(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036298
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】金属の腐食試験に用いられる陽極-陰極装置及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/28 20060101AFI20240308BHJP
G01N 27/38 20060101ALI20240308BHJP
G01N 33/204 20190101ALI20240308BHJP
【FI】
G01N27/28 H
G01N27/38 355
G01N33/204
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023139505
(22)【出願日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】202211077122.1
(32)【優先日】2022-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】523306209
【氏名又は名称】東方電気(広州)重型機器有限公司
【氏名又は名称原語表記】Dongfang (Guangzhou) Heavy Machinery Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.313,Lianxi Avenue,Huangge Town,Nansha District,Guangzhou City,Guangdong Province,511455,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 洪涛
(72)【発明者】
【氏名】王 海▲淪▼
(72)【発明者】
【氏名】張 立殷
(72)【発明者】
【氏名】戴 光明
(72)【発明者】
【氏名】秦 錦
(72)【発明者】
【氏名】劉 盛波
(72)【発明者】
【氏名】夏 小軍
【テーマコード(参考)】
2G055
【Fターム(参考)】
2G055AA01
2G055BA09
2G055FA06
(57)【要約】
【課題】操作しやすく、再現性に優れ、特に、大型加工物の現場金相試験に適する現場金相電食用の陽極-陰極装置及びその使用方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、電食の技術分野に属し、現場金相電食用の陽極-陰極装置及びその使用方法を提供し、陽極-陰極装置は、電源と、陰極アセンブリと、陽極アセンブリとを含み、前記陽極アセンブリは、前記電源の正極に電気的に接続され、前記陰極アセンブリは、陰極部品と、皿型反応容器とを含み、前記陰極部品は、前記電源の負極に電気的に接続され、前記皿型反応容器の中に電食酸ペーストが設けられ、前記陰極部品は、前記皿型反応容器の中に設けられ且つ常に前記電食酸ペーストと接触する。本発明は、電食酸ペーストの使用に装置が加わることで、加工物の検出面に対する電食酸ペーストの接触面積は常に変わらず、有効であることを保証し、加工物に対する金属組織の観察及び分析に備え、良好な電食効果を得るために役立つ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現場金相電食用の陽極-陰極装置であって、
電源と、陰極アセンブリと、陽極アセンブリとを含み、前記陽極アセンブリは、前記電源の正極に電気的に接続され、前記陰極アセンブリは、陰極部品と、電食反応を行うための皿型反応容器とを含み、前記陰極部品は、前記電源の負極に電気的に接続され、前記皿型反応容器の中に電食酸ペーストが設けられ、前記陰極部品は、前記皿型反応容器の中に設けられ且つ常に前記電食酸ペーストと接触することを特徴とする現場金相電食用の陽極-陰極装置。
【請求項2】
前記陰極アセンブリは、プッシュロッドをさらに含み、前記皿型反応容器の端面に、プッシュロッドが通過するための通し穴が設けられ、前記プッシュロッドの一端は前記陰極部品に接続され、前記プッシュロッドの他端はリード線によって前記電源の負極に接続され、前記プッシュロッドに押付部品が設けられ、前記押付部品は、前記通し穴より大きく且つ前記皿型反応容器の端面の外側に密着されることを特徴とする請求項1に記載の現場金相電食用の陽極-陰極装置。
【請求項3】
前記プッシュロッドにねじ構造が設けられ、前記押付部品はナットであり、前記ナットは、前記プッシュロッド上のねじ構造に係合して接続されることを特徴とする請求項2に記載の現場金相電食用の陽極-陰極装置。
