(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036285
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池、電池モジュール、および電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20240308BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240308BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240308BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240308BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240308BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/13
H01M4/66 A
H01M10/0568
H01M4/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112102
(22)【出願日】2023-07-07
(62)【分割の表示】P 2022140838の分割
【原出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】吉川 輝
(72)【発明者】
【氏名】飯野 準也
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017CC01
5H017DD05
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029DJ07
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5H029HJ02
5H029HJ12
5H029HJ17
5H029HJ18
5H029HJ19
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA02
5H050DA04
5H050FA04
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA12
5H050HA17
5H050HA18
5H050HA19
(57)【要約】
【課題】充放電サイクル後の抵抗上昇が抑制され、サイクル特性に優れる非水電解質二次電池、非水電解質二次電池を備え、充放電サイクル後に残存容量推定精度が高い電池モジュール及び電池システムの提供。
【解決手段】正極10、負極20及びこれらの間に存在する非水電解質を備え、正極10は集電体と集電体の片面又は両面に存在する少なくとも1種の正極活物質粒子を含む正極活物質層12とを有し、非水電解質二次電池1の放電容量確認を行い規定したCレートを参照し3Cレートの電流値で定電流充電を終止電圧3.8V以下で定電流放電を終止電圧2.5Vで1000サイクル繰り返した際に縦軸を電圧、横軸をセルの充電状態(SOC)としたプロットにより得られた放電カーブのSOC50%における点で1サイクル目の電圧V1と1000サイクル目の電圧V2における電圧差V1-V2が0.1mV以上5.0mV以下である非水電解質二次電池1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に存在する非水電解質を備えた非水電解質二次電池であって、
前記正極は、集電体と、前記集電体の片面又は両面に存在する、少なくとも1種の正極活物質粒子を含む正極活物質層と、を有し、
非水電解質二次電池の放電容量確認を行い規定したCレートを参照し、3Cレートの電流値で定電流充電を終止電圧3.8V以下で、定電流放電を終止電圧2.5Vで1000サイクル繰り返した際に縦軸を電圧、横軸をセルの充電状態State Of Charge(SOC)としたプロットにより得られた放電カーブのSOC50%における点において、1サイクル目の電圧V1と1000サイクル目の電圧V2における電圧差V1-V2が0.1mV以上5.0mV以下である、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記定電流充電の終止電圧が3.5~3.8Vである、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
3Cレートの電流値で定電流充電を終止電圧3.8V以下で、定電流放電を終止電圧2.5Vで1000サイクル繰り返した際の1サイクル目の放電容量を予め放電容量確認を行った際の容量で除することで求めた初期3C放電容量率が80%以上である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記集電体の、前記正極活物質層側の表面の少なくとも一部に、導電性炭素を含む集電体被覆層が存在する、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記集電体の、前記正極活物質層側の表面の少なくとも一部に、導電性炭素を含む集電体被覆層が存在し、
前記正極活物質粒子の表面の少なくとも一部に、導電材料を含む活物質被覆部が存在する、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記非水電解質がリチウムイミド塩を含む、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記リチウムイミド塩が下記式(1)で表される、請求項6に記載の非水電解質二次電池。
LiN(SO2R)2 (1)
[但し、Rはフッ素原子またはCxF(2x+1)を表し、xは1~3の整数である。]
【請求項8】
前記正極活物質粒子が、少なくとも一般式LiFexM(1-x)PO4(式中、0≦x≦1、MはCo、Ni、Mn、Al、Ti又はZrである。)で表される化合物を含む、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項9】
前記正極活物質層の総質量に対する導電性炭素の含有量が0.5質量%以上3.5質量%未満である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池の複数個を備える、電池モジュール又は電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池、非水電解質二次電池を備える電池モジュールおよび電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池は、一般的に、正極、非水電解質、負極、および正極と負極との間に設置される分離膜(セパレータ)により構成される。
非水電解質二次電池の正極としては、リチウムイオンを含む正極活物質、導電助剤、および結着材からなる組成物を、金属箔(集電体)の表面に固着させたものが知られている。
リチウムイオンを含む正極活物質としては、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)等のリチウム遷移金属複合酸化物や、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)等のリチウムリン酸化合物が実用化されている。
【0003】
従来、非水電解質二次電池のサイクル特性を向上させる方法としては、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質とする正極において、正極形成後に、正極を酸素および水分を含む気体中に保存することにより、電池反応に伴う正極表面での副反応を抑制することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、正極および負極の少なくとも一方の電極中に、導電剤と固体電解質を含む被覆層で被覆された活物質粒子を含有させることにより、被覆層を、堅いガラス状の固体電解質を主成分とした機械的強度が強い層とし、充放電時に活物質粒子が膨張しようとする力に対抗して、活物質粒子の変形を抑制することが知られている。これにより、充放電による電極の緩み、および電極や電池の膨張が効果的に抑制され、充放電サイクル特性や高率放電特性の低下を防ぐことが可能となる。また、電極と電池容器間の良好な接触が維持されて、充放電サイクルによる電池内部抵抗の増大を防止することもできる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-325947号公報
【特許文献2】特開2003-59492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、非水電解質二次電池の内部抵抗の上昇を低減しているものの、充放電サイクルが500サイクルで1割以上の抵抗上昇が発生しており、十分な効果が得られていなかった。
特許文献2では、LiCoO2の表面を固体電解質と導電材を被覆させた正極活物質を用い、さらに導電材を添加した例において、サイクル特性の改善が報告されているものの、抵抗上昇については記載されていない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、充放電サイクル後の抵抗上昇が抑制され、かつサイクル特性に優れる非水電解質二次電池、非水電解質二次電池を備え、充放電サイクル後に残存容量推定精度が高い電池モジュールおよび電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に存在する非水電解質を備えた非水電解質二次電池であって、
