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特開2024-36293ビチューメンからアスファルテン及びマルテンを分離する方法
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  • 特開-ビチューメンからアスファルテン及びマルテンを分離する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036293
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】ビチューメンからアスファルテン及びマルテンを分離する方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/00 20060101AFI20240308BHJP
   B01D 11/04 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C10G1/00 A
B01D11/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023135907
(22)【出願日】2023-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2022140876
(32)【優先日】2022-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴宏
【テーマコード(参考)】
4D056
4H129
【Fターム(参考)】
4D056AB13
4D056AC02
4D056AC22
4D056BA08
4D056CA06
4D056CA14
4D056CA17
4D056CA23
4D056CA27
4D056CA39
4D056DA01
4D056EA08
4H129AA01
4H129BA01
4H129BB01
4H129NA21
4H129NA45
(57)【要約】
【課題】ビチューメンからアスファルテン及びマルテンを室温で、短時間で分離できる方法を提供する。
【解決手段】ビチューメンからアスファルテン及びマルテンを分離する方法が、ビチューメンと炭素数5~10のn-アルカンを混合する第1の混合工程、この第1の混合工程で得られた混合物に、10~30℃の範囲で超音波を照射する超音波照射工程、この超音波照射工程で得られたスラリーと水を10~30℃の範囲で混合する第2の混合工程、この第2の混合工程で得られた混合物から分離する炭素数5~10のn-アルカン相を回収して炭素数5~10のn-アルカンを蒸発させ、マルテンを回収するマルテン回収工程、及びこの第2の混合工程で得られた混合物から分離する、アスファルテンが沈殿する水相からアスファルテンを分離するアスファルテン回収工程を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビチューメンからアスファルテン及びマルテンを分離する方法であって、
ビチューメンと炭素数5~10のn-アルカンを混合する第1の混合工程、
当該第1の混合工程で得られた混合物に、10~30℃の範囲で超音波を照射する超音波照射工程、
当該超音波照射工程で得られたスラリーと水を10~30℃の範囲で混合する第2の混合工程、
当該第2の混合工程で得られた混合物から分離する炭素数5~10のn-アルカン相を回収して炭素数5~10のn-アルカンを蒸発させ、マルテンを回収するマルテン回収工程、及び
当該第2の混合工程で得られた混合物から分離する、アスファルテンが沈殿する水相からアスファルテンを分離するアスファルテン回収工程を含むことを特徴とするビチューメンからアスファルテン及びマルテンを分離する方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたビチューメンからアスファルテン及びマルテンを分離する方法であって、前記第1の混合工程においてビチューメン1g当たり5~60cmの範囲の炭素数5~10のn-アルカンを混合することを特徴とするビチューメンからアスファルテン及びマルテンを分離する方法。
【請求項3】
請求項1に記載されたビチューメンからアスファルテン及びマルテンを分離する方法であって、前記超音波照射工程において、20kHz~10MHzの範囲の超音波を、1~20分間の範囲で照射することを特徴とするビチューメンからアスファルテン及びマルテンを分離する方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載されたビチューメンからアスファルテン及びマルテンを分離する方法であって、前記第2の混合工程において、ビチューメン1g当たり5~100cmの範囲の水を混合することを特徴とするビチューメンからアスファルテン及びマルテンを分離する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビチューメンからアスファルテン及びマルテンを分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、石油燃料代替資源の1つとしてオイルサンドが注目されている。オイルサンドとは砂、粘土、水と油の混合物であり、石油を含んだ油層が地殻変動で地表近くに移動して揮発し、水、バクテリア等の影響により軽質分を失ったものである。砂及び粘土の中に10%程度のビチューメンと呼ばれるアスファルトに近い重質油分が含まれている。オイルサンドは主にカナダのアルバータ州とベネズエラのオリノコ地域に分布している。オイルサンドの埋蔵量は、通常の石油資源の2倍以上と推定されており、エネルギーの安定供給確保が可能であるとされる。
