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特開2024-36212無線品質の効率的な測定のための基地局装置、端末装置、制御方法、及びプログラム
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  • 特開-無線品質の効率的な測定のための基地局装置、端末装置、制御方法、及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036212
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】無線品質の効率的な測定のための基地局装置、端末装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/10 20090101AFI20240308BHJP
【FI】
H04W24/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141010
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】梅原 雅人
(72)【発明者】
【氏名】李 ヤンウェイ
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA23
5K067AA41
5K067EE02
5K067EE10
(57)【要約】
【課題】上りリンクと下りリンクとの間の干渉の端末装置による測定の実行タイミングを適切に制御すること。
【解決手段】基地局装置は、第1の端末装置が受信する下りリンクの信号に干渉すると共に第2の端末装置によって送信される、上りリンクの信号の第1の品質の測定のための設定情報を、レイヤ3のシグナリングによって第1の端末装置へ通知し、第1の端末装置へ、第1の品質の測定を設定情報に基づいて実行し又は実行中の測定を停止させるための指示を、レイヤ1又はレイヤ2のシグナリングによって送信する。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端末装置が受信する下りリンクの信号に干渉すると共に第2の端末装置によって送信される、上りリンクの信号の第1の品質の測定のための設定情報を、レイヤ3のシグナリングによって前記第1の端末装置へ通知する通知手段と、
前記第1の端末装置へ、前記第1の品質の測定を前記設定情報に基づいて実行し又は実行中の当該測定を停止させるための指示を、レイヤ1又はレイヤ2のシグナリングによって送信する指示手段と、
を有することを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記レイヤ2のシグナリングは、下りリンクの媒体アクセス制御・制御エレメント(DL MAC CE)によるシグナリングである、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記レイヤ1のシグナリングは、下りリンク制御情報(DCI)によるシグナリングである、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記レイヤ3のシグナリングは、RRCReconfigurationメッセージによるシグナリングである、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記第1の端末装置による前記測定の結果を受信する受信手段をさらに有する、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項6】
前記通知手段は、さらに、前記測定の結果をレイヤ1、レイヤ2、又は、レイヤ3のいずれのメッセージで送信すべきかを前記第1の端末装置へ指示する情報を、前記レイヤ3のシグナリングにより前記第1の端末装置へ通知する、ことを特徴とする請求項5に記載の基地局装置。
【請求項7】
前記通知手段は、さらに、前記測定の結果をレイヤ1、レイヤ2、又は、レイヤ3のいずれのメッセージで送信すべきかを前記第1の端末装置が判定するための前記第1の品質に関する所定値を、前記レイヤ3のシグナリングにより前記第1の端末装置へ通知する、ことを特徴とする請求項5に記載の基地局装置。
【請求項8】
前記設定情報は、前記上りリンクの信号として上りリンクのサウンディング参照信号(SRS)の参照信号受信電力(RSRP)又は前記上りリンクの信号が送信される周波数範囲の受信信号強度インジケータ(RSSI)を測定するために用いられる情報を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項9】
前記通知手段は、前記第2の端末装置が前記基地局装置に接続されている場合、前記基地局装置から前記第1の端末装置へ送信される下りリンクの信号の第2の品質の測定のための設定情報を、レイヤ3のシグナリングによって前記第2の端末装置へ通知し、
前記指示手段は、前記第2の品質の測定を前記設定情報に基づいて実行し又は実行中の当該測定を停止させるための指示を、レイヤ1又はレイヤ2のシグナリングによって前記第2の端末装置へ送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項10】
前記第2の端末装置が送信する上りリンクの信号が、他の基地局装置に接続されている第3の端末装置へ送信される下りリンクの信号へ干渉する場合、前記第2の端末装置が送信する上りリンクの信号の第3の品質を当該第3の端末装置が測定することを可能とするための情報を前記他の基地局装置へ提供する提供手段をさらに有する、ことを特徴とする請求項9に記載の基地局装置。
【請求項11】
前記他の基地局装置から前記第3の端末装置へ送信される下りリンクの信号の第4の品質を前記第2の端末装置が測定することを可能とするための情報を前記他の基地局装置から受信する受信手段をさらに有する、ことを特徴とする請求項10に記載の基地局装置。
【請求項12】
前記第2の端末装置が他の基地局装置に接続されている場合に、前記他の基地局装置から、前記第1の品質の測定を前記第1の端末装置が測定することを可能とするための情報を受信する受信手段をさらに有する、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項13】
前記基地局装置から前記第1の端末装置へ送信される下りリンクの信号の第5の品質を前記第2の端末装置が測定することを可能とするための情報を前記他の基地局装置へ提供する提供手段をさらに有する、ことを特徴とする請求項12に記載の基地局装置。
【請求項14】
端末装置であって、
前記端末装置が接続中の基地局装置から下りリンクの信号を受信する場合に、前記端末装置が受信する下りリンクの信号に干渉すると共に第2の端末装置によって送信される、上りリンクの信号の第1の品質の測定のための設定情報を、レイヤ3のシグナリングによって前記基地局装置から受信することにより、前記第1の品質の測定の設定を行う設定手段と、
前記基地局装置から、前記第1の品質の測定を前記設定情報に基づいて実行し又は実行中の当該測定を停止させるための指示を、レイヤ1又はレイヤ2のシグナリングによって受信することにより、指示された測定を実行する測定手段と、