【請求項4】
前記陰極アセンブリは、ガスケットをさらに含み、当該ガスケットは、前記プッシュロッドに穿設され、且つ、前記押付部品と前記皿型反応容器の端面の外側との間に位置することを特徴とする請求項3に記載の現場金相電食用の陽極-陰極装置。
【請求項5】
前記陰極部品は、片状の構造として設けられ、且つ、前記皿型反応容器における通し穴より大きいことを特徴とする請求項1に記載の現場金相電食用の陽極-陰極装置。
【請求項6】
前記皿型反応容器は、弾性を備える材料から作製されることを特徴とする請求項1に記載の現場金相電食用の陽極-陰極装置。
【請求項7】
前記陽極アセンブリは、上陽極部と、下陽極部とを含み、前記上陽極部は、前記下陽極部に設けられ、且つ、前記上陽極部の重量は前記下陽極部の重量より軽いことを特徴とする請求項1に記載の現場金相電食用の陽極-陰極装置。
【請求項8】
(1)陰極アセンブリの組み立て
プッシュロッドを皿型反応容器の通し穴の中に穿設し、前記プッシュロッドにナット及びガスケットを取り付け、ナットを回して位置を調整することにより、プッシュロッドの端部の陰極部品を皿型反応容器の内端面に密着させ、ナットを皿型反応容器の外端面に密着させ、
皿型反応容器に電食酸ペーストを充填し、電食酸ペーストは陰極部品と接触し、
リード線によってプッシュロッドの端部と電源の負極を接続させるステップと、
(2)陽極アセンブリの組み立て
リード線によって陽極アセンブリと電源の正極を接続させるステップと、
(3)電食試験の技術的準備
陽極アセンブリを試験対象の大型加工物に置き、陽極アセンブリを試験対象の大型加工物と接触させ、
陰極アセンブリの皿型反応容器を試験対象の大型加工物の検出面において倒置し、皿型反応容器の中の電食酸ペーストを前記検出面と接触させ、
プッシュロッドを押して、皿型反応容器の中の電食酸ペーストを前記検出面と充分に接触させるステップと、
(4)電食試験
電源をオンにして、試験対象の大型加工物の前記検出面を電食酸ペーストと反応させることで、電食試験を行うステップとを含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の現場金相電食用の陽極-陰極装置の使用方法。
【請求項9】
さらに大型加工物の検出面に対する前処理を含み、大型加工物の検出面に対する前処理を完了してから電食試験を行い、前処理は、
(a)サンドペーパーで検出面に対して粗研磨、細研磨を行うステップと、
(b)検出面に対して仕上げ研磨を行うステップと、
(c)検出面を洗浄するステップとを含むことを特徴とする請求項8に記載の現場金相電食用の陽極-陰極装置の使用方法。
【請求項10】
さらに大型加工物の検出面に対する後処理を含み、後処理は、
(i)電食後の検出面を洗浄するステップと、
(ii)洗浄後の検出面をブローして乾燥させるステップとを含むことを特徴とする請求項8に記載の現場金相電食用の陽極-陰極装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電食の技術分野に属し、具体的には、現場金相電食用の陽極-陰極装置及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金相電食は、顕微鏡下で検出サンプルに対して組織形態の観察及び分析を行うために、電気化学的原理を利用して検出サンプルに対して電食を行うことである。現在、従来技術で使用される金相電食装置の陰極は一般に1つの金属板であり、陽極はクリップによってサンプルに接続される。電食プロセスでは、サンプル及び陰極金属板を電解槽に入れ、電源を入れてサンプルの電食を実現する。しかしながら、このような陰極-陽極装置は、現場で大型加工物において金相試験を行うことができない。現場での大型加工物の金相試験に適合させるための従来技術として、シンプルで且つ大型加工物の現場金相試験に適する陽極-陰極装置がある。陰極において脱脂綿が設けられ、脱脂綿を利用して電解液を吸着及び貯蔵することにより、電解液を大型加工物の検出面と充分に接触させることができる。しかしながら、実際の試験プロセスでは、脱脂綿が電解液を吸着しきれずに電解液が溢れる現象がある。脱脂綿は電解液によって腐食されて脆くなりやすく、且つ腐敗と分解が起こる。また、このような陽極-陰極装置は、電解液の種類を変えることができず、電食効果が均一でないなどの欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来技術の上記の欠点をなくすためになされるものであって、目的は、現場金相電食用の陽極-陰極装置を提供することであり、当該装置は、操作しやすく、再現性に優れ、特に、大型加工物の現場金相試験に適する。
