(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036207
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】通信装置及び車載システム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
H04L12/28 200D
H04L12/28 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140996
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 友理
(72)【発明者】
【氏名】奥原 誠
(72)【発明者】
【氏名】大築 ともえ
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA05
5K033BA06
5K033CB17
5K033EA06
(57)【要約】
【課題】通信装置が実行するアプリの動作の異常及び遅延の発生を抑止すること。
【解決手段】実施形態に係る車載装置(通信装置の一例)は、複数の接続機器との間の通信対象となるデータに関連する複数のアプリの使用状況に基づき、前記複数の接続機器との通信を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の接続機器との通信を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記複数の接続機器との間の通信対象となるデータに関連する複数のアプリの使用状況に基づき、前記複数の接続機器との通信を制御する
通信装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記各接続機器が提供するデータを使用するアプリの稼働時間の各接続機器に対する集計値に基づき、前記接続機器との通信を制御する
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記各接続機器が使用するデータを出力するアプリの稼働時間の各接続機器に対する集計値に基づき、前記接続機器との通信を制御する
請求項1または請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記各アプリにあらかじめ設定された信頼度に基づき、前記接続機器との通信を制御する
請求項1または請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記通信装置と前記各接続機器の通信における接続頻度と途絶頻度とに基づき、前記接続機器との通信を制御する
請求項1または請求項2に記載の通信装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記通信装置と前記各接続機器の通信における通信接続特性に基づき、前記複数の接続機器の通信を制御する
請求項1または請求項2に記載の通信装置。
【請求項7】
前記コントローラは、
予め定めた適用除外対象の接続機器については、前記通信装置との間の通信の制限を行わない
請求項1または請求項2に記載の通信装置。
【請求項8】
車両に搭載された車載装置と、当該車載装置と通信接続する複数の接続装置とからなる車載システムであって、
前記接続装置は、
測定した測定データを前記車載装置に送信し、
前記車載装置から送信された制御用データに基づき動作し、
前記車載装置は、
前記接続装置からの測定データを使用して動作する複数のアプリを選択実行し、
前記アプリの実行により生成された制御データを対応する前記接続装置に送信し、
前記複数の接続装置との間の通信対象となるデータに関連するアプリの使用状況に基づき、前記複数の接続装置との通信を制御する
車載システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置及び車載システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、安全支援、車両診断、運転技術判断等を行う複数のアプリケーション(以降、アプリと称する)が動作する車載装置が知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
また、車載装置が実行する複数のアプリは、それぞれIoT機器との間で通信を行い、動作に必要なデータを受信し、当該データを処理に利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アプリとIoT機器との間の通信量が増加すると、車載装置の処理負荷が増大し、アプリの動作に異常及び遅延が発生する場合がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、通信装置(車載装置)が実行するアプリの動作の異常及び遅延の発生を抑止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る通信装置は、複数の接続機器との通信を制御するコントローラを備える。コントローラは、複数の接続機器との間の通信対象となるデータに関連する複数のアプリの使用状況に基づき、複数の接続機器との通信を制御する。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様によれば、通信に必要性に応じて適切に通信量を抑制できるので、通信装置の処理負荷を適当なものとでき、その結果通信装置が実行するアプリの動作の異常及び遅延の発生を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る車載システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る車載装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、アプリ情報テーブルの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、接続機器情報テーブルの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、重要度の計算方法を説明する図である。
