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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036242
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】移動昇降式足場
(51)【国際特許分類】
   E04G 3/24 20060101AFI20240308BHJP
   E04G 1/20 20060101ALI20240308BHJP
   E04G 1/24 20060101ALI20240308BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
E04G3/24 302H
E04G1/20 B
E04G1/24 301B
E01D22/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141069
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】591075641
【氏名又は名称】東鉄工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592123923
【氏名又は名称】株式会社タカミヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】笹川 透
(72)【発明者】
【氏名】笠原 薫
(72)【発明者】
【氏名】米窪 航也
(72)【発明者】
【氏名】松村 誠
【テーマコード(参考)】
2D059
2E003
【Fターム(参考)】
2D059EE02
2D059EE04
2D059EE05
2D059EE07
2D059EE10
2E003AA02
2E003AB03
2E003CB00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】トロリー線との離間距離が小さい跨線橋のメンテナンス作業にも適用でき、トロリー線などの架空線をかわして跨線橋の桁行方向の移動が容易で、跨線橋のメンテナンス作業中も跨線橋の通行が可能で作業日ごとの組み払しが必要ない移動昇降式足場を提供する。
【解決手段】跨線橋(歩道橋)の路面上の両縁沿いに設置された左右一対のレールと、左右一対のレール上を走行する左右一対の下部移動機構3と、下部移動機構3上に立設された左右一対のマスト2aと、マスト2aに沿って昇降動作を行う左右一対の昇降機構4と、左右一対の昇降機構4,4同士を連結するビーム2bと、一対の昇降機構4,4の各昇降機構4に吊り下げ支持されて跨線橋(歩道橋)の下方で水平移動可能な左右一対の水平移動機構5,5を備え、ビーム2bを、昇降機構4が最低高さにある状態でも跨線橋(歩道橋)の路面上を人が通行可能な高さに架け渡す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロリー線の上空に架設された跨線橋のメンテナンス作業をするための移動昇降式足場であって、
前記跨線橋の路面上の両縁沿いに設置された左右一対のレールと、前記左右一対のレール上を走行する左右一対の下部移動機構と、前記下部移動機構上に立設された左右一対のマストと、前記マストに沿って昇降動作を行う左右一対の昇降機構と、前記左右一対の昇降機構同士を連結するビームと、前記一対の昇降機構の各昇降機構に吊り下げ支持されて前記跨線橋の下方で水平移動可能な左右一対の水平移動機構を備え、
前記ビームは、前記昇降機構が最低高さにある状態でも前記跨線橋の路面上を人が通行可能な高さに架け渡されていること
を特徴とする移動昇降式足場。
【請求項2】
前記昇降機構は、ピニオンギアを回転駆動する電動モーターを備え、
前記マストには、前記ピニオンギアと噛み合うラックが形成され、
前記昇降機構は、前記電動モーターで前記ピニオンギアを回転駆動して前記ラックが形成された前記マストに沿って昇降すること
を特徴とする請求項1に記載の移動昇降式足場。
【請求項3】
前記下部移動機構は、前記レール上を走行する車輪と、前記車輪を前記跨線橋の路面から持ち上げて離間するベースジャッキと、を有すること
を特徴とする請求項1に記載の移動昇降式足場。
【請求項4】
前記左右一対の水平移動機構は、それぞれ作業床を有した水平移動体を備え、前記水平移動体の下部には、それぞれスライドレールが取り付けられ、前記スライドレールは、前記昇降機構の昇降部にスライド自在に支持されており、前記水平移動体が手動又は電動でスライド移動自在に構成されていること
を特徴とする請求項1に記載の移動昇降式足場。
【請求項5】
少なくとも前記作業床を支持する支持材は、絶縁処理が施されているか、又は絶縁材からなること
を特徴とする請求項4に記載の移動昇降式足場。
【請求項6】
前記昇降機構は、メンテナンス作業を行わない時には、前記作業床が前記跨線橋の下面より上に上昇可能に構成されていること
を特徴とする請求項4に記載の移動昇降式足場。
【請求項7】
一対の前記水平移動体は、長手方向の端部同士が連結可能に構成され、各作業床間を互いに通行可能に構成されていること
