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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003644
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】マイクロスコープ
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/04 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
A61C19/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102927
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000141598
【氏名又は名称】株式会社吉田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 通三
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052NN03
4C052NN04
4C052NN15
(57)【要約】
【課題】治療用器具に遮られて観察不可能な部位の観察をすることができるマイクロスコープを提供することを課題とする。
【解決手段】マイクロスコープ3は、被写体Sを観察する第1観察光学系4と、第1観察光学系4によって被写体S観察する向きが異なり、第1観察光学系4の撮影部42を共有する第2観察光学系5と、を備えている。第2観察光学系5は、被写体Sからの光路Pの方向を変換させる光路変更手段と、光路変更手段を、撮影部42と被写体Sを結ぶ直線に対して異なる方向に移動させるための観察位置移動手段7と、光路変更手段の移動に伴って、光路変更手段の角度θ1,θ2を制御する観察角度制御手段8と、を具備する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を観察する第1観察光学系と、
当該第1観察光学系によって前記被写体を観察する向きが異なり、前記第1観察光学系の撮影部を共有する第2観察光学系と、を備えたマイクロスコープであって、
前記第2観察光学系は、
前記被写体からの光路Pの方向を変換させる光路変更手段と、
前記光路変更手段を、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線に対して異なる方向に移動させるための観察位置移動手段と、
前記光路変更手段の移動に伴って、前記光路変更手段の角度を制御する観察角度制御手段と、
を具備する、
マイクロスコープ。
【請求項2】
被写体を観察する第1観察光学系と、
当該第1観察光学系によって前記被写体を観察する向きが異なり、前記第1観察光学系の撮影部を共有する第2観察光学系と、を備えたマイクロスコープであって、
前記第2観察光学系は、
前記被写体からの光路を第1光路変更手段の方向に変換させる第2光路変更手段と、
前記第2光路変更手段を、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線に対して異なる方向に移動させるための観察位置移動手段と、
前記第2光路変更手段の移動に伴って前記第2光路変更手段の角度を制御する観察角度制御手段と、
を具備する、
マイクロスコープ。
【請求項3】
前記撮影部を2分割して立体観察を可能にした
請求項1または請求項2に記載のマイクロスコープ。
【請求項4】
前記観察位置移動手段の移動によって得られる前記被写体の映像の大きさを調整するためのズーム手段を具備した、
請求項1または請求項2に記載のマイクロスコープ。
【請求項5】
前記観察位置移動手段は、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線を軸にして水平に旋回可能な旋回機構を具備した、
請求項1または請求項2に記載のマイクロスコープ。
【請求項6】
前記撮影部と前記被写体とを結ぶ直線上に設けられた前記第1光路変更手段を直線方向の撮影の邪魔にならない位置に退避可能な観察位置移動手段を具備した、
請求項2に記載のマイクロスコープ。
【請求項7】
前記異なる方向とは、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線に対して60度から95度の範囲の任意な角度の方向である、
請求項1または請求項2に記載のマイクロスコープ。
【請求項8】
前記第2光路変更手段は、ミラーまたはプリズムから成り、