【
図6】
図6は、重要度の計算方法を説明する図である。
【
図7】
図7は、重要度の計算方法を説明する図である。
【
図8】
図8は、接続コストの計算方法を説明する図である。
【
図9】
図9は、優先順位の決定方法を説明する図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る車載装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る通信装置及び車載システムについて詳細に説明する。なお、本実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
図1を用いて、車載システムの構成を説明する。
図1は、実施形態に係る車載システムの構成の一例を示す図である。
【0012】
図1に示すように、車載システム1は、車両に設置された装置に加え、ユーザによって車室内(車両近傍)に持ち込まれる等して、無線通信等により車載システム1の通信網に接続されたIoT機器を含む。本実施形態において、車載システム1は、車載装置10、スマートウォッチ21、脳波センサ22、CO2センサ23、IRカメラ24及び提供装置30を有する。車載装置10は、通信装置の一例である。
【0013】
車載装置10は、車載装置10単独で、また車載システム1を構成するIoT機器と協働して、各種機能を実現する装置で、例えば車両に搭載されるコンピュータ装置である。また、スマートウォッチ21、脳波センサ22、CO2センサ23、IRカメラ24等の、車載装置10と接続される機器を接続機器又はノードと呼ぶ場合がある。また、接続機器は接続装置の一例であり、車載装置10から送信される制御用データに基づき動作する。
【0014】
車載装置10は、1つ以上のアプリを実行する。アプリは、その1つの機能としてノードとの間でデータの送受信を行う。そして、アプリは、ノードから受信したデータを用いて各種動作を実現し、またノードへ制御用データ等のデータを送信する。なお、アプリは、車載装置10の記憶領域に設定されたコンテナに配置(記憶・実行)されるものであってもよい。
【0015】
例えば、車載装置10は、アプリの実行に際し、Publish/Subscribe方式によって、データを各ノードに配信する。また、例えば、車載装置10は、MQTT(Message Queuing Telemetry Transport)を用いて、データを各ノードに配信する。このとき、車載装置10は、コンテナに対するBrokerとして機能する。
【0016】
各ノードは、車両内(車両近傍)に広がる車両のネットワーク又はインターネット等の外部のネットワークにより、車載装置10とデータ通信可能に接続されている。各ノードと車載装置10は、有線で接続されていてもよいし、無線で接続されていてもよい。
【0017】
ノードは、
図1に示すようなIoT機器であってもよい。また、ノードは、車両製造時に組み込まれる装置であってもよいし、車両製造後及び販売後にユーザ等により新たに追加設置される装置であってもよい。
【0018】
例えば、ノードには、エンジン制御装置、操舵装置、制動装置及びエアコン装置等が含まれる。また、ノードには、ナビゲーション装置、ドライブレコーダ装置及びオーディオビジュアル装置等が含まれる。また、ノードには、ユーザにより車両に持ち込まれるスマートフォン、携帯電話、ゲーム機、デスクトップ型PC、ノート型PC及びタブレット型PC等が含まれる。さらに、他の車両の各種装置及び信号機等のインフラ機器も、車載装置10との通信が可能な範囲においてはノードとなり得る。
【0019】
また、ノードはECU(Electronic Control Unit)を搭載するものであってもよい。ECUは、当該ECUが搭載されたノードの動作を制御する。ECUは、例えば、パワートレインECU、運転支援系ECU、マルチメディア系ECU、エアコンECUである。
【0020】
実施形態では、ノードが、スマートウォッチ21、脳波センサ22、CO2センサ23及びIR(赤外線)カメラ24であるものとする。スマートウォッチ21は、ユーザの腕に装着され、ユーザの体温及び心拍数といった生体情報を測定する。
【0021】
脳波センサ22は、ヘッドバンド型のセンサであり、ユーザの脳波を測定する。なお、脳波センサ22は、コンピュータ等によるデータ処理機能を有し、脳波の測定結果をデータ処理し、集中度又はリラックス度といった指標を出力する。CO2センサ23は、車両内のCO2濃度を測定する。IRカメラ24は、ユーザの体温、及び車室内の温度(環境温度)を測定する。
【0022】
提供装置30は、アプリプログラム及びアプリに関する情報を車載装置10に提供する装置で、サーバで構成される。提供装置30は、クラウド上のサーバで構成され、いわゆるアプリのストア(販売店)のように機能する。
【0023】
車載装置10は、各ノードからセンサ値等のデータを取得し、取得したデータを利用して、アプリプログラムに基づく各種処理を実行する。
【0024】
図2を用いて、車載装置10の構成を説明する。
図2は、実施形態に係る車載装置の構成の一例を示す図である。
【0025】
図2に示すように、車載装置10は、通信部11、表示部12、制御部14及び記憶部13を有する。
【0026】
通信部11は、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。通信部11は、各ノードと有線通信、または無線通信する。通信部11は、提供装置30と無線通信する。
【0027】