【0004】
本発明の別の目的は、現場金相電食用の陽極-陰極装置の使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明で上記の技術的課題を解決するために用いる技術的解決手段は次のとおりである。
電源と、陰極アセンブリと、陽極アセンブリとを含む現場金相電食用の陽極-陰極装置であって、前記陽極アセンブリは、前記電源の正極に電気的に接続され、前記陰極アセンブリは、陰極部品と、電食反応を行うための皿型反応容器とを含み、前記陰極部品は、前記電源の負極に電気的に接続され、前記皿型反応容器の中に電食酸ペーストが設けられ、前記陰極部品は、前記皿型反応容器の中に設けられ且つ常に前記電食酸ペーストと接触する。
【0006】
好ましくは、前記陰極アセンブリは、プッシュロッドをさらに含み、前記皿型反応容器の端面に、プッシュロッドが通過するための通し穴が設けられ、前記プッシュロッドの一端は前記陰極部品に接続され、前記プッシュロッドの他端はリード線によって前記電源の負極に接続され、前記プッシュロッドに押付部品が設けられ、前記押付部品は、前記通し穴より大きく且つ前記皿型反応容器の端面の外側に密着される。
【0007】
好ましくは、前記プッシュロッドにねじ構造が設けられ、前記押付部品はナットであり、前記ナットは、前記プッシュロッド上のねじ構造に係合して接続される。
【0008】
好ましくは、前記陰極アセンブリは、ガスケットをさらに含み、当該ガスケットは、前記プッシュロッドに穿設され、且つ、前記押付部品と前記皿型反応容器の端面の外側との間に位置する。
【0009】
好ましくは、前記陰極部品は、片状の構造として設けられ、且つ、前記皿型反応容器における通し穴より大きい。
【0010】
好ましくは、前記皿型反応容器は、弾性を備える材料、例えば、ゴム、シリカゲルなどから作製される。
【0011】
好ましくは、前記陽極アセンブリは、上陽極部と、下陽極部とを含み、前記上陽極部は、前記下陽極部に設けられ、且つ、前記上陽極部の重量は前記下陽極部の重量より軽い。
【0012】
現場金相電食用の陽極-陰極装置の使用方法であって、以下のステップを含む。
(1)陰極アセンブリの組み立て
プッシュロッドを皿型反応容器の通し穴の中に穿設し、前記プッシュロッドにナット及びガスケットを取り付け、ナットを回して位置を調整することにより、プッシュロッドの端部の陰極部品を皿型反応容器の内端面に密着させ、ナットを皿型反応容器の外端面に密着させ、
皿型反応容器に電食酸ペーストを充填し、電食酸ペーストは陰極部品と接触し、
リード線によってプッシュロッドの端部と電源の負極を接続させる。
(2)陽極アセンブリの組み立て
リード線によって陽極アセンブリと電源の正極を接続させる。
(3)電食試験の技術的準備
陽極アセンブリを試験対象の大型加工物に置き、陽極アセンブリを試験対象の大型加工物と接触させ、
陰極アセンブリの皿型反応容器を試験対象の大型加工物の検出面において倒置し、皿型反応容器の中の電食酸ペーストを前記検出面と接触させ、
プッシュロッドを押して、皿型反応容器の中の電食酸ペーストを前記検出面と充分に接触させる。
(4)電食試験
電源をオンにして、試験対象の大型加工物の前記検出面を電食酸ペーストと反応させることで、電食試験を行う。
【0013】
好ましくは、さらに大型加工物の検出面に対する前処理を含み、大型加工物の検出面に対する前処理を完了してから電食試験を行い、前処理は、以下のステップを含む。
(a)サンドペーパーで検出面に対して粗研磨、細研磨を行う。
(b)検出面に対して仕上げ研磨を行う。
(c)検出面を洗浄する。
【0014】
好ましくは、さらに大型加工物の検出面に対する後処理を含み、後処理は、以下のステップを含む。
(i)電食後の検出面を洗浄する。
(ii)洗浄後の検出面をブローして乾燥させる。
【発明の効果】
【0015】
従来技術と比べて、本発明の有益な効果は次のとおりである。
本発明は、電食酸ペーストの使用に装置が加わることで、加工物の検出面に対する電食酸ペーストの接触面積は常に変わらず、有効であることを保証し、且つ、流れる電解液の製品加工物に対する汚染及び検出者へのダメージは避けられ、加工物に対する金属組織の観察及び分析に備え、良好な電食効果を得て、試験の安全性を向上させるために役立つ。また、本発明の陽極アセンブリ及び負極アセンブリは、構造がシンプルで、体積は小さく、操作しやすく、且つ再現性に優れ、現場電食試験の効率を高めるために役立ち、従来技術の欠陥を効果的に解決している。
