(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036243
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】雄型面ファスナ機能性布帛、雌型面ファスナ機能性布帛、雄雌一対の面ファスナ、及び、雄型面ファスナ機能性布帛、雌型面ファスナ機能性布帛の製造方法
(51)【国際特許分類】
A44B 18/00 20060101AFI20240308BHJP
D04B 1/02 20060101ALI20240308BHJP
D04B 21/02 20060101ALI20240308BHJP
D03D 27/00 20060101ALI20240308BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20240308BHJP
D03D 15/20 20210101ALI20240308BHJP
D03D 11/00 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
A44B18/00
D04B1/02
D04B21/02
D03D27/00 Z
D03D1/00 Z
D03D15/20 200
D03D11/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141070
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】510045438
【氏名又は名称】TBカワシマ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596064846
【氏名又は名称】井上リボン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150153
【弁理士】
【氏名又は名称】堀家 和博
(74)【代理人】
【識別番号】100081891
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 玄
(72)【発明者】
【氏名】井上 精二
(72)【発明者】
【氏名】板村 ももか
【テーマコード(参考)】
3B100
4L002
4L048
【Fターム(参考)】
3B100DA03
3B100DB00
3B100DB01
3B100DB08
4L002AA06
4L002AA07
4L002AB02
4L002AC04
4L002AC07
4L002BB01
4L002BB04
4L002CB01
4L002CB03
4L002DA00
4L002EA00
4L002FA06
4L048AA20
4L048AA24
4L048AA34
4L048AB07
4L048AB11
4L048AB21
4L048AC19
4L048BA09
4L048BA23
4L048BA24
4L048BA29
4L048BA30
4L048DA01
4L048DA24
(57)【要約】
【課題】雄パイル繊維の先端側に返し部を形成する等して「意匠性の向上」や「剥離強度の向上」などを実現する。
【解決手段】雄型布帛1は、雄パイル繊維2の先端側に返し部3が形成されている。雌型布帛10は、雌パイル繊維12がループパイルで捲縮し、複数の雌パイル繊維12が互いに絡み合ったウェブ状の雌パイル層12’が形成されている。雄型布帛1と雌型布帛10から成る雄雌一対の面ファスナ20は、雌パイル繊維12の直径が、雄パイル繊維2の返し部3の長さ以下である。雄型布帛1の製造方法は、返し形成工程S1で雄パイル繊維2の先端側に返し部3を設ける。雌型布帛10の製造方法は、溶解性繊維Yを含む一方の生地15と溶解性繊維Yを含まない他方の生地16の間を経パイル糸で連結する織成工程S11と、その後に、一方の生地15の溶解性繊維Yを溶解して雌パイル繊維12のループパイルを形成する溶解工程S12を備える。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄パイル繊維を少なくとも一方の面に有した雄型面ファスナ機能性布帛であって、
前記雄パイル繊維は、単繊維繊度が0.1dtex以上15.0dtex以下の熱可塑性繊維であり、
前記雄パイル繊維の先端側に、前記雄パイル繊維の長さ方向との成す角が90°未満である返し部が形成されていることを特徴とする雄型面ファスナ機能性布帛。
【請求項2】
前記返し部の長さは、0.1μm以上40.0μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の雄型面ファスナ機能性布帛。
【請求項3】
当該雄型面ファスナ機能性布帛は、経パイル織物であり、
前記雄パイル繊維は、カットパイルであり、
前記雄パイル繊維の経パイル密度は、100000本/25.4mm以上300000本/25.4mm以下であり、
前記雄パイル繊維のパイル高さは、0.1mm以上5.0mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の雄型面ファスナ機能性布帛。
【請求項4】
雌パイル繊維を少なくとも一方の面に有した雌型面ファスナ機能性布帛であって、
前記雌パイル繊維は、単繊維繊度が0.001dtex以上5.000dtex以下の熱可塑性繊維であり、
前記雌パイル繊維は、ループパイルであり、JIS-L-0208:2006の244に準じる捲縮を有し、
複数の前記雌パイル繊維が互いに絡み合ったウェブ状の雌パイル層が形成されていることを特徴とする雌型面ファスナ機能性布帛。
【請求項5】
前記雌パイル繊維は、JIS-L-1015:2010の8.12.2に準じる捲縮率が10%以上100%以下であることを特徴とする請求項4に記載の雌型面ファスナ機能性布帛。
【請求項6】
当該雌型面ファスナ機能性布帛は、経パイル織物であり、
前記雌パイル繊維のパイル密度は、100000本/(25.4mm)2以上400000本/(25.4mm)2以下であり、
前記雌パイル層の厚さは、0.1mm以上5.0mm以下であることを特徴とする請求項4又は5に記載の雌型面ファスナ機能性布帛。
【請求項7】
雄パイル繊維を少なくとも一方の面に有した雄型面ファスナ機能性布帛と、雌パイル繊維を少なくとも一方の面に有した雌型面ファスナ機能性布帛を備えている雄雌一対の面ファスナであって、
前記雄パイル繊維は、単繊維繊度が0.1dtex以上15.0dtex以下の熱可塑性繊維であり、
前記雄パイル繊維の先端側に、前記雄パイル繊維の長さ方向との成す角が90°未満である返し部が形成されていて、
前記雌パイル繊維は、単繊維繊度が0.001dtex以上5.000dtex以下の熱可塑性繊維であり、
前記雌パイル繊維は、ループパイルであり、JIS-L-0208:2006の244に準じる捲縮を有し、
複数の前記雌パイル繊維が互いに絡み合ったウェブ状の雌パイル層が形成されていて、
前記雌パイル繊維と、前記雄パイル繊維が係合し、
前記雌パイル繊維の直径の値は、前記雄パイル繊維の返し部の長さの値以下であることを特徴とする雄雌一対の面ファスナ。
【請求項8】
雄パイル繊維を少なくとも一方の面に有した雄型面ファスナ機能性布帛の製造方法であって、
前記雄パイル繊維は、単繊維繊度が0.1dtex以上15.0dtex以下の熱可塑性繊維であり、
前記雄パイル繊維の先端側に、前記雄パイル繊維の長さ方向との成す角が90°未満である返し部を形成する返し形成工程を備えていることを特徴とする雄型面ファスナ機能性布帛の製造方法。
【請求項9】
雌パイル繊維を少なくとも一方の面に有した雌型面ファスナ機能性布帛の製造方法であって、
前記雌パイル繊維は、単繊維繊度が0.001dtex以上5.000dtex以下の熱可塑性繊維であり、
前記雌パイル繊維は、ループパイルであり、JIS-L-0208:2006の244に準じる捲縮を有し、
複数の前記雌パイル繊維が互いに絡み合ったウェブ状の雌パイル層が形成されていて、
前記雌型面ファスナ機能性布帛は、経パイル織物であり、
溶解性繊維を含む一方の生地と、溶解性繊維を含まない他方の生地との間を、経パイル糸で連結して、二重織物を織成する織成工程と、
前記織成工程の後に、前記二重織物の一方の生地における溶解性繊維を溶解して、前記雌パイル繊維であるループパイルを形成する溶解工程を備えていることを特徴とする雌型面ファスナ機能性布帛の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄型面ファスナ機能性布帛、雌型面ファスナ機能性布帛、雄雌一対の面ファスナ、及び、雄型面ファスナ機能性布帛、雌型面ファスナ機能性布帛の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雄側であるフック面ファスナが知られている(特許文献1)。
このフック面ファスナは、経糸、緯糸およびフック状係合素子用糸からなる平織組織の織物基布及び該織物基布の表面に多数存在する該フック状係合素子用糸からなるフック状係合素子を含む織物系フック面ファスナであって、経糸、緯糸およびフック状係合素子用糸が、それぞれ、ポリエステル系樹脂からなり、フック状係合素子用糸が経糸に平行に織物基布に織り込まれており、以下の条件(1)~(5)を満足している織物系フック面ファスナである。
(1)経糸が仮撚加工糸であること、
(2)緯糸が、低融点樹脂を鞘成分、高融点樹脂を芯成分とする芯鞘型フィラメントからなるマルチフィラメント糸であって、フック状係合素子の根元が低融点樹脂に融着し、これにより織物基布に固定されていること、
(3)フック状係合素子用糸が200~400dtexのモノフィラメント糸であること、
(4)フック状係合素子用糸が緯糸3本を浮沈した後に織物基布上に浮き上がり、浮き上がった箇所でフック状係合素子を形成していること、
(5)織物基布の裏面にはバックコート用接着剤層が存在していないこと。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたフック面ファスナは、フック状係合素子用糸が200~400dtexの非常に太い繊維となっているため、使用者がフック状係合素子を肉眼で視認でき、衣服であったり、自動車のカーシートの表皮材や内装材などとして使用した際、そのデザイン等の制約となり、意匠性が劣る。
又、
図17のように、ただ単に細い雄側係合糸を使用し、当該雄側係合糸の先端に溶融塊を形成して、雄側の面ファスナとしても、雄側係合糸の長さ方向との成す角が90°以上の溶融塊であれば、雌側の面ファスナとの係合がすぐに外れてしまうため、十分な剥離強度を発揮できない。
【0005】
本発明は、このような点に鑑み、雄パイル繊維の先端側に返し部を形成する等によって、「意匠性の向上」や「剥離強度の向上」などを実現する雄型面ファスナ機能性布帛、雌型面ファスナ機能性布帛、雄雌一対の面ファスナ、及び、雄型面ファスナ機能性布帛、雌型面ファスナ機能性布帛の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る雄型面ファスナ機能性布帛1は、雄パイル繊維を少なくとも一方の面に有した雄型面ファスナ機能性布帛であって、前記雄パイル繊維は、単繊維繊度が0.1dtex以上15.0dtex以下の熱可塑性繊維であり、前記雄パイル繊維の先端側に、前記雄パイル繊維の長さ方向との成す角が90°未満である返し部が形成されていることを第1の特徴とする。
【0007】
本発明に係る雄型面ファスナ機能性布帛1の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、前記返し部の長さは、0.1μm以上40.0μm以下である点にある。
【0008】