有線通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)、イーサネット(登録商標)、LIN(Local Interconnect Network)、USB(Universal Serial Bus)等によって実行される。無線通信は、例えば、Wi-Fi(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)、Zigbee(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)等によって実行される。
【0028】
車載装置10と通信接続された提供装置30は、アプリDB31を有する。アプリDB31は、各アプリのプログラムデータと、当該アプリの実行時に必要となるデータのメタデータ(データ種別)が対応付けられた情報を記憶する。そして、提供装置30は、車載装置10から提供される車載装置10が取得できるデータのデータ種別情報に基づき実行可能なアプリを選定し、当該選定されたアプリのプログラムデータを車載装置10に提供(送信)する。なお、アプリを選定に際しては、候補アプリ(車載装置10が取得できるデータのデータ種別情報に基づき実行可能なアプリ)のリストを車載装置10に提供し、そのリストに基づくユーザの選択結果(車載装置10のユーザがリストに基づき選択したアプリの情報を、車載装置10が提供装置30に送信)に該当するアプリのプログラムデータを車載装置10に提供する方法等を適用することもできる。
【0029】
記憶部13は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子によって実現される。
【0030】
記憶部13は、コンテナ領域131、アプリ情報テーブル133及び接続機器情報テーブル134を含む。コンテナ領域131には、アプリプログラムを格納し、また当該アプリの実行(仮想)空間を構成するコンテナが複数構成されている。尚、各コンテナは、1つのアプリが格納され、また実行されるように構成されている。各アプリのプログラムは、提供装置30から取得され、コンテナ領域131の各コンテナに格納される。
【0031】
また、不要になったアプリはコンテナから消去され、当該コンテナは空コンテナとなる。つまり、コンテナ領域131には、最大でコンテナ数だけアプリが設定され、必要なアプリがない場合は全部のコンテナが空コンテナとなる。
【0032】
また、記憶部13には、掲示板132が形成されている。掲示板には、各ノードから取得されたデータがアプリで利用可能な形式に適宜変換され、記憶されている。また、これら各ノードから取得されたデータのデータ種別やデータフォーマット等の関連データ、所謂メタデータが対応するデータに関連付けられて掲示板132に記憶されている。そして、各アプリの実行に伴い、アプリ実行に必要なデータが掲示板132から読み出され、またアプリ実行により生成されたデータは必要に応じて掲示板132に記憶される。
【0033】
アプリ情報テーブル133は、各アプリに関する情報を記憶する。
図3は、アプリ情報テーブルの一例を示す図である。
図3に示すように、アプリ情報テーブル133には、「アプリ」、「利用データ」、「提供データ」、「信頼度」、「起動時間(走行中)」、「起動時間(停車中)」という項目(データ種別)があり、該当する種別のデータが記憶される。
【0034】
項目「アプリ」には、アプリを識別するための情報(アプリ識別データ)が格納され、アプリ識別データのアプリに関連付けられて、具体的にはアプリ情報テーブル133においてアプリ識別データ毎にデータレコードが生成されて、当該データレコードに「利用データ」、「提供データ」、「信頼度」、「起動時間(走行中)」、「起動時間(停車中)」の各データが記憶されることになる。
【0035】
項目「利用データ」には、各アプリがアプリの実行(処理)で利用するデータを識別するための情報、この例では体温等のデータ種別のデータが格納される。
【0036】
項目「提供データ」には、各アプリがアプリの実行(処理)により生成されるノードへの提供データ(ノード制御用データ、ノードで使用するデータ等)を識別するための情報、この例では提供データ種別が格納される。なお、提供データを識別するための情報としてはデータ種別コード(データ種別毎に設定されたコード)等を使用することも可能である。
【0037】
項目「信頼度」には、アプリごとにあらかじめ定められる信頼度のデータが格納される。信頼度は、各アプリの安全性、利便性等に関する評価値(例えば、多くのユーザや評価機関等による審査等に基づく)、つまり各アプリに対する評価が適用される。あるいは、信頼度は、アプリの種別に基づき要求される信頼性の要求値、例えば安全に関するものであれば大きくなり、娯楽に関するものであれば小さくなると言った要求値であってもよい。また、信頼度は、上述の評価値および要求値を総合的に判断した値(適当な演算処理により算出)としてもよい。
【0038】
なお、項目「利用データ」、「提供データ」、「信頼度」のデータは、アプリ提供時にその付加情報として提供装置30から提供される。
【0039】
項目「稼働時間(走行中)」及び項目「稼働時間(停止中)」にはそれぞれ、予め定めた一定の期間において、車両が走行中及び停止中に、各アプリが稼働していた時間の累計が格納される。なお、一定の期間は、車載装置10が稼働している状態における時間長で、現(最新)時点から過去に1日及び1週間分の時間長となる期間等である。また、ここでは稼働時間データの単位は時間(h)としている。これら項目「稼働起動時間(走行中)」及び項目「稼働起動時間(停止中)」のデータは、車載装置10による実測値に基づき車載装置10で集計(累積)処理を行うことで生成される。
【0040】
具体的には、
図3の例において、アプリ「APP_A」は、「体温」のデータを利用し、「制御目標室温」のデータをノード制御のために提供し、「低」の信頼性の特性を持ったアプリで、当該アプリの「稼働時間(走行中)」が0.5h、「稼働時間(停止中)」が0.5hであることが示されている。
【0041】
なお、項目「利用データ」及び項目「信頼度」のデータは、例えばアプリの提供時に提供装置30から提供される。また、項目「稼働時間(走行中)」及び項目「稼働時間(停止中)」のデータは、車載装置10(制御部14)が、車両状態およびアプリの実行状態を監視し、車両状態ごとのアプリの稼働時間を計測することになる。
