(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036234
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】基材の表面処理方法及び被覆成形体
(51)【国際特許分類】
B05D 3/00 20060101AFI20240308BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240308BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240308BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
B05D3/00 D
B05D7/24 301U
B05D7/24 302U
B05D7/00 B
B32B27/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141052
(22)【出願日】2022-09-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 展示日 令和4年4月27日 展示会名 国際養鶏養豚総合展2022 開催場所 ポートメッセなごや 名古屋市港区金城ふ頭2丁目2 〔刊行物等〕 出荷実績一覧 出荷日 令和4年5月13日 出荷先 (株)やまはた 青森県十和田市東十四番町32-3 他 5カ所 別紙1の通り
(71)【出願人】
【識別番号】501352619
【氏名又は名称】三商株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506329188
【氏名又は名称】江南コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188765
【弁理士】
【氏名又は名称】赤座 泰輔
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】服部 絵美
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭一
(72)【発明者】
【氏名】北澤 正行
(72)【発明者】
【氏名】原 優希
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
【Fターム(参考)】
4D075AB01
4D075AC19
4D075AC57
4D075AE03
4D075CA15
4D075CA34
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4D075DA25
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4D075EC11
4D075EC33
4D075EC35
4D075EC45
4F100AG00B
4F100AH06A
4F100AK01B
4F100AK53A
4F100BA02
4F100CC00A
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4F100DG11B
4F100EH46A
4F100EJ67A
4F100JA06A
4F100JB12A
4F100JL06
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】硬化被膜で被覆された基材の清掃性に優れる基材の表面処理方法を提供すること。
【解決手段】基材としての畜舎用スノコ11は、その表面に、不可避的に細孔12を有している。基材の表面処理方法は、畜舎用スノコ11に、主剤と硬化剤とを含む2液硬化型のエポキシ樹脂塗料を塗布する工程を備える。エポキシ樹脂塗料は、塗料粘度が1000~35000mPa・sであり、畜舎用スノコ11の表面の細孔12を埋めて、連続した硬化被膜21を形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤と硬化剤とを含む2液硬化型のエポキシ樹脂塗料を基材に塗布する工程を備える、基材の表面処理方法であって、
該基材は、その表面に、不可避的に細孔を有し、
該エポキシ樹脂塗料は、塗料粘度が1000~35000mPa・sであり、該細孔を埋めて、連続した硬化被膜を形成する、ことを特徴とする基材の表面処理方法。
【請求項2】
前記主剤がシランカップリング剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の基材の表面処理方法。
【請求項3】
前記シランカップリング剤がエポキシ基を含有することを特徴とする請求項2に記載の基材の表面処理方法。
【請求項4】
表面に不可避的に細孔を有する成形体に、塗料粘度が1000~35000mPa・sである主剤と硬化剤とを含む2液硬化型のエポキシ樹脂塗料が塗装され、表面に硬化被膜が形成されたことを特徴とする被覆成形体。
【請求項5】
前記成形体が畜舎用スノコであることを特徴とする請求項4に記載の被覆成形体。
【請求項6】
前記硬化被膜に、粒状物質が添着されていることを特徴とする請求項5に記載の被覆成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の技術分野は、不可避的に細孔を有する基材の表面処理方法、及び、表面処理が施され、塗料から形成される硬化被膜で被覆された被覆成形体、に関する。
【背景技術】
【0002】
基材の表面処理に用いられる塗料として、従来、下記特許文献1及び2において、エポキシ樹脂とアミン化合物を含有するエポキシ塗料が知られている。また、下記特許文献3において、エポキシ樹脂、アミン化合物及びシランカップリング剤を含有するエポキシ塗料が知られている。これらは、基材の表面に塗装され、基材の表面に硬化被膜を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58-171415号公報
【特許文献2】特開平8-198944号公報
