(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036241
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】移動昇降式足場
(51)【国際特許分類】
E04G 3/24 20060101AFI20240308BHJP
E04G 1/24 20060101ALI20240308BHJP
E04G 1/20 20060101ALI20240308BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
E04G3/24 302H
E04G1/24 301B
E04G1/20 B
E01D22/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141068
(22)【出願日】2022-09-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】591075641
【氏名又は名称】東鉄工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502052631
【氏名又は名称】湘栄産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】草野 英明
(72)【発明者】
【氏名】笠原 薫
(72)【発明者】
【氏名】金谷 修一
【テーマコード(参考)】
2D059
2E003
【Fターム(参考)】
2D059EE02
2D059EE04
2D059EE05
2D059EE07
2D059EE10
2E003AA02
2E003AB04
2E003CB00
(57)【要約】
【課題】トロリー線との離間距離が小さい跨線橋のメンテナンス作業にも適用でき、跨線橋のメンテナンス作業中も跨線橋の通行が可能で作業日ごとの組み払しが必要ない移動昇降式足場を提供する。
【解決手段】トロリー線TLの上空に架設された跨線橋(歩道橋Pb)のメンテナンス作業をするための移動昇降式足場1において、跨線橋(歩道橋Pb)の両縁沿いに設置された左右一対のレールL1と、左右一対のレールL1上を走行する下部移動機構2と、下部移動機構2に支持されて昇降動作を行う昇降機構3と、昇降機構3に吊り下げ支持されて、トロリー線TLに沿って水平移動して前記昇降機構に対して開閉する左右一対の水平移動機構4を備え、下部移動機構2は、鋼材が組み合わされた下部フレーム20を有し、昇降機構3は、下部移動機構2の下部フレーム20より高い位置で昇降し、下部フレーム20を、跨線橋(歩道橋Pb)の路面上を人が通行可能な高さに架け渡す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロリー線の上空に架設された跨線橋のメンテナンス作業をするための移動昇降式足場であって、
前記跨線橋の両縁沿いに設置された左右一対のレールと、前記左右一対のレール上を走行する下部移動機構と、前記下部移動機構に支持されて昇降動作を行う昇降機構と、前記昇降機構に吊り下げ支持され、前記トロリー線に沿って水平移動して前記昇降機構に対して開閉する左右一対の水平移動機構を備え、
前記下部移動機構は、鋼材が組み合わされた下部フレームを有し、
前記昇降機構は、前記下部移動機構の前記下部フレームより高い位置で昇降し、
前記下部フレームは、前記跨線橋の路面上を人が通行可能な高さに架け渡されていること
を特徴とする移動昇降式足場。
【請求項2】
前記昇降機構は、油圧ジャッキとガイドローラーを備え、油圧ジャッキで押圧してガイドローラーで鉛直方向に案内して昇降すること
を特徴とする請求項1に記載の移動昇降式足場。
【請求項3】
前記下部移動機構は、前記下部フレームの下端に設けられたガイドローラーで前記レール上を走行すること
を特徴とする請求項1に記載の移動昇降式足場。
【請求項4】
前記左右一対の水平移動機構は、作業床を有した水平移動体をそれぞれ備え、前記昇降機構から前記トロリー線に沿った方向の外側両側に突設されたハンガーレール上を滑車で走行して前記水平移動体がそれぞれスライド移動して作業床が開閉する機構であること
を特徴とする請求項1に記載の移動昇降式足場。
【請求項5】
前記作業床を支持する前記トロリー線と直交する方向に延びる支持材は、絶縁処理が施されているか、又は絶縁材であること
を特徴とする請求項4に記載の移動昇降式足場。
【請求項6】
メンテナンス作業を行わない収納時には、前記昇降機構で前記作業床が前記跨線橋の下面に当接するまで上昇可能に構成されていること
を特徴とする請求項4に記載の移動昇降式足場。
【請求項7】
前記左右一対の水平移動体のそれぞれの作業床の先端には、先端プレートが取り付けられ、連結金具で接合可能に構成されていること
を特徴とする請求項4に記載の移動昇降式足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トロリー線の上空に架設された跨線橋のメンテナンス作業をするための移動昇降式足場に関し、詳しくは、トロリー線と跨線橋の離間距離が小さく、単管足場、くさび式足場、枠組足場などの通常の足場を間に設置できない跨線橋のメンテナンス作業をするための移動昇降式足場に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の軌道上には、歩道橋や自転車用及び自動車用の陸橋など電車鉄道の架線の上空をこの架線を跨ぐ形で軌道と交差する構造物である跨線橋が設置されている。これらの跨線橋の構造物は、一般的に、大きなスパンをとることができることから鋼材が組み合わされた鋼構造物となっている。このため、このような鋼構造物は、防錆塗料が塗布されており、防錆塗料の塗り直しや保守点検作業など定期的なメンテナンス作業が必要となっている。
【0003】
