(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003620
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20240105BHJP
G03G 15/02 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/02 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102882
(22)【出願日】2022-06-27
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】金田 創運
(72)【発明者】
【氏名】水野 光二
【テーマコード(参考)】
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA34
2H200GA44
2H200GA47
2H200GA56
2H200HA12
2H200HA29
2H200HB03
2H200HB28
2H200PA05
2H200PA19
2H200PB17
2H200PB27
2H200PB28
2H270KA04
2H270LA18
2H270LA26
2H270LA28
2H270LD03
2H270MA01
2H270MA14
2H270MA41
2H270MB28
2H270MH03
2H270MH06
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】温度及び湿度の少なくとも一方の変化に応じたグリッド電圧を設定した上で現像バイアスを設定する濃度補正制御を実行し、印刷濃度を維持できる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】ASIC61は、温度湿度テーブルTB1、グリッド電流電圧テーブルTB2を用いて、温度湿度センサ54により検出した湿度が高くなるほどグリッド電圧GRID1~GRID4の設定値を小さく設定する(S3)。ASIC61は、設定値に応じたワイヤ電圧CHG,CHGKをワイヤ電圧生成回路70,70Kから供給した状態で(S7、S13)、搬送ベルト23にトナー像を形成する(S15)。ASIC61は、形成したトナー像の濃度を濃度センサ53で検出し、検出結果に基づいて印刷時の現像バイアスを設定する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、
帯電ワイヤ及びグリッドを有し、前記感光体を帯電させる帯電器と、
前記帯電ワイヤと接続され、前記帯電ワイヤにワイヤ電圧を印加する印加部と、
前記感光体に形成された静電潜像を現像しトナー像を形成する現像器と、
前記感光体に接するベルトと、
前記ベルトに形成された前記トナー像の濃度を検出する濃度センサと、
湿度を検出する湿度センサと、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記ベルトに前記トナー像を形成し、形成した前記トナー像の濃度を前記濃度センサで検出し、検出結果に基づいて印刷時に前記現像器に印加する現像バイアスを設定する濃度補正制御を実行し、
前記濃度補正制御において、前記湿度センサにより検出した湿度が高くなるほど前記グリッドに印加するグリッド電圧の設定値である設定電圧を小さく設定して前記印加部により前記ワイヤ電圧を印加し、前記ベルトに前記トナー像を形成する、画像形成装置。
【請求項2】
温度を検出する温度センサを備え、
前記制御部は、
前記濃度補正制御において、前記温度センサにより検出した温度が高くなるほど前記設定電圧を小さく設定する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記濃度補正制御において、前記湿度センサにより検出した湿度が高くなるほど前記グリッドに流れるグリッド電流の設定値である設定電流を小さく設定する、請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
温度を検出する温度センサを備え、
前記制御部は、
前記濃度補正制御において、前記温度センサにより検出した温度が高くなるほど前記グリッドに流れるグリッド電流の設定値である設定電流を小さく設定する、請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
温度を検出する温度センサを備え、
前記制御部は、
前記温度センサによる温度の検出を実行し、検出した温度と、前回の前記濃度補正制御が実行された際の温度との差が、第1温度範囲を超えた場合に前記濃度補正制御を実行する、請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記濃度補正制御において設定する前記グリッド電圧として、第2温度範囲ごとに前記設定電圧が設定されており、
前記第2温度範囲は、
前記第1温度範囲に比べて狭い範囲である、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記湿度センサによる湿度の検出を実行し、検出した湿度と、前回の前記濃度補正制御が実行された際の湿度との差が、第1湿度範囲を超えた場合に前記濃度補正制御を実行する、請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記濃度補正制御において設定する前記グリッド電圧として、第2湿度範囲ごとに前記設定電圧が設定されており、
前記第2湿度範囲は、
前記第1湿度範囲に比べて狭い範囲である、請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前回の前記濃度補正制御の実行から前記現像器の動作量が所定量を超えた場合に前記濃度補正制御を実行する、請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記現像器は、
トナーを収容する収容部を備え、
前記制御部は、
前記収容部が交換された場合に前記濃度補正制御を実行する、請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記感光体が交換された場合に前記濃度補正制御を実行する、請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項12】
インタフェースを備え、
前記制御部は、
前記インタフェースを介して前記濃度補正制御を実行する指示を受け付けた場合に前記濃度補正制御を実行する、請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項13】
複数の前記感光体と、
複数の前記感光体に対応する複数の前記帯電器と、
並列接続された複数の前記帯電ワイヤに前記ワイヤ電圧を印加する前記印加部と、
複数の前記グリッドに接続され、前記グリッド電圧を調整する調整回路と、
を備え、
前記制御部は、
複数の前記グリッドに流れるグリッド電流のうち、最小のグリッド電流が目標値になるように前記印加部により前記ワイヤ電圧を印加し、
最小のグリッド電流が流れる特定の前記帯電器の前記グリッド電圧が前記設定値になるように前記調整回路により調整する、請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記制御部は、
最小のグリッド電流が流れる特定の前記帯電器以外の前記帯電器の前記グリッド電圧が前記設定電圧より小さい値になるように前記調整回路により調整する、請求項13に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、スコロトロン型の帯電器を備える電子写真方式の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、帯電ワイヤとグリッドを持つスコロトロン型の帯電器を備える画像形成装置に係わる技術が種々提案されている。下記特許文献1には、温度及び湿度に基づいて帯電バイアス及び現像バイアスを制御する画像形成装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スコロトロン型の帯電器は、温湿度によって特性が変化するため、温湿度に応じたバイアスを設定する必要がある。しかしながら、適切な印刷濃度となる現像バイアスの値は、トナーの劣化状態等に応じても変化する。特許文献1の画像形成装置では、トナーの劣化状態等を考慮した現像バイアスの設定を実施していないため、印刷濃度を良好に維持できない虞があった。
【0005】
