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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036437
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】車載用電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/06 20060101AFI20240308BHJP
   H02M 1/12 20060101ALI20240308BHJP
   H03H 7/01 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
H02M7/06 Z
H02M1/12
H03H7/01 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024012590
(22)【出願日】2024-01-31
(62)【分割の表示】P 2022521863の分割
【原出願日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】P 2020086115
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高辻 寛之
(57)【要約】
【課題】車載用電力変換装置1は、交流電源2から入力される交流電力を直流電力に変換して車載バッテリーに供給する。
【解決手段】車載用電力変換装置1は、電力変換回路10と、配線4を介して接地されるフレームグランドFGと、交流電力の正極性入力経路Aと負極性入力経路A’との間に設けられた第1フィルタ回路11と、直流電力の正極性出力経路Bと負極性出力経路B’との間に設けられた第2フィルタ回路12と、を備える。第1フィルタ回路11は、正極性入力経路AとフレームグランドFGとの間に直列接続される第1コンデンサC1及び第1フェライトビーズFB1と、負極性入力経路A’とフレームグランドFGとの間に直列接続される第2コンデンサC2及び第2フェライトビーズFB2と、を備える。第2フィルタ回路12は、正極性出力経路BとフレームグランドFGとの間に接続される第3コンデンサC3と、負極性出力経路B’とフレームグランドFGの間に接続される第4コンデンサC4と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から入力される交流電力を直流電力に変換して車載バッテリーに供給する車載用電力変換装置であって、
電力変換回路と、
配線を介して接地されるフレームグランドと、
前記交流電源に接続され、前記電力変換回路に入力される交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路と、
前記車載バッテリーに接続され、前記電力変換回路から出力される直流電力の正極性出力経路及び負極性出力経路と、
前記正極性入力経路と前記負極性入力経路との間に設けられた第1フィルタ回路と、
前記正極性出力経路と前記負極性出力経路との間に設けられた第2フィルタ回路と、
を備え、
前記第1フィルタ回路は、
前記正極性入力経路と前記フレームグランドとの間に直列接続される第1コンデンサ及び第1フェライトビーズと、
前記負極性入力経路と前記フレームグランドとの間に直列接続される第2コンデンサ及び第2フェライトビーズと、
を備え、
前記第2フィルタ回路は、
前記正極性出力経路と前記フレームグランドとの間に接続される第3コンデンサと、
前記負極性出力経路と前記フレームグランドとの間に接続される第4コンデンサと、
を備え、
前記第1フェライトビーズ及び前記第2フェライトビーズは、150kHz以上1MHz以下の低周波数帯域において低インピーダンスとなり、30MHz以上108MHz以下の高周波数帯域において、前記低周波数帯域よりも高インピーダンスとなり、
前記第1フィルタ回路は、
前記低周波数帯域において低インピーダンスとなり、前記高周波数帯域において高インピーダンスとなり、前記第2フィルタ回路及び前記フレームグランドを介して、前記直流電力の正極性出力経路及び負極性出力経路から前記交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路に流れ込むコモンモードノイズの前記高周波数帯域の成分の通過を抑制する、
車載用電力変換装置。
【請求項2】
交流電源から入力される交流電力を直流電力に変換して車載バッテリーに供給する車載用電力変換装置であって、
電力変換回路と、
配線を介して接地されるフレームグランドと、
前記交流電源に接続され、前記電力変換回路に入力される交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路と、
前記車載バッテリーに接続され、前記電力変換回路から出力される直流電力の正極性出力経路及び負極性出力経路と、
前記正極性入力経路と前記負極性入力経路との間に設けられた第1フィルタ回路と、
前記正極性出力経路と前記負極性出力経路との間に設けられた第2フィルタ回路と、
を備え、
前記第1フィルタ回路は、
前記正極性入力経路と前記フレームグランドとの間に直列接続される第1コンデンサ及び第1フェライトビーズと、
前記負極性入力経路と前記フレームグランドとの間に直列接続される第2コンデンサ及び第2フェライトビーズと、
