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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036208
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】軒先面戸及びその折板屋根
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/15 20060101AFI20240308BHJP
   E04D 1/30 20060101ALI20240308BHJP
   E04D 3/40 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
E04D13/15 Q
E04D1/30 602D
E04D3/40 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141000
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000175973
【氏名又は名称】三晃金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】接待 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】前田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】河野 二朗
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AA02
2E108BN06
2E108CC01
2E108FF04
2E108GG15
(57)【要約】
【目的】馳締折板タイプの折板屋根板材にて施工された金属屋根の軒先に簡易且つ迅速に装着することができる軒先面戸及びその折板屋根を提供すること。
【構成】隣接する馳締タイプの折板屋根板材同士を馳締めにより連結して施工される折板屋根Bの軒先に装着する軒先面戸Aである。面戸主板11と、該面戸主板11の頂部で且つ該面戸主板11に対して直角状に設けられた接続上部12と、該接続上部12に設けられた挿通開口21と該挿通開口21の内周から中心に向かって突出する突出片22とを備えた接続口部2と備えること。該接続口部2には折板屋根Bの軒先の馳締箇所に巻き付けられて固定される馳巻き係止部31を有し且つ軒先箇所に予め設置されている取付ネジ具3のネジ軸32が挿入できるようにしてなること。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する馳締タイプの折板屋根板材同士を馳締めにより連結して施工される折板屋根の軒先に装着する軒先面戸であって、面戸主板と、該面戸主板の頂部で且つ該面戸主板に対して直角状に設けられた接続上部と、該接続上部に設けられた挿通開口と該挿通開口の内周から中心に向かって突出する突出片とを備えた接続口部と備え、該接続口部には折板屋根の軒先の馳締箇所に巻き付けられて固定される馳巻き係止部を有し且つ軒先箇所に予め設置されている取付ネジ具のネジ軸が挿入できるようにしてなることを特徴とする軒先面戸。
【請求項2】
請求項1に記載の軒先面戸において、前記接続上部は前記面戸主板の正面側に位置するように設けられ、前記接続上部は接続板部のみからなり、該接続板部は、前記面戸主板の頂部と同一としてなることを特徴とする軒先面戸。
【請求項3】
請求項1に記載の軒先面戸において、前記接続上部は前記面戸主板の正面側に位置するように設けられ、前記接続上部は接続板部と該接続板部の前後方向両端より上方に立上り側部を有し、前記接続板は、前記面戸主板の頂部より低位置としてなることを特徴とする軒先面戸。
【請求項4】
請求項1又は3に記載の軒先面戸において、前記突出片の数は3又は4とし、各該突出片は台形状とし、前記接続口部の周囲に沿って等間隔に配置されると共に先端箇所は下方に下がるように傾斜形成されてなることを特徴とする軒先面戸。
【請求項5】
