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特開2024-36402延焼防止部材およびそれを備えるバッテリー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036402
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】延焼防止部材およびそれを備えるバッテリー
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/04 20060101AFI20240308BHJP
   B32B 25/20 20060101ALI20240308BHJP
   B32B 18/00 20060101ALI20240308BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240308BHJP
【FI】
B32B25/04
B32B25/20
B32B18/00 C
H01M50/204 401F
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024009139
(22)【出願日】2024-01-25
(62)【分割の表示】P 2020115487の分割
【原出願日】2020-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】安藤 均
(57)【要約】
【課題】
燃焼若しくは延焼が困難であって、熱源の膨張収縮に追従し、かつ複数の熱源の一体化にも寄与可能な延焼防止部材およびそれを備えるバッテリーを提供する。
【解決手段】
本発明は、複数の熱源同士の間に少なくとも配置される延焼防止部材1であって、ゴム状弾性体からなるゴムシート12と、ゴムシート12の両面に連接して若しくは分離して積層され、熱源間の延焼を防止する耐熱シート11とを備え、ゴムシート12は、その両面の周縁部13より内側に、耐熱シート11が積層される一方の面から他方の面に向かって窪む凹部若しくは貫通する貫通孔15を少なくとも1つ備え、周縁部13に比べその内側の領域14を柔軟にしている延焼防止部材1およびそれを備えるバッテリーに関する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱源同士の間に少なくとも配置される延焼防止部材であって、
ゴム状弾性体からなるゴムシートと、
前記ゴムシートの両面に連接して若しくは分離して積層され、熱源間の延焼を防止する耐熱シートと、を備え、
前記ゴムシートは、その両面の周縁部より内側に、前記耐熱シートが積層される一方の面から他方の面に向かって窪む凹部若しくは貫通する貫通孔を少なくとも1つ備え、前記周縁部に比べその内側の領域を柔軟にしていることを特徴とする延焼防止部材。
【請求項2】
前記ゴムシートは、内部に気泡を有するゴム状弾性体であることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止部材。
【請求項3】
前記ゴムシートは、間隔を空けて配置される複数の前記凹部若しくは前記貫通孔を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の延焼防止部材。
【請求項4】
前記耐熱シートは、前記ゴムシートを包む袋形状を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の延焼防止部材。
【請求項5】
前記耐熱シートは、
前記ゴムシートの縁部よりも外側に延出した接合部を備え、
前記ゴムシートを挟んで対向する前記接合部同士が接合されていることを特徴とする請求項4に記載の延焼防止部材。
【請求項6】
前記耐熱シートは、タルクを主成分として含むシートであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の延焼防止部材。
【請求項7】
前記ゴムシートは、シリコーンゴムを主として含むシートであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の延焼防止部材。
【請求項8】
前記ゴムシートは、シリコーンゴムスポンジシートであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の延焼防止部材。
【請求項9】
筐体内に、複数の熱源としてのバッテリーセルを備えたバッテリーであって、