本発明に係る雄型面ファスナ機能性布帛1の第3の特徴は、上記第1又は2の特徴に加えて、当該雄型面ファスナ機能性布帛は、経パイル織物であり、前記雄パイル繊維は、カットパイルであり、前記雄パイル繊維の経パイル密度は、100000本/25.4mm以上300000本/25.4mm以下であり、前記雄パイル繊維のパイル高さは、0.1mm以上5.0mm以下である点にある。
【0009】
図1~4に示すように、これらの特徴により、雄パイル繊維2を、単繊維繊度が0.1dtex以上15.0dtex以下の細い繊維とすることによって、特許文献1とは異なり、細い雄パイル繊維2の先端側の返し部3は更に小さいため、使用者が返し部3を肉眼で視認できず、衣服や、自動車のカーシートの表皮材、内装材などとして使用しても、そのデザイン等の制約にはならず、意匠性が向上する。
そして、
図1~4に示すように、このように肉眼で視認できない返し部3を、雄パイル繊維2の長さ方向との成す角が90°未満とすることによって、雄パイル繊維の長さ方向との成す角が90°以上の溶融塊などと比べて、様々な雌型の面ファスナ機能性布帛の雌パイル繊維に対して係合が外れ難くなるため、より強い剥離強度を発揮できると言える。
【0010】
又、返し部3の長さ3Lを0.1μm以上とすることによって、雌型の面ファスナ機能性布帛における様々な太さの雌パイル繊維に対しても「剥離強度の向上」を図れると同時に、返し部3の長さ3Lを40.0μm以下とすることよって、返し部3が長過ぎて当該返し部3が撓ったり(しなったり)、隣接する雄パイル繊維2同士が溶着して、かえって剥離強度が下がることを抑制できる。
【0011】
更に、経パイル織物である雄型面ファスナ機能性布帛1に雄パイル繊維2を、カットパイルで、経パイル密度100000本/25.4mm以上300000本/25.4mm以下、パイル高さ0.1mm以上5.0mm以下とすることによって、雌型の面ファスナ機能性布帛に対する係合箇所が増え、更なる「剥離強度の向上」を図れる。
【0012】
本発明に係る雌型面ファスナ機能性布帛10は、雌パイル繊維を少なくとも一方の面に有した雌型面ファスナ機能性布帛であって、前記雌パイル繊維は、単繊維繊度が0.001dtex以上5.000dtex以下の熱可塑性繊維であり、前記雌パイル繊維は、ループパイルであり、JIS-L-0208:2006の244に準じる捲縮を有し、複数の前記雌パイル繊維が互いに絡み合ったウェブ状の雌パイル層が形成されていることを第1の特徴とする。
【0013】
本発明に係る雌型面ファスナ機能性布帛10の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、前記雌パイル繊維は、JIS-L-1015:2010の8.12.2に準じる捲縮率が10%以上100%以下である点にある。
【0014】
本発明に係る雌型面ファスナ機能性布帛10の第3の特徴は、上記第1又は2の特徴に加えて、当該雌型面ファスナ機能性布帛は、経パイル織物であり、前記雌パイル繊維のパイル密度は、100000本/(25.4mm)2以上400000本/(25.4mm)2以下であり、前記雌パイル層の厚さは、0.1mm以上5.0mm以下である点にある。
【0015】
図5~7に示すように、これらの特徴により、雌パイル繊維12を、単繊維繊度が0.001dtex以上5.000dtex以下の非常に細い繊維とすることによって、特許文献1とは異なり、使用者が、雄型の面ファスナ機能性布帛との係合箇所を肉眼で視認できず、衣服や、自動車のカーシートの表皮材、内装材などとして使用しても、そのデザイン等の制約にはならず、意匠性が向上する。
そして、
図5~7に示すように、雌パイル繊維12のループパイルを捲縮させることによって、複数の雌パイル繊維12が互いに絡み合ってウェブ状の雌パイル層12’を設けることが出来、たとえ雄型の面ファスナ機能性布帛に、雄パイル繊維の長さ方向との成す角が90°以上の溶融塊が形成されていても、ループパイルの先端だけでなく、ループパイルの長さ方向中途部や、複数の雌パイル繊維12の互いに絡み合った部分も係合箇所となって(謂わば、嵩高性のある雌パイル層12’となって)、係合箇所の数が増えるため、様々な雄型の面ファスナ機能性布帛に対しても、より強い剥離強度を発揮できると言える。
【0016】
又、雌パイル繊維12の捲縮率を10%以上100%以下とすることで、ループパイルの長さ方向中途部や、複数の雌パイル繊維12の互いに絡み合った部分の係合箇所を更に増やして、十分な剥離強度を発揮できる。
【0017】
更に、経パイル織物である雌型面ファスナ機能性布帛10を、雌パイル繊維12のパイル密度を100000本/(25.4mm)2以上400000本/(25.4mm)2以下、雌パイル層12’の厚さを0.1mm以上5.0mm以下とすることによって、雄型の面ファスナ機能性布帛に対する係合箇所が増え、更なる「剥離強度の向上」を図れる。
【0018】
本発明に係る雄雌一対の面ファスナ20は、雄パイル繊維を少なくとも一方の面に有した雄型面ファスナ機能性布帛と、雌パイル繊維を少なくとも一方の面に有した雌型面ファスナ機能性布帛を備えている雄雌一対の面ファスナであって、前記雄パイル繊維は、単繊維繊度が0.1dtex以上15.0dtex以下の熱可塑性繊維であり、前記雄パイル繊維の先端側に、前記雄パイル繊維の長さ方向との成す角が90°未満である返し部が形成されていて、前記雌パイル繊維は、単繊維繊度が0.001dtex以上5.000dtex以下の熱可塑性繊維であり、前記雌パイル繊維は、ループパイルであり、JIS-L-0208:2006の244に準じる捲縮を有し、複数の前記雌パイル繊維が互いに絡み合ったウェブ状の雌パイル層が形成されていて、前記雌パイル繊維と、前記雄パイル繊維が係合し、前記雌パイル繊維の直径の値は、前記雄パイル繊維の返し部の長さの値以下であることを第1の特徴とする。
【0019】
図1~12に示すように、この特徴により、上述したように、雄パイル繊維2や雌パイル繊維12を細い繊維とすることによって、特許文献1とは異なり、細い雄パイル繊維2の先端の更に小さい返し部3、そして、雌パイル繊維12における雄型の面ファスナ機能性布帛との係合箇所を、使用者が肉眼で視認できず、衣服や、自動車のカーシートの表皮材、内装材などとして使用しても、そのデザイン等の制約にはならず、意匠性が向上する。
そして、
図1~12に示すように、このように肉眼で視認できない返し部3を、雄パイル繊維2の長さ方向との成す角が90°未満とすることによって、雌型面ファスナ機能性布帛1の雌パイル繊維2に対して係合が外れ難くなり、又、雌パイル繊維12のループパイルを捲縮させることによって、複数の雌パイル繊維12が互いに絡み合ってウェブ状の雌パイル層12’を設けることが出来、特許文献1とは異なり、ループパイルの先端だけでなく、ループパイルの長さ方向中途部や、複数の雌パイル繊維12の互いに絡み合った部分も係合箇所となって、係合箇所の数が増え、更に、雌パイル繊維12の直径12φを、雄パイル繊維2の返し部3の長さ3L以下とすることによって、雄型と雌型の相性が良くなり、より強い剥離強度を発揮できると言える。
【0020】
本発明に係る雄型面ファスナ機能性布帛1の製造方法は、雄パイル繊維を少なくとも一方の面に有した雄型面ファスナ機能性布帛の製造方法であって、前記雄パイル繊維は、単繊維繊度が0.1dtex以上15.0dtex以下の熱可塑性繊維であり、前記雄パイル繊維の先端側に、前記雄パイル繊維の長さ方向との成す角が90°未満である返し部を形成する返し形成工程を備えていることを第1の特徴とする。
【0021】
図1~4、13、14に示すように、この特徴により、雄パイル繊維2を、単繊維繊度が0.1dtex以上15.0dtex以下の細い繊維とすることによって、特許文献1とは異なり、細い雄パイル繊維2の先端側の返し部3は更に小さいため、使用者が返し部3を肉眼で視認できず、衣服や、自動車のカーシートの表皮材、内装材などとして使用しても、そのデザイン等の制約にはならず、意匠性が向上する。
そして、
図1~4、13、14に示すように、このように肉眼で視認できない返し部3を、返し形成工程S1で、雄パイル繊維2の長さ方向との成す角が90°未満とすることによって、雄パイル繊維の長さ方向との成す角が90°以上の溶融塊と比べて、様々な雌型の面ファスナ機能性布帛の雌パイル繊維に対して係合が外れ難くなるため、より強い剥離強度を発揮できる。
【0022】
本発明に係る雌型面ファスナ機能性布帛10の製造方法は、雌パイル繊維を少なくとも一方の面に有した雌型面ファスナ機能性布帛の製造方法であって、前記雌パイル繊維は、単繊維繊度が0.001dtex以上5.000dtex以下の熱可塑性繊維であり、前記雌パイル繊維は、ループパイルであり、JIS-L-0208:2006の244に準じる捲縮を有し、複数の前記雌パイル繊維が互いに絡み合ったウェブ状の雌パイル層が形成されていて、前記雌型面ファスナ機能性布帛は、経パイル織物であり、溶解性繊維を含む一方の生地と、溶解性繊維を含まない他方の生地との間を、経パイル糸で連結して、二重織物を織成する織成工程と、前記織成工程の後に、前記二重織物の一方の生地における溶解性繊維を溶解して、前記雌パイル繊維であるループパイルを形成する溶解工程を備えていることを第1の特徴とする。
【0023】
図5~7、15、16に示すように、この特徴により、雌パイル繊維12を、単繊維繊度が0.001dtex以上5.000dtex以下の非常に細い繊維とすることによって、特許文献1とは異なり、使用者が、雄型の面ファスナ機能性布帛との係合箇所を肉眼で視認できず、衣服や、自動車のカーシートの表皮材、内装材などとして使用しても、そのデザイン等の制約にはならず、意匠性が向上する。
そして、
図5~7、15、16に示すように、雌パイル繊維12のループパイルを捲縮させることによって、複数の雌パイル繊維12が互いに絡み合ってウェブ状の雌パイル層12’を設けることが出来、たとえ雄型の面ファスナ機能性布帛に、雄パイル繊維の長さ方向との成す角が90°以上の溶融塊が形成されていても、ループパイルの先端だけでなく、ループパイルの長さ方向中途部や、複数の雌パイル繊維12の互いに絡み合った部分も係合箇所となって、係合箇所の数が増えるため、様々な雄型の面ファスナ機能性布帛に対しても、より強い剥離強度を発揮できると言える。
尚、織成工程S11と溶解工程S12を備えた場合においては、織成工程S11では、雌パイル繊維12となる経パイル糸がほぼ立設しているものの、溶解工程S12後には、雌パイル繊維12であるループパイルがランダムに倒れる(織成工程S11時における一方の生地15と他方の生地16間の距離より、ループパイルのパイル高さが低くなる)ため、複数の雌パイル繊維12が互いに絡み合い易くなって、より嵩高性が高い雌パイル層12’を形成でき、雄型の面ファスナ機能性布帛に対する係合箇所が増え、更なる「剥離強度の向上」が図れる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る雄型面ファスナ機能性布帛、雌型面ファスナ機能性布帛、雄雌一対の面ファスナ、及び、雄型面ファスナ機能性布帛、雌型面ファスナ機能性布帛の製造方法によると、雄パイル繊維の先端側に返し部を形成する等によって、「意匠性の向上」や「剥離強度の向上」などを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る雄型面ファスナ機能性布帛における雄パイル繊維側(表面側)を示す斜視図面代用写真である。
【
図2】雄型面ファスナ機能性布帛における雄パイル繊維、返し部の側面視を示す図面代用写真である。
【
図3】雄型面ファスナ機能性布帛における雄パイル繊維、返し部を拡大した側面視を示す図面代用写真である。
【
図4】雄型面ファスナ機能性布帛における雄パイル繊維、返し部を拡大した平面視を示す拡大図面代用写真である。
【
