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特開2024-3642電子部品およびその製造方法、フィルタ並びにマルチプレクサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003642
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】電子部品およびその製造方法、フィルタ並びにマルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20240105BHJP
   H03H 3/08 20060101ALI20240105BHJP
   H03H 9/64 20060101ALI20240105BHJP
   H03H 9/72 20060101ALI20240105BHJP
   H03H 3/02 20060101ALI20240105BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20240105BHJP
   H03H 9/02 20060101ALI20240105BHJP
   H03H 9/54 20060101ALI20240105BHJP
   H03H 9/70 20060101ALI20240105BHJP
   H01L 23/06 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H03H3/08
H03H9/64 Z
H03H9/72
H03H9/25 C
H03H3/02 B
H03H9/17 F
H03H9/02 A
H03H9/54 Z
H03H9/70
H01L23/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102923
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】丸屋 優樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 亮太
【テーマコード(参考)】
5J097
5J108
【Fターム(参考)】
5J097AA24
5J097AA29
5J097BB02
5J097BB11
5J097BB15
5J097EE08
5J097FF04
5J097GG03
5J097GG04
5J097HA04
5J097HA07
5J097HA08
5J097JJ06
5J097JJ07
5J097KK10
5J108AA07
5J108BB08
5J108GG03
5J108GG07
5J108GG14
5J108GG15
5J108KK04
5J108MM01
(57)【要約】
【課題】リッドの撓みを抑制することが可能な電子部品を提供する。
【解決手段】電子部品は、基板10と、基板10上に設けられた機能素子と、基板10上方に設けられたリッド20と、リッド20と基板10とを接合し、リッド20とで機能素子を空隙26に封止し、基板10に接合する第1領域33における基板10の中心37側の第1端34aとリッド20に接合する第2領域35における基板10の中心37側の第2端36aとの平面視における第1距離L2は、第1領域33における基板10の中心37の反対側の第3端34bと第2領域35における基板10の中心37の反対側の第4端36bとの平面視における第2距離L4より大きく、第1端34aと第2端36aとの間の位置における厚さは、第1端34aにおける厚さより小さく第2端36aにおける厚さより大きい環状層とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた機能素子と、
前記基板上方に設けられたリッドと、
前記リッドと前記基板とを接合し、前記リッドとで前記機能素子を空隙に封止し、前記基板に接合する第1領域における前記基板の中心側の第1端と前記リッドに接合する第2領域における前記基板の前記中心側の第2端との平面視における第1距離は、前記第1領域における前記基板の前記中心の反対側の第3端と前記第2領域における前記基板の前記中心の反対側の第4端との平面視における第2距離より大きく、前記第1端と前記第2端との間の位置における厚さは、前記第1端における厚さより小さく前記第2端における厚さより大きい環状層と、
を備える電子部品。
【請求項2】
前記第1距離は、前記基板の前記中心と前記第1端との平面視における第3距離の0.1倍以上かつ0.7倍以下である請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記第1距離は前記第2距離の2.5倍以上である請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記第2領域の前記環状層が延びる方向に直交する方向における幅は前記第1領域の前記直交する方向における幅の2倍以上である請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項5】
前記環状層の厚さは前記第1端から前記第2端に向かうにしたがい徐々に小さくなる請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項6】
前記環状層の前記空隙側の面は前記リッドの方に凹む曲面である請求項5に記載の電子部品。
【請求項7】
前記リッドは、強磁性元素を含む請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項8】
前記環状層は金属層である請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項9】
前記基板と前記リッドとに接合し、平面視において前記空隙に囲まれた柱状体を備える請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項10】
前記機能素子は弾性波素子である請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項11】
請求項10に記載の電子部品を備えるフィルタ。
【請求項12】
請求項11に記載のフィルタを備えるマルチプレクサ。
