(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036274
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】複雑な山岳地帯における長大な線形工事のための工学地質ゾーニング方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G01V 1/00 20240101AFI20240308BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240308BHJP
【FI】
G01V1/00 C
G06Q50/08
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019704
(22)【出願日】2023-02-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】202211075429.8
(32)【優先日】2022-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520328464
【氏名又は名称】中国科学院地質與地球物理研究所
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE OF GEOLOGY AND GEOPHYSICS,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
【住所又は居所原語表記】No.19 Beitucheng West Road,Chaoyang District,Beijing 100000 China
(74)【代理人】
【識別番号】110000268
【氏名又は名称】オリジネイト弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鄭 博文
(72)【発明者】
【氏名】祁 生文
(72)【発明者】
【氏名】馬 行東
(72)【発明者】
【氏名】郭 松峰
(72)【発明者】
【氏名】張 永双
(72)【発明者】
【氏名】梁 寧
(72)【発明者】
【氏名】宋 帥華
(72)【発明者】
【氏名】李 永超
(72)【発明者】
【氏名】安 志国
(72)【発明者】
【氏名】雷 達
(72)【発明者】
【氏名】楊 国香
(72)【発明者】
【氏名】宋 凡
(72)【発明者】
【氏名】黄 曉林
(72)【発明者】
【氏名】鄒 宇
(72)【発明者】
【氏名】馬 麗娜
(72)【発明者】
【氏名】熊 峰
(72)【発明者】
【氏名】唐 鳳嬌
(72)【発明者】
【氏名】魯 曉
(72)【発明者】
【氏名】朱 梓方
【テーマコード(参考)】
2G105
5L049
【Fターム(参考)】
2G105AA02
2G105BB01
2G105EE02
2G105LL03
2G105LL04
2G105LL05
2G105LL07
2G105NN01
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】複雑な山岳地帯における長大な線形工事のための工学地質ゾーニング方法及びシステムを提供する。
【解決手段】本発明は、複雑な山岳地帯における長大な線形工事のための工学地質ゾーニング方法であって、前記方法は、ゾーニング対象地域の平面工学地質条件及び/又は断面工学地質条件を評価するためのベースパラメータである、ゾーニング対象地域の工学地質条件パラメータを取得することと、ゾーニング対象地域に対してグリッド分割を行い、複数の同じ大きさのグリッドセルを得ることと、工学地質条件パラメータに従って、各グリッドセルの総合パラメータ値を計算することと、全てのグリッドセルの総合パラメータ値に対して値区間分割を行い、複数の総合値区間を得ることとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複雑な山岳地帯における長大な線形工事のための工学地質ゾーニング方法であって、前記工学地質ゾーニング方法は、
ゾーニング対象地域の平面工学地質条件及び/又は断面工学地質条件を評価するためのベースパラメータである、ゾーニング対象地域の工学地質条件パラメータを取得することと、
前記ゾーニング対象地域に対してグリッド分割を行い、複数の同じ大きさのグリッドセルを得ることと、
前記工学地質条件パラメータに従って、各前記グリッドセルの総合パラメータ値を計算することと、
全てのグリッドセルの総合パラメータ値に対して値区間分割を行い、複数の総合値区間を得ることとを含み、前記複数の総合値区間は様々な等級の工学地質条件を特徴付けるために用いられ、各総合値区間は1つの工学地質条件等級に対応することを特徴とする複雑な山岳地帯における長大な線形工事のための工学地質ゾーニング方法。
【請求項2】
前記工学地質条件パラメータは地域スケール、重点地帯スケール又はキー部分スケールの工学地質条件パラメータを含み、前記地域スケール、重点地帯スケール及びキー部分スケールは異なる比例スケールを表すことを特徴とする請求項1に記載の工学地質ゾーニング方法。
【請求項3】
前記地域スケールの縮尺は1:50000~1:250000であり、前記重点地帯スケールの縮尺は1:2000~1:5000であり、前記キー部分スケールの縮尺は1:500~1:2000であることを特徴とする請求項2に記載の工学地質ゾーニング方法。
【請求項4】
前記工学地質条件パラメータに従って、各前記グリッドセルの総合パラメータ値を計算することは、具体的には、
前記工学地質条件パラメータに従って、各グリッドセルにおける各種類の工学地質条件パラメータに対応する工学地質条件パラメータ値を計算することと、
前記工学地質条件パラメータ値に従って、各前記グリッドセルの総合パラメータ値をそれぞれ計算することとを含み、前記総合パラメータ値は同一の前記グリッドセルでの全ての種類の工学地質条件パラメータ値の合計であることを特徴とする請求項1に記載の工学地質ゾーニング方法。
【請求項5】
前記全てのグリッドセルの総合パラメータ値に対して値区間分割を行い、複数の総合値区間を得るステップの後、前記工学地質ゾーニング方法はさらに、
前記複数の総合値区間を小さい順にソートし、ソートされた複数の総合値区間を得ることと、
前記ソートされた複数の総合値区間に従って、前記総合値区間ごとに1つの工学地質条件等級を対応して設定し、全ての工学地質条件等級を高い順に並べることとを含むことを特徴とする請求項1に記載の工学地質ゾーニング方法。
【請求項6】
前記工学地質条件等級は高い順に1級、2級、3級、4級及び5級を含み、
前記各前記グリッドセルの総合パラメータ値に従って、前記グリッドセルに対応する総合パラメータ値が位置する総合値区間を判断して、前記グリッドセルの工学地質条件等級を決定するステップの後、前記工学地質ゾーニング方法はさらに、
工事設計段階において、工学地質条件等級が3級以上に対応するグリッドセル地域を施工地域とし、工学地質条件等級が4級以下に対応するグリッドセル地域を回避することを含むことを特徴とする請求項1に記載の工学地質ゾーニング方法。
【請求項7】
前記各前記グリッドセルの総合パラメータ値に従って、前記グリッドセルに対応する総合パラメータ値が位置する総合値区間を判断して、前記グリッドセルの工学地質条件等級を決定するステップの後、前記工学地質ゾーニング方法はさらに、
地理情報システム技術のレイヤーオーバーレイ技術を用いて、それぞれ前記工学地質条件パラメータに対して単独分析処理及びオーバーレイ分析処理を行うことにより、前記ゾーニング対象地域がそれぞれ路床工事、法面工事及び洞窟工事の施工プロセスにおいて発生可能な工学地質災害のカテゴリを予測することを含み、
前記単独分析処理は、レイヤーオーバーレイ技術に基づいて、一種の工学地質条件パラメータに対して単独分析を行う方式であり、前記オーバーレイ分析処理はレイヤーオーバーレイ技術に基づいて少なくとも二種の工学地質条件パラメータに対して総合分析を行うオーバーレイ分析方式であることを特徴とする請求項1に記載の工学地質ゾーニング方法。
【請求項8】
複雑な山岳地帯における長大な線形工事のための工学地質ゾーニングシステムであって、前記工学地質ゾーニングシステムは、
ゾーニング対象地域の平面工学地質条件及び/又は断面工学地質条件を評価するためのベースパラメータである、ゾーニング対象地域の工学地質条件パラメータを取得するために用いられる工学地質条件パラメータ取得モジュールと、
前記ゾーニング対象地域に対してグリッド分割を行い、複数の同じ大きさのグリッドセルを得るために用いられるグリッドセル分割モジュールと、
