(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036364
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】I型インターフェロン遺伝子を刺激するための方法及びカチオン性脂質を含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/14 20060101AFI20240308BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240308BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240308BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240308BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
A61K31/14
A61P35/00
A61P31/00
A61P37/04
A61K39/00 H ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024003319
(22)【出願日】2024-01-12
(62)【分割の表示】P 2020531050の分割
【原出願日】2018-12-05
(31)【優先権主張番号】62/594,815
(32)【優先日】2017-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509263191
【氏名又は名称】ピーディーエス バイオテクノロジー コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】PDS BIOTECHNOLOGY CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】フランク ベデュ-アッド
(72)【発明者】
【氏名】グレッグ コン
(72)【発明者】
【氏名】シバ ケー.ガンダプディ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ワード
(72)【発明者】
【氏名】ジェロルド ウッドワード
(57)【要約】
【課題】対象へのカチオン性脂質の投与を含む対象におけるI型IFNシグナル伝達経路を修飾するための方法及び組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】カチオン性脂質は、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、N-1-(2,3-ジオレオイルオキシ)-プロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DOEPC)、鏡像異性体及びそれらの組み合わせを含む。組成物は、1つ以上の抗原成分をさらに含み得、ここで、そのような成分は、自家性又は非自家性である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物へのカチオン性脂質の投与を含む対象におけるI型IFNシグナル伝達経路を修飾するための方法。
【請求項2】
カチオン性脂質が、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、N-1-(2,3-ジオレオイルオキシ)-プロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DOEPC)、及びそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カチオン性脂質が、カチオン性脂質の鏡像異性体を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
カチオン性脂質が、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
鏡像異性体が、(R)-1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(R-DOTAP)又は(S)-1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(S-DOTAP)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
I型IFNシグナル伝達経路が、アップレギュレート/活性化される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
I型IFNシグナル伝達経路が、ダウンレギュレート/不活性化される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
カチオン性脂質が、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、N-1-(2,3-ジオレオイルオキシ)-プロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DOEPC)、及びそれらの組み合わせを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
カチオン性脂質が、カチオン性脂質の鏡像異性体を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
鏡像異性体が、(R)-1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(R-DOTAP)又は(S)-1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(S-DOTAP)である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
抗原をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
抗原をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
T細胞応答が上昇している、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
抗原特異的CD8+T細胞応答が上昇している、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
カチオン性脂質を含む組成物の投与を含む対象において免疫原性応答を誘導するための方法であって、カチオン性脂質の投与は、I型IFNシグナル伝達経路の刺激をもたらす方法。
【請求項16】
カチオン性脂質が、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、N-1-(2,3-ジオレオイルオキシ)-プロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DOEPC)、及びそれらの組み合わせを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
カチオン性脂質が、(R)-1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(R-DOTAP)を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
T細胞応答が上昇している、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
抗原特異的CD8+T細胞応答が上昇している、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
カチオン性脂質を含む組成物の投与を含み、カチオン性脂質の投与がI型IFNシグナル伝達経路の刺激をもたらす、対象における癌を治療するための方法。
【請求項21】
カチオン性脂質が、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、N-1-(2,3-ジオレオイルオキシ)-プロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DOEPC)、及びそれらの組み合わせを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
カチオン性脂質が、(R)-1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(R-DOTAP)を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
抗原の投与をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
抗原が腫瘍抗原である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
腫瘍抗原がHPVである、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年12月5日に出願された米国仮特許出願第62/594,815号の優先権及びすべての利益を主張し、これは、その全体が参照により本明細書に明示的に援用される。
【0002】
1.発明の分野
本発明は、概して、カチオン性脂質の投与を含むI型IFNシグナル伝達経路を修飾するための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
過去10年間のI型インターフェロン(IFN-I)は、疾患に対する哺乳類の免疫応答において極めて重要であることが示されている。I型インターフェロンは、ウイルス感染によって直接誘導されるため、「ウイルス」インターフェロンと呼ばれている。対照的に、「免疫」IFN、すなわちIFN-γは、免疫応答の際にT細胞とナチュラルキラー(NK)細胞が受容体と結合した後に合成される。また、IFN-Iは、インターフェロンα受容体(IFNAR)を介したシグナル伝達を介した腫瘍細胞アポトーシス及び抗血管新生のインデューサーとしても十分に立証されている。治療的免疫応答におけるIFN-Iの重要な役割のため、現在、ワクチン、免疫療法及び他の免疫ベースの医薬の予防的及び治療的利益の両方を改善するために、IFN-Iを活性化する安全で有効な方法の同定に重点が置かれている。例えば、マウスを用いた前臨床研究では、IFN-Iは、抗原提示樹状細胞(DC)やCD4、CD8 T細胞など、免疫系の他の重要な細胞を直接活性化することが示されている。IFN-Iはまた、Tリンパ球によって認識される腫瘍細胞の抗原提示を増加させ、したがって、癌免疫療法において重要な潜在的役割を示す。
【0004】
ワクチン開発の分野では、病原体によって引き起こされる疾患を治療するために、又は癌を治療するために、ヒトにおいて多数の強力な抗原特異的細胞傷害性T細胞を産生する方法及びアプローチは、依然として満たされていない医学的ニーズである。アジュバントなどの免疫刺激物質と組み合わせて使用されるタンパク質及びペプチドベースのワクチンは、細胞傷害性T細胞を発生させるために評価されている、より有望なアプローチの1つである。しかしながら、現在、ヒトへの使用が承認されているアジュバントのほとんどは、I型インターフェロン及び細胞傷害性T細胞の誘導物質としては不十分であり、長期間の予防効果又は治療効果の確立に失敗している。
【0005】
インターフェロン(IFN-α/β/γ)は、より強力な免疫刺激サイトカインの一部であり、CD8+細胞傷害性T細胞の発生において重要な役割を果たす。インターフェロンはまた、抗ウイルス免疫にも重要である。効果的なT細胞免疫には、適切な共刺激シグナル(シグナル2)及びサイトカイン(シグナル3)の存在下で抗原(シグナル1)を有するT細胞の活性化が必要であり、T細胞の増殖、生存、分化、及びエフェクター機能を促進することによって特異的なT細胞免疫応答を駆動する。IFN-Iは、シグナル3としてT細胞に直接作用し、T細胞の活性化を誘導し、T細胞の最適な増殖、生存、及びエフェクター機能を駆動することができる。当初、抗ウイルスサイトカインとして同定されたIFN-Iは、CD8 T細胞の増殖、生存及びエフェクター機能を増強することが示されている。インターフェロンはまた、補助刺激分子を調節し、T細胞活性化に必要な抗原交差提示を増強することによって、抗原提示細胞の成熟を促進する。さらに、インターフェロンは、IL-15産生を介して、直接的な抗腫瘍特性ならびに間接的な抗腫瘍特性を有することが実証されている。これらの重要な免疫学的特性の結果として、種々のIFN-I誘導剤及び組換えIFN-I療法が、現在、ヒト試験において試験されている。
【0006】
