(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003627
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】コイル部品の製造方法及びコイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 41/04 20060101AFI20240105BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20240105BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
H01F41/04 B
H01F17/04 F
H01F17/04 A
H01F27/32 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102898
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】大場 暁海
【テーマコード(参考)】
5E044
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E044CA03
5E062FF02
5E062FF03
5E070AB02
5E070BB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】素体の表面における表面抵抗の低下を抑制することが可能なコイル部品の製造方法及びコイル部品を提供する。
【解決手段】コイル部品の製造方法は、金属磁性粒子を含む未焼結磁性層と未焼結コイル導体層とが積層された未焼成の積層体ブロックを作製する工程、未焼成の積層体ブロックを加圧する工程、未焼成の積層体ブロックを焼成し焼成済みの積層体ブロックを作製する工程、焼成済みの積層体ブロックに樹脂を含侵する工程、その表面をけがくことで積層体ブロックの表面に破断起点を形成する工程、積層体ブロックの表面のうち、破断起点を形成した面とは反対側の面から破断起点に対して押し込み力を加えてチップ単位に破断することで素体内部にコイルを有する積層体を得て、積層された磁性層とコイル導体層を含む積層体を作製する工程及びめっき処理により積層体の外表面又は焼成済みの積層体ブロックの外表面に外部電極を形成する工程とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属磁性粒子を含む未焼結磁性層と未焼結コイル導体層とが積層された未焼成の積層体ブロックを作製する工程と、
前記未焼成の積層体ブロックを加圧する工程と、
前記未焼成の積層体ブロックを焼成することで、前記金属磁性粒子を含む磁性層とコイル導体層とが積層された焼成済みの積層体ブロックを作製する工程と、
前記焼成済みの積層体ブロックに樹脂を含侵する工程と、
前記樹脂を含侵した前記焼成済みの積層体ブロックの表面をけがくことで、前記焼成済みの積層体ブロックの表面に破断起点を形成する工程と、
前記樹脂を含侵した前記焼成済みの積層体ブロックの表面のうち、前記破断起点を形成した面とは反対側の面から前記破断起点に対して押し込み力を加えて前記焼成済みの積層体ブロックをチップ単位に破断することで、素体の内部にコイルが設けられた積層体として、前記素体は、積層された複数の前記磁性層を含み、前記コイルは、積層された複数の前記コイル導体層を含む積層体を作製する工程と、
めっき処理により、前記積層体の外表面又は前記焼成済みの積層体ブロックの外表面に、前記コイルと電気的に接続される外部電極を形成する工程と、を備える、コイル部品の製造方法。
【請求項2】
前記外部電極は、前記焼成済みの積層体ブロックを破断した後の前記積層体の外表面に形成される、請求項1に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項3】
前記焼成済みの積層体ブロックを破断する工程と、前記外部電極を形成する工程との間に、前記積層体の外表面の一部の領域に絶縁層を形成する工程をさらに備え、
前記外部電極は、前記絶縁層で囲まれた領域に形成される、請求項2に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項4】
前記外部電極は、前記樹脂を含侵した後、前記破断起点を形成する前の前記焼成済みの積層体ブロックの外表面に形成される、請求項1に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項5】
前記焼成済みの積層体ブロックに樹脂を含侵する工程と、前記外部電極を形成する工程との間に、前記焼成済みの積層体ブロックの外表面の一部の領域に絶縁層を形成する工程をさらに備え、
前記外部電極は、前記絶縁層で囲まれた領域に形成される、請求項4に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項6】
前記素体の内部には、1つの前記コイルが配置されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項7】
前記素体の内部には、複数の前記コイルが配置されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項8】
素体の内部にコイルが設けられ、前記素体は、積層された複数の磁性層を含み、前記コイルは、積層された複数のコイル導体層を含む積層体と、
前記素体の外表面に設けられ、前記コイルと電気的に接続される外部電極と、を備え、
前記磁性層は、金属磁性粒子を含み、
前記素体には、樹脂が含侵されており、
前記素体は、高さ方向に相対する第1の主面及び第2の主面と、前記高さ方向に直交する長さ方向に相対する第1の端面及び第2の端面と、前記高さ方向及び前記長さ方向に直交する幅方向に相対する第1の側面及び第2の側面と、を有し、
前記第1の端面、前記第2の端面、前記第1の側面及び前記第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaは、前記第1の主面及び前記第2の主面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaよりも大きい、コイル部品。
【請求項9】
前記第1の端面、前記第2の端面、前記第1の側面及び前記第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaが3.0μm以上、6.0μm以下であり、
前記第1の主面及び前記第2の主面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaが1.5μm以上、4.5μm以下である、請求項8に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記素体の内部には、1つの前記コイルが配置されている、請求項8又は9に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記素体の内部には、複数の前記コイルが配置されている、請求項8又は9に記載のコイル部品。
【請求項12】
前記第1の端面、前記第2の端面、前記第1の側面及び前記第2の側面のうちの少なくとも一つの面の、測定電圧100Vにおける表面の直流絶縁抵抗が108Ω/mm2以上である、請求項8又は9に記載のコイル部品。
【請求項13】
前記直流絶縁抵抗が108Ω/mm2以上、109Ω/mm2以下である、請求項12に記載のコイル部品。
【請求項14】
素体の内部にコイルが設けられ、前記素体は、積層された複数の磁性層を含み、前記コイルは、積層された複数のコイル導体層を含む積層体と、
前記素体の外表面に設けられ、前記コイルと電気的に接続される外部電極と、を備え、
前記磁性層は、金属磁性粒子を含み、
前記素体には、樹脂が含侵されており、