しかし、このような跨線橋のメンテナンス作業は、電車運行中に行うことは極めて危険であるため、終電後の限られた時間内に行う必要があった。しかも、メンテナンス作業を行う仮設足場は、始発電車の運行前には撤去しなければならず、都内近郊では、極めて限られた時間内しか補修作業ができないという問題があった。さらに、貨物列車が通過する路線は、一般車両の終電や始発以外にも通過する電車が存在するため申請して予め決められた所定の日時しかメンテナンス作業を行うことができなかった。
【0004】
このような跨線橋のメンテナンス作業を行う場合は、従来は、軌道上を走行可能な軌陸車の高所作業者を用いて行っていた。しかし、軌陸車は、踏切など道路と線路が交差する位置からしか現場に搬入できず、終電後に作業場所まで軌陸車を搬送するだけで時間を要し、メンテナンス作業自体に割ける時間が少なく、作業日数がかかってしまい、必然的に修繕費用が嵩むという問題があった。
【0005】
なお、このような跨線橋のメンテナンス作業を行う仮設足場に関連する技術としては、特許文献1に歩道橋の作業足場(の仮設工法)が開示され、特許文献2に鉄道線路用足場装置が開示されている。
【0006】
特許文献1に歩道橋の作業足場は、折畳み自在にジョイントした一対の足場板2を一組とし、その多数組を展開自在に横架材3を介して一方向に長く所要スパン分を連結してユニット足場1と、その横架材3の全ての両端部に挿通された吊りロープ5と、ユニット足場1の一端部の横架材3に展開及び折畳み用の操作ロープ6とからなる作業足場が開示されている(特許文献1の明細書の段落[0011]~[0027]、図面の
図1~
図8等参照)。
【0007】
しかし、特許文献1に記載の歩道橋の作業足場は、設置が短時間にできるものの、大電流が流れるトロリー線が直接吊り下げられ歩道橋のような跨線橋の構造物には、そのまま適用することはできず、トロリー線の近傍の補修作業を行うことができないという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に鉄道線路用足場装置は、人力でレール上に搬入できる台車10と、台車10に着脱可能に取付けられ軽量金属材で形成された筒状材26をスライド自在に連結させた一対の伸縮柱13,13と、伸縮柱13を伸縮させる流体圧式ジャッキと、伸縮柱13の上端にそれぞれ取付けられ軽量金属材で形成された一対の作業床14,14と、作業床14の一方に収納可能に取付けられ作業床14,14間の隙間を閉鎖する閉鎖床板15と、隣接する作業床15と作業対象物1の側柱1aに設置した取付用部材6との間を連結する足場板5を備える。
【0009】
しかし、特許文献2に記載の鉄道線路用足場装置は、確かに設置や解体を短時間にできるものの、数時間程度しかない終電から始発までの時間内に足場の設置と解体を繰り返す必要があり、メンテナンス作業自体に時間を割くことができないという問題があった。
【0010】
また、本願の出願人は、特許文献3にスライド枠を用いた吊り足場の組み立て方法を提案した。特許文献3に記載のスライド枠を用いた吊り足場の組み立て方法は、高所構造物の側面に初期足場を設置する準備工程と、前記初期足場内にスライド枠を設置する搭載工程と、前記初期足場から前記スライド枠の枠体部を出し入れしブラケットを前記高所構造物の側面に固定するとともに、前記ブラケット及び初期足場に足場材を連結し、延設足場を組み立て、次いで連結された延設足場にさらに前記枠体を出し入れして順次延設足場を連結伸長させる延設工程と、からなり、高所構造物の側面に吊り足場を前記初期足場から延設するものである。
【0011】
特許文献3に記載のスライド枠を用いた吊り足場の組み立て方法は、確かに安全に電車が通行してる日中に足場の組み立て撤去を行うことができる。しかし、特許文献3に記載のスライド枠を用いた吊り足場の組み立て方法は、前述の大電流が流れるトロリー線を含む架線が直接接続され、トロリー線と跨線橋の離間距離が小さく通常の足場を間に設置できない跨線橋には適用することはできなかった。
【0012】
また、前述のような鉄道を跨ぐ歩道橋や陸橋は、メンテナンス作業中でも通行止めにせず、歩行者や車両の通行を許可したいとの要望もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000-96819号公報
【特許文献2】特開2002-12395号公報
【特許文献3】特開2017-53190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、トロリー線との離間距離が小さい跨線橋のメンテナンス作業にも適用でき、跨線橋のメンテナンス作業中も跨線橋の通行が可能で作業日ごとの組み払しが必要ない移動昇降式足場を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に係る移動昇降式足場は、トロリー線の上空に架設された構造物跨線橋のメンテナンス作業をするための移動足場移動昇降式足場であって、前記跨線橋の両縁沿いに設置された左右一対のレールと、前記左右一対のレール上を走行する下部移動機構と、前記下部移動機構に支持されて昇降動作を行う昇降機構と、前記昇降機構に吊り下げ支持されて、前記トロリー線に沿って水平移動して前記昇降機構に対して開閉する左右一対の水平移動機構を備え、前記下部移動機構は、鋼材が組み合わされた下部フレームを有し、前記昇降機構は、前記下部移動機構の前記下部フレームより高い位置で昇降し、前記下部フレームは、前記跨線橋の路面上を人が通行可能な高さに架け渡されていることを特徴とする。
【0016】
請求項2に係る移動昇降式足場は、請求項1に係る移動昇降式足場において、前記昇降機構は、油圧ジャッキとガイドローラーを備え、油圧ジャッキで押圧してガイドローラーで鉛直方向に案内して昇降することを特徴とする。
【0017】
請求項3に係る移動昇降式足場は、請求項1に係る移動昇降式足場において、前記下部移動機構は、前記下部フレームの下端に設けられたガイドローラーで前記レール上を走行することを特徴とする。
【0018】