図5】本発明に係る雌型面ファスナ機能性布帛の雌パイル層側(表面側)を示す斜視図面代用写真である。
【
図6】雌型面ファスナ機能性布帛における雌パイル繊維、雌パイル層の側面視を示す図面代用写真である。
【
図7】雌型面ファスナ機能性布帛における雌パイル繊維、雌パイル層の平面視を示す図面代用写真である。
【
図8】本発明に係る雄雌一対の面ファスナを示す側面概要図である。
【
図9】雄雌一対の面ファスナにおいて、雄型面ファスナ機能性布帛が、雌型面ファスナ機能性布帛に押し付けられた際の係合箇所の側面視を示す図面代用写真である。
【
図10】雄雌一対の面ファスナにおいて、雄型面ファスナ機能性布帛と雌型面ファスナ機能性布帛が剥離する際の係合箇所の側面視を示す図面代用写真である。
【
図11】雄雌一対の面ファスナにおいて、雄型面ファスナ機能性布帛と雌型面ファスナ機能性布帛が剥離する際の係合箇所を拡大した側面視を示す図面代用写真である。
【
図12】雄雌一対の面ファスナにおいて、雄型面ファスナ機能性布帛と雌型面ファスナ機能性布帛が剥離する際の係合箇所を拡大した平面視を示す図面代用写真である。
【
図13】本発明に係る雄型面ファスナ機能性布帛の製造方法を示すフローチャートであって、(a)は第1実施形態を示し、(b)は第2実施形態を示し、(c)は第3実施形態を示し、(d)は第4実施形態を示し、(e)は第5実施形態を示す。
【
図14】雄型面ファスナ機能性布帛の製造方法における溶融工程などの各工程を示す概要図である。
【
図15】本発明に係る雌型面ファスナ機能性布帛のある1つの製造方法を示すフローチャートであって、(a)は第1実施形態を示し、(b)は第2実施形態を示す。
【
図16】雌型面ファスナ機能性布帛のある1つの製造方法における織成工程や溶解工程を示す概要図であって、(a)は織成工程を示し、(b)は溶解工程を示す。
【
図17】比較のための雄型の面ファスナ機能性布帛(雄側の面ファスナ)における雄型のパイル繊維(雄側係合糸)、溶融塊の斜視を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<雄型面ファスナ機能性布帛1の全体構成>
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1~4、9~12には、本発明に係る雄型面ファスナ機能性布帛1(以降、「雄型布帛1」とも言う)が示されており、この雄型布帛1は、後述する雄パイル繊維2を少なくとも一方の面に有したシート状物である。
本発明における「雄型布帛1が、雄パイル繊維2を有する」とは、雄型布帛1が、雄パイル繊維2を1つだけ(1本のみ)を有する場合、又は、雄パイル繊維2を複数(複数本)有する場合である。
以下、雄型布帛1は、複数の雄パイル繊維2を有しているとして述べる。
【0027】
雄型布帛1において、雄パイル繊維2の先端側には、後述する返し部3が形成されている。
雄型布帛1は、雄パイル繊維2を支える基布(雄基布)6を有していても良く、その他、バッキング層を有していても構わない。
雄型布帛1は、経パイル織物であっても良い。
その他、雄型布帛1はダブルラッシェル編物における連結糸をセンターカットしたものであっても構わない。
【0028】
尚、雄型布帛1の「表面1a」とは、衣服や、自動車のカーシートの表皮材、内装材などとして使用する時に露出する側の面であり、又、雄型布帛1の「表面1a」とは、雄パイル繊維2を有している面であるとも言える。
逆に、雄型布帛1の「裏面1b」とは、衣服や、自動車のカーシートの表皮材、内装材などとして使用する時に露出しない側の面であり、又、雄型布帛1の「裏面1b」とは、雄パイル繊維2を有していない面であるとも言える。
尚、雄型布帛1の表裏両面で雄パイル繊維2を有している場合には、その両面が表面1aであるとも言える。
ここで、雄型布帛1の「一方の面」とは、上述したように、雄型布帛1が雄パイル繊維2を有した表面1aと、雄パイル繊維2を有しない裏面1bを持つ場合には、表面1aのみを意味し、雄型布帛1の表裏両面で雄パイル繊維2を有している場合には、雄型布帛1の表裏両面のうち、何れか一方の面を意味する。
【0029】
雄型布帛1が経パイル織物である場合、雄パイル繊維2の経パイル密度は、何れの値でも良いが、例えば、100000本/25.4mm以上300000本/25.4mm以下、好ましくは105000本/25.4mm以上250000本/25.4mm以下、更に好ましくは110000本/25.4mm以上200000本/25.4mm以下であっても良い。
雄型布帛1の厚さも、何れの値でも良いが、例えば、0.1mm以上7.0mm以下、好ましくは0.2mm以上6.0mm以下、更に好ましくは0.3mm以上5.0mm以下であっても良い。
雄型布帛1の目付も、特に限定はないが、例えば、50g/m2以上1000g/m2以下、好ましくは70g/m2以上800g/m2以下、更に好ましくは100g/m2以上600g/m2以下であっても良い。
【0030】
<雄パイル繊維2>
図1~4、9~12に示したように、雄パイル繊維2は、熱可塑性繊維である。
雄パイル繊維2は、熱可塑性繊維であれは、何れの素材でも良いが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル繊維、ナイロン(ポリアミド)繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするポリアクリル繊維(アクリル繊維)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ポリウレタン(PU)繊維、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維(ビニロン繊維)などの合成繊維でも良く、これらを単独又は組み合わせて用いられても構わない。
【0031】
雄パイル繊維2は、単繊維繊度が0.1dtex以上15.0dtex以下であり、好ましくは0.5dtex以上10.0dtex以下、更に好ましくは1.0dtex以上8.0dtex以下であっても良い。
ここで、雄パイル繊維2の断面形状は、特に限定はないが、略円形状や、略楕円形状であったり、異形(扁平状(略矩形状)や、略正方形状、略三角形状、略Y字状、略V字状、略C字状、略星形状など)であっても良い。
以下、雄パイル繊維2の断面形状は、略円形状であるとして述べる。
雄パイル繊維2の直径2φは、特に限定はないが、例えば、1μm以上40μm以下、好ましくは5μm以上35μm以下、更に好ましくは10μm以上30μm以下であっても良い。尚、雄パイル繊維2の直径2φは、側面視や平面視における写真(電子顕微鏡写真等)において見える当該雄パイル繊維2の幅であったり、当該雄パイル繊維2の断面形状を略円形状とした場合における素材の比重と単繊維繊度から算出した値であっても良い。
【0032】
雄パイル繊維2は、マルチフィラメント糸を構成する各フィラメントであっても良く、その他、1本の雄パイル繊維2でモノフィラメント糸を構成していても構わない。
雄パイル繊維2の糸(マルチフィラメント糸、又は、モノフィラメント糸)は、例えば、先染糸(生糸、FDY、Fully Draw Yarn)であっても良い。
雄パイル繊維2の糸の撚数は、特に限定はないが、例えば、100T(回)/m以上300T/m以下、好ましくは150T(回)/m以上270T/m以下、更に好ましくは200T(回)/m以上240T/m以下であっても良い。
雄パイル繊維2は、カットパイルであっても良い。
【0033】
<返し部3>
図1~4、9~12に示したように、返し部3は、上述した雄パイル繊維2の先端側に形成され、その雄パイル繊維2の長さ方向との成す角(返し角)αが90°未満である部分である。
返し部3は、雄パイル繊維2の先端部分が湾曲して(カーブして)いるうち、返し角αが90°未満の部分であっても良く、返し部3がカーブした部分である場合、返し部3の太さは、雄パイル繊維2の太さと略同じか、雄パイル繊維2より細くても構わない(
図3等参照)。
【0034】
又、返し部3は、雄パイル繊維2の先端部分が、一旦溶融してその後、凝固しているうち、返し角αが90°未満の塊状の部分(溶融塊、溶融した部分)であっても良く、返し部3が溶融塊である場合、返し部3の太さは、雄パイル繊維2より太くても構わない。換言すれば、返し部3が溶融塊である場合、雄パイル繊維2より太く(雄パイル繊維2の径方向にはみ出し)且つ返し角αが90°未満の部分が、返し部3であると言える(図示省略)。
その他、返し部3は、雄パイル繊維2の先端部分が屈折して(カーブせずに折れ曲がって)いるうち、返し角αが90°未満の塊状の部分(溶融塊、溶融した部分)であっても良く、返し部3が屈折した部分である場合、返し部3の太さは、雄パイル繊維2の太さと略同じか、雄パイル繊維2より細くても構わない(図示省略)。
【0035】
返し角αは、90°未満であれば、特に限定はないが、例えば、20°以上90°未満、好ましくは30°以上85°以下、更に好ましくは35°以上80°以下であっても良い。
返し部3は、全ての雄パイル繊維2の先端側に形成されていても良く、又、少なくとも一部の雄パイル繊維2の先端側に形成されていても良い。
【0036】
<返し部3の長さ3L>
図1~4、9~12に示したように、返し部3の長さ3Lは、上述した返し部3の基端から先端までの距離である。
返し部3がカーブした部分である場合、返し部3の長さ3Lは、カーブしている部分のうち、返し角αが90°未満の部分における基端から先端までの長さであると言える。
返し部3が溶融塊である場合、返し部3の長さ3Lは、溶融塊のうち、雄パイル繊維2の径方向にはみ出し且つ返し角αが90°未満の部分における基端から先端までの長さでえあると言える。
返し部3が屈折した部分である場合、返し部3の長さ3Lは、まさしく屈折している箇所から先端までの長さであると言える。
返し部3の長さ3Lは、特に限定はないが、例えば、0.1μm以上40.0μm以下、1.0μm以上35.0μm以下、5.0μm以上30.0μm以下であっても良い。尚、返し部3の長さ3Lは、側面視や平面視における写真(電子顕微鏡写真等)において見える当該返し部3の長さであっても良い。
【0037】
<基布(雄基布)6等>
図1~4、9~12に示したように、雄基布6は、上述した雄パイル繊維2を支える生地(シート状物)であり、逆に言えば、この雄基布6に雄パイル繊維2が設けられている。
ここで、雄基布6の「表面」は、雄型布帛1を衣服や、自動車のカーシートの表皮材、内装材などに使用する時に露出する表面1aに近い面であるとも言え、この表面に雄パイル繊維2が設けられている。
逆に、雄基布6の「裏面」は、雄型布帛1を衣服や、自動車のカーシートの表皮材、内装材などに使用する時に露出しない裏面1bに近い面(又は、裏面1bそのもの)であるとも言える。
【0038】
雄基布6を構成する糸は、何れの素材・構成・繊度等でも良いが、まず素材について、例えば、熱可塑性の素材であるポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル繊維、ナイロン(ポリアミド)繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするポリアクリル繊維(アクリル繊維)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ポリウレタン(PU)繊維、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維(ビニロン繊維)などの合成繊維でも良く、その他、ガラス繊維、羊毛、絹などであり、これらを単独又は組み合わせて用いられても構わない。
雄基布6における糸の構成としては、マルチフィラメントやモノフィラメント、スパン(紡績糸)など何れであっても良い。
