(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036195
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】粉挽装置
(51)【国際特許分類】
A47J 42/10 20060101AFI20240308BHJP
A47J 42/20 20060101ALI20240308BHJP
A47J 42/42 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
A47J42/10
A47J42/20
A47J42/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140975
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】301000239
【氏名又は名称】テスコム電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】若女井 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】黄 四文
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 成俊
(57)【要約】
【課題】被粉砕物の粗挽き及び細挽きの工程を材料のロスなく行うことができ、分解清掃を簡便に行える単純な構造を有する装置を提供する。
【解決手段】
本発明の実施形態の一態様の粉挽装置は、被粉砕物を導入する導入部と、導入された被粉砕物を粉砕する粗挽部と、前記粗挽部で粉砕された粉砕物を磨り潰し、さらに粒径の小さい粉体を生成する細挽きと、生成された粉体を排出する排出部と、を有し、前記粗挽部及び細挽部は、一組の、内周面に凹凸を有するドラムと外周面に凹凸を有し前記ドラムに回転可能に収容される回転体とにより構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被粉砕物を導入する導入部と、
導入された被粉砕物を粉砕する粗挽部と前記粗挽部で粉砕された粉砕物を磨り潰し、更に粒径の小さい粉体を生成する細挽部とを有する粉挽部と、
生成された粉体を排出する排出部と、
を含み、
前記粉挽部は、
内周面に凹凸を有するドラムと、外周面に凹凸を有し前記ドラムに回転可能に収容される回転体と、
を含む粉挽装置。
【請求項2】
前記ドラムの内周面上の凹凸と前記回転体の外周面上の凹凸との間に被粉砕物が導入される隙間を保持し、
前記回転体の回転により、前記粗挽部において前記隙間に導入された被粉砕物が粉砕され、前記細挽部において粉体化される、
請求項1に記載の粉挽装置。
【請求項3】
前記粗挽部における凹凸が、低熱伝導性材料で構成される、請求項1に記載の粉挽装置。
【請求項4】
前記低熱伝導性材料が樹脂を含む、請求項3に記載の粉挽装置。
【請求項5】
前記粗挽部及び前記細挽部において、被粉砕物が上方から下方に向かって進む、請求項1に記載の粉挽装置。
【請求項6】
前記粗挽部における前記凹凸の高低差は、前記細挽部における前記凹凸の高低差よりも大きい、請求項1に記載の粉挽装置。
【請求項7】
前記ドラムの内周面において、前記粗挽部に形成される前記凹凸と、前記細挽部に形成される前記凹凸とが、非連続的に形成される、請求項1に記載の粉挽装置。
【請求項8】
前記粗挽部及び前記細挽部のいずれか一方又は両方において、前記凹凸の高低差は、上方から下方に向かって小さくなる、請求項6又は7に記載の粉挽装置。
【請求項9】
前記排出部は前記細挽部の下方に設置された粉体を貯留する粉体貯留部と、前記回転体に取付けられ、回転体の回転に伴い回転しながら粉体を掻き出す排出板、とを含む、請求項1に記載の粉挽装置。
【請求項10】
前記排出板は、弾性体により構成される、請求項9に記載の粉挽装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、茶葉、穀物類などから粉体を形成する粉挽装置に関し、特に比較的大きく硬い穀物類に対しても磨り潰して所望の状態に形成することができる粉挽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、穀物類などの粉挽には、石臼が利用されていた。石臼は臼自体の重みを利用して穀物など粉砕し製粉する場合、大型で重量があるため、一定のスペースが必要となる。さらに粉挽自体も多くは手動であるため多大な労力が必要となる。その反面、石臼は粉砕き時の発熱が抑制される構成であるため、粉挽される穀物等が熱による変質することを抑制できる。したがって、一般的に、石臼で製粉された粉は美味しい料理を作ることができるという特徴がある。