【0016】
以下、本発明の実施例の技術的解決手段をより明瞭に説明するために、実施例の説明で使用する図面を簡単に紹介する。言うまでもないが、以下に説明される図面は本発明の実施例の一部であり、当業者は、新規性のある作業をせず、これらの図面から他の図面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の現場金相電食用の陽極-陰極装置の斜視下構造模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の現場金相電食用の陽極-陰極装置を用いて電食試験を行って得た組織形態図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の上記の目的、特徴及び効果が明瞭に理解されるよう、図面及び特定の実施形態を用いて本発明を詳細に説明する。なお、矛盾がない限り、本願の実施形態及び実施形態における特徴を互いに組み合わせることができる。以下の説明では本発明を充分に理解するために多くの詳細が述べられているが、説明される実施形態は本発明の実施形態の全てではなく、その一部に過ぎない。当業者が本発明の実施形態に基づいて、創造的な労力を要することなく得られる他の実施形態全てが、本発明の請求範囲に属する。
【0019】
特に定義がない限り、本明細書で使用される技術及び科学用語の全てが当業者の一般的な理解と同じ意味を有する。本明細書では、本発明の明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明するために用いられ、本発明を限定しようとするものではない。
【0020】
(実施例1)
図1を参照すると、本実施例は、電源1と、陰極アセンブリと、陽極アセンブリとを含む現場金相電食用の陽極-陰極装置を開示し、本実施例の電源1として、直流電源を用いる。陽極アセンブリは、電源1の正極に電気的に接続され、陰極アセンブリは、陰極部品6と、電食反応を行うための皿型反応容器7とを含み、陰極部品6は、電源1の負極に電気的に接続され、皿型反応容器7の中に電食酸ペーストが設けられ、陰極部品6は、皿型反応容器7の中に設けられ、且つ常に電食酸ペーストと接触する。陰極アセンブリは、プッシュロッド8をさらに含み、皿型反応容器7の端面に、プッシュロッド8が通過するための通し穴が設けられ、プッシュロッド8の一端は陰極部品6に接続され、プッシュロッド8の他端はリード線によって電源1の負極に接続され、プッシュロッド8に押付部品4が設けられ、押付部品4は、通し穴より大きく且つ皿型反応容器7の端面の外側に密着される。
【0021】
電食試験を行う時、陽極アセンブリを大型加工物に置き、陽極アセンブリを大型加工物と接触させ、皿型反応容器7に電食酸ペーストを充填し、皿型反応容器7を大型加工物の検出面において倒置し、電食酸ペーストを大型加工物の検出面と充分に接触させ、次に、人力又はフレームなどの方式でプッシュロッド8を皿型反応容器7の内部のほうに移動させ、押付部品4が皿型反応容器7の端面の外側を押し付けることが加わり、皿型反応容器7の中の陰極部品6は常に電食酸ペーストと接触し、同時に皿型反応容器7は電食酸ペーストを検出面に押し付けて、電食酸ペーストを検出面と充分に接触させ、続いて、電源1をオンにして、大型加工物の検出面に対する現場電食を実現する。
【0022】
図1を参照すると、さらに、本実施例のプッシュロッド8にねじ構造が設けられ、押付部品4はナットであり、当該ナットは、プッシュロッド8上のねじ構造に係合して接続される。具体的には、本実施例のプッシュロッド8として、ステンレス鋼のねじ付きロッドを用いてもよく、具体的には、φ6×40mmの316ステンレス鋼材料を選んで作製してもよく、ナットを回してステンレス鋼のねじ付きロッドに取り付ける。このようなプッシュロッド8及び押付部品4を用いると、柔軟性に優れ、組み立て及び調整に役立ち、ナットを回せばナットの位置を調整することができ、それを速やかに皿型反応容器7の外端面に調整することができ、また、ナットを適切にねじ込むことは、皿型反応容器7の中の陰極部品6を皿型反応容器7の内端面にロックして、陰極部品6を皿型反応容器7の内壁に密着させるために役立つ。好ましくは、プッシュロッド8にはさらにガスケット5が穿設され、当該ガスケット5は、押付部品4と皿型反応容器7の端面の外側との間に位置する。
【0023】