前記正極は、集電体と、前記集電体の片面又は両面に存在する、少なくとも1種の正極活物質粒子を含む正極活物質層と、を有し、
非水電解質二次電池の放電容量確認を行い規定したCレートを参照し、3Cレートの電流値で定電流充電を終止電圧3.8V以下で、定電流放電を終止電圧2.5Vで1000サイクル繰り返した際に縦軸を電圧、横軸をセルの充電状態State Of Charge(SOC)としたプロットにより得られた放電カーブのSOC50%における点において、1サイクル目の電圧V1と1000サイクル目の電圧V2における電圧差V1-V2が0.1mV以上5.0mV以下である、非水電解質二次電池。
[2]前記定電流充電の終止電圧が3.5~3.8Vである、[1]に記載の非水電解質二次電池。
[3]3Cレートの電流値で定電流充電を終止電圧3.8V以下で、定電流放電を終止電圧2.5Vで1000サイクル繰り返した際の1サイクル目の放電容量を予め放電容量確認を行った際の容量で除することで求めた初期3C放電容量率が80%以上である、[1]に記載の非水電解質二次電池。
[4]前記集電体の、前記正極活物質層側の表面の少なくとも一部に、導電性炭素を含む集電体被覆層が存在する、[1]に記載の非水電解質二次電池。
[5]前記集電体の、前記正極活物質層側の表面の少なくとも一部に、導電性炭素を含む集電体被覆層が存在し、
前記正極活物質粒子の表面の少なくとも一部に、導電材料を含む活物質被覆部が存在する、[1]に記載の非水電解質二次電池。
[6]前記非水電解質がリチウムイミド塩を含む、[1]に記載の非水電解質二次電池。
[7]前記リチウムイミド塩が下記式(1)で表される、[6]に記載の非水電解質二次電池。
LiN(SO2R)2 (1)
[但し、Rはフッ素原子またはCxF(2x+1)を表し、xは1~3の整数である。]
[8]前記正極活物質粒子が、少なくとも一般式LiFexM(1-x)PO4(式中、0≦x≦1、MはCo、Ni、Mn、Al、Ti又はZrである。)で表される化合物を含む、[1]に記載の非水電解質二次電池。
[9]前記正極活物質層の総質量に対する導電性炭素の含有量が0.5質量%以上3.5質量%未満である、[1]に記載の非水電解質二次電池。
[10][1]~[9]のいずれかに記載の非水電解質二次電池の複数個を備える、電池モジュール又は電池システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、充放電サイクル後の抵抗上昇が抑制され、かつサイクル特性に優れる非水電解質二次電池、非水電解質二次電池を備え、充放電サイクル後に残存容量推定精度が高い電池モジュールおよび電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る非水電解質二次電池の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明に係る非水電解質二次電池用正極の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】実施例および比較例において作製した、非水電解質二次電池(セル)を示す斜視図である。
【
図4】実施例および比較例において作製した、非水電解質二次電池モジュールを示す斜視図である。
【
図5】実施例および比較例において作製した、非水電解質二次電池モジュールを示す斜視図である。
【
図6】実施例1にて、非水電解質二次電池の充放電の1サイクル目と1000サイクル目において、電圧とSOCの関係を表す放電カーブを示す図である。
【
図7】実施例1にて、非水電解質二次電池モジュールの充放電の1サイクル目と1000サイクル目において、電圧とSOCの関係を表す放電カーブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書および特許請求の範囲において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載した数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
図1は、本発明の非水電解質二次電池用正極の一実施形態を示す模式断面図であり、
図2は、本発明の非水電解質二次電池の一実施形態を示す模式断面図である。
なお、
図1、2は、その構成をわかりやすく説明するための模式図であり、各構成要素の寸法比率等は、実際とは異なる場合もある。
【0011】
<非水電解質二次電池>
図1に示す本実施形態の非水電解質二次電池1は、非水電解質二次電池用正極(単に「正極」ともいう。)10と、負極20と、非水電解質とを備える。本実施形態の非水電解質二次電池1は、さらに、セパレータ30を備えてもよい。図中、符号40は外装体である。
本実施形態において、正極10は、板状の正極集電体11と、その両面上に設けられた正極活物質層12とを有する。正極活物質層12は、正極集電体11の表面の一部に存在する。
正極集電体11の表面の縁部は、正極活物質層12が存在しない正極集電体露出部13である。正極集電体露出部13の任意の箇所に、図示しない端子用タブが電気的に接続する。
負極20は、板状の負極集電体21と、その両面上に設けられた負極活物質層22とを有する。負極活物質層22は、負極集電体21の表面の一部に存在する。負極集電体21の表面の縁部は、負極活物質層22が存在しない負極集電体露出部23である。負極集電体露出部23の任意の箇所に、図示しない端子用タブが電気的に接続する。
正極10、負極20およびセパレータ30の形状は特に限定されない。例えば、平面視矩形状でもよい。
【0012】
本実施形態の非水電解質二次電池1は、例えば、正極10と負極20を、セパレータ30を介して交互に積層した電極積層体を作製し、電極積層体をアルミラミネート袋等の外装体(筐体)40に封入し、非水電解質(図示せず)を注入して密閉する方法で製造できる。
図1では、代表的に、負極/セパレータ/正極/セパレータ/負極の順に積層した構造を示しているが、電極の数は適宜変更できる。正極10は1枚以上あればよく、得ようとする電池容量に応じて任意の数の正極10を用いることができる。負極20およびセパレータ30は、正極10の数より1枚多く用い、最外層が負極20となるように積層する。
【0013】
本実施形態の非水電解質二次電池1は、非水電解質二次電池の放電容量確認を行い規定したCレートを参照し、3Cレートの電流値で定電流充電を終止電圧3.8V以下で、定電流放電を終止電圧2.5Vで1000サイクル繰り返した際に縦軸を電圧、横軸をセルの充電状態State Of Charge(SOC)としたプロットにより得られた放電カーブのSOC50%における点において、1サイクル目の電圧V1と1000サイクル目の電圧V2における電圧差V1-V2が0.1mV以上5.0mV以下である。前記電圧差V1-V2は、0.1mV以上4.0mV以下が好ましく、0.1mV以上3.0mV以下がより好ましい。前記電圧差V1-V2が前記下限値未満では、抵抗上昇による劣化が小さすぎるため、組電池として使用した際のメンテナンスや交換頻度が設定しづらく実用的ではない。前記電圧差V1-V2が前記上限値を超えると、組電池とした際の抵抗劣化が大きすぎてメンテナンスや交換頻度が多くなり、実用的でない。
【0014】
上記電圧差V1-V2は、正極活物質層に含まれる活物質の種類、および含有量、導電性炭素量、導電助剤量、集電体被覆層の有無、電解液に含まれる電解質の種類、電池の充放電サイクル時の使用上限電圧などにより調整できる。
【0015】
上記定電流充電の終止電圧は3.8V以下であり、3.5~3.8Vが好ましく、3.5~3.6Vがより好ましく、3.5Vがさらに好ましい。上記定電流充電の終止電圧が前記下限値未満では、満充電状態より低い電圧で充電を止める事になるため、充放電可能なエネルギー量が低くなる。また、上記定電流充電の終止電圧が前記上限値を超えると、高電圧での電解液や電解質の酸化分解が起きやすくなり、電池の抵抗上昇が大きくなり前記電圧差V1-V2が大きくなり、充放電サイクルでの劣化を引き起こす。
【0016】
正極活物質粒子の被覆部に含まれる導電材料が導電性炭素である場合、正極活物質粒子を測定対象とする、透過電子顕微鏡電子エネルギー損失分光法(TEM-EELS)により得られるTEM-EELSスペクトルは、正極活物質粒子の被覆部の有無及び被覆部に存在する導電性炭素量の指標となる。
具体的に、炭素材料のTEM-EELSスペクトルは、280~285eVの間で立ち上がりはじめ、285eV付近にsp2結合に由来するピークが現れることが知られている。したがって、正極活物質粒子のTEM-EELSスペクトルにおいて、280~290eVの範囲内にピークがあれば、導電性炭素を含む被覆部が存在することがわかる。
また、280eVにおけるピーク強度P280に対する285eVにおけるピーク強度P285の比を表すP285/P280が大きいほど、正極活物質粒子の被覆部に存在する導電性炭素の量が多いことを示す。
正極活物質層の表面に適量の被膜が得られやすい点で、P285/P280は10.0以上が好ましく、100.0以上がより好ましい。
本明細書における正極活物質粒子のTEM-EELSスペクトルは、下記の方法で測定する。
【0017】
本実施形態の非水電解質二次電池1は、3Cレートの電流値で定電流充電を終止電圧3.8V以下で、定電流放電を終止電圧2.5Vで1000サイクル繰り返した際の1サイクル目の放電容量を予め放電容量確認を行った際の容量で除することで求めた初期3C放電容量率は80%以上が好ましく、88%以上がより好ましく、93%以上がさらに好ましい。
【0018】
[正極]