前記素体は、高さ方向に相対する第1の主面及び第2の主面と、前記高さ方向に直交する長さ方向に相対する第1の端面及び第2の端面と、前記高さ方向及び前記長さ方向に直交する幅方向に相対する第1の側面及び第2の側面と、を有し、
前記第1の端面、前記第2の端面、前記第1の側面及び前記第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面に露出している前記樹脂の面積率の平均値が30%以上、かつ、前記樹脂の面積率の標準偏差が6%以下である、コイル部品。
【請求項15】
前記樹脂の面積率の平均値が30%以上、50%以下、かつ、前記樹脂の面積率の標準偏差が1%以上、6%以下である、請求項14に記載のコイル部品。
【請求項16】
前記素体の内部には、1つの前記コイルが配置されている、請求項14又は15に記載のコイル部品。
【請求項17】
前記素体の内部には、複数の前記コイルが配置されている、請求項14又は15に記載のコイル部品。
【請求項18】
前記第1の端面、前記第2の端面、前記第1の側面及び前記第2の側面のうちの少なくとも一つの面の、測定電圧100Vにおける表面の直流絶縁抵抗が108Ω/mm2以上である、請求項14又は15に記載のコイル部品。
【請求項19】
前記直流絶縁抵抗が108Ω/mm2以上、109Ω/mm2以下である、請求項18に記載のコイル部品。
【請求項20】
前記第1の端面、前記第2の端面、前記第1の側面及び前記第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaは、前記第1の主面及び前記第2の主面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaよりも大きい、請求項14又は15に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品の製造方法及びコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表面実装部品である受動部品であって、絶縁性を有する基体部と、上記基体部に内蔵される内部導体と、上記基体部の実装面に設けられ、上記内部導体に電気的に接続される外部電極と、を備え、上記外部電極は、上記基体部の上記実装面に対して平行な面と、上記平行な面を基準として上記基体部の上記実装面側に凹み、上記平行な面での形状が円形状又は楕円形状である凹部と、を有する受動部品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の段落[0037]及び段落[0038]に記載されているように、特許文献1に記載の受動部品の一実施形態であるコイル部品は、圧着したグリーンシートをダイサー又は押し切りカットなどでチップ単位に切断した後、所定温度にて焼成を行うことで基体部を形成したうえで、基体部の下面に外部電極を形成することで作製されている。例えば、磁性金属材料を用いてグリーンシートが形成される場合、チップ単位に切断する際に、切断面にかかる負荷によって切断面の金属磁性粉が破断される又は伸びるため、チップ単位の表面の一部に導通しやすい箇所、言い換えると、表面抵抗が低下した箇所が発生する。その結果、外部電極を形成する際にめっきの異常成長が発生するおそれ及び外部電極間のショートによる品質不良が発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、素体の表面における表面抵抗の低下を抑制することが可能なコイル部品の製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、素体の表面における表面抵抗の低下を抑制することが可能なコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコイル部品の製造方法は、金属磁性粒子を含む未焼結磁性層と未焼結コイル導体層とが積層された未焼成の積層体ブロックを作製する工程と、上記未焼成の積層体ブロックを加圧する工程と、上記未焼成の積層体ブロックを焼成することで、上記金属磁性粒子を含む磁性層とコイル導体層とが積層された焼成済みの積層体ブロックを作製する工程と、上記焼成済みの積層体ブロックに樹脂を含侵する工程と、上記樹脂を含侵した上記焼成済みの積層体ブロックの表面をけがくことで、上記焼成済みの積層体ブロックの表面に破断起点を形成する工程と、上記樹脂を含侵した上記焼成済みの積層体ブロックの表面のうち、上記破断起点を形成した面とは反対側の面から上記破断起点に対して押し込み力を加えて上記焼成済みの積層体ブロックをチップ単位に破断することで、素体の内部にコイルが設けられた積層体として、上記素体は、積層された複数の上記磁性層を含み、上記コイルは、積層された複数の上記コイル導体層を含む積層体を作製する工程と、めっき処理により、上記積層体の外表面又は上記焼成済みの積層体ブロックの外表面に、上記コイルと電気的に接続される外部電極を形成する工程と、を備える。
【0007】
本発明のコイル部品は、第1の態様において、素体の内部にコイルが設けられ、上記素体は、積層された複数の磁性層を含み、上記コイルは、積層された複数のコイル導体層を含む積層体と、上記素体の外表面に設けられ、上記コイルと電気的に接続される外部電極と、を備え、上記磁性層は、金属磁性粒子を含み、上記素体には、樹脂が含侵されており、上記素体は、高さ方向に相対する第1の主面及び第2の主面と、上記高さ方向に直交する長さ方向に相対する第1の端面及び第2の端面と、上記高さ方向及び上記長さ方向に直交する幅方向に相対する第1の側面及び第2の側面と、を有し、上記第1の端面、上記第2の端面、上記第1の側面及び上記第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaは、上記第1の主面及び上記第2の主面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaよりも大きい。
【0008】
本発明のコイル部品は、第2の態様において、素体の内部にコイルが設けられ、上記素体は、積層された複数の磁性層を含み、上記コイルは、積層された複数のコイル導体層を含む積層体と、上記素体の外表面に設けられ、上記コイルと電気的に接続される外部電極と、を備え、上記磁性層は、金属磁性粒子を含み、上記素体には、樹脂が含侵されており、上記素体は、高さ方向に相対する第1の主面及び第2の主面と、上記高さ方向に直交する長さ方向に相対する第1の端面及び第2の端面と、上記高さ方向及び上記長さ方向に直交する幅方向に相対する第1の側面及び第2の側面と、を有し、上記第1の端面、上記第2の端面、上記第1の側面及び上記第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面に露出している上記樹脂の面積率の平均値が30%以上、かつ、上記樹脂の面積率の標準偏差が6%以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、素体の表面における表面抵抗の低下を抑制することが可能なコイル部品の製造方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、素体の表面における表面抵抗の低下を抑制することが可能なコイル部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明のコイル部品の製造方法の第1実施形態を示すフロー図である。
【
図2】
図2A~
図2Lは、未焼成の積層体ブロックの作製方法の一例を模式的に示す分解図である。
【
図3】
図3は、破断起点形成工程の一例を説明するための模式的な断面図である。
【
図5】
図5Aは、下地電極が露出した面に絶縁層を形成する方法の一例を説明するための模式的な平面図である。
図5Bは、下地電極上の絶縁層を除去する方法の一例を説明するための模式的な平面図である。
【
図6】