を特徴とする請求項4に記載の移動昇降式足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トロリー線の上空に架設された跨線橋のメンテナンス作業をするための移動昇降式足場に関し、詳しくは、トロリー線と跨線橋の離間距離が小さく、単管足場、くさび式足場、枠組足場などの通常の足場を間に設置できない跨線橋のメンテナンス作業をするための移動昇降式足場に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の軌道上には、歩道橋や自転車用及び自動車用の陸橋など電車鉄道の架線の上空をこの架線を跨ぐ形で軌道と交差する構造物である跨線橋が設置されている。これらの跨線橋の構造物は、一般的に、大きなスパンをとることができることから鋼材が組み合わされた鋼構造物となっている。このため、このような鋼構造物は、防錆塗料が塗布されており、防錆塗料の塗り直しや保守点検作業など定期的なメンテナンス作業が必要となっている。
【0003】
しかし、このような跨線橋のメンテナンス作業は、電車運行中に行うことは極めて危険で実行不可能であるため、終電後の限られた時間内に行う必要があった。しかも、メンテナンス作業を行う仮設足場は、始発電車の運行前には撤去しなければならず、都内近郊では、極めて限られた時間内しか補修作業ができないという問題があった。さらに、貨物列車が通過する路線は、一般車両の終電や始発以外にも通過する電車が存在するため申請して予め決められた所定の日時しかメンテナンス作業を行うことができなかった。
【0004】
このような跨線橋のメンテナンス作業を行う場合は、従来は、軌道上を走行可能な軌陸車の高所作業者を用いて行っていた。しかし、軌陸車は、踏切など道路と線路が交差する位置からしか現場に搬入できず、終電後に作業場所まで軌陸車を搬送するだけで時間を要し、メンテナンス作業自体に割ける時間が少なく、作業日数がかかってしまい、必然的に修繕費用が嵩むという問題があった。
【0005】
なお、このような跨線橋のメンテナンス作業を行う仮設足場に関連する技術としては、特許文献1に歩道橋の作業足場(の仮設工法)が開示され、特許文献2に鉄道線路用足場装置が開示されている。
【0006】
特許文献1に歩道橋の作業足場は、折畳み自在にジョイントした一対の足場板2を一組とし、その多数組を展開自在に横架材3を介して一方向に長く所要スパン分を連結してユニット足場1と、その横架材3の全ての両端部に挿通された吊りロープ5と、ユニット足場1の一端部の横架材3に展開及び折畳み用の操作ロープ6とからなる作業足場が開示されている(特許文献1の明細書の段落[0011]~[0027]、図面の図1図8等参照)。
【0007】
しかし、特許文献1に記載の歩道橋の作業足場は、設置が短時間にできるものの、大電流が流れるトロリー線が直接吊り下げられ歩道橋のような跨線橋の構造物には、そのまま適用することはできず、トロリー線の近傍の補修作業を行うことができないという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に鉄道線路用足場装置は、人力でレール上に搬入できる台車10と、台車10に着脱可能に取付けられ軽量金属材で形成された筒状材26をスライド自在に連結させた一対の伸縮柱13,13と、伸縮柱13を伸縮させる流体圧式ジャッキと、伸縮柱13の上端にそれぞれ取付けられ軽量金属材で形成された一対の作業床14,14と、作業床14の一方に収納可能に取付けられ作業床14,14間の隙間を閉鎖する閉鎖床板15と、隣接する作業床14と作業対象物1の側柱1aに設置した取付用部材6との間を連結する足場板5を備える。
【0009】
しかし、特許文献2に記載の鉄道線路用足場装置は、確かに設置や解体を短時間にできるものの、数時間程度しかない終電から始発までの時間内に足場の設置と解体を繰り返す必要があり、メンテナンス作業自体に時間を割くことができないという問題があった。
【0010】
また、本願の出願人は、特許文献3に移動昇降式足場を提案した。特許文献3に記載の移動昇降式足場は、ガイドマスト20と、ガイドマスト20に着脱されて装着状態で昇降移動する駆動部30と、駆動部30に略水平状態で設置される作業用デッキ40とを有する移動昇降式足場10であって、2つのガイドマスト20にそれぞれ駆動部30が装着されており、2つの駆動部30同士に掛け渡されるように作業用デッキ40が設置されており、作業用デッキ40の上方で略水平方向に設置され、かつ、作業用デッキ40と共に昇降移動する長細形状の掛渡部70が設けられており、掛渡部70に、掛渡部70に沿って作業用デッキ40の上方を略水平方向に移動する横移動用クレーン装置90が設置可能となっている。
【0011】
特許文献3に記載の移動昇降式足場は、重量のある物や大きさのある物を楽に運んで作業することができ、別途、クレーン等の揚重機を併用することがなくて場所を取らず、作業員が安全に効率良く作業を行うことができるとされている。しかし、特許文献3に記載の移動昇降式足場は、前述の大電流が流れるトロリー線を含む架線が直接接続された跨線橋には適用することはできなかった。
【0012】
また、前述のような鉄道を跨ぐ跨線橋である歩道橋や陸橋は、メンテナンス作業中でも通行止めにせず、歩行者や車両の通行を許可したいとの要望もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000-96819号公報
【特許文献2】特開2002-12395号公報