前記観察位置移動手段は、前記ミラーまたはプリズムを、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線に対して略直角方向に移動させ、
前記観察角度制御手段は、前記ミラーまたはプリズムを、前記観察位置移動手段によって移動した距離に合わせて回動させて傾き角度を調整する、
請求項2に記載のマイクロスコープ。
【請求項9】
前記第2光路変更手段は、ミラーまたはプリズムによって構成され、
前記観察位置移動手段は、前記第2光路変更手段を収容した観察アームと、
前記観察アームの側面に形成されて、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線に対して異なる方向に延設された回動軸挿入孔と、
前記第2光路変更手段に連結された回動軸と、
前記回動軸に設けられて前記回動軸挿入孔に沿って移動可能なツマミと、を備え、
前記観察角度制御手段は、前記ツマミを回動させることで、前記第2光路変更手段を、前記観察位置移動手段によって移動した距離に合わせて回動させて傾き角度を調整する、
請求項2に記載のマイクロスコープ。
【請求項10】
前記観察角度制御手段は、前記ツマミを引いて前記第2光路変更手段を任意の位置に移動して、前記ツマミを回動させて反射角度を決めた際に、前記ツマミをロックするためのばね部材と摩擦板とを有している、
請求項9に記載のマイクロスコープ。
【請求項11】
前記第2光路変更手段は、ミラーまたはプリズムによって構成され、
前記観察位置移動手段は、前記第2光路変更手段を、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線に対して略直角方向に移動させ、
前記観察角度制御手段は、前記第2光路変更手段を収容した観察アームと、
前記観察アーム内に設けられて、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線に対して異なる方向に延設されたラックと、
前記観察アーム内に、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線に対して略直角方向に移動可能に配置された基台と、
前記基台に回転自在に軸支されて、前記ラックに噛合して回転することで、前記ラックに沿って移動するピニオンと、
前記ピニオンに噛合して、前記第2光路変更手段の回転軸を中心として回転させると共に、前記基台と共に前記ラックに沿って移動可能な歯車を備えた、
請求項2に記載のマイクロスコープ。
【請求項12】
前記第2光路変更手段は、ミラーまたはプリズムによって構成され、
前記観察位置移動手段は、前記第2光路変更手段を、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線に対して略直角方向に移動させるための第1モータを備え、
前記観察角度制御手段は、前記第2光路変更手段を、前記観察位置移動手段によって移動した距離に合わせて回動させて傾き角度を調整するための第2モータを備えた、
請求項2に記載のマイクロスコープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロスコープに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、歯科診療装置による歯科診療を行う場合や、手術を行う場合には、精密な処置や、診断を行うために、マイクロスコープ(顕微鏡)や、撮影装置(カメラ)が使用されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の医療用光学撮影装置、及び、特許文献2に記載の手術用顕微鏡は、使用する際に、治療する患者の患部の上方に撮影装置や、第1の観察手段及び第2の観察手段を配置して上方から患部を観察する構造になっている。
また、特許文献2に記載の手術用顕微鏡は、対物の光学系を回転させたときに接眼側の光学系を連動して水平方向に回転させる像方向補正手段を備えている(特許文献2の図8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2021/053990号
【特許文献2】特開平8-131455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の医療用光学撮影装置、及び、特許文献2に記載の手術用顕微鏡は、治療する際に、患部の上方に撮影装置や観察手段が配置されるので、治療用器具で被写体である患部が邪魔されて観察できなくなるという問題点があった。
【0006】
