(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036336
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】切換弁装置及びその装置を用いた管敷設方法
(51)【国際特許分類】
F16L 41/03 20060101AFI20240308BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20240308BHJP
F16K 43/00 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
F16L41/03
F16L55/00 C
F16K43/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220631
(22)【出願日】2023-12-27
(62)【分割の表示】P 2019183235の分割
【原出願日】2019-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】井上 和也
(57)【要約】
【課題】既設管が多数敷設されている状況の下、複数の既設管を新設管に更新または新設管を追加させる場合においても拡張性の高い切換弁装置及びその装置を用いた管敷設方法を提供する。
【解決手段】既設管14に密封状に外嵌する分割構造の筐体5と、筐体5内にて既設管14の一部が切断された切断部に密封状に設置される切換弁9とからなり、不断流状態で筐体5に新設管20,21を接続するための切換弁装置1であって、筐体5には、既設管14に接続される一対の開口部5A,5C、及び新設の流体管20,21を接続するための少なくとも第1の開口部5B,5Dとを連通するバイパス管57,58と、該バイパス管を開閉する開閉弁57a,58aと、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の流体管に密封状に外嵌する分割構造の筐体と、前記筐体内にて前記既設の流体管の一部が切断された切断部に密封状に設置される切換弁とからなり、不断流状態で前記筐体に新設の流体管を接続するための切換弁装置であって、
前記筐体には、既設の流体管に接続される一対の開口部、及び新設の流体管を接続するための少なくとも第1の開口部が形成されており、前記一対の開口部のうち一の開口部と前記第1の開口部とを連通するバイパス管と、該バイパス管を開閉する開閉弁と、を備えることを特徴とする切換弁装置。
【請求項2】
前記バイパス管は、前記切換弁によって密封状に仕切られる前記筐体内の空間同士を連通することを特徴とする請求項1に記載の切換弁装置。
【請求項3】
前記筐体には、前記一対の開口部、及び新設の流体管を接続するための第2の開口部が形成されており、前記一対の開口部のうち他の開口部と前記第2の開口部とを連通する第2のバイパス管と、該第2のバイパス管を開閉する開閉弁と、を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の切換弁装置。
【請求項4】
前記第2のバイパス管は、前記切換弁によって密封状に仕切られる前記筐体内の空間同士を連通することを特徴とする請求項3に記載の切換弁装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の切換弁装置を用いて、不断流状態で新設の流体管を敷設する管敷設方法であって、
前記筐体を既設の流体管に密封状に外嵌する工程と、前記筐体の前記開口部のうち新設の流体管を接続するための開口部を閉塞した状態で、前記筐体内にて既設の流体管の一部を切断する工程と、前記筐体内の切断部に前記切換弁を設置する工程と、前記弁体により前記ポートを順次閉塞し、該ポートに連通する開口部に接続された既設の流体管を撤去し、前記開口部に新設の流体管を接続する工程と、前記切換弁を開放することで、前記既設の流体管と前記新設の流体管とを前記バイパス管を介し連通させる工程と、有することを特徴とする切換弁装置を用いた管敷設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設流路を不断流状態で撤去若しくは交換等を行い、新設流路を敷設する際に用いる切換弁装置、及びその装置を用いた管敷設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既設流路として例えば、上水道管路を更新する工事では、水道水の利用者に対する利便性を考慮し、不断流状態すなわち通水状態を保持しながらの施工が望まれている。従来の不断流状態で行う流路形成方法として、既設流体管に分割構造の筐体を密封状態で外嵌して、この筐体内部の既設流体管を切断し、該筐体内部の管切断部に弁箱と弁体を有する切換弁を挿入すると共に既設流体管と併設して新設管を接続し、弁体を操作することにより弁箱のポートを開閉することで既設流体管から新設管へ流路を切換えるものがある。
【0003】
ところで、上水を処理する浄水場や配水場などの水処理施設は、複数の貯水槽やポンプ室、弁室、給水塔等を備えており、それらを繋ぐ配管や下流側へ配水するための配管が多数近接して敷設されている。近年、そのような多数の配管が敷設されている水処理施設において、一度に複数の配管が耐用年数に至る状況にあって敷設替えが必要であったり、配管の強靭化のため例えば耐震化が必要であったり、あるいは災害に備え配管の二重化が必要であったりする中で、特に生活用水を担う上水道処理施設においては、既設流体管から新設流体管への敷設替えや新設流体管の敷設を不断流状態で行うことが必須である。
【0004】
