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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036202
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】ブロック共重合体
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/60 20060101AFI20240308BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240308BHJP
【FI】
C08G63/60 ZBP
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140985
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高井 順矢
(72)【発明者】
【氏名】福原 忠仁
(72)【発明者】
【氏名】佐近 和樹
(72)【発明者】
【氏名】小西 啓之
【テーマコード(参考)】
4J029
4J200
【Fターム(参考)】
4J029AA05
4J029AB01
4J029AC03
4J029AD01
4J029AD06
4J029AE11
4J029BA07
4J029BA10
4J029CA01
4J029CA03
4J029CA04
4J029EA05
4J029EH03
4J029HA01
4J029HB01
4J029HD07
4J200AA02
4J200BA02
4J200BA05
4J200BA11
4J200DA20
4J200EA04
4J200EA10
4J200EA11
(57)【要約】
【課題】活性汚泥中及びコンポスト中における生分解性、耐加水分解性、熱水分解性、及び取り扱い性に優れるブロック共重合体を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸単位(a)を主成分とするブロック構造単位(A)と、ポリエステル単位(b)を主成分とするブロック構造単位(B)とを含むブロック共重合体であり、
前記ポリエステル単位(b)が、脂肪族ジオール(b1)と脂肪族ジカルボン酸(b2)に由来する単位を含有し、前記脂肪族ジオール(b1)がアルキル基を分岐鎖として有する炭素数が5以上9以下の脂肪族ジオールであり、前記脂肪族ジカルボン酸(b2)の炭素数が2以上4以下であり、
数平均分子量が36,000以下であるブロック共重合体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸単位(a)を主成分とするブロック構造単位(A)と、ポリエステル単位(b)を主成分とするブロック構造単位(B)とを含むブロック共重合体であり、
前記ポリエステル単位(b)が、脂肪族ジオール(b1)と脂肪族ジカルボン酸(b2)に由来する単位を含有し、前記脂肪族ジオール(b1)がアルキル基を分岐鎖として有する炭素数が5以上9以下の脂肪族ジオールであり、前記脂肪族ジカルボン酸(b2)の炭素数が2以上4以下であり、
数平均分子量が36,000以下であるブロック共重合体。
【請求項2】
前記ブロック構造単位(A)と前記ブロック構造単位(B)の合計100質量%に対し、前記ブロック構造単位(A)が5質量%以上95質量%以下である、請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項3】
前記脂肪族ジオール(b1)が、主鎖の両末端に水酸基を有する、請求項1又は2に記載のブロック共重合体。
【請求項4】
前記脂肪族ジオール(b1)が3-メチル-1,5-ペンタンジオールである、請求項1~3のいずれか1項に記載のブロック共重合体。
【請求項5】
前記脂肪族ジカルボン酸(b2)がコハク酸である、請求項1~4のいずれか1項に記載のブロック共重合体。
【請求項6】
前記ブロック構造単位(A)が、ポリL-乳酸に由来する構造単位又はポリD-乳酸に由来する構造単位からなる、請求項1~5のいずれか1項に記載のブロック共重合体。
【請求項7】
融点が185℃未満である、請求項1~6のいずれか1項に記載のブロック共重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性、耐加水分解性、熱水分解性、及び取り扱い性に優れるブロック共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
環境保護の見地から、バイオプラスチックに関する開発が盛んに行われている。バイオプラスチックであるポリ乳酸は、光合成により生産されるとうもろこし等の植物由来再生可能資源を原料とし、幅広い分野において利用されることが期待されている。
しかし、ポリ乳酸は、石油系プラスチックと比べると脆く、粘性、柔軟性、耐衝撃性、及び耐熱性等に劣り、さらに加水分解しやすいことが知られている。ポリ乳酸の欠点を改良する試みとして、例えば、ポリ乳酸のステレオコンプレックスを利用する技術が検討されている。
例えば、特許文献1には、耐熱性及び機械的物性に優れることを目的とし、ポリ乳酸単位(a)及びポリエステル単位(b)を主成分とするブロック共重合体(I)であり、ステレオコンプレックスであることを特徴とするポリエステル樹脂、並びに、上記ブロック共重合体(I)であるポリエステル樹脂を2種以上含有し、ステレオコンプレックスであることを特徴とする樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-153275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたポリ乳酸を含有する樹脂又は樹脂組成物は、ある程度の生分解性を有するものと推測できる。ここで、生分解性とは微生物等の生物によって最終的には水と二酸化炭素に分解される性質であり、ポリ乳酸を含有する樹脂はコンポスト中で生分解性を示すことが知られている。しかし、環境意識の高まりから、より広範囲で生分解性を発現させることが要求される。