【特許文献3】特開2020-33713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、トロリー線との離間距離が小さい跨線橋のメンテナンス作業にも適用でき、トロリー線などの架空線をかわして跨線橋の桁行方向の移動が容易で、跨線橋のメンテナンス作業中も跨線橋の通行が可能で作業日ごとの組み払しが必要ない移動昇降式足場を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に係る移動昇降式足場は、トロリー線の上空に架設された跨線橋のメンテナンス作業をするための移動昇降式足場であって、前記跨線橋の路面上の両縁沿いに設置された左右一対のレールと、前記左右一対のレール上を走行する左右一対の下部移動機構と、前記下部移動機構上に立設された左右一対のマストと、前記マストに沿って昇降動作を行う左右一対の昇降機構と、前記左右一対の昇降機構同士を連結するビームと、前記一対の昇降機構の各昇降機構に吊り下げ支持されて前記跨線橋の下方で水平移動可能な左右一対の水平移動機構を備え、前記ビームは、前記昇降機構が最低高さにある状態でも前記跨線橋の路面上を人が通行可能な高さに架け渡されていることを特徴とする。
【0016】
請求項2に係る移動昇降式足場は、請求項1に係る移動昇降式足場において、前記昇降機構は、ピニオンギアを回転駆動する電動モーターを備え、前記マストには、前記ピニオンギアと噛み合うラックが形成され、前記昇降機構は、前記電動モーターで前記ピニオンギアを回転駆動して前記ラックが形成された前記マストに沿って昇降することを特徴とする。
【0017】
請求項3に係る移動昇降式足場は、請求項1に係る移動昇降式足場において、前記下部移動機構は、前記レール上を走行する車輪と、前記車輪を前記跨線橋の路面から持ち上げて離間するベースジャッキと、を有することを特徴とする。
【0018】
請求項4に係る移動昇降式足場は、請求項1に係る移動昇降式足場において、前記左右一対の水平移動機構は、それぞれ作業床を有した水平移動体を備え、前記水平移動体の下部には、それぞれスライドレールが取り付けられ、前記スライドレールは、前記昇降機構の昇降部にスライド自在に支持されており、前記水平移動体が手動又は電動でスライド移動自在に構成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項5に係る移動昇降式足場は、請求項4に係る移動昇降式足場において、少なくとも前記作業床を支持する支持材は、絶縁処理が施されているか、又は絶縁材からなることを特徴とする。
【0020】
請求項6に係る移動昇降式足場は、請求項4に係る移動昇降式足場において、前記昇降機構は、メンテナンス作業を行わない時には、前記作業床が前記跨線橋の下面より上に上昇可能に構成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項7に係る移動昇降式足場は、請求項4に係る移動昇降式足場において、一対の前記水平移動体は、長手方向の端部同士が連結可能に構成され、各作業床間を互いに通行可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1~7に係る発明によれば、トロリー線との離間距離が小さく通常の足場が組めない跨線橋のメンテナンス作業にも使用でき、トロリー線などの架空線をかわして跨線橋の桁行方向の移動が容易で、メンテナンス作業中にも跨線橋の通行が可能で電車が運行しない夜間作業ごとの組み払しが必要なくなる。
【0023】
特に、請求項2に係る発明によれば、電動モーターでピニオンギアを回転駆動してラックが形成されたマストに沿って昇降するので、騒音等が少なく、静かに安全且つ確実に昇降させることができる。
【0024】
特に、請求項3に係る発明によれば、レール上を走行する車輪と、車輪を跨線橋の路面から持ち上げて離間するベースジャッキと、を有するので、人力で容易に移動させることができるとともに、昇降機構で昇降する際には、ベースジャッキで固定して安全に昇降させることができる。
【0025】
特に、請求項4に係る発明によれば、左右一対の水平移動機構は、それぞれ作業床を有した水平移動体を備え、前記水平移動体の下部には、それぞれスライドレールが取り付けられ、前記スライドレールは、前記昇降機構の昇降部にスライド自在に支持されており、前記水平移動体が手動又は電動でスライド移動自在に構成されているので、トロリー線と近接して通常の足場を組むことができない跨線橋上を移動して、複数のトロリー線の間に容易に移動昇降式足場を設置することが可能となる。
【0026】
特に、請求項5に係る発明によれば、作業床を支持する支持材は絶縁処理が施されているか又は絶縁材からなるので、残留電流によるスパークの問題を払拭して安全にメンテナンス作業を実施することができる。
【0027】
特に、請求項6に係る発明によれば、トロリー線との距離が近接した跨線橋であっても移動昇降式足場を完全に撤去しないでトロリー線に通電することが可能となり、夜間作業毎の設置作業の一部を省略して短時間でメンテナンス作業を実施することができる。
【0028】
特に、請求項7に係る発明によれば、前記一対の水平移動体は、長手方向の端部同士が連結可能に構成されているので、長手方向の一端が自由端となっている水平移動体の端部が連結でき強度的に安全性が向上する。また、請求項7に係る発明によれば、各作業床間を互いに通行可能となり、メンテナンス作業の作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の実施形態に係る移動昇降式足場の上部構成を主に示す見下げ斜視図である。