このような、不断流状態での流路形成方法で利用される切換弁装置として例えば、3箇所の開口部が設けられた筐体内に、3箇所のポートが開閉可能に形成された弁箱を収容したものがある。筐体の開口部のうち2箇所は、筐体内で分断された既設管にそれぞれ接続され、残る1箇所の開口部には新設管が接続可能になっている。既設管に外嵌した筐体と新設管との接続後、弁箱内の弁体により、下流側の既設管に連通するポートを閉塞させることで上流側の既設管から新設管へ向けて流体が流れるようになっており、ポートを閉塞させた下流側の既設管の撤去や交換を不断流状態で行うようになっている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-75052公報(第1頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような特許文献1の切換弁装置にあっては、筐体に外嵌させた既設管以外に新設管を1本のみしか接続できず、多数の既設管からなる既設流路を新設管に更新または新設管を追加させる場合において特許文献1の切換弁装置を利用しようとすると、複数の切換弁装置を設置する必要があり拡張性が低いことから、管敷設工事の作業が煩雑となりコストの増大に繋がっていた。また、この場合、大きな工事スペースが必要となり、工事が不可能な場合があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、既設管が多数敷設されている状況の下、複数の既設管を新設管に更新または新設管を追加させる場合においても拡張性の高い切換弁装置及びその装置を用いた管敷設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の切換弁装置は、
流体管を接続するための開口部が形成され、既設の流体管に密封状に外嵌する分割構造の筐体と、前記筐体内にて前記既設の流体管の一部が切断された切断部に密封状に設置される切換弁とからなり、不断流状態で前記筐体に新設の流体管を接続することができる切換弁装置であって、
前記筐体には、略十字方向にそれぞれ前記開口部が形成されており、
前記切換弁は、前記開口部にそれぞれ連通するポートが略十字方向に形成された弁箱と、選択的に1つの前記ポートを閉塞可能な弁体と、を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、略十字方向に形成されたポートのうち1つを弁体で閉塞することで、開放状態の残りの3方向のポートを通じて不断流状態を維持させながら、弁体を閉塞させたポートと連通する開口部側に接続されている既設の流体管の撤去や、新設の流体管の敷設が順次できるので、複数の流体管を更新することができ、施工の拡張性が高い。
【0009】
前記切換弁には、前記弁体が前記ポートのうち特定のポートを閉塞することを規制する規制部材が配設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、規制部材により、特定のポートを常時開放させることができるため、このポートに連通する開口部に接続された流体管の不断流状態を常に維持でき、不慮の閉塞による断流状態を防止することができる。
【0010】
前記弁体は、前記切換弁の中央に設けられた回転軸周りに回転可能に設けられ、該弁体の回動角度が前記規制部材により270度以内に規制されていることで、前記特定のポートを除くポートを閉塞するようになっていることを特徴としている。
この特徴によれば、弁体が特定のポートを通過することを規制部材により規制されているので、弁体通過時に生じる一時的な断流状態を防止させることができる。
【0011】
前記略十字方向に形成されたポートのうち、互いに対向する一対のポートを密封する密封部材によって形成される開口角度は、該一対のポートに略直交する残りの一対のポートを密封する密封部材によって形成される開口角度よりも小さいことを特徴としている。
この特徴によれば、開口角度の小さい側のポートに連通する開口部に接続された流体管内の流体による影響を小さく抑えることができる。
【0012】
請求項1~4のいずれかに記載の切換弁装置を用いて、不断流状態で新設の流体管を敷設する管敷設方法であって、
前記筐体を既設の流体管に密封状に外嵌する工程と、前記筐体の前記開口部のうち新設の流体管を接続するための開口部を閉塞した状態で、前記筐体内にて既設の流体管の一部を切断する工程と、前記筐体内の切断部に前記切換弁を設置する工程と、前記弁体により前記ポートを順次閉塞し、該ポートに連通する開口部に接続された既設の流体管を撤去し、若しくは前記開口部に新設の流体管を接続する工程と、を有することを特徴としている。
この特徴によれば、略十字方向に形成されたポートのうち1つを弁体で閉塞することで、開放状態の残りの3方向のポートを通じて不断流状態を維持させながら、弁体を閉塞させたポートと連通する開口部側に接続されている既設の流体管の撤去や、新設の流体管の敷設が順次できるので、複数の流体管を更新することができ、施工の拡張性が高い。
【0013】
前記筐体の前記開口部には、新設の流体管として、上流側の流体管と下流側の流体管がそれぞれ接続されることを特徴としている。
この特徴によれば、筐体が外嵌する既設の流体管を撤去するか否かに関わらず、新設の流体管によって新たな流路を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例における上水道施設の既設管の敷設状況を示す概略図である。
【
図2】本発明の切換弁装置を設置し、一部を新設管へ敷設替えさせた上水道施設の流体管の敷設状況を示す概略図である。
【
図3】一部を新設管へ敷設替えさせた上水道施設の流体管の敷設状況を示す概略図である。
【
図4】所定の既設管を撤去させた上水道施設の流体管の敷設状況を示す概略図である。
【
図5】既設管から新設管への敷設替えを終えた上水道施設の流体管の敷設状況を示す概略図である。
【
図6】筐体に作業弁と管切断装置を設置させた態様を示す側面図である。
【