【請求項13】
表面に機能素子が設けられた基板上に、前記機能素子を覆い、前記機能素子を囲む前記基板の環状領域に設けられておらず、周縁領域の厚さが内側に行くにしたがい小さくなり、前記周縁領域における表面が外側に膨らむ曲面である犠牲層を形成する工程と、
前記基板および前記犠牲層上に、前記基板の前記環状領域の少なくとも前記機能素子側の領域から前記犠牲層の前記周縁領域にかけて開口を有し、前記犠牲層の中央領域に設けられるマスク層を形成する工程と、
前記マスク層の開口内に前記基板に接合する環状層を形成する工程と、
前記マスク層および前記犠牲層を除去する工程と、
前記環状層とで前記機能素子を空隙に封止するリッドを前記環状層に接合する工程と、
を含む電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品およびその製造方法、フィルタ並びにマルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に弾性波素子等の機能素子を設け、機能素子を囲むように基板上に環状層を設け、環状層上にリッドを接合することで、リッドと環状層により機能素子を空隙に封止する電子部品が知られている。環状層内の空隙に囲まれ、基板とリッドとを接続する柱状体を設けることが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-52359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リッドに圧力が加わったときにリッドが撓み、リッドと機能素子との距離が近づくと、機能素子の特性が劣化する。特許文献1のように柱状体を設けることで、リッドの撓みを抑制できる。しかしながら、柱状体を設けると、基板の上面に機能素子を設ける領域を設けるため電子部品が大型化する。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、リッドの撓みを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板と、前記基板上に設けられた機能素子と、前記基板上方に設けられたリッドと、前記リッドと前記基板とを接合し、前記リッドとで前記機能素子を空隙に封止し、前記基板に接合する第1領域における前記基板の中心側の第1端と前記リッドに接合する第2領域における前記基板の前記中心側の第2端との平面視における第1距離は、前記第1領域における前記基板の前記中心の反対側の第3端と前記第2領域における前記基板の前記中心の反対側の第4端との平面視における第2距離より大きく、前記第1端と前記第2端との間の位置における厚さは、前記第1端における厚さより小さく前記第2端における厚さより大きい環状層と、を備える電子部品である。
【0007】
上記構成において、前記第1距離は、前記基板の前記中心と前記第1端との平面視における第3距離の0.1倍以上かつ0.7倍以下である構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記第1距離は前記第2距離の2.5倍以上である構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記第2領域の前記環状層が延びる方向に直交する方向における幅は前記第1領域の前記直交する方向における幅の2倍以上である構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記環状層の厚さは前記第1端から前記第2端に向かうにしたがい徐々に小さくなる構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記環状層の前記空隙側の面は前記リッドの方に凹む曲面である構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記リッドは、強磁性元素を含む構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記環状層は金属層である構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記基板と前記リッドとに接合し、平面視において前記空隙に囲まれた柱状体を備える構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記機能素子は弾性波素子である構成とすることができる。
【0016】
本発明は、上記電子部品を備えるフィルタである。
【0017】
本発明は、上記フィルタを備えるマルチプレクサである。
【0018】
本発明は、表面に機能素子が設けられた基板上に、前記機能素子を覆い、前記機能素子を囲む前記基板の環状領域に設けられておらず、周縁領域の厚さが内側に行くにしたがい小さくなり、前記周縁領域における表面が外側に膨らむ曲面である犠牲層を形成する工程と、前記基板および前記犠牲層上に、前記基板の前記環状領域の少なくとも前記機能素子側の領域から前記犠牲層の前記周縁領域にかけて開口を有し、前記犠牲層の中央領域に設けられるマスク層を形成する工程と、前記マスク層の開口内に前記基板に接合する環状層を形成する工程と、前記マスク層および前記犠牲層を除去する工程と、前記環状層とで前記機能素子を空隙に封止するリッドを前記環状層に接合する工程と、を含む電子部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、リッドの撓みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1(a)および図1(b)は、実施例1に係る弾性波デバイスの断面図および平面図である。
図2図2は、実施例1における弾性波素子の平面図である。
図3図3(a)から図3(c)は、実施例1における弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
図4図4(a)および図4(b)は、実施例1における弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
図5図5(a)および図5(b)は、実施例1における弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
