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特開2024-36410表示ドライバー、電気光学装置、電子機器及び移動体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036410
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】表示ドライバー、電気光学装置、電子機器及び移動体
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/36 20060101AFI20240308BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20240308BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 641A
G09G3/20 623E
G09G3/20 631V
G09G3/20 631K
G09G3/20 623R
G09G3/20 621K
G02F1/133 575
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010697
(22)【出願日】2024-01-29
(62)【分割の表示】P 2019125793の分割
【原出願日】2019-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【弁理士】
【氏名又は名称】西河 宏晃
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 亮太
(72)【発明者】
【氏名】村木 勤恭
(57)【要約】
【課題】様々な液晶のVT特性に合わせたデューティー比でPWM駆動を行うことができる表示ドライバー等を提供すること。
【解決手段】表示ドライバー100は、インターフェース回路110とカウンター151とコンパレーター152と第1、第2駆動回路とを含む。インターフェース回路110は、指示情報と、階調数がnである第1、第2表示データとを受信する。カウンター151は、各フレームにおいて、kカウントのカウント動作を行う。コンパレーター152は、指示情報により設定される第1~第nカウント値の各カウント値と、カウンター151が出力したカウント値とを比較することで、第1~第n階調に対応した第1~第nPWM信号を生成する。第1、第2駆動回路は、第1~第nPWM信号から、第1、第2表示データの階調値に対応するPWM信号を選択し、選択されたPWM信号に基づいて第1、第2セグメント駆動信号を出力する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタティック駆動方式の液晶パネルを駆動する表示ドライバーであって、
外部から、指示情報と、階調数がn(nは2以上の整数)である第1表示データ及び第2表示データとを受信するインターフェース回路と、
各フレームにおいて、クロック信号に基づいてkカウント(kはnより大きい整数)のカウント動作を行うカウンターと、
前記指示情報により設定される第1~第nカウント値の各カウント値と、前記カウンターが出力したカウント値とを比較することで、第1~第n階調に対応した第1~第nPWM信号を生成するコンパレーターと、
前記第1~第nPWM信号から、前記第1表示データの階調値に対応するPWM信号を選択し、選択されたPWM信号に基づいて第1セグメント駆動信号を出力する第1駆動回路と、
前記第1~第nPWM信号から、前記第2表示データの階調値に対応するPWM信号を選択し、選択されたPWM信号に基づいて第2セグメント駆動信号を出力する第2駆動回路と、
を含むことを特徴とする表示ドライバー。
【請求項2】
請求項1に記載された表示ドライバーにおいて、
複数のテーブルデータを記憶する記憶部を含み、
前記複数のテーブルデータの各テーブルデータは、前記第1~第n階調に対して前記第1~第nカウント値を対応付けるテーブルデータであり、
前記インターフェース回路は、前記複数のテーブルデータのいずれかを選択する前記指示情報を受信し、
前記コンパレーターは、前記指示情報により選択されるテーブルデータを用いて前記第1~第nPWM信号を出力することを特徴とする表示ドライバー。
【請求項3】
請求項2に記載された表示ドライバーにおいて、
前記記憶部は、前記複数のテーブルデータを予め記憶した不揮発性メモリーであることを特徴とする表示ドライバー。
【請求項4】
請求項1に記載された表示ドライバーにおいて、
第1テーブルデータ及び第2テーブルデータを記憶する記憶部を含み、
前記第1テーブルデータは、第1液晶パネルの電圧透過率特性を補正するように、前記第1~第n階調に対して前記第1~第nカウント値を対応付けるテーブルデータであり、
前記第2テーブルデータは、前記第1液晶パネルとは電圧透過率特性が異なる第2液晶パネルの電圧透過率特性を補正するように、前記第1~第n階調に対して前記第1~第nカウント値を対応付けるテーブルデータであり、
前記インターフェース回路は、前記第1液晶パネル又は前記第2液晶パネルを選択する前記指示情報を受信し、
前記コンパレーターは、前記指示情報により選択されるテーブルデータを用いて前記第1~第nPWM信号を出力することを特徴とする表示ドライバー。
【請求項5】
請求項4に記載された表示ドライバーにおいて、
前記記憶部は、前記第1テーブルデータ及び前記第2テーブルデータを予め記憶した不揮発性メモリーであることを特徴とする表示ドライバー。
【請求項6】
請求項1に記載された表示ドライバーにおいて、
前記インターフェース回路は、前記第1~第n階調に対して前記第1~第nカウント値を対応付けるテーブルデータを前記指示情報として受信することを特徴とする表示ドライバー。
