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特開2024-36403マグネットセパレータ、及び磁性スラッジ除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036403
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】マグネットセパレータ、及び磁性スラッジ除去方法
(51)【国際特許分類】
   B03C 1/14 20060101AFI20240308BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20240308BHJP
   B24B 55/03 20060101ALI20240308BHJP
   B24B 55/12 20060101ALI20240308BHJP
   B23Q 11/10 20060101ALI20240308BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
B03C1/14 101
B03C1/00 A
B03C1/00 F
B24B55/03
B24B55/12
B23Q11/10 E
B23Q11/00 U
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024009501
(22)【出願日】2024-01-25
(62)【分割の表示】P 2019209670の分割
【原出願日】2019-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】000145448
【氏名又は名称】住友重機械ファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】西澤 信也
(57)【要約】
【課題】被処理液中の磁性スラッジの含有量が増大しても、磁性スラッジの回収性能の低下や、装置の不具合が生じにくいマグネットセパレータを提供する。
【解決手段】磁性スラッジを含有する被処理液の流れに、マグネットドラムの外周面の一部が浸漬されていり。除去機構が、マグネットドラムの外周面上の磁性スラッジをマグネットドラムの外周面から除去する。磁性スラッジ含有情報取得装置が、被処理液に含有されている磁性スラッジの含有量に関わる磁性スラッジ含有情報を取得する。磁性スラッジ含有情報取得装置で取得された磁性スラッジ含有情報に応じて、制御装置が、マグネットドラムによる磁性スラッジの除去能力を変化させる。マグネットドラムの周速方向が、被処理液の流れの方向と反対である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性スラッジを含有する被処理液の流れに外周面の一部が浸漬され、外周面に磁気力を発生させた状態で回転するマグネットドラムと、
前記マグネットドラムの外周面上の磁性スラッジを前記マグネットドラムの外周面から除去する除去機構と、
前記被処理液に含有されている磁性スラッジの含有量に関わる磁性スラッジ含有情報を取得する磁性スラッジ含有情報取得装置と、
前記磁性スラッジ含有情報取得装置で取得された磁性スラッジ含有情報に応じて、前記マグネットドラムによる磁性スラッジの除去能力を変化させる制御装置と
を有するマグネットセパレータ。
【請求項2】
前記磁性スラッジ含有情報取得装置は、前記被処理液に含有されている磁性スラッジの含有量を測定し、
前記制御装置は、前記磁性スラッジ含有情報取得装置で測定された磁性スラッジの含有量に応じて、前記マグネットドラムによる磁性スラッジの除去能力を変化させる請求項1に記載のマグネットセパレータ。
【請求項3】
前記制御装置は、前記磁性スラッジ含有情報取得装置で測定された磁性スラッジの含有量が増加すると、前記マグネットドラムの回転速度を速めることにより、磁性スラッジの除去能力を高める請求項2に記載のマグネットセパレータ。
【請求項4】
前記制御装置は、前記磁性スラッジ含有情報取得装置で測定された磁性スラッジの含有量が基準下限値を下回ると、前記マグネットドラムの回転を停止させる請求項3に記載のマグネットセパレータ。
【請求項5】