また、樹脂材料からなる最終製品には、経年劣化の進行を抑えるため、耐加水分解性を有することが要求される。一方、環境保護の見地から、樹脂材料は、リサイクル性を有することも有用である。樹脂材料に用いられている原料等を再利用するために、例えば、樹脂材料は熱水等により分解しやすいことが望まれる。
さらに、樹脂材料はインキや塗料等に用いられることも知られており、塗工しやすくなるように、樹脂材料の取り扱い性を高めたいといった要望もある。
そこで本発明は、活性汚泥中及びコンポスト中における生分解性、耐加水分解性、熱水分解性、及び取り扱い性に優れるブロック共重合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは下記本発明を想到し、当該課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0006】
[1] ポリ乳酸単位(a)を主成分とするブロック構造単位(A)と、ポリエステル単位(b)を主成分とするブロック構造単位(B)とを含むブロック共重合体であり、上記ポリエステル単位(b)が、脂肪族ジオール(b1)と脂肪族ジカルボン酸(b2)に由来する単位を含有し、上記脂肪族ジオール(b1)がアルキル基を分岐鎖として有する炭素数が5以上9以下の脂肪族ジオールであり、上記脂肪族ジカルボン酸(b2)の炭素数が2以上4以下であり、数平均分子量が36,000以下であるブロック共重合体。
[2] 上記ブロック構造単位(A)と上記ブロック構造単位(B)の合計100質量%に対し、上記ブロック構造単位(A)が5質量%以上95質量%以下である、上記[1]に記載のブロック共重合体。
[3] 上記脂肪族ジオール(b1)が、主鎖の両末端に水酸基を有する、上記[1]又は[2]に記載のブロック共重合体。
[4] 上記脂肪族ジオール(b1)が3-メチル-1,5-ペンタンジオールである、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のブロック共重合体。
[5] 上記脂肪族ジカルボン酸(b2)がコハク酸である、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のブロック共重合体。
[6] 上記ブロック構造単位(A)が、ポリL-乳酸に由来する構造単位又はポリD-乳酸に由来する構造単位からなる、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載のブロック共重合体。
[7] 融点が185℃未満である、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載のブロック共重合体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、活性汚泥中及びコンポスト中における生分解性、耐加水分解性、熱水分解性、及び取り扱い性に優れるブロック共重合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施態様の一例に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施態様は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下の記載に限定されない。
また本明細書において、実施態様の好ましい形態を示すが、個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、好ましい形態である。数値範囲で示した事項について、いくつかの数値範囲がある場合、それらの下限値と上限値とを選択的に組み合わせて好ましい形態とすることができる。
なお、本明細書において、「XX~YY」との数値範囲の記載がある場合、「XX以上YY以下」を意味する。
本明細書において、「~単位」(ここで「~」は重合体を示す)とは「~に由来する構造単位」を意味する。例えば「ポリ乳酸単位」とは「ポリ乳酸に由来する構造単位」を意味し、「ポリエステル単位」とは「ポリエステルに由来する構造単位」を意味する。
【0009】
また、本明細書において、重合体の「主鎖」とは、特に断りがない限り、ポリマー分子中において最も長い分子鎖を意味する。
また、本発明において、「耐加水分解性」とは、60℃以下、好ましくは50℃以下の水に対する耐加水分解性を意味する。耐加水分解性は、具体的には実施例に記載の方法により評価することができる。
また、本発明において、「熱水分解性」とは、60℃超、好ましくは70℃以上の熱水に対する分解性を意味する。熱水分解性は、具体的には実施例に記載の方法により評価することができる。
また、本発明において、「取り扱い性」とは、ブロック共重合体を、例えばインキや塗料等における樹脂材料として用いる際に、塗工しやすくするのに好適な、ブロック共重合体の粘度を指す。取り扱い性は、具体的には実施例に記載の方法により評価することができる。
【0010】
本実施形態のブロック共重合体は、ポリ乳酸単位(a)を主成分とするブロック構造単位(A)と、ポリエステル単位(b)を主成分とするブロック構造単位(B)とを含み、数平均分子量が36,000以下である。
本発明者らは、ブロック共重合体に、広範囲の生分解性、優れた耐加水分解性、熱水分解性、及び取り扱い性を付与するための処方について種々検討を行った。その結果、本発明者らは、ブロック共重合体がブロック構造単位(A)及びブロック構造単位(B)を含むことが、コンポスト中のみならず活性汚泥中でも生分解性を有し、優れた耐加水分解性、及び熱水分解性を実現するための、有効な処方の一つであることを見出した。加えて、ブロック共重合体の数平均分子量が特定の数値範囲内であることが、優れた取り扱い性を実現するための、有効な処方の一つであることを見出した。上記結果を踏まえ、本発明者らは検討を重ね本発明に至った。