前記工学地質条件パラメータに従って、各前記グリッドセルの総合パラメータ値を計算するために用いられる総合パラメータ値決定モジュールと、
全てのグリッドセルの総合パラメータ値に対して値区間分割を行い、複数の総合値区間を得るために用いられる工学地質ゾーニングモジュールとを含み、前記複数の総合値区間は様々な等級の工学地質条件を特徴付けるために用いられ、各総合値区間は1つの工学地質条件等級に対応することを特徴とする複雑な山岳地帯における長大な線形工事のための工学地質ゾーニングシステム。
【請求項9】
前記総合パラメータ値決定モジュールは、
前記工学地質条件パラメータに従って、各グリッドセルにおける各種類の工学地質条件パラメータに対応する工学地質条件パラメータ値を計算するために用いられる工学地質条件パラメータ値計算ユニットと、
前記工学地質条件パラメータ値に従って、各前記グリッドセルの総合パラメータ値をそれぞれ計算するために用いられる総合パラメータ値計算ユニットとを含み、前記総合パラメータ値は同一の前記グリッドセルでの全ての種類の工学地質条件パラメータ値の合計であることを特徴とする請求項8に記載の工学地質ゾーニングシステム。
【請求項10】
前記工学地質ゾーニングシステムはさらに、
地理情報システム技術のレイヤーオーバーレイ技術を用いて、前記工学地質条件パラメータに対してそれぞれ単独分析処理及びオーバーレイ分析処理を行うことにより、前記ゾーニング対象地域がそれぞれ路床工事、法面工事及び洞窟工事の施工プロセスにおいて発生可能な工学地質災害のカテゴリを予測するために用いられる工学地質災害予測モジュールを含み、前記単独分析処理は、レイヤーオーバーレイ技術に基づいて、一種の工学地質条件パラメータに対して単独分析を行う方式であり、前記オーバーレイ分析処理は、レイヤーオーバーレイ技術に基づいて、少なくとも二種の工学地質条件パラメータに対して総合分析を行うオーバーレイ分析方式であることを特徴とする請求項8に記載の工学地質ゾーニングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工学地質ゾーニングの技術分野に関し、特に、複雑な山岳地帯における長大な線形工事に適した工学地質ゾーニング方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、中国の交通、水利、送電通路、石油ガス管路等の長大な線形工事は、複雑な山岳地帯で次々と計画、設計及び建設されている。工学地質ゾーニングは、研究地域内で、工学地質条件が類似又は近いという基本原理に基づいて行われる地域分割であり、ゾーニングの目的は工事のタイプと分布を組み合わせて工学地質条件のゾーニング評価を行い、工学地質条件等級を決定することである。長大な線形工事の計画・ルート選択、調査設計及び施工建設の様々な段階に対して、様々なスケールの工学地質ゾーニングを行い、即ち、工学地質条件が類似する地域を同一のセグメントに分割し、セグメントごとの工学地質条件の評価及び工学地質問題の予測は、複雑な山岳地帯における長大な線形工事の計画、設計、建設に地質根拠を提供できる。
【0003】
しかしながら、複雑な山岳地帯における長大な線形工事について、現在、工学地質ゾーニングを専門的に指導する方法が欠如しているため、多くの工学調査設計部門及び多くの工学地質学・地盤工学技術者は、複雑な山岳地帯における長大な線形工事のための工学地質ゾーニング方法の開発を切実に望んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、現在、複雑な山岳地帯における長大な線形工事の工学地質ゾーニングに対する技術指導が欠如しているという空白を埋めるために、複雑な山岳地帯における長大な線形工事のための工学地質ゾーニング方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は以下の解決手段を提供する。
【0006】
一態様では、本発明は、複雑な山岳地帯における長大な線形工事のための工学地質ゾーニング方法を提供し、前記工学地質ゾーニング方法は、
ゾーニング対象地域の平面工学地質条件及び/又は断面工学地質条件を評価するためのベースパラメータである、ゾーニング対象地域の工学地質条件パラメータを取得することと、
前記ゾーニング対象地域に対してグリッド分割を行い、複数の同じ大きさのグリッドセルを得ることと、
前記工学地質条件パラメータに従って、各前記グリッドセルの総合パラメータ値を計算することと、
全てのグリッドセルの総合パラメータ値に対して値区間分割を行い、複数の総合値区間を得ることとを含み、前記複数の総合値区間は様々な等級の工学地質条件を特徴付けるために用いられ、各総合値区間は1つの工学地質条件等級に対応する。
【0007】
任意選択で、前記工学地質条件パラメータは地域スケール、重点地帯スケール又はキー部分スケールの工学地質条件パラメータを含み、前記地域スケール、重点地帯スケール及びキー部分スケールは異なる比例スケールを表す。
【0008】
任意選択で、前記地域スケールの縮尺は1:50000~1:250000であり、前記重点地帯スケールの縮尺は1:2000~1:5000であり、前記キー部分スケールの縮尺は1:500~1:2000である。
【0009】
任意選択で、前記工学地質条件パラメータに従って、各前記グリッドセルの総合パラメータ値を計算することは、具体的には、
前記工学地質条件パラメータに従って、各グリッドセルにおける各種類の工学地質条件パラメータに対応する工学地質条件パラメータ値を計算することと、
前記工学地質条件パラメータ値に従って、各前記グリッドセルの総合パラメータ値をそれぞれ計算することとを含み、前記総合パラメータ値は同一の前記グリッドセルでの全ての種類の工学地質条件パラメータ値の合計である。
【0010】
任意選択で、前記全てのグリッドセルの総合パラメータ値に対して値区間分割を行い、複数の総合値区間を得るステップの後、前記工学地質ゾーニング方法はさらに、
前記複数の総合値区間を小さい順にソートし、ソートされた複数の総合値区間を得ることと、
前記ソートされた複数の総合値区間に従って、前記総合値区間ごとに1つの工学地質条件等級を対応して設定し、全ての工学地質条件等級を高い順に並べることとを含む。
【0011】
任意選択で、前記工学地質条件等級は高い順に1級、2級、3級、4級及び5級を含み、
前記各前記グリッドセルの総合パラメータ値に従って、前記グリッドセルに対応する総合パラメータ値が位置する総合値区間を判断して、前記グリッドセルの工学地質条件等級を決定するステップの後、前記工学地質ゾーニング方法はさらに、
工事設計段階において、工学地質条件等級が3級以上に対応するグリッドセル地域を施工地域とし、工学地質条件等級が4級以下に対応するグリッドセル地域を回避することを含む。
【0012】
任意選択で、前記各前記グリッドセルの総合パラメータ値に従って、前記グリッドセルに対応する総合パラメータ値が位置する総合値区間を判断して、前記グリッドセルの工学地質条件等級を決定するステップの後、前記工学地質ゾーニング方法はさらに、
地理情報システム技術のレイヤーオーバーレイ技術を用いて、前記工学地質条件パラメータに対してそれぞれ単独分析処理及びオーバーレイ分析処理を行うことにより、前記ゾーニング対象地域がそれぞれ路床工事、法面工事及び洞窟工事の施工プロセスにおいて発生可能な工学地質災害のカテゴリを予測することを含み、
前記単独分析処理は、レイヤーオーバーレイ技術に基づいて、一種の工学地質条件パラメータに対して単独分析を行う方式であり、前記オーバーレイ分析処理は、レイヤーオーバーレイ技術に基づいて、少なくとも二種の工学地質条件パラメータに対して総合分析を行うオーバーレイ分析方式である。
【0013】
別の態様では、本発明はまた、複雑な山岳地帯における長大な線形工事のための工学地質ゾーニングシステムを提供し、前記工学地質ゾーニングシステムは、
ゾーニング対象地域の平面工学地質条件及び/又は断面工学地質条件を評価するためのベースパラメータである、ゾーニング対象地域の工学地質条件パラメータを取得するために用いられる工学地質条件パラメータ取得モジュールと、
前記ゾーニング対象地域に対してグリッド分割を行い、複数の同じ大きさのグリッドセルを得るために用いられるグリッドセル分割モジュールと、
前記工学地質条件パラメータに従って、各前記グリッドセルの総合パラメータ値を計算するために用いられる総合パラメータ値決定モジュールと、
全てのグリッドセルの総合パラメータ値に対して値区間分割を行い、複数の総合値区間を得るために用いられる工学地質ゾーニングモジュールとを含み、前記複数の総合値区間は様々な等級の工学地質条件を特徴付けるために用いられ、各総合値区間は1つの工学地質条件等級に対応する。