I型IFNは、腫瘍抑制遺伝子p53の発現を維持することにより、インビトロで細胞形質転換を阻害することが報告されている(Takaoka A, Hayakawa S, Yanai H, Stoiber D, Negishi H, Kikuchi H, et al. Integration of interferon-α/β signaling to p53 responses in tumor suppression and antiviral defense. Nature (2003)424:516-23)。ヒト癌細胞株における腫瘍細胞増殖の負の調節及び細胞死の誘発におけるIFN-Iシグナル伝達の特異的役割もまた実証されている(Zitvogel L, Galluzzi L, Kepp O, Smyth MJ, Kroemer G.Type I interferons in anticancer immunity. Nat Rev Immunol (2015) 15:405-14)。インビボで、腸上皮細胞からのIFNAR1の欠失は、マウスにおける腫瘍形成を増加させた(Tschurtschenthaler M, Wang J, Fricke C, Fritz TMJ, Niederreiter L, Adolph TE, et al. Type I interferon signaling in the intestinal epithelium affects Paneth cells, microbial ecology and epithelial regeneration. Gut (2014) 63:1921-31)。複数の研究から、IFN-Iが主に免疫細胞の間接的刺激を介して抗腫瘍効果を誘導し、悪性細胞を迅速に排除するという強い証拠が得られている。いくつかの研究は、IFN-Iが病原体に対する宿主の反応と類似した抗癌免疫応答を促進することを強く示唆している。
【0007】
普遍的なIFNAR発現の結果として、IFN-Iは、炎症性及びウイルス性疾患との関連において、免疫細胞に対して重要な調節作用を有することが示されている(Decker T, Muller M, Stockinger S. The yin and yang of type I interferon activity in bacterial infection. Nat Rev Immunol (2005) 5:675-87; Stetson DB, Medzhitov R. Type I interferons in host defense. Immunity (2006) 25:373-81)。したがって、先天性及び適応免疫応答の細胞メディエータは、悪性疾患に対する防御においてIFN-Iによって非常によく調節され得ることが明らかである。
【0008】
IFN-Iは、腫瘍免疫サーベイランスにおいて重要であることが示されている(Dunn GP, Bruce AT, Sheehan KCF, Shankaran V, Uppaluri R, Bui JD, et al. A critical function for type I interferons in cancer immunoediting. Nat Immunol (2005)6:722-9)。IFN-γとは対照的に、IFN-Iは、骨髄移植実験において、保護的抗腫瘍免疫応答の誘導中に腫瘍細胞自体ではなく宿主造血細胞に作用することが見出された。I型IFNが、腫瘍サーベイランスとの関連で、自然免疫系及び適応免疫系の細胞に影響を及ぼす機序について多くの報告がある[Zitvogel L, Galluzzi L, Kepp O, Smyth MJ, Kroemer G. Type I interferons in anticancer immunity. Nat Rev Immunol (2015) 15:405-14; Parker BS, Rautela J, Hertzog PJ. Antitumour actions of interferons: implications for cancer therapy. Nat Rev Cancer (2016) 16:131-44)]。宿主抗原提示細胞の活性化において、I型IFNの重要な役割がいくつかの研究によって同定されている(Fuertes MB, Kacha AK, Kline J, Woo S-R, Kranz DM, Murphy KM, et al. Host type I IFN signals are required for antitumor CD8+ T cell responses through CD8α+ dendritic cells. J Exp Med (2011) 208:2005-16; Diamond MS, Kinder M, Matsushita H, Mashayekhi M, Dunn GP, Archambault JM, et al. Type I interferon is selectively required by dendritic cells for immune rejection of tumors. J Exp Med (2011) 208:1989-2003)。初期に産生されたI型IFNは、腫瘍抗原特異的細胞傷害性CD8+Tリンパ球(CTL)の活性化に必要なCD8α+樹状細胞(DC)の濃度に作用することが決定されている。I型IFNシグナル伝達は、CD8α+DCが抗原を交差させる能力を特異的に促進する(Diamond MS, Kinder M, Matsushita H, Mashayekhi M, Dunn GP, Archambault JM, et al. Type I interferon is selectively required by dendritic cells for immune rejection of tumors. J Exp Med (2011) 208:1989-2003)。この効果は、DCの生存を増強し、従って交差提示中の細胞表面での抗原持続性を増強するためのIFN-Iの結果であると仮定されている(Lorenzi S, Mattei F, Sistigu A, Bracci L, Spadaro F, Sanchez M, et al. Type I IFNs control antigen retention and survival of CD8α(+) dendritic cells after uptake of tumor apoptotic cells leading to cross-priming. J Immunol (2011) 186:5142-50; Schiavoni G, Mattei F, Gabriele L. Type I interferons as stimulators of DC-mediated cross-priming: impact on anti-tumor response. Front Immunol (2013) 4:483)。I型IFNは、DCの成熟、分化、移動を促進する(Fuertes MB, Woo S-R, Burnett B, Fu Y-X, Gajewski TF. Type I interferon response and innate immune sensing of cancer. Trends Immunol (2013) 34:67-73)。
【0009】
I型IFNは、DCによってインターロイキン15(IL15)の放出を誘導することができることに留意することが重要である(Mattei F, Schiavoni G, Belardelli F, Tough DF. IL-15 is expressed by dendritic cells in response to type I IFN, double-stranded RNA, or lipopolysaccharide and promotes dendritic cell activation. J Immunol (2001) 167:1179-87)。これは、CD8+記憶細胞及びNK細胞の生存を促進する(Huntington ND. The unconventional expression of IL-15 and its role in NK cell homeostasis. Immunol Cell Biol (2014) 92:210-3)。この作用はNK細胞に限定されない。CTLはまた、I型IFNに応答して、完全なエフェクター機能を獲得することも示されている(Curtsinger JM, Mescher MF. Inflammatory cytokines as a third signal for T cell activation. Curr Opin Immunol (2010) 22:333-40; Fuertes MB, Kacha AK, Kline J, Woo S-R, Kranz DM, Murphy KM, et al. Host type I IFN signals are required for antitumor CD8+ T cell responses through CD8α+ dendritic cells. J Exp Med (2011) 208:2005-16)。また、好中球(Wu C-F, Andzinski L, Kasnitz N, Kroger A, Klawonn F, Lienenklaus S, et al. The lack of type I interferon induces neutrophil-mediated pre-metastatic niche formation in the mouse lung. Int J Cancer(2015) 137:837-47; Jablonska J, Wu C-F, Andzinski L, Leschner S, Weiss S. CXCR2-mediated tumor-associated neutrophil recruitment is regulated by IFN-β. Int J Cancer (2014) 134:1346-58)、NKT、およびγδ T細胞(Woo S-R, Corrales L, Gajewski TF. Innate immune recognition of cancer. Annu Rev Immunol (2015) 33:445-74)などの他の自然免疫細胞サブセットに影響を与える能力を有することによって、I型IFNは、腫瘍増殖制限特性を示す。
【0010】
I型IFNは、感染の非常に初期に放出される(Biron CA. Initial and innate responses to viral infections - pattern setting in immunity or disease. Curr Opin Microbiol (1999) 2:374-81)、抗癌宿主応答におけるDC及びNK細胞などの先天性免疫細胞サブセットの重要な調節因子である。NK細胞については、I型IFNは、ウイルス感染において、感染に対する初期応答を生成する能力において重要であることが示されており、NK細胞の細胞毒性及びサイトカイン産生を増強すると考えられている(Lee CK, Rao DT, Gertner R, Gimeno R, Frey AB, Levy DE. Distinct requirements for IFNs and STAT1 in NK cell function. J Immunol (2000) 165:3571-7; Nguyen KB, Salazar-Mather TP, Dalod MY, Van Deusen JB, Wei X, Liew FY, et al. Coordinated and distinct roles for IFN-alpha beta, IL-12, and IL-15 regulation of NK cell responses to viral infection. J Immunol (2002) 169:4279-87)。
【0011】
ヒトでは、I型インターフェロンは、通常、Toll様受容体、NOD様受容体、及びレチノイン酸誘導性遺伝子I様(RIG-I)受容体などの病原体関連パターン認識受容体の結合を介して誘発されることが報告されている。さらに、種々の細胞質二次メッセンジャー(c-GMP)及び細胞質核酸センサーは、インターフェロン遺伝子刺激(STING)経路の活性化を介してI型インターフェロン産生を引き起こすことができる。
【0012】
IFN-Iは様々な方法で抗腫瘍活性を媒介すると考えられている。例えば、インターフェロンは、腫瘍細胞に対して直接作用し、生存及び増殖能力を変化させることができる[Parker, B.S., J. Rautela, and P.J. Hertzog, Antitumour actions of interferons: implications for cancer therapy. Nat Rev Cancer, 2016. 16(3): p. 131-443]。
【0013】