図2図2は、同上の移動昇降式足場の下部構造を主に示す見上げ斜視図である。
図3図3は、同上の移動昇降式足場の左右一対の下部移動機構を主に示す見下げ斜視図である。
図4図4は、同上の下部移動機構の車輪及びレールを主に示す部分拡大斜視図である。
図5図5は、同上の移動昇降式足場の昇降機構の門型フレームの上部を主に示す斜視図である。
図6図6は、同上の昇降機構の駆動部を主に示す見上げ斜視図である。
図7図7は、同上の昇降機構の昇降部を主に示す見下げ斜視図である。
図8図8は、同上の移動昇降式足場の一対の水平移動機構を歩道橋の下部に移動して互いに連結した状態を示す見上げ斜視図である。
図9図9は、同上の移動昇降式足場の設置位置の盛替え時の水平移動機構を外側に引き出した状態を示す見上げ斜視図である。
図10図10は、同上の移動昇降式足場を歩道橋に設置し、メンテナンス作業中に歩道を通行している状態を示す斜視図である。
図11図11は、同上の移動昇降式足場をトロリー線を挟んで両脇に2台設置した状態を示す斜視図である。
図12図12は、同上の移動昇降式足場とトロリー線との離間距離を示す斜視図である。
図13図13は、同上の移動昇降式足場を跨線橋の下面上方へ退避させた状態を示す斜視図である。
図14図14は、同上の移動昇降式足場の昇降機構で外灯を避けて横移動している状態を示す斜視図である。
図15図15は、同上の移動昇降式足場の資材搬入時の状態を示す斜視図である。
図16図16は、同上の移動昇降式足場の門型フレームの組立状態を示す斜視図である。
図17図17は、同上の門型フレームの組立完了状態を示す斜視図である。
図18図18は、同上の門型フレームに昇降部及び水平移動機構を接続する状況を示す斜視図である。
図19図19は、同上の移動昇降式足場の盛替え時の水平移動機構の引出し状況を示す斜視図である。
図20図20は、同上の移動昇降式足場の盛替え時の昇降機構の上昇状況を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る移動昇降式足場の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
[移動昇降式足場]
図1図9を用いて、本発明の実施形態に係る移動昇降式足場1について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る移動昇降式足場1の上部構成を主に示す見下げ斜視図であり、図2は、移動昇降式足場1の下部構造を主に示す見上げ斜視図である。
【0032】
本実施形態では、移動昇降式足場1を電車鉄道架線の上空に架設され、大電流が流れるトロリー線TLを含む架線が直接接続された跨線橋である歩道橋Pb(跨線橋:鋼構造物)のメンテナンス作業をするための足場として使用する場合を例示して説明する。図示形態では、トロリー線TLと歩道橋Pbとの間隔(鉛直離間距離)は、離間距離が小さく、単管足場、くさび式足場、枠組足場などの通常の足場を間に設置できない300mm程度を想定している。勿論、300mmの離間距離は、例示に過ぎない。
【0033】
なお、正面とは、歩道橋Pbを通行して電車の軌道及びトロリー線TLを横断・直交する方向に移動昇降式足場1を見た面を指している。また、メンテナンス作業とは、鋼構造物である跨線橋の防錆塗料の塗り直しなどの補修作業や補修作業を行うための保守点検作業を含む作業を指している(以下同じ)。
【0034】
本実施形態に係る移動昇降式足場1は、移動昇降式足場1全体の自重を支える正面視門型の門型フレーム2を基体とする足場である。また、移動昇降式足場1は、この門型フレーム2の下端に接合された歩道橋Pbの歩行面(歩道WW)上を走行する左右一対の下部移動機構3と、この下部移動機構3に支持されて門型フレーム2に沿って昇降動作を行う昇降機構4と、この昇降機構4に吊り下げ支持されて水平移動する水平移動機構5など、も備えている。なお、ここで左右とは、歩道橋Pbの歩道WWに沿って進んだ場合の歩道WWを挟んで外側となる左右を指しており、正面とは、この歩道に沿って移動昇降式足場1を見た場合の一面を指している(以下同じ)。
【0035】
(門型フレーム)
門型フレーム2は、図1図2に示すように、水平断面が矩形状となった複数の角形鋼管20が長手方向に接合された左右一対のマスト2a,2aと、後述の昇降機構4同士を接合する上下二段のビーム2b,2bなど、から構成されている。本実施形態に係るビーム2bは、鋼材が組み合わされたトラス構造のビームとなっている。勿論、上下二段のビームは、トラス構造のものに限られず、角形鋼管やH形鋼などの鋼材であってもよいことは云うまでもない。
【0036】
また、各マスト2aは、角形鋼管20の一面(図示形態では、歩道に対して外側となる外面)に後述の昇降機構4のピニオンギアと噛合うラック21が形成さており、駆動部41をマスト2aに沿ってガイドするガイドマストとなっている。勿論、本発明に係るマストは、複数の角形鋼管20が接合されたものに限られず、H形鋼などの昇降動作の際に作用する曲げ応力等に対抗可能な所定の強度有する他の鋼材等から構成されていてもよいことは云うまでもない。
【0037】
そして、マスト2aの角形鋼管20の長手方向の端部付近の外側面の四面には、それぞれ後述の下部移動機構3の接合ボルト32にボルト接合される接合ボックス22が突設されている。これらの接合ボルト32と接合ボックス22は、接合部材6を構成する。
【0038】