前記制御装置は、前記磁性スラッジ含有情報取得装置で測定された磁性スラッジの含有量が前記基準下限値を下回って前記マグネットドラムの回転を停止させている期間に、断続的に前記マグネットドラムを回転させる請求項4に記載のマグネットセパレータ。
【請求項6】
前記被処理液は研削装置で用いられるクーラント液であり、
前記研削装置は、磁性材料を含むワークの表面を、クーラント液を供給しながら砥石で研削し、研削中に発生した磁性スラッジを含むクーラント液を前記被処理液として排出し、
前記磁性スラッジ含有情報は、前記研削装置の研削条件を含む請求項1に記載のマグネットセパレータ。
【請求項7】
さらに、前記マグネットドラムの外周面に押し付けられて、前記マグネットドラムの回転方向とは反対方向に回転するローラを有し、
前記ローラは、前記マグネットドラムの外周面のうち、前記被処理液に浸漬している箇所から、前記除去機構によって磁性スラッジが除去される箇所までの間の外周面に押し付けられている請求項1乃至6のいずれか1項に記載のマグネットセパレータ。
【請求項8】
マグネットセパレータに流入する被処理液に含有されている磁性スラッジの含有量に関わる磁性スラッジ含有情報を取得し、
取得した磁性スラッジ含有情報に応じて、前記マグネットセパレータによる磁性スラッジの除去能力を変化させるマグネットセパレータ制御装置。
【請求項9】
前記マグネットセパレータは、前記被処理液の流れに外周面の一部が浸漬されて、外周面に磁気力を発生させた状態で回転するマグネットドラムを備えており、
前記マグネットドラムの回転速度を変化させることにより、磁性スラッジの除去能力を変化させる請求項8に記載のマグネットセパレータ制御装置。
【請求項10】
マグネットセパレータに流入する被処理液に含有されている磁性スラッジの含有量に関わる磁性スラッジ含有情報を取得し、
取得した磁性スラッジ含有情報に応じて、前記マグネットセパレータによる磁性スラッジの除去能力を変化させる磁性スラッジ除去方法。
【請求項11】
前記マグネットセパレータは、前記被処理液の流れに外周面の一部が浸漬されて、外周面に磁気力を発生させた状態で回転するマグネットドラムを備えており、
前記マグネットドラムの回転速度を変化させることにより、磁性スラッジの除去能力を変化させる請求項10に記載の磁性スラッジ除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネットセパレータ、マグネットセパレータ制御装置、及び磁性スラッジ除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性スラッジを含有する被処理液から磁性スラッジを取り除く装置として、マグネットセパレータが知られている(特許文献1、特許文献2)。マグネットセパレータでは、回転するマグネットドラムの一部を被処理液に浸漬させて、被処理液中の磁性スラッジを磁気力によってマグネットドラムの外周面に吸着させる。外周面に吸着された磁性スラッジは、マグネットドラムの回転に伴って被処理液から分離される。マグネットドラムの外周面に吸着された磁性スラッジは、被処理液から分離された後、スクレーパ等によってマグネットドラムの外周面からかき取られ、外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-1176号公報
【特許文献2】特開2018-89560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被処理液に含有されている磁性スラッジの含有量が増大すると、磁性スラッジの回収性能の低下や、マグネットドラムへの大量の磁性スラッジの吸着による装置の不具合が発生する場合がある。本発明の目的は、被処理液中の磁性スラッジの含有量が増減しても、磁性スラッジの回収性能の低下や、装置の不具合が生じにくいマグネットセパレータを提供することである。本発明の他の目的は、このマグネットセパレータを制御するマグネットセパレータ制御装置に関する。本発明のさらに他の目的は、被処理液中の磁性スラッジの含有量が増減しても、磁性スラッジの回収性能の低下や、装置の不具合が生じにくい磁性スラッジ除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によると、
磁性スラッジを含有する被処理液の流れに外周面の一部が浸漬され、外周面に磁気力を発生させた状態で回転するマグネットドラムと、