雄基布6を構成する糸は、熱融着性の糸(融着糸)を、緯糸等として含んでいたり、仮撚り加工糸を含んでいても良く、その他、これらを組み合わせた(混紡した)糸であっても構わない。尚、融着糸の素材は、例えば、ナイロン繊維や、ポリエステル繊維、ポリオレフィン系繊維などであっても構わない。
尚、雄基布6を構成する糸は、何れの素材・構成・繊度等は、上述した雄パイル繊維2の素材・構成・繊度等と同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0039】
雄基布6を構成する糸の繊度についても、特に限定はないが、例えば、総繊度で、30dtex以上500dtex以下、好ましくは40dtex以上400dtex以下、更に好ましくは50dtex以上350dtex以下であっても良い。
又、雄基布6を構成する糸がマルチフィラメントの場合、その各フィラメントの単繊維繊度も、特に限定はないが、例えば、0.1dtex以上50.0dtex以下、好ましくは0.5dtex以上30.0dtex以下、更に好ましくは1.0dtex以上20.0dtex以下であっても良い。
雄基布6の厚さも、何れの値でも良いが、例えば、10μm以上2000μm以下(0.01mm以上2.00mm以下)、好ましくは50μm以上1500μm以下(0.05mm以上1.00mm以下)、更に好ましくは100μm以上1000μm以下(0.10mm以上1.00mm以下)であっても良い。
【0040】
雄型布帛1が経パイル織物であれば、雄基布6は織物となり、この場合、雄基布6の織物は、緯糸等として、融着糸を含んでいても良い。
その他、雄型布帛1がダブルラッシェル編物における連結糸をセンターカットしたものであれば、雄基布6は編物となる。
【0041】
雄基布6が織物である場合、当該織物は、何れの織組織でも構わないが、例えば、平織や綾織、朱子織などであっても良い。
又、雄基布6が編物である場合、例えば、当該編物は、何れの編組織であっても構わないが、トリコット編などの経編などであっても良い。
【0042】
このような雄基布6に対して「雄パイル繊維2が支えられている(設けられている)」とは、雄基布6の表面に、雄パイル繊維2の基端が繋がっている(又は、固定されている)と言え、特に、雄基布6の表面と雄パイル繊維2の長さ方向との成す角(雄パイル角)が略90°の場合だけでなく、雄基布6の表面に対して雄パイル繊維2の長さ方向が斜めになっている等の場合も含み、その斜めになっている等の場合における雄パイル角は、例えば、45°以上90°以下、好ましくは60°以上90°以下、更に好ましくは80°以上90°以下であっても良い。
特に、雄パイル角が、例えば、45°以上である場合(謂わば、雄パイル繊維2が雄基布6から立設している場合)、当該雄型布帛1は、立毛布帛Rであるとも言える。
【0043】
雄パイル繊維2の高さは、何れの値でも良いが、例えば、0.1mm以上5.0mm以下であっても良く、好ましくは0.7mm以上4.0mm以下、更に好ましくは1.0mm以上3.0mm以下であっても構わない。
尚、雄パイル繊維2の高さは、雄パイル角が略90°の場合は、雄パイル繊維2の長さと略同じとも言え、又、雄パイル角が略90°でない場合には、雄パイル繊維2の先端から雄基布6の表面へ下した垂線の長さが雄パイル繊維2の高さであるとも言える。
【0044】
このように所定の高さを持った雄パイル繊維2は、雄型布帛1が経パイル織物である場合、雄基布6の緯糸に係止され、雄基布6(雄型布帛1)の経方向又は緯方向に沿って列状(パイル列)に並ぶこととなる(
図4参照)。
雄パイル繊維2は、複数本で1つのパイル糸(マルチフィラメント糸)として雄基布6の緯糸に係止され束状(パイル束)になっていても良く、又、上方に向かって広がっていても構わない。尚、この束状になった複数本の雄パイル繊維2における広がりによって、隣接するパイル列間及び/又はパイル束間を、平面視で埋めることとなって、複数の雄パイル繊維2で、雄パイル層2’を形成していても良い(
図2、4、10等参照)。
又、雄パイル繊維2は、1本で1つのパイル糸(モノフィラメント糸)として雄基布6の緯糸に係止されていても良く、この雄パイル繊維2が複数本で、雄パイル層2’を形成していても構わない。
雄パイル繊維2の糸(マルチフィラメント糸、又は、モノフィラメント糸)は、雄基布6に対して何れの係止の仕方でも良い(つまり、織組織や編組織に限定はない)が、例えば、雄基布6の緯糸に対して、1回浮いて1回沈むことを繰り返す織組織であったり、その他、2回浮いて1回沈むや、2回浮いて2回沈む、3回浮いて1回沈む、3回浮いて2回沈む、3回浮いて3回沈むことを繰り返す等、何れの織組織などであっても構わない。
【0045】
<雌型面ファスナ機能性布帛10の全体構成>
図5~12には、本発明に係る雌型面ファスナ機能性布帛10(以降、「雌型布帛10」とも言う)が示されており、この雌型布帛10は、後述する雌パイル繊維12を少なくとも一方の面に有したシート状物である。
本発明における「雌型布帛10が、雌パイル繊維12を有する」とは、雌型布帛10が、雌パイル繊維12を1本のみ(1つだけ)を有する場合、又は、雌パイル繊維12を複数(複数本)有する場合である。
以下、雌型布帛10は、複数の雌パイル繊維12を有しているとして述べる。
【0046】
雌型布帛10は、複数の雌パイル繊維12で、後述する雌パイル層12’が形成されている。
雌型布帛10は、雌パイル繊維12を支える基布(雌基布)16を有していても良く、その他、バッキング層を有していても構わない。
雌型布帛10は、経パイル織物であっても良い。
その他、雌型布帛10はダブルラッシェル編物における連結糸をセンターカットしたものであっても構わない。
【0047】
尚、雌型布帛10の「表面10a」とは、衣服や、自動車のカーシートの表皮材、内装材などとして使用する時に露出する側の面であり、又、雌型布帛10の「表面10a」とは、雌パイル繊維12を有している面であるとも言える。
逆に、雌型布帛10の「裏面10b」とは、衣服や、自動車のカーシートの表皮材、内装材などとして使用する時に露出しない側の面であり、又、雌型布帛10の「裏面10b」とは、雌パイル繊維12を有していない面であるとも言える。
尚、雌型布帛10の表裏両面で雌パイル繊維12を有している場合には、その両面が表面10aであるとも言える。
ここで、雌型布帛10の「一方の面」とは、上述したように、雌型布帛10が雌パイル繊維12を有した表面10aと、雌パイル繊維12を有しない裏面10bを持つ場合には、表面10aのみを意味し、雌型布帛10の表裏両面で雌パイル繊維12を有している場合には、雌型布帛10の表裏両面のうち、何れか一方の面を意味する。
【0048】
雌型布帛10が経パイル織物である場合、雌パイル繊維12のパイル密度(経パイル密度×緯パイル密度)は、何れの値でも良いが、例えば、100000本/(25.4mm)2以上400000本/(25.4mm)2以下、好ましくは150000本/(25.4mm)2以上350000本/(25.4mm)2以下、更に好ましくは200000本/(25.4mm)2以上300000本/(25.4mm)2以下であっても良い。
雌型布帛10の厚さも、何れの値でも良いが、例えば、0.1mm以上7.0mm以下、好ましくは0.2mm以上6.0mm以下、更に好ましくは0.3mm以上5.0mm以下であっても良い。
雌型布帛10の目付も、特に限定はないが、例えば、50g/m2以上1000g/m2以下、好ましくは70g/m2以上800g/m2以下、更に好ましくは100g/m2以上600g/m2以下であっても良い。
【0049】
<雌パイル繊維12>
図5~12に示したように、雌パイル繊維12は、熱可塑性繊維である。
雌パイル繊維12は、熱可塑性繊維であれは、何れの素材でも良いが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル繊維、ナイロン(ポリアミド)繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするポリアクリル繊維(アクリル繊維)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ポリウレタン(PU)繊維、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維(ビニロン繊維)などの合成繊維でも良く、これらを単独又は組み合わせて用いられても構わない。
【0050】
雌パイル繊維12は、単繊維繊度が0.001dtex以上5.000dtex以下、好ましくは0.010dtex以上4.000dtex以下、更に好ましくは0.050dtex以上3.000dtex以下であっても良い。
ここで、雌パイル繊維12の断面形状は、特に限定はないが、略円形状や、略楕円形状であったり、異形(扁平状(略矩形状)や、略正方形状、略三角形状、略Y字状、略V字状、略C字状、略星形状など)であっても良い。
以下、雌パイル繊維12の断面形状は、略円形状であるとして述べる。
【0051】
<雌パイル繊維12の直径12φ>
図5~12に示したように、雌パイル繊維12の直径12φは、特に限定はないが、例えば、0.1μm以上20.0μm以下、好ましくは0.5μm以上15.0μm以下、更に好ましくは1.0μm以上10μm以下であっても良い。尚、雌パイル繊維12の直径12φは、側面視や平面視における写真(電子顕微鏡写真等)において見える当該雌パイル繊維12の幅であったり、当該雌パイル繊維12の断面形状を略円形状とした場合における素材の比重と単繊維繊度から算出した値であっても良い。
雌パイル繊維12は、マルチフィラメント糸を構成する各フィラメントであっても良く、その他、1本の雌パイル繊維12でモノフィラメント糸を構成していても構わない。
雌パイル繊維12の糸(マルチフィラメント糸、又は、モノフィラメント糸)は、例えば、仮撚り加工糸(DTY、Draw Textured Yarn)であったり、ダメージダイドウォッシュ加工糸(DDW(登録商標)、damage dyed and wash)であっても良い。
雌パイル繊維12の糸が仮撚り加工糸である場合、その撚数は、特に限定はないが、例えば、雌パイル繊維12の糸として0T(回)/mであっても良く、その他、雌パイル繊維12の糸(各雌パイル繊維12)に残留トルクが生じていても構わない。
雌パイル繊維12は、ループパイルであって、これを詳解すれば、全ての雌パイル繊維12がループパイルである場合だけでなく、一部(雌型布帛10を所定の大きさ・形状に切断した際の端部(切断面)の近傍のものや、雌型布帛10の端部以外の部分で切れてしまったものなど)における雌パイル繊維12だけがそのループが切れてカットパイルとなっている場合も含む。
【0052】
<捲縮、捲縮率>
図5~12に示したように、雌パイル繊維12は、捲縮を有している。
本発明における「捲縮」とは、JIS-L-0208:2006の244に準じる捲縮である。
尚、本発明における「JIS-L-0208:2006の244に準じる」とは、JIS-L-0208:2006の244に記載された通りの捲縮(けん縮)である「繊維の縮れ」以外に、当該JISの記載を準用した(、又は、一部を変更した「繊維がウェブ状(不織布状)になった部分」や「繊維がスナール状になった部分」を意味する)捲縮も含む。
【0053】
本発明における雌パイル繊維12の「捲縮率」は、JIS-L-1015:2010の8.12.2に準じて測定される。
尚、本発明における「JIS-L-1015:2010の8.12.2に準じる」とは、JIS-L-1015:2010の8.12.2に記載された通りに測定されることを含む以外に、当該JISの記載を準用して(、又は、一部を変更して)測定されることも含む。
