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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003628
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】画像認識装置および監視システム
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/17 20210101AFI20240105BHJP
   G06Q 30/06 20230101ALI20240105BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20240105BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20240105BHJP
   G08B 13/196 20060101ALI20240105BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240105BHJP
   G02B 5/09 20060101ALI20240105BHJP
   G02B 5/10 20060101ALI20240105BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240105BHJP
   G03B 37/00 20210101ALI20240105BHJP
【FI】
G03B17/17
G06Q30/06
H04N5/225 400
G08B25/00 510M
G08B13/196
G06T7/00 300Z
G02B5/09
G02B5/10 A
G03B15/00 S
G03B15/00 Q
G03B37/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102899
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000202361
【氏名又は名称】綜合警備保障株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100176692
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 ▲廣▼志
(72)【発明者】
【氏名】加沢 徹
【テーマコード(参考)】
2H042
2H059
2H101
5C084
5C087
5C122
5L049
5L096
【Fターム(参考)】
2H042DB14
2H042DD04
2H042DD05
2H042DE00
2H059BA03
2H101FF08
5C084AA02
5C084AA03
5C084AA09
5C084AA13
5C084CC13
5C084CC16
5C084CC33
5C084DD11
5C084HH02
5C084HH10
5C084HH12
5C084HH13
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA10
5C087AA32
5C087AA37
5C087DD05
5C087DD06
5C087DD20
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF23
5C087GG02
5C087GG06
5C087GG14
5C087GG19
5C087GG59
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG83
5C122DA11
5C122EA56
5C122FA02
5C122FB11
5C122FH11
5C122FH14
5C122GC52
5C122HB01
5L049BB72
5L096BA02
5L096CA03
5L096FA69
5L096HA02
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】特定領域の画像を認識する画像認識装置および店舗内の画像取得対象領域を効率よく監視する監視システムを提供する。
【解決手段】所定の曲率半径を有する凸面鏡あるいは凹凸面鏡で構成された複数の反射鏡20,15a~15jと、単一の高精細カメラ3とを用いて、店舗50内の複数の監視対象領域25a~25kに存在する物体から発せられた光で構成される画像内容を認識する。そして、画像認識結果をもとに店舗50内の客5の特徴情報を取得するとともに客5の特定の動作画像(商品の購入画像)を認識する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の反射面を有する主反射手段と、