前記マグネットドラムの外周面上の磁性スラッジを前記マグネットドラムの外周面から除去する除去機構と、
前記被処理液に含有されている磁性スラッジの含有量に関わる磁性スラッジ含有情報を取得する磁性スラッジ含有情報取得装置と、
前記磁性スラッジ含有情報取得装置で取得された磁性スラッジ含有情報に応じて、前記マグネットドラムによる磁性スラッジの除去能力を変化させる制御装置と
を有するマグネットセパレータが提供される。
【0006】
本発明の他の観点によると、
マグネットセパレータに流入する被処理液に含有されている磁性スラッジの含有量に関わる磁性スラッジ含有情報を取得し、
取得した磁性スラッジ含有情報に応じて、前記マグネットセパレータによる磁性スラッジの除去能力を変化させるマグネットセパレータ制御装置が提供される。
【0007】
本発明のさらに他の観点によると、
マグネットセパレータに流入する被処理液に含有されている磁性スラッジの含有量に関わる磁性スラッジ含有情報を取得し、
取得した磁性スラッジ含有情報に応じて、前記マグネットセパレータによる磁性スラッジの除去能力を変化させる磁性スラッジ除去方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
磁性スラッジ含有情報に応じて、マグネットドラムによる磁性スラッジの除去能力を変化させることにより、磁性スラッジの回収性能の低下を抑制することができる。磁性スラッジ含有量の増大に伴って除去能力を高めると、マグネットドラムへの大量の磁性スラッジの吸着による装置の不具合が発生しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例によるマグネットセパレータの概略図である。
図2図2は、磁性スラッジの含有量の測定値と、マグネットドラムの回転速度の目標値との関係の一例を示すグラフである。
図3図3は、磁性スラッジの含有量の測定値が基準下限値を下回っている期間のマグネットドラムの回転速度の目標値の時間変化を示すグラフである。
図4図4は、他の実施例による研削システムの概略図である。
図5図5は、さらに他の実施例による研削システムの概略図である。
図6図6は、さらに他の実施例によるマグネットセパレータ、及び研削装置の概略図である。
図7図7は、クーラント液の磁性スラッジ含有量の測定値と、クーラント液の流量の目標値との関係を示すグラフである。
図8図8は、さらに他の実施例によるマグネットセパレータ、及び研削装置の概略図である。
図9図9は、研削条件と、マグネットドラムの回転速度の目標値との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1図3を参照して、実施例によるマグネットセパレータについて説明する。
図1は、実施例によるマグネットセパレータの概略図である。筐体10内に、磁性スラッジ31を含む被処理液30が流れる流路32が画定されている。筐体10は、被処理液30が流入する流入口11と、被処理液30が排出される排出口12とを備えている。筐体10内にマグネットドラム20が配置されている。被処理液30は、流路32の下流端まで達すると排出口12から外部に排出される。
【0011】
マグネットドラム20は、その中心軸が被処理液30の液面と平行になり、被処理液30の流れの方向に対して直交する姿勢で筐体10内に支持されている。マグネットドラム20は、外筒21と、内筒22とを有する。外筒21の外周面の周方向に関する一部分、例えば下側のほぼ半周分が被処理液30に浸漬されている。外筒21は、モータ25によって中心軸を回転中心として回転する。モータ25から外筒21への駆動力の伝達は、例えばスプロケットとチェーンとによって行われる。外筒21の外周面の移動方向(周速方向)は、被処理液30の流れの方向と反対である。
【0012】
内筒22は筐体10に固定されて回転せず、内筒22の外周面に複数の磁石23が周方向に並んで配置されている。磁石23の各々は、内周側の面と外周側の面とに、相互に異なる極性の磁極が現れ、周方向に関しては、S極とN極とが交互に現れるように配置されている。また、磁石23は、周方向に関して、被処理液30に浸漬されている領域、及び浸漬されている領域から外筒21の外周面の周速方向に内筒22の頂上部まで至る領域に配置されている。複数の磁石23は外筒21の外周面に磁束を発生させる。この磁束によって、磁性スラッジ31が外筒21の外周面に吸着される。