その上、マスト2aの上部には、前述の接合部材6と同等の接合部材23が取り付けられており、延長マスト2a’が接続可能に構成されている。このため、後述のように、マスト2aに延長マスト2a’を継ぎ足すことで、昇降機構4のガイド長さを延長して外灯OLなどの障害物をかわせるように構成されている(図13図14参照)。
【0039】
さらに、門型フレーム2は、ビーム2bの長さや幅等を跨線橋である歩道橋Pbの幅員に合わせて変更するだけで他の構成を変更せずに様々な幅員の跨線橋に対応可能となっており、部品点数を削減して移動昇降式足場1の設置コストを低減することができる。
【0040】
(下部移動機構)
次に、図3図4を用いて、移動昇降式足場1の下部移動機構3について説明する。図3は、本実施形態に係る移動昇降式足場1の左右一対の下部移動機構3,3を主に示す見下げ斜視図であり、図4は、下部移動機構3の車輪33及びレール36を主に示す水平方向に見た斜視図である。
【0041】
下部移動機構3は、門型フレーム2の左右一対のマスト2a,2aのそれぞれのマスト2aの下端に設けられる左右一対の機構である(図1図2参照)。また、下部移動機構3は、図3図4に示すように、溝形鋼や山形鋼などの鋼材が平面視長方形状に組み合わされたベースフレーム30を基体とする機構であり、このベースフレーム30の平面上の図芯(中心)付近に、それぞれのマスト2aに接合される接合部31が形成されている。
【0042】
このベースフレーム30は、通常のベースフレームより歩道橋Pbの歩道WWの幅方向が狭くなった長方形状となっており、歩道WW上を歩行する歩行者の通行を極力遮らない構成となっている。
【0043】
また、接合部31は、マスト2aの外形と同様の矩形状となっており、接合部31の外側面の四面には、それぞれ接合ボルト32が揺動自在に連結されている。このため、マスト2aの下端に下部移動機構3を設置し、接合ボルト32を起立させて、前述のマスト2aの接合ボックス22に掛け止めてナットを回して緊結するだけで、容易に短時間でマスト2aと下部移動機構3を接合することができる。
【0044】
その上、図4に示すように、下部移動機構3は、このベースフレーム30の下端の四隅に歩道橋Pb上を走行するための車輪であるキャスター33b(車輪33)が装着され、これらのキャスター33bで歩道橋Pbの歩行面上を走行可能に構成されている。また、ベースフレーム30の長手方向に端部には、歩道橋Pbの路面上に設置されたレール36上を走行するレール用車輪33a(車輪33)も装着されている。このように、下部移動機構3は、ベースフレーム30に設けられた車輪33(レール用車輪33a及びキャスター33b)で歩道橋Pbの路面上に設置されたレール36上及び歩道橋Pbの路面上を走行するので、レール36及び歩道橋Pbの歩行面に沿った横方向に人力で容易に移動させることが可能となっている。
【0045】
また、ベースフレーム30の長辺方向の端部には、ベースジャッキ34が装着されたジャッキボックス35がそれぞれ一対、計4個接合されている。移動昇降式足場1は、トロリー線TLの両脇までは、歩道橋Pbの歩道WW上に設置されたレール36上を下部移動機構3のレール用車輪33aで走行して移動させ、所定の位置まで移動した後は、ベースジャッキ34を回して車輪33(レール用車輪33a及びキャスター33b)を持ち上げて歩道WWから浮かせて離間させ、ベースジャッキ34で車輪33での移動を阻止して固定した状態で使用する。
【0046】
なお、図中の符号36は、資材搬送中に昇降機構4とベースフレーム30同士が互いに接触して損傷しないために設けるゴム材や発泡樹脂材などからなる緩衝材である。
【0047】
(昇降機構)
次に、図1図2図5図7を用いて、移動昇降式足場1の昇降機構4について説明する。図5は、移動昇降式足場1の昇降機構4の門型フレーム2の上部を主に示す斜視図である。また、図6は、昇降機構4の駆動部41を主に示す見上げ斜視図であり、図7は、昇降機構4の昇降部42を主に示す見下げ斜視図である。
【0048】
昇降機構4は、図1図2に示すように、前述の門型フレーム2を基体とし、各マスト2aにそれぞれ左右一対設けられている。これら左右一対の昇降機構4,4の各昇降機構4は、図5図7に示すように、ピニオンギアを回転駆動する電動モーター40を備えた駆動部41と、駆動部41に接続されて後述の作業床に昇降する昇降施設である昇降部42と、を備え、駆動部41で門型フレーム2のマスト2aに沿って上下動して昇降する機能を有する。
【0049】
駆動部41は、図5図7に示すように、電動モーター40を有し、この電動モーター40で図示しないピニオンギアを回転駆動させて、マスト2aに形成された前述のラック21にピニオンギアを噛み合わせてマスト2aに沿って昇降するための昇降機構4の主要機能を担う部位である。
【0050】
各駆動部41の上部には、歩道橋Pbから乗り込む昇降口としての機能と、昇降部42の上部と連通して昇降部42移動するための通路としての機能を担う上部ステージ43が設けられている。この上部ステージ43の周囲には、落下防止用の手摺44が設置されている。
【0051】
また、上部ステージ43の上方のマスト2aの周囲には、電動モーター40駆動中に作業員が上部ステージ43上で、誤ってラック21に接触しないようにするためのガードフェンス45も設けられている。なお、図中の符号46は、電動モーター40を制御するための制御盤46(操作盤)である。
【0052】