特許文献1には、オイルサンドに熱水又は水蒸気を加え、超音波を照射して、オイルサンドからビチューメンを回収する、オイルサンド由来のビチューメンの抽出方法が開示されている。
【0003】
ビチューメンに含まれる燃料として使用が難しいアスファルテンと、燃料として使用できるマルテンの分離が従来から実施されている。非特許文献1には、ビチューメンとn-ヘプタンを攪拌し、静置し、濾過して得られた濾液をソックスレー抽出し、当該ソックスレー抽出で得られた抽出液を乾燥してマルテンを分離し、当該ソックスレー抽出で得られた沈殿物をトルエンで更にソックスレー抽出してアスファルテンを分離する方法が開示されている。しかしながら、非特許文献1に開示された方法における各工程は高温で長時間実施されるから、ビチューメンからアスファルテンとマルテンを分離するまで多大なエネルギーと1週間程度の時間を要する。
【0004】
非特許文献2には、原油とn-ペンタンを加熱還流し、濾紙を使用して濾過して得られる沈殿を還流抽出してマルテンを分離し、トルエンで当該濾紙からアスファルテンを溶解してアスファルテンを分離する方法が開示されている。しかしながら、非特許文献2に開示された方法における各工程も高温で実施され、当該方法の工程数も多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-256353号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】B. Hofko et al., Materials and Structures, 49, 829 (2015)
【非特許文献2】M. Asemani et al., Geoscience Journal, 20 No.20, 273 (2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ビチューメンからアスファルテン及びマルテンを室温で、短時間で分離できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題に鑑み検討を重ね、ビチューメンと炭素数5~10のn-アルカンを混合して得られた混合物に室温で超音波を照射し、得られたスラリーと水を室温で混合すると、アスファルテンを含む水相とマルテンを含む炭素数5~10のn-アルカン相に分離し、当該水相からアスファルテンを、当該炭素数5~10のn-アルカン相からマルテンを短時間で分離できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
【0009】
本発明は、ビチューメンと炭素数5~10のn-アルカンを混合する第1の混合工程、当該第1の混合工程で得られた混合物に、10~30℃の範囲で超音波を照射する超音波照射工程、当該超音波照射工程で得られたスラリーと水を10~30℃の範囲で混合する第2の混合工程、当該第2の混合工程で得られた混合物から分離する炭素数5~10のn-アルカン相を回収して炭素数5~10のn-アルカンを蒸発させ、マルテンを回収するマルテン回収工程、及び当該第2の混合工程で得られた混合物から分離する、アスファルテンが沈殿する水相からアスファルテンを分離するアスファルテン回収工程を含むことを特徴とするビチューメンからアスファルテン及びマルテンを分離する方法に関する。
前記第1の混合工程において、好ましくはビチューメン1g当たり5~60cmの範囲の炭素数5~10のn-アルカンを混合する。
前記超音波照射工程において、好ましくは20kHz~10MHzの範囲の超音波を、1~20分間の範囲で照射する。
前記第2の混合工程において、好ましくはビチューメン1g当たり5~100cmの範囲の水を混合する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ビチューメンからアスファルテン及びマルテンを室温で、短時間で分離できる方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ビチューメンとn―ペンタンのスラリー、及び撹拌処理後の沈殿したアスファルテンを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について更に詳細に説明する。
なお、数値範囲の「~」は、断りがなければ、以上から以下を表し、両端の数値をいずれも含む。また、数値範囲を示したときは、上限値および下限値を適宜組み合わせることができ、それにより得られた数値範囲も開示したものとする。
【0013】
本発明のビチューメンからアスファルテン及びマルテンを分離する方法は、ビチューメンと炭素数5~10のn-アルカンを混合する第1の混合工程を含む。前記第1の混合工程において、ビチューメン中のマルテンは炭素数5~10のn-アルカンに溶解する。前記ビチューメンは特定のビチューメンに限定されない。前記ビチューメンとして、オイルサンド由来のビチューメンが挙げられる。オイルサンドとは、油砂又はタールサンドとも呼ばれる天然資源であり、極めて粘性が高く半固形状ともいえる炭化水素(重質油)を含む砂岩である。前記オイルサンドは、特定のオイルサンドに限定されない。前記オイルサンドとして、カナダ産、ベネズエラ産、コンゴ産、マダガスカル産、日本産等のオイルサンドが挙げられる。カナダのアルバータ州のオイルサンドが多量に存在するから、当該アルバータ州産オイルサンドを好適に用いることができる。