図6図6(a)および図6(b)は、実施例1における弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
図7図7は、実施例1における弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
図8図8(a)および図8(b)は、シミュレーション1におけるマルチプレクサの通過特性を示す図である。
図9図9(a)および図9(b)は、シミュレーション2における弾性波デバイスの断面図である。
図10図10(a)から図10(c)は、シミュレーション2の結果を示す図である。
図11図11(a)および図11(b)は、それぞれ実施例1の変形例1および2に係る弾性波デバイスの断面図である。
図12図12(a)および図12(b)は、比較例1に係る弾性波デバイスの断面図である。
図13図13(a)および図13(b)は、それぞれ実施例1の変形例1および2に係る弾性波デバイスの断面図である。
図14図14(a)および図14(b)は、実施例1の変形例3に係る弾性波デバイスの断面図および平面図である。
図15図15(a)および図15(b)は、実施例1の変形例4に係る弾性波デバイスの断面図および平面図である。
図16図16(a)は、実施例1の変形例5に係る弾性波デバイスの断面図、図16(b)は、実施例1の変形例5における弾性波素子の断面図である。
図17図17(a)は、実施例2に係るフィルタの回路図、図17(b)は、実施例2の変形例1に係るデュプレクサの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し本発明の実施例について説明する。
【実施例0022】
実施例1は、電子部品として、機能素子として弾性波素子を有する弾性波デバイスの例である。図1(a)および図1(b)は、実施例1に係る弾性波デバイスの断面図および平面図である。図1(a)は、図1(b)のA-A断面に相当する。図1(b)では、弾性波素子12、金属層14、ビア配線16および端子18の図示を省略している。図1(a)と図1(b)との各部材の寸法は必ずしも対応していない。基板10の厚さ方向をZ方向、基板10の平面方向をX方向およびY方向とする。
【0023】
図1(a)および図1(b)に示すように、基板10は、支持基板10aと、支持基板10a上に設けられた圧電層10cと、支持基板10aと圧電層10cとの間に設けられた絶縁層10bと、を備えている。圧電層10c上に機能素子として弾性波素子12および金属層14が設けられている。弾性波素子12は例えば弾性表面波素子である。金属層14は、弾性波素子12に電気的に接続された配線およびパッドとして機能する。基板10の周縁領域および基板10のビア配線16が設けられた領域において、圧電層10cおよび絶縁層10bが除去されており、基板10の上面は支持基板10aの上面である。ビア配線16は、支持基板10aを貫通する。基板10の下面に端子18が設けられている。ビア配線16は金属層14と端子18とを交流または直流で電気的に接続する。
【0024】
基板10の周縁部における支持基板10a上に、弾性波素子12を囲むように環状層30が設けられている。環状層30は、基板10上に設けられた金属層30aと金属層30a上に設けられた金属層30bとを備える。環状層30とリッド20とは接合層24により接合されている。リッド20および環状層30は、弾性波素子12を空隙26に封止する。環状層30が金属層であり、リッド20が金属板の場合、環状層30にビア配線を介しグランド電位を供給することで、環状層30およびリッド20はシールドとして機能する。
【0025】
環状層30が基板10(支持基板10a)に接合する領域は領域33であり、環状層30がリッド20に接合する領域は領域35である。領域35は、接合層24を挟み環状層30とリッド20とが対向する領域である。領域33の内側(すわなち基板10の中心37側)の端は端34aであり、外側(すなわち基板の中心37の反対側)の端は34bである。領域35の内側の端は端36aであり、外側の端は36bである。環状層30の内側の面は38aであり、外側の面は38bである。面38aは、環状層30側に凹むような曲面である。環状層30のうち端34aと端36aとの間の部分は突き出し部分31である。面38bは支持基板10aの上面に対しほぼ垂直または若干傾斜している。平面視において、端36bと端34bとはほぼ一致する。
【0026】
支持基板10aは、例えばサファイア基板、アルミナ基板、石英基板、水晶基板、スピネル基板、SiC基板またはシリコン基板である。絶縁層10bは、例えば酸化シリコン層、酸化アルミニウム層、窒化シリコン層もしくは窒化アルミニウム層の単層またはこれらの層の積層である。圧電層10cは、例えば単結晶タンタル酸リチウム基板、単結晶ニオブ酸リチウム基板または単結晶水晶基板等の圧電基板である。単結晶タンタル酸リチウム基板および単結晶ニオブ酸リチウム基板は、例えば回転YカットX伝搬基板である。金属層14、ビア配線16および端子18は、例えば銅層、金層、銀層、チタン層、ニッケル層、タングステン層等の金属層の単層またはこれらの層の積層である。リッド20は、例えばコバール等の金属層、または、例えばサファイア基板、アルミナ基板、石英基板、水晶基板、スピネル基板、SiC基板またはシリコン基板等の絶縁層である。リッド20の下面に別の機能素子が設けられていてもよい。この場合、別の機能素子は空隙26に封止される。
【0027】
接合層24は、例えば金錫はんだ、錫銀はんだまたは錫銀銅はんだである。金属層30aは、シールドとして機能させる場合には、抵抗率の低い材料を用いることが好ましく、例えば銅層または金層等である。金属層30bは、接合層24と金属層30aとの間の元素の拡散を抑制するためのバリア層であり、例えばニッケル層である。金属層30bは設けられていなくてもよい。金属層30aの抵抗率は金属層30bの抵抗率より低い。金属層30aの厚さは金属層30bの厚さの例えば5倍以上である。環状層30は樹脂層等の絶縁層でもよい。接合層24とリッド20とが接合しにくい場合、リッド20の下面に接合層24が接合しやすい金属層(例えば金層)を設けてもよい。
【0028】