図6は、下地電極上に外部電極を形成する方法の一例を説明するための模式的な平面図である。
【
図7】
図7は、本発明のコイル部品の製造方法の第2実施形態を示すフロー図である。
【
図8】
図8は、本発明のコイル部品の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8に示すコイル部品を、コイルの構造が分かるように内部を透過して示した模式図である。
【
図12】
図12は、本発明のコイル部品の内部構造の第1変形例を模式的に示す斜視図である。
【
図13】
図13は、本発明のコイル部品の内部構造の第2変形例を模式的に示す斜視図である。
【
図14】
図14は、本発明のコイル部品の内部構造の第3変形例を模式的に示す斜視図である。
【
図15】
図15は、直流絶縁抵抗を測定する方法を説明するための模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のコイル部品の製造方法及びコイル部品について説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0012】
[コイル部品の製造方法]
本発明のコイル部品の製造方法は、未焼成の積層体ブロックを作製する工程と、未焼成の積層体ブロックを加圧する工程(以下、加圧工程とも記載する)と、未焼成の積層体ブロックを焼成する工程(以下、焼成工程とも記載する)と、焼成済みの積層体ブロックに樹脂を含侵する工程(以下、樹脂材料含侵工程とも記載する)と、樹脂を含侵した焼成済みの積層体ブロックの表面に破断起点を形成する工程(以下、破断起点形成工程とも記載する)と、焼成済みの積層体ブロックを破断する工程(以下、破断工程とも記載する)と、積層体の外表面又は焼成済みの積層体ブロックの外表面に外部電極を形成する工程(以下、外部電極形成工程とも記載する)と、を備える。
【0013】
[第1実施形態]
本発明のコイル部品の製造方法の第1実施形態について、図面を参照しつつ各工程を説明する。
【0014】
図1は、本発明のコイル部品の製造方法の第1実施形態を示すフロー図である。
【0015】
本発明のコイル部品の製造方法の第1実施形態では、未焼成の積層体ブロックを作製する工程、加圧工程、焼成工程、樹脂材料含侵工程、破断起点形成工程、破断工程、絶縁層形成工程及び外部電極形成工程をこの順に行う。
【0016】
<未焼成の積層体ブロックを作製する工程>
未焼成の積層体ブロックを作製する工程では、金属磁性粒子を含む未焼結磁性層と未焼結コイル導体層とが積層された未焼成の積層体ブロックを作製する。
【0017】
例えば、材料として、金属磁性粒子を含む磁性ペースト、非磁性フェライトペースト及び内部導体用ペーストを準備する。
【0018】
金属磁性粒子を含む磁性ペーストの作製方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
体積基準での累積50%粒子径であるD50が2μm以上、20μm以下のFe-Si合金又はFe-Si-Cr合金などの金属磁性粉末を準備する。この金属磁性粉末に、結合剤としてセルロース又はポリビニルブチラール(PVB)など、溶剤としてターピネオール及びブチルジグリコールアセテート(BCA)の混合物などを含有させ、混錬することで磁性ペーストを作製する。
【0019】
金属磁性粉末として、Fe-Si合金を用いる場合、Siの含有量は2.0at%以上、8.0at%以下であることが好ましい。金属磁性粉末として、Fe-Si-Cr合金を用いる場合、Siの含有量は2.0at%以上、8.0at%以下であることが好ましい。また、金属磁性粉末として、Fe-Si-Cr合金を用いる場合、Crの含有量は0.2at%以上、6.0at%以下であることが好ましい。
【0020】
金属磁性粉末の表面に絶縁被膜を設けても良い。絶縁被膜は、金属酸化物を含む被膜であることが好ましく、Siの酸化物であることがさらに好ましい。絶縁被膜を形成する方法としては、ゾルゲル法が好ましい。以下、ゾルゲル法によって絶縁被膜を形成する方法を説明する。Siアルコキシドを含むゾルゲルコート剤と有機鎖含有シランカップリング剤とを混合することで混合液とする。この混合液を金属磁性粉末の表面に付着させた後に、加熱処理を加えることによって脱水結合させる。その後、所定の温度で乾燥することで絶縁被膜を形成することができる。
【0021】
非磁性フェライトペーストの作製方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
Fe2O3、ZnO、CuO及び必要に応じて添加成分を所定の組成になるように秤量する。ボールミルに、秤量物を、純水、分散剤、PSZメディアとともに入れ、混合及び粉砕することでスラリーを得る。得られたスラリーを乾燥した後、700℃以上、800℃以下の温度で2時間以上、3時間以下仮焼することで非磁性フェライト材料(仮焼粉末)を得る。非磁性フェライト材料(仮焼粉末)に、所定量の溶剤(ケトン系溶剤など)、樹脂(ポリビニルアセタールなど)、及び可塑剤(アルキド系可塑剤など)を入れ、プラネタリーミキサーで混錬した後、さらに3本ロールミルで分散することで非磁性フェライトペーストを作製する。
【0022】
非磁性フェライトペーストは、FeをFe2O3に換算して40mol%以上、49.5mol%以下、CuをCuOに換算して4mol%以上、12mol%以下、残部としてZnOを主成分として含むことが好ましい。非磁性フェライトペーストは、必要に応じてMn、Bi、Co、Si、Snなどを添加物として、上記の主成分に添加したものであることがより好ましい。非磁性フェライトペーストは、不可避不純物を含んでいても良い。
【0023】
内部導体用ペーストとしては、例えば、導電材料として銀を含むペーストを準備する。
【0024】
続いて、上記の材料を用いて未焼成の積層体ブロックを作製する方法の一例について説明する
図2A~
図2Lは、未焼成の積層体ブロックの作製方法の一例を模式的に示す分解図である。なお、
図2A~
図2Lには、未焼成の積層体ブロックの全体が示されているわけではなく、チップ単位でのコイルパターンが示されている。
【0025】
金属プレートの上に熱剥離シート及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを積み重ねた基板を準備する。なお、この基板は図示していない。基板上に磁性ペーストを所定回数スクリーン印刷することで、磁性ペーストの印刷層111を形成する(
図2A)。 磁性ペーストの印刷層111は、未焼結磁性層であり、焼成後に磁性層になる。
図2Aに示す層は、焼成後にコイル部品の外層となる。
【0026】
図2Aに示す磁性ペーストの印刷層111の上に、コイル導体層となる内部導体用ペーストの印刷層121を形成する。なお、コイル導体層となる内部導体用ペーストの印刷層121は、未焼結コイル導体層であり、焼成後にコイル導体層となる。さらに、コイル導体層となる内部導体用ペーストの印刷層121が形成されていない領域に磁性ペーストの印刷層111を形成する(
図2B)。
【0027】
図2Bに示す内部導体用ペーストの印刷層121上の領域のうち、次の層に印刷するコイル導体層と接続する領域、及び引出導体と接続する領域以外の領域に非磁性フェライトペーストの印刷層112を形成する。非磁性フェライトペーストの印刷層112は、未焼結非磁性層であり、焼成後に非磁性層になる。その後、非磁性フェライトペーストの印刷層112を形成した領域、次に印刷するコイル導体層と接続する領域、及び引出導体と接続する領域以外の領域に磁性ペーストの印刷層111を形成する(
図2C)。
【0028】
次に、ビア導体(次に印刷するコイル導体層と接続させる導体)となる内部導体用ペーストの印刷層122と、引出導体となる内部導体用ペーストの印刷層123とを形成する(
図2D)。
【0029】