請求項4に係る移動昇降式足場は、請求項1に係る移動昇降式足場において、前記左右一対の水平移動機構は、作業床を有した水平移動体をそれぞれ備え、前記昇降機構から前記トロリー線に沿った方向の外側両側に突設されたハンガーレール上を滑車で走行して前記水平移動体がそれぞれスライド移動して作業床が開閉する機構であることを特徴とする。
【0019】
請求項5に係る移動昇降式足場は、請求項4に係る移動昇降式足場において、前記作業床を支持する前記トロリー線と直交する方向に延びる支持材は、絶縁処理が施されているか、又は絶縁材であることを特徴とする。
【0020】
請求項6に係る移動昇降式足場は、請求項4に係る移動昇降式足場において、メンテナンス作業を行わない収納時には、前記昇降機構で前記作業床が前記跨線橋の下面に当接するまで上昇可能に構成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項7に係る移動昇降式足場は、請求項4に係る移動昇降式足場において、前記左右一対の水平移動体のそれぞれの作業床の先端には、先端プレートが取り付けられ、連結金具で接合可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1~7に係る発明によれば、トロリー線との離間距離が小さく通常の足場が組めない跨線橋のメンテナンス作業にも使用でき、メンテナンス作業中にも跨線橋の通行が可能で電車が通行しない夜間作業ごとの組み払しが必要なくなる。
【0023】
特に、請求項2に係る発明によれば、昇降機構が油圧ジャッキで押圧してガイドローラーで鉛直方向に案内して昇降するので、騒音等が少なく、静かに安全に昇降させることができる。
【0024】
特に、請求項3に係る発明によれば、下部フレームの下端に設けられたガイドローラーで前記レール上を走行するので、人力で容易に移動させることが可能となる。
【0025】
特に、請求項4に係る発明によれば、水平移動機構が昇降機構から外側両側に突設されたハンガーレール上を滑車で走行して水平移動体がそれぞれスライド移動して作業床が開閉するので、トロリー線の上空を跨ぐ構造物上を移動して、複数のトロリー線の間に容易に移動昇降式足場を設置することが可能となる。
【0026】
特に、請求項5に係る発明によれば、トロリー線と直交する方向に延びる支持材が絶縁処理が施されているか又は絶縁材からなるので、残留電流によるスパークの問題を払拭して安全にメンテナンス作業を実施することができる。
【0027】
特に、請求項6に係る発明によれば、トロリー線との距離が近接した構造物であっても移動昇降式足場を完全に撤去しないでトロリー線に通電することが可能となり、夜間作業毎の設置作業の一部を省略して短時間でメンテナンス作業を実施することができるとともに、作業床の幅を確保することが可能となる。
【0028】
特に、請求項7に係る発明によれば、先端プレート同士を連結金具で接合可能となっているので、予期せぬときに、水平移動体がスライドして水平移動体が開き、資材や作業員が落下することを容易に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る移動昇降式足場の構成を示す正面図である。
【
図2】
図2は、同上の移動昇降式足場を示す側面図である。
【
図3】
図3(a)は、同上の移動昇降式足場の下部移動機構のみを示す正面図であり、
図3(b)は、
図3(a)のA部拡大図である。
【
図4】
図4は、同上の移動昇降式足場の下部移動機構を示す側面図である。
【
図5】
図5は、同上の移動昇降式足場の下部移動機構を示す平面図である。
【
図6】
図6は、同上の移動昇降式足場の昇降機構を示す正面図である。
【
図7】
図7は、同上の移動昇降式足場の昇降機構を示す側面図である。
【
図8】
図8は、同上の移動昇降式足場の昇降機構の下部水平構面を示す
図6のB視平面図である。
【
図9】
図9は、同上の移動昇降式足場の昇降機構の上部水平構面を示す
図6のC視平面図でる。
【
図10】
図10は、同上の昇降機構のガイドローラーを示す
図7のD-D線水平断面図である。
【
図11】
図11は、同上の移動昇降式足場の水平移動機構を示す正面図である。
【
図12】
図12(a)は、同上の移動昇降式足場の水平移動機構を示す側面図であり、
図12(b)は、
図12(a)のH部拡大図である。
【
図13】
図13は、同上の移動昇降式足場の水平移動機構のハンガーレールを示す
図11のE視平面図である。
【
図14】
図14は、同上の移動昇降式足場の水平移動機構の上部水平構面を示す
図11のF視平面図である。
【
図15】
図15(a)は、同上の水平移動機構の作業床を示す
図11のG視平面図であり、
図15(b)は、同上の作業床を支持する床支持鋼材の鉛直断面図である。
【
図16】
図16は、同上の移動昇降式足場を設置位置まで歩道橋上を横移動する際の状態を示す正面パース図である。
【
図17】
図17は、設置位置に横移動させた同上の移動昇降式足場を下降させる際の状態を示す正面パース図である。
【
図18】
図18は、作業高さまで下降させた同上の移動昇降式足場の水平移動機構で水平移動体を内側に移動して閉じた状態を示す正面パース図である。
【
図19】
図19は、同上の移動昇降式足場の水平移動機構で水平移動体を内側に移動して閉じた状態を歩道橋下の線路上の電車の屋根付近の高さから見上げた状態で示す斜視図である。
【
図20】
図20は、同上の移動昇降式足場で歩道橋のメンテナンス作業を行う作業時の移動昇降式足場の状態を示す正面図である。
【
図21】
図21は、歩道橋の下面に作業床が当接した収納時の同上の移動昇降式足場の状態を示す正面図である。
【
図22】
図22は、収納時の同上の移動昇降式足場の状態を示す見上げ斜視図である。
【
図23】
図23は、1台の移動昇降式足場をトロリー線とトロリー線との間に収納した状態で、さらにもう1台の移動昇降式足場を横移動させている状態を示す斜視図である。
【
図24】
