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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036238
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20240308BHJP
   A61B 1/005 20060101ALI20240308BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
A61B1/00 610
A61B1/005 512
G02B23/24 A
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141064
(22)【出願日】2022-09-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】514043908
【氏名又は名称】中西 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100143638
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 真久
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】中西 弘幸
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040DA03
2H040DA15
2H040DA17
2H040DA19
2H040DA55
4C161AA00
4C161BB00
4C161CC06
4C161DD03
4C161FF12
4C161FF29
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、内視鏡における挿入部位の柔軟性に拘らず、その挿入部位の先端部を精度よく操作することができる内視鏡システムを得ることである。
【解決手段】本発明の内視鏡システム1は、内視鏡100と、内視鏡100の移動機構1aとを備えた内視鏡システムであって、内視鏡100は、チューブ110を含み、移動機構1aは、チューブを移動させる磁力を発生する1以上の移動磁力発生部を備え、1以上の移動磁力発生部はいずれも、チューブ110内に移動可能に設けられた可動永久磁石20と、チューブに設けられた固定永久磁石10とを有し、1以上の移動磁力発生部のうちの1つは、可動永久磁石20と固定永久磁石10との間に働く磁力により、チューブ110を移動させる駆動力をチューブ110の先端部111に発生するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡と、前記内視鏡の移動機構とを備えた内視鏡システムであって、
前記内視鏡は、チューブを含み、
前記移動機構は、前記チューブを移動させる磁力を発生する1以上の移動磁力発生部を備え、 前記1以上の移動磁力発生部はいずれも、
前記チューブ内に移動可能に設けられた可動永久磁石と、
前記チューブに設けられた固定永久磁石と
を有し、
前記1以上の移動磁力発生部のうちの1つは、前記可動永久磁石と前記固定永久磁石との間に働く磁力により、前記チューブを移動させる駆動力を前記チューブの先端部に発生させるように構成されている、内視鏡システム。
【請求項2】
前記可動永久磁石の基端側に第1の操作ワイヤが接続され、
前記第1の操作ワイヤは、これを押し引きすることで前記可動永久磁石を前記チューブ内で移動させるものである、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記1以上の移動磁力発生部は、1つの移動磁力発生部であり、
前記1つの移動磁力発生部は、前記固定永久磁石として、前記チューブの最先端に設けられた先端側磁石と、前記先端側磁石から前記チューブの軸線に沿って所定間隔離して前記先端側磁石よりも基端側に配置された基端側磁石とを含み、
前記可動永久磁石として、前記先端側磁石と前記基端側磁石との間に配置された可動永久磁石を含む、請求項2に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記1以上の移動磁力発生部は、複数の移動磁力発生部であり、
前記チューブ内では、前記固定永久磁石と前記可動永久磁石とが、前記チューブの先端側からその基端側に向けて交互にそれぞれ複数個配置されており、
前記複数個配置された個々の可動永久磁石とこれに隣接する2つの固定永久磁石とが前記複数の移動磁力発生部のいずれかを構成している、請求項2に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記チューブは、複数のリング状の磁石あるいはコイル状の磁石を備える蛇腹構造を有し、
前記第1の操作ワイヤは、複数のリング状の磁石あるいはコイル状の磁石を備える蛇腹構造を有する、請求項2に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記可動永久磁石の先端側に第2の操作ワイヤが接続され、
前記第2の操作ワイヤは、これを引くことによって、前記可動永久磁石を前記チューブ内で前進させるものである、請求項2に記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記チューブは、外側チューブと、内側チューブとを含み、
前記可動永久磁石は、前記内側チューブ内に移動可能に配置されており、
前記第2の操作ワイヤは、前記外側チューブと前記内側チューブとの間を通って前記内側チューブの先端側開口縁を介して前記可動永久磁石の先端側に接続されている、請求項6に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記移動機構は、
前記チューブ内に流体を供給する流体供給部と、
前記チューブ内に供給されて前記可動永久磁石に作用する前記流体の流れが変化するように前記流体供給部を制御する流体制御部と
を有する、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記1以上の移動磁力発生部は、1つの移動磁力発生部であり、
前記1つの移動磁力発生部は、前記固定永久磁石として、前記チューブの最先端に設けられた先端側磁石と、前記先端側磁石から前記チューブの軸線に沿って所定間隔離して前記先端側磁石よりも基端側に配置された基端側磁石とを含み、
前記可動永久磁石として、前記先端側磁石と前記基端側磁石との間に配置された可動永久磁石を含む、請求項8に記載の内視鏡システム。
【請求項10】
前記1以上の移動磁力発生部は、複数の移動磁力発生部であり、
前記チューブ内では、前記固定永久磁石と前記可動永久磁石とが、前記チューブの先端側からその基端側に向けて交互にそれぞれ複数個配置されており、
前記複数個配置された個々の可動永久磁石とこれに隣接する2つの固定永久磁石とが前記複数の移動磁力発生部のいずれかを構成している、請求項8に記載の内視鏡システム。
【請求項11】
前記チューブは、複数のリング状の磁石あるいはコイル状の磁石を備える蛇腹構造を有する、請求項8に記載の内視鏡システム。
【請求項12】
前記移動機構は、
前記固定永久磁石を回転可能に支持する磁石支持部と、
前記固定永久磁石の第1磁極となる第1面と、前記固定永久磁石の第2磁極となる第2面とのいずれかの面が、前記可動永久磁石に対向するように前記固定永久磁石の回転をロックするロック手段と
を有する、請求項2に記載の内視鏡システム。
【請求項13】
前記チューブは、
第1の内壁と、
前記第1の内壁に対向する第2の内壁と、
前記第1の内壁に隣接して前記第1の内壁と略垂直な第3の内壁と、
前記第3の内壁に対向する第4の内壁と
を備え、
前記第1の内壁および前記第3の内壁には、その表面に第1磁極が現れるように、複数の板状磁石が前記チューブの軸心に沿って並ぶように埋め込まれており、
前記第2の内壁および前記第4の内壁には、その表面に前記第1の磁極とは反対の第2磁極が現れるように、複数の板状磁石が前記チューブの軸心に沿って並ぶように埋め込まれている、請求項2または請求項12に記載の内視鏡システム。
【請求項14】
前記可動永久磁石は、略直方体形状を有し、
前記チューブの前記第1の内壁に対向する第1の側面には第1磁極が現れ、
前記チューブの前記第1の内壁に隣接する前記第3の内壁に対向する第3の側面には第1磁極が現れ、
前記チューブの前記第2の内壁に対向する第2の側面には前記第1の磁極とは反対の第2磁極が現れ、
前記チューブの前記第2の内壁に隣接する前記第4の内壁に対向する第4の側面には前記第1の磁極とは反対の第2磁極が現れるように構成されている、請求項13に記載の内視鏡システム。
【請求項15】
前記第1の操作ワイヤには、前記第1の操作ワイヤを浮上させる複数のワイヤ浮上用磁石が所定の間隔で取り付けられており、
前記ワイヤ浮上用磁石は、略直方体形状を有し、
前記チューブの前記第1の内壁に対向する第1の側面には第1磁極が現れ、
前記チューブの前記第1の内壁に隣接する前記第3の内壁に対向する第3の側面には第1磁極が現れ、
前記チューブの前記第2の内壁に対向する第2の側面には前記第1の磁極とは反対の第2磁極が現れ、
前記チューブの前記第2の内壁に隣接する前記第4の内壁に対向する第4の側面には前記第1の磁極とは反対の第2磁極が現れるように構成されている、請求項14に記載の内視鏡システム。
【請求項16】
前記可動永久磁石の先端側に第2の操作ワイヤが接続され、
前記第2の操作ワイヤは、これを引くことによって、前記可動永久磁石を前記チューブ内で前進させるものである、請求項15記載の内視鏡システム。
【請求項17】
前記チューブは、外側チューブと、内側チューブとを含み、
前記可動永久磁石は、前記内側チューブ内に移動可能に配置されており、
前記第2の操作ワイヤは、前記外側チューブと前記内側チューブとの間を通って前記内側チューブの先端側開口縁を介して前記可動永久磁石の先端側に接続されている、請求項16に記載の内視鏡システム。
【請求項18】
さらに、前記チューブは硬度調整手段を備える、請求項3または4に記載の内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡システムに関し、特に、内視鏡を移動させるための駆動力を内視鏡の先端部に発生させるための構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療器具として生体内の観察、処置などに用いられる内視鏡がある。
【0003】
内視鏡は、通常、屈曲した人の臓器(大腸など)内へ挿入される挿入部位を有しており、この挿入部位は、臓器の形状に合わせて変形させる必要があることから、可撓性を有する部材で構成されている。
【0004】
ところが、内視鏡の挿入部位に可撓性を持たせることは、内視鏡の操作性を低下させる要因となっている。なぜなら、体外から挿入部位の基端側部分を操作して体内に位置する挿入部位の先端側部分を動かそうとしても、挿入部位が可撓性を有することから力が挿入部位の先端側に伝わりにくいからである。なお、挿入部位の先端側は、内視鏡を体内で移動させるときの前端側であり、挿入部位の後端側は、先端側とは反対側の操作者の手元側をいう。
【0005】
このような挿入部位の可撓性に関する弊害に対しては、例えば、特許文献1では、内視鏡における挿入部位の柔軟性(可撓性)を必要に応じて調整する技術が開示されている。
【0006】
確かに、この技術は、内視鏡における挿入部位の基端側部分を操作したときの力が挿入部位の先端部に伝わりやすくするものであるが、挿入部位の基端側部分を操作することは以前のものと変りなく、そのことに伴う操作性の問題は改善できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-119771公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、内視鏡における挿入部位の柔軟性に拘らず、その挿入部位の先端部を精度よく操作することができる内視鏡システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の項目を提供する。
【0010】
(項目1)
内視鏡と、前記内視鏡の移動機構とを備えた内視鏡システムであって、
前記内視鏡は、チューブを含み、
前記移動機構は、前記チューブを移動させる磁力を発生する1以上の移動磁力発生部を備え、
前記1以上の移動磁力発生部はいずれも、
前記チューブ内に移動可能に設けられた可動永久磁石と、
前記チューブに設けられた固定永久磁石と
を有し、
前記1以上の移動磁力発生部のうちの1つは、前記可動永久磁石と前記固定永久磁石との間に働く磁力により、前記チューブを移動させる駆動力を前記チューブの先端部に発生させるように構成されている、内視鏡システム。
【0011】
(項目2)
前記可動永久磁石の基端側に第1の操作ワイヤが接続され、
前記第1の操作ワイヤは、これを押し引きすることで前記可動永久磁石を前記チューブ内で移動させるものである、項目1に記載の内視鏡システム。
【0012】
(項目3)
前記1以上の移動磁力発生部は、1つの移動磁力発生部であり、
前記1つの移動磁力発生部は、前記固定永久磁石として、前記チューブの最先端に設けられた先端側磁石と、前記先端側磁石から前記チューブの軸線に沿って所定間隔離して前記先端側磁石よりも基端側に配置された基端側磁石とを含み、
前記可動永久磁石として、前記先端側磁石と前記基端側磁石との間に配置された可動永久磁石を含む、項目2に記載の内視鏡システム。
【0013】
(項目4)
前記1以上の移動磁力発生部は、複数の移動磁力発生部であり、
前記チューブ内では、前記固定永久磁石と前記可動永久磁石とが、前記チューブの先端側からその基端側に向けて交互にそれぞれ複数個配置されており、
前記複数個配置された個々の可動永久磁石とこれに隣接する2つの固定永久磁石とが前記複数の移動磁力発生部のいずれかを構成している、項目2に記載の内視鏡システム。
【0014】
(項目5)
前記チューブは、複数のリング状の磁石あるいはコイル状の磁石を備える蛇腹構造を有し、
前記第1の操作ワイヤは、複数のリング状の磁石あるいはコイル状の磁石を備える蛇腹構造を有する、項目2に記載の内視鏡システム。
【0015】
(項目6)
前記可動永久磁石の先端側に第2の操作ワイヤが接続され、
前記第2の操作ワイヤは、これを引くことによって、前記可動永久磁石を前記チューブ内で前進させるものである、項目2に記載の内視鏡システム。
【0016】
(項目7)
前記チューブは、外側チューブと、内側チューブとを含み、
前記可動永久磁石は、前記内側チューブ内に移動可能に配置されており、
前記第2の操作ワイヤは、前記外側チューブと前記内側チューブとの間を通って前記内側チューブの先端側開口縁を介して前記可動永久磁石の先端側に接続されている、項目6に記載の内視鏡システム。
【0017】
(項目8)
前記移動機構は、
前記チューブ内に流体を供給する流体供給部と、