コイル導体層となる内部導体用ペーストの印刷層121と、引出導体となる内部導体用ペーストの印刷層123とを形成する。さらに、内部導体用ペーストの印刷層(コイル導体層又は引出導体となる印刷層)が形成されていない領域に磁性ペーストの印刷層111を形成する(
図2E)。
【0030】
内部導体用ペーストの印刷層121の上で、次に印刷するコイル導体層と接続する領域以外の領域に非磁性フェライトペーストの印刷層112を形成する。また、次に印刷するコイル導体層と接続する領域にビア導体となる内部導体用ペーストの印刷層122と、引出導体となる内部導体用ペーストの印刷層123とを形成する。さらに、これらの領域以外の領域に磁性ペーストの印刷層111を形成する(
図2F)。
【0031】
コイル導体層となる内部導体用ペーストの印刷層121と、引出導体となる内部導体用ペーストの印刷層123とを形成する。さらに、内部導体用ペーストの印刷層(コイル導体層又は引出導体となる印刷層)が形成されていない領域に磁性ペーストの印刷層111を形成する(
図2G)。
【0032】
内部導体用ペーストの印刷層121の上で、次に印刷するコイル導体層と接続する領域以外の領域に非磁性フェライトペーストの印刷層112を形成する。また、次に印刷するコイル導体層と接続する領域にビア導体となる内部導体用ペーストの印刷層122と、引出導体となる内部導体用ペーストの印刷層123とを形成する。さらに、これらの領域以外の領域に磁性ペーストの印刷層111を形成する(
図2H)。
【0033】
図2G~
図2Hに示す工程を、所定の回数繰り返すことによって、コイルのターン数を適宜調整することができる。
【0034】
コイル導体層となる内部導体用ペーストの印刷層121と、引出導体となる内部導体用ペーストの印刷層123とを形成する。さらに、内部導体用ペーストの印刷層(コイル導体層又は引出導体となる印刷層)が形成されていない領域に磁性ペーストの印刷層111を形成する(
図2I)。
【0035】
引出導体となる内部導体用ペーストの印刷層123を形成し、それ以外の領域に磁性ペーストの印刷層111を形成する。それを所定回数繰り返す(
図2J~
図2K)。
【0036】
外部電極の下地電極となる領域に、下地電極となる内部導体用ペーストの印刷層124を形成する。さらに、内部導体用ペーストの印刷層124が形成されていない領域に磁性ペーストの印刷層111を形成する(
図2L)。
【0037】
最後に金属プレートから剥離し、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを除去することで、未焼成の積層体ブロックを作製する。上記のとおり、
図2A~
図2Lにはチップ単位でのコイルパターンが示されており、実際には、積層体ブロックに含まれるチップ数に応じたコイルパターンが形成されている。
【0038】
<加圧工程>
加圧工程では、未焼成の積層体ブロックを加圧する。
【0039】
上記の工程によって作製した未焼成の積層体ブロックに対して、温間静水圧プレス(WIP)等のプレス処理により、加圧処理を行う。
【0040】
<焼成工程>
焼成工程では、未焼成の積層体ブロックを焼成することで、焼成済みの積層体ブロックを作製する。焼成済みの積層体ブロックでは、金属磁性粒子を含む磁性層とコイル導体層とが積層されている。
【0041】
例えば、加圧処理された未焼成の積層体ブロックを焼成炉に入れ、脱脂処理を行った後、大気中で焼成を行う。焼成温度は、例えば、600℃以上、800℃以下である。焼成時間は、例えば、30分以上、90分以下である。
【0042】
<樹脂材料含侵工程>
樹脂材料含侵工程では、焼成済みの積層体ブロックに樹脂を含侵する。
【0043】
例えば、焼成済みの積層体ブロックに樹脂を含侵した後、熱を加えることで樹脂を硬化する。
【0044】
焼成済みの積層体ブロックに樹脂を含侵することで、積層体ブロックの金属磁性粒子間の空隙が樹脂で埋められる。そのため、コイル部品において素体の強度を確保することができる。また、素体にめっき液又は湿気などが侵入することを抑制することができる。
【0045】
<破断起点形成工程>
破断起点形成工程では、樹脂を含侵した焼成済みの積層体ブロックの表面をけがくことで、焼成済みの積層体ブロックの表面に破断起点を形成する。
【0046】
図3は、破断起点形成工程の一例を説明するための模式的な断面図である。
【0047】
図3に示すように、樹脂を含侵した焼成済みの積層体ブロック130の断面では、金属磁性粒子31間の空隙に樹脂32が含侵されている。
【0048】
樹脂32を含侵した焼成済みの積層体ブロック130の表面をけがくことによって、焼成済みの積層体ブロック130の表面に破断起点33を形成する。例えば、
図3に示すように、積層体ブロック130の表面にスクライブホイール141を押し込み、スクライブホイール141を走らせることによって破断起点33を形成することができる。例えば、
図3では、紙面奥行き方向にスクライブホイール141を移動させている。
【0049】
積層体ブロック130の表面にスクライブホイール141を押し込む深さ(
図3において、両矢印Aで示す長さ)は、例えば、1μm以上、9μm以下であってもよく、2μm以上、8μm以下であってもよい。
【0050】
破断起点形成工程の後では、破断起点33の深さが例えば、1μm以上、9μm以下であってもよく、2μm以上、8μm以下であってもよい。
【0051】
<破断工程>
破断工程では、樹脂を含侵した焼成済みの積層体ブロックの表面のうち、破断起点を形成した面とは反対側の面から破断起点に対して押し込み力を加えて焼成済みの積層体ブロックをチップ単位に破断することで、素体の内部にコイルが設けられた積層体を作製する。素体は、積層された複数の磁性層を含み、コイルは、積層された複数のコイル導体層を含む。
【0052】
【0053】
まず、
図4Aに示すように、破断起点33を形成した焼成済みの積層体ブロック130を反転する。
図4Aでは、
図3に示す積層体ブロック130が反転されることで、破断起点33が下側に位置している。
【0054】
その後、積層体ブロック130の表面のうち、破断起点33を形成した面とは反対側の面(
図4Aでは上側の面)に対してブレイクブレード142を押し込むことで、破断起点33に対して押し込み力を加える。これによって、
図4Bに示すように、破断起点33を起点として、破断面34が広がっていくことで、積層体ブロック130がチップ単位に破断される。
【0055】
その結果、
図4Cに示す例では、積層体30(後述の
図9参照)を作製することができる。
【0056】
破断工程では、
図4Bに示すように、押し込み力によって、破断起点33を起点として、破断面34が広がっていく。積層体ブロック130内の金属磁性粒子31と樹脂32との界面では強度が低いため、
図4Bに示すように、破断面34は、金属磁性粒子31と樹脂32との界面に沿うように広がりやすい。これによって、例えばダイサー又は押し切りカットなどを用いて積層体ブロック130を切断する場合と比べて、破断面34で金属磁性粒子31が破断すること又は伸びることを防ぐことができる。そのため、破断面34では金属磁性粒子31の露出量が少なくなり、代わりに樹脂32の露出量が多くなる。さらに、破断面34では金属磁性粒子31の周りに樹脂32が介在するため、金属磁性粒子31同士が絶縁された状態となっている。また、
図4Bに示すように、金属磁性粒子31と樹脂32との界面に沿うように破断面34が広がることで、破断面34の表面粗さを大きくすることができる。これらのことから、素体の表面における表面抵抗の低下を抑制することができる。
【0057】
破断面の表面抵抗が低い場合、例えば、その後の工程で、破断面以外の面に外部電極を形成する際に、めっきが破断面にまで異常成長するおそれがある。一方、本発明のコイル部品の製造方法のように、破断面での表面抵抗の低下を抑制することにより、外部電極を形成する際にめっきの異常成長が発生することを防ぐことができる。
【0058】