図24は、1台の移動昇降式足場をトロリー線とトロリー線との間に収納した状態で、さらにもう1台の移動昇降式足場を横移動させてトロリー線間の中央位置に横移動を完了させた状態を示す斜視図である。
【
図25】
図25は、収納時の移動昇降式足場の隣にもう1台の移動昇降式足場1を設置して作業時と同等の高さまで作業床44を下降させた下降完了時の移動昇降式足場1を示す斜視図である。
【
図26】
図26は、下降完了時の同上の移動昇降式足場の底面を主に示す見上げ斜視図である。
【
図27】
図27は、収納時の移動昇降式足場の隣にもう1台の移動昇降式足場を作業時の状態にした状態を示す見上げ斜視図である。
【
図28】
図28は、2台の移動昇降式足場を同時に収納時の状態としている場合を示す斜視図である。
【
図29】
図29は、2台の収納時の移動昇降式足場の直下を電車が通行する状態を示す斜視図である。
【
図30】
図30は、2台の移動昇降式足場を用いてトロリー線の近傍のメンテナンス作業を行う場合を示す斜視図である。
【
図31】
図31は、作業時の状態の移動昇降式足場の鋼材の骨組みを板材で覆って養生した状態を示す斜視図である。
【
図32】
図32は、板材で鋼材の骨組みを覆った収納時の状態の移動昇降式足場を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る移動昇降式足場の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
[移動昇降式足場]
図1~
図15を用いて、本発明の実施形態に係る移動昇降式足場1について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る移動昇降式足場1の構成を示す正面図であり、
図2は、移動昇降式足場1を示す側面図である。
【0032】
本実施形態では、移動昇降式足場1を電車鉄道架線の上空に架設され、大電流が流れるトロリー線TLを含む架線が直接接続された歩道橋Pb(跨線橋:鋼構造物)のメンテナンス作業をするための足場として使用する場合を例示して説明する。図示形態では、トロリー線TLと歩道橋Pbとの間隔(鉛直離間距離)は、単管足場、くさび式足場、枠組足場などの通常の足場を間に設置できない300mm以下程度を想定している。勿論、300mmの離間距離は、例示に過ぎない。
【0033】
なお、正面とは、歩道橋Pbを通行して電車の軌道及びトロリー線TLを横断・直交する方向に移動昇降式足場1を見た面を指している。また、メンテナンス作業とは、構造物の防錆塗料の塗り直しなどの補修作業や補修作業を行うための保守点検作業を含む作業を指している(以下同じ)。
【0034】
本実施形態に係る移動昇降式足場1は、歩道橋Pbの歩行面上に設置されたレールL1上を走行する下部移動機構2と、この下部移動機構2に支持されて昇降動作を行う昇降機構3と、この昇降機構3に吊り下げ支持されて水平移動する水平移動機構4など、から構成されている。
【0035】
(下部移動機構)
先ず、
図3~
図5を用いて、移動昇降式足場1の下部移動機構2について説明する。
図3(a)は、移動昇降式足場1の下部移動機構2を示す正面図であり、
図3(b)は、
図3(a)のA部拡大図である。また、
図4は、移動昇降式足場1の下部移動機構2を示す側面図であり、
図5は、移動昇降式足場1の下部移動機構2を示す平面図である。
【0036】
図3~
図5に示すように、下部移動機構2は、溝形鋼や山形鋼などの鋼材が組み合わされた下部フレーム20を基体とし、この下部フレーム20の下端の四隅にガイドローラー5が装着されて、歩道橋Pbの歩行面上に設置されたレールL1上を走行可能に構成されている。このように、下部移動機構2は、下部フレーム20の下端に設けられたガイドローラー5でレールL1上を走行するので、人力で容易に移動させることが可能となっている。
【0037】
下部フレーム20は、
図3~
図5に示すように、溝形鋼(125×65)からなる4本の支柱21と、これらの4本の支柱21の上端を接合して左右に突出する溝形鋼(125×65)からなる一対の上部鋼材22と、これらの上部鋼材22同士を繋ぐ溝形鋼(125×65)からなる繋ぎ材23など、から構成されている。なお、部フレーム20の上部鋼材22の設置高さは、跨線橋である歩道橋Pbの路面上を人が通行可能な高さ(例えば、歩道橋Pbの路面との離間距離が2m程度以上)に架け渡されている。
【0038】
また、4本の支柱21同士は、山形鋼(65×65)からなる複数本の補強材24で2段に亘りボルト接合されて繋ぎ合わされて補強された上、支柱21下端同士は、溝形鋼(125×65)からなる下部鋼材25で繋ぎ合わされて補強されている。なお、
図4に示すように、下部移動機構2の支柱21の長手方向の下端部同士は、座屈しないように斜めに取り付けられたターンバックルブレス26で補剛されている。
【0039】
また、支柱21と繋ぎ材23は、斜材27で接合されて支柱21と繋ぎ材23の接合部が角度変形しないように補強され、支柱21と上部鋼材22は、斜材28で接合されてキャンテレバーとなる上部鋼材22の突出部分が変形しないように補強されている。
【0040】
さらに、
図5に示すように、繋ぎ材23の支柱21との接合部付近同士に斜めに一対のM10のターンバックルブレス29がたすき掛けに取り付けられて補強されている。
【0041】
なお、ガイドローラー5は、
図3(b)に示すように、鋼板からなる補強プレート51を介して支柱21の下端にボルト接合され、レールL1上を走行する外れ止めが付いた金属製の車輪50を有している。
【0042】
(昇降機構)
次に、
図6~
図10を用いて、移動昇降式足場1の昇降機構3について説明する。
図6は、移動昇降式足場1の昇降機構3を示す正面図であり、
図7は、移動昇降式足場1の昇降機構3を示す側面図である。また、
図8は、移動昇降式足場1の昇降機構3の下部水平構面31を示す
図6のB視平面図であり、
図9は、移動昇降式足場1の昇降機構3の上部水平構面32を示す
図6のC視平面図でる。そして、