【0042】
そして、例えば、アプリ「APP_A」は、ユーザの体温を基に健康状態を通知する機能のアプリである。また、アプリ「APP_B」は、ユーザの心拍数及びリラックス度を基に推定した緊張状態に応じて、安全運転に関するアドバイスを出力する機能のアプリである。アプリ「APP_C」は、車両内のCO2濃度に応じて換気システムを動作させる機能のアプリである。アプリ「APP_D」は、ユーザの心拍数及び集中度を基に高精度に推定した緊張状態に応じて、ユーザに警告を行うとともに、車両の急制動を行う機能のアプリである。
【0043】
接続機器情報テーブル134は、各接続機器(各ノードに該当)に関する情報を記憶する。
図4は、接続機器情報テーブルの一例を示す図である。
【0044】
図4に示すように、接続機器情報テーブル134には、「接続機器」、「出力データ種別」、「制御入力データ種別」、「接続方法」、「データ送信頻度」、「データ送信容量」、「接続回数」、「途絶回数」という項目(データ種別)があり、該当する種別のデータが記憶される。
【0045】
項目「接続機器」には、接続機器を識別するための情報(接続機器識別データ)が格納され、接続機器識別データの接続機器に関連付けられて、具体的には接続機器情報テーブル134において接続機器識別データ毎にデータレコードが生成されて、当該データレコードに「出力データ種別」、「制御入力データ種別」、「接続方法」、「データ送信頻度」、「データ送信容量」、「接続回数」、「途絶回数」の各データが記憶されることになる。
【0046】
項目「出力データ種別」には、各接続機器から取得可能な(各接続機器が出力可能な、つまり各接続機器が持つセンサが計測する)データの種別を識別するための情報(出力データ種別データ)が格納される。また、「制御入力データ種別」には、各接続機器が制御データとして入力可能な(各接続機器に対する制御データ、あるいは各接続機器が制御値演算処理等のために使用するデータ)データの種別を識別するための情報(制御入力データ種別データ)が格納される。
【0047】
車載装置10は、接続機器からの測定データ(生体情報等)を使用して動作する複数のアプリを選択実行し、アプリの実行により生成された制御データを対応する接続機器に送信する。
【0048】
項目「接続方法」には、各接続機器と車載装置10との接続方法(通信規格)を示す情報が格納される。また項目「データ送信頻度」には、各接続機器と車載装置10が接続状態にある際における各接続機器から車載装置10へのデータの送信頻度(ここでは、単位:回/分)のデータが格納される。そして項目「データ送信容量」には、各接続機器から車載装置10への1回の送信で送信されるデータの容量(ここでは、単位:byte)のデータが格納される。
【0049】
なお、項目「接続機器」、「出力データ種別」、「制御入力データ種別」、「データ送信頻度」、「データ送信容量」のデータは、新たな接続機器が接続された場合に当該接続機器から提供される、あるいは当該接続機器からの接続機器識別情報(車載装置10が提供装置30に送信)に基づき提供装置30から提供される。また、これらのデータは、各機器の設計者等が定めた仕様に基づくもので、機器の仕様等に基づくデータが各接続機器、あるいは提供装置30に記憶されている。
【0050】
項目「データ送信頻度」と項目「データ送信容量」のデータについては、実際に接続機器から送信されるデータをタイムスタンプとともに収集し、当該収集したデータを集計処理することにより算出して、アプリ情報テーブル133に記憶してもよい。
【0051】
項目「接続回数」及び項目「途絶回数」にはそれぞれ、予め定めた一定の期間における、各接続機器と車載装置10との通信接続に対する接続回数のデータ及び途絶回数のデータが格納される。つまり、車載装置10による実測値に基づくデータが記憶される。なお、一定の期間は、車載装置10が稼働している状態における時間長で、現(最新)時点から過去に1日及び1週間分の時間長となる期間等である。また、本例では、接続回数に関して、同じ通信(通信失敗による再接続等は同じ通信として扱う)についてはカウントしないものとしている。
【0052】
具体的には、
図4の例において、接続機器「スマートウォッチ」は、「心拍数」のデータを出力し、「CO2濃度」のデータを入力して制御に利用し(スマートウォッチで健康管理情報として表示等に利用)、車載装置10との接続方法は「Bluetooth」であり、「データ送信頻度」は60回/分であり、「データ送信容量」は1byteであり、通信の「接続回数」は60回であり、また通信における「途絶回数」は5回である、と言った特性を持つ接続機器であることが示されている。
【0053】
制御部14は、所謂コントローラで、取得部141と、計算部142と、表示制御部143と、通信制御部144と、を備える。
【0054】
制御部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM、ハードディスクドライブ、入出力ポートなどを有するコンピュータ及び各種の回路を含む。制御部14は、複数のコンピュータを含んでもよい。
【0055】
コンピュータのCPUは、例えば、ROM等の記憶デバイスに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部14の取得部141、計算部142、表示制御部143及び通信制御部144として機能する。
【0056】
制御部14の一部又は全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。
【0057】
また、制御部14は、コンテナ領域131のコンテナに対するアプリの記憶、消去及びアプリの実行を行うコンテナエンジンとして機能する。以下、制御部14の各部の動作を説明する。
【0058】
取得部141は、アプリ情報テーブル133及び接続機器情報テーブル134から、各接続機器の重要度、及び車載装置10と各接続機器との間の通信における通信特性、ここでは通信費用、通信品質、通信量等の複数の観点からみた通信負荷、所謂接続コストの計算に必要な情報を取得する。