反射面を有し、該反射面が、前記主反射手段の複数の反射面の各々と対向するように、前記主反射手段を中心としてその周囲に配置された複数の副反射手段と、
前記複数の副反射手段の反射面に反射して前記主反射手段の複数の反射面の各々に映った鏡像を撮像する単一の撮像手段と、
前記撮像手段が撮像した鏡像を画像情報として取得し、該画像情報に含まれる画像内容を認識する画像認識手段と、
を備え、
前記画像情報は、複数の画像取得対象領域の各々に存在する物体の像であることを特徴とする画像認識装置。
【請求項2】
前記反射面は、所定の曲率半径を有する凸面鏡あるいは凹凸面鏡で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像認識装置。
【請求項3】
前記主反射手段の前記複数の反射面は、それぞれが異なる方向を向いていることを特徴とする請求項1または2に記載の画像認識装置。
【請求項4】
前記複数の画像取得対象領域以外の画像取得対象領域に存在する物体の像を前記複数の副反射手段に対して反射する反射面を有する補助反射手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の画像認識装置。
【請求項5】
店舗に陳列された商品を購入する利用者を監視する監視システムであって、
複数の反射面を有する主反射手段と、
反射面を有し、該反射面により前記店舗内の複数の監視対象領域に存在する物体の像を反射するとともに、該反射面が、前記主反射手段の複数の反射面の各々と対向するように、前記主反射手段を中心としてその周囲に配置された複数の副反射手段と、
前記複数の副反射手段の前記反射面に反射して前記主反射手段の前記複数の反射面の各々に映った鏡像を撮像する単一の撮像手段と、
前記撮像手段が撮像した鏡像を画像情報として取得し、該画像情報に含まれる画像内容を認識し、該画像内容の認識結果をもとに前記利用者の特徴情報を取得する画像認識手段と、
前記画像内容に前記利用者の特定の動作を示す画像が含まれているかを認識する動作認識手段と、
前記画像内容に前記特定の動作を示す画像が含まれていると認識された場合、前記特徴情報で特定される前記利用者に対して前記商品のうち、前記特定の動作が認識された際の該利用者の位置と関連づけた商品に対応する課金処理を行う課金手段と、
を備えることを特徴とする監視システム。
【請求項6】
前記反射面は、所定の曲率半径を有する凸面鏡あるいは凹凸面鏡で構成されていることを特徴とする請求項5に記載の監視システム。
【請求項7】
前記主反射手段の前記複数の反射面は、それぞれが異なる方向を向いていることを特徴とする請求項5または6に記載の監視システム。
【請求項8】
前記複数の監視対象領域は前記店舗における商品棚近傍にある複数の領域であり、該複数の領域の各々に対応させて前記複数の副反射手段を配置することを特徴とする請求項5または6に記載の監視システム。
【請求項9】
前記複数の監視対象領域以外の監視対象領域に存在する物体の像を前記複数の副反射手段に対して反射させる補助反射手段をさらに備えることを特徴とする請求項5または6に記載の監視システム。
【請求項10】
前記特定の動作は、前記利用者が前記陳列された商品を商品棚から取り出す際の動作、あるいは取り出した商品を商品棚へ戻す際の動作であることを特徴とする請求項5または6に記載の監視システム。
【請求項11】
前記課金手段は、前記画像内容に、前記特定の動作を示す画像として、前記商品を商品棚から取り出す際の動作を示す画像が含まれていれば該商品に対応する積算処理を行い、該特定の動作を示す画像として該商品を商品棚へ戻す際の動作を示す画像が含まれていれば該商品に対応する減算処理を行うことを特徴とする請求項10に記載の監視システム。
【請求項12】
前記課金手段は、前記商品棚の特定の位置に載置された商品群が同一価格であるとして、前記利用者の位置に対応させて前記積算処理および前記減算処理を行うことを特徴とする請求項11に記載の監視システム。
【請求項13】
前記課金手段は、前記利用者の所持する携帯端末の通信機能を使用して前記課金処理を行うことを特徴とする請求項5または6に記載の監視システム。
【請求項14】
前記利用者の所持する携帯端末との通信により該利用者の特徴情報を取得する手段をさらに備えることを特徴とする請求項5または6に記載の監視システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の反射鏡と単一のカメラで構成された画像認識装置および監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