雌パイル繊維12の捲縮率は、特に限定はないが、例えば、10%以上100%以下、好ましくは15%以上100%未満、更に好ましくは20%以上90%以下であっても良い。
【0054】
<基布(雌基布)16等>
図5~12に示したように、雌基布16は、上述した雌パイル繊維12を支える生地(シート状物)であり、逆に言えば、この雌基布16に雌パイル繊維12が設けられている。
ここで、雌基布16の「表面」は、雌型布帛10を衣服や、自動車のカーシートの表皮材、内装材などに使用する時に露出する表面10aに近い面であるとも言え、この表面に雌パイル繊維12が設けられている。
逆に、雌基布16の「裏面」は、雌型布帛10を衣服や、自動車のカーシートの表皮材、内装材などに使用する時に露出しない裏面10bに近い面(又は、裏面10bそのもの)であるとも言える。
【0055】
雌基布16を構成する糸は、何れの素材・構成・繊度等でも良いが、まず素材について、例えば、熱可塑性の素材であるポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル繊維、ナイロン(ポリアミド)繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするポリアクリル繊維(アクリル繊維)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ポリウレタン(PU)繊維、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維(ビニロン繊維)などの合成繊維でも良く、その他、ガラス繊維、羊毛、絹などであり、これらを単独又は組み合わせて用いられても構わない。
雌基布16における糸の構成としては、マルチフィラメントやモノフィラメント、スパン(紡績糸)など何れであっても良い。
その他、雌基布16を構成する糸は、熱融着性の糸(融着糸)を含んでいても良く、その素材は、例えば、ポリエステル繊維やナイロン繊維、ポリオレフィン系繊維などであっても構わない。
尚、雌基布16を構成する糸は、何れの素材・構成・繊度等は、上述した雄パイル繊維2の素材・構成・繊度等と同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0056】
雌基布16を構成する糸の繊度についても、特に限定はないが、例えば、総繊度で、30dtex以上500dtex以下、好ましくは40dtex以上400dtex以下、更に好ましくは50dtex以上350dtex以下であっても良い。
又、雌基布16を構成する糸がマルチフィラメントの場合、その各フィラメントの単繊維繊度も、特に限定はないが、例えば、0.1dtex以上50.0dtex以下、好ましくは0.5dtex以上30.0dtex以下、更に好ましくは1.0dtex以上20.0dtex以下であっても良い。
雌基布16の厚さも、何れの値でも良いが、例えば、10μm以上2000μm以下(0.01mm以上2.00mm以下)、好ましくは50μm以上1500μm以下(0.05mm以上1.00mm以下)、更に好ましくは100μm以上1000μm以下(0.10mm以上1.00mm以下)であっても良い。
【0057】
雌型布帛10が経パイル織物であれば、雌基布16は織物となり、この場合、雌基布16の織物は、緯糸等として、融着糸を含んでいても良い。
その他、雌型布帛10がダブルラッシェル編物における連結糸をセンターカットしたものであれば、雌基布16は編物となる。
【0058】
雌基布16が織物である場合、当該織物は、何れの織組織でも構わないが、例えば、平織や綾織、朱子織などであっても良い。
又、雌型布帛10が編物である場合、例えば、当該編物も、何れの編組織であっても構わないが、トリコット編などの経編であっても良い。
更に、雌型布帛10が不織布である場合、当該不織布は、何れの構成でも構わないが、
【0059】
このような雌基布16に対して「雌パイル繊維12が支えられている(設けられている)」とは、雌基布16の表面に、雌パイル繊維12の基端が繋がっている(又は、固定されている)と言える。
このような雌基布16の上で、後述する雌パイル層12’が形成されている。
【0060】
<雌パイル層12’>
図5~12(特に、
図6、7、9、10、12)に示したように、雌パイル層12’は、上述した雌パイル繊維12それぞれのループパイルが捲縮することで、複数の雌パイル繊維12が互いに絡み合ったウェブ状の層である。
雌パイル層12’は、雌パイル繊維12のループパイルの先端だけでなく、ループパイルの長さ方向中途部や、複数の雌パイル繊維12の互いに絡み合った部分も係合箇所となって(謂わば、嵩高性のある雌パイル層12’となって)、係合箇所の数が増えていると言える。
【0061】
尚、雌型布帛10が経パイル織物である場合、雌パイル繊維12は、複数本で1つのパイル糸(マルチフィラメント糸)として雌基布16の緯糸に係止されて、少なくとも一部が若干束状(パイル束)になっていても良い(
図6右側の上下方向中途部など)。
又、雌パイル繊維12は、1本で1つのパイル糸(モノフィラメント糸)として雌基布16の緯糸に係止されていても良く、この雄パイル繊維2が複数本で互いに絡み合って、ウェブ状の雌パイル層12’を形成していても構わない。
雌パイル繊維12の糸(マルチフィラメント糸、又は、モノフィラメント糸)は、雌基布16に対して何れの係止の仕方でも良い(つまり、織組織や編組織に限定はない)が、例えば、雌基布16の緯糸に対して、1回浮いて1回沈むことを繰り返す織組織であったり、その他、2回浮いて1回沈むや、2回浮いて2回沈む、3回浮いて1回沈む、3回浮いて2回沈む、3回浮いて3回沈むことを繰り返す織組織であったり、又、4回浮いて1回沈むや、5回浮いて1回沈む、6回浮いて1回沈むことを繰り返す織組織であったり、4回浮いて2回沈んで2回浮いて2回沈む、5回浮いて2回沈んで2回浮いて2回沈む、6回浮いて2回沈んで2回浮いて2回沈む、7回浮いて2回沈んで2回浮いて2回沈む、8回浮いて2回沈んで2回浮いて2回沈むことを繰り返す織組織等、何れの織組織などであっても構わない。
【0062】
雌パイル層12’において、雌基布16の表面と、雌パイル繊維12の長さ方向との成す角(雌パイル角)は、複数の雌パイル繊維12が互いに絡み合っており、全ての雌パイル繊維12に対して一意には決まらないとも言えるが、若干束状等になっている一部の雌パイル繊維12に対しては、雌基布16の表面と、雌パイル繊維12の長さ方向との成す角が決まるとも言える。
この雌パイル角が略90°の場合だけでなく、雌基布16の表面に対して雌パイル繊維12の長さ方向が斜めになっている等の場合も含み、その斜めになっている等の場合における雌パイル角は、例えば、45°以上90°以下、好ましくは60°以上90°以下、更に好ましくは80°以上90°以下であっても良い。
雌パイル角は、例えば、45°未満(つまり、0°以上45°未満)であっても良く、その他、0°以上30°以下や、0°以上20°以下、0°以上10°以下などであったり、略0°であっても(謂わば、雌パイル繊維12が、雌基布16の表面に略沿っていても)構わない。
尚、雌パイル角が略0°以上45°未満である場合には、雌パイル繊維12が雌基布16に対して倒れている(又は、寝ている)とも言える。
【0063】
このように、倒れている等の雌パイル繊維12の高さも、何れの値でも良いが、例えば、0.1mm以上5.0mm以下であっても良く、好ましくは0.3mm以上3.0mm以下、更に好ましくは0.6mm以上2.0mm以下であっても構わない。
尚、雌パイル繊維12の高さは、雌パイル角が略90°の場合は、雌パイル繊維12の長さと略同じとも言え、雌パイル角が略90°でない場合、一部の雌パイル繊維12は、その先端から雌基布16の表面へ下した垂線の長さが雌パイル繊維12の高さであるとも言える。
特に、雌パイル角が45°未満の場合には、雌パイル繊維12の高さは、複数の雌パイル繊維12が互いに絡み合ってウェブ状になっていることから、雌パイル繊維12の長さとは関連していないとも言える。
このような雌パイル層12’の厚さは、特に限定はないが、例えば、0.1mm以上5.0mm以下であっても良く、好ましくは0.3mm以上3.0mm以下、更に好ましくは0.6mm以上2.0mm以下であっても良い。
【0064】
<雄雌一対の面ファスナ20の全体構成>
図1~12には、本発明に係る雄雌一対の面ファスナ20(以降、「面ファスナ20」とも言う)が示されており、この面ファスナ20は、上述した雄型面ファスナ機能性布帛1(雄型布帛1)と、上述した雌型面ファスナ機能性布帛10(雌型布帛10)を備えている。
面ファスナ20においては、雄型布帛1の雄パイル繊維2と、雌型布帛10の雌パイル繊維12が係合することとなる。
尚、1本の雄パイル繊維2(特に、返し部3)に対して1本の雌パイル繊維12が係合しても良いし、その他、1本の雄パイル繊維2に対して複数本の雌パイル繊維12が係合したり、複数本の雄パイル繊維2に対して1本の雌パイル繊維12が係合したり、複数本の雄パイル繊維2に対して複数本の雌パイル繊維12が係合しても構わない。
又、全ての雄パイル繊維2が何れかの雌パイル繊維12と係合していても良いし、少なくとも一部の雄パイル繊維2が何れかの雌パイル繊維12と係合していても構わない。同様に、全ての雌パイル繊維12が何れかの雄パイル繊維2と係合していても良いし、少なくとも一部の雌パイル繊維12が何れかの雄パイル繊維2と係合していても構わない。
【0065】
雌パイル繊維12の直径12φの値は、雄パイル繊維12の返し部3の長さ3Lの値以下である。
雌パイル繊維12の直径12φの値は、返し部3の長さ3Lの値以下(1.0倍以下)であれば、特に限定はないが、例えば、下限値は、0.1倍以上や、0.2倍以上、0.3倍以上、0.4倍以上などであっても良い。
【0066】
<1>雄型布帛1の雌型布帛10への押付けについて
図9に示すように、面ファスナ20において、雄型布帛1が、雌型布帛10に押し付けられた際には、雄型布帛1の雄パイル繊維2はパイル列状であると言える一方で、雌型布帛10の雌パイル繊維12はウェブ状の雌パイル層12’を形成しているため、雄パイル繊維2は、雌パイル層12’の中(雌パイル繊維12の間)に入ることが出来ない。
その結果、雄パイル繊維2は、雌型布帛10の表面10a(雌パイル層12’の表面)に略沿って倒れ込むこととなるが、この倒れ込みの時に、雄パイル繊維2の返し部3を含む先端側が、ループパイルである雌パイル繊維12の当該ループを潜る(くぐる)、又は、差し込むこととなる。
【0067】
ここで、ループパイルである雌パイル繊維12は、雌パイル層12’の表面において、そのループ先端側だけが露出しているのではなく、そのループ中途部も露出しているため、雄パイル繊維2の返し部3は、ループパイルである雌パイル繊維12におけるループ先端側だけでなく、ループ中途部の捲縮した部分とも係合し得ると言える。
尚、雄型布帛1と雌型布帛10が共に経パイル織物であり、且つ、雄型布帛1を雌型布帛10に押し付けた際に雄パイル繊維2が経方向(謂わば、パイル列方向)に倒れ易い場合、ループパイルである雌パイル繊維12も経方向に織成されているため、雄型布帛1の経方向と雌型布帛10の経方向を、平面視で互いに略直交する向きにして押し付けることで、雌パイル繊維12のループに対して、雄パイル繊維2の返し部3を含む先端側が、雌型布帛10の緯方向から差し込まれ易くなるとも言えるが、一方で、雌パイル層12’がウェブ状のため、雌パイル繊維12のループは様々な方向に向いている(
図7等参照)ため、雄型布帛1の経方向と雌型布帛10の経方向を、平面視で略平行な向きにして押し付けても良いとも言える。
【0068】
<2>雄型布帛1と雌型布帛10の剥離について
