(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036295
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】洗浄用物品
(51)【国際特許分類】
C11D 17/04 20060101AFI20240308BHJP
C11D 1/75 20060101ALI20240308BHJP
C11D 1/68 20060101ALI20240308BHJP
C11D 1/90 20060101ALI20240308BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20240308BHJP
C11D 3/43 20060101ALI20240308BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20240308BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C11D17/04
C11D1/75
C11D1/68
C11D1/90
C11D3/37
C11D3/43
B65D83/00 G
B08B3/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136706
(22)【出願日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2022140867
(32)【優先日】2022-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】土屋 聖人
(72)【発明者】
【氏名】野田 恵
(72)【発明者】
【氏名】千葉 雅史
【テーマコード(参考)】
3B201
3E014
4H003
【Fターム(参考)】
3B201AB52
3B201BB21
3B201BB94
3E014PA01
3E014PB04
3E014PC03
3E014PD12
3E014PE06
3E014PE14
4H003AC03
4H003AC05
4H003AC15
4H003AC17
4H003AD04
4H003AE05
4H003BA12
4H003BA20
4H003BA21
4H003DA05
4H003DA06
4H003DA08
4H003DA17
4H003DB02
4H003EA12
4H003EB04
4H003EB06
4H003EB16
4H003EB28
4H003EB30
4H003EB33
4H003EB42
4H003ED02
4H003ED28
4H003ED29
4H003FA04
4H003FA18
(57)【要約】
【課題】簡便で効率良く洗浄対象表面を洗浄でき、満足の行く洗浄効果を有する洗浄用物品を提供する。
【解決手段】蓄圧式トリガースプレー容器と、該スプレー容器内に収容された液体洗浄剤組成物と、を有する洗浄用物品であって、前記スプレー容器は、前記液体洗浄剤組成物を泡にしてスプレー可能であり、スプレーされた泡の泡比容が15mL/g以上、かつ、前記スプレー容器から0.5秒/ストロークでスプレーされた泡の泡比容に対する、前記スプレー容器から0.2秒/ストロークでスプレーされた泡の泡比容の割合が、0.5以上2.0未満である、洗浄用物品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄圧式トリガースプレー容器と、該スプレー容器内に収容された液体洗浄剤組成物と、を有する洗浄用物品であって、前記スプレー容器は、前記液体洗浄剤組成物を泡にしてスプレー可能であり、スプレーされた泡の泡比容が15mL/g以上、かつ、前記スプレー容器から0.5秒/ストロークでスプレーされた泡の泡比容に対する、前記スプレー容器から0.2秒/ストロークでスプレーされた泡の泡比容の割合が、0.5以上2.0未満である、洗浄用物品。
【請求項2】
硬質表面洗浄用である、請求項1に記載の洗浄用物品。
【請求項3】
キッチン、トイレ、バス及びリビングから選ばれる1以上に備えられる物品の硬質表面を洗浄する、請求項1又は2に記載の洗浄用物品。
【請求項4】
前記液体洗浄剤組成物は、アミンオキシド型界面活性剤及びベタイン型界面活性剤から選ばれる1種以上を含有する、請求項1~3の何れか1項に記載の洗浄用物品。
【請求項5】
前記液体洗浄剤組成物は、アルキル(ポリ)グルコシド及びアルキル(ポリ)グリセリルエーテルから選ばれる1種以上を含有する、請求項1~4の何れか1項に記載の洗浄用物品。
【請求項6】
前記液体洗浄剤組成物は、(c)親水性ポリマーを含有する、請求項1~5の何れか1項に記載の洗浄用物品。
【請求項7】
前記液体洗浄剤組成物は、(d)炭素数3以上10以下のアルコール及び炭素数2以上14以下のグリコール系化合物から選ばれる1種以上の水溶性溶剤を含有する、請求項1~6の何れか1項に記載の洗浄用物品。
【請求項8】
蓄圧式トリガースプレー容器は、前記液体洗浄剤組成物を連続噴射可能である、請求項1~7の何れか1項に記載の洗浄用物品。
【請求項9】
前記蓄圧式トリガースプレー容器は、該スプレー容器の前記液体洗浄剤組成物の噴出孔に、当該液体洗浄剤組成物に起泡性を付与するチップを備える、請求項8に記載の洗浄用物品。
【請求項10】
前記液体洗浄剤組成物は、下記の(a)成分、(c)成分及び(d)成分を含有し、(c)成分の重量平均分子量が100,000以上2,000,000以下、該組成物中、(c)成分の含有量と(a)成分の含有量の質量比(c)/(a)が0.005以上1以下、(d)成分の含有量と(a)成分の含有量の質量比(d)/(a)が0.5以上2.5以下である、請求項1~9の何れか1項に記載の洗浄用物品。
(a)成分:両性界面活性剤
(c)成分:親水性ポリマー
(d)成分:炭素数3以上10以下のアルコール及び炭素数2以上14以下のグリコール系化合物から選ばれる1種以上の水溶性溶剤
【請求項11】
蓄圧式トリガースプレー容器は、前記液体洗浄剤組成物を連続噴射可能であり、該スプレー容器の前記液体洗浄剤組成物の噴出孔に、当該液体洗浄剤組成物に起泡性を付与するチップを備え、
前記液体洗浄剤組成物は、下記の(a)成分及び(d)成分を含有する、請求項1~9の何れか1項に記載の洗浄用物品。
(a)成分:両性界面活性剤
(d)成分:炭素数3以上10以下のアルコール及び炭素数2以上14以下のグリコール系化合物から選ばれる1種以上の水溶性溶剤
【請求項12】
請求項1~11の何れか1項に記載の洗浄用物品を用いてスプレーされた泡と、洗浄対象表面とを接触させる、洗浄対象表面の洗浄方法。
【請求項13】
前記蓄圧式トリガースプレーから5回連続でトリガーを引いた時の泡が洗浄対象表面を覆う範囲が、500cm2以上である、請求項12に記載の洗浄対象表面の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄用物品及び洗浄対象表面の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食器や野菜等の洗浄に使用するシンク内やカウンタートップ、ガスレンジ等のキッチンまわりにはケイ素やカルシウムを主成分とした無機質汚れ、調理時や食器類からの油汚れ及びそれらの複合汚れが付着している。特に調理機器周辺に生じる汚れは、調理由来の油を中心とする汚れであり、熱源が近いことから油が変質し易く、非常に除去することが困難である。
従来、このような汚れに対しては研磨剤を配合した粉末又は液体クレンザーや強アルカリ性の洗浄剤等が用いられている。しかしながら、前者の場合は汚れに対して優れた洗浄性を発揮するものの、ゴシゴシと擦る労力や、すすぎ及び拭き取りが必要になる煩雑性が課題であり、また後者では無機質汚れに対する洗浄力不足やアルカリによる手荒れなどの課題があった。
また、キッチン、トイレ、バス、リビングなどの洗浄には、洗浄剤組成物を噴霧可能なトリガー式のスプレー容器が使用されており、洗浄対象物からの液だれの防止や洗浄対象物上に滞留する時間を延ばして洗浄効果を高める等の観点から、泡吐出型のトリガーが普及している。
【0003】
特許文献1には、トリガー式のスプレー容器と、該スプレー容器内に収容されている液体洗浄剤組成物からなり、スプレー容器は、液体洗浄剤組成物を泡にしてスプレー可能であり、スプレーされた泡の泡比容が15mL/g以上である、硬質表面洗浄用物品が開示されている。
特許文献2には、蓄圧式泡状吐出トリガースプレー容器内に液体洗浄剤組成物が収容された洗浄用物品であって、トリガーを引く速度を6g/s以上18g/s以下としてスプレーしたときの泡の1分後の泡比容が15mL/g以上45mL/g以下であり、かつ、トリガーを引く速度を21g/s以上45g/s以下としてスプレーしたときの泡の1分後の泡比容が10mL/g以下である、洗浄用物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-214464号公報
【特許文献2】特開2021-105076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、家事の簡便化や時間短縮を最優先に捉え、清浄性の維持に手間暇をかけないことが若年層を中心に望まれている。また、高齢者の単身世帯も増加し、家事の労力が大きな負担となっている。
この様な社会環境の変化を捉え、簡便で効率良く硬質表面等の洗浄対象を洗浄でき、満足の行く洗浄効果を有する洗浄用物品及び洗浄対象表面の洗浄方法が求められている。
本発明は、簡便で効率良く洗浄対象表面を洗浄でき、満足の行く洗浄効果を有する洗浄用物品及び洗浄対象表面の洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、蓄圧式トリガースプレー容器と、該スプレー容器内に収容された液体洗浄剤組成物と、を有する洗浄用物品であって、前記スプレー容器は、前記液体洗浄剤組成物を泡にしてスプレー可能であり、スプレーされた泡の泡比容が15mL/g以上、かつ、前記スプレー容器から0.5秒/ストロークでスプレーされた泡の泡比容に対する、前記スプレー容器から0.2秒/ストロークでスプレーされた泡の泡比容の割合が、0.5以上2.0未満である、洗浄用物品に関する。
【0007】
また、本発明は、上記の洗浄用物品を用いてスプレーされた泡と、洗浄対象表面とを接触させる、洗浄対象表面の洗浄方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡便で効率良く洗浄対象表面を洗浄でき、満足の行く洗浄効果を有する洗浄用物品及び洗浄対象表面の洗浄方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の洗浄用物品の一実施形態におけるスプレー容器の要部を示す側断面図である。
【
図2】
図1に示すスプレー容器のスピンエレメントをその先端側から視た状態を示す図である。スピンエレメントの先端は、スピンエレメントの軸方向の両端のうち、泡を突出するノズル部に近い側である。
【
図3】本発明の洗浄用物品の他の実施形態におけるスプレー容器の要部を示す側断面図である。
【
図4】スプレー容器の噴射孔に設けられる起泡筒を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の洗浄用物品は、トリガー式のスプレー容器から液体洗浄剤組成物をスプレーする際に、トリガーを引く速度に依存せずに、常に良好な泡を形成することができる。
本発明の洗浄用物品は、当該物品の使用者によってトリガーの引く速度が異なった場合でも、十分な起泡性を得ることができ、使用感や泡洗浄性に優れると推察される。
【0011】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明する。
本実施形態の洗浄用物品は、トリガー式のスプレー容器1と、スプレー容器内に収容されている液体洗浄剤組成物(図示せず)とを含む。
本発明に用いるスプレー容器は、トリガー式のスプレー容器である。トリガー式のスプレー容器は、
図1に示すスプレー容器1のように、液体洗浄剤組成物である液状物が充填された有底の容器本体2の口部に、前記液状物を噴出するトリガー式のスプレイヤー3が装着された構成を有するものであり、一般に、トリガー4を引いて、シリンダー9内の空気を外に排出し、トリガー4を戻した際に液状物内に浸したチューブ7を通じて前記液状物を吸い上げ、シリンダー9内に該液状物を満たし、再びトリガー4を引くことにより、シリンダー9内の液状物を押し出して垂直管路6に導き、更に水平管路8、スピンエレメント10を通じて液状物の流れにスピンを与え、その液状物が、ノズル部11から噴射される。
【0012】
本実施形態に用いたスプレー容器のより具体的な構成について、
図1を参照しつつ説明すると、スプレー容器1は、液状物が充填された有底の容器本体2の口部に、液状物を噴出するトリガー式のスプレイヤー3が、螺合等により脱着可能又は脱着不可能に装着された構成を有している。スプレイヤー3は、トリガー4を引いて容器本体2内に充填された液状物を噴出するスプレイヤー本体5を主体として構成されており、このスプレイヤー本体5内には、垂直管路6、及び該垂直管路6に連通する水平管路8が形成されている。水平管路8の下方位置には、シリンダー9を構成する筒状壁部91が形成されていると共に、このシリンダー9内を摺動するピストン部材92が配設されている。そして、ピストン部材92を押圧するトリガー4が、スプレイヤー本体5の側壁部に回動自在に嵌着されている。
図1中に一点鎖線で示す小円41は、スプレイヤー本体5の側壁部に設けられたトリガー4の回動軸の位置を示す。またトリガー4は、板バネ、コイルばね等の付勢手段(図示せず)により、容器本体2の口部から離れる方向に常時付勢されている。
本明細書において、上方及び下方は、スプレー容器1を水平面上に載置したときの鉛直方向の上方又は下方である。
【0013】
シリンダー9は、第1の逆止弁93及び第2の逆止弁94を有している。第1の逆止弁93は、チューブ7側の流路からの液状物の流入を許容する一方、トリガー4を引いた際の該流路への液状物の逆戻りを阻止し、第2の逆止弁94は、水平管路8側の流路への液状物の流出を許容する一方、トリガー4を戻した際の該流路からの液状物の逆戻りを阻止する。
スピンエレメント10は、円柱状をなし、
図2に示すように、周囲にその軸方向に延びる複数本の溝部10aを有している。ノズル部11側に配された先端部に、円柱状の凹部10b及び該凹部10bと各溝部10aとの間を繋ぐ溝部10cを有している。溝部10cが、凹部10bの中央からずれた場所に接続されていることによって、凹部10b内の液状物の流れにスピンが与えられ、スピンが与えられた液状物が、スピンエレメント10の先端部に近接配置された噴射口形成部材11aに設けられた噴射口11bから円錐状に噴射される。噴射口形成部材11aは、その先端部に取り付けられたフォーマー部材11cとともにノズル部11を形成している。フォーマー部材11cと噴射口形成部材11aとの間には、円錐状に噴射される液状物の裏側に内側開口部を有し、噴射口形成部材11aの先端に外側開口部を有する空気取り込み用の孔又は溝11dが形成されている。この空気取り込み用の孔又は溝11dを介して取り込まれる空気が円錐状に噴射される液状物と混合されることにより、液状物としての液体洗浄剤組成物が泡となって泡吐出口11eから噴射される。
【0014】
図1に示すスプレー容器1のスプレイヤー3は、蓄圧式のスプレイヤーである。蓄圧式のスプレイヤーとは、トリガー4を操作しても、シリンダー9内の液圧が所定の液圧に達するまではノズル部11からの液状物の噴射は生じず、シリンダー9内の液圧が所定の液圧以上に高めたときに、液状物が噴射されるように構成したものである。
図1に示すスプレイヤー3は、シリンダー9内の圧力が所定の液圧以上に高められたときに初めて噴射が生じるようにするために、蓄圧部材12を備えている。蓄圧部材12は、円筒状の内壁面を有するシリンダー13と、シリンダー13内に配され、シリンダー13の中心軸に沿って上下動する弁部材14とを有する。弁部材14は、コイルばね等の付勢手段15により常時上方に向けて付勢されており、トリガー4の非操作時には、
図1に示すように、弁部材14の上端に形成された栓体14aが、下流側流路への流出口13aを閉鎖している。栓体14aの下方には、外周部がシリンダー13の内壁面に摺接するプランジャー部14bが連設されており、プランジャー部14bの下面には、小径筒状部14cが連設されている。栓体14aの下端部には、小径筒状部14cから栓体14aの周囲へと流れる液の流路14a’が形成されている。
【0015】