前記測定の結果を前記基地局装置へ通知する通知手段と、
を有することを特徴とする端末装置。
【請求項15】
前記レイヤ2のシグナリングは、下りリンクの媒体アクセス制御・制御エレメント(DL MAC CE)によるシグナリングである、ことを特徴とする請求項14に記載の端末装置。
【請求項16】
前記レイヤ1のシグナリングは、下りリンク制御情報(DCI)によるシグナリングである、ことを特徴とする請求項14に記載の端末装置。
【請求項17】
前記レイヤ3のシグナリングは、RRCReconfigurationメッセージによるシグナリングである、ことを特徴とする請求項14に記載の端末装置。
【請求項18】
前記通知手段は、前記レイヤ3のシグナリングにより前記基地局装置から受信した指示に基づいて、前記測定の結果をレイヤ1、レイヤ2、又は、レイヤ3のいずれかのメッセージで前記基地局装置へ送信する、ことを特徴とする請求項14に記載の端末装置。
【請求項19】
前記通知手段は、前記測定の結果をレイヤ1、レイヤ2、又は、レイヤ3のいずれのメッセージで送信すべきかを判定するための前記第1の品質に関する所定値を前記基地局装置から前記レイヤ3のシグナリングにより受信し、前記第1の品質と前記所定値とに基づいて、前記測定の結果をレイヤ1、レイヤ2、又は、レイヤ3のいずれかのメッセージで前記基地局装置へ送信する、ことを特徴とする請求項14に記載の端末装置。
【請求項20】
前記設定情報は、前記上りリンクの信号として上りリンクのサウンディング参照信号(SRS)の参照信号受信電力(RSRP)又は前記上りリンクの信号が送信される周波数範囲の受信信号強度インジケータ(RSSI)を測定するために用いられる情報を含む、ことを特徴とする請求項14に記載の端末装置。
【請求項21】
前記設定手段は、前記端末装置が前記基地局装置へ送信する上りリンクの信号が前記基地局装置または他の基地局装置が送信する下りリンクの信号に干渉する場合に、当該基地局装置又は当該他の基地局装置が送信する下りリンクの信号の第2の品質の測定のための設定情報を、レイヤ3のシグナリングによって前記基地局装置から受信することにより、前記第2の品質の測定の設定を行い、
前記測定手段は、前記基地局装置から、前記第2の品質の測定を前記設定情報に基づいて実行し又は実行中の当該測定を停止させるための指示を、レイヤ1又はレイヤ2のシグナリングによって受信することにより、指示された測定を実行し、
前記通知手段は、前記第2の品質の測定の結果を前記基地局装置へ通知する、
ことを特徴とする請求項14に記載の端末装置。
【請求項22】
基地局装置によって実行される制御方法であって、
第1の端末装置が受信する下りリンクの信号に干渉すると共に第2の端末装置によって送信される、上りリンクの信号の第1の品質の測定のための設定情報を、レイヤ3のシグナリングによって前記第1の端末装置へ通知することと、
前記第1の端末装置へ、前記第1の品質の測定を前記設定情報に基づいて実行し又は実行中の当該測定を停止させるための指示を、レイヤ1又はレイヤ2のシグナリングによって送信することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項23】
端末装置によって実行される制御方法であって、
前記端末装置が接続中の基地局装置から下りリンクの信号を受信する場合に、前記端末装置が受信する下りリンクの信号に干渉すると共に第2の端末装置によって送信される、上りリンクの信号の第1の品質の測定のための設定情報を、レイヤ3のシグナリングによって前記基地局装置から受信することにより、前記第1の品質の測定の設定を行うことと、
前記基地局装置から、前記第1の品質の測定を前記設定情報に基づいて実行し又は実行中の当該測定を停止させるための指示を、レイヤ1又はレイヤ2のシグナリングによって受信することにより、指示された測定を実行することと、
前記測定の結果を前記基地局装置へ通知することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項24】
コンピュータを請求項1から13のいずれか1項に記載の基地局装置として機能させるためのプログラム。
【請求項25】
コンピュータを請求項14から21のいずれか1項に記載の端末装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上りリンクの信号と下りリンクの信号との測定の効率化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
セルラ通信システムでは、無線リソースの柔軟な使用のために、時分割複信(TDD)の採用が進められている。TDDでは、端末装置から基地局装置の方向へ信号が送信される上りリンクと、基地局装置から端末装置の方向へ信号が送信される下りリンクとに対して、それぞれタイムスロットが割り当てられる。TDDでは、上りリンク及び下りリンクのデータ量に応じて、上りリンク又は下りリンクへ割り当てる量を柔軟に設定することにより、効率的な通信を行うことが可能となる。
【0003】
一方で、このような柔軟な設定を用いると、例えば相互に隣接するセル間で、端末装置から送信された上りリンクの信号が、他の端末装置が受信する下りリンクの信号に干渉してしまいうる。また、基地局装置から送信された下りリンクの信号が、他の基地局装置が受信する上りリンクの信号にも干渉してしまいうる。このような干渉は、クロスリンク干渉(CLI)と呼ばれうる。また、1つのセル内の隣接する2つの周波数リソースにおいて、共通するタイムスロットがそれぞれ上りリンクと下りリンクに割り当てられることも想定される。この場合にも同様の干渉が発生しうる。このように、柔軟な制御を行うことにより干渉が発生しうるため、その干渉の影響を軽減することが重要となる。非特許文献1には、CLIを軽減する基地局装置間での協調動作のために、端末装置がCLIの大きさを測定して基地局装置へ報告することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】3GPP寄書、R2-2001700、2020年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上りリンクと下りリンクとの間の干渉を測定する際には、その干渉が発生することが想定されるリソースにおける上りリンク又は下りリンクの通信を一時停止するなどの制御が必要となる。一方で、非特許文献1の手法では、測定の開始及び終了がレイヤ3シグナリングによって指示される。このため、例えば干渉の測定が行われるべき状況となってから測定が開始されるまでの期間が長期化し、また、不必要に長期にわたって測定が行われうる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上りリンクと下りリンクとの間の干渉の端末装置による測定の実行タイミングを適切に制御する技術を提供する。
【0007】
本発明の一態様による基地局装置は、第1の端末装置が受信する下りリンクの信号に干渉すると共に第2の端末装置によって送信される、上りリンクの信号の第1の品質の測定のための設定情報を、レイヤ3のシグナリングによって前記第1の端末装置へ通知する通知手段と、前記第1の端末装置へ、前記第1の品質の測定を前記設定情報に基づいて実行し又は実行中の当該測定を停止させるための指示を、レイヤ1又はレイヤ2のシグナリングによって送信する指示手段と、を有する。