【特許文献3】特開2022-34534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の基材の表面処理に用いられる塗料は、塗料から形成される硬化被膜で被覆された基材の清掃性について検討されているものではない。
【0005】
本明細書の技術が解決しようとする課題は、上述の点に鑑みてなされたものであり、硬化被膜で被覆された基材の清掃性に優れる基材の表面処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書の実施形態に係る基材の表面処理方法は、主剤と硬化剤とを含む2液硬化型のエポキシ樹脂塗料を基材に塗布する工程を備える、基材の表面処理方法であって、
該基材は、その表面に、不可避的に細孔を有し、
該エポキシ樹脂塗料は、塗料粘度が1000~35000mPa・sであり、該細孔を埋めて、連続した硬化被膜を形成する、ことを特徴とする。
【0007】
本明細書の実施形態に係る基材の表面処理方法によれば、塗料がエポキシ樹脂塗料であるため、被塗装面への密着性に優れる。また、エポキシ樹脂塗料は、塗料粘度が1000~35000mPa・sであるため、塗布の際に、基材表面の細孔を埋めることができ、かつ、均一な厚みで塗布することができる。実施形態に係る基材の表面処理方法は、基材に、密着性に優れ、均一な厚みで塗布することができるエポキシ樹脂塗料が塗布されるため、基材の表面に、均一かつ連続した硬化被膜が形成される。均一かつ連続した硬化被膜は、凹凸が少なく滑らかであるため、清掃性、特に糞尿に対する清掃性に優れるものとすることができる。
【0008】
ここで、上記基材の表面処理方法において、前記主剤がシランカップリング剤を含有するものとすることができる。
【0009】
これによれば、エポキシ樹脂塗料は、主剤がシランカップリング剤を含有しているため、被塗装面への密着性が高められ、形成される硬化被膜の強度を高めることができるため、硬化被膜で被覆された基材の清掃性に優れるものとすることができる。
【0010】
また、上記基材の表面処理方法において、前記シランカップリング剤がエポキシ基を含有するものとすることができる。
【0011】
これによれば、エポキシ樹脂塗料は、シランカップリング剤のエポキシ基が合成樹脂のエポキシ樹脂と共に三次元的な被膜を形成し、形成される硬化被膜の強度を高めることができるため、硬化被膜で被覆された基材の清掃性に優れるものとすることができる。
【0012】
ここで、本明細書の実施形態に係る被覆成形体は、表面に不可避的に細孔を有する成形体に、塗料粘度が1000~35000mPa・sである主剤と硬化剤とを含む2液硬化型のエポキシ樹脂塗料が塗装され、表面に硬化被膜が形成されたことを特徴とする。
【0013】
本明細書の実施形態に係る被覆成形体によれば、塗布の際に、無機成形体表面の細孔が埋められ、無機成形体の表面に、均一かつ連続した硬化被膜が形成される。均一かつ連続した硬化被膜は、凹凸が少なく滑らかであるため、硬化被膜で被覆された基材の清掃性に優れるものとすることができる。
【0014】
また、上記被覆成形体において、前記無機成形体が畜舎用スノコであることを特徴とする。
【0015】
これによれば、畜舎用スノコは清掃性に優れるものとすることができる。
【0016】
また、上記被覆成形体において、前記硬化被膜に、粒状物質が添着されているものとすることができる。
【0017】
これによれば、畜舎用スノコの表面は、粒状物質によって、適度な足掛かりが得られるため、畜舎内の家畜の転倒や怪我の防止を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本明細書の基材の表面処理方法によれば、硬化被膜で被覆された基材の清掃性に優れるものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態の基材の表面処理方法によって、エポキシ樹脂塗料が塗装された畜舎用スノコの斜視図である。
【
図2】
図1のII-II線に相当する断面図であり、(A)は試験例1の畜舎用スノコの断面図、(B)は試験例2の畜舎用スノコの断面図、(C)は試験例3の畜舎用スノコの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本明細書の実施形態に係る基材の表面処理方法、及び、被覆成形体について説明する。なお、本発明の範囲は、実施形態で開示される範囲に限定されるものではない。
図1に示すように、実施形態の基材の表面処理方法は、成形体の基材としてコンクリート成型板の畜舎用スノコ11に、実施形態のエポキシ樹脂塗料が塗布されて、畜舎用スノコ11の清掃性に優れる硬化被膜21が形成される。なお、清掃性は、特に糞尿の清掃性に優れるものである。実施形態のエポキシ樹脂塗料は、主剤と硬化剤とを含む2液硬化型の塗料である。
【0021】
ここで、本明細書および特許請求の範囲における各用語の意味は次の通りである。コンクリート成型板などの基材の「細孔」とは、表面に不可避的に存在する、あばた、ピンホールのことである。2液硬化型の塗料とは、主剤と硬化剤とを含むものであり、「塗料」と表現するときは「主剤」と「硬化剤」とが混合されて塗装可能なものを意味する。また、「質量部」(配合単位における)は、特に断らない限り、揮発分を除いた「不揮発分の質量部」を意味する。
【0022】
表面処理が施される基材は、成形体の一例としてコンクリート成型板の畜舎用スノコ11である。コンクリート成型板である畜舎用スノコ11の表面には、不可避的に細孔12が存在している。畜舎用スノコ11は、畜舎の床材として使用され、畜養の際には、家畜の糞尿が浴びせられる。畜舎用スノコ11を含め畜舎は、定期的に清掃されるが、畜舎用スノコ11の表面に不可避的に生じた細孔12には、家畜の糞尿が入り込み、清掃後であっても、糞尿が残るおそれがある。細孔12に残った家畜の糞尿は、雑菌が繁殖する温床となり、臭気を発するなど周辺環境を悪化させるおそれがあるばかりか、病原菌などが繁殖した場合には、家畜の飼育に悪影響を及ぼすおそれがある。このため、畜舎用スノコ11には、実施形態の基材の表面処理方法によって、エポキシ樹脂塗料を塗装して、細孔12を埋めて、連続した硬化被膜21を形成させ、清掃性に優れるものとすることが好ましい。