図7】筐体に作業弁と弁部材挿入装置を設置させた態様を示す側面図である。
【
図8】(a)は、切換弁装置を示す上面図であり、(b)は切換弁装置を示す側面図と一部断面図である。
【
図10】(a)はポート9Cが弁体の円弧部により閉塞されている態様を示し、(b)はポート9Dが弁体の円弧部により閉塞されている態様を示し、(c)はポート9Aが弁体の円弧部により閉塞されている態様を示している。
【
図11】(a)は弁軸を左方へ回動させた態様を示し、(b)は弁軸を(a)から90度回動させた態様を示し、(c)は弁軸を(b)から90度回動させた態様を示している。
【
図12】(a)は、規制部材に代わり筐体底面にストッパー部材を取り付けた弁装置の断面図を示し、(b)は、C矢視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る切換弁装置及びその装置を用いた管敷設方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0016】
実施例に係る切換弁装置及びその装置を用いた管敷設方法につき、
図1から
図11を参照して説明する。まず、
図1を用いて、切換弁装置が適用される前の既設流路について説明する。
図1は浄水処理施設のここでは例えば、配水場の概略図を示し、図示しない処理装置等により浄水処理を終えた上水(以下、流体ともいう)をそれぞれ貯水可能な複数のタンクA~Cが設置されている。タンクAとタンクBとは既設の流体管(以下、単に既設管と示す)10によりタンク内の流体が流通可能に接続されており、タンクBとタンクCとは、既設管11によりタンク内の流体が流通可能に接続されている。
【0017】
タンクCには、既設管14が接続されており下流側(
図1のY地点側)としての上水処理施設外の図示しない支管に接続されて各家庭等に配水されるようになっている。既設管14には、タンクBから延びる既設管13がタンクCと既設管14との接続部近傍で接続されている。また既設管13には、タンクAから延びる既設管12がタンクBと既設管13との接続部近傍で接続されている。すなわちタンクA~Cに貯水されている上水は、既設管14に集約されて下流側へ流出されるようになっている。なお、それぞれの既設管10~14は、実際には図示しない複数の管部材を、フランジ若しくは溶接等により管路方向に接続して構成されるものである。また、その他にも、場内には、ポンプ室や給水塔、弁室、電気用・電線用の配管など複数の配管がなされているものである。
【0018】
本実施例では、このような浄水処理施設に設置されている既設管10~14が耐用年数に至ったため、供給地域の利便性を考慮し所定箇所を不断流状態で新設の流体管(以下単に新設管と示す)へ敷設替えを行うこととして説明する。尚、本実施例では流体管内の流体は上水であるが、本実施例の上水に限らず、例えば工業用水や農業用水、下水の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。また、既設管10~14及び後述する新設管は、ダクタイル鋳鉄製であって、断面視略円形状に形成され、内周面がエポキシ樹脂層で被覆されている。尚、本発明に係る新設管は、その他鋼等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール製、ポリエチレン製若しくはポリオレフィン製等であってもよい。更に尚、新設管の内周面はエポキシ樹脂層に限らず、例えばモルタル等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を紛体塗装により新設管の内周面に被覆してもよい。
【0019】
まず、
図1に示される既設管14の既設管13との接続地点よりも下流側であるZ地点において、既設管14の外周面を清掃し、分割構造を備えた筐体5を密封状に外嵌する工程を行う。以下、筐体5について説明すると、
図6、
図8(b)等に示すように、筐体5はその上部を構成する第1分割体55と、下部を構成する第2分割体56とから主に構成されている。なお、本実施例では筐体は上下方向に分割されているが、これに限らず流体管の径方向に分割されたものであればよく、例えば水平方向に分割されてもよいし、分割数は3以上でもよい。筐体5には、各端部に円筒状のスリーブ部が配設され流体管を接続可能な4つの開口部5A,5B,5C,5Dが形成されており、これらの開口部5A~5Dは筐体5内部で連通するとともに、
図8(a)に示されるように上面視略十字状を成し、分岐されている。直線状に配設された開口部5Aと5Cとを直管を成す既設管14に対してそれぞれ外嵌させ、その端部はフランジを備え、離脱防止用の分割式押輪が配設されている。既設管14に対して外径方向を向く筐体5の開口部5Dには、閉塞部材として例えば管帽Dを密封状に取り付けておく。開口部5Bに接続する配管については後述する。尚、開口部5B,5Dは、耐震管接続用の例えばNS,GX等の挿口としているが、受口であってもよく、フランジが備えられていてもよい。
【0020】
また、交差して配設された開口部5Aと5Dは、仕切弁58aを備えたバイパス管58により接続され、同様に交差して配設された開口部5Cと5Bとは、仕切弁57aを備えたバイパス管57により接続されている。仕切弁58a,57aを開状態に切り替えることで、一方側の開口部に接続された流体管内の流体をバイパス管58,57を経由させて他方側の開口部に接続された流体管内へ送り込むことができるようになっている。
【0021】
次に、
図1に示される既設管14のZ地点よりも下流側であるY地点において、既設管14の外周面を清掃し、分割構造を備えた筐体3を密封状に外嵌させる。筐体3には、水平方向における3方向にそれぞれ円筒状のスリーブ部を備え流体管を接続可能な3つの開口部3A,3B,3Cが形成されており、これらの開口部3A~3Cは筐体3内部で連通するとともに上面視略T字状に分岐されている。直線状に配設された開口部3Aと3Cとを直管を成す既設管14に対してそれぞれ外嵌させ、既設管14に対して外径方向を向く開口部3Bには、閉塞部材として図示しない管帽等を密封状に取り付けておく。