前記チューブ内に供給されて前記可動永久磁石に作用する前記流体の流れが変化するように前記流体供給部を制御する流体制御部と
を有する、項目1に記載の内視鏡システム。
【0018】
(項目9)
前記1以上の移動磁力発生部は、1つの移動磁力発生部であり、
前記1つの移動磁力発生部は、前記固定永久磁石として、前記チューブの最先端に設けられた先端側磁石と、前記先端側磁石から前記チューブの軸線に沿って所定間隔離して前記先端側磁石よりも基端側に配置された基端側磁石とを含み、
前記可動永久磁石として、前記先端側磁石と前記基端側磁石との間に配置された可動永久磁石を含む、項目8に記載の内視鏡システム。
【0019】
(項目10)
前記1以上の移動磁力発生部は、複数の移動磁力発生部であり、
前記チューブ内では、前記固定永久磁石と前記可動永久磁石とが、前記チューブの先端側からその基端側に向けて交互にそれぞれ複数個配置されており、
前記複数個配置された個々の可動永久磁石とこれに隣接する2つの固定永久磁石とが前記複数の移動磁力発生部のいずれかを構成している、項目8に記載の内視鏡システム。
【0020】
(項目11)
前記チューブは、複数のリング状の磁石あるいはコイル状の磁石を備える蛇腹構造を有する、項目8に記載の内視鏡システム。
【0021】
(項目12)
前記移動機構は、
前記固定永久磁石を回転可能に支持する磁石支持部と、
前記固定永久磁石の第1磁極となる第1面と、前記固定永久磁石の第2磁極となる第2面とのいずれかの面が、前記可動永久磁石に対向するように前記固定永久磁石の回転をロックするロック手段と
を有する、項目2に記載の内視鏡システム。
【0022】
(項目13)
前記チューブは、
第1の内壁と、
前記第1の内壁に対向する第2の内壁と、
前記第1の内壁に隣接して前記第1の内壁と略垂直な第3の内壁と、
前記第3の内壁に対向する第4の内壁と
を備え、
前記第1の内壁および前記第3の内壁には、その表面に第1磁極が現れるように、複数の板状磁石が前記チューブの軸心に沿って並ぶように埋め込まれており、
前記第2の内壁および前記第4の内壁には、その表面に前記第1の磁極とは反対の第2磁極が現れるように、複数の板状磁石が前記チューブの軸心に沿って並ぶように埋め込まれている、項目2または項目12に記載の内視鏡システム。
【0023】
(項目14)
前記可動永久磁石は、略直方体形状を有し、
前記チューブの前記第1の内壁に対向する第1の側面には第1磁極が現れ、
前記チューブの前記第1の内壁に隣接する前記第3の内壁に対向する第3の側面には第1磁極が現れ、
前記チューブの前記第2の内壁に対向する第2の側面には前記第1の磁極とは反対の第2磁極が現れ、
前記チューブの前記第2の内壁に隣接する前記第4の内壁に対向する第4の側面には前記第1の磁極とは反対の第2磁極が現れるように構成されている、項目13に記載の内視鏡システム。
【0024】
(項目15)
前記第1の操作ワイヤには、前記第1の操作ワイヤを浮上させる複数のワイヤ浮上用磁石が所定の間隔で取り付けられており、
前記ワイヤ浮上用磁石は、略直方体形状を有し、
前記チューブの前記第1の内壁に対向する第1の側面には第1磁極が現れ、
前記チューブの前記第1の内壁に隣接する前記第3の内壁に対向する第3の側面には第1磁極が現れ、
前記チューブの前記第2の内壁に対向する第2の側面には前記第1の磁極とは反対の第2磁極が現れ、
前記チューブの前記第2の内壁に隣接する前記第4の内壁に対向する第4の側面には前記第1の磁極とは反対の第2磁極が現れるように構成されている、項目14に記載の内視鏡システム。
【0025】
(項目16)
前記可動永久磁石の先端側に第2の操作ワイヤが接続され、
前記第2の操作ワイヤは、これを引くことによって、前記可動永久磁石を前記チューブ内で前進させるものである、項目15記載の内視鏡システム。
【0026】
(項目17)
前記チューブは、外側チューブと、内側チューブとを含み、
前記可動永久磁石は、前記内側チューブ内に移動可能に配置されており、
前記第2の操作ワイヤは、前記外側チューブと前記内側チューブとの間を通って前記内側チューブの先端側開口縁を介して前記可動永久磁石の先端側に接続されている、項目16に記載の内視鏡システム。
【0027】
(項目18)
さらに、前記チューブは硬度調整手段を備える、項目3または4に記載の内視鏡システム。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、内視鏡における挿入部位の柔軟性に拘らず、その挿入部位の先端部を精度よく操作することができる内視鏡システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の実施形態1による内視鏡システム1を説明する概念図であり、内視鏡システム1の全体構成とともに、先端部111aに移動磁力発生部120が設けられた内視鏡100を示す。
図2図2は、図1に示す内視鏡100の先端部の具体的な構成を示す図であり、この先端部の外観および内部構造(移動磁力発生部120)とともに、移動磁力発生部120を構成する固定永久磁石10および可動永久磁石20、さらにこれとは別の構成例である可動永久磁石201を示している。
図3図3は、図1に示すチューブ110の具体的な構造を示す斜視図であり、チューブ110の内周面に取り付けられているチューブ側浮上磁石40を示すとともに、その構成単位である浮上磁石体41および浮上磁石体41を形成する浮上磁石片41aを示している。
図4図4は、図2に示す操作ワイヤ130の具体的な構成を示す斜視図であり、ワイヤ本体130aに取り付けられているワイヤ側浮上磁石30を示すとともに、その構成単位である浮上磁石体31および浮上磁石体31を形成する浮上磁石片31aを示している。
図4A図4Aは、図2(b)に示す内視鏡100の先端部のより具体的な構成を示す図であり、チューブ側浮上磁極40を立体的に示すとともに、チューブ側浮上磁石40にワイヤ側浮上磁石30が組み込まれた状態を示している。
図4B図4Bは、図1に示す内視鏡システム1の内視鏡操作装置50に含まれるチューブ格納部3、電源部141、信号処理部142、および移動制御部150を示す図である。
図5図5は、図1に示す内視鏡100の移動動作(前進)を説明する図である。
図6図6は、図1に示す内視鏡100の移動動作(後進)を説明する図である。
図7図7は、図1に示す内視鏡システム1の変形例1を説明するための図であり、第1の操作ワイヤ130に加えて第2の操作ワイヤ140が設けられた内視鏡100aを示す。
図8図8は、図1に示す内視鏡システム1の変形例2を説明するための図であり、第1の操作ワイヤ130に加えて第2の操作ワイヤ140が設けられ、さらに、チューブ110aとして外側チューブ111と内側チューブ112とが設けられた内視鏡100bを示す。
図9図9は、内視鏡システム1の変形例2として挙げた図8に示す内視鏡100bの移動動作(前進)を説明する図である。
図9A図9Aは、図1に示す内視鏡システム1の変形例3を説明するための図であり、内視鏡1000に設けられた複数の移動磁力発生部120a1、120a2、120a3を示す。
図9B図9Bは、図1に示す内視鏡システム1の変形例4を説明するための図であり、内視鏡に設けられてチューブ110bの硬さを調整する機構を示す。
図10図10は、本発明の実施形態2による内視鏡システムを説明するための図であり、この内視鏡システムで用いられる内視鏡200の先端部(移動磁力発生部220)の断面構造を示すとともに、移動磁力発生部220を構成する固定永久磁石12bおよび可動永久磁石20、さらにこれとは別の構成例である可動永久磁石202を示している。
図10A図10Aは、図10に示す内視鏡を操作する内視鏡操作装置60に含まれるチューブ格納部3、電源部141、信号処理部142、移動制御部250、および流体供給部252を示す図である。
図10B図10Bは、図10に示す実施形態2の内視鏡システムの変形例1を説明するための図であり、内視鏡2000に設けられた複数の移動磁力発生部220a1、220a2、220a3を示す。
図11図11は、本発明の実施形態3による内視鏡システムで用いられる内視鏡300の先端部311a(移動磁力発生部320)の具体的な構造を示す図であり、その先端部の外観および内部構造を示している。
図12図12は、図11に示す移動磁力発生部320で用いられる各種磁石の構造を示す図である。
図12A図12Aは、図11に示す実施形態3の変形例1を説明するための図であり、内視鏡300で用いられる、操作ワイヤ330に回転可能に支持された可動永久磁石203を示す図である。
図13図13は、図11に示す移動磁力発生部320で発生される磁気による内視鏡300の移動動作(前進)を説明する図である。
図13A図13Aは、図11に示す移動磁力発生部320で発生される磁気による内視鏡300の移動動作(後進)を説明する図である。
図14図14は、図11に示す実施形態3の内視鏡300の変形例2を説明するための図であり、操作ワイヤ330に加えて操作ケーブル340が設けられた内視鏡300aを示す。
図15図15は、図11に示す実施形態3の内視鏡300の変形例2を説明するための図であり、第1の操作ワイヤ330に加えて第2の操作ワイヤ340が設けられ、さらに、チューブ310aとして外側チューブ311と内側チューブ312とが設けられた内視鏡300bを示す。
図15A図15Aは、図11に示す内視鏡300の変形例4を説明するための斜視図であり、内視鏡3000の外観、およびこれに用いられている固定永久磁石10bおよび10b1の外観を示す。
図15B図15Bは、図15Aに示す内視鏡3000の先端部を示す断面図であり、図11に示す内視鏡300の1つの移動磁力発生部320に代わる複数の移動磁力発生部320a1、320a2、320a3を示す。
図16図16は、本発明の実施形態4による内視鏡システムに含まれる内視鏡400の先端部(移動磁力発生部420)を模式的に示す断面図であり、可動永久磁石20aを制御する流体の通路を含むチューブ410を示している。
図16A図16Aは、図16に示す内視鏡400の変形例を説明するための図であり、内視鏡400の1つの移動機構420に代わる複数の移動磁力発生部420a1、420a2、420a3を備えた内視鏡4000を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0031】
本明細書において、「約」とは、後に続く数字の±10%の範囲内をいう。
【0032】
本発明は、内視鏡における挿入部位の柔軟性に拘らず、その挿入部位の先端部を精度よく操作することができる内視鏡システムを得ることを課題とし、
内視鏡と、内視鏡の移動機構を備えた内視鏡システムであって、
内視鏡は、チューブを含み、
移動機構は、チューブを移動させる磁力を発生する1以上の移動磁力発生部を備え、 1以上の移動磁力発生部はいずれも、
チューブ内に移動可能に設けられた可動永久磁石と、
チューブに設けられた固定永久磁石と
を有し、
1以上の移動磁力発生部のうちの1つは、可動永久磁石と固定永久磁石との間に働く磁力により、チューブを管腔内で移動させる駆動力をチューブの先端部に発生させるように構成されている、内視鏡システムを提供することにより、上記の課題を解決したものである。
【0033】
従って、本発明の内視鏡システムは、内視鏡のチューブの先端部に設けられた固定永久磁石と、チューブ内を移動可能に設けられた可動永久磁石とを備え、固定永久磁石と可動永久磁石との間に働く磁力により、チューブを移動させる駆動力がチューブの先端部に発生させるものであれば、内視鏡における挿入部位の柔軟性に拘らず、挿入部位であるチューブの先端部を直に磁力で精度よく操作することが可能となり、その他の構成は特に限定されるものではない。
【0034】
また、本発明の内視鏡システムを使用する対象としては、生体であれば任意であり得る。
【0035】
1つの実施形態においては、本発明の使用対象は、被検者などの人体であるが、本発明はこれに限定されない。人体以外の動物や魚類などの体であってもよい。
【0036】
なお、生体内(例えば、食道、胃、腸管などの管腔内)への挿入方法としては、内視鏡のチューブを口や鼻から挿入する場合であってもよいし、肛門から挿入する場合であってもよい。好ましい実施形態においては、内視鏡のチューブは大腸や小腸などを観察する場合には肛門から挿入する。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0037】
ここで、移動磁力発生部は1つ以上設けられておればでよく、例えば、内視鏡を移動させるための移動機構は、チューブを移動させる磁力を発生する1つの移動磁力発生部を有していてもよいし、あるいは、複数の移動磁力発生部を有していてもよい。
【0038】
移動機構が1つの移動磁力発生部を有する場合、1つの移動磁力発生部は、固定永久磁石として、チューブの最先端に設けられた先端側磁石と、先端側磁石からチューブの軸線に沿って所定間隔離して先端側磁石よりも基端側に配置された基端側磁石とを含み、可動永久磁石として、先端側磁石と基端側磁石との間に配置された可動永久磁石を含むことが好ましい。この場合、1つの移動磁力発生部で、チューブの最先端部にチューブを移動させる磁力を発生させることができるからである。
【0039】
また、移動機構が複数の移動磁力発生部を有する場合、チューブ内では、固定永久磁石と可動永久磁石とが、チューブの先端側からその基端側に向けて交互にそれぞれ複数個配置されており、複数個配置された個々の可動永久磁石とこれに隣接する2つの固定永久磁石とが複数の移動磁力発生部のいずれかを構成していることが好ましい。この場合、隣接する移動磁力発生部で固定永久磁石を共有することができ、固定永久磁石を有効利用できるからである。ただし、隣接する移動磁力発生部で固定永久磁石を共有することなく、それぞれ各移動磁力発生部は後述するように対向する一対の固定永久磁石(先端側磁石および基端側磁石)を有するものでもよい。
【0040】
また、ここで、可動永久磁石を移動させる具体的な構成は限定されるものではなく、任意であり得る。
【0041】
(可動永久磁石を移動させる具体的な構成例)
可動永久磁石を移動させる具体的な構成例としては、内視鏡にチューブ内からチューブ外に跨るように設けられた第1の操作ワイヤ(操作ワイヤ)を用いるものでもよいし、チューブ内に供給される流体の流れを利用するものでもよい。ここで、操作ワイヤは、これを押し引きすることで可動永久磁石をチューブ内で移動させるものである。
【0042】
(可動永久磁石の移動に第1の操作ワイヤを用いる場合)
第1の操作ワイヤを利用する場合は、第1の操作ワイヤの先端部は、第1の操作ワイヤの操作により可動永久磁石をチューブ内で移動可能となるように可動永久磁石に接続される。
【0043】
この場合、移動機構は、チューブ内からチューブ外に跨るように設けられた第2の操作ワイヤ(操作ケーブル)をさらに有していてもよい。操作ケーブルは、これを引くことによって、可動永久磁石をチューブ内で前進させるものであり、例えば、1つの実施形態では、この操作ケーブルは、操作ケーブルを操作者がチューブの基端側で引っ張ることで可動永久磁石をチューブの先端側に引き付けるように、動永久磁石の先端側に接続されている。この場合、操作ケーブルにより、可動永久磁石をチューブ先端側に移動させる動作をより確実に行うことができるからである。