【0011】
ポリエステル単位(b)は、脂肪族ジオール(b1)及び脂肪族ジカルボン酸(b2)に由来する単位を含有し、脂肪族ジオール(b1)がアルキル基を分岐鎖として有する炭素数が5以上9以下の脂肪族ジオールであり、脂肪族ジカルボン酸(b2)の炭素数が2以上4以下であることを特徴とする。
上記特徴によってブロック構造単位(B)が非晶性ポリマーになりやすくなるので、上記ブロック共重合体が生分解する際に、微生物がポリマー構造へ入り込みやすくなり、広範囲の生分解性に優れるものと推測する。また、脂肪族ジオール(b1)が特定の炭素数で構成され、かつ、アルキル基を分岐鎖として有することで、生分解性及び耐加水分解性の向上に寄与すると考えられる。一方、ブロック構造単位(B)が非晶性ポリマーでない場合、上記ブロック共重合体が生分解する際に微生物がポリマー構造に入り込みにくくなると考えられ、本発明の効果を得ることができない。しかしながら、非晶性ポリマーであることは生分解性に影響を及ぼす一つの要因でしかない。微生物が非晶性構造を餌として認識するかどうか、酵素や微生物が近づきやすいか、主鎖の立体障害、融点、結晶化度等の様々な要因が複合して生分解性に影響を及ぼすと考えられるためである。よって、非晶性ポリマーであれば本発明の効果を得ることができるというわけではない。しかしながら、上記ブロック共重合体が、上記ポリエステル単位(b)を有することにより、相反する関係にある広範囲の生分解性と優れた耐加水分解性の両方を実現できる理由は定かではない。
また、脂肪族ジオール(b1)が特定の炭素数で構成され、かつ、アルキル基を分岐鎖として有し、かつ、脂肪族ジカルボン酸(b2)が特定の炭素数で構成されることは、ある程度の温度以上(好ましくは70℃以上)の熱水に対する、上記ブロック共重合体の分解性の発現に寄与すると考えられる。しかしながら、上記ブロック共重合体が、ある程度の温度以下(好ましくは50℃以下)の水に耐え得る耐加水分解性を有しつつ、ある程度の温度以上(好ましくは70℃以上)の熱水になると分解しやすくなる熱水分解性を実現できる理由は定かではない。
【0012】
[ブロック構造単位(A)]
〈ポリ乳酸単位(a)〉
ブロック構造単位(A)は、ポリ乳酸単位(a)を主成分とする。
上記「主成分」とは、ブロック構造単位(A)を構成する単位のうちで最も含有割合の高い単位を意味する。
ブロック構造単位(A)における、ポリ乳酸単位(a)の含有割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%含んでいてもよい。また、ブロック構造単位(A)に含まれるポリ乳酸単位(a)の上限に制限は無く、例えば、100質量%以下である。
【0013】
ポリ乳酸単位(a)を構成するポリ乳酸は、乳酸の直接縮合法によって調整してもよく、ラクチドの開環重合法によって調整してもよい。上記乳酸としては、例えば、L-乳酸、D-乳酸、及びDL-乳酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。上記ラクチドとしては、例えば、L-ラクチド、D-ラクチド、DL-ラクチド、及びmeso-ラクチドからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
また、ポリ乳酸は、ポリL-乳酸、ポリD-乳酸、ポリDL-乳酸、ポリL-乳酸とポリD-乳酸とを混合することによって得られるステレオコンプレックスポリ乳酸を用いることができる。コスト、及び原料の入手性の観点から、ポリ乳酸は、ポリL-乳酸、ポリD-乳酸、及びポリDL-乳酸からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、ポリL-乳酸及びポリD-乳酸からなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
一方、合成のコスト、煩雑さ、及びブロック共重合体の加工性の観点から、ポリ乳酸は、ステレオコンプレックスポリ乳酸ではないことが好ましい。
より一層優れた生分解性及び耐加水分解性の観点から、ブロック構造単位(A)は、ポリL-乳酸に由来する構造単位又はポリD-乳酸に由来する構造単位を、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含む。例えば、ブロック構造単位(A)は、ポリL-乳酸に由来する構造単位又はポリD-乳酸に由来する構造単位からなること、すなわちポリL-乳酸に由来する構造単位又はポリD-乳酸に由来する構造単位が100質量%であることが、好ましい実施形態の一例である。
【0014】
〈ポリ乳酸単位(a)以外の単位(a’)〉
ブロック構造単位(A)は、ポリ乳酸単位(a)以外の単位(a’)を含んでもよく、含まなくてもよい。
単位(a’)を構成する単量体としては、本発明の効果を損なわない範囲において特に限定されない。
ブロック構造単位(A)における、単位(a’)の含有割合は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、よりさらに好ましくは10質量%以下である。
【0015】
〈ブロック構造単位(A)の数平均分子量〉
ブロック構造単位(A)の数平均分子量は、好ましくは1,000~100,000、より好ましくは2,000~50,000、さらに好ましくは3,000~25,000であり、3,000~15,000であってもよい。上記数値範囲内であれば、より一層優れた耐加水分解性及び取り扱い性を発揮できる。
なお、ブロック共重合体が複数のブロック構造単位(A)を有する場合、ブロック構造単位(A)の数平均分子量とは、全てのブロック構造単位の数平均分子量の合計を意味する。