図2は、実施例1における弾性波素子の平面図である。図2に示すように、弾性波素子12は弾性表面波共振器またはLamb波共振器である。圧電層10c上にIDT(Interdigital Transducer)40と反射器42が形成されている。IDT40は、互いに対向する1対の櫛型電極40aを有する。櫛型電極40aは、複数の電極指40bと複数の電極指40bを接続するバスバー40cとを有する。反射器42は、IDT40の両側に設けられている。IDT40は圧電層10cに弾性表面波を励振する。弾性波の波長は一対の櫛型電極40aの一方の櫛型電極40aの電極指40bのピッチにほぼ等しい。すなわち、弾性波の波長は一対の櫛型電極40aの電極指40bのピッチの2倍にほぼ等しい。IDT40および反射器42は例えばアルミニウム膜、銅膜またはモリブデン膜により形成される。圧電層10c上にIDT40および反射器42を覆うように保護膜または温度補償膜が設けられていてもよい。弾性波素子12は、弾性波を励振する電極を含む。このため、弾性波を制限しないように、弾性波素子12は空隙26に覆われている。
【0029】
[実施例1の製造方法]
図3(a)から図7は、実施例1における弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。図3(a)に示すように、支持基板10a上に絶縁層10bを形成する。絶縁層10b上に圧電層10cを接合する。支持基板10aは例えばサファイア基板である。絶縁層10bは例えば酸化アルミニウム層と酸化アルミニウム層上に設けられた酸化シリコン層である。圧電層10cは例えばタンタル酸リチウム層である。圧電層10c上に弾性波素子12を形成する。基板10の所定領域の圧電層10cおよび絶縁層10bを除去する。圧電層10cおよび絶縁層10bが除去された領域の支持基板10aにビア配線16を形成する。基板10および圧電層10c上に金属層14を形成する。
【0030】
図3(b)に示すように、支持基板10a上に絶縁層10b、圧電層10c、弾性波素子12および金属層14を覆うように犠牲層50を形成する。犠牲層50は例えばフォトレジストである。図3(c)に示すように、犠牲層50に開口51を形成する。犠牲層50がフォトレジストの場合、開口51は例えば露光および現像により形成する。開口51は、基板10において、弾性波素子12を囲む領域57に設けられる。犠牲層50の中央領域58では、犠牲層50の厚さはほぼ一定であり、犠牲層50の周縁領域56では、犠牲層50の表面は、内側に向かうにしたがい犠牲層50の厚さが大きくなるような曲面である。例えば犠牲層50がフォトレジストの場合、熱処理することにより犠牲層50の表面が曲面となる。
【0031】
図4(a)に示すように、支持基板10aおよび犠牲層50上にシード層30cを形成する。シード層30cはめっきのシードとなる層であり、例えば基板10側からチタン層および銅層である。シード層30c上にマスク層52を形成する。マスク層52は例えばフォトレジストである。図4(b)に示すように、マスク層52に開口53を形成する。開口53は、領域57から周縁領域56にかけて設けられ、中央領域58のマスク層52は残存する。マスク層52がフォトレジストの場合、開口51は例えば露光および現像により形成する。
【0032】
図5(a)に示すように、シード層30cから電流を供給し電界めっき法を用い開口53内に金属層30a、30bおよび接合層24を形成する。金属層30aは例えば銅層、金属層30bは例えばニッケル層、接合層24は例えば金錫層である。マスク層52の側面が基板10の上面の法線方向に対し傾斜している場合、環状層30および接合層24の側面の一部は基板10の上面の法線方向に対し傾斜する。電界めっき法の条件により、金属層30a、30bおよび接合層24の各々の上面の中央部が上方向に突出する曲面状となることもある。図5(b)に示すように、マスク層52を除去する。接合層24および金属層30bおよび30aをマスクにシード層30cを除去する。これにより、金属層30a、30bおよびシード層30cにより環状層30が形成される。環状層30の内側の面38aは犠牲層50の開口51に沿った曲面となり、環状層30の外側の面38bはマスク層52の開口53の側面に沿った面となる。図1(a)等ではシード層30cの図示を省略している。
【0033】
図6(a)に示すように、接合層24が融点以上の温度となるように、基板10を加熱する。上方からリッド20を接合層24に押し当てる。接合層24はリッド20に接合する。リッド20および環状層30により、弾性波素子12は空隙26に封止される。リッド20は例えばコバール層である。図6(b)に示すように、支持基板10aの下面を例えば研削または研磨する。これにより、支持基板10aが薄膜化し、ビア配線16が支持基板10aの下面から露出する。支持基板10aの下面にビア配線16に接続する端子18を形成する。
【0034】
図7に示すように、リッド20および基板10を矢印54のように切断する。切断には、レーザダイシング法またはブレードを用いたダイシング法を用いる。以上により、実施例1における弾性波デバイスが製造される。
【0035】
[シミュレーション1]
弾性波デバイスを、モールド樹脂を用い封止するときには、リッド20に圧力が加わる。このように、リッド20に圧力が加わるとリッドが撓み、リッド20が弾性波素子12に近づく。これにより、弾性波素子12の特性が劣化することがある。弾性波素子12を用いたマルチプレクサが圧電層10cの上面に形成されている場合に、リッド20と圧電層10cとの距離を変え、マルチプレクサの特性をシミュレーションした。
【0036】
シミュレーション1では、マルチプレクサとして、LTE(Long Term Evolution)のバンド7用の受信フィルタと送信フィルタを有するデュプレクサとした。受信フィルタおよび送信フィルタは圧電層10cとしてタンタル酸リチウム層を用いた弾性表面波共振器を有するラダー型フィルタとした。リッド20を厚さが20μmのコバール(鉄、ニッケルおよびコバルトの合金)とした。圧電層10cの上面とリッド20の下面との距離Dを3.8μm、8.8μmおよび58.8μmとした。リッド20はグランド電位として、リッド20内の強磁性元素(鉄、ニッケルおよびコバルト)による影響も考慮した。
【0037】