面戸主板と、該面戸主板の頂部で且つ該面戸主板に対して直角状に設けられた接続上部と、該接続上部に設けられた挿通開口と該挿通開口の内周から中心に向かって突出する突出片とを備えた接続口部と備えた軒先面戸と、吊子部の下部にネジ軸部が設けられた取付ネジ具と、該取付ネジ具が隣接する馳締タイプの折板屋根板材同士を馳締めにより連結して施工される折板屋根の軒先に装着される折板屋根とを備え、前記取付ネジ具は折板屋根の軒先の馳締箇所に巻き付けられて固定される馳巻き係止部を有し且つ軒先箇所に予め設置されている取付ネジ具前記軒先面戸の接続口部に前記取付ネジ具の前記ネジ軸部が挿入されると共に、前記突出片が前記ネジ軸に食い込むことを特徴とした折板屋根。
【請求項6】
請求項5に記載の折板屋根において、前記突出片の数は3又は4とし、各該突出片は台形状とし、前記接続口部の周囲に沿って等間隔に配置されると共に先端箇所は下方に下がるように傾斜形成されてなることを特徴とする折板屋根。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、馳締折板タイプの折板屋根板材にて施工された金属屋根の軒先に簡易且つ迅速に装着することができる軒先面戸及びその折板屋根に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製の馳締タイプの折板屋根板材からなり、山形部が連続する屋根の施工が多く行われている。このような屋根の山形部箇所の軒先に雨仕舞,外観性等の目的で装着される面戸が種々開発されている。このような面戸は、屋根用面戸と称されたり、化粧面戸等の種々の名称で称されることもある。
【0003】
そして、その多くの代表的なものとして、面戸に差し込み用の腕状又は板状の突出片が形成され、該突出片を利用して折板屋根板材の一部にビス等の固着具を使用して取り付けるものである。また、面戸の下方に設けられた水切りを、屋根の外壁もしくは外壁の構造材にビス等の固着具にて取り付けるものが存在する。このタイプの面戸を下記に特許文献1及び特許文献2を取り上げた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-120101号公報
【特許文献2】実用新案登録第3209118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1(特開2019-120101号公報)では、軒先面戸の両側に有する爪,ふち及び頂部の突出部をタイトフレームの脚部等に折曲されて固定するものである。また、特許文献2(実用新案登録第3209118号公報)では、面戸の下方に設けられた水切りを、屋根の外壁もしくは外壁の構造材にビス等の固着具にて取り付け、折板屋根板材面戸を折板屋根の軒先に取り付けるものである。
【0006】
特許文献1では、軒先面戸の両側の爪,ふち及び頂部の突出部を折曲してタイトフレームに巻き付けるようにして固定する作業が必要である。この作業は、爪,ふち及び突出部を折り曲げるために工具が必要であり、且つ折り曲げ箇所が複数あり、このようなことから、1つの面戸を取り付けるのに、極めて時間と労力を有することとなり、作業員の肉体的負担が大きくなり、決して効率的な作業とはなり難いものである。
【0007】
特許文献2(実用新案登録第3209118号公報)では、折版屋根用面戸の水返し形状をタッピングネジなどによって外壁もしくは外壁の構造材に固定して、折板屋根板材面戸を折板屋根の軒先に取り付けるものであるため、面戸の閉塞部自体は、折板屋根の軒先部分に配置されているだけであり、特に固定する手段を有していない。そのため、装着作業が面倒であるのみならず、面戸は折板屋根の軒先への装着強度は十分な強度を有しておらず、また装着後においても不安定な状態となる等の問題点が存在する。そこで、本発明の目的は、上記問題点を解決し、且つ軒先面戸を折板屋根の軒先に装着する作業を簡易且つ迅速にでき且つ強固な装着にできる軒先面戸及びその折板屋根を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで発明者は、前記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、隣接する馳締タイプの折板屋根板材同士を馳締めにより連結して施工される折板屋根の軒先に装着する軒先面戸であって、面戸主板と、該面戸主板の頂部で且つ該面戸主板に対して直角状に設けられた接続上部と、該接続上部に設けられた挿通開口と該挿通開口の内周から中心に向かって突出する突出片とを備えた接続口部と備え、該接続口部には折板屋根の軒先の馳締箇所に巻き付けられて固定される馳巻き係止部を有し且つ軒先箇所に予め設置されている取付ネジ具のネジ軸が挿入できるようにしてなることを特徴とする軒先面戸としたことにより、上記課題を解決した。
