(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036332
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】再生プラスチックの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/06 20060101AFI20240308BHJP
B29B 9/06 20060101ALI20240308BHJP
B29B 13/10 20060101ALI20240308BHJP
B29B 11/02 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C08J11/06 ZAB
B29B9/06
B29B13/10
B29B11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218792
(22)【出願日】2023-12-26
(62)【分割の表示】P 2023531537の分割
【原出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄也
(72)【発明者】
【氏名】真嶋 佑樹
(57)【要約】
【課題】
本発明は、積層体そのものを原料として使用し、良質な再生プラスチックを製造する方法を提供する。特に、本発明は、ロングランでのリサイクルに適応可能であり、焼けの発生を抑制し、かつ成形性に優れた良質な再生プラスチックを製造するための方法を提供する。
【解決手段】
スクリューが配置された溶融混練部と、吐出部とを有する押出装置を用いて、プラスチック積層体(A)から再生プラスチック(B)を製造する方法であって、押出装置の溶融混練部にプラスチック積層体(A)を供給すること、前記溶融混練部に供給された前記プラスチック積層体(A)をスクリュー回転数50~900RPMで溶融混練し、再生樹脂組成物(a)を形成すること、及び、前記吐出部から前記再生樹脂組成物(a)を吐出させ、冷却することで再生プラスチック(B)を得ることを含み、前記プラスチック積層体(A)は、少なくとも第1の樹脂層と、接着剤層及び/又は印刷層と、第2の樹脂層とを有し、かつ、前記プラスチック積層体(A)の全質量を基準としてポリオレフィン樹脂の含有量が、80質量%以上である、再生プラスチックの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリューが配置された溶融混練部と、吐出部とを有する押出装置を用いて、プラスチック積層体(A)から再生プラスチック(B)を製造する方法であって、押出装置の溶融混練部にプラスチック積層体(A)を供給すること、前記溶融混練部に供給された前記プラスチック積層体(A)をスクリュー回転数50~900RPMで溶融混練し、再生樹脂組成物(a)を形成すること、及び、前記吐出部から前記再生樹脂組成物(a)を吐出させ、冷却することで再生プラスチック(B)を得ることを含み、前記プラスチック積層体(A)は、少なくとも第1の樹脂層と、接着剤層及び/又は印刷層と、第2の樹脂層とを有し、かつ、前記プラスチック積層体(A)の全質量を基準としてポリオレフィン樹脂の含有量が、80質量%以上である、再生プラスチックの製造方法。
【請求項2】
前記再生樹脂組成物(a)の吐出が、18MPa以下の吐出圧力で実施される、請求項1項に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項3】
前記溶融混錬が、酸化防止剤の存在下で実施される、請求項1又は2に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項4】
前記プラスチック積層体(A)に含まれる水分量が、プラスチック積層体(A)の全質量を基準として3質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項5】
前記接着剤層が、ポリイソシアネートとポリオールとから構成される反応性ウレタン接着剤の反応物を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項6】
前記プラスチック積層体(A)の塩素含有率が、前記プラスチック積層体(A)の全質量を基準として0.3質量%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項7】
前記プラスチック積層体(A)のメルトマスフローレイトが、0.5~15g/10分である、請求項1~6のいずれか1項に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項8】
前記印刷層が、顔料及びバインダー樹脂を含み、前記バインダー樹脂の塩素含有率が、前記バインダー樹脂の全質量を基準として5質量%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項9】
前記印刷層における顔料の含有率が、前記印刷層の全質量を基準として30質量%以下である、請求項8に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項10】
前記プラスチック積層体(A)に含まれるポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項11】
前記プラスチック積層体(A)が、更にバリア層を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の再生プラスチックの製造方法によって再生プラスチックを製造すること、前記再生プラスチックを成形加工することを含む、再生プラスチック成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、ポリオレフィン樹脂を含む積層体から、マテリアルリサイクルを行う、再生プラスチックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック製品の廃棄及び投棄による環境汚染が問題視され、プラスチック製品のリサイクルに対する要望が高まっている。プラスチック製品のなかでもプラスチックフィルム包装材料は、用途ごとに異なる要求性能を満たすために、一般的に多層構造を有している。例えば、食品包装パッケージは、第1のフィルム基材上に印刷インキを印刷して形成された印刷層と、必要に応じて接着剤層を介して、第2のフィルム基材とを貼り合わせたラミネート積層体から構成され、この積層体をカットし熱融着することによって、パッケージの形状に加工されている。このような食品包装パッケージに代表されるラミネート積層体では、フィルム基材として、ポリエステル基材、ナイロン基材(NY)、ポリプロピレン基材(PP)、及びポリエチレン基材(PE)など、種々のプラスチック基材が使用されている。そのため、ラミネート積層体に対するマテリアルリサイクルの要望がある。
【0003】
しかし、ラミネート積層体は、複数の異種材料を含む多層構造を有するため、相溶性及びその他の問題から、マテリアルリサイクルを行うことが難しい。そのため、ラミネート積層体は、マテリアルリサイクルが望まれながらも、廃棄処分される場合もあるのが実情である。
【0004】
これに対し、食品包装パッケージなどのラミネート積層体のマテリアルリサイクルに向けた検討が進められている。例えば、特許文献1では、パッケージに含まれる不純物を除去した後にパッケージを粉砕し、必要に応じてアルカリ処理などを行った後に分離し、次いで比重に応じて分別回収した原料を溶融し、ペレットを形成する方法を開示している。得られたペレットは二次加工され、新たな製品を形成することができる。しかし、開示された方法によれば、パッケージに含まれる印刷層の大半は除去されずに回収した原料中に残存することになるため、ペレット等の再生材料は品質に劣る傾向がある。
【0005】
また、特許文献2及び3では、プラスチック基材上に脱離可能なプライマー層又は脱離可能な印刷層を設け、これらの層をその上に設けられた包装材料とともに、プラスチック基材から分離又は脱離させ、除去する方法を開示している。しかし、開示された方法によれば、リサイクルに伴って上記分離又は脱離に関する工程が増え、リサイクルが完了までの時間、及び人による作業量が増えることになり、生産量が低下する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-19003号公報
【特許文献2】特開2001-031899号公報
【特許文献3】特開2020-196855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、積層体のリサイクルに向けてプラスチック基材以外の層の分離又は脱離を行う方法は、作業性及び再生材料の品質などの観点で十分に満足できるとはいえず、さらなる検討が必要である。しかし、通常、積層体に含まれるプラスチック基材以外の印刷層及び/又は接着剤層などのその他の層は異物となる。そのため、プラスチック基材以外の層を分離又は脱離させる工程を行うことなく、積層体を溶融混練した場合、ペレットなどの再生材料は異物によって品質が低下する傾向がある。また、上記異物は、連続的に溶融混練を行った場合(ロングランでのリサイクル時)に再生樹脂において望ましくない焼けの原因にもなり得る。
【0008】
上記の観点から、積層体のマテリアルリサイクルに向けて、プラスチック基材から他層を分離又は脱離させる工程を行うことなく、簡便かつ効率的に良質な再生プラスチックを得ることができる方法が望まれている。したがって、本発明は、上述の状況に鑑み、積層体そのものを原料として使用し、良質な再生プラスチックを製造する方法を提供する。特に、本発明は、ロングランでのリサイクルに適応可能であり、焼けの発生を抑制し、かつ成形性に優れた良質な再生プラスチックを製造するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、原料として使用する積層体の構成、及び溶融混練など加工時の各種条件などについて鋭意研究を重ねた結果、以下に記載の再生プラスチックの製造方法によって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下に記載する実施形態に関する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
[1]スクリューが配置された溶融混練部と、吐出部とを有する押出装置を用いて、プラスチック積層体(A)から再生プラスチック(B)を製造する方法であって、押出装置の溶融混練部にプラスチック積層体(A)を供給すること上記溶融混練部に供給された上記プラスチック積層体(A)をスクリュー回転数50~900RPMで溶融混練し、再生樹脂組成物(a)を形成すること、及び上記吐出部から上記再生樹脂組成物(a)を吐出させ、冷却することで再生プラスチック(B)を得ることを含み、上記プラスチック積層体(A)が、少なくとも第一の樹脂層と、接着剤層及び/又は印刷層と、第二の樹脂層とを有し、上記プラスチック積層体(A)におけるポリオレフィン樹脂の含有量が、上記プラスチック積層体(A)の全質量を基準として80質量%以上である、再生プラスチックの製造方法。
【0012】
[2]
上記再生樹脂組成物(a)の吐出が、18MPa以下の吐出圧力で実施される、上記[1]に記載の再生プラスチックの製造方法。
【0013】
[3]上記溶融混錬が、酸化防止剤の存在下で実施され、上記[1]又は上記[2]に記載の再生プラスチックの製造方法。
【0014】
[4]
プラスチック積層体(A)に含まれる水分量が、プラスチック積層体(A)の全質量を基準として3質量%以下である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の再生プラスチックの製造方法。
【0015】
[5]
上記接着剤層が、ポリイソシアネートとポリオールとから構成される反応性ウレタン接着剤の反応物を含む、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の再生プラスチックの製造方法。
【0016】
[6]
上記プラスチック積層体(A)の塩素含有率が、上記プラスチック積層体(A)の全質量を基準として0.3質量%以下である、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の再生プラスチックの製造方法。
【0017】
[7]
上記プラスチック積層体(A)のメルトマスフローレイトが、0.5~15g/10分である、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の再生プラスチックの製造方法。
【0018】
[8]
上記印刷層が、顔料及びバインダー樹脂を含み、上記バインダー樹脂の塩素含有率が、上記バインダー樹脂の全質量を基準として5質量%以下である、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の再生プラスチックの製造方法。
【0019】
[9]
上記印刷層における顔料の含有率が、上記印刷層の全質量を基準として30質量%以下である、上記[8]に記載の再生プラスチックの製造方法。
【0020】
[10]
上記プラスチック積層体(A)に含まれるポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の再生プラスチックの製造方法。
【0021】
[11]
上記プラスチック積層体(A)が、更にバリア層を含む、上記[1]~[10]のいずれか1項に記載の再生プラスチックの製造方法。
【0022】
[12]
上記[1]~[11]のいずれか1項に記載の再生プラスチックの製造方法によって再生プラスチックを製造すること、上記再生プラスチックを成形加工することを含む、再生プラスチック成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、プラスチック積層体を原料として使用し、良質な再生プラスチックを製造する方法を提供できる。この方法は、特に、ロングランでのリサイクルに適応可能であり、焼けの発生を抑制し、かつ成形性に優れた良質な再生プラスチックを製造することができる。したがって、本発明によれば、プラスチック積層体のプラスチック基材から印刷層その他の層を分離又は脱離させる工程を行うことなく、簡便かつ効率的にマテリアルリサイクルを行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、記載する実施形態又は要件の説明は、本発明の実施形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定されない。
【0025】
<1>再生プラスチックの製造方法本発明の一実施形態は、押出装置を使用して、プラスチック積層体(A)から再生プラスチック(B)を製造する方法に関する。上記製造方法で使用するプラスチック積層体(A)は、再生プラスチックの主原料であり、ポリオレフィン樹脂を含む。プラスチック積層体(A)は、少なくとも第一の樹脂層と、接着剤層及び/又は印刷層と、第二の樹脂層とを含む。本発明においてプラスチック積層体(A)は、単に「積層体(A)」と略記する場合があるが同義である。プラスチック積層体(A)のより具体的な構成については後述する。
【0026】