複数の前記バッテリーセル同士の間に少なくとも配置される請求項1から8のいずれか1項に記載の延焼防止部材を備えることを特徴とするバッテリー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延焼防止部材およびそれを備えるバッテリーに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界中で、地球環境への負荷軽減を目的として、従来からのガソリン車あるいはディーゼル車を徐々に電気自動車に転換しようとする動きが活発化している。特に、フランス、オランダ、ドイツをはじめとする欧州諸国の他、中国でも、電気自動車の普及が進行してきている。電気自動車の普及には、高性能バッテリーの開発の他、多数の充電スタンドの設置などの課題がある。
【0003】
上記自動車用バッテリー等の各種バッテリーは、内部短絡等が原因によりバッテリーが熱暴走し、発火や発煙等が生じる虞がある。近年、自動車用バッテリーとして、筐体内に複数のバッテリーセルを並べて装着したものが知られている。このような複数のバッテリーセルが並べて装着されたバッテリーにおいて、1つのバッテリーセルに発火や発煙等が生じた場合、周囲のバッテリーセルに熱が伝わることにより、さらに大きな発火、発煙、爆発等の不具合が生じる虞がある。このような不具合による被害を最小限に抑えるため、異常高温になったバッテリーセルの熱を周囲のバッテリーセルに伝え難くする方法が検討されており、例えば、複数のバッテリーセル同士の間に耐火材や断熱層等の延焼防止部材を設ける方法が知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-206604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バッテリーセルは、充電および放電の際に温度上昇する。そのため、バッテリーセルの容器自体が柔軟性に富む材料にて形成されていると、バッテリーセルの特に側面が膨らむ可能性がある。このため、バッテリーセル間の延焼防止部材は、燃焼若しくは延焼が困難であることに加え、バッテリーセルの膨張および収縮に追従する必要がある。一方、バッテリーセル間に延焼防止部材を挟んで実装したときには、バッテリーセルユニット全体を一体化する必要がある。上記要望は、バッテリーセルのみならず、回路基板、電子部品あるいは電子機器本体のような他の熱源にも通じる要請である。このような要望に応えることは、「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」という本出願人の持続可能な開発目標の達成にも資する。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、燃焼若しくは延焼が困難であって、熱源の膨張収縮に追従し、かつ複数の熱源の一体化にも寄与可能な延焼防止部材およびそれを備えるバッテリーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る延焼防止部材は、複数の熱源同士の間に少なくとも配置される延焼防止部材であって、ゴム状弾性体からなるゴムシートと、前記ゴムシートの両面に連接して若しくは分離して積層され、前記ゴムシートよりも耐熱性の高い耐熱シートと、を備え、前記ゴムシートは、その両面の周縁部より内側に、前記耐熱シートが積層される一方の面から他方の面に向かって窪む凹部若しくは貫通する貫通孔を少なくとも1つ備え、前記周縁部に比べその内側の領域を柔軟にしている。
(2)別の実施形態に係る延焼防止部材では、好ましくは、前記ゴムシートは、間隔を空けて配置される複数の前記凹部若しくは前記貫通孔を備えていても良い。
(3)別の実施形態に係る延焼防止部材では、好ましくは、前記耐熱シートは、前記ゴムシートを包む袋形状を有していても良い。
(4)別の実施形態に係る延焼防止部材では、好ましくは、前記耐熱シートは、前記ゴムシートの縁部よりも外側に延出した接合部を備え、前記ゴムシートを挟んで対向する前記接合部同士が接合されていても良い。
(5)別の実施形態に係る延焼防止部材では、好ましくは、前記耐熱シートは、タルクを主成分として含むシートであっても良い。
(6)別の実施形態に係る延焼防止部材では、好ましくは、前記ゴムシートは、シリコーンゴムを主として含むシートであっても良い。
(7)一実施形態に係るバッテリーは、筐体内に、複数の熱源としてのバッテリーセルを備えたバッテリーであって、複数の前記バッテリーセル同士の間に少なくとも配置される上述のいずれか1つの延焼防止部材を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、燃焼若しくは延焼が困難であって、熱源の膨張収縮に追従し、かつ複数の熱源の一体化にも寄与可能な延焼防止部材およびそれを備えるバッテリーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る延焼防止部材の分解斜視図を示す。
図2図2は、第1実施形態に係る延焼防止部材の斜視図を示す。
図3図3は、図2におけるA-A線断面図を示す。