図2に示す正極10は、正極集電体11と正極活物質層12を有する。
正極活物質層12は、正極集電体11の少なくとも一面上に存在する。正極集電体11の両面上に正極活物質層12が存在してもよい。
図2の例において、正極集電体11は、正極集電体本体14と、正極集電体本体14の正極活物質層12側の表面を被覆する集電体被覆層15とを有する。正極集電体本体14のみを正極集電体11としてもよい。
【0019】
[正極活物質層]
正極活物質層12は正極活物質を含む。正極活物質層12は、さらに結着材を含むことが好ましい。正極活物質層12は、さらに導電助剤を含んでもよい。
正極活物質粒子は、正極活物質を含む。正極活物質粒子は、正極活物質のみからなる粒子でもよいし、正極活物質の芯部と、芯部を被複する被覆部(活物質被覆部)とを有してもよい(いわゆる被覆粒子)。正極活物質層12に含まれる正極活物質粒子の群の少なくとも一部は、被覆粒子であることが好ましい。
正極活物質層12の総質量に対して、正極活物質の含有量は80.0質量%~99.9質量%が好ましく、90.0質量%~99.5質量%がより好ましい。
【0020】
正極活物質は、少なくともオリビン型結晶構造を有する化合物を含むことが好ましい。
オリビン型結晶構造を有する化合物は、一般式LiFexM(1-x)PO4で(以下「一般式(1)」ともいう。)表される化合物が好ましい。一般式(1)において0≦x≦1である。MはCo、Ni、Mn、Al、Ti又はZrである。物性値に変化がない程度に微小量の、FeおよびM(Co、Ni、Mn、Al、Ti又はZr)の一部を他の元素に置換することもできる。一般式(1)で表される化合物は、微量の金属不純物が含まれていても本発明の効果が損なわれるものではない。
一般式(1)で表される化合物は、LiFePO4で表されるリン酸鉄リチウム(以下、単に「リン酸鉄リチウム」ともいう。)が好ましい。
【0021】
正極活物質は、オリビン型結晶構造を有する化合物以外の他の正極活物質を含んでもよい。
他の正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、ニッケルコバルト酸リチウム(LiNixCoyAlzO2、ただしx+y+z=1)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNixCoyMnzO2、ただしx+y+z=1)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、コバルトマンガン酸リチウム(LiMnCoO4)、クロム酸マンガンリチウム(LiMnCrO4)、バナジウムニッケル酸リチウム(LiNiVO4)、ニッケル置換マンガン酸リチウム(例えば、LiMn1.5Ni0.5O4)、及びバナジウムコバルト酸リチウム(LiCoVO4)、これらの化合物の一部を金属元素で置換した非化学量論的化合物等が挙げられる。前記金属元素としては、Mn、Mg、Ni、Co、Cu、Zn及びGeからなる群から選択される1種以上が挙げられる。
他の正極活物質は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0022】
本実施形態の正極活物質粒子としては、正極活物質の表面の少なくとも一部が導電材料で被覆され、正極活物質の表面の少なくとも一部に、導電材料を含む活物質被覆部が存在する被覆粒子が好ましい。電池容量、サイクル特性により優れる点から、正極活物質の表面全体が導電性材料で被覆されていることがより好ましい。被覆粒子を正極活物質粒子として用いることで、電池容量、高レートサイクル特性をより高められる。
例えば、活物質被覆部は、予め正極活物質粒子の表面に形成されており、かつ正極活物質層中において、正極活物質粒子の表面に存在する。即ち、本稿における活物質被覆部は、正極製造用組成物の調製段階以降の工程で新たに形成されるものではない。加えて、活物質被覆部は、正極製造用組成物の調製段階以降の工程で欠落するものではない。
例えば、正極製造用組成物を調製する際に、被覆粒子を溶媒と共にミキサー等で混合しても、活物質被覆部は正極活物質の表面を被覆している。また、仮に、正極から正極活物質層を剥がし、これを溶媒に投入して正極活物質層中の結着材を溶媒に溶解させた場合にも、活物質被覆部は正極活物質の表面を被覆している。また、仮に、正極活物質層中の粒子の粒度分布をレーザー回折・散乱法により測定する際に、凝集した粒子をほぐす操作を行った場合にも活物質被覆部は正極活物質の表面を被覆している。
活物質被覆部は、正極活物質粒子の外表面全体の面積の50%以上に存在することが好ましく、70%以上に存在することが好ましく、90%以上に存在することが好ましい。
すなわち、被覆粒子は、正極活物質である芯部と、前記芯部の表面を覆う活物質被覆部とを有し、芯部の表面積に対する活物質被覆部の面積(被覆率)は、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
【0023】
活物質被覆部の面積は、正極活物質層中の粒子をエネルギー分散型X線分光法(TEM-EDX)により正極活物質粒子の外周部をEDXで元素分析する。元素分析は炭素について行い、正極活物質粒子を被覆している炭素を特定する。炭素の被覆部が1nm以上の厚さである箇所を被覆部分とし、観察した正極活物質粒子の全周に対して被覆部分の割合を求め、これを被覆率とすることができる。測定は例えば、10個の正極活物質粒子について行い、これらの平均値とすることができる。
【0024】
活物質被覆部は、正極活物質のみから構成される粒子(以下、「芯部」と称することもある。)の表面上に直接形成された層である。正極活物質の活物質被覆部の厚さは、1~100nmが好ましい。
正極活物質の活物質被覆部の厚さは、正極活物質の透過電子顕微鏡(TEM)像における活物質被覆部の厚さを計測する方法で測定できる。正極活物質の表面に存在する活物質被覆部の厚さは均一でなくてもよい。正極活物質の表面の少なくとも一部に厚さ1nm以上の活物質被覆部が存在し、活物質被覆部の厚さの最大値が100nm以下であることが好ましい。
【0025】
本発明において、被覆粒子は、芯部の表面積に対する活物質被覆部の面積は、100%が特に好ましい。
なお、この被覆率(%)は、正極活物質層中に存在する正極活物質粒子全体についての平均値であり、この平均値が上記下限値以上となる限り、活物質被覆部を有しない正極活物質粒子が微量に存在することを排除するものではない。活物質被覆部を有しない正極活物質粒子(単一粒子)が正極活物質層中に存在する場合、その量は、正極活物質層中に存在する正極活物質粒子全体の量に対して、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。
【0026】
活物質被覆部の導電材料は、炭素を含むことが好ましい。導電材料は、炭素のみからなってもよいし、炭素と炭素以外の他の元素とを含む導電性有機化合物でもよい。他の元素としては、窒素、水素、酸素等が例示できる。前記導電性有機化合物において、他の元素は10原子%以下が好ましく、5原子%以下がより好ましい。
活物質被覆部を構成する導電材料は、炭素のみからなることがさらに好ましい。
活物質被覆部を有する正極活物質の総質量に対して、導電材料の含有量は0.1~3.0質量%が好ましく、0.5~1.5質量%がより好ましく、0.7~1.3質量%がさらに好ましい。導電材料の含有量が多すぎる場合は正極活物質の表面から導電材料が剥がれ、独立した導電助剤粒子として残留する可能性があるため、好ましくない。
【0027】
活物質被覆部の導電材料は、炭素(導電性炭素)を含む。導電材料は、炭素のみからなる導電材料でもよく、炭素と炭素以外の他の元素とを含む導電性有機化合物でもよい。他の元素としては、窒素、水素、酸素等が例示できる。前記導電性有機化合物において、他の元素は10原子%以下が好ましく、5原子%以下がより好ましい。活物質被覆部を構成する導電材料は、炭素のみからなることがさらに好ましい。
活物質被覆部を有する正極活物質粒子の総質量に対して、導電材料の含有量は0.1~4.0質量%が好ましく、0.5~3.0質量%がより好ましく、0.7~2.5質量%がさらに好ましい。
多すぎる場合は正極活物質粒子の表面から導電材料が剥がれ、独立した導電助剤粒子として残留する可能性があるため、好ましくない。活物質被覆部を炭素で構成する場合は活物質表面の抵抗率を106~109Ω(6~9logΩ)の範囲で調整することが好ましい。表面を導電性の高いカーボンブラックやカーボンナノチューブ、グラフェンなどで被覆した場合は抵抗率が低くなりすぎて充放電サイクルを行った際に電解液との副反応性が高まり電池の寿命特性が低下するため好ましくない。活物質表面の抵抗率は一例として広がり抵抗顕微鏡(SSRM:Scanning Spread Resistance Microscope)により測定することができる。
【0028】
被覆粒子としては、オリビン型結晶構造を有する化合物を芯部とする被覆粒子が好ましく、一般式(1)で表される化合物を芯部とする被覆粒子がより好ましく、リン酸鉄リチウムを芯部とする被覆粒子(以下「被覆リン酸鉄リチウム」ともいう。)がさらに好ましい。これらの被覆粒子であれば、電池容量、サイクル特性により高められる。
加えて、被覆粒子は、芯部の表面全体が導電材料で被覆されていることが、特に好ましい。
【0029】
被覆粒子は、公知の方法で製造できる。以下に、被覆リン酸鉄リチウムを例にして、被覆粒子の製造方法を説明する。