【0003】
近年、抹茶、うどん、蕎麦、パンなどの食材を家庭で製造するために、比較的小型の粉挽装置が商品化されている。このような家庭用の粉挽装置においては、小型で邪魔にならず、使用者の労力をあまり必要とせず、簡単に製粉することができることが求められ、且つ高価でないことが重要な要素である。
【0004】
特許文献1~3には、投入された被粉砕物が、種類の異なる2段階の粉挽き構造により粉砕されて製粉される粉挽装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-63255号公報
【特許文献2】特開2018-69136号公報
【特許文献3】特開平11-285648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の2段階の電動式粉挽装置では、粉砕部分が縦型と横型に分かれており、構造が複雑なため装置が大型化していた。また粉砕部分が横向きの臼により磨り潰す形式だと、臼の外周端側から粉体が排出される際、臼内において一定量の粉体が残留し、材料の無駄が生じていた。また、既存の2段階式の粉挽装置は構造が複雑となることが多く、装置を分解して前記残留物を除去することが困難であった。
【0007】
特許文献1には、水平部分の第1グラインダーにて荒擦りを行い、縦方向の第2グラインダーにて細擦りを行う機構が記載されている。この機構では粉砕化されたものは、そのまま下部に落とす構造となっており、粉砕物を集めるための容器がミル構造の下部に必要となるため、製品が大きくなってしまうという欠点がある。また、第1グラインダーと第2グラインダーが別の機構になっているため装置が複雑化しやすい。
【0008】
特許文献2には、粗挽き部が螺旋形状のスクリュー部と円筒状の粉砕ドラムで構成され、精細粉挽き部が臼構造で構成されている粉挽機が記載されている。この粉挽機では、粗挽部、精細粉挽部の材質として、天然石やセラミックなどが用いられているため、耐衝撃性などに懸念があるうえ、排出口に粉砕粉が溜まり動作不良に陥りやすい。また、材料粉砕時の発熱によりスクリューと粉砕ドラムの温度が上昇し、非粉砕物が熱により変質しやすくなるという懸念がある。また特許文献2には、粗挽き部における螺旋形状のスクリュー部と円筒状の粉砕ドラムや精細粉挽き部が臼構造における凹凸構造やその機構に関しては、特に記載がない。
【0009】
特許文献3には、セラミックや合成樹脂で形成された第1粉砕部で粉末化したあと、セラミック製の臼でさらに微粉末にする第2粉砕部で構成して、粉末化を行う装置が記載されている。しかし、粉末化する第1粉砕部と微粉末にする第2粉砕部の2つの部位から構成されており、製品サイズが大きく、さらに部品点数が多いなどの問題がある。
【0010】
本発明の目的は、被粉砕物の粗挽き及び細挽きの工程を、材料のロスなく行うことができ、かつ分解清掃が可能な単純構造を有する粉挽装置を提供することである。
【0011】
さらに、粉挽きの過程で発生する熱により、非粉砕物が変質することを効果的に防止しつつ、精度よく粉体を生成させる粉挽装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態の一態様の粉挽装置は、被粉砕物を導入する導入部と、導入された被粉砕物を粉砕する粗挽部と前記粗挽部で粉砕された粉砕物を磨り潰し更に粒径の小さい粉体を生成する細挽部とを有する粉挽部と、生成された粉体を排出する排出部と、を含み、前記粉挽部は、内周面に凹凸を有するドラムと、外周面に凹凸を有し前記ドラムに回転可能に収容される回転体と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
上記態様によれば、被粉砕物の粗挽き及び細挽きの工程を材料のロスなく行うことができ、装置の分解清掃を簡便に行え、装置を清潔に保つことができる。また、粉挽き時の発熱による非粉砕物の変質を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態の一態様の粉挽装置の外観を表す正面図である。
【
図2】本発明の実施形態の一態様の粉挽装置の内部構造を表す模式図である
【
図3】本発明の実施形態の一態様の粉挽装置における粉挽部の拡大断面図である
【
図4A】本発明の実施形態の一態様の粉挽装置における回転体の外観を表す正面図である。
【
図4B】本発明の実施形態の一態様の粉挽装置における回転体の外観を表す上方からの斜視図である。
【
図4C】本発明の実施形態の一態様の粉挽装置における回転体の断面図である。
【
図5A】本発明の実施形態の一態様の粉挽装置におけるドラムの外観を表す正面図である。
【