シリンダー9内に液状物が満たされている状態で、トリガー4を操作すると、第1の逆止弁93が閉状態、第2の逆止弁94が開状態となって、シリンダー9内の液状物が、液入口13bから蓄圧部材12内に送り込まれる。それにより、シリンダー13内に存在する液状物の液圧が上昇する。プランジャー部14bの上面の面積は、栓体14aの下面の面積より広くなっており、その面積差に起因し、液状物の液圧は、弁部材14を押し下げる力として作用する。引き続きトリガー4を引く操作を継続すると、シリンダー9及びシリンダー13内の液圧は更に高まり、弁部材14を押し下げる力が、付勢手段15の押し上げる力より大きくなる。それにより、弁部材14が下降し、栓体14aにより閉鎖されていた流出口13aが開放され、ノズル部11から、液状物が吐出される。
他方、トリガー4を最終位置まで引き終わると、シリンダー9及びシリンダー13内の液圧が低下し、弁部材14を押し下げる力が、付勢手段15の押し上げる力より小さくなることにより、弁部材14が上昇し、栓体14aにより流出口13aが再び閉鎖される。
【0016】
本発明の洗浄用物品は、液体洗浄剤組成物を泡にしてスプレー可能であり、スプレーされた泡の泡比容が15mL/g以上であることが一つの特長である。スプレーされた泡の泡比容は、例えば、スプレー容器から0.5秒/ストロークでスプレーされた1分後の泡の泡比容であってよい。また、スプレーされた泡の泡比容は、例えば、スプレー容器から0.5秒/ストロークでスプレーされた1分後の泡の泡比容と、スプレー容器から0.2秒/ストロークでスプレーされた1分後の泡の泡比容の両方であってよい。
本発明の洗浄用物品によりスプレーされた泡の泡比容は、0.5秒/ストローク及び0.2秒/ストロークから選ばれる1以上の条件でスプレーされた1分後の泡の泡比容が15mL/g以上であることが好ましく、0.5秒/ストロークでスプレーされた1分後の泡の泡比容と0.2秒/ストロークでスプレーされた1分後の泡の泡比容の両方が15mL/g以上であることがより好ましい。以下、特に断りがない限り、本発明の洗浄用物品によりスプレーされた泡の泡比容について同じである。
【0017】
液体洗浄剤組成物を泡にしてスプレーしたときに、スプレーされた泡の泡比容が、15mL/g以上であることによって、洗浄対象表面に付着した汚れ、とりわけ油汚れに対する洗浄力が向上する。広範囲にスプレーできる簡便性の観点から、スプレーされた泡の泡比容は、好ましくは20mL/g以上、より好ましくは25mL/g以上であり、そして、スプレー後に洗浄対象表面に付着させた泡のふきとり易さや水を用いた濯ぎ易さに関する簡便性の観点から、スプレーされた泡の泡比容は、好ましくは80mL/g以下、より好ましくは60mL/g以下である。油汚れに対する洗浄力及び斯かる簡便性の観点から、スプレーされた泡の泡比容は、好ましくは15mL/g以上80mL/g以下、より好ましくは20mL/g以上60mL/g以下、更に好ましくは25mL/g以上60mL/g以下である。
スプレーされた泡の泡比容の測定方法は、実施例において後述する。
【0018】
また、本発明の洗浄用物品は、スプレー容器から0.5秒/ストロークでスプレーされた泡の泡比容に対する、スプレー容器から0.2秒/ストロークでスプレーされた泡の泡比容の割合が、0.5以上2.0未満である、ことが一つの特徴である。この泡比容の割合を、トリガーの引く速度を変えてスプレーした際の泡比容の変化率ともいう。これらスプレーされた泡の泡比容は、スプレー容器からスプレーした後1分後の泡比容であってよい。
前記の泡比容の割合が0.5以上2.0未満であることによって、トリガーを引く速度に依存せずに、常に良好な泡を形成し、簡便性及び効率性が向上する。斯かる観点から、前記の泡比容の割合は、0.5以上、好ましくは0.55以上、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.65以上、そして、2.0未満、好ましくは1.85以下、より好ましくは1.7以下、更に好ましくは1.5以下である。
【0019】
液体洗浄剤組成物を泡にしてスプレーしたときに、スプレーされた泡の泡比容が15mL/g以上であることによって、洗浄対象表面に対する密着性が向上し、洗浄対象表面に付着した油汚れに対する洗浄力が向上する。
また、同じ液体洗浄剤組成物を使用した場合に比べて広範囲にスプレーでき、またスプレー回数を減らすことができることから、使用性が向上する。
【0020】
スプレーされた泡の泡比容を15mL/g以上とするには、トリガー式のスプレー容器として、蓄圧式のスプレイヤーを備えたスプレー容器を用いることが好ましい。蓄圧式のスプレイヤーを備えたスプレー容器としては、前述したスプレー容器1を用いることができるが、それに限られるものではなく、各種公知のものを用いることができる。例えば、特開平9-122547号公報、特開平9-308843号公報、特開平10-174911号公報に記載のもの等を用いることができる。公知の蓄圧式のスプレイヤーのうち、液状物を霧状にスプレーするものについては、ノズル部を、泡を吐出可能なノズル部に交換して用いる。泡を吐出可能なノズル部としては、前述したスプレー容器1のノズル部11、特開2004-290943号公報の
図1に記載のもの、特開2007-167719号公報の
図2に記載のもの等を用いることもできる。
また、蓄圧式のスプレイヤーを備えたスプレー容器は、広範囲の洗浄対象に対する操作性向上の観点から、容器に収容された液体洗浄剤組成物をトリガーを引く時に限らず連続噴射(液が途切れることなく噴射し続ける)が可能なものが好ましい。連続噴射可能な蓄圧式のスプレイヤーとは、繰り返しトリガーを引く動作を行ったとき、トリガーの動作に応じて(時間的には独立して)連続して液体洗浄剤組成物をスプレーできるスプレイヤーである。このような連続噴射可能な蓄圧式のスプレイヤーとしては、特開2014-166624の
図1や特開2017-213497の
図1に記載されたもの等を用いることができる。
【0021】
本発明の実施形態に係る連続噴射可能な蓄圧式のスプレー容器16を
図3に示す。なお、スプレー容器16の説明において、
図1に示したスプレー容器1と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
図3に示すように、連続噴射可能な蓄圧式のスプレー容器16は、容器本体2の口部に、前記液状物を連続噴射するトリガー式のスプレイヤー17が装着された構成を有する。
スプレイヤー17は、トリガー4と、トリガー4の引く動作に応じて加圧される主シリンダー18と、主シリンダー18内の液体が供給される縦供給筒部19と、縦供給筒部19と噴射孔20との間に設けられる射出筒部21と、射出筒部21を流通する液体が供給孔22を通して貯留可能な貯留シリンダー23と、を備える。噴射孔20には、発泡ノズル24が備えられる。発泡ノズル24の側壁には空気導入孔(図示せず)が形成されており、この空気導入孔から取り入れられた外気は、発泡ノズル24から噴出する洗浄剤を発泡させる空気として発泡ノズル24に流入される。
主シリンダー18は、トリガー4の動作に応じて前後方向に移動して主シリンダー内を加圧可能な主ピストン18aを備える。
貯留シリンダー23は、噴射孔20の軸心方向と平行に移動可能な貯留プランジャー23aと、噴射孔20における液体の噴射方向に貯留プランジャー23aを付勢する付勢手段23bと、を備える。また、貯留シリンダー23に連通孔23cが形成され、この連通孔23cを通じて貯留シリンダー23に貯留された液体が射出筒部21に移動可能となっている。
【0022】
スプレイヤー17は、トリガー4を後方に引くと、主ピストン18aが主シリンダー18内で前後方向に移動して主シリンダー18内が加圧され、主シリンダー18内の液体が連通筒部25内を通して縦供給筒部19内に供給される。この液体は、射出筒部21内を通じて噴射孔20から噴射される一方、供給孔22を通して貯留シリンダー23内にも貯留される。液体の貯留シリンダー23内への貯留に伴い、貯留シリンダー23内の貯留プランジャー23aが、前記軸方向の一方側に向けて移動する。このように、トリガー4を引く操作を行う毎に、液体を噴射孔20から噴射させつつ、貯留プランジャー23aを前記軸方向の一方側に移動させて貯留シリンダー23内に液体を溜める(充填する)ことができる。
そして、トリガー4を引く操作を止めると、縦供給筒部19内への液体の供給が停止するが、貯留プランジャー23aに作用する付勢力によって、貯留プランジャー23aが前記軸方向の他方側に向けて復元移動しはじめる。これにより、貯留シリンダー23内に充填した液体が、貯留シリンダー23内から連通孔23bおよび射出筒部21を通して噴出孔20側に向けて押し出されることで、液体を噴出孔20から引き続き噴射させることができる。したがって、トリガー4を後方に引く操作を行ったときだけでなく、トリガー4を操作しない場合であっても液体を噴射させることができ、液体の連続噴射を行うことができる。
なお、
図4に示すように、連続噴射可能な蓄圧式のスプレー容器26が、液状物を霧状にスプレーするものの場合、ノズル部27に、空気取込孔28aが形成された起泡筒28を備えることで、霧が起泡筒28に衝突し且つ空気を取り込むことで泡化することができる。このように、連続噴射可能な蓄圧式のスプレー容器26は、該容器26における液体の噴出孔20の開口端部に起泡筒28を備えることができる。起泡筒28は噴出孔20の開口端部と一体に又は着脱可能に備えられる。
【0023】
本発明の洗浄用物品に用いる液体洗浄剤組成物は、スプレー容器との組み合わせで、前述した泡の泡比容が15mL/g以上の泡をスプレーできる限り特に制限されるものではないが、泡比容が15mL/g以上の泡、あるいは前述したより好ましい泡比容の泡が形成されるようにする観点、及び/又は油汚れに対する液体洗浄剤組成物自体の洗浄力を増大させる観点から、以下の液体洗浄剤組成物を用いることが好ましい。以下の液体洗浄剤組成物は、泡比容が15mL/g以上であるか否かに拘わらずに、油汚れに対する洗浄力が高いが、泡比容や前記の泡比容の割合を特定の範囲とすることで洗浄対象表面、更には硬質表面に対する洗浄効果が一層向上する。
【0024】
本発明の洗浄用物品が、簡便で効率良く洗浄対象表面を洗浄でき、満足の行く洗浄効果を有する理由は必ずしも定かではないが以下のように推察される。
本発明の洗浄用物品の容器に収容される液体洗浄剤組成物が、(a)成分のような特定の界面活性剤及び(d)成分のような水溶性溶剤を組合せて含むことで、一定の加圧状態で良好な起泡性を発現する蓄圧式トリガーの長所を維持しつつも、更に(c)成分のような親水性ポリマーを併用することで、加圧速度の違いによる形成された泡の泡比容の影響を受け難くすることができたのではなないかと考える。具体的には、極短時間における気液混合時の泡立ち(速泡性)が関係している可能性がある。
なお、本発明の液体洗浄剤組成物及び洗浄対象表面の洗浄方法は、上記の作用機構になんら限定されるものではない。
【0025】
本発明の洗浄用物品に用いる液体洗浄剤組成物〔以下、本発明の液体洗浄剤組成物という〕は、界面活性剤、水溶性溶剤及び水を含有することができる。泡比容を調整する観点から、液体洗浄剤組成物は、両性界面活性剤を含有することが好ましい。両性界面活性剤としては、アミンオキシド型両性界面活性剤及びベタイン型両性界面活性剤から選ばれる1種以上の両性界面活性剤、更には、アミンオキシド、スルホベタイン及びカルボキシベタインから選ばれる1種以上の両性界面活性剤が挙げられる。
また、洗浄力を高める観点から、界面活性剤にノニオン界面活性剤を含むことが好ましい。
また、泡比容を調整する観点から、界面活性剤は、アニオン界面活性剤を含むことが好ましい。アニオン界面活性剤は、分岐鎖炭化水素基を有するアニオン界面活性剤であることがより好ましい。
本発明の液体洗浄剤組成物は、トリガーの引く速度の影響を受けずに、良好な泡比容を達成する観点から、アミンオキシド、スルホベタイン、カルボキシベタイン、アルキル(ポリ)グルコシド、アルキル(ポリ)グリセリルエーテルから選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
また、本発明の液体洗浄剤組成物は、トリガーの引く速度の影響を受けずに、良好な泡比容を達成する観点から、下記(d)成分として詳細に説明する所定の水溶性溶剤を含有することが好ましい。この水溶性溶剤としては、例えば、炭素数3以上10以下のアルコール及び炭素数2以上14以下のグリコール系溶剤から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、本発明に用いる液体洗浄剤組成物は、次に説明する硬質表面用液体洗浄剤組成物に関する(a)~(h)成分の中から選択される1又は2以上の成分を含んでいても良く、配合量も後述する各成分の配合量とすることもできる。
【0026】
本発明に用いる液体洗浄剤組成物は、下記の(a)成分及び(d)成分を含有する液体洗浄剤組成物であってよい。
また、本発明に用いる液体洗浄剤組成物は、下記の(a)成分、(c)成分及び(d)成分を含有する液体洗浄剤組成物であってよい。
【0027】
本発明の洗浄用物品に用いる液体洗浄剤組成物としては、以下に示す「硬質表面用液体洗浄剤組成物」を用いることが好ましい。硬質表面用液体洗浄剤組成物は、特に油汚れに対する洗浄力に優れている。
【0028】
<硬質表面用液体洗浄剤組成物>
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(a)両性界面活性剤〔以下、(a)成分という〕、(b)殺菌剤〔以下、(b)成分という〕、(c)親水性ポリマー〔以下、(c)成分という〕、(d)水溶性溶剤、及び水を含有する。
【0029】
<(a)成分>
(a)成分は、両性界面活性剤である。両性界面活性剤としては、トリガーの引く速度の影響を受けずに、良好な泡比容を達成する観点から、アミンオキシド型両性界面活性剤及びベタイン型両性界面活性剤から選ばれる1種以上の両性界面活性剤が好ましく、アミンオキシド、スルホベタイン及びカルボキシベタインから選ばれる1種以上の両性界面活性剤がより好ましく、アミンオキシド及びカルボキシベタインから選ばれる1種以上の両性界面活性剤が更に好ましい。
【0030】
アミンオキシドとしては、下記一般式(a1)で表される化合物〔以下、(a1)成分という〕が好適である。
【0031】
【0032】
〔式中、R1aは炭素数6以上22以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基を示し、R2a及びR3aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。Dは-NHC(=O)-基又は-C(=O)NH-基を示し、Eは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。q及びpは、q=0かつp=0又はq=1かつp=1を示す。〕
【0033】
上記一般式(a1)において、q=1かつp=1の場合には、R1aは、洗浄力及び起泡性の観点から、好ましくは炭素数7以上、より好ましくは9以上、そして、好ましくは21以下、より好ましくは17以下、更に好ましくは15以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基である。
またq=0かつp=0の場合には、R1aは、洗浄力の観点から、好ましくは炭素数8以上、より好ましくは10以上、そして、22以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基である。
本発明ではq=0かつp=0が好ましい。R2a及びR3aは、洗浄力の観点から、好ましくは炭素数1のメチル基である。
【0034】
(a1)成分の好ましい具体例としては、
(1)アルキル(炭素数6以上22以下)ジアルキル(炭素数1以上3以下)アミンオキシド:カプリルジメチルアミンオキシド、カプリンジメチルアミンオキシド、ラウリルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、パルミチルジメチルアミンオキシド、ステアリルジメチルアミンオキシド等、
(2)アミド基含有型アミンオキシド(一般式(a1)中、q=1かつp=1の化合物):カプリル酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、カプリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、ミリスチン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、パルミチン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド等
