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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036426
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】穴開け工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/06 20060101AFI20240308BHJP
   B23B 51/00 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
B23B51/06 C
B23B51/06 D
B23B51/00 K
B23B51/00 L
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024011549
(22)【出願日】2024-01-30
(62)【分割の表示】P 2018197727の分割
【原出願日】2018-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】518372062
【氏名又は名称】松本 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】松本 武雄
(57)【要約】
【課題】安定した加工穴の表面粗さを長期間にわたって維持することができる穴開け工具を提供する。
【解決手段】穴開け工具は、軸線周りに回転される工具本体の先端側に形成された刃部と、刃部の外周に、工具本体の先端側および工具本体の径方向外側に向けて開口した切屑排出溝と、切屑排出溝の工具本体の回転方向前方側を向く壁面と、刃部の先端逃げ面と、の交差稜線部に形成された切刃と、切刃の工具本体の回転方向後方側に形成され、刃部の先端側で先端逃げ面と連続するランド部と、ランド部の外周面に開口して形成され、軸線方向に延びる切削流体供給溝と、切削流体供給溝の工具本体側に形成され、切削流体供給溝に切削流体を供給する切削流体供給穴と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴開け工具であって、
軸線周りに回転される工具本体の先端側に形成された刃部と、
前記刃部の外周に、前記工具本体の先端側および前記工具本体の径方向外側に向けて開口した切屑排出溝と、
前記切屑排出溝の前記工具本体の回転方向前方側を向く壁面と、前記刃部の先端逃げ面と、の交差稜線部に形成された切刃と、
前記切刃の前記工具本体の回転方向後方側に形成され、前記刃部の先端側で前記先端逃げ面と連続するランド部と、
前記ランド部の外周面に開口して形成され、前記軸線方向に延びる切削流体供給溝と、
前記切削流体供給溝の前記工具本体側に形成され、前記切削流体供給溝に切削流体を供給する切削流体供給穴と、を備え、
前記切削流体供給溝は、前記ランド部の外周面に開口している
穴開け工具。
【請求項2】
請求項1に記載の穴開け工具であって、
前記刃部の先端側における前記切屑排出溝の深さと、前記刃部の後端側における前記切屑排出溝の深さとが、互いに等しい
穴開け工具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の穴開け工具であって、
前記切屑排出溝、前記ランド部および前記切削流体供給溝は、前記軸線周りに捩れたらせん状に形成されている
穴開け工具。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の穴開け工具であって、
前記切屑排出溝、前記切刃、前記ランド部、前記切削流体供給溝および前記切削流体供給穴の組が複数設けられ、
前記組のそれぞれは、周方向に等間隔で配置されている
穴開け工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穴開け工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸線回りに回転させられるドリル本体の先端側の刃部外周に形成された複数条の切屑排出溝と、切屑排出溝のドリル回転方向前方側を向く前溝壁面と刃部の先端逃げ面との交差稜線部に形成された切刃と、先端逃げ面に形成されたクーラント穴とを備えたクーラント穴付きドリルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
クーラント穴から供給された切削油剤等のクーラントは、刃部先端の切刃や切刃による加工穴底の切削部位を潤滑および冷却して切屑排出溝に流れ込み、この切屑排出溝内の切屑を加工穴からドリル本体後端側に流し出す。また、クーラントは、先端逃げ面からランド部の外周に形成されたマージン部にも流れ込んで、マージン部とマージン部が摺接する加工穴内周面とを潤滑および冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5447130号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のクーラント穴付きドリルでは、先端逃げ面にクーラント穴が形成されている。そのため、ランド部からマージン部に流れ込むクーラントは、加工穴底で折り返され、勢いが弱くなった状態で流れ込むことになる。そのため、ランド部に堆積した被削材の微粉やクーラントの不純物のスラッジを、ドリル本体後端側に流し出すことができない。
