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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036237
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20240308BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
B60C13/00 H
B60C13/00 C
B60C13/00 A
B60C19/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141055
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】小野 敬俊
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA30
3D131AA39
3D131AA44
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC07
3D131BC31
3D131DA01
3D131DA34
3D131DA43
3D131GA01
3D131GA03
3D131GA19
3D131HA37
3D131HA42
3D131KA06
3D131LA20
3D131LA24
(57)【要約】
【課題】通信装置の位置を表示するために突出する部分の耐久性を向上可能な空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】本発明に係る空気入りタイヤは、外面がサイド被覆ゴムにより構成されているタイヤサイド部を備えるタイヤ本体と、前記タイヤ本体の前記タイヤサイド部に埋設されている通信装置と、を備え、前記タイヤサイド部のタイヤ径方向及びタイヤ周方向で前記通信装置が位置する領域を装置領域とした場合に、前記タイヤサイド部の前記外面は、前記装置領域において突出しており、前記サイド被覆ゴムの厚みは、前記装置領域において、前記装置領域の周囲より、薄くなっている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面がサイド被覆ゴムにより構成されているタイヤサイド部を備えるタイヤ本体と、
前記タイヤ本体の前記タイヤサイド部に埋設されている通信装置と、を備え、
前記タイヤサイド部のタイヤ径方向及びタイヤ周方向で前記通信装置が位置する領域を装置領域とした場合に、
前記タイヤサイド部の前記外面は、前記装置領域において突出しており、
前記サイド被覆ゴムの厚みは、前記装置領域において、前記装置領域の周囲より、薄くなっている、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記装置領域での前記タイヤサイド部の前記外面の最大突出量は、0.1~1.0mmである、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記タイヤサイド部の前記外面において、前記装置領域に対して前記タイヤ径方向の少なくとも一方側には、突出部からなる標章部が設けられており、
前記装置領域での前記タイヤサイド部の前記外面の前記最大突出量は、前記標章部を構成する前記突出部の最大突出量よりも小さい、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
内部にRFタグなどの通信装置が埋設されている空気入りタイヤが知られている。特許文献1には、この種の空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-148953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤ本体の内部に埋設されている通信装置の位置を、空気入りタイヤの外部から識別することは困難である。そのため、特許文献1に記載の空気入りタイヤのように、通信装置の位置を外部に表示する表示部としての突起を設ける場合がある。しかしながら、表示部としての突起は、空気入りタイヤの外部からの各種の衝撃により、損傷、もげ等が発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、通信装置の位置を表示するために突出する部分の耐久性を向上可能な空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様としての空気入りタイヤは、
(1)
外面がサイド被覆ゴムにより構成されているタイヤサイド部を備えるタイヤ本体と、
前記タイヤ本体の前記タイヤサイド部に埋設されている通信装置と、を備え、
前記タイヤサイド部のタイヤ径方向及びタイヤ周方向で前記通信装置が位置する領域を装置領域とした場合に、
前記タイヤサイド部の前記外面は、前記装置領域において突出しており、
前記サイド被覆ゴムの厚みは、前記装置領域において、前記装置領域の周囲より、薄くなっている、空気入りタイヤ、である。
【0007】
本発明の1つの実施形態としての空気入りタイヤは、
(2)
前記装置領域での前記タイヤサイド部の前記外面の最大突出量は、0.1~1.0mmである、上記(1)に記載の空気入りタイヤ、である。
【0008】
本発明の1つの実施形態としての空気入りタイヤは、
(3)
前記タイヤサイド部の前記外面において、前記装置領域に対して前記タイヤ径方向の少なくとも一方側には、突出部からなる標章部が設けられており、
前記装置領域での前記タイヤサイド部の前記外面の前記最大突出量は、前記標章部を構成する前記突出部の最大突出量よりも小さい、上記(2)に記載の空気入りタイヤ、である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通信装置の位置を表示するために突出する部分の耐久性を向上可能な空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態としての空気入りタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
図2】通信装置の平面図である。
図3】通信装置の斜視図である。
図4】外装体の蓋部を外した状態の通信装置の斜視図である。
図5】通信装置の分解斜視図である。
図6】第2アンテナの平面図である。
図7】通信装置の一部断面図である。