生活様式(ライフスタイル)の変化により夜間に活動する人が増加し、それに伴い、深夜営業を行なうコンビニエンスストア等の店舗も増えている。一方、深夜営業は、店舗のオーナーには人件費が高騰する等の問題があり、従業員には労働環境の問題が生じ得る。そこで、従来、店舗を無人で運用するための種々の構成が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、無人店舗に適用可能な商品の自動認識、商品の自動決済を行う店舗装置を開示している。特許文献2は、客が店舗の商品棚から手に取った商品を認識して、店舗における精算の省人化、店舗の無人化等を実現する管理装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-140830号公報
【特許文献2】特開2021-189691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載の技術では、商品棚から商品を取得する客とその動作を認識、検知するため、個々の商品棚に複数のカメラを設けるとともに、商品棚の上方に動作感知センサ(モーションセンサ)を設ける構成をとる。そのため、店舗の無人運営に要するコストが膨大になる。
【0006】
特許文献2においても、客が商品棚からピックアップした商品の種類、個数、重量を検出するために重量センサ、カメラ、測距センサを設けていることから、装置構成の複雑化のみならず、商品を正確に識別するために高精度のカメラが必要となり、管理装置のコストアップという問題が生じる。
【0007】
このように従来の無人店舗において、客の動作、客が選択・購入した商品等を監視するために、店舗内の商品棚の数と同等あるいはそれ以上の台数のカメラを用いているので、カメラおよびその工事費等に伴う監視システムの運用コストの増大、システム構成の複雑化という問題を回避できない。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、特定領域より取得した画像情報に含まれる画像内容を認識する画像認識装置、および簡易な構成の画像認識装置を用いて店舗内の画像取得対象領域を効率よく監視する監視システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成し、上述した課題を解決する一手段として本発明に係る画像認識装置は、複数の反射面を有する主反射手段と、反射面を有し、該反射面が、前記主反射手段の複数の反射面の各々と対向するように、前記主反射手段を中心としてその周囲に配置された複数の副反射手段と、前記複数の副反射手段の反射面に反射して前記主反射手段の複数の反射面の各々に映った鏡像を撮像する単一の撮像手段と、前記撮像手段が撮像した鏡像を画像情報として取得し、該画像情報に含まれる画像内容を認識する画像認識手段とを備え、前記画像情報は、複数の画像取得対象領域の各々に存在する物体の像であることを特徴とする。
【0010】
例えば、前記反射面は、所定の曲率半径を有する凸面鏡あるいは凹凸面鏡で構成されていることを特徴とする。例えば、前記主反射手段の前記複数の反射面は、それぞれが異なる方向を向いていることを特徴とする。また、例えば、前記複数の画像取得対象領域以外の画像取得対象領域に存在する物体の像を前記複数の副反射手段に対して反射する反射面を有する補助反射手段をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
上述した課題を解決する手段として、本発明は店舗に陳列された商品を購入する利用者を監視する監視システムであって、複数の反射面を有する主反射手段と、反射面を有し、該反射面により前記店舗内の複数の監視対象領域に存在する物体の像を反射するとともに、該反射面が、前記主反射手段の複数の反射面の各々と対向するように、前記主反射手段を中心としてその周囲に配置された複数の副反射手段と、前記複数の副反射手段の前記反射面に反射して前記主反射手段の前記複数の反射面の各々に映った鏡像を撮像する単一の撮像手段と、前記撮像手段が撮像した鏡像を画像情報として取得し、該画像情報に含まれる画像内容を認識し、該画像内容の認識結果をもとに前記利用者の特徴情報を取得する画像認識手段と、前記画像内容に前記利用者の特定の動作を示す画像が含まれているかを認識する動作認識手段と、前記画像内容に前記特定の動作を示す画像が含まれていると認識された場合、前記特徴情報で特定される前記利用者に対して前記商品のうち、前記特定の動作が認識された際の該利用者の位置と関連づけた商品に対応する課金処理を行う課金手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