を備え、
前記第2フィルタ回路は、
前記正極性出力経路と前記フレームグランドとの間に直列接続される第3コンデンサ及び第3フェライトビーズと、
前記負極性出力経路と前記フレームグランドとの間に直列接続される第4コンデンサ及び第4フェライトビーズと、
を備え、
前記第1フェライトビーズ、前記第2フェライトビーズ、前記第3フェライトビーズ、及び前記第4フェライトビーズは、150kHz以上1MHz以下の低周波数帯域において低インピーダンスとなり、30MHz以上108MHz以下の高周波数帯域において、前記低周波数帯域よりも高インピーダンスとなり、
前記第1フィルタ回路は、
前記低周波数帯域において低インピーダンスとなり、前記高周波数帯域において高インピーダンスとなり、前記第2フィルタ回路及び前記フレームグランドを介して、前記直流電力の正極性出力経路及び負極性出力経路から前記交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路に流れ込むコモンモードノイズの前記高周波数帯域の成分の通過を抑制し、
前記第2フィルタ回路は、
前記低周波数帯域において低インピーダンスとなり、前記高周波数帯域において高インピーダンスとなり、前記第1フィルタ回路及び前記フレームグランドを介して、前記交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路から前記直流電力の正極性出力経路及び負極性出力経路に流れ込むコモンモードノイズの前記高周波数帯域の成分の通過を抑制する、
車載用電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車載用電力変換装置であって、
前記交流電源と前記第1フィルタ回路との間にコモンモードチョークコイルを備える、
車載用電力変換装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の車載用電力変換装置であって、
前記第1フィルタ回路と前記電力変換回路との間にコモンモードチョークコイルを備える、
車載用電力変換装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の車載用電力変換装置であって、
前記電力変換回路と前記第2フィルタ回路との間にコモンモードチョークコイルを備える、
車載用電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車(Electric Vehicle、以下「EV」とも称する)やプラグインハイブリッド自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、以下「PHEV」とも称する)の需要拡大に伴い、交流電力(以下「AC」とも称する)を直流電力(以下「DC」とも称する)に変換して車載バッテリーを充電するためのオンボードチャージャー(Onboard Battery Charger:車載充電器、以下「OBC」とも称する)の需要が拡大している。
【0003】
例えば、AC側のライン及びDC側のラインそれぞれにYキャパシタ(ラインバイパスコンデンサ)を設け、ノイズ源から入力ラインに侵入するコモンモードノイズを低減して、ノーマルモードのノイズ成分を抑制する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-285115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車載機器用のEMC(Electromagnetic Interference)規格として、IECが策定したCISPR25が広く適用されている。CISPR25において車載用電子機器の電源ハーネスに重畳する伝導ノイズの許容値が規定される周波数範囲(150kHz以上108MHz以下)には、CIRPR14においてACラインの伝導ノイズの許容値が規定される周波数範囲(150kHz以上30MHz以下)よりも高い周波数帯域が含まれている。
【0006】
上記従来技術をOBCに適用した場合、AC側のYキャパシタとDC側のYキャパシタとは、例えばEVやPHEVのシャーシ電位に接地される。EVやPHEVの接地電位とAC供給側の接地電位とは、一般に、AC供給ケーブルのシールド編組線等で接続されるため、EVやPHEVの接地電位とAC供給側の接地電位との間にインダクタンス成分が含まれる場合がある。このため、上記従来技術では、DC側のノイズ成分がDC側のYキャパシタからEVやPHEVのシャーシを介してAC側のYキャパシタに漏洩し、ACラインの伝導ノイズの許容値を超える可能性がある。
