、絶縁性の成分であることが好ましい。このようなバインダの材料としては、例えば、有機系材料および無機系材料が挙げられる。
【0049】
有機系材料としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機樹脂が挙げられる。これらの中でも、バインダの耐熱性の観点から、シリコーン樹脂が好ましい。無機系材料としては、例えば、ガラス粒子等が挙げられる。バインダの歪みを緩和するという観点から、複合粒子11中のバインダにはガラス粒子が好適に用いられる。当該バインダは、有機系材料のみを含有してもよく、無機系材料のみを含有してもよく、有機系材料および無機系材料の両方を含有してもよい。
【0050】
また、複合粒子11は、上述したバインダ以外に、潤滑剤やカップリング剤等の添加剤を含有してもよい。当該潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。当該カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0051】
図3、4に示すように、造粒された複合粒子11においてバインダが複数の軟磁性金属粒子12を結着した状態にある場合、このバインダの硬度は、結着した軟磁性金属粒子12の硬度の0.25倍以下であることが好ましい。本明細書において、硬度は、JIS Z 2244に準拠した手法によって測定される硬度(ビッカース硬さ)である。この手法で測定することが困難な材料に対しては、硬度は、JIS Z 2255に準拠した手法によって測定される硬度(超微小負荷硬さ)である。
【0052】
(軟磁性材料の製造方法)
つぎに、本発明の一実施形態に係る軟磁性材料の製造方法について説明する。本実施形態に係る軟磁性材料1の製造方法は、複数の軟磁性金属粒子12を作製する粉末作製工程と、複数の軟磁性金属粒子12を含有する複合粒子11の集合体である粉粒体10を作製する造粒工程と、を含む。
【0053】
粉末作製工程においては、例えば、水アトマイズ法等の公知の手法を用いて、複数の軟磁性金属粒子12を作製する。つぎに、造粒工程においては、上記粉末作製工程で作製された複数の軟磁性金属粒子12と、バインダと、必要に応じて添加剤とを、例えば回転式撹拌羽根により、水等の溶媒中で混合して造粒する。このとき、バインダの材料としては、上述した有機系材料および無機系材料の少なくとも一方が用いられる。添加剤としては、上述した潤滑剤およびカップリング剤が必要に応じて用いられる。混合によって得られた造粒物は、公知の方法で必要に応じて解砕され、造粒物の粒度を調整する。結果として、複数の軟磁性金属粒子12とバインダとを含有する複合粒子11の集合体、すなわち粉粒体10(造粒物)が製造される。このようにして得られた粉粒体10は、本実施形態に係る軟磁性材料1として電子部品(詳細には圧粉磁心)の製造に用いられる。
【0054】
なお、上記造粒工程においては、複数の軟磁性金属粒子12と、バインダの材料と、添加剤とを溶媒中で撹拌して得られた泥状のスラリーから、スプレードライヤー等の装置を用いた噴霧乾燥法によって粉粒体10を作製してもよい。また、潤滑剤およびカップリング剤等の添加剤は、粉粒体10を用いて圧粉磁心を製造する際の熱処理により、その大部分が気化して消失し、バインダと一体化している。
【0055】
(電子部品)
つぎに、本発明の一実施形態に係る電子部品について説明する。本実施形態に係る電子部品は、特に図示しないが、本実施形態に係る軟磁性材料1を含む。詳細には、本実施形態に係る電子部品として、例えば、インダクタ、リアクトル、トランス、チョークコイル等、圧粉磁心を備えた電子部品が挙げられる。当該圧粉磁心は、例えば、上述した粉粒体10を金型内に充填して目標の形状に圧縮成形し、得られた成形体に任意で熱処理等の処理を施すことによって製造される。なお、この熱処理では、上記成形体に含まれる複合粒子11の歪みを除去して、圧粉磁心の磁気特性を高める。このように軟磁性材料1を含有する圧粉磁心は、情報機器等の様々な電子・電気機器に組み込まれる電子部品(例えばインダクタ、リアクトル、トランス、チョークコイル等)のコアとして使用される。特に、当該圧粉磁心は、車載用のリアクトル等、大電力または大型の電子部品のコアとして好適に使用される。
【0056】