【0023】
畜舎用スノコ11の厚みは、5~15cmとすることができる。割れ難く、運びやすいものとすることができるためである。別の実施形態として、畜舎用スノコ11の厚みは、6~8cmとすることができる。畜舎用スノコ11の平面方向の大きさは、100×30cm~230×100cmとすることができる。なお、畜舎用スノコ11には、清掃の際の水などが排出されるスリット(図示せず)が形成され、1枚の大きさが180×40cm、厚みが8cmとすると、この畜舎用スノコ11の質量は、90~100kgとなる。
【0024】
畜舎用スノコ11には、補強のため、鉄筋を入れることができる。別の実施形態として、鉄筋の代わりにガラス繊維クロスを用いることができる。畜養の際、畜舎用スノコ11には、こぼれた家畜の餌が降り積もることがあり、家畜の餌には、乳酸、クエン酸などの酸性物質が含まれ、ガラス繊維クロスは、酸性物質による腐食を防止することができるためである。なお、ガラス繊維クロスは、合成樹脂で被覆されたものとすることができる。コンクリート(セメント)のアルカリによるガラス繊維クロスの腐食を防止することができるためである。
【0025】
実施形態の基材の表面処理方法に使用されるエポキシ樹脂塗料は、主剤と硬化剤とを含む2液硬化型の塗料であって、主剤がエポキシ樹脂を含有し、硬化剤がアミン化合物を含有するものである。
【0026】
エポキシ樹脂塗料の主剤の主成分となるエポキシ樹脂は、塗料、接着剤、シーリング材などに使用されている各種のエポキシ樹脂を使用することができ、下記一般式(1)で示されるグリシジル基を分子内に2個以上有するエポキシ樹脂である。
【0027】
【0028】
(式中、Xは水素原子又はメチル基やエチル基などのアルキル基を示す。)
エポキシ樹脂として、下記(E1)~(E4)、及びこれらの2種又はそれ以上の混合物を使用することができる。
【0029】
(E1)ポリグリシジルエーテル
(E11)2価フェノール[炭素数(以下Cと略記)6~30]のジグリシジルエーテルビスフェノール(ビスフェノール-F、-A、-B、-AD又はS等)ジグリシジルエーテル、ハロゲン化ビスフェノールA(テトラクロロビスフェノールA等)ジグリシジルエーテル、単環2価フェノール(カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等)ジグリシジルエーテル、縮合多環2価フェノール[1,5-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシビフェニル、オクタクロロ-4,4'-ジヒドロキシビフェニル、9,9'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン等]ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA2モルとエピクロロヒドリン3モルの反応から得られるジグリシジルエーテル等
(E12)多価(3価~6価又はそれ以上)フェノールのポリグリシジルエーテル多価フェノール(C6以上かつMn5,000以下)のポリグリシジルエーテル、例えば3価フェノール[ピロガロール、ジヒドロキシナフチルクレゾール、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン、ジナフチルトリオール、p-グリシジルフェニルジメチルトリールビスフェノールA等]トリグリシジルエーテル、4価フェノール[テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、4,4'-オキシビス(1,4-フェニルエチル)テトラクレゾール、ビス(ジヒドロキシナフタレン)等]テトラグリシジルエーテル、フェノール又はクレゾールノボラック樹脂(Mn400~5,000)のポリグリシジルエーテル、リモネンフェノールノボラック樹脂(Mn400~5,000)のポリグリシジルエーテル、フェノールとグリオキザール、グルタルアルデヒド、又はホルムアルデヒドとの縮合反応によって得られるポリフェノール(Mn400~5,000)のポリグリシジルエーテル、及びレゾルシンとアセトンとの縮合反応によって得られるポリフェノール(Mn400~5,000)のポリグリシジルエーテル
(E13)脂肪族ジオール(C2以上かつMn5,000以下)のジグリシジルエーテル脂肪族ジオール〔2価アルコール[例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール(以下それぞれEG、PG、TMG、NPG、1,6-HDと略記)、ポリアルキレングリコール[例えばポリエチレングリコール(以下PEGと略記。分子量106以上かつMn4,000以下。)、ポリプロピレングリコール(以下PPGと略記。分子量134以上かつMn5,000以下。)、ポリテトラメチレングリコール(以下PTMGと略記。分子量162以上かつMn5,000以下。)]等〕のジグリシジルエーテル
(E14)脂肪族ポリ(3価~6価又はそれ以上)オール(C6以上かつMn10,000以下)のポリグリシジルエーテル、脂肪族ポリオール〔多価(3~6価)アルコール[トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール(以下それぞれTMP、GR、PE、SOと略記)等]、多価アルコールの分子内もしくは分子間脱水物[ポリ(n=2~5)GR]、及びこれら多価アルコールのアルキレンオキシド[以下AOと略記。C2~6、例えばエチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド(以下それぞれEO、POと略記)]付加物等〕のポリグリシジルエーテル等
(E15)脂環含有ポリ(2価~4価又はそれ以上)オールのポリグリシジルエーテルC3以上かつMn5,000以下のもの、例えば1,2-シクロプロパンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、1,2,3-シクロプロパントリオール、1,3,5-シクロヘキサントリオール、スクロース及びこれらのAO(1~20モル)付加物等のポリグリシジルエーテル