I型を介した免疫学的特性を利用するために、多くの方法がヒトで研究されている。組換えIFN-I単独療法の投与は、組換えインターフェロンαの投与によって、慢性C型肝炎の治療において臨床的に証明されている(Adrian M. Di Bisceglie, M.D., Paul Martin, M.D., Chris Kassianides, M.D., Mauricio Lisker-Melman, M.D., Linda Murray, R.N., Jeanne Waggoner, B.A., Zachary Goodman, M.D., Steven M. Banks, Ph.D., and Jay H. Hoofnagle, M.D., Recombinant Interferon Alfa Therapy for Chronic Hepatitis C, November 30, 1989 N Engl J Med 1989; 321:1506-1510)。別のアプローチには、二本鎖RNA(Poly I:C)、CpGオリゴヌクレオチド、Imiquimod、単一標準RNAなどのToll様受容体(TLR)アゴニストを投与して、I型インターフェロンの内因性産生を誘発することが含まれる(Munir Akkaya, Billur Akkaya, Patrick Sheehan, Pietro Miozzo, Mukul Rawat, Mirna Pena, Ann S Kim, Olena Kamenyeva, Juraj Kabat, Chen-Feng Qi, Silvia Bolland, Akanksha Chaturvedi and Susan K Pierce, The Toll-like receptor ligand CpG-A induces type 1 interferons in B cells contrasting the proinflammatory inducing activity of CpG-B, J Immunol May 1, 2017, 198 (1 Supplement) 152.4)。より最近では、STING経路アゴニストは、抗腫瘍免疫のための集束型I型インターフェロン活性化剤としてより重要性を増している[Corrales, L., et al., The host STING pathway at the interface of cancer and immunity. J Clin Invest, 2016. 126(7): p. 2404-11]。
【0014】
しかしながら、I型インターフェロン経路の強力な活性化を促進するための効果的な方法については、依然として明確な必要性がある。I型インターフェロン経路の活性化の結果に伴う多くの治療上の利益を考えると、そのための改善された方法が明らかに望ましい。
【0015】
したがって、必要とされるのは、IFN1(IFN-α/β/γ)の強力な活性化を可能にするワクチンのための改良された方法及び組成物である。さらに、必要なものは、ペプチド又はタンパク質抗原のような抗原の有無にかかわらず、頑強な細胞傷害性T細胞免疫応答を誘発するワクチンのような改良された方法及び組成物である。好ましくは、このような組成物及びワクチンは、安全であり、投与が容易であり、副作用又は毒性が最小限である免疫治療剤の使用を組み込む。
【発明の概要】
【0016】
本明細書では、IFN1(IFN-α/β/γ)の強力な活性化剤としてカチオン性脂質を含むワクチンのための新規な方法及び組成物を提供する。本明細書に記載されるように、本組成物は、宿主に投与された場合、効果的で頑強な細胞傷害性T細胞免疫応答の誘導を可能にする。組成物は、所望によりペプチド又はタンパク質抗原と組み合わされたカチオン性脂質を含む;特定の実施形態では、カチオン性脂質はリポソームの形態である。以下に詳細に記載されるように、本発明の組成物は、マウスのような哺乳動物において確立された腫瘍を退行させる能力を有するIFN-I活性化細胞傷害性細胞をもたらす。本発明はさらに、感染性病原体に対するより効果的な予防並びに癌及び他の疾患に対する治療を開発するために、IFN-Iを特異的に活性化するのに使用するためのカチオン性リポソームの使用を提供する。
【0017】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して後続の説明を読んだ後、本発明がよりよく理解されるようになるにつれて容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、Versamune(登録商標)(R-DOTAP)が、流入リンパ節における免疫細胞の迅速かつ持続的な動員を誘導したことを示すグラフである。
図1のデータは、C57BL/6Jマウス(n=4)に、頸部の後方に100μlの12mM R-DOTAPリポソームナノ粒子を皮下注射した実験に対応する。PBS及びLPS(50μg/マウス)を注射したマウス(24時間時点)を、それぞれ陰性及び陽性対照として用いた。注射の4時間後又は24時間後に、各マウスからの腋窩リンパ節及び上腕リンパ節をプールし、コラゲナーゼ消化により処理した。これらのリンパ節細胞懸濁液中のCD11c陽性細胞(~20,000細胞)を選別精製し、RLT緩衝液中で溶解し、nCounter(登録商標)マウス炎症キット及びナノストリング技術を用いて相対的遺伝子発現分析のために処理した。データは、R-DOTAPによるI型インターフェロン遺伝子のアップレギュレーションを示し、各群の平均4匹のマウスを示す。
【
図2】
図2は、流入リンパ節におけるR-DOTAP誘導型IFN遺伝子発現を示すグラフである。
図2のデータは、C57BL/6Jマウス(n=2)に、足パッド内に50μlの6mM R-DOTAP又はS-DOTAPナノ粒子を皮下注射した実験に対応する。PBS及びLPS(50μg/マウス)を注射したマウス(24時間時点)を、それぞれ陰性及び陽性対照として用いた。注射後3時間又は24時間、各マウスからの膝窩リンパ節をプールし、RLT緩衝液中で溶解し、Taqman遺伝子発現アッセイ及びRT-PCRを用いて相対遺伝子発現分析のために処理した。データは、S-DOTAPとR-DOTAPの両方によるI型インターフェロン遺伝子のアップレギュレーションを示している。
【
図3A】
図3A、3B、及び3Cは、流入リンパ節におけるR-DOTAP誘導細胞動員及びCD69発現を示すグラフを提供する。
図3のデータは、A)C57BL/6Jマウス(n=3)に50μlの6mM R-DOTAP又は280mMスクロースを足パッドに皮下注射した実験に対応する。指示された時間に、各マウスから膝窩リンパ節ドレナージリンパ節を単離し、全細胞数を得るために血球計を用いてリンパ節の単一懸濁液を計数した。B)C57BL/6J(n=3)又はIFNAR-/-(n=3)マウスに、足パッドに50μlの6mM R-DOTAP又は280mMスクロースを注射し、各マウスから排液性膝窩リンパ節を採取し、24時間後(B)の全細胞数について酵素的に消化したリンパ節を血球計を用いて評価し、CD3+T細胞(B)上のCD69の発現をフローサイトメトリーを用いて評価した。A-B)データは各所属リンパ節の総細胞数を示す。C)ワクチン接種2の4時間後の各群のCD69+細胞数の割合(%)を示す(n=3匹/群)。
【
図3B】
図3A、3B、及び3Cは、流入リンパ節におけるR-DOTAP誘導細胞動員及びCD69発現を示すグラフを提供する。
図3のデータは、A)C57BL/6Jマウス(n=3)に50μlの6mM R-DOTAP又は280mMスクロースを足パッドに皮下注射した実験に対応する。指示された時間に、各マウスから膝窩リンパ節ドレナージリンパ節を単離し、全細胞数を得るために血球計を用いてリンパ節の単一懸濁液を計数した。B)C57BL/6J(n=3)又はIFNAR-/-(n=3)マウスに、足パッドに50μlの6mM R-DOTAP又は280mMスクロースを注射し、各マウスから排液性膝窩リンパ節を採取し、24時間後(B)の全細胞数について酵素的に消化したリンパ節を血球計を用いて評価し、CD3+T細胞(B)上のCD69の発現をフローサイトメトリーを用いて評価した。A-B)データは各所属リンパ節の総細胞数を示す。C)ワクチン接種2の4時間後の各群のCD69+細胞数の割合(%)を示す(n=3匹/群)。
【
図3C】
図3A、3B、及び3Cは、流入リンパ節におけるR-DOTAP誘導細胞動員及びCD69発現を示すグラフを提供する。
図3のデータは、A)C57BL/6Jマウス(n=3)に50μlの6mM R-DOTAP又は280mMスクロースを足パッドに皮下注射した実験に対応する。指示された時間に、各マウスから膝窩リンパ節ドレナージリンパ節を単離し、全細胞数を得るために血球計を用いてリンパ節の単一懸濁液を計数した。B)C57BL/6J(n=3)又はIFNAR-/-(n=3)マウスに、足パッドに50μlの6mM R-DOTAP又は280mMスクロースを注射し、各マウスから排液性膝窩リンパ節を採取し、24時間後(B)の全細胞数について酵素的に消化したリンパ節を血球計を用いて評価し、CD3+T細胞(B)上のCD69の発現をフローサイトメトリーを用いて評価した。A-B)データは各所属リンパ節の総細胞数を示す。C)ワクチン接種2の4時間後の各群のCD69+細胞数の割合(%)を示す(n=3匹/群)。
【
図4A】
図4は、カチオン性脂質による樹状細胞によるI型インターフェロン産生の誘導を示すグラフを示す。
図4のデータは、A)IFNAR-Koマウス由来の骨髄由来樹状細胞(BMDC)を、示された(6~400μM)濃度のカチオン性脂質又はLPS陽性対照(1~500ng/ml)で24時間刺激した実験に対応する。B)所定濃度(6~400μM)のカチオン性脂質又はLPS陽性対照(1~500ng/ml)で24時間、FLT3誘導BMDC(pDC)及びGM-CSF/IL-4誘導BMDC(cBMDC)を刺激した。I型インターフェロン産生を測定するために、細胞上清(100μl)をレポーター細胞(米国インビボジェン社のB16.Blue-IFNα/β細胞)に添加し、18時間インキュベートして、レポーター細胞によるI型インターフェロン誘導性の分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)産生を刺激した。レポーター細胞上清中のSEAP活性を、製造プロトコールに従って比色SEAPアッセイキットを用いて定量した。BMDC分泌I型インターフェロンを、レポーター細胞株において組換えマウスIFN-β刺激SEAP活性を用いて標準曲線を用いて定量した。
【
図4B】
図4は、カチオン性脂質による樹状細胞によるI型インターフェロン産生の誘導を示すグラフを示す。
図4のデータは、A)IFNAR-Koマウス由来の骨髄由来樹状細胞(BMDC)を、示された(6~400μM)濃度のカチオン性脂質又はLPS陽性対照(1~500ng/ml)で24時間刺激した実験に対応する。B)所定濃度(6~400μM)のカチオン性脂質又はLPS陽性対照(1~500ng/ml)で24時間、FLT3誘導BMDC(pDC)及びGM-CSF/IL-4誘導BMDC(cBMDC)を刺激した。I型インターフェロン産生を測定するために、細胞上清(100μl)をレポーター細胞(米国インビボジェン社のB16.Blue-IFNα/β細胞)に添加し、18時間インキュベートして、レポーター細胞によるI型インターフェロン誘導性の分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)産生を刺激した。レポーター細胞上清中のSEAP活性を、製造プロトコールに従って比色SEAPアッセイキットを用いて定量した。BMDC分泌I型インターフェロンを、レポーター細胞株において組換えマウスIFN-β刺激SEAP活性を用いて標準曲線を用いて定量した。
【
図5A】
図5は、I型IFNシグナル欠損マウスにおけるR-DOTAPベースのワクチンの有効性を示すグラフを提供する。
図5のデータは、Jackson由来のC57BL/6Jマウス(n=6)又はIFNAR-/-マウスに、0日目及び7日目にSIINFEKLペプチド(A)(配列番号1)又はRF9ペプチド(B)(配列番号2)を含有するワクチン製剤(Versamune(登録商標)又は完全フロイントアジュバント)100μlを皮下注射した実験に対応する。2回目のワクチン接種から7日後に、ワクチン接種マウス及び対照マウス由来の脾臓を処理して、野生型及びIFNAR-/-マウスにおけるワクチン製剤によって誘導された抗原特異的CD8 T細胞応答を測定した。抗原特異的CD8T細胞応答は、ELISPOTアッセイにおいてSIINFEKL特異的(A)(配列番号1)及びRF9ペプチド特異的(B)(配列番号2)CD8 T細胞産生を測定することによって評価した。データは、同様の結果を有する複数の実験の代表である。データの統計的有意性を一方向ANOVAを用いて推定し、多重比較をTukey検定を用いて分析した。
**WT Versamune(登録商標)ワクチン接種群を統計学的に有意(p<0.05)に比較した。
【
図5B】
図5は、I型IFNシグナル欠損マウスにおけるR-DOTAPベースのワクチンの有効性を示すグラフを提供する。
図5のデータは、Jackson由来のC57BL/6Jマウス(n=6)又はIFNAR-/-マウスに、0日目及び7日目にSIINFEKLペプチド(A)(配列番号1)又はRF9ペプチド(B)(配列番号2)を含有するワクチン製剤(Versamune(登録商標)又は完全フロイントアジュバント)100μlを皮下注射した実験に対応する。2回目のワクチン接種から7日後に、ワクチン接種マウス及び対照マウス由来の脾臓を処理して、野生型及びIFNAR-/-マウスにおけるワクチン製剤によって誘導された抗原特異的CD8 T細胞応答を測定した。抗原特異的CD8T細胞応答は、ELISPOTアッセイにおいてSIINFEKL特異的(A)(配列番号1)及びRF9ペプチド特異的(B)(配列番号2)CD8 T細胞産生を測定することによって評価した。データは、同様の結果を有する複数の実験の代表である。データの統計的有意性を一方向ANOVAを用いて推定し、多重比較をTukey検定を用いて分析した。