【0007】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、コモンモードノイズの高周波数帯域成分の漏出を抑制することができる車載用電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面の車載用電力変換装置は、交流電源から入力される交流電力を直流電力に変換して車載バッテリーに供給する車載用電力変換装置であって、電力変換回路と、配線を介して接地されるフレームグランドと、前記交流電源に接続され、前記電力変換回路に入力される交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路と、前記車載バッテリーに接続され、前記電力変換回路から出力される直流電力の正極性出力経路及び負極性出力経路と、前記正極性入力経路と前記負極性入力経路との間に設けられた第1フィルタ回路と、前記正極性出力経路と前記負極性出力経路との間に設けられた第2フィルタ回路と、を備え、前記第1フィルタ回路は、前記正極性入力経路と前記フレームグランドとの間に直列接続される第1コンデンサ及び第1フェライトビーズと、前記負極性入力経路と前記フレームグランドとの間に直列接続される第2コンデンサ及び第2フェライトビーズと、を備え、前記第2フィルタ回路は、前記正極性出力経路と前記フレームグランドとの間に直列接続される第3コンデンサ及び第3フェライトビーズと、前記負極性出力経路と前記フレームグランドとの間に直列接続される第4コンデンサ及び第4フェライトビーズと、を備え、前記第1フェライトビーズ及び前記第2フェライトビーズは、150kHz以上1MHz以下の低周波数帯域において低インピーダンスとなり、30MHz以上108MHz以下の高周波数帯域において、前記低周波数帯域よりも高インピーダンスとなり、前記第1フィルタ回路は、前記低周波数帯域において低インピーダンスとなり、前記高周波数帯域において高インピーダンスとなり、前記第2フィルタ回路及び前記フレームグランドを介して、前記直流電力の正極性出力経路及び負極性出力経路から前記交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路に流れ込むコモンモードノイズの前記高周波数帯域の成分の通過を抑制する。
【0009】
この構成では、直流電力の正極性出力経路及び負極性出力経路から交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路へのコモンモードノイズの高周波数帯域成分の漏出を抑制することができる。
【0010】
本開示の一側面の車載用電力変換装置は、交流電源から入力される交流電力を直流電力に変換して車載バッテリーに供給する車載用電力変換装置であって、電力変換回路と、配線を介して接地されるフレームグランドと、前記交流電源に接続され、前記電力変換回路に入力される交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路と、前記車載バッテリーに接続され、前記電力変換回路から出力される直流電力の正極性出力経路及び負極性出力経路と、前記正極性入力経路と前記負極性入力経路との間に設けられた第1フィルタ回路と、前記正極性出力経路と前記負極性出力経路との間に設けられた第2フィルタ回路と、を備え、前記第1フィルタ回路は、前記正極性入力経路と前記フレームグランドとの間に直列接続される第1コンデンサ及び第1フェライトビーズと、前記負極性入力経路と前記フレームグランドとの間に直列接続される第2コンデンサ及び第2フェライトビーズと、を備え、前記第2フィルタ回路は、前記正極性出力経路と前記フレームグランドとの間に直列接続される第3コンデンサ及び第3フェライトビーズと、前記負極性出力経路と前記フレームグランドとの間に直列接続される第4コンデンサ及び第4フェライトビーズと、を備え、前記第1フェライトビーズ、前記第2フェライトビーズ、前記第3フェライトビーズ、及び前記第4フェライトビーズは、150kHz以上1MHz以下の低周波数帯域において低インピーダンスとなり、30MHz以上108MHz以下の高周波数帯域において、前記低周波数帯域よりも高インピーダンスとなり、前記第1フィルタ回路は、前記低周波数帯域において低インピーダンスとなり、前記高周波数帯域において高インピーダンスとなり、前記第2フィルタ回路及び前記フレームグランドを介して、前記直流電力の正極性出力経路及び負極性出力経路から前記交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路に流れ込むコモンモードノイズの前記高周波数帯域の成分の通過を抑制し、前記第2フィルタ回路は、前記低周波数帯域において低インピーダンスとなり、前記高周波数帯域において高インピーダンスとなり、前記第1フィルタ回路及び前記フレームグランドを介して、前記交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路から前記直流電力の正極性出力経路及び負極性出力経路に流れ込むコモンモードノイズの前記高周波数帯域の成分の通過を抑制する。
【0011】
この構成では、直流電力の正極性出力経路及び負極性出力経路から交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路へのコモンモードノイズの高周波数帯域成分の漏出を抑制することができる。また、交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路から直流電力の正極性出力経路及び負極性出力経路へのコモンモードノイズの高周波数帯域成分の漏出を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、コモンモードノイズの高周波数帯域成分の漏出を抑制することができる車載用電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態1に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。