本願は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、温度及び湿度の少なくとも一方の変化に応じたグリッド電圧を設定した上で現像バイアスを設定する濃度補正制御を実行し、印刷濃度を維持できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本願は、感光体と、帯電ワイヤ及びグリッドを有し、前記感光体を帯電させる帯電器と、前記帯電ワイヤと接続され、前記帯電ワイヤにワイヤ電圧を印加する印加部と、前記感光体に形成された静電潜像を現像しトナー像を形成する現像器と、前記感光体に接するベルトと、前記ベルトに形成された前記トナー像の濃度を検出する濃度センサと、湿度を検出する湿度センサと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記ベルトに前記トナー像を形成し、形成した前記トナー像の濃度を前記濃度センサで検出し、検出結果に基づいて印刷時に前記現像器に印加する現像バイアスを設定する濃度補正制御を実行し、前記濃度補正制御において、前記湿度センサにより検出した湿度が高くなるほど前記グリッドに印加するグリッド電圧の設定値である設定電圧を小さく設定して前記印加部により前記ワイヤ電圧を印加し、前記ベルトに前記トナー像を形成する、画像形成装置を開示する。
【0007】
高湿環境下では、目標のグリッド電圧を得るのにより高いワイヤ電圧が必要となる傾向がある。ワイヤ電圧が高いと異常放電の発生が起こり易くなる。上記構成では、湿度センサで検出した湿度が高くなるほどグリッド電圧の設定電圧を小さく設定しワイヤ電圧を印加することで、ワイヤ電圧を小さくすることができる。湿度の上昇に対応してグリッド電圧を小さくした後で、トナー像を用いた濃度補正を実行し現像バイアスを設定できる。その結果、湿度の変化に応じたグリッド電圧を設定した上で現像バイアスを設定し、トナーの劣化等に応じた現像バイアスの補正(濃度補正)を実行し適切な印刷濃度を維持して印刷できる。
【0008】
また、画像形成装置は、温度を検出する温度センサを備え、前記制御部は、前記濃度補正制御において、前記温度センサにより検出した温度が高くなるほど前記設定電圧を小さく設定しても良い。
【0009】
低温環境下では感光体が帯電しにくくなる傾向があり、感光体の表面電位が小さくなることで、感光体において画像が形成されていない部分にトナーが付着して現像される、所謂カブリが発生し易くなる。カブリが発生することで印刷品質が低下する虞がある。このため、グリッド電圧を大きくして感光体の表面電位を大きくさせることが好ましい。上記構成では、温度センサで検出した温度が高くなるほど設定電圧を小さくしワイヤ電圧を印加する。換言すれば、低温環境下では設定電圧を相対的に大きくし、グリッド電圧を大きくすることができる。温度の低下に対応してグリッド電圧を大きくし、感光体の表面電位を大きくした後、トナー像を用いた濃度補正を実行し現像バイアスを設定できる。その結果、温度の変化に応じたグリッド電圧を設定した上で現像バイアスを設定し、トナーの劣化等に応じた現像バイアスの補正(濃度補正)を実行し適切な印刷濃度を維持して印刷できる。
【0010】
また、前記制御部は、前記濃度補正制御において、前記湿度センサにより検出した湿度が高くなるほど前記グリッドに流れるグリッド電流の設定値である設定電流を小さく設定しても良い。これにより、異常放電が発生し易い高湿環境下ではグリッド電流を小さくし、異常放電の発生を抑制できる。
【0011】
また、温度を検出する温度センサを備え、前記制御部は、前記濃度補正制御において、前記温度センサにより検出した温度が高くなるほど前記グリッドに流れるグリッド電流の設定値である設定電流を小さく設定しても良い。これにより、低温環境下ではグリッド電流を相対的に大きくし、感光体の表面電位を大きくした後、トナー像を用いた濃度補正を実行することで、現像バイアスを適切な値に設定できる。
【0012】
また、温度を検出する温度センサを備え、前記制御部は、前記温度センサによる温度の検出を実行し、検出した温度と、前回の前記濃度補正制御が実行された際の温度との差が、第1温度範囲を超えた場合に前記濃度補正制御を実行しても良い。温度が変化すると帯電及び現像の特性が変化する。これに対し、本構成では、温度が所定の第1温度範囲を超えた場合に濃度補正制御を実行することで、適切な印刷濃度を維持できる。
【0013】
また、前記濃度補正制御において設定する前記グリッド電圧として、第2温度範囲ごとに前記設定電圧が設定されており、前記第2温度範囲は、前記第1温度範囲に比べて狭い範囲でも良い。これにより、グリッド電圧の設定電圧は、第1温度範囲に比べて狭い第2温度範囲ごとに設定される。そして、第2温度範囲よりも大きい第1温度範囲を超えた温度変化が発生した場合のみ濃度補正制御を実行する。濃度補正制御が多頻度で実行されることを抑制できる。
【0014】
また、前記制御部は、前記湿度センサによる湿度の検出を実行し、検出した湿度と、前回の前記濃度補正制御が実行された際の湿度との差が、第1湿度範囲を超えた場合に前記濃度補正制御を実行しても良い。湿度が変化すると帯電および現像の特性が変化する。これに対し、本構成では、湿度が所定の第1湿度範囲を超えた場合に濃度補正制御を実行することで、適切な印刷濃度を維持できる。
【0015】
また、前記濃度補正制御において設定する前記グリッド電圧として、第2湿度範囲ごとに前記設定電圧が設定されており、前記第2湿度範囲は、前記第1湿度範囲に比べて狭い範囲でも良い。グリッド電圧の設定電圧は、第1湿度範囲に比べて狭い第2湿度範囲ごとに設定される。そして、第2湿度範囲よりも大きい第1湿度範囲を超えた湿度変化が発生した場合のみ濃度補正制御を実行できる。これにより、濃度補正制御が多頻度で実行されることを抑制できる。
【0016】
また、前記制御部は、前回の前記濃度補正制御の実行から前記現像器の動作量が所定量を超えた場合に前記濃度補正制御を実行しても良い。これにより、現像器の動作に伴いトナーが劣化して特性が変動した場合でも、濃度補正制御を適宜実行することで、適切な印刷濃度を維持できる。
【0017】
また、前記現像器は、トナーを収容する収容部を備え、前記制御部は、前記収容部が交換された場合に前記濃度補正制御を実行しても良い。トナーが交換されると帯電や現像の特性が変化するため、収容部が交換された場合に濃度補正制御を実行することで、適切な印刷濃度を維持できる。
【0018】
また、前記制御部は、前記感光体が交換された場合に前記濃度補正制御を実行しても良い。感光体が交換されると帯電や現像の特性が変化するため、感光体が交換された場合に濃度補正制御を実行することで、適切な印刷濃度を維持できる。
【0019】
また、インタフェースを備え、前記制御部は、前記インタフェースを介して前記濃度補正制御を実行する指示を受け付けた場合に前記濃度補正制御を実行しても良い。これにより、ユーザ等の指示に応じて濃度補正制御を適宜実施できる。
【0020】
また、複数の前記感光体と、複数の前記感光体に対応する複数の前記帯電器と、並列接続された複数の前記帯電ワイヤに前記ワイヤ電圧を印加する前記印加部と、複数の前記グリッドに接続され、前記グリッド電圧を調整する調整回路と、を備え、前記制御部は、複数の前記グリッドに流れるグリッド電流のうち、最小のグリッド電流が目標値になるように前記印加部により前記ワイヤ電圧を印加し、最小のグリッド電流が流れる特定の前記帯電器の前記グリッド電圧が前記設定値になるように前記調整回路により調整しても良い。これにより、最小のグリッド電流が目標値となるようにワイヤ電圧を大きくすることで、他の帯電器のグリッド電流も目標値まで確実に大きくすることができる。全ての感光体の表面電位を必要な電位までより確実に大きくすることができる。
【0021】
また、前記制御部は、最小のグリッド電流が流れる特定の前記帯電器以外の前記帯電器の前記グリッド電圧が前記設定電圧より小さい値になるように前記調整回路により調整しても良い。これにより、最小のグリッド電流が流れる特定の帯電器以外の帯電器によって感光体を帯電させる能力を、最小のグリッド電流が流れる特定の帯電器によって感光体を帯電させる能力と同程度にすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本願に係わる画像形成装置によれば、温度及び湿度の少なくとも一方の変化に応じたグリッド電圧を設定した上で現像バイアスを設定する濃度補正制御を実行し、印刷濃度を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本願の一実施形態に係るレーザプリンタの概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図1のレーザプリンタの高圧電源装置に係る概略的なブロック図である。
【
図3】
図1のレーザプリンタの黒色に対応する高圧電源装置に係る概略的なブロック図である。
【
図6】ASICが実行する濃度補正処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(プリンタの全体構成)