【0059】
計算部142は、各接続機器の重要度、及び車載装置10と各接続機器との間の通信における接続コストの計算を行う。以下に、当該重要度と接続コストの計算方法を説明する。
【0060】
なお、ここでは複数の重要度の計算方法を説明しているが、車載装置10は、1つの計算方法により算出された重要度を採用してもよいし、複数の計算方法により算出された重要度を採用してもよい。なお、車載装置10は、複数の計算方法によって算出された重要度を採用する場合、複数の各計算方法によって算出された重要度を統計処理し、例えば算出された各重要度の合計値又は平均値等を最終的な重要度の値とする。
【0061】
(1-1.アプリによるデータの使用時間に基づく重要度の計算方法)
図5を用いて、ノード(接続機器)の出力するデータに対するアプリの使用時間に基づく重要度の計算方法を説明する。つまり、使用時間が長いデータを提供する接続機器は重要度が高いという考えに基づき、接続機器の重要度を判定する方法である。
図5は、この重要度の計算方法を説明する図である。
【0062】
図5に示すように、まず、計算部142は、掲示板132に掲載された各データの使用時間を集計する。具体的には、計算部142は、アプリ情報テーブル133におけるアプリ毎に項目「起動時間(走行中)」と項目「起動時間(停車中)」のデータ(値)を集計する(ステップS51)。
【0063】
次に、計算部142は、アプリ情報テーブル133における各アプリの項目「利用データ」のデータに基づき、各アプリが掲示板132掲載のどのデータ種別(複数の場合あり)を利用しているか判断する(ステップS52)。そして、計算部142は、ステップS51で集計した各アプリの「起動時間(走行中)」と「起動時間(停車中)」の集計値を、ステップS52で判断した対応するデータ種別の集計値(各アプリでの当該データ利用時間に該当)とする(ステップS53)。
【0064】
そして、以降の処理が「起動時間(走行中)」と「起動時間(停車中)」の各々のデータ(集計値)に分けて処理される。つまり、詳細は後述するが、走行中および停止中の各状態における各接続機器の重要度が算出される。そして、走行中における各接続機器との通信が走行中における各接続機器の重要度に基づき制御され、また停止中における各接続機器との通信が停止中における各接続機器の重要度に基づき制御される。
【0065】
なお、「起動時間(走行中)」と「起動時間(停車中)」の各データ集計値の和を用いて各接続機器の重要度を算出し、走行中および停止中を問わず当該重要度に応じた各接続機器との通信制御を行うこととしても良い。
【0066】
次に、計算部142は、ステップS53で変換したアプリ毎の各データ種別の集計値を、データ種別毎に集計する(ステップS54)。つまり、異なったアプリにおいて同じデータ種別のデータ(掲示板132掲載の同じデータ)を使用することがあるので、計算部142は、コンテナに設定された全アプリが使用したデータに対してその総(累計)使用時間をデータ種別毎に集計する。
【0067】
次に、計算部142は、接続機器情報テーブル134における「接続機器」と「出力データ種別」とのデータの関係に基づき、ステップS54で集計したデータ種別毎の総使用時間を、接続機器毎の総使用時間に変換する。つまり、ステップS54で集計したデータ種別毎の総使用時間を、接続機器情報テーブル134における該当するデータ種別に対応する接続機器に対する総データ使用時間とする(ステップS55)。例えば、接続機器Aが出力するデータ種別が、データ種別Aおよびデータ種別Bであった場合は、データ種別Aの総使用時間aおよびデータ種別Bの総使用時間bの和(a+b)を、接続機器Aの総データ使用時間とする。
【0068】
そして、計算部142は、予め設定された重要度を定める閾値を用いてステップS55で算出された各接続機器に対する総データ使用時間を弁別し、当該弁別結果を各接続機器の重要度とする。
【0069】
計算部142(制御部14)は、各接続機器が提供するデータを使用するアプリの稼働時間の各接続機器に対する集計値に基づき、接続機器との通信の制御に用いられる重要度を決定する。また、制御部14は、各接続機器が使用するデータを出力するアプリの稼働時間の各接続機器に対する集計値に基づき、接続機器との通信の制御に用いられる重要度を決定する。このような重要度により、アプリの使用(稼働)時間に基づく、つまり各接続機器に関係する(入出力する)データの使用頻度を考慮した適切な車載装置10と各接続機器の通信制御を行うことができる。
【0070】
図5に一例として示した数値(使用時間、閾値)の例では、計算部142は、重要度高中閾値(例えば、20hに設定)を超える使用時間となっているスマートウォッチおよび脳波センサの重要度を「高」と計算し、重要度高中閾値(20h)以下で重要度中低閾値(例えば、5hに設定)以上の使用時間となっているCO2センサの重要度を「中」と計算し、重要度中低閾値(5h)未満のIRカメラの重要度を「低」と計算している。なお、重要度の「高」、「中」、「低」は、後の計算処理で用いるため、「2」、「1」、「0」のような計算が可能な数値にテーブルデータ等を用いて変換する。
【0071】
なお、ここでは、アプリの稼働時間を対象データ種別のデータ使用時間として処理しているが、アプリの稼働中における当該データの平均的使用時間、あるいは使用頻度を考慮した稼働時間とする(例えば、使用頻度に応じた係数を乗算する等)のも有効な方法である。
【0072】
(1-2.アプリの信頼度を用いた重要度の計算方法)
図6を用いて、アプリの信頼度を用いた重要度の計算方法を説明する。まず、
図6に示すように、計算部142は、アプリ情報テーブル133から各アプリのデータ種別(掲示板掲載)と信頼度のデータを取得する(ステップS61)。なお、この際、信頼度のデータは集計処理が可能となるように変換テーブル等を用いて数値(信頼度数)への変換を行う(ここでは、信頼度の高、中、低を数値(信頼度数)3、2、1に変換)。