【請求項7】
請求項1に記載された表示ドライバーにおいて、
前記第1~第nカウント値の各カウント値は、前記kカウントのカウント値のいずれかであることを特徴とする表示ドライバー。
【請求項8】
請求項1に記載された表示ドライバーにおいて、
前記第1~第nカウント値は、前記第1~第nPWM信号のデューティー比が液晶パネルの電圧透過率特性を補正するデューティー比となるように、設定されることを特徴とする表示ドライバー。
【請求項9】
請求項1に記載された表示ドライバーにおいて、
前記指示情報に基づいて、前記kカウントのカウント値から前記第1~第nカウント値の各カウント値を選択する選択回路を含み、
前記コンパレーターは、前記選択回路により選択されたカウント値と、前記カウンターが出力したカウント値とを比較することを特徴とする表示ドライバー。
【請求項10】
請求項1に記載された表示ドライバーにおいて、
前記第1駆動回路は、
前記第1~第nPWM信号から、前記第1表示データの階調値に対応するPWM信号を選択する第1階調セレクターと、
前記第1階調セレクターにより選択されたPWM信号に基づいて前記第1セグメント駆動信号を出力する第1セグメント駆動回路と、
を含み、
前記第2駆動回路は、
前記第1~第nPWM信号から、前記第2表示データの階調値に対応するPWM信号を選択する第2階調セレクターと、
前記第2階調セレクターにより選択されたPWM信号に基づいて前記第2セグメント駆動信号を出力する第2セグメント駆動回路と、
を含むことを特徴とする表示ドライバー。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の表示ドライバーと、
前記液晶パネルと、
を含むことを特徴とする電気光学装置。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の表示ドライバーを含むことを特徴とする電子機器。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の表示ドライバーを含むことを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示ドライバー、電気光学装置、電子機器及び移動体等に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルの駆動方式としてPWM階調方式が知られている。この駆動方式では、表示ドライバーが、表示データの階調値に対応したデューティー比のPWM駆動信号を出力することで液晶パネルを駆動する。
【0003】
PWM階調方式の従来技術は例えば特許文献1に開示されている。特許文献1には、液晶のVT特性に合わせて設定されたデューティー比のPWM駆動信号により液晶パネルを駆動する液晶ドライバーが開示されている。VT特性とは、液晶に印加される電圧と液晶の透過率との関係を示す特性である。特許文献1では、液晶ドライバーの駆動対象である特定の液晶パネルに合わせてPWM駆動信号が設定されている。即ち、特許文献1では、特定のVT特性に合わせたPWM駆動信号となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-243560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶のVT特性は、液晶の種類に応じて異なっている。即ち、互いに異なる種類の液晶を採用した複数機種の液晶パネルにおいて、その液晶のVT特性は互いに異なっている。このため、ある液晶パネルに適したPWM駆動信号の波形を設定しても、他の液晶パネルには適切な波形ではないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、スタティック駆動方式の液晶パネルを駆動する表示ドライバーであって、外部から指示情報と表示データを受信するインターフェース回路と、前記指示情報に基づいて、k個のデューティー比データのうちのn個のデューティー比データ(nは、n<kの整数)であるn個の選択デューティー比データを選択する選択回路と、前記n個の選択デューティー比データの中から表示データの階調値に対応する出力用デューティー比データを選択し、選択した前記出力用デューティー比データが示すデューティー比の駆動信号を出力することで前記液晶パネルのPWM駆動を行う駆動回路と、を含む表示ドライバーに関係する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】PWM駆動のデューティー比が等間隔な場合における駆動信号の波形例。
図2】PWM駆動のデューティー比が等間隔な場合における駆動信号の実効電圧と液晶透過率の関係。
図3】表示ドライバーの第1構成例、及び電気光学装置の構成例。
図4】選択回路の動作を説明する図。
図5】選択デューティー比データの設定例。
図6】駆動信号の実効電圧と液晶透過率の関係の第1例。
図7】駆動信号の実効電圧と液晶透過率の関係の第2例。
図8】表示ドライバーの詳細構成例。
図9】表示ドライバーが出力する信号の波形例。
図10】各階調値に対する駆動信号の波形例。
図11】インターフェース回路が受信する指定情報の第1例。
図12】インターフェース回路が受信する指定情報の第2例。
図13】記憶部が記憶するテーブルの例。
図14】温度センサーを用いた表示制御を説明する図。
図15】電子機器の構成例。
図16】移動体の例。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1.構成例
図1図2を用いて、PWM駆動のデューティー比が等間隔な場合における液晶の透過率について説明する。図1は駆動信号の波形例であり、図2は液晶に印加される電圧と液晶の透過率との関係を示す特性例である。なお、液晶に印加される電圧と液晶の透過率との関係を示す特性を、以下ではVT特性と呼ぶ。