図1を参照すると、陰極部品6は、片状の構造として設けられ、且つ、皿型反応容器7における通し穴より大きい。本実施例では、プッシュロッド8の端部は陰極部品6の中心に対して溶接によって固定される。
【0024】
皿型反応容器7は、弾性を備える材料、例えば、ゴム、シリカゲルなどから作製されてもよく、また、皿型反応容器7は、円筒状として設けられる。皿型反応容器7は、プッシュロッド8に係合するよう、一定の弾性を備え、プッシュロッド8が押圧する時に変形が生じ、これにより電食酸ペーストを押圧して大型加工物の検出面に密着させ、電食試験は順調に完了することが確保される。
【0025】
図1を参照すると、陽極アセンブリは、上陽極部2と、下陽極部3とを含み、上陽極部2は、下陽極部3に設けられ、且つ、上陽極部2の重量は下陽極部3の重量より軽く、本実施例の陽極アセンブリは、耐食性を備える導電性金属、例えば、316ステンレス鋼を選んで作製されてもよい。具体的には、本実施例で陽極アセンブリは、逆の「T」字状のように設けられ、当然ながら、他の形状、例えば、正方形、三角形などのように設けられてもよく、陽極アセンブリの構造の重量分布は上方が下方より軽いため、安定性を向上させるために役立つ。また、下陽極部3の底部に粘着紙を設けるか、又は、下陽極部3に磁石など、粘着若しくは吸着できる部品を設けることにより、陽極アセンブリを加工物に固定させることができる。
【0026】
本実施例は、また、現場金相電食用の陽極-陰極装置の使用方法を開示し、以下のステップを含む。
(1)陰極アセンブリの組み立て
プッシュロッド8を皿型反応容器7の通し穴の中に穿設し、プッシュロッド8にナット及びガスケット5を取り付け、ナットを回して位置を調整することにより、プッシュロッド8の端部の陰極部品6を、皿型反応容器7の内端面に密着させ、ナットを皿型反応容器7の外端面に密着させ、
皿型反応容器7に電食酸ペーストを充填し、電食酸ペーストは陰極部品6と接触し、
リード線によってプッシュロッド8の端部と電源1の負極を接続させる。
(2)陽極アセンブリの組み立て
リード線によって陽極アセンブリと電源1の正極を接続させる。
(3)電食試験の技術的準備
陽極アセンブリを試験対象の大型加工物に置き、陽極アセンブリを試験対象の大型加工物と接触させ、
陰極アセンブリの皿型反応容器7を試験対象の大型加工物の検出面において倒置し、皿型反応容器7の中の電食酸ペーストを検出面と接触させ、
プッシュロッド8を押して、皿型反応容器7の中の電食酸ペーストを検出面と充分に接触させる。
(4)電食試験
電源1をオンにし、電圧は6~8Vであり、電流は3~4Aであり、電解時間は30~60秒であり、試験対象の大型加工物の検出面を電食酸ペーストと反応させることで、電食試験を行う。
【0027】
現場電食試験の効果及び品質を向上させるために、電食試験を行う前に、大型加工物の検出面に対する前処理を行う必要があり、当該前処理の加工を完了してから、陰極アセンブリの皿型反応容器7を検出面において倒置する。ここで、前処理は、以下のステップを含む。
(a)サンドペーパーで検出面に対して粗研磨、細研磨を行う。
(b)検出面に対して仕上げ研磨を行い、具体的には、ダイヤモンドスプレーを用いて機械による仕上げ研磨を行ってもよい。
(c)検出面を洗浄し、具体的には、無水エタノール綿球を用いて検出面を洗浄してもよい。
【0028】
また、顕微鏡下で検出面に対して金相を観察しやすいよう、電食加工を完了した後、検出面に対して後処理を行う必要がある。ここで、後処理は、以下のステップを含む。
(i)電食後の検出面を洗浄し、洗浄する時は、純水綿球、次に無水エタノール綿球で検出面を洗浄し、検出面の表面の不純物を洗浄で除去する。
(ii)洗浄後の検出面をブローして乾燥させる。
【0029】
本実施例の現場金相電食用の陽極-陰極装置を用いて現場電食試験を行う場合は、加工物の検出面に対する電食酸ペーストの接触面積は常に変わらず、有効であることを保証するために役立ち、これにより、加工物に対する金属組織の観察及び分析に備え、良好な電食効果を得るために役立つ。
図2に示すとおり、本実施例の陽極-陰極装置と電食酸ペーストを併用して電食試験を行う場合は、明瞭で且つ腐食効果が良好な組織形態図を得ることができる。
【0030】
上述したのが本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明に何らかの形式上の限定を加えるものではなく、したがって、本発明の技術的解決手段の内容から逸脱せず、本発明の技術的要旨に基づいて上記の実施例に対して行われるいずれの補正、同等な変化及び潤色が、いずれも本発明の技術的解決手段の範囲に属する。