【0008】
本発明の一態様による端末装置は、前記端末装置が接続中の基地局装置から下りリンクの信号を受信する場合に、前記端末装置が受信する下りリンクの信号に干渉すると共に第2の端末装置によって送信される、上りリンクの信号の第1の品質の測定のための設定情報を、レイヤ3のシグナリングによって前記基地局装置から受信することにより、前記第1の品質の測定の設定を行う設定手段と、前記基地局装置から、前記第1の品質の測定を前記設定情報に基づいて実行し又は実行中の当該測定を停止させるための指示を、レイヤ1又はレイヤ2のシグナリングによって受信することにより、指示された測定を実行する測定手段と、前記測定の結果を前記基地局装置へ通知する通知手段と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上りリンクと下りリンクとの間の干渉の端末装置による測定の実行タイミングを適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】無線通信ネットワークの構成例を示す図である。
図2】装置のハードウェア構成例を示す図である。
図3】基地局装置の機能構成例を示す図である。
図4】端末装置の機能構成例を示す図である。
図5】無線通信ネットワークにおいて実行される処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
(システム構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。無線通信システムは、例えば、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP(登録商標))の第5世代(5G)のセルラ通信規格に準拠した無線通信システムでありうる。無線通信システムは、例えば、基地局装置101並びに基地局装置102、及び、端末装置111並びに端末装置112を含む。一例において、端末装置111は、基地局装置101との間で接続を確立して通信を行い、また、端末装置112は、基地局装置102との間で接続を確立して通信を行う。なお、これは一例であり、例えば、端末装置111と端末装置112との両方が、基地局装置101と接続して通信を行ってもよい。図1では、説明を簡単にするために、2つの基地局装置と2つの端末装置とが示されているが、無線通信システムは、一般性を失うことなく、多数の基地局装置及び多数の端末装置を含みうる。
【0013】
本実施形態では、1つの周波数帯域の1つのタイムスロットにおいて、上りリンクの通信と下りリンクの通信とが混在するような柔軟なリソース割り当てが行われるものとする。例えば、基地局装置101が端末装置111に対して上りリンクのリソースを割り当てたタイミングで、基地局装置102が端末装置112に対して下りリンクのリソースを割り当てうる。このような場合、端末装置111から送信される上りリンク信号が、端末装置112において受信される下りリンク信号に干渉しうる。この干渉は、端末装置111が端末装置112に近い位置に存在する場合、非常に高い受信電力で端末装置112において受信されうる。そして、端末装置112の位置において、下りリンクの信号が受信されるタイミングと、端末装置111から送信された上りリンクの信号が受信されるタイミングとで、フレームのタイミングが大幅にずれうる。この場合、使用する周波数リソースが上りリンクと下りリンクとで異なっていても、信号の直交性を担保できないため、干渉を無視することができなくなりうる。このため、このような干渉が存在する状況においては、端末装置112の通信ができない場合が生じうる。また、端末装置111から送信された上りリンク信号に対して、基地局装置102から送信された下りリンク信号が、基地局装置101の位置において干渉しうる。しかしながら、この干渉については、例えば、基地局装置101と基地局装置102とを、十分に離れた位置に配置可能であること、また、基地局装置102から送出される電波の向き(チルト角)の設定などの制御により、十分に低く抑制することができる。
【0014】
このため、本実施形態では、端末装置111から送信された上りリンク信号が、端末装置112へ送信された下りリンク信号に干渉する状況に着目して説明する。なお、端末装置111と端末装置112との両方が、基地局装置101と接続して通信を行っている場合にも、以下の議論を適用することができる。すなわち、基地局装置101が、端末装置112に対して使用可能な周波数帯域のうちの一部の周波数リソースを用いて下りリンク信号を送信しながら、その使用可能な周波数帯域内の別の一部の周波数リソースを用いて端末装置111に上りリンク信号を送信させる場合に、以下で説明する処理を適用することができる。なお、図1の例では、端末装置111が送信する上りリンク信号が端末装置112に宛てられた下りリンクの信号に干渉する例を示しているが、端末装置112が送信する上りリンク信号が端末装置111に宛てられた下りリンクの信号に干渉することも当然にありうる。このため、以下では、特に区別する必要がない場合には、参照符号の記載を省略して、端末装置111及び端末装置112を「端末装置」と呼ぶ場合がある。
【0015】
端末装置間の上りリンク信号と下りリンク信号との間の干渉に対処するには、端末装置において周囲の環境を観測させて、端末装置間の干渉の影響が低いことが確認されてから、上りリンクのリソースの割り当てを行うことが想定される。例えば、端末装置111が送信する上りリンク信号を端末装置112が測定し、また、端末装置112等が受信する下りリンク信号を端末装置111が測定して、その測定結果に基づいて、リソースの割り当て制御が行われる。端末装置は、周囲の無線信号を検出して、受信信号強度インジケータ(RSSI)、参照信号受信電力(RSRP)、参照信号受信品質(RSRQ)、信号対雑音比(SNR)、信号対干渉および雑音比(SINR)を測定する。端末装置は、例えば、下りリンクの信号が送信されていない間に周囲の上りリンクの信号を測定し、また、上りリンクの信号が送信されていない間に周囲の下りリンクの信号を測定しうる。
【0016】
端末装置は、例えば、周囲の上りリンクの信号として、周囲の端末装置が送信しているサウンディング参照信号(SRS)のRSRPや、SRSやそれ以外の信号についてのRSSI等を測定し、測定した結果(SRS-RSRP、CLI-RSSI)を接続中の基地局装置へ通知する。ここで、CLI-RSSIは、クロスリンク干渉(CLI)の大きさを示す値である。この測定は、主として、周囲の端末装置による上りリンクの信号によって干渉を受ける可能性のある端末装置によって実行されうる。なお、端末装置は、下りリンクの通信への干渉が発生しうる上りリンク通信を行う際に、基地局装置の制御によってSRSを送信するように設定される。ここで、SRSを送信する端末装置は、他の端末装置が送信している上りリンクの信号の送信を行わなくてもよい。また、SRSを送信する端末装置は、使用可能な周波数帯域のうちの、そのSRSや他の信号を送信している周波数帯域を除いた他の周波数帯域において、又は、そのSRSや他の信号を送信していない期間中に、他の端末装置が送信しているSRSや他の信号の測定を行ってもよい。また、端末装置は、下りリンクの信号が送信されていない間に、使用可能な周波数帯域の全体についてのRSSIを、上りリンクの信号に関する測定結果としてもよい。なお、端末装置は、周囲において上りリンクに割り当てられている周波数リソースを示す情報を基地局装置から受信して、その情報に基づいて測定を行いうる。