【0014】
任意選択で、前記総合パラメータ値決定モジュールは、
前記工学地質条件パラメータに従って、各グリッドセルにおける各種類の工学地質条件パラメータに対応する工学地質条件パラメータ値を計算するために用いられる工学地質条件パラメータ値計算ユニットと、
前記工学地質条件パラメータ値に従って、各前記グリッドセルの総合パラメータ値をそれぞれ計算するために用いられる総合パラメータ値計算ユニットとを含み、前記総合パラメータ値は同一の前記グリッドセルでの全ての種類の工学地質条件パラメータ値の合計である。
【0015】
任意選択で、前記工学地質ゾーニングシステムはさらに、
地理情報システム技術のレイヤーオーバーレイ技術を用いて、前記工学地質条件パラメータに対してそれぞれ単独分析処理及びオーバーレイ分析処理を行うことにより、前記ゾーニング対象地域がそれぞれ路床工事、法面工事及び洞窟工事の施工プロセスにおいて発生可能な工学地質災害のカテゴリを予測するために用いられる工学地質災害予測モジュールを含み、前記単独分析処理は、レイヤーオーバーレイ技術に基づいて、一種の工学地質条件パラメータに対して単独分析を行う方式であり、前記オーバーレイ分析処理は、レイヤーオーバーレイ技術に基づいて、少なくとも二種の工学地質条件パラメータに対して総合分析を行うオーバーレイ分析方式である。
【発明の効果】
【0016】
本発明が提供する具体的な実施例によれば、本発明は以下の技術的効果を開示する。
【0017】
本発明では、複雑な山岳地帯における長大な線形工事のための工学地質ゾーニング方法及びシステムが提供され、ゾーニング対象地域の平面工学地質条件及び/又は断面工学地質条件を評価するためのベースパラメータである、ゾーニング対象地域の工学地質条件パラメータを取得することと、ゾーニング対象地域に対してグリッド分割を行い、複数の同じ大きさのグリッドセルを得ることと、工学地質条件パラメータに従って、各グリッドセルの総合パラメータ値を計算することと、全てのグリッドセルの総合パラメータ値に対して値区間分割を行い、複数の総合値区間を得ることとを含み、複数の総合値区間は様々な等級の工学地質条件を特徴付けるために用いられ、各総合値区間は1つの工学地質条件等級に対応する。
【0018】
本発明は、グリッド分割により複数のグリッドセルを得て、各グリッドセルの総合パラメータ値を計算し、全てのグリッドセルの総合パラメータ値に対して値区間分割を行うことにより、工学地質条件等級を特徴付けるための複数の総合値区間を決定し、各総合値区間は1つの工学地質条件等級に対応し、該工学地質条件等級はグリッドセル地域の工学地質条件の良否程度を真に反映でき、それによりゾーニング対象地域の工学地質条件等級のゾーニングを実現し、複雑な山岳地帯における長大な線形工事に適した工学地質ゾーニング方法を形成し、現在、複雑な山岳地帯における長大な線形工事の工学地質ゾーニングに対する技術指導が欠如しているという空白を埋め、工程部門の施工に技術的サポートを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の実施例又は従来技術の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施例で使用する必要のある図面を簡単に説明し、以下に説明する図面は本発明の一部の実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面に想到し得る。以下の図面は、意図的に実際の大きさと同じ縮尺で描かれているわけではなく、本発明の主旨を示すことに重点を置いている。
【0020】
【
図1】本発明の実施例1が提供する複雑な山岳地帯における長大な線形工事のための工学地質ゾーニング方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の実施例2が提供する複雑な山岳地帯における長大な線形工事のための工学地質ゾーニングシステムの構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例における図面を参照して、本発明の実施例における技術的解決手段を明確かつ完全に説明し、説明した実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な労力を要さずに想到し得る他の実施例は、いずれも本発明の技術的範囲に属する。
【0022】
本発明及び特許請求の範囲に示されるように、「一」、「一個」、「一種」及び/又は「該」等の用語は、文脈が例外を明確に示さない限り、単数を特定するものではなく、複数も含み得る。一般的に言えば、「含む」及び「備える」という用語は、明示的に識別されたステップ及び要素を含むことを単に示唆するものであり、これらのステップ又は要素は排他的な羅列を構成するものではなく、方法又はデバイスも他のステップ又は要素を備え得る。
【0023】
フロー図は、本発明の実施例のシステムによって実行される操作を説明するために本明発明で使用される。前述又は後述の操作は、必ずしも順番に正確に実行される必要はないことが理解される。逆に、様々なステップは、必要に応じて、逆の順序で又は同時に処理され得る。また、他の操作がこれらのプロセスに追加されてもよく、又はあるステップ又は複数のステップがこれらのプロセスから除去され得る。
【0024】
本発明は、従来技術において複雑な山岳地帯における長大な線形工事の工学地質ゾーニングに対する指導方法が欠如しているという空白を埋めるために、複雑な山岳地帯における長大な線形工事のための工学地質ゾーニング方法及びシステムを提供することを目的とする。
【0025】
本発明の上記目的、特徴及び利点をより分かりやすくするために、以下、図面及び具体的な実施形態を参照して、本発明をさらに詳しく説明する。
【実施例0026】
図1に示すように、本実施例は、複雑な山岳地帯における長大な線形工事に適した複雑な山岳地帯における長大な線形工事のための工学地質ゾーニング方法を提供し、前記工学地質ゾーニング方法は、ステップS1~S4を含む。
【0027】
ステップS1:ゾーニング対象地域の平面工学地質条件及び/又は断面工学地質条件を評価するためのベースパラメータである、ゾーニング対象地域の工学地質条件パラメータを取得することにより、ゾーニング対象地域の立体空間の工学地質条件のベースパラメータ、即ち前記工学地質条件パラメータを取得する。
【0028】
本実施例では、前記工学地質条件パラメータは地域スケール、重点地帯スケール又はキー部分スケールの工学地質条件パラメータを含み、前記地域スケール、重点地帯スケール及びキー部分スケールは異なる比例スケールを表す。例えば、前記地域スケールの縮尺は1:50000~1:250000であってもよく、前記重点地帯スケールの縮尺は1:2000~1:5000であってもよく、前記キー部分スケールの縮尺は1:500~1:2000であってもよい。
【0029】
ここで、前記地域スケールの平面工学地質条件パラメータは地形パラメータ、地質構造パラメータ、地層岩質パラメータ、地震活動パラメータ及び不良地質作用パラメータ等を含む。前記重点地帯スケールの平面工学地質条件パラメータは地形パラメータ、地質構造パラメータ、地層岩質パラメータ、地震活動パラメータ、降雨量パラメータ、不良地質作用パラメータ及び人間工学活動パラメータ等を含む。前記重点地帯スケールの断面工学地質条件パラメータは地質構造パラメータ、水文地質条件パラメータ、地殻応力パラメータ及び地温パラメータ等を含む。前記キー部分スケールの平面工学地質条件パラメータは地形パラメータ、水文地質条件パラメータ及び工事タイプパラメータ等を含む。前記キー部分スケールの断面工学地質条件パラメータは地質構造パラメータ、水文地質条件パラメータ、強度応力パラメータ及び工学パラメータ等を含む。
【0030】
ステップS2:前記ゾーニング対象地域に対してグリッド分割を行い、複数の同じ大きさのグリッドセルを得る。
【0031】
ステップS3:前記工学地質条件パラメータに従って、各前記グリッドセルの総合パラメータ値を計算する。具体的には、ステップS3.1~S3.2を含む。
【0032】
ステップS3.1:前記工学地質条件パラメータに従って、各グリッドセルにおける各種類の工学地質条件パラメータに対応する工学地質条件パラメータ値を計算する。ここでは地層岩質パラメータ、降雨量パラメータ等のステップS1におけるある種類の工学地質条件パラメータを指す。
【0033】