が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。
洗浄力及びトリガーの引く速度による起泡性の影響を低減する観点から(1)アルキル(炭素数6以上22以下)ジアルキル(炭素数1以上3以下)アミンオキシドがより好ましい。
【0035】
ベタイン型両性界面活性剤としては、下記一般式(a2)で表される化合物が好ましい。
【0036】
【0037】
〔式中、R4aは炭素数7以上18以下のアルキル基又はアルケニル基であり、R5aは炭素数1以上6以下のアルキレン基である。Aは-COO-、-CONH-、-OCO-、-NHCO-、-O-から選ばれる基であり、rは0又は1の数である。R6a、R7aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R8aはヒドロキシ基で置換していてもよい炭素数1以上5以下のアルキレン基である。Bは、-SO3
-、-OSO3
-、-COO-から選ばれる基である。〕
【0038】
一般式(a2)において、R4aは、低基材損傷性の観点から、炭素数7以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下のアルキル基又はアルケニル基、好ましくはアルキル基である。
Aは、低基材損傷性の観点から、好ましくは-COO-又は-CONH-であり、より好ましくは-CONH-である。
R5aの炭素数は好ましくは2又は3である。
R6a、R7aは好ましくはメチル基である。
Bは、低基材損傷性の観点から、好ましくは-SO3
-又は-COO-であり、より好ましくは-COO-である。
rは、Bが-SO3
-のときは、好ましくは0であり、Bが-COO-のときは、好ましくは1である。
R8aの炭素数は、Bが-SO3
-のときは、好ましくは3であり、Bが-COO-のときは、好ましくは1である。
【0039】
ベタイン型両性界面活性剤としては、具体的には、アルキルカルボキシベタイン、アルキルアミドカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン、及びアルキルアミノ脂肪酸塩から選ばれる1種以上が挙げられ、低基材損傷性の観点から、好ましくはアルキルアミドプロピル-N,N-ジメチルカルボキシベタイン、アルキル-N,N-ジメチル酢酸ベタイン、N-アルキル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、アルキル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、N-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、及びN-アルキル-N,N-ジメチル-N-カルボキシメチルアンモニウムベタインから選ばれる1種以上であり、より好ましくはアルキルアミドプロピル-N,N-ジメチルカルボキシベタイン及びアルキル-N,N-ジメチル酢酸ベタインから選ばれる1種以上である。これらのアルキル基は炭素数7以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
【0040】
<(b)成分>
(b)成分は、殺菌剤である。(b)成分は、カチオン界面活性剤、エタノール及び芳香族アルコ―ルから選ばれる1種以上が好ましい。カチオン界面活性剤としては、4級アンモニウム塩型界面活性剤が挙げられる。
【0041】
(b)成分の4級アンモニウム塩型界面活性剤としては、下記一般式(b1)で表される化合物、及び下記一般式(b2)で表される化合物から選ばれる1種以上が好ましい。
【0042】
【0043】
〔式中、R1b及びR2bから選ばれる少なくとも一つは、炭素数8以上18以下のアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基を示し、残余は、炭素数1以上3以下のアルキル基、ヒドロキシアルキル基又は平均付加モル数10以下のポリオキシエチレン基を示し、R3b及びR4bは、同一又は異なって、それぞれ、炭素数1以上3以下のアルキル基、ヒドロキシアルキル基又は平均付加モル数10以下のポリオキシエチレン基を示し、X-は陰イオンである。〕
【0044】
【0045】
〔式中、R5bは、炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基であり、R6b及びR7bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、X-は陰イオンである。〕
【0046】
一般式(b1)において、モノ長鎖アルキル型第4級アンモニウム塩である場合、好ましくは、R1bは、炭素数8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは14以上、そして、18以下、好ましくは16以下のアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基であり、R2b、R3b及びR4bは、同一又は異なって、それぞれ、炭素数1以上3以下のアルキル基、ヒドロキシアルキル基又は平均付加モル数10以下のポリオキシエチレン基である。
一般式(b1)において、ジ長鎖アルキル型第4級アンモニウム塩である場合、好ましくは、R1b及びR2bは、同一又は異なって、それぞれ、炭素数8以上、そして、16以下、好ましくは14以下のアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基であり、R3b及びR4bは、同一又は異なって、それぞれ、炭素数1以上3以下のアルキル基、ヒドロキシアルキル基又は平均付加モル数10以下のポリオキシエチレン基である。
【0047】
一般式(b1)において、X-は陰イオンである。陰イオンとしては、ハロゲンイオン、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオンが挙げられる。また、X-の陰イオンとしては、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、例えばメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン及びプロピル硫酸イオンが挙げられる。
【0048】
一般式(b1)の化合物の好ましい化合物としては、アルキル基の炭素数が12以上18以下であるN-アルキル-N,N,N-トリメチルアンモニウム塩、アルキル基の炭素数が8以上14以下であるN,N-ジアルキル-N,N-ジメチル-アンモニウム塩、及びアルキル基の炭素数が12以上16以下であるN-アルキル-N,N-ジメチル-N-エチルアンモニウム塩から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0049】
一般式(b2)において、R5bは、炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基である。R5bの炭素数は、洗浄力の観点から、好ましくは8以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下である。R5bは、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基が好ましい。
【0050】
一般式(b2)において、R6b及びR7bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である。R6b及びR7bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基から選ばれる基であることが好ましい。炭素数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基が挙げられる。
【0051】
一般式(b2)において、X-は陰イオンである。陰イオンとしては、ハロゲンイオン、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオンが挙げられる。また、X-の陰イオンとしては、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、例えば、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン及びプロピル硫酸イオンが挙げられる。
【0052】
一般式(b2)の化合物の具体例としては、N-ドデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-トリデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-テトラデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ペンタデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ドデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-トリデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-テトラデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ペンタデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ヘキサデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ドデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-トリデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-テトラデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ペンタデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩及びN-ヘキサデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩から選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。
【0053】
(b)成分の芳香族アルコールは、殺菌効果と配合安定性の観点から、下記一般式(b3)で表される化合物が好ましい。
R8bO-(R9bO)l-H (b3)
〔式中、R8bは、芳香族基を有し、且つ総炭素数6以上10以下の炭化水素基であり、lは0以上1以下の整数であり、R9bは炭素数2以上4以下のアルキレン基である。但し、該化合物の分子量は106以上250以下である。〕
【0054】
R8bの総炭素数は、芳香族基を含めた炭素数であり、R8bの総炭素数は、殺菌効果の観点から、6以上、そして、配合安定性の観点から、10以下、好ましくは9以下、より好ましくは8以下である。R8bは、芳香族炭化水素基であり、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基が挙げられる。
一般式(b3)中のlは、殺菌効果の観点から、1以下が好ましく、0がより好ましい。
【0055】
(b)成分としては、具体的には、殺菌効果と配合安定性の観点から、ベンジルアルコール(分子量:108)、フェノキシエタノール(分子量:138)、2-フェニルエタノール(分子量:122)、3-フェニル-1-プロパノール(分子量:136)及びシンナミルアルコール(分子量:134)、ベンジルグリコール(分子量:152)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(分子量:152)から選ばれる1種以上が挙げられる。(b)成分は、ベンジルアルコール、フェノキシエタノールから選ばれる1種以上が好ましい。(b)成分は、ベンジルアルコールとフェノキシエタノールの組み合わせであってよい。本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(b)成分としてベンジルアルコール及びフェノキシエタノールから選択される1種以上を含有することが好ましい。
【0056】
<(c)成分>
(c)成分は、親水性ポリマーである。(c)成分は、25℃の100gの水に対して0.1g以上溶解する、重量平均分子量が1万以上の高分子化合物であってよい。本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物が(c)成分を含むことで、加圧速度の違いによる形成された泡の泡比容の制御に寄与することができる。
【0057】
(c)成分は、アミノ基、4級アンモニウム基及びベタイン基から選ばれる基を1種以上有する重合体、ポリビニルアルコールとその誘導体から選ばれる合成系高分子、及びヒドロキシエチルセルロースなどの天然系高分子とその誘導体が挙げられる。
【0058】
(c)成分としては、アミノ基、4級アンモニウム基及びベタイン基から選ばれる基を1種以上有する単量体に由来する構成単位を含む重合体が挙げられる。
【0059】
(c)成分は、下記一般式(c1)で表される単量体(c1)及び下記一般式(c2)で表される単量体(c2)から選ばれる1種以上の単量体Aに由来する構成単位Aを含む重合体が好ましい。
【0060】
【0061】
〔式中、R1c、R2c、R3c、R7c、R8c、R9cは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は炭素数1以上3以下のアルキル基である。X1c、Y1cは、それぞれ独立して、炭素数1以上12以下のアルキレン基、-COOR12c-、-CONHR12c-、-OCOR12c-、-R13c-OCO-R12c-から選ばれる基である。ここでR12c、R13cは、それぞれ独立して、炭素数1以上5以下のアルキレン基である。R4cは炭素数1以上3以下のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR1cR2cC=C(R3c)-X1c-である。R5cは炭素数1以上3以下のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ベンジル基であり、R6cはヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、硫酸エステル基で置換されていてもよい炭素数1以上10以下のアルキル基、又はベンジル基であり、R6cがアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はベンジル基の場合は、Z-は陰イオンを示す。R6cがカルボキシ基、スルホン酸基、硫酸エステル基を含む場合、Z-は存在せず、R6c中のこれらの基は陰イオンとなる。Z-の陰イオンとしては、例えばハロゲンイオン、硫酸イオン、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換されていてもよい芳香族スルホン酸イオン、ヒドロキシイオンを挙げることができる。R10cは水素原子、炭素数1以上3以下のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR7cR8cC=C(R9c)-Y1c-である。R11cは水素原子、炭素数1以上3以下のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。〕
【0062】
一般式(c1)の単量体(c1)として具体的に好ましいものはアクリロイル(又はメタクリロイル)アミノアルキル(炭素数1以上5以下)-N,N,N-トリアルキル(炭素数1以上3以下)4級アンモニウム塩、アクリロイル(又はメタクリロイル)オキシアルキル(炭素数1以上5以下)-N,N,N-トリアルキル(炭素数1以上3以下)4級アンモニウム塩、N-(ω-アルケニル(炭素数2以上10以下))-N,N,N-トリアルキル(炭素数1以上3以下)4級アンモニウム塩、N,N-ジ(ω-アルケニル(炭素数2以上10以下))-N,N-ジアルキル(炭素数1以上3以下)4級アンモニウム塩が好適であり、特にジアリルジメチルアンモニウム塩が良好である。
【0063】