以上、説明したように、上記実施形態に係る軟磁性材料は、複数のピークトップを有する粒度頻度分布をもつ粉粒体からなり、当該粉粒体は、複数の軟磁性金属粒子を含有する複合粒子の集合体であって、当該複合粒子の粒度が45μm以上300μm未満である中位粉粒体を含む。当該中位粉粒体の平均円形度は、0.7以上である。このため、粉粒体の粒度頻度分布を広く取りながらも、粒子形状が球形に近い中位粉粒体の含有によって粉粒体全体の流動性を高めることができる。したがって、粉粒体の流動性を高めるために、分級によって粉粒体の粒度を揃える(すなわち粒度頻度分布を狭くする)ことが不要となるから、軟磁性材料の優れた流動性を確保しつつ、材料ロスを低減することができる。このような軟磁性材料を電子部品の製造に使用することにより、電子部品の製造工程の歩留まりを向上させるとともに、軟磁性材料および電子部品の製造に要するコストを低減することができる。
【0057】
なお、上述した実施形態では、3つのピークトップを有する粒度頻度分布をもつ粉粒体10を例示したが、本発明は、これに限定されない。例えば、粉粒体10の粒度頻度分布は、2つのピークトップを有してもよいし、3つ以上のピークトップを有してもよい。
【0058】
また、上述した実施形態では、粒度頻度分布において、第1ピーク21のピークトップ21tが最も高く、第3ピーク23のピークトップ23tが最も低く、第2ピーク22のピークトップ22tが、ピークトップ21tよりも低くピークトップ23tよりも高い場合を例示したが、本発明は、これに限定されない。例えば、第2ピーク22のピークトップ22tの高さは、ピークトップ21tの高さ以上であってもよいし、ピークトップ23tの高さ以下であってもよい。
【実施例0059】
以下、本発明の実施例および本発明に対する比較例を示し、本発明について更に具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例および比較例に限定して解釈されない。
【0060】
(サンプルの作製)
まず、水アトマイズ法によって作製した複数の軟磁性金属粒子と、バインダと、添加剤と、溶媒とを、容器内に入れて回転式撹拌羽根で撹拌することにより、これらの造粒粉を得た。このとき、複数の軟磁性金属粒子としては、鉄基非晶質合金の粉体を用いた。溶媒としては、水を用いた。その後、上記造粒粉を、目開きが850μmのふるいを用いて整粒した。これにより、粉粒体のサンプルを得た。
【0061】
粉粒体のサンプルの粒度分布および円形度は、回転式撹拌羽根の回転数および回転時間、バインダの含有量、水分の量、固形分の量、混練温度(撹拌温度)といった造粒条件を適宜変更することによって制御した。以下の各実施例においては、実施例毎に上記造粒条件を変更して、粒度分布および円形度が実施例間で異なる粉粒体のサンプルを用いた。また、以下の各比較例においても、比較例毎に上記造粒条件を変更して、粒度分布および円形度が比較例間で異なる粉粒体のサンプルを用いた。
【0062】
(粒度分布の測定)
上記の作製方法によって得られた粉粒体のサンプルについて、ベックマン・コールター社製の粒度分布測定装置(LS 13 320)を用い、JIS Z 8825-1に準拠した手法により、体積基準の粒度頻度分布および積算粒度分布を乾式で測定した。粒度の測定範囲は、0.38~2000μmであった。
【0063】
(粉粒体のD10、D50、D90の決定)
粉粒体のサンプルについて上記手法によって得られた体積基準の積算粒度分布から、JIS Z 8825-1(2001)において定義されるD10、D50、D90を取得した。また、当該D90を当該D10で除することにより、比D90/D10を算出した。
【0064】
(粒度分布のピーク面積比の算出)
粉粒体のサンプルについて上記手法によって得られた体積基準の粒度頻度分布のグラフ(x軸:粒度、y軸:頻度)のx軸について、粒度の値を粒度の常用対数の値に変更した。このグラフ(解析用グラフ)に対して、カーブフィッティング処理を実行した。このカーブフィッティング処理には、正規分布の関数(確率密度関数)をピークトップ数nに応じた数だけ足し合わせた式(1)で示される関数f(x)を用いた。なお、本粉粒体のサンプルでは、ピークトップ数は、2個または3個であった。
【0065】
【0066】
式(1)において、ai、bi、ciは、フィッティングパラメータである。aiは、対象とするピークのピークトップに対応するyの値(頻度)である。biは、対象とするピークのピークトップに対応するxの値(粒度の常用対数)である。ciは、対象とするピークの半値全幅である。