図5B】本発明の実施形態の一態様の粉挽装置におけるドラムの断面図である。
【
図6A】本発明の実施形態の一態様の粉挽装置における排出部の下方からの斜視図である。
【
図6B】本発明の実施形態の一態様の粉挽装置における排出部の拡大図である。
【
図6C】本発明の実施形態の一態様の粉挽装置における排出部の下面図である。
【
図7】本発明の実施形態の一態様の粉挽装置における駆動部、回転体及びドラム表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の粉挽装置に係る一態様の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同じ要素には同じ符号を付して、説明が重複する場合にはその説明を省略する場合がある。また、図面においては、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示している。
【0016】
本明細書において、「上」または「上方」と記載されている場合、特に断りの無い限り、ある構造体の上に他の構造体が直接接して配置される場合と、ある構造体の上に別の構造体を介して他の構造体が配置される場合と、の両方を含む。「下」または「下方」と記載されている場合も同様である。
【0017】
また、本明細書において、本発明の粉挽装置を水平な面に設置した場合に、鉛直上向方向又は鉛直上向きに近い方向を「上」又は「上方」とし、「下」又は「下方」とは、「上」又は「上方」の反対方向をいう。
【0018】
<装置本体外観>
図1は本発明の実施形態の一態様の粉挽装置1の外観を表す正面図である。
図1に示す粉挽装置1の外観は、粉挽装置本体100、投入部104、粉体取出部108を有する。
【0019】
粉挽装置本体100は粉挽装置1の主要機能を備え、粉砕される茶葉や穀物(以下、本明細書中では被粉砕物という)を内部で粉砕し、さらに粉体化する部位である。
【0020】
投入部104は被粉砕物を本体へ導入する部位である。
図1では粉挽装置本体100の上部に位置するが、特にその位置は限定されるものではなく、粉挽装置本体100の側面などに位置してもよい。
【0021】
粉体取出部108は、粉体化された被粉砕物が粉挽装置本体100から取り出される部位である。
図1では取手付きのカップ形状(
図2参照)となっているが、その態様は特に限定されるものではなく、単に穴が開いているだけでもよい。
また、
図1では粉体取出部108は粉挽装置本体100の側面に設けられているが、その設置位置は限定されるものではなく、例えば粉挽装置本体100下部に設置されてもよい。
【0022】
<装置本体>
図2は
図1におけるA-A線における断面図であり、本発明の実施形態の一態様の粉挽装置1の内部構造を表す模式図である。
粉挽装置1は、その内部構造において、主に投入部104、粉挽部210、駆動部230、粉体取出部108により構成される。
【0023】
粉挽装置本体100は、通常は筐体102により覆われている。筐体の材料は特に限定されるものではなく、例えば樹脂、プラスチック、金属、木材又はセラミック、或いはその組み合わせにより構成される。
【0024】
投入部104は、前述の通り粉挽装置本体100の上部に位置し、被粉砕物を下方部にある粉挽部210へ送る部位である、投入部104には所定の径を有する投入口105が設けられており、この穴を通過できる大きさの被粉砕物のみが粉挽部210へ入ることができる。このように粉挽部210へ入る被粉砕物の大きさを制限することにより、粉挽部210が詰まるなどの不具合を防止することができる。
投入口105の口径は被粉砕物の大きさや硬さなどにより適宜設定することができ、可変式としてもよい。
【0025】
<粉挽部>
粉挽部210は本発明の粉挽装置1の主要部分であり、被粉砕物を粉砕し、さらに磨り潰すことにより粉体化する部位である。
粉挽部210は、大きく分けて被粉砕物が粗挽きされる粗挽部212、粗挽きされた被粉砕物が更に磨り潰されることで粉体化される細挽部214、最終的に生成された粉体が集められ、粉体取り出し部108へ送られる排出部216、被粉砕物が粗挽部212に導入される場所である導入部218により構成される。
【0026】
図3は粉挽部210の拡大断面図である。粉挽部210は主要部材として回転体222及び回転体222を内部に収容するドラム224により構成される。粉挽部210における粗挽部212及び細挽部214は、1つの回転体222及び1つのドラム224のセットによって構成される。すなわち、粉挽部210では、1つの回転体222と1つのドラム224のみを用いて粗挽工程と細挽工程を並行して行うこととなる。
【0027】