【0022】
また、
図8(b)に示されるように、筐体5の上部は、該筐体5の内部に連通する開口部5eと、該開口部5eの縁部に上フランジ部50とが形成されており、上フランジ部50の上方側に後述する管切断装置や弁部材挿入装置等を取り付けることができるようになっている。更に、筐体5の下部には複数の排出孔50bが形成されている。該排出孔50bはプラグ又はバルブVを接続可能となっており、後述する一連の作業を通して筐体5の内部に充満した流体を排出可能となっている。なお、筐体3については図示しないが、筐体5と同様に、筐体3の上部に開口部、及び下部に排出孔が形成されている。
【0023】
図2に示されるように、既設管14のZ地点に外嵌させた筐体5の開口部5Bに新設管21の一方側を接続させる。新設管21は短管で構成してもよく、筐体5から筐体3に向けて延出されている。新設管21の他方側端部には、該新設管21内部を開閉切替可能なバルブ4が配設されており、新設管21の他端側をバルブ4によって閉状態にさせておく。なお、バルブ4は開口部5Bに設置されてもよい。
【0024】
次いで、
図6に示されるように、筐体5内の既設管14を管切断装置7により切断する工程に移る。まず、筐体5の上フランジ部50に、該上フランジ部50を開閉可能な作業弁6を取付ける。作業弁6は、上フランジ部50の開口部5eに連通状態で密封接続される弁箱61と、この弁箱61の側方に連通状態で密封接続される弁蓋62と、これら弁箱61内と弁蓋62内とに架けてスライド可能に配設された図示しない弁体と、から主として構成されている。
【0025】
すなわち、作業弁6は、弁体が弁箱61内に配置されたときに筐体5を密封状に閉塞し、また弁体が弁蓋62内に配置されたときに筐体5を開放する構造となっている。
【0026】
次に、作業弁6の上方に既設管14を切断するための管切断装置7を設置する。管切断装置7は、短管を介し弁箱61に連通状態で密封接続され、上下方向に貫通する取付フランジ筒71と、この取付フランジ筒71内に配設されるカッタ72と、このカッタ72を上下方向に移動かつ周方向に回転駆動するための駆動機構73と、から主として構成されている。
【0027】
更に、本実施例の管切断装置7が備えるカッタ72は、いわゆるホールソーとして構成されるものであり、既設管14よりも大径の円筒状に形成されている。尚、本実施例では、既設管14の切断手段として、ホールソーが構成されるが、これに限らず、例えばバイトやワイヤーソー、エンドミル等を用いてもよい。その際、管切断装置がバイトの場合、スプロケットやチェーン等を管の周方向に回転駆動する構造や、管切断装置がエンドミルの場合、筐体5を軸方向や周方向に移動させる構造と周知の方法が採用されると良い。また本実施例では、既設管14を管軸方向に分断するように切断しているが、これに限らず、既設管14を管軸方向に分断することなく、管壁の一部を穿孔するように切断しても構わない。
【0028】
次に、特に図示しないが、作業弁6の弁体を弁蓋62内に退避させて開口部5eを開放するとともに、上述した管切断装置7を用いて駆動機構73によりカッタ72を回転駆動及び下方に進行させながら不断流状態で切断する。カッタ72は円筒形状をしているので、既設管14の管切断端部は、カッタ72の円筒軸方向から見ると円筒形状のカッタに沿った円弧状に形成される。また、切断された既設管14の管切片は、円筒状に形成されたカッタ72の内部に収容されて回収できるようになっている。既設管14を切断する際に発生する切粉は、筐体5の下部に設けられたバルブVを操作して、流体とともに排出される。
【0029】
既設管14を切断した後は、カッタ72を上昇させ、作業弁6の弁体を弁箱61内に配置させ筐体5の上方を閉塞する。これにより、既設管14は切断された状態で筐体5内に密封される。その後、作業弁6から管切断装置7を取り外して、既設管14の切断作業を終了する。
【0030】
Z地点にて外嵌した筐体5内で既設管14を切断したことにより、開口部5Bを介し新設管21に流体が流入されるが、新設管21の他方側端部には、バルブ4が閉状態で接続されていることから、流体が外部に漏出しないようになっている。また、既設管14は切断されたことにより、筐体5の開口部5Aと接続されている既設管14aと、筐体5の開口部5Cと接続されている既設管14bとに複数に分断される(
図2参照)。ここで既設管14の切断によっても、タンクA~Cから供給される流体が、既設管14a,筐体5,既設管14bを通過し下流側へ常に流出されることから不断流状態が維持されている。
【0031】
次いで、筐体5内の上記した切断部に密封状に弁部材9(切換弁)を設置する工程に移る。
図7に示されるように、作業弁6の上部に管切断装置7に替えて挿入装置8が密封状に取り付けられる。この挿入装置8は、短管を介し弁箱61に連通状態で密封接続され、上下方向に貫通する挿入装置筐体81と、この挿入装置筐体81内に配設される挿入軸82と、該挿入軸82の一端に配設された後述する弁部材9を保持する保持部83と、を主に備え、挿入軸82に取り付けられる図示しない操作部操作して挿入軸82を昇降させ、弁部材9を筐体5に対し上部から挿入させる。挿入の際は、後述する操作部94は取り外しておくとよい。
【0032】
そして、挿入装置8によって弁部材9を筐体5内へ設置すると、筐体5の上端部近傍箇所に周方向に沿って複数設けられたネジ部材等からなる固定部材52…,を筐体5の内径側へねじ込み、これら固定部材52の先端部を内弁箱91の外面に圧接させ固定する。この状態で、筐体5の内周面上部と弁部材9とは、