図8(a)および図8(b)は、シミュレーション1におけるマルチプレクサの通過特性を示す図である。図8(b)は、図8(a)の拡大図である。図8(a)および図8(b)は、送信フィルタTxFおよび受信フィルタRxFの通過特性を示している。TxBはバンド7の送信帯域を示し、RxBはバンド7の受信帯域を示す。図8(a)および図8(b)に示すように、送信帯域TxBおよび受信帯域RxBは、それぞれ送信フィルタTxFの通過帯域および受信フィルタRxFの通過帯域と重なる。距離Dが58.8μmでは、送信フィルタTxFおよび受信フィルタRxFともに通過帯域の挿入損失は小さい。距離Dが8.8μmとなると、送信フィルタTxFおよび受信フィルタRxFともに通過帯域内の挿入損失が大きくなりリップルRiが形成される。距離Dが3.8μmとなると、送信フィルタTxFおよび受信フィルタRxFともに通過帯域内のリップルRiがより大きくなる。
【0038】
リッド20がマルチプレクサに近づくと送信フィルタTxFおよび受信フィルタRxFともに通過帯域内の挿入損失が大きくなる理由としては、リッド20の強磁性元素に起因する磁界の影響と考えられる。また、リッド20とマルチプレクサとの間の寄生容量の影響も考えられる。
【0039】
シミュレーション1のように、リッド20が強磁性元素を含む場合には、強磁性元素に起因した磁界の影響により、リッド20が弾性波素子12に近づくと弾性波素子12の特性が劣化する。リッド20が金属の場合には、リッド20と弾性波素子12との間の寄生容量により、リッド20が弾性波素子12に近づくと弾性波素子12の特性が劣化する。また、リッド20が弾性波素子12に接触すると弾性波素子12がショートする。リッド20が絶縁体の場合には、リッド20が弾性波素子12に接触すると弾性波素子12が破壊される可能性がある。
【0040】
[シミュレーション2]
リッド20に圧力が加わった場合のリッド20および環状層30と圧電層10cとの距離を、2次元有限要素法を用いシミュレーションした。図9(a)および図9(b)は、シミュレーション2における弾性波デバイスの断面図である。図9(a)は、リッド20に圧力を加える前を示し、図9(b)は、リッド20に圧力を加えた状態を示す。図9(a)および図9(b)に示すように、シミュレーション2では、基板10およびリッド20の中心37を通る直線を鏡面条件とし、X方向における弾性波デバイスの半分の領域においてシミュレーションした。絶縁層10bは設けられていない。
【0041】
図9(a)のように、リッド20に圧力を加える前では、支持基板10aの厚さはT10a、圧電層10cの厚さはT10cである。支持基板10aのX方向の長さ(支持基板10aの中心37と支持基板10aの端との距離)はL0である。環状層30が支持基板10aに接合する領域33の幅はWaである。環状層30がリッド20に接合する領域35の幅はWbである。領域33の中心37側の端34aと中心37とのX方向における距離はL1である。領域33の中心37側の端34aと領域35の中心37側の端36aとのX方向における距離(すなわち突き出し部分31の幅)はL2である。端34aと圧電層10cの+X側の端39との距離はL3である。金属層30aの端34aにおける厚さはTaである。金属層30aの端36aにおける厚さはTbである。端34aと36aとの中点(端34aからL2/2の箇所)における金属層30aの厚さはTdである。金属層30b、接合層24およびリッド20の厚さは、それぞれT30b、T24およびT20である。中心37における圧電層10cの上面とリッド20の下面とのギャップはG1aである。端36aにおける圧電層10cの上面と金属層30bの下面とのギャップはG2aである。圧電層10cの端39における圧電層10cの上面と金属層30aの下面とのギャップはG3aである。
【0042】
図9(b)に示すように、矢印55のようにリッド20の上面に一様に圧力を加える。圧力により、リッド20および環状層30が変形する。変形後において、中心37における圧電層10cの上面とリッド20の下面とのギャップはG1bである。端36aにおける圧電層10cの上面と金属層30bの下面とのギャップはG2bである。端39における圧電層10cの上面と金属層30aの下面とのギャップはG3bである。
【0043】
シミュレーション2での各部材の寸法および材料は以下である。
支持基板10a:長さL0は492μm、厚さT10aは75μm、材料は単結晶サファイア
圧電層10c:厚さT10cは6μm、材料はタンタル酸リチウム、距離L3は10.5μm
金属層30a:厚さTaが27μm、幅Waは26μm、L1は466μm、材料は銅
金属層30b:厚さT30bは2.5μm、材料はニッケル
接合層24:厚さT24は5μm、材料は金錫
リッド20:長さL0は492μm、厚さT20は30μm、材料はコバール
金属層30aの面38aの断面は楕円の1/4となるようにした。
【0044】
各材料のヤング率、ポアソン比、体積弾性率およびせん断弾性係数を表1とした。
【表1】
【0045】
金属層30aの端36aにおける厚さTbを1μm、2μm、4μmおよび6μmと変化させ、距離比L2/L1を0.2から0.65まで変え、シミュレーションを行った。リッド20の上面に一様に加わる圧力を3MPa、中心37を鏡面条件、領域33を固定条件とし、弾性変形のみ考慮してシミュレーションを行った。領域33を固定条件としているため、基板10の変形は考慮されていない。
【0046】
図10(a)から図10(c)は、シミュレーション2の結果を示す図である。図10(a)は、ギャップG1a、G1bおよびΔG1=G1a-G1bを示し、図10(b)は、ギャップG2a、G2bおよびΔG2=G2a-G2bを示し、図10(c)は、ギャップG3a、G3bおよびΔG3=G3a-G3bを示す。空白の欄はシミュレーションを行っていない。
【0047】
図10(a)に示すように、厚さTbのいずれの場合にも、L2/L1を大きくするとΔG1は小さくなる。すなわち、L2/L1を大きくするとリッド20の変形後のリッド20と圧電層10cとのギャップG1bが大きくなる。いずれのL2/L1の場合でも、厚さTbを大きくすると、ΔG1は小さくなり、G1bは大きくなる。このように、ギャップG1bを大きくする観点から、L2/L1は大きく、厚さTbは大きい方がよい。リッド20が強磁性元素を含む場合、シミュレーション1のように、ギャップG1bは大きい方がよい。例えばギャップG1bを15μm以上とするためにはL2/L1は0.25以上が好ましい。