図10~12に示したように、雄型布帛1と雌型布帛10が剥離する際(剥離する直前)には、雄パイル繊維2の返し部3と雌パイル繊維12が係合しているため、雄型布帛1側は、各雄パイル繊維2(雄パイル繊維2の束)の雄パイル角が大きくなる(徐々に立設してくる)一方で、雌型布帛10側も、雌パイル層12’のうち雄パイル繊維2と係合している一部の雌パイル繊維12が雄型布帛1側に引っ張られている。
特に、
図11は、係合箇所を拡大した側面視を示すところ、当該
図11では、その中央部分で、複数本の雄パイル繊維2が、1本の雌パイル繊維12のループ内に入り込み、又、複数本の雄パイル繊維2と複数本の雌パイル繊維12が絡み合って、当該複数本の雌パイル繊維12が上方(雄型布帛1側)へ引っ張られている様子が示されている。
【0069】
又、
図12は、係合箇所を拡大した平面視(雌型布帛10の上にある雄型布帛1を、本のページを開くように徐々に剥離している状態において、雄型布帛1と雌型布帛10が同時に写る範囲で上方から撮影したもの)を示すところ、当該
図12では、その中央部分で、1本の雄パイル繊維2の返し部3が、1本の雌パイル繊維12のループの先端側に係止して、当該1本の雌パイル繊維12を左方(雄型布帛1側)へ引っ張っている様子が示されている。
尚、このような雄型布帛1や雌型布帛10、雄雌一対の面ファスナ20によって、静音性の向上であったり、使用者の身体や衣服、又、自動車のカーシートの表皮材、内装材などを引っ掛けて傷つけ難いとも言える。
ここまで述べた雄型面ファスナ機能性布帛1や、雌型面ファスナ機能性布帛10を製造する方法について、次に詳解する。
【0070】
<雄型面ファスナ機能性布帛1の製造方法>
図13、14に示したように、上述した雄型面ファスナ機能性布帛1の製造方法(以下、「雄型布帛1の製造方法」とも言う)は、後述する返し形成工程S1を少なくとも備えている。
雄型布帛1の製造方法は、後述する布帛構成工程S0―1や、カット工程S0-2、熱セット(雄熱セット)工程S0-3、シャーリング工程S0-4を備えていても良い。
雄型布帛1の製造方法は、その他の工程(例えば、バッキング工程など)を備えていても良い。
【0071】
尚、雄型布帛1の製造方法において、返し形成工程S1のみを有している場合は第1実施形態とし、布帛構成工程S0―1と返し形成工程S1を備えている場合は第2実施形態とし、布帛構成工程S0―1とカット工程S0-2と返し形成工程S1を備えている場合は第3実施形態とし、布帛構成工程S0―1とカット工程S0-2と熱セット工程S0-3と返し形成工程S1を備えている場合は第4実施形態とし、布帛構成工程S0―1とカット工程S0-2と熱セット工程S0-3とシャーリング工程S0-4と返し形成工程S1を備えている場合は第5実施形態とし、その他、バッキング工程なども備えている場合は、また別の実施形態とする。
【0072】
<返し形成工程S1>
図13、14に示したように、返し形成工程S1は、上述した雄パイル繊維2の先端側に、雄パイル繊維2の長さ方向との成す角が90°未満である返し部3を形成する工程である。
尚、この返し形成工程S1にて、返し部3を形成する具体的な手段は、特に限定するものではない。
返し部3を形成する手段としては、例えば、熱ローラHに、立毛布帛(雄基布6から立設した雄パイル繊維2に、返し部3が形成されていない立毛布帛)Rの雄パイル繊維2の先端側を接触させて返し部3を形成したり、レーザー(レーザー光線)の照射によって立毛布帛Rの雄パイル繊維2の先端側を溶融して返し部3を形成する等しても良い。
【0073】
熱ローラHに雄パイル繊維2の先端側を接触させることによって返し部3を形成する場合は、当該熱ローラH自体が発熱する機構を備えていても良く、その他、加熱装置内で金属製等のローラに雄パイル繊維2の先端側を接触させても構わない。
熱ローラHへの雄パイル繊維2の接触は、回転可能に配置した当該熱ローラHと、回転可能に配置した支持ローラ(ゴムローラ等)Gの間に、雄パイル繊維2側を熱ローラH側にした長尺状の立毛布帛Rを通過させる際、ローラ間の距離Dを立毛布帛Rの厚さTより小さくする構成であっても良く、この返し形成工程S1は、カレンダー加工機にて行っても良い。
この場合、熱ローラHの温度や、長尺状の立毛布帛Rの通過速度であったり、ローラ間の距離Dや、立毛布帛Rの厚さ(ローラ間を通過する際の厚さ)T、熱ローラHの回転速度などを所定の値にしても良い。
尚、熱ローラHの温度は、特に限定はないが、立毛布帛(特に、雄パイル繊維2)Rの素材に応じて変更しても良く、雄パイル繊維2の素材がポリエステル繊維であれば、例えば、190℃以上230℃以下、好ましくは195℃以上225℃以下、更に好ましくは200℃以上220℃以下であっても構わない。
立毛布帛Rの通過速度も、特に限定はないが、例えば、1m/分以上10m/分以下、好ましくは2m/分以上8m/分以下、更に好ましくは3m/分以上6m/分以下であっても良い。
ローラ間の距離Dも、特に限定はないが、例えば、0.1mm以上3.0mm以下、好ましくは0.2mm以上3.0mm以下、更に好ましくは0.3mm以上2.5mm以下であっても良い。
立毛布帛Rの厚さTも、特に限定はないが、例えば、0.1mm以上4.0mm以下、好ましくは0.2mm以上3.5mm以下、更に好ましくは0.3mm以上3.0mm以下であっても良い。
尚、立毛布帛Rの厚さTは、ローラ間の距離D以上であっても良く、立毛布帛Rの厚さTからローラ間の距離Dを引いた値(T-D)は、特に限定はないが、例えば、0.0mm以上2.0mm以下、好ましくは0.1mm以上1.5mm以下、更に好ましくは0.2mm以上1.0mm以下であっても構わない。
このように、ローラ間の距離Dを、立毛布帛Rの厚さTより若干狭くすることで、熱ローラHが雄パイル繊維2の先端側に若干接触する(謂わば、撫でる)状態となり、返し部3が形成されるのであれば、雄パイル繊維2の先端側の一部を溶融させるとも言えるが、溶融させずに(ガラス転移点と融点の間の状態として)、雄パイル繊維2の先端側の一部を変形させるだけであるとも言える。
【0074】
レーザーの照射によって返し部3を形成する場合は、立毛布帛Rに与えるエネルギー密度(布帛上における単位面積当りのエネルギー)や、レーザー出力(ワット数)、ビームスポットの移動速度、ビームスポット径であったり、その他、発振周波数、焦点距離などを所定の値にしても良い。
この場合、レーザー光線のレーザー出力等で調整しなくとも、立毛布帛Rに、熱可塑性の雄パイル繊維2の溶融を妨げる防融剤(水など)を付与した後に、レーザー光線を照射するものとしても良い。
【0075】
<布帛構成工程S0-1>
図13に示したように、布帛構成工程S0-1は、上述した返し形成工程S1の前に、上述した立毛布帛(雄基布6から立設した雄パイル繊維2に、返し部3が形成されていない立毛布帛)Rを形成する工程である。
尚、上述したように、立毛布帛(雄型布帛1)Rが経パイル織物(一方の生地と他方の生地が連結糸(経パイル糸)で連結された二重経パイル織物)である場合には、布帛構成工程S0-1は、織物織成工程S0-1であると言え、雄型布帛1がダブルラッシェル編物(一方の生地と他方の生地が連結糸で連結されたダブルラッシェル編物)における連結糸をセンターカットしたものである場合には、布帛構成工程S0-1は、編物編成工程S0-1であると言える。
ここで、織物織成工程S0-1の場合、当該工程で用いられる織機も、特に限定はないが、例えば、縦パイル織機や、ワイヤモケット織機、ニードル織機、ジャガード織機などであっても良い。
又、編物編成工程S0-1の場合、当該工程で用いられる編機は、特に限定はないが、例えば、ダブルラッシェル編機等の経編機などであっても良い。
【0076】
<カット工程S0-2>
図13に示したように、カット工程S0-2は、上述した布帛構成工程S0-1にて構成された立毛布帛Rにおいて、雄パイル繊維2となり得る経パイル織物における連結糸(経パイル糸)や、ダブルラッシェル編物における連結糸をカット(切断)する工程である。
カット工程S0-2において、経パイル織物や、ダブルラッシェル編物における連結糸などをカットする場合、ワイヤなどによって、当該連結糸を、一方の生地と他方の生地の間における途中(例えば、略中間)でセンターカットし、一方の生地で雄基布6を構成し且つセンターカットされた一方の連結糸で雄パイル繊維2を構成すると共に、他方の生地で別の雄基布6を構成し且つセンターカットされた他方の連結糸で雄パイル繊維2を構成しても良い。
尚、ここまで述べた連結糸のカットと、上述した布帛の形成を、1つの工程で行っても良く、この場合、当該工程は、布帛構成・カット工程であるとも言える。
【0077】
<熱セット(雄熱セット)工程S0-3>
図13に示したように、雄熱セット工程S0-3は、上述したカット工程S0-2等にてカットされた立毛布帛(謂わば、生機)Rに、加熱装置にて所定温度の熱をかける(熱セットをする)工程である。
雄熱セット工程S0-3によって、立毛布帛Rの形態や寸法安定性を保つと共に、雄基布6の緯糸に融着糸が含まれている場合には、雄パイル繊維2の抜止め等も図れる。
尚、雄熱セット工程S0-3は、仕上工程や、ヒートセット工程とも言える。
【0078】
<シャーリング工程S0-4>
図13に示したように、シャーリング工程S0-4は、熱セット工程S0-3等を経た立毛布帛Rの雄パイル繊維2を、シャーリング機などによって、シャーリング(刈り揃える、剪毛する)工程である。
シャーリング工程S0-4において、当該雄パイル繊維2をシャーリングすることで、各雄パイル繊維2を所定の長さ(パイル高さ)に揃えて、立毛布帛Rとしての厚さTを、所定の値とする。
これにより、返し形成工程S1で熱ローラHに雄パイル繊維2の先端側を接触させる場合には、そのローラ間の距離Dに対して、立毛布帛Rを適切な厚さTをすることが出来ると言える。
【0079】
<雌型面ファスナ機能性布帛10の製造方法>
図15、16に示したように、上述した雌型面ファスナ機能性布帛10のある1つの製造方法(以下、「雌型布帛10の製造方法」とも言う)は、当該雌型布帛10が経パイル織物である場合には、後述する織成工程S11と溶解工程S12を少なくとも備えていても良い。
雌型布帛10の製造方法は、後述する熱セット(雌熱セット)工程S11’を備えていても良い。
雌型布帛10の製造方法は、その他の工程(例えば、バッキング工程など)を備えていても良い。
【0080】
尚、雌型布帛10の製造方法において、織成工程S11と溶解工程S12のみを備えている場合は第1実施形態とし、織成工程S11と雌熱セット工程S11’と溶解工程S12を備えている場合は第2実施形態とし、その他、バッキング工程なども備えている場合は、また別の実施形態とする。
【0081】
<織成工程S11>
図15、16(a)に示したように、織成工程S11は、溶解性繊維Yを含む一方の生地15と、溶解性繊維Yを含まない他方の生地16との間を、経パイル糸(連結糸、後の雌パイル繊維12の糸)で連結して、二重織物17を織成する工程である。
この溶解性繊維Yは、一方の生地15(織物)において、少なくとも緯糸として使用されていれば、良く、その他、緯糸と経糸の両方に使用されていても構わない。
尚、本発明における「溶解性繊維Y」とは、水や有機溶剤等に対して溶解する繊維であって、例えば、水溶性のポリビニルアルコール(PVA)繊維(ビニロン繊維)であっても良く、この場合、他方の生地16や、一方の生地15において溶解させない部分の繊維には、ポリエステル繊維や、ナイロン繊維、ポリアクリル繊維、ポリオレフィン系繊維などの非水溶性繊維を用いることとなる。
溶解性繊維Yは、マルチフィラメント糸を構成する各フィラメントであっても良く、その他、1本の溶解性繊維Yでモノフィラメント糸を構成していても構わない。
その他、溶解性繊維Yとしては、100%アセトン又はジメチルホルムアミドの有機溶媒に対して溶解性があるアセテート繊維であっても良く、この場合、他方の生地16や、一方の生地15において溶解させない部分の繊維には、ポリエステル繊維や、ポリオレフィン系繊維などの繊維を用いることとなる。