また、破断面の表面抵抗が低い場合、外部電極間のショートによる品質不良が発生するおそれがある。一方、本発明のコイル部品の製造方法のように、破断面での表面抵抗の低下を抑制することにより、外部電極間のショートによる品質不良を防ぐことができる。
【0059】
なお、破断工程では、
図4A及び
図4Bに示すように、カメラ143を用いて、破断起点33を観察しながら、破断起点33に対して押し込み力を加えてもよい。
図4A及び
図4Bでは、積層体ブロック130の表面のうち、破断起点33の存在する面側(
図4A及び
図4Bにおける下側)からカメラ143で破断起点33を観察しながら、ブレイクブレード142を積層体ブロック130に押し込んでいる。カメラ143を用いて、破断起点33を観察し、押し込み力を加える位置を調整することで、破断工程において積層体ブロック130を配置する位置を高精度に合わせることができる。
【0060】
例えば、後述の
図9に示す積層体30を作製する場合、破断起点形成工程及び破断工程により、素体10の第1の端面10c、第2の端面10d、第1の側面10e及び第2の側面10fのうちの少なくとも一つの面が破断面34であればよい。素体10の第1の端面10c、第2の端面10d、第1の側面10e及び第2の側面10fのうちの全ての面が破断面34であってもよい。
【0061】
<絶縁層形成工程>
本発明のコイル部品の製造方法の第1実施形態は、焼成済みの積層体ブロックを破断する工程と、外部電極を形成する工程との間に、積層体の外表面の一部の領域に絶縁層を形成する工程をさらに備えてもよい。この場合、後述する外部電極は、絶縁層で囲まれた領域に形成されることが好ましい。
【0062】
絶縁層形成工程では、積層体の外表面の一部の領域に絶縁層を形成する。
【0063】
図5Aは、下地電極が露出した面に絶縁層を形成する方法の一例を説明するための模式的な平面図である。
図5Bは、下地電極上の絶縁層を除去する方法の一例を説明するための模式的な平面図である。
【0064】
積層体30の面のうち下地電極24が露出した面の全面に、感光性を持ったレジスト樹脂をスクリーン印刷によって塗布した後、レジスト樹脂を乾燥させる。このようにして、積層体30の面のうち下地電極24が露出した面の全面に絶縁層50を形成する(
図5A)。なお、
図5Aにおいて点線で囲った部分は、下地電極24の上に絶縁層50が形成されている部分を示している。
【0065】
次に、下地電極24の形状に沿って、レジスト樹脂に対してパターン露光を行う。その後、露光されたレジスト樹脂を溶かすことができる現像液に絶縁層50を浸すことによって、下地電極24上の絶縁層50を除去する(
図5B)。
【0066】
絶縁層形成工程では、積層体30の外表面のうち、上述した破断工程における破断面とは異なる面上に絶縁層50を形成することが好ましい。
【0067】
<外部電極形成工程>
外部電極形成工程では、めっき処理により、積層体の外表面又は焼成済みの積層体ブロックの外表面に、コイルと電気的に接続される外部電極を形成する。
【0068】
図6は、下地電極上に外部電極を形成する方法の一例を説明するための模式的な平面図である。
【0069】
例えば、無電解めっきによって、下地電極24の上の所定の位置に外部電極40を形成することで、コイルと電気的に接続されている外部電極40を形成する。
図6に示すように、外部電極40は、絶縁層50で囲まれた領域に形成されることが好ましい。これにより、めっきが異常成長することを防ぐことができる。
【0070】
また、外部電極40と下地電極24とが重なる面に垂直な方向から見たときに、外部電極40は、下地電極24よりも内側に位置するように形成されることが好ましい。これにより、外部電極40を形成する際にめっき液が積層体30の素体に侵入することを抑制できる。なお、
図6に示すように、外部電極40と下地電極24とが重なる面に垂直な方向から見たときに、外部電極40の全体が下地電極24の全体と重なるように形成されてもよい。外部電極40の全体が下地電極24の全体と重なるように形成されている場合も、外部電極40が下地電極24よりも内側に位置するように形成されていると言える。
【0071】
外部電極形成工程では、積層体30の外表面のうち、上述した破断工程における破断面とは異なる面上に外部電極40を形成することが好ましい。
【0072】
本発明のコイル部品の製造方法の第1実施形態では、外部電極形成工程は破断工程の後に行われる。つまり、外部電極は、焼成済みの積層体ブロックを破断した後の積層体の外表面に形成される。
【0073】
なお、本発明のコイル部品の製造方法の第1実施形態では、上述した絶縁層形成工程を行わなくてもよい。絶縁層形成工程を行わない場合は、破断工程後の積層体において露出している下地電極の上の所定の部分に外部電極を形成すればよい。
【0074】
本発明のコイル部品の製造方法の第1実施形態では、素体の内部に一つのコイルが配置されているコイル部品を製造してもよく、素体の内部に複数のコイルが配置されているコイル部品を製造してもよい。
【0075】
[第2実施形態]
次に、本発明のコイル部品の製造方法の第2実施形態について説明する。
【0076】
図7は、本発明のコイル部品の製造方法の第2実施形態を示すフロー図である。
【0077】
本発明のコイル部品の製造方法の第2実施形態は、本発明のコイル部品の製造方法の第1実施形態と比較して、各工程を行う順番が異なる。
【0078】
本発明のコイル部品の製造方法の第2実施形態では、未焼成の積層体ブロックを作製する工程、加圧工程、焼成工程、樹脂材料含侵工程、絶縁層形成工程、外部電極形成工程、破断起点形成工程及び破断工程をこの順に行う。
【0079】
本発明のコイル部品の製造方法の第2実施形態の各工程は、本発明のコイル部品の製造方法の第1実施形態で説明した工程と同じであってよい。
【0080】
本発明のコイル部品の製造方法の第2実施形態では、外部電極形成工程は、樹脂材料含侵工程の後、かつ、破断起点形成工程の前に行われる。つまり、外部電極は、樹脂を含侵した後、破断起点を形成する前の焼成済みの積層体ブロックの外表面に形成される。
【0081】
本発明のコイル部品の製造方法の第2実施形態では、外部電極形成工程は、破断起点形成工程の前に行われるため、外部電極を形成する段階で積層体ブロックには破断面が存在しないため、破断面においてめっきの異常成長が発生することを防ぐことができる。
【0082】
本発明のコイル部品の製造方法の第2実施形態では、破断起点形成工程及び破断工程において、積層体ブロックの外表面のうち、外部電極を形成した面と破断面とが平行とならないように、積層体ブロックを破断することが好ましい。例えば、破断起点形成工程及び破断工程において、積層体ブロックの外表面のうち、外部電極を形成した面と破断面とが垂直となるように、積層体ブロックを破断することが好ましい。
【0083】
本発明のコイル部品の製造方法の第2実施形態は、焼成済みの積層体ブロックに樹脂を含侵する工程と、外部電極を形成する工程との間に、焼成済みの積層体ブロックの外表面の一部の領域に絶縁層を形成する工程をさらに備えてもよい。この場合、外部電極は、絶縁層で囲まれた領域に形成されることが好ましい。
【0084】
本発明のコイル部品の製造方法の第2実施形態では、積層体ブロックの外表面のうち、絶縁層を形成した面とは異なる面が破断面となるように、積層体ブロックを破断することが好ましい。
【0085】
なお、本発明のコイル部品の製造方法の第2実施形態では、絶縁層形成工程を行わなくてもよい。絶縁層形成工程を行わない場合は、樹脂材料含侵工程後の積層体ブロックにおいて露出している下地電極の上の所定の部分に外部電極を形成すればよい。
【0086】
本発明のコイル部品の製造方法の第2実施形態では、素体の内部に一つのコイルが配置されているコイル部品を製造してもよく、素体の内部に複数のコイルが配置されているコイル部品を製造してもよい。
【0087】
[コイル部品]
以下、本発明のコイル部品について説明する。
【0088】