【0017】
また、端末装置は、例えば、周囲の下りリンクの信号として、周囲の基地局装置が送信しているチャネル状態情報(CSI)-参照信号(RS)や、同期信号(SS)などのRSRP、SINR、RSSIなどを測定しうる。そして、端末装置は、測定した結果(CSI-RSRP/SINR/RSSI、SS-RSRP/SINR/RSSI等)を接続中の基地局装置へ通知する。また、端末装置は、その他の信号のRSSIを測定してもよい。一例において、端末装置は、CSI-RSやSSが送信されている周波数帯域に対してはそれらの信号のRSRPやSINR等の測定を行い、CSI-RSやSSが送信されていない周波数帯域に対してはその周波数帯域におけるRSSIを測定しうる。なお、下りリンクの信号については、下りリンクの通信への干渉が発生しうる上りリンク信号を送信する端末装置が、測定を行うように設定されうる。ただし、これに限られず、周囲の端末装置による上りリンクの信号によって干渉を受ける可能性のある端末装置が、この測定を行ってもよい。
【0018】
なお、5Gでは、端末装置に対して、複数のBandwidth Part(BWP)が設定されうる。端末装置は、複数のBWPのうち、アクティブなBWP内の周波数帯域においてのみ、測定を行うことができる。このため、端末装置は、複数のBWPが設定されている場合に、測定対象の周波数領域が設定されたBWPの範囲内に含まれるように、アクティブとするBWPとして選択して、測定を行うようにしうる。また、端末装置は、複数のBWPを所定の時間間隔で切り替えて使用する場合、干渉測定が可能なBWPがアクティブな期間を端末装置が、選択して、そのBWPにおいて干渉を測定してもよい。なお、端末装置は、設定されたBWPのいずれにおいても測定対象の周波数領域についての測定を実行することができない場合には、測定を行わないようにしうる。なお、端末装置は、設定されたBWPのいずれにも測定対象の周波数領域が含まれないような設定を基地局装置から受信した場合、その設定を破棄してもよい。また、端末装置は、その場合に、設定されたBWPのいずれにも測定対象の周波数領域が含まれないことや設定が破棄されたことを基地局装置へ通知してもよい。また、基地局装置は、そのような設定が行われないように、一例において、BWPの再設定を行ってもよい。
【0019】
基地局装置は、端末装置による測定の結果を受信し、その測定結果に基づいて、例えば上りリンクのリソース割り当てを決定しうる。例えば、上りリンクのリソースを割り当てる対象の端末装置における下りリンク信号の受信品質が十分に高い所定値以上である場合、干渉への一定の耐性があると考えられる。このため、このような場合には、基地局装置は、上りリンクの干渉があっても、下りリンクの通信が可能であると判定し、その測定値を得た端末装置に対して上りリンクのリソースを割り当てるようにしうる。一方で、上りリンクのリソースを割り当てる対象の端末装置における下りリンク信号の受信品質が所定値未満である場合、その測定値を得た端末装置に対しては上りリンクのリソースを割り当てないようにしうる。また、例えば、基地局装置は、端末装置による測定の結果に基づいて、下りリンクのリソース割り当てを決定しうる。例えば、上りリンクの信号の強度や品質が十分に小さい所定値未満の端末装置に対しては、上りリンク信号からの大きい干渉を受けずに下りリンクの通信が可能であることが想定される。すなわち、上りリンクの信号受信電力が十分に小さい第1の端末装置は、周囲に上りリンクで通信を行う第2の端末装置が存在しないことが想定される。このため、第1の端末装置に割り当てられる下りリンクのリソースと同じタイムスロットにおいて、第2の端末装置に上りリンクのリソースを割り当てても干渉の影響が十分に抑制可能となる。このため、基地局装置は、このような測定値を得た端末装置に対して下りリンクのリソースを割り当てうる。また、上りリンクの信号を送信した端末装置が接続している基地局装置は、そのリソースと同じタイムスロットで、その端末装置に対して上りリンクのリソースを割り当てうる。なお、この場合、下りリンクの信号の受信者である端末装置と上りリンクの信号の送信者である端末装置とが同じ基地局装置に接続されている場合には、その基地局装置が上りリンクと下りリンクとの両方の割り当てを実行しうる。一方で、下りリンクの信号の受信者である端末装置と上りリンクの信号の送信者である端末装置とが異なる基地局装置に接続されている場合、それらの端末装置のそれぞれの接続先の基地局装置間で、測定結果が共有され、その測定結果に基づいて、リソースの割り当てが行われうる。また、これらの端末装置のそれぞれの接続先の基地局装置のいずれかにおいて、リソースの割り当て可否を判定し、その判定結果の一部が他方の基地局装置へ通知されてもよい。この場合、リソースの割り当て可否を判定する基地局装置に対して、他の基地局装置から測定結果の情報が提供されうる。このリソースの割り当て可否を判定する基地局装置は、上りリンクのリソースを必要とする端末装置が接続中の基地局装置であってもよいし、下りリンクの信号を受信する端末装置が接続中の基地局装置であってもよい。また、これら以外の基地局装置や他のネットワークノードによって、リソースの割り当て可否が判定されてもよい。なお、上りリンクのリソースの割り当て可否のみが判定されてもよく、下りリンクのリソースは当然に割り当て可能としてもよい。同様に、下りリンクのリソースの割り当て可否のみが判定されてもよく、上りリンクのリソースは当然に割り当て可能としてもよい。なお、これらのリソース割り当ては様々な基準で行われうるが、ここではこれ以上詳細に説明しない。
【0020】
基地局装置は、上述のような測定を端末装置に実行させるための設定を端末装置へ通知するように構成される。基地局装置は、例えば、上りリンクの通信を行う端末装置に対して、その上りリンクの通信によって干渉を与えうるリソースブロックにおいて、下りリンクの信号の無線品質の測定を行うための設定情報を通知しうる。基地局装置は、例えば、そのリソースブロックでの下りリンクの無線品質を測定するように、周波数リソースを指定する設定情報をその端末装置へ通知する。なお、そのリソースブロックにおいて、CSI-RSやSSが送信される場合、そのCSI-RSやSSの位置や系列を示す情報が、設定情報として端末装置へ通知されてもよい。また、設定情報は、RSSI、RSRP、SINRなど、測定すべき無線品質の種類を示す情報を含んでもよい。また、基地局装置は、さらに、そのリソースブロックにおいて下りリンクの通信を行う可能性のある端末装置に対して、上りリンクの通信を行う端末装置が送信した上りリンクの信号の無線品質の測定を行うための設定情報を通知してもよい。この場合、設定情報は、例えば、上りリンクの通信を行う端末装置が信号を送信するリソースエレメントの情報を、測定対象の周波数範囲として示す情報として含みうる。例えば、設定情報は、上りリンクの通信を行う端末装置がSRSを送信するリソースエレメントの位置や、SRSの生成に使用された系列の情報を含みうる。