例えば、前記反射面は、所定の曲率半径を有する凸面鏡あるいは凹凸面鏡で構成されていることを特徴とする。例えば、前記主反射手段の前記複数の反射面は、それぞれが異なる方向を向いていることを特徴とする。また、例えば、前記複数の監視対象領域は前記店舗における商品棚近傍にある複数の領域であり、該複数の領域の各々に対応させて前記複数の副反射手段を配置することを特徴とする。例えば、前記複数の監視対象領域以外の監視対象領域に存在する物体の像を前記複数の副反射手段に対して反射させる補助反射手段をさらに備えることを特徴とする。また、例えば、前記特定の動作は、前記利用者が前記陳列された商品を商品棚から取り出す際の動作、あるいは取り出した商品を商品棚へ戻す際の動作であることを特徴とする。さらに例えば、前記課金手段は、前記画像内容に、前記特定の動作を示す画像として、前記商品を商品棚から取り出す際の動作を示す画像が含まれていれば該商品に対応する積算処理を行い、該特定の動作を示す画像として該商品を商品棚へ戻す際の動作を示す画像が含まれていれば該商品に対応する減算処理を行うことを特徴とする。さらには、例えば、前記課金手段は、前記商品棚の特定の位置に載置された商品群が同一価格であるとして、前記利用者の位置に対応させて前記積算処理および前記減算処理を行うことを特徴とする。また、例えば、前記課金手段は、前記利用者の所持する携帯端末の通信機能を使用して前記課金処理を行うことを特徴とする。例えば、前記利用者の所持する携帯端末との通信により該利用者の特徴情報を取得する手段をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の画像取得対象領域に個別に対応させた複数のカメラを設置することなく、単一のカメラによって複数の画像取得対象領域を監視することで、簡易かつ安価な構成により、特定領域に注目した効率のよい監視が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る監視システムを設置した店舗を俯瞰的に見た様子を示す図である。
図2】監視システムを構成する反射鏡の配置と、監視対象領域との対応を示す図である。
図3】主反射鏡20の外観斜視図である。
図4】主反射鏡20を平面視したときの外観形状を示す図である。
図5図4に示す主反射鏡20と副反射鏡15aを矢視B-B´線に沿って切断した断面図である。
図6図5のx方向から主反射鏡20と副反射鏡15aの双方を見た様子を模式的に示す図である。
図7】監視システムを構成する監視装置の構成例を示すブロック図である。
図8】監視システムにおける店舗内の客の行動監視、課金処理等の流れを時系列で示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像認識装置およびその画像認識装置を使用した監視システムを設置した、例えば、コンビニエンスストア等の店舗を俯瞰的に見た様子を示す図である。
【0016】
図1に示す店舗50は無人店舗であり、商品棚2a~2cに陳列された種々の商品の中から客5が手に取った商品を積算し、自動精算する監視システム1を備えている。そのため監視システム1は、店舗50内の特定の領域を光学的に鏡面上に映す複数の反射鏡、その反射鏡の鏡面に映った画像を撮影する高精細カメラ3、高精細カメラ3で撮った画像を画像情報として取得し、所定の画像認識処理を行うとともに監視システム1全体を制御する監視装置10等を備える。
【0017】
複数の反射鏡は店舗50の天井51に設置され、複数の凹凸面鏡を有する主反射鏡20と、これら複数の凹凸面鏡各々と対向しながら主反射鏡20を中心としてこれを囲むように配置された、凸面鏡あるいは凹凸面鏡を有する複数の副反射鏡15a~15jとからなる。ここでいう凹凸面鏡とは、複数の反射面を接合して構成し、該各反射面の形状が凹面及び/又は凸面の形状である、反射鏡のことをさす。
【0018】
主反射鏡20は、副反射鏡15a~15jのすべてを見通せる場所に位置しており、主反射鏡20を構成する複数の鏡面上には、副反射鏡15a~15jの各々の鏡面より反射された画像が映る。
【0019】
高精細カメラ3は、高解像度の画像撮影が可能なデジタルカメラ等からなり、主反射鏡20の垂直方向下部に設置されている。高精細カメラ3は、主反射鏡20の鏡面に映った像を撮像するため、そのレンズの中心軸を主反射鏡20の中心軸に合わせ、互いに向き合う形で、主反射鏡20から所定距離離れた位置に設置されている。高精細カメラ3で撮像された画像は、画像情報として、店舗50内に設置した監視装置10へ送信される。
【0020】
図2は、本実施形態に係る監視システムを構成する反射鏡の配置と、監視対象領域との対応を示す図である。店舗内の対象領域の監視に凸面鏡のみを使用した場合、映る範囲が広すぎて、監視対象領域以外の領域までが映り込み、監視対象領域を効率よく監視できない。また、上述した自動精算を行うには、店舗50内における客5の動作を画像として詳細に捉える必要がある。
【0021】
そのため、店舗50内の領域を重複のない状態で効率的に監視して、かつ、客5の動作を詳細な画像で捉えることが必要となる。
【0022】
図2において網かけを付して示す複数の監視対象領域25a~25jは、客5が商品棚2a~2cより商品を手に取る際に立ち入り、腕を伸ばす領域であり、店舗50の床面から商品棚の天板に至る高さを有する空間領域である。