ここで、織物織成工程S11で用いられる織機も、特に限定はないが、例えば、経パイル織機や、ワイヤモケット織機(ワイヤは用いずとも良い)、ニードル織機、ジャガード織機などであっても良い。
尚、織成工程S11では、雌パイル繊維12となる経パイル糸がほぼ立設していると言え、又、織成工程S11における他方の生地16が、雌型布帛10における雌基布16となる。
【0082】
<溶解工程S12>
図15、16(b)に示したように、溶解工程S12は、上述した織成工程S11の後に、二重織物17の一方の生地15における溶解性繊維Yを溶解して、雌パイル繊維12であるループパイルを形成する工程である。
溶解工程S12においては、一方の生地15に含まれる溶解性繊維Yが水溶性のビニロン繊維である場合には、当該溶解性繊維Yの溶解は、水を用いることとなり、一方の生地15に含まれる溶解性繊維Yがアセテート繊維である場合には、当該溶解性繊維Yの溶解は、100%アセトン又はジメチルホルムアミドの有機溶媒を用いることとなる。
尚、溶解工程S12後には、織成工程S11時における一方の生地15と他方の生地16間の距離より、雌パイル繊維12であるループパイルがランダムに倒れて、雌パイル繊維12であるループパイルのパイル高さが低くなり、低くなった分だけ、複数の雌パイル繊維12が互いに絡み合ってウェブ状の雌パイル層12’を形成する。
【0083】
<熱セット(雌熱セット)工程S11’>
図15に示したように、雌熱セット工程S11’は、上述した織成工程S11と溶解工程S12の間で、二重織物17に、加熱装置にて所定温度の熱をかける(熱セットをする)工程である。
雌熱セット工程S11’によって、立毛布帛Rの形態や寸法安定性を保つと共に、雌基布16の緯糸に融着糸が含まれている場合には、雌パイル繊維12の抜止め等も図れる。
尚、雌熱セット工程S11’も、仕上工程や、ヒートセット工程とも言える。
【0084】
<試験>
ここからは、まず本発明に係る雄型布帛1の実施例1と、本発明に係る雌型布帛10の実施例2と、雌型の布帛の比較例2-1、2-2について言及する。
これらの実施例1、2と、比較例2-1、2-2を用いて、後述する試験を行う。
【0085】
<実施例1>
図1~4や
図9~12で示されたように、実施例1の雄型布帛1は、経パイル織物(一方の生地と他方の生地が連結糸(経パイル糸)で連結された経パイル織物)における連結糸をセンターカット・シャーリングして、雄パイル繊維2であるカットパイルが雄基布6から立設した立毛布帛Rである。
この実施例1に対して、返し形成工程S1にて、熱ローラHに雄パイル繊維2の先端側を接触させることによって返し部3を形成した。
尚、実施例1の雄型布帛1は、その雄パイル繊維2の単繊維繊度が約3.5dtexであり、雄パイル繊維2の返し部3の長さ3Lは約25.0μmであり、雄パイル繊維2の経パイル密度は125539.2本/25.4mmであり、雄パイル繊維2のパイル高さは約0.9mmであると共に、雄型布帛1としての厚さが約1.4mmで、目付が約378g/m
2である。
ここで、実施例1における雄基布6となる織地は、布帛構成(織物織成)工程S0-1にて、経パイル織機において、経糸としてポリエステルマルチフィラメント糸(先染糸、167dtex48フィラメント)が織り込まれ、緯糸として、ポリエステル仮撚り加工糸(56dtex36フィラメント)とナイロン融着糸(110dtex34フィラメント)を混紡した糸が織り込まれていて、雄パイル繊維2となる経パイル糸としてのポリエステルマルチフィラメント糸(先染糸、167dtex48フィラメント)は、織地の緯糸に対して1回浮いて1回沈むことを繰り返す織組織として織り込まれている。
又、実施例1における雄基布6となる織地は、機上で、経糸密度が170.7本/25.4mm、緯糸密度が61.5本/25.4mmであり、経パイル糸の経糸密度が171.5本/25.4mmである。
実施例1では、布帛構成工程S0-1の後に、カット工程S0-2、雄熱セット工程S0-3、シャーリング工程S0-4を経て、返し形成工程S1にて、雄パイル繊維2の先端側に返し部3が形成されている。
【0086】
<実施例2>
図5~7や
図9~12で示されたように、実施例2の雌型布帛10は、経パイル織物(一方の生地15と他方の生地16が連結糸(経パイル糸)で連結された二重経パイル織物)における一方の生地15に含まれる溶解性繊維Y(溶解性繊維Yの糸(マルチフィラメント糸))を溶解して、複数の雌パイル繊維12であるループパイルが、雌基布16上で、互いに絡み合ってウェブ状の雌パイル層12’が形成された布帛である。
尚、実施例2の雌型布帛10は、その雌パイル繊維12の単繊維繊度が約0.583dtexであり、雌パイル繊維12の直径12φは約7.0μmであり、雌パイル繊維の捲縮率が約23(22.9)%であり、雌パイル繊維12としてのパイル密度は214459.2本/(25.4mm)
2であり、雌パイル層12’の厚さは約1.0mmであると共に、雌型布帛10としての厚さが約1.4mmで、目付が約364g/m
2である。
ここで、実施例2における雌基布16となる織地は、織成工程S11における他方の生地16であって、経パイル織機において、経糸としてポリエステルマルチフィラメント糸(167dtex48フィラメント)が織り込まれ、緯糸としてポリエステルマルチフィラメント糸(167dtex48フィラメント)が織り込まれていて、雌パイル繊維12となる経パイル糸としてのポリエステル仮撚り加工糸(84dtex144フィラメント)は、織地の緯糸に対して1回浮いて1回沈むことを繰り返す織組織として織り込まれている。
又、実施例2における雌基布16となる織地は、機上で、経糸密度が165.1本/25.4mm、緯糸密度が86.4本/25.4mmであり、経パイル糸の経糸密度が137.9本/25.4mm、緯糸密度が86.4本/25.4mm、パイル糸としてのパイル密度は1439.3本/(25.4mm)
2である。
実施例2では、織成工程S11の後に、雌熱セット工程S11’、溶解工程S12を経て、複数の雌パイル繊維12であるループパイルが互いに絡み合ってウェブ状の雌パイル層12’が形成されている。
尚、織成工程S11における一方の生地15は、織地であって、経パイル織機において、経糸として、溶解性繊維Yの糸である水溶性ビニロン糸(220dtex50フィラメント)が、緯糸として、溶解性繊維Yの糸である水溶性ビニロン糸(84dtex24フィラメント)が織り込まれていて、雌パイル繊維12となる経パイル糸としてのポリエステル仮撚り加工糸(84dtex144フィラメント)は、織地の緯糸に対して1回浮いて1回沈むことを繰り返す織組織として織り込まれていた。
又、雌パイル繊維12の単繊維繊度は、約0.875dtexであっても良く、雌パイル繊維12となる経パイル糸としてポリエステル仮撚り加工糸は、84dtex96フィラメントであっても構わない。
【0087】
<比較例2-1>
比較例2-1の雌型の布帛は、経パイル織物(他方の生地のみに対して浮糸(経パイル糸)を織成した一重経パイル織物)において、当該浮糸がループパイルの雌側係合糸となる布帛である。
尚、比較例2-1の雌型の布帛は、その雌側係合糸の各繊維における単繊維繊度が約12.944dtexであり、雌側係合糸の各繊維の直径は約35.0μmであり、雌側係合糸の各繊維の捲縮率が約5%であり、雌側係合糸の各繊維としてのパイル密度は511.95本/(25.4mm)2であり、雌側係合糸の各繊維の高さは、約1.7mmであると共に、雌型布帛10としての厚さが約3.6mmで、目付が約922g/m2である。
ここで、比較例2-1における基布となる織地は、ニードル織機において、経糸として、ポリウレタン糸(1240dtex)をナイロン仮撚り加工糸(110dtex24フィラメント)でダブルカバリングした糸と、ダメージダイドウォッシュ加工糸の双糸(84dtex36フィラメント×2)が織り込まれ、緯糸として、ポリエステル仮撚り加工糸(220dtex、72フィラメント)と、ナイロン融着糸(110dtex34フィラメント)を混紡した糸が織り込まれていて、雌側係合糸となる経パイル糸としてのナイロン生糸(233dtex18フィラメント)は、織地の緯糸に対して8回浮いて2回沈んで2回浮いて2回沈むことを繰り返す織組織として織り込まれている。
又、比較例2-1における基布となる織地は、機上で、経糸密度が170.2本/25.4mm、緯糸密度が85.6本/25.4mmである。
尚、比較例2-1では、基布となる織地の経糸に、ポリウレタン糸が含まれているため、織成後に経パイル織機から離れた生機が経方向に収縮して、ループパイルの雌側係合糸である浮糸が、より上方に浮くこととなり、緯方向視で略カマボコ状のループパイルの雌側係合糸が形成され、実施例2より嵩高性は劣るが、ウェブ状の雌側のパイル層は形成されている。
【0088】
<比較例2-2>
比較例2-2の雌型の布帛は、経パイル織物(他方の生地のみに対して浮糸(経パイル糸)を織成した一重経パイル織物)において、当該浮糸がループパイルの雌側係合糸となる布帛である。
尚、比較例2-2の雌型の布帛は、その雌側係合糸の各繊維における単繊維繊度が約0.00467dtex(減量後の値)であり、雌側係合糸の各繊維の直径は約0.7μm(減量後の値)であり、雌側係合糸の各繊維の捲縮率が約2%であり、雌側係合糸の各繊維としてのパイル密度は1445.21本/(25.4mm)2であり、雌側係合糸の各繊維の高さは、約0.4mmであると共に、雌型布帛10としての厚さが約1.5mmで、目付が約548g/m2である。
ここで、比較例2-2における基布となる織地は、ニードル織機において、経糸として、ポリウレタン糸(940dtex)をポリエステル仮撚り加工糸(56dtex24フィラメント)でダブルカバリングした糸と、ポリエステル仮撚り加工糸の双糸(84dtex36フィラメント×2)が織り込まれ、緯糸として、ポリエステル仮撚り加工糸(167dtex48フィラメント)が織り込まれていて、雌側係合糸となる経パイル糸としてのポリエステル減量糸(減量前:112dtex20フィラメント、減量後:78dtex16720フィラメント)は、織地の緯糸に対して5回浮いて1回沈むことを繰り返す織組織として織り込まれている。
又、比較例2-2における基布となる織地は、機上で、経糸密度が121.9本/25.4mm、緯糸密度が91.4本/25.4mmである。
尚、比較例2-2では、基布となる織地の経糸に、ポリウレタン糸が含まれているため、織成後に経パイル織機から離れた生機が経方向に収縮するものの、雌側係合糸の各繊維が細過ぎてコシが弱く、雄型の布帛表面がヌメヌメとして全く嵩高性はなく、ウェブ状の雌側のパイル層は形成されていない。
【0089】
<剥離強度>
本発明における面ファスナ20における雄型布帛1と雌型布帛10との「剥離強度」は、フォースゲージ(株式会社イマダ製、型番DS2-5N)にて、試験片(幅1.5cm、雄雌の重なり長さ5.0cm)を測定した値、又は、JIS-L-3416:2000の7.4.2に準じて測定されても良い。
尚、本発明における「JIS-L-3416:2000の7.4.2に準じる」とは、JIS-L-3416:2000の7.4.2に記載された通りに測定されることを含む以外に、当該JISの記載を準用して(、又は、引張速度など一部を変更して)測定されることも含む。
この剥離強度測定試験では、雄型布帛1や雌型布帛10を、経方向が長手方向である試験片にて測定される。
雄型布帛1と雌型布帛10との剥離強度の値は、特に限定はないが、雄型布帛1と雌型布帛10における経方向を、略直交させた状態と略平行とした状態の少なくとも一方で、例えば、0.8N(ニュートン)/cm以上、好ましくは1.3N/cm以上、更に好ましくは1.6N/cm以上であっても構わない。