【0067】
カーブフィッティング処理においては、式(1)のai、bi、ciの各値を上記解析用グラフ(x軸:粒度の常用対数、y軸:頻度)から読み取り、読み取った各値を初期値として計算プログラムに入力することによって実行した。このとき、計算プログラムとしては、Phythonのライブラリの一つであるScipyのCurve_fitを用いた。このカーブフィッティング処理により、式(1)のai、bi、ciの各値を決定し、各ピークを正規分布の関数(ピーク)で表現した。これらの関数から、各ピークにおける粒度(ピークトップに対応する粒度)とピーク面積とを導出した。ピーク面積は、対象とするピークを、粒度分布を測定した粒度範囲に相当する積分区間(常用対数での粒度範囲)で積分することによって算出される。解析用グラフに含まれる全ピークのうち対象とするピークのピーク面積を、当該全ピークのピーク面積の総和で除することにより、全ピークのピーク面積に対する各ピークのピーク面積比を導出した。また、各ピークにおける粒度を10のbi乗によって算出した。
【0068】
(粉粒体の平均円形度の測定)
粉粒体の平均円形度を測定するために、まず、目開きが45μmのふるいと、目開きが300μmのふるいとを用いて、粉粒体のサンプルを、粒度が300μm以上の粒子群と、粒度が45μm以上300μm未満の粒子群(中位粉粒体)と、粒度が45μm未満の粒子群との3つの粒子群に分離した。つぎに、これら3つの粒子群の各々について、キーエンス社製のデジタルマイクロスコープ(VHX-6000)を用い、粉粒体に含まれる複合粒子の円形度を測定した。
【0069】
具体的には、対象とする粒子群をデジタルマイクロスコープの観察視野に置き、このデジタルマイクロスコープを通じて、この粒子群に含まれる複数の複合粒子の画像(2次元画像)を取得した。この取得した画像を、デジタルマイクロスコープに付属のソフトウェアに入力し、この画像内における複数の複合粒子の各々における面積Sおよび周囲長Lを導出した。このようにして得られた面積Sおよび周囲長Lを、複合粒子別に式(2)に代入して、各複合粒子の円形度Cを算出した。
C=4×π×S/L2 ・・・(2)
【0070】
その後、上述した3つの粒子群の各々について、複数の複合粒子の各々の円形度Cを式(2)に基づいて順次算出した。粒子群別に円形度Cの合計値を平均することにより、これら3つの粒子群の各平均円形度を算出した。上記円形度Cの算出に利用した複合粒子の粒数は、3つの粒子群の各々において10粒以上であり、統計上充分な数であった。
【0071】
(粉粒体の安息角の測定)
まず、粉粒体のサンプルを、カサ比重測定器を用いて円形の基底板の上に堆積させた。このとき、JIS Z 2504に基づき、カサ比重測定器のオリフィスに粉粒体のサンプルを通過させて、この基底板の上に過剰量の粉粒体のサンプルを供給し、これにより、粉粒体のサンプルを円錐状に堆積させた。上記粉粒体のサンプルの供給は、基底板上における粉粒体のサンプルがなす円錐形状が一定となった後に停止した。なお、カサ比重測定器としては、筒井理化学器械社製のJISカサ比重測定器を用いた。基底板としては、直径が32mmの円板を用いた。
【0072】
その後、基底板上において円錐形状をなす粉粒体のサンプルの堆積高さをハイトゲージによって測定した。得られた堆積高さと、この基底板の半径とをもとに、粉粒体のサンプルの安息角φ[°]を算出した。
【0073】
(粉粒体の比Dmax/Dminの測定)
粉粒体の比Dmax/Dminの測定では、粉粒体のサンプルに含まれる複数の複合粒子の最小径Dminに対する最大径Dmaxの比率である比Dmax/Dminを導出する。
【0074】
詳細には、キーエンス社製のデジタルマイクロスコープ(VHX-6000)を用いて、粉粒体のサンプルに含まれる複数の複合粒子の画像(2次元画像)を取得した。この取得した画像を、デジタルマイクロスコープに付属のソフトウェアに入力し、この画像内における複数の複合粒子の各々における最大径Dmaxおよび最小径Dminを導出した。最大径Dmaxとしては、画像内の複合粒子の輪郭線上における任意の2点間距離が最大となる長さ(単位:μm)を測定した。最小径Dminとしては、画像内において、互いに平行な2直線によって複合粒子の輪郭線を挟んだときの、当該2直線間の距離が最小となる長さ(単位:μm)を測定した。上記の最大径Dmaxおよび最小径Dminは、JIS Z 8900-1(2008)に定義されている。