図4図4は、第2実施形態に係る延焼防止部材の図3と同視の断面図を示す。
図5図5は、第3実施形態に係る延焼防止部材の図3と同視の断面図を示す。
図6図6は、第4実施形態に係る延焼防止部材の図3と同視の断面図を示す。
図7図7は、第5実施形態に係る延焼防止部材の図3と同視の断面図を示す。
図8図8は、延焼防止部材を備えるバッテリーの縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
1.延焼防止部材
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る延焼防止部材の分解斜視図を示す。図2は、第1実施形態に係る延焼防止部材の斜視図を示す。図3は、図2におけるA-A線断面図を示す。
【0012】
(1)延焼防止部材の概略構成
この実施形態に係る延焼防止部材1は、複数(ここでは、2つ)の熱源同士の間に少なくとも配置される部材である。延焼防止部材1は、ゴム状弾性体からなるゴムシート12と、ゴムシート12の両面に連接して積層され、ゴムシート12よりも耐熱性の高い耐熱シート11と、を備える。耐熱シート11は、ゴムシート12を包んでいる。ゴムシート12は、その両面の周縁部13(図1の点線より外側の枠状の領域)より内側、すなわち図1の点線で囲まれた内側の領域14に、耐熱シート11が積層される一方の面から他方の面に向かって貫通する少なくとも1つの貫通孔15を有する。なお、後述するが、貫通孔15に代えて、あるいは貫通孔15と共に、ゴムシート12の両面を非貫通で、かつ当該ゴムシート12の厚さ方向に窪む凹部15aを、ゴムシート12に少なくとも1つ備えても良い。
【0013】
次に、延焼防止部材1の各構成要素について説明する。
【0014】
(2)耐熱シート
耐熱シート11は、図1に示すように、ゴムシート12の外側に積層されるシートである。耐熱シート11は、好ましくは、ゴムシート12を包む袋形状を有する。耐熱シート11は、より好ましくは、ゴムシート12の縁部よりも外側に延出した接合部5を備える。延焼防止部材1は、好ましくは、ゴムシート12を挟んで対向する接合部5同士が接合されている。接合部5は、熱圧着により接合されても良いし、耐熱性の接着剤、両面テープ等の固定手段を用いて接合されても良い。この実施形態では、耐熱シート11は、ゴムシート12の外周を形成する4つの辺からそれぞれ外側に延出した4つの接合部5を備える。すなわち、耐熱シート11は、4つの接合部5がゴムシート12を挟んでそれぞれ対向する接合部5と接合された密封形状を有している(図2参照)。なお、延焼防止部材1において、A-A線断面(図2参照)に垂直方向の断面図は、図3と同様であるため、図示を省略する。以後の実施形態においても同様である。また、耐熱シート11は、ゴムシート12を包む袋形状を有していればその形態に制約はなく、例えば、ゴムシート12の外周を形成する4つの辺のうち3つの辺からそれぞれ外側に延出した3つの接合部5を備え、3つの接合部5同士が接合された形態であっても良い。この場合、耐熱シート11は、接合部5を備えていない辺が開口された袋形状を有する。
【0015】
耐熱シート11は、熱源と熱源との間に配置されて、熱源間の延焼を有効に防止する機能を有する。耐熱シート11は、その構成材料を問わないが、好ましくは、タルクを主成分として含むシートである。本願で、「主成分として」または「主として」は、全体質量に対して50質量%を超える割合を意味する。以後の同様の用語についても同じ意味である。タルクは、一般に、含水ケイ酸マグネシウムを主成分とするセラミックスであり、酸化鉄等の不純物を若干含有している。不純物の種類および量は、タルク原石の産地によって異なるが、耐熱シート11に含まれるタルクとしては、それらの点で特に限定されるものではない。レーザ光回折法により測定されるタルクの平均粒子径は、0.1μm~50μmが好ましく、1μm~30μmがより好ましい。また、タルクは、例えば、有機シラン系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ系化合物、有機チタネート系化合物、イソシアネート系化合物等の公知の表面処理剤で表面処理したものを使用しても良い。耐熱シート11は、上述のようなタルクを1種類のみ含んでいても良いし、平均粒子径、種類、表面処理剤等が異なる2種類以上を含んでいても良い。
【0016】