ステップS3.2:前記工学地質条件パラメータ値に従って、各前記グリッドセルの総合パラメータ値をそれぞれ計算する。前記総合パラメータ値は同一の前記グリッドセルでの全ての種類の工学地質条件パラメータ値の合計である。
【0034】
ステップS4:全てのグリッドセルの総合パラメータ値に対して値区間分割を行い、複数の総合値区間を得る。前記複数の総合値区間は様々な等級の工学地質条件を特徴付けるために用いられ、各総合値区間は1つの工学地質条件等級に対応する。
【0035】
本実施例では、全てのグリッドセルの総合パラメータ値に対して値区間分割を行い、複数の総合値区間を得る場合、地域スケールの評価及び重点地帯スケールの平面評価は自然不連続点分類法が用いられ、自然不連続点分類法を利用して、全てのグリッドセルの総合パラメータ値に対して値区間分割を行い、複数の総合値区間を得る。重点地帯スケールの断面評価及びキー部分スケールの平面及び断面の評価はオーバーレイ方法が用いられ、該オーバーレイ方法は地理情報システム技術に基づくレイヤーオーバーレイの処理方法であり、該オーバーレイ方法によって全てのグリッドセルの総合パラメータ値に対して値区間分割を行い、複数の総合値区間を得る。自然不連続点分類法及びレイヤーオーバーレイ処理方法は従来技術であるため、ここでは説明を省略するが、以下に例を挙げて詳細に説明する。
【0036】
本実施例では、全てのグリッドセルの総合パラメータ値に対して値区間分割を行い、複数の総合値区間を得た後、さらに前記複数の総合値区間を小さい順にソートし、ソートされた複数の総合値区間を得ることができ、次に、前記ソートされた複数の総合値区間に従って、前記総合値区間ごとに1つの工学地質条件等級を対応して設定し、全ての工学地質条件等級を高い順に並べ、それにより総合値区間ごとに対応する工学地質条件等級を設定し、あるグリッドセルの総合パラメータ値に従って、それが位置する区間を決定でき、それにより、該グリッドセル地域に対応する工学地質条件等級を決定できる。
【0037】
本実施例では、前記工学地質条件等級は高い順に1級、2級、3級、4級及び5級を含み、それぞれ良い、やや良い、中程度、やや悪い、悪いという5つの異なる程度に対応する。
【0038】
本実施例では、前記各前記グリッドセルの総合パラメータ値に従って、前記グリッドセルに対応する総合パラメータ値が位置する総合値区間を判断して、前記グリッドセルの工学地質条件等級を決定するステップの後、前記工学地質ゾーニング方法はさらに、
工事設計段階において、工学地質条件等級が3級以上に対応するグリッドセル地域を施工地域とし、工学地質条件等級が4級以下に対応するグリッドセル地域を回避することを含む。
【0039】
なお、本発明における工学地質条件等級の数は固定されず、各工学地質条件等級に対応する地質条件の良否程度も固定されず、いずれも実際の状況に応じて自発的に設定できる。
【0040】
以下に例を挙げて、本発明の工学地質ゾーニング方法の具体的なプロセスを詳細に説明する。
【0041】
複雑な山岳地帯における長大な線形工事の研究地域の地域スケールの工学地質条件パラメータを評価及びゾーニングする場合、まず、複雑な山岳地帯における長大な線形工事の研究地域の地域スケール(縮尺は1:50000~1:250000である)の平面(地面以上)工学地質条件パラメータを取得し、地形パラメータ、地質構造パラメータ、地層岩質パラメータ、地震活動パラメータ、不良地質作用パラメータ等が含まれる。
【0042】
ここで、地形パラメータは、具体的には、標高パラメータ、勾配パラメータ及びアスペクトパラメータに関し、光学映像を地理情報システム技術と組み合わせることによって得られ、光学映像の分解能は90mであってもよく、又は90m以下であってもよい。標高パラメータについて、[0~100m]、[100m~200m]……[h~(h+100)m]のように、100mの標高間隔で分類し、研究地域の標高最大値Hmaxは最後の標高区間に位置し、即ちh<Hmax<h+100mである。勾配パラメータについて、[0~10°]、[10°~20°]……[80°~90°]のように、10°の勾配間隔で分類する。アスペクトパラメータについて、[0~22.5°]、[22.5°~45°]……[337.5°~360°]等のように、22.5°のアスペクト間隔で分類する。
【0043】
地質構造パラメータ:地質構造パラメータは、具体的には、I級、II級の構造面パラメータに関し、地質図データ、光学映像、リモートセンシング解釈を地理情報システム技術と組み合わせることによって得られ、光学映像の分解能は90mであってもよい。地質構造からの距離のパラメータを設定し、[0~100m]、[100m~200m]……[s~(s+100)m]のように、100mの距離間隔で分類し、研究地域の地質構造からの距離の最大値Smaxは最後の距離区間に位置し、即ちs<Smax<s+100mである。
【0044】
地層岩質パラメータ:地層岩質パラメータは地質図データを地理情報システム技術と組み合わせることによって得られ、様々な岩質の岩石強度分類基準により、岩質を硬岩(飽和一軸圧縮強度が30MPaより大きい)と軟岩(飽和一軸圧縮強度が30MPaより大きい)の2つのカテゴリに分割できる。
【0045】
地震活動パラメータ:地震活動パラメータは縮尺地震動パラメータゾーニングマップを地理情報システム技術と組み合わせることによって得られ、[0~0.1g]、[0.1g~0.2g]……[a~(a+0.1)g]のように、0.1gの地震動パラメータの間隔で分類し、研究地域の表面最大加速度の最大値Amaxは最後の加速度区間に位置し、即ちa<Amax<a+0.1gである。
【0046】
不良地質作用パラメータ:不良地質作用パラメータは、具体的には、崩壊、地滑り、土石流、不安定斜面、カルスト、地盤沈下、地盤陥没、地割れ等のパラメータに関し、主に光学映像、リモートセンシング解釈を地理情報システム技術と組み合わせることによって得られ、光学映像の分解能は90mであってもよく、最大辺長が250m以上の不良地質作用はいずれも解釈範囲内にある。続いて、地理情報システム技術を利用して、全ての不良地質作用に対して点密度分析を行うことができ、自然不連続点分類法によって点密度分析結果を5つのカテゴリ、即ち5つの値区間に分割する。
【0047】
次に、研究地域を複数の同じ大きさのグリッドセルに分割し、それぞれ各グリッドセルの各工学地質条件パラメータ値を求める。地理情報システム技術を利用して、研究地域を複数の同じ大きさのグリッドセルに分割し、セルの長さは光学映像の分解能と同じ90m、又は90m以下であってもよい。各グリッドセルの各工学地質条件パラメータ値、即ち、式(1)~式(7)に示す頻度情報比をそれぞれ求める。
【0048】
F111=(A111i/A1)/(B111i/B1) (1)
F112=(A112i/A1)/(B112i/B1) (2)
F113=(A113i/A1)/(B113i/B1) (3)
F12=(A12i/A1)/(B12i/B1) (4)
F13=(A13i/A1)/(B13i/B1) (5)
F14=(A14i/A1)/(B14i/B1) (6)
F15=(A15i/A1)/(B15i/B1) (7)
【0049】
ここで、F111は地域スケールの地形パラメータの標高パラメータの頻度情報比である。F112は地域スケールの地形パラメータの勾配パラメータの頻度情報比である。F113は地域スケールの地形パラメータのアスペクトパラメータの頻度情報比である。F12は地域スケールの地質構造パラメータの頻度情報比である。F13は地域スケールの地層岩質パラメータの頻度情報比である。F14は地域スケールの地震活動パラメータの頻度情報比である。F15は地域スケールの不良地質作用パラメータの頻度情報比である。A111iは地域スケールの地形パラメータの標高パラメータのタイプiの不良地質作用の面積であり、B111iは地域スケールの地形パラメータの標高パラメータのタイプiの研究地域の面積である。A112iは地域スケールの地形パラメータの勾配パラメータのタイプiの不良地質作用の面積であり、B112iは地域スケールの地形パラメータの勾配パラメータのタイプiの研究地域の面積である。A113iは地域スケールの地形パラメータのアスペクトパラメータのタイプiの不良地質作用の面積であり、B113iは地域スケールの地形パラメータのアスペクトパラメータのタイプiの研究地域の面積である。A12iは地域スケールの地質構造パラメータのタイプiの不良地質作用の面積であり、B12iは地域スケールの地質構造パラメータのタイプiの研究地域の面積である。A13iは地域スケールの地層岩質パラメータのタイプiの不良地質作用の面積であり、B13iは地域スケールの地層岩質パラメータのタイプiの研究地域の面積である。A14iは地域スケールの地震活動パラメータのタイプiの不良地質作用の面積であり、B14iは地域スケールの地震活動パラメータのタイプiの研究地域の面積である。A15iは地域スケールの不良地質作用パラメータのタイプiの不良地質作用の面積であり、B15iは地域スケールの不良地質作用パラメータのタイプiの研究地域の面積である。A1は地域スケールの不良地質作用の面積の総和であり、B1は地域スケールの研究地域の面積の総和である。