【0009】
請求項2の発明を、請求項1に記載の軒先面戸において、前記接続上部は前記面戸主板の正面側に位置するように設けられ、前記接続上部は接続板部のみからなり、該接続板部は、前記面戸主板の頂部と同一としてなることを特徴とする軒先面戸としたことにより、上記課題を解決した。
【0010】
請求項3の発明を、請求項1に記載の軒先面戸において、前記接続上部は前記面戸主板の正面側に位置するように設けられ、前記接続上部は接続板部と該接続板部の前後方向両端より上方に立上り側部を有し、前記接続板は、前記面戸主板の頂部より低位置としてなることを特徴とする軒先面戸としたことにより、上記課題を解決した。
【0011】
請求項4の発明を、請求項1又は3に記載の軒先面戸において、前記突出片の数は3又は4とし、各該突出片は台形状とし、前記接続口部の周囲に沿って等間隔に配置されると共に先端箇所は下方に下がるように傾斜形成されてなることを特徴とする軒先面戸としたことにより、上記課題を解決した。
【0012】
請求項5の発明を、面戸主板と、該面戸主板の頂部で且つ該面戸主板に対して直角状に設けられた接続上部と、該接続上部に設けられた挿通開口と該挿通開口の内周から中心に向かって突出する突出片とを備えた接続口部と備えた軒先面戸と、吊子部の下部にネジ軸部が設けられた取付ネジ具と、該取付ネジ具が隣接する馳締タイプの折板屋根板材同士を馳締めにより連結して施工される折板屋根の軒先に装着される折板屋根とを備え、前記取付ネジ具は折板屋根の軒先の馳締箇所に巻き付けられて固定される馳巻き係止部を有し且つ軒先箇所に予め設置されている取付ネジ具前記軒先面戸の接続口部に前記取付ネジ具の前記ネジ軸部が挿入されると共に、前記突出片が前記ネジ軸に食い込むことを特徴とした折板屋根としたことにより、上記課題を解決した。
【0013】
請求項6の発明を、請求項5に記載の折板屋根において、前記突出片の数は3又は4とし、各該突出片は台形状とし、前記接続口部の周囲に沿って等間隔に配置されると共に先端箇所は下方に下がるように傾斜形成されてなることを特徴とする折板屋根としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明では、隣接する馳締タイプの折板屋根板材同士を馳締めにより連結して施工される折板屋根に予め装着された取付ネジ具のネジ軸に対して、本発明における軒先面戸の接続口部を前記ネジ軸の位置に合わせて作業員が軒先面戸を上方に押し上げるのみで、前記取付ネジ具のネジ軸部が軒先面戸の接続口部に挿通し、さらにそのまま軒先面戸を押し上げ続けることで、接続口部の挿通開口にネジ軸部が入り込み貫通し、接続口部の突出片がネジ軸部のネジ溝部(ネジ谷部)に食い込むことで極めて簡易且つ迅速に軒先面戸を折板屋根の軒先に装着することができる。
【0015】
さらに、接続口部の突出片がネジ軸部のネジ溝部(ネジ谷部)に食い込むことにより、接続口部と共に軒先面戸がネジ軸部に極めて強固に固定できる。特に、一旦ネジ軸部のネジ溝部(ネジ谷部)に食い込んだ接続口部の突出片は、その自由端側が基本的に下方に向かって下がるように傾斜して変形するので、作業員は軒先面戸をさらに押し上げ易くなる。
【0016】
そして、軒先面戸が取付ネジ具のネジ軸から外れようとする方向、つまり下方への負荷がかかると、突出片は、かえし或いは逆とげとしての働きをなし、該突出片はネジ溝部(ネジ谷部)により深く食い込もうとし、軒先面戸の折板屋根の軒先への装着状態はより一層強固なものとなり、下方側への負荷に対する耐久性に優れたものにできる。
【0017】