なお、昇降機構4は、図6に示すように、センサ等で歩道橋Pbの高欄Ph(手摺)を検知し、制御盤46により、歩道橋Pbの高欄Ph(手摺)と接触・干渉しない位置で自動で停止するように制御される。
【0053】
また、図7に示す出入口扉47は、電磁弁等により、施錠・開錠が自在となっており、不必要に上部ステージ43への部外者や作業員の乗り込みを禁止できるように構成されている。
【0054】
昇降部42は、前述の駆動部41に吊り下げ支持された鋼材等が組み合わされた角筒状の部位であり、上部ステージ43と水平移動機構5の作業床とを結ぶ上下方向に延びる昇降タラップ48を主体とする昇降施設である。
【0055】
この昇降部42は、大電流が流れるトロリー線TLに近接して設置される場合もあるので、絶縁処理が施されているか、又は絶縁材からなることが好ましい。残留電流によるスパークの問題を払拭して安全にメンテナンス作業を実施することができるからである。
【0056】
なお、工事の規準としては、高圧・特別高圧設備に関わる工事等は、その作業の範囲にある充電電路を全て停電して行うことを基本とするとされていることから、トロリー線に近接して行う工事は、キ電停止状態で行っている。この例外として、最低離隔距離をとるとキ電停止せずに工事を行うことができることとなっている。規準では最低離隔距離は、在来線の直流1500Vで1.2m(1200mm)であり、離隔距離の特例としては、重機が移動式クレーン等以外でリミッター等の防護を完全に行う場合は、離隔を0.5mまで減ずることができるとされている。しかし、残留電流によるスパークの問題もあり、極めて危険であることから、電路を全て停電して最低離隔を0.5mとして工事を行っているのが現状である。このため、跨線橋のメンテナンス作業は、夜間キ電停止状態でトロリー線TLとの離間距離を500mmとって行っている。
【0057】
また、絶縁処理とは、導電性が高い基材に導電性が限りなく低い皮膜を形成して絶縁することを指してる。具体的には、鋼材などの金属材にアルミナなどのセラミックを溶射するセラミック溶射を挙げることができる。その他の絶縁処理としては、粉体塗料を静電気で被塗物に付着させた後、高温加熱して塗膜を作る「静電粉体塗装」などが挙げられる。
【0058】
また、昇降部42の昇降タラップ48の下端部には、後述の水平移動機構5の作業床のスライドレールをスライド自在に支持するレール支持材49が取り付けられている(図8図9参照)。
【0059】
(水平移動機構)
次に、図8図9を用いて、移動昇降式足場1の水平移動機構5について説明する。図8は、移動昇降式足場1の一対の水平移動機構5を歩道橋Pbの下方に移動して互いに連結した状態を示す見上げ斜視図であり、図9は、移動昇降式足場1の設置位置からの盛替え時に水平移動機構5を外側に引き出した状態を示す見上げ斜視図である。
【0060】
水平移動機構5は、前述の昇降機構4の昇降部42に支持された左右対称の一対の機構であり、それぞれ歩道橋Pbの歩行進路に対して直交する方向(幅方向)に水平移動する作業床50を有した水平移動体51を備えている。
【0061】
この作業床50及び水平移動体51は、長手方向の長さが3m程度の平面視長方形状となったメンテナンス作業用の足場であり、作業床50の周りには、落下防止用の二段の手摺52と、資材落下防止用の巾木53が設置されている。
【0062】
また、この水平移動体51の下部には、それぞれアルミニウム製のスライドレール54が取り付けられ、このスライドレール54が昇降機構4の昇降部42のレール支持材49にスライド自在に支持されている。このため、水平移動体51は、手動又は電動で昇降部42に対してスライド移動自在となっており、後述のように、夜間のメンテナンス作業時にトロリー線TLの脇に作業床50を有した水平移動体51を設置することができる。また、必要に応じて、トロリー線TLから1200mm以上の離隔距離をとるために、水平移動体51を歩道橋Pbの下面より上方に退避することができるようになっている(図13参照)。
【0063】
そして、図2図8図11に示すように、一対の水平移動体51同士は、作業床を有した連結部55で長手方向の端部同士が連結可能となっており、連結部55を介して各作業床50間を互いに通行可能に構成されている。また、水平移動機構5も、門型フレーム2のビーム2bと同様に、連結部55の長さを歩道橋Pbの幅員に合わせて変更するだけで他の構成を変更せずに様々な幅員の跨線橋に対応可能となっており、部品点数を削減して移動昇降式足場1の設置コストを低減することができる。
【0064】
なお、この連結部55は、専用の部材を取り付けるのではなく、離間した作業床50と作業床50との間に、足場板(例えば、木製の足場板)を架け渡して、手摺52と手摺52との間をロープ等で連結するだけでも構わない。作業床50間の通行が可能で落下防止施設も設置できているからである。
【0065】
[移動昇降式足場の使用方法]
次に、図10図20を用いて、本発明の実施形態に係る移動昇降式足場1の使用方法について説明する。移動昇降式足場1を電車鉄道架線の上空に架設され、大電流が流れるトロリー線TLを含む架線が直接接続された歩道橋Pb(鋼構造物)を補修するための足場として使用する場合を例示して説明する。図10は、移動昇降式足場1を歩道橋Pbに設置し、メンテナンス作業中に歩道WWを通行人が自転車で通行している状態を示す斜視図であり、図11は、トロリー線TL周りのメンテナンス作業を行う際に、2台の移動昇降式足場1,1をトロリー線TLを挟んで両脇に2台設置した状態を示す斜視図である。また、図12は、移動昇降式足場1とトロリー線との離間距離を示す斜視図である。