上記プラスチック積層体(A)は、少なくともポリオレフィン樹脂を使用した基材などの層を含む多層構造を有し、上記プラスチック積層体(A)の全質量を基準として、ポリオレフィン樹脂の含有量は80質量%以上であることを特徴とする。ここで、ポリオレフィン樹脂の含有量は、下式(1)によって算出することができる。
式(1):(プラスチック積層体(A)中のポリオレフィン樹脂質量)/(プラスチック積層体(A)の質量)×100
【0027】
<1-1>押出装置
上記製造方法で使用する押出装置は、一般的に熱可塑性樹脂等の材料を溶融及び混練した後に押出成形することが可能な装置であればよい。例えば、特開2017-148997号公報に記載された公知の押出装置(樹脂組成物成形機)などを使用することができる。上記樹脂組成物成形機によれば、押出装置は、熱可塑性樹脂等の材料を供給する供給口と、上記供給口から供給された材料を溶融及び混練する溶融混練部と、上記溶融混練部で溶融及び混練された材料を吐出する吐出部とを有してよい。
【0028】
一実施形態において、本発明による製造方法では、内部にスクリューが配置されたシリンダーを備えた溶融混練部と、シリンダーの先端部に設けられる吐出部とを有する押出装置を好適に使用することができる。シリンダーには材料を供給するためのホッパーなどの供給口が設けられていてもよい。また、シリンダー内には、スクリューよりも先端部側にスクリーンメッシュが設けられていることが好ましい。
【0029】
上記押出装置において、溶融混練部は、少なくとも、シリンダーと、シリンダー内部に配置されたスクリューと、電熱ヒーター等の加熱源とから構成されてよい。溶融混練部では、シリンダー内部に配置されたスクリューの回転によるせん断作用、及び電熱ヒーターなどの加熱に伴って、上記材料自身からせん断熱が発生し、材料の溶融及び混練が実施される。
【0030】
上記押出装置の溶融混練部で溶融及び混練された材料は、必要に応じて設置されるスクリーンメッシュを通過し、上記吐出部から吐出される。吐出部には所定の形状を有するダイが設けられていてもよい。吐出部から吐出した材料は、冷却によって固化または流動性がなくなり、再生材料となる。再生6材料としてペレットを製造する場合、押出装置は、吐出部から吐出した材料を所定の長さに細断するペレタイザーを備えていてもよい。さらに冷却を行うための冷却部を備えていてもよい。
【0031】
上記押出装置において、スクリューの形態は特に限定されない。例えば、単軸押出機、二軸押出機、及びローター型二軸混練機等の公知の構造を有してよい。一実施形態において、スクリュー直径は、25~400mmであることが好ましく、50~300であることがより好ましく、100~250mmであることが更に好ましい。スクリュー直径が上記範囲内である場合、せん断熱及び混錬効率の観点で良好であり、異物数が少ない再生プラスチックを容易に得ることができる。
【0032】
スクリュー有効長(L/D)は、15~45であることが好ましく、20~40であることがより好ましく、25~35であることが更に好ましい。スクリュー有効長(L/D)が上記範囲内である場合、混錬効率及び混錬時間の観点で良好であり、異物数及び焼けが少ない再生プラスチックを容易に得ることができる。なお、スクリュー有効長(L/D)において、Lはスクリュー長さを表し、Dはスクリュー直径を表す。
【0033】
シリンダー直径は、スクリュー直径よりも大きく、通常、両者の間には間隙が存在する。その間隙の大きさは、0.01~1mmであることが好ましく、0.05~0.7mmであることが好ましく、0.1~0.5mmであることが更に好ましい。上記間隔が上記範囲内である場合、せん断熱及び混錬効率の観点で良好であり、異物数の少ない再生プラスチックを容易に得ることができる。
【0034】
スクリューの圧縮比は、2~5であることが好ましく、2.5~4.5であることがより好ましく、3.4~3.7であることが更に好ましい。上記圧縮比が上記範囲内である場合、せん断熱及び混錬効率の観点で良好であり、異物数の少ない再生プラスチックを容易に得ることができる。なお、スクリュー圧縮比とは、下式(2)に示すように、プラスチック積層体の供給部付近におけるスクリュー溝の1ピッチあたりの体積(V1)と、吐出部付近におけるスクリュー溝の1ピッチあたりの体積(V2)との比を指す。
式(2):スクリューの圧縮比=V1/V2
【0035】
スクリューを構成する材料は、特に限定されず、公知の材料を用いることができる。摩耗による異物混入を防止の観点から、スクリューはステンレス鋼を用いて構成されることが好ましい。また、スクリューの表面には、様々な加工を施すことが可能である。例えば、窒化処理、焼き入れ処理、粉末金属焼き入れ処理等が挙げられる。摩耗防止の観点から、粉末金属焼き入れ処理を適用することが好ましい。スクリューの構成材料と表面処理との組み合わせとして、ステンレス鋼に粉末金属焼き入れ処理を施した形態がより好ましい。
【0036】
<1-2>再生プラスチック(B)の製造工程
上記実施形態の再生プラスチック(B)の製造方法は、スクリューが配置された溶融混練部と、吐出部とを有する押出装置を用いて、プラスチック積層体(A)から再生プラスチック(B)を製造する方法に関し、押出装置の溶融混練部にプラスチック積層体(A)を供給する工程と、上記溶融混練部に供給された上記プラスチック積層体(A)をスクリュー回転数50~900RPMで溶融混練し、再生樹脂組成物(a)を形成する工程と、上記吐出部から上記再生樹脂組成物(a)を吐出させ、冷却することで再生プラスチック(B)を得る工程とを含む。
【0037】
上述のように、本実施形態の製造方法によれば、積層体(A)を所定の条件下で加工することによって、再生材料として再生プラスチック(B)を得ることができる。上記加工は、積層体(A)を加熱溶融及び混練する工程と、押出する(吐出させる)工程とを含む。一実施形態において、積層体(A)は、裁断又は破砕して細分化された形状であることが好ましい。積層体(A)を細分化するためには、破砕などの方法を適用することができる。また、積層体(A)は洗浄されていることが好ましい。更に、積層体(A)は、洗浄後に脱水、及び乾燥されていることが好ましい。これらの観点から、本実施形態の製造方法は、上記加工の工程に加えて、粉砕、洗浄、脱水、及び乾燥といった工程をさらに含んでもよい。以下、各工程について詳細に説明する。
【0038】
(破砕)
積層体(A)の寸法をより小さくする(細分化)する方法として、破砕が有効である。破砕方法は、特に制限されない。例えば、粉砕方法として、ジョークラッシャー、インパクトクラッシャー、カッターミル、スタンプミル、リングミル、ローラーミル、ジェットミル、又はハンマーミルを用いる方法を適用することができる。細分化された積層体(A)のサイズは、一辺の長さが1mm~50mmであることが好ましく、3mm~40mmであることがより好ましく、5mm~30mmであることが更に好ましい。積層体(A)の形状を1~50mmのサイズに細分化した場合、表面積が拡大することによる洗浄、脱水及び乾燥工程の効率化、並びに溶融樹脂の均一化が促進され、良質な再生プラスチックを容易に得ることができる。
【0039】
(洗浄)
積層体(A)、又は、細分化された積層体(A)は、洗浄されていることが好ましい。洗浄方法は、バッチ式、連続式等が挙げられる。洗浄には、水、洗剤、中和剤、アルカリ水溶液を用いてもよい。
【0040】
(脱水、乾燥)
洗浄された積層体(A)を、さらに脱水、及び乾燥することが好ましい。脱水の方式としては遠心脱水方式が好適である。乾燥方式としては熱風乾燥方式が好適である。脱水、及び乾燥を行う工程によって、積層体(A)における水分量を容易に調整することができる。積層体(A)における水分量を調整することによって、ペレットなどの再生プラスチック製造時の発泡を容易に回避することができる。ペレット製造時に気泡が発生した場合、シリンダー中の圧力が変化し、押出量、及び押出圧が一定にならず、ペレットの形状及び寸法が不規則になる恐れがある。また、製造されたペレットを用いた二次成形によって成形品を製造する際に、表面に凹凸が発生しやすく、成形品の表面状態が悪化する恐れがある。このような観点から、積層体(A)中の水分量は、積層体(A)の全質量を基準として、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。一実施形態において、上記製造方法は、積層体(A)を洗浄する工程に関係なく、積層体(A)における水分量を上記範囲内に調整する乾燥工程を有することが好ましい。
【0041】
(加工)
積層体(A)は、スクリューを備えた押出装置中で、加熱溶融され、及び混練されて再生樹脂組成物(a)を形成する。次いで、再生樹脂組成物(a)は、冷却によって固化するか、又は流動性が低下し、再生プラスチック(B)を形成する。
【0042】
再生プラスチック(B)を製造するための、より具体的な工程として、例えば、積層体(A)を供給口から溶融混練部に供給する工程と、上記供給口から溶融混練部に供給された積層体(A)を溶融及び混練して再生樹脂組成物(a)を形成する工程と、上記溶融混練部で溶融混練された再生樹脂組成物(a)を吐出部から吐出させる工程と、吐出部より吐出された再生樹脂組成物(a)を冷却して、再生プラスチック(B)を得る工程とを含むことが好ましい。再生プラスチック(B)は再生樹脂組成物の一次成形品として製造されてよく、その形状は特に限定されない。再生プラスチック(B)の形状は、例えば、棒状、粒子状、立方体、直方体、不定形等であってよい。一実施形態において、再生プラスチックは、ペレットの形状を有することが好ましい。
【0043】
積層体(A)は所定の温度で加熱溶融され、更に混練され、再生樹脂組成物(a)を形成する。この工程における、温度範囲は、積層体(A)のガラス転移温度、溶融温度、再生プラスチックの形状、成形工程で加えられる圧力などを考慮して調整することが好ましい。一実施形態において、溶融温度は、120~280℃であってよい。上記溶融及び混練の温度は、好ましくは160℃~250℃であってよく、より好ましくは170℃~240℃であってよく、さらに好ましくは180℃~230℃であってよい。溶融及び混練の温度を上記温度範囲に調整した場合、溶融及び混練後に、均一で、かつ焼けの発生が抑制された再生プラスチック(B)を容易に得ることができる。
【0044】
混練時の上記スクリューの回転数は、50~900rpmであり、好ましくは80rpm~800rpmであり、より好ましくは100rpm~700rpmであり、更に好ましくは150rpm~600rpmである。スクリューのせん断速度は、200~4000/secであることが好ましく、300~3500/secであることがより好ましく、400~3000/secであることが特に好ましい。
【0045】
なお、せん断速度と回転数は下式(3)の関係がある。
式(3):(円周率)×(スクリュー径)×(スクリュー回転数)/{(60×(シリンダー内壁とスクリューとの最小間隙距離)}
【0046】
回転数を50rpm以上に調整した場合、積層体(A)に十分なせん断応力が加わり、再生樹脂組成物(a)、特に再生プラスチック(B)がより均一化され、不溶物といった異物の発生を抑制できる。一方、回転数を900rpm以下に調整した場合、積層体(A)に含まれる樹脂のせん断熱の上昇を抑制でき、焼けの発生を容易に抑制できる。その結果、良好な成形性を維持することもできる。
【0047】
一般的に、溶融混練を長時間にわたって連続的に実施した場合(ロングラン時において)、せん断熱の蓄積による押出装置の温度上昇、及びスクリーンメッシュが異物を捕集することによる部分的な閉塞といった不具合が生じる場合がある。しかし、本実施形態では、スクリュー回転数を50RPM以上に調整する11ことによって、スクリーンメッシュが部分的に閉塞した後であっても、押出装置内での再生樹脂組成物(a)の混錬時間が大きく増加することを抑制し、また、焼けの発生を容易に抑制することができる。一方、スクリュー回転数を900RPM以下に調整することによって、スクリーンメッシュで捕集された異物の再混入を容易に抑制することができる。さらに、せん断熱による熱分解を容易に抑制できるため、熱分解による異物の発生を抑制することもできる。
【0048】
一実施形態において、押出装置の吐出量は、1時間あたり、5~60kgであることが好ましく、10~50kgであることがより好ましく、15~40kgであることが特に好ましい。吐出量を上記範囲内に調整した場合、吐出圧力及び混錬効率の観点で良好であり、異物の数及び焼けが少なく、良質な再生プラスチックを容易に得ることができる。
【0049】
また、押出装置内、主にシリンダー等の溶融混練部での再生樹脂組成物(a)の混錬時間を調整することによって、異物数及び焼けが少なく、良質な再生プラスチックを容易に得ることができる。このような観点から、一実施形態において、上記再生樹脂組成物(a)の混錬時間は、10~120秒であることが好ましく、15~80秒であることがより好ましく、20~40秒であることが更に好ましい。
【0050】
押出装置内での再生樹脂組成物(a)の充填率は、押出装置内の空隙体積に対して、50~100体積%であることが好ましく、65~95体積%であることが好ましく、80~90体積%であることが更に好ましい。上記充填率が上記範囲内である場合、せん断熱及び混錬時間の観点で良好であり、異物数及び焼けが少なく、良質な再生プラスチックを容易に得ることができる。なお、押出装置内の空隙体積とは、シリンダー容積からスクリュー体積を除いたものを指す。
【0051】
本発明において、上記充填率は、下式(4)~(6)に従って算出した値である。
式(4):(押出装置内に存在する再生樹脂組成物(a)質量)[kg]=(全材料質量)-{(押出装置へ投入前の材料質量)+(再生プラスチック質量(B)}
式(5):(押出装置内に存在する再生樹脂組成物(a)体積)[m3]=(押出装置内に存在する再生樹脂組成物(a)質量)/(再生プラスチック(B)の密度)
式(6):充填率[%]=(押出装置内に存在する再生樹脂組成物(a)体積)/(押出装置内の空隙体積)
【0052】
再生樹脂組成物(a)を吐出し、冷却することによって再生プラスチック(B)を得ることができる。一実施形態において、押出装置の吐出部にスクリーンメッシュ(金属の網)を設けることが好ましい。スクリーンメッシュを使用した場合、成形されるペレットへの異物を容易に取り除くことができる。スクリーンメッシュの種類は、特に制限されない。例えば、平織、綾織、平畳織及び綾畳などの織製織と、パンチングメタルのタイプとが挙げられる。なかでも、平織が好ましい。
【0053】
スクリーンメッシュのサイズは、吐出部の圧力、及び目詰まりを考慮し、試験篩US規格No.において、好ましくは40メッシュ以上であり、より好ましくは80メッシュ以上、さらに好ましくは120メッシュ以上である。一実施形態において、スクリーンメッシュのサイズは、250メッシュ以下であってよく、好ましくは200メッシュ以下であってよい。
【0054】
上記吐出工程における、押出装置の先端排出部の樹脂の圧力(以下、吐出圧力ともいう)は、18MPa以下が好ましく、より好ましくは15MPa以下であり、更に好ましくは10MPa以下であり、特に好ましくは8MPa以下である。一実施形態において、先端排出部の樹脂の吐出圧力は、0.1MPa以上であってよく、好ましくは1MPa以上であってよく、2MPa以上であってよい。
【0055】