ブロック構造単位(A)の数平均分子量は、後述するブロック共重合体の数平均分子量と、ブロック構造単位(A)の質量含有率から求めることができる。
【0016】
[ブロック構造単位(B)]
ブロック構造単位(B)は、ポリエステル単位(b)を主成分とする。
上記「主成分」とは、ブロック構造単位(B)を構成する単位のうちで最も含有割合の高い単位を意味する。
ブロック構造単位(B)における、ポリエステル単位(b)の含有割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、100質量%含んでいてもよい。また、ブロック構造単位(B)に含まれるポリエステル単位(b)の上限に制限は無く、例えば、100質量%以下である。
ポリエステル単位(b)は、脂肪族ジオール(b1)及び脂肪族ジカルボン酸(b2)に由来する単位を含有する。具体的には、ポリエステル単位(b)は、脂肪族ジオール(b1)と脂肪族ジカルボン酸(b2)とを反応させて得られるポリエステルに由来する単位を含有する。ポリエステル単位(b)は、脂肪族ジオール(b1)及び脂肪族ジカルボン酸(b2)以外の単量体に由来する単位を含んでもよく、含まなくてもよい。
脂肪族ジオール(b1)及び脂肪族ジカルボン酸(b2)以外の単量体としては、本発明の効果を損なわない範囲において特に限定されない。
ポリエステル単位(b)における、脂肪族ジオール(b1)及び脂肪族ジカルボン酸(b2)の総量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上、100質量%であってもよい。また、ポリエステル単位(b)における、脂肪族ジオール(b1)及び脂肪族ジカルボン酸(b2)の総量の上限に制限は無く、例えば、100質量%以下である。
【0017】
〈脂肪族ジオール(b1)〉
脂肪族ジオール(b1)は、アルキル基を分岐鎖として有する炭素数が5以上9以下の脂肪族ジオールである。
ここで、脂肪族ジオール(b1)における「分岐鎖」とは、脂肪族ジオール(b1)における「主鎖」から枝分かれしている部分構造を指し、その末端に水酸基は結合していない。
そして、前記脂肪族ジオール(b1)における「主鎖」とは、分子中の2つの水酸基を両末端として、上記2つの水酸基間を繋ぐ複数の原子、好ましくは炭素原子から構成されている分子鎖である部分構造を指す。したがって、上記脂肪族ジオール(b1)における「主鎖」の両末端には、上記脂肪族ジオール(b1)における2つの水酸基が位置する。
【0018】
また、上記「炭素数」は、上記アルキル基を成す炭素数を含む脂肪族ジオール(b1)全体の炭素数である。
脂肪族ジオール(b1)の炭素数が4以下であると耐加水分解性に劣るおそれがある。また、脂肪族ジオール(b1)の炭素数が10以上であると生分解性に劣るおそれがある。
耐加水分解性により一層優れる観点から、脂肪族ジオール(b1)の炭素数は、好ましくは6以上9以下である。
【0019】
脂肪族ジオール(b1)が、アルキル基である分岐鎖を有しない場合、ブロック構造単位(B)が結晶化しやすく、また、耐加水分解性が悪化する傾向にあるため、ブロック共重合体は、広範囲の生分解性と優れた耐加水分解性を発揮することができない。
また、脂肪族ジオール(b1)において、分岐鎖の数は、好ましくは1つ又は2つ、より好ましくは1つである。また、分岐鎖は、好ましくはメチル基、エチル基、及びプロピル基、より好ましくはメチル基及びエチル基、さらに好ましくはメチル基である。また、脂肪族ジオール(b1)が分岐鎖を複数有する場合、それぞれの分岐鎖は同一であってもよく、異なってもよい。
【0020】
脂肪族ジオール(b1)は、例えば、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオールが挙げられる。脂肪族ジオール(b1)は、好ましくは3-メチル-1,5-ペンタンジオール及び2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールであり、より好ましくは3-メチル-1,5-ペンタンジオールである。
脂肪族ジオール(b1)は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
〈脂肪族ジカルボン酸(b2)〉
脂肪族ジカルボン酸(b2)の炭素数は、2以上4以下である。
脂肪族ジカルボン酸(b2)の炭素数が5以上であると熱水分解性に劣るおそれがある。脂肪族ジカルボン酸(b2)の炭素数が4以下であれば、耐加水分解性及び熱水分解性の両立に有効である。
モノマーの熱安定性に起因するブロック共重合体の製造容易性の観点から、脂肪族ジカルボン酸(b2)の炭素数は、好ましくは3又は4であり、より好ましくは4である。
【0022】
脂肪族ジカルボン酸(b2)は、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸が挙げられる。優れた耐加水分解性及び熱水分解性を両立しやすいこと、また、ブロック共重合体の製造容易性の観点から、脂肪族ジカルボン酸(b2)は、好ましくはコハク酸である。
脂肪族ジカルボン酸(b2)は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
〈脂肪族ジオール(b1)と脂肪族ジカルボン酸(b2)の好ましい組み合わせ〉
より一層優れた生分解性、耐加水分解性、及び熱水分解性を発揮できる観点から、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとコハク酸の組合せ、及び2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールとコハク酸の組合せが好ましい実施形態の一例であり、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとコハク酸の組合せがより好ましい実施形態の一例である。