以下、この剥離強度の測定試験について述べる。
【0090】
<剥離強度の測定試験>
剥離強度の測定試験は、上述したフォースゲージ(又は、JIS-L-3416:2000の7.4.2)で、雄型布帛1の実施例1を共通する雄側として、雌側を、実施例2の雌型布帛10と、比較例2-1、2-2の雌型の布帛とした際において、雄型布帛1の経方向と、雌型布帛10や雌型の布帛における経方向を略平行とした状態にして、当該剥離強度の測定試験にて求めた剥離強度を比較する。
この剥離強度の測定試験における測定結果を、以下の表1に示す。
尚、剥離強度が0.8N/cm以上であれば、面ファスナとしての剥離強度が十分発揮されている評価で「○」とし、剥離強度が0.8N/cm未満であれば、面ファスナとしての剥離強度が十分発揮されていない評価で「×」とする。
【0091】
【0092】
<剥離強度測定試験の評価>
表1で示されたように、実施例2の雌型布帛10は、雌パイル繊維12の直径12φが雄型布帛1の返し部3の長さ3L以下であり、且つ、複数の雌パイル繊維12が互いに絡み合ったウェブ状の雌パイル層12’が形成されているため、剥離強度が1.873N/cmであって、0.8N/cm以上であることから、面ファスナとしての剥離強度が十分発揮されていると言える。
一方、比較例2-1は、ウェブ状のパイル層は形成されているものの、当該パイル層の嵩高性は実施例2より劣り、且つ、雌側係合糸の各繊維の直径が雄型布帛1の返し部3の長さ3Lより大きいため、剥離強度が0.265N/cmと非常に弱く、0.8N/cm未満であることから、面ファスナとしての剥離強度が十分発揮されていないと言える。
又、比較例2-2は、雌側係合糸の各繊維の直径は雄型布帛1の返し部3の長さ3Lより短いものの、ウェブ状のパイル層は形成されていないため、剥離強度が0.707N/cmとなって、0.8N/cm未満であることから、面ファスナとしての剥離強度が十分発揮されていないと言える。
【0093】
<その他>
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。雄型面ファスナ機能性布帛(雄型布帛)1や、雌型面ファスナ機能性布帛(雌型布帛)10、雄雌一対の面ファスナ20、雄型面ファスナ機能性布帛(雄型布帛)1、雌型面ファスナ機能性布帛(雌型布帛)10の製造方法などの各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することが出来る。
【0094】
雄型布帛1や雌型布帛10は、上述した経パイル織物やダブルラッシェル編物以外に、織物、編物又は不織布などの基布(雄基布6や雌基布16)にパイル繊維(雄パイル繊維2や雌パイル繊維12)を含む糸をタフト(植設)したものなどであっても良い。
雄型布帛1や雌型布帛10が、当該タフト(植設)したものであれば、当然、基布(雄基布6や雌基布16)は織物、編物又は不織布などとなる。
謂わば、基布(雄基布6や雌基布16)は、織物や編物、不織布などや、それらを組み合わせたものであっても良いと言える。
基布(雄基布6や雌基布16)が織物である場合、当該織物は、何れの織組織でも構わないが、例えば、平織や綾織、朱子織(5枚朱子織や、経出し変化朱子織など)、二重織、二重織以上の多重織などであっても良い。
又、基布(雄基布6や雌基布16)が編物である場合、例えば、当該編物は、トリコット編などの経編や、丸編などの緯編など、それぞれ何れの編組織であっても構わない。
更に、基布(雄基布6や雌基布16)が不織布である場合、当該不織布は、何れの構成でも構わないが、例えば、往復するニードルに繊維を引っ掛けて繊維相互間を交絡したニードルパンチ不織布や、ノズルから紡糸された長繊維(フィラメント)を動くスクリーン上に積層して結合させたスパンボンド不織布、熱融着性繊維を含有し加熱により成形されたサーマルボンド不織布、ステッチボンド不織布等をニードルパンチ法などによって結合させたものなどであっても良い。
【0095】
雄型布帛1や雌型布帛10は、所望により、酸化チタン、炭酸カルシウム等の体質顔料やフィラー(充填材)を任意に添加したり、消臭剤、抗菌剤、防カビ剤、難燃剤、撥水剤、防汚剤、着色剤、香料、発泡剤等を添加した素材を用いても良い。
雄型布帛1や雌型布帛10は、その色彩についても、黒色系、茶色系、青色系、白色系、赤色系、橙色系、黄色系、緑色系、紫色系など何れの色調でも良く、彩度や明度についても何れの値でも構わない。雄型布帛1の模様についても、無地や、花や草木などの植物の柄、動物の柄、幾何学模様、表面凹凸等による模様など何れでも良い。
雄パイル繊維2は、ループパイルであっても良く、この場合、ループ先端側が屈曲等して、返し部3を形成していても構わない。
【0096】
雄型布帛1の裏面1bや雌型布帛10の裏面10bに、バッキング樹脂を塗布して、バッキング層を形成しても良い。
バッキング樹脂の素材も、特に限定はないが、例えば、ポリウレタン(PU)樹脂や、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするポリアクリル樹脂、シリコーン樹脂などであったり、その他、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ナイロン(ポリアミド)樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、アセテート樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂(ビニロン樹脂)などの合成樹脂でも良く、これらを単独又は組み合わせて用いられても良い。
バッキング樹脂の塗布量(付着量)も、何れの値でも良いが、例えば、乾燥重量で、30g/m2以上180g/m2以下、好ましくは40g/m2以上170g/m2以下、更に好ましくは50g/m2以上160g/m2以下であっても構わない。
バッキング層の厚さも、何れの値でも良いが、例えば、20μm以上500μm以下(0.02mm以上0.50mm以下)、好ましくは15μm以上400μm以下(0.015mm以上0.400mm以下)、更に好ましくは10μm以上300μm以下(0.01mm以上0.30mm以下)であっても良い。
【0097】
雄型布帛1の製造方法における返し形成工程S1にて、雄パイル繊維2の先端側に返し部3が形成できるのであれば、例えば、雄型布帛1の表面側(雄パイル繊維2の先端側)を火で焙る等によって、雄パイル繊維2に返し部3を形成しても良い。
返し形成工程S1にて、熱ローラHに雄パイル繊維2の先端側を接触させることによって返し部3を形成する場合、上述では、熱ローラHと支持ローラGの間に長尺状の立毛布帛Rを通過させたが、その他の構成としては、支持ローラGを有さずに、長尺状の立毛布帛Rを張設しながら移動させ、雄パイル繊維2側を熱ローラHに接触させる構成などであっても良い。
【0098】
雄型布帛1の製造方法における布帛構成工程S0-1にて、雄型布帛1が織物、編物又は不織布などの雄基布6に雄パイル繊維2を含む糸をタフト(植設)したものである場合、雄基布6が織物である場合には、布帛構成工程S0-1は、織物織成工程S0-1であると言え、雄基布6が編物である場合には、布帛構成工程S0-1は、編物編成工程S0-1であると言え、雄基布6が不織布である場合には、布帛構成工程S0-1は、不織布形成工程S0-1であると言える。
ここで、織物織成工程S0-1の場合、当該工程で用いられる織機も、特に限定はないが、例えば、ドビー織機や、ジャガード織機、ブルモケット織機、ワイヤモケット織機などであっても良い。
又、編物編成工程S0-1の場合、当該工程で用いられる編機は、特に限定はないが、例えば、トリコット編機や、ダブルラッシェル編機等の経編機や、丸編機等の緯編機などであっても良い。
更に、不織布形成工程S0-1の場合、当該工程で用いられる製造装置も、特に限定はないが、例えば、往復するニードルに繊維を引っ掛けて繊維相互間を交絡するニードルパンチ機や、ノズルから紡糸された長繊維(フィラメント)を動くスクリーン上に積層して結合させるスパンボンド機、熱融着性繊維を加熱により成形するサーマルボンド機、ステッチボンド不織布等をニードルパンチ法などによって結合させる装置などであっても構わない。
【0099】
雌型布帛10の製造方法は、雌熱セット工程S11’を、織成工程S11と溶解工程S12の間に行っていたが、織成工程S11と溶解工程S12を行った後に、雌熱セット工程S11’を行っても良い。
雌型布帛10の製造方法は、雌型布帛10がダブルラッシェル編物における連結糸をセンターカットしたものである場合、溶解性繊維Yを含む一方の生地と、溶解性繊維Yを含まない他方の生地との間を、経編パイル糸で連結して、二重編物を編成する編成工程と、この編成工程の後に、その二重編物の一方の生地における溶解性繊維Yを溶解して、雌パイル繊維であるループパイルを形成する溶解工程を備えていても良い。
雌型布帛10の製造方法では、織物、編物又は不織布などの雌基布16に、雌パイル繊維12を含む糸をループパイルとしてタフト(植設)して、雌型布帛10であっても良い。
【0100】
雄型布帛1や雌型布帛10の製造方法は、バッキング工程を備えていても良い。
バッキング工程は、雄型布帛1の裏面1bや雌型布帛10の裏面10bに、バッキング樹脂を塗布して、バッキング層を形成する工程である。
バッキング工程では、バッキング樹脂を、雄型布帛1の裏面1bや雌型布帛10の裏面10bに、エマルジョン状態で塗布しても良い。
塗布の具体的な手段は、特に限定するものではないが、刷毛等による塗布や、スプレー塗布のほか、コンマ・ダイレクト法、グラビア・ダイレクト法、グラビア・リバース法、リバースロールコート法、エアーナイフコート法、キスコート法等を使用したり、その他、薄膜コーター、ロールプリント加工機、インクジェットプリント加工機、ローターダンプニング等を用いても良い。
又、バッキング樹脂をエマルジョン状態で塗布する際、その溶媒は、水や有機溶剤などであっても良く、溶媒が水である場合、塗布するバッキング樹脂は、水系ポリアクリル樹脂エマルジョンや、水系ポリウレタン樹脂エマルジョン等となる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明に係る雄型面ファスナ機能性布帛や、雌型面ファスナ機能性布帛、雄雌一対の面ファスナ、及び、本発明に係る雄型面ファスナ機能性布帛、雌型面ファスナ機能性布帛の製造方法により製造された雄型面ファスナ機能性布帛、雌型面ファスナ機能性布帛は、衣服や、自動車(乗用車)のカーシートの表皮材、内装材などとして使用して出来る他、鉄道車両、航空機、船舶等の乗り物の内部(室内)における椅子や内装材(内壁材、天井材、床材など)等を覆うものとして利用可能である。
この他、本発明に係る雄型面ファスナ機能性布帛や、雌型面ファスナ機能性布帛、雄雌一対の面ファスナ、及び、本発明に係る雄型面ファスナ機能性布帛、雌型面ファスナ機能性布帛の製造方法により製造された雄型面ファスナ機能性布帛、雌型面ファスナ機能性布帛は、衣服や、自動車のカーシートの表皮材、内装材など乗り物の内部だけでなく、家屋やビル等の建物の内部における椅子やベッド等の家具類や、壁材、天井材、床材等の内装材、照明器具などを覆う際に利用可能である他、更には、産業資材用途、靴などの生活資材用途などに利用しても良い。
【符号の説明】
【0102】
1 雄型面ファスナ機能性布帛(雄型布帛)
2 雄パイル繊維
3 返し部
10 雌型面ファスナ機能性布帛(雌型布帛)
12 雌パイル繊維
12’ 雌パイル層
15 一方の生地
16 他方の生地
17 二重織物
20 雄雌一対の面ファスナ
S1 返し形成工程
S11 織成工程
S12 溶解工程
Y 溶解性繊維