【0014】
前記第1の混合工程において、好ましくはビチューメン1g当たり5~60cmの範囲の炭素数5~10のn-アルカンを混合する。炭素数5~10のn-アルカンの使用量が前記される範囲であると、ビチューメン中のマルテンの炭素数5~10のn-アルカンへの溶解性と、後述するマルテン回収工程におけるn-アルカンの蒸発に要するエネルギーのバランスが特に好適である。さらに第1の混合工程における混合温度は特定の範囲に限定されない。前記混合温度は、好ましくは10~30℃の範囲である。前記混合温度が前記範囲である場合、温度が高いほど、回収されるマルテンの純度がより高くなる。
前記n-アルカンは、好ましくは炭素数5~7のn-アルカンからなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、より好ましくはn-ペンタンを含み、更に好ましくはn-ペンタンである。
前記第2の混合工程において、混合手段は特定の混合手段に限定されない。前記混合手段として、撹拌機が挙げられる。攪拌速度は、好ましくは100~2000rpmであり、より好ましくは200~1000rpmであり、更に好ましくは300~800rpmである。前記撹拌速度が前記範囲である場合、アスファルテンと水相の接触頻度が高くなるため、アスファルテンの沈殿が起こりやすくなる。また、アスファルテンと水相が適度に撹拌され、水相に移動したアスファルテンが再度アルカン相に戻る機会が増えず、水相におけるアスファルテンの沈殿量が多くなる、すなわち分離が易しくなる。
【0015】
本発明のビチューメンからアスファルテン及びマルテンを分離する方法は、前記第1の混合工程で得られた混合物に、10~30℃の範囲で超音波を照射する超音波照射工程を含む。前記超音波照射工程において、レジン粒子に被覆されたアスファルテン粒子が炭素数5~10のn-アルカン中に分散すると考えられ(A. Sanada. : Journal of the JAPT. 71 No 6, 2006)、更にビチューメン中のマルテンは炭素数5~10のn-アルカンに更に溶解する。前記超音波照射工程において照射される超音波の波長と照射時間は特定の範囲に限定されない。前記波長は、好ましくは20~600kHzの範囲であり、より好ましくは10KHz~10MHzである。周波数が異なる超音波を時系列で照射してもよい。最初に照射する超音波の周波数より高い超音波を、当該最初の超音波照射後に照射する場合、アスファルテン粒子塊のサイズが微細化され、撹拌においてアスファルテンと水相との接触面積が増加するため、アスファルテンの相移動が起こりやすくなり、回収されるマルテンの純度がより向上する。ビチューメンが溶解したアルカンの粘度が十分低い場合、スラリーに最初から高い周波数の超音波を照射してもよく、上記される理由と同様の理由で、回収されるマルテンの純度が向上する。この場合は数百kHzの超音波が適している。さらに前記照射時間は、好ましくは1~20分間の範囲である。前記波長及び照射時間が前記される範囲であると、ビチューメンからアスファルテン及びマルテンを高い回収率で、短時間で分離できる。
【0016】
本発明のビチューメンからアスファルテン及びマルテンを分離する方法は、前記超音波照射工程で得られたスラリーと水を10~30℃の範囲で混合する第2の混合工程を含む。前記第2の混合工程において、炭素数5~10のn-アルカンに分散されていた、極性が強いアスファルテンは水相に移動する。前記第2の混合工程において、ビチューメン1g当たり好ましくは5~100cm、より好ましくは30~80cm、更に好ましくは50~60cmの範囲の水を混合する。水の使用量が前記される範囲であれば、ビチューメン中のアスファルテンはより高い効率で水相に移動する。さらに前記第2の混合工程における混合時間は、好ましくは5分~12時間、より好ましく10分~6時間、更に好ましくは20分~1時間である。
前記超音波照射工程で得られたスラリーと混合される水として、例えばイオン交換水、蒸留水、水道水、純水等が挙げられる。
【0017】
本発明のビチューメンからアスファルテン及びマルテンを分離する方法は、前記第2の混合工程で得られた混合物から分離する炭素数5~10のn-アルカン相を回収して炭素数5~10のn-アルカンを蒸発させ、マルテンを回収するマルテン回収工程を含む。前記第2混合工程前に、混合物を静置しなくてもよいが、静置してもよい。静置時間は、好ましくは12時間以下、より好ましく6時間以下、更に好ましくは1時間以下である。
【0018】
本発明のビチューメンからアスファルテン及びマルテンを分離する方法は、前記第2の混合工程で得られた混合物から分離する、アスファルテンが沈殿する水層からアスファルテンを分離するアスファルテン回収工程を含む。水層からアスファルテンを分離する方法として、濾過等の固液分離法が挙げられる。
【実施例0019】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
[実施例1]
(マルテンの分離)