図8図1のうち通信装置近傍を拡大して示す図である。
図9図1に示す空気入りタイヤの側面図の通信装置近傍を拡大して示す図である。
図10図9のII-II線の位置での、タイヤサイド部の断面図である。
図11図1に示す通信装置の配置位置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態について図面を参照して例示説明する。各図において同一の構成には同一の符号を付している。
【0012】
図1は、本発明に係る空気入りタイヤの一実施形態としての空気入りタイヤ50のタイヤ幅方向断面図である。図1に示すように、空気入りタイヤ50は、タイヤ本体60と、通信装置10と、を備える。以下、説明の便宜上、空気入りタイヤ50を単に「タイヤ50」と記載する。
【0013】
図1は、タイヤ50のタイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向Cの一方の半部のみを示しているが、通信装置10の有無以外は、他方の半部についても同様の構成である。但し、タイヤ50は、タイヤ赤道面CLを境界として、非対称な部分を有していてもよい。
【0014】
図1に示すタイヤ50は、トラック・バス用タイヤであるが、他の重荷重用タイヤや乗用車用タイヤとしてもよい。
【0015】
[タイヤ本体60]
タイヤ本体60の内部構造は特には限定されないが、以下の構成を例示することができる。このタイヤ本体60は、一対のタイヤサイド部57と、一対のタイヤサイド部57に連なるトレッド部53と、を備える。一対のタイヤサイド部57は、一対のビード部51と、ビード部51に連なる一対のサイドウォール部52と、からなる。
【0016】
ビード部51には、ビードコア51aが埋設され、ビードコア51aのタイヤ径方向Eの外側にはスティフナー51bが配置されている。本実施形態では、スティフナー51bとして、硬さの異なる複数(本実施形態では2つ)のスティフナー51b1、51b2が設けられている。タイヤ径方向Eの内側に位置するスティフナー51b1は、タイヤ径方向Eの外側に位置するスティフナー51b2より硬い。
【0017】
また、このタイヤ本体60は、一対のビード部51間をトロイダル状に跨る、1枚以上のカーカスプライからなるカーカス54を備えている。カーカス54は、タイヤ幅方向Cの内側から外側に向かって、ビードコア51aに巻き掛けられて折り返されており、折り返し端54aまで延在している。カーカスプライは、ラジアル配列のカーカスコードがゴム被覆されることにより構成されてよい。本例では、カーカスコードは、スチールコードからなる。カーカスプライの枚数は、特に限定されない。カーカスコードの径は、特に限定されないが、例えば0.8~1.2mmとされてよい。
【0018】
カーカス54のクラウン部のタイヤ径方向Eの外側には、1層以上(図示例で4層)のベルトプライ55a~55dからなるベルト55が配置されている。ベルト55のタイヤ径方向Eの外側にはトレッドゴム53aが配置されている。ベルト55のベルトコードは、本例では、スチールコードである。ベルトコードは、タイヤ周方向Fに対して、例えば30~60°の傾斜角度で傾斜することができる。ベルト層の層数や、ベルト幅は特に限定されない。また、図1に示すように、ベルト55の端部近傍には、クッションゴム53bが配置されていてよい。
【0019】
ビード部51には、上述したビードコア51a、スティフナー51bの他に、ゴムチェーファー51c、ナイロンチェーファー51d、ワイヤーチェーファー51e及びハットゴム51fが設けられている。また、ビード部51からサイドウォール部52にかけて、カーカス54のタイヤ幅方向Cの外側には、サイドゴム52aが配置されている。
【0020】
本実施形態のタイヤ本体60の外面は、一対のタイヤサイド部57の外面、及び、トレッド部53の外面、からなる。タイヤサイド部57の外面は、サイド被覆ゴム57aにより構成されている。トレッド部53の外面は、トレッドゴム53aにより構成されている。
【0021】
本実施形態のサイド被覆ゴム57aは、ビード部51のゴムチェーファー51c、並びに、ビード部51及びサイドウォール部52に亘って延在するサイドゴム52a、により構成されている。
【0022】
また、本実施形態のタイヤ本体60の内面は、タイヤ内腔60aに面しており、ビード部51、サイドウォール部52及びトレッド部53に亘って延在するインナーライナー56により構成されている。
【0023】
[通信装置10]
通信装置10は、タイヤ本体60のタイヤサイド部57に埋設されている。具体的に、本実施形態の通信装置10は、タイヤサイド部57において、サイド被覆ゴム57aのタイヤ幅方向Cの内側に隣接して配置されている。より具体的に、本実施形態の通信装置10は、タイヤサイド部57において、サイド被覆ゴム57aとしてのサイドゴム52aのタイヤ幅方向Cの内側に隣接する位置で、かつ、サイドゴム52aとスティフナー51b2との間の位置に、埋設されている。
【0024】
通信装置10は、タイヤ本体60の外部の所定の装置と無線通信可能な構成であればよく、通信装置10の構成は特に限定されない。通信装置10としては、例えば、RFタグが挙げられる。本実施形態の通信装置10はRFタグである。通信装置10としてのRFタグは、タイヤ本体60の外部に位置するリーダーと無線通信可能である。RFタグは、例えば、タイヤ本体60の外部に位置するリーダーから供給される電力により動作するパッシブ型のRFタグとしてよい。具体的に、通信装置10としてのRFタグは、リーダーのアンテナから、電波又は磁界に乗せて送信される情報を、RFタグのアンテナにより受信可能である。整流(電波の場合)または共振(磁界の場合)により、RFタグのアンテナに電力が発生し、RFタグの記憶部、制御部等を含むICチップが所定の動作を実行する。RFタグのICチップにおいて、制御部は、例えば、不揮発性メモリ等の記憶部内の情報を読み出し、電波または磁界に乗せてアンテナから、リーダーに返信(送信)することができる。リーダーのアンテナは、RFタグからの電波又は磁界を受信する。リーダーの制御部は、受信した情報を取り出すことで、RFタグのICチップの記憶部に記憶されている情報を取得することができる。
【0025】
図2は、本実施形態の通信装置10の平面図である。図3は、通信装置10の斜視図である。図4は、外装体3の蓋部32を外した状態の通信装置10の斜視図である。図5は、通信装置10の分解斜視図である。図6は、第2アンテナ2の平面図である。図7は、通信装置10の一部断面図である。図7は、図3のI-I断面図である。