【0021】
なお、基地局装置は、レイヤ3(例えば無線リソース制御(RRC)層)のシグナリングにより、その設定情報を端末装置へ通知しうる。基地局装置は、例えば、RRCReconfigurationメッセージによって、上述の設定情報を送信しうる。RRCReconfigurationメッセージには、CLIに関する測定対象を規定するMeasObjectCLI情報要素が含まれている。このMeasObjectCLI情報要素内の、rssi-ResourceConfig-r16において、測定すべき物理リソースブロックの周波数位置を指定することができる。また、この情報によって、測定を行うタイミングの情報として、測定期間や測定周期などの情報が端末装置に通知されうる。これにより、例えば、下りリンクの信号の測定のための設定情報が端末装置に通知されうる。また、MeasObjectCLI情報要素内の、srs-ResourceConfig-r16において、測定すべきSRSの設定情報が、端末装置へ通知されうる。これにより、例えば、上りリンクの信号の測定のための設定情報が端末装置に通知されうる。
【0022】
上述のような設定は、例えば、上りリンク信号を送信する端末装置と下りリンク信号を受信する端末装置が同じ基地局装置に接続されている場合に適用されうる。上りリンク信号を送信する端末装置と下りリンク信号を受信する端末装置が異なる基地局装置に接続されている場合、これに加えて、隣接セルにおける測定のための設定情報が端末装置に通知されてもよい。この場合、基地局装置は、例えば、上りリンクの通信を行う端末装置に対して、下りリンクの通信を行う端末装置が接続中のセルにおいて送信される同期信号および報知信号(SSB)を測定可能とするための情報を通知しうる。なお、上りリンク信号を送信する端末装置が接続するセルを提供する基地局装置と、下りリンク信号を受信する端末装置が接続するセルを提供する基地局装置とが、異なる通信事業者によって提供される場合にも、この情報が提供されうる。この測定のための設定情報として、SSBが送信される周波数チャネルに関する情報が送信されうる。この周波数チャネルの情報は、例えば、Global Synchronization Channel Number(GSCN)によって示されうる。端末装置は、その設定情報に基づいてSSBの測定を実行し、その周波数チャネル内のどの位置でSSBが送信されたかの情報、そのSSBの送信タイミングの情報、及び、受信信号強度、RSRP、RSRQ等の無線品質の情報を特定して、基地局装置へ報告しうる。なお、端末装置は、SSBの周波数位置を、GSCNや、NR Absolute Radio Frequency Channel Number(NR-ARFCN)によって、基地局装置へ報告しうる。なお、基地局装置は、自装置が使用している周波数チャネルと隣接する周波数チャネルを使用する他の基地局装置のSSBが送信される周波数位置を知っている場合には、その周波数位置を指定する設定情報を端末装置へ送信してもよい。この周波数位置は、例えば、NR-ARFCNによって通知されうる。また、基地局装置は、自装置とのデータの送受信を行わずに隣接チャネルのSSBを測定する期間である、Measurement Gapを、端末装置へ通知してもよい。
【0023】
ここで、例えば、基地局装置が、自装置に接続されている端末装置に対して、上りリンク及び下りリンクのリソースを1つの周波数帯域内の共通するタイムスロットで割り当てるものとする。なお、上りリンクに割り当てられるリソースと下りリンクに割り当てられるリソースは、周波数領域において分離されるが、上りリンクの信号が下りリンクの信号に干渉を及ぼしうる環境であるものとする。この場合、基地局装置は、上りリンクの測定を測定するために下りリンクの信号の送信を停止し、また、下りリンクの測定を測定するために上りリンクの信号の送信を停止することを、自装置の権限において行うことができる。このため、基地局装置は、例えば、上りリンクのSRSが送信されるリソースエレメントの位置や系列、下りリンクのCSI-RSやSSまたは他の信号が送信される位置などの情報を保持している。したがって、基地局装置は、自装置内の配下における干渉の影響の測定を、自装置に接続している端末装置に実行させる場合には、その保持している情報を、その測定を行うべき端末装置へ通知することができる。一方で、基地局装置は、他の基地局装置に接続している端末装置が送信するSRSや、他の基地局装置が送信するCSI-RSやSS、又は他の信号の送信位置などの情報を保持していない。このため、本実施形態では、基地局装置が、他の基地局装置との間で、上述の測定のための設定情報を生成する前に、測定のための情報を交換しうる。
【0024】
例えば、上りリンクの信号を送信する端末装置(干渉を与える可能性がある端末装置)と接続している基地局装置は、他の基地局装置に対して、その上りリンクの信号の送信に関する情報を提供する。例えば、下りリンクのタイムスロットにおいてその一部の周波数範囲が上りリンクに割り当てられることを示す情報が他の基地局装置へ送信される。なお、下りリンクに割り当てられていたタイムスロットを、上りリンクのタイムスロットに割り当て直したことが他の基地局装置へ通知されてもよい。また、上りリンクで信号が送信される周波数範囲(物理リソースブロック)を示す情報や、その上りリンクに割り当てたリソースにおいて通信を行う端末装置によって送信されるSRSの情報(送信されるリソースエレメントやSRSを生成するのに使用された系列など)が、他の基地局装置へ通知されうる。他の基地局装置は、この通知を受信すると、上りリンクの信号によって干渉を受ける可能性のある端末装置に対して、その通知された情報に基づいて上りリンクの信号の測定を実行させうる。例えば、他の基地局装置は、干渉源となる上りリンク信号が送信されうる周波数範囲を指定して、その周波数範囲内でのRSSIの測定を実行するように、自装置に接続中の端末装置へ指示しうる。また、他の基地局装置は、接続中端末装置に対して、SRSが送信されるリソースやそのSRSの生成に使用される系列の情報を通知して、SRSのRSRP等の測定をその端末装置に指示してもよい。
【0025】
また、他の基地局装置に接続中の端末装置からの上りリンクの信号によって干渉を受ける可能性のある下りリンクの信号を送信している基地局装置は、自装置において送信しているCSI-RSやSSの情報を、干渉源となる上りリンクの信号が送信されうる他の基地局装置へ通知しうる。また、基地局装置は、例えば他の基地局装置によって提供されるセルにおける上りリンクの信号によって干渉が発生することが想定される、自装置に接続中の端末装置に対して割り当てる予定のリソース(例えば物理リソースブロック)を示す情報を、当該他の基地局装置へ通知しうる。他の基地局装置は、このリソースにおける測定を実行するように、端末装置に対して通知する測定の設定情報を生成しうる。
【0026】