吐出圧力は、加工温度、スクリュー回転数、吐出量、樹脂粘度、スクリーンメッシュ等の影響を受ける。また、不溶物、異物などのメッシュの詰まり、又は、水分、塩素含有物などに起因した発泡なども圧力の変化の要因となる。吐出工程における上記圧力を、上記範囲内に調整した場合、圧力によるスクリーンメッシュ(金属の網)の広がりを抑制することができる。その結果、不純物となる異物を通し難くなる(異物の捕獲が容易となる)ことから、純度が安定した再生プラスチックを連続して得ることが容易となる。
【0056】
吐出された再生樹脂組成物(a)を冷却、及び細断して再生プラスチック(B)とする方法としては、例えば、ホットカット方式、ストランドカット方式が挙げられる。特に制限されないが、連続生産性を考慮し、ホットカット方式が好ましい。
【0057】
冷却方法としては、例えば、空冷、風冷、水冷が挙げられる。一実施形態において、上記製造方法は、水冷によって冷却を行う水冷工程を含むことが好ましい。一実施形態において、冷却は、冷水を使用して、再生樹脂組成物(a)を20℃~80℃に冷却することが好ましく、30℃~60℃に冷却することがより好ましい。再生樹脂組成物(a)は概ね40℃の温度になると、固形物(再生プラスチック)として取扱い可能な状態となる。
【0058】
(再生プラスチック(B)の添加剤等)
一実施形態において、再生プラスチック(B)は、本発明による効果を損なわない範囲で、公知の添加剤等をさらに含有してもよい。例えば、上述の製造方法において、上記積層体(A)の他に、必要に応じて各種添加剤等を使用し、これらを押出装置で加工してもよい。一実施形態において、上記積層体(A)の細分化によって得られる裁断物又は破砕物と、各種添加剤等の任意成分との混合は、押出装置の溶融混練部への供給に先立ち、ヘンシェルミキサー、タンブラー、ディスパー等を用いて実施してもよい。他の実施形態では、予備混合なしで、押出装置の溶融混練部に上記積層体を供給する時に、さらに各種添加剤を供給して、これらを溶融混練してもよいし、また、公知のサイドフィーダー等を用いて、上記積層体とは別の供給口より各種添加剤を供給して、これらを溶融混錬してもよい。
【0059】
特に限定するものではないが、添加剤としては、例えば、酸化防止剤、滑剤、耐候安定剤、ワックス、帯電防止剤、相溶化剤が挙げられる。上記滑剤は、脂肪酸アミド系、アルキレン脂肪酸アミド系、金属石鹸系、及びエステル系からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。耐候安定剤は、ヒンダードアミン系化合物を含むことが好ましい。ワックスは、酸価が5mgKOH/g以下の化合物が好ましい。帯電防止剤は、脂肪酸スルホン酸塩及び脂肪酸エステル系からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。相溶化剤は、オレフィン系ブロックコポリマー等が好ましい。
【0060】
一実施形態において、上記製造方法では、焼け防止の観点から、酸化防止剤の存在下で溶融混錬を実施することが好ましい。(酸化防止剤)酸化防止剤としては、フェノール系、リン酸系、硫黄系、アミン系等の公知の酸化防止剤を使用できるが、フェノール系酸化防止剤、及びリン酸系酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。上記酸化防止剤の添加量は、再生樹脂組成物(a)又はプラスチック積層体(A)の全質量を基準(100質量%)として、0.01~5質量%であることが好ましく、0.01~3質量%であることがより好ましく、0.05~1質量%であることがさらに好ましく、0.1~0.5質量%であることが特に好ましい。したがって、酸化防止剤の含有量が上記範囲内となるように、積層体と酸化防止剤との供給量を調整することが好ましい。酸化防止剤の使用によって、異物数及び焼けが少なく、良質な再生プラスチックをより得ることがさらに容易になる。
【0061】
(フェノール系酸化防止剤)使用可能な酸化防止剤として、例えば、モノフェノール系、ビスフェノール系、トリスフェノール系、テトラフェノール系、ポリフェノール系、チオビスフェノール系などが挙げられる。なかでも、焼け防止効果の大きい、ビスフェノール系、トリスフェノール系、及びテトラフェノール系からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。少なくともテトラフェノール系酸化防止剤を使用することがより好ましい。
【0062】
フェノール系酸化防止剤として、市販品を使用することもできる。例えば、BASF社製のIrganox1010、Irganox1076、Irganox245等を使用することができる。
【0063】
(リン酸系酸化防止剤)使用可能な酸化防止剤として、例えば、モノノニル系、ジノニル系、トリノニル系、アリル系、アルキルアリル系、モノアルキル系、ジアルキル系、トリアルキル系、ジオキサ系が挙げられる。なかでも、焼け防止効果の大きい、トリノニル系、アリル系、アルキルアリル系、トリアルキル系、及びジオキサ系からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。少なくともジオキサ系を使用することがより好ましい。
【0064】
リン酸系酸化防止剤として、市販品を使用することもできる。例えば、BASF社製のIrgafos168、ADEKA社製のADK STAB PEP-36(等を使用することができる。
【0065】
<1-2>プラスチック積層体(A)
プラスチック積層体(A)は、少なくとも第1の樹脂層と、接着剤層及び/又は印刷層と、第2の樹脂層とを有する。第1の樹脂層及び第2の樹脂層の形態として、フィルム状又はシート状の基材及びシーラント、並びに溶融塗工で形成された樹脂膜等が挙げられる。なかでも、フィルム状又はシート状の基材及びシーラントが好ましい。プラスチック積層体の一実施形態としてラミネート積層体が挙げられる。本発明による製造方法では、再生プラスチック(B)の原料として、ラミネート積層体を好適に用いることができる。ラミネート積層体は、各樹脂層を貼り合わせ(ラミネート)によって製造した積層体を指し、第1の樹脂層と、接着剤層及び印刷層の少なくとも1つと、第2の樹脂層とを含んでもよい。一実施形態において、ラミネート積層体は、第1の樹脂層と、印刷層と、第2の樹脂層とを貼り合わせた構造を有してよい。また、一実施形態において、ラミネート積層体は、第1の樹脂層と、接着剤層と、第2の樹脂層とを貼り合わせた構造を有してよい。なお、印刷層などの基材層以外の各層が、それぞれ第1の印刷層、及び第2の印刷層のように、複数層が接して積層されている場合には、これらを纏めて単に印刷層と表記する。
【0066】
一実施形態において、上記ラミネート積層体における第1の樹脂層は、プラスチック基材(下記においては「基材」又は「シーラント」と略記)であることが好ましい。この実施形態において、プラスチック積層体(A)の構成の具体例として、以下の構成が挙げられる。但し、これらに限定されない。以下(1)~(20)の構成の表示においては、「/」は各層の境界を意味する。接着剤層は、従来公知の方法であるドライラミネート及びノンソルラミネートで使用される接着剤で構成される層に限定されない。接着剤層は、押し出しラミネートにおける、ポリオレフィン樹脂又はその他の熱可塑性樹脂から構成される層であってもよい。
(1)基材/印刷層/接着剤層/シーラント
(2)基材/印刷層/接着剤層/中間基材/接着剤層/シーラント
(3)基材/印刷層/接着剤層/第1の中間基材/接着剤層/第2の中間基材/接着剤層/シーラント
(4)基材/印刷層/熱可塑性樹脂層
(5)基材/印刷層/(AC剤層)/熱可塑性樹脂層/シーラント
(6)基材/印刷層/(AC剤層)/熱可塑性樹脂層/中間基材/(AC剤層)/熱可塑性樹脂層/シーラント
(7)基材/印刷層/接着剤層/中間基材/(AC剤層)/熱可塑性樹脂層/シーラント
(8)基材/印刷層/(AC剤層)/熱可塑性樹脂層/中間基材/接着剤層/シーラント
(9)印刷層/基材/ヒートシール層
(10)印刷層/基材/接着剤層/シーラント
(11)基材/接着剤層/シーラント
(12)基材/接着剤層/中間基材/接着剤層/シーラント
(13)印刷層/基材/接着剤層/中間基材/接着剤層/シーラント
(14)印刷層/基材/(AC剤層)/熱可塑性樹脂層/シーラント
【0067】
上記構成においてAC剤層とは、アンカーコート剤層を表し、基材または印刷層と、熱可塑性樹脂層との接着性の向上のために用いられる。上記(AC剤層)は、存在しても、存在しなくてもよい。上記(AC剤層)は、接着剤層の一実施形態である。
【0068】
上記構成の積層体は、それぞれ、さらにバリア層を含んでもよい。一実施形態において、積層体は、さらにバリア層を含むことが好ましい。バリア層は、蒸着層、バリアコート層、及びバリア接着剤層からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。以下、バリア層を含む積層体の好ましい形態を示す。ただし、本発明において積層体の形態はこれらに限定されない。
(15)基材/蒸着層/印刷層/接着剤層/シーラント
(16)基材/印刷層/接着剤層/蒸着層/中間基材/接着剤層/シーラント
(17)基材/印刷層/接着剤層/中間基材/蒸着層/接着剤層/シーラント
(18)基材/印刷層/接着剤層/蒸着層/シーラント
(19)基材/バリアコート層/印刷層/接着剤層/シーラント
(20)基材/印刷層/バリアコート層/接着剤層/シーラント
(21)バリアコート層/基材/印刷層/接着剤層/シーラント
(22)基材/印刷層/バリア接着剤層/シーラント
(23)基材/蒸着層/接着剤層/シーラント
(24)基材/バリアコート層/接着剤層/シーラント
【0069】
以下、積層体(A)を構成する各層について、より具体的に説明する。(a-1)第1の樹脂層積層体(A)における第1の樹脂層は、原料としてポリオレフィン樹脂を主として含むことが好ましい。ポリオレフィン樹脂は、エステル系樹脂と比較して、アルカリ性水溶液に対する耐性、及び成形過程時の熱に対する耐性が高く、熱分解又は加水分解などが起きにくいため、分子量を高く維持することができる。更に、リサイクル後の回収の容易さの観点から、ポリオレフィン樹脂として、例えば、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレンが好適に挙げられる。
【0070】
第1の樹脂層の厚みは、特に限定されないが、包装容器製造時の加工性の観点から、好ましくは5μm以上150μm以下であってよく、より好ましくは10μm以上70μm以下であってよい。一実施形態において、ポリオレフィン樹脂の中でもヒートシール性を有するものを好適に使用できる。これに該当する例として、コロナ処理二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、高密度ポリエチレンフィルム(HDPE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、溶融塗工で形成されたPE樹脂膜などが挙げられる。また、第1の樹脂層は、上記のように基材に蒸着層、又はバリアコート層をさらに有するバリア基材である形態も好ましい。
【0071】
ポリオレフィン樹脂を主として含むプラスチック基材としては、ポリオレフィン基材が好ましく、オレフィン基材同士が積層されていてもよいし、接着剤等を介してオレフィン基材とは異なる基材が積層されていてもよい。「オレフィン基材とは異なる基材」は、異なる性質を有するフィルムが挙げられ、種類を問わない。また、積層された基材である場合は、接着剤層を含む形態であってもよい。プラスチック基材を積層させる方法は特に限定されず、共押出製法、熱融着、接着層を介した圧着など、従来公知の方法が挙げられる。ただし、「オレフィン基材とは異なる基材」が用いられる場合は、プラスチック積層体(A)の全質量を基準としてポリオレフィン樹脂の含有量が、80質量%以上となる範囲で用いられる。
【0072】
基材は、帯電防止剤、防曇剤、紫外線防止剤などの添加剤を含む(塗工あるいは混練した)形態、易接着性コート層(例えばポリビニルアルコール及びその誘導体を含む層)を有する形態、基材の表面をコロナ処理あるいは低温プラズマ処理した形態などが好ましい。上記の添加や加工は、印刷インキ、及びその他コーティング剤の濡れ性を向上させる目的で、又はフィルムに特定の機能性を持たせる目的で適用される。例えば、湿気による包材の曇りを防止することで内容物の視認性に優れた包材を提供するために好適に適用される。
【0073】
(a-2)第2の樹脂層
積層体(A)における第2の樹脂層は、第1の樹脂層と同一でも異なっていてもよく、例えば、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレンが好適に挙げられる。
【0074】
第2の樹脂層の厚みは、特に限定されないが、包装容器製造時の加工性の観点から、好ましくは5μm以上150μm以下であってよく、より好ましくは10μm以上70μm以下であってよい。一実施形態において、ポリオレフィン樹脂の中でもヒートシール性を有するものを好適に使用できる。これに該当する例として、コロナ処理二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、高密度ポリエチレンフィルム(HDPE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、溶融塗工で形成されたPE樹脂膜などが挙げられる。
【0075】
(b)印刷層
積層体(A)における印刷層は、装飾又は美感の付与、並びに、内容物、賞味期限、及び、製造者又は販売者といった各種表示等を目的としている。印刷層は、任意の絵柄、パターン、文字、及び記号等を表示する層であってよい。印刷層は、絵柄、パターン、文字、及び記号等を有さないベタ印刷層であってもよい。印刷層の形成方法は特に制限されず、公知の着色剤(顔料及び/又は染料)を用いて形成することができるが、顔料及びバインダー樹脂を含む印刷インキを用いて形成することが好ましい。また、印刷層は、単層構成でも複層構成でもよく、表層に印刷してもよい。印刷層の厚みは、好ましくは0.1~10μmであり、より好ましくは0.5~5μmであり、さらに好ましくは1~2.5μmである。
【0076】
(顔料)
積層体(A)における印刷層は、着色剤を含む印刷インキを用いて形成されることが好ましい。再生プラスチックの着色による品質劣化を考慮し、印刷層全質量中の着色剤の含有率が、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、23質量%以下であることが更に好ましい。着色剤は顔料であることが好ましく、当該顔料は、有機顔料、無機顔料、体質顔料のいずれでも使用可能である。無機顔料としては、酸化チタン等の公知の顔料を使用できる。体質顔料としては、シリカ、硫酸バリウム、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどが好ましい。有機顔料としては、有機化合物、有機金属錯体からなる公知の顔料を好適に使用できる。顔料等の着色剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。以下、代表的な顔料を例示する。
【0077】
上記有機顔料としては、以下の例には限定されないが、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系などの顔料が挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。