【0026】
図2図3に示すように、通信装置10は、基板1と、第2アンテナ2と、外装体3と、を備える。以下、説明の便宜上、外装体3の保持面31a(図4参照)の長手方向(図2における左右方向)をX方向という。X方向のうち一方向(図2における右方向)を+X方向という。X方向のうち他方向(図2における左方向)を-X方向という。外装体3の保持面31a(図4参照)の短手方向をY方向という。Y方向は、保持面31aに沿う面内においてX方向に直交する。Y方向のうち一方向(図2における上方向)を+Y方向という。Y方向のうち他方向(図2における下方向)を-Y方向という。外装体3の保持面31aに直交する方向をZ方向という。Z方向は、X方向およびY方向に直交する。Z方向から見ることを平面視(図2参照)という。Z軸とは、Z方向に沿う中心軸である。
【0027】
図4に示すように、基板1は、ICチップ11と、第1アンテナ12と、基材13と、を備える。
【0028】
基材13は、板状に形成されている。平面視における基材13の形状は、特に限定されないが、少なくとも外周縁13aの一部が湾曲形状であることが好ましい。湾曲形状は、例えば、楕円弧状、円弧状、高次曲線状(例えば二次曲線状)などである。高次曲線状は、放物線状、双曲線状などである。平面視における基材13の外形は、例えば、楕円形状、円形状、長円形状(レーストラック形状)などであってよい。平面視における基材13の外形は、非円形状が望ましい。本実施形態では、基材13は、楕円形状とされている。基材13は、長径方向をX方向に向けた姿勢とされている。基材13としては、ガラスエポキシ樹脂基板、セラミックス、プラスチックフィルムなどが使用できる。
【0029】
ICチップ11は、第1アンテナ12および第2アンテナ2を介して非接触にて情報の書き込みおよび読み出しが可能である。ICチップ11は、基材13に実装されている。
【0030】
第1アンテナ12は、例えば、基材13の一方の面に形成された導電層である。導電層は、例えば、導電性箔、メッキ層、導電インク層などで構成される。導電性箔は、例えば、銅、銀、金、白金、アルミニウムなどで構成される金属箔である。導電性箔は、エッチングなどによって所定の形状に形成される。メッキ層は、例えば、銅、銀、金、白金、アルミニウムなどの金属で構成される。導電インク層は、導電インクを用いて印刷などにより形成される。導電インクは、金属、カーボン材料などで形成される導電性粒子を含む。
【0031】
第1アンテナ12は、ループ状に形成されている。第1アンテナ12は、例えば、基材13の外周縁13aに沿う湾曲形状を有する。第1アンテナ12は、楕円形状のループ状に形成されている。第1アンテナ12は、ICチップ11に電気的に接続されている。
【0032】
第2アンテナ2は、ブースター用のアンテナである。第2アンテナ2は、例えば、線状体である。第2アンテナ2は、例えば、スチール、ステンレス鋼、銅、銅合金などの金属で形成されている。第2アンテナ2は、例えば、真鍮メッキ鋼線で形成することができる。第2アンテナ2は、基板1とは別体とされている。なお、本実施形態の第2アンテナ2は、扁平状の外形を有する。換言すれば、扁平状の第2アンテナ2は、厚み方向A(本実施形態ではZ方向)と直交する方向(本実施形態ではXY平面の面内方向)に延在している。以下、厚み方向A(本実施形態ではZ方向)と直交する方向(本実施形態ではXY平面の面内方向)を、単に「アンテナ面内方向B」と記載する場合がある。本実施形態の第2アンテナ2は、アンテナ面内方向Bに延在する線状体からなる扁平線状アンテナであるが、この構成に限られない。第2アンテナ2は、例えば、アンテナ面内方向Bに延在する板状体からなる扁平板状アンテナであってもよい。
【0033】
第2アンテナ2は、電磁界結合部21と、一対の延出部22と、を備える。電磁界結合部21は、湾曲形状を有する。「湾曲形状」とは、急峻な屈曲部がなく、滑らかに曲がる形状である。湾曲形状としては、例えば、楕円弧状、円弧状、高次曲線状(例えば二次曲線状)などがある。「高次曲線状」としては、放物線状、双曲線状などがある。電磁界結合部21は、半楕円形状とされている。詳しくは、電磁界結合部21は、楕円形の一方の頂点(長軸と交わる頂点)から他方の頂点(長軸と交わる頂点)に至る半楕円形状である。
【0034】
電磁界結合部21は、平面視において、基板1の少なくとも一部を囲む形状とされる。電磁界結合部21は、楕円形状の基板1の一方の頂点(長軸と交わる頂点)から他方の頂点(長軸と交わる頂点)に至る範囲(+Y方向側の半周範囲)を囲む。
【0035】
電磁界結合部21は、平面視において、第1アンテナ12の外周縁12aに沿う湾曲形状(例えば、楕円弧状)とされている。電磁界結合部21と外周縁12aとの離間距離は、ほぼ一定である。電磁界結合部21は、平面視において、基板1の外周縁13aの外側に、外周縁13aに近接して位置する。電磁界結合部21は、平面視において、外周縁13aに沿う形状とされる。電磁界結合部21と外周縁13aとの離間距離は、ほぼ一定である。
【0036】
電磁界結合部21は、非接触で第1アンテナ12と電磁界結合する。電磁界結合とは、例えば、電界結合と磁界結合のうち一方である。電磁界結合部21の長さ方向に直交する断面の形状は、例えば、円形状である(図7参照)。
【0037】
一対の延出部22は、電磁界結合部21の一方および他方の端部21aからそれぞれ延出する。図6に示すように、一対の延出部22のうち一方である第1延出部22Aは、電磁界結合部21の-X方向の端部21aから、蛇行しつつ-X方向に延出する。一対の延出部22のうち他方である第2延出部22Bは、電磁界結合部21の+X方向の端部21aから、蛇行しつつ+X方向に延出する。
【0038】
延出部22の平面視形状は、例えば、メアンダ(蛇行)形状、波状、ジグザグ形状などである。延出部22は、メアンダ形状を有する。
【0039】
図5に示すように、延出部22は、複数の直線部23と、複数の折り返し部24とを備える。直線部23は、Y方向に沿う直線状とされている。複数の直線部23は、X方向に間隔をおいて配置されている。折り返し部24は、隣り合う直線部23の端部どうしを連結する。折り返し部24は、湾曲形状(例えば、円弧形状)を有する。
【0040】