【0013】
被処理液30の流路32の底面の一部は、外筒21の外周面から流路32の底面までの径方向の寸法が所定の範囲に収まるように、外筒21の外周面の形状を反映した形状とされている。被処理液30が外筒21の外周面の近傍を流れるとき、磁石23の磁力によって磁性スラッジ31が外筒21の外周面に吸着される。吸着された磁性スラッジ31は、外筒21の回転とともに移動し、被処理液30の液面より上方まで移動することにより被処理液30から分離される。
【0014】
マグネットドラム20の頂上部から周速方向に1/8周程度進んだ位置において、スクレーパ26がマグネットドラム20の外周面に接触している。マグネットドラム20の外周面のうちスクレーパ26が接触している箇所には、磁石23が配置されていない。スクレーパ26は、マグネットドラム20の外周面上の磁性スラッジ31を外周面からかき取る除去機構として機能する。スクレーパ26でかき取られた磁性スラッジ31は、排出路28を通って回収容器29に回収される。
【0015】
マグネットドラム20の外周面と被処理液30の液面との接触箇所から、周速方向に向かって外周面の頂上部に至るまでの位置において、ローラ27がマグネットドラム20の外周面に押し付けられている。ローラ27は、外筒21の回転軸からスプロケットとチェーンとを介して動力が伝達されることにより、外筒21の回転方向とは反対方向に回転する。ローラ27の外周面には弾性体が配置されている。マグネットドラム20の外周面に吸着された磁性スラッジ31が外筒21とローラ27との間を通過する際に、外筒21の外周面に付着している液分が除去される。これにより、液分の少ない磁性スラッジ31を分離回収することができる。
【0016】
ポンプ40が、磁性スラッジ31を含有する被処理液30を筐体10の流入口11に送る。分岐流路42が、ポンプ40から流入口11までのメイン流路41から分岐した後、メイン流路41に合流する。この分岐流路42に検出器43が挿入されている。検出器43は、分岐流路42を流れる被処理液30に含有されている磁性スラッジ31の含有量を測定する。検出器43として、例えばレーザを用いた浮遊物質濃度計を用いることができる。検出器43は、「磁性スラッジ含有量」として、磁性スラッジの重量濃度、体積濃度、または単位体積当たりの粒子数等を測定することができる。メイン流路41を流れる被処理液30の磁性スラッジ31の含有量は、分岐流路42を流れる被処理液30の磁性スラッジ31の含有量とほぼ同一である。検出器43は、被処理液30の磁性スラッジ含有量を測定する「磁性スラッジ含有情報取得装置」として機能する。
【0017】
磁性スラッジ31の含有量の測定値が、制御装置50に入力される。制御装置50は、シーケンサ51とインバータ52とを含む。シーケンサ51は、磁性スラッジ31の含有量の測定値に応じた好ましい回転速度でマグネットドラム20が回転するように、インバータ52を制御する。インバータ52はモータ25に駆動電力を供給する。すなわち、制御装置50は、被処理液30に含まれる磁性スラッジ31の含有量に応じて、マグネットドラム20の回転速度を制御する。
【0018】
図2は、磁性スラッジ31の含有量の測定値と、マグネットドラム20の回転速度の目標値との関係の一例を示すグラフである。横軸は磁性スラッジ31の含有量の測定値を表し、縦軸はマグネットドラム20の回転速度の目標値を表す。磁性スラッジ31の含有量の測定値が基準下限値C1から基準上限値C3までの範囲に収まっているとき、制御装置50は、磁性スラッジ31の含有量の測定値が上昇するに従って、マグネットドラム20の回転速度の目標値を速くする。例えば、ローラ27(図1)が接触している位置おいて、マグネットドラム20の外周面に吸着されている磁性スラッジ31の厚さが目標範囲に収まるように、マグネットドラム20の回転速度の目標値が決められている。磁性スラッジ31の厚さの目標範囲は、例えば、0.5mm以上1mm以下である。
【0019】
磁性スラッジ31の含有量の測定値が基準下限値C1未満になると、マグネットドラム20の回転速度の目標値をゼロにする。すなわち、磁性スラッジ31の含有量の測定値が基準下限値C1未満になると、マグネットドラム20の回転を停止させる。磁性スラッジ31の含有量の測定値が回転開始閾値C2以上になると、マグネットドラム20の回転を再開させる。磁性スラッジ31の含有量の測定値が基準上限値C3を超えると、マグネットドラム20の回転速度の目標値を、モータ25の許容最高回転速度に対応する回転速度に維持する。