【0006】
ここで、被削材の微粉とは、例えば金属同士が摩擦することによって生じた摩擦素子が、摩擦界面で集合し、結合して大きく成長したものである。被削材を切削する際には、切屑の他に、被削材の微粉やクーラントのスラッジが発生する。金属同士の摩擦によって被削材の微粉が押しつぶされると、練り伸ばされて工具等に固着する。
【0007】
特許文献1のように、クーラントで被削材の微粉やクーラントのスラッジをドリル本体後端側に流し出すことができない場合、被削材の微粉やクーラントのスラッジがランド部やマージン部に固着する。ランド部等に固着した被削材の微粉やクーラントのスラッジが被削材に接触すると、加工穴の表面粗さが悪化したり、摩擦トルクが増加して工具の折損や装置の過負荷停止が生じたりする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
本発明の第1の形態によれば、穴開け工具が提供される。この穴開け工具は、軸線周りに回転される工具本体の先端側に形成された刃部と、刃部の外周に、工具本体の先端側および工具本体の径方向外側に向けて開口した切屑排出溝と、切屑排出溝の工具本体の回転方向前方側を向く壁面と、刃部の先端逃げ面と、の交差稜線部に形成された切刃と、切刃の工具本体の回転方向後方側に形成され、刃部の先端側で先端逃げ面と連続するランド部と、ランド部の外周面に開口して形成され、軸線方向に延びる切削流体供給溝と、切削流
体供給溝の工具本体側に形成され、切削流体供給溝に切削流体を供給する切削流体供給穴と、を備える。
【0010】
かかる穴開け工具によれば、切削流体供給溝がランド部の外周面に開口して形成されているので、切削流体がランド部に強制的に供給される。また、刃部の後端側において、ランド部の外周面の余肉が削り落とされた状態となり、被削面とランド部との間に空間が形成されるので、切削流体が切削流体供給穴から吐出されてこの空間に流れ込み、工具外周全体を包み、工具全体を覆う状態になる。また、切削流体供給溝から供給された切削流体は、刃部の先端逃げ面から切屑排出溝に流れ込み、切削時に発生する切屑をスムーズに排出することができるので、切屑つまりを起こすことがない。さらに、ランド部に強制的に供給された切削流体が強い勢いで被削材の微粉や切削流体のスラッジを流し出すので、被削材の微粉や切削流体のスラッジがランド部に固着することもない。そのため、安定した加工穴の表面粗さを長期間にわたって維持することができる穴開け工具を得ることができる。
【0011】
本発明の第2の形態によれば、第1の形態において、刃部の先端側における切屑排出溝の深さと、刃部の後端側における切屑排出溝の深さとが、互いに等しい。かかる形態によれば、工具中心部に切削流体供給穴を穿設していないことにより、工具中心部の芯厚を十分に確保できるので、工具剛性に優れる。そのため、切削抵抗が小さく、びびりの発生を抑制することができるので、加工穴の表面粗さに優れるとともに、刃部の欠損や工具の折損を防止することができる。
【0012】
本発明の第3の形態によれば、第1の形態または第2の形態において、切屑排出溝、ランド部および切削流体供給溝は、軸線周りに捩れたらせん状に形成されている。かかる形態によれば、切削流体が工具の回転によって切削流体供給溝に沿って流れやすくなる。そのため、刃部の全域に効率的に切削流体を行き渡らせることができ、潤滑効果および冷却効果を高めることができる。
【0013】
本発明の第4の形態によれば、第1の形態から第3の形態のいずれかにおいて、切屑排出溝、切刃、ランド部、切削流体供給溝および切削流体供給穴の組が複数設けられ、組のそれぞれは、周方向に等間隔で配置されている。かかる形態によれば、工具を安定して支持することができる。そのため、工具の回転が安定し、振動も少なく、加工穴の表面粗さに優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態による穴開け工具を示す側面図である。
図2図1に示した穴開け工具を軸方向先端側から見た正面図である。
図3図2に示した穴開け工具の先端における切削流体の流れを示す説明図である。
図4図1における切削流体の流れを示す説明図である。
図5図2における切削流体の流れを拡大して示す説明図である。
図6】(a)~(c)は、図2に示した切削流体供給溝の開口度を示す説明図である。
図7】本発明の第1実施形態による穴開け工具を示す側面図である。
図8図7に示した穴開け工具を軸方向先端側から見た正面図である。
図9図8に示した穴開け工具の先端における切削流体の流れを示す説明図である。