【0048】
図10(b)に示すように、厚さTbのいずれの場合にも、L2/L1を大きくするとΔG2は大きくなり、ギャップG2bが小さくなる。いずれのL2/L1の場合でも、厚さTbを大きくすると、ΔG2は小さくなり、G2bは大きくなる。このように、ギャップG2bを大きくする観点から、L2/L1は小さく、厚さTbは大きい方がよい。これは、L2/L1が大きくなると、端36aの位置が中心37に近づくためである。金属層30bが強磁性元素を含む場合、シミュレーション1のように、ギャップG2bは大きい方がよい。例えばギャップG2bを15μm以上とするためにはL2/L1は0.25以上が好ましい。
【0049】
図10(c)に示すように、厚さTbのいずれの場合にも、L2/L1を大きくするとΔG3は大きくなり、ギャップG3bが小さくなる。いずれのL2/L1の場合でも、厚さTbを大きくすると、ΔG3は小さくなり、G3bは小さくなる。このように、ギャップG3bを大きくする観点から、L2/L1は小さく、厚さTbは小さい方がよい。これは、L2/L1が小さいときには、中心37付近のリッド20は大きく撓むものの端39付近ではリッド20は余り撓まず、L2/L1が大きいときには、中心37付近のリッド20は余り撓まないものの端39付近ではリッド20が撓むためと考えられる。さらに、圧力を加える前において、L2/L1が大きくなると、端39のギャップG3aが小さくなるためと考えられる。金属層30aが強磁性元素を含まない場合、金属層30aが圧電層10cに接触しないためにはギャップG3bは0μmより大きくなる。例えばギャップG3bを0μmより大きくするためにはL2/L1は0.60以下が好ましい。
【0050】
[実施例1の変形例1]
図11(a)および図11(b)は、それぞれ実施例1の変形例1および2に係る弾性波デバイスの断面図である。弾性波素子12、金属層14、ビア配線16および端子18の図示を省略している。図11(a)に示すように、実施例1の変形例1では、突き出し部分31において金属層30aの中心37側の面38aは階段状である。突き出し部分31のうち中心37側の部分31bの金属層30aの厚さはTbであり、突き出し部分31のうち外側の部分31aの厚さはTcである。厚さTcは領域33における金属層30aの厚さTaより小さく、厚さTbより大きい。実施例1の変形例1のように、面38aは階段状でもよい。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0051】
[実施例1の変形例2]
図11(b)に示すように、実施例1の変形例2では、突き出し部分31における金属層30aの中心37側の面38aは平面である。実施例1の変形例2のように、面38aは平面でもよい。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0052】
[比較例1]
図12(a)および図12(b)は、比較例1に係る弾性波デバイスの断面図である。リッド20の上面に一様な圧力を加えた場合を示す図である。図12(a)および図12(b)に示すように、比較例1では、突き出し部分31における金属層30aの厚さTbまたはTcは均一である。図12(a)の厚さTbは図12(b)の厚さTcより小さい。図12(a)のように、厚さTbが小さい場合、リッド20に圧力が加わるとリッド20が撓みやすくなる。このため、中心37における圧電層10cとリッド20との間のギャップG1bが小さくなる。端36aにおける圧電層10cとリッド20とのギャップG4bは大きい。このように、中心37においてリッド20が圧電層10cに近づき、弾性波素子の特性が劣化する。
【0053】
図12(b)のように、厚さTcが大きい場合、リッド20に圧力が加わっても突き出し部分31によりリッド20の撓みを抑制できる。これにより、中心37におけるギャップG1bを大きくできる。しかし、厚さTcが大きいため、端36aにおけるギャップG4bが小さくなる。これにより、突き出し部分31が圧電層10cに接触する可能性がある。比較例1では、厚さTbを小さくするとギャップG1bが小さくなり、厚さTcを大きくするとギャップG4bが小さくなる。
【0054】
図13(a)および図13(b)は、それぞれ実施例1の変形例1および2に係る弾性波デバイスの断面図である。リッド20の上面に一様な圧力を加えた場合を示す図である。図13(a)に示すように、実施例1の変形例1では、部分31aの金属層30aの厚さTcが図12(a)の厚さTbより大きい。これにより、図12(a)よりリッド20の撓みが小さく、中心37におけるギャップG1bを図12(a)より大きくできる。また、部分31bにおける金属層30aの厚さTbが図12(b)の厚さTcより小さいため、端36aにおけるギャップG4bを図12(b)より大きくできる。また、圧電層10cと環状層30との間の最も小さなギャップG5bも図12(b)のギャップG4bより大きくできる。
【0055】
図13(b)に示すように、実施例1の変形例2では、突き出し部分31における金属層30aの厚さが一様に変化する。これにより、図12(a)よりリッド20の撓みが小さく、中心37におけるギャップG1bを図12(a)より大きくできる。また、端36aにおける金属層30aの厚さTbが図12(b)の厚さTcより小さいため、端36aにおけるギャップG4bを図12(b)より大きくできる。面38aが平面の場合、圧電層10cの端39おけるギャップG3bが小さくなる。
【0056】
実施例1では、図9(b)のように、面38aが曲面である。このため、端39におけるギャップG3bを図13(b)より大きくできる。
【0057】