複数の直線部23のうち最も電磁界結合部21に近い直線部23を「第1直線部23A」という。複数の直線部23のうち2番目に電磁界結合部21に近い直線部23を「第2直線部23B」という。複数の直線部23のうち3番目に電磁界結合部21に近い直線部23を「第3直線部23C」という。第1直線部23Aと第2直線部23Bとを連結する折り返し部24を「第1折り返し部24A」という。第2直線部23Bと第3直線部23Cとを連結する折り返し部24を「第2折り返し部24B」という。
【0041】
第1直線部23Aは、電磁界結合部21の端部21aから-Y方向に延出する。第1折り返し部24Aは、第1直線部23Aの-Y方向の端部から湾曲して延び、第2直線部23 Bの-Y方向の端部に達する。延出部22のうち、第1直線部23Aと第1折り返し部24Aの一部とは外装体3内にあるが、延出部22のそれ以外の部分は、外装体3の外に延出している(図4参照)。
【0042】
外装体3は、基板1及び第2アンテナ2を保持面31a上に保持している。
【0043】
より具体的には、図3に示すように、本実施形態の外装体3は、板状の本体部31と、板状の蓋部32とを備える。本体部31の厚み方向の一方側の面が保持面31aである。本実施形態の通信装置10では、本体部31の保持面31a上に基板1及び第2アンテナ2が保持されている状態で、蓋部32が本体部31の保持面31aを覆うように装着される。これにより、基板1の全体、及び、第2アンテナ2の一部(本実施形態では電磁界結合部21の全体、及び、一対の延出部22の一部)は、本体部31の保持面31aと、蓋部32と、の間に収容された状態となる。
【0044】
外装体3は、全体として板状とされている。本体部31および蓋部32は、例えば、樹脂で形成される。樹脂としては、ナイロン6,6などのポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂;ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂;ポリフッ化ビニルなどのポリフッ化エチレン系樹脂;ポリ塩化ビニルなどのビニル重合体;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂等が挙げられる。
【0045】
図5に示すように、本体部31は、平面視において矩形状とされている。本体部31の一方の面である保持面31aには、基板保持凹部37(基板保持部)と、アンテナ保持溝34と、一対の側部凹所35が形成されている。基板保持凹部37は、基板保持凸部33によって形成される。基板保持凹部37は、基板保持凸部33によって囲まれた凹部である。
【0046】
基板保持凸部33は、環状のリブ状突起である。基板保持凸部33は、基板1の外周縁13aに沿う湾曲形状(例えば、楕円形状)とされている。基板保持凸部33は、保持面31aから+Z方向に突出する。基板保持凸部33の長さ方向に直交する断面の形状は、例えば矩形状である。基板保持凸部33は、平面視において、第1アンテナ12の外周縁12aに沿う湾曲形状(例えば、楕円形状)とされている。
【0047】
基板保持凹部37は、基板1を保持する。基板保持凹部37は、基板1の外周縁13aに沿う形状(例えば、楕円形状)とされている。基板保持凹部37の内形寸法(内径)は、基板1の外形寸法(外径)とほぼ同じ、または基板1の外形寸法(外径)よりわずかに大きい。基板保持凹部37は、平面視において基板1と相似形である。
【0048】
基板1および基板保持凹部37は、非円形状(例えば、楕円形状)であると、基板1がZ軸周りに傾斜するのを規制し、基板1の正しい姿勢を保つことができる。そのため、第1アンテナ12と電磁界結合部21との電磁界結合を維持することができる。
【0049】
アンテナ保持溝34は、第2アンテナ2の電磁界結合部21を収容する(図4および図7参照)。アンテナ保持溝34は、基板保持凸部33の外側に、基板保持凸部33に近接して形成されている。アンテナ保持溝34は、平面視において、基板保持凸部33に沿う形状とされる。アンテナ保持溝34は、平面視において、第1アンテナ12の外周縁12aに沿う湾曲形状(例えば、楕円弧状)とされている。アンテナ保持溝34は、平面視において、基板1の外周縁13aに沿う湾曲形状(例えば、楕円弧状)とされている。アンテナ保持溝34は、平面視において、半楕円形状とされている。詳しくは、アンテナ保持溝34は、楕円形の一方の頂点(長軸と交わる頂点)から他方の頂点(長軸と交わる頂点)に至る半楕円形状である。
【0050】
アンテナ保持溝34は、平面視において、基板1の少なくとも一部を囲む形状とされる。アンテナ保持溝34は、楕円形状の基板1の一方の頂点(長軸と交わる頂点)から他方の頂点(長軸と交わる頂点)に至る範囲(+Y方向側の半周範囲)を囲む。
【0051】
図7に示すように、アンテナ保持溝34の長さ方向に直交する断面は、例えば、矩形状である。アンテナ保持溝34の幅(内形寸法)W1は、電磁界結合部21の外径(外形寸法)D1より大である。幅W1と外径D1との差は、例えば、0.01mm~1mm(好ましくは0.05mm~0.2mm)とすることができる。アンテナ保持溝34の幅W1が電磁界結合部21の外径D1より大であるため、電磁界結合部21は、線径方向(例えば、Y方向)に変位可能な状態でアンテナ保持溝34に収容される。「線径方向」は、電磁界結合部21の長さ方向に直交する方向である。電磁界結合部21は、アンテナ保持溝34に対して長さ方向にも変位可能である。
【0052】
アンテナ保持溝34の深さは、アンテナ保持溝34の底面34aから蓋部32(天面38a)までの高さ(内形寸法)H1が、電磁界結合部21の外径D1より大となるように定められる。高さH1と外径D1との差は、例えば、0.01mm~1mm(好ましくは0.05mm~0.2mm)とすることができる。アンテナ保持溝34の高さH1が電磁界結合部21の外径D1より大であるため、電磁界結合部21は、線径方向(例えば、Z方向)に変位可能な状態でアンテナ保持溝34に収容される。
【0053】
図5に示すように、側部凹所35は、保持面31aの一方および他方の側部に形成されている。側部凹所35は、本体部31のX方向の側端縁31bを含む領域に形成されている。側部凹所35の内周縁35aは、Y方向に沿う第1直線部35bと、湾曲部35cと、X方向に沿う第2直線部35dとを有する。
【0054】
第1直線部35bは、アンテナ保持溝34の内周縁の端部を始点として-Y方向に延びる部分である。湾曲部35cは、第1直線部35bの先端から、X方向に対する傾斜角度が小さくなりつつ延出する部分である。第2直線部35dは、湾曲部35cの先端からX方向に沿って側端縁31bに向かう部分である。