【0066】
(作業時)
トロリー線TLの上空に架設された跨線橋として例示する歩道橋Pbの防錆塗料の塗り直しや保守点検作業など定期的なメンテナンス作業を行う際は、図10図12に示すように、電車が通行しない夜間等にキ電を停止して、トロリー線TLに通電されていない状態で移動昇降式足場1の水平移動機構5同士を歩道橋Pbの下面下で連結して使用する。
【0067】
トロリー線TLの近傍でない部分のメンテナンス作業を行う場合は、図10に示すように、移動昇降式足場1をそれぞれ単独で使用し、歩道WWから作業員が上部ステージ43に乗り込んで、昇降タラップ48を用いて下降し、水平移動機構5の作業床50まで移動してメンテナンス作業を行う。
【0068】
また、昼間のトロリー線TLに通電して電車が通行する際は、基本的にメンテナンス作業は行わないが、後述のように、トロリー線TLから半径500mm以内の範囲から移動昇降式足場1を退避させるだけで、従来の足場のように夜間作業時間内に解体撤去する必要がない。また、必要に応じて、トロリー線TLから1200mm以上の離隔距離をとる場合、図13に示すように、移動昇降式足場1の水平移動機構5の作業床50及び水平移動体51を歩道橋Pbの下面上方へ退避させることができる。移動昇降式足場1を完全に移動しないでトロリー線TLに通電することが可能となり、夜間作業毎の設置作業の一部を省略して短時間でメンテナンス作業を実施することができる。図13は、移動昇降式足場1を歩道橋Pbの下面上方へ退避させた状態を示す斜視図である。
【0069】
このとき、図10に示すように、移動昇降式足場1は、ツインマストである左右一対のマスト2aをビーム2b連結して剛性を高めた門型形式の門型フレーム2を基体とした足場であるため、移動昇降式足場1が歩道橋Pbに設置されている状態でも高さ3m以上の空間を確保することができる。換言すると、ビーム2bは、昇降機構4が最低高さにある状態でも歩道橋Pbの歩道WWの路面上を人が通行可能な高さに架け渡されている。このため、夜間の移動昇降式足場1を使用してメンテナンス作業を行う際も自転車や歩行者の通行を妨げることがない。また、昼間の列車運行時でも移動昇降式足場1を歩道橋Pbの端に退避させるだけで歩道橋Pbから移動昇降式足場1を完全に払して撤去する必要がなくなる。よって、従来のように、夜間のメンテナンス作業毎の仮設足場の組み払しが必要なくなる。
【0070】
(組立時)
図15図18を用いて、移動昇降式足場1を歩道橋Pb上に組み立てる手順について説明する。図15は、移動昇降式足場1の資材搬入時の状態を示す斜視図である。また、図16は、門型フレーム2の組立状態を示す斜視図であり、図17は、門型フレーム2の組立完了状態を示す斜視図である。そして、図18は、門型フレーム2に昇降部42及び水平移動機構5を接続する状況を示す斜視図である。
【0071】
図15に示すように、先ず、移動昇降式足場1の資材は、前述の下部移動機構3の上にマスト2aの一段目の角形鋼管20が連結され、昇降機構4の電動モーター40を備えた駆動部41が一段目の角形鋼管20に装着された状態でクレーンCL等を用いて搬入する。
【0072】
その後、図16に示すように、一段目の角形鋼管20の上に、二段目の角形鋼管20,三段目の角形鋼管20と順次接続してマスト2a及び延長マスト2a’まで延設するとともに、一対のマスト2a,2aに装着した一対の昇降機構4,4の駆動部41,41間を上下二段のビーム2b,2bで連結して門型フレーム2を構築する。また、同時にガードフェンス45も取り付けていく。なお、角形鋼管20同士の接合は、前述の接合部材6で接合する。
【0073】
そして、図17に示すように、下部移動機構3のキャスター33bを用いて、駆動部41が装着された門型フレーム2を回転させて、門型フレーム2のビーム2bが歩道WWの進行方向と直交する状態にして、移動昇降式足場1を所定の位置に固定する。この作業と同時並行に、歩道WWの脇となる歩道橋Pbの両縁沿いに左右一対のレール36設置し、これらのレール36上に下部移動機構3のレール用車輪33aを載置する(図3図4参照)。
【0074】
その後、図18に示すように、駆動部41が装着された門型フレーム2の駆動部41に、昇降機構4の昇降部42及び昇降部42に装着された水平移動機構5を連結する。
【0075】
次に、図2に示すように、移動昇降式足場1は、水平移動機構5を図の矢印方向の内側へ水平移動させて左右一対の水平移動機構5同士を前述の連結部55で連結して設置が完了する。このように、移動昇降式足場1は、自由端となっている水平移動機構5及び水平移動体51の端部が連結でき強度的に安全性が向上する。また、移動昇降式足場1は、左右一対の水平移動機構5同士が連結部55で連結されて各作業床50間を互いに通行可能となっており、メンテナンス作業の作業効率が向上する。
【0076】
(盛替え時)
次に、図19図20を用いて、移動昇降式足場1を横移動して設置位置を盛り替える場合について説明する。図19は、移動昇降式足場1の盛替え時の水平移動機構5の引出し状況を示す斜視図であり、図20は、移動昇降式足場1の盛替え時の昇降機構4の上昇状況を示す斜視図である。
【0077】