図10図7における切削流体の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による粒状物用の選別機の好適な実施形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。なお、以下の実施形態において、切削流体とは、切削油剤や水、潤滑性を有する気体等を含み、切削部位を潤滑および冷却するために用いられるものである。
【0016】
第1実施形態:
図1は、本発明の第1実施形態による穴開け工具10を示す側面図である。図2は、図1に示した穴開け工具10を軸方向先端側から見た正面図である。図3は、図2に示した穴開け工具10の先端における切削流体の流れを示す説明図である。
【0017】
図1および図2において、穴開け工具10は、軸線回りに回転される略棒状をなす工具本体11と、工具本体11の先端側に形成された刃部12とを備えている。刃部12の外周には、工具本体11の先端側および工具本体11の径方向外側に向けて開口した切屑排出溝13が形成されている。ここで、刃部12の先端側における切屑排出溝13の深さh1と、刃部12の後端側における切屑排出溝13の深さh2とは、互いに等しく形成されている。
【0018】
また、切屑排出溝13の工具本体11の回転方向rの前方側を向く壁面と、刃部12の先端逃げ面14と、の交差稜線部には、切刃15が形成されている。切刃15の工具本体11の回転方向後方側には、刃部12の先端側で先端逃げ面14と連続するランド部16が形成されている。
【0019】
また、ランド部16には、ランド部16の外周面に開口して、軸線方向に延びる切削流体供給溝17が形成されている。切削流体供給溝17の工具本体11側には、切削流体供給溝17に切削流体を供給する切削流体供給穴18が形成されている。ここで、切削流体供給穴18は、工具本体11の後端側まで貫通して形成されている。
【0020】
また、切屑排出溝13の工具本体11の回転方向前方側を向く壁面と、ランド部16との間には、切刃15の工具本体11の回転方向後方側に隣接してマージン部19が形成されている。また、切削流体供給溝17の工具本体11の回転方向後方側に隣接して、被削材の内面に接触するガイドパッド20が形成されている。
【0021】
なお、この穴開け工具10は、切屑排出溝13、切刃15、ランド部16、切削流体供給溝17および切削流体供給穴18の組が2組設けられている。また、この組のそれぞれは、周方向に等間隔で配置されている。そのため、工具を安定して支持することができるので、工具の回転が安定し、振動も少なく、加工穴の表面粗さに優れる。なお、切屑排出溝13、切刃15、ランド部16、切削流体供給溝17および切削流体供給穴18の組は、2組に限定されず、任意に設定されてもよい。
【0022】
本実施形態にかかる構成の穴開け工具10は、ランド部16に形成され、工具の先端まで切削流体を送り込むことができる切削流体供給溝17を有している。すなわち、刃部12の先端部に切削流体を案内する溝として、切削流体供給溝17を設けたことにより、ランド部16の余肉がそぎ落とされている。
【0023】
そのため、図2に示すように、ランド部16と被削面との間に、切削流体が流れ込むのに十分な空間が確保される。切削流体供給穴18を介して切削流体供給溝17から吐出された切削流体は、ランド部16の外周面を流れ、ランド部16に堆積した被削材の微粉や切削流体のスラッジを流し出す。
【0024】
続いて、切削流体は、図3に示すように、刃部12の先端側から刃部12の先端逃げ面
14を伝って切屑排出溝13に流れ込み、切削時に発生する切屑とともに排出される。このとき、マージン部19とガイドパッド20とが被削材の内面に接触することにより発生する摩擦熱を、切削流体により冷却することができる。
【0025】
続いて、本実施形態にかかる構成の穴開け工具10の作用について説明する。本実施形態による穴開け工具10によれば、工具本体11の後端側から切削流体供給穴18に切削流体を供給し、切削流体供給溝17に切削流体を吐出させながら、穴開け工具10を軸線周りに回転させつつ、穴開け工具10を被削材の端面に接触させて軸線方向に前進させる。これにより、刃部12が被削材を切削し、加工穴が形成される。
【0026】
このとき、切削流体供給穴18に供給された切削流体が切削流体供給溝17に勢いよく流れ込み、刃部12の先端まで切削流体が供給され、刃部12の先端逃げ面14から切屑排出溝13に切削流体が流れ込む。これにより、切削時に発生する切屑が切屑排出溝13から排出される。
【0027】
さらに、切削流体供給溝17から常に新鮮な切削流体がマージン部19およびガイドパッド20に容易に流れ込む。これにより、マージン部19およびガイドパッド20、並びに加工穴の内周面が潤滑および冷却される。このとき、マージン部19およびガイドパッド20に発生する被削材の微粉や切削流体のスラッジも流し出される。そのため、被削材の微粉や切削流体のスラッジが工具に固着しなくなり、加工穴が拡大することを抑制することができる。
【0028】