【0075】
つぎに、粉粒体のサンプルから無作為に所定数以上の複合粒子を選択し、これら選択した複合粒子の各々について、比Dmax/Dminを算出した。その後、比Dmax/Dminが2.0以下である複合粒子の粒数を、これら選択した複合粒子の粒数で除し、得られた値に100を乗ずることにより、R2.0を導出した。このR2.0は、粉粒体のサンプルから無作為に選択された所定数以上の複合粒子のうち、比Dmax/Dminが2.0以下となる複合粒子の割合(百分率)である。また、上記R2.0の算出に利用した複合粒子の粒数(粉粒体のサンプルから無作為に選択された複合粒子の粒数)は、100粒以上であり、統計上充分な数であった。
【0076】
(複合粒子中の軟磁性金属粒子の粒度分布の測定)
複合粒子中の軟磁性金属粒子の粒度分布の測定では、複合粒子を造粒する前の軟磁性金属粒子(ここでは鉄基非晶質合金の粉体)について、上述した粉粒体のサンプルにおける粒度分布の測定と同様の手法により、体積基準の積算粒度分布を乾式で測定した。この得られた積算粒度分布から、JIS Z 8825-1(2001)において定義されるD90を、鉄基非晶質合金の粉体のD90に相当するD90pとして導出した。
【0077】
(成形体の密度の測定)
成形体の密度の測定では、まず、粉粒体のサンプルを金型内に充填して15t/cm2の圧力で加圧することにより、リング状の成形体(トロイダルコア)を作製した。このとき、金型としては、外径が20mmであり且つ内径が12.6mmであるキャビティを有するものを用いた。また、作製する成形体の外観寸法の目標値として、外径を20mmに設定し、内径を12.7mmに設定し、厚さを6.8mmに設定した。
【0078】
つぎに、上記のように作製した成形体の外観寸法(外径、内径、厚さ)を、画像寸法測定器(IM6145、キーエンス社製)とマイクロメータ(デジマチック標準外側マイクロメータ、ミツトヨ社製)とを用いて測定した。得られた外観寸法をもとに、成形体の体積を算出した。また、当該成形体の質量を、電子天秤(HF-300N、エー・アンド・デイ社製)を用いて測定した。得られた成形体の質量を上記体積で除することにより、当該成形体の密度ρ[g/cm3]を算出した。
【0079】
(鉄損の測定)
鉄損の測定では、まず、上記のように作製した成形体にコイルを巻き、これにより、電子部品のサンプル(ここではトロイダルコア)を作製した。このとき、1次巻線の巻き数は40ターンとし、2次巻線の巻き数は10ターンとした。つぎに、この電子部品のサンプルを用い、B-Hアナライザ(SY-8218、岩崎通信株式会社製)によって成形体の鉄損Pcv[kW/m3]を測定した。この鉄損Pcvの測定において、測定周波数は100kHzとし、最大磁束密度Bmは100mT(=0.10T)とした。
【0080】
(比透磁率の測定)
比透磁率の測定では、まず、上記のように作製した成形体にコイルを巻き、これにより、電子部品のサンプル(ここではトロイダルコア)を作製した。このとき、コイルの巻き数は40ターンとした。つぎに、この電子部品のサンプルを用い、インピーダンス・アナライザ(4192A、キーサイト・テクノロジー社製)によって成形体の比透磁率μr[-]を測定した。
【0081】
(占積率の測定)
占積率の測定では、粉粒体のサンプルに含まれる複合粒子の断面の面積に対して、複数の軟磁性金属粒子が占める面積の割合を測定した。
【0082】
具体的には、まず、粉粒体のサンプルを樹脂中に埋め込み、これにより、埋込試料を作製した。つぎに、この埋込試料をクロスセクションポリッシャ加工(CP加工)によって研磨し、これにより、埋込試料中の造粒粉(粉粒体のサンプル中の複合粒子)の断面を表面に露出させた。この断面の画像を、走査型電子顕微鏡(JSM7900F、日本電子社製)を用いて取得した。得られた画像を、画像処理のソフトウェアによって二値化処理して白黒画像(二値画像)に変換し、これにより、複合粒子中の軟磁性金属粒子(ここでは鉄基非晶質合金の粉体)の領域を明確化した。このような二値画像を用い、複合粒子中の断面(解析領域)に占める軟磁性金属粒子の面積を導出し、得られた軟磁性金属粒子の面積を当該解析領域の面積で除して100を乗ずることにより、複合粒子の断面の面積に対する軟磁性金属粒子の占積率RAを算出した。なお、上記画像処理のソフトウェアとしては、PickMapを使用し、閾値として100を設定した。