また、取付ネジ具は、折板屋根の軒先の馳締箇所に巻き付けられて固定される馳巻き係止部を有しているので、隣接する馳締タイプの折板屋根板材同士を馳締めにより連結して折板屋根が施工されるときに、軒先箇所における馳締箇所に容易に装着することができる。以上述べたように、本発明における軒先面戸は、施工時においては、折板屋根の軒先に極めて容易に装着し易く、且つ極めて強固に装着できると共に極めて外れ難いという優れた効果を奏するものである。
【0018】
請求項2の発明を、前記接続上部は前記面戸主板の正面側に位置するように設けられ、前記接続上部は接続板部のみからなり、該接続板部は、前記面戸主板の頂部と同一とした構成により、軒先面戸の構造及び成形を簡単にできる。請求項3の発明では、前記接続上部は前記面戸主板の正面側に位置するように設けられ、前記接続上部は接続板部と該接続板部の前後方向両端より上方に立上り側部を有し、前記接続板は、前記面戸主板の頂部より低位置としたてなることを特徴とする軒先面戸とした構成により、接続上部の断面形状を逆門形状にでき、力学的強度が向上し、折板屋根の軒先に軒先面戸をより強固に装着することができる。
【0019】
請求項4の発明を、前記突出片の数は3又は4とし、各該突出片は台形状とし、前記接続口部の周囲に沿って等間隔に配置されると共に先端箇所は下方に下がるように傾斜形成される構成としたことにより、折板屋根の軒先に軒先面戸をより一層簡易且つ強固に装着することができる。
【0020】
突出片の数を3としたものでは、3個の突出片が22ネジ軸部の周囲を三方より食い込むので安定した食い込み状態にできる。また、突出片の数を4としたものでは、4個の突出片が22ネジ軸部の周囲を四方より食い込むのでより一層安定且つ強固にできる。
【0021】
さらに、突出片の先端箇所は下方に下がるように傾斜形成される構成により、軒先面戸を折板屋根の軒先に装着する場合、ネジ軸部を接続口部の挿通開口に挿通させ易くでき、少ない力で軒先面戸を軒先に装着することができる。さらに、接続口部の上方より挿通した取付ネジ具のネジ軸に対して突出片は先端が下方に傾斜して食い込むので、軒先面戸に下方に荷重がかかると突出片はネジ軸部により一層、強く食い込もうとし、耐久性のある装着状態にできる。請求項5及び請求項6の発明では、折板屋根の軒先に軒先面戸を簡易且つ迅速に装着することができ、施工性及び作業効率に優れ、作業員の負担を減らすことができる折板屋根にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(A)は本発明の軒先面戸の斜視図、(B)は(A)の(α)部拡大図、(C)は(B)の(β)部拡大図である。
図2】(A)は本発明の軒先面戸の正面図、(B)は(A)のY1-Y1矢視断面図、(C)は(A)のX1-X1矢視図、(D)の(C)のX2-X2矢視端面図、(E)は(D)の(γ)部拡大図である。
図3】(A)は折板屋根の軒先に軒先面戸を装着した正面図、(B)は折板屋根の軒先に軒先面戸を装着した一部切除且つ断面にした要部拡大正面図、(C)は(B)の(δ)部拡大図、(D)は折板屋根の軒先に軒先面戸を装着した概略断面図、(E)は折板屋根の軒先に軒先面戸を装着した別の実施形態の概略断面図である。
図4】(A)は折板屋根の軒先に軒先面戸を装着した一部切除した斜視図、(B)は軒先面戸と取付ネジ具とを分離した斜視図、(C)は取付ネジ具の斜視図、(D)は隣接する折板屋根板材の下馳部と上馳部との間に取付ネジ具を装着する工程を示す要部略示図である。
図5】(A)の(I)は折板屋根の軒先への軒先面戸の装着を開始しようとする状態を示す正面図であり(II)は(I)の(イ)部拡大図、(B)の(I)は取付ネジ具のネジ軸部が軒先面戸の接続口部に挿通を開始した状態の正面図であり(II)は(I)の(ロ)部拡大図、(C)の(I)は取付ネジ具のネジ軸部が軒先面戸の接続口部に挿通をしている状態の正面図であり(II)は(I)の(ハ)部拡大図、(D)の(I)は折板屋根の軒先への軒先面戸の装着が完了した状態を示す正面図でありであり(II)は(I)の(ニ)部拡大図である。
図6】(A)は軒先面戸の接続上部が接続板部のみからなる実施形態の要部斜視図、(B)は(A)の要部縦断側面図である。
図7】(A)は接続上部及び別の実施形態の接続口部の平面図、(B)は(A)における接続口部の要部斜視図、(C)は接続上部及びさらに別の実施形態の接続口部の平面図、(D)は(C)における接続口部の要部斜視図、(E)はさらに別の実施形態の接続口部の要部斜視図である。