【0050】
次に、自然不連続点分類法を用いて、それぞれ全てのグリッドセルの地形パラメータの標高パラメータの全ての頻度情報比F111、地形パラメータの勾配パラメータの全ての頻度情報比F112、地形パラメータのアスペクトパラメータの全ての頻度情報比F113、地質構造パラメータの全ての頻度情報比F12、地震活動パラメータの全ての頻度情報比F14、不良地質作用パラメータの全ての頻度情報比F15を5つのカテゴリ(ここで、地層岩質パラメータの全ての頻度情報比F13を2つのカテゴリに保留し、不良地質作用パラメータの全ての頻度情報比F15を5つのカテゴリに保留する)、即ち5つの値区間に分割でき、これに基づいて、各グリッドセルの各パラメータの再分類された頻度情報比の合計をそれぞれ計算し、式(8)に示すように、各グリッドセルが計算した頻度情報比の合計を該グリッドセルの工学地質条件パラメータの総合パラメータ値とする。
【0051】
Z1=F111+F112+F113+F12+F13+F14+F15 (8)
【0052】
式中、Z1は地域スケールの単一グリッドセルの工学地質条件パラメータの総合パラメータ値である。
【0053】
次に、自然不連続点分類法をさらに用いて、全てのグリッドセルの総合パラメータ値を5つのカテゴリ、即ち5つの値区間に分割した後、総合値区間で小さい順に並べ、上記グリッドセルの工学地質条件を良い、やや良い、中程度、やや悪い、悪いという5つの等級に順次定義し、それぞれ1級、2級、3級、4級及び5級に対応し、それにより、地域スケールで工学地質条件が同じ又は近い地域の分割を完了する。
【0054】
本実施例では、工事計画段階において、工学地質条件が中程度以上の地域が優先され、工学地質条件が悪い及びやや悪い地域は回避される。回避できない、工学地質条件が悪い及びやや悪い地域について、線形工事と工学地質条件が悪い及びやや悪い地域(主に帯状地域)が大きな角度で交差する(線形工事の軸方向と帯状地域の軸方向が交差し、交差する角度が大きな角度である)形で地上を通り抜け、又は地下を通り抜ける。これに基づいて、工事が通り抜けようとする、工学地質条件が中程度以上の地域に対して重点地帯スケールの平面工学地質条件の評価を行うことができ、同時に工事が回避できない、工学地質条件が悪い及びやや悪い領域に対して重点地帯スケールの平面工学地質条件の評価及び断面工学地質条件の評価を行うことができる。
【0055】
本実施例では、地域スケールの工学地質条件の評価を完了した上で、さらに重点地帯スケールの平面工学地質条件の評価及び断面工学地質条件の評価をそれぞれ行うことができる。
【0056】
重点地帯スケールの平面工学地質条件の評価プロセス:
【0057】
まず、複雑な山岳地帯における長大な線形工事の研究地域の重点地帯スケール(縮尺は1:2000~1:5000である)の平面工学地質条件パラメータを取得し、地形パラメータ、地質構造パラメータ、地層岩質パラメータ、地震活動パラメータ、降雨量パラメータ、不良地質作用パラメータ、人間工学活動パラメータ等が含まれる。
【0058】
ここで、地形パラメータ:具体的には、標高パラメータ、勾配パラメータ及び構造パラメータに関し、光学映像、工学地質マッピングを地理情報システム技術と組み合わせることによって得られ、光学映像の分解能は30mであってもよく、又は30m以下であってもよい。標高パラメータについて、[0~50m]、[50m~100m]……[h~(h+50)m]のように、50mの標高間隔で分類し、重点地帯の標高最大値Hmaxは最後の標高区間に位置し、即ちh<Hmax<h+50mである。勾配パラメータについて、[0~5°]、[5°~10°]……[85°~90°]のように、5°の勾配間隔で分類する。斜面構造パラメータについて、順傾斜構造、逆傾斜構造、斜交構造、水平構造、直立構造等で分類する。
【0059】
地質構造パラメータ:地質構造パラメータは、具体的には、I級、II級、III級の構造面パラメータ、水系パラメータ及びガリーパラメータに関し、地質図データ、光学映像、リモートセンシング解釈、工学地質マッピングを地理情報システム技術と組み合わせることによって得られ、光学映像の分解能は30mであってもよい。地質構造からの距離のパラメータを設定し、[0~50m]、[50m~100m]……[s~(s+50)m]のように、50mの距離間隔で分類し、重点地帯の地質構造からの距離の最大値Smaxは最後の距離区間に位置し、即ちs<Smax<s+50mである。
【0060】
地層岩質パラメータ:地層岩質パラメータは地質図データ、工学地質マッピングを地理情報システム技術と組み合わせることによって得られ、様々な岩質の岩石強度分類基準により、岩質を硬い岩(飽和一軸圧縮強度が60MPaより大きい)、やや硬い岩(飽和一軸圧縮強度が30MPaより大きく、60MPa以下である)、やや軟らかい岩(飽和一軸圧縮強度が15MPaより大きく、30MPa以下である)、軟らかい岩(飽和一軸圧縮強度が5MPaより大きく、15MPa以下である)、非常に軟らかい岩(飽和一軸圧縮強度が5MPa以下である)等の5つのカテゴリに分割する。
【0061】
地震活動パラメータ:地震活動パラメータは大縮尺地震動パラメータゾーニングマップを地理情報システム技術と組み合わせることによって得られ、[0~0.05g]、[0.05g~0.1g]……[a~(a+0.05)g]のように、0.05gの地震動パラメータの間隔で分類し、重点地帯の表面最大加速度の最大値Amaxは最後の加速度区間に位置し、即ちa<Amax<a+0.05gである。
【0062】
降雨量パラメータ:降雨量パラメータは重点地帯の降雨量監視ステーションのデータを地理情報システム技術と組み合わせることによって得られ、[0~50mm]、[50mm~100mm]……[v~(v+50)mm]のように、50mmの降雨量パラメータの間隔で分類し、重点地帯の降雨量の最大値Vmaxは最後の加速度区間に位置し、即ちv<Vmax<v+50mmである。
【0063】
不良地質作用パラメータ:不良地質作用パラメータは、具体的には、崩壊、地滑り、土石流、不安定斜面、カルスト、地盤沈下、地盤陥没、地割れ等のパラメータに関し、主に光学映像、リモートセンシング解釈、工学地質マッピングを地理情報システム技術と組み合わせることによって得られ、光学映像の分解能は30mであってもよく、又は30m以下であってもよく、最大辺長が50m以上の不良地質作用はいずれも解釈範囲内にある。続いて、地理情報システム技術を利用して、全ての不良地質作用に対して点密度分析を行うことができ、自然不連続点分類法によって点密度分析結果を5つのカテゴリ、即ち5つの値区間に分割する。
【0064】
人間工学活動パラメータ:人間工学活動パラメータは、具体的には、点及び線形工事パラメータに関し、工学データ、光学映像、リモートセンシング解釈、工学地質マッピングを地理情報システム技術と組み合わせることによって得られ、光学映像の分解能は30mであってもよい。工事からの距離のパラメータを設定し、[0~50m]、[50m~100m]……[l~(l+50)m]のように、50mの距離間隔で分類し、重点地帯の工事からの距離の最大値Lmaxは最後の距離区間に位置し、即ちl<Lmax<l+50mである。
【0065】
次に、地理情報システム技術を利用して、重点地帯の平面を複数の同じ大きさのグリッドセルに分割し、グリッドセルの長さと光学映像の分解能は同じ30mであってもよく、又は30m以下であってもよい。各グリッドセルの各工学地質条件パラメータ値、即ち、式(9)~式(17)に示す頻度情報比をそれぞれ求める。
【0066】
F211=(A211i/A2)/(B211i/B2) (9)
F212=(A212i/A2)/(B212i/B2) (10)
F213=(A213i/A2)/(B213i/B2) (11)
F22=(A22i/A2)/(B22i/B2) (12)
F23=(A23i/A2)/(B23i/B2) (13)
F24=(A24i/A2)/(B24i/B2) (14)
F25=(A25i/A2)/(B25i/B2) (15)
F26=(A26i/A2)/(B26i/B2) (16)
F27=(A27i/A2)/(B27i/B2) (17)
