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  • 特開-OCT装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036253
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】OCT装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141085
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】西出 蒼
(72)【発明者】
【氏名】馬野 博之
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 光
(72)【発明者】
【氏名】吉田 泰清
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA01
4C316AA09
4C316AB02
4C316AB03
4C316AB11
4C316AB12
4C316AB16
4C316FC01
(57)【要約】
【課題】 低温環境下であっても速やかに撮影可能になるOCT装置を提供すること。
【解決手段】 OCT装置は、熱源と、被検眼に照射された測定光と、参照光と、の干渉光を検出する検出器と、前記熱源からの熱で前記検出器が暖められるように、前記熱源と前記検出器とを収容する収容部と、を備える。例えば、低温環境下において、熱源からの熱で検出器が暖められることによって、OCT装置の電源投入時から、スペクトル干渉信号を適正に検出できるようになる迄、の検出器の暖機に要する時間を短縮できる。したがって、低温環境下であっても速やかに撮影可能になる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源と、
被検眼に照射された測定光と、参照光と、の干渉光を検出する検出器と、
前記熱源からの熱で前記検出器が暖められるように、前記熱源と前記検出器とを収容する収容部と、
を備えるOCT装置。
【請求項2】
被検眼上で測定光を走査するための走査部と、前記走査部からの測定光を被検眼に導く対物光学系と、を備える撮影ユニットと、
前記撮影ユニットの下部に配置されるベースユニットと、を備え、
前記ベースユニットに前記収容部を有する、請求項1記載のOCT装置。
【請求項3】
前記収容部は、前記熱源からの熱を前記検出器に導くための送風デバイスを更に有する、請求項1又は2記載のOCT装置。
【請求項4】
前記検出器は、前記送風デバイスの駆動に基づいて形成される空気の流路において、前記熱源および前記送風デバイスの下流側に配置される、請求項3記載のOCT装置。
【請求項5】
前記検出器の温度監視のためのセンサを有し、前記センサによって検出される温度に応じて前記送風デバイスの駆動制御が行われる、請求項4記載のOCT装置。
【請求項6】
前記熱源は、プロセッサ、電源回路、光学部品のドライバおよび電源回路、通信回路、光源、および、アクチュエータ本体、のいずれかである、請求項1から5のいずれかに記載のOCT装置。
【請求項7】
前記検出器は、前記測定光と前記参照光との干渉光を分光するグレーディングと、分光された干渉光を検出する受光素子とを少なくとも含む複数の光学素子、がマウント部に保持されたスペクトロメータである、請求項1から6のいずれかに記載のOCT装置。





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、OCT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科分野では、被検眼の組織の断層画像を撮影する装置である、光干渉断層計(Optical Coherence Tomography:OCT)が知られている。
【0003】