以下、本願の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本願の一実施形態に係るレーザプリンタ1の概略構成を示している。レーザプリンタ1は、例えば、電子写真方式によりシートPにカラー画像を形成するカラーレーザプリンタであり、4色のトナーを用いる所謂タンデム方式のレーザプリンタである。尚、記録媒体であるシートPは、印刷用紙やOHPシートが使用できる。また、以下の説明では、レーザプリンタ1を、単にプリンタ1という。また、
図1に示すように、同図の紙面右側をプリンタ1の前面側と規定し、紙面左側を後面側と規定する。さらに、
図1の紙面上側をプリンタ1の上側と規定し、紙面下側を下側と規定する。
【0025】
図1に示すように、プリンタ1は、略箱状の本体筐体2を備え、本体筐体2の内部に、給紙部10、画像形成部20等を収納している。給紙部10は、シートPを収容可能な給紙トレイ11及び各種ローラを有しており、各種ローラを駆動してシートPを画像形成部20に給紙する。また、給紙トレイ11は、本体筐体2の下部に対して着脱可能に構成されている。給紙部10から供給されたシートPは、
図1に示す搬送経路Rに沿って搬送される。本体筐体2の上面には、排出トレイ5が設けられている。排出トレイ5には、搬送経路Rに沿って搬送され画像を印刷されたシートPが積層状態で収納される。
【0026】
画像形成部20は、搬送ユニット21、4つのプロセスカートリッジ30C,30M,30Y,30K、露光部35、及び定着部50を有している。搬送ユニット21は、上下方向における給紙部10とプロセスカートリッジ30C等との間に設けられており、搬送ベルト23及び4つの転写ローラ25等を有している。搬送ベルト23は、ベルトを環状にして構成された無端ベルトであり、画像形成部20の後端側下方に位置する駆動ローラ27及び前端側下方に位置する従動ローラ29に巻き付けられている。搬送ベルト23の上側の面は、プロセスカートリッジ30C等の直下において略水平に延在しており、給紙部10より供給されたシートPの裏面と当接する。駆動ローラ27は、搬送ベルト23を所定方向に回転させる。また、搬送ベルト23は、各転写ローラ25に転写バイアスが印加されることにより負帯電し静電気力でシートPを上側の面に吸着させつつ、吸着したシートPを搬送経路Rに沿って排出トレイ5へ向かって搬送する。
【0027】
プロセスカートリッジ30C,30M,30Y,30Kの各々は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色に対応している。プロセスカートリッジ30C,30M,30Y,30Kの各々には、対応する色(C、M、Y、K)のトナーが収容されている。また、4つのプロセスカートリッジ30C,30M,30Y,30Kは、プリンタ1の前方から後方に向かって、プロセスカートリッジ30Y、30M、30C、30Kの順に設けられている。
【0028】
プロセスカートリッジ30Cは、ドラム形状の感光体31、帯電器41、及びトナーカートリッジ33等を有している。尚、他のプロセスカートリッジ30M,30Y,30Kの構成は、プロセスカートリッジ30Cの構成と、異なるトナー色のトナーが収容されていること以外は同様である。このため、以下の説明では、代表してプロセスカートリッジ30Cについて説明し、他のプロセスカートリッジ30M,30Y,30Kについての説明を適宜省略する。
【0029】
感光体31は、転写ローラ25の上方に位置し、上下方向において転写ローラ25との間に搬送ベルト23を挟んでいる。従って、搬送ベルト23は、感光体31に接する位置に設けられている。帯電器41は、例えば、帯電ワイヤ42及びグリッド43をシールドケース45に収容したスコロトロン型の帯電器である。帯電ワイヤ42は、金属、例えば、金メッキされたタングステン、又はタングステン単体で形成されている。シールドケース45は、感光体31の回転軸線方向に沿って長尺となる略角筒型に形成されている。シールドケース45の感光体31に面した部分には、開口が形成されている。グリッド43は、このシールドケース45の開口において、導電性の線材をメッシュ状に張設して構成されている。また、帯電ワイヤ42は、シールドケース45内において感光体31の回転軸線方向に沿って張設され、例えば、感光体31に対して後方側の上部の位置に間隔を隔てて配置されている。従って、グリッド43は、感光体31と帯電ワイヤ42との間に配置されている。
【0030】
帯電器41は、画像形成に際し、感光体31の表面を一様に正帯電させる。具体的には、帯電ワイヤ42及びグリッド43に電圧が印加されることで、帯電ワイヤ42と感光体31との間には、電場が形成されコロナ放電が発生する。帯電ワイヤ42とグリッド43との間に電場が形成される際、グリッド43には帯電ワイヤ42とは異なる電圧が印加されており、これにより電場の強さが制御され感光体31の帯電量が制御される。
【0031】
露光部35は、本体筐体2の内部の上方に設けられており、帯電された各感光体31の表面に画像データに基づく静電潜像を形成する。露光部35は、帯電器41によって一様に正帯電された感光体31を選択的に露光する。この露光により、感光体31の表面から電荷が選択的に除去され、感光体31の表面に静電潜像が形成される。尚、露光部35の露光手段は特に限定されないが、露光手段としてはLEDヘッドを用いた手段や、半導体レーザを用いた手段を採用できる。
【0032】
トナーカートリッジ33は、現像ローラ47と供給ローラ49を有する。トナーカートリッジ33は、例えば、収容されたトナーを、現像ローラ47と供給ローラ49の間で正極性に帯電させて、現像ローラ47の表面に担持させる。現像ローラ47には、画像形成の際に、現像バイアスが印加され表面にトナーを担持させる。現像ローラ47は、感光体31に形成された静電潜像と対向すると、静電潜像との間の電位差により静電潜像にトナーを供給する。これによって、感光体31の表面にトナー像が形成(現像)される。また、トナーカートリッジ33は、本体筐体2に対して着脱可能に構成され、交換が可能となっている。
【0033】
搬送ユニット21は、シートPを定着部50へ向けて搬送しつつ、転写ローラ25に転写バイアスを印加することで感光体31の表面に現像されたトナー像をシートPに転写させる。定着部50は、搬送ユニット21に比べて搬送経路Rの下流側に設けられている。定着部50は、加熱ローラ51と加圧ローラ52とを有している。加熱ローラ51は、例えば、ヒータ等の熱源を備え、シートPの画像形成面側に配設されており、搬送ベルト23等と同期して回転し、シートPに転写されたトナーを加熱しつつ、シートPを搬送する。加圧ローラ52は、加熱ローラ51との間にシートPを挟んで、シートPを加熱ローラ51側に押圧しながら従動回転する。これにより、定着部50は、シートPに転写されたトナーを加熱溶融させてシートPに定着させつつ、シートPを搬送経路Rに沿って搬送する。
【0034】
また、プリンタ1は、濃度センサ53を備えている。濃度センサ53は、搬送ベルト23上に形成された濃度補正のためのパッチを検出するセンサでる。濃度センサ53は、例えば、駆動ローラ27の後方の下方に配置され、搬送ベルト23と対向する位置に配置されている。濃度センサ53としては、例えば、LEDなどの発光素子と、フォトトランジスタなどの受光素子とを備えた光反射型のセンサを採用できる。プリンタ1のASIC(特定用途向けIC)61(
図3参照)は、濃度センサ53に接続されており、濃度センサ53の検出信号に基づいて、搬送ベルト23に形成されたパッチの濃度を検出する。換言すれば、ASIC61は、感光体31に形成されたテスト用の静電潜像にトナーが供給されることによって形成されるトナー像の濃度、即ちパッチの濃度を、搬送ベルト23を介して検出する。尚、搬送ベルト23に形成されたパッチは、例えば、濃度を検出さされた後に、図示しないベルトクリーナによって搬送ベルト23から除去される。
【0035】
また、プリンタ1は、温度湿度センサ54を備えている。温度湿度センサ54は、例えば、本体筐体2内であって、本体筐体2に設けられた吸気口55に近接する位置に配置されている。ASIC61(
図3参照)は、温度湿度センサ54に接続されており、温度湿度センサ54の検出信号に基づいて、本体筐体2内の温度及び湿度を検出する。尚、プリンタ1は、温度センサと湿度センサを、別々の位置に備える構成でも良い。また、プリンタ1は、複数の温度センサや複数の湿度センサを備え、複数の検出値の平均値等を用いる構成でも良い。また、プリンタ1は、温度センサ又は湿度センサの一方のセンサのみを備える構成でも良い。
【0036】
また、
図3に示すように、プリンタ1は、タッチパネル6とネットワークIF(インタフェースの略)7を備えている。タッチパネル6は、ユーザインタフェースであり、ユーザからの操作入力を受け付け、受け付けた操作入力に応じた信号をASIC61に出力する。また、タッチパネル6は、ASIC61の制御に基づいて表示内容を変更する。尚、プリンタ1が備えるユーザインタフェースは、タッチパネル6に限らず、例えば、LCDと操作スイッチを組み合わせたのでも良い。