【符号の説明】
【0031】
1 電源
2 上陽極部
3 下陽極部
4 押付部品
5 ガスケット
6 陰極部品
7 皿型反応容器
8 プッシュロッド
【手続補正書】
【提出日】2024-02-06
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の腐食試験に用いられる陽極-陰極装置であって、
電源と、陰極アセンブリと、陽極アセンブリとを含み、前記陽極アセンブリは、前記電源の正極に電気的に接続され、前記陰極アセンブリは、陰極部品と、電食反応を行うための皿型反応容器とを含み、前記陰極部品は、前記電源の負極に電気的に接続され、前記皿型反応容器の中に電食酸ペーストが設けられ、前記陰極部品は、前記皿型反応容器の中に設けられ且つ常に前記電食酸ペーストと接触し、
前記陰極アセンブリは、プッシュロッドをさらに含み、前記皿型反応容器の端面に、プッシュロッドが通過するための通し穴が設けられ、前記プッシュロッドの一端は前記陰極部品に接続され、前記プッシュロッドの他端はリード線によって前記電源の負極に接続され、前記プッシュロッドに押付部品が設けられ、前記押付部品は、前記通し穴より大きく且つ前記皿型反応容器の端面の外側に密着されることを特徴とする金属の腐食試験に用いられる陽極-陰極装置。
【請求項2】
前記プッシュロッドにねじ構造が設けられ、前記押付部品はナットであり、前記ナットは、前記プッシュロッド上のねじ構造に係合して接続されることを特徴とする請求項1に記載の金属の腐食試験に用いられる陽極-陰極装置。
【請求項3】
前記陰極アセンブリは、ガスケットをさらに含み、当該ガスケットは、前記プッシュロッドに穿設され、且つ、前記押付部品と前記皿型反応容器の端面の外側との間に位置することを特徴とする請求項2に記載の金属の腐食試験に用いられる陽極-陰極装置。
【請求項4】
前記陰極部品は、前記皿型反応容器における通し穴より大きいことを特徴とする請求項1に記載の金属の腐食試験に用いられる陽極-陰極装置。
【請求項5】
前記皿型反応容器は、弾性を備える材料から作製されることを特徴とする請求項1に記載の金属の腐食試験に用いられる陽極-陰極装置。
【請求項6】
前記陽極アセンブリは、上陽極部と、下陽極部とを含み、前記上陽極部は、前記下陽極部に設けられ、且つ、前記上陽極部の重量は前記下陽極部の重量より軽いことを特徴とする請求項1に記載の金属の腐食試験に用いられる陽極-陰極装置。
【請求項7】
(1)陰極アセンブリの組み立て
プッシュロッドを皿型反応容器の通し穴の中に穿設し、前記プッシュロッドにナット及びガスケットを取り付け、ナットを回して位置を調整することにより、プッシュロッドの端部の陰極部品を皿型反応容器の内端面に密着させ、ナットを皿型反応容器の外端面に密着させ、
皿型反応容器に電食酸ペーストを充填し、電食酸ペーストは陰極部品と接触し、
リード線によってプッシュロッドの端部と電源の負極を接続させるステップと、
(2)陽極アセンブリの組み立て
リード線によって陽極アセンブリと電源の正極を接続させるステップと、
(3)電食試験の技術的準備
陽極アセンブリを試験対象の大型加工物に置き、陽極アセンブリを試験対象の大型加工物と接触させ、
陰極アセンブリの皿型反応容器を試験対象の大型加工物の検出面において倒置し、皿型反応容器の中の電食酸ペーストを前記検出面と接触させ、
プッシュロッドを押して、皿型反応容器の中の電食酸ペーストを前記検出面と充分に接触させるステップと、
(4)電食試験
電源をオンにして、試験対象の大型加工物の前記検出面を電食酸ペーストと反応させることで、電食試験を行うステップとを含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の金属の腐食試験に用いられる陽極-陰極装置の使用方法。
【請求項8】
さらに大型加工物の検出面に対する前処理を含み、大型加工物の検出面に対する前処理を完了してから電食試験を行い、前処理は、
(a)サンドペーパーで検出面に対して粗研磨、細研磨を行うステップと、
(b)検出面に対して仕上げ研磨を行うステップと、
(c)検出面を洗浄するステップとを含むことを特徴とする請求項7に記載の金属の腐食試験に用いられる陽極-陰極装置の使用方法。
【請求項9】
さらに大型加工物の検出面に対する後処理を含み、後処理は、
(i)電食後の検出面を洗浄するステップと、
(ii)洗浄後の検出面をブローして乾燥させるステップとを含むことを特徴とする請求項7に記載の金属の腐食試験に用いられる陽極-陰極装置の使用方法。