炭素を被覆したリン酸鉄リチウム粒子を得る製造方法は、特に制限はないが、リン酸鉄粒子 に対して、易黒鉛化性樹脂あるいは難黒鉛化性樹脂、ナフタレン、コールタール、バインダーピッチ等を前駆体として600~1300℃で熱処理をすることや、リン酸鉄リチウム粒子を流動状態下に、600~1300℃の熱処理温度でメタノール、エタノール、ベンゼンやトルエン等の炭化水素化合物等を化学蒸着炭素源にして化学的気相蒸着(CVD)処理をし、表面に炭素被膜を形成させる方法が挙げられる。
他の正極活物質は、表面の少なくとも一部に前記活物質被覆部が存在してもよい。
【0030】
正極活物質粒子の総質量に対して、被覆粒子の含有量は50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。100質量%でもよい。
【0031】
正極活物質粒子の総質量(活物質被覆部を有する場合は活物質被覆部の質量も含む)に対して、オリビン型結晶構造を有する化合物の含有量は50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。100質量%でもよい。
被覆リン酸鉄リチウムを用いる場合、正極活物質粒子の総質量に対して、被覆リン酸鉄リチウムの含有量は50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。100質量%でもよい。
【0032】
正極活物質層12の総質量に対して、正極活物質粒子の含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%超がさらに好ましく、99.5質量%以上が特に好ましく、100質量%でもよい。正極活物質粒子の含有量が上記下限値以上であれば、電池容量、サイクル特性により高められる。
【0033】
活物質被覆部の炭素は公知の方法で構成することができる。
活物質被覆部を炭素で構成する場合、アモルファス(非晶質)カーボンであることが望ましい。
非晶質性の炭素を被覆した正極活物質を得る製造方法は、特に限定されないが、正極活物質粒子に対して、前駆体として、易黒鉛化性樹脂あるいは難黒鉛化性樹脂、ナフタレン、コールタール、バインダーピッチ等を添加し、600~1300℃で熱処理をする方法や、リン酸鉄リチウム粒子を流動状態下に、600~1300℃の熱処理温度でメタノール、エタノール、ベンゼンやトルエン等の炭化水素化合物等を化学蒸着炭素源にして化学的気相蒸着(CVD)処理をし、表面に炭素被膜を形成させる公知の方法等が挙げられる。これらの方法により形成した活物質被覆部を構成する炭素の大部分はアモルファス(非晶質)となる。
【0034】
活物質被覆部をアモルファスではなく、導電性が高く、結晶性も高いカーボンナノチューブ、グラフェン等を用いて形成した場合、活物質被覆部は抵抗が低くなりすぎて、充放電サイクルを行った際に電解液との副反応性が高まり電池の寿命特性が低下する。
例えば、EELSスペクトル(C-Kエッジ)の形状の違いから、sp2結合割合を確認することにより、活物質被覆部の炭素が結晶質であるか、アモルファスであるかを判定することができる。同様にラマンスペクトルの波数1200cm-1~1800cm-1におけるピーク位置を確認することにより、活物質被覆部の炭素が結晶質であるか、アモルファスであるかを判定することができる。
活物質被覆部において、非晶質炭素の存在比率が結晶質炭素の存在比率よりも高いことが好ましい。
活物質被覆部の抵抗率は、0.15Ω・cm以上12Ω・cm以下が好ましい。活物質被覆部の抵抗率は、例えば、正極活物質の粉体抵抗による測定から換算することにより得ることができる。
【0035】
正極活物質粒子の群(即ち、正極活物質粒子の粉体)の平均粒子径(活物質被覆部を有する場合は活物質被覆部の厚さも含む)は、例えば、0.1~20.0μmが好ましく、0.2~10.0μmがより好ましい。正極活物質粒子を2種以上用いる場合、それぞれの平均粒子径が上記の範囲内であればよい。
本明細書における正極活物質粒子の群の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定器を用いて測定した体積基準のメジアン径である。
【0036】
正極活物質層12に含まれる結着材は有機物であり、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸リチウム、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、スチレンブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルニトリル、ポリイミド等が挙げられる。結着材は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
正極活物質層12における結着材の含有量は、例えば、正極活物質層12の総質量に対して、1.5質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましい。結着材の含有量が上記上限値以下であれば、正極活物質層12において、リチウムイオンの伝導に寄与しない物質の割合が少なくなり、正極活物質層12の真密度を高めて、さらに、正極1の表面を覆う結着材の割合が少なくなり、リチウムの伝導性をより高めることで、高レートサイクル特性のさらなる向上を図れる。
正極活物質層12が結着材を含有する場合、結着材の含有量の下限値は、正極活物質層12の総質量に対して0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。
【0038】
正極活物質層12に含まれる導電助剤としては、例えば、グラファイト、グラフェン、ハードカーボン、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)等の炭素材料が挙げられる。導電助剤は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
正極活物質層12における導電助剤の含有量は、例えば、正極活物質層12の総質量に対して、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましく、0質量%(即ち、導電助剤を含まない)が特に好ましく、独立した導電助剤粒子(例えば、独立した炭素粒子)が存在しない状態が望ましい。導電助剤の含有量が上記上限値以下であれば、正極活物質層12において、リチウムイオンの伝導に寄与しない物質の割合が少なくなり、正極活物質層12の真密度を高めて、高レートサイクル特性のさらなる向上を図れる。
【0039】
正極活物質層12に導電助剤を配合する場合、導電助剤の下限値は、導電助剤の種類に応じて適宜決定され、例えば、正極活物質層12の総質量に対して0.1質量%超とされる。
なお、正極活物質層12が「導電助剤を含まない」とは、実質的に含まないことを意味し、本発明の効果に影響を及ぼさない程度に含むものを排除するものではない。例えば、導電助剤の含有量が正極活物質層12の総質量に対して0.1質量%以下であれば、実質的に含まれないと判断できる。
【0040】
[正極集電体]
集電体本体14は金属材料からなる。金属材料としては、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性を有する金属が例示できる。
集電体本体14の厚みは、例えば、8μm~40μmが好ましく、10μm~25μmがより好ましい。
集電体本体14の厚みおよび正極集電体11の厚みは、マイクロメータを用いて測定できる。測定器の一例としてはミツトヨ社製品名「MDH-25M」が挙げられる。
【0041】
[集電体被覆層]
集電体被覆層15は導電材料を含む。
集電体被覆層15中の導電材料は、炭素(導電性炭素)を含むことが好ましく、炭素のみからなる導電材料がより好ましい。
【0042】
集電体被覆層15は、例えば、カーボンブラック等の炭素粒子と結着材を含むコーティング層が好ましい。集電体被覆層15の結着材は、正極活物質層12の結着材と同様のものを例示できる。
集電体本体14の表面を集電体被覆層15で被覆した正極集電体11は、例えば、導電材料、結着材、および溶媒を含むスラリーを、グラビア法等の公知の塗工方法を用いて集電体本体14の表面に塗工し、乾燥して溶媒を除去する方法で製造できる。
【0043】
集電体被覆層15の厚さは、0.1~4.0μmが好ましく、0.5~2.0μmがより好ましい。
集電体被覆層15の厚さは、集電体被覆層の断面の電子顕微鏡(SEM、TEM)像における被覆層の厚さを計測する方法で測定できる。集電体被覆層15の厚さは均一でなくてもよい。正極集電体本体14の表面の少なくとも一部に厚さ0.1μm以上の集電体被覆層15が存在し、集電体被覆層15の厚さの最大値が4.0μm以下であることが好ましい。
【0044】
[正極の製造方法]
本実施形態の正極1は、例えば、正極活物質、結着材、および溶媒を含む正極製造用組成物を、正極集電体11上に塗工し、正極製造用組成物を乾燥し溶媒を除去して、正極集電体11上に正極活物質層12を形成する(活物質層形成工程)方法で製造できる。正極製造用組成物における導電助剤の含有量は、正極製造用組成物の固形分の総質量に対して2質量%以下であり、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0質量%(即ち、導電助剤を含まない)が特に好ましい。
正極集電体11上に正極活物質層12を形成した積層物を、2枚の平板状冶具の間に挟み、厚み方向に均一に加圧する方法で、正極活物質層12の厚みを調整できる。例えば、ロールプレス機を用いて加圧する方法を使用できる。
【0045】
正極製造用組成物の溶媒は非水系溶媒が好ましい。例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド等の鎖状または環状アミド;アセトン等のケトンが挙げられる。溶媒は、1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