【0055】
図4に示すように、側部凹所35は、平面視において、第2アンテナ2の第1直線部23Aと、第1折り返し部24Aの一部と、を包含する。第1直線部23Aは、第1直線部35b(図5参照)に近接している。第1折り返し部24Aは、湾曲部35c(図5参照)に近接している。側部凹所35は、第2アンテナ2の所定の長さ範囲(第1直線部23Aと、第1折り返し部24Aの一部)の少なくとも一部を収容する。
【0056】
図3に示すように、側部凹所35はY方向に十分な距離があるため、側端縁31bには、Y方向(保持面31aに沿う方向)に延びるスリット状の側端開口36が形成される。第2アンテナ2は、側端開口36を通して外装体3の外に延出している。図5に示すように、本体部31の+Y方向の端縁31cには、X方向に位置を違えて2つの係止凹部39が形成されている。本体部31の-Y方向の端縁31dにも、X方向に位置を違えて2つの係止凹部39が形成されている。
【0057】
図3に示すように、蓋部32は、平面視において矩形状とされている。蓋部32は、本体部31と同形とされ、本体部31の保持面31aに対向して設置されている。蓋部32は、平面視において、本体部31の保持面31aに重なるように設置されている。
【0058】
図7に示すように、蓋部32の対向面32aは、本体部31の保持面31aに対向する面である。対向面32aには、位置決め溝38が形成されている。位置決め溝38は、環状の溝である。位置決め溝38の長さ方向に直交する断面の形状は、例えば矩形状である。
【0059】
位置決め溝38は、基板保持凸部33およびアンテナ保持溝34に応じた湾曲形状(例えば、楕円形状)とされている。位置決め溝38は、平面視において、基板保持凸部33およびアンテナ保持溝34を一括して包含する幅を有する。位置決め溝38の天面38aの一部は、アンテナ保持溝34の底面34aに対向する。
【0060】
図3に示すように、蓋部32の+Y方向の端縁32cには、X方向に位置を違えて2つの係止凸部40が形成されている。蓋部32の-Y方向の端縁32dにも、X方向に位置を違えて2つの係止凸部40が形成されている。
【0061】
係止凸部40は、先端に係止爪部(図示略)が形成されている。係止凸部40は、本体部31の係止凹部39に挿入される。係止凸部40の係止爪部は、本体部31に係止する。これにより、蓋部32は、本体部31に着脱自在に結合される。
【0062】
外装体3は、第2アンテナ2に対して固定されていない。すなわち、外装体3は、第2アンテナ2に対して非固定である。
【0063】
通信装置10は、例えば、ゴム、樹脂などで構成される成形品に設置することができる。例えば、通信装置10は、成形品に埋設することができる。成形品は、例えば、弾性体であり、弾性変形可能である。成形品に伸び、曲げなどの変形が生じた場合、第2アンテナ2に、外力が作用する可能性がある。例えば、延出部22に、X方向に沿って外装体3から離れる方向の引張力が作用することが考えられる。延出部22には、X方向に沿って外装体3に近づく方向の力が作用することも考えられる。本実施形態のように、通信装置10をタイヤ本体60に設置する際には、通信装置10を、ゴム製のシートから成る固定部材(ラミネーションゴム)に内包するようにして設けることができる。これにより、通信装置10の破損を確実に防止できるだけでなく、通信装置10を固定部材で内包した後に、通信装置10をタイヤに組み込むようにすれば、通信装置10を容易にかつ破損のおそれなくタイヤ50に組み込むことができる。
【0064】
[RFタグが奏する効果]
本実施形態の通信装置10では、第2アンテナ2の電磁界結合部21が線径方向(電磁界結合部21の長さ方向に直交する方向)に変位可能な状態でアンテナ保持溝34に収容される(図7参照)。電磁界結合部21が変位可能であるため、第2アンテナ2に外力が作用した場合に、第2アンテナ2における応力を緩和することができる。よって、第2アンテナ2の破損を起こりにくくすることができる。これに対し、第2アンテナが外装体に固定されている場合には、第2アンテナに外力が作用すると、外装体から延出する第2アンテナの基端部(根元部分)に応力が集中し、この箇所で破損が起こりやすくなる可能性がある。
【0065】
第2アンテナ2の電磁界結合部21は、基板1の第1アンテナ12の外周縁12aに沿う形状を有するため、電磁界結合部21を第1アンテナ12に十分に電磁界結合させることができる。アンテナ保持溝34は、第1アンテナ12の外周縁12aに沿って形成されているため、第2アンテナ2の電磁界結合部21を、第1アンテナ12に沿って配置することができる。よって、電磁界結合部21を第1アンテナ12に十分に電磁界結合させることができる。
【0066】
第2アンテナ2の電磁界結合部21は、湾曲形状(例えば、半楕円形状)を有するため、第2アンテナ2に外力が作用した場合でも、矩形状の場合に比べ、応力集中が生じにくい。よって、第2アンテナ2の破損を起こりにくくすることができる。これに対し、電磁界結合部が矩形状である場合には、第2アンテナに外力が作用すると、角部(屈曲部)に応力が集中し、この箇所で破損が起こりやすくなる可能性がある。
【0067】
アンテナ保持溝34は、基板1の外周縁13aに沿って形成されているため、第2アンテナ2の電磁界結合部21を、第1アンテナ12に沿って配置することができる。よって、電磁界結合部21を第1アンテナ12に十分に電磁界結合させることができる。
【0068】
外装体3は、本体部31と、保持面31aに重ねられる蓋部32とを備える。基板保持凹部37およびアンテナ保持溝34は、保持面31aに形成されている。そのため、蓋部32によって、基板1および第2アンテナ2が本体部31から脱落するのを阻止することができる。よって、基板1および第2アンテナ2を外装体3に安定的に保持することができる。
【0069】
通信装置10では、外装体3の側端縁31bに、Y方向(保持面31aに沿う方向)に延びるスリット状の側端開口36が形成されている。そのため、第2アンテナ2は外装体3に対してY方向に位置変動できる。したがって、第2アンテナ2に外力が作用した場合に、変位により応力を緩和しやすくなる。よって、第2アンテナ2の破損を起こりにくくすることができる。
【0070】