【0024】
〈脂肪族ジオール(b1)と脂肪族ジカルボン酸(b2)の割合〉
脂肪族ジオール(b1)と脂肪族ジカルボン酸(b2)とを反応させる際の仕込みモル比[脂肪族ジオール(b1)/脂肪族ジカルボン酸(b2)]は、好ましくは、1.4/1~1/1.4、より好ましくは1.2/1~1/1.2である。
【0025】
〈ポリエステル単位(b)以外の単位(b’)〉
ブロック構造単位(B)は、ポリエステル単位(b)以外の単位(b’)を含んでもよく、含まなくてもよい。
単位(b’)を構成する単量体としては、本発明の効果を損なわない範囲において特に限定されない。
ブロック構造単位(B)における、単位(b’)の含有割合は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、よりさらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0026】
〈ブロック構造単位(B)の数平均分子量〉
ブロック構造単位(B)の数平均分子量は、好ましくは1,000~100,000、より好ましくは2,000~50,000、さらに好ましくは3,000~30,000であり、4,000~25,000であってもよい。
上記数値範囲内であれば、ブロック共重合体を製造しやすい傾向にある。
ブロック構造単位(B)の数平均分子量は、後述するブロック共重合体の数平均分子量と、ブロック構造単位(B)の質量含有率から求めることができ、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0027】
[構造単位割合]
ブロック構造単位(A)とブロック構造単位(B)の合計100質量%に対し、ブロック構造単位(A)は、好ましくは5質量%以上95質量%以下である。
上記ブロック構造単位(A)の割合が、5質量%以上であれば、ブロック共重合体の強度や耐熱性に優れる傾向にある。また、上記ブロック構造単位(A)の割合が、95質量%以下であれば、柔軟性や耐衝撃性、生分解性に優れる傾向にある。
強度や耐熱性の観点から、上記ブロック構造単位(A)の割合は、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。また、柔軟性や耐衝撃性、生分解性の観点から、上記ブロック構造単位(A)の割合は、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。
ブロック構造単位(A)の割合は、H-NMRによって求めることができ、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0028】
また、ブロック共重合体における、ブロック構造単位(A)とブロック構造単位(B)の含有割合の合計は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。また、ブロック共重合体における、ブロック構造単位(A)とブロック構造単位(B)の含有割合の合計の上限に制限は無く、例えば、100質量%以下である。
【0029】
ブロック共重合体は、ブロック構造単位(A)及びブロック構造単位(B)以外の単位を含んでもよく、含まなくてもよい。
ブロック構造単位(A)及びブロック構造単位(B)以外の単位としては、本発明の効果を損なわない範囲において特に限定されない。
ブロック共重合体における、ブロック構造単位(A)及びブロック構造単位(B)以外の単位の含有割合は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0030】
[ブロック共重合体の結合形式]
ブロック共重合体の結合形式は、トリブロック型及びジブロック型が好ましく、トリブロック型がより好ましい。ブロック共重合体は、トリブロック型とジブロック型の混合物であってもよい。具体的には、結合形式は、[ブロック構造単位(A)]-[ブロック構造単位(B)]-[ブロック構造単位(A)]であることが好ましい。
【0031】
[ブロック共重合体の数平均分子量]
ブロック共重合体の数平均分子量は36,000以下である。
ブロック共重合体の数平均分子量が36,000を超えると、ブロック共重合体の粘度が高くなり取扱い性に劣るおそれがある。
ブロック共重合体の製造容易性、加工性の観点から、ブロック共重合体の数平均分子量は、好ましくは35,000以下、より好ましくは25,000以下である。
ブロック共重合体の強度や耐熱性の観点から、ブロック共重合体の数平均分子量は、好ましくは5,000以上、より好ましくは8,000以上、さらに好ましくは10,000以上である。
すなわち、ブロック共重合体の数平均分子量は、好ましくは5,000以上、35,000以下である。
ブロック共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求めることができ、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0032】
[ブロック共重合体の融点]
溶融加工がしやすくなる等の加工性の観点から、ブロック共重合体の融点は、好ましくは185℃未満、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは160℃以下であり、150℃以下であってもよい。
樹脂材料として実用的な耐熱性の観点から、ブロック共重合体の融点は、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上である。
上記より、良好な加工性及び耐熱性の観点から、ブロック共重合体の融点は、好ましくは110℃以上185℃未満である。
ブロック共重合体の融点は、示差走査熱量計によって求めることができ、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0033】