また、特許文献2に記載の手術用顕微鏡は、接眼側の光学系を水平方向に回転させる像方向補正手段を有することで、横方向からの観察を可能にしている。しかし、特許文献2に記載の手術用顕微鏡のように、接眼側の光学系を単に回転させただけでは、治療用器具で隠れた被写体の状態を解消することができず、被写体を観察することができない場合があった。
【0007】
図9は、従来のデジタルマイクロスコープ100を使用して歯科治療を行っているときの状態を示す説明図である。
【0008】
図9に示すように、歯科治療において、術者Mがデジタルマイクロスコープ100を使用して患者Pの患部を観察しながら治療を行う場合は、タービン等の歯科治療器具200が、患部の上方に配置される。このため、デジタルマイクロスコープ100で患部を観察する場合は、患部が歯科治療器具200によって遮られて死角となり、観察することができなくなるという問題点があった。
【0009】
また、術者Mは、ルーペ300を使用して患部を治療する際に、歯科治療器具200で視界が妨げられるので、死角にならないように視る態勢を変えることで、歯科治療器具200を避けて、患部を観察しながら治療を行わなければならない。このため、術者Mは、無理な態勢で治療を強いられる場合があるという問題点があった。
【0010】
また、ルーペ300を使用しない場合は、治療時と観察時に、その都度デジタルマイクロスコープ100の向きを変更しなければならないので、煩わしい位置付け作業が必要であった。
【0011】
そこで、本発明は、治療用器具に遮られて観察不可能な部位の観察をすることができるマイクロスコープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明に係るマイクロスコープは、被写体を観察する第1観察光学系と、当該第1観察光学系によって前記被写体を観察する向きが異なり、前記第1観察光学系の撮影部を共有する第2観察光学系と、を備えたマイクロスコープであって、前記第2観察光学系は、前記被写体からの光路の方向を変換させる光路変更手段と、前記光路変更手段を、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線に対して異なる方向に移動させるための観察位置移動手段と、前記光路変更手段の移動に伴って、前記光路変更手段の角度を制御する観察角度制御手段と、を具備する。
【0013】
また、本発明に係るマイクロスコープは、被写体を観察する第1観察光学系と、当該第1観察光学系によって前記被写体を観察する向きが異なり、前記第1観察光学系の撮影部を共有する第2観察光学系と、を備えたマイクロスコープであって、前記第2観察光学系は、前記被写体からの光路を第1光路変更手段の方向に変換させる第2光路変更手段と、前記第2光路変更手段を、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線に対して異なる方向に移動させるための観察位置移動手段と、前記第2光路変更手段の移動に伴って前記第2光路変更手段の角度を制御する観察角度制御手段と、を具備する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、治療用器具に遮られて観察不可能な部位の観察をすることができるマイクロスコープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】本発明の実施形態1に係るマイクロスコープを示す説明図である。
図1B】本発明の実施形態1に係るマイクロスコープを示す図で、立体観察時の状態を示す説明図である。
図1C】本発明の実施形態1に係るマイクロスコープを示す図で、側方観察時の状態を示す説明図である。
図1D】本発明の実施形態1に係るマイクロスコープの使用状態を示す図で、撮影部と被写体を結ぶ直線(光軸)に対する光路変更手段の角度の一例を示す説明図である。
図1E】本発明の実施形態1に係るマイクロスコープの使用状態を示す図で、撮影部と被写体を結ぶ直線(光軸)に対する第2光路変更手段の角度が略直角の場合の回転リングの取り付け方の一例を示す説明図である。
図2A】本発明の実施形態2に係るマイクロスコープを示す説明図である。
図2B】本発明の実施形態2に係るマイクロスコープと表示装置の設置状態を示す説明図である。
図2C】本発明の実施形態2に係るマイクロスコープを示す図で、立体観察時の表示装置の画像の表示状態を示す説明図である。
図3A】本発明の実施形態3に係るマイクロスコープを示す説明図である。
図3B】本発明の実施形態3に係るマイクロスコープと表示装置の設置状態を示す説明図である。
図3C】本発明の実施形態3に係るマイクロスコープを示す図で、立体観察時の表示装置の画像の表示状態を示す説明図である。