図3においては、回転体222は略円錐台形状であり、下に行くほど断面の半径が小さくなるような形状であることができる。ドラム224は、回転体222の外周面(円錐台形状の側面)とドラム224の内周面との間に一定の隙間を形成しつつ回転体を収容できるように形状を調整されている。例えば、上部よりも下部の方が断面積の半径が小さい筒型形状を有してもよい。回転体222は後述の回転軸226回りに回転可能な状態を保持しつつ、ドラム224に収容される。
【0028】
粗挽部212及び細挽部214の位置関係は、粗挽部212が細挽部214の上方となるように構成される。すなわち、粗挽部212から細挽部214への被粉砕物の進行方向は、上方から下方に向う構造とすることができる。ここで、上方から下方へ向かうとは、完全な鉛直上方から下方に向かう方向に限られず、斜め上方から斜め下方に向かうものであってもよい。被粉砕物の進行方向を重力の方向に近づけることにより、粉砕工程における被粉砕物の搬送に要する部材を節約し装置の構造を単純化するとともに、装置内に残留する材料のロスを低減させることができる。
【0029】
回転体222の外周面及びドラム224の内周面には、被粉砕物を粉砕するための凹凸が形成されている。回転体222の外周面とドラム224の内周面との間に形成される隙間は、両部材の凹凸どうしが接触しないよう、間隔を調整されている。これら凹凸の形状については後述する。
【0030】
回転体222の中心部には回転軸226が設けられる。回転体222は、後述する駆動部230により発生したトルクが回転軸226へ伝達されることにより、回転軸226回りに回転することができる。その際、回転体222とドラム224との隙間に被粉砕物が入ると、回転体222外周面上の凹凸とドラム224内周面上の凹凸との間に挟まれて粉砕される。前記隙間の幅以下に粉砕された被粉砕物は粉挽部210において下側に落ちる。しかし、回転体222とドラム224との隙間は下方に行くほど狭くなっており、被粉砕物はさらに狭くなった隙間で落下を停止し、その隙間を通過できるように更に細かく粉砕されることとなる。この工程を繰り返すことにより、最終的に被粉砕物は粉体化され、ドラム224の最下方の排出部216に送られる。
【0031】
<回転体>
回転体222について詳しく説明する。
図4Aは本発明の実施形態の一態様の回転体222の正面図であり、
図4Bは上方から見た斜視図である。回転体222はその外周面に連続的な螺旋形状の凹凸が形成された凹凸部402を有する。凹凸部402における凹部と凸部との高低差は、回転体222の下部に行くほど小さくなる。そして回転体222の下部では凹凸はほとんど無くなる。
【0032】
回転体222の凹凸部402に形成された螺旋状の凹凸は、回転体222が回転する方向と反対方向に対し、下向き斜めの螺旋形状となっている。回転体222の回転方向と凹凸の向きとをこのような関係とすることにより、被粉砕物は凹凸部402の凹部内を回転方向に流れながら(斜め上方向に)進もうとする。そして後述のドラム224内周面の凸形状との間に挟まれることで粉砕され、さらに粒径が小さくなった被粉砕物は、隙間の下方に進む。
【0033】
回転体222は、前述の投入部104、粗挽部212、細挽部214及び排出部216の機能の一端を担っている。特に回転体222の外周面における凹凸部402は、粉挽部210と細挽部220との隙間における内側の凹凸として機能し、この部分で被粉砕物が粉砕され、その後、粉体化される。
【0034】
回転体222の上面406は回転軸中心から円周方向に向かって傾斜する曲面が設けられている。投入口105を通って落下した被粉砕物は、いったんこの曲面上に堆積される。堆積された被粉砕物は、回転体222の回転とともに上面406の傾斜に沿って円周方向に移動する。
【0035】
回転体222の上面406における周部分の一部には若干の窪みにより構成される導入口408が形成されている。導入口408は凹凸部402の凹部へと通じており、導入口408へ通じる凹部の幅は他の凹部よりも広くなっている。被粉砕物は、回転体222が回転することにより上面406から導入口408へ入り、凹凸部402の凹部へ進み、粗挽部212へ進むことができる。
【0036】
上面406に堆積された被粉砕物は、粉砕前は体積が大きいことから前記導入口408以外の隙間から粗挽部212へ入ることができない。したがって導入口408の大きさ及び形状は、粉挽工程における粉体生成のスピードなどに影響する要素となる。
【0037】
回転体222の上面406には、回転体の上面406に堆積した被粉砕物が一つの場所に留まることを防止するため、誘導部410として突起を設け堆積された被粉砕物を攪拌し、被粉砕物は1つの場所で留まらないようにすることができる。
【0038】