図10は、昇降機構3のガイドローラー33aを示す
図7のD-D線水平断面図である。
【0043】
昇降機構3は、溝形鋼やH形鋼などの鋼材が組み合わされた昇降体30を基体とし、この昇降体30を前述の下部移動機構2に支持固定された油圧ジャッキ6で上下に上昇又は下降自在に構成されている。
【0044】
昇降体30は、後述の水平移動機構4を吊り上げ支持するための下部水平構面31と、この下部水平構面31を吊り上げ支持するための上部水平構面32と、を備えており、これらの下部水平構面31及び上部水平構面32が4本の縦材33で接続されて屋根状に組み合わされている。
【0045】
図6に示すように、下部水平構面31及び上部水平構面32とは、山形鋼(65×65)からなる複数の斜材34で接合されて下部水平構面31の突き出た先端が自由端とならないように(垂れ下がらないように)補強されている。
【0046】
図8に示すように、下部水平構面31は、溝形鋼(125×65)が背面同士で接合された桁材35にH形鋼(100×100)からなる複数の横材36が架け渡されて接合された梯子状となっている。また、横材36の長手方向の端部同士がM10のターンバックルブレス37で接合され補強されている。
【0047】
なお、
図6,
図8に示すように、桁材35は、全長7mに達するため中央でスプライスプレートである厚さ9mmの2枚の連結プレート35aで挟み込まれてボルト接合されて長手方向の端部同士が長手方向に継ぎ足されている。勿論、桁材35は、長手方向の端部同士を中央で継ぎ足すのではなく、連続した1本の鋼材としてもよいことは云うまでもない。
【0048】
図9に示すように、上部水平構面32は、溝形鋼(125×65)が背面同士で接合された桁材38に溝形鋼(125×65)からなる横材39が架け渡されて接合された井桁状に組み合わされている。また、横材39の長手方向の端部同士がM10のターンバックルブレス37でたすき掛けに接合され補強されている。
【0049】
また、
図7に示すように、昇降体30は、縦材33同士の間隔が下部において開かないように、溶接されたプレートを介して溝形鋼(125×65)からなる上下2段の繋ぎ材300で接合されて補強されている。この下段の繋ぎ材300には、油圧ジャッキ6がボルト接合されており、繋ぎ材300が油圧ジャッキ6で押し上げられることにより、昇降体30全体が昇降する仕組となっている。
【0050】
なお、
図7に示すように、縦材33同士は、上部においてもM10のターンバックルブレス37が斜めに取り付けられて補強されている。
【0051】
また、
図2,
図7,
図10に示すように、縦材33の外側の側面には、油圧ジャッキ6で昇降体30を持ち上げ又は下降させる際に、昇降体30を前述の下部移動機構2の支柱21に沿って鉛直方向にガイドするガイドローラー33aが装着されている。
図10に示すように、支柱21の溝形鋼の内側面には、フラットバーからなるレール21aが取り付けられており、このレール21aに沿ってガイドローラー33aが回転して上下に移動することにより、昇降体30全体を鉛直方向に案内する仕組となっている。
【0052】
また、油圧ジャッキ6は、油圧により油圧シリンダー60からピストンロッド61が突没自在に構成されたジャッキであり、前述の下部鋼材25上に載置されて、ベースプレート62を介してボルト接合されて固定されている。その上、油圧シリンダー60は、
図2に示すように、補強材24で倒れないように下部移動機構2に固定されている。
【0053】
このように、昇降機構3は、油圧ジャッキ6で押圧してガイドローラー33aで鉛直方向に案内して昇降するので、騒音等が少なく、静かに安全に昇降させることができる。
【0054】
(水平移動機構)
次に、
図11~
図15を用いて、移動昇降式足場1の水平移動機構4について説明する。
図11は、移動昇降式足場1の水平移動機構4を示す正面図であり、
図12(a)は、移動昇降式足場1の水平移動機構4を示す側面図であり、
図12(b)は、滑車部分を示す
図12(a)のH部拡大図である。また、
図13は、移動昇降式足場1の水平移動機構4のハンガーレール41を示す
図11のE視平面図であり、
図14は、移動昇降式足場1の水平移動機構4の上部水平構面を示す
図11のF視平面図である。そして、
図15(a)は、水平移動機構4の作業床を示す
図11のG視平面図であり、
図15(b)は、作業床を支持する床支持鋼材の鉛直断面図である。
【0055】
水平移動機構4は、前述の昇降機構3に吊り下げ支持された左右対称の一対の機構であり、それぞれ歩道橋Pbの歩行進路に対して直交する
図11の矢印方向に水平移動する機構である。即ち、左右のそれぞれの水平移動機構4が、
図11の矢印方向に歩道橋Pbの略全幅に亘る昇降機構3に対して外側へ開き、又は内側に閉じる方向に水平移動する構成となっている(
図1も参照)。なお、この水平移動機構4の矢印方向の水平移動の開閉動作は、ウィンチ8を動力源として行う。勿論、水平移動機構4の水平移動の開閉動作は、人力のみで行ってもよいことは云うまでもない。
【0056】
水平移動機構4は、H形鋼などの鋼材が組み合わされた水平移動体40を基体とし、この水平移動体40がH形鋼(200×100)からなる2本のハンガーレール41にプレーントロリーである複数の滑車7を介して吊り下げられており、滑車7で2本のハンガーレール41の下フランジ上を滑走して水平方向にスライド移動自在に構成されている。
【0057】
図13に示すように、2本のハンガーレール41は、前述の昇降機構3の横材36に吊り下げ支持され、昇降機構3からトロリー線TLに沿った方向の外側両側に突設されている。この2本のハンガーレール41の先端には、山形鋼(65×65)からなる端部鋼材41aが架け渡されて接合され、この端部鋼材41aには、端部鋼材41a及びハンガーレール41を上下に貫通するストッパボルト41bが接合されている。このストッパボルト41bは、滑車7がハンガーレール41から外れることを防止する機能を有している。また、2本のハンガーレール41の間には、M10のターンバックルブレス41cが斜めに複数架け渡されて接合され補強されている。