また、切刃15により切削された被削材の内周面が、潤滑および冷却されているマージン部19およびガイドパッド20によって擦られることとなるので、平滑な仕上げ面が得られる。さらに、ガイドパッド20により、加工穴の中心軸と穴開け工具10の軸線とが一致するように刃部12が案内されることになるので、真直性が確保される。したがって、安定した加工穴の表面粗さを維持し、穴径寸法等を高い精度で制御することができる。
【0029】
図4は、図1における切削流体の流れを示す説明図である。また、図5は、図2における切削流体の流れを拡大して示す説明図である。図4および図5において、この穴開け工具10では、切刃15によって切削された被削面とランド部16との間に、ランド部16の外周面に開口した切削流体供給溝17が形成されることで空間が形成される。
【0030】
そのため、切削流体供給穴18から吐出された切削流体が、ランド部16に形成された切削流体供給溝17を伝ってランド部16の空間に流れ込み、図4および図5に示された矢印のように、刃部12の先端に向けて吐出される。その結果、刃部12の外周面と被削面との間に流れ込んだ切削流体により、マージン部19およびガイドパッド20が潤滑および冷却される。
【0031】
また、これにより、マージン部19およびガイドパッド20が被削材の内面に接触することにより発生する被削材の微粉や切削流体のスラッジが流し出されるので、被削材の微粉や切削流体のスラッジの固着を防止することができる。そのため、被削材の微粉や切削流体のスラッジが被削材と接触することによる加工穴の表面粗さの悪化や、摩擦トルクの増加に伴う工具の折損や装置の過負荷停止等のトラブルを防止することができる。したがって、安定した加工穴の表面粗さを長期間にわたって維持するとともに、工具寿命を延ばすことができる。
【0032】
また、被削面とランド部16との間に切削流体を確実かつ十分に流し込むとともに、切屑排出溝13への切削流体の流入量を増加させることにより、切屑の排出性能を向上させることができる。さらに、切削流体によるマージン部19およびガイドパッド20への潤
滑作用により、加工穴の内周面へのバニシングをより効果的に行うことができ、優れた加工穴の表面粗さを実現することができる。
【0033】
また、本実施形態にかかる構成の穴開け工具10は、刃部12に形成された切刃15へダイヤモンド焼結体チップを取り付けることで、さらに安定した加工穴の表面粗さを維持し、穴径寸法等を高い精度で制御することができる。また、工具寿命を延ばすことができる。
【0034】
なお、刃部12の先端逃げ面14に切削流体供給穴18を形成した場合には、工具径が小さくなるに従って切削流体供給穴18を小さくする必要がある。これに対して、本実施形態にかかる構成の穴開け工具10によれば、刃部12の先端逃げ面14に切削流体供給穴18を形成した場合と比較して、切削流体供給穴18の径を大きくすることができる。そのため、より効率的に潤滑および冷却を行うことができる。
【0035】
また、切削流体供給溝17の工具本体11側に形成された切削流体供給穴18から切削流体を吐出させることにより、刃部12の先端に向けて大量の切削流体を流し込むことができる。したがって、安定した加工穴の表面粗さを長期間にわたって維持するとともに、工具寿命を延ばすことができる。
【0036】
また、本実施形態にかかる構成の穴開け工具10において、ランド部16の外周面に開口して形成され、軸線方向に延びる切削流体供給溝17について、ランド部16に対する開口度を適宜変更してもよい。図6は、図2に示した切削流体供給溝17の開口度を示す説明図である。図6(a)は、25%開口している状態を示し、図6(b)は、50%開口している状態を示し、図6(c)は、75%開口している状態を示している。ここで、切削流体供給溝17の開口度は、例えば25%~75%の間で、任意に設定することができる。
【0037】
また、本実施形態にかかる構成の穴開け工具10では、工具径が大きくなる場合には、ランド部16も大きくなる。このとき、切削流体供給溝17の工具本体11側に形成された切削流体供給穴18の大きさや数、また切削流体供給穴18につながる切削流体供給溝17を任意に設計することができる。
【0038】
以上のように、この穴開け工具10は、軸線周りに回転される工具本体11の先端側に形成された刃部12と、刃部12の外周に、工具本体11の先端側および工具本体11の径方向外側に向けて開口した切屑排出溝13と、切屑排出溝13の工具本体11の回転方向前方側を向く壁面と、刃部12の先端逃げ面14と、の交差稜線部に形成された切刃15と、切刃15の工具本体11の回転方向後方側に形成され、刃部12の先端側で先端逃げ面14と連続するランド部16と、ランド部16の外周面に開口して形成され、軸線方向に延びる切削流体供給溝17と、切削流体供給溝17の工具本体11側に形成され、切削流体供給溝17に切削流体を供給する切削流体供給穴18と、を備える。
【0039】