〈ブロック共重合体のガラス転移温度〉
ブロック共重合体のガラス転移温度は、好ましくは-80℃以上-15℃以下である。上記数値範囲内であれば、ブロック共重合体の柔軟性や耐衝撃性に優れる傾向にある。
低温での耐衝撃性等の低温特性の観点から、ブロック共重合体のガラス転移温度は、より好ましくは-20℃以下、さらに好ましくは-25℃以下であり、-30℃以下であってもよい。
ブロック共重合体のガラス転移温度の下限値は低い方が好ましいが、例えば、-70℃以上であってもよく、-60℃以上であってもよく、-50℃以上であってもよく、-40℃以上であってもよい。
ブロック共重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量測定によって求めることができる。
【0034】
[ブロック共重合体の製造方法]
ブロック共重合体の製造方法は、公知の製造方法を採用することができる。
ブロック共重合体の公知の製造方法は、例えば、ポリエステル単位(b)を構成するポリエステルを合成し、当該ポリエステルとラクチドとを重合反応させる方法であってもよい。
上記ポリエステルは、公知の方法で合成することができる。例えば、脂肪族ジオール(b1)と脂肪族ジカルボン酸(b2)とを、エステル化触媒(例えば、オクチル酸スズ、塩化スズ、酸化スズ)を用いて反応させ、ポリエステルを合成することができる。
ポリエステルとラクチドとを重合反応させる際、開環重合触媒(例えば、オクチル酸スズ、塩化スズ、酸化スズ)を用いることが好ましい。重合反応は、溶液重合、溶融重合、界面重縮合等が挙げられ、いずれも公知の重合反応条件を設定することができる。
【0035】
また、ブロック共重合体の別の公知の製造方法としては、例えば、ポリ乳酸単位(a)を構成するポリ乳酸と、ポリエステル単位(b)を構成するポリエステルとを、それぞれ合成し、当該ポリ乳酸と当該ポリエステルとを反応させる方法であってもよい。
ポリ乳酸は、公知の方法で合成することができる。例えば、乳酸を直接縮合法により反応させてポリ乳酸を合成してもよく、ラクチドを開環重合法より反応させてポリ乳酸を合成してもよい。
ポリ乳酸とポリエステルとを重合反応させる際、エステル化触媒(例えば、オクチル酸スズ、塩化スズ、酸化スズ)を用いることが好ましい。重合反応は、溶液重合、溶融重合、界面重縮合等が挙げられ、いずれも公知の重合反応条件を設定することができる。
【実施例0036】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
実施例及び比較例で使用した化合物は以下のとおりである。
3-メチル-1,5-ペンタンジオール(株式会社クラレ製)
アジピン酸(東京化成工業株式会社製)
オクチル酸スズ(東京化成工業株式会社製)
トルエン(キシダ化学株式会社製)
L-ラクチド(東京化成工業株式会社製)
メタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)
2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール(東京化成工業株式会社製)
2-メチル-1,3-プロパンジオール(東京化成工業株式会社製)
コハク酸(東京化成工業株式会社製)
1,4-ブタンジオール(東京化成工業株式会社製)
【0038】
実施例及び比較例におけるブロック共重合体の物性は、次の方法により測定又は評価した。
(1)数平均分子量(Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、上記ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)を標準ポリスチレン換算で求めた。また、ブロック構造単位(B)のMnは、ブロック共重合体のMnと、ブロック構造単位(B)の質量含有率から求めた。
〈GPCの測定条件〉
装置:東ソー株式会社製 GPC装置「HLC-8220」
分離カラム:東ソー株式会社製 「TSKgel SuperMultiporeHZ-M(カラム径=4.6mm、カラム長=15cm)」(2本を直列に繋いで使用)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
溶離液流量:0.35mL/分
カラム温度:40℃
検出方法:示差屈折率(RI)
注入量:10μL
濃度:1mg/1mL(ブロック共重合体/THF)
【0039】
(2)ハード比率(質量%)(ポリ乳酸単位(a)を主成分とするブロック構造単位(A)の質量含有率)
H-NMRによって上記ブロック共重合体のハード比率を算出した。得られたスペクトルのポリ乳酸単位に由来する5.2ppm付近のシグナルとポリエステル単位(b)を主成分とする構造単位(B)に由来する0.9ppm付近のシグナルとの面積比から、ブロック構造単位(A)とブロック構造単位(B)のモル比を算出した。当該モル比にブロック構造単位の分子量を乗ずることで質量比とし、その質量比の合計が100になるように調整した際のブロック構造単位(A)の質量比をハード比率とした。
H-NMRの測定条件〉
装置:日本電子株式会社製 核磁気共鳴装置「JNM-ECX400」
溶媒:重クロロホルム
測定温度:50℃
積算回数:1024回
【0040】
(3)生分解性(コンポスト)
ISО 14855-2:2018に準じた方法に従って、コンポスト中での上記ブロック共重合体の生分解性を測定した。15日経過時における分解率が20質量%以上であればA、10質量%以上20質量%未満であればB、5質量%以上10質量%未満であればCと評価した。
【0041】
(4)生分解性(活性汚泥)
ISО 14851:2019に準じた方法に従って、活性汚泥中での上記ブロック共重合体の生分解性を測定した。90日経過時における分解率が5質量%以上であればA、5質量%未満であればBと評価した。
【0042】
(5)取り扱い性