【0010】
図1には、階調値0~15に対応した駆動信号を示す。駆動信号は、液晶を駆動するための信号、即ちセグメント信号とコモン信号の電位差信号である。ここでは液晶がノーマリーホワイトであるとし、駆動信号のデューティーがハイデューティーであるとする。階調値0、1、・・・、13、14、15に対応した駆動信号は、それぞれ0/15、1/15、・・・、13/15、14/15、15/15のデューティー比を有する。即ち、図1の例ではデューティー比が等間隔になっている。なお、選択期間の全体において駆動信号がハイレベルである場合をデューティー比100%とする。選択期間の長さは、PWM駆動におけるフレーム周波数の逆数である。フレーム周波数は、極性反転駆動において極性を反転させるレートである。
【0011】
図2には、駆動信号の実効電圧V0~V15と液晶透過率の関係を示す。PWM信号である駆動信号が液晶に印加されたとき、その駆動信号の実効電圧が液晶に印加されたと見なすことができる。即ち、駆動信号の実効電圧に対して透過率が決まる。V0~V15は、階調値0~15に対応した駆動信号の実効電圧である。駆動信号のデューティー比が等間隔であるため、その実効電圧V0~V15も等間隔となる。しかし、液晶のVT特性は印加電圧に対してリニアではないため、等間隔の実効電圧V0~V15に対して透過率は等間隔にならないという課題がある。
【0012】
例えば、印加電圧が低い範囲RA1では透過率が100%付近でほぼ変化せず、印加電圧が高い範囲RA2では透過率が0%付近でほぼ変化しない。このため、階調値0~3、12~15において透過率が変化せず、階調値0~3、12~15が実際には使えない階調値となっている。また、中間階調である階調値3~12においてもVT特性がリニアでないことから、階調値に対して透過率が等間隔にならない。
【0013】
上述したように、特許文献1では駆動信号のデューティー比を特定のVT特性に合わせることで、上記課題に対処している。しかし、特許文献1では、VT特性が異なる液晶に対応するためには、そのVT特性に合わせた表示ドライバーを開発する必要がある。このように、VT特性が異なる液晶毎に、そのVT特性に対応した液晶ドライバーを開発する必要が生じるため、開発コスト又は製品コストが上昇するという課題がある。
【0014】
図3は、本実施形態の表示ドライバー100の第1構成例、及び表示ドライバー100を含む電気光学装置300の構成例である。電気光学装置300は、液晶パネル200と、液晶パネル200を駆動する表示ドライバー100とを含む。
【0015】
液晶パネル200はスタティック駆動方式である。即ち、液晶パネル200は、第1ガラス基板と第2ガラス基板と液晶とを含む。液晶は第1ガラス基板と第2ガラス基板の間に封入されている。第1ガラス基板にセグメント電極が設けられ、第2ガラス基板にコモン電極が設けられる。表示ドライバー100はセグメント電極にセグメント駆動信号を出力し、コモン電極にコモン駆動信号を出力する。これにより、セグメント駆動信号とコモン駆動信号の電位差である駆動信号が、セグメント電極とコモン電極の間の液晶に印加される。
【0016】
表示ドライバー100は、IC(Integrated Circuit)と呼ばれる集積回路装置である。表示ドライバー100は、半導体プロセスにより製造されるICであり、半導体基板上に回路素子が形成された半導体チップである。集積回路装置である表示ドライバー100は、液晶パネル200のガラス基板に実装される。例えば、表示ドライバー100は、セグメント電極が設けられる第1ガラス基板に実装される。或いは表示ドライバー100が回路基板に実装され、その回路基板と液晶パネル200がフレキシブル基板によって接続されてもよい。表示ドライバー100は、インターフェース回路110と選択回路120と駆動回路130とを含む。
【0017】
インターフェース回路110は、外部から指示情報と表示データを受信する。具体的には、インターフェース回路110は、処理装置500と表示ドライバー100の回路間通信を行う。処理装置500は、表示データ及び指示情報を送信し、インターフェース回路110は、その表示データ及び指示情報を受信する。表示データは、液晶セルに表示させる階調を表すデータである。例えば、16階調の表示が可能である場合、表示データがとり得る階調値の範囲は0~15である。1つの液晶セルに1フレームにおいて階調表示させる表示データは、階調値0~15のいずれか1つを示す。以下、この表示データが示す階調値を、表示データの階調値と呼ぶ。指示情報は、表示データがとり得る階調値範囲の各階調値と駆動信号のデューティー比との対応付けを指示する情報である。例えば、インターフェース回路110は、I2C(Inter Integrated Circuit)方式、又はSPI(Serial Peripheral Interface)方式等のシリアルインターフェース回路である。
【0018】
なお、処理装置500は、表示ドライバー100のホスト装置であり、例えばプロセッサー或いは表示コントローラーである。プロセッサーはCPU又はマイクロコンピューター等である。なお、処理装置400は複数の回路部品により構成された回路装置であってもよい。例えば車載電子機器において、処理装置400はECU(Electronic Control Unit)であってもよい。
【0019】
選択回路120は、指示情報に基づいて、k個のデューティー比データのうちのn個のデューティー比データを選択する。この選択されたデューティー比データを選択デューティー比データと呼ぶ。nは、n<kの整数であり、表示データがとり得る階調数に対応する。以下では、k=75、n=16の場合を例に説明する。
【0020】