本発明のコイル部品は、好ましくは、本発明のコイル部品の製造方法によって製造される。
【0089】
図8は、本発明のコイル部品の一例を模式的に示す斜視図である。
図9は、
図8に示すコイル部品を、コイルの構造が分かるように内部を透過して示した模式図である。
図10は、
図8に示すコイル部品の、X-X線断面図である。
図11は、
図8に示すコイル部品の、XI-XI線断面図である。
【0090】
図8~
図11に示すように、コイル部品1は、素体10の内部にコイル20が設けられた積層体30と、素体10の外表面に設けられ、コイル20と電気的に接続される外部電極40と、を備える。
【0091】
【0092】
素体10は、積層された複数の磁性層11を含む。磁性層11は、金属磁性粒子を含む。なお、
図10及び
図11に示すように、磁性層11間の境界は実際には現れない。また、
図10及び
図11には示されていないが、素体10では、コイル20と接するように、非磁性層を含んでもよい。
【0093】
素体10には、樹脂が含侵されている。具体的には、磁性層11中の金属磁性粒子間の空隙が樹脂で埋められている。
【0094】
図8~
図11に示す例では、素体10は、6面を有する略直方体形状である。
【0095】
素体10は、高さ方向Tに相対する第1の主面10a及び第2の主面10bと、長さ方向Lに相対する第1の端面10c及び第2の端面10dと、高さ方向T及び長さ方向Lに直交する幅方向Wに相対する第1の側面10e及び第2の側面10fと、を有する。
【0096】
例えば、外部電極40が設けられている素体10の面と垂直な方向が高さ方向Tである。その場合、高さ方向Tに直交する方向が長さ方向Lであり、高さ方向T及び長さ方向Lに直交する方向が幅方向Wである。
【0097】
図8及び
図9には、コイル部品1及び素体10における高さ方向T、長さ方向L、幅方向Wを、それぞれ両矢印T方向、L方向、W方向として示している。高さ方向T、長さ方向L、幅方向Wとは互いに直交する。
【0098】
素体10の内部には、コイル20が設けられている。
【0099】
コイル20は、積層された複数のコイル導体層21を含む。
図9~
図11に示す例では、4層のコイル導体層21が積層されている。コイル20は、ビア導体22及び引出導体23をさらに含んでもよい。ビア導体22によってコイル導体層21同士が接続されている。また、引出導体23を介して、コイル導体層21が外部電極40と電気的に接続されている。
【0100】
外部電極40は、素体10の外表面に設けられている。例えば、
図10及び
図11に示すように、外部電極40は、素体10の第2の主面10bに設けられている。
【0101】
外部電極40は、下地電極24の表面に配置されていることが好ましい。
【0102】
外部電極40と下地電極24とが重なる面に垂直な方向から見たときに、外部電極40は、下地電極24よりも内側に配置されていることが好ましい。これにより、外部電極40を形成する際にめっき液が積層体30の素体10に侵入することを抑制できる。
【0103】
図8~
図11に示すように、素体10の表面の一部の領域に絶縁層50が設けられていてもよい。その場合、絶縁層50は、外部電極40を囲うように設けられていることが好ましい。言い換えると、外部電極40は、絶縁層50で囲まれた領域に設けられていることが好ましい。
【0104】
[第1実施形態]
本発明のコイル部品の第1実施形態では、第1の端面、第2の端面、第1の側面及び第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaは、第1の主面及び第2の主面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaよりも大きい。
【0105】
本発明のコイル部品の第1実施形態では、表面粗さSaが相対的に大きい面の表面抵抗を表面粗さSaが相対的に小さい面の表面抵抗よりも高くすることができる。その結果、コイル部品の表面における表面抵抗の低下を抑制することができる。
【0106】
第1の端面、第2の端面、第1の側面及び第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaから、第1の主面及び第2の主面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaを引いた値は、1.0μm以上、7.0μm以上であってもよい。
【0107】
第1の端面、第2の端面、第1の側面及び第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaに対する、第1の主面及び第2の主面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaの比は、0.5以上、0.8以下であってもよい。
【0108】
第1の端面、第2の端面、第1の側面及び第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaが3.0μm以上、6.0μm以下であり、第1の主面及び第2の主面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaが1.5μm以上、4.5μm以下であってもよい。
【0109】
表面粗さSaは、算術平均表面粗さSaを意味する。算術平均表面粗さSaは、例えば、形状解析レーザ顕微鏡(キーエンス社製 VR-3000)を用いて測定することができる。
【0110】
本発明のコイル部品の第1実施形態では、第1の端面、第2の端面、第1の側面及び第2の側面に、第1の主面と表面粗さSaが同等の面が含まれてもよく、第2の主面と表面粗さSaが同等の面が含まれてもよい。
【0111】
第1の端面、第2の端面、第1の側面及び第2の側面のうちの少なくとも一つの面の、測定電圧100Vにおける表面の直流絶縁抵抗が108Ω/mm2以上であることが好ましく、測定電圧100Vにおける表面の直流絶縁抵抗が108Ω/mm2以上、109Ω/mm2以下であることがより好ましい。
【0112】
上記の場合、測定電圧100Vにおける表面の直流絶縁抵抗が108Ω/mm2以上である面は、第1の端面、第2の端面、第1の側面及び第2の側面のうち、第1の主面及び第2の主面のうちの少なくとも一つの面よりも表面粗さSaが大きい面である。
【0113】
測定電圧100Vにおける表面の直流絶縁抵抗は、例えばエレクトロメータ(ADMCT社製 エレクトロメータ8252)を用いて測定することができる。測定電圧100Vにおける表面の直流絶縁抵抗を測定することで、その面の表面抵抗を評価することができる。例えば、測定電圧100Vにおける表面の直流絶縁抵抗の低下を抑制することができた場合、その面の表面抵抗の低下を抑制することができたと判断してもよい。
【0114】
[第2実施形態]
本発明のコイル部品の第2実施形態では、第1の端面、第2の端面、第1の側面及び第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面に露出している樹脂の面積率の平均値が30%以上、かつ、樹脂の面積率の標準偏差が6%以下である。
【0115】
樹脂は金属磁性粒子と比べて絶縁性が高いため、コイル部品を構成する素体の表面に露出している樹脂の面積率の平均値を高くすることにより、その面における表面抵抗を高くすることができる。また、樹脂の面積率の標準偏差を低くすることにより、その面内での樹脂の面積率のばらつきを抑制することができる。その結果、コイル部品の表面における表面抵抗の低下を抑制することができる。
【0116】