**WT Versamune(登録商標)ワクチン接種群を統計学的に有意(p<0.05)に比較した。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、本明細書に含まれる特定の実施形態の以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解することができる。本発明は、その特定の実施形態の特定の詳細を参照して説明されてきたが、そのような詳細は、本発明の範囲に対する制限とみなされるべきではない。
【0020】
本明細書に記載される参照文献の全文は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれ、米国仮特許出願第62/594,815号、米国特許第7,303,881号、第8,877,206号、第9,789,129号、及び米国特許出願第14/344,327号、第14/407,419号、第14/429,123号、及び第15/775,680号が含まれる。
【0021】
本明細書では、I型インターフェロン遺伝子の修飾のためのカチオン性脂質の使用を含む新規な方法及び組成物を提供する。ある実施形態では、I型インターフェロン遺伝子は、アップレギュレートされ、I型インターフェロンシグナル伝達を誘導又は活性化する。ある実施形態では、I型インターフェロン遺伝子は、下方制御され、I型インターフェロンシグナル伝達を抑制又は不活性化する。また、I型インターフェロンの効果を介して疾患特異的CD8+T細胞集団の効力を促進及び増大させるためのカチオン性脂質の使用を含む新規な方法及び組成物も提供される。ある実施形態では、本明細書に請求される方法及び組成物は、特異的な感染又は罹患細胞に対する細胞溶解活性を指示することを意図した疾患特異的抗原の使用を含み得る。
【0022】
カチオン性リポソームは、低分子量薬物、プラスミドDNA、オリゴヌクレオチド、タンパク質及びペプチドを送達するために、またワクチンアジュバントとして、インビボで広く使用されてきた。本発明では、カチオン性脂質が免疫系とどのように相互作用するかをよりよく理解するために実施された研究の結果、及びある種のカチオン性脂質が交差提示を容易にする能力のメカニズム的理由により、I型インターフェロンをアップレギュレートするカチオン性脂質の独特な能力が発見された。初期に産生されたI型IFNは、腫瘍抗原特異的細胞傷害性CD8+Tリンパ球(CTL)の活性化に必要なCD8α+樹状細胞(DC)の濃度に作用し、I型IFNシグナル伝達は、CD8α+DCの抗原交差発現能を特異的に促進することが報告されている。抗原特異的CD8+T細胞応答を引き起こす抗原交差提示を促進するカチオン性脂質のこの能力は、現在、前臨床研究及びヒト臨床研究の両方で実証されている。ヒトにおける抗原交差提示及びCD8+T細胞の誘導を促進するためにI型インターフェロンを安全に活性化するためにカチオン性脂質を使用する能力は、治療免疫学の分野における重大なアンメットメディカルニーズに成功裏に対処する可能性を提供する。
【0023】
本明細書に意図される実施形態では、カチオン性脂質を投与して、対象においてI型インターフェロン経路を活性化する。
【0024】
別の実施形態では、カチオン性脂質を疾患特異的抗原と組み合わせて、I型インターフェロンを活性化し、抗原の交差提示を促進して、疾患特異的CD8+T細胞をプライミングして、対象における疾患を治療する。
【0025】
別の実施形態では、癌を治療する方法が提供され、この方法は、タンパク質抗原と組み合わされたI型インターフェロン活性化カチオン性脂質で対象を治療する工程を含む。
【0026】
別の実施形態では、癌を治療する方法が提供され、この方法は、T細胞活性化ワクチンと組み合わされたカチオン性脂質で対象を治療する工程を含む。
【0027】
別の実施形態では、癌を治療する方法が提供され、この方法は、対象を、タンパク質又はペプチド腫瘍抗原と組み合わされたカチオン性脂質で、かつアジュバントと組み合わせて治療する工程を含む。
【0028】
別の実施形態では、癌を治療する方法が提供され、この方法は、DNA又はRNAベースの抗原を含む任意の腫瘍抗原と組み合わされたカチオン性脂質で対象を治療する工程を含む。
【0029】
別の実施形態では、癌を治療する方法が提供され、この方法は、MDSC、Tregの減少又は免疫チェックポイントの遮断を介して腫瘍免疫抑制と闘うアジュバント及び/又は任意の薬剤と組み合わせて、必要に応じて腫瘍抗原と組み合わされたI型インターフェロン経路を活性化するために、カチオン性脂質で対象を処置する工程を含む。
【0030】
別の実施形態では、癌を治療する方法が提供され、この方法は、腫瘍免疫抑制と闘うアジュバント及び/又は任意の剤と組み合わせて、DNA又はRNAベースの腫瘍抗原と組み合わせたカチオン性脂質ベースのワクチンで対象を治療する工程を含む。
【0031】
さらに別の実施形態では、哺乳動物における抗腫瘍免疫応答を増強する方法が提供される。本方法は、GM-CSF及びサイトカインのようないくつかの場合において、哺乳動物をI型インターフェロン活性化カチオン性脂質、又は1以上のカチオン性脂質と共に成長因子で処理する工程を含む。
【0032】
種々の実施形態では、組成物は、少なくとも1つのI型インターフェロン活性化カチオン性脂質及び少なくとも1つの抗原を有する1つ以上の脂質を含む。ある態様において、2つ以上の抗原が含まれる。
【0033】
一実施形態では、哺乳動物などの対象におけるI型IFNシグナル伝達経路を修飾するための方法及び組成物が提供され、この方法は対象へのカチオン性脂質を含む組成物の投与を含む。一実施形態では、カチオン性脂質は、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、N-1-(2,3-ジオレオイルオキシ)-プロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DOEPC)、及びそれらの組み合わせを含む。組成物は、カチオン性脂質の特定の鏡像異性体を含むことができる。一実施形態では、カチオン性脂質は、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)であり、一実施形態では、カチオン性脂質は、DOTAP、(R)-1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(R-DOTAP)のR鏡像異性体である。ある態様において、組成物は、タンパク質又はペプチド抗原などの抗原をさらに含む。
【0034】
ある実施形態では、対象におけるI型IFNシグナル伝達経路の修飾は、経路のダウンレギュレーション又は活性化を含む。ある実施形態では、対象におけるI型IFNシグナル伝達経路の修飾は、経路のダウンレギュレーション又は不活性化を含む。ある実施形態では、T細胞応答は上昇し、抗原特異的CD8+T細胞応答は上昇し、及び/又は組成物の免疫原性は増強される。一実施形態では、対象における癌を治療する方法が提供され、この方法は、カチオン性脂質を含む組成物の投与を含み、カチオン性脂質の投与は、I型IFNシグナル伝達経路の刺激をもたらす。
【0035】
抗原
一実施形態では、本明細書に請求される新規な方法は、対象自身の腫瘍に由来する抗原などの1つ以上の自己抗原とカチオン性脂質の投与を含む。別の実施形態では、本方法は、合成ペプチド、組換えタンパク質、RNAもしくはDNA又はそれらの活性断片などの1つ以上の非自己抗原と組み合わせたカチオン性脂質を含む組成物の投与を含むが、これらに限定されない。それぞれの場合において、目的はI型インターフェロンを活性化して、強力な抗原特異的CD8+T細胞応答の誘導を促進することである。抗原は、当業者に公知の任意の疾患関連抗原であり得る。
【0036】
本明細書で使用される「腫瘍関連抗原」は、腫瘍又は癌細胞に関連する分子又は化合物(例えば、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、リポタンパク質、リポペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、脂質、糖脂質、炭水化物、RNA、及び/もしくはDNA、又はそれらの活性断片)であり、MHC分子との関連で抗原提示細胞の表面上に発現されると、免疫応答(体液性及び/又は細胞性)を引き起こすことができる。腫瘍関連抗原は、自己抗原、ならびに、癌と特異的に関連しないが、それにもかかわらず、動物に投与された場合、腫瘍又は癌細胞に対する免疫応答を増強し、及び/又は腫瘍又は癌細胞の増殖を減少させ得る他の抗原を含む。さらなる特定の実施形態が、本明細書に提供される。
【0037】
本明細書で使用される「微生物抗原」は、微生物の抗原であり、限定されないが、感染性ウイルス、感染性細菌、感染性寄生虫及び感染性真菌を含む。微生物抗原は、無傷の微生物であってもよく、天然に存在する微生物抗原と同一又は類似の合成化合物、及び好ましくは、対応する微生物(天然に存在する微生物抗原が由来する)に特異的な免疫応答を誘導する天然の分離物、断片、又はその誘導体であってもよい。好ましい実施形態では、化合物は、天然に存在する微生物抗原と類似の免疫応答(体液性及び/又は細胞性)を誘導する場合、天然に存在する微生物抗原に類似する。天然微生物抗原に類似する化合物又は抗原は、例えば、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、リポタンパク質、リポペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、脂質、糖脂質、炭水化物、RNA、及び/又はDNAなど、当業者に周知である。天然微生物抗原に類似する化合物の別の非限定的な例は、多糖類抗原のペプチド模倣物である。より具体的な実施形態が本明細書に提供される。
【0038】
用語「抗原」は、さらに、本明細書に記載されるもののような、既知又は野生型抗原のペプチド又はタンパク質類似体を包含することを意図する。類似体は、野生型抗原よりも可溶性であっても、より安定であってもよく、また、抗原をより免疫学的に活性にする突然変異又は修飾を含んでいてもよい。抗原は、脂質又は糖部分の添加、ペプチド又はタンパク質アミノ酸配列の突然変異、DNA又はRNA配列の突然変異、又は当業者に公知の任意の他の修飾など、任意の方法で修飾することができる。抗原は、当業者に公知の標準的方法を用いて修飾することができる。
【0039】
また、本発明の組成物及び方法において有用なのは、所望の抗原のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列を有するペプチド又はタンパク質であり、相同抗原は、それぞれの腫瘍、微生物又は感染細胞に対する免疫応答を誘導する。
【0040】
一実施形態では、本明細書に記載される方法は、カチオン性脂質が抗原なしで投与され、I型インターフェロンを活性化し、例えば、疾患細胞又は感染細胞を攻撃及び死滅させるためにナチュラルキラー細胞を活性化することによって、対象における疾患を治療するための所望の免疫応答を促進する組成物を含む。別の実施形態では、本発明の方法は、カチオン性脂質が抗原と共に投与される組成物を含み、抗原は、腫瘍又は癌、すなわち、腫瘍を予防又は治療するための免疫療法を開発するための腫瘍関連抗原と関連し得る。したがって、1つの実施形態では、本発明の腫瘍又は免疫療法は、少なくとも1つの腫瘍関連抗原の少なくとも1つのエピトープをさらに含む。別の実施形態では、本発明の免疫療法方法は、1つ以上の腫瘍関連抗原由来の複数のエピトープをさらに含む。本発明のカチオン性脂質及び方法で使用される腫瘍関連抗原は、本質的に免疫原性であっても、非免疫原性であっても、又はわずかに免疫原性であってもよい。本明細書で示されるように、本組成物は、いくつかの腫瘍タイプに対する抗腫瘍効果を媒介することが知られているI型インターフェロン(IFN)を活性化することができるため、腫瘍関連自己抗原であっても、治療効果のための本免疫療法において有利に使用することができる。例示的な抗原としては、合成、組換え、外来、又は相同な抗原が挙げられ、抗原性物質としては、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、リポタンパク質、リポペプチド、脂質、糖脂質、炭水化物、RNA及びDNAが挙げられるが、これらに限定されない。そのような治療の例には、乳癌、頭頸部癌、黒色腫、子宮頸癌、肺癌、前立腺癌腸癌、又は免疫療法に感受性である当該技術分野で公知の任意の他の癌の治療又は予防が含まれるが、これらに限定されない。このような治療では、カプセル封入なしで抗原をカチオン性脂質と結合させることも可能である。
【0041】
本発明での使用に適した腫瘍関連抗原は、単一の腫瘍タイプを示すことができ、いくつかのタイプの腫瘍間で共有され、及び/又は正常細胞と比較して腫瘍細胞においてのみ発現又は過剰発現され得る、天然に存在する分子及び修飾された分子の両方を含む。タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、ペプチド、及びリポペプチドに加えて、炭水化物、ガングリオシド、糖脂質、及びムチンの腫瘍特異的発現パターンも報告されている。癌ワクチンに使用するための例示的な腫瘍関連抗原は、癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、及び腫瘍細胞に特有の突然変異又は再配列を有する他の遺伝子のタンパク質産物、再活性化された胚性遺伝子産物、腫瘍胎児性抗原、組織特異的(腫瘍特異的ではない)分化抗原、成長因子受容体、細胞表面炭水化物残基、外来性ウイルスタンパク質、及び多数の他の自己タンパク質を含む。