図4A】本発明の実施形態4に係るマイクロスコープを示す説明図である。
図4B】本発明の実施形態4に係るマイクロスコープを示す図で、上方観察時及び側方観察時の表示装置の画像の表示状態を示す説明図である。
図5A】本発明の実施形態5に係るマイクロスコープを示す説明図である。
図5B】ツマミロック時の図5AのVB-VB拡大概略断面図である。
図5C】矢視位置設定時の図5AのVB-VB拡大概略断面図である。
図6】本発明の実施形態6に係るマイクロスコープを示す説明図である。
図7】本発明の実施形態7に係るマイクロスコープを示す説明図である。
図8】本発明の実施形態8に係るマイクロスコープを示す説明図である。
図9】従来のデジタルマイクロスコープを使用して歯科治療を行っているときの状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態1]
次に、図1A及び図1Bを参照して、本発明の実施形態1に係るマイクロスコープ3を説明する。マイクロスコープ3を説明する前に、まず、マイクロスコープ3を取り付けた診療装置1を説明する。
なお、実施形態1では、図1Aに示すマイクロスコープ3において、撮影部42側を上方向、被写体S側を下方向、第1光路変更手段45側を左方向、第2光路変更手段46側を右方向として説明する。また、以下の説明において、同一の構成のものは、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0017】
≪診療装置≫
図1Aに示す診療装置1は、マイクロスコープ3と、表示装置9(図1B及び図1C参照)と、を備えた医療機器である。この診療装置1は、術者Mが表示装置9で患部を確認しながら診断するための装置である。
なお、診療装置1は、少なくとも、マイクロスコープ3と、表示装置9(図1B及び図1C参照)と、を備えて、医療の診断及び治療を行う装置であればよく、使用用途、設置場所、構造等は特に限定されない。以下、診療装置1の一例として、マイクロスコープ3を取り付けた歯科用治療ユニット2(図1D参照)によって、口腔内の歯牙等を被写体Sとする場合を例に挙げて説明する。
【0018】
≪マイクロスコープ≫
マイクロスコープ3は、患者P(図1D参照)の患部を観察するための観察光学装置である。マイクロスコープ3は、第1観察光学系4と、第2観察光学系5と、観察位置移動手段7と、観察角度制御手段8と、を有する。実施形態1のマイクロスコープ3は、単眼のデジタルマイクロスコープから成る。
【0019】
なお、マイクロスコープ3は、第1観察光学系4と、第2観察光学系5と、観察位置移動手段7と、観察角度制御手段8と、を備えて、医療の診断及び治療を行う装置であればよく、使用用途、設置場所、構造等は、診療装置1と同様、特に限定されない。
つまり、マイクロスコープ3は、歯科用マイクロスコープに限定されず、歯科以外の医療用観察装置として使用できることはもちろん、物体等を立体体観察したり、側方観察したりするものにも利用可能である。
【0020】
<第1観察光学系>
図1Aに示すように、第1観察光学系4は、患者P(図1D参照)の口腔内の被写体Sを上方から観察する立体観察用の硬性鏡である。第1観察光学系4は、筐体41と、撮影部42と、ズーム手段43と、旋回機構44と、第1光路変更手段45と、第2光路変更手段46と、観察アーム47と、を備えて構成されている。
【0021】
<筐体>
筐体41は、筐体41の上部側から、被写体Sを撮影するための撮影部42、ズーム手段43を順に収容するための金属製の筒体である。筐体41は、スコープ用スタンド(図示省略)に支持されている。その筐体41の下側には、旋回機構44を介在して観察アーム47が設けられている。
【0022】
<撮影部>
撮影部42は、患者Pの口腔内の被写体Sを撮影するための観察用の撮像手段である。撮影部42は、例えば、CMOSカメラあるいはCCDカメラから成る。撮影部42は、CMOSカメラあるいはCCDカメラの前面に被写体Sの映像を映すように構成されている。撮影部42は、制御装置(図示省略)を介して表示装置9(図1B図1D参照)に電気的に接続されて、撮影部42の映像が表示装置9に表示されるようになっている。撮影部42は、オートフォーカス機能を有している。
【0023】
<ズーム手段>
図1Dに示すように、ズーム手段43は、観察位置移動手段7によって第2光路変更手段46を略水平方向(矢印b方向)に移動させて側方観察を可能にした場合、観察位置が遠くなって映像が小さくなるため、観察位置に合わせてズーム拡大させるズーム拡大機構である。つまり、観察位置移動手段7によって第2光路変更手段46を略水平方向(矢印b方向)に移動させた場合は、第1光路変更手段45から被写体Sまでの距離L1に対して、第1光路変更手段45から第2光路変更手段46を介して被写体Sまでの距離L2が遠くなる。ズーム手段43は、その距離L2に合わせてズーム拡大させることで、図1Bに示す立体観察用の表示91aと、図1Cに示す側方観察用の表示91bと、を同じ大きさで表示させることができる。