第1の端面、第2の端面、第1の側面及び第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面に露出している樹脂の面積率の平均値が、30%以上、50%以下であってもよい。また、第1の端面、第2の端面、第1の側面及び第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面に露出している樹脂の面積率の標準偏差が1%以上、6%以下であってもよい。また、第1の端面、第2の端面、第1の側面及び第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面に露出している樹脂の面積率の平均値が30%以上、50%以下、かつ、樹脂の面積率の標準偏差が1%以上、6%以下であってもよい。
【0117】
樹脂の面積率は、SEM(走査電子顕微鏡)を用いて、素体の表面の反射電子像を撮影することで得られたSEM画像を画像処理ソフトウエアで2値化処理した後、2値化した画像から、樹脂材料で覆われた部分の面積率を求めることで測定することができる。例えば、試料3個について、1000倍の倍率でSEM写真を撮影した後、それぞれの写真を25分割することで得られた合計75枚の画像について、樹脂の面積率を算出することで、樹脂の面積率の平均値及び樹脂の面積率の標準偏差を測定することができる。それぞれの写真を25分割した画像は、例えば縦が16μm、横が22μmの範囲を撮影した画像であってよい。
【0118】
第1の端面、第2の端面、第1の側面及び第2の側面のうちの少なくとも一つの面の、測定電圧100Vにおける表面の直流絶縁抵抗が108Ω/mm2以上であることが好ましく、測定電圧100Vにおける表面の直流絶縁抵抗が108Ω/mm2以上、109Ω/mm2以下であることがより好ましい。
【0119】
上記の場合、測定電圧100Vにおける表面の直流絶縁抵抗が108Ω/mm2以上である面は、第1の端面、第2の端面、第1の側面及び第2の側面のうち、表面に露出している樹脂の面積率の平均値が30%以上、かつ、樹脂の面積率の標準偏差が6%以下である面である。
【0120】
本発明のコイル部品の第2実施形態において、第1の端面、第2の端面、第1の側面及び第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaは、第1の主面及び第2の主面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaよりも大きくてもよい。
【0121】
その場合、第1の端面、第2の端面、第1の側面及び第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaから、第1の主面及び第2の主面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaを引いた値は、1.0μm以上、7.0μm以上であってもよい。
【0122】
第1の端面、第2の端面、第1の側面及び第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaに対する、第1の主面及び第2の主面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaの比は、0.5以上、0.8以下であってもよい。
【0123】
本発明のコイル部品の第2実施形態において、第1の端面、第2の端面、第1の側面及び第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaが、第1の主面及び第2の主面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaよりも大きい場合、第1の主面及び第2の主面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaよりも大きい面は、第1の端面、第2の端面、第1の側面及び第2の側面のうち、表面に露出している樹脂の面積率の平均値が30%以上、かつ、樹脂の面積率の標準偏差が6%以下である面である。
【0124】
第1の端面、第2の端面、第1の側面及び第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaが3.0μm以上、6.0μm以下であり、第1の主面及び第2の主面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaが1.5μm以上、4.5μm以下であってもよい。
【0125】
本発明のコイル部品において、素体の内部には、
図9に示すように1つのコイルが配置されていてもよく、
図12~
図14に示すように複数のコイルが配置されていてもよい。
【0126】
図12は、本発明のコイル部品の内部構造の第1変形例を模式的に示す斜視図である。
【0127】
図12に示すコイル部品1Aでは、素体10の内部に6つのコイル20が直線状に配置されている。6つのコイル20は、全て同じ向きに配置されている。
【0128】
図13は、本発明のコイル部品の内部構造の第2変形例を模式的に示す斜視図である。
【0129】
図13に示すコイル部品1Bでは、素体10の内部に6つのコイル20が直線状に配置されている。6つのコイル20は、パターン形状が3つずつ対称に配置されている。このようにコイル20のパターン形状が対称に配置されていると、コイル20間のインダクタンスのばらつきが抑えられる。
【0130】
図14は、本発明のコイル部品の内部構造の第3変形例を模式的に示す斜視図である。
【0131】
図14に示すコイル部品1Cでは、磁性体部の内部に6つのコイル20が平面状に配置されている。6つのコイル20は、全て同じ向きに配置されている。
図14に示す例では、長さ方向Lに2つ、幅方向Wに3つのコイル20が配置されているが、例えば、長さ方向Lに3つ、幅方向Wに2つのコイル20が配置されていてもよい。
【0132】
本明細書には、以下の内容が開示されている。
【0133】
<1>
金属磁性粒子を含む未焼結磁性層と未焼結コイル導体層とが積層された未焼成の積層体ブロックを作製する工程と、
上記未焼成の積層体ブロックを加圧する工程と、
上記未焼成の積層体ブロックを焼成することで、上記金属磁性粒子を含む磁性層とコイル導体層とが積層された焼成済みの積層体ブロックを作製する工程と、
上記焼成済みの積層体ブロックに樹脂を含侵する工程と、
上記樹脂を含侵した上記焼成済みの積層体ブロックの表面をけがくことで、上記焼成済みの積層体ブロックの表面に破断起点を形成する工程と、
上記樹脂を含侵した上記焼成済みの積層体ブロックの表面のうち、上記破断起点を形成した面とは反対側の面から上記破断起点に対して押し込み力を加えて上記焼成済みの積層体ブロックをチップ単位に破断することで、素体の内部にコイルが設けられた積層体として、上記素体は、積層された複数の上記磁性層を含み、上記コイルは、積層された複数の上記コイル導体層を含む積層体を作製する工程と、
めっき処理により、上記積層体の外表面又は上記焼成済みの積層体ブロックの外表面に、上記コイルと電気的に接続される外部電極を形成する工程と、を備える、コイル部品の製造方法。
【0134】
<2>
上記外部電極は、上記焼成済みの積層体ブロックを破断した後の上記積層体の外表面に形成される、<1>に記載のコイル部品の製造方法。
【0135】
<3>
上記焼成済みの積層体ブロックを破断する工程と、上記外部電極を形成する工程との間に、上記積層体の外表面の一部の領域に絶縁層を形成する工程をさらに備え、
上記外部電極は、上記絶縁層で囲まれた領域に形成される、<2>に記載のコイル部品の製造方法。
【0136】
<4>
上記外部電極は、上記樹脂を含侵した後、上記破断起点を形成する前の上記焼成済みの積層体ブロックの外表面に形成される、<1>に記載のコイル部品の製造方法。
【0137】
<5>
上記焼成済みの積層体ブロックに樹脂を含侵する工程と、上記外部電極を形成する工程との間に、上記焼成済みの積層体ブロックの外表面の一部の領域に絶縁層を形成する工程をさらに備え、
上記外部電極は、上記絶縁層で囲まれた領域に形成される、<4>に記載のコイル部品の製造方法。
【0138】
<6>