従来、基地局装置は、上述のような設定情報の通知に加えて、測定の開始及び終了をも、レイヤ3のシグナリングによって端末装置に通知していた。レイヤ3のシグナリングで測定の開始及び終了を通知する場合、測定を適時に開始し終了することができず、例えば、上りリンク信号と下りリンク信号との間の干渉が発生してから測定が開始されるまでの時間が長くなってしまいうる。また、上りリンク信号を測定する際には下りリンク信号の送信が停止され、下りリンク信号を測定する際には上りリンク信号の送信が停止される場合、測定の停止を適時に行うことができないと、不必要に下りリンク信号や上りリンク信号の送信が停止されてしまい、周波数利用効率が低下してしまいうる。また、測定が必要となった際に、都度、レイヤ3でのシグナリングが行われると、そのシグナリングのオーバヘッドによって、周波数利用効率が低下してしまいうる。また、2つの隣接するセルのTDDコンフィグレーションが異なる環境には、上りリンクのタイムスロットの一部を動的に下りリンクとして用いる場合や下りリンクのタイムスロットの一部を動的に上りリンクとして用いる場合など、ごく短い期間だけ(瞬間的に)、上りリンクや下りリンクが使用される環境が含まれうる。このような環境において、測定の開始及び終了がレイヤ3シグナリングによって指示される場合、干渉の測定が行われるべき状況となってから測定が開始されるまでの期間が長いことにより、必要な干渉測定をリアルタイムに行うことができないことが想定される。
【0027】
このため、本実施形態では、基地局装置は、測定の開始及び終了の指示を、レイヤ1又はレイヤ2のシグナリングによって行う。例えば、基地局装置は、物理下りリンク制御チャネル(PDCCH)に含まれる下りリンク制御情報(DCI)を用いて、レイヤ1のシグナリングにより測定の開始及び終了の指示を送信しうる。また、基地局装置は、下りリンクの媒体アクセス制御・制御エレメント(DL MAC CE)を用いて、レイヤ2のシグナリングにより測定の開始及び終了の指示を送信してもよい。
【0028】
端末装置は、測定の開始を指示するレイヤ1又はレイヤ2のシグナリングにより、事前にレイヤ3のシグナリングで通知された設定情報に基づいて測定を開始する。そして、端末装置は、その測定結果を、基地局装置へ通知する。端末装置は、例えば、従来と同様に、レイヤ3のメッセージであるMeasurement Reportを用いて、この測定結果の通知を行いうる。ただし、これに限られず、端末装置は、レイヤ1の上りリンク制御情報(UCI)や、レイヤ2の上りリンクMAC CE(UL MAC CE)などを用いて、測定結果を接続中の基地局装置へ送信してもよい。一例において、基地局装置は、測定結果を含んだUCIのための物理上りリンク制御チャネル用のリソースを事前に用意しておき、そのリソースを端末装置へ通知しうる。
【0029】
また、端末装置は、レイヤ1又はレイヤ2での報告と、レイヤ3での報告とを動的に切り替えてもよい。例えば、下りリンク信号を受信する側の端末装置は、上りリンクの信号の測定値が所定値以上である場合には、レイヤ1又はレイヤ2での測定結果の報告を行い、その測定値が所定値未満である場合にはレイヤ3での測定結果の報告を行うようにしうる。また、例えば、上りリンク信号を送信する側の端末装置は、下りリンクの信号の測定値が所定値未満である場合には、レイヤ1又はレイヤ2での測定結果の報告を行い、その測定値が所定値以上である場合にはレイヤ3での測定結果の報告を行うようにしてもよい。基地局装置は、報告の際のメッセージの切り替えの判定のための所定値を示す情報を、端末装置へ通知しうる。なお、レイヤ3での報告を行っている間にレイヤ1又はレイヤ2での報告に切り替える際の判定のための第1の所定値と、レイヤ1又はレイヤ2での報告を行っている間にレイヤ3での報告に切り替える際の判定のための第2の所定値とが、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。なお、上述の例では、レイヤ3による報告が行われるか、それ以外(レイヤ1又はレイヤ2)による報告が行われるかを判定する例について説明したが、レイヤ1とレイヤ2とのいずれのメッセージが報告に用いられるべきかがさらに判定されてもよい。基地局装置は、その判定のための所定値を端末装置へさらに通知してもよい。
【0030】
また、基地局装置は、レイヤ1~レイヤ3のメッセージのいずれによって、測定結果を報告すべきか否かを、端末装置へ通知してもよい。ここでの通知は、例えばレイヤ3のメッセージによって行われうる。基地局装置は、例えば、上述の設定情報と共に、この通知を端末装置へ送信してもよい。また、基地局装置は、例えばMeasurement Report等のレイヤ3のメッセージによって所定のイベントが発生したと判定した場合に、レイヤ1又はレイヤ2のメッセージで報告を行うように端末装置へ通知してもよい。一例において、基地局装置は、下りリンク信号を受信する側の端末装置からレイヤ3のメッセージで報告された上りリンクの信号の測定値が所定値以上であった場合に、レイヤ1又はレイヤ2のメッセージでの測定結果の報告を行うように、その端末装置へ通知しうる。また、基地局装置は、上りリンク信号を送信する側の端末装置からレイヤ3のメッセージで報告された下りリンクの信号の測定値が所定値未満であった場合に、レイヤ1又はレイヤ2のメッセージでの測定結果の報告を行うように、その端末装置へ通知してもよい。また、基地局装置は、下りリンク信号を受信する側の端末装置において上りリンクの信号の測定値が所定値以上であったことや、上りリンク信号を送信する側の端末装置において下りリンクの信号の測定値が所定値未満であったことを、イベントとして端末装置へ通知しうる。そして、基地局装置は、そのイベントによる測定値の報告をレイヤ3のメッセージによって受信した場合に、その報告の送信者の端末装置に対して、レイヤ1又はレイヤ2のメッセージでの測定結果の報告を行うように指示してもよい。
【0031】
なお、レイヤ3のメッセージは、リアルタイム性でレイヤ1やレイヤ2のメッセージに劣るが、測定結果を詳細に報告することができる。この特性を利用して、端末装置は、レイヤ3のメッセージで詳細な報告を実行し、レイヤ1又はレイヤ2のメッセージでは、レイヤ3のメッセージで通知された測定値と報告対象の測定値との差分値など、情報量が削減された情報を送信するようにしてもよい。また、端末装置は、レイヤ1又はレイヤ2のメッセージにおいて測定値を報告する際に、レイヤ1~レイヤ3のいずれかのメッセージで前回送信された測定値と報告対象の測定値との差分値を送信するようにしてもよい。また、端末装置は、レイヤ1又はレイヤ2のメッセージにおいて測定値を報告する際に、測定値が所定値以上であるか否かを示す情報のみを、測定値の情報として基地局装置へ通知してもよい。
【0032】