【0044】
さらに、この場合には、チューブは、外側チューブと、内側チューブとを含み、可動永久磁石は、内側チューブ内に移動可能に配置されており、操作ケーブルは、外側チューブと内側チューブとの間を通って内側チューブの先端側開口縁を介して可動永久磁石の先端側に接続されていることが好ましい。
【0045】
なぜなら、内視鏡は、外側チューブに加えて内側チューブを備える場合、操作ケーブルを内側チューブの先端を介して可動永久磁石に接続しておくことで、外側チューブの固定永久磁石と内側チューブ内の可動永久磁石との斥力で外側チューブを移動させる際に、操作ケーブルの保持を解除する必要がなく、外側チューブを駆動させる駆動力の反作用で可動永久磁石が移動するのを確実に阻止することができ、磁石の反力で正確に内視鏡を移動させることが可能となる。
【0046】
(可動永久磁石の移動に流体を用いる場合)
また、チューブ内に供給される流体の流れを利用する場合は、内視鏡システムは、流体を内視鏡のチューブ内に供給する流体供給部を備えることとなる。この場合、内視鏡システムは、チューブ内に供給されて可動永久磁石に作用する流体の流れが変化するように流体供給部を制御する流体制御部を備えることが好ましい。なぜなら、流体制御部により、可動永久磁石に作用する流体の流れの向きを反転させたり、流体の流れの強さを調整したりすることで、内視鏡を前進させたり後進させたりすることができ、さらには、内視鏡を移動させる駆動力の大きさを調整することが可能となるからである。
【0047】
なお、移動機構が1つの移動磁力発生部を有する場合、あるいは複数の移動磁力発生部を有する場合のチューブ内での固定永久磁石および可動永久磁石の構成は、可動永久磁石の駆動に第1の操作ワイヤを用いる場合でも流体を用いる場合でも適用できることは言うまでもない。
【0048】
また、可動永久磁石の移動に流体を用いる場合、可動永久磁石は、浮力を発生する浮きを有するものでもよい。浮上用磁石が可動永久磁石をチューブの内壁面に対して浮上させる作用を援助することができる場合があるからである。
【0049】
また、可動永久磁石は、これをワイヤで駆動する場合にも流体で駆動する場合にも拘わらず、先端側と基端側とで異なる極性を持っているので、チューブに設けられた浮上用磁石との間で引力が働く部分が存在する。このため、チューブ側の浮上用磁石との間で引力が働く極性をもつ部分には、その表面部分に磁気遮蔽材を設けたり、チューブ側の浮上用磁石との間で斥力が働く極性が現れるようにシート状磁石で被覆してもよい。
【0050】
(チューブ)
チューブは可撓性を有する筒状部材であれば、その他の構成は特に限定されるものではなく、素材もビニールあるいはゴムなどの可撓性を有する素材に限定されず、金属部品を組み合わせて可撓性を持たせたものでもよいが、チューブ(つまりその側壁)の硬度を調整可能な硬度調整手段を備える構成であることが好ましい。なせなら、チューブは可撓性を有するため、管腔内で先端部が引っ掛かると、基端側からチューブを操作しても前進しなくなる場合があるが、このような場合には、チューブの先端部を硬くすると。基端側の操作力がその先端側に伝わりやすくなり、管腔内での先端部の引っ掛かりが解消される場合があるからである。
【0051】
このような硬度調整手段の具体的な機構としては、チューブの側壁に埋め込まれた形状記憶合金でチューブの側壁を圧縮する方法、あるいはチューブの側壁に埋め込まれたコイルばね(コイル状線材)でチューブの側壁を圧縮する方法が採用可能である。
【0052】
(固定永久磁石)
チューブの先端部に固定された固定永久磁石は、形状、個数、材質などが限定されるものではないが、強力な磁力を持つネオジム磁石などは固定永久磁石として好ましい。ただし、磁石の種類はネオジム磁石に限定されず、必要な磁力を発揮できればフェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石など他の種類の磁石でもよい。
【0053】
(固定永久磁石が対向する一対の磁石である場合)
さらに、固定永久磁石は、例えば、先端側磁石と基端側磁石とを含み、先端側磁石と基端側磁石とは、チューブの軸線に沿って所定間隔を空けて配置されていてもよい。
【0054】
例えば、固定永久磁石として対向する一対の磁石、つまり、先端側磁石と基端側磁石とを用いる場合、1つの実施形態では、先端側磁石と基端側磁石とは、可動永久磁石を挟むようにチューブの軸線に沿って所定間隔を空けて配置され、先端側磁石と可動永久磁石との間、および基端側磁石と可動永久磁石との間には斥力が働くように構成される。
【0055】
(固定永久磁石がチューブの先端に組み込まれた1つの磁石である場合)
あるいは、固定永久磁石は、チューブの先端に組み込まれた1つの磁石であって、可動永久磁石に対向する面の磁極が切り替わるように姿勢を変更可能に支持されたものでもよい。このように固定永久磁石として1つの磁石を用いる場合、1つの実施形態では、磁石支持部とロック手段とが設けられる。磁石支持部は、固定永久磁石を回転可能に支持するものであり、ロック手段は、固定永久磁石の第1磁極となる第1面と固定永久磁石の第2磁極となる第2面とのいずれかの面が、可動永久磁石に対向するように固定永久磁石の回転をロックするものである。これらの手段を備えることで、可動永久磁石と固定永久磁石との間に働く磁力を斥力と引力との間で切り替えることが可能となり、磁力による内視鏡の移動を前進方向と後進方向とで切り替え可能となる。
【0056】
なお、固定永久磁石を回転させて可動永久磁石に対向する面の磁極の極性を切り替える機構は、可動永久磁石に採用し、可動永久磁石の回転により固定永久磁石に対向する面の磁極の極性を切り替えるようにしてもよい。
【0057】
なお、可動永久磁石の移動に用いる操作ケーブル、および操作ケーブルを折り返すための内側チューブ(内筒)を備えた二重構造のチューブは、固定永久磁石が対応する一対の磁石である場合にも、固定永久磁石がチューブの先端に組み込まれた1つの磁石である場合にも適用できることは言うまでもない。
【0058】
(可動永久磁石を浮上させるための構成)
チューブ内を移動可能な可動永久磁石は、チューブ内壁に対する動摩擦を極力小さくすることが好ましく、チューブの材質と可動永久磁石の材質として両者の摩擦係数が小さくなるものを選択するのが好ましいが、可動永久磁石をチューブ内壁から浮上させておけば、両者の動摩擦係数は実質的のゼロとなり、より好ましい。
【0059】
このように可動永久磁石をチューブ内壁から浮上させる具体的な構成は、現実的には磁石を用いた構成であり、以下、このような可動永久磁石を浮上させる構成を説明する。
【0060】
(可動永久磁石を浮上させる第1の構成)
まず、チューブは、例えば、内周面に第1磁極が現れ、外周面に第2磁極が現れる、チューブの軸心に沿って設けられた複数のリング状磁石を備えた蛇腹構造を有する。この場合、チューブの内壁面は第1磁極を呈することとなる。なお、複数のリング状磁石に代えて、内周面に第1磁極が現れ、外周面に第2磁極が現れるコイル状磁石を用いてもよい。
【0061】
一方、可動永久磁石は、外周面に第1磁極が現れ、内周面に第2磁極が現れる筒状磁石とする。この場合、可動永久磁石の外壁面は第1磁極を呈することとなる。
【0062】
その結果、内周面に第1磁極が現れるチューブ内に、外周面に第1磁極が現れる可動永久磁石を配置することで、可動永久磁石は、これに対向するチューブ側リング磁石との間で働く斥力により、チューブ内壁面から浮上した状態に維持される。
【0063】
ここで、可動永久磁石は、外周面に第1磁極が現れ、内周面に第2磁極が現れる筒状磁石としているが、これに限定されず、一端側に第1磁極が現れ、他端側に第2磁極が現れる円柱状磁石であってもよい。
【0064】
ただし、この場合、円柱状の可動永久磁石の第2磁極が、第1磁極が現れるチューブ内壁面に引き付けられるので、より安定に可動永久磁石をチューブ内壁面から浮上させるためには、チューブ内に挿入されて可動永久磁石に接続される第1の操作ワイヤをチューブ内壁面から浮き上がるように磁石を組み込んだ構成とすることが好ましい。
【0065】
例えば、第1の操作ワイヤは、その軸心に沿って所定間隔で設けられた複数のリング状磁石を備えた蛇腹構造を有する。この場合、リング状磁石は、外周面側に第1磁極、つまりチューブの内壁面に現れる磁極と等しい磁極が現れ、内周面側に第2磁極が現れるように構成されたものとする。なお、ここでは、複数のリング状磁石に代えて、外周面に第1磁極が現れ、内周面に第2磁極が現れるコイル状磁石を用いてもよい。
【0066】
このように第1の操作ワイヤを磁石を組み込んだ構造とすることで、この第1の操作ワイヤをリング状磁石(あるいはコイル状磁石)が組み込まれたチューブ内に配置すると、チューブの内周面の第1磁極と操作ワイヤの外周面の第1磁極とが反発することなり、操作ワイヤがチューブ内壁面から浮上することとなる。このように浮上した操作ワイヤに円柱状の可動永久磁石を取り付けることで可動永久磁石もチューブ内壁面から浮上した状態に保持されることとなる。
【0067】
ただし、可動永久磁石は、円筒形状あるいは円柱形状に限定されるものではなく、例えば、直方体形状であってもよく、このような形状の可動永久磁石をチューブ内壁面から浮上させる構成を以下に説明する。
【0068】
(可動永久磁石を浮上させる第2の構成)
ここでは、可動永久磁石が直方体形状であることから、チューブは、可動永久磁石が移動する内部空間として、可動永久磁石が内壁面に接触しない程度の四角柱の空間を有する。
【0069】
すなわち、チューブは、第1の内壁と、第1の内壁に対向する第2の内壁と、第1の内壁に隣接して第1の内壁と略垂直な第3の内壁と、第3の内壁に対向する第4の内壁とを備えている。第1の内壁および第3の内壁には、その表面に第1磁極が現れるように、複数の板状磁石がチューブの軸心に沿って並ぶように埋め込まれている。第2の内壁および第4の内壁には、その表面に第2磁極が現れるように、複数の板状磁石がチューブの軸心に沿って並ぶように埋め込まれている。
【0070】
そして、直方体形状を有する可動永久磁石は、その側壁には、これに対応するチューブの内壁面に現れる磁極と同じ磁極が現れるように構成されている。
【0071】
すなわち、可動永久磁石は、チューブの第1の内壁に対向する第1の側面、およびチューブの第1の内壁に隣接する第3の内壁に対向する第3の側面にはともに第1磁極が現れ、チューブの第2の内壁に対向する第2の側面、およびチューブの第2の内壁に隣接する第4の内壁に対向する第4の側面にはともに第2磁極が現れるように構成されている。
【0072】
この場合も、第1の操作ワイヤにはこれをチューブ内壁面から浮き上がらせる磁石を組み込んでもよい。
【0073】
具体的には、1つの実施形態では、第1の操作ワイヤには、第1の操作ワイヤをチューブ内壁面から浮上させる複数のワイヤ浮上用磁石が所定の間隔で取り付けられている。
【0074】
ワイヤ浮上用磁石は、略直方体形状を有し、チューブの第1の内壁に対向する第1の側面、およびチューブの第1の内壁に隣接する第3の内壁に対向する第3の側面にはともに第1磁極が現れ、チューブの第2の内壁に対向する第2の側面、およびチューブの第2の内壁に隣接する第4の内壁に対向する第4の側面にはともに第2磁極が現れるように構成されている。
【0075】
以上説明したように本発明の内視鏡システムは、内視鏡のチューブの先端部に設けられた固定永久磁石と、チューブ内を移動可能に設けられた可動永久磁石とを備え、固定永久磁石と可動永久磁石との間に働く磁力により、チューブを移動させる駆動力をチューブの先端部に発生させるものであれば、内視鏡における挿入部位の柔軟性に拘らず、挿入部位であるチューブの先端部を直に磁力で精度よく操作することが可能となり、その他の構成は特に限定されるものではないが、以下に示す実施形態では、可動永久磁石の移動に操作ワイヤを用いるか流体を用いる場合、固定永久磁石として対向する一対の磁石を用いる場合、そして回転可能に支持された1つの磁石を用いる場合について、具体的に説明する。
【0076】
すなわち、実施形態1(図1図6図4A図4B)では、固定永久磁石として一対の磁石を用い、移動機構として可動永久磁石を第1の操作ワイヤ(以下、単に操作ワイヤともいう。)で制御するものを挙げる。
【0077】
実施形態1の変形例1(図7)では、移動機構として、可動永久磁石の移動に第1の操作ワイヤに加えて第2の操作ワイヤ(以下、操作ケーブルともいう。)を用いるものを挙げる。
【0078】
実施形態1の変形例2(図8図9)では、移動機構として、可動永久磁石の移動に操作ワイヤに加えて操作ケーブルを用いるものを挙げ、さらに、チューブとして、操作ケーブルを折り返すための内側チューブ(内筒)を備えた二重構造としたものを挙げる。
【0079】
実施形態1の変形例3(図9A)では、移動機構(操作ワイヤによる制御)として、複数の移動磁力発生部を有するものを挙げる。
【0080】
実施形態1の変形例4(図9B)では、内視鏡として、チューブの硬さを調整する機構を備えたものを挙げる。
【0081】
実施形態2(図10図10A)では、固定永久磁石として一対の磁石を用いるものを挙げ、移動機構として、可動永久磁石を流体で制御するものを挙げ、チューブとして、流体の流路を形成する内側チューブと外側チューブとが別体あるいは一体であるものを挙げる。
【0082】
実施形態2の変形例1(図10B)では、移動機構(流体による制御)として、複数の移動磁力発生部を有するものを挙げる。
【0083】
実施形態3(図11図13図13A)では、固定永久磁石として、回転可能にチューブ先端部に組み込まれた1つの磁石を用いるものを挙げ、移動機構として、可動永久磁石を操作ワイヤで制御するものを挙げる。
【0084】
実施形態3の変形例1(図12A)では、可動永久磁石として、回転可能に操作ワイヤに取付られたものを挙げる。
【0085】
実施形態3の変形例2(図14)では、移動機構として、可動永久磁石の移動に操作ワイヤに加えて操作ケーブルを用いるものを挙げる。
【0086】
実施形態3の変形例3(図15)では、移動機構として、可動永久磁石の移動に操作ワイヤに加えて操作ケーブルを用いるものを挙げ、さらに、チューブとして、操作ケーブルを折り返すための内側チューブ(内筒)を備えた二重構造のものを挙げる。
【0087】
実施形態3の変形例4(図15A図15B)では、移動機構((操作ワイヤによる制御))として、複数の移動磁力発生部を有するものを挙げる。
【0088】
実施形態4(図16)では、固定永久磁石として、回転可能にチューブ先端部に組み込まれた1つの磁石を用いるものを挙げ、移動機構として、可動永久磁石を流体で制御するものを挙げ、チューブとして、流体の流路を形成する内側チューブと外側チューブとが別体あるいは一体であるものを挙げる。
【0089】
実施形態4の変形例(図16A)では、移動機構(流体による制御)として、複数の移動磁力発生部を有するものを挙げる。