【0037】
ネットワークIF7は、例えば、LANインタフェースであり、印刷指示を行なうPC等にLANケーブルを介して接続される。尚、ネットワークIF7は、LANインタフェースに限らず、無線LANやBluetooth等の無線通信を実行するネットワークIFでも良い。また、プリンタ1は、タッチパネル6及びネットワークIF7の少なくとも一方を備えない構成でも良い。
【0038】
(プリンタ1の電気的構成)
次に、
図2及び
図3を参照して、プリンタ1の本願に関連する電気的構成を説明する。
図2及び
図3は、プリンタ1に内蔵される高圧電源装置60の概略的なブロック図及び高圧電源装置60に関連する接続構成を示している。尚、以下の説明では、各構成要素について、色ごとに区別する場合は、各部の符号にY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の添え字、又は「1~4」などの添え字(例えば、グリッド電圧GRID1~GRID4など)を付し、区別しない場合は添え字を省略(例えば、グリッド電圧GRIDと表記)する。
【0039】
高圧電源装置60は、ASIC61、ASIC61に接続された高圧電源基板62、ROM63、及びRAM64を有している。ASIC61は、本願の制御部の一例であり、高圧電源基板62の制御の他に、プリンタ1全体を統括制御する。ROM63は、ASIC61が実行する各種の制御プログラム等を記憶する記憶装置である。本実施形態のROM63には、制御プログラムの一つとして、後述する
図6に示す濃度補正処理を実現するためのプログラムPGが保存されている。RAM64は、各種処理における一時データや印刷処理に用いる画像データ等を記憶する。尚、プログラムPG等を記憶する記憶装置は、ROMに限らず、フラッシュメモリ、HDD、SSD(Solid State Drive)などの他の記憶装置でも良い。
【0040】
また、ROM63には、温度湿度テーブルTB1、グリッド電流電圧テーブルTB2が記憶されている。
図4に示すように、温度湿度テーブルTB1は、温度t、湿度h、及びパラメータの識別番号であるパラメータ番号P1~P6が関連付けられたデータである。また、
図5に示すように、グリッド電流電圧テーブルTB2は、グリッド43に流れる電流であるグリッド電流、グリッド43に印加する電圧(バイアス)であるグリッド電圧、及びパラメータ番号P1~P6を関連付けたデータである。プリンタ1は、温度湿度テーブルTB1及びグリッド電流電圧テーブルTB2を用いてグリッド電流及びグリッド電圧を設定した上で、現像バイアスの設定、即ち、濃度補正を実行する。温度湿度テーブルTB1等を使用した制御の詳細については後述する。
【0041】
まず、YMC用の回路について説明する。高圧電源基板62は、YMC用の回路として、ワイヤ電圧生成回路70と、グリッド電流検出回路82Y,82M,82Cをそれぞれ備えるグリッド電圧調整回路81Y,81M,81Cを有している。ワイヤ電圧生成回路70には、電源線PLが接続されている。電源線PLには、YMC用の帯電器41Y,41M,41Cが並列に接続されている。ワイヤ電圧生成回路70は、電源線PLを介して各帯電ワイヤ42Y、42M、42Cにワイヤ電圧CHGを印加する。また、グリッド電圧調整回路81Y,81M,81C及びグリッド電流検出回路82Y,82M,82Cは、YMC用の帯電器41Y,41M,41Cの各々に対応して設けられる。
【0042】
ワイヤ電圧生成回路70は、例えば、PWM信号制御回路71、トランスドライブ回路72、昇圧回路73、及び出力電圧検出回路78を有している。ワイヤ電圧生成回路70は、各帯電器41Y~41Cの帯電ワイヤ42Y~42Cに印加するワイヤ電圧CHGを生成する。また、グリッド43に印加されるグリッド電圧GRID1~GRID3は、各グリッド電圧調整回路81Y~81Cによって調整される。ワイヤ電圧CHGは、例えば、約5.5kV~7kVである。また、グリッド電圧GRIDは、例えば、約700~800Vである。
【0043】
PWM信号制御回路71は、例えば、抵抗素子及びコンデンサ(図示略)を有し、ASIC61のポートPWM1から入力したPWM(Pulse Width Modulation;パルス幅変調)信号Sp1を平滑化し、平滑化したPWM信号Sp1をトランスドライブ回路72に出力する。トランスドライブ回路72は、例えば、PWM信号制御回路71から入力した平滑化後のPWM信号Sp1をドライブ用のトランジスタ(図示略)に供給し、昇圧回路73に発振電流を出力する。
【0044】
昇圧回路73のトランス74は、1次側巻線74a、2次側巻線74b、及び補助巻線74cを備えている。トランスドライブ回路72は、ドライブ用のトランジスタからトランス74の1次側巻線74aに発振電流を出力する。トランス74は、発振電流のデューティ比に応じて、2次側巻線74bから出力される出力電圧(ワイヤ電圧CHG)の電圧値を変更する。例えば、トランス74は、PWM信号Sp1のデューティ比が大きくなればなるほど電圧値の大きなワイヤ電圧CHGを生成する。2次側巻線74bには、整流ダイオード75、平滑コンデンサ76、及び出力抵抗77が接続されている。昇圧回路73は、トランス74の1次側巻線74aに発生する電圧を昇圧及び整流し、各帯電器41Y~41Cの帯電ワイヤ42Y~42Cにワイヤ電圧CHGとして印加する。
【0045】
また、出力電圧検出回路78は、トランス74の補助巻線74cと、ASIC61との間に接続されている。出力電圧検出回路78は、例えば、平滑回路及び分圧抵抗(図示略)を有している。出力電圧検出回路78は、ワイヤ電圧CHGの生成にともなって補助巻線74cに発生する出力電圧v1を検出する。出力電圧検出回路78は、出力電圧v1を平滑及び分圧して出力電圧検出信号Sv1としてASIC61のポートA/D1に供給する。
【0046】
また、グリッド電圧調整回路81の各々は、分圧回路83及び演算増幅器OP1を有している。尚、グリッド電圧調整回路81M,81Cの各々は、グリッド電圧調整回路81Yと同様の回路構成であるため、
図2においてその回路の一部の図示を省略している。また、以下の説明では、Y(イエロー)色に対応するグリッド電圧調整回路81Yについて説明し、他(M,C)のグリッド電圧調整回路81Y,81Cについての説明を適宜省略する。分圧回路83Yは、直列接続された2つの分圧抵抗R7,R8を有する。分圧抵抗R7,R8には、グリッド43Yに流れるグリッド電流Ig1の分流電流Id1が流れる。分圧回路83Yは、2つの分圧抵抗R7,R8の接続点からグリッド43Yに印加されるグリッド電圧GRID1に応じた検出電圧Vgr1を出力する。分圧回路83Yは、検出電圧Vgr1を、出力抵抗R6を介して分圧検出信号Sid1として演算増幅器OP1の非反転入力(+)に供給する。コンデンサC3は、分圧抵抗R8と並列に接続されることによって、RCフィルタを構成している。
【0047】
また、演算増幅器OP1の反転入力(-)には、出力抵抗R9を介してASIC61のポートPWM2が接続されている。出力抵抗R9の出力側は、コンデンサC4を介してGNDに接地されている。ASIC61は、ポートPWM2からPWM信号Spp1を供給し、出力抵抗R9を介して演算増幅器OP1にPWM信号Spp1を供給する。従って、ASIC61は、演算増幅器OP1の基準電圧等を変更可能に構成されている。
【0048】
演算増幅器OP1の出力端子には、分圧抵抗R4及びコンデンサC2を含む平滑回路が接続されている。分圧抵抗R4のグリッド43Y側(演算増幅器OP1の出力端子とは反対側)の接続点は、コンデンサC2を介してGNDに接地されている。また、分圧抵抗R4のグリッド43Y側の接続点には、グリッド電圧GRID1を定電圧化するためのトランジスタQ1のベースが接続されている。また、トランジスタQ1は、分圧抵抗R7とグリッド43Yとの間の接続点に接続された電圧制御ラインLn1に接続されている。トランジスタQ1は、例えば、NPNトランジスタであり、コレクタをグリッド43Y側の接続点(電圧制御ラインLn1)に接続され、エミッタをグリッド電流検出回路82Y(抵抗R3)に接続されている。尚、トランジスタQ1は、バイポーラトランジスタに限らず、例えば、FET(電界効果トランジスタ)でも良い。
【0049】
トランジスタQ1のベース電流は、演算増幅器OP1の出力によってその大きさが制御される。そして、トランジスタQ1のコレクタ抵抗の値は、ベース電流の大きさによって変化するので、トランジスタQ1は、可変抵抗として機能する。ここでいうコレクタ抵抗とは、コレクタ-エミッタ間の電圧をコレクタ電流で割った抵抗値である。例えば、ベース電流を大きくすることで抵抗値が下がり、反対にベース電流を小さくすることで、抵抗値が上がる。これにより、コレクタ・エミッタ間の電圧が変更される。
【0050】