図2図2は、比較例に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。
図3図3は、Yキャパシタを備えていない場合のAC側の伝導ノイズの一例を示す図である。
図4図4は、Yキャパシタを備えていない場合のDC側の伝導ノイズの一例を示す図である。
図5図5は、実施形態2に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。
図6図6は、実施形態3に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。
図7図7は、実施形態4に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。
図8図8は、実施形態5に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。
図9図9は、実施形態5の第1変形例に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。
図10図10は、実施形態5の第2変形例に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。
図11図11は、実施形態5の第3変形例に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、実施形態に係る電力変換装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。実施形態2以降では、実施形態1と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0015】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。
【0016】
本実施形態に係る電力変換装置1は、例えば、EVやPHEVに搭載される車載バッテリーを充電するためのOBCが例示される。電力変換装置1は、交流電源2(例えば、充電スタンド等の商用電源)から入力されるACをDCに変換して、負荷3(例えば、車載バッテリー)に供給する。
【0017】
図1に示すように、電力変換装置1は、電力変換回路10と、フレームグランドFGと、ACの正極性入力経路Aと負極性入力経路A’との間に設けられた第1フィルタ回路11と、DCの正極性出力経路Bと負極性出力経路B’との間に設けられた第2フィルタ回路12とを備える。以下、ACの正極性入力経路Aと負極性入力経路A’とをまとめて「ACライン」とも称する。また、DCの正極性出力経路Bと負極性出力経路B’とをまとめて「DCライン」とも称する。
【0018】
電力変換回路10は、例えば、整流回路、力率改善回路、DC/DCコンバータ等で構成される。電力変換回路10は、ACラインから入力されるACをDCに変換して、DCラインに出力する。
【0019】
フレームグランドFGは、例えばOBCの金属筐体である。フレームグランドFGは、配線4を介して接地される。配線4は、例えばEVやPHEVに車載される充電ケーブルのシールド編組線である。
【0020】
第1フィルタ回路11は、ACラインに重畳するコモンモードノイズを抑制するために、電力変換回路10の前段に設けられたフィルタ回路である。第1フィルタ回路11は、ACの正極性入力経路AとフレームグランドFGとの間に直列接続される第1コンデンサC1及び第1フェライトビーズFB1と、ACの負極性入力経路A’とフレームグランドFGとの間に直列接続される第2コンデンサC2及び第2フェライトビーズFB2とを備える。第1コンデンサC1と第2コンデンサC2とは、ACラインとフレームグランドFGとの間に接続されるYキャパシタ(ラインバイパスコンデンサ)を構成する。ACラインに重畳するコモンモードノイズは、第1フィルタ回路11を介してフレームグランドFGに流れる。
【0021】
第2フィルタ回路12は、DCラインに重畳するコモンモードノイズを抑制するために、電力変換回路10の後段に設けられたフィルタ回路である。第2フィルタ回路12は、DCの正極性出力経路BとフレームグランドFGとの間に接続される第3コンデンサC3と、DCの負極性出力経路B’とフレームグランドFGとの間に接続される第4コンデンサC4とを備える。第3コンデンサC3と第4コンデンサC4とは、DCラインとフレームグランドFGとの間に接続されるYキャパシタ(ラインバイパスコンデンサ)を構成する。DCラインに重畳するコモンモードノイズは、第2フィルタ回路12を介してフレームグランドFGに流れる。
【0022】
以下、上述した実施形態1に係る電力変換装置1の構成主旨について、比較例を参照して説明する。図2は、比較例に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。
【0023】
図2に示す比較例の電力変換装置100において、電力変換回路110の前段に設けられた第1フィルタ回路111は、図1に示す実施形態1に係る電力変換装置1の構成に対し、第1フェライトビーズFB1及び第2フェライトビーズFB2を有していない。
【0024】