【0083】
(実施例1~15)
実施例1~15の各々では、上述したように実施例毎に造粒条件を変更して作製した粉粒体のサンプルについて、上記の手法に基づき、粒度頻度分布のピークトップに対応する粒度Dα、Dβ、Dγと、ピーク面積比Aα、Aβ、Aγと、平均円形度C1、C2、C3と、安息角φとを測定した。
【0084】
ここで、粉粒体のサンプルの粒度頻度分布は、ピークトップの粒度が最も大きい粒子群α(第1ピーク)と、第1ピークの次にピークトップの粒度が大きい粒子群β(第2ピーク)と、ピークトップの粒度が最も小さい粒子群γ(第3ピーク)と、で表現される。粒度Dαは、粒子群αに対応するピークトップの粒度である。粒度Dβは、粒子群βに対応するピークトップの粒度である。粒度Dγは、粒子群γに対応するピークトップの粒度である。ピーク面積比Aαは、粒子群αに対応するピーク面積比である。ピーク面積比Aβは、粒子群βに対応するピーク面積比である。ピーク面積比Aγは、粒子群γに対応するピーク面積比である。また、平均円形度C1は、粒度が300μm以上の粒子群に含まれる複合粒子の平均円形度である。平均円形度C2は、粒度が45μm以上300μm未満の粒子群に含まれる複合粒子の平均円形度である。平均円形度C3は、粒度が45μm未満の粒子群に含まれる複合粒子の平均円形度である。
【0085】
また、実施例9~12および実施例15の各々の粉粒体のサンプルの粒度頻度分布では、ピークトップの数は2個であった。そのため、当該粒度頻度分布は、2つの粒子群α、βに分離された。したがって、実施例9~12および実施例15では、粒子群γに対応する粒度Dγとピーク面積比Aγとが定義されなかった。また、これらの実施例では、粒度が45μm未満の粒子群の量が少なく、平均円形度C3が測定されなかった。
【0086】
実施例1~15の各々における粒度Dα、Dβ、Dγ、ピーク面積比Aα、Aβ、Aγ、平均円形度C1、C2、C3および安息角φの各測定結果は、表1に示す通りである。表1に示すように、実施例1~15の全てにおいて、平均円形度C2は、0.70以上であった。このため、実施例1~15では、安息角φを大幅に小さくすることができ、すなわち、粉粒体の流動性を極めて高くすることができた。例えば、実施例1~15の全てにおいて、安息角φは、36.0°以下であった。特に、実施例1~14では、ピーク面積比Aβが0.20以上であった。このため、実施例1~14の各々における安息角φは、ピーク面積比Aβが0.20未満である実施例15に比して小さくすることができた。例えば、実施例1~14の全てにおいて、安息角φは、34.0°以下であった。
【0087】
【0088】
(比較例1~4)
比較例1~4の各々では、上述したように比較例毎に造粒条件を変更して作製した粉粒体のサンプルについて、実施例1~15と同様に、粒度頻度分布のピークトップに対応する粒度Dα、Dβ、Dγと、ピーク面積比Aα、Aβ、Aγと、平均円形度C1、C2、C3と、安息角φとを測定した。
【0089】
なお、比較例4の粉粒体のサンプルの粒度頻度分布では、ピークトップの数は2個であった。そのため、当該粒度頻度分布は、2つの粒子群α、βに分離された。したがって、比較例4では、粒子群γに対応する粒度Dγとピーク面積比Aγとが定義されなかった。また、この比較例4では、粒度が45μm未満の粒子群の量が少なく、平均円形度C3が測定されなかった。
【0090】
比較例1~4の各々における粒度Dα、Dβ、Dγ、ピーク面積比Aα、Aβ、Aγ、平均円形度C1、C2、C3および安息角φの各測定結果は、上述の表1に示す通りである。表1に示すように、比較例1~4の全てにおいて、平均円形度C2は、0.70未満であった。このため、比較例1~4では、実施例1~15に比して、安息角φが大幅に増大し、粉粒体の流動性を十分に高くすることができなかった。例えば、比較例1~4では、安息角は、36.0°を超えていた。特に、ピーク面積比Aβが0.20未満である比較例1~3では、安息角φがより大幅に増大した。
【0091】
図5は、実施例1~15および比較例1~4の各々における平均円形度C
2と安息角φとの相関を示す図である。
図5において、「〇」は、実施例1~15の各々における平均円形度C
2と安息角φとの相関を示している。「●」は、比較例1~4の各々における平均円形度C
2と安息角φとの相関を示している。