【0020】
図3は、磁性スラッジ31の含有量の測定値が基準下限値C1(図2)を下回っている期間のマグネットドラム20の回転速度の目標値の時間変化を示すグラフである。時刻t1において磁性スラッジ31の含有量の測定値が基準下限値C1(図2)未満になると、マグネットドラム20の回転が停止される。その後、磁性スラッジ31の含有量の測定値が回転開始閾値C2以上になるまでの期間、制御装置50がマグネットドラム20を断続的に回転させる。例えば、一定の周期Tが経過するごとにマグネットドラム20を少なくとも1回転させる。
【0021】
次に、図1図3に示した実施例の優れた効果について説明する。
磁性スラッジ31の含有量によらずマグネットドラム20を一定速度で回転させる場合には、磁性スラッジ31の含有量が増大すると、マグネットドラム20の外周面に吸着される磁性スラッジ31の量が多くなる。マグネットドラム20の外周面に吸着された磁性スラッジ31の層が厚くなると、磁性スラッジ31を吸着する磁気力が弱まる。その結果、マグネットドラム20に吸着されず、排出口12から排出されてしまう磁性スラッジ31が多くなる。すなわち、磁性スラッジ31の除去能力が低下してしまう。
【0022】
また、マグネットドラム20の外周面に吸着された磁性スラッジ31の層が厚くなると、マグネットドラム20の外周面に付着している液分の量に対してローラ27(図1)による液分除去能力が不足してしまう。その結果、多くの液分がローラ27を通過してスクレーパ26(図1)まで達してしまい、多くの液分が磁性スラッジ31とともに排出されてしまう。
【0023】
マグネットドラム20の外周面に吸着された磁性スラッジ31の層がさらに厚くなると、マグネットドラム20及びローラ27に過大な負荷がかかる。過大な負荷は、モータ25等の駆動系の故障の原因になる。
【0024】
本実施例では、磁性スラッジ31の含有量が多くなると、マグネットドラム20の回転速度を速めることにより、マグネットドラム20の外周面に吸着された磁性スラッジ31を早期に除去している。その結果、マグネットドラム20の外周面に過剰の磁性スラッジ31が吸着されることによる吸着力の低下が抑制される。このため、磁性スラッジ31の除去能力の低下を防止することができる。さらに、磁性スラッジ31とともに排出されてしまう液分の増加の抑制、駆動系の故障リスクの低減という優れた効果が得られる。
【0025】
さらに、磁性スラッジ31の含有量が基準下限値C1(図2)未満になるとマグネットドラム20の回転を停止させるため、エネルギ消費量を抑制することができる。なお、磁性スラッジ31の含有量が基準下限値C1未満である場合でも、極微量の磁性スラッジ31が含有されている場合には、マグネットドラム20の外周面に徐々に磁性スラッジ31が吸着され、磁性スラッジ31の層が厚くなってしまう。本実施例では、磁性スラッジ31の含有量が基準下限値C1未満の期間にも、断続的にマグネットドラム20を回転させるため、マグネットドラム20の外周面に吸着された磁性スラッジ31の層が過度に厚くなってしまうことを抑制することができる。
【0026】
次に、図1図3に示した実施例の変形例について説明する。
図1図3に示した実施例では、磁性スラッジ含有量が基準上限値C3(図2)を超えた範囲では、マグネットドラム20の回転速度の目標値が一定である。このため、マグネットドラム20の外周面に吸着された磁性スラッジの層が過度に厚くなってしまう状態が生じ得る。本変形例では、磁性スラッジ含有量が基準上限値C3(図2)を超えると、マグネットドラム20へのローラ27(図1)の押し付け力を低減させる。これにより、モータ25に加わる負荷の過度の増大を抑制することができる。これにより、モータ25等の駆動系の故障のリスクをより低減させることができる。
【0027】
また、上記実施例では、スプロケットとチェーンとを用いてローラ27(図1)に動力を伝達し、強制的にローラ27を回転させている。ローラ27に動力を伝達する代わりに、該当21とローラ27との間の摩擦力によってローラ27が回転する構成としてもよい。
【0028】
次に、図4を参照して、他の実施例による研削システムについて説明する。本実施例による研削システムは、研削装置と、図1図3に示した実施例によるマグネットセパレータとを備えている。