【0023】
監視対象領域25a~25jの各々の奥行方向(棚から離れる方向)の距離は、例えば、客が商品棚2a~2cに向かって腕を伸ばしたときの平均距離に基づいて決めることができ、棚に対し平行な方向の距離は、例えば、反射鏡の配置位置、鏡面の大きさ(像が映る範囲)等に応じて決める。
【0024】
図2の太い矢線は、監視対象領域25a~25j内に位置する物体(ここでは、商品を手に取った客)から発した光による像が副反射鏡15a~15jの各々の鏡面に映り、そこで反射した反射像が主反射鏡20に至る光路である。
【0025】
反射鏡の鏡面に映った像とは、店舗50で商品棚2a~2cより商品を取り上げている客5の動作像である。よって、これらの矢印を逆に辿ることは、主反射鏡20から監視対象領域25a~25jへの高精細カメラ3による監視視線となる。
【0026】
さらに、図2に示すように補助反射鏡15kを設置することで、店舗50への来店客の認証ゲートである入退ゲート7が設けられた領域(ここでは、監視対象領域25k)を通過する客から発せられた光が補助反射鏡15kの鏡面で反射され、その反射像がさらに副反射鏡15hの鏡面により反射して主反射鏡20に至る構成となっている。
【0027】
なお、副反射鏡15hの反射面の面積を、監視対象領域25h,25kの双方を網羅する大きさとすることで、補助反射鏡15kを省略することもできる。
【0028】
図3は、主反射鏡20の外観斜視図である。図4は、主反射鏡20を平面視したときの外観形状であり、図3の矢印A方向から見たときの形状である。なお、図4では、店舗50の天井51に設置した主反射鏡20を店舗50の床側から見たときの主反射鏡20と副反射鏡15a~15jとの位置関係を示している。
【0029】
図3図4に示すように主反射鏡20は下側に頂部を有し、全体が山型形状である。山型形状の山腹に相当する側面部分24には、互いに隣接しながら頂上部21から山裾部23に向かって広がる、平面視ほぼ三角形状の反射面(凹面領域)20a~20jを有する。
【0030】
図4に示すように、主反射鏡20の凹面領域20a~20jの数を、店舗に配置される副反射鏡15a~15jと同数とし、三角形状の頂角θは、円周方向に反射面を凹面領域20a~20jの数で分割したときの個々の中心角である。このとき、店舗の形状および商品棚の配置に合わせて、監視対象領域25a~25jに存在する物体の像を確実に反射できる位置に副反射鏡15a~15jを設置し、これに合わせて主反射鏡20の凹面領域20a~20jの大きさを決定することから、各三角形状の頂角θは単一の値とならないこともある。
【0031】
各凹面領域20a~20jは、副反射鏡15a~15jで鏡面反射した監視対象の像を、さらに高精細カメラ3に対して鏡面反射させる機能を有する。このような反射面としての各凹面領域20a~20jは、図4において点線の矢線で示すように、それぞれが、対応する副反射鏡15a~15jの方向を向くとともに、各副反射鏡15a~15jの反射面からの反射像全体を反射可能な面積と曲率の凹面を有する。
【0032】
図5は、図4に示す主反射鏡20とそれに対向する副反射鏡15aを、矢視B-B´線に沿って切断した断面図である。主反射鏡20の複数の凹面領域の一つである凹面領域20aは、上述したように対応する副反射鏡15aと対向している。副反射鏡15aの反射面35aが、図5のz方向(天井に垂直な方向)においてa1~a2までの範囲であるとした場合、反射面35aからの反射像を構成する、a1から出た光線は、上述した曲率を有する凹面領域20a上のb1で反射されて、高精細カメラ3のc1に至る。同様に反射像を構成する、a2から出た光線は、凹面領域20a上のb2で反射されて、高精細カメラ3のc2に至る。
【0033】
副反射鏡15aの反射面35aのa1,a2から出た光線は、主反射鏡20の凹面領域20a上のb1,b2において、それらb1,b2における曲面接線に垂直な線を基準にして、入射角と反射角が等角となって反射する。
【0034】
なお、他の副反射鏡15b~15jの各々からの反射像が、主反射鏡20の他の凹面領域20b~20jの各々に至る光線の経路についても、上述した凹面領域20aと副反射鏡15aとの間における経路と同様であるため、ここでは、それらの図示と説明を省略する。
【0035】
図6は、図5のx方向から主反射鏡20と副反射鏡15aの双方を見た様子を模式的に示している。図6においてx方向手前側の天井面51に副反射鏡15aが位置し、x方向奥側に主反射鏡20が位置する。副反射鏡15aのd1が、その反射面35aのy方向の一方端であり、d2がy方向の他方端である。ここでは、d1~d2間の距離を、反射面35aのy方向において主反射鏡から視認可能な最大幅とする。
【0036】