【0073】
次に、計算部142は、取得した各アプリの信頼度数をデータ種別毎に集計する(ステップS62)。つまり、データ種別毎に当該データ種別のデータが使用される各アプリの信頼度数が累積される。
【0074】
そして、計算部142は、接続機器情報テーブル134の接続機器と出力データ種別(掲示板掲載)のデータを取得し、それらの関係に基づき、各接続機器が出力する出力データ種別(接続機器に応じてその数が異なる)を判断する(ステップS63)。
【0075】
さらに計算部142は、接続機器毎に各接続機器の出力データ種別における(ステップS62で集計された)信頼度数を累積する(ステップS64)。そして、計算部142は、予め設定された重要度を定める閾値を用いてステップS63の集計結果における各接続機器の信頼度数累積値を弁別し、各接続機器の重要度を決定する(ステップS65)。
【0076】
図6には、
図3の接続機器情報テーブル134に基づく、データ種別毎及び信頼度ごとの使用されたアプリの個数が示されている。例えば、
図6には、心拍数が、「信頼度:高」の1個のアプリで使用され、「信頼度:中」の1個のアプリで使用され、「信頼度:低」のアプリでは使用されなかったこと(0個のアプリで使用されたこと)が示されている。また、
図6には、リラックス度が、「信頼度:高」及び「信頼度:低」の0個のアプリで使用され、「信頼度:中」の1個のアプリで使用されたことが示されている。また、
図6には、環境温度がいずれのアプリでも使用されなかったこと(行の値が全て0)が示されている。
【0077】
計算部142は、信頼度数と信頼度毎のアプリの個数の積和を信頼度数累積値として計算する。例えば、脳波センサは、信頼度数が3(「信頼度:高」)の1個のアプリと、信頼度数が2(「信頼度:高」)の1個のアプリで使用されている。このため、計算部142は、脳波センサの累積信頼度を、3*1+2*1=5のように計算する。
【0078】
環境温度のような、いずれのアプリでも使用されていないデータ種別は、使用するアプリの個数がいずれの信頼度についても0であるため、累積信頼度に影響を与えない。IRカメラは、体温と環境温度を出力する。一方で、環境温度はいずれのアプリでも使用されないため、計算部142は、IRカメラの累積信頼度を、体温に関する信頼度数のみを基に、1*1=1のように計算する。
【0079】
図6に一例として示した数値(累計信頼度、閾値)の例では、計算部142は、累計信頼度高中閾値(例えば、2.5に設定)を超える累計信頼度となっているスマートウォッチおよび脳波センサの重要度を「高」と計算し、累計信頼度高中閾値(2.5)以下で累計信頼度中低閾値(例えば、1.5に設定)以上の累計信頼度となっているCO2センサの重要度を「中」と計算し、累計信頼度中低閾値(1.5)未満のIRカメラの重要度を「低」と計算している。
【0080】
(1-3.接続機器の接続状況を用いた重要度の計算方法)
図7を用いて、接続機器の接続状況を用いた重要度の計算方法を説明する。まず、計算部142は、接続機器情報テーブル134の接続機器と接続回数と途絶回数とのデータを取得する(ステップS71)。
【0081】
次に、計算部142は、接続回数/途絶回数(通信途絶指標:通信途絶率の逆数)を算出する(ステップS72)。そして、計算部142は、予め設定された重要度を定める閾値を用いてステップS72で算出した通信途絶指標(あるいはその逆数)を弁別し、当該対象接続機器の重要度を決定する(ステップS73)。なお、通信途絶指標が低いほど重要度値が高くなる。
【0082】
計算部142(制御部14)は、車載装置10と各接続機器の通信における接続頻度と途絶頻度とに基づき、接続機器との通信の制御に用いられる重要度を決定する。従って、このような重要度により、車載装置10と各接続機器の通信接続状態を考慮した適切な車載装置10と各接続機器の通信制御を行うことができる。
【0083】
図7に一例として示した数値(重要度、閾値)の例では、計算部142は、重要度高中閾値(例えば、5に設定)を超える重要度となっているスマートウォッチおよび脳波センサの重要度を「高」と計算し、重要度高中閾値(5)以下で累計信頼度中低閾値(例えば、1.5に設定)以上の累計信頼度となっているIRカメラの重要度を「中」と計算し、累計信頼度中低閾値(1.5)未満のCO2センサの重要度を「低」と計算している。
【0084】
(2.接続コストの計算方法)
図8を用いて、接続機器の接続コストの計算方法を説明する。
図8は、接続コストの計算方法を説明する図である。
【0085】
図8に示すように、計算部142は、ノード(接続機器)ごとの接続方法、データ送信頻度、データ送信容量から接続コストを計算する。このとき、計算部142は、取得部141によって取得された、接続機器情報テーブル134の項目「接続機器」と項目「接続方法」と項目「データ送信頻度」と項目「データ送信容量」のデータ(値)を参照する。
【0086】
接続方法は、有料の電話回線網を使用するか否か(有料の場合は通信コストが高くなる)、通信範囲の広さ(用途に応じた適切な範囲より広すぎると混信等が多くなり通信コストが高くなる)、通信速度(低いほど通信コストが高くなる)、通信耐性(ノイズ等に弱い(耐性が低い)ほど通信コストが高くなる)等が通信コストに影響する。接続方法に対する接続コスト特性値は、例えばこれらの通信特性を考慮して製品設計等により設定される。なお、この接続方法に対する接続コスト特性値は、単位通信量当たり等の所定通信量当たりの接続コストとなる。
【0087】
また、データ送信頻度が多いほど、また、データ送信容量が大きいほど、当該接続機器における通信負荷は大きくなり、接続コストは大きくなる。
【0088】
それゆえ、接続方法に対する接続コストは、例えばこれらの通信特性を考慮して製品設計者等により、これら接続コストに関する各パラメータの値が設定され、そして各パラメータを用いた接続コストの算出方法(算出式等)が設定される。
【0089】