(E16)芳香環含有多価(2価~4価又はそれ以上)アルコールのポリグリシジルエーテル、C8以上かつMn5,000以下のもの、ビスフェノールAのAO(1~20モル)付加物、m-又はp-キシリレングリコール、ベンゼンジエタノール、1,2-ジフェニルエタン-1,2-ジオール、1,1,2,2,-テトラフェニルエタン-1,2-ジオール及びこれらのAO(1~20モル)付加物等のポリグリシジルエーテル
(E2)ポリグリシジルエステル
(E21)芳香族多価(2価~6価又はそれ以上)カルボン酸のグリシジルエステル、芳香族多価カルボン酸(C6~C20又はそれ以上)のポリグリシジルエステル、例えば芳香族ジカルボン酸(オルト-、イソ-又はテレフタル酸等)ジグリシジルエステル、芳香族トリカルボン酸(トリメリット酸等)トリグリシジルエステル
(E22)脂肪族もしくは脂環含有多価カルボン酸(C6~C20又はそれ以上)のポリグリシジルエステル、例えば脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸等)ジグリシジルエステル、脂肪族トリカルボン酸(トリカルバリル酸等)トリグリシジルエステル、グリシジル(メタ)アクリレートの(共)重合体(重合度は2~10)、脂環含有多価カルボン酸(ダイマー酸等)のポリグリシジルエステル、前記(E21)の核水添物
(E3)ポリアミン(C6~C20又はそれ以上で、かつ窒素原子に直結する活性水素を2個~10個又はそれ以上有するもの)のグリシジルアミン
(E31)芳香族アミンのポリグリシジルアミン、例えばN,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルトルイジン、N,N,N',N'-テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N',N'-テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン、N,N,N',N'-テトラグリシジルジアミノエチルフェニルメタン、N,N,O-トリグリシジルアミノフェノール
(E32)脂肪族アミンのポリグリシジルアミン、例えばN,N,N',N'-テトラグリシジルキシリレンジアミン、N,N,N',N'-テトラグリシジルヘキサメチレンジアミン
(E33)脂環含有もしくは複素環含有アミン(C6~C20又はそれ以上で、かつ窒素原子に直結する活性水素を2個~10個又はそれ以上有するもの)のポリグリシジルアミン、脂環含有アミンのポリグリシジルアミン(例えばN,N,N',N'-テトラグリシジルキシリレンジアミンの水添物)、複素環含有アミンのポリグリシジルアミン(例えばトリスグリシジルメラミン)
(E4)その他のポリエポキシド
(E41)脂肪族ポリ(2価~6価又はそれ以上)エポキシド、C6以上かつMn2,500以下のもの、例えばエポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油
(E42)脂環式ポリ(2価~4価又はそれ以上)エポキシド、C6以上かつMn2,500以下のもの、例えばビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、エチレングリコールビスエポキシジシクロペンチルエーテル、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3',4'-エポキシ-6'-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)ブチルアミン。
【0030】
これらのエポキシ樹脂(E)のうち、別の実施形態として、被塗装面への密着性により優れるエポキシ樹脂(E1)、(E2)とすることができる。また、別の実施形態として、エポキシ樹脂(E11)、(E12)とすることができ、さらに別の実施形態として、ビスフェノールFのグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル及びクレゾールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテルとすることができる。
【0031】
エポキシ樹脂塗料の主剤は、さらに、シランカップリング剤、着色顔料、消泡剤、湿潤剤、増粘剤から選択される1種以上の添加剤を含有させることができる。
【0032】
シランカップリング剤は、基材表面と有機化合物とを結合させるものであり、1分子中に有機官能基と反応性シリル基(一般にはアルコキシシリル基等の加水分解性シリル基)を有する。加水分解性シリル基が、空気中の水分などによって自己縮合反応を起こし、基材表面と化学的・物理的に結合することにより耐久性を有する強固な被膜を形成する。エポキシ樹脂塗料の主剤がシランカップリング剤を含有することによって、エポキシ樹脂塗料は、加水分解性シリル基が水と反応して基材表面と化学的・物理的に結合するため、湿潤状態での密着性に優れるもの(湿潤面密着塗料)となる。
【0033】
シランカップリング剤の有機官能基として、エポキシ、ビニル、スチリル、メタクリル、アクリル、アミノ、ウレイド、イソシアネート、イソシアヌレート、メルカプトなどがある。別の実施形態として、主剤のエポキシ樹脂と共に三次元的な被膜を形成し、形成される硬化被膜21の強度を高め、清掃性に優れるものとすることができるエポキシとすることができる。
【0034】
シランカップリング剤の加水分解性シリル基として、メトキシシラン、エトキシシラン、プロポキシシラン、ブトキシシランなどがある。別の実施形態として、加水分解が早いメトキシシラン、エトキシシランとすることができる。さらに別の実施形態としてメトキシシランとすることができる。また、シランカップリング剤の加水分解性シリル基の数は、1~3を取り得る。別の実施形態として、湿潤状態の基材への密着性に優れる2又は3とすることができる。
【0035】