図8】(A)は馳締部を縦馳タイプとした折板屋根の要部の一部切除した正面図、(B)は馳締部を角馳タイプとした折板屋根の要部の一部切除した正面図、(C)はさらに別の実施形態の軒先面戸の縦断側面図である。
図9】(A)は本発明の軒先面戸にシール材を装着した実施形態の斜視図、(B)は本発明の軒先面戸にシール材を装着した実施形態の接続上部の一部を切除した正面図、(C)は(B)の要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明における軒先面戸及びその折板屋根の実施形態を図面に基づいて説明する。また、本発明における軒先面戸は、構造によって「軒先見切り面戸」,「軒先水切り面戸」等と称することもあり、本発明では主に、軒先面戸と称して説明する。まず、軒先面戸Aについて説明する。本発明の軒先面戸Aは、主に面戸部1と接続口部2とを有している〔図1(A),図2(A),(B)参照〕。
【0024】
さらに、面戸部1は、面戸主板11と接続上部12と傾斜側部13とを有している。また、軒先面戸Aには必要に応じて見切り部14を有することもある。なお、該見切り部14において「見切り」は、「水切り」と称することもあり、よって「見切り部14」は「水切り部14」と称することもある。また、傾斜側部13と見切り部14は、必要に応じて設けられるものであり、不要であるならば設けられないこともある。
【0025】
面戸主板11は、軒先面戸Aが装着されてなる折板屋根Bの正面より見た山形部に嵌まり込むことができる形状である。具体的には、軒先面戸Aは正面より見て隣接する折板屋根板材8,8,…の下馳部84と上馳部85とが馳締されて構成される略台形山形状部分に沿う形状に形成され、折板屋根Bの軒先の形状と略同等形状となっている(図3図4参照)。面戸主板11の頂部箇所に接続上部12が形成されている〔図1(A),(B),図2参照〕。前記面戸主板11の幅方向両側の傾斜状端縁から、面戸主板11に略直角で且つ背面側に向かって傾斜状側部13,13が形成されている。
【0026】
接続上部12及び両傾斜状側部13,13は、折板屋根Bの軒先箇所に装着するときに、折板屋根材8の裏面側に当接又は近接するものである〔図3(A),(B)参照〕。また、傾斜状側部13,13及び接続上部12にシール材4が貼着されることもある(図9参照)。該シール材4は、紐状又は帯状のものであり、スポンジ,ゴム,ウレタン材等にて形成されたものである。シール材4は、両傾斜状側部13,13及び接続上部12の接続板部12a上に亘って、連続して両面テープ又は接着剤等にて貼着されたものである〔図9(C)参照〕。このように、軒先面戸Aが折板屋根Bの軒先に装着されることにより、軒先面戸Aと、折板屋根Bの山形部裏面側との間にシール材4が挟持される状態となり、折板屋根Bと軒先面戸Aとの間において防水性を有する構成にすることができる。
【0027】
面戸主板11には、その外形形状に略等しく、且つ一回り小さく且つ裏面側に膨出形成された台形山形状の凹面部1aが形成されることもある〔図1(A),図2(A),(B)参照〕。該凹面部1aは、補強且つ外観性を良好にするものである。さらに、前記面戸主板11の下端には、該面戸主板11の裏面側に向かって屈曲下端片1bが形成され、該屈曲下端片1bの端縁から、正面より見て略長方形状の見切り部14が形成されている。該見切り部14は、必要に応じて形成されるものであり、必ずしも形成されることはない〔図1(A),図2(A),(B)等参照〕。
【0028】
前記接続上部12には、接続板部12aと、該接続板部12aの前後方向両端より上方に後方側の立上り片12b及び前方側の立上り片12cを有している〔図1(A),図2(A),(B)参照〕。そして、接続板部12aは、上方より見て、長方形状(略長方形状状も含む)に形成されている。接続板部12aは、面戸主板11の頂部よりも僅かに低い位置に形成されている〔図1(A),(B)図2(B)参照〕。
【0029】