一般式(c2)の単量体(c2)として具体的に好ましいものはアクリロイル(又はメタクリロイル)アミノアルキル(炭素数1以上5以下)-N,N-ジアルキル(炭素数1以上3以下)アミン、アクリロイル(又はメタクリロイル)オキシアルキル(炭素数1以上5以下)-N,N-ジアルキル(炭素数1以上3以下)アミン、N-(ω-アルケニル(炭素数2以上10以下))-N,N-ジアルキル(炭素数1以上3以下)アミン、N,N-ジ(ω-アルケニル(炭素数2以上10以下))-N-アルキル(炭素数1以上3以下)アミン、アリルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアリルアミンが好適であり、特に、アリルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアリルアミン、アクリロイル(又はメタクリロイル)アミノプロピル-N,N-ジメチルアミン、アクリロイル(又はメタクリロイル)オキシエチル-N,N-ジメチルアミンが良好である。
(c)成分が構成単位Aを含む場合、単量体Aに由来する構成単位Aは(c)成分の全構成単位に対して、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上、そして、好ましくは100モル%以下、より好ましくは99モル%以下、更に好ましくは90モル%以下の割合で含まれる。
【0064】
(c)成分は、-SO2-で示される構成単位Bを含む重合体が好ましい。このような構成単位Bを重合体に導入する方法としては、所定量のSO2ガスを一般式(c1)の単量体(c1)及び/又は一般式(c2)の単量体(c2)を含有する溶液に吹き込み、過酸化ベンゾイル、t-ブチルハイドロペルオキシド、クメンハイドロペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレルニトリロ、2、2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、過酢酸、過安息香酸、過硫酸塩、過酸化水素から選ばれる重合開始剤を用いて重合することが挙げられる。重合時には溶媒を用いることができ、具体的には水、メタノール、エタノール、プロパノールから選ばれるアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンから選ばれるケトン類、ジメチルスルホキサイド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルイミダゾリジノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、トルエン、キシレン、ヘキサンを用いることが可能である。重合温度は溶媒や開始剤の組み合わせにより異なり、好ましくは-20℃以上200℃以下、より好ましくは-10℃以上100℃以下である。また、本発明では光や放射線によっても重合することが可能であり、特に300nm以上450nm以下の波長の光を照射することで効率良く重合することができる。
【0065】
(c)成分が構成単位Bを含むことにより、重合体の濃度が低い場合でも硬質表面に対する十分な付着性を示し、また陽イオン界面活性剤との併用による影響も受け難くなる。
(c)成分が構成単位Aと構成単位Bを含む場合、(c)成分において、単量体Bに由来する構成単位Bと単量体Aに由来する構成単位Aのモル比(構成単位B)/(構成単位A)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.05以上、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.75以下、更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.3以下である。
【0066】
本発明では、更に防汚効果を向上させる目的から、(c)成分が、下記(i)~(iv)から選ばれる単量体に由来する構成単位Cを含有することが好適である。
【0067】
(i)アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、マレイン酸又はその塩、無水マレイン酸、スチレンスルホン酸塩、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸塩、アリルスルホン酸塩、ビニルスルホン酸塩、メタリルスルホン酸塩、スルホプロピルメタクリレート、リン酸モノ-ω-メタクリロイルオキシアルキル(炭素数1以上12以下)
【0068】
(ii)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N,N-ジメチルアクリル(又はメタクリル)アミド、N,N-ジメチルアミノエチルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N,N-ジメチルアミノメチルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-2-ピロリドンから選ばれるアミド基含有化合物
【0069】
(iii)アクリル酸(又はメタクリル酸)アルキル(炭素数1以上5以下)、アクリル酸(又はメタクリル酸)2-ヒドロキシエチル、アクリル酸(又はメタクリル酸)-N,N-ジメチルアミノアルキル(炭素数1以上5以下)、酢酸ビニルから選ばれるエステル基含有化合物
【0070】
(iv)エチレン、プロピレン、n-ブチレン、イソブチレン、n-ペンテン、イソプレン、2-メチル-1-ブテン、n-ヘキセン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、2-エチル-1-ブテン、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレンから選ばれるオレフィン系化合物
【0071】
これらの中でも特に防汚効果の点から(i)又は(ii)の単量体由来の構成単位が好ましく、中でも(i)の単量体由来の構成単位が最も好ましく、これらの中でもアクリル酸又はそのナトリウム塩若しくはカリウム塩、メタクリル酸又はそのナトリウム塩若しくはカリウム塩、マレイン酸又はそのナトリウム塩若しくはカリウム塩が好ましい。ここで(i)の単量体由来の構成単位の対イオンは、含有する重合体のカチオン基部分であっても良い。
【0072】
(c)成分が構成単位Cを有する場合、(c)成分を構成する構成単位において、単量体Cに由来する構成単位Cと単量体Aに由来する構成単位Aのモル比(構成単位C)/(構成単位A)は、防汚効果の点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上、そして、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.75以下、更に好ましくは0.5以下である。
【0073】
(c)成分は、構成単位A、構成単位B及び好ましくは構成単位Cが、重合体中の主鎖又は側鎖のいずれに存在していても構わない。これらはランダム重合したもの、ブロック重合したものでも、グラフト重合したものなどでも構わない。本発明では構成単位A、構成単位B及び構成単位Cのみから構成される重合体を用いることが好ましい。
【0074】
また、(c)成分としては、多糖類及びセルロース誘導体などの天然系高分子又はその誘導体が挙げられる。
多糖類としては、カラヤガム、トラガカントガム、アラビアガム、アセマンナン、コンニャクマンナン、アカシアガム、ガッティガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、プルラン、デキストラン、カゼイン、ゼラチン、ケラチン、グルテリン、グルカゴン、グルテン、ゼイン、シェラックが挙げられる。これらの中でも、トリガーの引く速度による起泡性への影響を低減する観点から、キサンタンガム、グアーガム、及びジェランガムから選ばれる多糖類が好ましい。
【0075】
セルロース誘導体としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ニトロセルロース、及び他のセルロースエーテル/エステルなどのセルロース誘導体が挙げられる。これらの中でも、トリガーの引く速度による起泡性への影響を低減する観点から、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースから選ばれるセルロース誘導体が好ましい。
【0076】
(c)成分は、配合安定性及び原料入手容易性の観点から、ヒドロキシエチルセルロース及びポリビニルアルコールであってよい。(c)成分は、ヒドロキシエチルセルロース、及び可溶性澱粉等の半合成水溶性高分子に対してカチオン性基を有する化合物を反応させることにより製造することもできる。
(c)成分は、配合安定性及び原料入手容易性の観点から、酢酸ビニルと前記単量体Aとを重合して製造したカチオン変性ポリビニルアルコール、及びヒドロキシエチルセルロースとカチオン性基を有する化合物とを反応させたカチオン変性ヒドロキシルエチルセルロースが好ましい。このカチオン性基としては、例えば、前記単量体Aが有するカチオン性基が挙げられる。
【0077】
(カチオン変性ポリビニルアルコール)
カチオン変性ポリビニルアルコールは、前記単量体Aのカチオン性基を主鎖あるいは側鎖に有するポリビニルアルコールのことである。前記カチオン変性ポリビニルアルコールは、原料の酢酸ビニルを重合する際に、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド等と酢酸ビニルとを共重合し、得られたコポリマーを常法によりケン化することにより得られる。
また、酢酸ビニルと他の反応性基を有するモノマーとを共重合しておき、ケン化後前記反応性基を利用して、前記カチオン性基を含有する化合物を反応させてポリビニルアルコールをカチオン化してもよい。
【0078】
(カチオン変性ヒドロキシエチルセルロース)
カチオン変性ヒドロキシルエチルセルロースは、例えば、原料セルロースとエチレンオキシドとを反応させてヒドロキシエチルセルロースを得た後、このヒドロキシエチルセルロースをカチオン化剤と反応させてカチオン化する方法により得ることができる。
【0079】
原料セルロースとして用いられるセルロースとしては、化学的に純粋なセルロースの他、各種木材チップ等の木材類;木材から製造される木材パルプ等のパルプ類;新聞紙、段ボール等の紙類;稲わら、とうもろこし茎等の植物茎・葉類;籾殻、パーム殻、ココナッツ殻等の植物殻類等、種々のセルロース含有原料を用いることができる。
【0080】
カチオン化剤としては、入手性の観点から、グリシジルトリメチルアンモニウム又はグリシジルトリエチルアンモニウムの塩化物又は臭化物、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウム等の塩化物、3-ブロモ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、3-ブロモ-2-ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウム等の臭化物が好ましく、グリシジルトリメチルアンモニウム塩化物又は3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物がより好ましく、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物が更に好ましい。これらのカチオン化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
(c)成分のカチオン化度は、界面活性剤との相溶性向上(配合安定性)の観点から、好ましくは0.25mol%以上、より好ましくは0.35mol%以上、更に好ましくは0.45mol%以上、より更に好ましくは0.6mol%以上、より更に好ましくは0.8mol%以上であり、そして、好ましくは5mol%以下、より好ましくは4mol%以下、更に好ましくは3mol%以下、より更に好ましくは2mol%以下である。
なお、カチオン化度は、ポリビニル硫酸カリウム(PVSK)を用いたコロイド滴定により求めることができる。
【0082】
(c)成分は、ベタイン基を有する単量体に由来する構成単位を含むことができる。ベタイン構造を有する単量体としては、例えば、N-(3-スルホプロピル)-N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン、N-(3-スルホプロピル)-N-(メタ)アクリロイルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン、N-(3-カルボキシメチル)-N-(メタ)アクリロイルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン、N-カルボキシメチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン等が挙げられる。
【0083】
(c)成分は、下記一般式(c3)で表される構成単位Dを有する重合体が好ましく、下記一般式(c3)で表される構成単位D及び下記一般式(c4)で表される構成単位Eを含む共重合体がより好ましい。
【0084】
【0085】
〔式中、
R14c~R16c:同一又は異なって、水素原子又は炭素数1若しくは2のアルキル基
R17c:炭素数1以上4以下のアルキレン基、又は-Y2c-OPO3
--Y3c-
Y2c、Y3c:同一又は異なって、炭素数1以上4以下のアルキレン基
R18c、R19c:同一又は異なって、炭素数1以上4以下の炭化水素基
X2c:O又はNR20cであり、R20cは水素原子又は炭素数1以上4以下の炭化水素基
X3c:水素原子、炭素数1以上4以下の炭化水素基、R21cSO3
-、又はR21cCOO-を示す。ただし、R17cが炭素数1以上4以下のアルキレン基のとき、X3cはR21cSO3
-、又はR21cCOO-、R21cは炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、R17cが-Y2c-OPO3
--Y3c-のとき、X3cは水素原子又は炭素数1以上4以下の炭化水素基である。〕
【0086】
【0087】
〔式中、
R22c~R24c:同一又は異なって、水素原子又は炭素数1若しくは2のアルキル基
X4c:O又はNH基
R25c:炭素数1以上4以下のアルキレン基
X5c:N+R26cR27cR28cX6c又はNR29cR30cであり、R26c~R30cは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1以上4以下の炭化水素基、X6cは陰イオン
を示す。〕
【0088】
[構成単位D]
一般式(c3)において、不飽和単量体の入手性の観点、単量体の重合性の観点及び(c)成分の防汚性能を高める観点から、R14c及びR15cは、それぞれ、水素原子が好ましい。
一般式(c3)において、R16cは、不飽和単量体の入手性の観点、単量体の重合性の観点及び(c)成分の防汚性能を高める観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(c3)において、X2cは、不飽和単量体の入手性の観点、単量体の重合性の観点及び(c)成分の防汚性能を高める観点から、Oが好ましい。
一般式(c3)において、R17cは、防汚性能を高める観点から、炭素数1以上4以下のアルキレン基が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基がより好ましく、炭素数2のアルキレン基がより好ましい。
一般式(c3)において、Y2c、Y3cは、それぞれ、炭素数2又は3のアルキレン基が好ましく、炭素数2のアルキレン基がより好ましい。
一般式(c3)において、R18c、R19cは、同不飽和単量体の入手性の観点、単量体の重合性の観点及び(c)成分の防汚性能を高める観点から、それぞれ、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(c3)において、X3cは、水素原子、炭素数1以上4以下の炭化水素基、R21cSO3
-、又はR21cCOO-であるが、R17cが炭素数1以上4以下のアルキレン基のとき、X3cはR21cSO3
-、又はR21cCOO-であり、R17cが-Y2c-OPO3
--Y3c-のとき、X3cは水素原子又は炭素数1以上4以下の炭化水素基である。R17cが-Y2c-OPO3
--Y3c-のとき、防汚性能を高める観点から、X3cは炭素数1以上4以下の炭化水素基が好ましく、メチル基がより好ましい。R17cが炭素数1以上4以下のアルキレン基のとき、同様の観点から、X3cはR21cSO3