図8(b)に示す内弁箱91の外周面に環状に設けられた密封部材59によって密封される。その後、挿入装置8内の流体を排出し、図示しない作業用孔を介し保持部83と挿入軸82との固定を解除し、挿入装置8を作業弁6から取外すとともに、作業弁6を筐体5から取外す。そして、筐体5の上フランジ部50に上蓋51を取り付け、上方から下方に向けて固定部材54を用いてネジ止めすることで弁部材9の挿入作業が完了する。挿入作業が完了したことで、筐体5と弁部材9とから構成される切換弁装置1として機能するようになっている。
【0033】
図9に示されるように上述した弁部材9は、上面視略円筒形状に形成されるとともにその側壁に略十字方向にそれぞれポート9A,9B,9Cおよび9Dが形成され、これらのポート9A~9Dが内部で連通されている内弁箱91(弁箱)と、該内弁箱91の略中心位置にて上部及び下部に同軸に垂直方向に立設された弁軸93a,93bと、該弁軸93a,93bに固定に取り付けられた弁体92と、弁軸93a,93bを回動操作するための操作部94と、弁体92の移動を規制する規制部材95と、カバー部材96と、から主に構成されている。弁体92は、弁軸93aに接続された平面視略扇状の上面板92bと、弁軸93bに接続され該上面板92bと略同形状の下面板92cと、弁軸93a,93bを中心に平面視円弧状に形成され上面板92bの外径側端部と下面板92cの外径側端部とに架けて湾曲して上下に延びる円弧部92aと、から主に構成されており、弁体92は鋳物により成形されその外表面を弾性体により覆われている(
図8(b)参照)。弾性体はNBR、SBR、CRを含むゴム、エラストマー、樹脂等から構成されており、円弧部92aの外周面に各ポート9A~9Dを密封可能に囲い込むヒレ部を有して、内弁箱91の内面を用いて密封できる。また、弁軸93aの上端部は、弁部材9を筐体5内に設置した後、上蓋51に設けられた挿通孔を囲む筒部94aを遊嵌状態で突出するようになっており、突出箇所に操作部94が取り付けられるようになっている。操作部94を操作することで、弁体92を回動させ弁体92がポート9A,9Cまたは9Dを選択的に閉塞させることができるようになっている。更に、弁軸93a,93bが上下に離間していることで、弁体92の略中心領域が流体の流通領域として確保されている。尚、弁部材9の挿入時においては、内弁箱91のポート9A,9B,9C及び9Dと、筐体5の開口部5A,5B,5C及び5Dとがそれぞれ連通するように挿入させ、かつ、弁体92の円弧部92aをポート9D、すなわち筐体5の開口部5Dに向けて挿入させる(
図2参照)。
【0034】
図11(a)~(c)に示されるように、弁軸93aに操作部94が取り付けられたことで、弁軸93aが筒部94aと規制部材95に囲繞されるようになっている。弁軸93aは、その外周面がカバー部材96によって被覆されており、操作部94を操作することで筒部94a内を弁軸93aとカバー部材96とが一体的に回動するようになっている。またカバー部材96の断面形状は、その突出部96aによって周面の一部が突出されており、すなわち偏芯した略楕円形状を成している。
【0035】
また、筒部94aは、周方向の一部が切り欠かれた略円筒状に形成されており、当該切り欠かれた部分には規制部材95が配設されている。規制部材95は、平面視で略長方形を成しており、弁軸93a側の略中央部が筒部51aの外径側に向けて凹む凹部95cが形成されている。規制部材95は、調整部としてのネジ95a,95bが筒部94aの外径側から内径側へ向けて螺合されており、ネジ95a,95bの平坦状の先端部が、規制部材95を貫通し筒部94aの内部に突出するようになっている。尚、ネジ95a,95bを適宜に螺挿することで、その先端部の筒部94a内部への突出代は変更可能に配設されている。
【0036】
例えば、
図11(b)の状態から
図11(a)に示されるように操作部94を操作し、弁軸93aに設けられたカバー部材96の突出部96aを左方へ向けると、
図10(a)に示されるように略扇状に形成された弁体92の円弧部92aが弁軸93aに伴い左方へ向けられるようになっている。すなわちカバー部材96の突出部96aと、弁体92の円弧部92aとは、周方向に同じ位置に設けられている。このとき、突出部96aの一方側部96Lが、規制部材95から突出するネジ95aの先端部に当接することで、わずかな回動代を調整しつつ回動が規制されるようになっている。
【0037】
また、
図11(b)の状態から
図11(c)に示されるように操作部94を操作し、弁軸93aを右方へ向けると、
図10(c)に示されるように弁体92の円弧部92aが弁軸93aに伴い右方へ向けられるようになっている。内弁箱91には、底面から上面にかけて立設される側壁段部91a~91dが形成されている。また、側壁段部91a~91dは、弁軸93側へ突出してもよい。また
図9に示されるように、それぞれの側壁段部91a~91dの外側面には、筐体5の内面を密封する密封部材53a~53dが上下方向に配設されている。この密封部材53a~53dは、筐体5の内面と内弁箱91の外面とを密封するものであり、密封部材59と一体に形成され、内弁箱91の外底面まで一体形成されるものであり、内弁箱91の各ポート9A~9D間の筐体5の内面と内弁箱91の外面とが密封されることで、それぞれのポートが密封的に区分けされるようになっている。なお、密封部材59及び密封部材53a~53dは、一体形成されるものに限られない。
図10(a)に示されるように、弁体92の円弧部92aが反時計回りに図示左方へ向けられると、円弧部92aが側壁段部91cと91dに当接し密封され、ポート9Cを閉塞するようになっている。このとき、突出部96aの一方側部96Lが、規制部材95から突出するネジ95aの先端部に当接し、更なる反時計回りの回動が規制されるようになっている。また