このように、実施例1、その変形例1および2によれば、第1距離L2は、環状層30が基板10に接合する第1領域33における基板10の中心37側の第1端34aと、環状層30がリッド20に接合する第2領域35における中心37側の第2端36aと、の平面視における距離である。第2距離L4は、第1領域33における中心37の反対側の第3端34bと、第2領域35における中心37の反対側の第4端36bと、の平面視における距離である。このとき、第1距離L2は第2距離L4より大きい。これにより、リッド20に圧力が加わったときにリッド20の撓みを小さくできる。第1端34aと第2端36aとの間の位置における環状層30の厚さは、第1端34aにおける環状層30の厚さより小さく第2端36aにおける環状層30の厚さより大きい。これにより、リッド20の撓みを小さくできる。また、図13(a)および図13(b)において説明したように、比較例1に比べ、ギャップG1bおよびG4bを大きくできる。また、特許文献1に比べ柱状体を少なくできる。これにより、基板10の上面に弾性波素子12を設ける領域を大きくできる。よって、基板10の面積を削減でき、弾性波デバイスを小型化できる。
【0058】
リッド20の撓みを抑制する観点から、第1距離L2は第2距離L4の2.5倍以上が好ましく、3倍以上がより好ましく、5倍以上がさらに好ましい。第2領域35の幅Wb(環状層30が延びる方向に直交する方向における幅)は第1領域33の幅Wa(環状層30が延びる方向に直交する方向における幅)の2倍以上が好ましく、3倍以上がより好ましく、5倍以上がさらに好ましい。なお、第2距離L4は0でもよい。すなわち、環状層30の外側の面38bは、基板10の上面に対し垂直でもよい。この場合も第1距離L2は第2距離L4より大きいとする。
【0059】
シミュレーション2のように、第1距離L2は、中心37と第1端34aとの平面視における第3距離L1の0.1倍以上が好ましく、0.2倍以上がより好ましく、0.3倍以上がさらに好ましい。これにより、図10(a)のように、リッド20と圧電層10cとのギャップG1bを大きくできる。第1距離L2は、第3距離L1の0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましく、0.5倍以下がさらに好ましい。これにより、図10(c)のように、環状層30と圧電層10cとのギャップG3b~G5bを大きくできる。
【0060】
実施例1およびその変形例2のように、環状層30の厚さは第1端34aから第2端36aに向かうにしたがい徐々に小さくなる。これにより、リッド20の撓みを抑制できる。
【0061】
実施例1のように、環状層30の空隙26側の面38aはリッド20の方に凹む曲面である。これにより、図9(b)のように、図13(b)に比べギャップG3bを大きくできる。第1端34aと第2端36aとの平面視における中点における環状層30の厚さ(Td+金属層30bの厚さ)は、第1端34aにおける環状層30の厚さと第2端36aにおける環状層30の厚さの差(Ta-Tb)の0.5倍より小さいことが好ましく、0.4倍以下がより好ましく、0.3倍以下がさらに好ましい。これにより、ギャップG5bを大きくできる。環状層30の厚さ(Td+金属層30bの厚さ)は、Ta-Tbの0.05倍以上が好ましく、0.1倍以上がより好ましい。これにより、リッド20の撓みを小さくできる。
【0062】
面38aを曲面とする弾性波デバイスの製造方法として、図3(c)のように、表面に弾性波素子12が設けられた基板10上に、弾性波素子12を覆う犠牲層50を形成する。犠牲層50は、弾性波素子12を囲む基板10の領域57(環状領域)に設けられていない。犠牲層50の周縁領域56の厚さは内側に行くに従い小さくなり、周縁領域56における犠牲層50の表面は外側に膨らむ。図4(b)のように、基板10および犠牲層50上にマスク層52を形成する。マスク層52は、基板10の領域57の少なくとも弾性波素子12側の領域から犠牲層50の周縁領域56にかけて開口53を有し、犠牲層50の中央領域58に設けられる。図5(a)のように、マスク層52の開口53内に基板10に接合する環状層30を形成する。図5(b)のように、犠牲層50およびマスク層52を除去する。図6(a)のように、リッド20を環状層30に接合する。これにより、環状層30の面38aがリッド側に凹む曲面となる。
【0063】
実施例1の変形例1のように、環状層30の面38aは階段状でもよい。実施例1の変形例1では、環状層30の厚さが2段階の例を説明したが、環状層30の厚さは3段階以上でもよい。
【0064】
リッド20が強磁性元素を含む場合、シミュレーション1のように、弾性波素子12の特性が劣化しやすい。よって、突き出し部分31を設けることによりリッド20の撓みを抑制することが好ましい。強磁性元素は、例えば鉄、ニッケルおよびコバルトである。リッド20における強磁性元素の濃度は、50原子%以上が好ましく、80原子%以上がより好ましい。
【0065】
環状層30が金属層の場合、環状層30が圧電層10cに接触すると弾性波素子12が電気的に短絡する。よって、端34aと36aとの間の位置における環状層30の厚さを、端34aにおける環状層30の厚さより小さく、端36aにおける環状層30の厚さより大きくすることが好ましい。
【0066】
基板10は、支持基板10aと支持基板10a上に設けられた圧電層10cとを備える。環状層30が設けられた領域の圧電層10cは除去され、弾性波素子12は圧電層10c上に設けられている。このような構造では、圧電層10cと環状層30とが接触しやすい。よって、端34aと36aとの間の位置における環状層30の厚さを、端34aにおける環状層30の厚さより小さく、端36aにおける環状層30の厚さより大きくすることが好ましい。
【0067】
[実施例1の変形例3]
図14(a)および図14(b)は、実施例1の変形例3に係る弾性波デバイスの断面図および平面図である。図14(a)は図14(b)のA-A断面に相当する。弾性波素子12、金属層14、ビア配線16および端子18の図示を省略している。図14(a)と図14(b)との各部材の寸法は必ずしも対応していない。図14(a)および図14(b)に示すように、実施例1の変形例3では、空隙26に囲まれる柱状体32(ピラー)が設けられている。柱状体32が設けられている領域では圧電層10cが除去されている。柱状体32は、支持基板10a上に設けられた金属層30aと金属層30a上に設けられた金属層30bとを備えている。柱状体32の金属層30aおよび30bと環状層30の金属層30aおよび30bとは、それぞれ同じ製造工程により形成されており、同じ材料からなる。柱状体32とリッド20とは接合層24により接合されている。柱状体32は、基板10の平面視における中心37またはその近傍に設けられている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。柱状体32を設けることで、リッド20の撓みをより抑制できる。