【0078】
有機顔料の色相としては黒色顔料、藍色顔料、緑色顔料、赤色顔料、紫色顔料、黄色顔料、橙色顔料、茶色顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。また更には、黒色顔料、藍色顔料、赤色顔料、黄色顔料、からなる群より選ばれる少なくとも1種又は2種以上が好ましい。有機顔料として具体的な例をカラーインデックス(ColourIndexInternational、略称C.I.)のC.I.ナンバーで示す。好ましくはC.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントブラック7である。
【0079】
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられ、アルミニウムはリーフィングタイプ又はノンリーフィングタイプがあるが、ノンリーフィングタイプが好ましい。
【0080】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂とは、積層体(A)の印刷層における結着樹脂をいい、後述するように、バインダー樹脂の全質量を基準として塩素含有率は5質量%以下であることが好ましい。
【0081】
バインダー樹脂は、有機溶剤に可溶な熱可塑性樹脂であることが好ましい。バインダー樹脂として、ガラス転移温度が-60℃以上40℃未満である樹脂と、ガラス転移温度が40℃以上200℃以下である樹脂とを併用することが好ましい。更に好ましくは、ガラス転移温度が-50℃~0℃である樹脂と、ガラス転移温度が50℃~190℃である樹脂とを併用してよい。なお、本明細書においてガラス転移温度とは、示差走査熱量計(DSC)における測定値である。
【0082】
バインダー樹脂は、以下に限定されるものではないが、具体例として、ウレタン樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ロジン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ダンマル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、及びこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。なかでも、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂以外の樹脂からなる群より選択される1種以上を含有することが好ましく、少なくともウレタン樹脂を含有することがより好ましい。
【0083】
ウレタン樹脂は、ポリエステル系ウレタン樹脂(C)、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、及びポリオレフィン系ウレタン樹脂等、公知のウレタン樹脂を使用することができるが、ポリエステル系ウレタン樹脂(C)であることが好ましい。
【0084】
[ポリエステル系ウレタン樹脂(C)]
ポリエステル系ウレタン樹脂(C)とは、ポリエステル由来の構成単位を有するウレタン樹脂をいう。好ましくはウレア結合を有する形態である。ポリエステル系ウレタン樹脂(C)全質量中に、ポリエステル由来の構成単位を40質量%以上有することが好ましく、50質量%以上有することがより好ましく、60質量%以上有することが更に好ましく、65質量%以上有することが特に好ましい。ポリエステル系ウレタン樹脂(C)は、以下に限定されないが、例えば、ポリイソシアネートと、ポリエステルポリオールを含むポリオールとを反応させて得られたウレタンプレポリマーに、さらにポリアミン(鎖伸長剤)と、必要に応じて反応停止剤とを反応させて得られるポリエステル系ウレタン樹脂等が挙げられる。ポリエステル由来の構成単位を有するウレタン樹脂を得るためには、例えば、上記ウレタン樹脂の合成方法において、ポリオールとしてポリエステルポリオールを使用する方法を用いることができるが、特に限定されない。
【0085】
・ポリエステルポリオール
上記ポリエステルポリオールの数平均分子量は、500~10,000であることが好ましく、1,000~5,000であることがより好ましい。ここで、上記の数平均分子量は水酸基価から算出されるものであり、水酸基価は、樹脂中の水酸基をエステル化又はアセチル化し、残存する酸をアルカリで逆滴定して算出した樹脂1g中の水酸基量を、水酸化カリウムのmg数に換算した値で、JIS K 0070に従って測定を行った値である。ポリエステルポリオールの数平均分子量が10,000以下であると、印刷層のプラスチックフィルムに対する耐ブロッキング性に優れる。また、ポリエステルポリオールの数平均分子量が500以上であると、印刷層の柔軟性が向上し、プラスチックフィルムへの密着性に優れる。
【0086】
上記ポリエステルポリオールとしては、ポリエステルジオールであることが好ましく、当該ポリエステルジオールとしては、ジオールとジカルボン酸(二塩基酸ともいう)の縮合物であるポリエステルジオールであることが好ましい。なお、ポリエステルポリオールは単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0087】
上記ポリエステルジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,3,5-トリメチルペンタンジオール、2、4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,12-オクタデカンジオール、1,2-アルカンジオール、1,3-アルカンジオール、1-モノグリセライド、2-モノグリセライド、1-モノグリセリンエーテル、2-モノグリセリンエーテル、ダイマージオール、水添ダイマージオール等が好適に挙げられる。中でも、分岐ジオールを含むジオールとジカルボン酸との縮合物であるポリエステルジオールであることが好ましい。また、環状エステル(ラクトン等)を開環反応させて得られるポリエステルジオールであってもよい。
【0088】
上記ジカルボン酸としては、アジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、グルタル酸、1、4-シクロヘキシルジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸等が好適に挙げられ、中でもアジピン酸、コハク酸、セバシン酸等が好ましい。さらにポリエステルポリオールの原料としてヒドロキシル基を3個以上有するポリオール、カルボキシル基を3個以上有する多価カルボン酸を併用することもできる。
【0089】
上記ジオールは、直鎖状ジオールと、分岐状ジオールとに分類することができる。ここで、直鎖状ジオールとは、原子数2以上であるジオールであり、アルキレングリコール、ジアルキレングリコール、トリアルキレングリコールその他のジオールをいう。また、分岐状ジオールとは、アルキレングリコールの炭化水素基の少なくとも1つの水素原子が水素原子以外で置換されたジオールをいう。
【0090】
直鎖状ジオールは結晶性を付与し、分岐状ジオールは柔軟性を付与するので、そのバランスにより、バインダー樹脂としてのポリウレタン樹脂は耐熱性が向上する。ポリウレタン樹脂が分岐状ジオール構造及び/又は直鎖ジオール構造を含むことにより、包装材のリサイクルの効率性にも効果があると考えられる。後述するように、ポリウレタン樹脂が分岐状ジオール構造及び直鎖状ジオール構造の双方を含むことがより好ましい。
【0091】
上記分岐状ジオールとしては、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(以下、BEPGとも記載する)と、2-メチル-1,3-プロパンジオール(以下、MPOとも記載する)、3メチル1,5ペンタンジオール(MPDとも記載する)、ネオペンチルグリコール(NPGとも記載する)、1,2-プロピレングリコール(以下、PGとも記載する)、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-ブタンジオール、ジプロピレングリコール等が挙げられ、NPG、PGから選ばれる少なくとも1種の分岐状ジオールが特に好ましい。
【0092】
上記直鎖状ジオールとしては、アルキレングリコールであることが好ましく、エチレングリコール(EGとも記載する)、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール(1,3PDとも記載する)、1,4-ブタンジオール(1,4BDとも記載)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられる。なかでも、炭素数8以下、好ましくは炭素数6以下の直鎖状ジオールが好ましく、EG、1,3PD、1,4BD、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、等が好ましい。さらに物性の観点からは、1,3PDが特に好ましい。
【0093】
ポリエステルポリオールが分岐状ジオール及び直鎖状ジオールを含む場合、ラミネート強度の観点から、ポリエステルポリオールの全ジオール中の分岐状ジオール及び直鎖状ジオールの質量比(分岐状ジオール:直鎖状ジオール)は、10:90~90:10であることが好ましく、20:80~80:20であることがより好ましく、30:70~70:30であることが更に好ましい。
【0094】
なお、分岐状ジオール単位と直鎖状ジオール単位はそれぞれをひとつのポリエステルポリオール中に存在させてもよいし、分岐状ジオール単位のみを含むポリエステルポリオールと、直鎖状ジオール単位のみを含むポリエステルポリオールを混合物原料として利用し、バイオマスウレタン樹脂としてもよく、およそ同一の効果が得られる。
【0095】
これらのなかでも、ポリエステルポリオールの好ましい具体例として、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸その他の二塩基酸と、分岐状ジオール及び直鎖状ジオールの双方を含むものが好ましい。これにより、包装材におけるラミネート強度がより良好となる。
【0096】
・ポリイソシアネート
上記ポリイソシアネートとしてはジイソシアネートが好ましく、芳香族、脂肪族又は脂環族の各種公知のジイソシアネートを使用することができる。例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4、4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が代表例として挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。なかでも、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく、溶解性の観点からイソホロンジイソシアネートがさらに好ましい。
【0097】
ポリエステル系ウレタン樹脂(C)、及びその他のウレタン樹脂は、水酸基価及び/又はアミン価等の活性水素基を有することが好ましい。水酸基価は、0.5~30mgKOH/gであることが好ましく、1~20mgKOH/gであることがより好ましく、2~15mgKOH/gであることが更に好ましい。アミン価を有する場合は、0.1~15mgKOH/gであることが好ましく、1~12mgKOH/gであることがより好ましい。一方で、ウレタン樹脂の酸価は、5mgKOH/g以下であることが好ましく、3mgKOH/g以下であることがより好ましい。酸価はカルボキシ基など酸性基によって与えられるが、最小限の酸価とすることで基材との密着性を向上させるためである。
【0098】
ポリエステル系ウレタン樹脂(C)、及びその他のウレタン樹脂の重量平均分子量は、20,000~100,000であることが好ましく、25,000~90,000であることがより好ましく、30,000~80,000であることが更に好ましい。上記範囲である場合、耐熱性が向上し、異物数及び焼けに優れた再生プラスチックを得ることができる。
【0099】
ポリエステル系ウレタン樹脂(C)、及びその他のウレタン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、2.0~8.0であることが好ましく、2.5~7.0であることがより好ましく、3.0~6.0であることが更に好ましい。Mwとは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。Mw/Mnが上記範囲である場合、以下に説明するイソシアネート系硬化剤との架橋により凝集力が強化されて、耐熱性が向上し、異物数及び焼けに優れた再生プラスチックを得ることができる。
【0100】
バインダー樹脂は、さらに、ウレタン樹脂以外の樹脂(以下、樹脂Lという)を含むことが好ましい。樹脂Lは、好ましくは環構造を有する樹脂であってよい。より好ましくは、アセタール環構造、芳香族環構造、脂環族環構造及びピラノース環構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の環構造を有する樹脂であってよい。さらに好ましくは、アセタール環構造を有する樹脂である。これらの環構造は二重結合を有していてもよいし、アルキル基又はその他の置換基を有していてもよい。
【0101】
[樹脂L]
樹脂Lは、環構造を有する構成単位を、樹脂Lの質量を基準として好ましくは40~95質量%の範囲で含み、より好ましくは50~90質量%の範囲で含む。樹脂Lが、環構造を有する構成単位を上記範囲で含むと、印刷インキにおける顔料分散が促進される。また、包装材のラミネート強度に優れ、経時劣化を抑制することができる。さらに、耐ブロッキング性に優れるものとなる。本明細書において、環構造を有する単量体の質量には、メチル基やニトロ基のような環構造に置換もしくは隣接した基も含む。例えば、樹脂Lがスチレン-アクリル樹脂であり、α-メチルスチレン由来の構成単位が50質量%、アクリルモノマーであるブチルメタクリレート由来の構成単位が50質量%である場合、環構造の含有率は50質量%である。
【0102】
環構造を有する構成単位の含有率は、以下の式(7)により算出してもよい。
式(7):環構造を有する構成単位の含有率(質量%)=環構造を有する単量体の質量×100/樹脂Lを構成する全単量体の合計質量
【0103】
環構造を有する樹脂としては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、セルロースエステル樹脂、ロジン樹脂、ポリスチレン樹脂、環構造を有するポリエステル樹脂、環構造を有するアクリル樹脂、及びこれらの共重合樹脂が挙げられる。より好ましくは、ポリビニルアセタール樹脂、セルロースエステル樹脂、及びロジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有してよい。更に好ましくは、ポリビニルアセタール樹脂を含有してよい。
【0104】
・ポリビニルアセタール樹脂