図10(b)に示されるように、弁体92の円弧部92aが図示上方へ向けられると、円弧部92aが側壁段部91aと91dに当接し密封され、ポート9Dを閉塞するようになっている。更に
図10(c)に示されるように、弁体92の円弧部92aが時計回りに図示右方へ向けられると、円弧部92aが側壁段部91aと91bに当接し密封され、ポート9Aを閉塞するようになっている。このとき、突出部96aの他方側部96Rが、規制部材95から突出するネジ95bの先端部に当接し、更なる時計回りの回動が規制されるようになっている。本実施例においては、
図11(a)~(c)に示される筒部94aの周方向の一部に規制部材95が固定されていることで、
図10(a)~(c)に示されるように、弁体92の円弧部92aは、ポート9A,9C側からポート9B側への移動が規制されており、ポート9B近傍への回動が不可となっている。すなわちポート9Bは、本発明に係る特定のポートである。
【0038】
また、弁体92は、
図11(a)~(c)に示される筒部94aの周方向の一部に規制部材95が固定されていることで、時計回りにポート9Cからポート9Aにかけて、若しくは反時計回りにポート9Aからポート9Cにかけて、略180度の回動域を備えている。また弁体92は、上面視略90度に広がる扇形状を成していることから、側壁段部91aと側壁段部91bとにかけての略270度のうちの領域を閉塞させることを可能としている。
【0039】
また、規制部材95には凹部95cが形成されていることから、円弧状に形成されたカバー部材96の後端部96bの回動を妨げることなくスムーズに回動させるようになっている。また、任意の位置に弁軸93を回動させた後には、筒部94aの外径側から内径側へ向けて進退可能な固定ネジ94bの先端部を、カバー部材96の四方にそれぞれ形成された平坦部Hに圧接させることで、弁体92を位置固定させる。
【0040】
次に、新設の流体管を接続する工程について説明する。
図2に示されるように、タンクAから、既設管14のZ地点に取り付けた筐体5の開口部5Dに向けて新設管20を敷設する。なお、新設管20を敷設する際には、洗管などを行うとよい。例えば、図示しない洗管ピグ等を用い新設管20内を洗管してもよい。尚、以降既設管に替わって敷設される新設管は上述した洗管手順により洗管されていることとして説明する。また、洗管のタイミングはこれに限られない。
【0041】
弁体92の円弧部92aがポート9Dを閉塞した状態で、筐体5の開口部5Dに取り付けてある管帽Dを取り外し、新設管20の一端側の管端部を接続させ、新設管20の他端側の管端部をタンクAの図示しないバルブ部に接続させる。前述バルブ部は予め閉状態にされており、開状態にする前に新設管20の耐圧試験を行う。新設管20の耐圧試験を行う際には、新設管20の図示しない供給口を介し供給される流体を用いる。耐圧試験において好ましい試験結果を確認できたら、
図8(a)に示されるように開口部5Aと開口部5Dとを接続するバイパス管58の仕切弁58aを開状態へ切換え、空気抜きなどを行いながら、新設管20内へ既設管14a内の流体を流入させる。これにより新設管20内が流体で満たされ、新設管20内の流体圧と内弁箱91内の流体圧が略同圧となることで、弁体92の円弧部92aにかかる圧力差がほぼ無くなり、弁体92を回動させ易くなる。また、新設管20にバイパス管58を経由させて既設管14a内の流体を流入させることから、流量の減少を防ぎ弁体92の開閉の際に発生の恐れがあるウォータハンマ現象を防ぐようになっている。また、耐圧試験のタイミングはこれに限られない。
【0042】
次に、新設管22の一端側を新設管21の端部に配設されているバルブ4に接続するとともに、新設管22の他端側を既設管14のY地点に設置された筐体3の開口部3Bに接続する。上述した新設管20と同様に、新設管22に対しても洗管及び耐圧試験を行う。この後、バルブ4を開状態に切替え、空気抜きなどを行いながら、新設管22に流体を流入させてもよいし、後述するように流入を行ってもよい。
【0043】
次に、既設管14bのY地点に設置された筐体3に対して、上述と同様に作業弁6を取り付け、管切断装置7により既設管14bを切断する工程に移る。尚、上述した切断工程と同様の為、詳細の説明は省略する。管切断装置7により筐体3内部において既設管14bが切断されたことにより、一端側が筐体5の開口部5Cと接続され筐体3の開口部3Aと接続されている既設管14b’と、筐体3の開口部3Cに接続され下流側の図示しない支管と接続されている14cとに分断される(
図2参照)。また、この切断工程の際も不断流状態は維持されている。
【0044】
既設管14bのY地点の切断工程の後には、バルブ4を開状態に切り替える。これにより、タンクA~Cから既設管12,13,14aを経て供給される流体が、筐体5に流入し、開口部5Cを介した既設管14b’方面と開口部5Bを介した新設管21方面とに分岐され、分岐された流体がY地点に設置された筐体3で合流し既設管14cを通じて下流側へ流出させるようになっている。
【0045】
次に、挿入装置8によって仕切部材30を筐体3内へ設置する作業に移る。仕切部材30の設置作業については、上記した弁部材9の設置作業と同手順の為、詳細の説明は省略する。筐体3内に設置される仕切部材30は、筐体3の開口部3A~3Cのうち、開口部3Bと開口部3Cとを連通するとともに、開口部3Aを遮断する仕切体31からなり、この仕切体31の正面側には内径側に凹む円弧状のテーパ面が形成されている。仕切体31の正面側を開口部3Bと開口部3Cの開口域を残して配置させることで、開口部3Bから流入される流体を開口部3Cに向けてスムーズに流出させるようになっている。仕切体31の背面側は開口部を閉塞させる閉塞域となっており、仕切体31の正面側を開口部3Bと開口部3Cの開口域を残して配置させたことで、仕切体31の背面側が筐体3の開口部3A側を閉塞し、Z地点の筐体5の開口部5Cよりも下流側の連通状態を解除するようになる(