エポキシ基を有するシランカップリング剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルメチルジメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルメチルジエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシランなどがある。別の実施形態として、形成される硬化被膜21の強度をより高めることができる、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランとすることができる。
【0036】
シランカップリング剤は、エポキシ樹脂100質量部に対して、2~20質量部を含有させることができる。エポキシ樹脂塗料は湿潤面への密着性に優れ、エポキシ樹脂塗料から形成される硬化塗膜は、被塗装面への密着性が高められ、形成される硬化被膜21の強度を高めることができるためである。エポキシ樹脂100質量部に対するシランカップリング剤の含有量が、2質量部未満である場合には、硬化被膜21の強度を高める効果が顕著に表れないおそれがある。一方、20質量部を超えると、硬化被膜21の強度が高められるものの、効果が頭打ちとなるおそれがある。別の実施形態として、エポキシ樹脂100質量部に対するシランカップリング剤の含有量は、3~18質量部とすることができ、さらに別の実施形態として、5~15質量部とすることができる。
【0037】
着色顔料は、エポキシ樹脂塗料に色彩を付与するものである。湿潤状態の基材は、濡れ色を呈しているため、色彩のない透明なエポキシ樹脂塗料を塗布した場合に、塗布した部位と塗布していない部位との差が視認できないため、この差を視認できるようにするものである。着色顔料の例として、白;酸化チタン、亜鉛華、黒;カーボンブラック、黒酸化鉄、赤;赤色酸化鉄(ベンガラ)、キナクリドン、青;コバルトブルー、フタロシアニンブルー、黄;黄色酸化鉄、ニッケルチタンイエロー、モノアゾイエロー、などがある。
【0038】
着色顔料は、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.1~50質量部を含有させることができる。エポキシ樹脂塗料に色彩を付与することができるためである。エポキシ樹脂100質量部に対する着色顔料の含有量が、0.1質量部未満である場合には、エポキシ樹脂塗料に視認可能な色彩を付与することができないおそれがある。一方、50質量部を超えると、相対的にバインダとしてのエポキシ樹脂が少なくなり、硬化被膜21の強度が低下するおそれがある。別の実施形態として、エポキシ樹脂100質量部に対する着色顔料の含有量は、0.2~30質量部とすることができ、さらに別の実施形態として、0.3~25質量部とすることができる。
【0039】
消泡剤、湿潤剤、増粘剤は、エポキシ樹脂塗料の作業性などを調整する添加剤であり、必要に応じてエポキシ樹脂塗料の主剤に添加するものであり、適宜、汎用品を使用することができる。
【0040】
エポキシ樹脂塗料の硬化剤の主成分となるアミン化合物は、主剤のエポキシ樹脂を硬化させることができるものであれば使用することができ、例えば、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族アミン等のアミン化合物、またはそれらのアミン化合物の変性物がある。前記アミン化合物の具体例としては、例えばエチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、2-メチル-2,4-ジアミノペンタン、H2N(CH2)n-CH(CH3)NH2(n:1~8の整数)等の脂肪族ジアミン、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンヘプタミン、ジ(ヘキサメチレン)トリアミン、トリ(ヘキサメチレン)テトラミン、テトラ(ヘキサメチレン)ペンタミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、テトラ(アミノメチル)メタン、テトラキス(2-アミノエチルアミノメチル)メタン、トリエチレン-ビス(トリメチレン)ヘキサミン等のアルキレンポリアミンまたはポリアルキレンポリアミン、例えば1,3-ジアミノメチルナフタレン、1,4-ジアミノメチルナフタレン、4,4’-ジアミノメチルビフェニル、オルト-、メタ-またはパラ-キシリレンジアミン(ω,ω’-ジアミノキシレン)等の芳香族環構造を有する脂肪族性ジアミン、例えば1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン)、1,8-ジアミノ-8-メンタン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2’-ビス-(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、1,3-ビス-(アミノメチル)シクロヘキサン、1,2-ビス-(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス-(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン等の脂環式構造を含む脂肪族性アミン、例えばN-アミノエチルピペラジン、1,4-ビス-(3-アミノプロピル)ピペラジン、3,9-ビス-(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどの複素環構造を含む脂肪族性アミン、例えばメタフェニレンジアミン、オルトフェニレンジアミン、2,4-トルエンジアミン、4ークロローオルトフェニレンジアミン、メタアミノベンジルアミン、4-メトキシ-6-メチル-メタフェニレンジアミン、ベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス(3,4-ジアミノフェニル)スルホン、ジアミノジトリルスルホン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,4’-ジアミノジフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニルなどの芳香族アミンなどが挙げられる。
【0041】