OCT装置において、光学系の熱的変化が問題となっていた。例えば、OCT装置においては、特許文献1に開示される、SD-OCTの検出器であるスペクトロメータにおける光路長の熱膨張を抑制するための、スペクトロメータの保持部における機構が開示されている。スペクトロメータがマウントされる光学基台が熱膨張しても、スペクトロメータの光路長の全長が伸びることが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-035949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、寒冷地等においては、OCT装置が冷え切った状態から装置が立ち上げられる場合がある。例えば、検出器の受光素子が、低温での信号検出に不利な温度特性を有している場合がある。また、SD-OCTの場合、低温側でのスペクトロメータの熱的変形についても問題となり得る。結果として、低温環境下では、装置が立ち上げられてから検出器が十分に温められるまでの間に撮影しても、適切な画質の画像が得られない場合があった。
【0006】
これに対し、本開示は従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、低温環境下であっても速やかに撮影可能になるOCT装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係るOCT装置は、熱源と、被検眼に照射された測定光と、参照光と、の干渉光を検出する検出器と、前記熱源からの熱で前記検出器が暖められるように、前記熱源と前記検出器とを収容する収容部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、低温環境下であっても速やかに撮影可能になるOCT装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例に係るOCT装置の全体構成を示す図である。
図2】OCT装置の光学系を示した図である。
図3】実施例に係る基台内部を概略的に示した図である。
図4】変形例に係る基台内部を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
「概要」
まず、本開示の例示的な実施形態について説明する。なお、各実施形態に係る構成は、適宜、他の実施形態に組み合わせることができる。
【0011】
<第1の実施形態>
第1の実施形態に係るOCT装置は、被検眼のOCTデータを取得する。第1の実施形態に係るOCT装置は、少なくとも、熱源と、検出器と、収容部と、を備える。本開示において、熱源と検出器とは別体である。
【0012】
検出器は、被検眼に照射された測定光と、参照光と、のスペクトル干渉信号を検出する。収容部は、熱源からの熱で検出器が暖められるように、熱源と検出器とを収容する。例えば、低温環境下において、熱源からの熱で検出器が暖められることによって、OCT装置の電源投入時から、スペクトル干渉信号を適正に検出できるようになる迄、の検出器の暖機に要する時間を短縮できる。
【0013】
OCT装置は、SD-OCT(Spectral-domain OCT)であってもよい。この場合、検出器は、少なくとも、グレーディングと、受光素子と、を含む複数の光学素子がマウント部に保持されたスペクトロメータであってもよい。グレーディングは、測定光と参照光との干渉光を分光する光学素子である。受光素子は、分光された光を検出する。典型的なスペクトロメータでは、受光素子としてラインセンサが利用される。検出器とは別体の熱源からの熱でスペクトロメータが暖められることで、例えば、低温環境下に起因する光学素子の保持間隔の変位が抑制される。また、例えば、ラインセンサの温度特性が低温での信号検出に不利であったとしても、より短時間で環境温度を適正温度としたうえで動作させることができる。
【0014】
熱源は、専用のヒーターであってもよいが、必ずしも専用品である必要は無い。熱源は、OCT装置を動作させるための電気部品によって兼用されていることがより望ましい。例えば、プロセッサ、電源回路、光学部品のドライバ(制御回路)および電源回路、通信回路、光源、および、アクチュエータ本体、のいずれかが、熱源として利用されてもよい。なお、プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路であってもよい。
【0015】
例えば、OCT装置が、光を被検眼上で走査するためのスキャナを有する場合、スキャナの電源回路が、OCT装置において特に熱量が多い熱源の1つとなる。スキャナは、OCT光学系において、測定光を走査するために利用されるデバイスであってもよいし、観察光学系(例えば、SLO光学系)において、観察光を走査するために利用されるデバイスであってもよい。