【0029】
図4は、本実施例による研削システムの概略図である。研削装置60は、磁性材料を含むワークを、クーラント液を供給しながら砥石で研削する。研削装置60から排出される磁性スラッジを含有するクーラント液が、クーラントタンク61に回収される。ポンプ40が、クーラントタンク61から磁性スラッジを含有するクーラント液を吸い上げ、マグネットセパレータ15に供給する。このクーラント液は、図1図3に示したマグネットセパレータに供給される被処理液に相当する。マグネットセパレータ15で磁性スラッジを除去されたクーラント液が排出口12から排出されてクーラントタンク61に戻される。クーラントタンク61から研削装置60にクーラント液が供給され、再利用される。
【0030】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
マグネットセパレータ15を運転させておくことにより、クーラントタンク61内のクーラント液から磁性スラッジを除去することができる。磁性スラッジが除去されたクーラント液を、研削装置60に供給することができる。ポンプ40で吸い上げられたクーラント液の磁性スラッジ含有量に応じてマグネットドラム20(図1)の回転速度を制御するため、クーラントタンク61内のクーラント液の磁性スラッジ含有量が増加すると、マグネットドラム20の回転速度が速くなり、磁性スラッジ除去能力が高まる。その結果、クーラントタンク61内のクーラント液の磁性スラッジ含有量を迅速に低下させることができる。
【0031】
次に、図5を参照して、さらに他の実施例による研削システムについて説明する。本実施例による研削システムは、研削装置と、図1図3に示した実施例によるマグネットセパレータとを備えている。
【0032】
図5は、本実施例による研削システムの概略図である。研削装置60から排出された磁性スラッジを含有するクーラント液が、ポンプ40を介してマグネットセパレータ15の流入口11に流入する。排出口12から排出されたクーラント液が、バッファタンク62に回収される。バッファタンク62に回収されたクーラント液が研削装置60に供給され、再利用される。
【0033】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
研削装置60から排出されるクーラント液の磁性スラッジ含有量に基づいて、マグネットセパレータ15の磁性スラッジ除去能力を増減させることができる。これにより、十分な磁性スラッジ除去能力を発揮し、磁性スラッジが十分除去されたクーラント液を研削装置60に再供給することができる。
【0034】
次に、図6及び図7を参照して、さらに他の実施例によるマグネットセパレータについて説明する。以下、図1図3に示した実施例と共通の構成については説明を省略する。
【0035】
図6は、本実施例によるマグネットセパレータ、及び研削装置の概略図である。本実施例では、図4に示した実施例と同様に、研削装置60から排出されたクーラント液がクーラントタンク61に回収され、クーラントタンク61内のクーラント液が研削装置60に再供給される。本実施例では、ポンプ40の吐出口からマグネットセパレータ15の流入口11までの流路に、流量調整バルブ44が挿入されている。
【0036】
図1図3に示した実施例では、クーラント液の磁性スラッジ含有量に応じてモータ25の回転速度を調整するが、本実施例では、クーラント液の磁性スラッジ含有量に応じて制御装置50が流量調整バルブ44を制御することにより、マグネットセパレータ15の流入口11に流入するクーラント液の流量を調整する。
【0037】
図7は、クーラント液の磁性スラッジ含有量の測定値と、クーラント液の流量の目標値との関係を示すグラフである。横軸は磁性スラッジ含有量の測定値を表し、縦軸はクーラント液の流量の目標値を表す。制御装置50は、磁性スラッジ含有量の測定値が増加するに従って、クーラント液の流量の目標値を低下させる。例えば、磁性スラッジ含有量の測定値がC4からC5に増加すると、制御装置50は、クーラント液の流量の目標値をF2からF1に低下させる。逆に、磁性スラッジ含有量の測定値がC5からC4に減少すると、制御装置50は、クーラント液の流量の目標値をF1からF2に増加させる。磁性スラッジ含有量の測定値が許容上限値C6を超えると、制御装置50は、クーラント液の流量の目標値をゼロに設定する。すなわち、ポンプ40を停止させる。