これらのアミン化合物のうち、別の実施形態として、安全性が高く、取り扱い性に優れる脂肪族ジアミンとすることができる。さらに別の実施形態として、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミンとすることができる。
【0042】
硬化剤としてのアミン化合物の配合量は、エポキシ樹脂の種類、エポキシ樹脂のエポキシ当量、アミン化合物の種類などによっても異なるものの、エポキシ樹脂100質量部に対して、2質量部~150質量部とすることができる。エポキシ樹脂塗料から形成される硬化塗膜の強度を高めることができるためである。エポキシ樹脂100質量部に対するシランカップリング剤の配合量が、2質量部未満である場合には、硬化被膜21の強度を高めることができないおそれがある。一方、150質量部を超えると、エポキシ樹脂に対してアミン化合物が過剰となり、これまた、硬化被膜21の強度を高めることができないおそれがある。別の実施形態として、エポキシ樹脂100質量部に対する硬化剤としてのアミン化合物の配合量は、5~100質量部とすることができ、さらに別の実施形態として、10~75質量部とすることができる。
【0043】
エポキシ樹脂塗料の硬化剤は、さらに、着色顔料、消泡剤、湿潤剤、増粘剤から選択される1種以上の添加剤を含有させることができる。これらは、エポキシ樹脂塗料の主剤に含有させることができる、着色顔料、消泡剤、湿潤剤、増粘剤を使用することができる。
【0044】
エポキシ樹脂塗料は、主剤と硬化剤を混合することにより、基材としての畜舎用スノコ11に塗装可能な塗料となる。エポキシ樹脂塗料は、無溶剤型塗料(不揮発分100%)とすることができる。無溶剤型塗料とすることで、揮発分による家畜への健康被害を抑制することができる。
【0045】
主剤と硬化剤とが混合されたエポキシ樹脂塗料の塗料粘度は、1000~35000mPa・sとすることができる。エポキシ樹脂塗料の塗布の際に、基材(畜舎用スノコ11)表面の細孔12を埋めることができ、かつ、均一な厚みで塗布することができるためである。塗料粘度が1000mPa・s未満である場合には、基材に塗装したエポキシ樹脂塗料が基材に吸い込まれてしまい、均一な厚みの硬化被膜21を得ることができないおそれがある。一方、35000mPa・sを超えると、エポキシ樹脂塗料の流動性が乏しく、基材表面の細孔12に入り込みにくく均一な厚みの硬化被膜21を得ることができないおそれがあるとともに、塗装作業性が劣るおそれがある。別の実施形態として、エポキシ樹脂塗料の塗料粘度は1200~20000mPa・sとすることができ、さらに別の実施形態として、エポキシ樹脂塗料の塗料粘度は1500~10000mPa・sとすることができる。なお、エポキシ樹脂塗料の塗料粘度の調整は、増粘剤の添加量の増減によって行なうことができる。
【0046】
エポキシ樹脂塗料の塗料粘度は、B型粘度計2rpm及び20rpm(23℃)での測定値の何れもが1000~35000mPa・sとすることができる。2rpmの塗料粘度は、エポキシ樹脂塗料に剪断力があまり加わらないときの粘度であり、基材に塗装された後の状態を想定するものである。塗料粘度が1000mPa・s(2rpm)未満である場合には、エポキシ樹脂塗料が基材に浸み込みすぎてしまい、均一な厚みの硬化被膜21を得ることができないおそれがある。一方、20rpmの塗料粘度は、エポキシ樹脂塗料に剪断力が加わっているときの粘度であり、基材に塗装されている最中の状態を想定するものである。塗料粘度が35000mPa・s(20rpm)を超える場合には、エポキシ樹脂塗料が流動性に乏しく、基材の細孔12に入り込みにくく、均一な厚みの硬化被膜21を得ることができないおそれがある。なお、B型粘度計は、英弘精機株式会社やブルックフィールド社の汎用品を使用することができる。
【0047】
畜舎用スノコ11への塗装は、畜舎用スノコ11が畜舎への搬入前の製品である場合には、スプレ、ローラ又は刷毛での塗装、カーテンフローコータやディッピングでの塗装を行うことができる。畜舎用スノコ11が畜舎で使用されている既存品である場合には、エポキシ樹脂塗料は、スプレ、ローラ又は刷毛での塗装を行うことができ、短時間(1時間ほど)で硬化するため、畜舎の使用の妨げを抑えることができる。
【0048】
エポキシ樹脂塗料の塗布量は、100~500g/m2とすることができる。基材に均一かつ連続した硬化被膜21を形成させることができるためである。塗布量が100g/m2未満である場合には、連続した硬化被膜21を形成させることができないおそれがある。一方、500g/m2を超えると、エポキシ樹脂塗料が垂れて、均一な硬化被膜21を形成させることができないおそれがある。別の実施形態として、エポキシ樹脂塗料の塗布量は、200~350g/m2とすることができ、さらに別の実施形態として、250~300g/m2とすることができる。
【0049】
エポキシ樹脂塗料が塗装された畜舎用スノコ11には、エポキシ樹脂塗料が硬化する前に粒状物質を散布し、硬化被膜21に粒状物質を添着させることができる。畜舎用スノコ11表面に、粒状物質を添着させることにより、適度な足掛かりが得られ、畜舎内の家畜の転倒や怪我の防止を図ることができるためである。なお、硬化被膜21に粒状物質を添着させた畜舎用スノコ11には、再度、エポキシ樹脂塗料や汎用塗料を塗布することができる。粒状物質と硬化被膜21との界面は、エポキシ樹脂塗料の密着性により、家畜の糞尿が入り込み難いものである。しかし、雑菌の繁殖をより防ぐため、粒状物質をこれら塗料から形成される被膜でコーティングさせて、粒状物質と硬化被膜21との界面を隠し、粒状物質と硬化被膜21との界面に雑菌が入るのを防ぐことができるためである。
【0050】
粒状物質は、適度な足掛かりが得られるものであれば使用することができ、例えば、珪砂、寒水砂又はガラスビーズなどを使用することができる。粒状物質の平均粒子径(モード径)は、0.2~2mmとすることができる。適度な足掛かりが得られ、畜舎内の家畜の転倒や怪我の防止を図ることができるためである。平均粒子径が0.2mm未満である場合には、適度な足掛かりが得られず、畜舎内の家畜の転倒や怪我の防止を図ることができないおそれがある。一方、2mmを超えると、足の滑りが悪く、逆に家畜が転倒しやすくなるおそれがある。別の実施形態として、粒状物質の平均粒子径(モード径)は、0.4~1mmとすることができる。