図3は、Yキャパシタを備えていない場合のAC側の伝導ノイズの一例を示す図である。図3に示す直線は、CIRPR14においてACラインの伝導ノイズの規格値を例示している。一般に、図3に示すACラインの伝導ノイズの許容値が規定される周波数範囲(例えば、CIRPR14では150kHz以上30MHz以下)において、ACラインの伝導ノイズが規格値を超えないように、第1フィルタ回路111のYキャパシタを構成する第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の容量値が設定される。
【0025】
図4は、Yキャパシタを備えていない場合のDC側の伝導ノイズの一例を示す図である。図4に示す直線は、CISPR25において車載用電子機器の電源ハーネスに重畳する伝導ノイズの規格値を例示している。一般に、図4に示すDCラインの伝導ノイズの規格値が規定される周波数範囲(例えば、CIRPR25では150kHz以上108MHz以下)において、DCラインの伝導ノイズが規格値を超えないように、第2フィルタ回路112のYキャパシタを構成する第3コンデンサC3及び第4コンデンサC4の容量値が設定される。
【0026】
フレームグランドFGは、上述したように、例えばEVやPHEVに車載される充電ケーブルのシールド編組線等の配線4で接地される。この配線4には、寄生インダクタンス成分Lpが含まれる。この寄生インダクタンスは、低周波で低インピーダンス、高周波で高インピーダンスとなる特徴がある。
【0027】
このため、第1フィルタ回路111からフレームグランドFGに流れたACラインのコモンモードノイズの高周波成分は、接地電位GNDに流れず第2フィルタ回路112を介してDCラインに流れ込む可能性がある。
【0028】
また、同様に、第2フィルタ回路112からフレームグランドFGに流れたDCラインのコモンモードノイズの高周波成分は、接地電位GNDに流れず第1フィルタ回路111を介してACラインに流れ込む可能性がある。
【0029】
ここで、図3に示すACラインの伝導ノイズは、低周波数帯域(例えば、150kHz以上1MHz以下)でノイズレベルが高く、高周波帯域(例えば、30MHz)でノイズレベルが低い。このため、Yキャパシタは、主に低周波数帯域のノイズ低減のために用いられる。
【0030】
一方、図4に示すDCラインの伝導ノイズは、高周波数帯域(例えば、30MHz以上108MHz以下)でノイズレベルが高い。このため、Yキャパシタは、主に高周波数帯域のノイズ低減のために用いられる。
【0031】
ここで、図2に示す比較例では、第2フィルタ回路112からフレームグランドFGに流れたDCラインのコモンモードノイズの高周波成分が第1フィルタ回路111を介してACラインに流れ込むことで、高周波数帯域(例えば、30MHz)におけるACラインの伝導ノイズが規格値を超える可能性がある。
【0032】
本実施形態に係る電力変換装置1では、図1に示すように、図2に示す比較例の電力変換装置100の第1フィルタ回路111に対し、Yキャパシタを構成する第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2にそれぞれ第1フェライトビーズFB1及び第2フェライトビーズFB2を直列接続している。フェライトビーズは、低周波数帯域(例えば150kHz以上1MHz以下)で低インピーダンス、高周波数帯域(例えば、30MHz以上108MHz以下)で高インピーダンスとなる特徴がある。これにより、第2フィルタ回路12、フレームグランドFG、及び第1フィルタ回路11を介してACラインに流れ込むDCラインのコモンモードノイズの高周波成分を抑制することができる。
【0033】
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。なお、実施形態1と同じ構成要素には、同じ参照符号を付して、説明を省略する。
【0034】
実施形態2に係る電力変換装置1aでは、実施形態1に係る電力変換装置1に対し、交流電源2と第1フィルタ回路11との間にコモンモードチョークコイル13を備えている。これにより、ACラインに重畳する低周波数帯域のコモンモードノイズを実施形態1よりも低減することができ、ACラインの伝導ノイズをさらに抑制することができる。
【0035】
(実施形態3)
図6は、実施形態3に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。なお、実施形態1あるいは実施形態2と同じ構成要素には、同じ参照符号を付して、説明を省略する。
【0036】
実施形態3に係る電力変換装置1bでは、実施形態2に係る電力変換装置1aに対し、第1フィルタ回路11と電力変換回路10との間にコモンモードチョークコイル14を備えている。これにより、ACラインに重畳するコモンモードノイズを実施形態2よりも低減することができ、ACラインの伝導ノイズをさらに抑制することができる。
【0037】
なお、実施形態2のコモンモードチョークコイル13に代えて、コモンモードチョークコイル14備えた構成であっても良い。
【0038】
(実施形態4)
図7は、実施形態4に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。なお、実施形態1、実施形態2、あるいは実施形態3と同じ構成要素には、同じ参照符号を付して、説明を省略する。
【0039】