-が好ましい。
また、R21cは,炭素数1以上3以下のアルキレン基が好ましく、炭素数2以上3以下のアルキレン基がより好ましい。
【0089】
(c)成分が構成単位Dを含む場合、(c)成分中、構成単位Dは、(c)成分の全構成単位に対して、(c)成分の防汚性能を高める観点から、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは70モル%以上、より更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは99モル%以下、より好ましくは98モル%以下、更に好ましくは95モル%以下である。
また、(c)成分が構成単位Dを含む場合、(c)成分中の構成単位Dの含有量は、(c)成分の防汚性能を高める観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である。
【0090】
[構成単位E]
一般式(c4)において、不飽和単量体の入手性の観点、単量体の重合性の観点及び(c)成分の防汚性能を高める観点から、R22c及びR23cは、それぞれ、水素原子が好ましい。
一般式(c4)において、R24cは、単量体の重合性の観点及び(c)成分の防汚性能を高める観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(c4)において、X4cは、単量体の重合性の観点及び(c)成分の防汚性能を高める観点から、Oが好ましい。
一般式(c4)において、R25cは、単量体の重合性の観点及び(c)成分の防汚性能を高める観点から、炭素数2又は3のアルキレン基が好ましく、炭素数2のアルキレン基がより好ましい。
一般式(c4)において、X5cは、(c)成分の防汚性能を高める観点及び4級化反応の容易性の観点から、N+R26cR27cR28cX6c又はNR29cR30cであり、N+R26cR27cR28cX6cが好ましく、R26c、R27c、R28cは、同様の観点から、それぞれ、メチル基又はエチル基が好ましい。
一般式(c4)において、R29c、R30cは、(c)成分の防汚性能を高める観点及び4級化反応の容易性の観点から、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(c4)において、X6cは陰イオンであり、ハロゲンイオン又はC2H5SO4
-が好ましく、C2H5SO4
-がより好ましい。
【0091】
(c)成分が構成単位Eを含む場合、(c)成分中、構成単位Eは、(c)成分の全構成単位に対して、防汚性能を高める観点から、好ましくは1モル%以上、より好ましくは2モル%以上、更に好ましくは5モル%以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは70モル%以下、より好ましくは50モル%以下、更に好ましくは30モル%以下、より更に好ましくは20モル%以下、より更に好ましくは10モル%以下である。
【0092】
また、(c)成分が構成単位Eを含む場合、(c)成分中の構成単位Eの含有量は、防汚性能を高める観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、(c)成分の防汚性能を高める観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下である。
【0093】
[構成単位Dと構成単位Eのモル比]
(c)成分が構成単位Dと構成単位Eを含む場合、(c)成分の構成単位Dと構成単位Eのモル比は、防汚性能の観点から、構成単位D/構成単位Eで、好ましくは30/70以上、より好ましくは50/50以上、更に好ましくは55/45以上、更に好ましくは60/40以上、より更に好ましくは75/25以上、より更に好ましくは90/10以上であり、そして、(c)成分の防汚性能を高める観点から、好ましくは99.9/0.1以下、より好ましくは98/2以下、更に好ましくは96/4以下である。
【0094】
[構成単位D及び構成単位E以外の構成単位]
(c)成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位D及び構成単位E以外の構成単位を含有してもよい。構成単位D及び構成単位E以外の構成単位としては、スルホベタイン基を有する不飽和単量体以外の不飽和単量体に由来する構成単位が好ましく、スチレン等の疎水性不飽和単量体に由来する構成単位がより好ましい。
【0095】
(c)成分中の構成単位D及び構成単位E以外の構成単位は、(c)成分の全構成単位に対して、防汚性の観点から、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、更に好ましくは1モル%以下、より更に好ましくは0.5モル%以下、より更に好ましくは0.1モル%以下である。(c)成分中の構成単位D及び構成単位E以外の構成単位は、(c)成分の全構成単位に対して、0モル%であってもよい。
(c)成分中の構成単位D及び構成単位E以外の構成単位の含有量は、防汚性の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下、より更に好ましくは0.1質量%以下である。(c)成分中の構成単位D及び構成単位E以外の構成単位の含有量は、0質量%であってもよい。
【0096】
(c)成分が構成単位D及び構成単位Eを含む場合、(c)成分中の構成単位D及び構成単位Eの合計は、(c)成分の全構成単位に対して、防汚性の観点から、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、更に好ましくは99モル%以上、より更に好ましくは99.5モル%以上、より更に好ましくは99.9モル%以上である。(a)成分中の構成単位D及び構成単位Eの合計は、(c)成分の全構成単位に対して、100モル%であってもよい。
(c)成分中の構成単位D及び構成単位Eの合計の含有量は、防汚性の観点から、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、より更に好ましくは99.5質量%以上、より更に好ましくは99.9質量%以上である。(c)成分中の構成単位D及び構成単位Eの合計の含有量は、100質量%であってもよい。
【0097】
ベタイン基を有する(c)成分を製造する方法としては、どのような方法を採っても良いが、具体的には以下の(i)、(ii)のような方法が挙げられる。原料の入手性と、製造の容易さの観点から、(ii)の方法が好ましい。
(i)ベタイン基とカチオン基を有する不飽和単量体を共重合して得る方法
(ii)アミノ基とカチオン基を有する不飽和単量体を共重合させたあとに、ベタイン化剤によって4級化を行って得る方法
【0098】
(c)成分中、アミノ基、4級アンモニウム基及びベタイン基から選ばれる基を有する単量体由来の構成単位は、起泡性と防汚性の観点から、全構成単位に対して、アミノ基、4級アンモニウム基及びベタイン基から選ばれる基を有する単量体由来の構成単位の合計で、好ましくは10モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは50モル%以上、そして、好ましくは100モル%以下、より好ましくは95モル%以下、更に好ましくは90モル%以下である。
【0099】
(c)成分の重量平均分子量は、トリガーの引く速度による起泡性への影響を低減する観点から、好ましくは10,000以上、より好ましくは30,000以上、更に好ましくは50,000以上、より更に好ましくは100,000以上、そして、前記と同様の観点から、好ましくは5,000,000以下、より好ましくは3,000,000以下、更に好ましくは2,000,000以下である。
なお、(c)成分の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により求める値を意味する。かかるGPC法では、分子量標品としてプルランを用いることができる。以下、(c)成分の重量平均分子量について、同じである。
【0100】
*GPC条件
装置:GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)東ソー株式会社製
カラム:TSKgel α-M(2本直列に連結して使用)東ソー株式会社製
溶離液:0.15molNa2SO4/1%CH3COOH/水
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:プルラン標準品
【0101】
本発明の蓄圧式トリガースプレー容器が
図1に示すような蓄圧式トリガースプレー容器の場合、(c)成分は、トリガーの引く速度の影響を受けずに、良好な泡比容の泡の形成を達成し、特にトリガーを早く引いた場合の起泡性低下を抑制させる観点から、セルロース誘導体、多糖類及びポリビニルアルコールから選ばれる1種以上が好ましく、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム及びポリビニルアルコールから選ばれる1種以上がより好ましく、ヒドロキシエチルセルロース及びポリビニルアルコールから選ばれる1種以上が更に好ましく、ヒドロキシエチルセルロースが特に好ましい。
この場合、前記と同様の観点から、(c)成分の重量平均分子量は、好ましくは10,000以上、より好ましくは30,000以上、更に好ましくは50,000以上、より更に好ましくは100,000以上、より更に好ましくは200,000以上、特に好ましくは300,000以上、そして、好ましくは5,000,000以下、より好ましくは3,000,000以下、更に好ましくは2,000,000以下である。
【0102】
本発明の蓄圧式トリガースプレー容器が
図3に示すような液体を連続噴射可能な蓄圧式トリガースプレー容器の場合、(c)成分は、トリガーの引く速度の影響を受けずに、良好な泡比容の泡の形成を達成すると共に、防汚性を付与する観点から、構成単位AからEの1種以上を含む重合体、セルロース誘導体、多糖類誘導体、及びポリビニルアルコール誘導体から選ばれる1種以上が好ましく、構成単位A又はDを含む重合体、ヒドロキシエチルセルロース、カチオン変性ヒドロキシルエチルセルロース、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、及びカチオン変性ポリビニルアルコールから選ばれる1種以上がより好ましい。
この場合、前記と同様の観点から、(c)成分の重量平均分子量は、好ましくは10,000以上、より好ましくは30,000以上、更に好ましくは50,000以上、より更に好ましくは100,000以上、より更に好ましくは200,000以上、特に好ましくは300,000以上、そして、好ましくは5,000,000以下、より好ましくは3,000,000以下、更に好ましくは2,000,000以下である。
【0103】
<(d)成分>
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、スプレー時の起泡性向上の観点から、(d)炭素数3以上10以下のアルコール及び炭素数2以上14以下のグリコール系化合物から選ばれる1種以上の水溶性溶剤〔ただし、(b)成分に該当するものを除く〕〔以下、(d)成分という〕を含有することができる。
(d)成分は、好ましくは炭素数3以上、より好ましくは炭素数4以上、そして、炭素数10以下、好ましくは炭素数8以下のアルコール及び炭素数2以上、好ましくは炭素数3以上、より好ましくは炭素数4以上、そして、炭素数13以下、好ましくは炭素数12以下、より好ましくは炭素数10以下のグリコール系化合物から選ばれる1種以上の水溶性有機溶剤が好ましく、具体例としては、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、フェノキシトリグリコール、ブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、及びジブチレンジグリコールから選ばれる1種以上の水溶性有機溶剤がより好ましい。なかでも、フェノキシトリグリコール、ブチルジグリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる1種以上が更に好ましく、ブチルジグリコール及びジプロピレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる1種以上の水溶性有機溶剤が特に好ましい。
なお、本発明の蓄圧式トリガースプレー容器が
図3に示すような液体を連続噴射可能な蓄圧式トリガースプレー容器の場合、(d)成分、更にはブチルジグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びジプロピレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる1種以上の水溶性有機溶剤を用いることで、(c)成分を含有しなくても、トリガーの引く速度による起泡性の影響を低減できる。
ここで、(d)成分の水溶性溶剤及び水溶性有機溶剤における「水溶性」とは、オクタノール/水分配係数(LogPow)が3.5以下の溶剤を指すものとする。また、1-オクタノールと水との分配係数の測定方法については、OECDTest Guideline(OECD理事会決定「C(81)30最終別添1」)107によることとする。
【0104】
<組成、その他の成分等>
本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(a)成分を、洗浄力と起泡性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは0.8質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下含有する。
【0105】
本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(b)成分を、殺菌性の観点から、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下含有する。(b)成分は、その種類と含有量に依存して、(d)成分による起泡性向上効果を損ねる恐れがあるため、含有する場合には注意を要する。なお、殺菌性が不要の場合は、(b)成分は、実質的に配合しない、すなわち、本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(b)成分の含有量が0質量%であっても良い。
【0106】
本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(c)成分を、トリガーの引く速度による起泡性の影響を低減する観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下含有する。
なお、本発明の蓄圧式トリガースプレー容器が
図3に示すような液体を連続噴射可能な蓄圧式トリガースプレー容器の場合に限って、本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(c)成分を実質的に含有しなくても良い。
本発明において、トリガーの引く速度による起泡性の影響を低減するとは、前記スプレー容器から0.5秒/ストロークでスプレーされた泡の泡比容に対する、前記スプレー容器から0.2秒/ストロークでスプレーされた泡の泡比容の割合を、0.5以上2.0未満に制御することを意味する。
【0107】
本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物において、(c)成分の含有量と(a)成分の含有量との質量比(c)/(a)は、洗浄力とトリガーの引く速度による起泡性の影響を低減する観点から、0.005以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.03以上、そして、同様の観点から、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.1以下である。
【0108】
本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(d)成分を、トリガーの引く速度による起泡性の影響を低減する観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、より更に好ましくは3質量%以上、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下含有する。
【0109】