耐熱シート11は、好ましくは、耐熱性および難燃性に優れたシートである。耐熱シート11は、タルクを主成分として含むシートに限定されず、少なくともゴムシート12より耐熱性が高く、また難燃性の高い材料で構成されていれば良い。そのような材料としては、ムライト、コージライト、ステアタイト、フォルステライト、チタニア、ジルコニアのような、窒化アルミニウム、アルミナあるいはグラファイトと比べて熱伝導率の比較的低い材料を例示できる。耐熱シート11は、導電性に優れるか否かは問わない。耐熱シート11は、湾曲性(若しくは屈曲性)に優れるシートであるのが好ましく、その厚さに制約はないが、0.02~3mmが好ましく、0.1~0.5mmがより好ましい。耐熱シート11の厚さは、好ましくは、ゴムシート12の厚さに比べて小さい。ゴムシート12の有する変形容易性を発揮させた延焼防止部材1を実現容易だからである。ただし、耐熱シート11は、シートの強度、可撓性および耐熱性を総合的に考慮して、その厚さを決定するのが好ましい。
【0017】
(3)ゴムシート
ゴムシート12は、図1に示すように、耐熱シート11に挟まれて配置されるシートである。ゴムシート12は、ゴム状弾性体からなるシートである。「ゴム状弾性体」という文言に代えて「弾性体」あるいは「クッション部材」という文言を使用しても良い。ゴムシート12は、複数の熱源同士の間にあってクッション性を発揮させて、耐熱シート11に加わる荷重によって耐熱シート11が破損しないようにする保護部材としての機能と、熱源の膨張に伴い変形する機能と、を有する。また、ゴムシート12は、後述するように、周縁部13をその内側の領域14よりも高硬度とすることで、延焼防止部材1と、それを挟む少なくとも2つの熱源とを一体化しやすくする機能も有する。ゴムシート12は、耐熱シート11に比べて燃焼しやすい。しかし、ゴムシート12をその両面側から耐熱シート11にて挟み、さらに好ましくは耐熱シート11にて完全に包むことにより、燃焼困難となる。
【0018】
ゴムシート12は、その内部に気泡を有するスポンジ状の部材、あるいは気泡を含まないゴム状弾性体のいずれでも良いが、より好ましくはスポンジ状の部材である。ゴムシート12は、好ましくは、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。ゴムシート12は、耐熱シート11を伝わる熱によって溶融あるいは分解等せずにその形態を維持できる程度の耐熱性を有する。この実施形態では、ゴムシート12は、好ましくは、シリコーンゴムを主として含むシートであり、より好ましくは、シリコーンゴムの発泡体シートであるシリコーンスポンジシートである。ただし、ゴムシート12の周縁部13は、内側の領域14に比べて孔の総体積が少ない、若しくは孔がない。ゴムシート12の硬度は、ショアA硬度で20度~80度が好ましく、30度~70度がより好ましい。ゴムシート12は、その熱伝導性を少しでも高めるために、ゴム中にAl、AlN、cBN、hBN、ダイヤモンドの粒子等に代表されるフィラーを分散して構成されていても良い。
【0019】
ゴムシート12は、好ましくは、耐熱シート11が積層される一方の面から他方の面へ貫通する貫通孔15若しくは凹部15aが間隔を空けて複数配置されたシートである(図1を参照)。貫通孔15若しくは凹部15aは、ゴムシート12の両面における周縁部13には設けられていない。周縁部13は、ゴムシート12の最も広い面の外縁に枠状若しくはコの字状(U字状ともいう)に設けられた領域である。周縁部13は、その幅に制約はないが、8~15mmが好ましく、10~12mmがより好ましい。貫通孔15若しくは凹部15aは、その大きさに制約はないが、直径1~20mmが好ましく、5~10mmがより好ましい。また、貫通孔15若しくは凹部15aは、その個数に制約はなく、少なくとも1以上備えられていれば良い。また、貫通孔15若しくは凹部15aは、その断面形状および平面形状に制約はなく、例えば、多角形、楕円形、半円形、頂点が丸みを帯びた略多角形等の形状を有していても良い。耐熱シート11とゴムシート12とは、耐熱性の接着剤、両面テープ等の固定手段を用いて固定しても良いし、何らの固定手段も用いずに固定しても良い。ゴムシート12は、その厚さに制約はないが、4~20mmが好ましく、5~10mmがより好ましい。
【0020】
延焼防止部材1は、貫通孔15若しくは凹部15aが形成されたゴムシート12の両面に耐熱シート11が積層されるため、貫通孔15若しくは凹部15aと耐熱シート11とにより空間Sが形成される。延焼防止部材1において、空間Sは、空気層を形成するため、ゴムシート12の空間S以外の領域に比べて熱伝導性が低くなる。よって、延焼防止部材1において、ゴムシート12は、空間Sにより断熱性を向上させることができるため、1つの熱源から他の熱源への熱伝導を低減することができる。また、延焼防止部材1は、耐熱シート11の接合部5同士が接合されるため、熱源とゴムシート12との間の熱伝導をより低減し、ゴムシート12の燃焼を防止できる。このように、ゴムシート12に、周縁部13と、その内側の領域14に貫通孔15若しくは凹部15aとを備えると、熱源同士の間に延焼防止部材1を挟んで実装する際に、熱源ユニットとして一体化が容易となる。これは、周縁部13は、貫通孔15が存在する領域(すなわち、周縁部13より内側の領域14)より高硬度であることに起因する。一方、熱源が膨張した場合には、貫通孔15若しくは凹部15aが存在する上記の内側の領域14が周縁部13より低硬度であるため、熱源に追従して変形しやすい。また、ゴムシート12に貫通孔15若しくは凹部15aを設けることにより、延焼防止部材1の軽量化を図ることもできる。