例えば、通信装置10では、基板1の外周縁13aおよび第1アンテナ12の外周縁12aは全周にわたって湾曲形状であるが、基板およびアンテナは、外周縁の一部が湾曲形状であってもよい。外装体3は、本体部31と蓋部32とを備えるが、外装体の構成は特に限定されない。例えば、外装体は、蓋部を備えていなくてもよい。外装体は板状に限らず、他の形状(ブロック状等)であってもよい。
【0071】
以下、図8図10を参照して、通信装置10近傍のサイド被覆ゴム57aの構成の特徴について説明する。図8は、図1の通信装置10近傍を拡大して示す図である。図9は、図1に示すタイヤ50を、タイヤ幅方向Cの外側から見た側面図のうち、通信装置10近傍を拡大して示す図である。図9では、通信装置10の位置を、破線により示している。換言すれば、図9は、本実施形態の後述する突出部80を、タイヤサイド部57の外面から見た正面図でもある。図10は、図9に示すII-II断面図である。図8図10では、説明の便宜上、通信装置10の断面詳細の図示を省略している。また、図8図10では、説明の便宜上、タイヤサイド部57のうち、通信装置10よりタイヤ幅方向Cの内側に位置する部材(例えば図1に示すカーカス54等)の図示を省略している。図8図10に示すように、本実施形態の通信装置10は、X方向がタイヤ周方向Fに沿うようにタイヤサイド部57に埋設されている。また、図8図10に示すように、本実施形態の通信装置10は、Y方向がタイヤ径方向Eに沿うようにタイヤサイド部57に埋設されている。更に、図8図10に示すように、本実施形態の通信装置10は、Z方向がタイヤ幅方向Cに沿うようにタイヤ本体60のタイヤサイド部57に埋設されている。
【0072】
図8図10に示すように、タイヤサイド部57の外面は、装置領域Q1において突出している。換言すれば、タイヤサイド部57の外面を構成するサイド被覆ゴム57aは、装置領域Q1において突出している。ここで、「装置領域Q1」とは、タイヤサイド部57のタイヤ径方向E及びタイヤ周方向Fで通信装置10が位置する領域を意味する。つまり、本実施形態の装置領域Q1は、図9において一点鎖線により囲まれる領域を意味している。このように、タイヤサイド部57の外面のうち、通信装置10を覆う位置に、突出部80を設けることで、通信装置10の埋設位置をタイヤ50の外部から識別し易くなる。
【0073】
更に、サイド被覆ゴム57aの厚みTは、装置領域Q1において、装置領域Q1の周囲より、薄くなっている。サイド被覆ゴム57aの厚みTは、タイヤ幅方向Cでの厚みを意味する。以下、図8図10を参照してこの具体例を説明する。説明の便宜上、図8において、装置領域Q1に対してタイヤ径方向Eの一方側(本実施形態では一例としてタイヤ径方向Eの外側)に連なる領域を第1隣接領域Q2とする。また、図8において、装置領域Q1に対してタイヤ径方向Eの他方側(本実施形態では一例としてタイヤ径方向Eの内側)に連なる領域を第2隣接領域Q3とする。かかる場合に、図8に示すように、サイド被覆ゴム57aの厚みTは、装置領域Q1において、第1隣接領域Q2及び第2隣接領域Q3のうち装置領域Q1に隣接する位置より、薄くなっている。つまり、サイド被覆ゴム57aの装置領域Q1での厚みT1は、装置領域Q1のタイヤ径方向Eの周囲である、第1隣接領域Q2及び第2隣接領域Q3のうち装置領域Q1に隣接する位置、でのサイド被覆ゴム57aの厚みT2、T3より、薄くなっている。ここで、通信装置10の位置でのタイヤ幅方向断面視(図1図8参照)において、「第1隣接領域Q2のうち装置領域Q1に隣接する位置」とは、第1隣接領域Q2のうち、装置領域Q1との境界からタイヤ径方向Eに1mm以下の範囲の位置を意味する。同様に、通信装置10の位置でのタイヤ幅方向断面視(図1図8参照)において、「第2隣接領域Q3のうち装置領域Q1に隣接する位置」とは、第2隣接領域Q3のうち、装置領域Q1との境界からタイヤ径方向Eに1mm以下の範囲の位置を意味する。
【0074】
図8では、装置領域Q1と、この装置領域Q1とタイヤ径方向Eに連なる第1隣接領域Q2及び第2隣接領域Q3のうち装置領域Q1と隣接する位置と、でサイド被覆ゴム57aの厚みTを比較しているが、タイヤ周方向Fでも同様である。図10において、装置領域Q1に対してタイヤ周方向Fの一方側に連なる領域を第3隣接領域Q4とする。また、図10において、装置領域Q1に対してタイヤ周方向Fの他方側に連なる領域を第4隣接領域Q5とする。かかる場合に、図10に示すように、サイド被覆ゴム57aの厚みTは、装置領域Q1において、第3隣接領域Q4及び第4隣接領域Q5のうち装置領域Q1に隣接する位置より、薄くなっている。つまり、サイド被覆ゴム57aの装置領域Q1での厚みT1は、装置領域Q1のタイヤ周方向Fの周囲である、第3隣接領域Q4及び第4隣接領域Q5のうち装置領域Q1に隣接する位置、でのサイド被覆ゴム57aの厚みT4、T5より、薄くなっている。ここで、通信装置10の位置でのタイヤサイド部57のタイヤ周方向断面視(図10参照)において、「第3隣接領域Q4のうち装置領域Q1に隣接する位置」とは、第3隣接領域Q4のうち、装置領域Q1との境界からタイヤ周方向Fに1mm以下の範囲の位置を意味する。同様に、通信装置10の位置でのタイヤサイド部57のタイヤ周方向断面視(図10参照)において、「第4隣接領域Q5のうち装置領域Q1に隣接する位置」とは、第4隣接領域Q5のうち、装置領域Q1との境界からタイヤ周方向Fに1mm以下の範囲の位置を意味する。
【0075】
以上のように、サイド被覆ゴム57aの厚みTは、装置領域Q1において、装置領域Q1の周囲より、薄くなっている。このようにすることで、通信装置10の位置を表示するために突出する部分である突出部80に歪が集中することを抑制でき、突出部80の耐久性を向上させることができる。
【0076】
なお、サイド被覆ゴム57aの装置領域Q1での厚みT1は、装置領域Q1において一様でなくてよい。かかる場合に、「サイド被覆ゴム57aの装置領域Q1での厚みT1」とは、サイド被覆ゴム57aの装置領域Q1での最大厚みを意味する。また、サイド被覆ゴム57aの、装置領域Q1に対してタイヤ径方向E及びタイヤ周方向Fの周囲での厚みT2~T5についても、一様でなくてよい。かかる場合に、「サイド被覆ゴム57aの、装置領域Q1に対してタイヤ径方向E及びタイヤ周方向Fの周囲での厚みT2~T5」は、サイド被覆ゴム57aの、装置領域Q1に対してタイヤ径方向E及びタイヤ周方向Fの周囲での最小厚みを意味する。
【0077】