正極活物質層12は、分散剤を含んでもよい。分散剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ワンショットワニス(トーヨーカラー社製)等が挙げられる。
【0047】
正極活物質を被覆する導電材料及び導電助剤の少なくとも一方が炭素を含む場合、正極1から正極集電体本体14を除いた残部の質量に対して、導電性炭素の含有量は0.5~3.5質量%が好ましく、1.5~3.0質量%がより好ましい。
正極1が正極集電体本体14と正極活物質層12とからなる場合、正極1から正極集電体本体14を除いた残部の質量は、正極活物質層12の質量である。
正極1が正極集電体本体14と集電体被覆層15と正極活物質層12とからなる場合、正極1から正極集電体本体14を除いた残部の質量は、集電体被覆層15と正極活物質層12の合計質量である。
正極活物質層12の総質量に対して、導電性炭素の含有量が上記の範囲内であると、電池容量をより改善し、より優れたサイクル特性を有する非水電解質二次電池を実現できる。
正極1から正極集電体本体14を除いた残部の質量に対する導電性炭素の含有量は、正極集電体本体14上に存在する層の全量を剥がして120℃環境で真空乾燥させた乾燥物(粉体)を測定対象として、下記≪導電性炭素含有量の測定方法≫で測定できる。
下記≪導電性炭素含有量の測定方法≫で測定した導電性炭素の含有量は、活物質被覆部中の炭素と、導電助剤中の炭素と、集電体被覆層15中の炭素を含む。結着材中の炭素は含まれない。
【0048】
前記測定対象物を得る方法としては、例えば、以下の方法を用いることができる。
まず、正極1を任意の大きさに打ち抜き、溶剤(例えば、N-メチルピロリドン)に浸漬して攪拌する方法で、正極集電体本体14上に存在する層(粉体)を完全に剥がす。次いで、正極集電体本体14に粉体が付着していないことを確認し、正極集電体本体14を溶剤から取り出し、剥がした粉体と溶剤を含む懸濁液(スラリー)を得る。得られた懸濁液を120℃で乾燥して溶剤を完全に揮発させ、目的の測定対象物(粉体)を得る。
【0049】
≪導電性炭素含有量の測定方法≫
[測定方法A]
測定対象物を均一に混合して試料(質量w1)を量りとり、下記の工程A1、工程A2の手順で熱重量示唆熱(TG-DTA)測定を行い、TG曲線を得る。得られたTG曲線から下記第1の重量減少量M1(単位:質量%)及び第2の重量減少量M2(単位:質量%)を求める。M2からM1を減算して導電性炭素の含有量(単位:質量%)を得る。
工程A1:300mL/分のアルゴン気流中において、10℃/分の昇温速度で30℃から600℃まで昇温し、600℃で10分間保持したときの質量w2から、下記式(a1)により第1の重量減少量M1を求める。
M1=(w1-w2)/w1×100 (a1)
工程A2:前記工程A1の直後に600℃から10℃/分の降温速度で降温し、200℃で10分間保持した後に、測定ガスをアルゴンから酸素へ完全に置換し、100mL/分の酸素気流中において、10℃/分の昇温速度で200℃から1000℃まで昇温し、1000℃にて10分間保持したときの質量w3から、下記式(a2)により第2の重量減少量M2(単位:質量%)を求める。
M2=(w1-w3)/w1×100 (a2)
【0050】
[測定方法B]
測定対象物を均一に混合して試料を0.0001mg精秤し、下記の燃焼条件で試料を燃焼し、発生した二酸化炭素をCHN元素分析装置により定量し、試料に含まれる全炭素量M3(単位:質量%)を測定する。また、前記測定方法Aの工程A1の手順で第1の重量減少量M1を求める。M3からM1を減算して導電性炭素の含有量(単位:質量%)を得る。
[燃焼条件]
燃焼炉:1150℃
還元炉:850℃
ヘリウム流量:200mL/分
酸素流量:25~30mL/分
【0051】
[測定方法C]
上記測定方法Bと同様にして、試料に含まれる全炭素量M3(単位:質量%)を測定する。また、下記の方法で結着材由来の炭素の含有量M4(単位:質量%)を求める。M3からM4を減算して導電性炭素の含有量(単位:質量%)を得る。
結着材がポリフッ化ビニリデン(PVDF:モノマー(CH2CF2)の分子量64)である場合は、管状式燃焼法による燃焼イオンクロマトグラフィーにより測定されたフッ化物イオン(F-)の含有量(単位:質量%)、PVDFを構成するモノマーのフッ素の原子量(19)、及びPVDFを構成する炭素の原子量(12)から以下の式で計算することができる。
PVDFの含有量(単位:質量%)=フッ化物イオンの含有量(単位:質量%)×64/38
PVDF由来の炭素の含有量M4(単位:質量%)=フッ化物イオンの含有量(単位:質量%)×12/19
結着材がポリフッ化ビニリデンであることは、試料、又は試料をN-Nジメチルホルムアミド(DMF)溶媒により抽出した液体をフーリエ変換赤外スペクトル(FT-IR)測定し、C-F結合由来の吸収を確認する方法で確かめることができる。同様に19F-NMR測定でも確かめることができる。
結着材がPVDF以外と同定された場合は、その分子量に相当する結着材の含有量(単位:質量%)および炭素の含有量(単位:質量%)を求めることで、結着材由来の炭素量M4を算出できる。
これらの手法は下記複数の公知文献に記載されている。
東レリサーチセンター The TRC News No.117 (Sep.2013)第34~37頁、[2021年2月10日検索]、インターネット<https://www.toray-research.co.jp/technical-info/trcnews/pdf/TRC117(34-37).pdf>。
東ソー分析センター 技術レポート No.T1019 2017.09.20、[2021年2月10日検索]、インターネット<http://www.tosoh-arc.co.jp/techrepo/files/tarc00522/T1719N.pdf>。
【0052】
≪導電性炭素の分析方法≫
正極活物質の活物質被覆部を構成する導電性炭素と、導電助剤である導電性炭素は、以下の分析方法で区別できる。
例えば、正極活物質層中の粒子を透過電子顕微鏡電子エネルギー損失分光法(TEM-EELS)により分析し、粒子表面近傍にのみ290eV付近の炭素由来のピークが存在する粒子は正極活物質であり、粒子内部にまで炭素由来のピークが存在する粒子は導電助剤と判定することができる。
他の方法としては、正極活物質層中の粒子をラマン分光によりマッピング解析し、炭素由来のG-bandとD-band、及び正極活物質由来の酸化物結晶のピークが同時に観測された粒子は正極活物質であり、G-bandとD-bandのみが観測された粒子は導電助剤と判定することができる。なお、不純物として考えられる微量な炭素や、製造時に正極活物質の表面から意図せず剥がれた微量な炭素等は、導電助剤と判定しない。
これらの方法を用いて、炭素材料からなる導電助剤が正極活物質層に含まれるか否かを確認することができる。
【0053】
[負極]
負極活物質層22は負極活物質を含む。さらに結着材を含んでもよい。さらに導電助剤を含んでもよい。負極活物質の形状は、粒子状が好ましい。
負極20は、例えば、負極活物質、結着材、および溶媒を含む負極製造用組成物を調製し、これを負極集電体21上に塗工し、乾燥し溶媒を除去して負極活物質層22を形成する方法で製造できる。負極製造用組成物は導電助剤を含んでもよい。
【0054】
負極活物質および導電助剤としては、例えば、グラファイト、グラフェン、ハードカーボン、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)等の炭素材料が挙げられる。負極活物質および導電助剤は、それぞれ1種でもよく2種以上を併用してもよい。
負極活物質が前記のものであれば、負極活物質層22は正極活物質層12よりもインピーダンスが低いため、本発明による効果に負極活物質は影響しない。しかし、シリコン負極活物質を用いるなど抵抗成分が高い場合は、負極活物質の粒径、導電助剤の量などの最適化により抵抗を低減し、正極活物質層12の抵抗よりも、負極活物質層22の抵抗が低い状態とすることが好ましい。
【0055】
負極集電体21の材料、負極製造用組成物中の結着材、溶媒としては、上記した正極集電体11の材料、正極製造用組成物中の結着材、溶媒と同様のものを例示できる。負極製造用組成物中の結着材、溶媒は、それぞれ1種でもよく2種以上を併用してもよい。
【0056】
負極活物質層22の総質量に対して、負極活物質および導電助剤の合計の含有量は80.0質量%~99.9質量%が好ましく、85.0質量%~98.0質量%がより好ましい。
【0057】
[セパレータ]
セパレータ30を負極20と正極10との間に配置して短絡等を防止する。セパレータ30は、後述する非水電解質を保持してもよい。
セパレータ30としては、特に限定されず、多孔性の高分子膜、不織布、ガラスファイバー等が例示できる。
セパレータ30の一方または両方の表面上に絶縁層を設けてもよい。絶縁層は、絶縁性微粒子を絶縁層用結着材で結着した多孔質構造を有する層が好ましい。
【0058】
セパレータ30は、各種可塑剤、酸化防止剤、難燃剤を含んでもよい。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリフェノール系酸化防止剤等のフェノール系酸化防止剤;ヒンダードアミン系酸化防止剤;リン系酸化防止剤;イオウ系酸化防止剤;ベンゾトリアゾール系酸化防止剤;ベンゾフェノン系酸化防止剤;トリアジン系酸化防止剤;サルチル酸エステル系酸化防止剤等が例示できる。フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が好ましい。