図2参照)。尚、仕切部材30を切換弁としてもよい。
【0046】
次に、
図3に示されるように弁部材9の操作部94を操作し、弁体92を開口部5C側へ回動させることで、既設管14b’への流体の流入を遮断する。弁体92を開口部5C側へ回動させたことで、タンクAからの流体が、新設管20を介し、筐体5の開口部5Dを経て開口部5Bを通過し、新設管21,新設管22、および筐体3の開口部3B,3C、更に既設管14cを通過し、下流側へ流出されるようになっている。尚、筐体5には、タンクA~Cからの流体が、既設管12,13及び14aを通過して、開口部5Aを通過し流入もしている。
【0047】
ここで
図9に示されるように、内弁箱91に形成されている直線上に互いに対向する2つのポート9B及び9Dを密封する密封部材53b,53c及び53d,53aによって平面視で形成される開口角度αは、これらのポートに直交して互いに対向する2つのポート9A及び9Cを密封する密封部材53a,53b及び53c,53dによって形成される開口角度βよりも小さく形成されている(α<β)。既設管14には比較的開口角度の大きい側のポート9A,9Cと接続させ、新設管20,21には比較的開口角度の小さい側のポート9B,9Dと接続させる。これにより、弁体92をポート9Dからポート9Cへ回動させる際や新設管20内に充水する際に、開口角度の小さい側のポート9Dに連通する開口部5Dに接続された新設管20内の流体による影響を小さく抑えることができる。特に、この実施例では、新設管20の接続後、新しい圧力流を適用させるため、内弁箱91を新設管20側から押圧する力と既設管14を流れる流路による引き込みの力、ウォータハンマ現象、流速影響などが不測に働く虞もあるが、開口角度αが開口角度βよりも小さく形成されることで、内弁箱91の筐体5への支持力が高く設定できる。なお、各ポート9A~9Dの流路方向に直交する開口幅は、互いに略同じに形成されており、開口面積も略同じに形成されている。各ポート形状は、側面視略四角形であってもよいし、略円形であってもよい。
【0048】
図2に戻り、既設管14b’内に流体が滞留されている。まず、既設管14b’に配設されている図示しない排出口より流体を排出させる。排出後、既設管14b’を新設管に敷設替えするために、既設管14b’を切断もしくは既設管14b’を構成する流体管同士の管軸方向の係合を解除させる。筐体5の開口部5Cと、筐体3の開口部3Aから延出する切断もしくは係合を解除された既設管14b’の端部には、それぞれ管帽Dを被覆させる(
図3参照)。更に、開口部5Bと開口部5Cとを接続するバイパス管57の仕切弁57aを開状態へ切換え、既設管14b’へ新設管21内の流体を流入させる。これにより既設管14b’内が流体で満たされ、既設管14b’内の流体圧と内弁箱91内の流体圧が略同圧となることで、弁体92が回動させ易くなる。筐体5の開口部5Cに接続される既設管14b’および筐体3の開口部3Aに接続される既設管14b’を撤去して該開口部に栓をしてもよい。
【0049】
次に、
図3に示される既設管10~13,14aを新設管に敷設替えするために、弁体92をポート9Cから時計回りに略半周回動させ、ポート9Aを閉塞させる。操作部94を操作し、弁体92を回動させる際には、
図11(a)~(c)に示されるように規制部材95が配設され、反時計回りの回動を規制していることから、
図10(b)に示されるように弁体92の円弧部92aにポート9Dを通過させ、更に操作部94を操作し、
図10(c)に示されるように弁体92の円弧部92aにポート9Aを閉塞させるようになっている。これにより、規制部材95によって弁体92の円弧部92aが開口部5Bと連通しているポート9Bを閉塞不可及びポート9B上を通過不可としていることから不慮の閉塞による断流状態を未然に防止でき、この際、弁体92は一時的にポート9Dを横断するが、既設管14a側からの流入があるため、不断流状態を維持できるようになっている。
【0050】
上記したように弁体92を開口部5C側から開口部5A側へ回動させ、ポート9Aを閉塞させたことで、タンクAから供給される流体が、新設管20を通過し筐体5の開口部5Dを経て開口部5Bを通過し、新設管21,22、および筐体3の開口部3B,3C、既設管14cを通過し、下流側へ流出されるので不断流状態が維持されている。
図4に示されるように、既設管10~13を撤去し、既設管14aの端部14a’には、管帽Dを被覆させる。また、既設管14aを撤去して開口部5Aに栓をしてもよい。
【0051】
次に、
図5に示されるように、タンクAとタンクBとを新設管23により接続することでタンク内の流体を流通可能とし、またタンクBとタンクCとを新設管24により接続することでタンク内の流体を流通可能とする。更に、既設管14a’に被覆されている管帽Dを取り外し、図示しない継輪を介して新設管25を取り付ける。新設管25は、タンクCと接続される支管25aとタンクBに接続される支管25bとから構成され、タンクBとタンクCとを筐体5の開口部5Aに連通させている。また、開口部5Aと開口部5Dとを接続するバイパス管58の仕切弁58aを開状態へ切換え、新設管25へ内弁箱91内の流体を流入させる。これにより新設管25内が流体で満たされ、新設管25内の流体圧と内弁箱91内の流体圧が略同圧となることで、弁体92が回動させ易くなる。
【0052】
最後に、
図5の一点鎖線囲い部に示されるように、弁体92をポート9Aから反時計回りに回動させ、ポート9Cを閉塞させる。これにより、切換弁装置1は、閉塞されていた開口部5A側のポート9Aからも流体が流入されるようになり、筐体5の開口部5Aと開口部5Dとから、上流側としてのタンクA~Cから供給される流体を流入させ、開口部5Bから下流側へ流体を流出させるようになっている。以上、切換弁装置1を用いた、上水道施設の既設管から新設管への敷設替え工事の一例について説明を終了する。