【0042】
腫瘍関連抗原の具体的な実施形態には、例えば、突然変異した又は修飾された抗原、例えば、Ras p21癌原遺伝子、腫瘍抑制因子p53及びBCR-2/neu癌遺伝子、及びBCR-abl癌遺伝子、ならびにCDK4、MUM1、カスパーゼ8、及びベータカテニンのタンパク質産物;過剰発現した抗原、例えば、ガレクチン4、ガレクチン9、カルボニックアンヒドラーゼA、アルドラーゼA、PRAME、Her2/neu、ErbB-2及びKSA、腫瘍胎児抗原、例えば、アルファフェトプロテイン(AFP)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG);自己抗原、例えば、癌胎児性抗原(CEA)およびメラノサイト分化抗原、例えば、Mart 1/Melan A、gp100、gp75、チロシナーゼ、TRP1およびTRP2;Mart 1/Melan A、gp100、gp75、チロシナーゼ、TRP1及びTRP2のようなメラニン細胞分化抗原;前立腺関連抗原、例えば、PSA、PAP、PSMA、PSM-P1及びPSM-P2;再活性化された胚性遺伝子産物、例えば、MAGE 1、MAGE 3、MAGE 4、GAGE 1、GAGE 2、BAGE、RAGE、他の癌精巣抗原、例えば、NY-ESO1、SSX2及びSCP1;ムチン、例えば、Muc-1及びMuc-2;ガングリオシド、例えば、GM2、GD2及びGD3、中性糖脂質、及び糖タンパク質、例えば、Lewis(y);ならびに糖タンパク質、例えば、Tn、Thompson-Fridenreich抗原(TF)及びsTnが挙げられる。また、本明細書中の腫瘍関連抗原としては、B細胞リンパ腫に対する使用のためのBリンパ球の単クローン性増殖に発現される免疫グロブリンイディオタイプと同様に、全細胞及び腫瘍細胞溶解物ならびにそれらの免疫原性部分が含まれる。
【0043】
腫瘍関連抗原及びそれらのそれぞれの腫瘍細胞標的は、癌の抗原として、例えば、サイトケラチン、特にサイトケラチン8、18及び19を含む。上皮膜抗原(EMA)、ヒト胚性抗原(HEA-125)、ヒト乳脂肪球、MBr1、MBr8、Ber-EP4、17-1A、C26及びT16もまた、既知の癌抗原である。デスミン及び筋特異的アクチンは筋原性肉腫の抗原である。胎盤アルカリホスファターゼ、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、及びα-フェトプロテインは、栄養膜及び胚細胞腫瘍の抗原である。前立腺特異抗原は、前立腺癌、結腸腺癌の癌胎児性抗原の抗原である。HMB-45は黒色腫の抗原である。子宮頸癌では、有用な抗原がヒトパピローマウイルスによってコードされ得る。クロマグラニンA及びシナプトフィシンは、神経内分泌腫瘍及び神経外胚葉性腫瘍の抗原である。特に興味深いのは、壊死領域を有する固形腫瘍塊を形成する侵攻性腫瘍である。このような壊死細胞の溶解は、抗原提示細胞に対する抗原の豊富な供給源であり、したがって、本治療は、従来の化学療法及び/又は放射線療法と共に有利な使用を見出すことができる。
【0044】
腫瘍関連抗原は、当該技術分野で周知の方法によって調製することができる。例えば、これらの抗原は、癌細胞の粗抽出物を調製することによって(例えば、Cohen et al., Cancer Res., 54:1055 (1994)に記載される)、抗原を部分的に精製することによって、組換え技術によって、又は既知の抗原のデノボ合成によって、癌細胞から調製することができる。抗原はまた、対象における発現及び免疫化対象の免疫系への提示に適した形態の抗原ペプチドをコードする核酸の形態であってもよい。さらに、抗原は完全な抗原であってもよく、又はそれは少なくとも1つのエピトープを含む完全な抗原の断片であってもよい。
【0045】
ある種の癌の素因となることが知られている病原体由来の抗原もまた、有利には、本発明の癌ワクチンに含まれ得る。世界の癌発生率の16%近くは感染性病原体に起因すると推定されており、多くの一般的な悪性腫瘍は特定のウイルス遺伝子産物の発現によって特徴付けられる。したがって、癌を引き起こすことに関与する病原体からの1つ以上の抗原の包含は、宿主免疫応答を拡大し、癌ワクチンの予防的又は治療的効果を増強する助けとなり得る。本明細書で提供される癌ワクチンにおいて使用するために特に関心のある病原体には、
B型肝炎ウイルス(肝細胞癌)、C型肝炎ウイルス(ヘプトーマ)、エプスタインバーウイルス(EBV)(バーキットリンパ腫、鼻咽頭癌、免疫抑制された個人におけるPTLD)、HTLVL(成人T細胞白血病)、発癌性ヒトパピローマウイルス16、18、33、45型(成人子宮頸癌)、及びヘリコバクターピロリ(B細胞胃リンパ腫)が含まれる。哺乳動物及びより詳細にはヒトにおける抗原として役立つ他の医学的に関連する微生物は、文献、例えばC. G. A Thomas, Medical Microbiology, Bailliere Tindall, Great Britain 1983に広く記載されており、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
別の実施形態では、抗原は、病原体、すなわち微生物抗原に由来する、又はそれに関連する抗原を含む。従って、1つの実施形態では、本発明の病原体ワクチンは、少なくとも1つの微生物抗原の少なくとも1つのエピトープをさらに含む。本免疫療法によって標的化され得る病原体には、ウイルス、細菌、寄生虫及び真菌が含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態では、本発明の病原体ワクチンは、1以上の微生物抗原由来の複数のエピトープをさらに含む。
【0047】
陽イオン性脂質免疫療法及び方法に使用される微生物抗原は、本質的に免疫原性であっても、非免疫原性であっても、又はわずかに免疫原性であってもよい。例示的な抗原としては、合成、組換え、外来、又は相同な抗原が挙げられ、抗原性物質としては、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、リポタンパク質、リポペプチド、脂質、糖脂質、炭水化物、RNA、及びDNAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
例示的なウイルス病原体には、限定されないが、哺乳動物、より具体的にはヒトに感染するウイルスが含まれる。ウイルスの例としては、限定されないが、Retroviridae(例えば、ヒト免疫不全ウイルス、例えば、HIV-1(HTLV-III、LAVまたはHTLV-III/LAV、またはHIV-IIIとも呼ばれる);および分離株、例えば、HIV-LP;Picornaviridae(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);Calciviridae(例えば、胃腸炎を引き起こす菌株);Togaviridae(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);Flaviridae(例えば、デング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);Coronoviridae(例えば、コロノウイルス);Rhabdoviradae(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);Coronaviridae(例えば、コロナウイルス);Rhabdoviridae(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);Filoviridae(例えば、エボラウイルス);Paramyxoviridae(例えば、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);Orthomyxoviridae(例えば、インフルエンザウイルス);Bungaviridae(例えば、ハンタンウイルス、ブンガウイルス、フレボウイルスおよびナイロウイルス;Arenaviridae(出血熱ウイルス);Reoviridae(例えば、レオウイルス、オルビウルスおよびロタウイルスなど);Birnaviridae;Hepadnaviridae(B型肝炎ウイルス);Parvovirida(パルボウイルス);Papovaviridae(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);Adenoviridae(ほとんどのアデノウイルス);Herpesviridae(単純ヘルペスウイルス(HSV)1及び2)、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス;Poxyiridae(痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);およびIridoviridae(例えば、アフリカ豚コレラウイルス);及び分類不能のウイルス(例えば、海綿状脳症の病原体、デルタ肝炎の病原体(B型肝炎ウイルスの欠陥のあるサテライトであると考えられている)、非A、非B型肝炎の病原体(クラス1=内部感染;クラス2=非経口感染(すなわち、C型肝炎);Norwalkおよび関連ウイルス、およびアストロウイルス)が含まれる。
【0049】
また、グラム陰性菌及びグラム陽性菌は、脊椎動物における本組成物及び方法によって標的化され得る。このようなグラム陽性菌には、限定されないが、Pasteurella種、Staphylococci種、及びStreptococcus種が含まれる。グラム陰性菌には、限定されないが、大腸菌、シュードモナス種、及びサルモネラ種が含まれる。感染性細菌の特定の例には、限定されないが、Helicobacter pyloris、Borella burgdorferi、Legionella pneumophiliaii、Mycobacteria属種(例えば、M. tuberculosis、M. avium、M. intracellulare、M. kansaii、M. gordonae)、Staphylococcus aureus、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidis、Listeria monocytogenes、Streptococcus pyogenes(A群連鎖球菌)、Streptococcus agalactiae(B群Streptococcus)、Streptococcus(ビリダンス群)、Streptococcus faecalis、Streptococcus bovis、Streptococcus(嫌気性菌)、Streptococcus pneumoniae、pathogenic Campylobacter sp.、Enterococcus sp.、Haemophilus infuenzae、Bacillus antracis、corynebacterium diphtheriae、corynebacterium sp.、Erysipelothrix rhusiopathiae、Clostridium perfringers、Clostridium tetani、Enterobacter aerogenes、Klebsiella pneumoniae、Pasturella multocida、Bacteroides sp.、Fusobacterium nucleatumii、Streptobacillus moniliformis、Treponema pallidium、Treponema pertenue、Leptospira、Rickettsia、およびActinomyces israelliが含まれる。
【0050】
主題の組成物中の微生物抗原源として使用され得る細菌性病原体のポリペプチドは、限定されないが、鉄調節外膜タンパク質(「IROMP」)、外膜タンパク質(「OMP」)、フルンクロシスを引き起こすAeromonis salmonicidaのAタンパク質、細菌性腎疾患を引き起こすRenibacterium salmoninarumのp57タンパク質(「BKD」)、主要表面関連抗原(「msa」)、表面発現細胞毒素(「mpr」)、表面発現溶血素(「ish」)、およびエルシニア症のべん毛抗原; 細胞外タンパク質(「ECP」)、鉄調節外膜タンパク質(「IROMP」)、およびパスツレラ症の構造タンパク質; Vibrosis anguillarumおよびV. ordaliiのOMPおよびべん毛タンパク質;Edwardsiellosis ictaluriおよびE. tardaのべん毛タンパク質、OMPタンパク質、aroA、purA;およびIchthyophthiriusの表面抗原;およびCytophaga columnariの構造および調節タンパク質; ならびにリケッチアの構造および調節タンパク質が含まれる。そのような抗原は、組換え的に、又は当技術分野で公知の任意の他の手段によって単離又は調製することができる。