図5に示すように、平均円形度C
2が0.70以上である実施例1~15では、平均円形度C
2が0.70未満である比較例1~4の何れと比べても、安息角φを大幅に小さくできることが明らかである。
【0092】
(実施例16~25)
実施例16~25の各々では、実施例1~15と同様に、実施例毎に造粒条件を変更して作製した粉粒体のサンプルについて、粒度Dα、Dβ、Dγと、ピーク面積比Aα、Aβ、Aγと、平均円形度C1、C2、C3と、安息角φとを測定した。この結果、実施例16~25の各々においても、粒度頻度分布に2つ以上のピークが含まれており、平均円形度C2が0.70以上であり、ピーク面積比Aβが0.20以上であった。
【0093】
これに加え、実施例16~25の各々では、上記粉粒体のサンプルについて、上記の手法に基づき、粒度積算分布におけるD50と、比D90/D10と、R2.0と、軟磁性金属粒子の粒度積算分布におけるD90pと、安息角φとを測定した。さらに、実施例16~25の各々では、上記粉粒体のサンプルを用いて作製した成形体について、上記の手法に基づき、密度ρと、鉄損Pcvと、比透磁率μrとを測定した。
【0094】
実施例16~25の各々におけるD50、比D90/D10、R2.0、D90p、密度ρ、鉄損Pcvおよび比透磁率μrの各測定結果は、表2に示す通りである。表2に示すように、実施例16~25の何れにおいても、成形体の密度ρとして5.50以上という高い値を得ることができた。これにより、成形体の鉄損Pcvを十分に小さくできるとともに、成形体の比透磁率μrを十分に高めることができた。特に、実施例18~25では、D50を200μm以上にすることができ、これにより、成形体の密度ρをさらに大きくすることができた。
【0095】
【0096】
また、実施例16、17および実施例20~25の各々においては、比D90/D10を20.0以下にすることができた。これにより、実施例16、17および実施例20~25の各々における安息角φを、比D90/D10が20.0を超える実施例18、19に比して、より小さくすることができた。すなわち、実施例16、17および実施例20~25では、粉粒体の流動性をより高くすることができた。例えば、実施例16、17および実施例20~25の全てにおいて、安息角φは、34.0°以下であった。
【0097】
(実施例26、27)
実施例26では、実施例1~15と同様に、実施例毎に造粒条件を変更して作製した粉粒体のサンプルについて、粒度Dα、Dβ、Dγと、ピーク面積比Aα、Aβ、Aγと、平均円形度C1、C2、C3と、安息角φとを測定した。また、実施例27では、粉粒体の造粒方式を噴霧乾燥方式に変更したこと以外、実施例1~15と同様に、粉粒体のサンプルを作製して、粒度Dα、Dβ、Dγと、ピーク面積比Aα、Aβ、Aγと、平均円形度C1、C2、C3と、安息角φとを測定した。この結果、実施例26,27の何れにおいても、粒度頻度分布に2つ以上のピークが含まれており、平均円形度C2が0.70以上であり、ピーク面積比Aβが0.20以上であった。
【0098】
これに加え、実施例26、27の各々では、上記粉粒体のサンプルについて、上記の手法に基づき、複合粒子中の軟磁性金属粒子の占積率RAを測定した。さらに、実施例26、27の各々では、上記粉粒体のサンプルを用いて作製した成形体について、上記の手法に基づき、比透磁率μrを測定した。
【0099】
実施例26、27の各々における占積率RAおよび比透磁率μrの各測定結果は、表3に示す通りである。表3に示すように、実施例26、27では、粉粒体の造粒方式を変更しても、複合粒子中の軟磁性金属粒子の占積率RAが高く、複合粒子中に軟磁性金属粒子を高密度に含有する粉粒体を得ることができた。これにより、実施例26、27の各々における成形体の比透磁率μrを十分高めることができた。特に、実施例26では、占積率RAを60%以上にすることができ、これにより、複合粒子中の軟磁性金属粒子がより一層密度化して、成形体の比透磁率μrをより一層高めることができた。
【0100】
【0101】
なお、本発明は、上述した実施形態および実施例によって限定されず、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成した製品を含む。その他、上述した実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。