【0016】
前述したように、収容部内には、熱源からの熱で検出器が暖められるように、熱源と検出器とが収容される。収容部内において、熱源と検出器とは十分に近接して配置されていてもよい。また、収容部は、熱源からの熱を検出器に導くための送風デバイスを更に有していてもよい。この場合、送風デバイスが駆動することによって空気の流路が形成される。検出器は、当該流路における熱源および送風デバイスの下流側に配置されことが望ましい。この場合、送風デバイスは、熱源よりも上流側、または、熱源と検出器との間、のいずれかに配置されていると好ましい。送風デバイスが配置されることによって、検出器が、熱源からの熱によって、効率良く暖められる。
【0017】
第1の実施形態に係るOCT装置は、検出器の温度監視のためのセンサを有していてもよい。送風デバイスを有する場合、センサによって検出される温度に応じて送風デバイスの駆動制御が行われてもよい。例えば、温度が閾値以上の場合に送風デバイスからの送風を停止することで、検出器の温度が適正動作温度に対して高くなることを抑制できる。送風デバイスの駆動制御は、デバイスのオン/オフの切換のほか、風量の調整、および、風向き変更、のいずれかに関する制御であってもよい。
【0018】
また、OCT装置は、装置のスリープ時(節電状態)等において、検出器への電源供給を停止させている間に、熱源となる電気部品は運転していてもよい。これにより、節電状態から復帰した際に、速やかに撮影を行うことができる。
【0019】
また、第1の実施形態に係るOCT装置は、装置が立ち上げられてからの最初の被検眼の撮影が、センサによって検出される温度に応じて制御されてもよい。例えば、閾値以上の温度が検出された場合に、被検眼の撮影を許容し、閾値以下の場合に、被検眼の撮影を制限しても良い。撮影の制限は、撮影が行われないように装置をロックする他、適正動作温度に到っていない旨を被検者に対して報知してもよい。
【0020】
第1の実施形態に係るOCT装置は、撮影ユニットと、ベースユニットと、を有していても良い。撮影ユニットは、被検眼上で測定光を走査するための走査部と、走査部からの測定光を被検眼に導く対物光学系と、を備えていてもよい。撮影ユニットに配置される、走査部および対物光学系を含む光学系を、導光光学系と称する場合がある。ベースユニットは、撮影ユニットの下部に配置されてもよい。撮影ユニットは、被検眼と撮影ユニットとの光軸との位置合わせ(アライメント)に利用される駆動部を介して、ベースユニットに支持されていてもよい。この場合において、熱源および検出器を収容する収容部は、ベースユニットに設けられていることが望ましい。これにより、撮影ユニットに収容された光学系に対する、熱源からの熱の影響(例えば、熱膨張や熱変位に起因する精度の低下)が抑制される。
【0021】
また、撮影ユニットに配置される光学部品を制御するための制御回路および電源回路は、光学部品と共に撮影ユニットに配置される方が電気的には合理的な構成である。一方、上記の制御回路および電源回路の少なくともいずれかを熱源として、あえてベースユニットに配置することで、撮影ユニットに収容された光学系に対する熱の影響が抑制されると共に、撮影ユニットを小型化できる。
【0022】
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係る走査型眼底撮影装置は、撮影ユニットと、ベースユニットと、少なくとも走査部を含む複数の光学部品と、走査部のドライバおよび電源回路、を少なくとも有する。第2の実施形態に係る走査型眼底撮影装置は、OCT装置であってもよいし、SLO(Scanning Light Ophthalmoscope)装置であってもよいし、OCT装置とSLO装置とが一体化された複合装置であってもよい。
【0023】
第2の実施形態において、撮影ユニットは、少なくとも走査部を含む複数の光学部品からなる撮影光学系を収容する。撮影ユニットには光学基台が設けられていても良く、撮影光学系に含まれる複数の光学部品は、光学基台に固定保持されていてもよい。
【0024】
ベースユニットは、撮影ユニットを支持する。ベースユニットは、アライメント駆動部を介して、撮影ユニットを支持してもよい。第2の実施形態において、ベースユニットは、走査部のドライバおよび電源回路を収容している。これにより、走査部のドライバおよび電源回路から生じる熱が、撮影ユニット内の撮影光学系に影響しにくい。