【0038】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
クーラント液の磁性スラッジ含有量が過剰になると、図1図3に示した実施例において説明したように、多くの液分が磁性スラッジとともに回収されてしまったり、モータ25等の駆動系の故障のリスクが高まったりする。本実施例では、磁性スラッジ含有量が過度に多くなるとクーラント液の流量を低下させる。クーラント液の流量を低下させることは、マグネットセパレータ15の磁性スラッジ除去能力を低下させることに相当する。このため、マグネットドラム20の外周面に吸着された磁性スラッジの層が過度に厚くなってしまうことが抑制される。これにより、多くの液分が磁性スラッジとともに排出されてしまうことを抑制し、モータ25等の駆動系の故障のリスクを低減させることができる。
【0039】
次に、図8及び図9を参照して、さらに他の実施例によるマグネットセパレータについて説明する。以下、図1図3に示した実施例と共通の構成については説明を省略する。
【0040】
図8は、本実施例によるマグネットセパレータ、及び研削装置の概略図である。本実施例では、図5に示した実施例と同様に、研削装置60から排出されたクーラント液がポンプ40を通ってマグネットセパレータ15の流入口11に流入する。図1図3に示した実施例では、検出器43で検出された被処理液の磁性スラッジ含有量の測定値が制御装置50に入力される。これに対して本実施例では、研削装置60の研削条件が研削装置60の出力部45から制御装置50に入力される。研削条件には、例えばワークへの砥石の切込量、ワークの移動速度等が含まれる。磁性スラッジの発生量がこれらの研削条件に依存するため、これらの研削条件は、クーラント液の磁性スラッジ含有量に関わる磁性スラッジ含有情報ということができる。また、出力部45は、磁性スラッジ含有情報取得部としての機能を持つ。
【0041】
制御装置50は、研削装置60の研削条件に応じて、マグネットドラム20の回転速度の目標値を決定する。
【0042】
図9は、研削条件と、マグネットドラム20の回転速度の目標値との関係の一例を示すグラフである。横軸は、砥石の切込量とワークの移動速度との積を表し、縦軸はマグネットドラム20の回転速度の目標値を表す。砥石の切込量が大きくなるほど磁性スラッジの発生量が増加し、ワークの移動速度が速くなるに従って、単位時間当たりの磁性スラッジの発生量が増加する。すなわち、砥石の切込量とワークの移動速度との積が大きくなるということは、クーラント液の磁性スラッジ含有量が多くなることを意味する。
【0043】
砥石の切込量とワークの移動速度との積が基準上限値G1以下の範囲では、制御装置50は、マグネットドラム20の回転速度の目標値をR1に設定する。砥石の切込量とワークの移動速度との積が基準上限値G1を超えると、マグネットドラム20の回転速度の目標値をR1からR2まで上昇させる。砥石の切込量とワークの移動速度との積がゼロ、すなわち研削が行われていない場合には、マグネットドラム20の回転速度の目標値をゼロに設定することにより、マグネットドラム20の回転を停止させる。
【0044】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
本実施例においても、図1図3に示した実施例と同様に、磁性スラッジの回収性能の低下防止、磁性スラッジとともに排出されてしまう液分の増加の抑制、駆動系の故障リスクの低減という優れた効果が得られる。
【0045】
上記実施例ではマグネットドラムを有するドラム方式のマグネットセパレータを例示したが、磁性スラッジの含有量に応じて磁性スラッジの除去能力を変化させるという技術的思想は、他の構造のマグネットセパレータ、例えば、コンベア方式のマグネットセパレータに適用することも可能である。
【0046】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0047】
10 筐体
11 流入口
12 排出口
15 マグネットセパレータ
20 マグネットドラム
21 外筒
22 内筒
23 磁石
25 モータ
26 スクレーパ
27 ローラ
28 排出路
29 回収容器
30 被処理液
31 磁性スラッジ
32 被処理液の流路