図4Cは、回転体222の断面図である。回転体222の中心には回転軸226が設けられている。回転軸226の最下部には接合部414が設けられ、接合部414を介して駆動部230と接続されることができる。これにより回転体222に駆動部230で発生したトルクが伝達され、回転軸226回りに回転させることができるようになる。
【0039】
図4Cにおいては、回転体222の凹凸部402のうち、粗挽部212と細挽部214に配置される部分ごとに異なる材質とすることができる(402a)。例えば
図4Cでは、前記凹凸部412のうち細挽部220に配置される領域を外付けの別部材としている。これら部材の選定については、非粉体物の硬さなどに応じて適宜選定することができる。凹凸部の部材の詳細については後述する。
【0040】
回転体222に形成される凹凸部402の断面形状は特に限定されるものではなく、被粉砕物の形状や硬さにより適宜選択することができる。凹凸部402の断面形状は、例えば、略台形、略長方形、略半円系などの形状であることができる。
【0041】
回転体222に形成される凹凸部402の断面形状において、凹部と凸部の幅は被粉砕物の形状や大きさに応じて適宜選択することができる。ここで、凹部よりも凸部の割合が大きい方が、凸部での粉砕面積が増えるため、粉砕物の粉砕効率が上がる。そのため、凸部の割合が大きい方が、より好ましい。
【0042】
回転体222の最下部は、外周面に凹凸部402が形成されておらず、断面の径が若干小さく形成され、ドラム224の内壁とともに後述の排出部216となる空間を形成している。また、回転体222の外周面に排出板442が複数枚形成されている。
【0043】
<ドラム>
次にドラム224について説明する。
図5Aはドラム224の外観の側面図である。
図5Aにおいてドラム224は下方が狭くなる筒型形状をしているが、その形状は限定されるものではない。例えばドラム224は円筒形状でもよい。
【0044】
ドラム224の下方には排出口502が設けられている。粉挽工程により生成された粉体であって、前述の排出部216から排出されたものが、排出口502から排出されることができる。
【0045】
図5Bは、ドラム224のA-A面で切断した断面図である。ドラム224の内周面には上下方向に略直線形状の凹凸部504が形成されている。前述の回転体222と同様に、ドラム224の凹凸部504における凹部と凸部の高低差は、ドラム224の下部に行くほど小さくなる。
【0046】
図5Bにおいては、回転体222の凹凸部402と同様に、ドラム224の凹凸部504のうち、粗挽部212と細挽部214に配置される部分ごとに異なる材質とすることができる。これら部材の選定については、非粉体物の硬さなどに応じて適宜選定することができる。
【0047】
図5Bでは粗挽部212と細挽部214に配置される部分ごとに別部材とし(504a)、凹凸部504も粗挽部212と細挽部214との間でいったん断裂している。その際、粗挽部212と細挽部214とで、凹凸部504の凸構造の位置を鉛直下方向に向かって左右(円周方向)にずらしてもよい。例えば、
図5Bに記載されたように、上方向から鉛直下向きにドラムの凹凸部504を見た場合に、粗挽部212で上下方向に形成されている凸構造の延長線上に、細挽部214では凹構造が上下方向に形成されている態様でもよい。
【0048】
このように、粗挽部212と細挽部214とで鉛直方向の凸構造の位置をずらすことにより、被粉砕物が回転方向に流れるのを阻害し、粉挽工程の精度を向上させることができる。
【0049】
さらに、粗挽部212と細挽部214とで、凹凸部504の凸構造の位置を、上述のような断裂部分を設けずに、鉛直方向に向かってずらすなどの態様により、非連続的に形成してもよい。
他方、凹凸部504は、粗挽部212と細挽部214とで凸構造を断裂させずに、連続的に形成させてもよい。
【0050】
さらに、粗挽部212と細挽部214とで、凹凸部504の凸構造の位置をずらすだけでなく、形成される凹凸の形状を変えてしまってもよい。例えば、粗挽部212では上方向から鉛直下向きにドラムの凹凸部504を見た場合に上下方向の直線形状であって、細挽部214では斜め方向の直線形状に形成されていてもよい。
【0051】
ドラム224に形成される凹凸部504の断面形状は特に限定されるものではなく、被粉砕物の形状や硬さにより適宜選択することができる。凹凸部504の断面形状は例えば、略台形、略長方形、略半円系などの形状であることができる。また、ドラム224に形成される凹凸部402の断面形状と、同一であっても異なっていてもよい。
【0052】
<粉挽部の動作>
図3に戻り、粉挽部210の動作について説明する。