本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物において、(d)成分の含有量と(a)成分の含有量との質量比(d)/(a)は、洗浄力と、トリガーの引く速度による起泡性の影響を低減する観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは1.0以上、そして、同様の観点から、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.5以下、更により好ましくは2.0以下、特に好ましくは1.8以下である。
【0110】
本発明の蓄圧式トリガースプレー容器が
図1に示すような容器の場合、洗浄力とトリガーの引く速度による起泡性の影響を低減する観点から、本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物中、(c)成分の含有量と(a)成分の含有量との質量比(c)/(a)は、0.005以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.03以上、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.1以下であり、かつ、(d)成分の含有量と(a)成分の含有量との質量比(d)/(a)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは1.0以上、そして、同様の観点から、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.5以下、更により好ましくは2.0以下である。
【0111】
本発明の蓄圧式トリガースプレー容器が
図3に示すような液体を連続噴射可能な蓄圧式トリガースプレー容器の場合、トリガーの引く速度による起泡性の影響を低減する観点から、本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物中、(c)成分の含有量と(a)成分の含有量との質量比(c)/(a)は、好ましく0.5以下、より好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.05以下、特に好ましくは0であり、かつ、(d)成分の含有量と(a)成分の含有量との質量比(d)/(a)は、洗浄力とトリガーの引く速度による起泡性の影響を低減する観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは1.0以上、特に好ましくは1.3以上、そして、同様の観点から、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.5以下、更により好ましくは2.0以下、特に好ましくは1.8以下である。
【0112】
本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物は、水を含有する。水は、(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分及び下記の任意成分以外の残部となるように用いることができる。水の含有量は、液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物の安定性と、トリガーの引く速度による起泡性の影響を低減する観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上、そして、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
水は、イオン交換水、滅菌イオン交換水等を使用することが好ましい。
【0113】
本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物は、25℃のpHが、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは6以上、そして、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは9以下、更により好ましくは8以下である。
本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物を上記pHの範囲に調節するためにpH調節剤を用いることができる。pH調節剤としては塩酸や硫酸などの無機酸や、クエン酸、乳酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マロン酸、マレイン酸などの有機酸などの酸剤や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、アンモニアやその誘導体、モノエタノールアミンやジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン塩など、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ剤を、単独もしくは複合して用いても構わない。また、これらの酸剤とアルカリ剤を組み合わせて緩衝剤系として用いても構わない。液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物の25℃のpHは、下記の方法で測定する。
【0114】
<pHの測定法>
pHメーター(東亜ディーケーケー製 pH/イオンメーターHM-42X)にpH測定用複合電極(東亜ディーケーケー製 GST-5841C)を接続し、電源を投入する。pH電極内部液としては、飽和塩化カリウム水溶液(3.33モル/L)を使用する。次に、pH4.01標準液(フタル酸塩標準液)、pH6.86(中性リン酸塩標準液)、pH9.18標準液(ホウ酸塩標準液)をそれぞれ100mLビーカーに充填し、25℃の恒温槽に30分間浸漬する。恒温に調整された標準液にpH測定用電極を3分間浸し、pH6.86→pH4.01→pH9.18の順に校正操作を行う。測定対象となる本発明の液体洗浄剤組成物又は硬質表面用液体洗浄剤組成物を25℃に調整し、前記のpHメーターの電極を本発明の液体洗浄剤組成物又は硬質表面用液体洗浄剤組成物に浸漬し、1分後のpHを測定する。
【0115】
<界面活性剤>
本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物は、洗浄力と起泡性を向上させる観点から、(a)成分及び(b)成分以外の界面活性剤を含有することができる。
(a)成分及び(b)成分以外の界面活性剤としては、(e)ノニオン界面活性剤〔以下、(e)成分という〕及び(f)アニオン界面活性剤〔以下、(f)成分という〕から選ばれる1種以上の界面活性剤が挙げられる。
本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物は、洗浄力向上の観点から、(e)成分を含むことが好ましい。
【0116】
<(e)成分>
(e)成分はノニオン界面活性剤である。(e)成分としては、洗浄力及び起泡力の観点から、(e1)モノアルキルグリセリルエーテル〔以下、(e1)成分という〕、(e2)ポリオキシアルキレンモノアルキル又はアルケニルエーテル〔以下、(e2)成分という〕、(e3)アルキルポリグリコシド(グリコシド型ノニオン界面活性剤)〔以下、(e3)成分という〕、(e4)ソルビタン系ノニオン界面活性剤〔以下、(e4)成分という〕、(e5)脂肪族アルカノールアミド〔以下、(e5)成分という〕、(e6)脂肪酸モノグリセライド〔以下、(e6)成分という〕、及び(e7)蔗糖脂肪酸エステル〔以下、(e7)成分という〕からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、これらは2種以上を用いても良い。
(e)成分は、洗浄力を向上させ、かつトリガーの引く速度による起泡性の影響を低減する観点から、親水基が糖骨格又はグリセリン骨格を有するノニオン界面活性剤が好ましく、例えば、(e1)成分、(e3)成分、(e6)成分及び(e7)成分からなる群から選ばれる1種以上が挙げられ、アルキル(ポリ)グルコシド及びアルキル(ポリ)グリセリルエーテルから選ばれる1種以上が好ましい。
【0117】
(e1)成分は、モノアルキルグリセリルエーテルである。(e1)成分としては、具体的には下記一般式(e1)で表される化合物が好適である。
R1e-O-(Gly)r-H (e1)
〔式中、R1eは炭素数6以上18以下のアルキル基を示し、Glyはグリセリン由来の構成単位を示し、好ましくはグリセリンから1つの水酸基と1つの水素原子を除いた残基を示し、rは1以上4以下の数を示す。〕
【0118】
一般式(e1)において、R1eは、洗浄力の観点から、好ましくは炭素数6以上、より好ましくは炭素数7以上、更に好ましくは炭素数8以上、そして、好ましくは炭素数18以下、より好ましくは炭素数12以下、更に好ましくは炭素数10以下のアルキル基であり、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの直鎖アルキル基を用いることができるが、本発明では洗浄力の観点から、分岐鎖を有するアルキル基が好適であり、R1eの分岐鎖を有する具体的なアルキル基として、2-エチルヘキシル基、sec-オクチル基、イソノニル基及びイソデシル基から選ばれる基がより好ましく、2-エチルヘキシル基又はイソデシル基が更に好ましく、2-エチルヘキシル基が特に好ましい。
【0119】
一般式(e1)において、rは好ましくは1以上、そして、好ましくは2以下である。rが1の化合物がより好ましい。特に好ましい化合物は、R1eが2-エチルヘキシル基で、かつ、rが1の化合物である。
Glyで示される構造はグリセリンの1位と3位の水酸基が結合している-CH2CH(OH)CH2-で示される構造か、又はグリセリンの1位と2位の水酸基が結合している-CH(CH2OH)CH2-で示される構造であり、触媒や反応条件によって異なる。
【0120】
一般式(e1)の化合物を得るには、例えば、炭素数6~10のアルコールとしてR1e-OHで示されるアルキルアルコールを用い、エピハロヒドリンやグリシドールなどのエポキシ化合物とを、BF3などの酸触媒、あるいはアルミニウム触媒を用いて反応させて製造する方法を用いることができる。例えば、2-エチルヘキサノールを用いた場合、得られる2-エチルヘキシルモノグリセリルエーテルは、特開2001-49291号公報に記載されているように複数の生成物を含み得る混合物である。
【0121】
(e2)成分は、ポリオキシアルキレンモノアルキル又はアルケニルエーテルである。
(e2)成分のノニオン界面活性剤において、アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、洗浄力の観点から、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上、より更に好ましくは12以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは22以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは14以下である。
【0122】
(e2)成分のノニオン界面活性剤において、オキシアルキレン基の平均付加モル数は、洗浄力の観点から、好ましくは0超、より好ましくは1以上、更に好ましくは3以上、そして、同様の観点から、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下、より更に好ましくは10以下である。
(e2)成分のノニオン界面活性剤において、オキシアルキレン基は、洗浄力の観点から、好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基から選ばれる1種以上であり、より好ましくはオキシエチレン基及びオキシプロピレン基から選ばれる1種以上である。
【0123】
(e2)成分は、下記一般式(e2)で表される化合物から選ばれる1種以上を挙げることができる。
R2eO[(C2H4O)l/(C3H6O)j]H (e2)
〔式中、R2eは炭素数6以上22以下の炭化水素基を示す。l、jは平均付加モル数を示し、lは0以上30以下となる数を示し、jは0以上30以下となる数を示し、lとjが同時に0になることはない。“/”はオキシエチレン基及びオキシプロピレン基が、順序に関係なく、ランダム又はブロックのいずれに付加したものであってもよいことを示す。〕
【0124】
上記一般式(e2)中のR2eの炭素数は、洗浄力の観点から、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは12以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下である。
R2eは、洗浄力の観点から、好ましくはアルキル基又はアルケニル基であり、より好ましくはアルキル基、更に好ましくは第2級アルキル基である。ここで、第2級アルキル基とは、一般式(e2)中のR2eOにおいてOと結合するR2eの炭素原子が第2級炭素原子となっているアルキル基をいう。
アルキル基としては、具体的には、各種オクチル基(2-エチルヘキシル基を含む)、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基(ラウリル基)、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基を挙げることができる。
アルケニル基としては、各種オクタニル基、各種ノナニル基、各種デカニル基、各種ウンデカニル基、各種ドデカニル基、各種トリデカニル基、各種テトラデカニル基、各種ペンタデカニル基、各種ヘキサデカニル基、各種ヘプタデカニル基、各種オクタデカニル基(例えば、オレイル基、リノール基)を挙げることができる。なお、「各種」とは、n-、sec-、tert-、iso-を含む各種異性体を意味する。
【0125】
上記一般式(e2)中のl、jは、保存安定性の観点から、それぞれ独立に、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下である。
【0126】
(e3)成分は、アルキルポリグリコシド(グリコシド型ノニオン界面活性剤)である。(e3)成分のノニオン界面活性剤は、下記一般式(e3)で表されるノニオン界面活性剤が好ましい。
R3e(OR4e)sGt (e3)
〔式中、R3eは、直鎖又は分岐鎖の炭素数8以上18以下、好ましくは12以上14以下のアルキル基、アルケニル基又はアルキルフェニル基、好ましくはアルキル基を示し、R4eは炭素数2以上4以下のアルキレン基を示し、Gは炭素数5又は6の還元糖に由来する残基を示す。sは平均付加モル数を示し、0以上5以下の数である。tはその平均値が1以上5以下となる数を示す。〕
【0127】
一般式(e3)中、R3eは、洗浄力の観点から、好ましくは、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは14以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。
一般式(e3)中、sは、保存安定性の観点から、好ましくは0以上、そして、好ましくは2以下であり、より好ましくは0である。tは、保存安定性の観点から、好ましくは1.1以上、そして、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.4以下である。尚、tはプロトンNMR法による測定値である。
一般式(e3)中、Gは、それらの入手容易性及びコストの点から、グルコース及びフルクトースから選ばれる1種以上の単糖類に由来する残基が挙げられる。また、Gは、マルトース及びスクロースから選ばれる1種以上の多糖類に由来する残基が挙げられる。Gは、グルコースの単糖類に由来する残基が好ましい。
【0128】
(e4)ソルビタン系ノニオン界面活性剤、(e5)脂肪族アルカノールアミド、(e6)脂肪酸モノグリセライド、及び(e7)蔗糖脂肪酸エステルは、好ましくは炭素数8以上18以下、より好ましくは炭素数12以上14以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するものが好ましい。
【0129】
本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(e)成分を、洗浄力向上の観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下含有する。
【0130】
<(f)成分>