【0090】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0091】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1による内視鏡システム1を説明する概念図であり、図1(a)は内視鏡システム1の全体構成を示し、図1(b)は、先端部111aに移動磁力発生部120が設けられた内視鏡100を示す。
【0092】
この内視鏡システム1は、図1(a)に示すように、撮像装置(図示せず)を含む光学系装置101および光学系装置101に接続されるチューブ110を含む内視鏡100と、内視鏡100を管腔L内で移動させる移動機構1aと、内視鏡100を操作するための内視鏡操作装置50とを備えており、内視鏡操作装置50には、チューブ110を格納するチューブ格納部3が設けられている。
【0093】
ここで、移動機構1aは、チューブ110を移動させる駆動力を発生する移動磁力発生部120と、移動磁力発生部120を操作するための操作ワイヤ130と、チューブ110および操作ワイヤ130の移動を制御する移動制御部150とを有している。ここで、チューブ110は、ビニール、ゴム、あるいはその他の材料からなる筒状(例えば、円筒形状)の可撓性部材で構成されている。
【0094】
移動磁力発生部120は、図1(b)に示すように、チューブ110の先端部に組み込まれており、固定永久磁石10と可動永久磁石20とを含む。この固定永久磁石10は、先端側磁石11と基端側磁石12とを含み、先端側磁石11と基端側磁石12とが可動永久磁石20を挟むようにチューブ110の軸線に沿って所定間隔を空けて配置され、先端側磁石11と可動永久磁石20との間、および基端側磁石12と可動永久磁石20との間には斥力が働くように構成されている。ここで、所定間隔としては1つの実施形態において約1cm~約10cmの部分である。所定間隔は磁石同士で磁力によって引き付けられるもしくは反発する作用が働く距離よりも遠くするものであれば任意の距離をとり得る。この移動磁石発生部120の構成は、チューブ110の先端側から基端側にかけて複数箇所配置されてもよく、詳細は、実施形態1の変形例3で後述する。
【0095】
そして、操作ワイヤ130の先端部は、操作ワイヤ130の操作により可動永久磁石20がチューブ110内で移動可能となるように可動永久磁石20に接続されている。
【0096】
図2は、図1に示す内視鏡100の先端部の具体的な構造を示す図であり、図2(a)は、この先端部の外観を示す斜視図、図2(b)は、先端部の内部構造(移動磁力発生部120)を示す断面図、図2(c)~図2(e)はそれぞれ、移動磁力発生部120を構成する先端側磁石11、可動永久磁石20、および基端側磁石12を示す斜視図であり、図2(f)は、可動永久磁石20とは別の構成例である可動永久磁石201を示す斜視図である。ここで、図2(b)は、チューブ110の軸心に沿ったチューブ110の断面構造を示している。
【0097】
図2(a)、(b)に示すように、可動永久磁石20は、チューブ110の先端部に組み込まれた対向する一対の磁石、つまり、先端側磁石11と基端側磁石12との間で移動可能に配置され、可動永久磁石20と先端側磁石11との間、および可動永久磁石20と基端側磁石12との間には、いずれも斥力が働くようにこれらの磁石の磁極が設定されているので、可動永久磁石20を操作ワイヤ130により先端側磁石11に近づけたりあるいは基端側磁石12に近づけたりすることで、チューブ110を移動させる駆動力をチューブ110の先端部に発生させることができる。
【0098】
以下、移動機構1aにおける可動永久磁石20および固定永久磁石10を具体的に説明する。
【0099】
(可動永久磁石20)
可動永久磁石20は、図2(d)に示すように、円柱形状を有し、先端側磁石11に対向する面(部位20s)がS極(第1磁極)となり、基端側磁石12に対向する面(部位20n)がN極(第2磁極)となるように構成されている。この可動永久磁石20としては、具体的には円柱形状のネオジム磁石を用いることができる。なお、第1磁極は第2磁極とは反対の磁極であることは言うまでもない。また、可動永久磁石20は、必要な磁力を発生できるものであれば、ネオジム磁石には限定されない。例えば、可動永久磁石20には、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石など他の種類の磁石を用いることができる。
【0100】
なお、可動永久磁石20は、後述する、チューブ側浮上磁石40の内周側S極に対する斥力により浮遊しやすくなるように、基端側磁石12に対向する面がN極(第2磁極)の表面は、S極の磁石または磁気絶縁体に被覆されていてもよい。
【0101】
図2(f)は、このような構成の可動永久磁石201を示している。
【0102】
この可動永久磁石201は図2(d)に示す可動永久磁石20とは構造が異なり、チューブ側の浮上用磁石との間で引力が働く極性(例えば、N極)を持つ部位201bの表面部分には、チューブ側の浮上用磁石との間で斥力が働く極性(例えば、S極)が現れるように磁性部材(例えばシート状磁石)201cで被覆されている。ただし、チューブ側の浮上用磁石との間で引力が働く極性を持つ部分は、シート状磁石201cに代えて磁気遮蔽材からなるシート部材などで被覆してもよい。
【0103】
(固定永久磁石10)
次に、固定永久磁石10として用いられている対向する一対の永久磁石、つまり、先端側磁石11および基端側磁石12を説明する。
【0104】
(先端側磁石11)
先端側磁石11は、図12(c)に示すように、チューブ110内を移動する可動永久磁石20に比べると直径が大きい円盤形状を有し、可動永久磁石20に対向する面(下面)がS極(第1磁極)となり、その反対側の面(上面)がN極(第2磁極)となるように構成されている。具体的には先端側磁石11には円盤状のネオジム磁石が用いられており、S極となる下半部11aと、N極となる上半部11bとを有する。ただし、先端側磁石11には、可動永久磁石20と同様、ネオジム磁石以外の磁石も用いることができる。
【0105】
(基端側磁石12)
基端側磁石12は、図12(e)に示すように、先端側磁石11と同様に、チューブ110内を移動する可動永久磁石20に比べると直径が大きな円盤形状を有し、外径形状が実質的に先端側磁石11と同等であり、可動永久磁石20に対向する面(上面)がN極(第2磁極)となり、その反対側の面(下面)がS極(第1磁極)となるように構成されている。また、この基端側磁石12は、可動永久磁石20につながる操作ワイヤ130を貫通させる必要があり、その中心部には、貫通孔12aが形成されている。具体的には基端側磁石12にも先端側磁石11と同様に円盤状のネオジム磁石が用いられており、S極となる下半部12sと、N極となる上半部12nとを有する。ただし、基端側磁石12には、可動永久磁石20と同様、ネオジム磁石以外の磁石も用いることができる。
【0106】
そして、この内視鏡100では、チューブ110の内周面から操作ワイヤ130および可動永久磁石20を浮上させるための磁石(浮上用磁石)が、チューブ110および操作ワイヤ130に設けられている。その理由は、可動永久磁石20および操作ワイヤ130をチューブ110の内周面に接触しないようにすることで、接触による動摩擦抵抗を実質的になくして可動永久磁石20および操作ワイヤ130をチューブ110内で滑らかに移動させるためである。
【0107】
以下、チューブ110に設けられている浮上用磁石をチューブ側浮上磁石40とし、操作ワイヤ130に設けられている浮上用磁石をワイヤ側浮上磁石30として具体的な構成を説明する。
【0108】
(チューブ側浮上磁石40)
図3は、チューブ側浮上磁石40を示す斜視図であり、図3(a)は、チューブ側浮上用磁石40と可動永久磁石20との位置関係を示し、図3(b)は、チューブ側浮上磁石40を構成するリング状磁石体41の外観を示し、図3(c)は、1つのリング状磁石体41をその構成要素である4つの扇形磁石片41aに分解して示す。
【0109】
この内視鏡100では、チューブ110は、図3(a)に示すように、チューブ本体(例えば、ビニール製筒状部材)の周壁の内周面に複数のリング状磁石体41を所定のピッチで組み込んだものであり、チューブ110は蛇腹構造となっている。チューブ110がこのような蛇腹構造を有することで、浮上用磁石を組み込んだチューブ110を曲がりやすい構造としている。このチューブ110では、複数のリング状磁石体41によりチューブ側浮上磁石40が形成されている。なお、チューブ110は、その製造方法の観点から、チューブ本体の周壁の外周面に複数のリング状磁石体41を所定のピッチで組み込んだものでもよい。
【0110】
ここで、リング状磁石体41は、図3(b)、(c)に示すように、扇型の磁石片41aを複数個(ここでは4個)組み合わせて構成されており、内周側部位41sがS極(第1磁極)となり、外周側部位41nがN極(第2磁極)となるように構成されている。従って、複数のリング状磁石体41からなるチューブ側浮上磁石40の内周面はS極となり、チューブ110の内周面もS極となる。
【0111】
なお、ここでは、チューブ側浮上磁石40は、筒状部材の周壁に複数のリング状板磁石体41を組み込んで構成したものであるが、チューブ側浮上磁石40は、複数のリング状磁石体に代えてコイル状磁石を筒状部材の周壁に組み込んで構成したものでもよい。その場合も、コイル状磁石の内側面および外側面の極性は、複数のリング状磁石体41を用いた場合と同じ極性とする。
【0112】
(ワイヤ側浮上磁石30)
図4は、ワイヤ側浮上磁石30を示す斜視図であり、図4(a)は、ワイヤ側浮上磁石30が組み込まれた操作ワイヤ130およびこれに接続された可動永久磁石20を示し、図4(b)は、ワイヤ側浮上磁石30を構成するリング状磁石体31の外観を示し、図3(c)は、1つのリング状磁石体31をその構成要素である4つの扇形磁石片31aに分解して示す。
【0113】
この内視鏡100では、操作ワイヤ130は、図4(a)に示すように、ワイヤ本体130aの外周面に複数のリング状磁石体31を所定のピッチで取り付けたものであり、操作ワイヤ130も蛇腹構造となっている。ここで、ワイヤ本体130aは、金属製ワイヤ部材である。操作ワイヤ130がこのような蛇腹構造を有することで、浮上用磁石を組み込んだ操作ワイヤ130を曲がりやすい構造としている。
【0114】
ここで、リング状磁石体31は、図4(b)に示すように、扇形磁石片31aを複数個(ここでは4個)組み合わせて構成されており、外周側部位31sがS極(第1磁極)となり、内周側部位31nがN極(第2磁極)となるように構成されている。従って、複数のリング状磁石体31からなるワイヤ側浮上磁石30の外周面はS極となり、操作ワイヤ130の外周面もS極となる。
【0115】
なお、ここでは、ワイヤ側浮上磁石30は、ワイヤ本体130aの外周面に複数のリング状板磁石体31を取り付けた構成したものであるが、ワイヤ側浮上磁石30は、複数のリング状磁石体に代えてコイル状磁石をワイヤ本体130aの外周面に取り付けて構成したものでもよい。その場合も、コイル状磁石の内側面および外側面の極性は、複数のリング状板磁石体31を用いた場合と同じ極性とする。
【0116】
図4Aは、図2(b)に示す内視鏡100の先端部のより具体的な構成を示す図であり、図4A(a)は、チューブ側浮上磁極40を立体的に示し、図4A(b)は、チューブ側浮上磁石40にワイヤ側浮上磁石30が組み込まれた状態を示している。
【0117】
図4Aに示すように、チューブ110の内周面には、内周面がS極となるように複数のリング状板磁石体41が組み込まれており、また、チューブ110内に配置される操作ワイヤ130の外周面には、外周面がS極となるように複数のリング板磁石体31が組み込まれていることで、チューブ110内では、操作ワイヤ130は磁力による反発によりチューブ110の内壁から浮上することとなる。
【0118】
また、可動永久磁石20はこのような操作ワイヤ130の先端に固定されているので、チューブ110内では、可動永久磁石20もチューブ110の内周面から浮上した状態に保持される。
【0119】
このように先端部に移動磁力発生部120が組み込まれた内視鏡100では、移動磁力発生部120にて駆動力を発生させるための操作ワイヤ130の操作(つまり、チューブ110に対する操作ワイヤ130の押込み、牽引、および保持)、さらには、チューブ110の操作(つまり、人体などの管腔の対する押込み、牽引、および保持)および操作ワイヤ130の保持(移動禁止)は、操作者が手で直接行ってもよいが、ボタン操作により、内視鏡操作装置50に搭載されているアクチュエータにより行うようにしてもよい。
【0120】
図1(a)に示す内視鏡操作装置50は、このような操作ワイヤ130およびチューブ110を保持する機能を有しており、このような内視鏡操作装置50の構成を説明する。
【0121】
(内視鏡操作装置50)
この内視鏡操作装置50は、図1(a)に示すように、入力部54および表示部55を有するとともに、第1の操作部51および第2の操作部52を有している。この内視鏡操作装置50を構成する装置筐体50aでは、入力部54は、各種の情報を入力するための入力デバイスが組み込まれた部分であり、表示部55は、データを表示するディスプレイが組み込まれた部分である。また、装置筐体50aの第1操作部51には、チューブ保持ボタン51aおよび操作ワイヤ保持ボタン51bが設けられており、装置筐体50aの第2操作部52には、チューブ110を巻き取るための巻取フットスイッチ52aおよび内視鏡100のチューブ110あるいは別のチューブを介して管腔内に空気を送るための送気フットスイッチ52bが設けられている。
【0122】
図4Bは、図1(a)に示す内視鏡操作装置50に含まれるチューブ格納部3、電源部141、信号処理部142および移動制御部150を模式的に示す図である。
【0123】
内視鏡操作装置50のチューブ格納部3には、チューブ110を巻き取るチューブ巻取機160が設けられている。チューブ巻取機160は、巻取フットスイッチ52aの操作によりチューブ110を巻き取るように構成されている。このチューブ110は、対向する一対のチューブ支持ローラ151により挟持されて支持されている。
【0124】
また、チューブ110内からチューブ110外に跨るように設けられている操作ワイヤ130の基端側(内視鏡100の先端側と反対側)は、ワイヤ巻取りローラ152に巻き付けられている。
【0125】
さらに、内視鏡操作装置50は、操作ワイヤ130およびチューブ110の移動を規制する移動制御部150を有している。この移動制御部150は、チューブ保持ボタン51aの操作により一対のチューブ支持ローラ151の回転を禁止してチューブ110を保持するチューブ移動規制部150aと、操作ワイヤ保持ボタン51bの操作によりワイヤ巻取りローラ152の回転を禁止して操作ワイヤ130を保持する操作ワイヤ移動規制部150bとを有している。
【0126】
内視鏡操作装置50は、内視鏡100の光学系装置101などに電源を供給する電源部141と、光学系装置101からのモニタ信号を受信して表示部に表示させるなどの信号処理を行う信号処理部142とを有している。電源部141は電源線141aを介して光学系装置101およびその他の駆動部などに接続されており、信号処理部142は、モニタ信号線142aを介して入力部54、表示部55および光学系装置101などに接続されている。