したがって、切削流体供給溝17がランド部16の外周面に開口して形成されているので、切削流体がランド部16に強制的に供給される。また、刃部12の後端側において、ランド部16の外周面の余肉が削り落とされた状態となり、被削面とランド部16との間に空間が形成されるので、切削流体が切削流体供給穴18から吐出されてこの空間に流れ込み、工具外周全体を包み、工具全体を覆う状態になる。また、切削流体供給溝17から供給された切削流体は、刃部12の先端逃げ面14から切屑排出溝13に流れ込み、切削時に発生する切屑をスムーズに排出することができるので、切屑つまりを起こすことがない。さらに、ランド部16に強制的に供給された切削流体が強い勢いで被削材の微粉や切削流体のスラッジを流し出すので、被削材の微粉や切削流体のスラッジがランド部に固着
することもない。そのため、安定した加工穴の表面粗さを長期間にわたって維持することができる穴開け工具10を得ることができる。
【0040】
また、刃部12の先端側における切屑排出溝13の深さと、刃部12の後端側における切屑排出溝13の深さとが、互いに等しい。したがって、工具中心部に切削流体供給穴18を穿設していないことにより、工具中心部の芯厚を十分に確保できるので、工具剛性に優れる。そのため、切削抵抗が小さく、びびりの発生を抑制することができるので、加工穴の表面粗さに優れるとともに、刃部12の欠損や工具の折損を防止することができる。
【0041】
また、切屑排出溝13、切刃15、ランド部16、切削流体供給溝17および切削流体供給穴18の組が複数設けられ、組のそれぞれは、周方向に等間隔で配置されている。したがって、工具を安定して支持することができる。そのため、工具の回転が安定し、振動も少なく、加工穴の表面粗さに優れる。
【0042】
第2実施形態:
図7は、本発明の第2実施形態による穴開け工具30を示す側面図である。図8は、図7に示した穴開け工具30を軸方向先端側から見た正面図である。図9は、図8に示した穴開け工具の先端における切削流体の流れを示す説明図である。
【0043】
図7および図8において、穴開け工具30の切屑排出溝13、ランド部16および切削流体供給溝17は、軸線周りに捩れたらせん状に形成されている。また、穴開け工具30は、ガイドパッドを有していないシングルマージンの穴開け工具、またはガイドパッドを有するダブルマージンの穴開け工具である。その他の構成は、上述した第1実施形態と同様なので、説明を省略する。
【0044】
切削流体は、図9に示すように、刃部12の先端側から刃部12の先端逃げ面14を伝って切屑排出溝13に流れ込み、切削時に発生する切屑とともに排出される。このとき、マージン部19が被削材の内面に接触することにより発生する摩擦熱を、切削流体により冷却することができる。
【0045】
また、この穴開け工具30は、切屑排出溝13、ランド部16および切削流体供給溝17が、軸線周りに捩れたらせん状に形成されている。したがって、図10に示された矢印のように、切削流体が工具の回転によって切削流体供給溝17に沿って流れやすくなる。そのため、刃部の全域に効率的に切削流体を行き渡らせることができ、潤滑効果および冷却効果を高めることができる。
【0046】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0047】
10…穴開け工具
11…工具本体
12…刃部
13…切屑排出溝
14…先端逃げ面
15…切刃
16…ランド部
17…切削流体供給溝
18…切削流体供給穴
19…マージン部
20…ガイドパッド
30…穴開け工具
r…回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-02-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴開け工具であって、
軸線周りに回転される工具本体の先端側に形成された刃部であって
前記刃部の外周に、前記工具本体の先端側および前記工具本体の径方向外側に向けて開口した切屑排出溝と、
前記切屑排出溝の前記工具本体の回転方向前方側を向く壁面と、前記刃部の先端逃げ面と、の交差稜線部に形成された切刃と、
前記切刃の前記工具本体の回転方向後方側に形成され、前記刃部の先端側で前記先端逃げ面と連続するランド部と、
前記ランド部の外周面に開口して形成され、前記軸線方向に延びる切削流体供給溝と、
前記切削流体供給溝の前記工具本体側に、前記切削流体供給溝と連続するように形成され、前記切削流体供給溝に切削流体を供給する切削流体供給穴と、
前記切刃の前記工具本体の回転方向後方側に隣接するマージン部と、を有する刃部を備え、
前記切削流体供給溝は、前記ランド部の外周面に開口し
前記切屑排出溝、前記ランド部および前記切削流体供給溝は、前記軸線周りに捩れたらせん状に形成されている
穴開け工具。
【請求項2】
請求項1に記載の穴開け工具であって、
前記刃部の先端側における前記切屑排出溝の深さと、前記刃部の後端側における前記切屑排出溝の深さとが、互いに等しい
穴開け工具。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の穴開け工具であって、
前記切屑排出溝、前記切刃、前記ランド部、前記切削流体供給溝および前記切削流体供給穴の組が複数設けられ、
前記組のそれぞれは、周方向に等間隔で配置されている
穴開け工具。