上記素体の内部には、1つの上記コイルが配置されている、<1>~<5>のいずれか1つに記載のコイル部品の製造方法。
【0139】
<7>
上記素体の内部には、複数の上記コイルが配置されている、<1>~<5>のいずれか1つに記載のコイル部品の製造方法。
【0140】
<8>
素体の内部にコイルが設けられ、上記素体は、積層された複数の磁性層を含み、上記コイルは、積層された複数のコイル導体層を含む積層体と、
上記素体の外表面に設けられ、上記コイルと電気的に接続される外部電極と、を備え、
上記磁性層は、金属磁性粒子を含み、
上記素体には、樹脂が含侵されており、
上記素体は、高さ方向に相対する第1の主面及び第2の主面と、上記高さ方向に直交する長さ方向に相対する第1の端面及び第2の端面と、上記高さ方向及び上記長さ方向に直交する幅方向に相対する第1の側面及び第2の側面と、を有し、
上記第1の端面、上記第2の端面、上記第1の側面及び上記第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaは、上記第1の主面及び上記第2の主面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaよりも大きい、コイル部品。
【0141】
<9>
上記第1の端面、上記第2の端面、上記第1の側面及び上記第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaが3.0μm以上、6.0μm以下であり、
上記第1の主面及び上記第2の主面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaが1.5μm以上、4.5μm以下である、<8>に記載のコイル部品。
【0142】
<10>
上記素体の内部には、1つの上記コイルが配置されている、<8>又は<9>に記載のコイル部品。
【0143】
<11>
上記素体の内部には、複数の上記コイルが配置されている、<8>又は<9>に記載のコイル部品。
【0144】
<12>
上記第1の端面、上記第2の端面、上記第1の側面及び上記第2の側面のうちの少なくとも一つの面の、測定電圧100Vにおける表面の直流絶縁抵抗が108Ω/mm2以上である、<8>~<11>のいずれか1つに記載のコイル部品。
【0145】
<13>
上記直流絶縁抵抗が108Ω/mm2以上、109Ω/mm2以下である、<12>に記載のコイル部品。
【0146】
<14>
素体の内部にコイルが設けられ、上記素体は、積層された複数の磁性層を含み、上記コイルは、積層された複数のコイル導体層を含む積層体と、
上記素体の外表面に設けられ、上記コイルと電気的に接続される外部電極と、を備え、
上記磁性層は、金属磁性粒子を含み、
上記素体には、樹脂が含侵されており、
上記素体は、高さ方向に相対する第1の主面及び第2の主面と、上記高さ方向に直交する長さ方向に相対する第1の端面及び第2の端面と、上記高さ方向及び上記長さ方向に直交する幅方向に相対する第1の側面及び第2の側面と、を有し、
上記第1の端面、上記第2の端面、上記第1の側面及び上記第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面に露出している上記樹脂の面積率の平均値が30%以上、かつ、上記樹脂の面積率の標準偏差が6%以下である、コイル部品。
【0147】
<15>
上記樹脂の面積率の平均値が30%以上、50%以下、かつ、上記樹脂の面積率の標準偏差が1%以上、6%以下である、<14>に記載のコイル部品。
【0148】
<16>
上記素体の内部には、1つの上記コイルが配置されている、<14>又は<15>に記載のコイル部品。
【0149】
<17>
上記素体の内部には、複数の上記コイルが配置されている、<14>又は<15>に記載のコイル部品。
【0150】
<18>
上記第1の端面、上記第2の端面、上記第1の側面及び上記第2の側面のうちの少なくとも一つの面の、測定電圧100Vにおける表面の直流絶縁抵抗が108Ω/mm2以上である、<14>~<17>のいずれか1つに記載のコイル部品。
【0151】
<19>
上記直流絶縁抵抗が108Ω/mm2以上、109Ω/mm2以下である、<18>に記載のコイル部品。
【0152】
<20>
上記第1の端面、上記第2の端面、上記第1の側面及び上記第2の側面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaは、上記第1の主面及び上記第2の主面のうちの少なくとも一つの面の表面粗さSaよりも大きい、<14>~<19>のいずれか1つに記載のコイル部品。
【実施例0153】
以下、本発明のコイル部品の製造方法及びコイル部品をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0154】
上述した本発明のコイル部品の製造方法の第2実施形態に記載の方法により、実施例に係るコイル部品を作製した。一方で、本発明のコイル部品の製造方法の第2実施形態に記載の方法において、破断起点形成工程及び破断工程の代わりにダイサーを用いて積層体ブロックを切断する工程を行うことにより、比較例に係るコイル部品を作製した。なお、実施例に係るコイル部品においては破断起点形成工程及び破断工程による破断面、比較例に係るコイル部品においてはダイサーによる切断での切断面がコイル部品の側面となるようにコイル部品を作製した。以下において、実施例に係るコイル部品の側面とは、コイル部品の側面のうち、破断起点形成工程及び破断工程において破断面となった面を指し、比較例に係るコイル部品の側面とは、コイル部品の側面のうち、ダイサーによる切断において切断面となった面を指す。
【0155】
実施例及び比較例について、コイル部品の上面(第1の主面)及び側面の算術平均表面粗さSaを形状解析レーザ顕微鏡(キーエンス社製 VR-3000)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0156】
別途、SEMを用いて、コイル部品の側面の反射電子像を撮影した。得られたSEM画像を画像処理ソフトウエアで2値化処理した後、2値化した画像から、樹脂材料で覆われた部分の面積率を求めた。具体的には、実施例及び比較例に係るコイル部品それぞれ3個について、1000倍の倍率でSEM写真を撮影した後、それぞれの写真を25分割することで得られた合計75枚の画像について、樹脂の面積率を算出することで、樹脂の面積率の平均値及び樹脂の面積率の標準偏差を測定した。なお、それぞれの写真を25分割した画像は、縦が16μm、横が22μmの範囲を撮影した画像であった。結果を表1に示す。
【0157】
【0158】
次に、実施例及び比較例について、コイル部品の側面の直流絶縁抵抗をエレクトロメータ(ADMCT社製 エレクトロメータ8252)で測定した。
【0159】
図15は、直流絶縁抵抗を測定する方法を説明するための模式的な平面図である。
【0160】
図15に示すように、試料60の表面(ここではコイル部品の側面)に樹脂Ag電極65を形成した。そして、エレクトロメータの+/-端子を樹脂Ag電極65上に接触させ、印加する電圧を上げながら抵抗値を測定した。
図15において、両矢印Cで示す長さを電極幅、両矢印Dで示す長さを電極間距離として、下式をもとに表面の直流絶縁抵抗を算出した。
表面の直流絶縁抵抗[Ω/mm
2]=抵抗値[Ω]/(電極幅[mm]×電極間距離[mm])
【0161】
実施例及び比較例に係るコイル部品それぞれ3個について、測定電圧(DC)を1、10、20、40、50又は100Vとして直流絶縁抵抗の測定を行った。その結果、比較例に係るコイル部品では、測定電圧が1Vの条件でも、直流絶縁抵抗は測定の下限である102Ω/mm2近傍まで低下し、それ以上の電圧での測定は不可能であった。一方で、実施例に係るコイル部品では、全測定電圧において、直流絶縁抵抗が108Ω/mm2以上であった。このため、実施例に係るコイル部品では、表面における表面抵抗が高いことが確認できた。