【0058】
水平移動体40は、ハンガーレール41に吊り下げられる吊下げ構面42と、この吊下げ構面42の外側から下方に垂下して作業員の昇降スペースとなる昇降枠体43と、この昇降枠体43の下端に取り付けられた作業床44など、から構成されている。
【0059】
図14に示すように、吊下げ構面42は、H形鋼(100×100)からなる一対の桁材420,420と、これらの桁材420間に架け渡されたH形鋼(100×100)からなる3本の横梁材421を備えている。また、この桁材420の上面には、滑車7がボルト接合されて固定されている。なお、H形鋼(100×100)同士の接合は、鋼板かなる接合プレートがフランジに溶接された上、ボルト接合されている。
【0060】
図11,
図12に示すように、昇降枠体43は、H形鋼(100×100)からなる4本の縦材430と、これらの縦材430同士の高さ方向の中間地点に架け渡された、H形鋼(100×100)からなる横材431,432を備えている。
【0061】
この昇降枠体43は、縦材430及び横材431,432で囲われたスペースが、歩道橋Pbの歩行面から作業員が作業床44へ昇降する昇降スペースとなっており、昇降梯子45及びアングル材が組わされた高所作業床からの落下防止用のアングル手摺46も備えられている。
【0062】
図15(a)に示すように、作業床44は、前述の縦材430の下端に接合された一対の床支持鋼材440,440と、これらの床支持鋼材440を繋ぐ、H形鋼(100×100)からなる2本の繋ぎ材441,441など、から構成されている。
【0063】
図15(b)に示すように、床支持鋼材440は、H形鋼(100×100)の両サイドのフランジの突端に厚さ9mmの帯鋼板が溶接された上、直径h1=50mmの円形の孔が複数穿設されている。作業床44は、床支持鋼材440の円形の孔に直径49.2mmのFRP製の丸パイプ442を挿入して、この丸パイプ442を根太として床板に厚さ35mm程度の杉板が敷き並べられている。勿論、この丸パイプ442は、FRP製に限られず絶縁材であればよい。絶縁材が好ましいのは、後述のように、作業44床を支持するトロリー線TLと直交する方向に延びる支持材が金属であると残留電流によるスパークの問題が懸念されるからである。
【0064】
また、作業床44を支持するトロリー線TKと直交する方向に延びる丸パイプ442などの支持材は、絶縁材とするのではなく、鋼材に絶縁処理を施しても構わない。ここで、絶縁処理とは、導電性が高い基材に導電性が限りなく低い皮膜を形成して絶縁することを指してる。具体的には、鋼材などの金属材にアルミナなどのセラミックを溶射するセラミック溶射を挙げることができる。その他の絶縁処理としては、粉体塗料を静電気で被塗物に付着させた後、高温加熱して塗膜を作る「静電粉体塗装」などが挙げられる。
【0065】
なお、工事の規準としては、高圧・特別高圧設備に関わる工事等は、その作業の範囲にある充電電路を全て停電して行うことを基本とするとされていることから、トロリー線に近接して行う工事は、キ電停止状態で行っている。この例外として、最低離隔距離をとるとキ電停止せずに工事を行うことができることとなっている。規準では最低離隔距離は、在来線の直流1500Vで1.2m(1200mm)であり、離隔距離の特例としては、重機が移動式クレーン等以外でリミッター等の防護を完全に行う場合は、離隔を0.5mまで減ずることができるとされている。しかし、残留電流によるスパークの問題もあり、極めて危険であることから、電路を全て停電して最低離隔を0.5mとして工事を行っているのが現状である。このため、跨線橋のメンテナンス作業は、夜間キ電停止状態でトロリー線TLとの離間距離を500mmとって行っている。
【0066】
また、床支持鋼材440の先端には、鋼板からなる先端プレート443が溶接されて接合されている。これにより、後述のように左右一対の水平移動機構4の水平移動体40同士を容易に接合可能となっている。
【0067】
なお、
図12の符号444は、作業中に作業床44の脇に立てかける巾木444である(
図31も参照)。巾木444は、資材等が作業床44から誤って落下しないように防止する機能を有している。
【0068】
[移動昇降式足場の使用方法]
次に、
図16~
図32を用いて、本発明の実施形態に係る移動昇降式足場1の使用方法について説明する。前述と同様に、移動昇降式足場1を電車鉄道架線の上空に架設され、大電流が流れるトロリー線TLを含む架線が直接接続された歩道橋Pb(鋼構造物)を補修するための足場として使用する場合を例示して説明する。
図16は、移動昇降式足場1を設置位置まで歩道橋Pb上を横移動する際の状態を示す正面パース図である。
【0069】
(横移動時)
図16に示すように、移動昇降式足場1を横移動する際は、歩道橋Pbの高欄と接触しないように、水平移動機構4で水平移動体40を外側に移動して開いた状態で、人力で移動昇降式足場1を押して歩道橋Pbに敷設したレールL1上を下部移動機構2のガイドローラー5で走行させて水平移動する(
図1も参照)。このとき、トロリー線TLに水平移動体40の下端が接触しないように、昇降機構3の油圧ジャッキ6で昇降体30及び水平移動体40を持ち上げた状態で移動する。但し、移動昇降式足場1を横移動する際は、トロリー線TLの近傍を金属体が通過するので、トロリー線TLへの通電は切った状態、即ちキ電停止状態で移動する。
【0070】
なお、歩道橋Pbの補修工事に入る前に、歩道橋Pbに鋼材等が接触して損傷しないように、事前に足場板やコンパネ(コンクリートパネル)等の覆工板で覆って養生しておくことが好ましい。また、レールL1も覆工板上に設置した木材や鋼材の上に設置することが好ましい(
図1等参照)。
【0071】
(下降時)
図17は、設置位置に横移動させた移動昇降式足場1を下降させる際の状態を示す正面パース図である。