演算増幅器OP1は、分圧回路83Yによって検出された検出電圧Vgr1(分圧検出信号Sid1)と、ASIC61から入力したPWM信号Spp1との差分に基づいてトランジスタQ1のベース電圧を変更させることで、グリッド電圧GRID1を変更する。従って、ASIC61は、PWM信号Spp1のデューティ比を変更することによって、グリッド電圧GRID1の電圧値を所定の目標電圧値(後述する設定値など)に変更することが可能となっている。グリッド43YはコンデンサC1を介してGNDに接地されている。
【0051】
また、電圧制御ラインLn1には、グリッド43Yを流れるグリッド電流Ig1に応じたライン電流Ir1を検出するグリッド電流検出回路82Yが接続されている。グリッド電流検出回路82Yの抵抗R3は、トランジスタQ1のエミッタとGNDとの間に接続されている。グリッド電流検出回路82Yは、抵抗R3の正側の端子電圧をライン電圧検出信号Sir1としてASIC61のポートA/D2に供給する。
【0052】
次に、K用の回路について説明する。
図3は、K専用に設けられたワイヤ電圧生成回路70Kの概略的なブロック図及びワイヤ電圧生成回路70Kに関連する接続構成を示している。
図3の構成は本来、
図2の構成に含まれるものであるが、それを便宜上別図にしたものであるので、
図3中、
図2の構成と同様の構成には、同一符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0053】
ワイヤ電圧生成回路70Kは、
図2中のワイヤ電圧生成回路70と同様の構成であるので、その構成の説明は省略する。ワイヤ電圧生成回路70Kには、電源線PLKが接続されている。電源線PLKには、帯電器41Kのみが接続されている。ワイヤ電圧生成回路70Kは、電源線PLKを介して帯電器41Kにワイヤ電圧CHGKを印加する。
【0054】
電圧制御ラインLn4には、抵抗R11を介して、グリッド43Kを流れるグリッド電流Ig4に応じたライン電流Ir4を検出するグリッド電流検出回路82Kが接続されている。抵抗R11は、グリッド電流検出回路82Kに含まれる抵抗R3とともに、ライン電流Ir4が流れることによって、グリッド電圧GRID4を生成する。グリッド電圧GRID4は、例えば、上記したグリッド電圧GRID1~GRID3と同様に約700~800Vである。また、ライン電流Ir4は、所望の目標値に一致させることができる。即ち、上記したライン電流Ir1~Ir3は、ライン電流Ir1~Ir3のうち、何れか1つのライン電流を所望の目標値に一致させることは可能であるが、全てのライン電流Ir1~Ir3を各目標値に一致させることは困難である。これは、上記したように、1つのワイヤ電圧生成回路70から複数の帯電器41にワイヤ電圧CHGを印加する構成としているため、各帯電ワイヤ42Y、42M、42Cの汚れの付着量が異なる場合には、各帯電ワイヤ42Y、42M、42Cと各グリッド43Y、43M、43Cとの間の抵抗が異なる値になるためである。このため、グリッド電圧調整回路81Y,81M,81Cをそれぞれ設けて、各グリッド電圧GRID1~GRID3の電圧値を調整するようにしている。これに対し、帯電器41Kは、他の帯電器41と並列に接続されておらず、専用のワイヤ電圧生成回路70Kと接続されている。このため、ASIC61は、ワイヤ電圧生成回路70Kを制御しグリッド電圧GRID4を変更することで、ライン電流Ir4を所望の目標値に一致させることができる。また、抵抗R11として所定の抵抗値のものを設けることで、所望のグリッド電圧GRID4を容易に得ることができる。従って、K用のグリッド電圧調整回路81をなくすことができる。また、K用のワイヤ電圧生成回路70Kを、YMCのワイヤ電圧生成回路70と別回路とすることで、モノクロ印刷の場合に、ワイヤ電圧生成回路70の出力を低下させて印刷を実行できる。
【0055】
ASIC61は、グリッド電流Ig4の電流値に基づいてワイヤ電圧生成回路70Kから供給するワイヤ電圧CHGKの電圧値を制御する。ASIC61は、グリッド電流検出回路82Kに含まれる抵抗R3の抵抗値と、ライン電圧検出信号Sir4の電圧値からライン電流Ir4(グリッド電流Ig4)を演算する。ASIC61は、演算したグリッド電流Ig4の電流値に基づいてワイヤ電圧生成回路70Kを制御し、グリッド電流Ig4の電流値を所望の目標電流値(後述する設定値)に一致させる。ASIC61は、ポートPWM5から出力するPWM信号Sp2のデューティ比を変更し、グリッド電流Ig4の電流値を所望の目標電流値に一致させる。これにより、グリッド電圧GRID4を所望の電圧値にすることができる。
【0056】
尚、上記した高圧電源装置60の構成は、一例である。高圧電源装置60は、帯電器41Y,41M,41C,41Kに1つのワイヤ電圧生成回路70を接続し、1つのワイヤ電圧生成回路70から4つの帯電ワイヤ42Y,42M,42C,42Kにワイヤ電圧CHGを供給する構成でも良い。また、高圧電源装置60は、各帯電ワイヤ42Y,42M,42C,42Kのそれぞれに対応してワイヤ電圧生成回路70を合計で4つ備える構成でも良い。
【0057】
(濃度補正処理)
次に、ASIC61が実行する濃度補正処理について、
図4~
図6を参照しつつ説明する。
図6は、ASIC61が実行する濃度補正処理のフローチャートを示している。ASIC61は、例えば、プリンタ1の電源が投入され、ROM63に記憶された制御プログラムを実行してシステムを起動した後、プログラムPGを実行することで
図6の処理を開始する。尚、
図6の処理を開始する条件は、上記したシステムを起動する条件に限らず、例えば、システムを起動した後に最初に印刷指示を受け付ける条件でも良い。また、以下の説明では、各処理の説明において、ステップを「S」と表記する。また、プログラムPGを実行するASIC61のことを単に装置名で記載する場合がある。例えば、「ASIC61は、所定条件を判断する」との記載は、「ASIC61は、プログラムPGを実行し、プログラムPGに基づいて所定条件を判断する」ことを意味している。
【0058】
図6に示すように、まず、ASIC61は、S1において、所定条件を満たしたか否かを判断する。所定条件は、濃度補正制御を実行する条件である。ASIC61は、所定条件を満たしたと判断するまでの間、S1で否定判断し(S1:NO)、S1の判断処理を繰り返し実行する。そして、ASIC61は、所定条件を満たしたと判断すると(S1:YES)、S3以降の濃度補正制御を実行する。ASIC61は、後述するように、S3以降の濃度補正制御を実行することで温湿度に応じたグリッド電流Ig及びグリッド電圧GRIDを設定する。ASIC61は、設定したグリッド電流Ig及びグリッド電圧GRIDでパッチを形成し、形成したパッチの濃度に応じた現像バイアスを設定する。ASIC61は、設定したグリッド電流Ig、グリッド電圧GRID、及び現像バイアスで、設定後に受信した印刷ジョブに基づく印刷等を実行することで、適切な濃度で印刷できる。
【0059】
S1の所定条件は、例えば、トナーカートリッジ33を新品のトナーカートリッジ33に交換する条件である。ASIC61は、例えば、トナーカートリッジ33に設けられたICの情報を読み取って、読み取ったICの情報の中に新品のトナーカートリッジ33であることを示す情報が含まれていた場合、S1で肯定判断する。ASIC61は、4色のトナーカートリッジ33のうち、少なくとも1つ(1色)のトナーカートリッジ33が新品のものに交換された場合、S3以降の濃度補正制御を実行する。
【0060】
S3において、ASIC61は、温湿度に基づいてグリッド電流Ig及びグリッド電圧GRIDの設定値(目標値)を決定する。ASIC61は、温度湿度センサ54の検出信号に基づいて、本体筐体2内の温度t及び湿度hを検出する。
図4に示すように、温度湿度テーブルTB1には、本体筐体2内の温度t、湿度h、及びパラメータの識別番号であるパラメータ番号P1~P6が関連付けられている。温度湿度テーブルTB1は、温度tの範囲として、t<10℃、10℃≦t<15℃、15℃≦t<20℃、20℃≦t<25℃、25℃≦t<30℃、30℃≦tの各温度範囲が設定され、各温度範囲にパラメータ番号P1~P6の何れかが設定されている。従って、温度湿度テーブルTB1は、10℃≦t<30℃の温度範囲において、5℃(本願の第2温度範囲の一例)ごとにパラメータ番号P1~P6が設定されている。
【0061】
また、温度湿度テーブルTB1は、湿度hの範囲として、0%≦h<10%、10%≦h<20%、20%≦h<30%、・・・・・70%≦h<80%、80%≦hの各湿度範囲が設定され、各湿度範囲にパラメータ番号P1~P6の何れかが設定されている。従って、温度湿度テーブルTB1は、0%≦h<80%の湿度範囲において、10%(本願の第2湿度範囲の一例)ごとにパラメータ番号P1~P6が設定されている。
【0062】
また、