【0025】
走査部のドライバおよび電源回路は、走査部本体の近傍に配置したほうが、走査部本体から離間させて配置するよりも、近傍電気設計としては合理的である。しかしながら、走査部のドライバおよび電源回路から生じる熱は比較的大きなものであるため、仮に、撮影ユニット側に配置されていると、撮影光学系の熱的変形の原因となる。また、仮に、撮影ユニット側に配置されていると、走査部のドライバおよび電源回路から生じる熱によって、撮影ユニットの内部における空気の対流が促進され、埃が撮影光学系に付着しやすくなってしまう。これに対し、第2の実施形態では、走査部のドライバおよび電源回路が、あえて、ベースユニットに配置されていることによって、撮影光学系において、熱的変形が抑制されやすく、空気の対流による埃の付着が抑制されやすいため、撮影光学系の性能が維持されやすい。更には、撮影ユニットをコンパクト化しやすくなる。
【0026】
第2の実施形態に係る走査型眼底撮影装置がOCT装置である場合は、第1の実施形態と同様に、走査部のドライバおよび電源回路から生じる熱を利用して検出器が速やかに適正動作温度で動作させるために、ベースユニットに検出器を配置してもよい。また、第1の実施形態と同様に、送風デバイスが配置されていてもよい。
【0027】
検出器がスペクトロメータである場合、スペクトロメータの各部(各光学部品)は、鏡筒によって固定保持されていてもよい。これにより、ベースユニットの内部が、走査部のドライバおよび電源回路から生じる熱によって、又は、送風デバイスからの風によって、埃が舞いやすい状態であったとしても、スペクトロメータへの埃の侵入が鏡筒によって抑制される。結果、埃による、撮影性能の低下が抑制されやすい。
【0028】
「実施例」
以下、図面を参照しつつ、本開示の1つの実施例であるOCT装置1を説明する。実施形態に係るOCT装置1は、SD-OCTである。OCT装置1は、被検眼のOCTデータを取得する。特に断りが無い限り、本実施形態では、被検眼のOCTデータの一例として、眼底のOCTデータが撮影されるものとする。
【0029】
はじめに、図1を参照し、本実施形態に係るOCT装置1の概略構成を説明する。図1に示すように、OCT装置1は、撮影装置本体1Aと、制御装置1Bと、を含む。制御装置1Bは、撮影装置本体1Aの撮影制御、および、撮影結果の解析処理等を行う。制御装置1Bは、例えば、PCであってもよい。
【0030】
図1に示すように、撮影装置本体1Aは、撮影ユニット2、基台(ベースユニットの一例)3、駆動部5、顔支持ユニット7、を有する。図1に示すように、本実施例では、基台3の上に、駆動部5および撮影ユニット2が配置されている。顔支持ユニット7は、基台3に取り付けられている。
【0031】
撮影ユニット2には、OCT装置1の光学系が収容される。駆動部5は、撮影ユニット2を、被検眼Eに対してXYZの各方向に移動させる。駆動部5には、各可動方向に撮影ユニット2を移動させるためのアクチュエータを有する。顔支持ユニット7は、被検者の顔を支持する。
【0032】
<撮影ユニット>
撮影ユニット2は、OCT装置1における主要な光学系を有する。本実施例において、撮影ユニット2は、OCT光学系(干渉光学系)10の一部と、導光光学系10aと、眼底観察光学系(SLO光学系)30と、前眼部観察光学系40(前眼部観察光学系)と、を有する。これらは、駆動部5によって移動される図示なき光学ベースに対して設置されている。OCT光学系10、眼底観察光学系30、前眼部観察光学系40、の光路は、ビームスプリッタ/コンバイナ16,17によって分岐/結合される。
【0033】
<OCT光学系>
OCT光学系10は、被検眼Eの眼底に照射される測定光と参照光とのスペクトル干渉信号を検出する。
【0034】
OCT光学系10は、OCT光源11、光分割器12、参照光学系20、および、検出器25を少なくとも有する。図2に示すように、本実施例では、OCT光源11、光分割器12、参照光学系20、および、検出器25のうち、OCT光源11、光分割器12、および、参照光学系20は、撮影ユニット2に収容されており、検出器25は、基台3に収容されている。撮影ユニット2に配置される光分割器12と、基台3に配置される検出器25とは、ファイバ23によってユニットをまたいで接続されている。