(f)成分は、アニオン界面活性剤である。(f)成分は、硫酸エステル基、リン酸エステル基、ホスホン酸基、スルホン酸基又はカルボキシ基を有するアニオン界面活性剤が挙げられる。
アニオン界面活性剤が有する炭化水素基としては、洗浄力の観点から、炭素数が好ましくは5以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは7以上、より更に好ましくは8以上、より更に好ましくは10以上、より更に好ましくは12以上、そして、好ましくは21以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは14以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルキレン基又はアリール基が好ましい。
【0131】
アニオン界面活性剤は、(f1)炭素数5以上18以下の炭化水素基を有する、スルホコハク酸エステル又はその塩〔以下、(f1)成分という〕、(f2)炭素数8以上21以下の炭化水素基と、硫酸エステル基又はスルホン酸基とを有するアニオン界面活性剤〔但し、(f1)成分に該当するものを除く〕〔以下、(f2)成分という〕、(f3)炭素数8以上21以下の炭化水素基と、カルボキシ基とを有するアニオン界面活性剤〔以下、(f3)成分という〕、並びに(f4)炭素数8以上21以下の炭化水素基と、リン酸エスエル基とを有するアニオン界面活性剤〔以下、(f4)成分という〕からなる群から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤が好ましく、これらは2種以上を用いても良い。
【0132】
(f2)成分のアニオン界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩及びアルカンスルホン酸塩から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0133】
(f)成分のアニオン界面活性剤の塩として、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩等から選ばれる無機塩、モノエタノールアンモニウム塩、ジエタノールアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、モルホリニウム塩等から選ばれる有機アンモニウム塩が挙げられる。
【0134】
本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(f)成分を、起泡性の観点から、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下、更により好ましくは0.1質量%以下、そして、例えば、0質量%を超えて含有することができるが、実質的に配合しないことが望ましい。
本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(f)成分を含有する場合、該組成物中、(f)成分の含有量と(a)成分の含有量の質量比(f)/(a)は、洗浄力と起泡性の観点から、好ましくは5.0以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.0以下、より更に好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.5以下である。
【0135】
<(g)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物は、配合安定性の観点から、(g)成分として、ハイドロトロープ剤を含有することができる。ハイドロトロープ剤としては、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸又はこれらのナトリウム、カリウムあるいはマグネシウム塩が良好であり、特にp-トルエンスルホン酸又はその塩が良好である。
【0136】
本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(g)成分を、配合安定性の観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下含有することができる。
【0137】
<(h)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物は、洗浄力の観点から、(h)成分として、キレート剤を含有することができる。キレート剤としては、クエン酸又はその塩、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、メチルグリシン二酢酸又はその塩、L-グルタミン酸二酢酸又はその塩等が挙げられる。
(h)成分の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩などの有機アミン塩が挙げられ、好ましくはアルカリ金属塩、より好ましくはナトリウム塩である。
【0138】
本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(h)成分を、洗浄力の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは6質量%以下含有することができる。
【0139】
本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物は、酵素、香料、染料、顔料、防腐剤、pH調整剤、安定化剤、洗浄助剤などの任意成分を含有することができる。
【0140】
本発明の液体洗浄剤組成物及び硬質表面用液体洗浄剤組成物の25℃ における粘度は、トリガーの引く速度による起泡性の影響を低減する観点から、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは3mPa・s以上、更に好ましくは5mPa・s以上、そして、好ましくは50mPa・s以下、より好ましくは20mPa・s以下、更に好ましくは15mPa・s以下、より更に好ましくは12mPa・s以下、より更に好ましくは10mPa・s以下である。これら組成物の粘度は(d)成分の水溶性溶剤や(g)成分のハイドロトロープ剤などで調整することができる。ここで、当該粘度は、下記の粘度の測定方法で測定されたものである。
【0141】
<粘度の測定方法>
TOKIMEC INC.製B型粘度計モデルBMに、ローター番号No.1のローターを備え付けたものを準備する。本発明の液体洗浄剤組成物又は硬質表面用液体洗浄剤組成物を粘度測定用ビーカーに100mL充填し、25℃の恒温水槽中で充分に温度調節する。この組成物の入ったビーカーを粘度計にセットし、ローター回転数を60r/minとして測定した60秒後の値を、液体洗浄剤組成物又は硬質表面用液体洗浄剤組成物の粘度として測定する。
【0142】
本発明の洗浄用物品及び本発明の洗浄用物品に用いる液体洗浄剤組成物は、洗浄対象表面、例えば、繊維製品や硬質物品の硬質表面を洗浄することができる。したがって、本発明の洗浄用物品は、硬質表面洗浄用物品であってよい。
硬質表面は、特に制限はなく、ガラス、陶器、磁器、琺瑯、タイル、セラミックス;アルミニウム、ステンレス、真鍮等の金属;ポリエチレン、ポリプロピレン、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ABS樹脂、FRP等の合成樹脂などが挙げられる。
本発明の物品及び組成物を適用しうる硬質表面としては、親水性硬質表面が好ましい。ここで、硬質表面についての「親水性」とは、水に対する静止接触角が70°未満であることを意味する。
本発明で好適な硬質表面は、ガラス、陶器、磁器、プラスチック、ステンレス及びシリコンウエハーから選ばれる1種又は2種以上の硬質表面が挙げられる。
本発明の洗浄対象表面は、好ましくは硬質表面、具体的には、硬質表面を有する物品である。硬質表面としては、例えば、キッチン、トイレ、バス及びリビングから選ばれる1以上に備えられる物品の硬質表面が挙げられる。より具体的には、硬質表面を有する物品としては、便器、浴槽、台所のシンク、ガスレンジ、窓ガラス、鏡、蛇口などが挙げられる。
【0143】
<洗浄対象表面の洗浄方法>
本発明は、上記本発明の洗浄用物品を用いてスプレーさせた泡と、洗浄対象表面とを接触させる、洗浄対象表面の洗浄方法を提供する。本発明の洗浄方法の洗浄対象の表面は、硬質表面が好ましい。
また、本発明の洗浄対象表面の洗浄方法は、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物を、硬質表面に接触させ、接触させた組成物を拭き取る、硬質表面の洗浄方法であってよい。
本発明の液体洗浄剤組成物は、上記本発明の洗浄用物品を用いて泡の状態で洗浄対象表面に接触させることが好ましい。
【0144】
本発明の洗浄対象表面の洗浄方法において、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物と硬質表面とを接触させた後、硬質表面をスポンジやたわしなどの洗浄用器具で擦ること、硬質表面に接触させた硬質表面を水ですすぐこと、硬質表面に接触させた硬質表面用液体洗浄剤組成物を拭き取ること、から選ばれる1以上を行ってもよい。硬質表面を拭き取る拭取用品としては、布、紙、スポンジなどが挙げられる。布は、織布でも不織布でもよい。
【0145】
本発明の洗浄対象表面の洗浄方法では、上記本発明の洗浄用物品を好適に用いることができる。以下、本発明の洗浄対象表面の洗浄方法について、本発明の洗浄用物品の使用方法を例示して、詳細に説明する。
【0146】
本発明の洗浄用物品の使用方法は、スプレー容器により泡にしてスプレーした液体洗浄剤組成物を、洗浄対象物である硬質表面に直接接触させることが好ましい。また、洗浄対象物である硬質表面は、油汚れが付着した硬質表面であることが好ましく、更に好ましくは固体脂を含む油汚れが付着した硬質表面である。本発明の洗浄用物品は、硬質表面の洗浄方法として好適に実施できる。
本発明の洗浄用物品の好ましい使用方法では、スプレー容器により泡にしてスプレーした液体洗浄剤組成物、より好ましくは、スプレー容器により泡にしてスプレーした硬質表面用液体洗浄剤組成物を、硬質表面に接触させる。具体的には、スプレー容器により泡にしてスプレーした液体洗浄剤組成物、より好ましくは、スプレー容器により泡にしてスプレーした硬質表面用液体洗浄剤組成物を、希釈することなく、硬質表面に接触させる。硬質表面に接触した後は、液体洗浄剤組成物の組成が変動してもよい。すなわち、硬質表面に接触した後は、液体洗浄剤組成物の組成が希釈又は濃縮されてもよい。
【0147】
また、本発明の洗浄用物品の好ましい使用方法では、スプレー容器により泡にしてスプレーした液体洗浄剤組成物、より好ましくは、スプレー容器により泡にしてスプレーした硬質表面用液体洗浄剤組成物を、硬質表面に接触させた後、機械力をかけずに放置する。つまり、スポンジ等の可撓性材料を用いることなく接触させ、機械力をかけずにそのまま放置する。本発明の洗浄用物品によれば、液体洗浄剤組成物による洗浄効果を高めることができ、機械的な力を加えない洗浄による洗浄効果を大幅に向上させることができ、機械力をかけずに放置し、放置した後、水で洗い流して洗浄を完了させることができる。
【0148】
本発明の洗浄用物品の好ましい使用方法では、スプレー容器により泡にしてスプレーした液体洗浄剤組成物、より好ましくは、スプレー容器により泡にしてスプレーした硬質表面用液体洗浄剤組成物を、洗浄対象物である硬質表面の面積100cm2に対して、好ましくは0.1g以上、より好ましくは0.3g以上、更に好ましくは0.4g以上、そして、好ましくは5g以下、より好ましくは3g以下、更に好ましくは2g以下の割合で接触させる、更に、噴霧することが好ましい。
【0149】
本発明の洗浄用物品の好ましい使用方法では、洗浄力を高める観点から、スプレー容器により泡にしてスプレーした液体洗浄剤組成物、より好ましくは、スプレー容器により泡にしてスプレーした硬質表面用液体洗浄剤組成物を、硬質表面に接触後、好ましくは10秒以上、より好ましくは20秒以上、更に好ましくは30秒以上、より更に好ましくは40秒以上、そして、同様の観点から、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、更に好ましくは20分以下、より更に好ましくは10分以下放置する。この場合、最初に液体洗浄剤組成物が硬質表面に接触した時点を放置の開始としてよい。なお、放置する際の温度は、室温でよく、例えば、10℃以上30℃以下が挙げられる。
【0150】
要するに本発明の洗浄用物品の好ましい使用方法では、スプレー容器により泡にしてスプレーした液体洗浄剤組成物を、洗浄力を高める観点から、好ましくは10秒以上、より好ましくは20秒以上、更に好ましくは30秒以上、より更に好ましくは40秒以上、そして、同様の観点から、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、更に好ましくは20分以下、より更に好ましくは10分以下、洗浄対象である硬質表面と接触させる。
【0151】
本発明の洗浄用物品は、スプレー容器の1回の吐出操作で泡として吐出される液体洗浄剤組成物の質量が、洗浄力を高める観点から、好ましくは0.3g以上、より好ましくは0.4g以上、そして、トリガーを引く力を小さくする観点から、好ましくは3.0g以下、より好ましくは1.5g未満、更に好ましく1.2g以下である。本発明の洗浄用物品によれば、スプレーされた泡の泡比容が高いため、一回の吐出操作で吐出させる液体洗浄剤組成物の量を少なくすることもできる。これにより、洗浄用物品を軽量化して取扱い性を高めたり、スプレー容器内に液体洗浄剤組成物を補充することなく洗浄可能な回数や面積を増大させたりすることができる。また、トリガーを引く力を小さく調整することもできる。
【0152】
本発明の洗浄用物品は、スプレー容器から5回連続の吐出操作で泡として吐出される液体洗浄剤組成物の覆う範囲が、洗浄力と操作性を高める観点から、好ましくは500cm2以上、より好ましくは750cm2以上、更に好ましくは1,000cm2以上、そして、洗浄力の観点から、好ましくは20,000cm2以下、より好ましくは10,000cm2以下、更に好ましく3,000cm2以下である。本発明の洗浄用物品によれば、トリガーの引き速度によらず良好な泡を形成することができる。これにより、前記の物品を使用する使用者の使用態様によらず、使用感や泡洗浄性を向上させることができる。
本発明の洗浄用物品では、蓄圧式トリガースプレーから5回連続吐出された泡の覆う範囲が、前記範囲であることが好ましい。5回連続吐出された泡とは、蓄圧式トリガースプレー又は連続噴射トリガースプレーの何れかを用いて、5回繰り返し引くことで、連続的に内容物を噴霧させた泡である。
【0153】
本発明の洗浄用物品において、スプレー容器から5回連続の吐出操作で泡として吐出される液体洗浄剤組成物の覆う範囲は、本発明の洗浄用物品から40cm離れた対象表面に該洗浄用物品を噴射面に対して水平に20cm移動させながら、液体洗浄剤組成物を5回連続スプレーして、泡が付着した範囲の短径と長径を定規で測定して求めた面積である。
【0154】
スプレー容器より泡として吐出された液体洗浄剤組成物は、硬質表面との密着性、又は密着時間の観点から、吐出直後の硬質表面上の泡の厚みが、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上、更に好ましくは8mm以上である。本発明の洗浄用物品は、液体洗浄剤組成物を、このような厚みの泡が生じるように吐出させることが好ましい。
【0155】
また、本発明の洗浄用物品は、汚れと密着させて洗浄力を高める観点から、泡として吐出された液体洗浄剤組成物の硬質表面への密着時間は、20秒以上が好ましく、30秒以上がより好ましく、1分以上が更に好ましい。また、汚れへの浸透性の観点から、20分以下が好ましく、10分以下がより好ましい。液体洗浄剤組成物の硬質表面への密着時間は、次のようにして測定できる。
例えば、ポリプロピレン製(200mm×200mm以上の面積を有する)の有底の容器を試験片とし、容器の底部と壁部の境界である角部に対し、1回スプレーをした直後、試験片を直角に立て、泡の状態を観察する。スプレーは、スプレー容器の吐出方向と底部との角度を45度とし、ノズル部の泡吐出口から角部までの距離を15cmとする。試験片を底部が直立するよう直角立てた時点から、泡の下端が2cm以上下方に移動する(垂れる)までの時間を測定する。密着性の評価では、温度20℃、湿度65%の条件下に行う。