【0059】
[非水電解質]
非水電解質は正極10と負極20との間を満たす。例えば、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ等において公知の非水電解質を使用できる。
非水電解質として、有機溶媒に電解質塩を溶解した非水電解液が好ましい。
【0060】
有機溶媒は、高電圧に対する耐性を有するものが好ましい。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトロヒドラフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、メチルアセテート等の極性溶媒、またはこれら極性溶媒の2種類以上の混合物が挙げられる。
【0061】
非水電解質は、特に限定されず、例えば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiCF6、LiCF3CO2、LiPF6SO3、LiN(SO2F)2、LiN(SO2CF3)2、Li(SO2CF2CF3)2、LiN(COCF3)2、LiN(COCF2CF3)2等のリチウムを含む塩、またはこれら塩の2種以上の混合物が挙げられる。
【0062】
非水電解質は、リチウムイミド塩を含むことが好ましく、下記式(1)で表されるリチウムイミド塩を含むことがより好ましい。
【0063】
LiN(SO2R)2 (1)
[但し、Rはフッ素原子またはCxF(2x+1)を表し、xは1~3の整数である。]
【0064】
上記式(1)で表されるリチウムイミド塩としては、例えば、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LIFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LIFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SO2CF3)2、以下「LiTFSI」とも記す。)等が挙げられる。
【0065】
非水電解質におけるリチウムイミド塩の含有量は、非水電解質の総質量に対して10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上50質量%以下がより好ましく、30質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。リチウムイミド塩の含有量が前記下限値以上であると、非水電解質二次電池のサイクル特性が向上する。リチウムイミド塩の含有量が前記上限値以下であると、電解液の粘度が低くなり、低温や大電流使用での充放電特性が向上する。
【0066】
本実施形態の非水電解質二次電池は、産業用、民生用、自動車用、住宅用等、各種用途のリチウムイオン二次電池として使用できる。
本実施形態の非水電解質二次電池の使用形態は特に限定されない。例えば、複数個の非水電解質二次電池を直列または並列に接続して構成した電池モジュール、電気的に接続した複数個の電池モジュールと電池制御システムとを備える電池パック、電気的に接続した複数個の電池モジュールと電池制御システムとを備える電池システム等に用いることができる。
【0067】
本実施形態によれば、充放電サイクル後の抵抗上昇が抑制され、かつサイクル特性に優れる非水電解質二次電池が得られる。すなわち、本実施形態の非水電解質二次電池は、3Cで充放電サイクルを繰り返しても、抵抗変化が少なく、充放電カーブの電圧変化が少ない。一般的に、充放電パック、電池システムを設計する際には、非水電解質二次電池の抵抗変化および電圧変化を考慮して、入出力電流を劣化状態に合わせて変化させる。これに対して、本実施形態の非水電解質二次電池は、抵抗変化および電圧変化が少なく、電池システムの設計を簡略化することができる。
さらに、一般的な非水電解質二次電池は、大電流を出力する様な用途、例えば、電気自動車やハイブリッド車、アイドリングストップ用のバッテリーなどにおいて、出力特性の低下により使用範囲の限定や、電池交換が必要になる。本実施形態の非水電解質二次電池は、前記のような対応が不要になることも見込める電池である。
同じく一般的な非水電解質二次電池を複数接続した電池モジュール、電池パックにおいて、初期状態から充放電サイクルを繰り返した際に抵抗変化が大きいため、初期状態における閉回路電圧とサイクル後の閉回路電圧が大きく異なる。このため、同じCレートで放電し、同じ閉回路電圧に到達した際の電池の残存容量が大きく異なるため、閉回路状態でのSOC推定精度が低くなる課題がある。本実施形態によれば、充放電サイクルを繰り返した後にも抵抗変化が少なく、閉回路電圧の変化が小さい。このため使用時のSOC推定精度が高くなる効果が見込める。
【0068】
[非水電解質二次電池の製造方法]
非水電解質二次電池1は、例えば、上述の実施形態の非水電解質二次電池用正極の製造方法で非水電解質二次電池用正極を製造し(非水電解質二次電池用正極製造工程)、非水電解質二次電池用正極10と負極20との間に、非水電解質を配する(非水電解質形成工程)方法で製造できる。
【実施例0069】
以下に実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0070】
<評価方法>
[高レートサイクル試験、および初期3C放電容量率の評価]
容量維持率の評価は、下記(1)~(7)の手順に沿って行った。
(1)定格容量が20Ahとなるように非水電解質二次電池(セル)を作製し、常温(25℃)下で、サイクル評価を実施した。
(2)得られたセルに対して、0.2Cレート(すなわち、4A)で一定電流にて終止電圧3.6Vで充電を行った後、一定電圧にて前記充電電流の1/10を終止電流(すなわち、0.4A)として充電を行った。
(3)容量確認のための放電を0.2Cレートで一定電流にて終止電圧2.5Vで行った。このときの放電容量を基準容量とし、基準容量を1Cレートの電流値とした(すなわち、20Aとした)。
(4)セルの3Cレート(すなわち、60A)で一定電流にて終止電圧3.5~3.8Vで充電を行った後、10秒間休止し、この状態から3Cレートにて終止電圧2.5Vで放電を行い、10秒間休止した。
(5)(4)のサイクル試験を1000回繰り返した。この際に1回目のサイクルの放電容量を初期3C放電容量とし、基準容量で除することで初期3C放電容量率を求めた。また、1回目のサイクルにおいて縦軸を電圧、横軸をセルの充電状態State Of Charge(SOC)とし、放電開始時をSOC100%に規格化したプロットにより得られた放電カーブのSOC50%における電圧V1、1000回目のサイクルにおいても同様に電圧V2を測定した。
(6)(2)と同様の充電を実施した後に、(3)と同じ容量確認を実施した。
(7)(6)で測定された容量確認での放電容量をサイクル試験前の基準容量で除して百分率とすることで、1000サイクル後の容量維持率(1000サイクル容量維持率、単位:%)とした。
【0071】
[内部抵抗増加率の評価]
内部抵抗増加率の評価は、下記の手順に沿って行った。
前記高レートサイクル試験の手順(3)と(4)の間に非水電解質二次電池の0.1Hzの交流抵抗(単位:mΩ)を測定し、これを初期状態における抵抗R1とした。
前記高レートサイクル試験の手順(6)の後に再び0.1Hzの交流抵抗(単位:mΩ)を測定し、これをサイクル試験後における抵抗R2とした。得られたR2をR1で除する事で内部抵抗増加率(%)を求めた。
交流抵抗測定装置(インピーダンスアナライザ)は一例として、Biologic社製、型番:SP-50ezを用いた。
【0072】
<製造例:負極の製造>
負極活物質である人造黒鉛100質量部と、結着材であるスチレンブタジエンゴム1.5質量部と、増粘材であるカルボキシメチルセルロースNa1.5質量部と、溶媒である水とを混合し、固形分50質量%の負極製造用組成物を得た。
得られた負極製造用組成物を、銅箔(厚さ8μm)の両面上にそれぞれ塗工し、100℃で真空乾燥した後、2kNの荷重で加圧プレスして負極シートを得た。得られた負極シートを電極形状に打ち抜き、負極とした。
【0073】
<非水電解質二次電池8個を直列に接続したモジュールの製造方法>
(1)高レートサイクル試験や内部抵抗増加率の評価に使用した非水電解質二次電池(セル)とは別に、新たに定格容量が20Ahとなるように8セルを作製した。
図3に示すような、高レートサイクル試験や内部抵抗増加率の評価に使用した非水電解質二次電池(セル)101を用意した。非水電解質二次電池(セル)101は、正極タブ102と負極タブ103とを有する。
(2)作製した8個の非水電解質二次電池(セル)101について、それぞれセル電圧が2.5Vとなるまで0.2Cレート(すなわち4A)でCC放電を実施した。
(3)
図4に示すように、8個の非水電解質二次電池(セル)101を重ねて、それらを両面テープにより接着し、非水電解質二次電池(セル)101の厚み方向から見て、正極タブ102と負極タブ103が交互になるように配置した。
(4)
図5に示すように、正極タブ102と負極タブ103をレーザー溶接することによりセルを8直列に接続し、20Ahの非水電解質二次電池モジュール110を作製した。
【0074】
<非水電解質二次電池8個を直列に接続したモジュールの評価方法>
(1)上述のように作製した20Ahの非水電解質二次電池モジュール110の最端部に位置する正極タブ102、負極タブ103、すなわち8直列とした状態の正極端子と負極端子と充放電機を接続し、恒温槽を25℃環境に設定し、モジュール全体の温度が均一になるように1時間待機した後にサイクル評価を実施した。