接続上部12は、前記接続板部12a,後方側の立上り片12b及び前方側の立上り片12cにて、幅方向に直交する断面は、逆扁平門形状に形成されている〔図2(B)参照〕。後方側の立上り片12bの上端は、面戸主板11の頂部で折り返し状に連続している。したがって、接続上部12は、面戸主板11と一つの金属板にて一体的に形成されることができる。
【0030】
この場合、面戸主板11の頂部箇所より、該面戸主板11に対して略直角状に屈曲形成されたものであって、面戸主板11と接続上部12とは一体的にプレス形成される。また、特に図示しないが、接続上部12と面戸主板11とを別部材として、面戸主板11の上端に接続口部2の後方側の立上り片12bを溶接等の固着手段にて固着する構成としてもかまわない。また、前記前方側の立上り片12cの上端より面戸主板11の前方側に向かって水平状且つ平坦状に前方端片12eが形成されている〔図1(B),図2(B),(C)等参照〕。該前方端片12eは、軒先面戸Aが折板屋根Bの軒先に装着された状態で、折板屋根板材8の頂部裏面側に当接又は略当接状態となる。
【0031】
接続板部12aの略中心位置には、接続口部2が形成されている(図1図2参照)。該接続口部2は、軒先面戸Aを、後述する取付ネジ具3を介して折板屋根の軒先に装着する役目をなす部位である。接続口部2は、挿通開口21と、該挿通開口21の内周から中心に向かって突出する突出片22とを備えている〔図1図2(C),(D),(E)参照〕。
【0032】
接続口部2は、面戸部1の接続上部12の接続板部12aに一体的に形成されるものである。これによって、接続上部12は接続口部2と共に軒先面戸Aを、取付ネジ具3を介して折板屋根Bの軒先に設置される〔図3(A),(B),(D),図4参照〕。接続口部2は、前述したように、挿通開口21と突出片22とによって構成されたものである。
【0033】
挿通開口21は、後述する取付ネジ具3のネジ軸部32が挿通する接続上部12に形成された貫通箇所である。そして、挿通開口21の内周から挿通開口21の中心位置に向かって突出する突出片22が形成される。接続口部2には、後述する取付ネジ具3のネジ軸部32が相対的に挿通する〔図3(B),(C),図5参照〕。
【0034】
具体的には、取付ネジ具3が折板屋根に設置され不動状態で装着されているので、軒先面戸Aの接続口部2が上方に押し上げられることによって、取付ネジ具3のネジ軸部32が接続口部2に挿通するものである(図5参照)。そして、接続口部2の挿通開口21に挿通したネジ軸部32に突出片22の先端が食い込み、接続口部2と共に接続上部12が取付ネジ具3のネジ軸部32に固定される〔図3(C),図5(B)乃至(D)の各(II)参照〕。
【0035】
接続口部2の突出片22は、2以上の複数個とし、挿通開口21の周囲に周方向に沿って等間隔に設けられる。なお、接続口部2の突出片22の個数は、1個でもかまわない。具体的には、突出片22の個数は4個が好適である。突出片22の個数を4個とした場合には、挿通開口21を挿通した取付ネジ具3のネジ軸部32を周方向に沿って4個の突出片22が等間隔にネジ軸部32のネジ溝部(ネジ谷部)32aに食い込むことになり、面戸部1の接続上部12が極めて安定した状態で取付ネジ具3に固定されるものである〔図3(C),図5(B)乃至(D)の各(II)参照〕。
【0036】
突出片22は、挿通開口21の内周から中心に向かって先端が狭くなる台形状となることが好ましい〔図1(B),(C),図2(C)乃至(D)参照〕。そして、隣接する突出片22同士の間にはスペースが存在するが、このスペースは挿通開口21の一部である〔図1(C)参照〕。また、接続上部12が水平状に配置された状態で、接続口部2の突出片22の先端部分、つまり挿通開口21の中心側寄りの部分が、下方に下がるように傾斜している。突出片22の先端が下方に下がるように傾斜していることで、不動状態の取付ネジ具3のネジ軸部32が挿通開口21の上方側から挿通させることが行い易くなる〔図5(B)乃至(D)参照〕。
【0037】
接続口部2の突出片22の個数を等間隔に3個とすることも好適であり、挿通開口21に挿通した取付ネジ具3のネジ軸部32を突出片22が等間隔に3方向から食い込み安定した接続口部2の固定状態にすることができる。また、ネジ軸部32を挿通開口21に挿通するときの突出片22による抵抗を小さくすることができ、軒先面戸Aの折板屋根への装着作業を楽にできる。接続上部12には、前記接続口部2の幅方向両側箇所に上方に膨出する補強部12d,12dが形成されている〔図1(B),図2(C),(D)等参照〕。該補強部12dは、必要に応じて形成されるものであり、必ずしも形成されなくてもよい。