図17に示すように、トロリー線TLとトロリー線TLとの間の中央地点に横移動させて所定の位置に到達すると、昇降機構3の油圧ジャッキ6で昇降体30及び水平移動体40を下降させる。
【0072】
(作業時)
図18は、作業高さまで下降させた移動昇降式足場1の水平移動機構4で水平移動体40を内側に移動して閉じた状態を示す正面パース図である。また、
図19は、移動昇降式足場1の水平移動機構4で水平移動体40を内側に移動して閉じた状態を歩道橋Pb下の線路上の電車の屋根付近の高さから見上げた状態で示す斜視図である。そして、
図20は、移動昇降式足場1で歩道橋Pbのメンテナンス作業を行う作業時の移動昇降式足場1の状態を示す正面図である。
【0073】
図18~
図20に示すように、作業時には、移動昇降式足場1は、左右一対の水平移動機構4で水平移動体40をそれぞれ内側に移動して水平移動体40同士が当接した閉じた状態で使用する。このとき、
図20に示すように、ブルマン(登録商標)などの連結金具Bc(クランプ)で水平左右一対の水平移動体40の先端プレート443同士を接合するとともに、滑車7の直ぐ外側のハンガーレールにキャッチC1などの吊り金具を取り付けて水平移動体40が外側に移動することを防止することが好ましい。予期せぬときに、水平移動体40がスライドして水平移動体40が開き、資材や作業員が落下することを防止することができるからである。
【0074】
図18~
図20に示すように、作業時には、移動昇降式足場1は、水平移動体40同士を内側に移動して閉じた状態となるので、歩道橋Pbの高欄に水平移動体40の内側が近接又は当接した状態となる。このため、
図20に示すように、高欄を超えて水平移動体40(昇降枠体43)内に入れるように、タラップTpを設置するとよい。このタラップTpは、自在ステップと単管パイプを組み合わせたり、枠足場の仮設階段等の仮設のタラップを用いたりすることが好ましい。作業床44への昇降が容易となるからである。
【0075】
また、
図20に示すように、下部フレーム20の上部鋼材22又は水平移動体40の吊下げ構面42には、塗料缶などの重量物を作業床44まで荷降ろしするためのチェーンブロックなどの手動の揚重機Cbを設置することが好ましい。両手が空いた状態で作業床44への昇降が可能となり、安全だからである。
【0076】
図18~
図20に示すように、移動昇降式足場1の作業時の状態では、作業床44との鉛直離間距離は、810mm程度確保可能となっている。このため、しゃがんだ状態では、歩道橋Pbの裏面に容易にアクセスすることが可能となり、防錆塗料などの塗り直し等のメンテナンス作業を効率よく行うことができる。
【0077】
なお、
図20に示すように、昇降機構3は、作業時の状態の高さが一番低い状態であり、その状態でも昇降体30及び水平移動体40は、下部フレーム20の上部鋼材22より上に位置している。このため、メンテナンス作業中にも歩道橋Pbの歩行面を人があるいたり、自転車で通行したりすることが可能となっている。
【0078】
(収納時)
図21は、歩道橋Pbの下面に作業床44が当接した収納時の移動昇降式足場1の状態を示す正面図である。また、
図22は、収納時の移動昇降式足場1の状態を示す見上げ斜視図である。
図21,
図22に示すように、メンテナンス作業を行わない収納時には、移動昇降式足場1は、水平移動体40同士が当接して閉じた作業時の移動昇降式足場1の状態から、昇降機構3の油圧ジャッキ6を作動させて昇降体30及び水平移動体40を上昇させ、歩道橋Pbの下面に作業床44が当接した状態とする。
【0079】
移動昇降式足場1をこのような状態とすることにより、移動昇降式足場1を完全に撤去しない状態でトロリー線TLへの通電が可能となり、移動昇降式足場1を完全に払して撤去する必要がなくなる。このため、電車が通行しない夜間の限られた短時間に仮設足場の設置、メンテナンス作業、仮設足場の撤去までを行う必要がなく、電車が通行しない時間を殆ど全てメンテナンス作業にあてることができる。
【0080】
また、
図21に示すように、収納時でも移動昇降式足場1内は、幅2800mm×高さ2500mmのスペースの確保が可能である。このため、電車が通行する日中に、移動昇降式足場1を歩道橋Pb上に設置した状態としても、歩行者は、移動昇降式足場1内を普段通り通行することが可能である。このため、夜間のメンテナンス作業毎の仮設足場の組み払しが必要なくなる。
【0081】
但し、
図21に示すように、移動昇降式足場1の収納時は、歩道橋Pbの通行人が移動昇降式足場1を容易に触れられないように、下部フレーム20の内側にガードフェンスGF等を設置して覆うことが好ましい。また、移動昇降式足場1の収納時は、水平移動機構4の揺れ防止のため、昇降枠体43と下部フレーム20とを単管パイプとクランプや壁つなぎ等を用いて連結しておくことが好ましい。
【0082】
なお、本実施形態のように、歩道橋Pbの直下300mmの高さにトロリー線TLが架設されている場合は、移動昇降式足場1を上昇させて作業床44を歩道橋Pbの下面に当接させた状態でも、作業床44の幅を一定以上確保すると作業床44を支持する金属の端部がトロリー線TLの所定の半径内に位置することとなり、トロリー線TLへの通電時の移動昇降式足場1の残置が不可となる。
【0083】
しかし、前述のように、本実施形態に係る移動昇降式足場1の作業床44を支持する丸パイプ442は、FRP製であり、この問題を解決することができ、作業床44の幅を2000mm確保してもトロリー線TLとの離隔距離を500mm確保してトロリー線TLへの通電時の移動昇降式足場1の残置が可能となっている。
【0084】
(複数台使用時)
図23は、1台の移動昇降式足場1をトロリー線TLとトロリー線TLとの間に収納した状態で、さらにもう1台の移動昇降式足場1を横移動させている状態を示す斜視図であり、
図24は、1台の移動昇降式足場1をトロリー線TLとトロリー線TLとの間に収納した状態で、さらにもう1台の移動昇降式足場1を横移動させてトロリー線TL間の中央位置に横移動を完了させた状態を示す斜視図である。