そして、計算部142は、各接続機器における項目「接続方法」と項目「データ送信頻度」と項目「データ送信容量」および上記の接続コスト特性値のデータに基づく予め定めた演算処理により、接続コストを算出する。
【0090】
具体的には、例えば、各接続方法にはその通信特性に応じて接続コスト特性値が設定されている。例えば、接続方法の「Bluetooth」は「1」、「Wi-Fi」は「3」が設定されている。そして、計算部142は、この接続方法に対する接続コスト特性値と、送信データ量に関するパラメータであるデータ送信頻度と、データ送信容量を用いた演算処理(ここでは積算)を行って、接続コストを算出する。
【0091】
図8の例では、計算部142は、スマートウォッチの接続コストの計算値を、1(接続方法:Bluetooth)*60(データ送信頻度)*1(データ送信容量)=60のように計算する。また、計算部142は、IRカメラの接続コストの計算値を3(接続方法:Wi-Fi)*12(データ送信頻度)*70(データ送信容量)=2520のように計算する。
【0092】
次に、計算部142は、予め設定された接続コストレベルを定める閾値を用いて接続コストの計算値を弁別し、当該弁別結果を各接続機器の接続コストの値(接続コスト高・中・低、および各接続機器の優先順位の計算に用いる値)とする。
【0093】
計算部142(制御部14)は、車載装置10と各接続機器の通信における通信接続特性に基づき、接続機器との通信の制御に用いられる接続コストを算出する。従って、このような接続コストにより、車載装置10と各接続機器の通信接続特性を考慮した適切な車載装置10と各接続機器の通信制御を行うことができる。
【0094】
図8に一例として示したデータ(接続方法等、閾値)の例では、計算部142は、接続コスト高中閾値(例えば、2000に設定)を超える接続コスト計算値となっているIRカメラの接続コストを「高」と計算し、接続コスト高中閾値(2000)以下で接続コスト中低閾値(例えば、1000に設定)以上の接続コスト計算値となっている脳波センサの接続コストを「中」と計算し、接続コスト中低閾値(1000)未満のスマートウォッチおよびCO2センサの接続コストを「低」と計算している。なお、接続コストの「高」、「中」、「低」は、後の制御での都合に応じて「2」、「1」、「0」のような計算が可能な数値としてもよい。
【0095】
次に、
図9に示すように、計算部142は、重要度と接続コストから各接続機器の優先順位を計算する。
図9は、優先順位の決定方法を説明する図である。
【0096】
上述の方法により求められた重要度と接続コストの計算値には対応する数値が割り当てられており、例えばここでは、重要度の「高」、「中」、「低」にはそれぞれ「4」、「2」、「0」が割り当てられ、また接続コストの「高」、「中」、「低」にはそれぞれ「0」、「1」、「2」が割り当てられている。なお、この割り当て設定は予め設計者等が設定することになる。
【0097】
計算部142は、重要度と接続コストを用いた予め定めた演算処理、例えば重要度と接続コストの加算によりスコアを計算する。そして、算出してスコアが大きい順に、優先順位を割り振る。
図9の具体的数値例では、スマートウォッチのスコアは6、脳波センサのスコアは5、CO2センサのスコアは4、IRカメラのスコアは0である。そして、計算部142は、このスコア値の大きい順に優先順位を設定する。つまり、計算部142は、この例において、スマートウォッチの優先順位を1、脳波センサの優先順位を2、CO2センサの優先順位を3、IRカメラの優先順位を4と決定する。
【0098】
図10に示すように、表示制御部143は、車載装置10の処理負荷(例えば、通信帯域又はCPUの使用率)が予め定めた負荷(動作に悪影響が生じる負荷)より高くなった場合、接続機器の切断可否をユーザに確認する確認画面を表示部12に表示させる。表示部12は、車両に備えられたLCD等のディスプレイである。また、
図10は、確認画面の一例を示す図である。
【0099】
表示制御部143は、上述の優先順位算出結果に応じて、優先順位の低い接続機器の順で、通信切断の可否を問う表示を表示部12に行う。具体的には、上述の優先順位算出例では、IRカメラの優先順位が最も低いため、まず、表示制御部143は、「車載システムの処理負荷が高くなっています! IRカメラを切断しますか?」というようなメッセージを表示部12に表示させる。
【0100】
通信制御部144は、表示部12の通信切断の可否を問う表示に対する、ユーザの通信切断可否操作(車載装置10のタッチパネルや、接続機器のタッチパネル等の操作)に応じて、対象接続機器との通信切断、あるいは通信制限等を行う。
【0101】
具体的には、上述の優先順位算出結果例によれば、ユーザは、確認画面の操作又は音声入力等により、IRカメラと車載装置10との通信を切断してよいか否かを指示する。そして、ユーザがIRカメラと車載装置10との通信を切断してよいと指示した場合、通信制御部144は、IRカメラと車載装置10との通信を切断、あるいは通信制限を行う。
【0102】
なお、通信制御部144は、実際に制限対象の接続機器との通信を切断してもよいし、制限対象の通信機器からのデータの受信頻度を減らしても(上限の受信頻度を決め、そこまでの受信は行う等)よい。なお、制限対象の接続機器からの受信したデータについては、使用できるデータ(正しく受信できた分)についてのみ利用してもよいし、また全部を破棄してもよい。
【0103】
また、通信制御部144は、ユーザに通信切断可否を問うことなく、通信制限等を行ってもよい。この場合、表示制御部143は、ユーザに通信切断可否を問う表示ではなく、これから行う通信制限内容等を表示することになる。
【0104】
また、表示制御部143は、通信遮断・制限により車載装置10の処理負荷の負荷が十分に低下すると予想されるまで、あるいは全接続機器に対する通信遮断・制限の可否確認が終了するまで、優先順位が低い順に接続機器に対する通信遮断・制限の可否確認表示を順次行う。そして、それに伴うユーザの通信遮断・制限の可否確認結果に基づき、通信制御部144は対応する接続機器に対する通信遮断・制限を行う。
【0105】