端末装置は、例えば、測定値がどのような測定の結果であるかを示す情報を、測定結果の情報として基地局装置へ通知しうる。すなわち、測定値が、上りリンクのSRS-RSRPを測定した結果であるか、上りリンクのRSSIを測定した結果であるか、下りリンクのSSやCSI-RSを測定した結果であるか、等の情報が、測定結果の情報として基地局装置へ通知されうる。この情報は、resource indicatorとして通知されうる。また、UCIを用いて上りリンクの測定結果の情報が通知される場合、従来のCSI-RSやSSBの測定結果の通知に用いられるフォーマットを拡張したフォーマットのUCIにより、その情報が送信されてもよい。その場合、従来のCSI-RSやSSBを示すresource indicatorに代えて、SRS-RSRPやRSSIなどを示すresource indicatorがUCIに含められうる。なお、この場合、測定の種類を一意に特定可能とするために必要なビット数のフィールドが、resource indicatorのためのフィールドとして確保される。また、RSSIの測定値やSRS-RSRPの測定値を格納するフィールドが例えば7ビットとして確保され、既存のフォーマットで指定されているフィールドを用いて測定結果が送信されうる。また、オーバヘッド削減のために、既存のフォーマットでは存在しない、前回の測定値等との差分値を格納する例えば4ビットのフィールドを用いて、測定結果の前回との差分値が送信されてもよい。また、測定値が所定値以上であるか否かを示す1ビットのフィールドを含んだUCIが基地局装置へ送信されるようにしてもよい。なお、これらのフォーマットのうちのいずれが使用されるべきかが、動的に切り替えられてもよい。この場合、例えば、これらのいずれのフォーマットを用いるかが、基地局装置による指示によって指定されうる。
【0033】
また、レイヤ1又はレイヤ2のシグナリングを用いて測定を開始する際に、レイヤ1又はレイヤ2のシグナリングを用いて測定のタイミングが指示されてもよい。例えば、レイヤ1又はレイヤ2の測定開始のシグナリングを受信したフレームやシンボルで示されるタイミングからのオフセット(offset)と計測時間(duration)によって、測定タイミングが指定されてもよい。オフセットと継続時間は、レイヤ1又はレイヤ2のシグナリングで動的に指示されうる。ここで、レイヤ3のシグナリングによって設定された1つまたは複数のオフセットと計測時間のパラメータのセットの中から、実際に適用すべきパラメータのセットがレイヤ1又はレイヤ2のシグナリングによって指示されてもよい。また、オフセットと継続時間として、静的にあらかじめ定められた固定値が用いられてもよい。
【0034】
以上のようにして、上りリンクと下りリンクとの間の干渉を評価するための測定を、その設定情報についてはレイヤ3のシグナリングを用いて送受信して、その後にその設定情報を用いた測定をレイヤ1又はレイヤ2のシグナリングを用いて開始又は終了させる。これにより、適時に測定が行われるようにすることができ、周波数利用効率の低下を抑制しながら、測定を適切に行うことが可能となる。また、測定が適切に行われることにより、上りリンクの通信と下りリンクの通信との間の干渉を抑制しながら、柔軟にリソースを割り当てて通信を行うことが可能となる。
【0035】
(装置の構成)
図2を用いて、基地局装置および端末装置のハードウェア構成例について説明する。基地局装置および端末装置は、一例において、プロセッサ201、ROM202、RAM203、記憶装置204、及び、通信回路205を含んで構成される。プロセッサ201は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM202は、基地局装置および端末装置が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM203は、プロセッサ201がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置204は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路205は、例えば、5Gやその後継規格の無線通信用の回路によって構成される。なお、図2では、1つの通信回路205が図示されているが、例えば基地局装置及び端末装置は、2つ以上の通信回路を有してもよい。また、例えば、基地局装置および端末装置は、5G用やその後継規格用の無線通信回路と共通のアンテナを有しうる。なお、基地局装置および端末装置は、5G用のアンテナとその後継規格用のアンテナとを別個に有してもよい。また、端末装置は、無線LAN等の他の無線通信ネットワークのための通信回路を有してもよい。なお、基地局装置および端末装置は、使用可能な複数の周波数帯域のそれぞれについて別個の通信回路を有してもよいし、それらの周波数帯域の少なくとも一部に対して共通の通信回路を有してもよい。なお、本実施形態では、端末装置は、共通の周波数帯域での通信が可能な複数の通信回路を有するものとする。また、基地局装置は、さらに、他の基地局装置やコアネットワークのノードと通信する際に使用される有線通信回路を有しうる。
【0036】
図3は、基地局装置の機能構成例を示す図である。基地局装置は、その機能として、例えば、設定通知部301、測定実行指示部302、測定結果受信部303、及び情報交換部304を有する。なお、図3では、本実施形態に特に関係する機能のみを示しており、基地局装置が有しうる他の各種機能については図示を省略している。例えば、基地局装置は、5Gやその後継規格の基地局装置が一般的に有する他の機能を当然に有する。また、図3の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、図3の各機能は、例えば、プロセッサ201がROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路205の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細について、上述の詳細についてはここでは説明せず、その大まかな機能のみを概説する。
【0037】
設定通知部301は、接続中の端末装置に対して、上りリンクの信号から下りリンクの信号へ与える干渉の影響を評価するための測定のための設定情報を、レイヤ3(例えばRRCレイヤ)のシグナリングを用いて、接続中の端末装置へ通知する。設定通知部301は、例えば、接続中の第1の端末装置が、第2の端末装置から送信された上りリンク信号によって干渉を受ける側の装置であった場合、その第2の端末装置から送信された上りリンク信号を測定させるための設定情報を、第1の端末装置へ通知する。また、設定通知部301は、例えば、接続中の第1の端末装置が、第2の端末装置宛ての下りリンクの信号へ干渉する信号を送信する側の装置である場合、例えば、第2の端末装置に対する下りリンクの信号が送信されうるリソースの品質を測定させるための設定情報を、第1の端末装置へ通知する。設定情報の詳細については上述の通りであるため、ここでの詳細な説明については省略する。
【0038】
測定実行指示部302は、レイヤ1又はレイヤ2のシグナリングにより、設定通知部301によって設定情報を通知した端末装置に対して、その設定情報に基づく無線品質の測定の開始及び終了の指示を送信する。測定結果受信部303は、測定実行指示部302によって測定の実行が指示された端末装置から、その測定の結果を受信する。なお、測定結果受信部303は、例えば、設定通知部301によって端末装置に対して指示したメッセージの種類や、メッセージの種類を決定するために設定通知部301によって端末装置に対して通知された所定値の情報によって端末装置が決定したメッセージによって、測定結果の情報を受信する。
【0039】