【0127】
次に、人の腸管などの曲がりくねった管腔内で内視鏡100を移動させる動作を説明する。
【0128】
図5は、図1に示す内視鏡100の移動動作(前進)を示す図であり、図5(a)は、可動永久磁石20がチューブ110の先端側磁石11に接近する様子を示し、図5(b)は、磁石の反発力によりチューブ110の先端部が前進する様子を示し、図5(c)は、可動永久磁石20の移動によりチューブ110の先端部が前進した状態を示す。
【0129】
内視鏡100を管腔内で前進させる場合、内視鏡100のチューブ110の操作者手元部分を押しても、曲がりくねった管腔内の先端に位置するチューブ110の先端部を移動させることは、チューブ110が撓んだり縮んだりすることから困難である。そこで、チューブ110の先端部に設けられた移動磁力発生部120で、チューブ110の先端部にチューブ110を移動させる駆動力を発生させてチューブ110の先端部を管腔内で移動させる。
【0130】
なお、ここでは、チューブ110の保持および保持解除、さらに、操作ワイヤ130の保持および保持解除は、操作者の手動操作で行う場合を説明するが、内視鏡操作装置50に搭載されているチューブ110および操作ワイヤ130の保持を操作ボタンにより移動制御部150を作動させて行ってもよい。
【0131】
移動磁力発生部120で駆動力を発生させて内視鏡100を前進させる場合、まず、チューブ110を保持した状態で、チューブ110内に設けられている可動永久磁石20をその中立位置(つまり、先端側磁石11と基端側磁石12との中間位置)から操作ワイヤ130で先端側磁石11に近づける(図5(a))。
【0132】
これにより先端側磁石11と可動永久磁石20との間に、内視鏡100(チューブ110)を移動させるのに十分な斥力が働く程度(移動距離Dm1)まで可動永久磁石20が先端側磁石11に接近させた時点で(図5(b))、操作ワイヤ130を保持してチューブ110の保持を解除する。これにより斥力によりチューブ110、つまり内視鏡100の先端部が斥力に応じた距離Dt1だけ前進する(図5(c))。
【0133】
次に、内視鏡100を後進させる場合を説明する。
【0134】
図6は、図1に示す内視鏡100の移動動作(後進)を示す図であり、図6(a)は、可動永久磁石20がチューブ110の基端側磁石12に接近する様子を示し、図6(b)は、磁石の反発力によりチューブ110が後進する様子を示し、図6(c)は、可動永久磁石20の移動によりチューブ110が後進した状態を示す。
【0135】
移動磁力発生部120で駆動力を発生させて内視鏡100を後進させる場合、まず、チューブ110を保持した状態で、チューブ110内に設けられている可動永久磁石20をその中立位置(つまり、先端側磁石11と基端側磁石12との中間位置)から操作ワイヤ130で基端側磁石12に近づける(図6(a))。
【0136】
これにより基端側磁石12と可動永久磁石20との間に、内視鏡100(チューブ110)を移動させるのに十分な斥力が働く程度(移動距離Dm2)まで可動永久磁石20が基端側磁石12に接近した時点で、操作ワイヤ130を保持して、チューブ110の保持を解除する(図6(b))。これにより斥力によりチューブ110、つまり内視鏡100の先端部が斥力に応じた距離Dt2だけ後進する(図6(c))。
【0137】
このように本実施形態1では、内視鏡システム1は、内視鏡100のチューブ110の先端部に設けられた固定永久磁石11、12と、チューブ内を移動可能に設けられた可動永久磁石20とを備え、先端側磁石11と可動永久磁石20との間に働く磁力、および基端側磁石12と可動永久磁石20との間に働く磁力により、チューブ100を管腔L内で前進あるいは後進させる駆動力をチューブ110の先端部に発生させるようにしたので、内視鏡における挿入部位の柔軟性に拘らず、その挿入部位の先端部を精度よく操作することができる。
【0138】
なお、上述した実施形態1の内視鏡システムでは、操作者が可動永久磁石20を操作するための部材は操作ワイヤ130であるが、内視鏡システムは、操作ワイヤ130以外に可動永久磁石20を操作するための補助操作部材を有していてもよく、以下このような補助操作部材を有するものを実施形態1の変形例1として説明する。
【0139】
(実施形態1の変形例1)
図7は、図1に示す内視鏡システム1の変形例1を説明するための断面図であり、図7(a)は、操作ワイヤ(第1の操作ワイヤ)130に加えて操作ケーブル(第2の操作ワイヤ)140を備えた移動磁力発生部120a、言い換えると、第2の操作ワイヤ140が設けられた内視鏡100aを示し、図7(b)~図7(d)は、操作ケーブル140を用いた内視鏡100aの前進動作を示す。
【0140】
この実施形態1の変形例1の内視鏡システムは、図7(a)に示すように、実施形態1の移動用磁力発生部120に代わる移動磁力発生部120aを備えたものであり、移動用磁力発生部120aは、実施形態1の移動磁力発生部120の構成に加えて、可動永久磁石20を先端側に牽引するための操作ケーブル140を備えた構成となっている。また、この実施形態1の変形例1の内視鏡システムにおける内視鏡100aでは、チューブ110の先端の内面には、操作ケーブル140を吊下げるケーブル吊下げフック14が取り付けられ、操作ケーブル140の先端側がケーブル吊下げフック14を介して可動永久磁石20の上面(先端側磁石11に対向する面)に接合されている。
【0141】
なお、この実施形態1の変形例1の内視鏡システムにおけるその他の構成は、実施形態1の内視鏡システム1におけるものと同一である。
【0142】
以下、この内視鏡システムで内視鏡100aを前進させる動作を説明する。なお、内視鏡100aを後進させる動作は、実施形態1の内視鏡100の場合と同一である。
【0143】
移動磁力発生部120aで駆動力を発生させて内視鏡100aを前進させる場合、チューブ110を保持して操作ワイヤ130の保持を解除した状態で、操作ケーブル140を牽引することで、チューブ110内に設けられている可動永久磁石20をその中立位置から先端側磁石11に近づける(図7(b)~図7(c))。このとき、可動永久磁石20は操作ケーブル140の牽引操作で操作されるので、操作ワイヤ130の押し操作で操作する場合のように操作ケーブル140が撓むことはないことから、可動永久磁石20は、可動永久磁石20と先端側磁石11との間でより大きな磁力が発生する位置まで先端側磁石11に近づけられる。
【0144】
その後、チューブ110および操作ケーブル140の保持を解除し、操作ワイヤ130を保持した状態とすると、先端側磁石11と可動永久磁石20との間の磁力でチューブ110が移動距離Dt1aだけ前進する(図7(d))。
【0145】
この場合、先端側磁石11と可動永久磁石20との間に、内視鏡100aを移動させるのにより大きな斥力が働く程度(移動距離Dm1a)まで可動永久磁石20が先端側磁石11に接近可能である(図7(b))。従って、この斥力によりチューブ110、内視鏡100aの先端部により大きな駆動力を発生可能となり、内視鏡100aの移動距離Dt1aを大きくでき、また、チューブ110が管腔内で引っ掛かって動きにくくなっている場合でも、内視鏡100aを前進させることが可能である。
【0146】
なお、内視鏡100aの後進動作には操作ケーブル140は関与しなので、実施形態1の内視鏡100の後進動作と同様に行われる。
【0147】
このような操作ケーブル140を備えた内視鏡システムでは、可動永久磁石20を先端側磁石11に近づける際、操作ワイヤ130を押す操作に代わる操作ケーブル140を牽引する操作によって、可動永久磁石20を動かすことができ、可動永久磁石20と先端側磁石11との間の斥力が強すぎて操作ワイヤ130の押しでは、可動永久磁石20が先端側磁石11により跳ね返されるような場合でも、操作ケーブル140の引張操作により可動永久磁石20を先端側磁石11に近づけることができ、より大きな内視鏡の移動力を発生させることができる。
【0148】
ただし、実施形態1の変形例1では、内視鏡100aを前進させる場合、操作ケーブル140の保持を解除する必要があるので、可動永久磁石20を操作ワイヤ130のみで保持することとなり、このため、操作ケーブル140の保持を解除した時点で、可動永久磁石20を支持する操作ワイヤ130が撓んで可動永久磁石20が先端側磁石11から離れる方向に戻される場合がある。
【0149】
そこで、実施形態1の変形例2では、内視鏡を前進させる場合でも操作ケーブル140の保持を解除する必要のないものを説明する。
【0150】
(実施形態1の変形例2)
図8は、図1に示す内視鏡システム1の変形例2を説明するための図であり、図8(a)は、操作ワイヤ130に加えて操作ケーブル140を備えた移動機構120b、およびチューブ110に代わる、外側チューブ111と内側チューブ112とを有するチューブ110aを備えた内視鏡100bの断面構造を示し、図8(b)は、この内視鏡100bに用いられる基端側磁石12aの構造を立体的に示す。ここで、図8(a)は、言い換えると、第1の操作ワイヤ130に加えて第2の操作ワイヤ140が設けられた内視鏡100bを示す。
【0151】
この実施形態1の変形例2の内視鏡システムは、図8(a)に示すように、実施形態1の移動用磁力発生部120に代わる移動磁力発生部120bを備え、実施形態1のチューブ110に代わるチューブ110aを備えたものである。
【0152】
ここで、移動用磁力発生部120bは、実施形態1の移動磁力発生部120の構成に加えて、可動永久磁石20を先端側に牽引するための操作ケーブル(第2の操作ワイヤ)140を備えた構成となっている。
【0153】
また、この実施形態1の変形例2の内視鏡100bでは、チューブ110aは、外側チューブ111内に内側チューブ112が移動可能に収容された構造となっており、チューブ側浮上磁石40は内側チューブ112の内周面に実施形態1の内視鏡100におけるものと同様に組み込まれている。このため、この内視鏡100bでは、基端側磁石12aは、図8(b)に示すように、実施形態1の内視鏡100における円盤形状ではなく、中央部に内側チューブ112を配置するための貫通穴12aが形成されたリング形状となっている。
【0154】
そして、内側チューブ112の先端部には、操作ケーブル140のケーブル折返しガイド15が取り付けられ、操作ケーブル140の先端側はケーブル折返しガイド15を介して可動永久磁石20の上面(先端側磁石11に対向する面)に接続されている。
【0155】
なお、この実施形態1の変形例2の内視鏡システムにおけるその他の構成は、実施形態1の内視鏡システム1におけるものと同一である。
【0156】
以下、この内視鏡システムで内視鏡100bを前進させる動作を説明する。
【0157】
図9は、図8に示す内視鏡100bの移動動作(前進)を示す図であり、図9(a)は、可動永久磁石20がチューブ110aの基端側磁石12に接近する様子を示し、図9(b)は、磁石の反発力によりチューブ110aが前進する様子を示し、図9(c)は、可動永久磁石20の移動によりチューブ110aが前進した状態を示す。
【0158】
移動磁力発生部120bで駆動力を発生させて内視鏡100bを前進させる場合、チューブ110aの外側チューブ111および内側チューブ112を保持して操作ワイヤ130の保持を解除した状態で、操作ケーブル140を牽引することで、内側チューブ112内に設けられている可動永久磁石20をその中立位置から先端側磁石11に近づける(図9(a)~図9(b))。このとき、可動永久磁石20は操作ケーブル140の牽引操作で移動させられるので、操作ワイヤ130の押し操作で移動させる場合に比べて、可動永久磁石20は、可動永久磁石20と先端側磁石11との間でより大きな磁力が発生する位置(移動距離Dm1b)まで先端側磁石11に近づけられる。
【0159】
その後、内側チューブ112の保持を維持して外側チューブ111の保持を解除し、操作ケーブル140を保持した状態とすると、先端側磁石11と可動永久磁石20との間の磁力で外側チューブ111が内側チューブ112に対して所定距離Dt1bだけ前進する(図9(c))。
【0160】
この場合も、可動永久磁石20は操作ケーブル140の牽引操作で操作されるので、操作ワイヤ130の押し操作で操作する場合に比べて、可動永久磁石20は、可動永久磁石20と先端側磁石11との間でより大きな磁力が発生する位置まで先端側磁石11に近づけられる。
【0161】
なお、内視鏡100bの後進動作には操作ケーブル140は関与しないので、実施形態1の内視鏡100の後進動作と同様に行われる。
【0162】
この実施形態1の変形例2では、チューブ110aを外側チューブ111と内側チューブ112とを含む二重構造とし、外側チューブ111に対して移動可能な内側チューブ112の先端部で操作ケーブル140の先端部を折り返して可動永久磁石20に接続しているので、内視鏡、つまり外側チューブ111が可動永久磁石20に対して前進する場合でも、可動永久磁石20を先端側磁石11に引き付けている操作ケーブル140の保持を解除しなくても外側チューブ111は移動可能である。
【0163】
従って、操作ケーブル140による可動永久磁石20の牽引により発生した強い斥力を、外側チューブを移動させるときでも低下させずに保持でき、より確実に、あるいはより長い距離、内視鏡、つまり外側チューブ111を磁力で移動させることができる。
【0164】
なお、上述した実施形態1およびその変形例では、移動機構が1つの移動磁力発生部を有する場合を説明したが、移動機構は複数の移動磁力発生部を有するものでもよく、このような構成の内視鏡を実施形態1の変形例3として説明する。
【0165】
(実施形態1の変形例3)
図9Aは、図1に示す内視鏡システム1の変形例3を説明するための図であり、内視鏡1000に設けられた複数の移動磁力発生部120a1、120a2、120a3を示す。
【0166】
この変形例3の内視鏡1000は、実施形態1の内視鏡100と同様に可動永久磁石を操作ワイヤで制御するものであり、そのチューブ110には、固定永久磁石と可動永久磁石とが、チューブ110の先端側からその基端側に向けて交互にそれぞれ複数個配置されている。ここで、固定永久磁石10a0はチューブ110の最先端に配置された固定永久磁石であり、固定永久磁石10a1および10a2は最先端の固定永久磁石10a0に続いて所定ピッチで基端側に向けて順次配置された2つの固定永久磁石である。ここでは、固定永久磁石は3つのみ記載しているが、実際は、少なくともチューブのうちの管腔内に挿入される挿入部位に跨るようにより多くの固定永久磁石が配置される。
【0167】
ここでは、隣接する固定永久磁石の間には可動永久磁石が配置されており、例えば、固定永久磁石10a0とこれに続く2番目の固定永久磁石10a1との間に可動永久磁石2a1が配置され、固定永久磁石10a1とこれに続く3番目の固定永久磁石10a2との間に可動永久磁石2a2が配置されている。