図4は、選択回路120の動作を説明する図である。デューティー比データD0~D74は、互いに異なる75個のデューティー比に対応する。具体的には、75個のデューティー比データD0~D74は、PWM駆動のデューティー比を等間隔に刻むデータである。即ち、iが0以上74以下の整数であるとき、デューティー比データDiはデューティー比i/74に対応する。
【0021】
選択回路120は、階調値0~15の各階調値に対してデューティー比データD0~D74のいずれかを選択することで、16個の選択デューティー比データを選択する。図4が例えば階調値1に対応した駆動信号である場合、図4は、階調値1に対してデューティー比データD3が選択されていることを示している。各階調値に対してデューティー比データD0~D74のいずれを選択するのかは、指示情報によって任意に設定可能である。
【0022】
なお、図4では75個のデューティー比データD0~D74が等間隔のデューティー比に対応するが、これに限定されず、75個のデューティー比データD0~D74に対応するデューティー比の刻みは、非等間隔であってもよい。
【0023】
駆動回路130は、n個の選択デューティー比データの中から表示データの階調値に対応する出力用デューティー比データを選択し、その選択した出力用デューティー比データが示すデューティー比のPWM駆動により液晶パネル200を駆動する。例えば、表示データの階調値が1であり、階調値1に対応した選択デューティー比データがD3であるとする。D3が示すデューティー比は3/74である。この場合、駆動回路130は、階調値1に対応したD3を出力用デューティー比データとして選択し、その出力用デューティー比データD3に基づいて駆動信号のデューティー比が3/74となるようにセグメント駆動信号とコモン駆動信号を出力する。
【0024】
本実施形態によれば、インターフェース回路110が外部から指示情報を受信し、選択回路120が、指示情報に基づいて75個のデューティー比データから16個の選択デューティー比データを選択する。このように、16個よりも多い75個のデューティー比データを用いることによって、16階調に対応した16個のデューティー比データを任意に設定できる。これにより、任意の液晶におけるVT特性に適したPWM駆動のデューティー比を設定できる。この点について、図5図7を用いて具体的に説明する。
【0025】
図5は、選択デューティー比データの設定例である。図5の例では、階調値0~15に対して非等間隔のデューティー比が設定されている。75のデューティー比データから16個の選択デューティー比データを選択することで、このような非等間隔のデューティー比を選択できる。
【0026】
図6は、駆動信号の実効電圧V0~V15と液晶透過率の関係の第1例である。駆動信号のデューティー比が非等間隔であるため、その実効電圧V0~V15も非等間隔となる。対象とする液晶のVT特性VTB1において、非等間隔の実効電圧V0~V15に対して透過率は等間隔となっている。即ち、階調値0~15に対応する透過率が等間隔となるように、16個の選択デューティー比データが選択されている。75のデューティー比データから16個の選択デューティー比データを選択することで、このような等間隔の透過率を実現できる。
【0027】
より具体的には、印加電圧の変化に対して透過率の変化が大きい領域におけるデューティー比の刻みが、印加電圧の変化に対して透過率の変化が小さい領域におけるデューティー比の刻みよりも小さくなるように、16個の選択デューティー比データが設定される。図6に示すように、透過率の変化が大きい領域はVT特性VTB1の傾きが大きい領域であり、例えば透過率50%付近である。また、透過率の変化が小さい領域はVT特性VTB1の傾きが小さい領域であり、例えば透過率100%付近及び0%付近である。図5及び図6に示すように、透過率50%付近におけるデューティー比の間隔は、透過率100%付近及び0%付近におけるデューティー比の間隔よりも小さい。
【0028】
液晶は、印加電圧に対して透過率が非リニアに変化するVT特性を有している。本実施形態によれば、透過率の傾きが大きいほどデューティー比の刻みが小さく設定されるので、非リニアなVT特性に合わせて透過率が等間隔となるようなデューティー比の刻みを実現できる。
【0029】
図7は、実効電圧V0~V15と液晶透過率の関係の第2例である。VTB2は、図6のVT特性VTB1を有する液晶とは別種類の液晶が有するVT特性の例である。図7では、VT特性VTB2において透過率が等間隔となるように実効電圧V0~V15が設定され、この実効電圧V0~V15を実現するように16個の選択デューティー比データが設定される。VT特性VTB2に適した16個の選択デューティー比データは、VT特性VTB1に適した16個の選択デューティー比データとは異なる。75のデューティー比データから16個の選択デューティー比データを選択することで、このような液晶の種類毎に適した選択デューティー比データを選択できる。例えば図6のVT特性VTB1を有する液晶の実効電圧V0~V15を実現する16個の選択デューティー比データは、D0~D74のうち、D0、D10、D17、D25、・・・、D36、D38、D40、D74の16個が選択デューティー比データ1として選択され、図7のVT特性VTB2を有する液晶の実効電圧V0~V15を実現する16個の選択デューティー比データは、D0~D74のうち、D0、D22、D28、D30、・・・、D50、D74の16個が選択デューティー比データ2として選択される。
【0030】
2.詳細構成例