【0035】
OCT光源11は、低コヒーレント光を発する。OCT光源11から出射された光は、光分割器12によって、測定光と参照光とに分割される。本実施例において、光分割器12は、カップラ(スプリッタ)が利用される。測定光は、導光光学系10aを介して被検眼Eへ導かれ、参照光は、参照光学系20へ導かれる。図1において、ポラライザ13は、参照光路上に配置されている。本実施例における参照光学系20は、反射型の光学系である。但し、参照光学系20は、透過型の光学系であってもよい。本実施例において、参照光は、参照光路上に配置された図示なきミラーによって折り返され、光分割器12によって、測定光の戻り光と合波された状態で、基台3に設けられた検出器25へ入射する。これにより、戻り光と、参照光とのスペクトル干渉信号が検出される。例えば、SD-OCTにおいては、スペクトロメータが検出器25として利用される(詳細は後述する)。
【0036】
本実施例において、参照光学系20配置される図示なきミラーは、光軸に沿って移動可能であって、ミラーの位置に応じて測定光と参照光との光路長差が調整される。また、ポラライザ13によって、測定光と参照光との偏光が調整される。
【0037】
その他、光分割器12と被検眼Eとの間の光路上には、フォーカシングレンズ14、走査部(光スキャナ)15、および、対物レンズ60、が配置されている。フォーカシングレンズ14、走査部(光スキャナ)15、および、対物レンズ60、を含む、光分割器12と被検眼Eとの間の光学系によって、本実施例における導光光学系10aが形成されている。
【0038】
本実施例では、フォーカシングレンズ14が光軸方向へ変位されることによって、OCT光学系10におけるフォーカス位置が変更される。
【0039】
走査部15は、OCT画像の取得位置を変更するために利用される。走査部15は、測定光を、被検眼Eの眼底において二次元的に走査させるために利用されてもよい。走査部15は、例えば、走査方向が互いに異なる2つの光スキャナを含んでいてもよい。本実施例では、光スキャナとして、X,Yのそれぞれの方向と対応する2つのガルバノスキャナが利用される。但し、光スキャナは、必ずしもガルバノスキャナに限定されるものではなく、その他の光スキャナであってもよい。
【0040】
対物レンズ60は、測定光を被検眼における眼底へ導く。対物レンズ60を介して走査部15と共役な位置を旋回点として、測定光は旋回される。図1に示すように、旋回点に被検眼の前眼部が位置する場合、測定光は虹彩でケラレることなく眼底に到達し、走査部15の駆動に基づいて眼底上で測定光が走査される。この場合、測定光の集光面は眼底上に形成される。
【0041】
<眼底観察光学系>
眼底観察光学系30は、観察画像として、眼底の正面画像を取得するために利用される。眼底観察光学系30を介して、眼底の正面画像が、観察画像として取得される。
【0042】
図1では、眼底観察光学系30の一例として、SLO光学系が示されている。眼底観察光学系30は、照射光学系と、受光光学系と、を少なくとも有していてもよい。照射光学系は、被検眼の撮影部位に対して観察光を照射する。受光光学系は、観察光による眼底反射光を受光素子39によって受光する。受光素子30からの出力信号に基づいて観察画像が逐次取得される。
【0043】
眼底観察光学系30は、更に、フォーカス調整部を有する。フォーカス調整部は、フォーカシングレンズ34を含む。
【0044】
観察光源31には、例えば、レーザダイオード光源が用いられる。観察光路には、フォーカシングレンズ34の他に、走査部35、および、対物レンズ60が配置されている。走査部35は、被検眼の撮影部位において二次元的に光を走査する。走査部35は、例えば、ポリゴンミラーと、ガルバノスキャナとの組み合わせを含んでいてもよい。
【0045】
また、観察光源31とフォーカシングレンズ34との間には、ビームスプリッタ33が配置されている。そして、ビームスプリッタ33の透過方向には、共焦点開口37と、受光素子39と、が配置されている。
【0046】
観察光は、ビームスプリッタ33によって反射された後、フォーカシングレンズ34を介して、走査部35に達する。走査部35を経た光は、ビームスプリッタ17を透過した後、対物レンズ60を介して、被検眼の眼底に照射される。
【0047】