具体的には、
図10の確認画面に対して、ユーザがIRカメラと車載装置10との通信を切断しないように指示した場合(例えば、Noを選択)、あるいはIRカメラと車載装置10との通信を切断しても車載装置10の処理負荷の負荷が十分に低下しないと予想される場合、表示制御部143は、IRカメラの次に優先順位が低いCO2センサについて、接続機器との通信を切断してもよいか否かを確認する画面を表示させる。そして、その表示に対するユーザの指示操作に基づき通信制御部144は対応する接続機器に対する通信遮断・制限を行う。
【0106】
なお、接続機器の通信の制限後、車載装置10の処理負荷が十分に低減した場合(通信の制限解除後も処理負荷は適切な状態となると推定される場合)、通信制御部144は、接続機器の通信の制限を解除する。この際、通信制御部144は、優先順位が低い順に通信を制限したのに対し、優先順位が高い順に制限の解除を行う。
【0107】
なお、通信制御部144は、接続機器が送信するデータ容量を削減することにより通信制限を行ってもよい。例えば、IRカメラに対し、撮影した画像の一部の領域のみの画像データを送信する、あるいは高圧縮処理を施した画像データを送信するように制御してもよい。
【0108】
このように、通信制御部144は、重要度及び接続コストに基づく優先度に応じて、複数の接続機器の通信を制御する。これにより、ユーザが享受するアプリの機能性、効果をなるべく低下させず、車載装置10の処理負荷を低減させることができる。
【0109】
図11を用いて、車載装置10(制御部14)の実行する処理の流れを説明する。
図11は、車載装置10(制御部14)の実行する処理の流れを示すフローチャートである。なお、この処理は車載装置10の動作中に繰り返し実行される。
【0110】
まず、制御部14は、アプリ及び接続機器の情報を取得し、アプリ情報テーブル133及び接続機器情報テーブル134の情報を更新する(ステップS101)。
【0111】
次に、制御部14は、車載装置10の負荷、ここでは通信量を閾値と比較し、比較結果に応じて次のように分岐する(ステップS102)。なお、車載装置10の負荷としては、CPUやメモリの使用率から算出する方法等も適用できる。車載装置10の負荷が通信制限を行うべき閾値(第1閾値)を超えている場合、ステップS103に移る。現状の車載装置10の負荷状態が妥当なものである場合(現状の通信制限状態が現状の車載装置10の負荷状態に適したものである場合)、具体的には車載装置10の負荷が通信制限を行うべき閾値(第1閾値)以下で、それ以下であれば通信制限を解除しても支障の無い閾値(第2閾値)を超えている場合、処理を終える。また、現状の車載装置10の負荷状態が低く、適用している通信制限を解除しても支障の無い場合、具体的には車載装置10の負荷が第2閾値以下の場合、ステップS109に移る。
【0112】
車載装置10の負荷が第1閾値を超えた場合(ステップS102、第1閾値超)、車載装置10は、重要度及び接続コストを計算する(ステップS103)。
【0113】
これらの計算として、まず、制御部14は、上述の計算方法により、アプリによるデータの使用時間に基づき接続機器ごとの重要度を計算する。また、制御部14は、上述の計算方法により、アプリの信頼度に基づき接続機器ごとの重要度を計算する(ステップS104)。また、制御部14は、上述の計算方法により、接続機器の接続状況に基づき接続機器ごとの重要度を計算する(ステップS105)。
【0114】
なお、本例では、制御部14は、ステップS103、ステップS104、ステップS105を実行しているが、この内のいずれか1つ又は2つのステップを実行するようにしてもよい。
【0115】
さらに、制御部14は、上述の計算方法により、接続機器の接続状況に基づき、各接続機器の接続コストを計算する(ステップS106)。
【0116】
そして、制御部14は、算出された各重要度及び接続コストに基づき通信スコアを計算し、当該通信スコアに応じて各接続機器の優先順位を決定する(ステップS107)。そして、制御部14は、優先順位に従って接続機器の通信を制限し(ステップS108)、具体的には車載装置10の負荷が適度なものとなるまで(負荷が適度な状態に達しない場合は、全対象接続機器に対する当該処理が終わるまで)優先順位の低い機器から順に通信を制限し、処理を終える。
【0117】
なお、通信の制限が好ましくない接続機器、つまり接続機器との通信対象のデータに関係する(当該データを使用する)アプリが常に駆動しておく必要性が高い重要アプリである等の場合は、予め適用除外対象の接続機器として定めておき(当該条項を記憶しておく)、通信の制限対象から除外する処理とするのが好ましい。
【0118】
また、車載装置10の負荷通信量が第2閾値以下の場合(ステップS102、第2閾値以下)、制御部14は、通信制限中の接続機器で優先順位の最も高い接続機器の通信制限を解除し(ステップS109)、処理を終える。
【0119】
これまで説明してきたように、実施形態の車載装置10は、複数の接続機器との間の通信対象となるデータに関連する複数のアプリの使用状況に基づき、複数の接続機器との通信を制御する。
【0120】
これにより、実施形態によれば、よく使用されていると推定されるデータの通信は維持されやすいように複数の接続機器との通信が制限されるので、車載装置10におけるアプリ実行による機能の維持と、車載装置10の負荷増大時等におけるアプリの動作の異常及び遅延の発生抑止を、バランスよく実現することができる。
【0121】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0122】
1 車載システム
10 車載装置
11 通信部
12 表示部
13 記憶部
14 制御部
21 スマートウォッチ
22 脳波センサ
23 CO2センサ
24 IRカメラ
30 提供装置
31 アプリDB
131 コンテナ領域
132 掲示板
133 アプリ情報テーブル
134 接続機器情報テーブル
141 取得部
142 計算部
143 表示制御部
144 通信制御部