【0024】
図1Aに示すように、ズーム手段43は、ズームレンズと、倍率を調節するための変倍手段(図示省略)と、を備えたズーム光学系431から成る。ズーム手段43は、観察位置移動手段7の移動によって得られる被写体Sの映像の大きさを調整するため装置である。このため、マイクロスコープ3は、観察位置移動手段7の移動によって得られる被写体Sの映像の大きさを調整するためのズーム機能を具備している。なお、ズーム手段43は、光学ズームに限定されず、デジタルズームであってもよい。
【0025】
<旋回機構>
図1Aに示すように、旋回機構44は、観察アーム47の軸心(光軸O1)上に設けた回転リング441を、光軸O1を中心として略水平に旋回させることで、観察アーム47の向きを適宜な方向に向けるための機構である。このため、旋回機構44は、観察アーム47を術者Mの利き腕に対応した観察位置に旋回させることができる。
なお、図1Eに示すように、観察アーム47が傾斜している場合は、筐体41が傾斜した状態を維持したまま撮影部42と被写体Sを結ぶ直線を軸にして第2観察光学系5の側方観察手段50を旋回可能になっている。
【0026】
かかる構成によれば、マイクロスコープ3は、旋回機構44を有することで、術者Mの利き腕に対応させて、撮影部42と被写体Sを結ぶ直線を軸(光軸O1)にして水平に適宜な位置に旋回させることが可能な水平旋回機能を有している。
【0027】
<第1光路変更手段>
第1光路変更手段45は、被写体Sからの光路Pを直接撮影部42に向かうものと、第2光路変更手段46経由で撮影部42向かうものと、を切り換えるための光路変更手段である。第1光路変更手段45は、視野方向切換回転軸6によって上方映像を撮影可能な状態と、側方映像を撮影可能な状態と、に回動するミラー451から成る。第1光路変更手段45は、視野方向切換回転軸6を中心に回動させることによって、ミラー451を軸心(光軸O1)上から退避させることで、被写体Sからの光を、ズーム手段43を介して撮影部42に真っすぐに進むように開放する。
【0028】
また、第1光路変更手段45は、視野方向切換回転軸6によって、ミラー451を光軸O1上に斜めの状態に回動することで、被写体Sからの光を、第2光路変更手段46を介して撮影部42の方向に進むように反射させる。
【0029】
<第2光路変更手段>
第2光路変更手段46(光路変更手段)は、被写体Sからの光路Pの方向を変換させるための反射部材である。第2光路変更手段46は、被写体Sからの光の進行方向を第1光路変更手段45(光軸O1)方向に変えるミラーまたはプリズム461から成る。
ミラーまたはプリズム461の軸心部は、観察アーム47内に設けられた基台(図示省略)に回動自在に軸支されている。ミラーまたはプリズム461は、観察角度制御手段8によって回動して傾きを調整できると共に、観察位置移動手段7によって観察アーム47の延在する方向に移動可能に配置されている。
かかる構成によれば、マイクロスコープ3は、ミラーまたはプリズム461を設けたことによって、治療用器具10を避けた位置から側方撮影をすることが可能となる。
【0030】
<観察アーム>
観察アーム47は、第1光路変更手段45と、第2光路変更手段46と、視野方向切換回転軸6と、観察位置移動手段7と、観察角度制御手段8と、基台(図示省略)と、を収容したハウジングである。観察アーム47は、軸心(光軸O1)を中心として遠心方向に水平方向に延設されている。観察アーム47内には、第2光路変更手段46と、視野方向切換回転軸6と、観察位置移動手段7と、観察角度制御手段8と、を支持する基台(図示省略)が設けられている。
【0031】
<視野方向切換回転軸>
視野方向切換回転軸6は、撮影部42と被写体Sを結ぶ直線(光軸O1)上に設けられた第1光路変更手段45を、図1Bに示す上方映像の撮影を可能な状態と、図1Cに示す側方映像の撮影を可能な状態と、に切り換える回動切換軸である。図1Aに示すように、視野方向切換回転軸6は、第1光路変更手段45の上端部を介在して基台(図示省略)に設置されている。視野方向切換回転軸6は、被写体Sを上方から観察する際に、第1光路変更手段45を図1Aに仮想線で示す上方観察の略垂直な位置状態に回動させると共に、被写体Sを側方から観察する際に、実線で示す斜めの側方観察の位置状態に回動させる。
【0032】