図5に示すように、グリッド電流電圧テーブルTB2には、パラメータ番号P1~P6の各々に対応付けて、YMC用のグリッド電流Igの設定値(本願の設定電流の一例)、YMC用のグリッド電圧GRIDの設定値(本願の設定電圧の一例)、K用のグリッド電流Ig4の設定値(本願の設定電流の一例)、K用のグリッド電圧GRID4の設定値、がそれぞれ設定されている。尚、上記したように高圧電源基板62におけるK用の回路は、
図3に示すように、グリッド電圧調整回路81を備えていない。ASIC61は、PWM信号Sp2のデューティ比を変更し、ワイヤ電圧CHGKを変更することで、グリッド電流Ig4を
図5に示すK用のグリッド電流Ig4の設定値に一致させることができる。換言すれば、ASIC61は、グリッド電流Ig4及びグリッド電圧GRID4の制御において、グリッド電流Ig4の設定値のみを用いて制御を実行し、グリッド電圧GRID4の設定値を用いない。帯電器41Kのグリッド電圧GRID4の電圧値は、グリッド電流Ig4に応じて従動的に決定される。
図5に示すK用のグリッド電圧GRID4の設定値は、グリッド電流Ig4を設定値とした場合に発生する電圧値を概算した値であり、参考情報として記載している。このため、グリッド電流電圧テーブルTB2は、グリッド電圧GRID4のデータを備えなくとも良い。
【0063】
ASIC61は、S3において検出した温湿度に対応するパラメータ番号P1~P6を、温度湿度テーブルTB1から検索して決定する。そして、ASIC61は、決定したパラメータ番号P1~P6に対応するグリッド電流Ig及びグリッド電圧GRIDを、グリッド電流電圧テーブルTB2から検索し設定値として決定する。
図4に示すように、パラメータ番号は、温度及び湿度の少なくとも一方が高くなればなるほど、P1,P2,・・・P6の順に番号が大きくなっている。また、
図5に示すように、パラメータ番号がP1からP6の順番に大きくなるに従って、YMC用及びK用のグリッド電流Igの設定値は徐々に小さくなっている。また、パラメータ番号がP1からP6の順番に大きくなるに従って、YMC用及びK用のグリッド電圧の設定値も、徐々に小さくなっている。従って、グリッド電流Ig及びグリッド電圧GRIDの設定値は、温度及び湿度の少なくとも一方が高くなればなるほど、より小さい値が設定される。
【0064】
尚、
図4に示す温度湿度テーブルTB1及び
図5に示すグリッド電流電圧テーブルTB2の値等一例である。例えば、温度湿度テーブルTB1は、5℃より小さい温度tごとに(例えば、第2温度範囲が3℃で)パラメータ番号P1~P6が設定される構成でも良く、5℃より大きい温度tごとに(例えば、第2温度範囲が10℃で)パラメータ番号P1~P6が設定される構成でも良い。あるいは、温度湿度テーブルTB1は、低い温度tでは第2温度範囲が大きく(例えば、10℃≦t<20℃など)、高い温度tでは第2温度範囲が小さい(例えば、20℃≦t<23℃など)構成でも良い。また、温度湿度テーブルTB1の湿度hについても同様に、10%以外の第2湿度範囲でパラメータ番号が設定される構成でも良い。また、グリッド電流電圧テーブルTB2において、グリッド電流Ig又はグリッド電圧GRIDの一方が固定値となっていても良い。また、パラメータ番号は、6つ未満のパターン数でも良く、6つより多いパターン数でも良い。
【0065】
例えば、ASIC61は、検出した温度が17℃であり、湿度が25%である場合、温度湿度テーブルTB1に基づいて、15℃≦t<20℃、且つ、20%≦h<30%に対応するパラメータ番号であるパラメータ番号P2を選択する(
図4の黒丸参照)。ASIC61は、グリッド電流電圧テーブルTB2のパラメータ番号P2の列からグリッド電流Ig及びグリッド電圧GRIDを決定する。
図5に示す例では、YMC用のグリッド電流Ig1~Ig3の設定値として、180Aが決定され、YMC用のグリッド電圧GRID1~GRID3の設定値として、800Vが決定される。また、K用のグリッド電流Ig4の設定値として、240Aが決定され、K用のグリッド電圧GRID4の設定値(参考情報)として、780Vが決定される。ASIC61は、S5以降の処理において、S3で決定した設定値に基づいてグリッド電流Ig及びグリッド電圧GRIDの設定を実行する。
【0066】
S5において、ASIC61は、S3で決定したYMC用のグリッド電圧GRIDの設定値に基づいてYMCのPWM信号Spp1,Spp2,Spp3を出力する。具体的には、ASIC61は、例えば、グリッド電圧GRID1,GRID2,GRID3の各々が設定値となるデューティ比のPWM信号Spp1、Spp2、Spp3をポートPWM2,PWM3,PWM4の各々から出力する。
【0067】
次に、S7において、ASIC61は、グリッド電流Igの電流値に基づいてワイヤ電圧生成回路70から供給するワイヤ電圧CHGの電圧値を制御する。ASIC61は、例えば、YMCの3つのグリッド電流Ig1~Ig3のうち、最も電流値が小さいグリッド電流Igに基づいてワイヤ電圧CHGを制御する。グリッド電流Ig1~Ig3の電流値は、帯電ワイヤ42への汚れの付着などによってばらつきが生じる。そこで、電流値が最も小さいグリッド電流Igを基準としてワイヤ電圧CHGの制御を実行する。これにより、グリッド電流Ig1~Ig3の変化量にばらつきがある場合に、全てのグリッド電流Ig1~Ig3の電流値を目標電流値(設定値)以上の大きさとすることができる。
【0068】
ASIC61は、例えば、PWM信号Sp1を出力しワイヤ電圧CHGを増大させつつ、グリッド電流Ig1~Ig3を検出する。ASIC61は、例えば、抵抗R3の抵抗値と、ライン電圧検出信号Sir1の電圧値からライン電流Ir1を演算する。ASIC61は、例えば、ライン電流Ir1と、グリッド電圧GRID1に対応する分流電流Id1とに基づいてグリッド電流Ig1を演算する。ASIC61は、他のグリッド電流Ig2,Ig3についても同様に演算を行ない、演算結果に基づいて電流値が最小のグリッド電流Ig(以下、単に最小のグリッド電流Igという場合がある)を判断する。尚、分流電流Id1はライン電流It1と比較して小さいため、ライン電流Ir1をグリッド電流Ig1として演算しても良い。
【0069】
以下、一例として、グリッド電流Ig1~Ig3のうちグリッド電流Ig1が最小の電流値である場合について説明する。この場合、ASIC61は、検出したグリッド電流Ig1の電流値に基づいてワイヤ電圧生成回路70を制御し、最小のグリッド電流Ig1の電流値を、S3で設定したグリッド電流Igの設定値に一致させる。このグリッド電流Igの設定値は、YMC用のグリッド電流Igの設定値であり、上記したパラメータ番号P2が選択された場合には180Aとなる(
図5参照)。ASIC61は、ポートPWM1から出力するPWM信号Sp1のデューティ比を大きくし、最小のグリッド電流Ig1の電流値が設定値(例えば、180A)となるまでワイヤ電圧CHGを増大させる。これにより、全てのグリッド電流Ig1~Ig3の電流値を設定値以上の大きさまでより確実に増大させることができる。
【0070】
また、ASIC61は、上記したS5を実行することで、グリッド電圧GRIDの設定値に応じたPWM信号Spp1~Spp3の出力を継続する。このグリッド電圧GRIDの設定値は、YMC用のグリッド電圧GRIDの設定値であり、上記したパラメータ番号P2が選択された場合、800Vとなる(
図5参照)。このため、グリッド電圧調整回路81Y,81M,81Cの各々の演算増幅器OP1は、グリッド電圧GRID1~GRID3の各々を、設定値(例えば、800V)と一致させるように、トランジスタQ1のベース電圧を変更する。
【0071】
ASIC61は、S7を実行してワイヤ電圧CHGを増大させながら、最小のグリッド電流Ig1の電流値が設定値に到達したか否かを判断する(S9)。ASIC61は、最小のグリッド電流Ig1の電流値が設定値に到達するまでの間、S9で否定判断し(S9:NO)、S9の判断処理を繰り返し実行しつつ、ワイヤ電圧CHGを増大させる。また、ASIC61が、ワイヤ電圧CHGを増大させグリッド電流Ig1~Ig3を増大させる一方で、グリッド電圧調整回路81Y,81M,81Cは、ASIC61から入力されるPWM信号Spp1~Spp3に基づいてグリッド電圧GRID1~GRID3を設定値に維持しようとする。
【0072】
ASIC61は、最小のグリッド電流Ig1の電流値が設定値に到達したと判断すると(S9:YES)、ワイヤ電圧CHGの増大を停止し、S11を実行する。ASIC61は、S11において、最小のグリッド電流Ig1の色(この場合はY)以外の色(M、C)のグリッド電圧GRID2,GRID3を補正する。ASIC61は、S11において、例えば、M、Cのグリッド電流Ig2,Ig3の電流値が設定値に比べてより大きいほど、グリッド電圧GRID2,GRID3がS3で設定値した設定値より小さくなるようにグリッド電圧調整回路81により調整する。具体的には、ASIC61は、例えば、検出したグリッド電流Ig2,Ig3の電流値が設定値(例えば、180A)に比べて大きいほど、PWM信号Spp2,Spp3のデューティ比を下げる。より具体的には、ASIC61は、PWM信号Spp2,Spp3のデューティ比を、S3で設定した設定値(例えば、800V)に対応しS5で出力したPWM信号Spp2,Spp3のデューティ比に比べて下げる。これにより、グリッド電圧調整回路81M,81Cは、グリッド電圧GRID2,GRID3を下げる。帯電器41M、41Cによって感光体31M、31Cを帯電させる能力を、帯電器41Yによって感光体31Yを帯電させる能力と同程度にすることができる。