【0021】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る延焼防止部材について説明する。先の実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。以下、特筆しない限り、貫通孔15のみを備える例で説明する。
【0022】
図4は、第2実施形態に係る延焼防止部材の図3と同視の断面図を示す。
【0023】
第2実施形態に係る延焼防止部材1aは、第1実施形態に係る延焼防止部材1と類似の構造を有するが、耐熱シート11に代えて耐熱シート11aを備える点において、第1実施形態に係る延焼防止部材1と異なる。
【0024】
耐熱シート11aは、接合部5を備えない点において、第1実施形態の耐熱シート11と異なる。すなわち、延焼防止部材1aは、ゴム状弾性体からなるゴムシート12と、ゴムシート12の両面に分離して積層され、ゴムシート12よりも耐熱性の高い耐熱シート11aと、を備える。この実施形態では、ゴムシート12の両面に積層された耐熱シート11a同士は、接合することなく、ゴムシート12を挟んで対向するように配置されている。このように構成された延焼防止部材1aにおいても、先述の実施形態と同様の効果を奏する。なお、耐熱シート11aにおいて、接合部5以外の構成は、第1実施形態の耐熱シート11と同様であるため、詳細な説明を省略する。また、耐熱シート11aは、その大きさに特に制約はないが、ゴムシート12と同等の大きさが好ましい。
【0025】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る延焼防止部材について説明する。先の実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0026】
図5は、第3実施形態に係る延焼防止部材の図3と同視の断面図を示す。
【0027】
第3実施形態に係る延焼防止部材1bは、第1実施形態に係る延焼防止部材1と類似の構造を有するが、耐熱シート11に代えて、耐熱シート11bを備える点において、第1実施形態に係る延焼防止部材1と異なる。
【0028】
耐熱シート11bは、接合部5の接合方法以外は、第1実施形態の耐熱シート11と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。耐熱シート11bは、第1実施形態の耐熱シート11と同様に、ゴムシート12の外周を形成する4つの辺からそれぞれ外側に延出した4つの接合部5aを備える。延焼防止部材1bは、ゴムシート12を挟んで対向する接合部5a同士が接合された状態で、凹凸を形成している。すなわち、耐熱シート11bは、4つの接合部5aがゴムシート12を挟んでそれぞれ対向する接合部5aと接合された状態で、凹凸を形成している。接合部5aは、熱圧着により接合されても良いし、耐熱性の接着剤、両面テープ等の固定手段を用いて接合されても良い。このように構成された延焼防止部材1bにおいても、先述の各実施形態と同様の効果を奏する。また、延焼防止部材1bは、接合部5a同士が接合された状態で凹凸を形成することにより、接合部5a同士の接合がより強固になり、熱源からゴムシート12への延焼リスクをより低減し、もって、ゴムシート12の燃焼を防止できる。なお、耐熱シート11bの接合部5aは、少なくとも1以上の凹凸が形成されていれば、凹凸の数は限定されない。また、接合部5aの凹凸の形状は、矩形状に限定されず、例えば、半円形状、三角形状、多角形状等であっても良い。
【0029】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る延焼防止部材について説明する。先の実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0030】
図6は、第4実施形態に係る延焼防止部材の図3と同視の断面図を示す。
【0031】
第4実施形態に係る延焼防止部材1cは、第1実施形態に係る延焼防止部材1と類似の構造を有するが、耐熱シート11に代えて、耐熱シート11cを備える点において、第1実施形態に係る延焼防止部材1と異なる。
【0032】