【0168】
そして、複数個配置された個々の可動永久磁石とこれに隣接する2つの固定永久磁石とが複数の移動磁力発生部のいずれかを構成している。
【0169】
例えば、先頭の可動永久磁石2a1とその両側に隣接する固定永久磁石10a0および10a1とは、先頭の移動磁力発生部120a1を構成しており、2番目の可動永久磁石2a2とその両側に隣接する固定永久磁石10a1および10a2とは、2番目の移動磁力発生部120a2を構成している。また、図示してないが、3番目の可動永久磁石とその両側に隣接する固定永久磁石10a2およびこれに対向する固定永久磁石とは、3番目の移動磁力発生部120a3を構成している。
【0170】
このようにチューブ内にその軸線に沿って複数の移動磁力発生部が設けられた内視鏡では、操作ワイヤ130による可動永久磁石の操作によりチューブ110の先端部だけでなく、少なくとも挿入部位の全体に渡って磁気による駆動力を発生させることができ、管腔内での内視鏡の移動をよりスムーズに行うことが可能となる。
【0171】
また、上述した実施形態1およびその変形例では、内視鏡としてチューブが可撓性を有する筒状部材で構成されているものを示したが、内視鏡は、チューブ(つまりその側壁)の硬度を調整可能な構成としてものでもよい。
【0172】
なぜなら、チューブは可撓性を有するため、管腔内で先端部が引っ掛かると、基端側からチューブを操作しても前進しなくなる場合があるが、このような場合には、チューブの先端部を硬くすると。基端側の操作力がその先端側に伝わりやすくなり、管腔内での先端部の引っ掛かりが解消される場合があるからである。
【0173】
以下、このようなチューブの硬さを調整可能に構成した内視鏡を実施形態1の変形例4として説明する。
【0174】
(実施形態1の変形例4)
図9Bは、図1に示す内視鏡システム1の変形例4を説明するための図であり、内視鏡に設けられてチューブ110bの硬さを調整する機構を示し、図9B(a)は、硬さを調整するための具体的機構として形状記憶合金からなるメッシュ部材1111を示し、図9B(b)は、チューブ110bの硬さが変化する様子を示す。
【0175】
この内視鏡のチューブ110bの側壁には、図9B(a)に示すように、加熱により形状が変化する形状記憶合金で構成されたメッシュ部材1111が組み込まれており、この内視鏡を採用した内視鏡システムでは、内視鏡操作装置50(図1参照)は、その操作によりメッシュ部材1111に加熱電流を印加可能な構成となっている。その他の構成は、実施形態1の内視鏡システムにおけるものと同一である。
【0176】
このような構成の内視鏡では、チューブ110bの先端部が管腔内で引っ掛かって基端側からのワイヤ操作ではチューブがその可撓性のために湾曲して前進しない場合は、内視鏡操作装置50の操作により形状記憶合金でできたメッシュ部材1111に加熱電流を印加すると、図9B(b)に示すようにメッシュ部材1111の収縮によりチューブ110bの側壁が圧縮されて硬くなる。これにより基端側からのチューブの操作力が先端部に伝わりやすくなり、管腔内でのチューブ110bの先端部の引っ掛かりが解消されることがある。
【0177】
さらに上述した実施形態1およびその変形例では、可動永久磁石20を操作ワイヤ130で制御する例を示したが、可動永久磁石20は流体で制御してもよく、以下の実施形態2およびその変形例では、可動永久磁石20を流体で制御する内視鏡システムを説明する。
【0178】
(実施形態2)
図10は、本発明の実施形態2による内視鏡システムに含まれる内視鏡200の先端部(移動磁力発生部220)を模式的に示す図であり、図10(a)は、この内視鏡200の先端部の断面構造を示し、図10(b)に示す可動永久磁石20を立体的に示し、図10(c)は、可動永久磁石20これとは別の構成例である可動永久磁石202を立体的に示している。図10(d)は、図10(a)のA-A線断面の構造を示し、図10(e)は、図10(a)に示す基端側磁石12bを立体的に示している。図10Aは、図10に示す内視鏡200を操作する内視鏡操作装置60に含まれるチューブ格納部3、電源部141、信号処理部142、および移動制御部250を示す図である。
【0179】
この実施形態2の内視鏡システムは、実施形態1の内視鏡システムにおける内視鏡100を移動させる可動永久磁石20の操作を、操作ワイヤ130に代えて流体で行うようにしたものである。
【0180】
従って、この実施形態2の内視鏡200は、実施形態1の内視鏡100のチューブ110に代えて、流体の流路を含む二重構造のチューブ210を備え(図10(a))、さらに、実施形態1の内視鏡操作装置50に代えて、内視鏡200に流体を供給する流体供給部252を有する内視鏡操作装置60を備えている(図10A)。この流体供給部252は、水などの流体を貯留する流体貯留源252aと、流体貯留源252aから内視鏡200のチューブ210に供給される流体の流量を調整する流量調整部252bとを有している。
【0181】
二重構造のチューブ210では、外側チューブ211内には移動可能にこれとは別体の内側チューブ212が設けられており、内側チューブ212内に可動永久磁石20が配置されている。
【0182】
また、内側チューブ212内に内側通路212aが形成され、内側チューブ212と外側チューブ211との間に外側通路211aが形成されている。また、チューブ側浮上磁石40は内側チューブ212の内周面に取り付けられている。
【0183】
ただし、この実施形態2の内視鏡システムは、実施形態1のように可動永久磁石20を支持する操作ワイヤ130を有していないので、可動永久磁石20がチューブ側浮上磁石40との反発により浮上するよう構成されている。
【0184】
なお、ここで用いる可動永久磁石20は、図10(b)に示す円柱状の磁石、つまりN極を示す下半部20nとS極を示す上半部20sとを有するものに限定されず、図10(c)に示すように浮遊体(浮き)を有する浮き付磁石202でもよい。
【0185】
具体的には、この浮き付磁石202は、下部のN極を示す部位202nと、上部のS極を示す部位202sとの間に、水に比べて比重が極端に小さい発泡スチロールなどの浮き202fが設けられている。
【0186】
このような浮き付き可動永久磁石は、流体(例えば、水)に対する浮力が発生するので、チューブ側の浮上用磁石と可動永久磁石との斥力で可動永久磁石をチューブの内壁面に対して浮上させる際にこれを援助することができる場合がある。
【0187】
そしてここでは、固定永久磁石を構成する基端側磁石12bには、図10(d)および(e)に示すように、チューブ220の内側通路212aおよび外側通路211aに対応する円形の内側貫通孔Fp2およびリング状の外側貫通孔Fp1が形成されている。
【0188】
そして、流体貯留源252aは、チューブ210の内側通路212aとは第1の送液管230aによりにつながり、チューブ210の外側通路211aとは第2の送液管230bによりつながっている。
【0189】
また、内視鏡操作装置60は、実施形態1の移動制御部150に代わる移動制御部250を備え、この移動制御部250は、チューブ移動規制部150aを有するとともに、実施形態1の操作ワイヤ移動制御部150bにかわる磁石移動規制部250bを有している。
【0190】
このような構成の内視鏡200では、チューブ210内の可動永久磁石20の操作は、流体供給部252から流体をチューブ210の内側通路212aに供給することで可動永久磁石20を流体の流れで先端側磁石11に近づけることができ、チューブ210の移動規制(保持)および保持解除は、チューブ移動規制部150aにより行うことができる。
【0191】
また可動永久磁石20の移動規制、つまり、先端側磁石11との間で生じる斥力に対して可動永久磁石20が戻されないように可動永久磁石20を保持する動作も、磁石移動規制部250bにより流量調整部252を制御して内側チューブ212内に供給される流体の勢いを調整することにより行うことができる。
【0192】
また、内視鏡200を可動永久磁石20と先端側磁石11との間の磁力で先進させるときのチューブ210の保持および保持解除は、操作者の手動で、あるいはチューブ移動規制部150aにより行うことができる。
【0193】
なお、この実施形態2では、二重構造のチューブ210を構成する内側チューブ212と外側チューブ211とは別体としたが、二重構造のチューブは、内側チューブと外側チューブとが一体となっていてもよい。
【0194】
この場合、可動永久磁石20が配置されている内側チューブ212に対して外側チューブ211が相対的に移動することはないが、チューブ210が管腔内で引っ掛かって撓んでいる場合など、チューブ210の手元側の操作位置に対してチューブ210の先端部が本来の位置まで達していない場合には、チューブ210の先端部の可動永久磁石20を流体によりチューブ210の先端側磁石11との間に近づけて駆動力をチューブ210の先端部に発生させることで、撓んだチューブ210の管腔内でのひっかかりが外れて、チューブ210の先端部が本来の位置まで達するようにすることは可能である。
【0195】
なお、上述した実施形態2では、移動機構が1つの移動磁力発生部を有する場合を説明したが、移動機構は複数の移動磁力発生部を有するものでもよく、このような構成の内視鏡を実施形態2の変形例として説明する。
【0196】
(実施形態2の変形例)
図10Bは、図10に示す実施形態2の内視鏡システムの変形例を説明するための図であり、内視鏡2000に設けられた複数の移動磁力発生部220a1、220a2、220a3を示す。
【0197】
この実施形態2の変形例の内視鏡2000は、実施形態2の内視鏡200と同様に可動永久磁石を流体で制御するものであり、そのチューブ210には、固定永久磁石と可動永久磁石とが、チューブ210の先端側からその基端側に向けて交互にそれぞれ複数個配置されている。
【0198】
ここで、固定永久磁石10a0~10a2は実施形態1の変形例3で示す内視鏡1000におけるものと同一のものであり、また、隣接する固定永久磁石の間に配置されている可動永久磁石2a1~2a2も、実施形態1の変形例3で示す内視鏡1000におけるものと同一のものである。
【0199】
そして、複数個配置された個々の可動永久磁石とこれに隣接する2つの固定永久磁石とが複数の移動磁力発生部のいずれかを構成している。
【0200】
つまり、先頭の可動永久磁石2a1とその両側に隣接する固定永久磁石10a0および10a1とは、先頭の移動磁力発生部220a1を構成し、2番目の可動永久磁石2a2とその両側に隣接する固定永久磁石10a1および10a2とは、2番目の移動磁力発生部220a2を構成している。また、図示してないが、3番目の可動永久磁石とその両側に隣接する固定永久磁石10a2およびこれに対向する固定永久磁石とは、3番目の移動磁力発生部220a3を構成している。
【0201】
このように可動永久磁石を流体で制御する内視鏡においても、チューブ内にその軸線に沿って複数の移動磁力発生部が設けられることで、流体による可動永久磁石の操作によりチューブ210の先端部だけでなく、少なくとも挿入部位の全体に渡って磁気による駆動力を発生させることができ、管腔内での内視鏡の移動をよりスムーズに行うことが可能となる。
【0202】
なお、上述した実施形態1、2およびそれらの変形例の内視鏡システムでは、移動磁力発生部が、固定永久磁石として対向する一対の固定磁石(先端側磁石11および基端側磁石12)を含むもの、あるいは所定ピッチでチューブの軸線に沿って配置された複数の固定永久磁石を含むものを示したが、移動磁力発生部は、1つの固定永久磁石を含み、固定永久磁石における可動永久磁石に対向する面の磁極が変更可能となるよう固定永久磁石を回転可能に支持するものでもよく、以下の実施形態3および4では、内視鏡システムとして、内視鏡がこのような移動磁力発生部を備えたものを説明する。
【0203】
(実施形態3)
図11は、実施形態3による内視鏡システムで用いられる内視鏡300の先端部311a(移動磁力発生部320)の具体的な構造を示す図であり、図11(a)は、その外観を示し、図11(b)は、その内部の構造として縦断面の構造を模式的に示している。
【0204】
本発明の実施形態3の内視鏡システムは、実施形態1の移動機構1aにおける移動磁力発生部120に代わる移動磁力発生部320を備え、さらに、実施形態1の内視鏡100に代わる内視鏡300を備えたものであり、移動磁力発生部320および内視鏡300以外の構成は、実施形態1における内視鏡システムのものと同一である。
【0205】
実施形態3の内視鏡システムの移動磁力発生部320は、図11(a)、(b)に示すように、チューブ310の先端部に組み込まれている。ここで、移動磁力発生部320は、1つの固定永久磁石10aと、この固定永久磁石10aを回転可能に支持する磁石支持部13aと、固定永久磁石10aのS極(第1磁極)となる第1面と、固定永久磁石のN極(第2磁極)となる第2面とのいずれかの面が、可動永久磁石20aのS極(第1磁極)となる面に対向するように固定永久磁石10aの回転をロックするロック手段13bとを有している。
【0206】
従って、可動永久磁石20が固定永久磁石10aに接近したとき、それぞれの対向面の磁極が同一であれば、両者の間に斥力が働き、それぞれの対応面の磁極が異なれば、両者の間に引力が働くようになっている。
【0207】
そして、操作ワイヤ(第1の操作ワイヤ)330の先端部は、操作ワイヤ330の操作により可動永久磁石20がチューブ310内で移動可能となるように可動永久磁石20に接続されている。
【0208】
図11(a)、(b)に示すように、移動磁力発生部320は、チューブ310の先端部に組み込まれた1つの固定永久磁石10aのうちの可動永久磁石20に対向する面の磁極を選択して、可動永久磁石20を固定永久磁石10aに近づけるまたは遠ざけることで、チューブ310を移動させる駆動力をチューブ310の先端部に発生させることができるようになっている。
【0209】
以下、移動磁力発生部320における可動永久磁石20aおよび固定永久磁石10aを具体的に説明する。
【0210】
図12は、図11に示す内視鏡300の先端部に設けられた移動磁力発生部320で用いられる各種磁石の構造を示す図であり、図12(a)は固定永久磁石10aを示し、図12(b)はチューブ側浮上磁石40aを示し、図12(c)は可動永久磁石20aを示し、図12(d)はワイヤ側浮上磁石30aを示し、図12(e)は図11(b)のB-B線断面の構造を示しており、図12(e)には、ワイヤ側浮上磁石30aとチューブ側浮上磁石40aとの間での磁極の関係が示されている。
【0211】
(可動永久磁石20a)
可動永久磁石20aは、図11(a)に示すように、直方体形状を有し、図12(c)に示すように、3つの永久磁石片21~23を組み合わせた構造となっている。
【0212】
すなわち、可動永久磁石20は、略立方体形状の中間磁石22の上下両側に上部磁石21と下部磁石23とを取り付けた構造となっている。ここで、上部は、可動永久磁石20aをチューブ310に装着したときの先端側を意図し、下部は、可動永久磁石20aをチューブ310に装着したときの基端側に位置する部分を意図している。