【0053】
図12(a),(b)は、切換弁190を備えた切換弁装置100を示し、前記実施例の規制部材95に代わり、内弁箱105の底面50aの2箇所に上面視略T字状に形成されたこの場合の規制部材であるストッパー部材40,41を配設させた変形例である。ストッパー部材40,41は、鋼材から成形されており底面部を内弁箱105の底面50aに溶接等により固定状態で配設させる。尚、当変形例においては、ストッパー部材40,41を
図12(a)における内弁箱105内の下方側に配設させることで、上述した規制部材95と同様にポート9Bへの回動を規制させることとしている。
【0054】
ストッパー部材40,41は、上面視略T字状であって、内弁箱105の底面50aに固定された底面部から略垂直に上方に向けて立設された形状を成しており、幅広の当接面である規制部40a,41aがそれぞれ形成されている。切換弁190の弁軸193a,193bが図示しない操作部により操作され、弁体192が回動される際、弁体192の下面板192cにストッパー部材40の規制部40aが当接し、若しくはストッパー部材41の規制部41aが当接することでポート9Bへの回動を規制させるようになっている。
【0055】
以上説明したように、流体管を接続するための開口部5A~5Dが形成され、既設管に密封状に外嵌する分割構造の筐体5と、筐体5内にて既設管の一部が切断された切断部に密封状に設置される切換弁9とからなり、不断流状態で筐体5に新設管を接続することができる切換弁装置1であって、筐体5には、略十字方向にそれぞれ開口部5A~5Dが形成されており、切換弁9は、開口部5A~5Dにそれぞれ連通するポート9A~9Dが略十字方向に形成された内弁箱91と、選択的に1つのポートを閉塞可能な弁体92と、を備えており、略十字方向に形成されたポート9A~9Dのうち1つを弁体92で閉塞することで、開放状態の残りの3方向のポートを通じて不断流状態を維持させながら、弁体92を閉塞させたポートと連通する開口部側に接続されている既設管の撤去や、新設の流体管の敷設が順次できるので、複数の流体管を更新することができ、施工の拡張性が高い。
【0056】
内弁箱91には、弁体92がポート9A~9Dのうち特定のポート9Bを閉塞することを規制する規制部材95が配設されていることから、規制部材95により、特定のポート9Bを常時開放させることができるため、このポート9Bに連通する開口部5Bに接続された流体管の不断流状態を常に維持でき、不慮の閉塞による断流状態を防止することができる。
【0057】
また、弁体92は、切換弁9の中央に設けられた回転軸周りに回転可能に設けられ、弁体92の回動角度が規制部材95により270度以内に規制されていることで、特定のポート9Bを除くポート9A,9B,9Dを閉塞するようになっていることから、弁体92が特定のポート9Bを通過することを規制部材95により規制されているので、弁体95通過時に生じる一時的な断流状態を防止させることができる。
【0058】
また、略十字方向に形成されたポートのうち、互いに対向する一対のポート9B,9Dを密封する密封部材53b,53c及び53d,53aによって平面視で形成される開口角度αは、該一対のポートに略直交する残りの一対のポート9A,9Cを密封する密封部材53a,53b及び53c,53dによって形成される開口角度βよりも小さい(α<β)ことから、開口角度の小さい側のポート9B,9Dに連通する開口部5B,5Dに接続された流体管内の流体による影響を小さく抑えることができる。
【0059】
切換弁装置1を用いて、不断流状態で新設の流体管を敷設する管敷設方法であって、筐体5を既設管14に密封状に外嵌する工程と、筐体5の開口部5A~5Dのうち新設管20を接続するための開口部5Dを閉塞した状態で、筐体5内にて既設管14の一部を切断する工程と、筐体5内の切断部に切換弁9を設置する工程と、弁体92によりポートを順次閉塞し、ポートに連通する開口部に接続された既設管を撤去し、若しくは開口部に新設管を接続する工程と、を有することから、略十字方向に形成されたポートのうち1つを弁体92で閉塞することで、開放状態の残りの3方向のポートを通じて不断流状態を維持させながら、弁体92を閉塞させたポートと連通する開口部側に接続されている既設管の撤去や、新設管の敷設が順次できるので、複数の流体管を更新することができ、施工の拡張性が高い。
【0060】
また、筐体5の開口部5A~5Dには、新設の流体管として、上流側の流体管として新設管20,25と、下流側の流体管として新設管21がそれぞれ接続されることから、筐体5が外嵌する既設の流体管14を撤去するか否かに関わらず、新設管20,21,25によって新たな流路を確保することができる。
【0061】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0062】
例えば、前記実施例では、浄水処理施設に配設されている既設管路に対して切換弁装置1を配設し、新設管への敷設替えを工程順に説明したがこれに限られず、不断流状態を維持しながら新設管への敷設替えを行えれば一部の工程を省略したり変更してもよく、また、本発明に係る切換弁装置は、浄水処理施設に限られず既設管路が構成されている種々の施設に適用することができる。
【0063】
また、前記実施例では、規制部材95及びストッパー部材40,41を用いて、弁体92がポート9Bを閉塞することを規制させることとしたがこれに限られず、不断流状態を維持しながら新設管への敷設替えを行うものであれば、他のポートの閉塞を規制させることとしてもよい。また規制しなくてもよい。
【0064】
また、前記実施例では、新設管に上流側、下流側を接続したが、例えば、新設管に両方とも上流側を接続してもよいし、或いは新設管に両方とも下流側を接続してもよい。