【0067】
ここで、F211は重点地帯スケールの地形パラメータの標高パラメータの頻度情報比である。F212は重点地帯スケールの地形パラメータの勾配パラメータの頻度情報比である。F213は重点地帯スケールの地形パラメータの構造パラメータの頻度情報比である。F22は重点地帯スケールの地質構造パラメータの頻度情報比である。F23は重点地帯スケールの地層岩質パラメータの頻度情報比である。F24は重点地帯スケールの地震活動パラメータの頻度情報比である。F25は重点地帯スケールの降雨量パラメータの頻度情報比である。F26は重点地帯スケールの不良地質作用パラメータの頻度情報比である。F27は重点地帯スケールの人間工学活動パラメータの頻度情報比である。A211iは重点地帯スケールの地形パラメータの標高パラメータのタイプiの不良地質作用の面積であり、B211iは重点地帯スケールの地形パラメータの標高パラメータのタイプiの研究地域の面積である。A212iは重点地帯スケールの地形パラメータの勾配パラメータのタイプiの不良地質作用の面積であり、B212iは重点地帯スケールの地形パラメータの勾配パラメータのタイプiの研究地域の面積である。A213iは重点地帯スケールの地形パラメータの構造パラメータのタイプiの不良地質作用の面積であり、B213iは重点地帯スケールの地形パラメータの構造パラメータのタイプiの研究地域の面積である。A22iは重点地帯スケールの地質構造パラメータのタイプiの不良地質作用の面積であり、B22iは重点地帯スケールの地質構造パラメータのタイプiの研究地域の面積である。A23iは重点地帯スケールの地層岩質パラメータのタイプiの不良地質作用の面積であり、B23iは重点地帯スケールの地層岩質パラメータのタイプiの研究地域の面積である。A24iは重点地帯スケールの地震活動パラメータのタイプiの不良地質作用の面積であり、B24iは重点地帯スケールの地震活動パラメータのタイプiの研究地域の面積である。A25iは重点地帯スケールの降雨量パラメータのタイプiの不良地質作用の面積であり、B25iは重点地帯スケールの降雨量パラメータのタイプiの研究地域の面積である。A26iは重点地帯スケールの不良地質作用パラメータのタイプiの不良地質作用の面積であり、B26iは重点地帯スケールの不良地質作用パラメータのタイプiの研究地域の面積である。A27iは重点地帯スケールの人間工学活動パラメータのタイプiの不良地質作用の面積であり、B27iは重点地帯スケールの人間工学活動パラメータのタイプiの研究地域の面積である。A2は重点地帯スケールの不良地質作用の面積の総和であり、B2は重点地帯スケールの研究地域の面積の総和である。
【0068】
次に、本実施例は自然不連続点分類法を用いて、それぞれ地形パラメータの標高パラメータの全ての頻度情報比F211、地形パラメータの勾配パラメータの全ての頻度情報比F212、地形パラメータの構造パラメータの全ての頻度情報比F213、地質構造パラメータの全ての頻度情報比F22、地層岩質パラメータの全ての頻度情報比F23、地震活動パラメータの全ての頻度情報比F24、降雨量パラメータの全ての頻度情報比F25、不良地質作用パラメータの全ての頻度情報比F26、人間工学活動パラメータの全ての頻度情報比F27を5つのカテゴリ(地層岩質パラメータの全ての頻度情報比F23を5つのカテゴリに保留する)に分割し、これに基づいて、各グリッドセルの各パラメータの再分類された(5つのカテゴリ)頻度情報比の合計をそれぞれ計算し、各グリッドセルが計算した頻度情報比の合計を、式(18)に示すように、該グリッドセルの工学地質条件パラメータの総合パラメータ値とする。
【0069】
Z2=F211+F212+F213+F22+F23+F24+F25+F26+F27 (18)
【0070】
ここで、Z2は重点地帯スケールの単一グリッドセルの平面工学地質条件パラメータの総合パラメータ値である。
【0071】
自然不連続点分類法を用いて、全てのグリッドセルの総合パラメータ値を5つのカテゴリ、即ち5つの値区間に分割した後、総合値区間で小さい順に並べ、上記グリッドセルの工学地質条件を良い、やや良い、中程度、やや悪い、悪いと順次定義し、それぞれ1級、2級、3級、4級及び5級に対応し、それにより重点地帯スケールで工学地質条件が近い地域の分割を完了する。
【0072】
工事の初期設計段階において、工学地質条件が中程度以上の地域が優先され、工学地質条件が悪い及びやや悪い地域は回避される。回避できない地域について、線形工事と地域が大きな角度で交差する形で地上を通り抜け、又は地下を通り抜ける。これに基づいて、工事が通り抜けようとする、工学地質条件が中程度以上の地域に対して、キー部分スケールの平面工学地質条件の評価を行うことができ、同時に工事が回避できない、工学地質条件が悪い及びやや悪い地域に対して、キー部分スケールの平面工学地質条件の評価及び断面工学地質条件の評価を行うことができる。
【0073】
重点地帯スケールの断面工学地質条件の評価プロセス:
【0074】
まず、複雑な山岳地帯における長大な線形工事の研究地域の重点地帯スケールの断面工学地質条件パラメータを取得し、地質構造パラメータ、水文地質条件パラメータ、地層岩質パラメータ、地殻応力パラメータ、地温パラメータ等が含まれる。
【0075】
ここで、地質構造パラメータ:地質構造パラメータは、具体的には、I級、II級、III級の構造面パラメータに関し、地質図データ、地球物理探査データ、横坑道データ、穿孔データを地理情報システム技術と組み合わせることによって得られ、地質構造からの距離のパラメータを設定し、地質構造パラメータが再分類された結果に応じて分類し、分類区間を小さい順に適切、やや適切、一般的に適切、やや不適切、不適切等と定義する。
【0076】
水文地質パラメータ:地層岩質パラメータの分割に基づいて、水文地質パラメータを設定し、岩質を緩い岩類間隙含水岩群、炭酸塩岩亀裂カルスト含水岩群、砕屑岩類間隙亀裂含水岩群、火成岩変成岩類亀裂含水岩群、他の岩群に分割し、不適切、やや不適切、一般的に適切、やや適切、適切等に順次設定する。
【0077】
地層岩質パラメータ:地層岩質パラメータは地質図データ、横坑道データ、穿孔データを地理情報システム技術と組み合わせることによって得られ、地層岩質パラメータの分類結果に応じて5つのカテゴリに分割され、硬い岩の強度を60MPaに設定し、やや硬い岩の強度を45MPaに設定し、やや軟らかい岩の強度を22.5MPaに設定し、軟らかい岩の強度を10MPaに設定し、非常に軟らかい岩の強度を5MPaに設定する。
【0078】
地殻応力パラメータ:地殻応力パラメータは工学地質マッピング、探査、試験、数値シミュレーションを地理情報システム技術と組み合わせることによって得られ、地殻応力の実測データを制約とし、重点地帯スケールの研究地域の断面の地殻応力数値シミュレーションを行い、該断面の最大主応力等値線図を取得する。
【0079】
次に、地理情報システム技術を利用して、平面グリッドセルの境界を断面の流跡線とし、重点地帯の全ての断面をそれぞれ複数の同じ大きさのグリッドセルに分割し、全ての断面に対して工学地質条件の総合評価を順次行う。
【0080】
ある断面について、地理情報システム技術のレイヤーオーバーレイ技術により、地層岩質パラメータレイヤー及び地殻応力パラメータレイヤーに対してオーバーレイ処理を行い、該断面の強度/地殻応力等値線図を取得し、本実施例では、地殻応力等値線図に従って該パラメータを、例えば、低い地殻応力帯(強度/地殻応力が7以上である)、やや低い地殻応力帯(強度/地殻応力が7未満であり、4以上である)、中程度の地殻応力帯(強度/地殻応力が4未満であり、2以上である)、高い地殻応力帯(強度/地殻応力が2未満であり、1以上である)、超高地殻応力帯(強度/地殻応力が1未満である)という5つのカテゴリに分割し、適切、やや適切、一般的に適切、やや不適切、不適切等に順次設定する。
【0081】
地温パラメータ:地温パラメータは工学地質マッピング、探査、試験、数値シミュレーションを地理情報システム技術と組み合わせることによって得られ、地温実測データを制約とし、重点地帯スケールの研究地域の断面の地温数値シミュレーションを行い、該断面の地温等値線図を取得し、本実施例は、地温等値線図に従って地温を、例えば、常温帯(28℃以下)、低高温帯(28℃より大きく、37℃以下)、中高温帯(37℃より大きく、50℃以下)、高温帯(50℃より大きく、60℃以下)、超高温帯(60℃より大きくい)という5つのカテゴリに分割し、適切、やや適切、一般的に適切、やや不適切、不適切等に順次設定する。
【0082】