眼底からの反射光は、投光経路を遡って、ビームスプリッタ33まで導かれる。眼底からの反射光は、ビームスプリッタ33を透過し、更に、共焦点開口37を介して、受光素子39によって受光される。受光素子39からの受光信号に基づいて、眼底の正面画像が形成される。形成された正面画像は、メモリ72に記憶されてもよい。
【0048】
<前眼部観察光学系>
前眼部観察光学系40は、被検眼Eの前眼部の正面画像(観察画像という)を観察するために利用される。前眼部観察光学系40は、少なくとも撮像素子45を有する。本実施例では、撮像素子45に前眼部の像が結像する。前眼部観察光学系40を介して取得される前眼部の観察画像は、眼底撮影時における被検眼Eする撮影ユニット2のアライメントおよび追従制御(トラッキング)に利用される。
【0049】
<固視投影光学系>
OCT装置1は、固視標投影光学系を更に有する。固視標投影光学系は、内部固視灯であってもよい。固視標投影光学系は、被検眼Eに対して固視標(固視光束)を投影することによって、被検眼Eの視線方向を誘導する。本実施例において、固視標投影光学系は、固視標の呈示位置を2次元的に変更でき、被検眼Eを複数の方向に誘導できる。結果的に撮像部位が変更される。本実施例において、固視投影光学系は、SLO光学系である眼底観察光学系30によって兼用される。観察光源とは異なる可視光源を設け、可視光の投影タイミングを制御することによって、被検眼Eに対して固視標が投影される。
【0050】
<基台(ベースユニット)>
図2に示すように、本実施例において、基台3には、検出器25、回路基板210、および、ファン220が収容されている。回路基板210には、種々の電気回路が設けられている。
【0051】
前述の通り、本実施例における検出器25は、スペクトロメータである。検出器25は、一例として、コリメート系25b、グレーディング(分散素子)25d、結像系25e,25f、および、撮像素子(受光素子の一例)25gを備える。追加的に、本実施例の検出器25は、折り曲げミラー25cを備えており、これによって、検出器25の全長が抑制されている。検出器25の各部は、図示なきベース(光学基板)上に固定保持されている。各部は、マウントや鏡筒を介して固定保持されていてもよい。
【0052】
干渉光は、ファイバ23の端部25aから検出器25に導かれる。その後、干渉光は、コリメート系25b、グレーディング(分散素子)25d、結像系25e,25f、を経て、撮像素子25g(例えば、ラインセンサ)に受光される。
【0053】
図2の検出器25における各部の保持間隔(特に、ファイバ23の端部25aからコリメート系25bまでの間隔、および、結像系25e,25fと撮像素子25gとの間隔)は、環境温度に応じて変化する。環境温度が適正温度の範囲外である場合に、所期の感度性能が得られなくなってしまう場合がある。また、撮像素子25gは、低温側で感度が減衰する温度特性を有する。眼底OCTの場合、測定光の戻り光は微弱であるため、低温下で撮像素子25gの感度が減衰していると、眼底のOCTデータが、適切に得られない場合がある。
【0054】
これに対し、本実施例では、図3に示す配置で、検出器25と、回路基板210と、ファン220と、が基台3の内部に収容されている。
【0055】
本実施例において、回路基板210には、撮影ユニット2に配置される光学部品の制御回路および電源回路として、OCT撮影用の走査部15に対応する制御回路および電源回路が、少なくとも設けられている。OCT撮影において、測定光が眼底上で高速にスキャンされるため、走査部15の制御回路および電源回路からの発熱量は、装置本体1Aに設けられる各種電気部品の中でも比較的大きい。
【0056】
仮に、発熱量の大きな電気部品が撮影ユニット2側に配置されていると、撮影ユニット2に収容される各種光学部品の熱的変形の原因となる。また、撮影ユニット2の内部における空気の対流が発熱によって促進され、埃が光学系に付着しやすくなってしまう。これに対し、本実施例では、撮影ユニット2に収容される光学部品に対応する電気部品のうち、発熱量の大きな部品の1つである、OCT撮影用の走査部15の制御回路および電源回路が、あえて、光学部品本体(ガルバノスキャナ本体)が配置される撮影ユニット2から離れた、基台3に収容されている。これにより、撮影ユニット2に収容される各種光学部品の熱的変形が抑制される。また、撮影ユニット2に配置された光学系に対する埃の付着が抑制されるので、撮影性能が維持されやすくなる。