【0038】
取付ネジ具3は、馳巻き係止部31とネジ軸部32とからなり、馳巻き係止部31は馳巻舌片31aと、接続舌片31bとを有している〔図3(B),図4(C)参照〕。馳巻き係止部31は、後述する折板屋根板材9の下馳部と上馳部との間に巻き付けるようにして装着されるものである〔図3(B),図4(D)参照〕。その馳巻き係止部31は、下馳部84と略同等の形状をなしており、円弧状にロール形成されている〔図4(C),(D)参照〕。
【0039】
馳巻き係止部31の形状には、折板屋根Bの馳締部が縦馳としたものに対応する縦馳タイプとしたものや〔図8(A)参照〕、前記折板屋根板材8の下馳部84と上馳部85とが角馳としたものに対応する角馳タイプとしたものが存在する〔図8(B)参照〕。接続舌片31bは、薄板状で且つ方形状であり、ネジ軸部32が固着されており、具体的には接続舌片31bにネジ軸部32が入り込む切除部が形成され、該切除部にネジ軸部32の一端が入り込み溶接等の固着手段によって固着されている。
【0040】
次に、本発明における軒先面戸Aが装着される折板屋根Bについて、軒先面戸Aを折板屋根Bの軒先に装着する工程に基づいて説明する。折板屋根Bは、主に、前述した軒先面戸Aと、取付ネジ具3と、折板屋根板材8により構成される。折板屋根板材8は、底面部81の幅方向両側より傾斜状の立上り側部82,82が形成されている〔図3(A),(B),(D),(E),図4(A)等参照〕。
【0041】
該立上り側部82,82の一方の上端には略平坦状又は緩傾斜面状の山形状頂部83が形成されている。該山形状頂部83の外端から下馳部84が形成される。他方の立上り側部82の上端には山形状頂部83が形成され、該山形状頂部83の外端から上馳部85が形成される。そして、隣接する折板屋根板材8,8同士の下馳部84と上馳部85とが馳締めされて馳締連結部Jが構成され、馳締タイプの折板屋根Bが構成される。折板屋根Bは、頂部中心箇所に馳締連結部J箇所を有する台形状の山形部が所定間隔をおいて配置される構造である〔図3(A)参照〕。
【0042】
下馳部84及び上馳部85は、その断面形状に円弧形状の部分が存在する丸馳形状に形成されたものであるが、その他に形状を略方形状とした角馳タイプのものや〔図8(A)参照〕、又は形状を略逆L字形状とした縦(立)馳タイプのもの〔図8(B)参照〕が存在する。
【0043】
まず、折板屋根Bは、複数の折板屋根板材8,8,…が配置され、隣接する折板屋根板材8,8の下馳部84と上馳部85とが馳締連結され、馳締連結部Jが形成される。下馳部84及び上馳部85は、略円弧状又は略曲線状の部分を有する丸馳タイプのものであり、その隣接する折板屋根板材8,8の軒先箇所における下馳部84と上馳部85とを馳締めして略円弧状又は略曲線状の部分を有する丸馳タイプの馳締連結部Jが形成される。この下馳部84と上馳部85とを馳せ締めする際に、その下馳部84に取付ネジ具3の馳巻き係止部31が係止される〔図3(B)乃至(E)参照〕。
【0044】
そして、下馳部84と上馳部85との間に取付ネジ具3の馳巻き係止部31を巻き込むように挟持し、馳締め連結される。このようにして、取付ネジ具3は、折板屋根Bの全部の山形部の頂部、或いは軒先面戸Aを必要とする山形部に装着される〔図3(A)参照〕。
【0045】
取付ネジ具3が折板屋根Bの軒先に装着されたときには、折板屋根Bの山形状頂部83,83の下面側からネジ軸部32の軸端が下方に向かって垂直状に突出するようにして配置される状態となる〔図3(C),図4(B),図5(A)等参照〕。そして、作業員が軒先面戸Aの下方部分を両手で持ち、接続上部12の接続口部2が前記取付ネジ具3のネジ軸部32の下方の位置するように設定する。
【0046】