実施形態4に係る電力変換装置1cでは、実施形態3に係る電力変換装置1bに対し、電力変換回路10と第2フィルタ回路12との間にコモンモードチョークコイル15を備えている。これにより、DCラインに重畳するコモンモードノイズを実施形態1よりも低減することができ、DCラインの伝導ノイズをさらに抑制することができる。
【0040】
なお、コモンモードチョークコイル13及びコモンモードチョークコイル14のいずれか一方あるいは双方を備えていない構成であっても良い。
【0041】
(実施形態5)
図8は、実施形態5に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。図9は、実施形態5の第1変形例に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。図10は、実施形態5の第2変形例に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。図11は、実施形態5の第3変形例に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。なお、実施形態1、実施形態2、実施形態3、あるいは実施形態4と同じ構成要素には、同じ参照符号を付して、説明を省略する。
【0042】
実施形態5に係る電力変換装置1dにおいて、第2フィルタ回路12aは、DCの正極性出力経路BとフレームグランドFGとの間に直列接続される第3コンデンサC3及び第3フェライトビーズFB3と、DCの負極性出力経路B’とフレームグランドFGとの間に直列接続される第4コンデンサC4及び第4フェライトビーズFB4とを備える。これにより、第1フィルタ回路11、フレームグランドFG、及び第2フィルタ回路12を介してDCラインに流れ込むACラインのコモンモードノイズの高周波成分を抑制することができる。
【0043】
なお、図9に示す実施形態5の変形例1に係る電力変換装置1eのように、図8に示した構成に対し、交流電源2と第1フィルタ回路11との間にコモンモードチョークコイル13を備えた構成としても良い。これにより、ACラインに重畳するコモンモードノイズを実施形態1よりも低減することができ、ACラインの伝導ノイズをさらに抑制することができる。
【0044】
また、図10に示す実施形態5の変形例2に係る電力変換装置1fのように、図9に示した構成に対し、第1フィルタ回路11と電力変換回路10との間にコモンモードチョークコイル14を備えた構成としても良い。これにより、ACラインに重畳するコモンモードノイズを実施形態2よりも低減することができ、ACラインの伝導ノイズをさらに抑制することができる。
【0045】
なお、コモンモードチョークコイル13に代えて、コモンモードチョークコイル14を備えた構成であっても良い。
【0046】
また、図11に示す実施形態5の変形例3に係る電力変換装置1gのように、図10に示した構成に対し、電力変換回路10と第2フィルタ回路12との間にコモンモードチョークコイル15を備えた構成としても良い。これにより、DCラインに重畳するコモンモードノイズを図8図9図10に示す構成よりも低減することができ、DCラインの伝導ノイズを抑制することができる。
【0047】
なお、コモンモードチョークコイル13及びコモンモードチョークコイル14のいずれか一方あるいは双方を備えていない構成であっても良い。
【0048】
上記した各実施形態は、本開示の理解を容易にするためのものであり、本開示を限定して解釈するためのものではない。本開示は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本開示にはその等価物も含まれる。
【0049】
また、本開示は、上述したように、あるいは、上述に代えて、以下の構成をとることができる。
【0050】
(1)本開示の一側面の車載用電力変換装置は、交流電源から入力される交流電力を直流電力に変換して車載バッテリーに供給する車載用電力変換装置であって、電力変換回路と、配線を介して接地されるフレームグランドと、前記交流電源に接続され、前記電力変換回路に入力される交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路と、前記車載バッテリーに接続され、前記電力変換回路から出力される直流電力の正極性出力経路及び負極性出力経路と、前記正極性入力経路と前記負極性入力経路との間に設けられた第1フィルタ回路と、前記正極性出力経路と前記負極性出力経路との間に設けられた第2フィルタ回路と、を備え、前記第1フィルタ回路は、前記正極性入力経路と前記フレームグランドとの間に直列接続される第1コンデンサ及び第1フェライトビーズと、前記負極性入力経路と前記フレームグランドとの間に直列接続される第2コンデンサ及び第2フェライトビーズと、を備え、前記第2フィルタ回路は、前記正極性出力経路と前記フレームグランドとの間に接続される第3コンデンサと、前記負極性出力経路と前記フレームグランドとの間に接続される第4コンデンサと、を備え、前記第1フェライトビーズ及び前記第2フェライトビーズは、150kHz以上1MHz以下の低周波数帯域において低インピーダンスとなり、30MHz以上108MHz以下の高周波数帯域において、前記低周波数帯域よりも高インピーダンスとなり、前記第1フィルタ回路は、前記低周波数帯域において低インピーダンスとなり、前記高周波数帯域において高インピーダンスとなり、前記第2フィルタ回路及び前記フレームグランドを介して、前記直流電力の正極性出力経路及び負極性出力経路から前記交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路に流れ込むコモンモードノイズの前記高周波数帯域の成分の通過を抑制する。