つまり、視野方向切換回転軸6は、被写体Sを上方観察する際に、第1光路変更手段45を軸心(光軸O1)上から直線方向の撮影の邪魔にならない図1Aに仮想線で示す所定位置に退避させることによって、被写体Sの正面映像を撮影できるようにする。
また、視野方向切換回転軸6は、被写体Sを側方観察する際に、観察位置移動手段7によって水平移動された第2光路変更手段46の位置に応じて、第1光路変更手段45を軸心(光軸O1)上の図1Aに実線で示す所定の角度に傾けることで、被写体Sの側方映像を撮影できるようにする。
【0033】
なお、視野方向切換回転軸6は、ミラーから成る第1光路変更手段45を上方映像の撮影を可能な状態と、側方映像の撮影を可能な状態とに回動させて退避させることに限定されない。視野方向切換回転軸6は、ハーフミラーを使って第1光路変更手段45の部分を切り換えるようにしてもよい。
【0034】
また、図1Aに示す実施形態1のマイクロスコープ3は、視野方向切換回転軸6を使用せずに、第1光路変更手段45を、ハーフミラーまたはハーフプリズムと、絞りと、の組合せにすることで、視野方向の切り換えを行ってもよい。
その一例を挙げると、第1光路変更手段45は、例えば、ハーフミラー(ビームスプリッターとも言う)を、図1Aに実線で示す第1光路変更手段45と同じ位置に配置し、絞り機構を、被写体S側と第2光路変更手段46側の光路の途中にそれぞれ設けて、絞りの開放動作によって光路Pの切り換えを行うようにしてもよい。
【0035】
<第2観察光学系>
第2観察光学系5は、立体観察用の硬性鏡であって、後記する側方観察手段50(死角観察手段)の機能を有している。第2観察光学系5は、第1観察光学系4と略同様な構成となっている。つまり、第2観察光学系5は、第1観察光学系4の筐体41、撮影部42、ズーム手段43及び第1光路変更手段45を共有している。そして、第2観察光学系5は、第1観察光学系4によって被写体Sを観察する向きが異なる点で、第1観察光学系4とは相違している。また、第2観察光学系5は、旋回機構44と、第2光路変更手段46と、観察アーム47と、観察位置移動手段7と、観察角度制御手段8と、を具備している。第2観察光学系5の第2光軸O2は、光軸角度θ1,θ2を可変可能に構成されている。
【0036】
<側方観察手段>
側方観察手段50は、被写体Sを異なる視野方向から観察を可能とする死角観察手段である。
【0037】
≪観察位置移動手段≫
観察位置移動手段7は、第2光路変更手段46を、撮影部42と被写体Sを結ぶ直線(光軸O1)に対して異なる方向に交わる直線に沿って移動させるための装置である。観察位置移動手段7は、ミラーまたはプリズム461を、撮影部42と被写体Sを結ぶ直線に対して略直角方向(略水平方向)に移動させる。
【0038】
図1Dは、本発明の実施形態1に係るマイクロスコープ3の使用状態を示す図で、撮影部42と被写体Sを結ぶ直線(光軸O1)に対する第2光路変更手段46の角度θ3の一例を示す説明図である。図1Eは、本発明の実施形態1に係るマイクロスコープ3の使用状態を示す図で、撮影部42と被写体Sを結ぶ直線(光軸O1)に対する第2光路変更手段46の角度θ3が略直角の場合の回転リング441の取り付け方の一例を示す説明図である。
【0039】
ここで、前記した「異なる方向」とは、図1D及び図1Eに示すように、撮影部42と被写体Sを結ぶ直線に対して略直角方向である。「異なる方向」及び「略直角方向(略水平方向)」とは、撮影部42と被写体Sを結ぶ直線(光軸O1)に対して、角度θ3が60度から95度の範囲の任意な角度の方向である。
【0040】
このように、マイクロスコープ3は、観察位置移動手段7を具備していることによって、撮影部42と被写体Sとを結ぶ直線(光軸O1)上に設けられた第2光路変更手段46を直線方向の撮影の邪魔にならない位置に退避可能なミラー退避機能を有している。
【0041】
≪観察角度制御手段≫
観察角度制御手段8は、対物側の第2光路変更手段46を略水平方向に移動させたときに、観察位置移動手段7によって移動した第2光路変更手段46の移動距離に合わせて第2光路変更手段46を回動させて、第2光路変更手段46の傾き角度(視矢角)を調整するための装置である。換言すると、観察角度制御手段8は、ミラーまたはプリズム461を、観察位置移動手段7によって移動した観察位置の移動距離に合わせて回動させて、ミラーまたはプリズム461の傾き角度を調整する。観察角度制御手段8は、ミラーまたはプリズム461の中央部に設けた回動軸を手動的または電動的に回動させる装置から成る。観察角度制御手段8の回動軸は、基台(図示省略)に水平方向に移動可能に設けられている。
【0042】
<治療用器具>