回転式粘弾性測定装置を用いて下記条件にて複素粘度を測定した。取り扱い性は、160℃における複素粘度の値が10,000Pa・s未満であればA、10,000Pa・s以上であればBと評価した。
〈複素粘度の測定条件〉
装置:TA Instruments製 回転式粘弾性測定装置「ARES-G2」
角周波数:1Hz
昇温速度:2℃/分
なお、上記複素粘度の値が10,000Pa・s未満であれば、例えば、上記ブロック共重合体を用いた塗料とした際に、塗工しやすい適度な粘度になる傾向にあり取り扱い性に優れる。一方、上記複素粘度の値が10,000Pa・s以上であれば、例えば、上記ブロック共重合体を用いた塗料とした際に、塗工し難い粘度になる傾向にあり取り扱い性に劣る。
【0043】
(6)耐加水分解性(h)
上記ブロック共重合体をクロロホルムに濃度10質量%で溶解したのち、ガラス板に流し厚さ200μmのフィルムを作製後、0.15gの質量となるように切り出し、試験サンプルとした。得られた試験サンプルをpH7の50mLのイオン交換水に浸し、50℃の下放置し、所定の時間ごとに数平均分子量を測定して、初期の数平均分子量の90%未満となるまでの経過時間により評価した。
上記経過時間が長い程、耐加水分解性に優れる。
なお、上記経過時間が400hを超える場合は、表中に「>400h」と表記する。
【0044】
(7)熱水分解性(h)
上記ブロック共重合体をクロロホルムに濃度10質量%で溶解したのち、ガラス板に流し厚さ200μmのフィルムを作製後、0.15gの質量となるように切り出し、試験サンプルとした。得られた試験サンプルをpH7の50mLのイオン交換水に浸し、70℃の下放置し、所定の時間ごとに数平均分子量を測定して、初期の数平均分子量の90%未満となるまでの経過時間により評価した。
上記経過時間が短い程、熱水分解性に優れる。
なお、上記経過時間が200hを超える場合は、表中に「>200h」と表記する。
【0045】
(8)融点(℃)
上記ブロック共重合体の融点を、JIS K7121:2012に記載の方法で、示差走査熱量計により測定した。ピークが複数観測された場合は、最も高温側のピークに由来する方の融点をブロック共重合体の融点とした。
装置:メトラー・トレド株式会社製 示差走査熱量分析装置「DSC822」
測定条件:昇温速度10℃/min
【0046】
[実施例1]
発生する液体を留去できる器具及び真空ポンプを備えたフラスコに、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとコハク酸をモル比で、3-メチル-1,5-ペンタンジオール/コハク酸=1.1/1となるように仕込み、さらにオクチル酸スズを3-メチル-1,5-ペンタンジオールとコハク酸の合計質量に対して0.1質量%となるように加え、窒素雰囲気下、常圧、160℃で3h、220℃で3h加熱し、水を留去させながら反応を行った。次に2,000Paに減圧し3h反応させた後、80Paまで減圧して数平均分子量が10,000になるまで適宜確認しながら反応させることで、ポリエステル単位を主成分とする構造単位(B’)からなるポリマーを合成した。反応終了後常圧に戻し、温度を80℃まで冷却した後、トルエンを加え固形分濃度を40質量%に希釈してから溶液全量の2倍量のメタノール中に上述のトルエン溶液を投入した。上澄み液を捨て、投入したトルエン溶液の量と同量のメタノールを再び加え洗浄した。上澄み液を捨て、回収した不溶分を真空乾燥機で40℃下、乾燥することで有機揮発分を除去し、ポリエステル単位を主成分とする構造単位(B’)からなるポリマーを得た。
精製した構造単位(B’)からなるポリマーに再度トルエンを加えて、固形分濃度が33質量%になるように希釈してから温度を140℃まで上げることで加えたトルエンの重量の10質量%分を留去して系内の脱水を行った。
その後80℃に冷却して、構造単位(B’)からなるポリマーとL-ラクチドを質量比で、構造単位(B’)からなるポリマー/L-ラクチド=50/50となるように加え、さらに上述の留去した重量分のトルエンを加えて固形分濃度50質量%に調整した。その後、100℃に昇温したところでオクチル酸スズを構造単位(B’)からなるポリマーに対して0.1質量%加え、4h反応させることでポリ乳酸単位(a)を主成分とするブロック構造単位(A)と、ポリエステル単位(b)を主成分とするブロック構造単位(B)からなるブロック共重合体のトルエン溶液を得た。
この溶液にトルエンを加え固形分濃度を40質量%に希釈してから溶液全量の2倍量のメタノール中に上述のトルエン溶液を投入し固体を析出させた。上澄みのメタノールを捨て、投入したトルエン溶液の量と同量のメタノールを再び加え洗浄した。メタノールを捨て、回収した固体真空乾燥機で40℃下、乾燥することで有機揮発分を除去し、ポリ乳酸単位(a)を主成分とするブロック構造単位(A)と、ポリエステル単位(b)を主成分とするブロック構造単位(B)からなるブロック共重合体を得た。
得られたブロック共重合体について、上述の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0047】
[実施例2~5]
ポリエステル単位を主成分とする構造単位(B’)からなるポリマーの合成時の反応時間を調整することで数平均分子量を調整したこと、使用したL-ラクチドの質量比を変更したこと、合成時の希釈濃度を取り扱いしやすい濃度に適宜変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリ乳酸単位(a)を主成分とするブロック構造単位(A)と、ポリエステル単位(b)を主成分とするブロック構造単位(B)からなるブロック共重合体を合成した。
得られたブロック共重合体について、上述の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
[実施例6]