図3において、投入口105を通過した被粉砕物は、回転体222の上面406に堆積され、その後、回転体222上の導入口408から回転体222外周面に形成された凹凸部402の凹部へと進む。
【0053】
ここで、回転体222が回転軸226回りに回転する場合、ドラム224の内周面には上下方向に凹凸部504が形成されているので、導入口408が凹凸部504の凹部と重なるタイミングが回転体222とドラム224との隙間が最も広くなる。したがって、前記開口面積が広くなったタイミングで、被粉砕物の多くが導入口408へ入っていく。
【0054】
導入口408から入った被粉砕物は、回転体222の凹凸部402の凹部内を、螺旋の進行方向に沿って進もうとする。ドラム224の凹凸部504の凸部を通過する際に、回転体222とドラム224との隙間が小さくなるため、体積の大きい被粉砕物は通過できなくなる。その際、回転体222が回転を続けることにより前記被粉砕物は凹凸部402と凹凸部504との間で粉砕され、小さくなっていく。
【0055】
回転体222の凹凸部402の凹部と凸部との高低差は下方に行くほど小さくなり、ドラム224側の凹凸部504の凹部と凸部との高低差も下方に行くほど小さくなる。さらに回転体222外周面とドラム224内周面との隙間も小さくなっていくため、隙間に入り込んだ被粉砕物は凹凸部402及び凹凸部504との隙間で粉砕を繰り返し、ますます粒径が小さくなっていく。
【0056】
粗挽部212では被粉砕物に対して回転体222からの強い力がかかるため、粉砕時に発熱することがある。そして被粉砕物の種類によっては、この粉砕時の熱の影響で変質してしまうことがある。粗挽部212内において回転体222の凹凸部402及びドラム224の凹凸部504が金属などであると、凹凸部402及び凹凸部504自体の温度が急激に上昇する。温度が高くなった凹凸部と被粉砕物が接触した場合、例えば、被粉砕物が茶葉などの場合、ペースト状に変質してしまうことがある。
【0057】
本発明者はこの問題を解決するために、粗挽部212において、凹凸部402及び凹凸部504を樹脂などの低熱伝導性材料により構成することで、被粉砕物に対して高熱の部材を接触させることを防ぐことができ、被粉砕物の熱による変質がほとんど起こらないことを見出した。
【0058】
粗挽部212において、凹凸部402及び凹凸部504として使用できる低熱伝導性材料としては、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂などの樹脂、低熱伝導性セラミック、木材、ガラスなどを使用することができる。回転体に複雑な凹凸構造の形成させることを考慮すると樹脂であることが好ましい。
【0059】
回転体222の凹凸部402を構成する材料は、ドラム224の凹凸部504を構成する材料と、同じであっても異なっていてもよい。ただし、回転体222の凹凸部402を構成する材料と、ドラム224の凹凸部504を構成する材料とが異なると、非粉砕物の種類によっては両凹凸部の摩耗等が異なることがあり、凹凸が片減りすることがある。したがって回転体222の凹凸部402を構成する材料は、ドラム224の凹凸部504を構成する材料と同じであることが好ましい。
【0060】
粗挽部212において、凹凸部402及び凹凸部504に熱を蓄積させないようにするため、凹凸部402及び凹凸部504を図示しない冷却機構を併用し、被粉砕物の熱による変質を防いでもよい。
【0061】
細挽部214は粗挽きされた被粉砕物をさらに細かい粒子に粉砕する部位である。従来、臼などによる粉体生成には、被粉砕物を十分に小さくし、かつ発熱を抑えるために時間をかけて磨り潰すことができるよう、所謂横型の臼が使用されてきた。しかし、前述の通り横型の臼は残留物のロスが発生しやすく、装置が複雑化するという欠点がある。
【0062】
本発明の実施形態の一態様においては、粗挽部212のみならず細挽部214も縦型の一体構造とした。これにより、被粉砕物の残留物のロスを抑えるとともに装置自体の構造も簡略化でき、分解清掃などが容易に行うことができる。
【0063】
細挽部214は、粗挽部212と同様に、回転体222の凹凸部402とドラム224の凹凸部504との間で形成される隙間で被粉砕物を粉体化する。凹凸部402の螺旋形状と凹凸部504の形状は粗挽部212から細挽部214に至るまで連続的な形状で形成されていてもよいし、いずれか一方又は両方が粗挽部とは異なる形状としてもよい。なお、装置構造の単純化と、被粉砕物に対する負荷の低減の観点から、回転体側の凹凸部402の螺旋形状は粗挽部212から細挽部214に至るまで連続的な形状で形成されてもよい。他方、上述のとおりドラム側の凹凸部504は、粗挽部212と細挽部214とでは非連続的に形成されることが好ましい。
【0064】