また、本実施形態の突出部80は、タイヤサイド部57の外面側から見た正面視(図9参照)において、略円形状の裾部80aを有し、同正面視での中央部が最も突出する頂部80bとなる、凸状曲面により構成されている。そのため、図8に示すように、本実施形態の突出部80は、通信装置10の位置でのタイヤ幅方向断面視ではタイヤ径方向Eの中央部が最も突出する凸形状となる。また、図10に示すように、本実施形態の突出部80は、通信装置10の位置でのタイヤサイド部57のタイヤ周方向断面視ではタイヤ周方向Fの中央部が最も突出する凸形状となる。特に、本実施形態のように、突出部80は、タイヤ径方向E及びタイヤ周方向Fそれぞれにおいて、頂部80bから裾部80aに向かって、凸状曲面部から凹状曲面部へと変化する、末広がり形状(flared shape)を有していることが好ましい。換言すれば、突出部80は、通信装置10の位置でのタイヤ幅方向断面視(図8参照)で、タイヤ径方向Eの中央部の頂部80bからタイヤ径方向Eの両端部の裾部80aに向かって、凸状曲線部L1から変曲点CP1を介して凹状曲線部L2へと変化する、末広がり形状(flared shape)を有することが好ましい。同様に、突出部80は、通信装置10の位置でのタイヤサイド部57のタイヤ周方向断面視(図10参照)で、タイヤ周方向Fの中央部の頂部80bからタイヤ周方向Fの両端部の裾部80aに向かって、凸状曲線部L1から変曲点CP1を介して凹状曲線部L2へと変化する、末広がり形状(flared shape)を有することが好ましい。
【0078】
突出部80をこのような末広がり形状とすることで、突出部80の裾部80aと、突出部80の周囲のタイヤサイド部57の外面と、の間を滑らかに連続させることができ、突出部80の裾部80aの位置に歪が集中することを抑制できる。また、突出部80の頂部80bを含む部分が凸状曲面部により構成されることで、同部分が凹状曲面部により構成される場合と比較して、頂部80bが先細り形状となり難く、タイヤ50の外部からの各種衝撃により頂部80b近傍に歪が集中し易くなることを抑制できる。このように、突出部80を、頂部80bから裾部80aに向かって、凸状曲面部から凹状曲面部へと変化する、末広がり形状(flared shape)とすることで、突出部80の耐久性を高めることができる。
【0079】
なお、突出部80は、その少なくとも一部が、タイヤサイド部57の外面のうち通信装置10を覆う位置に設けられる構成であればよい。したがって、突出部80は、例えば、タイヤサイド部57の外面のうち通信装置10全体を覆うように設けられていてもよく、タイヤサイド部57の外面のうち通信装置10の一部のみを覆うように設けられていてもよい。但し、図8図10に示すように、突出部80は、タイヤサイド部57の外面のうち通信装置10全体を覆うように設けられていることが好ましい。換言すれば、突出部80をタイヤサイド部57の外面側から見た、突出部80の正面視(図9参照)において、突出部80の外縁となる裾部80aは、装置領域Q1の外側にあることが好ましい。裾部80aを装置領域Q1の外側に配置することで、裾部80aが装置領域Q1内にある構成と比較して、装置領域Q1と、この装置領域Q1に対してタイヤ径方向E及びタイヤ周方向Fに連なる領域(本実施形態では第1~第4隣接領域Q2~Q5が該当)と、の境界での、サイド被覆ゴム57aの厚みTの変化を、緩やかにすることができる。これにより、上記境界での剛性段差を小さくでき、上記境界近傍で歪が集中することを抑制できる。その結果、タイヤ50の耐久性を高めることができる。
【0080】
図8に示すように、装置領域Q1でのタイヤサイド部57の外面の最大突出量PL1は、0.1~1.0mmであることが好ましい。本実施形態では、一例として、0.5mmに設定されている。最大突出量PL1とは、突出部80の頂部80bでの法線に平行な頂部法線方向における、頂部80bと、裾部80aと、の最大距離を意味する。最大突出量PL1を0.1mm以上とすることで、タイヤ50の外部からの識別力を確保できる。最大突出量PL1を1.0mm以下とすることで、突出部80に歪が集中することを抑制できる。これにより、突出部80が歪集中によるクラックの起点なることを抑制できる。タイヤ50の外部からの識別力の観点では、最大突出量PL1は、0.2mm以上とすることがより好ましく、0.3mm以上とすることが更に好ましい。突出部80の歪集中抑制の観点では、最大突出量PL1は、0.8mm以下とすることがより好ましく、0.7mm以下とすることが更に好ましい。
【0081】
また、図1に示すように、タイヤサイド部57の外面において、装置領域Q1に対してタイヤ径方向Eの少なくとも一方側(本実施形態では装置領域Q1に対してタイヤ径方向Eの外側)には、突出部90aからなる標章部90が設けられている。ここで標章部90とは、例えば、製造会社名、製造会社のロゴマーク、タイヤ50の商品名、等が挙げられる。そして、装置領域Q1でのタイヤサイド部57の外面の上述した最大突出量PL1(図8参照)は、標章部90を構成する突出部90aの最大突出量PL2(図1参照)よりも小さい。最大突出量PL2とは、標章部90を構成する突出部90aの頂部90a1での法線に平行な頂部法線方向における、突出部90aの頂部90a1と、突出部90aの裾部90a2と、の最大距離を意味する。
【0082】
上述したように、本実施形態のタイヤ50では、通信装置10は、タイヤ本体60のタイヤサイド部57に埋設されている。特に、図1に示すように、本実施形態の通信装置10は、タイヤサイド部57内で、スティフナー51b2と、スティフナー51b2に隣接するサイド被覆ゴム57aとしてのサイドゴム52aと、の間に挟み込まれて配置されているが、通信装置10の位置は、タイヤサイド部57内の他の位置であってもよい。以下、タイヤ50のタイヤ幅方向断面視で、通信装置10を配置可能な位置について、図11を参照して例示説明する。図11では、図1図8図10に示す通信装置10の位置(図11では白抜き四角で表示)に加えて、通信装置10を配置可能な位置の例示を黒色の四角により示している。
【0083】