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをブチルアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド等のアルデヒドと反応させてアセタール環化したものであり、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位及びアセタール環基を含むことが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂は、アセタール環を60~90質量%、ビニルアルコール単位を5~30質量%、酢酸ビニル単位を0.5~10質量%含むことが好ましく、より好ましくは、アセタール環としてブチラール環を有するポリビニルブチラール樹脂である。ポリビニルアセタール樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10,000~100,000、より好ましくは10,000~80,000である。ポリビニルアセタール樹脂のガラス転移点は、好ましくは50~80℃であり、より好ましくは60~75℃である。
【0105】
・セルロースエステル樹脂
セルロースエステル樹脂として好ましくは、セルロースアセテートアルキネート樹脂であり、例えば、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好適に用いられる。セルロースエステル樹脂は、アルキル基を有するものが好ましい。上記アルキル基は、好ましくは炭素数10以下のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が好適に用いられる。アルキル基は置換基を有していてもよい。セルロースエステル樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5,000~200,000であり、より好ましくは10,000~10,000であり、さらに好ましくは15,000~80,000である。セルロースエステル樹脂のガラス転移点は、好ましくは120℃~180℃であり、より好ましくは130~170℃である。ウレタン樹脂とセルロースエステル樹脂とを併用することで、印刷適性、耐ブロッキング性等が向上する。
【0106】
・ロジン樹脂
ロジン樹脂とは、ロジン酸(例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸)由来の構成単位を主成分として有するものをいう。ここで主成分とは50質量%以上であることを指す。ロジン酸又はロジン樹脂は水素化されていてもよい。ロジン樹脂として好ましくは、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、及び重合ロジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である。ロジン樹脂の酸価は、好ましくは350mgKOH/g以下であり、より好ましくは250mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは150mgKOH/g以下である。一実施形態として、酸価は100mgKOH/g以下が好ましく、50mgKOH/g以下であることがより好ましい。ロジン樹脂の軟化点は、好ましくは60~180℃であり、より好ましくは70~150℃である。本明細書において、軟化点とは、環球法による測定値であり、JISK2207に準拠して測定することができる。
【0107】
・ロジンエステル
ロジン樹脂としては、分子量が1,000以下の低分子ポリオールとロジン酸とのエステル縮合樹脂であるロジンエステルが好ましい。低分子ポリオールは、好ましくは、1分子中の水酸基数が2~4(以下、2~4官能と略記する場合がある)であり、分子量が50~500である。このような低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,10-デカンジオール等の2官能低分子ポリオール;グリセリン、トリメチロールプロパン等の3官能低分子ポリオール;エリスリトール、ペンタエリスリトール等の4官能低分子ポリオール;が好適に用いられる。中でも、3官能及び/又は4官能の低分子ポリオールが好ましい。ロジンエステルの重量平均分子量は、好ましくは500~2,000であり、より好ましくは500~1,500である。
【0108】
[バインダー樹脂の塩素含有率]
一実施形態において、バインダー樹脂の塩素含有率は、5質量%以下であることが好ましく、0である場合を含む。上記塩素含有率は、より好ましくは4質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは2質量%以下である。また、1質量%以下、あるいは0.5質量%以下である形態も特に好ましい。上記塩素含有率は、バインダー樹脂の全質量を基準とした場合の塩素原子の含有率(質量%)である。塩素含有率が5質量%以下であると、環境安全性に優れ、かつ、遊離塩素が発生し難くなるため、リサイクルの観点からも好ましい。バインダー樹脂中の塩素含有率を上記範囲内に調整した場合、再生プラスチックの製造において望ましくない発泡を容易に抑制することができる。
【0109】
上記塩素含有率は、イオンクロマトグラフィー(IC)や、ICP質量分析装置(ICP-MS)等公知の方法を用いて測定することができる。測定機器としては、例えば、ICでは島津製作所製LC-20ADsp、ICP-MSではAgilentTechnologies製Agilent7700xが挙げられる。また、印刷層の塩素含有率は、印刷層を構成する各原料の塩素含有率から、以下の式(8)及び(9)により簡易的に算出することができる。その他各層においても同様である。
式(8):バインダー樹脂固形分総質量中の塩素含有率(%)=バインダー樹脂固形分総質量中の塩素の質量/バインダー樹脂の固形分総質量(%)
式(9):印刷層固形分総質量中の塩素含有率(%)=印刷層固形分総質量中の塩素の質量/印刷層の固形分総質量(%)
【0110】
本発明において塩素含有率は、JISK0127(2013)に準拠して測定されることが好ましい。この測定方法では、燃焼法にて前処理を行ったサンプルをイオンクロマトグラフ法で定量する。
【0111】
[バインダー樹脂の硝化度]
硝化度とは、硝酸エステルのエステル化の度合いを窒素含有量(質量%)で表したものである。例えば、市販のニトロセルロースの硝化度は、通常、10~12質量%である。本発明におけるバインダー樹脂は、硝化度が1質量%以下であることが好ましく、0である場合を含む。硝化度が1質量%以下であることで、NOXガス発生を抑制でき、より安全性の高いリサイクル材料を提供することができる。バインダー樹脂の硝化度は、より好ましくは0.6質量%以下であり、更に好ましくは0.4質量%以下であり、特に好ましくは0.2質量%以下である。なお、上記ウレタン樹脂の硝化度としては、0.3質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましい。また、上記の樹脂Lの硝化度としては、0.8質量%以下であることが好ましく、0.6質量%であることがより好ましく、0.4質量%であることが更に好ましい。
【0112】
(イソシアネート系硬化剤)
一実施形態において、印刷層を形成に用いられる印刷インキは、イソシアネート系硬化剤を含むことが好ましい。例えば、イソシアネート系硬化剤のイソシアネート基と、ウレタン樹脂が有する水酸基やアミノ基、さらにその他の活性水素基を有する場合は当該活性水素基と架橋して耐熱性が向上する。ウレタン樹脂が当該活性水素基を有しない場合は、イソシアネート系硬化剤のみで自己架橋することで耐熱性が向上する。
【0113】
以下、イソシアネート系硬化剤の実施形態として好ましい態様を示す。当該イソシアネート系硬化剤の重量平均分子量は、800~8000であることが好ましく、1000~4500であることがより好ましく、1500~4000であることが更に好ましい。また、イソシアネート系硬化剤の分子量分布(Mw/Mn)は、2.0~5.0であることが好ましく、2.2~4.5であることがより好ましく、2.5~4.0であることが更に好ましい。重量平均分子量、さらには、Mw/Mnが上記範囲である場合、上記ウレタン樹脂との作用で印刷インキの耐熱性が向上するため、異物数、及び焼けが少ない、良質な再生プラスチックを得ることができる。
【0114】
当該イソシアネート系硬化剤としては、アダクト型ポリイソシアネート(アダクト体)、ビウレット型ポリイソシアネート(ビウレット体)、イソシアヌレート型ポリイソシアネート(イソシアヌレート体)、2官能型ポリイソシアネート等を含むポリイソシアネートが好適である。アダクト体、ビウレット体及びイソシアヌレート体は、例えば、トリメチロールプロパン及びその他のポリオールとジイソシアネートとの反応から得られるアダクト体、ジイソシアネートが二量化してビウレット結合で繋がれたビウレット体、ジイソシアネートの環状三量化反応から得られるイソシアヌレート体等が挙げられる。当該ジイソシアネートとしては、上記ジイソシアネートを任意に選択して使用してもよい。なかでも、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(水添XDI)等が好適に挙げられる。アダクト型ポリイソシアネート、ビウレット型ポリイソシアネート、及びイソシアヌレート型ポリイソシアネートは、これらの2種以上を組み合わせて使用してもよく、更にその他のポリイソシアネートと併用してもよい。
【0115】
ウレタン樹脂とイソシアネート系硬化剤との質量比(ウレタン樹脂:イソシアネート系硬化剤)は、99:1~60:40であることが好ましく、98:2~65:35であることがより好ましく、95:5~70:30であることが更に好ましい。ウレタン樹脂の他に樹脂Lを使用する場合は、ウレタン樹脂及び樹脂Lの合計量と、イソシアネート系硬化剤との質量比は、99:1~60:40であることが好ましく、95:5~70:30であることがより好ましい。上記質量比を上記範囲内に調整した場合、耐熱性が向上し、異物数及び焼けが少ない、良質な再生プラスチックを容易に得ることができる。
【0116】
(印刷層に含まれる添加剤)
印刷層は、本発明の効果を損なわない範囲で、顔料分散剤、イソシアネート系硬化剤、キレート架橋剤、炭化水素ワックス、マット化剤、気相法シリカ、湿式法シリカ、有機処理シリカ、アルミナ処理シリカ等の微粉末シリカ、脂肪酸アマイドワックス、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、難燃剤等の公知の添加剤を含むことができる。
【0117】
<接着剤層>
接着剤層は、各層を接着することができれば特に限定されることはなく、オレフィン系接着剤、アクリル系接着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合系接着剤、反応性ウレタン接着剤等のドライラミネート接着剤及びノンソルラミネート接着剤、イミン系アンカーコート剤、ブタジエン系アンカーコート剤、イソシアネート系アンカーコート剤、押出ラミネートで用いられる熱可塑性樹脂などが好適に挙げられる。各層を接着(ラミネートともいう)させる方法は特に限定されず、押出ラミネート法、ドライラミネート法、ノンソルラミネート法など、従来公知の方法が挙げられる。
【0118】
(ポリオール樹脂(D))
ポリオール樹脂(D)は特に制限されず、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油又はそれらの混合物のほか、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール等のグリコール;数平均分子量200~3,000のポリアルキレングリコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能又は4官能の脂肪族アルコール;上記3官能又は4官能の脂肪族アルコールに、上記グリコール若しくはポリオールが付加したポリオールを用いることができる。これらは単独で使用、又は2種類以上を併用してもよい。
【0119】
ポリオール樹脂(D)として好ましくは、ポリエステルポリオール由来の構成単位又はポリエーテルポリオール由来の構成単位を含むものである。またポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールそのものであってもよい。なかでも、ポリオール樹脂(D)が、ウレタン構造を含むウレタンポリオール樹脂であることが好ましい。
【0120】
上記ポリエステルポリオールとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物(以下、カルボキシル基成分ともいう)と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、1,9-ノナンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール等のジオール類又はそれらの混合物(以下、水酸基成分ともいう)とを、エステル化反応させて得られるポリエステルポリオール;ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール;が挙げられる。上記カルボキシル基成分及び水酸基成分は、2種以上を併用してもよい。
【0121】
上記ポリエーテルポリオールとしては、ポリエーテルジオール、ポリエーテルトリオール等が挙げられ、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、水、エチレングリコール、プロピレングリコール等の2官能低分量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルジオール;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分量トリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルトリオール;が挙げられる。
【0122】
上記、ポリエステルポリオール由来の構成単位又はポリエーテルポリオール由来の構成単位を含むポリオール樹脂(D)は、上記ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールに、さらにジイソシアネートを反応させたポリエステルウレタンポリオール又はポリエーテルウレタンポリオールであってもよいし、さらに酸無水物を反応させたものであってもよい。上記ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。上記酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸エステル無水物が挙げられる。トリメリット酸エステル無水物としては、例えば、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテートが挙げられる。
【0123】
ポリオール樹脂(D)の重量平均分子量(Mw)は、2,000~80,000であることが好ましく、5,000~60,000であることがより好ましく、10,000~60,0000であることが更に好ましい。また、ポリオール樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が1.5~10であるポリオール樹脂(D)を使用することで、耐熱性を向上させることができる。特に、ポリオール樹脂が、ポリエーテルポリオール由来の構成単位を含む場合は、その分子量分布(Mw/Mn)が3.0~10であることが好ましく、3~8であることがより好ましい。ポリエステルポリオール由来の構成単位を含む場合は、その分子量分布(Mw/Mn)が1.5~5.0であることが好ましく、2~4であることがより好ましい。