図8は、表示ドライバー100の詳細構成例である。表示ドライバー100は、インターフェース回路110と駆動回路130と制御回路140とPWM信号生成回路150と表示データRAM160とラインラッチ170と記憶部180と温度センサー190と発振回路195とを含む。既に説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、その構成要素についての説明を適宜に省略する。なお、表示ドライバー100は図5の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。例えば、温度センサー190を省略してもよい。
【0031】
発振回路195はクロック信号を生成し、そのクロック信号を制御回路140に出力する。発振回路195は、例えばRC発振回路、リングオシレーター、又はマルチバイブレーターである。或いは発振回路195は、振動子を発振させる発振回路であってもよい。
【0032】
制御回路140は、発振回路195からのクロック信号に基づいて動作するロジック回路である。制御回路140は、表示タイミングの制御、又は表示ドライバー100の動作設定等を行う。具体的には、制御回路140は、インターフェース回路110が受信した表示データを表示データRAM160に書き込む。また制御回路140は、インターフェース回路110が受信した設定データを記憶部180に書き込む。設定データは、例えばフレーム周波数を指示する情報、又は、上述した選択デューティー比データを指示する指示情報等である。また制御回路140は、クロック信号に基づいて生成した極性反転信号を駆動回路130に出力する。
【0033】
記憶部180は、表示ドライバー100の動作を設定する設定データを記憶する。記憶部180は、例えばレジスター又はメモリーである。メモリーは、SRAM又はDRAM等の揮発性メモリーであってもよいし、EEPROM又はヒューズメモリー等の不揮発性メモリーであってもよい。
【0034】
ラインラッチ170は、1選択期間に表示する表示データを表示データRAM160から読み出し、その読み出した表示データをラッチする。pを1以上の整数とし、表示ドライバー100がセグメント駆動出力をp個有するとする。この場合、ラインラッチ170は、p個のセグメント駆動出力に対応したp個の表示データをラッチする。
【0035】
PWM信号生成回路150は、16個の選択デューティー比データに対応した16個のPWM信号を生成する。PWM信号生成回路150は、選択回路120とカウンター151とコンパレーター152とを含む。
【0036】
制御回路140は、記憶部180から指示情報を読み出し、その指示情報を選択回路120に出力する。選択回路120は、指示情報に基づいて16個の選択デューティー比データを選択する。
【0037】
制御回路140は、クロック信号に基づいてカウント動作用のクロック信号をカウンター151に出力する。カウンター151は、カウント動作用のクロック信号に基づいてカウント動作を行う。具体的には、カウント動作用のクロック信号はフレーム周波数の75倍の周波数である。カウンター151は、選択期間の開始時にリセットされ、選択期間において0から75までカウントする。
【0038】
図8の構成において、選択デューティー比データは、そのデューティー比に対応したカウント値である。コンパレーター152は、カウンター151のカウント値と、選択デューティー比データが示すカウント値とを比較する。コンパレーター152は、カウンター151のカウント値と、選択デューティー比データが示すカウント値とが一致したとき、PWM信号の論理レベルを反転させる。これにより、選択デューティー比データが示すデューティー比のPWM信号が生成される。この動作が16個の選択デューティー比データの各々に対して行われることで、16個のPWM信号が生成される。
【0039】
このように、本実施形態ではPWM駆動のフレーム周波数に階調数16を乗算した値より高い周波数のクロック信号に基づいて、PWM信号が生成される。具体的には、選択可能な75個のデューティー比に対応して、フレーム周波数の75倍の周波数のクロック信号に基づいてPWM信号が生成される。これにより、階調値に対応したデューティー比として、75個のうち任意のデューティー比を選択することが可能となり、様々な液晶のVT特性に合わせてデューティー比を設定することが可能となる。
【0040】
駆動回路130は、ラインラッチ170が出力する表示データと、PWM信号生成回路150が出力するPWM信号とに基づいて、液晶パネル200を駆動する。駆動回路130は、セグメント駆動回路131とコモン駆動回路132と階調セレクター133とを含む。なお図8には、セグメント駆動出力が1出力である場合を図示しているが、セグメント駆動出力は2以上であってもよい。
【0041】
階調セレクター133は、ラインラッチ170が出力する表示データの階調値に対応したPWM信号を、PWM信号生成回路150が出力する16個のPWM信号から選択する。
【0042】
セグメント駆動回路131は、階調セレクター133が出力するPWM信号に基づいてセグメント駆動信号SSEGを出力することで、液晶パネル200のセグメント電極を駆動する。セグメント駆動回路131は、極性反転信号に基づいてPWM信号を極性反転し、その極性反転後の信号をバッファリングすることでセグメント駆動信号SSEGを出力する。例えば、セグメント駆動回路131は、PWM信号を極性反転処理するロジック回路と、セグメント駆動信号SSEGを出力する駆動アンプ回路と、で構成される。
【0043】
コモン駆動回路132は、極性反転信号に基づいてコモン駆動信号SCOMを出力することで、液晶パネル200のコモン電極を駆動する。極性反転信号は、選択期間における極性を示す信号であり、選択期間毎にハイレベルとローレベルが入れ替わる信号である。コモン駆動回路132は、極性反転信号をバッファリングすることでコモン駆動信号SCOMを出力する。例えば、コモン駆動回路132は、コモン駆動信号SCOMを出力する駆動アンプ回路で構成される。
【0044】