細挽部214では、凹凸部402と凹凸部504双方において、粗挽部212に比べ凹部と凸部との高低差が小さくなるよう形成されている。粗挽部212では被粉砕物が凹凸部402と凹凸部504の凹凸に引っ掛かることにより砕かれていたのに対し、細挽部214では回転体222の外周面とドラム224の内周面との隙間がほとんどなくなっているので、その僅かな隙間における小さな凹凸により、被粉砕物が磨り潰され粉体化される。
【0065】
また、前述のように粗挽部212の凹凸部402において樹脂などの低熱伝導性材料を用いて形成されている場合、細挽部214に入っていく段階では被粉砕物の熱的な変質が十分に抑えられている。したがって、細挽部214の凹凸部402と凹凸部504を構成する材料は、必ずしも前述の低熱伝導性材料を使用しなくてもよい。例えば、硬質な材料、例えば、ステンレス、真鍮、鉄、アルミニウムなどの金属、セラミック材料、花崗岩などの石材を使用してもよい。
【0066】
細挽部214の凹凸部402と凹凸部504とを、粗挽部212と異なる材料とする場合は、例えば、回転体222においては樹脂部分と樹脂の内部の金属部分を一体成形し、その後、細挽部214の金属を圧入するなどして作製することができる。また、ドラム224においては樹脂部分と金属部分を一体成形して、作製することができる。
【0067】
粗挽部212及び細挽部214における凹凸部402と凹凸部504における隙間の管理は、本発明の極めて重要な要素である。粗挽部212における隙間は、未粉砕の比較的大きな被粉砕物を砕かなければならないため、凹凸部402と凹凸部504の隙間の減少幅は比較的大きくなり、細挽部214はある程度粉砕されている粉砕物を磨り潰すことにより粉体化するため、隙間の幅の減少幅は比較的小さくなる。従って、粗挽部212における進行方向に対する隙間の減少率は、粗挽部212の隙間の減少率よりも大きくすることができる。
【0068】
回転体222の凹凸部402とドラム224の凹凸部504の隙間は、粗挽部212では両凸部間の隙間を0.05~1mm、好ましくは0.1~0.4mm、両凹部間の隙間を1.0~5.0.mm、好ましくは1.2~3.0mmで管理し、細挽部214では、両凸部間の隙間を0.05~0.5mm、好ましくは0.1~0.3mm、両凹部間の隙間を0.2~1.5mm、好ましくは0.3~1.1mmとなるように調整する。
【0069】
回転体222の凹凸部402とドラム224の凹凸部504の隙間の調整は、ドラム224に対する回転体222の高さを調整することによって、調整することができる。
【0070】
(排出部)
排出部216について説明する。細挽部214の下部には、排出部216が設けられている。排出部は細挽部214の下部において、回転体222とドラム224との隙間に生じた空間に設けられる。
【0071】
図6Aは
図4Aの下方から見た斜視図であり、本発明の実施形態の一態様における排出部216を示す。回転体222の下部には、略円形の枠構造を有する排出板取付枠606を有する。
図6Aにおいては、排出板取付枠606は回転体222とは別部材として取り付けられている。排出板取付枠606にはL字形状の羽状の排出板442が形成される。
図6Aから分かるように、排出板取付枠606は、回転体222が回転軸226回りに回転すると、その動きに伴い回転する。
【0072】
図6Bは
図3の領域Eの拡大図である。
図6Bにおいて、排出板442は排出部216の外枠を形成するドラム224の内周面及び底面に対し、隙間が小さくなるような形状に調整される。排出板442をかかる形状にすることにより、排出部216の壁に付着した粉体をロスなく掻き出し、排出口へ誘導することができる。
【0073】
図6Cは
図3のB-B線の断面図であり、排出部216を装置の下方から見た模式図である。
図6Cでは回転軸226を中心に6本の排出板442が、60度ずつ離れて均等に設置されている。
【0074】
なお、
図6Cでは排出板442の数は6本になっているが、これに限定されない。排出板442の数は、被粉砕物の種類、粉挽の速度、装置の大きさなどに応じ適宜変更することができる。
【0075】
細挽部214から隙間602を通過した粉体は、細挽部214の下部に位置し排出部216内の粉体貯留部604に一時的に貯められる。複数の回転体222は回転体222の回転とともに回転軸226回りに回転すると、排出板442の形状は側面視で粉体貯留部604の外枠形状(ドラム224の内周面及び底面)とに一致するように形成されているため、粉体貯留部604に貯留した粉体の大部分を掻き出すことができる。粉体を掻き出しつつ回転する排出板442が排出口502に到達すると、粉体は排出口502から装置外部に排出されることができる。
【0076】