主反射鏡20は、図6において長い破線で囲んだ凹面領域20aが反射面となって、副反射鏡15aの反射面35aより到来した反射像が高精細カメラ3へ入射される。凹面領域20aは、図3を参照して説明したように平面視ほぼ三角形状の反射面であり、天井51に近い部位は、三角形状の底辺部に相当する。よって、凹面領域20aは、一方端e1と他方端e2との間の距離がy方向における最大幅となる。
【0037】
本実施形態に係る監視システムでは、主反射鏡20と副反射鏡15aそれぞれの反射面の面積、曲率を、図6のd1で反射した光線が、凹面領域20aのe1でさらに反射された後、高精細カメラ3cのf1に至り、d2で反射した光線が、凹面領域20aのe2でさらに反射され、高精細カメラ3cのf2に至るように決める。その結果、反射面35aから凹面領域20aへは、y方向に最大幅の反射像が送られることになる。また、反射対象物体が反射鏡の焦点外にあり、反射面に映った反射対象物体が拡大されて見えるように反射面の曲率を設定する。このとき、反射面の曲率は凹面領域20a内において一律でなくてもよく、監視対象領域25aの形状、面積および監視目的等に適するよう決めることができる。
【0038】
次に、本実施形態に係る監視システムを構成する監視装置について説明する。図7は、監視装置10の構成例を示すブロック図であり、制御部71は、マイクロプロセッサ等からなる中央処理部(CPU)を備え、監視装置10全体を制御する。制御情報記憶部72は、制御部71の動作プログラム、監視制御データ等を格納する。制御情報記憶部72は、例えば、ROM(Read Only Memory)、不揮発性メモリ等からなる。
【0039】
画像認識部73は、主反射鏡20からの反射像を高精細カメラ3で撮影した画像より、店舗内にいる客の外観の特徴等を認識する。画像認識部73で認識された客に関する情報は、その客の特徴を示す情報として特徴情報格納部74に格納される。
【0040】
商品情報格納部75は、店舗50で販売する商品等に関するデータベースである。例えば、商品棚2a~2cの店舗50内での設置位置、商品棚2a~2cを構成する棚板の構成、その棚板に載置された商品の配置、それらの販売価格等を商品情報として格納する。商品情報格納部75は、例えば、HDD(ハードディスクドライブ)、大容量半導体メモリ等からなる。
【0041】
動作認識部76は、あらかじめ格納された画像認識プログラムにしたがって、高精細カメラ3で撮影した画像に特定の動作が含まれているかどうかを認識する。ここでは、監視対象である人が、腕を伸ばして商品を手にとる動作や、手に持った商品を商品棚へ戻す動作などを検出する。なお画像認識プログラムは、予め動作を示す画像を記憶させたプログラムでもよいし、AI(人工知能;Artificial Intelligence)により画像パターンを学習させる方法でもよい。
【0042】
課金・精算処理部77は、客に対して、購入した商品について自動的に課金(積算あるいは減算)する。通信制御部79は、客の所持するスマートフォン等の携帯情報通信端末との通信、外部の通信網80との通信等を行う通信インタフェース(I/F)としての機能を有する。店舗50での商品購入の決済結果は、後述するように通信制御部79を介して客のスマートフォン6へ通知される。
【0043】
インタフェース部(I/F)81は、監視装置10と、後述する精算端末4、入退ゲート7、店内スピーカ31等との情報・信号の送受信を行う際のインタフェースとして機能する。
【0044】
次に、本実施形態に係る監視システムにおける監視制御について説明する。図8は、本実施形態に係る監視システムにおける店舗内の客の行動監視、課金処理等の流れを時系列で示すフローチャートである。
【0045】
図8のステップS1において、監視システム1を構成する監視装置10の制御部71は、インタフェース部(I/F)81を介して、入退ゲート7より人感知情報を得た場合、店舗50へ入店客(図1に示す店舗50の場合、破線で示す客5)があったと判断する。
【0046】
制御部71は、続くステップS2において、通信制御部79に対して客5の所持するスマートフォン6との通信を実行させる。その結果、スマートフォン6では、あらかじめにインストールされている、店舗50での商品購入を可能にする専用のアプリケーションが起動する。そして、スマートフォン6より、入店客を特定するための情報、例えば、IDコード、顧客コード等の特定情報を取得する。
【0047】
制御部71は、ステップS3において画像認識部73を起動し、高精細カメラ3で撮影した、主反射鏡20の反射面20a~20jに映った像を画像情報として得る。そして、ステップS4において、その画像情報のうち、入退ゲート7に最も近い副反射鏡15hの反射面20hに映り込んだ像に対応する画像情報をもとに入店客の外観上の特徴を認識し、その客の特徴情報を作成する。
【0048】
客5の特徴情報として、例えば、服装とその色、髪型に関する情報、顔認識情報等が作成される。制御部71は、ステップS5において、客5を特定する特定情報と、客5の特徴に関する特徴情報とを紐づけて、それを特徴情報格納部74に格納する。