【0051】
病原体の例としては、さらに、限定されないが、哺乳動物、より具体的にはヒトに感染する真菌が挙げられる。真菌の例としては、限定されないが、Cryptococcus neoformansi、Histoplasma capsulatum、Coccidioides immitis、Blastomyces dermatitidis、Chlamydia trachomatis、Candida albicansが挙げられる。感染性寄生虫の例としては、Plasmodium、例えば、Plasmodium falciparum、Plasmodium malariae、Plasmodium ovale、およびPlasmodium vivaxが挙げられる。他の感染性微生物(すなわち、原生生物)には、Toxoplasma gondiiが含まれる。寄生性病原体のポリペプチドには、Ichthyophthiriusの表面抗原が含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
哺乳動物及びより詳細にはヒトにおける抗原として作用する他の医学的に関連する微生物は、文献に広く記載されており、例えば、C. G. A Thomas, Medical Microbiology, Bailliere Tindall, Great Britain 1983を参照されたい。感染性ヒト疾患及びヒト病原体の治療に加えて、本発明の組成物及び方法は、ヒト以外の哺乳動物の感染を治療するのに有用である。非ヒト哺乳動物の治療のための多くのワクチンは、Bennett, K. Compendium of Veterinary Products, 3rd ed, North American Compendiums, Inc., 1995に開示されている;WO02/069369も参照されたい。これらの開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0053】
例示的な非ヒト病原体には、限定されないが、マウス乳腺腫瘍ウイルス(「MMTV」)、ラウス肉腫ウイルス(「RSV」)、トリ白血病ウイルス(「ALV」)、トリ骨髄芽球症ウイルス(「AMV」)、マウス白血病ウイルス(「MLV」)、ネコ白血病ウイルス(「FeLV」)、マウス肉腫ウイルス(「MSV」)、テナガザル白血病ウイルス(「GALV」)、脾臓壊死ウイルス(「SNV」)、細網内皮症ウイルス(「RSV」)、サル肉腫ウイルス(「SSV」)、メイソンファイザーサルウイルス(「MPMV」)、サルレトロウイルス1型(「SRV-1」)、レンチウイルス(HIV-1、HIV-2、SIV、Visnaウイルスなど)、ネコ免疫不全ウイルス(「FIV」)、および馬伝染性貧血ウイルス(「EIAV」)、HTLV-1、HTLV-II、サルT細胞白血病ウイルス(「STLV」)などのT細胞白血病ウイルス、およびウシ白血病ウイルス(「BLV」)、およびヒト泡沫状ウイルス(「HFV」)、サル泡沫状ウイルス(「SFV」)、ウシ泡沫状ウイルス(「BFV」)などの泡沫状ウイルスが含まれる。
【0054】
いくつかの実施形態では、本明細書中で感染性病原体に関して使用される場合、「治療」、「治療する」、及び「治療すること」とは、病原体による感染に対する対象の抵抗性を増加させるか、又は対象が病原体に感染する可能性を減少させる予防的処置;及び/又は対象が感染と戦うために、例えば、感染を減少又は排除するか、又は感染の悪化を防止するために、対象が感染した後の処置を指す。
【0055】
微生物抗原は、当該技術分野で周知の方法によって調製することができる。例えば、これらの抗原は、粗抽出物を調製することによって、抗原を部分的に精製することによって、又は組換え技術によって、又は既知の抗原のデノボ合成によって、ウイルス及び細菌細胞から直接調製することができる。抗原はまた、対象における発現及び免疫化対象の免疫系への提示に適した形態の抗原ペプチドをコードする核酸の形態であり得る。さらに、抗原は完全な抗原であってもよく、又はそれは少なくとも1つのエピトープを含む完全な抗原の断片であってもよい。
【0056】
抗原のカチオン性脂質小胞への取り込みを改善し、また免疫系の細胞への送達を改善するために、抗原を修飾して、その疎水性又は抗原上の負電荷を増加させることができる。抗原の疎水性は、例えば、分子の抗原特性を維持しつつ、カチオン性脂質の疎水性アシル鎖における抗原の溶解性を改善するために、脂質鎖又は疎水性アミノ酸に結合させることによって増大させることができる。修飾された抗原は、リポタンパク質、リポペプチド、増大した疎水性を有するアミノ酸配列で修飾されたタンパク質又はペプチド、及びそれらの組み合わせであり得る。修飾された抗原は、脂質と抗原との間でコンジュゲートされたリンカーを有することができ、例えば、N末端α又はε-パルミトイルリジンは、ジペプチドセリン-セリンリンリンカーを介して抗原に連結され得る。さらに、抗原がカチオン性脂質複合体中にカプセル化される処方緩衝液を変化させることによって、又はアニオン性部分、例えばアニオン性アミノ酸を抗原に共有結合させることによって、その負電荷を増加させるように抗原を操作することができる。
【0057】
本明細書に記載されるいくつかの態様において、カチオン性脂質は、ナノ粒子集合体の形態であり得る。本明細書中で使用される場合、用語「ナノ粒子」とは、ナノメートルスケールで測定されたサイズを有する粒子を指す。本明細書中で使用される「ナノ粒子」とは、約10,000ナノメートル未満のサイズを有する構造を有する粒子を指す。いくつかの態様において、ナノ粒子は、リポソームである。
【0058】
本発明のカチオン性脂質組成物は、必要に応じて抗原と混合されるリポソームを形成することができ、カイラルカチオン性脂質単独又はカイラルカチオン性脂質を中性脂質と組み合わせて含有することができる。適切なキラルカチオン性脂質種としては、R及びS鏡像異性体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
本明細書中で使用される場合、用語「カチオン性脂質」は、生理的pHで正味の正電荷を有するか、又はプロトン化可能な基を有し、pKaより低いpHで正電荷を有する多数の脂質種のいずれかを指す。本開示による適切なカチオン性脂質は、以下を含み得るが、これらに限定されない:3-β[4N-(1N,8N-ジグアニジノスペルミジン)-カルバモイル]コレステロール(BGSC);3-β[N,N-ジグアニジノエチル-アミノエタン)-カルバモイル]コレステロール;BGTC);N,N1N2N3テトラメチルテトラパルミチルスペルミン(セルフェクチン);N-t-ブチル-N’-テトラデシル-3-テトラデシル-アミノプロピオン-アミジン(CLONfectin);ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB);1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE);2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-p-ロパナミニウムトリフルオロアセテート)(DOSPA);1,3-ジオレオイルオキシ-2-(6-カルボキシスペルミル)-プロピルアミド(DOSPER);4-(2,3-ビス-パルミトイルオキシ-プロピル)-1-メチル-1H-イミダゾール(DPIM)N,N,N’,N’-テトラメチル-N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2,3-ジオレオイルオキシ-1,4-ブタン-ヨウ化ジアンモニウム)(Tfx-50);N-1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)または他のN-(N,N-1-ジアルコキシ)-アルキル-N,N,N-トリ置換アンモニウム界面活性剤;1,2ジオレオイル-3-(4’-トリメチルアンモニオ)ブタノール-sn-グリセロール(DOBT)またはコレステリル(4’トリメチルアンモニア)ブタノエート(ChOTB)(ここで、トリメチルアンモニウム基は、ブタノールスペーサーアームを介して二重鎖(DOTBの場合)またはコレステリル基(ChOTBの場合)に連結される);DORI(DL-1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアミノプロピル-β-ヒドロキシエチルアンモニウム)またはDORIE(DL-1,2-O-ジオレオイル-3-ジメチルアミノプロピル-β-ヒドロキシエチルアンモニウム-m)(DORIE)またはWO93/03709に開示されているその類似体;1,2-ジオレオイル-3-スクシニル-sn-グリセロールコリンエステル(DOSC);コレステリルヘミコハク酸エステル(ChOSC);リポポリアミン、例えば、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミルスペルミン(DPPES)、コレステリル-3β-カルボキシル-アミドエチレントリメチルアンモニウムヨウ化物、1-ジメチルアミノ-3-トリメチルアンモニオ-DL-2-プロピル-コレステリルカルボキシレートヨウ化物、コレステリル-3-O-カルボキシアミドエチレンアミン、コレステリル-3-β-オキシスクシンアミド-エチレントリメチルアンモニウムヨウ化物、1-ジメチルアミノ-3-トリメチルアンモニオ-DL-2-プロピル-コレステリル-3-β-オキシス-シン酸ヨウ化物、2-(2-トリメチルアンモニオ)-エチルメチルアミノエチル-コレステリル-3-β-オキシコハク酸ヨウ化物、3-β-N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)カルバモイルコレステロール(DC-コール)、および3-β-N-(ポリエチレンイミン)-カルバモイルコレステロール;O,O’-ジミリスチル-N-リシルアスパラギン酸(DMKE);O,O’-ジミリスチル-N-リシル-グルタミン酸(DMKD);1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE);1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DLEPC);1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DMEPC);1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DOEPC);1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DPEPC);1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DSEPC);1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP);ジオレオイルジメチルアミノプロパン(DODAP);1,2-パルミトイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DPTAP);1,2-ジステアロイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DSTAP)、1,2-ミリストイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DMTAP);およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)。さらに、記載されたいずれかのカチオン性脂質の構造変種及び誘導体も意図される。
【0060】
いくつかの態様において、カチオン性脂質は、DOTAP、DOTMA、DOEPC、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。他の実施形態では、カチオン性脂質はDOTAPである。さらに他の態様において、カチオン性脂質はDOTMAである。他の実施形態では、カチオン性脂質はDOEPCである。いくつかの態様において、カチオン性脂質は精製される。
【0061】
いくつかの態様において、カチオン性脂質は、カチオン性脂質の鏡像異性体である。用語「鏡像異性体」とは、カチオン性脂質の立体異性体であって、その対応する立体異性体、例えばR及びS鏡像異性体の重ね合わせることができない鏡像であるものを指す。種々の例において、鏡像異性体はR-DOTAP又はS-DOTAPである。一つの例では、鏡像異性体はR-DOTAPである。別の例では、鏡像異性体はS-DOTAPである。いくつかの態様において、鏡像異性体は精製される。種々の例において、鏡像異性体は、R-DOTMA又はS-DOTMAである。一例では、鏡像異性体はR-DOTMAである。別の例では、鏡像異性体はS-DOTMAである。いくつかの態様において、鏡像異性体は精製される。種々の例において、鏡像異性体は、R-DOEPC又はS-DOEPCである。一例では、鏡像異性体はR-DOEPCである。別の例では、鏡像異性体はS-DOEPCである。いくつかの態様において、鏡像異性体は精製される。
【0062】
例示の目的のために、十分に研究され、CD8+T細胞への抗原交差提示に対するI型インターフェロンアップレギュレーションの効果を例示するのに適した抗原として役立つモデルHPV抗原を利用して、いくつかの例が実施されることに留意されたい。