【0124】
ポリオール樹脂(D)の酸価は、特に制限されないが、好ましくは0~50mgKOH/g、より好ましくは0~40mgKOH/gである。ポリオール樹脂の水酸基価は、特に制限されないが、好ましくは1~200mgKOH/g、より好ましくは3~150mgKOH/gである。上記酸価を上記範囲内に調整した場合、イソシアネート化合物(I)との架橋が進みやすく、耐熱性が向上するため、異物数及び焼けが少なく、良質な再生プラスチックを容易に得ることができる。
【0125】
(イソシアネート化合物(I))
イソシアネート化合物(I)は、反応性接着剤における硬化剤として機能する。イソシアネート化合物(I)は、通常の2液反応性接着剤用で使用される化合物であってよく、水酸基との反応性を有するイソシアネート官能基を含んでいれば限定されず使用可能である。イソシアネート基を有することにより、接着剤の接着強度及び凝集力が高くなり、また、室温付近の低温で硬化が可能である。
【0126】
イソシアネート化合物(I)としては、ジイソシアネート又はジイソシアネートと、ポリオールとの反応物であるウレタンプレポリマー等が好ましい。ジイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族又は脂環族の各種公知のジイソシアネートを使用することができる。例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4、4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が代表例として挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。なかでも、黄変や、密着性向上のための柔軟性付与観点からヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート類の使用が好ましく、レトルト耐性との両立からはトリメチロールプロパン等のアダクト体やイソシアヌレート体、ビュレット体等の3官能以上のポリイソシアネート化合物として用いる場合が好ましい。
【0127】
一実施形態において、ポリオール樹脂(D)及びイソシアネート化合物(I)は、ポリオール樹脂由来の水酸基とイソシアネート樹脂由来のイソシアネート基の官能基との当量比率(NCO/OH)が1.5~8.0となるよう使用されることが好ましく、2.0~5.0となるよう使用されることがより好ましい。上記当量比率を上記範囲内に調整した場合、耐熱性が向上し、異物数及び焼けが少なく、良質な再生プラスチックを容易に得ることができる。
【0128】
(接着剤層に含まれる添加剤)
接着剤層は、必要に応じて、反応促進剤、シランカップリング剤、リン酸、リン酸誘導体、レベリング剤、消泡剤等の公知の添加剤を含むことができる。
【0129】
(d)バリア層
バリア層は、一実施形態において蒸着膜を含む蒸着層、バリアコート層、及びバリア接着剤層からなる群より選択される1種以上を含んでよい。以下、より具体的に説明する。
(蒸着層)
プラスチック積層体(A)がバリア層として蒸着層を有する場合、蒸着層は、蒸着膜を含むことが好ましく、蒸着層として、蒸着膜を有する基材、蒸着膜を有する中間基材、蒸着膜を有するシーラントからなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましい。プラスチック積層体(A)が、蒸着膜を含む蒸着層を有することで、積層体(A)が、高いガスバリア性、具体的には、酸素バリア性および水蒸気バリア性を有することに加え、積層体(A)を用いて作製した包装容器は、その内部に充填された内容物の質量の減少を抑制できる。
【0130】
蒸着膜は、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の1種又は2種以上の無機物又は無機酸化物の蒸着膜とすることができる。蒸着膜は、2層以上の構成とすることができ、同一の材料によって構成されていても、異なる材料によって構成されていてもよい。上記した中でも、密着性、およびガスバリア性の観点から、蒸着膜はアルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)または酸化ケイ素(シリカ)により構成されることが好ましい。
【0131】
また、蒸着膜の厚さは、1nm以上150nm以下であることが好ましく、5nm以上60nm以下であることがより好ましく、10nm以上40nm以下であることがさらに好ましい。蒸着膜の厚さを1nm以上とすることにより、蒸着層の酸素バリア性及び水蒸気バリア性をより向上することができる。また、蒸着膜の厚さを150nm以下とすることにより、再生プラスチックをモノマテリアル包装容器の作製に好適に使用することができ、さらに、蒸着膜におけるクラックの発生を防止することができる。
【0132】
蒸着膜の形成方法としては、従来公知の方法を採用でき、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。
【0133】
(バリアコート層)
プラスチック積層体(A)がバリア層としてバリアコート層を有する場合、バリアコート層は、バリアコート剤により形成される。バリアコート層は、基材、中間基材、シーラント及び/又は印刷層に隣接していることが好ましい。これにより、酸素バリア性及び水蒸気バリア性を向上することができる。
【0134】
バリアコート剤は、例えば、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニリデン共重合体、アクリル酸エステル-塩化ビニリデン共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、並びに(メタ)アクリル樹脂などのガスバリア性樹脂を含む、樹脂単体からなるコート剤の他に、下記のような無機層状化合物と樹脂からなるコート剤を用いることができる。無機層状化合物は、例えば、カオリナイト族、スメクタイト族、及びマイカ族等の粘土鉱物等であって、層状構造を有する結晶性の無機化合物である。これら無機層状化合物の種類、粒径、及びアスペクト比等は、適宜選択され、特に限定されるものでない。このなかで、モンモリロナイト、ヘクトライト、及びサポナイト等のスメクタイト族が好適で、無機層状化合物の層間に樹脂を取り込み、複合体を形成し易い。特に、スメクタイト族のなかでも、モンモリロナイトは溶融状態での安定性、塗工性が最も優れている。
【0135】
また、バリアコート剤に使用される樹脂は、前述の無機層状化合物の層間に取り込まれ易いものであれば特に限定されないが、水溶性高分子を用いることが好ましい。水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリル樹脂、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。特に、ポリビニルアルコール(PVA)は、ガスバリア性積層体のコート剤として優れている。
【0136】
また、バリアコート層は、さらに金属アルコキシドの加水分解・重縮合生成物を含有した組成としてもよい。この金属アルコキシドは、Mを金属、Rをアルキル基、及びnをアルコキシ基の配位数とした場合、下記一般式、M(OR)nで示される化合物である。Mが、Si、Ti、ArおよびZrからなる群より選ばれ、Rが、メチル基、エチル基から選ばれるのが好ましい。特に、テトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O-2’-C3H7)3〕などを用いると、アルコキシドの加水分解生成物が、水系の溶媒中で比較的安定に存在するために好ましい。
【0137】
上述した各成分をコート剤に加えることができる。各成分は単独で、又はいくつかを組み合わせて使用できる。さらに、コート剤のバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、あるいは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤など公知の添加剤を加えることができる。
【0138】
バリアコート層は、上記材料を水または適当な溶剤に、溶解または分散させ、塗布、乾燥することにより形成することができる。また、市販されるバリアコート剤を塗布、乾燥することによってもバリアコート層を形成することができる。
【0139】
バリアコート剤の塗布方法には、通常用いられる、ディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法など従来公知の手段が用いられる。
【0140】
バリアコート層の厚さは、0.01μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上5μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上3μm以下であることが更に好ましい。バリアコート層の厚さを0.01μm以上とすることにより、積層体(A)の酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上させることができる。バリアコート層の厚さを10μm以下とすることにより、再生プラスチックの物性の低下を抑制でき、マテリアルリサイクルの原料として好適に使用することができる。
【0141】
(バリア接着剤層)
積層体(A)は、バリア層として、バリア接着剤層を有していてもよい。43バリア接着剤層は、例えば、市販されるバリア接着剤を塗布、乾燥することによって形成することができる。バリア接着剤としては、例えば、TM-9310(東洋モートン社製)、マクシーブ(三菱ガス社製)、PASLIM(DIC社製)などのガスバリア接着剤が好適に用いられる。接着剤層の厚みは、好ましくは0.1~10μmであり、より好ましくは0.5~5μmであり、特に好ましくは1.0~2.5μmである。
【0142】
(e)中間基材層
積層体(A)は、さらに中間基材層を有していてもよい。中間基材層の具体例としては、基材層と同様に、原料としてポリオレフィン樹脂を主として含むプラスチック基材であることが好ましい。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン単独重合体、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂等が挙げられ、上記、蒸着層、バリアコート層を有するガスバリア基材である形態が好ましい。また、共押出製法による複合基材であってもよい。さらに、中間基材は、基材、シーラントと同種(同一)の素材であることがより好ましい。同種(同一)の素材とは、ポリプロピレン同士、ポリエチレン同士などの組み合わせが挙げられる。なお積層体(A)の全質量を基準としてポリオレフィン樹脂の含有量が、80質量%以上となる範囲となるならば、上記中間基材層はポリオレフィン樹脂以外であってもよい。
【0143】
(f)シーラント
積層体(A)は、さらにシーラントを有していてもよい。シーラントは、内層側の面が被包装物と直接接触し、被包装物を保護する役割を担う。積層体を袋状とするために、シーラントの最内層は、ヒートシール性を有していることが好ましい。一実施形態において、第2の樹脂層は、シーラントであることが好ましい。シーラントを構成する材料としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン単独重合体、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上の樹脂を用いることができる。シーラントは、単層で構成されても、2層以上の多層で構成されてもよい。なお、シーラントは、ヒートシールの際の収縮を抑制するために、上記した樹脂からなる無延伸のフィルムであることが好ましい。さらに、シーラントは、基材、中間基材と同種(同一)の素材であることがより好ましい。
【0144】
シーラントの厚みは、積層体の用途及び被包装物の種類や性質等に応じて適宜設定される。特に限定されるものではないが、通常、10~200μmであることが好ましい。また、パウチ(特にレトルトパウチ)の場合、シーラントの厚みは、20~150μmであってよく、さらには25~130μmであることが好ましい。
【0145】
シーラントは、上記、蒸着層、またはバリアコート層を有するシーラントであることが好ましい。また、顔料等の混練された乳白基材や共押出製法による複合基材であってもよい。
【0146】
(オレフィン樹脂含有量)
本実施形態の製造方法は、再生ポリオレフィン樹脂の製造に主眼を置く観点から、積層体(A)は、積層体(A)は全質量を基準としてポリオレフィン樹脂を80質量%以上含有することが好ましい。上記ポリオレフィン樹脂の含有量は85%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95%以上であることが特に好ましい。積層体(A)が上記の範囲でポリオレフィン樹脂を含む場合、リサイクル適性が高く、本実施形態の製造方法において原料として好適に使用できる。また、上記の範囲でポリオレフィン樹脂を含む積層体(A)を原料として使用した場合、良好な成形性を有し、かつ様々な用途に使用可能な成形用材料(再生プラスチック)を容易に得ることができる。ポリオレフィン樹脂は、ポリプロピレン及びポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。一実施形態において、ポリプロピレン樹脂は、プロピレンと、エチレン及びブテンからなる群から選択される少なくとも1種との共重合体であることが、より好ましい。
【0147】
プラスチック積層体(A)の態様として、第1の樹脂層が基材であり、第2の樹脂層がシーラントである構成の場合は、以下の形態であることがより好ましい。
(1)基材、及びシーラントの全てにポリプロピレンを含む。この場合、積層体(A)の加熱溶融温度は150~250℃が好ましく、180~230℃がより好ましく、190~220℃が更に好ましい。
(2)基材がポリプロピレンを含み、シーラントがポリエチレンを含む。この場合、積層体(A)の加熱溶融温度は140~240℃が好ましく、170~220℃がより好ましく、180~210℃が更に好ましい。
(3)基材、及びシーラントの双方がポリエチレンを含む。この場合、積層体(A)の加熱溶融温度は130~230℃が好ましく、160~210℃がより好ましく、170~200℃が更に好ましい。第1の樹脂層及び第2の樹脂層が同種の基材であることがなお好ましい。
上記の形態でいえば、基材及びシーラントがポリプロピレンからなること、あるいは、基材及びシーラントがポリエチレンからなることが好ましい。
【0148】
一実施形態において、積層体(A)のメルトマスフローレイト(MFR)は、一辺の長さを5mm~10mmに破砕し、JIS K 7210に準拠して測定される値である。なお、温度等の測定条件については、積層体(A)中の最も含有率の高い成分に対応する条件で測定できる。積層体(A)のMFRは、好ましくは0.5~15g/10分であり、より好ましくは1.0~14g/10分であり、更に好ましくは3~13g/10分である。上記MFRが上記範囲内である場合、溶融時の流動性が向上するため、焼けの抑制が容易となる。
【0149】
<1-3>再生プラスチック(B)