温度センサー190は、温度を測定し、その温度検出結果を制御回路140に出力する。温度センサー190は、温度に依存した電圧を温度検出電圧として出力するセンサー回路と、温度検出電圧をA/D変換するA/D変換回路とを含む。
【0045】
センサー回路は、PN接合における順方向電圧の温度依存性を利用することで、温度に依存した電圧を出力する。例えば、センサー回路は、バイポーラートランジスターと、バイポーラートランジスターに定電流を流す定電流回路と、を含み、バイポーラートランジスターのベース-エミッター間電圧に基づいて温度検出電圧を出力する。A/D変換回路は、温度検出電圧のA/D変換データを温度検出結果として制御回路140に出力する。なお、温度センサー190を用いた表示制御については後述する。
【0046】
以下、表示ドライバー100の詳細な動作を説明する。図9は、表示ドライバー100が出力する信号の波形例である。T1は、正極性駆動が行われる選択期間であり、T2は、負極性駆動が行われる選択期間である。以下、T1を正極選択期間と呼び、T2を負極選択期間と呼ぶ。
【0047】
正極選択期間TS1において、コモン駆動信号SCOMは電圧VDRのコモン駆動信号SCOMを出力し、セグメント駆動回路131は、0Vから電圧VDRに遷移するセグメント駆動信号SSEGを出力する。セグメント駆動信号SSEGの遷移タイミングは表示データの階調値に応じて決まる。即ち、セグメント駆動信号SSEGにおいて0Vのデューティー比が、表示データの階調値に対応したデューティー比となる。駆動信号SDRの電圧は、コモン駆動信号SCOMとセグメント駆動信号SSEGの電位差である。駆動信号SDRにおいて、電圧VDRのデューティー比が、表示データの階調値に対応したデューティー比となる。
【0048】
負極選択期間TS2において、コモン駆動信号SCOMは0Vのコモン駆動信号SCOMを出力し、セグメント駆動回路131は、電圧VDRから0Vに遷移するセグメント駆動信号SSEGを出力する。セグメント駆動信号SSEGにおいて電圧VDRのデューティー比が、表示データの階調値に対応したデューティー比となる。これにより、駆動信号SDRにおいて、電圧-VDRのデューティー比が、表示データの階調値に対応したデューティー比となる。
【0049】
図10は、各階調値に対する駆動信号SDRの波形例である。SDR0は、表示データの階調値が0であるときの駆動信号である。同様に、SDR1~SDR15は、表示データの階調値が1~15であるときの駆動信号である。SDR0~SDR15のデューティー比は、選択回路120が75個のデューティー比データから選択した16個の選択デューティー比データによって決まる。
【0050】
図11は、インターフェース回路110が受信する指定情報の第1例である。階調値0~15を2進数で記載する。図11の指示情報は、階調値0000~1111の各々にデューティー比データが対応付けられた情報である。
【0051】
処理装置500は、デューティー比を設定するコマンドと共に、各階調値に対応付けたデューティー比データをインターフェース回路110に送信する。インターフェース回路110は、コマンドと共に受信したデューティー比データを記憶部180に書き込む。これにより、記憶部180には、階調値0000~1111の各々にデューティー比データが対応付けられたテーブルが書き込まれる。選択回路120は、記憶部180からテーブルを読み出すことで、16個の選択デューティー比データを選択する。
【0052】
図12は、インターフェース回路110が受信する指定情報の第2例である。図12の指示情報は、液晶パネル200の機種A、Bに対して機種番号00、01が割り当てられた情報である。或いは、指定情報は、液晶の種類に対して番号を割り当てられた情報であってもよい。
【0053】
図13は、記憶部180が記憶するテーブルの例である。図13のテーブルにおいて、機種番号00に第1テーブルが対応付けられ、機種番号01に第2テーブルが対応付けられている。各テーブルは、階調値0000~1111の各々にデューティー比データが対応付けられたテーブルである。このテーブルは、液晶パネル200の機種毎に適切なデューティー比設定となるように、決められている。図13のテーブルは、例えば表示ドライバー100又は電気光学装置300の製造時において、記憶部180に予め書き込まれる。
【0054】
処理装置500は、液晶パネル200の機種を設定するコマンドと共に、機種番号をインターフェース回路110に送信する。インターフェース回路110は、コマンドと共に受信した機種番号を記憶部180に書き込む。選択回路120は、記憶部180から機種番号を読み出し、その機種番号に対応したテーブルを読み出すことで、16個の選択デューティー比データを選択する。
【0055】
上記第2例によれば、選択回路120は、第1デューティー比データセットと第2デューティー比データセットから、指示情報に対応するデューティー比データセットを選択することで16個のデューティー比データを選択する。選択回路120は、指示情報が第1液晶パネルの駆動を指示する情報であるとき、第1デューティー比データセットを選択し、指示情報が第2液晶パネルの駆動を指示する情報であるとき、第2デューティー比データセットを選択する。第1デューティー比データセットは、第1群の16個のデューティー比データから構成され、第2デューティー比データセットは、第2群の16個のデューティー比データから構成される。図13において、第1デューティー比データセットは機種番号00の第1テーブルに相当し、第2デューティー比データセットは機種番号01の第2テーブルに相当する。
【0056】