耐熱シート11cは、ゴムシート12の外周を形成する4つの辺のうち3つの辺(この実施形態では、下辺以外の3辺)からそれぞれ外側に延出した3つの接合部5bを備える。また、耐熱シート11cは、3つの接合部5bが、ゴムシート12を挟んで対向する接合部5bとそれぞれ接合された状態で、凹凸を形成している。すなわち、耐熱シート11cは、接合部5bを備えていない辺(この実施形態では、下辺)が開口された袋形状を有する。よって、延焼防止部材1cは、袋形状を有する耐熱シート11cがゴムシート12を包むように構成されている。このように構成された延焼防止部材1cにおいても、下辺が冷却部位の側に接している場合には、先述の各実施形態と同様の効果を奏する。なお、延焼防止部材1cにおいて、A-A線断面(図2参照)に垂直方向の断面と同視の断面図は、第1実施形態に係る延焼防止部材1の断面図(図3参照)と同様であるため、図示を省略する。
【0033】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係る延焼防止部材について説明する。先の実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0034】
図7は、第5実施形態に係る延焼防止部材の図3と同視の断面図を示す。
【0035】
第5実施形態に係る延焼防止部材1dは、第1実施形態に係る延焼防止部材1と類似の構造を有するが、ゴムシート12の一方の面に、耐熱シート11に代えて、耐熱シート11dが積層される点において、第1実施形態に係る延焼防止部材1と異なる。
【0036】
延焼防止部材1dは、ゴムシート12の一方の面に第1実施形態の耐熱シート11が積層され、他方の面に耐熱シート11dが積層されている。耐熱シート11dは、ゴムシート12の外周を形成する4つの辺からそれぞれ外側に延出した4つの接合部5cを備える。接合部5cは、耐熱シート11の接合部5よりも外側に延出している。延焼防止部材1dは、ゴムシート12を挟んで対向する接合部5,5cのうち、耐熱シート11dの接合部5cが耐熱シート11の接合部5側へ折り返して接合されている。すなわち、延焼防止部材1dは、耐熱シート11dの4つの接合部5cが、ゴムシート12を挟んでそれぞれ対向する耐熱シート11の接合部5側へ折り返して接合されている。接合部5,5cは、熱圧着により接合されても良いし、耐熱性の接着剤、両面テープ等の固定手段を用いて接合されても良い。なお、耐熱シート11,11dは、ゴムシート12を包む袋形状を有していればその形態に制約はなく、例えば、ゴムシート12の外周を形成する4つの辺のうち3つの辺からそれぞれ外側に延出した3つの接合部5,5cを備え、接合部5と接合部5cとがそれぞれ折り返されて接合されている形態であっても良い。この場合、耐熱シート11,11dは、接合部5,5cを備えていない辺が開口された袋形状を有する。このように構成された延焼防止部材1dにおいても、先述の各実施形態と同様の効果を奏する。また、延焼防止部材1dは、接合部5cがゴムシート12を挟んで対向する接合部5側へ折り返して接合されることにより、接合部5,5c同士の接合がより強固になり、熱源からゴムシート12への延焼リスクをより低減し、もって、ゴムシート12の燃焼を防止できる。
【0037】
2.バッテリー
次に、本発明に係るバッテリーの好適な実施形態について説明する。
【0038】
図8は、延焼防止部材を備えるバッテリーの縦断面図を示す。ここで、「縦断面図」は、バッテリーの筐体内部のバッテリーセルの長さ方向にバッテリーを切断する図を意味する。また、図8において、バッテリー40は、6つのバッテリーセル50を備えているが、バッテリーセル50の数は特に限定されない。
【0039】
この実施形態において、バッテリー40は、例えば、電気自動車用のバッテリーであって、多数のバッテリーセル50を備える。バッテリー40は、一方に開口する有底型の筐体41を備える。筐体41は、好ましくは、アルミニウム若しくはアルミニウム基合金から成る。バッテリーセル50は、筐体41の内部44に配置される。バッテリーセル50の上方には、電極(不図示)が突出して設けられている。複数のバッテリーセル50は、好ましくは、筐体41内において、その両側からネジ等を利用して圧縮する方向に力を与えられて、互いに密着するようになっている(不図示)。筐体41の底部42(冷却部位の一例)には、冷却剤45の一例である冷却水を流すために、1または複数の水冷パイプ43が備えられている。冷却剤45は、冷却媒体あるいは冷却材と称しても良い。バッテリーセル50は、隣接するバッテリーセル50との間に、延焼防止部材1を挟むようにして筐体41内に配置されている。
【0040】