一実施形態において、上述の製造方法によって得られる再生プラスチック(B)のメルトマスフローレイト(MFR)は、成形時の温度、冷却スピードなどの、熱履歴に大きな影響を受ける。MFRは、積層体の構成及びリサイクル時の条件等によって調整することができる。一実施形態において、再生プラスチック(B)のMFRは、好ましくは0.5~20g/10分であり、より好ましくは3~15g/10分である。MFRが上記の範囲内である場合、様々な成形に適した材料を提供することができる。本実施形態の製造方法は、熱履歴を変更することによって、再生プラスチック(B)のMFRを調整する工程を含むことも好ましい。
【0150】
<2>成形品
本発明の一実施形態は、上記実施形態によって得られた再生プラスチック(B)を成形して得られる成形品に関する。また、本発明の他の実施形態は、再生プラスチック成形品の製造方法に関し、この製造方法は、上記実施形態の再生プラスチックの製造方法によって再生プラスチックを製造すること、上記再生プラスチックを成形加工することを含む。成形品を得るための成形方法は特に制限されず、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、及び圧縮成形が挙げられる。成形品は、家電製品、文房具、自動車部品、おもちゃ、スポーツ用品、医療用品、及び建築・建設資材等、様々な用途に用いることができる。
【実施例0151】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部及び%は、特に注釈のない場合、質量部及び質量%を表す。
【0152】
以下の実施例で記載する各種特性は、以下に記載する方法によって測定した値である。
(水酸基価)
水酸基価は、試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 007470に記載された方法で測定した。
【0153】
(酸価)
酸価は、試料1g中に含有する遊離脂肪酸、樹脂酸等を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に記載された方法で測定した。
【0154】
(アミン価)
アミン価は、試料1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に準拠して測定した。即ち、以下の手順に沿って測定を行った。先ず、試料を0.5~2g精秤した(試料固形分:Sg)。次に、精秤した試料にメタノール/メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記式によりアミン価を求めた。
(式)アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S[mgKOH/g]
【0155】
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー株式会社製HLC-8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW2500
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW3000
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW4000
東ソー株式会社製TSKgelguardcolumnSuperAWH
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン流速:1.0mL/分
【0156】
(ガラス転移点(Tg))
ガラス転移点は、示差走査熱量測定測定(DSC)により求めた。測定は、株式会社リガク製DSC8231を使用し、測定温度範囲-70~250℃、昇温速度10℃/分の条件で行った。DSC曲線におけるガラス転移に基づくベースラインシフトの中点(変曲点)をガラス転移点とした。
【0157】
(塩素含有率)
塩素含有率は、JIS K 0127(2013)に準拠して測定した。即ち、透明基板上に、インキ又はバインダー樹脂をそれぞれ2.0μmになるように塗布し塗膜を形成した。80℃で乾燥させ、0.5g削り取った。削り取った塗膜を燃焼法にて前処理を行い、得られたサンプルの塩素含有量を、イオンクロマトグラフィーで定量し、塩素含有率を求めた。
【0158】
(メルトマスフローレイト(MFR)の測定)
MFRは、JIS K 7210-1:2014に記載された方法で測定した。積層体(A)の測定については、辺の長さが5mm~10mmに破砕して実施した。温度等の測定条件については、積層体(A)中の最も含有率の高い成分に対応する条件で実施した。
【0159】
(水分量測定方法)
水分量測定方法は、JIS K 0068(2001)に準拠して測定した。下記に測定機器及び試薬を示す。
測定機器:カールフィッシャー水分測定計MKC-710D(京都電子工業社製)
:水分気化装置ADP-611(京都電子工業社製)
カールフィッシャー試薬:ケムアクア水標準1(京都電子工業社製)
【0160】
<1>バインダー樹脂の製造
(ウレタン樹脂の合成)
(合成例1)ウレタン樹脂PU1
3-メチル1,5ペンタンジオール(MPD)とセバシン酸(SA)の縮合物である、数平均分子量2,000のポリエステルポリオール(以下「MPD/SA」)100部、1,4-ブタンジオール(以下「1,4-BD」)1部、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」)28.5部及び酢酸エチル32.1部を混合して、窒素雰囲気下で90℃、5時間反応させて、末端イソシアネートのウレタンプレポリマーを得た。次いで、イソホロンジアミン(以下「IPDA」)11.0部、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(以下「AEA」)1.0部、ジブチルアミン(以下「DBA」)1.0部及び混合溶剤1(酢酸エチル/イソプロパノール=70/30(質量比))298.1部を攪拌混合し、得られた末端イソシアネートのウレタンプレポリマーを40℃で徐々に添加した。80℃で1時間反応させ、固形分30質量%、アミン価6.5mgKOH/g、水酸基価3.8mgKOH/g、重量平均分子量50,000のウレタン樹脂PU1の溶液を得た。ウレタン樹脂PU1の塩素含有率は0質量%であった。
【0161】
後述するインキの調製例では、先に調製したウレタン樹脂に加えて、以下の成分を使用した。
・PVB溶液:ポリビニルブチラール樹脂の酢酸エチル/イソプロパノール=1/1混合溶剤による固形分30%溶液である。上記ポリビニルブチラール樹脂は、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位及びビニルブチラール単位を有し、ブチラール環基を73質量%含む。上記ポリビニルブチラール樹脂のガラス転移点は70℃、重量平均分子量は50,000、塩素含有率は0質量%、硝化度は0質量%である。
・塩化ビニル-酢酸ビニル溶液:塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の固形分30%酢酸エチル溶液である。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂は、日信化学社製のソルバインTA3であり、塩素含有率は47.1質量%、硝化度は0質量%である。
【0162】
<2>インキの調製
(グラビアインキ調製例1)グラビアインキX1
ウレタン樹脂PU1溶液40部、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)溶液15部、C.I.ピグメントブルー15:3(トーヨーカラー社製、製品名:LIONOL BLUE FG-7330、塩素含有率0質量%、硝化度0質量%)5部、シリカ粒子(親水性シリカ、平均粒子径3.0μm、比表面積300m2/g)0.8部、混合溶剤2(n-プロピルアセテート(NPAC)/イソプロパノール(IPA)=70/30(質量比))36部を混合し、ビーズミルで20分間分散して顔料分散体を得た。得られた顔料分散体に、塩素化ポリプロピレン溶液0.8部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点121.0℃)3.5部、及び水1.5部を加えて攪拌混合し、有機溶剤系グラビアインキX1を得た。
【0163】
(グラビアインキ調製例2)グラビアインキX2
ウレタン樹脂PU1溶液40部、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)溶液10部、C.I.ピグメントブルー15:3(トーヨーカラー社製、製品名:LIONOL BLUE FG-7330、塩素含有率0質量%、硝化度0質量%)10部、シリカ粒子(親水性シリカ、平均粒子径3.0μm、比表面積300m2/g)0.8部、混合溶剤2(n-プロピルアセテート/イソプロパノール=70/30(質量比))36部を混合し、ビーズミルで20分間分散して顔料分散体を得た。得られた顔料分散体に、塩素化ポリプロピレン溶液0.8部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点121.0℃)3.5部、及び水1.5部を加えて攪拌混合し、有機溶剤系グラビアインキX2を得た。
【0164】
(グラビアインキ調製例3)グラビアインキX3
ウレタン樹脂PU1溶液40部、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)溶液11部、塩化ビニル-酢酸ビニル溶液(PVC)溶液4部、C.I.ピグメントブルー15:3(トーヨーカラー社製、製品名:LIONOLBLUEFG-7330、塩素含有率0質量%、硝化度0質量%)5部、シリカ粒子(親水性シリカ、平均粒子径3.0μm、比表面積300m2/g)0.8部、混合溶剤2(n-プロピルアセテート/イソプロパノール=70/30(質量比))36部を混合し、ビーズミルで20分間分散して顔料分散体を得た。得られた顔料分散体に、塩素化ポリプロピレン溶液0.8部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点121.0℃)3.5部、及び水1.5部を加えて攪拌混合し、有機溶剤系グラビアインキX3を得た。
【0165】
(グラビアインキ調製例4)グラビアインキX4
ウレタン樹脂PU1溶液40部、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)溶液4部、塩化ビニル-酢酸ビニル溶液(PVC)溶液11部、C.I.ピグメントブルー15:3(トーヨーカラー社製、製品名:LIONOL BLUE FG-7330、塩素含有率0質量%、硝化度0質量%)5部、シリカ粒子(親水性シリカ、平均粒子径3.0μm、比表面積300m2/g)0.8部、混合溶剤2(n-プロピルアセテート/イソプロパノール=70/30(質量比))36部を混合し、ビーズミルで20分間分散して顔料分散体を得た。得られた顔料分散体に、塩素化ポリプロピレン溶液0.8部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点121.0℃)3.5部、及び水1.5部を加えて攪拌混合し、有機溶剤系グラビアインキX4を得た。
【0166】
【0167】
<3>積層体(A)の製造例
(積層体(A)の製造例1)積層体A1
グラビアインキX1に、酢酸エチル/イソプロピルアルコール混合溶剤(質量比70/30)を加えて、ザーンカップ#3(離合社製)15秒(25℃)になるように希釈した。その後、希釈したグラビアインキX1を、コロナ処理二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(厚み20μm)に対して、版深35μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて印刷し、50℃にて乾燥し、OPP/印刷層の積層体を得た。次いで、ドライラミネート機を用いて、この積層体の印刷層上に、ポリエーテル系反応性ウレタン接着剤(東洋モートン社製「TM-340V/CAT-29B」)を塗工し、オーブンにて溶剤を乾燥して接着剤層を形成した。その後、この接着剤層の上に、ライン速度40m/分にて、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(厚み30μm)を貼り合わせ、40℃で1日間保温した。このようにして、OPP/印刷層/接着剤層/CPPの多層構造を有する積層体A1を得た。印刷層、及び接着剤層の乾燥後の塗布量は、それぞれ2.5g/m2とした。積層体A1のMFR値は表1に記載したとおりである。
【0168】
(積層体(A)の製造例2)積層体A2
グラビアインキX1をグラビアインキX2に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、OPP/印刷層/接着剤層/CPPの多層構造を有する積層体A2を得た。印刷層、及び接着剤層の乾燥後の塗布量は、それぞれ2.5g/m2とした。
【0169】
(積層体(A)の製造例3)積層体A3
グラビアインキX1をグラビアインキX3に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、OPP/印刷層/接着剤層/CPPの多層構造を有する積層体A3を得た。印刷層、及び接着剤層の乾燥後の塗布量は、それぞれ2.5g/m2とした。
【0170】
(積層体(A)の製造例4)積層体A4
グラビアインキX1をグラビアインキX4に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、OPP/印刷層/接着剤層/CPPの多層構造を有する積層体A3を得た。印刷層、接着剤層の乾燥後の塗布量は、それぞれ2.5g/m2とした。
【0171】
(積層体(A)の製造例5)積層体A5
積層体A1の製造工程中の印刷工程と同様の手順にて、OPP/印刷層の積層体を得た。次いで、ノンソルラミネート機を用いて、この積層体の印刷層上に、反応性ウレタン接着剤(東洋モートン社製ノンソル接着剤「EA-N373A/B」)を塗工して接着剤層を形成した。その後、この接着剤層の上に、ライン速度40m/分にて、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(厚み30μm)を貼り合わせ、40℃で1日間保温した。このようにして、OPP/印刷層/接着剤層/CPPの多層構造を有する積層体A5を得た。印刷層、及び接着剤層の乾燥後の塗布量は、それぞれ2.5g/m2とした。
【0172】
(積層体(A)の製造例6)積層体A6
グラビアインキX1を、酢酸エチル/イソプロピルアルコール混合溶剤(質量比70/30)で、ザーンカップ#3(離合社製)15秒(25℃)になるように希釈した。その後、希釈したグラビアインキX1を、コロナ処理二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(厚み20μm)に対して、版深35μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、2度重ね印刷し、50℃にて乾燥し、OPP/印刷層の積層体を得た。次いで、ドライラミネート機を用いて、この積層体の印刷層上に、上記と同様の反応性ウレタン接着剤(東洋モートン社製「TM-340V/CAT-29B」)を塗工し、オーブンにて溶剤を乾燥し接着剤層を形成した。その後、この接着剤層の上に、ライン速度40m/分にて、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(厚み20μm)を貼り合わせ、40℃で1日間保温した。このようにして、OPP/印刷層/接着剤層/CPPの多層構造を有する積層体A6を得た。印刷層の乾燥後の塗布量は5.0g/m2、接着剤層の乾燥後の塗布量は、それぞれ2.5g/m2とした。積層体A6のMFR値は表1に記載したとおりである。