3-メチル-1,5-ペンタンジオールの代わりに2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールを使用したこと、ポリエステル単位を主成分とする構造単位(B’)からなるポリマーの合成時の反応時間を調整することで数平均分子量を調整したこと以外は実施例1と同様にして、ポリ乳酸単位(a)を主成分とするブロック構造単位(A)と、ポリエステル単位(b)を主成分とするブロック構造単位(B)からなるブロック共重合体を合成した。
得られたブロック共重合体について、上述の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0049】
[比較例1]
ポリエステル単位を主成分とする構造単位(B’)からなるポリマーの合成時の反応時間を調整することで数平均分子量を調整したこと、合成時の希釈濃度を取り扱いしやすい濃度に適宜変更したこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸単位(a)を主成分とするブロック構造単位(A)と、ポリエステル単位(b)を主成分とするブロック構造単位(B)からなるブロック共重合体を合成した。
得られたブロック共重合体について、上述の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0050】
[比較例2]
3-メチル-1,5-ペンタンジオールの代わりに2-メチル-1,3-プロパンジオールを使用したこと、ポリエステル単位を主成分とする構造単位(B’)からなるポリマーの合成時の反応時間を調整することで数平均分子量を調整したこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸単位(a)を主成分とするブロック構造単位(A)と、ポリエステル単位を主成分とするブロック構造単位からなるブロック共重合体を合成した。
得られたブロック共重合体について、上述の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0051】
[比較例3]
コハク酸の代わりにアジピン酸を使用したこと、ポリエステル単位を主成分とする構造単位(B’)からなるポリマーの合成時の反応時間を調整することで数平均分子量を調整したこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸単位(a)を主成分とするブロック構造単位(A)と、ポリエステル単位を主成分とするブロック構造単位からなるブロック共重合体を合成した。
得られたブロック共重合体について、上述の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0052】
[比較例4]
3-メチル-1,5-ペンタンジオールの代わりに1,4-ブタンジオールを使用したこと、ポリエステル単位を主成分とする構造単位(B’)からなるポリマーの合成時の反応時間を調整することで数平均分子量を調整したこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸単位(a)を主成分とするブロック構造単位(A)と、ポリエステル単位を主成分とするブロック構造単位からなるブロック共重合体を合成した。
得られたブロック共重合体について、上述の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1中の略号が表す化合物は、次のとおりである。
PLLA:ポリL-乳酸
MPD:3-メチル-1,5-ペンタンジオール
DEPD:2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール
MPDiol:2-メチル-1,3-プロパンジオール
BD:1,4-ブタンジオール
AA:アジピン酸
SA:コハク酸
【0055】
表1の実施例で示されるように、特定のポリ乳酸単位(a)を主成分とするブロック構造単位(A)と、ポリエステル単位(b)を主成分とするブロック構造単位(B)とを含む本実施形態のブロック共重合体は、コンポスト及び活性汚泥のいずれの場合でも、生分解性が優れていることが確認された。また、表1の実施例で示される本実施形態のブロック共重合体は、適度な融点を有しており、取り扱い性にも優れることも確認された。また、表1の実施例で示される本実施形態のブロック共重合体は、50℃の水に対する耐加水分解性を有しつつ、70℃の熱水に対する熱水分解性を有し、耐加水分解性と熱水分解性とを両立することも確認された。この様に、本実施形態のブロック共重合体は、熱水分解性を有するので、例えば、樹脂材料として用いられた上記ブロック共重合体を、熱水分解を経ることにより、樹脂材料の原料等として再び使用することが期待できる。
一方、比較例1で得られたブロック共重合体は複素粘度が高く、取り扱い性に劣る結果であった。当該結果の要因は、ブロック共重合体の数平均分子量が高すぎるためと考えられる。
また、比較例2で得られたブロック共重合体は、実施例に比べ耐加水分解性が低い結果となった。当該結果の要因は、原料として使用した脂肪族ジオールの炭素数が5未満であるためと考えられる。
また、比較例3で得られたブロック共重合体は、実施例に比べ熱水分解性に劣る結果となった。当該結果の要因は、原料として使用したジカルボン酸の炭素数が4より大きいためと考えられる。
また、比較例4で得られたブロック共重合体は、良好な生分解性が得られず、実施例に比べ耐加水分解性に劣る結果となった。当該結果の要因は、原料として使用した脂肪族ジオールの炭素数が5未満であり、さらに上記脂肪族ジールがアルキル基を分岐鎖として有していないためと考えられる。
【0056】
上記実施例の結果のとおり、本実施形態のブロック共重合体は、広範囲における生分解性を有し、かつ、耐加水分解性、熱水分解性、及び取り扱い性に優れる。したがって、本実施形態のブロック共重合体の工業的な有用性は、極めて高い。