【0049】
このとき、図1では客5のみを示しているが、客5以外に既に入店中の他の客がいる場合、客5の特徴情報として、他の客の特徴情報とは異なるものを追加して取得するようにしてもよい。例えば、先に入店した客の特徴情報として「髪が長い」を登録していて、後から入店した客5が先の客と同じ特徴を有していた場合、後から入店した客5からは服の色などの他の特徴を追加の特徴情報として取得する。
【0050】
制御部71は、ステップS7において、動作認識部76を起動し、客5による商品の購入動作を検知する。具体的には、動作認識部76において、高精細カメラ3で撮影した、主反射鏡20の反射面20a~20jに映った像の画像情報の中に、客5が商品棚2a~2cから商品を手に取った動作を示す画像が含まれるか否かを検知する。ステップS7における画像情報からの動作認識では、客5の購入動作を検知し、客5が手に取った商品の種類、銘柄等は認識しない。
【0051】
ここで、「商品を手に取った動作」とは、客5が腕を伸ばして、商品棚にある商品を手で把持しながら商品棚から他の位置へ移動させる動作をいう。
【0052】
ステップS7では、上記の画像情報をもとに、さらに、客5が監視対象領域25a~25j内のどの位置に留まっているかという店舗50内での客5の立ち位置をもとに、客5が手に取った商品が載置された商品棚の棚板の位置を判断する。このとき、客5の腕の、床からの高さをもとに、客5が手にとった商品が載置された商品棚の棚板の位置を判断してもよい。
【0053】
本実施形態に係る監視システムにおける監視制御では、高精細カメラ3の精細度が有限であることから、店舗50全体ではなく、監視の対象を監視対象領域25a~25jに絞り込み、客の商品購入動作の画像情報に注目することで、画像認識処理を簡易化する。
【0054】
上記の動作等が動作認識部76において検知された場合、客5がその商品を購入したと判断して、画像認識部73は、ステップS9において、購入動作検知時の画像情報をもとに、その客5の特徴を抽出する。そして、特徴情報格納部74に格納された特徴情報を参酌して、抽出された特徴を有する客5を特定する。
【0055】
上記のステップS9において、抽出された特徴と、特徴情報格納部74に格納された特徴情報とが一致するとして客5を特定できた場合、制御部71は当該特徴情報に紐づけられた特定情報と一致する客5がその商品の購入者であるとして、ステップS11において課金・精算処理部77を起動し、所定の課金処理(積算処理)を実行する。
【0056】
課金処理として、客5が滞留する監視対象領域を特定し、客5が腕を伸ばした商品棚2a~2cの棚板の位置を判断した後、商品情報格納部75に格納されている商品情報である商品棚の棚板の構成、その棚板における商品の配置位置、その商品の販売価格等をもとに、客5に対して購入した商品について課金する。
【0057】
なお、上記の課金処理において、例えば、通信制御部79を介して、客5のスマートフォン6に対して、客5が商品を手にとった時点で「購入された商品を課金します。」等の通知を文字メッセージとして送信し、あるいは音声で知らせるようにしてもよい。
【0058】
制御部71は、ステップS13において、客5が商品を棚に戻す動作を行ったか否かを検知する。この動作の判断は、商品の購入時と同様、動作認識部76において、主反射鏡20の反射面20a~20jに映った像の画像情報中に、例えば、客5が手に商品を持ったまま腕を伸ばして、元の位置に腕を戻す動作をしたときに手に商品を把持していないなど、その商品をもとの棚に戻す動作を示す画像を検出したか否かの認識結果に基づいて行う。
【0059】
客5が商品を棚に戻す動作を行ったことが検知された場合、課金・精算処理部77は、ステップS15において所定の課金処理(減算処理)を実行する。例えば、この時点における客5に対する積算額から、棚に戻した商品の金額を減算する処理を行う。その際、例えば、客5のスマートフォン6に対して、「戻された商品を減額します。」等の通知を文字メッセージで送信、あるいは音声で知らせてもよい。
【0060】
次に制御部71は、ステップS17において、客5が商品の購入を終え、精算を希望しているか否かを判断する。例えば、店舗50内に備えた精算端末4に向けて客5がスマートフォン6をかざしたことを示す信号を、インタフェース部(I/F)81を介して精算端末4より受信した場合、制御部71は、客5が精算の意思表示をしたと判断して、ステップS19において、課金・精算処理部77に対して精算処理を実行させる。
【0061】
課金・精算処理部77は、例えば、客5の購入した商品の全数についての総額を算出し、その算出結果を、通信制御部79を介して客5のスマートフォン6へ送信する。
【0062】