【0063】
一般に、治療を参照する場合、本明細書に記載される組成物は、経口的、非経口的(例えば、静脈内又は皮下投与)、筋肉内注射、腹腔内注射、経皮的、体外的、腔内投与、経皮的、又は局所的、もしくは吸入剤による投与を含む、局所的、非経口的(例えば、静脈内又は皮下投与)に投与することができる。局所投与は、眼科的、膣内、直腸内、又は鼻腔内に行うことができる。本明細書において、「局所的鼻腔内投与」とは、鼻孔の一方又は両方を通って鼻及び鼻腔への組成物の送達を意味し、噴霧機構又は液滴機構による送達、又は核酸又はベクターのエアロゾル化を通じた送達を含み得る。吸入剤による組成物の投与は、スプレー又は液滴機構による送達を介して鼻又は口から行うことができる。送達はまた、挿管を介して、呼吸器系の任意の領域(例えば、肺)に直接送達することもできる。
【0064】
本明細書中で使用される場合、組成物の「非経口投与」は、一般に、注射によって特徴付けられる。注射剤は、液体溶液又は懸濁液として、注射前の液体中の懸濁液の溶液に適した固体形態として、又はエマルジョンとして、慣用の形態で調製することができる。非経口投与には、一定の投与量が維持されるように、徐放性、時間放出又は徐放性システムの使用が含まれる。
【0065】
用語「治療的に有効な」は、使用される組成物の量が、異常な細胞増殖、腫瘍発生、及び癌などの疾患又は障害の1以上の原因又は症状を改善するのに十分な量であることを意味する。このような改善は、必ずしも除去ではなく、減少又は改変のみを必要とする。このような改善は、免疫応答の誘発を含み得る。開示された組成物を投与するための有効な投与量及びスケジュールは経験的に決定することができ、そのような決定を行うことは当業者の範囲内である。組成物の投与のための投与量範囲は、障害の症状が影響を受ける所望の効果を生じるのに十分な大きさである。望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応等の副作用を起こすほどの投与量であってはならない。一般に、投与量は、患者における疾患の年齢、状態、性別及び程度、投与経路、又は他の薬物がレジメンに含まれているかどうかに応じて変化し、当業者によって決定することができる。いずれかのカウンターインディケーションの場合、用量は、個々の医師によって調節することができる。投与量は様々であり、1日1回又は複数回の投与で、1日又は数日間投与することができる。ガイダンスは、あるクラスの医薬品の適切な投与量についての文献に記載されている。
【0066】
任意の特定の対象又は患者に投与される組成物の具体的な有効量は、治療される疾患又は障害、及び障害の重症度;使用される特定の組成物の同一性及び活性;患者の年齢、体重、一般健康、性別及び食事;投与時間;投与経路;使用される特定の組成物の排泄速度;使用される治療の期間;使用される特定の組成物と組み合わせて使用されるか又は同時に使用される薬物、及び医学分野で周知の類似の因子を含む種々の要因に依存する。
【0067】
例えば、所望の治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低いレベルで組成物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増加させることは、当業者の範囲内である。また、虚血-再潅流損傷、外傷、薬物/毒物誘発損傷、神経変性疾患、癌、又は他の疾患及び/又は状態の治療のために注意を必要とする対象の状態を評価するのに有用であることが知られている、病歴、徴候、症状、及び客観的臨床検査の特定の側面を評価することができる。これらの徴候、症状、及び客観的臨床検査は、治療又は予防される特定の疾患又は状態に応じて、このような患者を治療する臨床医又はこの分野で実験を実施する研究者に知られているように、変化する。例えば、適切な対照群との比較及び/又は一般集団もしくは特定の対象もしくは患者における疾患の正常な進行に関する知識に基づいて、(1)対象の身体的状態が改善されたことが示され(例えば、腫瘍が部分的又は完全に退縮した)、(2)疾患又は状態の進行が安定したこと、遅延したこと、又は逆転したことが示され、又は(3)疾患又は状態を治療するための他の薬剤の必要性が低下したか又は除去された場合、特定の治療レジメンは有効であるとみなされる。
【0068】
処方された治療薬の有効量は、毎日、隔日、毎週、毎週、毎月、隔月、毎年、又は有効であると医師又は提供者が決定する他の間隔で投与され得る。例えば、有効な1日投与量は、投与目的のために複数回投与に分割することができる。結論として、単回投与治療薬は、そのような量又はそのサブマルチプルを含み、1日投与量を構成することができる。開示された治療薬は、抗腫瘍又は抗癌治療の組み合わせの一部として投与することもできる。一態様では、開示された組成物は、抗腫瘍又は抗癌治療による治療の前に、対象又は患者に投与することができる。ある態様において、開示された組成物は、抗腫瘍又は抗癌治療と同時に投与することができる。ある態様において、開示された組成物は、抗腫瘍又は抗癌治療の後に投与することができる。一態様では、患者又は対象は、交互又は回転スケジュールで両方の治療を受ける。一態様では、対象又は患者は、開示された組成物による特異な治療を受ける。一態様では、対象又は患者は、開示された組成物による少なくとも1つの治療を受ける。一態様では、対象又は患者は、開示された組成物及び少なくとも1つの他の抗腫瘍又は抗癌治療による少なくとも1つの治療を受ける。
【0069】
用量は、いずれかのカウンターインディケーションの場合に、個々の医師又は対象によって調節することができる。投与量は様々であり、1日1回又は複数回の投与で、1日又は数日間投与することができる。ガイダンスは、あるクラスの医薬品の適切な投与量についての文献に記載されている。
【0070】
本明細書で使用される用語は、特定の態様のみを記載する目的であり、限定することを意図しない。
【0071】
明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、文脈が明確に別段の指示をしない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の基準を含むことができる。したがって、例えば、「化合物」への言及は化合物の混合物を含み、「薬学的担体」への言及は、2つ以上のそのような担体の混合物などを含む。
【0072】
範囲は、本明細書では、1つの特定の値「約」から、及び/又は別の特定の値「約」まで表現することができる。用語「約」は、本明細書において、ほぼ、その領域内、ほぼ、又はその周囲を意味するために使用される。用語「約」が数値範囲と共に使用される場合、それは、記載される数値の上下に境界を拡張することによって、その範囲を修飾する。一般に、用語「約」は、本明細書では、20%の分散で、上下の数値を修飾するために使用される。そのような範囲が表現される場合、態様は、1つの特定の値及び/又は他の特定の値を含む。同様に、値が近似値として表される場合、先行する「約」を使用することによって、特定の値が態様を形成することが理解される。さらに、各範囲のエンドポイントは、他のエンドポイントとの関係において、及び他のエンドポイントとは独立して、有意であることが理解される。
【0073】
本明細書で使用される「又は」という用語は、特定のリストのいずれか1つのメンバーを意味し、また、そのリストのメンバーのいずれかの組合せを含む。
【0074】
「阻害する」、「阻害すること」、及び「阻害」とは、活性、反応、状態、疾患、又は他の生物学的パラメータを減少又は減少させることを意味する。これには、限定されるものではないが、活性、反応、状態、又は疾患の完全なアブレーションが含まれ得る。これはまた、例えば、天然又は対照レベルと比較して、活性、反応、状態、又は疾患における10%の阻害又は減少を含み得る。したがって、一態様では、阻害又は還元は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%であってもよく、又は天然レベル又は対照レベルと比較して、任意の量の還元であってもよい。ある態様において、阻害又は還元は、天然又は対照レベルと比較して、10-20、20-30、30-40、40-50、50-60、60-70、70-80、80-90、又は90-100%である。一態様では、阻害又は還元は、天然又は対照レベルと比較して、0-25、25-50、50-75、又は75-100%である。
【0075】
「修飾する」、「修飾すること」及び「修飾」とは、本明細書中で使用される場合、活性又は機能又は数の変化を意味する。変化は、活性、機能又は数の増加又は減少、増強又は阻害であり得る。
【0076】
「促進する」、「促進」、及び「促進すること」とは、活性、反応、状態、疾患、又は他の生物学的パラメータの増加を指す。これには、活動、反応、状態又は疾患の開始が含まれるが、これらに限定されない。これはまた、例えば、天然又は対照レベルと比較して、活性、反応、状態又は疾患の10%の増加を含み得る。したがって、ある態様において、増加又は促進は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%以上、又は、天然レベル又は対照レベルと比較して、いずれかの量のプロモーションであり得る。ある態様において、増加又は促進は、天然又は対照レベルと比較して、10-20、20-30、30-40、40-50、50-60、60-70、70-80、80-90、又は90-100%である。ある態様では、増加又は促進は、0-25、25-50、50-75、又は75-100%以上であり、例えば、ネイティブレベル又は対照レベルと比較して、200、300、500、又は1000%以上である。ある態様では、増加又は促進は、天然レベル又は対照レベルと比較して、100、150、200、250、300、350、400、450、500%又はそれ以上のような天然レベル又は対照レベルと比較して100%を超えることができる。
【0077】
本明細書中で使用される場合、用語「決定する」は、量、量、又は活性の変化を測定又は確認することを指すことができる。例えば、本明細書中で使用される試料中の開示されたポリペプチドの量を決定することは、当業者が試料中のポリペプチドのある定量可能な値を測定又は確認するために取る工程を指すことができる。当業者は、開示されたポリペプチド及び試料中に開示されたヌクレオチドの量を測定する方法に精通している。
【0078】
用語「試料」は、対象由来の組織又は臓器;細胞(対象内で、対象から直接的に採取された、又は培養中又は培養細胞株から維持された細胞);細胞溶解物(又は溶解物画分)又は細胞抽出物;又は細胞又は細胞材料(例えば、ポリペプチド又は核酸)由来の1つ以上の分子を含有する溶液を指すことができる。試料はまた、細胞又は細胞成分を含有する任意の体液又は排泄物(例えば、血液、尿、糞便、唾液、涙、胆汁)であり得る。
【0079】
以下の実施例を参照して本発明をさらに説明するが、本発明はこのような実施例に限定されるものではないことを理解されたい。むしろ、本発明を実施するための現在の最良のモードを説明する本開示に照らして、多くの変更及び変形が、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者に提示される。特許請求の範囲の同等性の意味及び範囲内に入る全ての変更、修正及びバリエーションは、それらの範囲内であるとみなされるべきである。
【0080】
本発明は、例示的な方法で説明されてきた。使用されてきた用語は、限定ではなく、説明の単語の性質を有するものであることが意図されていることが理解されるべきである。
【0081】
本発明の多くの変更及び変形は、上記教示に照らして可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲内で、本発明は、具体的に記載された以外の方法で実施することができる。
【実施例0082】
以下に説明する実施例について、以下の材料、方法及びプロトコールを使用した。
【0083】
材料及び方法
動物:6~12週齢C57BL6/Jマウス(B6マウス)、B6。ヒトHLA-A2遺伝子(AADマウス)を発現するCg-Tg(HLA-A/H2-D)2Enge/Jトランスジェニックブリーダーマウス、及びJackson研究所(Bar港、ME)から得たIFNAR-/-(B6.129S2-Ifnar1tm1Agt/Mmjax)遺伝子ノックアウトブリーダーマウスを、特異的病原体フリー条件下で飼育した。DLARにより承認されたIACUCプロトコールに従って、動物の飼育、繁殖及び実験手順を実施した。
【0084】
ペプチド及び試薬:ペプチド及び試薬:cGMPグレードのR-DOTAP及びS-DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン)は、スイス、ShaffhausenのMerck&Cieにより提供された。cGMPグレードのR-DOTAPリポソームナノ粒子を、標準的なリポソーム製造プロセスによって製造した。ペプチド抗原(KF18:KSSGPDAERAHYNIVTF(配列番号3)、SF9:SIINFEKL(配列番号1)、RF9:RAHYNIVTF(配列番号2)を合成し、米国ニュージャージー州ピスカタウェイのGenScriptにより>95%純度まで精製した。他のすべてのカチオン性脂質はAvanti polar Lipids,Birmingham,ALから購入した。