排出口502の設置位置は特に限定されるものではないが、ドラム224の側面に設置されることが好ましい。排出口502をドラム224の側面側に設置することで、後述の駆動部230を構成するモータ702を装置本体100の下部に設けることができ、装置をコンパクトにすることができる。また、排出部216に排出板442が設けられていることにより、排出口502が側面側にあっても、粉体の大部分を掻き出すことができる。
【0077】
この排出部216における排出板取付枠606及び排出板442は、回転体222とは別部品とすることができ、エラストマーやゴム素材などの弾性体により構成されてもよい。弾性体としては、例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂を使用することができる。排出板442を弾性体にすることにより、粉体貯留部604の外枠形状(ドラム224の内周面及び底面)との密着性を向上することができ、装置外部に粉体を排出する際のロスを低減できる。
【0078】
排出板取付枠606及び排出板442は、一体成型された同一の部材でもよく、別々の部材であって、排出板取付枠606に別途に排出板442を取り付けられる構造であってもよい。
【0079】
従来の臼の多くは横型の平面形状の為、ある程度の被粉砕物の投入量がないと粉砕物を押し出すことが出来なかった。この本発明の一実施形態における排出部216では、回転体222の回転動作を利用しつつ、被粉砕物の投入量が少なくても粉砕物をロスなく排出することができる。
【0080】
(駆動部)
図7は本発明の駆動部230と回転体222及びドラム224との関係を表す模式図である。本発明の粉挽装置1はモータを駆動源とし、電動で粉挽工程を行うことができる。本発明の実施形態の一態様においては、回転体222の下部に駆動源となるモータ702を有する。モータの上方から突出したモータ回転軸704はドラム224底部を貫通し、回転体222の接合部414に嵌めこまれる。これにより、回転体222とモータ702が連結される。かかる状態でモータ回転軸704を回転させることにより、回転体222は回転軸226回りに、所定の速度で回転することができる。
【0081】
駆動部230には、図示しない制御部が設けられている。制御部は回転体222の回転の開始及び停止、回転速度、回転方向、回転時間などを制御する部位であり、粉挽装置1の操作のためスイッチや操作パネルが設けられていても良い。制御部は粉挽装置本体100の任意の場所に設置することができる。
【0082】
回転体222を回転させた時に、例えば硬い粉砕物により回転体222を回転させるためのモータに負荷がかかると、モータ電流値が上昇する。そのモータに流れる電流を制御部内の測定機構で監視することで、モータの負荷状態をモニタリングすることができる。モータにおける電流値が一定以上になると、モータ過負荷状態と判断して、モータの回転を逆方向に回転させることもできる。すなわち、回転体222を逆回転させ、粉挽装置1内の詰まりを解消させることができる。
【0083】
駆動部230は電動式に限られるものではなく、手動で回転軸を回す形式であってもよい。
【0084】
回転体222とモータ回転軸704は、脱着可能であることが好ましい。回転体222が粉挽装置本体100から離脱可能とすることにより、ドラム224も本体から離脱できることとなるため、分解清掃が可能となる。
【0085】
本明細書に記載された一実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除、も
しくは設計変更を行ったもの、または工程の追加、省略、もしくは条件変更を行ったもの
も、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0086】
また、本明細書に記載された一実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる
他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において容易
に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0087】
1:粉挽装置、100:粉挽装置本体、104:投入部、105:投入口、108:粉体取出部、212:粗挽部、214:細挽部、216:排出部、218:導入部、222:回転体、224:ドラム、226:回転軸、230:駆動部、402:凹凸部、408:導入口、410:誘導部、414:接合部、442:排出板、502:排出口、504:凹凸部、602:隙間、604:粉体貯留部、606:排出板取付枠、702:モータ、704:モータ回転軸。