【0173】
(積層体(A)の製造例7)積層体A7
シーラントを無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(厚み60μm)に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、ОPP/印刷層/接着剤層/CPPの多層構造を有する積層体A7を得た。印刷層、及び接着剤層の乾燥後の塗布量は、それぞれ2.5g/m2とした。
【0174】
(積層体(A)の製造例8)積層体A8
積層体A1の製造工程中の印刷工程と同様の手順にて、OPP/印刷層の積層体を得た。次いで、押し出しラミネート機を用いて、この積層体の印刷層上に、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤(東洋モートン社製EL-420)をメタノール:水=70:30(質量比)からなる溶剤で希釈した溶液を塗工し、オーブンにて溶剤を乾燥した。ここで、上記希釈した溶液は固形分1%(重量比、メタノール/水=70/30)であり、塗布量は0.02g/m2であった。その後、上記溶液の塗工面に対して、330℃にて溶融したポリプロピレン樹脂(ノバテックFL02A、日本ポリプロ社製、接着機能を有する)(厚み15μm)を重ね、それと同時に更に無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(厚み30μm)を貼り合わせた。このようにして、OPP/印刷層/AC剤/PP樹脂層/CPPの多層構造を有する積層体A8を得た。印刷層の乾燥後の塗布量は2.5g/m2とした。
【0175】
(積層体(A)の製造例9)積層体A9
積層体A1の製造工程中の印刷工程と同様の手順にて、OPP/印刷層の積層体を得た。次いで、ドライラミネート機を用いて、この積層体のOPP面に、接着剤(東洋モートン社製「TM-340V/CAT-29B」)を塗工し、オーブンにて溶剤を乾燥し接着剤層を形成した。その後、この接着剤層の上に、ライン速度40m/分にて、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(厚み30μm)を貼り合わせ、40℃で1日間保温した。このようにして、印刷層/OPP/接着剤層/CPPの多層構造を有する積層体A9を得た。印刷層、及び接着剤層の乾燥後の塗布量は、それぞれ2.5g/m2とした。
【0176】
(積層体(A)の製造例10)積層体A10
基材を高密度ポリエチレンフィルム(HDPE)フィルム(厚み20μm)、シーラントをリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(厚み150μm)に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、HDPE/印刷層/接着剤層/LLDPE構成の積層体A10を得た。印刷層、及び接着剤層の乾燥後の塗布量は、それぞれ2.5g/m2とした。
【0177】
(積層体(A)の製造例11)積層体A11
積層体A1の製造工程において、基材をリニア低密度ポリエチレンフィルム(厚み40μ)、シーラントをリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(厚み40μm)に変更した。これ以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、LLDPE/印刷層/接着剤層/LLDPEの多層構造を有する積層体A11を得た。印刷層、及び接着剤層の乾燥後の塗布量は、それぞれ2.5g/m2とした。
【0178】
(比較製造例1)積層体S1
基材をナイロン(NY)フィルム(厚み15μm)に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、NY/印刷層/接着剤層/CPPの多層構造を有する積層体S1を得た。印刷層、及び接着剤層の乾燥後塗布量は、それぞれ2.5g/m2とした。
【0179】
上述の各製造例で得た積層体A1~A11及び積層体S1の構成を表2に示す。表2に記載したポリオレフィン樹脂含有率は、積層体の全質量を基準とするポリオレフィン樹脂の含有量の割合であり、具体的には以下のようにして算出した値である。
(ポリオレフィン樹脂含有率)
プラスチック積層体(A)中のポリオレフィン樹脂の含有率は、下式(1)を用いて算出した。
式(1):(プラスチック積層体(A)中のポリオレフィン樹脂質量)/(プラスチック積層体(A)の質量)×100
より具体的には、下式(I)~(III)を適用した。
式(I):プラスチック積層体(A)の1m2あたりの質量[g]
=(基材厚み)×(基材密度)+(インキ塗布量)+(接着剤塗布量(溶融ポリプロピレン除く))+(溶融ポリプロピレン厚み)×(溶融ポリプロピレン密度)+(シーラント厚み)×(シーラント密度)
式(II):プラスチック積層体(A)中のポリオレフィン樹脂質量[g]
=(基材厚み)×(基材密度)+(溶融ポリプロピレン厚み)×(溶融ポリプロピレン密度)+(シーラント厚み)×(シーラント密度)
式(III):プラスチック積層体(A)中のポリオレフィン樹脂含有率[%]
=(プラスチック積層体中(A)のポリオレフィン樹脂質量)/(プラスチック積層体(A)の1m2あたりの質量)×100
【0180】
なお、積層体を構成するために使用した基材、溶融ポリプロピレン、及びシーラントの密度は、それぞれ以下の通りである。
・コロナ処理二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(厚み20μm)密度:0.91g/cm3
・高密度ポリエチレンフィルム(HDPE)フィルム(厚み20μm)密度:0.94g/cm3
・リニア低密度ポリエチレンフィルム(厚み40μ)密度:0.91g/cm3
・ナイロン(NY)フィルム(厚み15μm)密度:1.15g/cm3
・溶融ポリプロピレン密度:0.90g/cm3
・無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(厚み20μm)密度:0.90g/cm3
・無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(厚み30μm)密度:0.90g/cm3
・無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(厚み60μm)密度:0.90g/cm3
・リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(厚み150μm)密度:0.91g/cm3
・リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(厚み40μm)密度:0.91g/cm3
【0181】
【0182】
<4>再生プラスチック(B)の製造
(実施例1)
(a)再生プラスチックB1の製造
積層体A1を2cm×2cmのサイズに裁断し、水洗及び脱水を行い、更に水分量が0.5%になるまで、温風乾燥した。次いで、この積層体A1及び酸化防止剤(Irganox1010)を、それぞれ二軸押出機(日本製鋼所製、スクリュー径:34mm、シリンダー内壁とスクリューとの最小間隙距離:0.4mm)の溶融混練部に投入し、これらをスクリュー回転数200rpm、230℃で30秒間にわたって溶融及び混練し、再生樹脂組成物(a1)を形成した。なお、積層体A1と酸化防止剤(Irganox1010)の供給量は、再生樹脂組成物(a1)を100質量%として、酸化防止剤の含有量が0.2質量%となるように調整した。その後、再生樹脂組成物(a1)を120メッシュのフィルターを通過させ、押出装置の吐出部から押出した。押出開始直後の吐出部の圧力は2MPaであった。押出された再生樹脂組成物(a)を直ぐにペレタイザーでカットし、冷水に浸水させて冷却した。このようにして、積層体A1からリサイクルされた再生プラスチック(B)として、ペレットB1を得た。
【0183】
(b)再生プラスチックBB1の製造
積層体A1を2cm×2cmのサイズに裁断し、水洗及び脱水を行い、更に水分量が0.5%になるまで、温風乾燥した。次いで、この積層体A1及び酸化防止剤(Irganox1010)を、それぞれ二軸押出機(日本製鋼所製、スクリュー径:34mm、シリンダー内壁とスクリューとの最小間隙距離:0.4mm)の溶融混練部に投入し、スクリュー回転数200rpm、230℃で30秒間にわたって溶融及び混練し、再生樹脂組成物(a1)を形成した。なお、積層体A1と酸化防止剤(Irganox1010の投入量は、再生樹脂組成物(a)を100質量%として、酸化防止剤の含有量が0.2%となるように調整した。その後、再生樹脂組成物(a1)を120メッシュのフィルターを通過させ、押出装置の吐出部から押出した。再生樹脂組成物(a1)の押出流量を20Kg/h(時間)に維持しながら5時間にわたって押出しを続け(ロングラン)、その後、直ぐに押出された再生樹脂組成物(a1)をペレタイザーでカットし、冷水に浸水させて冷却した。ロングラン後の吐出部の圧力は4MPaであった。このようにして、積層体A1から、ロングランでリサイクルされた再生プラスチック(B)として、ペレットBB1を得た。
【0184】
(実施例2~20)再生プラスチックB2~B20、BB2~BB20の製造
実施例1に記載した再生プラスチックB1及びBB1の製造における条件を表1に記載した条件に変更した。これ以外は実施例1と同様にして、積層体からリサイクルされた再生プラスチックとして、ペレットB2~B20、BB2~BB20をそれぞれ得た。なお、表1に記載した酸化防止剤の詳細は、以下の通りである。
・Irganox1010:フェノール系酸化防止剤(BASF社製)
・Irgafos168:リン酸系酸化防止剤(BASF社製)
・ノラックCD:アミン系酸化防止剤(大内新興化学工業社製)
【0185】
(実施例21)
再生プラスチックB21、BB21の製造実施例1で使用した積層体A1の基材をPVAコートOPPフィルム(三井化学東セロ社製、製品名A-OPBH、厚み20μm、密度0.91g/cm3)に変更した積層体を準備して使用した。これ以外は、実施例1と同様の方法にて、積層体からリサイクルされた再生プラスチックとして、ペレットB21、BB21をそれぞれ得た。
【0186】
(実施例22)
再生プラスチックB22、BB22の製造実施例1で使用した積層体A1の基材をバリアOPPフィルム(フタムラ社製、ECO-B、厚み20μm、密度0.91g/cm3)に変更した積層体を準備して使用した。これ以外は、実施例1と同様の方法にて、積層体からリサイクルされた再生プラスチックとして、ペレットB22、BB22をそれぞれ得た。
【0187】
(実施例23)
再生プラスチックB23、BB23の製造実施例1で使用した積層体A1の基材を無機化合物蒸着OPPフィルム(厚み20μm、密度0.91g/cm3)に変更した積層体を準備して使用した。これ以外は、実施例1と同様の方法にて、積層体からリサイクルされた再生プラスチックとして、ペレットB23、BB23をそれぞれ得た。
【0188】
(比較例1~4)
再生プラスチックC1~C4、CC1~CC4実施例1に記載した再生プラスチックB1及びBB1の製造における条件を表1に記載した条件に変更した。これ以外は、実施例1に記載した再生プラスチックB1及びBB1の製造と同様にして、積層体からリサイクルされた再生プラスチックとして、ペレットC1~C4、CC1~CC4をそれぞれ得た。なお、回転数1100rpmは、せん断速度に換算すると、4900sec-1である。
【0189】
<5>再生プラスチックの評価
<5-1>異物の数
上記実施例及び比較例で得た再生プラスチック(ペレット)を、それぞれTダイ押出機を用いて230℃で押出成形し、厚み50μmのフィルムを作製した。得られたフィルムを目視で観察し、0.5m2あたりの異物(目視で識別できるおよそ100μm以上の異物)の個数をカウントし、以下の基準に沿って評価した。評価結果を表3に示す。なお、表3には記載していないが、B21~B23の評価結果はそれぞれB1と同様であった。また、BB21~BB23の評価結果についてもそれぞれBB1と同様であった。
(評価結果)
A(良):異物の数が50個未満、
B(可):異物の数が50個以上100個未満、
C(可):異物の数が100個以上200個未満、
D(不良):異物の数が200個以上
【0190】
<5-2>再生プラスチックの焼けの評価
上記実施例及び比較例で得た再生プラスチック(ペレット)を、それぞれTダイ押出機を用いて230℃で押出成形し、厚み50μmのフィルムを作製した。得られたフィルムの表面を目視で観察し、目視で判別可能な焼けについて、以下の基準にしたがって評価した。評価結果を表3に示す。なお、表3には記載していないが、B21~B23の評価結果はそれぞれB1と同様であった。また、BB21~BB23の評価結果についてもそれぞれBB1と同様であった。
(評価基準)
A(良):焼けなし(色の変化なし)
B(可):僅かな焼けがみられる(一部薄茶色に変色箇所がみられる)
C(可):焼けがみられるが許容範囲内である(複数個所又は全体的に薄茶色に変色箇所がみられる)
D(不良):許容できない焼けが多くみられる(黒色や茶色の異物や変色箇所がみられる)
【0191】
<5-3>再生プラスチックの成形性
実施例及び比較例で得た再生プラスチック(ペレット)B1~B19を、それぞれブロー成形機を用いて230℃でブロー成形し、厚み1mmのボトルの形状を有する成形体を作製した。それぞれ得られたボトル50本を目視で観察し、目視で判別可能な発泡が見られたボトルの数をカウントした。さらに、以下の評価基準にしたがって成形性を評価した。評価結果を表3に示す。なお、表3には記載していないが、B21~B23の評価結果はそれぞれB1と同様であった。また、BB21~BB23の評価結果についてもそれぞれBB1と同様であった。
(評価基準)
A(良):50本のボトル中、発泡が見られたボトルは1本以下である
B(可):50本のボトル中、発泡が見られたボトルは2~3本である
C(可):50本のボトル中、発泡が見られたボトルは4~5本である
D(不良):50本のボトル中、発泡が見られたボトルは6本以上である
【0192】
【0193】
以上の結果から分かるように、本発明の実施形態である実施例1~23では、押出直後の再生プラスチック及び押出経時後の再生プラスチックの全ての評価項目において、実用可能なレベルであった。一方、比較例1~4は、溶融混練時の回転数が本願で規定する範囲外であるか、原料として使用する積層体におけるポリオレフィン含有量が規定する範囲外となっている。これら比較例1~4は、明らかに実施例よりも劣る結果であった。特に、スクリュー回転数が本願で規定する上限値を超える場合は、フィルムにおける異物が多く、またロングラン時に焼けが生じ、再生プラスチックの品質が著しく低下することが分かる。