【0051】
この構成では、直流電力の正極性出力経路及び負極性出力経路から交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路へのコモンモードノイズの高周波数帯域成分の漏出を抑制することができる。
【0052】
(2)本開示の一側面の車載用電力変換装置は、交流電源から入力される交流電力を直流電力に変換して車載バッテリーに供給する車載用電力変換装置であって、電力変換回路と、配線を介して接地されるフレームグランドと、前記交流電源に接続され、前記電力変換回路に入力される交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路と、前記車載バッテリーに接続され、前記電力変換回路から出力される直流電力の正極性出力経路及び負極性出力経路と、前記正極性入力経路と前記負極性入力経路との間に設けられた第1フィルタ回路と、前記正極性出力経路と前記負極性出力経路との間に設けられた第2フィルタ回路と、を備え、前記第1フィルタ回路は、前記正極性入力経路と前記フレームグランドとの間に直列接続される第1コンデンサ及び第1フェライトビーズと、前記負極性入力経路と前記フレームグランドとの間に直列接続される第2コンデンサ及び第2フェライトビーズと、を備え、前記第2フィルタ回路は、前記正極性出力経路と前記フレームグランドとの間に直列接続される第3コンデンサ及び第3フェライトビーズと、前記負極性出力経路と前記フレームグランドとの間に直列接続される第4コンデンサ及び第4フェライトビーズと、を備え、前記第1フェライトビーズ、前記第2フェライトビーズ、前記第3フェライトビーズ、及び前記第4フェライトビーズは、150kHz以上1MHz以下の低周波数帯域において低インピーダンスとなり、30MHz以上108MHz以下の高周波数帯域において、前記低周波数帯域よりも高インピーダンスとなり、前記第1フィルタ回路は、前記低周波数帯域において低インピーダンスとなり、前記高周波数帯域において高インピーダンスとなり、前記第2フィルタ回路及び前記フレームグランドを介して、前記直流電力の正極性出力経路及び負極性出力経路から前記交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路に流れ込むコモンモードノイズの前記高周波数帯域の成分の通過を抑制し、前記第2フィルタ回路は、前記低周波数帯域において低インピーダンスとなり、前記高周波数帯域において高インピーダンスとなり、前記第1フィルタ回路及び前記フレームグランドを介して、前記交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路から前記直流電力の正極性出力経路及び負極性出力経路に流れ込むコモンモードノイズの前記高周波数帯域の成分の通過を抑制する。
【0053】
この構成では、直流電力の正極性出力経路及び負極性出力経路から交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路へのコモンモードノイズの高周波数帯域成分の漏出を抑制することができる。また、交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路から直流電力の正極性出力経路及び負極性出力経路へのコモンモードノイズの高周波数帯域成分の漏出を抑制することができる。
【0054】
(3)上記(1)又は(2)の車載用電力変換装置において、前記交流電源と前記第1フィルタ回路との間にコモンモードチョークコイルを備えると良い。
【0055】
この構成では、交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路に重畳するコモンモードノイズを上記(1)又は(2)よりも低減することができる。
【0056】
(4)上記(1)から(3)の車載用電力変換装置において、前記第1フィルタ回路と前記電力変換回路との間にコモンモードチョークコイルを備えると良い。
【0057】
この構成では、交流電力の正極性入力経路及び負極性入力経路に重畳する低周波数帯域のコモンモードノイズを上記(1)又は(2)よりも低減することができる。
【0058】
(5)上記(1)から(4)の車載用電力変換装置において、前記電力変換回路と前記第2フィルタ回路との間にコモンモードチョークコイルを備えると良い。
【0059】
この構成では、直流電力の正極性出力経路及び負極性出力経路に重畳するコモンモードノイズを上記(1)又は(2)よりも低減することができる。
【0060】
本開示により、コモンモードノイズの高周波数帯域成分の漏出を抑制することができる車載用電力変換装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 電力変換装置
2 交流電源
3 負荷
4 配線
10 電力変換回路
11 第1フィルタ回路
12,12a 第2フィルタ回路
100 電力変換装置
110 電力変換回路
111 第1フィルタ回路
112 第2フィルタ回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11