【0085】
細胞株および骨髄由来樹状細胞培養:初代骨髄由来樹状細胞を、組換えマウスGM-CSF及びIL-4(従来のBMDC(cDC))又は組換えflt3リガンド(形質細胞様BMDC(pDC))を補充した完全RPMI培地(10%FBS、1mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、1mM MEM非必須アミノ酸、50μM β-メルカプトエタノール、100u/mlペニシリン、100u/mlストレプトマイシンを含むRPMI培地)中で8日間造血骨髄細胞を培養することにより得た。カチオン性脂質誘導I型IFNの検出に使用するB16-Blue(商標)IFN-α/β細胞を、米国カリフォルニア州サンディエゴのInvivoGenから購入し、細胞培養物を製造業者のプロトコールに従って維持した。
【0086】
IFNレポーター細胞アッセイ及び細胞表現型分析:IFNを検出するために、I型IFN産生細胞からの上清を、96ウェルプレート中のB16-Blue(商標)IFN-α/β細胞に添加した。24時間のインキュベーション後、上清を、製造業者の指示に従って、QUANTI-Blue(商標)試薬(InvivoGen、米国)を用いてSEAP活性についてアッセイした。簡単に説明すると、SEAPを含有する細胞上清50μlを150μlのQUANTI-Blue(商標)試薬と混合し、37℃で3~4時間インキュベートし、分光計を用いて650nmで吸光度を測定した。試験試料中のI型IFN濃度は、同じアッセイにおいて、組換えI型IFNβ処理B16-Blue(商標)IFN-α/β細胞から生成した標準曲線を用いて定量した。CD69の発現を測定するために、リンパ節の単一細胞懸濁液を蛍光色素結合CD3で染色し、各流入リンパ節のCD69及びパーセントCD69+CD3+T細胞をフローサイトメトリーを用いて測定した。
【0087】
RNA単離、ナノストリング分析及び遺伝子発現分析:遺伝子発現分析のために、流出膝窩リンパ節(n=4)を37℃で60分間細胞解離カクテルを用いて酵素的に消化し、単一細胞懸濁液を用いてソニーSY3200細胞ソーターを用いてCD11c+細胞を選別した。選別精製CD11c+細胞(25K細胞)をQiagenのRLT細胞溶解緩衝液(Qiagen,USA)中で溶解し、全RNAをQiagen全RNA分離キット(Qiagen,USA)を用いて単離した。得られた全RNAは、ケンタッキー大学ゲノミクスコア研究所(Lexington,KY)に送られ、そこで、免疫応答に関与する547以上の遺伝子を測定することができる、ncounterTMマウス炎症パネル(Nano String Technologies,Seattle,WA)と全RNAを混合した。mRNAの結合をNanso String nCounter分析システムで検出し、生計数データを正規化し、英国ゲノミクスコアラボラトリーによるSASプログラムを用いて統計的に分析した。RT-PCRを用いた確認試験のために、リンパ節をRLT細胞溶解緩衝液中で直接溶解し、全分離RNAをQuantiTect逆転写キット(Qiagen,USA)を用いてcDNAに逆転写した。次いで、cDNAをTaqMan遺伝子発現システム(米国アプライドバイオシステムズ)を用いて増幅し、定量的PCR反応を用いて、GAPDH発現に対するマウスIFNα及びIFNβ転写物を検出し定量した。
【0088】
ワクチン接種及び抗原特異的T細胞応答の評価:マウスをイソフルランを用いて麻酔し、ワクチン接種前に注射部位を剃毛し、70%エタノールで洗浄した。ELISPOTを用いて抗原特異的T細胞応答を評価するために、マウスに、カチオン性脂質及び抗原性ペプチドを含むワクチン製剤を7日間隔で2回(100μl/用量)、又は0日目に送達された完全フロイントアジュバント及び抗原性ペプチドの等量を乳化することによって調製されたCFA製剤を1回、ワクチン接種した。最初のワクチン接種から14日後に抗原特異的反応を評価した。抗原特異的応答を測定するために、安楽死させたマウス由来の脾臓細胞を用いて、IFN-γELISPOTアッセイ(マブテック社、米国オハイオ州シンシナティ)を用いて抗原特異的T細胞応答を検出した。IFN-γ ELISPOTアッセイのために、2.5×105の処理された脾臓細胞を、マウスIFN-γ捕獲抗体で予めコーティングされた96ウェルプレートにおいて、関心対象のCD8 T細胞エピトープで37℃にて18~24時間刺激した。刺激後、ウェルをPBSで洗浄し、ビオチン結合anti-IFNγ抗体、続いてストレプトアビジン-HRP抗体とインキュベートした。抗原特異的IFN-γ産生細胞を可視化するために、ウェルをTMB基質と共に6分間インキュベートし、水で洗浄し、風乾した。スポットをスキャンし、CTL ImmunoSpot Analyzer及びImmunoSpot Ver.4ソフトウェア(Cellular Technology Limited,Cleveland,Ohio,USA)を用いて計数した。 スポット数は、3回のサンプルからの中央値として要約した。各試料は、バックグラウンド及び陽性対照を検出するために、非刺激及びPMA/イオノマイシン対照ウェルを有した。スポット数が5スポットを超え、抗原特異的反応が陽性の場合、スポット数が対照の3倍を超える場合、ウェルは陽性とみなした。
【0089】
実施例1
R-DOTAPは流入領域リンパ節におけるI型インターフェロン遺伝子発現を誘導する
カチオン性ナノ粒子誘導遺伝子発現を評価するために、C57BL/6Jマウスに頸部後方の皮下に100μlの12mM R-DOTAPナノ粒子を注射し、流入リンパ節における炎症性遺伝子発現をワクチン接種後4又は24時間で分析した。PBS及びLPS(50μg/マウス)を注射したマウス(24時間時点)を、それぞれ陰性及び陽性対照として用いた。注射の4時間後又は24時間後に、各マウスからの腋窩リンパ節及び上腕リンパ節をプールし、コラゲナーゼ消化により処理した。リンパ節細胞懸濁液中の活性化樹状細胞(CD11c
+)細胞を選別精製し、RLT緩衝液中で溶解し、nCounter(登録商標)マウス炎症キット及びナノストリング技術を用いて相対遺伝子発現解析のために処理した。R-DOTAP注射は、両方の時点でいくつかの炎症性遺伝子の発現を有意に変化させることが分かった。IFN-1α及びIFN-1βを含むいくつかの遺伝子は、陽性対照として使用したLPSよりも5倍以上高い増加を示した。Cxcl10を含む他の遺伝子の発現も有意に増加し、LPSによって誘導されるレベルと同程度であった(
図1)。
【0090】
実施例2
R-DOTAPとS-DOTAPはいずれも流入領域リンパ節におけるインターフェロンαとインターフェロンβ遺伝子発現を誘導する
【0091】
R-及びS-DOTAPの両方によるI型インターフェロン遺伝子発現を比較するために、実施例1に概説した同様の研究を実施した。C57BL/6Jマウスに、足パッドに50μlの6mM RDOTAPナノ粒子を皮下注射した。PBS及びLPS(50μg/マウス)を注射したマウス(24時間時点)を、それぞれ陰性及び陽性対照として用いた。注射後3時間又は24時間、各マウスからの膝窩リンパ節をプールし、RLT緩衝液中で溶解し、Taqman(登録商標)遺伝子発現アッセイ及びRT-PCRを用いて相対遺伝子発現分析のために処理した。これらの研究から、R-及びS-DOTAPはいずれもI型インターフェロンの強力な誘導因子であることが確認されている(
図2)。
【0092】
実施例3
R-DOTAP及びS-DOTAPはT細胞におけるI型インターフェロン関連CD69発現をアップレギュレートする
I型インターフェロンを活性化するカチオン性脂質の効果及び能力をさらに理解するために、C57BL/6Jマウス又はIFNAR-/-マウスに、足パッドに50μlの6mM R-DOTAPナノ粒子又は6mM S-DOTAP又は280mMスクロースを皮下注射した。注射24時間後、各マウスから膝窩リンパ節流出リンパ節を単離し、リンパ節の単細胞懸濁液を蛍光色素結合CD3及びCD69で染色した。R-DOTAP単独(抗原なし)はDLNサイズの目に見える増加をもたらし、これは7日間にわたる総細胞数の着実な増加によるものであった(
図3A)。百日咳毒素を用いたDLNへのT細胞流入の研究は、R-DOTAPに構造的に関連する脂質がリンパ節ホーミングケモカインを誘導することを示唆しており、おそらくI型IFNシグナル伝達の直接的な結果であると思われる。この総細胞数の増加は、IFNαRノックアウトマウスで大幅に減少したことから、I型IFNシグナル伝達に依存していることが確認された(
図3B)。I型IFNは、CD69のアップレギュレーションを介してリンパ器官からのリンパ球排出を阻害することが知られており、CD69は、次に、リンパ球排出に必要なスフィンゴシン1リン酸受容体を阻害する。従って、S-DOTAPとR-DOTAPの両方の注射はDLNにおけるCD69のアップレギュレーションをもたらすと仮定した。実際、野生型マウスに両カチオン性脂質を皮下注射すると、T細胞で最も強くCD69のアップレギュレーションが生じた。対照的に、IFNαRノックアウトマウスのR-DOTAP注射後にはCD69のアップレギュレーションは認められず、R-DOTAPが誘導するCD69のアップレギュレーションがI型IFN依存性であることが示された(
図3C)。データは、各所属リンパ節におけるCD69+CD3+T細胞%を表す。
【0093】
実施例4
種々のカチオン性脂質はI型インターフェロンをアップレギュレートする
種々のカチオン性脂質がI型インターフェロンを誘導する可能性を評価するために、インビトロで研究を行った。本研究では、カチオン性脂質DOTAP、DOEPC及びDOTMAを研究した。中性脂質DOPCも評価し、カチオン性脂質に対するインターフェロンアップレギュレーションの特異性を確認した。ある研究では、IFNAR-Koマウス由来の骨髄由来樹状細胞(BMDC)を、示された(6~400μM)濃度のカチオン性脂質又はLPS陽性対照(1~500ng/ml)で24時間刺激した(
図4A)。第2の研究では、FLT3誘導BMDC(pDC)及びGM-CSF/IL-4誘導BMDC(cBMDC)を、R-DOTAP又はLPS陽性対照(1~500ng/ml)の所定濃度(6~400μM)で24時間刺激した(
図4B)。I型インターフェロン産生を測定するために、細胞上清(100μl)をレポーター細胞(米国インビボゲンのB16.Blue-IFNα/β細胞)に添加し、18時間インキュベートして、レポーター細胞によるI型インターフェロン誘導性の分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)産生を刺激した。レポーター細胞上清中のSEAP活性を、製造プロトコールに従って比色SEAPアッセイキットを用いて定量した。BMDC分泌I型インターフェロンを、レポーター細胞株において組換えマウスIFN-β刺激SEAP活性を用いて標準曲線を用いて定量した。これらの研究は、I型インターフェロンをアップレギュレートする能力がDOTAPに特異的ではなく、複数のカチオン性脂質によって活性化され得ることを確認している。また、中性脂質がI型インターフェロン経路を活性化できないことも確認されている。
【0094】
実施例5
カチオン性脂質を介したCD8+T細胞応答の低下がI型IFN欠損マウスにおいて観察される
カチオン性脂質によるI型IFN遺伝子のアップレギュレーションが実証されたことは、カチオン性脂質がI型IFN経路を標的とし、強固なCD8+T細胞応答を誘導することを示唆している。この仮説をさらに確認するために、ニワトリ卵白アルブミン又はHPV16-E7蛋白由来CD8 T細胞エピトープ(RF9:RAHYNIVTF(配列番号2))の十分に特徴付けられたマウスCD8+T細胞エピトープ(SIINFEKL(配列番号1))を含むR-DOTAP製剤を、野生型C57BL/6Jマウス及びI型インターフェロンシグナル欠損IFNAR
-/-マウスに、0日目及び7日目に投与した。マウスにも完全フロイントアジュバント(CFA)+SIINFEKLを接種した。陽性対照としてペプチドのみのワクチンを用いた。14日目に、R-DOTAP又はCFAによって誘導された抗原特異的(SIINFEKL)CD8+T細胞応答を、IFN-γELISPOTアッセイを用いて評価した。
図5Aに示されるように、DOTAP製剤で野生型マウスにワクチン接種すると、CFAアジュバント製剤よりも大きさが高い強力な抗原特異的CD8+T細胞応答が誘導された。対照的に、R-DOTAPによって誘導されるCD8+ T細胞応答は、IFNAR-/-マウスにおいて劇的に減少するが、CFA-アジュバント製剤ではそのような差は認められない。HPV16陽性腫瘍で発現した腫瘍関連抗原でも同様の結果が認められた(
図5B)。CFAアジュバントは、複数のTLR経路を標的とし、したがって、抗原特異的CD8+T細胞応答を誘導するためのI型IFNシグナル伝達の必要性を回避することができることは十分に立証されている。
【0095】
I型IFNシグナル伝達を欠損したマウスにおけるカチオン性脂質誘導効果の喪失は、I型IFN遺伝子を強力に活性化する能力と相まって、R-DOTAPが抗原交差提示を効果的に促進し、同時にI型IFN経路を活性化して強固な抗原特異的CD8+T細胞免疫応答を駆動することを強く示している(
図5)。