【0073】
次に、ASIC61は、Kのグリッド電流Ig4を設定する(S13)。ASIC61は、S7と同様に、PWM信号Sp2をポートPWM5から出力し、ワイヤ電圧CHGKを増大させる。ASIC61は、グリッド電流Ig4の電流値を検出し、検出した電流値が、S3で決定したK用のグリッド電流Ig4の設定値に一致するように、PWM信号Sp2のデューティ比を変更する。例えば、上記したパラメータ番号P2の場合であれば、ASIC61は、グリッド電流Ig4が240Aとなるまで、PWM信号Sp2のデューティ比を大きくする。また、グリッド電圧GRID4は、抵抗R3,R11の抵抗値等に応じて決定され、
図5に示す設定値(例えば、780V)と一致又はそれに近い値となる。
【0074】
次に、ASIC61は、S13まで実行し各色のグリッド電流Ig及びグリッド電圧GRIDを設定した後、設定したグリッド電流Ig及びグリッド電圧GRIDを維持した状態で、パッチを作成し、現像バイアスを設定する(S15)。ASIC61は、例えば、異なる複数の現像バイアスを現像ローラ47に印加して複数のパッチ(濃度センサ53で検出するためのトナー像)を感光体31に形成し、搬送ベルト23に転写する。これを、YMCKの各感光体31C~31Kに対応してそれぞれ行い、転写させた搬送ベルト23上のパッチの濃度を濃度センサ53により検出する。ASIC61は、検出した濃度に基づいて、印刷時に現像ローラ47に印加する現像バイアスを設定する。ASIC61は、
図6に示す処理を終了する。ASIC61は、印刷ジョブ等を受信し印刷する際に、
図6の処理で設定したグリッド電流Ig、グリッド電圧GRID、現像バイアスで印刷を実行する。これにより、温湿度に応じた適切な印刷濃度で印刷でき、印刷精度を高めることができる。また、ASIC61は、
図6の処理を終了した後、再度、S1からの処理を実行する。これにより、ASIC61は、S1の所定条件が満たされるごとに、グリッド電流Ig、グリッド電圧GRID、現像バイアスの設定を適宜実行する。
【0075】
尚、
図6に示すフローチャートの各処理の内容、順番は、一例であり、適宜変更することができる。例えば、ASIC61は、S11の他の色のグリッド電圧GRIDの補正を実行しなくとも良い。また、ASIC61は、S13のKの設定を、S7のYMCの設定より先に実行しても良く、KとYMCのグリッド電流Ig及びグリッド電圧GRIDの設定を並列に実行しても良い。
【0076】
また、ASIC61は、S1において、4色のトナーカートリッジ33のうち、少なくとも1つ(1色)のトナーカートリッジ33が新品のものに交換された場合に、S3以降の濃度補正制御を実行し、全ての色の現像バイアスを設定(調整)した。しかしながら、ASIC61は、トナーカートリッジ33が交換された場合に、トナーカートリッジ33が交換された色についてのみ、現像バイアスの設定を実行しても良い。
【0077】
また、S1の所定条件は、トナーカートリッジ33が新品のものに交換される条件に限定されない。例えば、所定条件は、トナーカートリッジ33が他のトナーカートリッジ33(新品や中古のもの)に交換される条件でも良い。ASIC61は、例えば、トナーカートリッジ33のICからシリアルナンバーの情報を読み取り、読み取ったシリアルナンバーの情報が前回読み取ったシリアルナンバーの情報と異なる場合に、S1で肯定判断しても良い。
【0078】
また、所定条件は、トナーカートリッジ33の交換に係わる条件に限らない。例えば、所定条件は、4つの感光体31のうち、少なくとも1つが交換される条件でも良い。また、所定条件は、部品を交換する条件に限らない。例えば、所定条件は、タッチパネル6やネットワークIF7を介して濃度補正制御を実行する指示を受け付ける条件でも良い。ASIC61は、例えば、タッチパネル6で所定の操作入力を受け付けた場合に、S1で肯定判断しても良い。あるいは、ASIC61は、例えば、濃度補正制御の実行指示を、ネットワークIF7に接続されたPCのプリンタドライバから受信した場合に、S1で肯定判断しても良い。
【0079】
あるいは、所定条件は、前回の濃度補正制御の実行からプロセスカートリッジ30の動作量が所定量を超える条件でも良い。ASIC61は、例えば、プロセスカートリッジ30の動作量として現像ローラ47の回転数をカウントし、濃度補正制御を前回実行してから回転数が所定回数だけ超えるごとにS1で肯定判断しても良い。
【0080】
また、所定条件は、温度及び湿度の少なくとも一方が変化する条件でも良い。ASIC61は、検出した温度と、前回の濃度補正制御を実行した際の温度との差が、所定の第1温度範囲を超えた場合に、S1で肯定判断しても良い。この第1温度範囲としては、例えば、+6℃~-6℃の範囲を採用できる。この場合、ASIC61は、前回と今回の温度差が±6℃を超えた場合に、S3以降を実行する。
【0081】
また、ASIC61は、検出した湿度と、前回の濃度補正制御を実行した際の湿度との差が、所定の第1湿度範囲を超えた場合に、S1で肯定判断しても良い。第1湿度範囲としては、例えば、+10%~-10%の範囲を採用できる。この場合、ASIC61は、前回と今回の湿度差が±10%を超えた場合に、S3以降を実行する。
【0082】
また、所定条件は、所定の印刷枚数を超えた条件でも良い。ASIC61は、例えば、印刷ジョブに基づいて印刷が完了すると、印刷した印刷枚数を検出する。ASIC61は、累計の印刷枚数が、所定枚数を超えた場合、S1で肯定判断しても良い。また、印刷枚数のカウント方法は、印刷ジョブの設定枚数をカウントする方法でも良く、シートセンサを用いてカウントする方法でも良い。
【0083】
また、ASIC61は、上記した複数の所定条件(部品交換、ユーザからの指示、温度変化、湿度変化、印刷枚数など)のうち、少なくとも1つの条件が満たされた場合に、S1で肯定判断しても良い。あるいは、ASIC61は、上記した複数の所定条件を組み合わせて判断しても良い。ASIC61は、例えば、複数の所定条件のうち、所定の2つの条件が満たされた場合に、S1で肯定判断しても良い。
【0084】
因みに、上記実施形態において、プリンタ1は、画像形成装置の一例である。搬送ベルト23は、ベルトの一例である。タッチパネル6、ネットワークIF7は、インタフェースの一例である。プロセスカートリッジ30C~30Kは、現像器の一例である。トナーカートリッジ33C~33Kは、収容部の一例である。温度湿度センサ54は、湿度センサ、温度センサの一例である。ASIC61は、制御部の一例である。ワイヤ電圧生成回路70,70Kは、印加部の一例である。グリッド電圧調整回路81Y~81Cは、調整回路の一例である。
【0085】
以上、上記した本実施形態によれば以下の効果を奏する。
(1)本実施形態のASIC61は、
図6のS3以降の濃度補正制御において、温度湿度センサ54により検出した湿度が高くなるほどグリッド電圧GRID1~GRID4の設定値(本願の設定電圧の一例)を小さく設定する(
図4、
図5参照)。ASIC61は、設定値に応じたワイヤ電圧CHG,CHGKをワイヤ電圧生成回路70,70Kから供給し(S7、S13)、パッチを作成して現像バイアスを設定する(S15)。
【0086】
これによれば、湿度の上昇に対応してグリッド電圧GRIDの設置値を小さくし、その設定値に応じたワイヤ電圧CHG,CHGKを印加する。これにより、高湿環境下においてワイヤ電圧CHG,CHGKを小さくすることができ、異常放電の発生を抑制できる。また、グリッド電圧GRIDを小さくした上で、パッチを用いた濃度補正を実行し現像バイアスを設定できる。その結果、湿度の変化に応じたグリッド電圧GRIDを設定した上で現像バイアスを設定し、トナーの劣化等に応じた現像バイアスの補正(濃度補正)を実行し適切な印刷濃度を維持して印刷できる。
【0087】
ここで、プリンタ1を小型化し、帯電器41を小さくした場合、グリッド43が小さくなり、グリッド43は、帯電ワイヤ42と対向する電極となる部分が減少する。そして、グリッド43、帯電ワイヤ42間の空間抵抗が相対的に大きくなり、小型化する前と同じ帯電量を維持しようとすると、ワイヤ電圧CHG,CHGKを大きくする必要が生じる。しかしながら、ワイヤ電圧CHG,CHGKを大きくすると、異常放電が発生し易くなる。特に、高湿環境下では、ワイヤ太りが発生し、ワイヤ電圧生成回路70,70Kで許容できる範囲を超えてワイヤ電圧CHG,CHGKが大きくなりエラー等が発生する虞がある。これに対し、本実施形態のプリンタ1のように、湿度の上昇に応じてグリッド電圧GRIDを小さくすることで、プリンタ1の小型化を図ったとしても、高圧を生成する回路のエラーの発生等を抑制できる。