【0213】
中間磁石22は図12(c)に示すように、上面および下面の平行な2つの対角線を含む平面を境に異なる極性を示す磁石である。また、上部磁石21および下部磁石23は、図12(c)に示すように、それぞれ、薄い直方体形状を有し、下面側がN極、上面側がS極となる磁石である。
【0214】
(固定永久磁石10a)
固定永久磁石10aは、図12(a)に示すように、チューブ310内を移動する可動永久磁石20aに比べると外径寸法が大きい直方体形状を有し、可動永久磁石20aに対向する面(下面)の極性が変更可能となるように磁石支持部13aにより回転可能に支持されている。また、固定永久磁石10aは、可動永久磁石20aに対向する面(下面)の極性が選択された極性に保持されるように、ロック手段13bにより固定永久磁石10aの回転がロックされるようになっている。また、磁石支持部13aおよびロック手段13bにはそれぞれ、固定永久磁石10aの回転を操作する回転操作ワイヤ331およびロック操作ワイヤ332が接続されている。これらのワイヤ331、332は、操作者の操作が可能となるように、チューブ310内を通ってチューブ310の外部に引き出されている。
【0215】
なお、この内視鏡300では、固定永久磁石10aを回転可能に支持する代わりに可動永久磁石20aを回転可能に支持するようにしてもよい。ここで、このように可動永久磁石を回転可能に支持する場合(実施形態3の変形例1)を説明する。
【0216】
図12Aは、図11に示す実施形態3の変形例1を説明するための図であり、内視鏡300で用いられる、操作ワイヤ330に回転可能に支持された可動永久磁石203を示す図であり、図12A(a)は、可動永久磁石203の先端側がS極となり、基端側がN極となる姿勢を示し、図12A(b)は、可動永久磁石203の先端側がN極となり、基端側がS極となる姿勢を示す。
【0217】
図12A(a)に示すように、可動永久磁石20aは磁石支持部13cにより、固定永久磁石10aに対向する面(下面)の極性が変更可能となるように回転可能に支持されている。ここで、磁石支持部13cは、磁石操作ワイヤ333の操作により、図12A(a)、(b)に示すように、可動永久磁石20aを180°回転させてその姿勢をロックする構成となっている。この磁石操作ワイヤ333は、操作者の操作が可能となるように、チューブ310内を通ってチューブ310の外部に引き出されている。
【0218】
そして、実施形態3の内視鏡300では、チューブ310の内周面から操作ワイヤ330および可動永久磁石20aを浮上させるための磁石(浮上用磁石)が、チューブ310および操作ワイヤ330に設けられている。その理由は、可動永久磁石20aおよび操作ワイヤ330をチューブ310の内周面に接触しないようにすることで、可動永久磁石20aおよび操作ワイヤ330をチューブ310内で滑らかに移動させるためである。
【0219】
以下、チューブ310に設けられている浮上用磁石をチューブ側浮上磁石40aとし、操作ワイヤ330に設けられている浮上用磁石をワイヤ側浮上磁石30aとして具体的な構成を説明する。
【0220】
(チューブ側浮上磁石40a)
この内視鏡300では、チューブ310は、図11(b)、図12(e)に示すように、外形円柱状の中空部材で構成されており、内部には軸線に沿って断面が四角形の中空スペースが形成されている。このチューブ310の各内壁面には図12(b)に示す板状磁石40aが軸線に沿って所定ピッチで配列されている。なお、各内壁面での板状磁石40aの配列ピッチは一致している。
【0221】
すなわち、チューブ310は、図12(e)に示すように、第1の内壁311と、第1の内壁に対向する第2の内壁312と、第1の内壁に隣接して第1の内壁と略垂直な第3の内壁313と、第3の内壁313に対向する第4の内壁314とを備えている。
【0222】
そして、第1の内壁311および第3の内壁313には、その表面にS極(第1磁極)が現れるように、複数の板状磁石40がチューブ310の軸心に沿って並ぶように埋め込まれており、第2の内壁312および第4の内壁314には、その表面にN極(第2磁極)が現れるように、複数の板状磁石40aがチューブ310の軸心に沿って並ぶように埋め込まれている。
【0223】
(ワイヤ側浮上磁石30a)
この内視鏡100では、操作ワイヤ330には、図11(a)、(b)に示すように、複数の略立方体形状のブロック状磁石30aが所定のピッチで取り付けられている。このワイヤ側浮上磁石30aは、可動永久磁石20aを構成する中間磁石22と同一の構造となっている。
【0224】
各ワイヤ側浮上磁石30では、チューブ310の第1の内壁に対向する第1の側面にはS極(第1磁極)が現れ、チューブ310の第1の内壁に隣接する第3の内壁に対向する第3の側面にはS極(第1磁極)が現れ、チューブ310の第2の内壁に対向する第2の側面にはN極(第2磁極)が現れ、チューブ310の第2の内壁に隣接する第4の内壁に対向する第4の側面にはN極(第2磁極)が現れるように配置されている。
【0225】
このようにチューブ310では、この内部に挿入されている操作ワイヤ330に取り付けられているワイヤ側浮上磁石30aと、チューブ側浮上磁石40aとの間では、斥力が生じることとなり、チューブ310内では、操作ワイヤ330は磁力による反発によりチューブ310の内壁から浮上することとなる。
【0226】
また、可動永久磁石20aはこのような操作ワイヤ330の先端に固定されているので、チューブ310内では、可動永久磁石20aもチューブ310の内周面から浮上した状態に保持される。
【0227】
このように先端部に移動磁力発生部320が組み込まれた内視鏡300では、移動磁力発生部320にて駆動力を発生させるための操作ワイヤ330の操作(つまり、チューブ310に対する操作ワイヤ330の押込み、牽引、および保持)、さらには、チューブ310の操作(つまり、人体などの管腔の対する押込み、牽引、および保持)は、操作者が手で直接行ってもよいが、例えば、操作ワイヤ330の保持(移動禁止)およびチューブ310の保持(移動禁止)は、ボタン操作により、内視鏡操作装置50に搭載されている移動制御部150(図4A参照)により行うようにしてもよい。
【0228】
次に、人の腸管などの曲がりくねった管腔内で内視鏡300を移動させる動作を説明する。
【0229】
なお、ここでは、チューブ310の保持および保持解除、さらに、操作ワイヤ330の保持および保持解除は、操作者の手動操作で行う場合を説明するが、チューブ310および操作ワイヤ330の保持は、内視鏡操作装置50に搭載されている移動制御部150を操作ボタンにより作動させて行ってもよい。
【0230】
図13は、図11に示す内視鏡300の移動磁力発生部320で発生される磁気による内視鏡の移動動作(前進)を説明する図であり、図13(a)は、可動永久磁石20aがチューブ110の先端側磁石10aに接近する様子を示し、図13(b)は、磁石の反発力によりチューブ310の先端部が前進する様子を示し、図13(c)は、可動永久磁石20aの移動によりチューブ310の先端部が前進した状態を示す。なお、図13では、図11に示す浮上用磁石30a、40aは省略している。
【0231】
移動磁力発生部320で駆動力を発生させて内視鏡300を前進させる場合、まず、固定永久磁石10aを可動永久磁石20aの対向面との間で斥力が発生するように回転操作ワイヤ331で回転させて回転位置をロック操作ワイヤ332でロックし、チューブ310を保持した状態で、チューブ310内に設けられている可動永久磁石20aを操作ワイヤ330で移動させて固定永久磁石10aに近づける(図13(a))。
【0232】
具体的には、固定永久磁石10aと可動永久磁石20aとの間に、内視鏡300(チューブ310)を移動させるのに十分な斥力が働く程度(移動距離Dm2)まで可動永久磁石20aを固定永久磁石10aに接近させ、この時点で、操作ワイヤ330を保持してチューブ310の保持を解除する(図13(b))。これによりチューブ310、つまり内視鏡300の先端部が斥力に応じた距離Dt2だけ前進する(図13(c))。
【0233】
次に、内視鏡300を後進させる場合を説明する。
【0234】
図13Aは、図11に示す内視鏡300の移動磁力発生部320で発生される磁気による内視鏡の移動動作(後進)を説明する図であり、図13A(a)は、固定永久磁石10aが可動永久磁石20aに及ぼす磁力の極性を反転させる様子を示し、図13A(b)は、可動永久磁石20aをチューブ310の固定永久磁石10aに接近させる様子を示し、図13A(c)は、磁石の吸引力によりチューブ310が後進する様子を示し、図13A(d)は、可動永久磁石20aの移動により生じた吸引力によりチューブ310が後進した状態を示す。
【0235】
移動磁力発生部320で駆動力を発生させて内視鏡300を後進させる場合、まず、固定永久磁石10aが可動永久磁石20aに及ぼす磁力の極性が反転するように、固定永久磁石10aを回転操作ワイヤ331で回転させ(図13A(a))、さらに、ロック操作ワイヤ322で固定永久磁石10aを回転しないようにロックする(図13A(a))。
【0236】
次に、チューブ310を保持した状態で、チューブ310内に設けられている可動永久磁石20を操作ワイヤ130で固定永久磁石10aに近づける(図13A(b))。
【0237】
具体的には、固定永久磁石10aと可動永久磁石20aとの間に、内視鏡300(チューブ310)を移動させるのに十分は引力が働く程度(移動距離Dm2a)まで可動永久磁石20を固定永久磁石10aに近づけ(図13A(c))、この時点で、操作ワイヤ330を保持して、チューブ310の保持を解除すると、引力によりチューブ310、つまり内視鏡300の先端部が、固定永久磁石10aが可動永久磁石20aに吸着する位置まで後進する(図13A(d))。
【0238】
このように本実施形態3では、内視鏡システムは、内視鏡300のチューブ310の先端部に設けられた固定永久磁石10aと、チューブ310内を移動可能に設けられた可動永久磁石20aとを備え、固定永久磁石10aと可動永久磁石20aとの間に働く磁力により、チューブ300を管腔L内で移動させる駆動力をチューブ310の先端部に発生させるようにしたので、内視鏡における挿入部位の柔軟性に拘らず、その挿入部位の先端部を精度よく操作することができる。
【0239】
なお、上述した実施形態3の内視鏡システムでは、操作者が可動永久磁石20aを操作するための部材は操作ワイヤ330であるが、内視鏡システムは、操作ワイヤ330以外に可動永久磁石20aを操作するための補助操作部材を有していてもよく、以下このような補助操作部材を有するものを実施形態3の変形例1として説明する。
【0240】
(実施形態3の変形例2)
図14は、図11に示す実施形態3の内視鏡300の変形例2を説明するための図であり、図14(a)は、操作ワイヤ(第1の操作ワイヤ)330に加えて操作ケーブル(第2の操作ワイヤ)340を備えた移動磁力発生部320aの内部構造を示し、図14(b)~図14(d)は、操作ケーブル340を用いた内視鏡300aの前進動作を示す。ここで、図14(a)では、言い換えると、操作ワイヤ330に加えて操作ケーブル340が設けられた内視鏡300aが示されている。
【0241】
この実施形態3の変形例2の内視鏡システムは、図14(a)に示すように、実施形態3の移動磁力発生部320に代わる移動磁力発生部320aを備えたものであり、移動磁力発生部320aは、実施形態3の移動磁力発生部320の構成に加えて、可動永久磁石20aを先端側に牽引するための操作ケーブル340を備えた構成となっている。また、この実施形態3の変形例1の内視鏡システムにおける内視鏡300aでは、チューブ310の先端の内面には、操作ケーブル340を吊下げるケーブル吊下げフック14が取り付けられ、操作ケーブル340の先端側がケーブル吊下げフック14を介して可動永久磁石20aの上面(固定永久磁石10aに対向する面)に接合されている。
【0242】
なお、この実施形態3の変形例2の内視鏡システムにおけるその他の構成は、実施形態3の内視鏡システムにおけるものと同一である。
【0243】
以下、この内視鏡システムで内視鏡300aを前進させる動作を説明する。なお、内視鏡300aを後進させる動作は、実施形態3の内視鏡300の場合と同一である。
【0244】
移動磁力発生部320aで駆動力を発生させて内視鏡300aを前進させる場合、固定永久磁石10aのうちの可動永久磁石20aに対向する面の極性(S極)に設定した後、チューブ310を保持して操作ワイヤ330の保持を解除した状態で、操作ケーブル340を牽引することで、チューブ310内に設けられている可動永久磁石20aを固定永久磁石10aに近づける(図14(b)~図14(c))。このとき、可動永久磁石20sは操作ケーブル340の牽引操作で操作されるので、操作ワイヤ330の押し操作で操作する場合に比べて、可動永久磁石20aは、可動永久磁石20aと固定永久磁石10aとの間でより大きな磁力が発生する位置まで固定永久磁石10aに近づけられる。
【0245】
その後、チューブ310の保持を解除し、操作ワイヤ330を保持して操作ケーブル340を保持解除した状態とすると、固定永久磁石10aと可動永久磁石20aとの間の磁力でチューブ310が前進する(図14(d))。
【0246】
この場合、固定永久磁石10aと可動永久磁石20aとの間に、内視鏡300aを移動させるのにより大きな斥力が働く程度まで可動永久磁石20aを固定永久磁石10aに接近可能である(図14(c))。従って、この斥力により内視鏡300aの先端部により大きな駆動力を発生可能となり、チューブ310が管腔内で引っ掛かって動きにくくなっている場合でも、内視鏡300aを前進させることが可能である。
【0247】
なお、内視鏡300aの後進動作には操作ケーブル340は関与しないので、実施形態3の内視鏡300の後進動作と同様に行われる。
【0248】
ただし、実施形態3の変形例1では、内視鏡300aを前進させる場合、操作ケーブル340の保持を解除する必要があるので、可動永久磁石20aを操作ワイヤ330のみで保持することとなる。このため、操作ケーブル340の保持を解除した時点で、可動永久磁石20aを支持する操作ワイヤ330が撓んで可動永久磁石20aが固定永久磁石10aから離れる方向に戻される場合がある。
【0249】
そこで、実施形態3の変形例2では、内視鏡を先進させる場合でも操作ケーブル340の保持を解除する必要のないものを説明する。
【0250】
(実施形態3の変形例3)
図15は、図11に示す移動磁力発生部320の変形例3を説明するための図であり、図15(a)は、操作ワイヤ330に加えて操作ケーブル340を備えた移動磁力発生部320、およびチューブ310に代わる、外側チューブ311と内側チューブ312とを有するチューブ310aの断面構造を示し、図15(b)~図15(d)は、操作ケーブル340を用いた内視鏡300bの前進動作を示す。ここで、図15(a)では、言い換えると、操作ワイヤ330に加えて操作ケーブル340が設けられ、さらに、チューブ310aとして外側チューブ311と内側チューブ312とが設けられた内視鏡300aが示されている。