このようにすれば、予め準備された複数のデューティー比データセットから、表示ドライバー100に組み合わせた液晶パネル200に適したデューティー比データセットを選択できる。指示情報として液晶パネル200の機種等を指定するだけでよいため、処理装置500が表示ドライバー100にデューティー比を指示する際の処理が簡素化される。
【0057】
図14は、温度センサー190を用いた表示制御を説明する図である。図14に示すように、駆動回路130は、温度センサー190の温度検出結果に基づいて変化するフレーム周波数でPWM駆動を行う。
【0058】
具体的には、温度センサー190は温度検出データを制御回路140に出力する。制御回路140は、温度検出データが温度T1~T16を示すとき、それぞれフレーム周波数をf1~f16に設定する。なお、図14では、フレーム周波数のステップ数が16であるが、これに限定されない。制御回路140は、例えば発振回路195からのクロック信号を分周することで極性反転信号を生成する。制御回路140は、温度検出データに基づいて分周比を設定することで、極性反転信号の周波数、即ちフレーム周波数を設定する。
【0059】
液晶は温度が高いほど、最適コントラストを得る駆動電圧(以下駆動電圧)が低くなる。また表示ドライバー100が出力する駆動信号のデューティー比及びフレーム周波数が変化しないと仮定すると、液晶に印加される実効電圧が変化しないことになる。従って液晶の温度が高いほど、その液晶の駆動電圧に対し印加される実効電圧が相対的に高くなることになる。このため実効電圧が変わらないと、液晶の温度が高いほど、液晶の最適コントラストが得られないことになる。本実施形態では、T1<T2<・・・<T16としたとき、f1<f2<・・・<f16である。即ち、液晶の温度が高いほど、フレーム周波数が高くなる。表示ドライバー100が出力する駆動信号のデューティー比が変化しないと仮定したとき、フレーム周波数が高いほど、液晶に印加される実効電圧が低くなる。このため、温度上昇により液晶の駆動電圧が低下しても、フレーム周波数を上昇させて実効電圧を低下させることによって、液晶の最適コントラストが得られるように調整することができる。
【0060】
3.電子機器、移動体
図15は、本実施形態の表示ドライバー100を含む電子機器600の構成例である。本実施形態の電子機器として、電気光学装置を搭載する種々の電子機器を想定できる。例えば本実施形態の電子機器として、車載装置や、ディスプレイ、プロジェクター、テレビション装置、情報処理装置、携帯型情報端末、カーナビゲーションシステム、携帯型ゲーム端末、DLP(Digital Light Processing)装置等を想定できる。車載装置は、例えばクラスターパネル等の車載表示装置である。クラスターパネルは、運転席の前に設けられ、メーター等が表示される表示パネルである。
【0061】
電子機器600は、処理装置400と表示コントローラー410と電気光学装置300と記憶部320と操作部330と通信部340とを含む。電気光学装置300は、表示ドライバー100と液晶パネル200とを含む。
【0062】
操作部330は、ユーザーからの種々の操作を受け付けるユーザーインターフェースである。例えば、ボタンやマウス、キーボード、タッチパネル等で構成される。通信部340は、表示データ又は制御データ等の通信を行うデータインターフェースである。例えばUSB等の有線通信インターフェースや、或は無線LAN等の無線通信インターフェースである。記憶部320は、通信部340から入力された表示データを記憶する。或は、記憶部320は、処理装置400のワーキングメモリーとして機能する。記憶部180は、半導体メモリー、ハードディスクドライブ又は光学ドライブ等である。処理装置400は、電子機器の各部の制御処理や種々のデータ処理を行う。処理装置400は、通信部340が受信した表示データ、又は記憶部320が記憶している表示データを、表示コントローラー410に転送する。処理装置400はCPU等のプロセッサーである。表示コントローラー410は、受信した表示データを、電気光学装置300が受け付け可能な形式に変換し、その変換された表示データを表示ドライバー100へ出力する。表示ドライバー100は、表示コントローラー410から転送された表示データに基づいて液晶パネル200を駆動する。
【0063】
図16は、本実施形態の表示ドライバー100を含む移動体の構成例である。移動体は、例えばエンジンやモーター等の駆動機構、ハンドルや舵等の操舵機構、各種の電子機器を備えて、地上や空や海上を移動する機器又は装置である。本実施形態の移動体として、例えば、車、飛行機、バイク、船舶、走行ロボット、或いは歩行ロボット等の種々の移動体を想定できる。
【0064】
図16は移動体の具体例としての自動車206を概略的に示している。自動車206には、電気光学装置300と、自動車206の各部を制御する制御装置510と、が組み込まれている。電気光学装置300は、表示ドライバー100と液晶パネル200とを含む。制御装置510は、例えば車速や燃料残量、走行距離、各種装置の設定等の情報をユーザーに提示する表示データを生成し、その表示データを表示ドライバー100に送信する。表示ドライバー100は表示データに基づいて液晶パネル200を駆動する。これにより、情報が液晶パネル200に表示される。
【0065】
以上に説明した表示ドライバーは、スタティック駆動方式の液晶パネルを駆動する。表示ドライバーは、インターフェース回路と選択回路と駆動回路とを含む。インターフェース回路は、外部から指示情報と表示データを受信する。選択回路は、指示情報に基づいて、k個のデューティー比データのうちのn個のデューティー比データであるn個の選択デューティー比データを選択する。駆動回路は、n個の選択デューティー比データの中から表示データの階調値に対応する出力用デューティー比データを選択し、選択した出力用デューティー比データが示すデューティー比の駆動信号を出力することで液晶パネルのPWM駆動を行う。