(2)0.2Cレート(すなわち、4A)で一定電流にて終止電圧28.8Vで充電を行った後、一定電圧にて前記充電電流の1/10を終止電流(すなわち、0.4A)として充電を行った。
(3)容量確認のための放電を0.2Cレートで一定電流にて終止電圧20.0Vで行った。このときの放電容量を基準容量とし、基準容量を1Cレートの電流値とした(すなわち、20Aとした。)。
(4)3Cレート(すなわち、60A)で一定電流にて終止電圧を前述した単独セルのハイレートサイクル試験時の8倍の電圧に設定し、充電を行った後、10秒間休止し、この状態から3Cレートにて終止電圧20Vで放電を行い、10秒間休止した。
(5)(4)のサイクル試験を1000回繰り返した。また、1回目のサイクルにおいて縦軸を電圧、横軸をセルの充電状態State Of Charge(SOC)とし、放電開始時をSOC100%に規格化したプロットにより得られた放電カーブのSOC50%における電圧V3を測定し、1000サイクル目に同様のプロットにより得られた放電カーブにおいて電圧V3となる点におけるSOC(%)を測定し、1000サイクル後におけるSOC推定差分、精度を評価した。
(6)(2)と同様の充電を実施した後に、(3)と同じ容量確認を実施した。
(7)(6)で測定された容量確認での放電容量をサイクル試験前の基準容量で除して百分率とすることで、1000サイクル後の容量維持率(1000サイクル容量維持率、単位:%)とした。
【0075】
[実施例1]
まず、以下の方法で正極集電体本体の表裏両面を集電体被覆層で被覆して正極集電体を作製した。正極集電体本体としてはアルミニウム箔(厚さ15μm)を用いた。集電体被覆層における導電性炭素の含有量を1.5質量%とした。
カーボンブラック100質量部と、結着材と、溶媒である純水とを混合してスラリーを得た。NMPの使用量はスラリーを塗工するのに必要な量とした。
得られたスラリーを正極集電体本体の両面にグラビア法で塗工し、乾燥し溶媒を除去して集電体被覆層を形成し、正極集電体を得た。
【0076】
次いで、以下の方法で正極活物質層を形成した。
正極活物質であるリン酸鉄リチウム(LFP)と、結着材であるPVDFと、溶媒であるNMPとを、ミキサーにて混合して正極製造用組成物を得た。溶媒の使用量は、正極製造用組成物を塗工するのに必要な量とした。
正極集電体の両面上に、それぞれ正極製造用組成物を塗工し、予備乾燥後、120℃環境で真空乾燥して正極活物質層を形成した。得られた積層物を10kNの荷重で加圧プレスして正極シートを得た。両面それぞれの正極活物質層は、塗工量及び厚みが互いに均等になるように形成した。
得られた正極シートを電極形状に打ち抜き、正極とした。
【0077】
以下の方法で、
図1に示す構成の非水電解質二次電池を製造した。
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を、EC:EMCの体積比が30:70となるように混合した溶媒に、電解質としてLiPF
6を1モル/リットルとなるように溶解し、さらに、リチウムイミド塩としてLIFSIを0.4モル/リットルとなるように溶解して、非水電解液を調製した。
本例で得た正極と、製造例1で得た負極とを、セパレータを介して交互に積層し、最外層が負極である電極積層体を作製した。セパレータとしては、ポリオレフィンフィルム(厚さ15μm)を用いた。
電極積層体を作製する工程では、まず、セパレータと正極とを積層し、その後、セパレータ上に負極を積層した。
電極積層体の正極集電体露出部および負極集電体露出部のそれぞれに、端子用タブを電気的に接続し、端子用タブが外部に突出するように、アルミラミネートフィルムで電極積層体を挟み、三辺をラミネート加工して封止した。
続いて、封止せずに残した一辺から非水電解液を注入し、真空封止して非水電解質二次電池(ラミネートセル)を製造した。非水電解質二次電池の容量を1.0Ahとした。
【0078】
実施例1の非水電解質二次電池の高レートサイクル試験を行った。なお、定電流充電の終止電圧を3.8Vとし、初期3C放電容量率は98.1%となり、1サイクル目の電圧V1と1000サイクル目の電圧V2における電圧差V1-V2は3.5mVとなった。結果を表2に示す。
表2に示す結果から、実施例1の非水電解質二次電池は、1000サイクル容量維持率が93%であることが分かった。
また、実施例1の非水電解質二次電池の内部抵抗増加率の評価を行った。結果を表2に示す。
表2に示す結果から、内部抵抗増加率は100.5%であった。
実施例1の非水電解質二次電池を8直列とした電池モジュールの高レートサイクル試験を行った。なお、定電流充電の終止電圧を30.4Vとし、1000サイクル後の容量維持率は91%となり、SOC推定差分は2.19%となった。
また、
図6に、非水電解質二次電池の充放電の1サイクル目と1000サイクル目において、電圧とSOCの関係を表す放電カーブを示す。
図6に示すように、1サイクル目と1000サイクル目では電池の状態(劣化度合)が異なるため、電池の充電状態が50%(SOC50%)において、電圧が異なる。ここでは、電池の充電状態が50%(SOC50%)における、1サイクル目の電圧V1と1000サイクル目の電圧V2の差分(電圧差V1-V2)を評価した。
電圧差V1-V2が小さいと、電池の状態変化(劣化)が少ないことを表す。実施例1-6は全て、電圧差V1-V2が5.0mV以内であった。
また、
図7に、非水電解質二次電池モジュールの充放電の1サイクル目と1000サイクル目において、電圧とSOCの関係を表す放電カーブを示す。
図7に示すように、1サイクル目の放電カーブのSOC50%状態の電圧V3を基準とし、1000サイクル目の放電カーブで電圧V3に到達した際のSOCを測定し、同じ電圧V3においてのSOC差分を評価した。
1サイクル目でSOC50%として得られた電圧V3まで1000サイクル目に放電した際には、SOCが52.19%となっているが、放電中のセルの電圧を頼りにSOCを推定した場合は2.19%の差分で収まった。実施例1-6は全て2.5%以内となっており、電池モジュールの残存容量推定を初期状態と同様に行うことができるのが確認された。
【0079】
[実施例2]
実施例1と同様の構成の実施例2の非水電解質二次電池の高レートサイクル試験を行った。なお、定電流充電の終止電圧を3.6Vとし、初期3C放電容量率は97.4%となり、1サイクル目の電圧V1と1000サイクル目の電圧V2における電圧差V1-V2は2.5mVとなった。結果を表2に示す。
表2に示す結果から、実施例2の非水電解質二次電池は、1000サイクル容量維持率が96%であることが分かった。
また、実施例2の非水電解質二次電池の内部抵抗増加率の評価を行った。結果を表2に示す。
表2に示す結果から、内部抵抗増加率は100.3%であった。
実施例2の非水電解質二次電池を8直列とした電池モジュールの高レートサイクル試験を行った。なお、定電流充電の終止電圧を28.8Vとし、1000サイクル後の容量維持率は94%となり、SOC推定差分は2.12%となった。
【0080】
[実施例3]
実施例1と同様の構成の実施例3の非水電解質二次電池の高レートサイクル試験を行った。なお、定電流充電の終止電圧を3.5Vとし、初期3C放電容量率は88.3%となり、1サイクル目の電圧V1と1000サイクル目の電圧V2における電圧差V1-V2は1.7mVとなった。結果を表2に示す。
表2に示す結果から、実施例3の非水電解質二次電池は、1000サイクル容量維持率が97%であることが分かった。
また、実施例3の非水電解質二次電池の内部抵抗増加率の評価を行った。結果を表2に示す。
表2に示す結果から、内部抵抗増加率は100.2%であった。
実施例3の非水電解質二次電池を8直列とした電池モジュールの高レートサイクル試験を行った。なお、定電流充電の終止電圧を28.0Vとし、1000サイクル後の容量維持率は95%となり、SOC推定差分は2.09%となった。
【0081】
[実施例4]
集電体被覆層における導電性炭素の含有量を2.5質量%とし、正極活物質層の総質量に対する導電性炭素の含有量を1.0質量%としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の正極を作製した。
実施例4の非水電解質二次電池の高レートサイクル試験を行った。なお、定電流充電の終止電圧を3.6Vとし、初期3C放電容量率は97.6%となり、1サイクル目の電圧V1と1000サイクル目の電圧V2における電圧差V1-V2は4.3mVとなった。結果を表2に示す。
表2に示す結果から、実施例4の非水電解質二次電池は、1000サイクル容量維持率が94%であることが分かった。
また、実施例4の非水電解質二次電池の内部抵抗増加率の評価を行った。結果を表2に示す。
表2に示す結果から、内部抵抗増加率は100.7%であった。
実施例4の非水電解質二次電池を8直列とした電池モジュールの高レートサイクル試験を行った。なお、定電流充電の終止電圧を28.8Vとし、1000サイクル後の容量維持率は91%となり、SOC推定差分は2.39%となった。
【0082】
[実施例5]
非水電解液がリチウムイミド塩を含まないこと以外は実施例1と同様にして、実施例5の正極を作製した。
実施例5の非水電解質二次電池の高レートサイクル試験を行った。なお、定電流充電の終止電圧を3.6Vとし、初期3C放電容量率は93.4%となり、1サイクル目の電圧V1と1000サイクル目の電圧V2における電圧差V1-V2は4.8mVとなった。結果を表2に示す。
表2に示す結果から、実施例5の非水電解質二次電池は、1000サイクル容量維持率が91%であることが分かった。