【0251】
この実施形態3の変形例3の内視鏡システムは、図15(a)に示すように、実施形態3の移動用磁力発生部320に代わる移動磁力発生部320bを備え、実施形態3のチューブ310に代わるチューブ310aを備えたものである。
【0252】
ここで、移動用磁力発生部320bは、実施形態3の移動磁力発生部320の構成に加えて、可動永久磁石20aを先端側に牽引するための操作ケーブル(第2の操作ワイヤ)340を備えた構成となっている。
【0253】
また、この実施形態3の変形例3の内視鏡300bでは、チューブ310aは、外側チューブ311内に内側チューブ312が移動可能に収容された構造となっており、チューブ側浮上磁石40aは内側チューブ312の内周面に実施形態3の内視鏡300におけるものと同様に組み込まれている。
【0254】
そして、内側チューブ312の先端部には、操作ケーブル340のケーブル折返しガイド15が取り付けられ、操作ケーブル340の先端側はケーブル折返しガイド15を介して可動永久磁石20aの上面(先端側磁石11に対向する面)に接続されている。
【0255】
なお、この実施形態3の変形例3におけるその他の構成は、実施形態3におけるものと同一である。
【0256】
以下、この内視鏡システムで内視鏡300bを前進させる動作を説明する。
【0257】
移動磁力発生部320bで駆動力を発生させて内視鏡300bを前進させる場合、固定永久磁石10aのうちの可動永久磁石20に対向する面の磁極を設定した後、チューブ310aの外側チューブ311および内側チューブ312を保持して操作ワイヤ330の保持を解除した状態で、操作ケーブル340を牽引することで、内側チューブ312内に設けられている可動永久磁石20aを固定永久磁石10aに近づける(図15(b)~(c))。このとき、可動永久磁石20aは操作ケーブル340の牽引操作で移動させられるので、操作ワイヤ330の押し操作で移動させる場合に比べて、可動永久磁石20aは、可動永久磁石20aと固定永久磁石10aとの間でより大きな磁力が発生する位置まで固定永久磁石10aに近づけられる。
【0258】
その後、内側チューブ312の保持を維持して外側チューブ311の保持を解除し、操作ケーブル340を保持した状態とすると、固定永久磁石10aと可動永久磁石20との間の磁力で外側チューブ311が内側チューブ312に対して前進する(図15(d))。
【0259】
この場合も、可動永久磁石20aは操作ケーブル340の牽引操作で操作されるので、操作ワイヤ330の押し操作で操作する場合に比べて、可動永久磁石20aは、可動永久磁石20aと固定永久磁石10aとの間でより大きな磁力が発生する位置まで固定永久磁石10aに近づけられる。
【0260】
なお、内視鏡100bの後進動作には操作ケーブル140は関与しなので、実施形態3の内視鏡300の後進動作と同様に行われる。
【0261】
この実施形態3の変形例2では、チューブ310aを外側チューブ311と内側チューブ312とを含む二重構造とし、外側チューブ311に対して移動可能な内側チューブ312の先端部で操作ケーブル340の先端部を折り返して可動永久磁石20aに接続しているので、内視鏡、つまり外側チューブ311が可動永久磁石20aに対して前進する場合に、可動永久磁石20aを固定永久磁石10aに引き付けている操作ケーブル340の保持を解除しなくても外側チューブ311は移動可能である。
【0262】
従って、操作ケーブル340による可動永久磁石20aの牽引により発生した強い斥力を、外側チューブ311を移動させるときでも低下させずに保持でき、より確実に内視鏡、つまり外側チューブ311を磁力で移動させることができる。
【0263】
なお、上記実施形態3およびその変形例では、可動永久磁石20aが直方体形状であり、チューブ側の浮上用磁石が板状磁石である内視鏡において、固定永久磁石10aが1つであり、可動永久磁石20aも1つである場合を示したが、可動永久磁石20aが直方体形状であり、チューブ側の浮上用磁石が板状磁石である内視鏡において、固定永久磁石10aおよび可動永久磁石20aは、実施形態1の変形例3の内視鏡1000あるいは実施形態2の変形例の内視鏡2000で示したように複数個設けられていてもよく、以下このような構成の内視鏡を実施形態3の変形例4として説明する。
【0264】
(実施形態3の変形例4)
図15Aは、図11に示す内視鏡300の変形例4を説明するための斜視図であり、図15A(a)は、内視鏡3000の外観を示し、図15A(b)および(c)は、このお内視鏡3000に用いられている固定永久磁石10b0および10b1の外観を示す。
【0265】
この実施形態3の変形例4の内視鏡3000は、実施形態3の内視鏡300と同様に可動永久磁石を操作ワイヤ330で制御するものであり、そのチューブ310には、固定永久磁石と可動永久磁石とが、チューブ310の先端側からその基端側に向けて交互にそれぞれ複数個配置されている。ここで最先端の固定永久磁石10b0は、実施形態3の回転可能に支持された固定永久磁石10aに代えて、チューブ最先端に固定して組み込んだものである。また、チューブ最先端に対応するチューブ最先端から2番目の固定永久磁石10b1は、S極を示す上半部10b1sとN極を示す下半部10b1nとを有する板状磁石であり、中央に操作ワイヤ330を通過させる貫通孔Wpが形成されている。最先端から3番目以降の固定永久磁石(例えば、3番目の固定永久磁石10b2)は、2番目の固定永久磁石10b1と同一の構造を有する。
【0266】
図15Bは、図15A(a)に示す内視鏡3000の先端部を示す断面図であり、図11に示す内視鏡300の1つの移動磁力発生部320に代わる複数の移動磁力発生部320a1、320a2、320a3を示す。
【0267】
この内視鏡3000のチューブ310には、最先端以外には板状磁石(固定永久磁石)と可動永久磁石とが、チューブ310の先端側からその基端側に向けて交互にそれぞれ複数個配置されている。
【0268】
そして、複数個配置された個々の可動永久磁石とこれに隣接する2つの固定永久磁石とが複数の移動磁力発生部のいずれかを構成している。
【0269】
つまり、先頭の可動永久磁石2b1とその両側に隣接する固定永久磁石10b0および10b1とは、先頭の移動磁力発生部320a1を構成し、2番目の可動永久磁石2b2とその両側に隣接する固定永久磁石10b1および10b2とは、2番目の移動磁力発生部320a2を構成している。また、図示してないが、3番目の可動永久磁石とその両側に隣接する固定永久磁石10b2およびこれに対応する固定永久磁石とは、3番目の移動磁力発生部320a3を構成している。
【0270】
このように可動永久磁石を操作ワイヤ330で制御する内視鏡においても、チューブ内にその軸線に沿って複数の移動磁力発生部が設けられることで、ワイヤ操作による可動永久磁石の操作によりチューブ310の先端部だけでなく、少なくとも挿入部位の全体に渡って磁気による駆動力を発生させることができ、管腔内での内視鏡の移動をよりスムーズに行うことが可能となる。
【0271】
なお、上述した実施形態3およびその変形例では、可動永久磁石20aを操作ワイヤ330で制御する例を示したが、可動永久磁石20aは流体で制御してもよく、以下の実施形態4では、可動永久磁石20aを流体で制御する内視鏡システムを説明する
(実施形態4)
図16は、本発明の実施形態4による内視鏡システムに含まれる内視鏡400の先端部(移動磁力発生部420)を模式的に示す断面図である。
【0272】
この実施形態4の内視鏡システムは、実施形態3の内視鏡システムにおける内視鏡300を移動させる可動永久磁石20aの操作を、操作ワイヤ330に代えて流体で行うようにしたものである。
【0273】
従って、この実施形態4の内視鏡400は、図16に示すように、実施形態3の内視鏡300のチューブ310に代えて、流体の流路を含む二重構造のチューブ410を備え、さらに、この実施形態4の内視鏡システム(図示せず)は、内視鏡操作装置として、実施形態2の内視鏡システムと同様に、内視鏡のチューブに流体を供給する流体供給部を有するものを備えている。この内視鏡操作装置は、図10Aに示す内視鏡操作装置60と同等のものである。
【0274】
二重構造のチューブ410では、外側チューブ411には移動可能にこれとは別体の内側チューブ412が配置され、可動永久磁石20aが内側チューブ412内に配置されている。
【0275】
また、この内視鏡システムでは、可動永久磁石20aと固定永久磁石10aとが移動磁力発生部420を構成している。
【0276】
このような構成の内視鏡400では、チューブ410内の可動永久磁石20aの操作は、内視鏡操作装置(図10A参照)の流体供給部から流体をチューブ410の内側通路412aに供給することで可動永久磁石20aを流体の流れで固定永久磁石10aに近づけることができる。
【0277】
なお、内視鏡400を可動永久磁石20aと固定永久磁石10aとの間の磁力で先進させるときのチューブ410の保持および保持解除も、操作者の手動で、あるいは内視鏡操作装置の移動規制部により行うことができる。
【0278】
また、可動永久磁石20aの移動規制、つまり、固定永久磁石10aとの間で生じる斥力に対して可動永久磁石20aが戻されないように可動永久磁石20aを保持する動作は、内視鏡操作装置の磁石移動記載部(図10A参照)の制御により、内側チューブ412内に供給される流体の勢いを調整することにより行うことができる。
【0279】
なお、この実施形態4では、二重構造のチューブを構成する内側チューブと外側チューブとは別体としたが、二重構造のチューブは、内側チューブと外側チューブとが一体となっていてもよい。
【0280】
この場合、可動永久磁石が配置されている内側チューブに対して外側チューブが相対的に移動することはないが、チューブが管腔内で引っ掛かって撓んでいる場合など、チューブの手元側の操作位置に対してチューブの先端部が管腔内で本来の位置まで達していない場合には、チューブの先端部に位置する可動永久磁石を流体によりチューブの固定永久磁石に近づけて、チューブを移動させる駆動力をチューブの先端部に発生させることで、撓んだチューブの管腔内でのひっかかりが外れて、チューブの先端部が本来の位置まで達するようにすることは可能である。
【0281】
なお、上述した実施形態4では、移動機構が1つの移動磁力発生部を有する場合を説明したが、移動機構は複数の移動磁力発生部を有するものでもよく、このような構成の内視鏡を実施形態4の変形例として説明する。
【0282】
(実施形態4の変形例)
図16Aは、図16に示す内視鏡400の変形例を説明するための図であり、内視鏡400の1つの移動機構420に代わる複数の移動磁力発生部420a1、420a2、420a3を備えた内視鏡4000を示す。
【0283】
この実施形態4の変形例の内視鏡4000は、実施形態4の内視鏡400と同様に可動永久磁石を流体で制御するものであり、そのチューブ410には、固定永久磁石と可動永久磁石とが、チューブ410の先端側からその基端側に向けて交互にそれぞれ複数個配置されている。
【0284】
ここで、固定永久磁石10b0、10b1、10b2は実施形態3の変形例4で示す内視鏡3000におけるものと同一のものであり、また、隣接する固定永久磁石の間に配置さている可動永久磁石2b1~2b2も、実施形態3の変形例4で示す内視鏡1300におけるものと同一のものである。
【0285】
そして、複数個配置された個々の可動永久磁石とこれに隣接する2つの固定永久磁石とが複数の移動磁力発生部のいずれかを構成している。
【0286】
つまり、先頭の可動永久磁石2b1とその両側に隣接する固定永久磁石10b0および10b1とは、先頭の移動磁力発生部420a1を構成し、2番目の可動永久磁石2b2とその両側に隣接する固定永久磁石10b1および10b2とは、2番目の移動磁力発生部420a2を構成している。また、図示してないが、3番目の可動永久磁石とその両側に隣接する固定永久磁石10b2およびこれに対向する固定永久磁石とは、3番目の移動磁力発生部420a3を構成している。
【0287】
このように可動永久磁石を流体で制御する内視鏡4000においても、チューブ内にその軸線に沿って複数の移動磁力発生部が設けられることで、流体による可動永久磁石の操作によりチューブ410の先端部だけでなく、少なくとも挿入部位の全体に渡って磁気による駆動力を発生させることができ、管腔内での内視鏡の移動をよりスムーズに行うことが可能となる。
【0288】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0289】
本発明は、内視鏡システムの分野において、内視鏡における挿入部位の柔軟性に拘らず、その挿入部位の先端部を精度よく操作することができる内視鏡システムを得ることができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0290】
1 内視鏡システム
1a 移動機構
3 チューブ格納部
3a チューブ格納筐体
10、10a 固定永久磁石
11 先端側磁石
12、12a、12b 基端側磁石
13a 磁石支持部
13b 回転ロック部
14 ケーブル吊下げフック
15 ケーブル折返しガイド
20、20a、201~203 可動永久磁石
30、30a ワイヤ側浮上磁石
31 ワイヤ側浮上磁石体
31a ワイヤ側浮上磁石片
40、40a チューブ側浮上磁石
41 チューブ側浮上磁石体
41a チューブ側浮上磁石片
50 内視鏡操作装置
50a 装置筐体
51 第1操作部
51a チューブ保持ボタン
51b 操作ワイヤ保持ボタン
52 第2操作部
52a 巻取フットスイッチ
52b 送気フットスイッチ
54 入力部
55 表示部
100、100a、100b、200、300、300a、300b、400,1000、2000、3000、4000 内視鏡
101 光学系装置
110、110a、110b、210、310、310a、410 チューブ
111、211、311、411 外側チューブ
111a、311a 先端部
112、212、312、412 内側チューブ
120、120a、120a1~120a3、120b、220、220a1~220a3、320,320a、320a1~320a3、320b、420、420a1~420a3 移動磁力発生部
130、330 操作ワイヤ(第1の操作ワイヤ)
130a ワイヤ本体
140、340 操作ケーブル(第2の操作ワイヤ)
141 通電制御部
141 電源部
141a 電源線
142 信号処理部
142a モニタ信号線
150 移動制御部
150a チューブ移動規制部
150b 操作ワイヤ移動規制部
151 チューブ支持ローラ
152 ワイヤ巻取りローラ
160 チューブ巻取機
211a 外側通路
212a 内側通路
Fp1 中心通路
Fp2 周壁側通路
図1
図2
図3
図4
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図9A
図9B
図10
図10A
図10B
図11
図12
図12A
図13
図13A
図14
図15
図15A
図15B
図16
図16A