上述したように、本実施形態の通信装置10はRFタグである。以下、通信装置10を単にRFタグと呼ぶ。RFタグは、上述したように、ICチップ11とアンテナ(本実施形態では、基板1の第1アンテナ12、及び、第2アンテナ2)とを備える。RFタグは、例えば、サイドゴム52aを構成するゴム部材内に埋設されていてもよい。また、RFタグは、タイヤ幅方向断面視でのタイヤ外面に沿う方向であるペリフェリ長さ方向において、剛性の異なる部材の境界となる位置に、配置されないことが好ましい。このようにすることで、RFタグは、剛性段差に基づき歪が集中し易い位置に、配置されない。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。本例では、RFタグは、例えば、タイヤ幅方向断面視でカーカス54の折り返し端54aと、このカーカス54の折り返し端54aに隣接する部材と、の境界となる位置に配置されないことが好ましい。RFタグの数は特に限定されない。タイヤ50は、1個のみのRFタグを備えてもよく、2個以上のRFタグを備えてもよい。ここでは、通信装置の一例として、RFタグを例示説明しているが、RFタグとは異なる通信装置であってもよい。
【0084】
図11に示すように、RFタグは、カーカス54と、サイドゴム52aと、の間に配置されてもよい(図11の符号「P1」参照)。
RFタグは、例えば、タイヤ径方向Eにおいて、タイヤ最大幅となる位置と、トレッド面の位置と、の間に配置されてよい(図11の符号「P1」参照)。このようにすることで、RFタグがタイヤ最大幅となる位置よりタイヤ径方向Eの内側に配置される構成と比較して、タイヤ径方向Eでのタイヤ50の外側からのRFタグとの通信性を高めることができる。
RFタグは、例えば、タイヤ最大幅となる位置よりタイヤ径方向Eの内側に配置されていてもよい(図11の符号「P2」参照)。このようにすることで、RFタグは、剛性の高いビード部51近傍に配置される。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。
特に、RFタグは、タイヤ最大幅となる位置よりタイヤ径方向Eの内側であって、かつ、ビード部51のビードコア51aよりタイヤ径方向Eの外側の位置に配置されることが好ましい(図11の符号「P2」参照)。このようにすることで、RFタグの耐久性を向上させることができるとともに、RFタグとリーダーとの通信が、ビードコア51aにより阻害され難く、RFタグの通信性を高めることができる。
また、サイドゴム52aがタイヤ径方向Eに隣接する同種又は異種の複数のゴム部材から構成されている場合に、RFタグは、サイドゴム52aを構成する複数のゴム部材の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
【0085】
RFタグは、ナイロンチェーファー51dと、このナイロンチェーファー51dのタイヤ幅方向Cの外側で隣接する別の部材と、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。このようにすることで、タイヤ変形時に、RFタグの位置が変動し難くなる。そのため、タイヤ変形時にRFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。
ナイロンチェーファー51dは、例えば、タイヤ幅方向C外側で、サイドゴム52aと隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、ナイロンチェーファー51dと、サイドゴム52aと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい(図11の符号「P2」参照)。
【0086】
本発明に係る空気入りタイヤは、上述した実施形態及び変形例に示す具体的な構成に限られず、特許請求の範囲を逸脱しない限り、種々の変形、変更、組み合わせが可能である。
【0087】
[国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsが提唱されている。本発明の一実施形態は「No.12_つくる責任、つかう責任」および「No.13_気候変動に具体的な対策を」などに貢献する技術となり得ると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は空気入りタイヤに関する。
【符号の説明】
【0089】
1:基板
2:第2アンテナ
3:外装体
10:通信装置
11:ICチップ
12:第1アンテナ
12a:外周縁
13:基材
13a:外周縁
21:電磁界結合部
21a:電磁界結合部の端部
22:延出部
22A:第1延出部
22B:第2延出部
23:直線部
23A:第1直線部
23B:第2直線部
23C:第3直線部
24:折り返し部
24A:第1折り返し部
24B:第2折り返し部
31:本体部
31a:保持面
31b:側端縁
31c:端縁
31d:端縁
32:蓋部
32a:対向面
32c:端縁
32d:端縁
33:基板保持凸部
34:アンテナ保持溝
34a:底面
35:側部凹所
35a:周縁
35b:第1直線部
35c:湾曲部
35d:第2直線部
36:側端開口
37:基板保持凹部
38:位置決め溝
38a:天面
39:係止凹部
40:係止凸部
50:タイヤ
51:ビード部
51a:ビードコア
51b、51b1、51b2:スティフナー
51c:ゴムチェーファー(サイド被覆ゴムの一例)
51d:ナイロンチェーファー
51e:ワイヤーチェーファー
51f:ハットゴム
52:サイドウォール部(タイヤサイド部の一例)
52a:サイドゴム(サイド被覆ゴムの一例)
53:トレッド部
53a:トレッドゴム
53b:クッションゴム
54:カーカス
54a:折り返し端
55:ベルト
55a~55d:ベルトプライ
56:インナーライナー
57:タイヤサイド部
57a:サイド被覆ゴム
60:タイヤ本体
80:突出部
80a:裾部
80b:頂部
90:標章部
90a:突出部
90a1:頂部
90b2:裾部
A:第2アンテナの厚み方向
B:第2アンテナのアンテナ面内方向
C:タイヤ幅方向
CL:タイヤ赤道面
CP1:変曲点
D1:電磁界結合部の外径
E:タイヤ径方向
F:タイヤ周方向
H1:アンテナ保持溝の底面から蓋部までの高さ
L1:凸状曲線部
L2:凹状曲線部
PL1:装置領域でのタイヤサイド部の外面の最大突出量
PL2:標章部を構成する突出部の最大突出量
Q1:装置領域
Q2:第1隣接領域
Q3:第2隣接領域
Q4:第3隣接領域
Q5:第4隣接領域
T:サイド被覆ゴムの厚み
T1:サイド被覆ゴムの装置領域での厚み
T2、T3:装置領域のタイヤ径方向の周囲でのサイド被覆ゴムの厚み
T4、T5:装置領域のタイヤ周方向の周囲でのサイド被覆ゴムの厚み
W1:アンテナ保持溝の幅
P1、P2:通信装置の配置可能位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11