次に、作業員は、軒先面戸Aをそのまま上方に押し上げて、取付ネジ具3のネジ軸部32の下端が接続口部2の挿通開口21に位置させる〔図5(A)の(I)及び(II)参照〕。さらに、そのまま、軒先面戸Aを押し上げネジ軸部32の下端から挿通開口21に挿通させる〔図5(B)の(I)及び(II)参照〕。さらに、軒先面戸Aを押し上げてゆくと、接続口部2の突出片22がネジ軸部32のネジ溝部(ネジ谷部)32aに食い込み始めるが〔図5(C)の(I)及び(II)参照〕、そのまま、押し上げて接続上部12が折板屋根Bの山形部の頂部下面に当接又は略当接させる〔図5(D)の(I)及び(II)参照〕。このとき、接続口部2の突出片22は、取付ネジ具3のネジ軸部32のネジ溝部(ネジ谷部)32aに食い込み軒先面戸Aは、折板屋根Bの山形部に装着固定できる。
【0047】
図3(D),図4(A)は、折板屋根Bの軒先に軒先面戸Aを装着した一部切除した側面図である。図中91はタイトフレームであり、92は馳締用吊子(緊定金具とも言う)であり、前記タイトフレーム91上に馳締用吊子92が固着され、該馳締用吊子92を介して隣接する折板屋根板材8,8の下馳部84と上馳部85とが馳締連結され、馳締連結部Jが形成される。また、93は外壁であり、94は、前記外壁93に装着された軒先水切り材である。軒先面戸Aは、折板屋根Bの軒先に装着した後、必要に応じて軒先面戸Aの見切り部14を軒先水切り材94にビス等の固着具にて固着し、折板屋根Bの軒先への軒先面戸Aの装着が完了する。95は、鉄骨等の構造材であり、該構造材95上に前記タイトフレーム91が設置固着される。
【0048】
図3(E)は、折板屋根Bに軒先水切り材94が設けられていない場合の実施形態であり、この場合では、軒先面戸Aの見切り部14は、外壁93に直接ビス等の固着具にて固着される。また、折板屋根Bの軒先に装着され且つ隣接する軒先見切面戸A,A同士は、見切り部14の幅方向一端側に形成された連結突起片14aが隣接する軒先面戸Aの見切り部14の裏面側に配置され、前記連結突起片14a部分がビス等の固着具で固着される〔図3(A)参照〕。さらに、ビスにて軒先面戸Aの見切り部14が軒先水切り材94に固着されてもよい。連結突起片14aには、あらかじめビス等の固着具用の孔が形成されている。
【0049】
本発明では、隣接する馳締タイプの折板屋根板材8,8同士を馳締めにより連結して施工される折板屋根Bに予め装着された取付ネジ具3のネジ軸32に対して、本発明における軒先面戸Aの接続口部2を前記ネジ軸32の位置に合わせて作業員が軒先面戸Aを上方に押し上げるのみで、前記取付ネジ具3のネジ軸部32が軒先面戸の接続口部2に挿通する。そして、そのまま軒先面戸Aを押し上げ続けることで、接続口部2の挿通開口21にネジ軸部32が入り込み貫通し、接続口部2の複数の突出片22,22,…がネジ軸部32のネジ溝部(ネジ谷部)32aに食い込むことで、軒先面戸Aを折板屋根Bの軒先に極めて簡易且つ迅速に装着することができる。
【0050】
さらに、接続口部2の突出片22がネジ軸部32のネジ溝部(ネジ谷部)32aに食い込むことにより、接続口部2と共に軒先面戸Aがネジ軸部32に極めて強固に固定できる。特に、一旦、取付ネジ具3のネジ軸部32のネジ溝部(ネジ谷部)32aに食い込んだ接続口部2の突出片22は、その自由端側が基本的に下方に向かって下がるように傾斜して変形するので、作業員は軒先面戸Aをさらに押し上げ易くなる〔図3(C),(D),図5(B)参照〕。
【0051】
そして、軒先面戸Aが取付ネジ具3のネジ軸32から外れようとする方向、つまり下方への負荷がかかると、突出片22は、下方への負荷に抵抗するかえし状或いは逆とげ状としての働きをなし、該突出片22はネジ溝部(ネジ谷部)32aにより深く食い込もうとし、軒先面戸Aの折板屋根Bの軒先への装着状態はより一層強固なものとなり、下方側への負荷に対する耐久性に優れたものにできる〔図3(C)参照〕。これによって、軒先面戸Aは、下方側への負荷に対して強固に耐え得るものであり、耐久性に優れたものにできる。
【符号の説明】
【0052】
A…軒先面戸、11…面戸主板、12…接続上部、12a…接続板部、
12b…後方側の立上り側部、12c…前方側の立上り側部、2…接続口部、
21…挿通開口、22…突出片、3…取付ネジ具、31…馳巻き係止部、32…ネジ軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9