移動昇降式足場1を横移動して設置位置を盛り替える場合には、トロリー線TLを避けて横移動する必要がある(図11図12参照)。そこで、移動昇降式足場1は、図19に示すように、図2の移動昇降式足場1のメンテナンス作業時の設置位置から歩道橋Pbの歩道WWの進行方向に沿って横移動して設置位置を盛り替える場合には、先ず、前述のように、スライドレール54を用いて水平移動機構5を電動又は手動でスライド移動させて図の矢印方向の外側へ水平移動機構5を引き出す。
【0078】
その後、図20に示すように、昇降機構4の電動モーター40でピニオンギアを回転駆動し、マスト2aに形成されたラック21にピニオンギアを噛み合わせてマスト2a(門型フレーム2)に沿って昇降機構4及び水平移動機構5を上昇させる。具体的には、水平移動機構5の下端である作業床50の下面が歩道橋Pbの下面を超えて上方に到達するまで上昇させる。
【0079】
そして、人力で移動昇降式足場1を押して歩道橋Pbの歩道WW上を下部移動機構3の車輪33で走行させて図の矢印方向に移動昇降式足場1全体を横移動して所定の位置まで移動させて設置位置を盛り替える。
【0080】
また、昼間の電車運行時などのメンテナンス作業を行わない時には、移動昇降式足場1を線路から離して歩道橋Pbの端に寄せた上、盛替え時と同様に、水平移動機構5の下端である作業床50の下面が歩道橋Pbの下面より上方に位置するように保持して退避させることも可能である。移動昇降式足場1をこのような状態に保持することにより、列車の運行時でも歩道橋Pbから移動昇降式足場1を完全に払して撤去する必要がなくなるからである。このため、電車が通行しない夜間の限られた短時間に仮設足場の設置、メンテナンス作業、仮設足場の撤去までを行う必要がなく、電車が通行しない時間を殆ど全てメンテナンス作業にあてることができる。
【0081】
その上、図10に示したように、移動昇降式足場1は、ツインマストである左右一対のマスト2aをビーム2bに連結して剛性を高めた門型形式の門型フレーム2を基体とした足場であるため、移動昇降式足場1が歩道橋Pbに設置されている状態でも人や自転車が通行可能な高さ3m以上の空間を確保することができる。このため、昼間の移動昇降式足場1をトロリー線TLから退避させた状態でも、自転車や歩行者の通行を妨げることがない。よって、従来のように、夜間のメンテナンス作業毎の仮設足場の組み払しが必要なくなる。
【0082】
以上説明した本実施形態に係る移動昇降式足場1によれば、トロリー線と跨線橋との離隔距離が充分取れない跨線橋のメンテナンス作業にも使用でき、電車が通行する日中にも移動昇降式足場1を完全に撤去する必要がなくなり、電車が通行しない夜間作業ごとの組み払しが必要なくなる。
【0083】
また、移動昇降式足場1によれば、歩道WWの脇となる歩道橋Pbの両縁沿いに設置されたレール36上を走行するレール用車輪33aと、レール用車輪33aを歩道橋Pbの歩道WWから持ち上げて離間させるベースジャッキ34と、を有するので、歩道橋Pb上を人力で移動昇降式足場1を容易に移動させて、複数のトロリー線TLの間に移動昇降式足場1を設置することが可能となる。
【0084】
その上、移動昇降式足場1によれば、スライドレール54が昇降機構4の昇降部42のレール支持材49にスライド自在に支持されているので、水平移動体51が手動又は電動で昇降部42に対してスライド移動自在となっている。このため、夜間のメンテナンス作業時にトロリー線TLの脇に作業床50を有した水平移動体51を設置することができるとともに、昼間の電車運行時には、水平移動体51を歩道橋Pbの下面より上方に持ち上げ、移動昇降式足場1を撤去することなく容易に退避させることができるようになっている。
【0085】
さらに、移動昇降式足場1によれば、一対の水平移動体51同士が、作業床を有した連結部55で長手方向の端部同士が連結可能となっているので、長手方向の一端が自由端となっている水平移動体51の端部同士を連結でき強度的に安全性が向上する。その上、移動昇降式足場1によれば、一対の水平移動体51の作業床50同士が連結部55を介して互いに通行可能に構成されているので、メンテナンス作業の作業効率が向上する。
【0086】
以上、本発明の実施形態に係る移動昇降式足場1について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。特に、トロリー線との距離が近接した構造物として歩道橋を例示して説明したが、自転車用陸橋や自動車用の陸橋などの他の構造物にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1:移動昇降式足場
2:門型フレーム
2a:マスト
2a’:延長マスト
2b:ビーム
20:角形鋼管
21:ラック
22:接合ボックス
23:接合部材
3:下部移動機構
30:ベースフレーム
31:接合部
32:接合ボルト
33:車輪
33a:レール用車輪(車輪)
33b:キャスター(車輪)
34:ベースジャッキ
35:ジャッキボックス
36:レール
4:昇降機構
40:電動モーター
41:駆動部
42:昇降部
43:上部ステージ
44:手摺
45:ガードフェンス
46:制御盤
47:出入口扉
48:昇降タラップ
49:レール支持材
5:水平移動機構
50:作業床
51:水平移動体
52:手摺
53:巾木
54:スライドレール
55:連結部
6:接合部材
Pb:歩道橋(構造物)
Ph:高欄
WW:歩道
OL:外灯(障害物)
TL:トロリー線
CL:クレーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図20