本実施例では、階層分析法と組み合わせた経験的割り当て法に従って、地質構造パラメータ、水文地質条件パラメータ、強度/地殻応力パラメータ、地温パラメータの重みを決定し、各パラメータの適切、やや適切、一般的に適切、やや不適切、不適切の等級に対して9、7、5、3、1等の割り当てを行い、ここで、適切、やや適切、一般的に適切、やや不適切、不適切はそれぞれ良い、やや良い、中程度、やや悪い、悪いという5つの等級に対応し、各パラメータの重みを組み合わせて、式(19)~式(23)に示すように、各グリッドセルの工学地質条件パラメータの総合パラメータ値を計算する。
【0083】
Z3=F31i+F32i+F33i+F34i (19)
F31i=P31i*w31i (20)
F32i=P32i*w32i (21)
F33i=P33i*w33i (22)
F34i=P34i*w34i (23)
【0084】
ここで、Z3は重点地帯スケールの単一グリッドセルの断面工学地質条件パラメータの総合パラメータ値である。F31iは重点地帯スケールの地質構造パラメータ値であり、P31iとw31iはそれぞれ地質構造パラメータの等級割り当てと重みである。F32iは重点地帯スケールの強度/地殻応力パラメータ値であり、P32iとw32iはそれぞれ強度/地殻応力パラメータの等級割り当てと重みである。F33iは重点地帯スケールの水文地質条件パラメータ値であり、P33iとw33iはそれぞれ水文地質条件パラメータの等級割り当てと重みである。F34iは重点地帯スケールの地温パラメータ値であり、P34iとw34iはそれぞれ地温パラメータの等級割り当てと重みである。
【0085】
式(19)~式(23)により、本実施例は、その工学地質条件等級を以下の5つの値区間に分割する。Z3が8より大きい場合、該グリッドセルの工学地質条件を良いと定義する。Z3が8以下、6より大きい場合、該グリッドセルの工学地質条件をやや良いと定義する。Z3が6以下、4より大きい場合、該グリッドセルの工学地質条件を中程度と定義する。Z3が4以下、2より大きい場合、該グリッドセルの工学地質条件をやや悪いと定義する。Z3が2以下である場合、該グリッドセルの工学地質条件を悪いと定義する。
【0086】
式(19)により、全ての断面の全てのグリッドセルの工学地質条件を順次評価し、全ての断面工学地質条件の等級結果を取得し、良い、やや良い、中程度、やや悪い及び悪いはそれぞれ1級、2級、3級、4級及び5級に対応し、それにより重点地帯スケールで断面工学地質条件が近い地域の分割を完了する。
【0087】
本実施例では、平面工学地質条件パラメータ及び断面工学地質条件パラメータの評価及びゾーニングが完了した後、重点地帯スケールの平面工学地質条件の評価及び断面工学地質条件の評価の結果を総合的に分析し、さらに、工事が通り抜けようとする平面地域及び断面地域に対して、それぞれキー部分スケールの平面工学地質条件の評価及び断面工学地質条件の評価を行うことができる。
【0088】
本実施例では、重点地帯スケールの工学地質条件の評価に基づいて、それぞれキー部分スケールの平面工学地質条件の評価及び断面工学地質条件の評価を行うことができる。
【0089】
キー部分スケールの平面工学地質条件の評価プロセス:
【0090】
まず、複雑な山岳地帯における長大な線形工事の研究地域のキー部分スケール(縮尺は1:500~1:2000である)の平面工学地質条件パラメータを取得し、地形パラメータ(標高、勾配、構造のパラメータ)、水文地質条件パラメータ、工事タイプパラメータ等が含まれる。次に、地理情報システム技術を利用して、キー部分の平面を複数の同じ大きさのグリッドセルに分割し、式(24)~(29)に示すように、グリッドセルの長さは2.5mであってもよい。
【0091】
キー部分の路床工事に対する評価プロセス:
【0092】
Z41=0.06F41+1.7ln[(250+4F41)/(95-F41)]-2.2 (24)
F41=(V41mp+500)/80,V41mp>3900m/s (25)
F41=40*lg[(V41mp-3500)/40]+10,V41mp≦3900m/s (26)
【0093】
ここで、Z41はキー部分スケールの単一グリッドセルの路床工事の平面工学地質条件パラメータの総合パラメータ値である。F41は速度に関連する中間関数である。V41mpは単一グリッドセルの路床岩体縦波速度であり、単位はm/sである。
【0094】
式(24)~式(26)により、本実施例は、その工学地質条件等級を以下の5つの値区間に分割する。Z41が8より大きい場合、該グリッドセルの工学地質条件を良いと定義する。Z41が8以下、6より大きい場合、該グリッドセルの工学地質条件をやや良いと定義する。Z41が6以下、4より大きい場合、該グリッドセルの工学地質条件を中程度と定義する。Z41が4以下、2より大きい場合、該グリッドセルの工学地質条件をやや悪いと定義する。Z41が2以下である場合、該グリッドセルの工学地質条件を悪いと定義する。本実施例では、工学地質条件が良い、やや良い、中程度、やや悪い及び悪いがそれぞれ1級、2級、3級、4級及び5級に対応する。
【0095】
式(24)により、上記全てのグリッドセルの工学地質条件を順次評価し、それによりキー部分スケールで路床工事の平面工学地質条件が近い地域の分割を完了する。
【0096】
キー部分の法面工事に対する評価プロセス:
【0097】
Z42=0.06F42+1.7ln[(250+4F42)/(95-F42)]-2.2 (27)
F42=(V42mp+500)/80,V42mp>3900m/s (28)
F42=40*lg[(V42mp-3500)/40]+10,V42mp≦3900m/s (29)
【0098】
ここで、Z42はキー部分スケールの単一グリッドセルの法面工事の平面工学地質条件パラメータの総合パラメータ値である。F42は速度に関連する中間関数である。V42mpは単一グリッドセルの法面岩体の縦波速度であり、単位はm/sである。
【0099】
式(27)~式(29)により、本実施例は、その工学地質条件等級を以下の5つの値区間に分割する。Z42が8より大きい場合、該グリッドセルの工学地質条件を良いと定義する。Z42が8以下、6より大きい場合、該グリッドセルの工学地質条件をやや良いと定義する。Z42が6以下、4より大きい場合、該グリッドセルの工学地質条件を中程度と定義する。Z42が4以下、2より大きい場合、該グリッドセルの工学地質条件をやや悪いと定義する。Z42が2以下の場合、該グリッドセルの工学地質条件を悪いと定義する。本実施例では、良い、やや良い、中程度、やや悪い及び悪いという工学地質条件はそれぞれ1級、2級、3級、4級及び5級に対応する。本実施例は法面の高さ、法面切断後の法面アスペクト及び斜面構造パラメータの関係並びに水文地質条件パラメータの変化を考慮して、実際に応用する際に、取得したキー部分スケールの平面工学地質条件パラメータを利用して、実際の変化に応じて式(27)を少し自発的に修正できる。
【0100】
式(27)により、上記全てのグリッドセルの工学地質条件を順次評価し、それによりキー部分スケールで法面工事の平面工学地質条件が近い地域の分割を完了する。
【0101】
キー部分スケールの断面工学地質条件の評価プロセス:
【0102】
まず、複雑な山岳地帯における長大な線形工事の研究地域のキー部分スケールの断面工学地質条件パラメータを取得し、地質構造パラメータ、水文地質条件パラメータ、地殻応力パラメータ、工学パラメータ等が含まれる。次に、地理情報システム技術を利用して、平面グリッドセルの境界を断面の流跡線とし、キー部分の全ての断面をそれぞれ複数の同じ大きさのグリッドセルに分割し、セルの長さは2.5mであってもよく、又は2.5m以下であってもよく、式(30)~式(32)に示すように、全ての断面に対して工学地質条件の総合評価を順次行う。
【0103】
キー部分の洞窟工事に対する評価プロセス:
【0104】
Z43=0.06F43+1.7ln[(250+4F43)/(95-F43)]-2.2 (30)
F43=(V43mp+500)/80,V43mp>3900m/s (31)
F43=40*lg[(V43mp-3500)/40]+10,V43mp≦3900m/s (32)
【0105】
ここで、Z43はキー部分スケールの単一グリッドセルの洞窟工事の平面工学地質条件パラメータの総合パラメータ値である。F43は速度に関連する中間関数である。V43mpは洞窟岩体の縦波速度であり、単位はm/sである。
【0106】