図1Aに示す治療用器具10は、例えば、歯科診療に使用する歯科用治療器具であって、その種類等は、特に限定されない。治療用器具10は、例えば、プローブ、スケーラー、シリンジ、バキューム、超音波スケーラー等の歯科用診療器具や、根管治療用ファイル等の手用切削器具や、歯科用タービン、歯科用モータ、歯科用コントラアングル等の機械切削器具である。
【0043】
<表示装置>
図1B及び図1Cに示すように、表示装置9は、例えば、独立表示形態のモニタから成る。表示装置9は、撮影部42によって撮影した図1Bに示す上方映像と、撮影部42によって撮影した図1Cに示す側方映像と、を二つに分けて表示することが可能である。表示装置9は、不図示の歯科用治療ユニットの支柱21(図2B参照)等に回動可能に設置されている。
【0044】
≪歯科用治療ユニット≫
図1Dに示すように、歯科用治療ユニット2は、例えば、診療椅子23と、診療台(図示省略)と、診療台(図示省略)等に立設された支柱21(図2B参照)と、支柱21(図2B参照)等に取り付けられたアーム22と、支柱21(図2B参照)に設けた表示装置9と、を有する。歯科用治療ユニット2は、アーム22を有するものであればよく、型式、種類等は特に限定されない。
【0045】
診療台(図示省略)は、歯科用ユニットである。不図示の診察台は、支柱21(図2B参照)を有するものであればよく、形状、構造等は特に限定されるものではない。
診療椅子23は、患者Pが診療時に着座する医療用椅子である。
支柱21(図2B参照)は、アーム22の基端部を回転可能に支持する柱部材である。支柱21は、例えば、円筒形状の金属製部材によって形成されている。支柱21(図2B参照)の上下方向の中央部には、表示装置9が設置されている。支柱21(図2B参照)の上部には、アーム22の基端部が回動可能に設置されている。
【0046】
≪アーム≫
アーム22は、マイクロスコープ3を被写体Sに対して所望の位置に移動保持可能に支持する部材である。アーム22は、支柱21(図2B参照)からマイクロスコープ3に延びて配置されて、所定以上の力(予め設定された回転方向の任意の力)を移動方向に加えることで、マイクロスコープ3を上下前後左右方向に移動可能に弾性支持する支持力を有するバランスアームから成る。アーム22の先端部には、マイクロスコープ3を固定するための取付金具(図示省略)が軸回り方向に回動可能に設けられている。
【0047】
≪作用≫
次に、図1A図1Dを参照しながら本発明の実施形態1に係るマイクロスコープ3の作用を、患者Pの口腔内の歯牙を被写体Sとして撮影する場合を例に挙げて説明する。
【0048】
まず、被写体Sの上方映像を撮影する場合は、視野方向切換回転軸6によって、第1光路変更手段45を図1Aに仮想線で示す退避位置に退避させる。すると、被写体Sからの光は、直接、ズーム手段43を介して撮影部42に真っすぐに進み、図1Bに示す上方映像を撮影することが可能となる。
【0049】
被写体Sの側方映像を撮影する場合は、第1光路変更手段45を視野方向切換回転軸6によって、ミラー451を軸心(光軸O1)上に斜めの状態に回動させる。すると、被写体Sからの光は、第2光路変更手段46によってミラー451側に反射されると共に、ミラー451でさらに反射されて撮影部42の方向に進み、図1Cに示す側方映像を撮影することが可能となる。
【0050】
このように側方映像の撮影をできるようにすることによって、マイクロスコープ3は、治療用器具10によって隠れている被写体Sの患部の撮影を可能にすると共に、歯牙の裏側や、歯牙の側面や、臼歯部分を撮影する場合も、観察することが可能となる。
【0051】
このように、本発明の実施形態1に係るマイクロスコープ3は、図1Aに示すように、被写体Sを観察する第1観察光学系4と、当該第1観察光学系4によって被写体Sを観察する向きが異なり、第1観察光学系4の撮影部42を共有する第2観察光学系5と、を備えたマイクロスコープ3であって、第2観察光学系5は、被写体Sからの光路Pの方向を変換させる光路変更手段(第2光路変更手段46)と、光路変更手段(第2光路変更手段46)を、撮影部42と被写体Sを結ぶ直線(光軸O1)に対して異なる方向に移動させるための観察位置移動手段7と、光路変更手段(第2光路変更手段46)の移動に伴って、光路変更手段(第2光路変更手段46)の角度θ1,θ2を制御する観察角度制御手段8と、を具備する。
【0052】
かかる構成によれば、本発明のマイクロスコープ3は、観察角度制御手段8を備えていることで、治療用器具10によって死角になっている患部を観察可能にするために、光路変更手段(第2光路変更手段46)を観察位置移動手段7で移動させた際に、被写体Sからの光路Pを光軸O1(第1光路変更手段45)の方向に変換させることができる。