同時に課金・精算処理部77は、客5に対して、精算額に不一致があれば再精算することを促すメッセージを、通信制御部79を介してスマートフォン6へ送信する。このメッセージを見た客5は、再精算が必要であれば、精算レジ8を操作して、購入した商品に対して再精算する。
【0063】
ここでは、上記の精算処理とともに決済処理が行われる。例えば、客5のスマートフォン6にインストールされた決済アプリケーションにしたがって、決済サービス会社へ商品代金を支払う等の決済処理(クレジットカード、デビットカード、電子マネー等を使用したキャッシュレス決済)が行われる。
【0064】
制御部71は、ステップS21において、精算レジ8において再精算が行われたかを判定する。再精算が行われた場合、処理をステップS19に戻して、課金・精算処理部77において、再度、精算処理等を実行する。
【0065】
一方、再精算が行われなかった場合、制御部71は、ステップS23において、店舗50からの客の退出の有無を判断する。例えば、インタフェース部(I/F)81を介して、入退ゲート7より人感知情報が送信されたことを検出した場合、通信制御部79を起動して、スマートフォン6より、入退ゲート7を通過した客の特定情報を取得する。
【0066】
取得した特定情報が、ステップS17で精算端末4に向けてスマートフォン6をかざして精算の意思表示をした客5の特定情報と一致した場合、制御部71は、客5が店舗50を退出したと判断する。
【0067】
客5が退出したと判断した場合、制御部71は、ステップS25において、特徴情報格納部74に格納されていた、個人を特定する情報である、客5の特徴を示す情報を削除する等の退出処理を行う。
【0068】
一方、客が精算を希望していない場合(ステップS17でNO)、あるいは、ステップS23において、既に精算の意思表示をした客5の退出が確認できない場合には、制御部71は、客5が買い物を続行する意思があると判断して、処理をステップS7へ戻す。
【0069】
監視システム1を構成する監視装置10は、店舗50内に入店客が複数いる場合にも、各々の入店客に対して上記の監視処理を行う。
【0070】
なお、上述した監視装置10による監視処理と、店舗50に設置した遠隔監視カメラ33による画像撮影とを連動させて、客の不審な行動(商品の不自然な取り方)を監視するようにしてもよい。その場合、例えば、連携している外部の遠隔監視センター(例えば、警備会社)へ、通信網80を介して監視結果を報告するとともに、入退ゲート7の封鎖、店内スピーカ31からの警報音の鳴動等の処置により、不審客の店外への逃走を阻止する構成を付加する。
【0071】
以上説明したように本実施形態に係る監視システムは、所定の曲率半径を有する凸面鏡あるいは凹凸面鏡で構成された複数の反射鏡と、単一の撮像手段(カメラ)とを用いて、店舗内の複数の監視対象領域に存在する物体から発せられた光で構成される画像内容を認識し、その認識結果をもとに店舗内の購入者の特徴情報を取得するとともに購入者の特定の動作を認識する構成を有する。
【0072】
このように、監視対象領域における購入者の特定の動作のみに着目し、購入者の動線を逐一追跡しない構成とすることで、簡易な画像認識処理による低コストで効率の良い店舗監視ができる。
【0073】
特に、本実施形態に係る監視システムを、深夜帯や緊急事態において無人で店舗を営業する形態に適用して、商品棚の特定の位置に載置された商品群が同一価格である、つまり、監視側から同一方向に載置されて見える商品を同一価格とする、ダイナミックプライシングの実現が可能になる。
【0074】
本実施例では主反射鏡に凹凸面鏡を用いたが、主反射鏡、副反射鏡ともに凸面鏡を用いる構成でもよい。この場合、パンチルトズームカメラを用いることで、主反射鏡である凸面鏡上に移った監視対象の像が小さくても、拡大して画像認識することが可能となる。
【0075】
また、利用者(客)が商品を手にとった時点で課金を通知することにより、万引きや窃盗行為の発生を抑止し、牽制することが可能となる。
【0076】
また、狭い範囲に多くの棚を設置し、多数の商品を詰めて陳列せざるを得ない都会の既存の店舗において、効率的な店舗監視が可能となる。
【符号の説明】
【0077】
1 監視システム
2a~2c 商品棚
3 高精細カメラ
4 精算端末
5 客
6 スマートフォン
7 入退ゲート
8 精算レジ
10 監視装置
15a~15j 副反射鏡
15k 補助反射鏡
20 主反射鏡
20a~20j 主反射鏡の凹面領域
25a~25k 監視対象領域
31 店内スピーカ
50 店舗
51 天井(天井面)
71 制御部
72 制御情報記憶部
73 画像認識部
74 特徴情報格納部
75 商品情報格納部
76 動作認識部
77 課金・精算処理部
79 通信制御部
80 通信網
81 インタフェース部(I/F)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8