【0088】
(2)ASIC61は、温度tが高くなるほどグリッド電圧GRIDの設定値を小さくする(
図4、
図5参照)。これによれば、感光体31の表面電位が上がりにくい低温環境下ではグリッド電圧GRIDを大きくし感光体31の表面電位を高くすることができ、カブリの発生を抑制できる。また、
図4及び
図5に示すように、本実形態のASIC61は、温度tが同一である場合、高湿であるほどグリッド電圧GRIDを低くする。また、ASIC61は、湿度hが同一である場合、高温であるほどグリッド電圧GRIDを低くする。従って、ASIC61は、温度及び湿度の少なくとも一方の変化に応じてグリッド電圧GRID等を変更し、濃度補正を実行できる。
【0089】
(3)ASIC61は、湿度hが高くなるほどグリッド電流Igの設定値を小さくする(
図4、
図5参照)。これにより、異常放電が発生し易い高湿環境下ではグリッド電流Igを小さくし、異常放電の発生を抑制できる。
【0090】
(4)ASIC61は、温度tが高くなるほどグリッド電流Igの設定値を小さくする。これにより、低温環境下ではグリッド電流Igを相対的に大きくし、感光体31の表面電位を大きくした後、パッチを用いた濃度補正を実行することで、現像バイアスを適切な値に設定できる。
【0091】
(5)ASIC61は、検出した温度と、前回の濃度補正制御を実行した際の温度との差が、第1温度範囲(例えば、±6℃)を超えた場合に(S1:YES)、S3以降の濃度補正制御を実行しても良い。これにより、温度が所定の第1温度範囲を超えるごとに濃度補正を実行できる。
【0092】
(6)
図4及び
図5に示すように、濃度補正制御において設定するグリッド電圧GRIDとして、10℃≦t<30℃の温度範囲で5℃(本願の第2温度範囲の一例)ごとに設定値が設定されている。従って、本実施形態では、第2温度範囲(5℃)を、第1温度範囲(±6℃、合計12℃)に比べて狭い範囲とすることができる。これにより、濃度補正制御が多頻度で実行されることを抑制できる。
【0093】
(7)ASIC61は、検出した湿度と、前回の濃度補正制御を実行した際の湿度との差が、第1湿度範囲(例えば、±10%)を超えた場合に(S1:YES)、S3以降の濃度補正制御を実行しても良い。これにより、湿度が所定の第1湿度範囲を超えるごと濃度補正を実行できる。
【0094】
(8)
図4及び
図5に示すように、濃度補正制御において設定するグリッド電圧GRIDとして、0%≦h<80%の湿度範囲において10%(本願の第2湿度範囲の一例)ごとに設定値が設定されている。従って、本実施形態では、第2湿度範囲(10%)を、第1湿度範囲(±10%、合計20%)に比べて狭い範囲とすることができる。これにより、濃度補正制御が多頻度で実行されることを抑制できる。
【0095】
(9)また、所定条件は、前回の濃度補正制御の実行から、現像ローラ47の回転数が所定回数だけ越える条件でも良い。この場合、現像ローラ47の動作に伴うトナーの劣化に応じて濃度補正制御を適宜実行できる。
【0096】
(10)また、所定条件は、トナーカートリッジ33が交換される条件でも良い。この場合、トナーが交換され帯電や現像の特性が変化した場合に濃度補正制御を実行して印刷濃度を維持できる。
【0097】
(11)また、所定条件は、感光体31が交換される条件でも良い。この場合、感光体31が交換され帯電や現像の特性が変化した場合に濃度補正制御を実行して印刷濃度を維持できる。
【0098】
(12)また、ASIC61は、タッチパネル6やネットワークIF7を介して濃度補正制御の実行指示を受け付けた場合に(S1:YES)、S3以降の濃度補正制御を実行しても良い。これにより、ユーザ等の指示に応じて濃度補正制御を適宜実施できる。
【0099】
(13)また、ASIC61は、YMCのグリッド電流Ig1~Ig3のうち、最小のグリッド電流Ig(例えば、グリッド電流Ig1)が設定値になるようにワイヤ電圧CHGを印加させ、最小のグリッド電流Igが流れる帯電器41のグリッド電圧GRIDが設定値になるようにPWM信号Spp1~Spp3を変更しグリッド電圧調整回路81により調整する。これにより、YMCのグリッド電流Ig1~Ig3を目標値まで確実に増大でき、YMCの感光体31の表面電位を必要な電位まで増大できる。
【0100】
(14)ASIC61は、最小のグリッド電流Ig(例えば、グリッド電流Ig1)が流れる帯電器41以外の帯電器41のグリッド電圧GRIDが設定値より小さい値になるようにグリッド電圧調整回路81により調整する(S11)。これにより、最小のグリッド電流Igが流れる特定の帯電器以外帯電器(例えば、帯電器41M、41C)によって感光体31を帯電させる能力を、最小のグリッド電流Igが流れる特定の帯電器(例えば、帯電器41Y)によって感光体31を帯電させる能力と同程度にすることができる。
【0101】
尚、本願の発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、本願の画像形成装置として、正帯電性のトナーを用いる画像形成装置に適用した例を説明したが、これに限定されない。本願の画像形成装置としては、負帯電性のトナーを用いる画像形成装置でも良い。この場合、感光体31の帯電電圧などは、極性をトナーの帯電極性に合わせて変更すれば良く、その大きさ(絶対値)は上記実施形態の場合と同様の関係にすれば良い。従って、本願における「設定電圧を小さく設定する」、「設定電流を小さく設定する」とは、グリッド電圧GRIDやグリッド電流Igの絶対値を小さくすることを意味する。
上記実施形態では、K以外のY,M,Cの3色に対応する各帯電ワイヤ42Y~42Cに印加するワイヤ電圧CHGを1つのワイヤ電圧生成回路70により生成し、Kの色に対応する帯電ワイヤ42Kに印加するワイヤ電圧CHGKをワイヤ電圧生成回路70と独立したワイヤ電圧生成回路70Kにより生成するようにしたが、これに限らない。例えば、Kを含めた4色に対応する帯電ワイヤ42Y~42Kに印加するワイヤ電圧CHGを1つのワイヤ電圧生成回路70により生成する構成としても良い。
【0102】
また、第2温度範囲は、第1温度範囲と同一の大きさ(例えば、12℃)でも良く、第1温度範囲より大きい範囲(例えば、15℃)でも良い。
また、第2湿度範囲は、第1湿度範囲と同一の大きさ(例えば、20%)でも良く、第1湿度範囲より大きい範囲(例えば、25%)でも良い。
また、
図4及び
図5に示す例では、温度及び湿度の上昇に応じてグリッド電流Ig及びグリッド電圧GRIDの両方の設定値が小さくなるように設定されていたが、これに限らない。例えば、グリッド電流Ig又はグリッド電圧GRIDの一方が固定値で他方だけを小さくしても良い。
また、プリンタ1は、温度センサ又は湿度センサの一方のみを備える構成でも良い。そして、ASIC61は、温度t又は湿度hの一方のみに基づいて、グリッド電流Igやグリッド電圧GRIDを小さくする制御を実行しても良い。
【0103】
また、上記実施形態では、本願のベルトとして、トナー像が転写されるシートPを搬送する搬送ベルト23を採用したが、これに限らない。例えば、本願のベルトとして、トナー像がベルト自身に転写され、ベルトに転写されたトナー像をさらにシートPに転写する中間転写ベルトを採用しても良い。
また、上記実施形態では、本願の画像形成装置として、4色のカラープリンタを採用したが、色の数は4色に限らず、5色や6色等の他の複数色でも良い。
また、上記実施形態では、本願の画像形成装置として、カラーレーザプリンタを例に挙げて説明したが、これに限らない。本願の画像形成装置は、ブラックに対応する感光体31Kのみを備えるモノクロのプリンタでも良い。
上記実施形態では、本願の画像形成装置として、プリンタを採用したが、これに限らない。本願の画像形成装置は、コピー機、スキャナ、ファクシミリ装置でも良く、印刷機能、スキャン機能、FAX機能を備えた複合機でも良い。
本願の制御部は、ASIC61のような特定用途向けICに限らず、汎用的なCPUでも良い。
【符号の説明】
【0104】
1 レーザプリンタ(画像形成装置)、6 タッチパネル(インタフェース)、7 ネットワークIF(インタフェース)、23 搬送ベルト(ベルト)、30C~30K プロセスカートリッジ(現像器)、31Y~31K 感光体、33C~33K トナーカートリッジ(収容部)、41Y~41K 帯電器、42Y~42K 帯電ワイヤ、43Y~43K グリッド、53 濃度センサ、54 温度湿度センサ(湿度センサ、温度センサ)、61 ASIC(制御部)、70,70K ワイヤ電圧生成回路(印加部)、81Y,81M,81C グリッド電圧調整回路、CHG,CHGK ワイヤ電圧、GRID1~GRID4 グリッド電圧、Ig1~Ig4 グリッド電流、t 温度、h 湿度。