【0051】
粒状物質は、着色が施されたものとすることができる。粒状物質への着色は、粒状物質を撹拌しながら、粒状物質に着色塗料を塗布することによって行なうことができる。
【0052】
畜舎用スノコ11は、着色顔料によって着色されたエポキシ樹脂塗料を塗装する、及び/又は、エポキシ樹脂塗料が塗装された畜舎用スノコ11に着色が施された粒状物質を散布する、ことにより、着色を施すことができる。着色は、明るい色とすることができる。畜舎(畜舎用スノコ11)の汚れ具合を容易に確認することができるためである。別の実施形態として、色相環における青色系から緑色系の明るい色とすることができる。家畜の血が付着した際に、視認がし易くなるためである。なお、実施形態としての明るい色は、JIS Z 8781-4:2013(測色-第4部:CIE 1976 L*a*b*色空間)で測色したときのL*値が50以上であるものとすることができる。また、別の実施形態として、L*値が55~90であるものとすることができる。
【0053】
また、別の実施形態として、粒状物質の色分けによって、畜舎の飼育エリアごとに色分けをすることができる。例えば、出産エリアを緑色系とすることによって、家畜をリラックスさせて安産を促す効果が期待できる。給餌エリアを赤色系とすることによって、家畜の食欲を増進させる効果が期待できる。また、休憩エリアを青色系とすることによって、家畜を落ち着かせる効果が期待できる。
【0054】
実施形態の基材の表面処理方法は、処理する基材として畜舎用スノコ11を例にして説明したが、以下のような基材又は適用部位であっても、表面処理を施すことができるものである。基材又は適用部位として、畜舎のコンクリート部分、例えば、コンクリート製の壁、コンクリート製の餌場、コンクリート製のサイロ、コンクリート製の排水路(廃水路)などがある。また、実施形態の基材の表面処理方法は、畜舎内の鉄柵や壁材(合板など)にも施すことができる。鉄柵は、コンクリート同様に酸性の餌などによって発錆し、錆の凹凸に家畜の糞尿が入り込むことがあるためである。さらに、実施形態の基材の表面処理方法は、畜舎に限らず、動物園、牧場又は競馬場などのコンクリート部分にも適用することができる。
【実施例0055】
実施形態の基材の表面処理方法は、表1及び表2に記載の組成の異なるエポキシ樹脂塗料について、仕様を変えて畜舎用スノコ11に塗装等を施して表面処理を行なった。畜舎用スノコ11は、大きさが180×40cm、厚みが8cm、合成樹脂で被覆されたガラス繊維クロスが厚み方向略中心の面に配設された、コンクリート成型板(質量:95kg)からなるものを用いた。試験例では、表面処理を施した畜舎用スノコ11に、以下に記載する、塗布作業性試験、洗浄性試験、雑菌繁殖性試験及び足掛かり性試験を行ない、その評価を行なった。
【0056】
【0057】
【0058】
全てのエポキシ樹脂塗料は、主剤のエポキシ樹脂にビスフェノールA型エポキシ樹脂を用い、硬化剤のアミン化合物にヘキサメチレンジアミンを用いたものである。エポキシ樹脂塗料Aは、シランカップリング剤にエポキシ基を含有する3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランを用いたものである。エポキシ樹脂塗料Bは、シランカップリング剤にメタクリル基を含有する3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランを用いたものである。エポキシ樹脂塗料Cは、エポキシ樹脂塗料Aからシランカップリング剤を除いたものである。エポキシ樹脂塗料Dは、エポキシ樹脂塗料Aから増粘剤を減量して塗料粘度を低くしたものである。エポキシ樹脂塗料Eは、エポキシ樹脂塗料Aから増粘剤を増量して塗料粘度を高くしたものである。エポキシ樹脂塗料A~Eは、着色顔料の添加により、明るいグレー系統の硬化被膜21が得られるものとした。エポキシ樹脂塗料F~Jは、エポキシ樹脂塗料Aから着色顔料と増粘剤の添加量を調整して、明るい緑色系統の硬化被膜21が得られるものとした。エポキシ樹脂塗料Kは、エポキシ樹脂塗料Cから着色顔料を除いて増粘剤の添加量を調整し、クリヤーな硬化被膜21が得られるものとした。
【0059】
塗布作業性試験
塗布作業性試験は、ディッピング塗装(Dipping:塗料に被塗装体を浸して塗装する方法)では、被塗装体である畜舎用スノコ11にエポキシ樹脂塗料を用いてディッピング塗装を施し、その仕上りについて評価を行なった。そして、エポキシ樹脂塗料の塗布量が100~500g/m2であり、均一な被膜を形成することができたものを○、エポキシ樹脂塗料の塗布量が100~500g/m2から外れ、又は、均一な被膜を形成することができなかったものを×、として評価した。また、ローラ塗装では、被塗装体である畜舎用スノコ11にエポキシ樹脂塗料を用いてローラ塗装を施し、その仕上りについて評価を行なった。そして、均一な被膜を形成することができたものを○、均一な被膜を形成することができなかったものを×、として評価した。
【0060】
洗浄性試験
洗浄性試験は、試験例の工程が施された畜舎用スノコ11について、畜養と水での洗浄とを10回繰り返し、10回目の洗浄性についてその評価を行なった。そして、試験結果は、洗浄後に汚れが残っていないものを○、洗浄後に表面積の5%以下の面積に汚れが残っているものを△、洗浄後に表面積の5%を超える面積に汚れが残っているものを×、として評価した。
【0061】
雑菌繁殖性試験
雑菌繁殖性試験は、試験例の工程が施された畜舎用スノコ11について、畜養と水での洗浄とを10回繰り返し、10回繰り返した試験例の試験体(畜舎用スノコ11)を人が匂いを嗅ぐことによってその評価を行なった。そして、試験結果は、悪臭が感じられないものを○、僅かに悪臭が感じられるものを△、悪臭が感じられるものを×、として評価した。
【0062】
足掛かり性試験
足掛かり性試験は、試験例の工程が施された畜舎用スノコ11について、靴を履いた人の官能評価によって行なった。そして、試験結果は、滑り難いものを○、少し滑りやすいものを△、滑りやすいものを×、として評価した。