情報交換部304は、他の基地局装置との間で、測定の設定を決定するための情報や、測定結果の情報を交換する。例えば、接続中の第1の端末装置が、他の基地局装置に接続している第2の端末装置から送信された上りリンク信号によって干渉を受ける側の装置であった場合、情報交換部304は、その第2の端末装置が送信するSRSに関する情報を他の基地局装置から受信しうる。また、この場合に、情報交換部304は、第1の端末装置に割り当てられうる下りリンクのリソースの情報を、他の基地局装置へ提供しうる。また、情報交換部304は、例えば、接続中の第1の端末装置が、第2の端末装置宛ての下りリンクの信号へ干渉する信号を送信する側の装置である場合、その第1の端末装置が送信するSRSに関する情報を他の基地局装置へ提供しうる。また、この場合に、情報交換部304は、第2の端末装置に割り当てられうる下りリンクのリソースの情報を、他の基地局装置から受信しうる。
【0040】
図4は、端末装置の機能構成例を示す図である。端末装置は、その機能として、例えば、設定受信部401、測定指示受信部402、測定部403、及び測定結果通知部404を有する。なお、図4では、本実施形態に特に関係する機能のみを示しており、端末装置が有しうる他の各種機能については図示を省略している。例えば、端末装置は、5Gやその後継規格の端末装置が一般的に有する他の機能を当然に有する。また、図4の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、図4の各機能は、例えば、プロセッサ201がROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路205の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細について、上述の詳細についてはここでは説明せず、その大まかな機能のみを概説する。
【0041】
設定受信部401は、上述のようにして基地局装置から提供される設定情報を、レイヤ3のシグナリングを介して受信する。実行指示受信部402は、測定の実行開始指示及び実行終了指示を、レイヤ1又はレイヤ2のシグナリングを介して、基地局装置から受信する。測定部403は、実行指示受信部402において測定の実行開始指示が受信された場合に、設定受信部401において受信された設定情報に基づく無線品質の測定を実行する。測定結果通知部404は、測定部403において実行された測定の結果を、接続中の基地局装置へ通知する。なお、測定結果通知部404は、例えば、レイヤ1~レイヤ3のメッセージのいずれを用いて測定結果を通知するかを、基地局装置から受信した指示に基づいて又は基地局装置から受信した所定値と測定結果の無線品質との比較に基づいて、決定しうる。そして、測定結果通知部404は、決定した種類のメッセージで、測定結果を基地局装置へ通知する。
【0042】
(処理の流れ)
続いて、図5を用いて、無線通信システムにおいて実行される処理の流れの例について説明する。ここでは、図1のように、基地局装置101に接続された端末装置111が送信した上りリンク信号により、基地局装置102から端末装置112へ送信される下りリンク信号に干渉を及ぼしうる環境における測定が行われる場合の例について説明する。
【0043】
まず、端末装置111が接続されている基地局装置101と、端末装置112が接続されている基地局装置102との間で、測定のための情報共有が行われる(S501)。例えば、基地局装置101は、自装置に接続中の端末装置111が送信する上りリンクの信号の測定を、基地局装置102に接続されている端末装置112に実行させることが可能となるように、端末装置111が送信するSRSに関する情報を基地局装置102へ提供する。また、基地局装置102は、端末装置112へ下りリンクのリソースを割り当てる可能性のある周波数範囲などの情報を、基地局装置101へ提供しうる。なお、端末装置111及び端末装置112が共に1つの基地局装置に接続される場合は、基地局装置間の情報共有の手順は省略される。
【0044】
基地局装置101及び基地局装置102は、交換した情報に基づいて、接続中の端末装置に対して通知すべき設定情報を決定する(S502)。例えば、基地局装置102は、端末装置111から送信されるSRSの測定を端末装置112に実行させるための設定情報を生成し、その設定情報を端末装置112へ、レイヤ3のシグナリングによって通知する(S503)。また、基地局装置101は、基地局装置102から送信される下りリンクの信号の測定を端末装置111に実行させるための設定情報を生成し、その設定情報を端末装置111へ、レイヤ3のシグナリングによって通知する(S504)。また、基地局装置101は、端末装置111へ、SRSの設定情報を送信し(S505)、SRSを送信させる。なお、端末装置111がSRSの設定情報を既に有している場合には、ここでの設定情報の送受信は省略されてもよい。基地局装置102は、例えばレイヤ1のDCIを用いて、そのSRSの測定の開始を端末装置112に指示する(S506)。端末装置112は、その指示に基づいてSRSを測定し(S507)、その測定結果を基地局装置102へ送信する(S508)。また、基地局装置101は、例えばレイヤ1のDCIを用いて、下りリンクの信号の測定の開始を端末装置111に指示する(S509)。そして、端末装置111は、基地局装置102から送信された下りリンク信号(例えばSSやCSI-RS)を測定し(S510)、その測定結果基地局装置102へ送信する(S511)。基地局装置101と基地局装置102は、必要に応じて、それぞれ接続中の端末装置から受信した測定結果を他方の基地局装置と交換する(S512)。例えば、基地局装置102は、端末装置112における、端末装置111からの上りリンクの信号の測定結果を基地局装置101へ通知する。これにより、基地局装置101は、上りリンクの干渉が所定値未満である場合に、端末装置111に上りリンクの信号を送信させ、その干渉が所定値以上である場合には、端末装置111に上りリンクの信号を送信させないようにしうる。また、基地局装置101は、例えば、端末装置111における下りリンクの信号の測定結果と、基地局装置102から通知された端末装置112における上りリンクの信号の測定結果とに基づいて、端末装置111が上りリンクの信号を送信した場合の、端末装置112における下りリンクのSINR等の無線品質を推定しうる。そして、基地局装置101は、その推定値が所定値以上である場合には、端末装置111による上りリンクの信号の送信が許容されると判定してもよい。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、上りリンクの信号による下りリンクの信号への干渉が発生する条件において、適時に端末装置による測定が行われるようにすることができる。この結果、周波数利用効率の低下を抑制しながら、測定を適切に行うことが可能となり、それにより、上りリンクの通信と下りリンクの通信との間の干渉を抑制しながら、柔軟にリソースを割り当てて通信を行うことが可能となる。よって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0046】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5