【0068】
[実施例1の変形例4]
図15(a)および図15(b)は、実施例1の変形例4に係る弾性波デバイスの断面図および平面図である。図15(a)は図15(b)のA-A断面に相当する。弾性波素子12、金属層14、ビア配線16および端子18の図示を省略している。図15(a)と図15(b)との各部材の寸法は必ずしも対応していない。図15(a)および図15(b)に示すように、実施例1の変形例4では、空隙26に囲まれる柱状体32が2本設けられている。基板10の平面形状はX方向が長辺でありY方向が短辺である長方形である。柱状体32は、Y方向における基板10の中心またはその近傍にX方向に配列して設けられている。その他の構成は実施例1の変形例3と同じであり説明を省略する。
【0069】
実施例1の変形例3および4のように、基板10とリッド20とに接合し、平面視において空隙26に囲まれた柱状体32を備えてもよい。これにより、リッド20の撓みをより抑制できる。柱状体32を1本設ける場合には、柱状体32は基板10の中心37付近に設けることが好ましい。柱状体32を複数本設ける場合には、複数の柱状体32は基板10の短辺方向における中心に長辺方向に配列するように設けることが好ましい。
【0070】
一例として、基板10の長辺方向の幅が1000μm以下の場合には実施例1のように柱状体32を設けない。基板10の長辺方向の幅が1000μm以上かつ2000μm以下の場合には実施例1の変形例3ように柱状体32を1本設ける。基板10の長辺方向の幅が2000μm以上の場合には実施例1の変形例4ように柱状体32を複数本設ける。
【0071】
[実施例1の変形例5]
図16(a)は、実施例1の変形例5に係る弾性波デバイスの断面図である。図16(a)に示すように、基板10上に弾性波素子12aが設けられている。基板10は、例えばサファイア基板、アルミナ基板、石英基板、水晶基板、スピネル基板、SiC基板またはシリコン基板である。その他の構成は実施例1の図1(a)と同じである。
【0072】
図16(b)は、実施例1の変形例5における弾性波素子の断面図である。図16(b)に示すように、圧電薄膜共振器である弾性波素子12aでは、基板10上に圧電膜46が設けられている。圧電膜46を挟むように下部電極44および上部電極48が設けられている。下部電極44と基板10との間に空隙45が形成されている。圧電膜46の少なくとも一部を挟み下部電極44と上部電極48とが対向する領域が共振領域47である。共振領域47において、下部電極44および上部電極48は圧電膜46内に、厚み縦振動モードまたは厚みすべり振動モードの弾性波を励振する。下部電極44および上部電極48は例えばルテニウム膜等の金属膜である。圧電膜46は例えば窒化アルミニウム膜、タンタル酸リチウム膜またはニオブ酸リチウム膜である。空隙45の代わりに弾性波を反射する音響反射膜が設けられていてもよい。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例5のように、実施例1およびその変形例1から4において、弾性波素子は圧電薄膜共振器でもよい。
【0073】
実施例1およびその変形例では、機能素子として弾性波素子12および12a(弾性表面波共振器または圧電薄膜共振器)の例を説明したが、機能素子は、インダクタまたはキャパシタ等の受動素子、トランジスタを含む能動素子、またはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子でもよい。
【実施例0074】
図17(a)は、実施例2に係るフィルタの回路図である。図17(a)に示すように、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の直列共振器S1からS4が直列に接続されている。入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の並列共振器P1からP4が並列に接続されている。直列共振器S1からS4および並列共振器P1からP4の少なくとも1つの共振器に実施例1およびその変形例の弾性波素子12および12aを用いることができる。直列共振器および並列共振器の個数等は適宜設定できる。フィルタとしてラダー型フィルタを例に説明したが、フィルタは多重モード型フィルタでもよい。
【0075】
図17(b)は、実施例2の変形例1に係るデュプレクサの回路図である。図17(b)に示すように、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ60が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ62が接続されている。送信フィルタ60は、送信端子Txから入力された高周波信号のうち送信帯域の信号を送信信号として共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ62は、共通端子Antから入力された高周波信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。送信フィルタ60および受信フィルタ62の少なくとも一方を実施例2のフィルタとすることができる。
【0076】
マルチプレクサとしてデュプレクサを例に説明したがトリプレクサまたはクワッドプレクサでもよい。
【0077】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0078】
10 基板
10a 支持基板
10b 絶縁層
10c 圧電層
12、12a 弾性波素子
14、30a、30b 金属層
16 ビア配線
18 端子
20 リッド
24 接合層
26 空隙
30 環状層
31 突き出し部分
32 柱状体
33、35 領域
34a、34b、36a、36b、39 端
37 中心
38a、38b 面
50 犠牲層
51、53 開口
52 マスク層
60 送信フィルタ
62 受信フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図17