【0085】
図25は、収納時の移動昇降式足場1の隣にもう1台の移動昇降式足場1を設置して作業時と同等の高さまで作業床44を下降させた下降完了時の移動昇降式足場1を示す斜視図であり、
図26は、下降完了時の移動昇降式足場1の底面を主に示す見上げ斜視図である。また、
図27は、収納時の移動昇降式足場1の隣にもう1台の移動昇降式足場1を作業時の状態にした状態を示す見上げ斜視図である。
【0086】
図23~
図27に示すように、移動昇降式足場1を複数用いることで、歩道橋Pbの複数個所のメンテナンス作業を同時に行うことができ、電車が通行しない夜間の短時間の間に効率よくメンテナンス作業を行うことができる。
【0087】
図28は、2台の移動昇降式足場1を同時に収納時の状態としている場合を示す斜視図であり、
図29は、2台の収納時の移動昇降式足場1の直下を電車が通行する状態を示す斜視図である。
図28,
図29に示すように、電車が通行する日中は、昇降機構3の油圧ジャッキ6を作動させて昇降体及び水平移動体を上昇させ、歩道橋Pbの下面に作業床が当接した状態で移動昇降式足場1を収納し、トロリー線TLに通電する。
【0088】
このとき、図中のトロリー線TLを中心とする複数の円は、トロリー線TLに通電している最中に金属を離間すべき距離を示しており、作業床の一部がその半径内に接触していることが分かる。しかし、前述のように、金属である水平移動体40は、その半径内からギリギリ外へ位置しており、トロリー線TL通電時の移動昇降式足場1の残置が可能となっている。
【0089】
図30は、2台の移動昇降式足場1を用いてトロリー線TLの近傍のメンテナンス作業を行う場合を示す斜視図である。1台の移動昇降式足場1単独でトロリー線TLの近傍のメンテナンス作業を行う場合は、トロリー線TLに接触して移動昇降式足場1を作業時の高さまで下げることができない。しかし、
図29に示すように、2台の移動昇降式足場1を用いてトロリー線TLを2台の移動昇降式足場1で挟むように設置することで移動昇降式足場1を作業時の高さまで下げることが可能となる。このため、トロリー線TL直上の歩道橋Pbの下面も容易にメンテナンス作業を行うことができる。
【0090】
図31は、作業時の状態の移動昇降式足場1の鋼材の骨組みを板材で覆って養生した状態を示す斜視図であり、
図32は、板材で鋼材の骨組みを覆った収納時の状態の移動昇降式足場1を示す斜視図である。
図31、
図32に示すように、移動昇降式足場1は、アクリル板やポリカーボネイト板などの樹脂ガラスP1やコンクリートパネルなどの板材P2で覆って養生し風対策を施すことが好ましい。強風で塗料などのメンテナンス用の資材が飛び散ったりするおそれを軽減することができるからである。また、移動昇降式足場1の上部を樹脂ガラス等で覆って日光が当たるようにすることで塗料の色味などを太陽光で確認することができるというメリットもある。
【0091】
また、
図31に示すように、移動昇降式足場1は、作業時には、作業床の巾木444を立てて資材等が作業床から誤って落下しないようにして使用する。そして、
図32に示すように、移動昇降式足場1は、収納時には、巾木を内側に倒して収納する。
【0092】
以上説明した本実施形態に係る移動昇降式足場1によれば、トロリー線と跨線橋との離隔距離が充分取れない跨線橋のメンテナンス作業にも使用でき、電車が通行する日中にも移動昇降式足場1を完全に撤去する必要がなくなり、電車が通行しない夜間作業ごとの組み払しが必要なくなる。
【0093】
また、移動昇降式足場1によれば、水平移動機構4が昇降機構3から外側両側に突設されたハンガーレール41上を滑車で走行して水平移動体40がそれぞれスライド移動して作業床44が開閉するので、トロリー線TLの上空を跨ぐ構造物である歩道橋Pb上を移動して、複数のトロリー線TLの間に容易に移動昇降式足場1を設置することが可能となる。
【0094】
さらに、移動昇降式足場1によれば、当接する水平移動体40同士の先端に先端プレート443が設けられているので、これらの先端プレート443同士を連結金具Bcで簡単に接合可能となっている。このため、予期せぬときに、水平移動体40がスライドして作業床44が開き、資材や作業員が落下することを容易に防止することができる。
【0095】
以上、本発明の実施形態に係る移動昇降式足場1について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。特に、トロリー線との距離が近接した構造物として歩道橋を例示して説明したが、自転車用陸橋や自動車用の陸橋などの他の構造物にも適用することが可能である。移動昇降式足場のサイズを構造物の規模に拡大又は縮小すれば適用可能だからである。
【符号の説明】
【0096】
1:移動昇降式足場
2:下部移動機構
20:下部フレーム
21:支柱
21a:レール
22:上部鋼材
23:繋ぎ材
24:補強材
25:下部鋼材
26:ターンバックルブレス
27,28:斜材
29:ターンバックルブレス
3:昇降機構
30:昇降体
31:下部水平構面
32:上部水平構面
33:縦材
33a:ガイドローラー
34:斜材
35:桁材
35a:連結プレート
36:横材
37:ターンバックルブレス
38:桁材
39;横材
4:水平移動機構
40:水平移動体
41:ハンガーレール
41a:端部鋼材
42:吊下げ構面
420:桁材
421:横梁材
43:昇降枠体
430:縦材
431,432:横材
44:作業床
440:床支持鋼材
441:繋ぎ材
442:丸パイプ
443:先端プレート
444:巾木
45:昇降梯子
46:アングル手摺
P1:樹脂ガラス
P2:板材
5:ガイドローラー
50:車輪
51:補強プレート
6:油圧ジャッキ
60:油圧シリンダー
61:ピストンロッド
62:ベースプレート
7:滑車
8:ウィンチ
Bc:連結金具
C1:キャッチ
Cb:揚重機
GF:ガードフェンス
Tp:タラップ
Pb:歩道橋(跨線橋)
TL:トロリー線
L1:レール