【0156】
スプレー容器は、全体が合成樹脂製でも良いし、全体又は一部が金属やセラミック等の合成樹脂以外の材料から形成されていても良い。合成樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、アクリル、ポリアミド、ポリアセタール、塩化ビニル等を用いることができる。スプレー容器の容器本体は、合成樹脂から形成されていることが好ましく、例えば、ブロー成形などによって製造することができる。
スプレー容器の容器本体の容量は、好ましくは200mL以上、より好ましくは300mL以上、そして、好ましくは600mL以下、より好ましくは500mL以下であり、また好ましくは200mL以上600mL以下、より好ましくは300mL以上500mL以下である。
【実施例0157】
<実施例1~3及び比較例1>
表1~3に記載の各成分を用いて、表1~3に示す液体洗浄剤組成物を調製し、以下の項目について評価を行った。結果を表1~3に示す。なお、表1~3中の配合成分の質量%は、全て有効分に基づく数値である。
【0158】
(c)成分のポリマーA及びポリマーBを、下記製造例1又は2に記載の方法で合成した。
<製造例1>
ポリマーAの製造は、特開平6-212597号と特公昭53-10539号を参考に組み合わせて所定のモル比になる様に合成した。
【0159】
<製造例2>
ポリマーBの製造は、下記工程1及び2に記載の方法で合成した。
(工程1)
内容量1000mLの4つ口フラスコにエタノール(和光純薬工業(株)製)を126.30g入れ、78℃に昇温して還流させた。ここにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(和光純薬工業(株)製)181.12g、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルジエチル硫酸塩(花王(株)製/90%水溶液)23.60g、エタノール53.20gを混合させた溶液と、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(和光純薬工業(株)製)5.83g、エタノール10.00gを混合させた溶液をそれぞれ2時間かけて滴下した。4時間熟成させた後に冷却し、ポリマー溶液を得た。
【0160】
(工程2)
内容量1000mLの4つ口フラスコに、得られたポリマー溶液を94.70g、炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業(株)製)3.15g、水を150.00g添加し、50℃に昇温した。そこに1,3-プロパンスルトン(東京化成(株)製)38.70gを1時間かけて滴下して反応を行った。3時間熟成させた後に、90℃/20kPaで2時間減圧加熱することでエタノールを留去し、ポリマーBを含有する水溶液を得た。
【0161】
ポリマーBは、構成単位Dが、式(c3)中、以下の構造であり、構成単位Eが、式(c4)中、以下の構造であり、構成単位D/構成単位Eのモル比は95/5であった。
構成単位D:R14c=R15c=H、R16c=CH3、R17c=C2H4、R18c=R19c=CH3、X2c=O、X3c=R21cSO3
-、R21c=C3H6
構成単位E:R22c=R23c=H、R24c=CH3、X4c=O、R25c=C2H4、X5c=N+R26cR27cR28cX6c、R26c=R27c=CH3、R28c=C2H5、X6c=C2H5SO4
-
ポリマーBは、重量平均分子量が63,000であった。
【0162】
なお、ポリマーBの重量平均分子量は、以下の条件のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した。
カラム:TSKgel α-M(東ソー(株)製)を2本直列に連結して使用した。
カラム温度:40℃
溶離液:0.15molNa2SO4/1%CH3COOH/水
流量:1.0mL/分
検出器:示差屈折率計
標準物質:プルラン標準品
【0163】
また、ポリマーBの重量平均分子量は、SLS(静的光散乱法)により測定を行った。すなわち、光散乱光度計「DLS-7000」(大塚電子(株)製)を用いて、下記の条件で静的光散乱を測定し、Zimm-plotを作製することで算出した。また、分子量の算出に必要な屈折率増分は、示差屈折率計「DRM3000」(大塚電子(株)製)を用いて測定した。
波長:632.8nm(ヘリウム-ネオンレーザー)
散乱角:30°から150°まで10°おきに測定した。
温度:25℃
溶媒:トリフルオロエタノール
【0164】
<(a)成分>
・ラウリルジメチルアミンオキシド:アンヒトール20N、花王(株)製
・ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド:ソフタゾリンLAO-C、川研ファインケミカル(株)製
・ラウリル酸アミドプロピルベタイン:アンヒトール20AB、花王(株)製
・ラウリルヒドロキシスルホベタイン:アンヒトール20HD、花王(株)製
<(b)成分>
・アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド:サニゾールB-50(炭素数8~16の混合物)、花王(株)製
・塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(C12TMAC):東京化成工業(株)製
・塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(C18TMAC):東京化成工業(株)製
・ベンジルアルコール:富士フイルム和光純薬(株)製
・エタノール:日本合成アルコール(株)製
<(c)成分>
・ポリマーA:ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/マレイン酸/SO2=70:25:5(モル比)、重量平均分子量30,000の共重合体
・ポリマーB: 前記製造例2で得られた共重合体
・HEC:ヒドロキシエチルセルロース、ダイセルSE850、粘度(1%、25℃)2400~3000mPa・s、分子量156万、ダイセルミライズ(株)製
・PVA:ポリビニルアルコール、重量平均分子量5万、粘度(4%、20℃)20.5~24.5mPa・s、ケン化度87.0~89.0mol%、クラレポバール 22-88、(株)クラレ製
・PVA(重量平均分子量7万):ポリビニルアルコール、重量平均分子量7万、クラレポバール 44-88、(株)クラレ製
・PVA(重量平均分子量10万):ポリビニルアルコール、重量平均分子量10万、クラレポバール 95-88、(株)クラレ製
・PVA(重量平均分子量20万):ポリビニルアルコール、重量平均分子量20万、Sigma-Aldrich製
・PVA(重量平均分子量35万):ポリビニルアルコール、重量平均分子量35万、クラレポバール 200-88KX、(株)クラレ製
・キサンタンガム(重量平均分子量300万):モナートガムOB、重量平均分子量300万、MP五協フード&ケミカル(株)製
<(d)成分>
・ブチルジグリコール:日本乳化剤(株)製
・プロピレングリコールモノメチルエーテル:日本乳化剤(株)製
・ジプロピレングリコールモノブチルエーテル:富士フイルム和光純薬(株)製
<(e)成分>
・アルキルポリグリコシド:アルキル(炭素数12~16)ポリグルコース(平均糖縮合度1~2)、製品名「AG124」、花王(株)製)
・2-エチルヘキシルグリセリルエーテル:ペネトールGE-EH、花王(株)製
<(f)成分>
・スルホコハク酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウム:エアロールCT-1L 、東邦化学工業(株)製
・AES(アルキルエーテル硫酸エステル塩):エマール270J、花王(株)製
<(g)成分>
・パラトルエンスルホン酸:PTS M-7000、明友産業(株)製
<(h)成分>
・クエン酸:精製クエン酸(無水)、扶桑産業(株)製
・エチレンジアミン四酢酸:中部キレスト(株)製
<その他成分>
・硫酸ナトリウム:四国化成工業(株)製
・香料
【0165】
<油汚れの洗浄性>
SUS基板(エンジニアリングテストサービス社製、10cm×10cm×1mm、アルカリ洗浄済み)に20mgの調理後揚げ物油を、片側全面塗布し、ドライヤーで十分に乾かせ、これを評価用の洗浄対象物とした。この油を塗布する前と塗布した後のSUS基板の質量を測定し、油を塗布する前後のSUS基板の質量増加量に基づいて、「初期油質量」を算出した。
市販のトリガー式スプレイヤー(キュキュット泡スプレー(花王(株)製)、型番:TA-F)を用いて、SUS基板上の油汚れに対して表1~3の液体洗浄剤組成物を泡状にスプレーし(約1mL)、30秒放置後油汚れにキッチンペーパーを押し当て、軽い力を加え5往復させ汚れを拭き取った。
この操作を6枚の異なるSUS基板上の油汚れで行い(0.5秒/ストロークと0.2秒/ストロークの2種類の引き速度を用いて各3回ずつ実施)、それぞれの洗浄前後の汚れ付着状態を写真撮影により対比して行い、下記の指標に基づいて、写真を目視して洗浄性の評価を行った。洗浄性の評価では、6枚の異なるSUS基板上の油汚れで行った操作の6回の平均値を用いた。結果を表1~3に示す。洗浄性の評価の数値が高いほど、油汚れの洗浄性に優れている。
5: 泡の塗布面積に対し、汚れが10%未満残る。
4: 泡の塗布面積に対し、汚れが10%以上30%未満残る。
3: 泡の塗布面積に対し、汚れが30%以上50%未満残る。
2: 泡の塗布面積に対し、汚れが50%以上70%未満残る。
1: 泡の塗布面積に対し、汚れが70%以上残る。
【0166】
<泡比容の評価>
表1~3の液体洗浄剤組成物を、蓄圧式のスプレイヤーを備えたスプレー容器(キュキュット泡スプレー(花王)、型番:TA-F)、及び連続噴射式スプレイヤーを備えたスプレー容器(バスマジックリンエアジェット(花王(株)製、ロット番号:W0262202)のノズル部に、アタックシュッと泡スプレー(花王(株)製)の泡形成を可能にするノズルチップを取り付けたもの)に充填した。
【0167】
<泡比容の測定>
実施例及び比較例に記載の各スプレー容器により、内部の液体洗浄剤組成物を200mLメスシリンダー(ガラス製、内径40mm)内に間隔を空けずに5回連続でスプレーした。5回目をスプレーして1分後のメスシリンダー内の泡の容量(mL)を目視で読み取った。また、スプレー後の200mLメスシリンダーの質量を、4桁天秤(小数点以下2桁まで測定可能なもの)を用いて測定し、スプレー前のメスシリンダーの質量との差を、泡の質量(g)とし、以下の式で泡比容を算出した。泡比容の測定は、温度20℃、湿度65%の条件下に行った。また、1回の吐出操作により吐出される泡の量は、前述の泡比容の測定において求めた泡の質量(g)の平均、すなわち、泡の質量(g)/5で求めた。
泡比容(mL/g)=泡の容量(mL)/泡の質量(g)
【0168】
泡比容は、表1~3のスプレイヤーを用いて、それぞれ、トリガーを引く速度を、0.5秒/ストローク、0.2秒/ストロークと変えた条件でそれぞれ算出した。
また、0.5秒/ストロークでスプレーされた泡の泡比容(1)に対する、0.2秒/ストロークでスプレーされた泡の泡比容(2)の割合〔泡比容(2)/泡比容(1)〕を算出し、表1~3に示した。
【0169】
<引く速度(評価条件の調整)>
前記泡比容の測定において、トリガーの引き始め地点から引き終わり(片道)までにかかった時間を測定し、5回平均値(秒)から引き速度(秒/ストローク)を算出した。なお、トリガーの引き始めから引き終わりまでの動作をハイスピードマイクロスコープVW-9000((株)Keyence社製)、カメラユニットVW-600C((株)Keyence社製)、1000fpsで撮影し、映像として保存し、保存された映像をビデオ編集ソフトウェアCorelVideoStudio X7にてスロー再生して、トリガーの引き始め地点から引き終わりまでにかかった時間を測定した。
この方法で、0.5秒/ストローク(トリガーを遅く場合)と、0.2秒/ストローク(トリガーを速く引く場合)の2つの速度で実験可能であることを確認した。
【0170】
<粘度の測定方法>
TOKIMEC INC.製B型粘度計モデルBMに、ローター番号No.1のローターを備え付けたものを準備した。
実施例及び比較例の液体洗浄剤組成物を粘度測定用ビーカーに100mL充填し、25℃の恒温水槽中で充分に温度調節した。この組成物の入ったビーカーを粘度計にセットし、ローター回転数を60r/minとして測定した60秒後の値を、液体洗浄剤組成物の粘度とした。
【0171】
<簡便性(1)の評価>
泡比容が大きい方が広範囲にスプレーできることを考慮し、2種類のトリガーの引く速度で形成された泡、すなわち、トリガーを遅く引いた場合(0.5秒/ストローク)に形成された泡の泡比容と、トリガーを早く引いた場合(0.2秒/ストローク)に形成された泡の泡比容の値を用いて、簡便性(1)を以下の通り評価した。簡便性(1)の評価の数字が大きい洗浄用物品ほど、簡便性に優れた洗浄用物品である。
4: 2種類の速度共に、泡比容は25mL/g以上であった。
3: 2種類の速度共に、泡比容は15mL/g以上であった。
2: 引く速度によっては、泡比容は15mL/g未満であった。
1: いずれの引く速度においても、泡比容は15mL/g未満であった。
【0172】
<効率性(1)の評価>
スプレーの引く速度に依存せず、良好な泡を生成する指標を効率性(1)と定義し、2種類のトリガーの引く速度で形成された泡、すなわち、トリガーを遅く引いた場合(0.5秒/ストローク)に形成された泡の泡比容(1)に対する、トリガーを早く引いた場合(0.2秒/ストローク)に形成された泡の泡比容(2)の割合〔泡比容(2)/泡比容(1):泡比容の変化率〕を用いて、効率性(1)を評価した。効率性(1)の評価の数字が大きい洗浄用物品ほど、効率性に優れた洗浄用物品である。
3: 泡比容の変化率は0.6以上1.5未満であった。
2: 泡比容の変化率は0.5以上0.6未満、又は1.5以上2.0未満であった。
1: 泡比容の変化率は0.5未満、又は2.0以上であった。
【0173】
<簡便性(2)の評価>
洗浄用物品から40cm離れた机の天板に液体洗浄剤組成物をスプレーして、簡便性(2)の評価を行った。評価は、10人の試験員が異なる2種類のトリガーの引く速度(0.5秒/ストローク、0.2秒/ストローク)で行い、泡が付着した範囲の短径と長径を定規で測定し、2種類の引く速度における泡が付着した面積の平均の10人の平均値を算出して表2、3に示した。泡面積が広い洗浄用物品ほど、広範囲に泡を噴霧でき、簡便性(2)に優れている。
なお、蓄圧式トリガーの場合は、トリガーを1回引く動作の間に、洗浄用物品の噴射口を机の天板の被噴射面に対して水平に20cm一定速度で移動させた。また、連続噴射トリガーの場合は、洗浄用物品の噴射口を机の天板の被噴射面に対して水平に40cm一定速度で移動させた。
【0174】
<効率性(2)の評価>
表2~3の洗浄用物品における効率性(2)の評価は、10人の試験員がそれぞれの洗浄用物品において可能な限り早く(※引き速度の指定無し)5回連続スプレーを行い、泡比容を測定することで行った。
泡比容は、上記<泡比容の測定>で記載した方法と同様の方法で行い、10人の試験員の平均値を算出し、この平均値を表2~3に示した。泡比容の大きいもの、すなわち、急いでトリガーを引いても良好な起泡性を示す洗浄用物品は、効率性が良い洗浄用物品である。
【0175】
【0176】
表1に示すように、比較例1-1~1-3では、トリガーを引く速度を早くすると(0.2秒/ストローク)、形成された泡の泡比容が低下した。これは、液体洗浄剤組成物が速く吐出されることで、空気と液体洗浄剤組成物の混合する速さ(以下、気液混合スピードと略す)に対して泡膜の形成及び安定化が間に合わないため、吐出された液体洗浄剤組成物の吐出物において、泡にならない組成物の割合が高くなり、結果として泡比容が低下すると考えられる。
これに対して、実施例1-1~1-5の液体洗浄剤組成物は、(d)成分及び(c)成分を所定の割合で含むことで、該組成物の起泡性の向上と、膜泡の安定性が両立できた。すなわち、実施例の液体洗浄剤組成物は、起泡性に寄与する速泡性と、泡をそのまま維持する泡安定性に優れていた。とりわけ、(c)成分による膜泡の安定化の寄与により気液混合スピードが速い場合においても所定の泡比容の泡をスプレーすることができた。これにより、トリガーを引く速度の違いにかかわらず、所定の泡比容の泡をスプレーすることができ、結果として、良好な泡を硬質表面に接触させる洗浄を、簡便に、効率よく行うことができた。
【0177】
【0178】