また、実施例5の非水電解質二次電池の内部抵抗増加率の評価を行った。結果を表2に示す。
表2に示す結果から、内部抵抗増加率は101.5%であった。
実施例5の非水電解質二次電池を8直列とした電池モジュールの高レートサイクル試験を行った。なお、定電流充電の終止電圧を28.8Vとし、1000サイクル後の容量維持率は87%となり、SOC推定差分は2.44%となった。
【0083】
[実施例6]
実施例1と同様の構成の実施例6の非水電解質二次電池の高レートサイクル試験を行った。なお、定電流充電の終止電圧を3.4Vとし、初期3C放電容量率は52.2%となり、1サイクル目の電圧V1と1000サイクル目の電圧V2における電圧差V1-V2は0.7mVとなった。結果を表2に示す。
表2に示す結果から、実施例6の非水電解質二次電池は、1000サイクル容量維持率が98%であることが分かった。
また、実施例6の非水電解質二次電池の内部抵抗増加率の評価を行った。結果を表2に示す。
表2に示す結果から、内部抵抗増加率は100.1%であった。
実施例6の非水電解質二次電池を8直列とした電池モジュールの高レートサイクル試験を行った。なお、定電流充電の終止電圧を27.2Vとし、1000サイクル後の容量維持率は95%となり、SOC推定差分は2.04%となった。
【0084】
[比較例1]
実施例1と同様の構成の比較例1の非水電解質二次電池の高レートサイクル試験を行った。なお、定電流充電の終止電圧を4Vとし、初期3C放電容量率は98.9%となり、1サイクル目の電圧V1と1000サイクル目の電圧V2における電圧差V1-V2は13.2mVとなった。結果を表2に示す。
表2に示す結果から、比較例1の非水電解質二次電池は、1000サイクル容量維持率が91%であることが分かった。
また、比較例1の非水電解質二次電池の内部抵抗増加率の評価を行った。結果を表2に示す。
表2に示す結果から、内部抵抗増加率は105.8%であった。
比較例1の非水電解質二次電池を8直列とした電池モジュールの高レートサイクル試験を行った。なお、定電流充電の終止電圧を32.0Vとし、1000サイクル後の容量維持率は87%となり、SOC推定差分は15.95%となった。
【0085】
[比較例2]
集電体被覆層における導電性炭素の含有量を6.5質量%とし、正極活物質層の総質量に対する導電性炭素の含有量を5.0質量%としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の正極を作製した。
比較例2の非水電解質二次電池の高レートサイクル試験を行った。なお、定電流充電の終止電圧を3.6Vとし、初期3C放電容量率は81.0%となり、1サイクル目の電圧V1と1000サイクル目の電圧V2における電圧差V1-V2は94.1mVとなった。結果を表2に示す。
表2に示す結果から、比較例2の非水電解質二次電池は、1000サイクル容量維持率が24%であることが分かった。
また、比較例2の非水電解質二次電池の内部抵抗増加率の評価を行った。結果を表2に示す。
表2に示す結果から、内部抵抗増加率は182.4%であった。
比較例2の非水電解質二次電池を8直列とした電池モジュールの高レートサイクル試験を行った。なお、定電流充電の終止電圧を28.8Vとし、1000サイクル後の容量維持率は15%となり、SOC推定差分は20.40%となった。
【0086】
[比較例3]
集電体被覆層における導電性炭素の含有量を6.5質量%とし、正極活物質層の総質量に対する導電性炭素の含有量を5.0質量%としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例3の正極を作製した。
比較例3の非水電解質二次電池の高レートサイクル試験を行った。なお、定電流充電の終止電圧を3.6Vとし、初期3C放電容量率は97.8%となり、1サイクル目の電圧V1と1000サイクル目の電圧V2における電圧差V1-V2は8.5mVとなった。結果を表2に示す。
表2に示す結果から、比較例3の非水電解質二次電池は、1000サイクル容量維持率が96%であることが分かった。
また、比較例3の非水電解質二次電池の内部抵抗増加率の評価を行った。結果を表2に示す。
表2に示す結果から、内部抵抗増加率は103.3%であった。
比較例3の非水電解質二次電池を8直列とした電池モジュールの高レートサイクル試験を行った。なお、定電流充電の終止電圧を28.8Vとし、1000サイクル後の容量維持率は93%となり、SOC推定差分は11.53%となった。
【0087】
[比較例4]
正極活物質としてニッケルコバルトマンガン酸化物(NCM)を用い、集電体被覆層における導電性炭素の含有量を5.0質量%とし、正極活物質層の総質量に対する導電性炭素の含有量を5.0質量%としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例4の正極を作製した。
比較例4の非水電解質二次電池の高レートサイクル試験を行った。なお、定電流充電の終止電圧を3.8Vとし、初期3C放電容量率は11.2%となり、1サイクル目の電圧V1と1000サイクル目の電圧V2における電圧差V1-V2は123.6mVとなった。結果を表2に示す。
表2に示す結果から、比較例4の非水電解質二次電池は、1000サイクル容量維持率が18%であることが分かった。
また、比較例4の非水電解質二次電池の内部抵抗増加率の評価を行った。結果を表2に示す。
表2に示す結果から、内部抵抗増加率は252.3%であった。
比較例4の非水電解質二次電池を8直列とした電池モジュールの高レートサイクル試験を行った。なお、定電流充電の終止電圧を30.4Vとし、1000サイクル後の容量維持率は8%となり、SOC推定差分は41.76%となった。
【0088】
【0089】
【0090】
非水電解質二次電池の評価結果、および非水電解質二次電池を8直列とした電池モジュールの評価結果において、実施例1~6の非水電解質二次電池は、初期3C放電率が高く、ハイレートサイクル後の内部抵抗増加率が低く、容量維持率が高く、初回1サイクル目と1000サイクル目放電カーブの変化を示すV1-V2が5mV以内であった。このため、非水電解質二次電池を8直列とした電池モジュールのハイレートサイクル試験結果において、1000サイクル後のSOC推定差分が小さく、厳しい条件での使用後においても閉回路電圧を参照することでSOC推定が可能と考えられる結果が得られた。
【0091】
実施例1~3においては、非水電解質二次電池の1セルあたりにかかる充電電圧制御を3.5V~3.8Vとすることで抵抗増加率が低く、容量維持率が高い特性が得られたと考えられる。
実施例4においては、正極活物質層に導電助剤を1.0質量%含む構成であるが、十分な効果が得られた。
実施例5においては、電解液にイミド塩を溶解しなかったが、十分な効果が得られた。
実施例6は、定電流充電終止電圧を3.4Vとしたことにより、初期3C放電容量率が低くなり、ハイレートサイクルにおいて充放電可能な容量が0.2Cの基準容量との比較で52.2%まで減少した。
【0092】
比較例1は、定電流充電終止電圧を4.0Vとしたことにより、初期3C放電容量率が98.9%と高くなったが、内部抵抗増加率が105.8%と高くなり、V1-V2も13.2mVと大きくなった。このため、非水電解質二次電池を8直列とした電池モジュール評価においてV3における1000サイクル目のSOC推定差分が15.95%と大きくなり、使用後のSOC推定が困難となる結果が得られた。
【0093】
比較例2は、集電体被覆層がなく、正極活物質層に導電助剤を5.0質量%含む構成であり、ハイレートサイクル時に反応性が高い集電体表面での電解液の分解等が生じ、抵抗増加率が182.4%と高くなり、V1-V2も94.1mVと大きくなったと想定される。1000サイクル後の容量維持率は24%となり、著しい劣化が確認された。非水電解質二次電池を8直列とした電池モジュール評価において、1000サイクル後の容量維持率は15%となり、非水電解質二次電池単体の結果よりさらに低下した。これは、電池モジュールとすることで抵抗発熱により発生した熱が非水電解質二次電池単体と比べて放熱しにくくなり、熱劣化を引き起こしたためと考えられる。V3における1000サイクル目のSOC推定差分は20.40%と大きくなり、使用後のSOC推定が困難となる結果が得られた。
【0094】
比較例3は、比較例1と集電体被覆層を用いた点のみ異なるが、抵抗増加率は103.3%と高く、V1-V2も8.5mVと高かった。正極活物質層に導電助剤が多く含まれることにより、ハイレートサイクル時に導電助剤周辺で電解液と副反応を引き起こしやすくなり、実施例と比較して抵抗上昇率が高くなったと想定される。V3における1000サイクル目のSOC推定差分は11.53%と大きくなり、使用後のSOC推定が困難となる結果が得られた。
【0095】
比較例4は、正極活物質としてNCMを用いた構成であり、活物質自体の抵抗が高いため初期3C放電容量率が低く、ハイレートサイクル時での活物質起因と考えられる劣化が確認された。LFPと異なり、NCMは層状岩塩構造の結晶であり、ハイレートでのリチウムイオンの挿入、脱離により構造が破壊されやすいために劣化し、抵抗増加率が252.3%と大きくなり、V1-V2も123.6mVと高くなったと考えられる。1000サイクル後の容量維持率においても18%となり、著しい劣化が確認された。非水電解質二次電池を8直列とした電池モジュール評価において、比較例1と同様に、電池モジュールとしたことにより抵抗発熱によるさらなる劣化が起きたと考えられ、容量維持率は8%となった。V3における1000サイクル目のSOC推定差分は41.76%と大きくなり、使用後のSOC推定が困難となる結果が得られた。