【0063】
基材の表面処理方法の試験例を表3及び表4に記載する。なお、試験例1~5及び試験例8~13が実施例であり、試験例6、7が比較例である。また、ベストモードは試験例3である。
【0064】
【0065】
【0066】
(試験例1)
試験例1は、主剤がビスフェノールA型エポキシ樹脂と3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランとを含有し、硬化剤がヘキサメチレンジアミンであるエポキシ樹脂塗料Aを用い、ディッピング塗装によって畜舎用スノコ11の全面を塗装したものである。エポキシ樹脂塗料Aの粘度は、約2000mPa・s(2rpm)である。
図2Aは、試験例1の短手方向の鉛直断面を示すものである。塗布作業性試験は、エポキシ樹脂塗料の塗布量が100~500g/m
2であり、均一な被膜を形成することができた。洗浄性試験は洗浄後に汚れが残ってなく、雑菌繁殖性試験は悪臭が感じられないものであり、つまり、洗浄性に優れるものであった。足掛かり性試験は、粒状物質を散布していないため、少し滑りやすいものであった。
【0067】
(試験例2)
試験例2は、エポキシ樹脂塗料Aを用い、ローラを用いた塗装によって畜舎用スノコ11の上面を塗装し、塗装直後の塗装面に着色珪砂22を散布したものである。なお、着色珪砂22のもととなる珪砂は、平均粒子径(モード径)が0.6mmであるものを用いた。
図2Bは、試験例2の短手方向の鉛直断面を示すものである。洗浄性試験は洗浄後に上面の表面積の5%以下の面積に汚れが残り、雑菌繁殖性試験は僅かに悪臭が感じられた。着色珪砂22と硬化被膜21の界面に糞尿が浸み込んだものと考えられる。足掛かり性試験は、着色珪砂22が散布されていることによって、滑り難いものであった。
【0068】
(試験例3)
試験例3は、エポキシ樹脂塗料Aを用い、ローラを用いた塗装によって畜舎用スノコ11の上面と側面の上側を塗装し、塗装直後の塗装面に着色珪砂22を散布し、エポキシ樹脂塗料Aの硬化後に、塗装面(上面と側面の上側)に、再度、エポキシ樹脂塗料Aをローラによって塗装したものである。
図2Cは、試験例3の短手方向の鉛直断面を示すものである。洗浄性試験は洗浄後に汚れが残ってなく、雑菌繁殖性試験は悪臭が感じられないものであり、つまり、洗浄性に優れるものであった。着色珪砂22と硬化被膜21の界面がエポキシ樹脂塗料Aによって被覆されたためである。足掛かり性試験は、着色珪砂22が散布されていることによって、滑り難いものであった。
【0069】
(試験例4)
試験例4は、試験例1で用いたエポキシ樹脂塗料Aのシランカップリング剤を3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランから3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランに変更したエポキシ樹脂塗料Bを用い、ディッピング塗装によって畜舎用スノコ11の全面を塗装したものである。試験結果は、試験例1と同じであった。今回の試験においては、シランカップリング剤の有機官能基の違いによる差は確認できなかった。
【0070】
(試験例5)
試験例5は、試験例1で用いたエポキシ樹脂塗料Aからシランカップリング剤を除いたエポキシ樹脂塗料Cを用い、ディッピング塗装によって畜舎用スノコ11の全面を塗装したものである。試験結果は、試験例1と比して、洗浄性試験が洗浄後に上面の表面積の5%以下の面積に汚れが残り、雑菌繁殖性試験が僅かに悪臭を感じるものであった。試験例5の硬化被膜21は、シランカップリング剤が除かれているため、試験例1の硬化被膜21と比して硬さが不足し、洗浄において傷が生じ、傷に糞尿が入り込んだものと推測する。
【0071】
(試験例6)
試験例6は、試験例1で用いたエポキシ樹脂塗料Aから増粘剤を減量して塗料粘度を約500mPa・s(2rpm)としたエポキシ樹脂塗料Dを用い、ディッピング塗装によって畜舎用スノコ11の全面を塗装したものである。塗布作業性試験は、基材に塗装したエポキシ樹脂塗料が基材に吸い込まれてしまい、均一な厚みの硬化被膜21を得ることができなかった。洗浄性試験は洗浄後に上面の表面積の5%以下の面積に汚れが残り、雑菌繁殖性試験は僅かに悪臭を感じるものであった。足掛かり性試験は、粒状物質を散布していないため、少し滑りやすいものであった。
【0072】
(試験例7)
試験例7は、試験例1で用いたエポキシ樹脂塗料Aから増粘剤を増量して塗料粘度を約40000mPa・s(2rpm)としたエポキシ樹脂塗料Eを用い、ディッピング塗装によって畜舎用スノコ11の全面を塗装したものである。塗布作業性試験は、エポキシ樹脂塗料が流動性に乏しく、基材の細孔12に入り込みにくく、均一な厚みの硬化被膜21を得ることができなかった。洗浄性試験は洗浄後に表面積の5%を超える面積に汚れが残り、雑菌繁殖性試験は悪臭が感じられるものであった。流動性が乏しいため、硬化被膜21に凹凸が生じ、凹凸の凹部に入り込んだ糞尿が洗浄によっても清掃できなかったものと推測する。足掛かり性試験は、硬化被膜21に生じた凹凸によって、滑り難いものであった。
【0073】
(試験例8~12)
試験例8~12は、試験例1で用いたエポキシ樹脂塗料Aから着色顔料と増粘剤の添加量を調整して、緑色系統の硬化被膜21が得られるものとしエポキシ樹脂塗料F~Jを用い、ディッピング塗装によって畜舎用スノコ11の全面を塗装したものである。明るい緑色系統の硬化被膜21が得られたため、家畜の血が付着した際に、視認がし易いものであった。試験結果は、試験例1と同じであった。
【0074】
(試験例13)
試験例13は、試験例5で用いたエポキシ樹脂塗料Cから着色顔料を除いて増粘剤の添加量を調整し、クリヤーな硬化被膜21が得られるエポキシ樹脂塗料Kを用い、ディッピング塗装によって畜舎用スノコ11の全面を塗装したものである。試験結果は、試験例5と同様に、洗浄性試験が洗浄後に上面の表面積の5%以下の面積に汚れが残り、雑菌繁殖性試験が僅かに悪臭を感じるものであり、足掛かり性試験が少し滑りやすいものであった。