式(30)~式(32)により、本実施例は、その工学地質条件等級を以下の5つの値区間に分割する。Z43が8より大きい場合、該グリッドセルの工学地質条件を良いと定義する。Z43が8以下、6より大きい場合、該グリッドセルの工学地質条件をやや良いと定義する。Z43が6以下、4より大きい場合、該グリッドセルの工学地質条件を中程度と定義する。Z43が4以下、2より大きい場合、該グリッドセルの工学地質条件をやや悪いと定義する。Z43が2以下の場合、該グリッドセルの工学地質条件を悪いと定義する。良い、やや良い、中程度、やや悪い及び悪いという工学地質条件はそれぞれ1級、2級、3級、4級及び5級に対応する。本実施例は洞窟軸線と洞窟構造パラメータとの関係、水文地質条件パラメータ、地殻応力パラメータの変化を考慮して、実際に応用する際に、取得したキー部分スケールの断面工学地質条件パラメータを利用して、実際の変化に応じて式(30)を少し自発的に修正できる。
【0107】
式(30)により、上記全ての断面の全てのグリッドセルの工学地質条件を順次評価し、それによりキー部分スケールで洞窟工事の断面工学地質条件が近い地域の分割を完了する。
【0108】
本発明は、地域スケール、重点地帯スケール、キー部分スケールのマルチスケールゾーニングの構想に従って、平面ゾーニング、断面ゾーニングを組み合わせた立体化ゾーニングを切り込み点とし、工学地質条件を総合的に評価し、工学地質問題を体系的に予測し、ゾーニングの精度はゾーニングスケールの減少に伴って増大する。自然不連続点分類法を用いて、それぞれ工学地質条件等級の最適区間を決定することにより、複雑な山岳地帯における長大な線形工事に適した様々なスケールの工学地質ゾーニング方法が最終的に形成される。
【0109】
本発明が提供する工学地質ゾーニング方法はさらに、
地理情報システム技術のレイヤーオーバーレイ技術を用いて、それぞれ前記工学地質条件パラメータに対して単独分析処理及びオーバーレイ分析処理を行うことにより、前記ゾーニング対象地域がそれぞれ路床工事、法面工事及び洞窟工事の施工プロセスにおいて発生可能な工学地質災害のカテゴリを予測することを含むことができる。ここで、前記単独分析処理は、レイヤーオーバーレイ技術に基づいて、一種の工学地質条件パラメータに対して単独分析を行う方式であり、前記オーバーレイ分析処理は、レイヤーオーバーレイ技術に基づいて、少なくとも二種の工学地質条件パラメータに対して総合分析を行うオーバーレイ分析方式である。
【0110】
本実施例では、「地域スケール」、「重点地帯スケール」及び「キー部分スケール」という3つの異なるスケールでの平面工学地質条件と断面工学地質条件の評価結果を総合的に分析し、工学部門から提供された永久工事及び大型臨時施設の設計スキームに基づいて、地理情報システム技術のレイヤーオーバーレイ技術を利用して、それぞれ各スケールでの地形パラメータ、地質構造パラメータ、地層岩質パラメータ、地震活動パラメータ、降雨量パラメータ、不良地質作用パラメータ、人間工学活動パラメータ、地殻応力パラメータ、地温パラメータ等の工学地質条件パラメータに対して単独分析とオーバーレイ分析を行うことにより、ゾーニング対象地域がそれぞれ路床工事、法面工事及び洞窟工事の施工プロセスにおいて発生可能な工学地質災害のカテゴリを予測し、具体的に直面する工学地質災害問題のカテゴリは以下のとおりである。
【0111】
(1)路床工事が直面する可能性のある工学地質問題は、人間工学活動期間に自然に誘発され又は工学擾乱によって誘発された断層クリープ運動(例えば、地質構造パラメータに関連し、即ち、地質構造パラメータに対して単独分析を行い、以下同様である)/スティックスリップ運動(例えば、地震活動パラメータ又は人間工学活動パラメータに関連する)、崩壊/地滑り/土石流及び災害連鎖(例えば、地形パラメータ、降雨量パラメータ及び高地殻応力帯・超高地殻応力帯のパラメータの重ね合わせ)、岩堆積(例えば、地形パラメータ又は人間工学活動パラメータに関連し、又は地形パラメータと人間工学活動パラメータの重ね合わせ)、地割れ(例えば、地質構造パラメータ又は人間工学活動パラメータに関連し、又は地質構造パラメータと人間工学活動パラメータの重ね合わせ)、地盤沈下(例えば、人間工学活動パラメータ又は緩い岩類間隙含水岩群・炭酸塩岩亀裂カルスト含水岩群のパラメータ又は両者の重ね合わせ)、地震液状化(例えば、地震活動パラメータと非常に軟らかい岩パラメータの重ね合わせ)、地盤崩壊(地震崩壊、カルスト崩壊)(例えば、地震活動パラメータ又は緩い岩類間隙含水岩群・炭酸塩岩亀裂カルスト含水岩群のパラメータ又は両者の重ね合わせ)等の路床工事の安定性に影響を与える問題を含む。
【0112】
(2)法面工事が直面する可能性のある工学地質問題は、人間工学活動期間に自然に誘発され又は工学擾乱によって誘発された崩壊/地滑り/土石流及び災害連鎖(例えば、地形パラメータ、降雨量パラメータ及び高地殻応力帯・超高地殻応力帯のパラメータの重ね合わせ)、ころがり石(例えば、地形パラメータと地震活動パラメータの重ね合わせ)、岩堆積(例えば、地形パラメータ又は人間工学活動パラメータに関連し、又は地形パラメータと人間工学活動パラメータの重ね合わせ)、法面の深い割れ目/深い荷降ろし(例えば、地形パラメータ、地質構造パラメータ及び人間工学活動パラメータの重ね合わせ)等の法面工事の安定性に影響を与える問題を含む。
【0113】
(3)洞窟工事が直面する可能性のある工学地質問題は、人間工学活動期間に自然に誘発され又は工学擾乱によって誘発された断層クリープ運動(例えば、地質構造パラメータに関連する)/スティックスリップ運動(例えば、地震活動パラメータ又は人間工学活動パラメータに関連する)、洞窟の非常に強い山はね(例えば、高地殻応力帯・超高地殻応力帯のパラメータと硬い岩・やや硬い岩のパラメータの重ね合わせ)、洞窟の非常に深刻な変形(例えば、高地殻応力帯・超高地殻応力帯のパラメータと軟らかい岩・非常に軟らかい岩のパラメータの重ね合わせ)、洞窟の高圧大流量の水や泥流の突然噴出(例えば、高地殻応力帯・超高地殻応力帯のパラメータと緩い岩類間隙含水岩群・炭酸塩岩亀裂カルスト含水岩群のパラメータの重ね合わせ)、洞窟の高温熱害(例えば、高温帯・超高温帯のパラメータに関連する)等の洞窟工事の安定性に影響を与える問題を含む。
【0114】
本発明は、グリッド分割により複数のグリッドセルを取得し、各グリッドセルの総合パラメータ値を計算し、次に、全てのグリッドセルの総合パラメータ値に対して値区間分割を行うことにより、工学地質条件等級を特徴付けるための複数の総合値区間を決定し、各総合値区間は1つの工学地質条件等級に対応し、該工学地質条件等級はグリッドセル地域の工学地質条件の良否程度を真に反映でき、それにより工学地質条件等級の最適区間を決定でき、ゾーニング対象地域の工学地質条件等級のゾーニングを実現し、複雑な山岳地帯における長大な線形工事に適した工学地質ゾーニング方法を形成し、現在、複雑な山岳地帯における長大な線形工事の工学地質ゾーニングに対する技術指導が欠如しているという空白を埋め、工程部門の施工に技術的サポートを提供する。
工学地質条件パラメータ取得モジュールM1:ゾーニング対象地域の平面工学地質条件及び/又は断面工学地質条件を評価するためのベースパラメータである、ゾーニング対象地域の工学地質条件パラメータを取得するために用いられる。
工学地質ゾーニングモジュールM4:全てのグリッドセルの総合パラメータ値に対して値区間分割を行い、複数の総合値区間を得るために用いられ、前記複数の総合値区間は様々な等級の工学地質条件を特徴付けるために用いられ、各総合値区間は1つの工学地質条件等級に対応する。
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。一般的な辞書で定義されているような用語は、関連技術の文脈における意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書で明示的にそのように定義されない限り、理想化又は極端に形式化された意味で解釈されないことがさらに理解されるべきである。
以上は、本発明の説明であり、本発明を限定するものとみなされるべきではない。本発明のいくつかの例示的な実施例を説明したが、本発明の新規性及び利点から逸脱することなく、例示的な実施例に多くの修正を行うことができることは、当業者には容易に理解される。したがって、これら全ての修正は、特許請求の範囲によって限定される本発明の範囲内に含まれることが意図される。以上は、本発明の説明であり、開示された特定の実施例に限定されるとみなされるべきではなく、開示された実施例及び他の実施例に対する修正は、添付の特許請求の範囲に含まれることを意図していることを理解すべきである。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物によって限定される。