40 ポンプ
41 メイン流路
42 分岐流路
43 検出器
44 流量調整バルブ
45 出力部
50 制御装置
51 シーケンサ
52 インバータ
60 研削装置
61 クーラントタンク
62 バッファタンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性スラッジを含有する被処理液の流れに外周面の一部が浸漬され、外周面に磁気力を発生させた状態で回転するマグネットドラムと、
前記マグネットドラムの外周面上の磁性スラッジを前記マグネットドラムの外周面から除去する除去機構と、
前記被処理液に含有されている磁性スラッジの含有量に関わる磁性スラッジ含有情報を取得する磁性スラッジ含有情報取得装置と、
前記磁性スラッジ含有情報取得装置で取得された磁性スラッジ含有情報に応じて、前記マグネットドラムによる磁性スラッジの除去能力を変化させる制御装置と
を有し、
前記マグネットドラムの周速方向が、前記被処理液の流れの方向と反対であるマグネットセパレータ。
【請求項2】
前記磁性スラッジ含有情報取得装置は、前記被処理液に含有されている磁性スラッジの含有量を測定し、
前記制御装置は、前記磁性スラッジ含有情報取得装置で測定された磁性スラッジの含有量に応じて、前記マグネットドラムによる磁性スラッジの除去能力を変化させる請求項1に記載のマグネットセパレータ。
【請求項3】
前記制御装置は、前記磁性スラッジ含有情報取得装置で測定された磁性スラッジの含有量が増加すると、前記マグネットドラムの回転速度を速めることにより、磁性スラッジの除去能力を高める請求項2に記載のマグネットセパレータ。
【請求項4】
前記制御装置は、前記磁性スラッジ含有情報取得装置で測定された磁性スラッジの含有量が基準下限値を下回ると、前記マグネットドラムの回転を停止させる請求項3に記載のマグネットセパレータ。
【請求項5】
前記被処理液は研削装置で用いられるクーラント液であり、
前記研削装置は、磁性材料を含むワークの表面を、クーラント液を供給しながら砥石で研削し、研削中に発生した磁性スラッジを含むクーラント液を前記被処理液として排出し、
前記磁性スラッジ含有情報は、前記研削装置の研削条件を含む請求項1に記載のマグネットセパレータ。
【請求項6】
被処理液の流れに外周面の一部が浸漬されて、外周面に磁気力を発生させた状態で回転するマグネットドラムを備え、前記マグネットドラムの周速方向が前記被処理液の流れの方向と反対であるマグネットセパレータに流入する前記被処理液に含有されている磁性スラッジの含有量に関わる磁性スラッジ含有情報を取得し、
取得した磁性スラッジ含有情報に応じて、前記マグネットセパレータによる磁性スラッジの除去能力を変化させる磁性スラッジ除去方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、マグネットセパレータ及び磁性スラッジ除去方法に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明の一観点によると、
磁性スラッジを含有する被処理液の流れに外周面の一部が浸漬され、外周面に磁気力を発生させた状態で回転するマグネットドラムと、
前記マグネットドラムの外周面上の磁性スラッジを前記マグネットドラムの外周面から除去する除去機構と、
前記被処理液に含有されている磁性スラッジの含有量に関わる磁性スラッジ含有情報を取得する磁性スラッジ含有情報取得装置と、
前記磁性スラッジ含有情報取得装置で取得された磁性スラッジ含有情報に応じて、前記マグネットドラムによる磁性スラッジの除去能力を変化させる制御装置と
を有し、
前記マグネットドラムの周速方向が、前記被処理液の流れの方向と反対であるマグネットセパレータが提供される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の他の観点によると、
被処理液の流れに外周面の一部が浸漬されて、外周面に磁気力を発生させた状態で回転するマグネットドラムを備え、前記マグネットドラムの周速方向が前記被処理液の流れの方向と反対であるマグネットセパレータに流入する前記被処理液に含有されている磁性スラッジの含有量に関わる磁性スラッジ含有情報を取得し、
取得した磁性スラッジ含有情報に応じて、前記マグネットセパレータによる磁性スラッジの除去能力を変化させる磁性スラッジ除去方法が提供される。