【0066】
本実施形態によれば、n個よりも多いk個のデューティー比データを用いることによって、n階調に対応したn個のデューティー比データを任意に設定できる。これにより、任意の液晶におけるVT特性に適したPWM駆動のデューティー比を設定できる。即ち、表示ドライバーを再設計することなく、表示ドライバーと様々な液晶パネルを組み合わせることが可能となる。
【0067】
また本実施形態では、n個の選択デューティー比データは、駆動信号の実効電圧の変化に対して液晶パネルの透過率の変化が大きい領域におけるデューティー比の刻みが、実効電圧の変化に対して透過率の変化が小さい領域におけるデューティー比の刻みよりも小さくなるように設定されたデータであってもよい。
【0068】
液晶は、印加電圧に対して透過率が非リニアに変化するVT特性を有している。本実施形態によれば、透過率の傾きが大きいほどデューティー比の刻みが小さく設定されるので、非リニアなVT特性に合わせて透過率が等間隔となるようなデューティー比の刻みを実現できる。
【0069】
また本実施形態では、選択回路は、第1群のn個のデューティー比データから構成される第1デューティー比データセットと、第1群とは異なる第2群のn個のデューティー比データから構成される第2デューティー比データセットとから、指示情報に対応するデューティー比データセットを選択することで、n個の選択デューティー比データを選択してもよい。
【0070】
本実施形態によれば、予め準備された第1のデューティー比データセット及び第2のデューティー比データセットから、表示ドライバーに組み合わせた液晶パネルに適したデューティー比データセットを選択できる。
【0071】
また本実施形態では、選択回路は、指示情報が第1液晶パネルの駆動を指示する情報であるとき、第1デューティー比データセットを選択し、指示情報が第2液晶パネルの駆動を指示する情報であるとき、第2デューティー比データセットを選択してもよい。
【0072】
本実施形態によれば、指示情報として液晶パネルの機種等を指定するだけでデューティー比データセットを指定できるため、外部から表示ドライバーにデューティー比を指示する際の処理が簡素化される。
【0073】
また本実施形態では、駆動回路は、PWM駆動のフレーム周波数にnを乗算した値より高い周波数のクロック信号に基づいてPWM駆動を行ってもよい。
【0074】
これにより、PWM波形の1周期に対応した選択期間を、nより多い数の期間に分割できる。これにより、n個より多いk個のデューティー比データに対応したk個のデューティー比を実現できる。例えば、フレーム周波数のk倍の周波数を有するクロック信号を用いた場合、選択期間がk分割される。このk分割された期間によってk個のデューティー比を実現できる。
【0075】
また本実施形態では、k個のデューティー比データは、PWM駆動のデューティー比を等間隔に刻むデータであってもよい。
【0076】
本実施形態によれば、フレーム周波数のk倍の周波数を有するクロック信号を用いて選択期間をk分割すればよいので、簡素な構成でk個のデューティー比を実現できる。例えば、フレーム周波数のk倍より高い周波数のクロック信号を用意する必要がない。
【0077】
また本実施形態では、駆動回路は、液晶パネルのセグメント電極を駆動してもよい。
【0078】
本実施形態によれば、駆動回路がセグメント電極にPWM波形の信号を出力することで、そのセグメント電極とコモン電極の間の液晶をPWM駆動できる。即ち、コモン電極を極性反転信号で駆動すればよく、コモン電極の駆動を簡素化できる。極性反転信号であるコモン駆動信号と、PWM波形のセグメント駆動信号との電位差によって、PWM波形の駆動信号を実現できる。
【0079】
また本実施形態では、表示ドライバーは、温度センサーを含んでもよい。駆動回路は、温度センサーの温度検出結果に基づいて変化するフレーム周波数でPWM駆動を行ってもよい。
【0080】
本実施形態によれば、温度上昇による駆動信号の実効電圧上昇を、フレーム周波数上昇による駆動信号の実効電圧低下によって、低減できる。これにより、温度変化による階調変動を抑制できる。
【0081】
また本実施形態の電気光学装置は、上記のいずれかに記載の表示ドライバーと、液晶パネルと、を含む。
【0082】
また本実施形態の電子機器は、上記のいずれかに記載の表示ドライバーを含む。
【0083】
また本実施形態の移動体は、上記のいずれかに記載の表示ドライバーを含む。
【0084】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また表示ドライバー、液晶パネル、電気光学装置、電子機器及び移動体等の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0085】
100…表示ドライバー、110…インターフェース回路、120…選択回路、130…駆動回路、131…セグメント駆動回路、132…コモン駆動回路、133…階調セレクター、140…制御回路、150…PWM信号生成回路、151…カウンター、152…コンパレーター、160…表示データRAM、170…ラインラッチ、180…記憶部、190…温度センサー、195…発振回路、200…液晶パネル、206…自動車、300…電気光学装置、320…記憶部、330…操作部、340…通信部、400…処理装置、410…表示コントローラー、500…処理装置、510…制御装置、600…電子機器、D0~D74…デューティー比データ、SCOM…コモン駆動信号、SDR…駆動信号、SSEG…セグメント駆動信号、TS1…正極選択期間、TS2…負極選択期間、V0~V15…実効電圧、VTA,VTB1,VTB2…VT特性
図1
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