このような構造のバッテリー40では、バッテリーセル50は、バッテリーセル50の底部から筐体41の底部42に伝熱して、水冷によって効果的に除熱される。また、バッテリー40は、バッテリーセル50同士の間に延焼防止部材1が配置されるため、1つのバッテリーセル50が異常発熱または発火した場合であっても、ゴムシート12が耐熱シート11に挟まれているため延焼を防止できる。延焼とは、燃焼が広がることをいう。また、耐熱シート11とゴムシート12の貫通孔15とにより形成される空気層(空間S)により、隣接するバッテリーセル50間の熱伝導を低減させることができる。また、バッテリーセル50の充放電時(発熱時)にバッテリーセル50が膨張した場合であっても、延焼防止部材1は、ゴムシート12により、バッテリーセル50の形状に追従することができる。加えて、ゴムシート12に周縁部13を備えることにより、貫通孔15を設けながらも、バッテリーセル50間に延焼防止部材1を挟んだ状態で一体化しやすい。なお、冷却剤45は、冷却水に限定されず、液体窒素、エタノール等の有機溶剤も含むように解釈される。冷却剤45は、冷却に用いられる状況下にて、液体であるとは限らず、気体あるいは固体でも良い。バッテリー40は、延焼防止部材1に代えて、先述の延焼防止部材1a,1b,1c,1dを備えていても良い。
【0041】
3.その他の実施形態
上述のように、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0042】
先述の各実施形態に係る延焼防止部材1,1a,1b,1c,1dにおいて、ゴムシート12は、貫通孔15に代えて、耐熱シート11,11a,11b,11c,11dが積層される一方の面から他方の面に向かって窪む凹部15aを備えていても良い。この場合、ゴムシート12は、その一方の面の周縁部13より内側にのみ凹部15aを備えていても良いし、その両面の周縁部13より内側にそれぞれ凹部15aを備えていても良い。ゴムシート12は、その厚さ方向における凹部15aの大きさに制約はないが、当該厚さ方向における窪みが大きいほど、空間S(空気層)が大きくなるため、断熱性を高めることができる。また、凹部15aは、その個数に制約はなく、少なくとも1以上備えられていれば良い。また、凹部15aは、その断面形状に制約はなく、例えば、多角形、楕円形、半円形、頂点が丸みを帯びた略多角形等であっても良い。
【0043】
また、先述の各実施形態に係る延焼防止部材1,1b,1c,1dにおいて、耐熱シート11,11b,11c,11dに備えられる3つ若しくは4つの接合部5,5a,5b,5cの接合方法は、すべて同一の形態でなくても良い。例えば、延焼防止部材1,1b,1c,1dは、第3実施形態のように凹凸を形成する接合部5aと、第5実施形態のように折り返されて接合される接合部5cと、を備えていても良い。
【0044】
また、第5実施形態に係る延焼防止部材1dでは、耐熱シート11dの接合部5cが、ゴムシート12を挟んで対向する耐熱シート11の接合部5側へ折り返して接合されているが、対向する2つの接合部のうち一方の接合部が他方の接合部側へ折り返されて接合されていれば、その接合方法に制約はない。例えば、延焼防止部材1dにおいて、耐熱シート11,11dは、接合部5,5cがともに接合部5側或いは接合部5c側へ折り返しされていても良い。また、第1実施形態に係る延焼防止部材1において、耐熱シート11は、接合された接合部5同士がいずれか一方の接合部5側へ折り返されていても良い。
【0045】
また、耐熱シート11,11b,11c,11dは、ゴムシート12を包む袋形状を有していればその形態に制約はなく、例えば、ゴムシート12が耐熱シート11,11b,11c,11dにより風呂敷包み状に包まれた形態であっても良い。
【0046】
また、熱源は、バッテリーセル50のみならず、回路基板や電子機器本体などの熱を発する対象物を全て含む。例えば、熱源は、キャパシタおよびICチップ等の電子部品であっても良い。同様に、冷却剤45は、冷却用の水のみならず、有機溶剤、液体窒素、冷却用の気体であっても良い。また、延焼防止部材1,1a,1b,1c,1dは、バッテリー40以外の構造物、例えば、電子機器、家電、発電装置等に配置されていても良い。
【0047】
また、上述の各実施形態の複数の構成要素は、互いに組み合わせ不可能な場合を除いて、自由に組み合わせ可能である。例えば、延焼防止部材1aは、バッテリー40に備えられていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、熱源同士または熱源から他の箇所への延焼防止を行うことが望まれる分野にて利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1,1a,1b,1c,1d・・・延焼防止部材、11,11a,11b,11c,11d・・・耐熱シート、12・・・ゴムシート、13・・・周縁部、14・・・内側の領域、15・・・貫通孔、15a・・・凹部、40・・・バッテリー、41・・・筐体、50・・・バッテリーセル(熱源の一例)。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8