1gのビチューメンと20cmのn-ペンタンを混合し、得られた20℃の混合物に、多周波超音波発生装置(株式会社カイジョー製TA-4021型)を用いて28KHzの超音波を10分間照射し、スラリーを調製した(図1の1)。前記スラリーに20cmの水を添加後、20℃で30分間静置し、次いで20℃、500rpmの条件で、スターラーで30分間攪拌すると、上側にn-ペンタン相、下側に水相が分離した。マルテン(図1の3)が分散している前記n-ペンタン相を40℃で加熱して溶媒のn-ペンタンを蒸発させ、マルテンを分離した。一方、前記水相に沈殿していたアスファルテン(図1の2)を50cmのテトラヒドロフランに溶解させ、回収した。前記マルテンをn―ペンタン50cmに溶解させ、粒子保持能が2.5μmのろ紙とブフナー漏斗を用いて吸引ろ過を行った。ろ液が透明になるまで前記ろ紙上の澱物をn―ペンタンで洗浄し、前記ろ紙ごと前記澱物を乾燥させ、アスファルテンを得た。次いで、前記ろ液を40℃に加熱し、n-ペンタンを蒸発させ、マルテンを得た。回収したマルテン、及びその中に残存していたアスファルテンの質量測定結果を表1に示す。
【0021】
[実施例2]
(静置および撹拌処理時における温度の影響)
静置および撹拌処理温度を25℃に変更した以外、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0022】
[実施例3]
(静置および撹拌処理時における温度の影響)
静置および撹拌処理温度を30℃に変更した以外、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0023】
[実施例4]
(撹拌速度の影響)
撹拌速度を200rpmに変更した以外、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0024】
[実施例5]
(水の添加量の影響)
添加する水の量を60cmに変更した以外、実施例3と同様の操作を行った。結果を表1に示す。マルテン回収量が減ったのは、アスファルテンが水相に移動しやすくなったため、マルテンとアスファルテンが十分に分離していないものも、水相に移動したことが原因と考えられる。
【0025】
[実施例6]
(n―ペンタンの添加量の影響)
n―ペンタン添加量を40cmに変更した以外、実施例5と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0026】
[実施例7]
(超音波照射時の処理温度の影響)
超音波照射時の温度を30℃に変更した以外、実施例5と同様の操作を行った。結果を表1に示す。マルテン回収量が高く、アスファルテン含有量が少ない純度の高いマルテンが得られた。温度を30℃としたことでマルテンが溶解したnーペンタン溶液の粘度が低下し、アスファルテンと分離しやすい状態のところに超音波を照射したことで、アスファルテンがマルテンと十分に分離した後に水相に移動したと考えられる。
【0027】
[実施例8]
(超音波の周波数変化の影響)
照射する超音波の周波数を200kHzに変更した以外、実施例5と同様の操作を行った。結果を表1に示す。実施例5と比較して、マルテン回収量が高く、アスファルテン含有量は同等のマルテンが得られた。200kHzの高い周波数の超音波を照射することで、溶液中のアスファルテン粒子塊をより微細化することができ、第2工程において水との撹拌において、マルテンとよく分離されたアスファルテンが水相に移動し、マルテンがn―ペンタン相に残存したことがわかる。
【0028】
[実施例9]
(周波数が異なる超音波の組み合わせの影響)
1gのビチューメンと20cmのn-ペンタンの混合物に、多周波超音波発生装置(株式会社カイジョー製TA-4021型)を用いて20℃で28KHzの超音波を10分間照射した後、200kHzの超音波を10分間照射し、スラリーを調製した。前記スラリーに60cmの水を添加後、30℃で30分間静置した後、30℃、500rpmの条件で、スターラーにて30分間攪拌すると、上側にn-ペンタン相、下側に水相が分離した。前記n-ペンタン相を40℃に加熱して溶媒のn-ペンタンを蒸発させ、マルテンを分離した。一方、前記水相に沈殿していたアスファルテンを50cmのテトラヒドロフランに溶解させたのち回収した。結果を表1に示す。
周波数の高い超音波を低い超音波照射後に利用することで、n-ペンタン層のアスファルテン粒子塊がより小さくなったと考えられる。そのため、第2工程で、水を添加後に撹拌することで、回収されるマルテンの純度と、回収率が向上することがわかった。
【0029】
[参考例1]
ビチューメン1gとn-ペンタン40cmを30℃で12時間、500rpmで撹拌し、得られた混合物を粒子保持能が2.5μmのろ紙とブフナー漏斗を用いて吸引ろ過を行った。前記ろ液が透明になるまで前記ろ紙上の澱物をn-ペンタンで洗浄し、前記ろ紙ごと澱物を乾燥させ、純粋なアスファルテンを得た。ろ液を40℃で加熱し、n-ペンタンを蒸発させ、純粋なマルテンとして回収した。この結果から、本実施例で使用したビチューメン中にはマルテン79.98質量%とアスファルテン20.02質量%が含まれることが分かった。
【0030】
[比較例1]
(超音波照射の影響)
超音波照射を500rpmの撹拌に変更した以外、実施例1と同様の操作を行った。その結果、ビチューメンがn-ペンタンにうまく分散せず、スラリーを得ることができなかったため、第2工程のイオン交換水との混合を行うことができなかった。すなわち、ビチューメンとn―ペンタンのスラリーを短時間で得るには超音波照射が必要である。
【表1】
【0031】
超音波照射工程を含まない比較例1のビチューメンからアスファルテン及びマルテンを分離する方法のアスファルテン回収率は低かった。一方、所定の全ての工程を含む実施例1~9のアスファルテン及びマルテンを分離する方法のアスファルテン回収率は高かった。
【符号の説明】
【0032】
1・・・n-ペンタンとビチューメンのスラリー、 2・・・アスファルテン、
3・・・n-ペンタンに分散したマルテン。
図1