【0057】
追加的に、本実施例において、回路基板210には、汎用電源回路(例えば、DCDC電源)、各種光学部品の制御回路(例えば、ドライバIC)および電源回路(例えば、電源IC)、プロセッサ(例えば、FPGA)、外部コンピュータ(例えば、PC)との通信回路、等が設けられている。代替的な実施例において、これらの回路のいずれかが、熱源230として利用されてもよい。各々の回路は、同一の基板上に配置されていても良いし、複数の基板に分散して配置されていてもよい。各種光学部品の制御回路および電源回路のうち、OCT撮影用の走査部15に対応する回路以外のものとしては、例えば、SLO撮影用の走査部35の制御回路および電源回路、光源11,31本体、光源11,31の制御回路、等が挙げられる。各種光学部品の制御回路および電源回路が、撮影ユニット2ではなく、基台3に収容されていることで、上記の通り、撮影ユニット2に配置される光学系の熱的変化を抑制できる。更に、撮影ユニット2が小型化されやすい。
【0058】
また、代替的な実施例では、回路基板210上に実装されない電気部品(例えば、ACDC電源等)が、熱源230として利用されてもよい。
【0059】
ファン220は、回路基板210に配置された回路を冷却して故障を防ぐと共に、回路から発せられた熱で検出器25を暖めるために利用される。図3では、ファン220からの空気の流れを点線矢印によって示している。本実施例では、風向きが走査部15の電源回路を向くように、ファン220が配置される。これにより、発熱量の大きな走査部15の電源回路が好適に冷却されて故障が抑制される。
【0060】
また、図3に示すように、検出器25は、走査部15の電源回路の下流側に配置される。つまり、走査部15の電源回路の周辺を通過して暖められた風が当たる位置に、検出器25は配置される。これにより、走査部15の電源回路を熱源230として、検出器25が暖められる。これにより、検出器25の環境温度を短時間で適正温度としたうえで動作させることができる。図3では、ファン220と、熱源230(走査部15の電源回路)と、検出器25とが一列に並んでいないが、これらを一列に並べて配置すれば、検出器25をより短時間で所期する温度まで暖めることができる。
【0061】
また、図3では、ファン220の下流側に、熱源230と、検出器25とが順に配置されているが、ファン220は、熱源230と検出器25との中間に配置されていてもよい。
【0062】
なお、本実施例では、基台3に熱源230と、ファン220と、が配置されていることで、基台3の内部では埃が舞いやすくなってしまう。これに対し、スペクトロメータを構成する検出器25の各部(図2参照)を鏡筒によって固定保持することで、検出器25への埃の侵入を抑制してもよい。
【0063】
「変形例」
以上、実施形態に基づいて本開示を説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0064】
例えば、検出器25が熱源230からの熱によって過度に暖められることを抑制するために、図4に示すように、温度センサ240を設け、温度センサ240で検出される温度に応じてファン220を制御してもよい。図4に示すように、温度センサ240は、検出器25の近傍に設置されており、検出器25の温度監視のために利用される。温度センサ240は、熱源230の下流側に配置されていてもよい。例えば、温度が閾値以下の場合に、ファン220を駆動し、閾値を上回る場合にファン220を停止させてもよい。温度に基づくファン220の駆動制御はヒステリシス制御であってもよい。
【0065】
また、例えば、上記実施例では、OCT装置1は、SD-OCTであったが、必ずしもこれに限られるものでは無く、他の撮影方式が採用されてもよい。例えば、TD-OCT(Time-domain OCT)であってもよいし、SS-OCT(SweptSource OCT)であってもよい。これらの場合も、検出器の受光素子が、低温での信号検出に不利な温度特性を有している場合において、速やかに適正温度で撮影できるようになる。
【符号の説明】
【0066】
1 OCT装置
3 基台(ベースユニット)
25 検出器(スペクトロメータ)
230 熱源
図1
図2
図3
図4