また、本発明は、観察位置移動手段7と観察角度制御手段8と、を具備していることで、治療用器具10に遮られて死角になっていた観察不可能な部位を側方から観察可能することができるマイクロスコープ3を提供することができる。
【0053】
また、マイクロスコープ3は、図1Aに示すように、被写体Sを観察する第1観察光学系4と、当該第1観察光学系4によって被写体Sを観察する向きが異なり、第1観察光学系4の撮影部42を共有する第2観察光学系5と、を備えたマイクロスコープ3であって、第2観察光学系5は、被写体Sからの光路Pを第1光路変更手段45の方向に変換させる第2光路変更手段46と、第2光路変更手段46を、撮影部42と被写体Sを結ぶ直線(光軸O1)に対して異なる方向に移動させるための観察位置移動手段7と、第2光路変更手段7の移動に伴って第2光路変更手段46の角度θ1,θ2を制御する観察角度制御手段8と、を具備する。
【0054】
かかる構成によれば、本発明のマイクロスコープ3は、観察角度制御手段8を備えていることで、治療用器具10によって死角になっている患部を観察可能にするために、第2光路変更手段46を観察位置移動手段7で移動させた際に、被写体Sからの光路Pを第1光路変更手段45の方向に変換させることができる。
また、本発明は、観察位置移動手段7と観察角度制御手段8と、を具備していることで、治療用器具10に遮られて死角になっていた観察不可能な部位を側方から観察可能することができるマイクロスコープ3を提供することができる。
【0055】
また、図1Aに示すように、マイクロスコープ3は、観察位置移動手段7の移動によって得られる被写体Sの映像の大きさを調整するためのズーム手段43を具備している。
【0056】
かかる構成によれば、マイクロスコープ3は、観察位置移動手段7によって第2光路変更手段46を略水平方向(矢印b方向)に移動させて側方観察する場合に、観察位置が遠くなって映像が小さくなる。マイクロスコープ3は、観察位置が遠くなって小さくなった映像を、ズーム手段43によって観察位置に合わせてズーム拡大させることで、観察位置移動手段7の移動によって得られる被写体Sの映像の大きさを同じになるように大きさに調整することができる。
【0057】
また、図1A図1D及び図1Eに示すように、観察位置移動手段7は、撮影部42と被写体Sを結ぶ直線(光軸O1)を軸にして水平に旋回可能な旋回機構44を具備している。
【0058】
かかる構成によれば、観察位置移動手段7は、旋回機構44を有することで、撮影部42と被写体Sを結ぶ直線を軸(光軸O1)にして観察アーム47を水平に旋回させて、術者Mの利き腕に対応した適宜な位置方向に配置することができる。このため、左利きの術者Mが治療用器具10を左手で持って患部を治療した場合に、旋回機構44によって第2光路変更手段46を収容した観察アーム47を旋回させることによって、治療用器具10が画像に写り込むのを解消させることができる。
【0059】
また、図1Aに示すように、マイクロスコープ3は、撮影部42と被写体Sとを結ぶ直線上に設けられた第2光路変更手段46を直線方向の撮影の邪魔にならない位置に退避可能な観察位置移動手段7を具備している。
【0060】
かかる構成によれば、マイクロスコープ3は、観察位置移動手段7を具備していることで、第2光路変更手段46を直線方向の撮影の邪魔にならない位置に退避させることができる。このため、マイクロスコープ3は、治療用器具10で患部を治療中であっても、患部を撮影することができる。
【0061】
また、図1Aに示すように、異なる方向とは、撮影部42と被写体Sを結ぶ直線(光軸O1)に対して60度から95度の範囲の任意な角度の方向である。
【0062】
かかる構成によれば、観察位置移動手段7は、第2光路変更手段46を撮影部42と被写体Sを結ぶ直線に対して60度から95度の範囲の任意な角度の方向に移動させることで、第2光路変更手段46を光軸O1から略水平な方向に移動させることができる。
【0063】
また、図1Aに示すように、第2光路変更手段46は、ミラーまたはプリズム461から成り、観察位置移動手段7は、ミラーまたはプリズム461を、撮影部42と被写体Sを結ぶ直線(光軸O1)に対して略直角方向に移動させ、観察角度制御手段8は、ミラーまたはプリズム461を、観察位置移動手段7によって移動した距離に合わせて回動させて傾き角度を調整する。
【0064】
かかる構成によれば、マイクロスコープ3は、観察角度制御手段8を有することで、第2光路変更手段46を略水平方向に移動させたときに、観察位置移動手段7によって移動した第2光路変更手段46の移動距離に合わせて第2光路変更手段46を回動させることができる。このため、第2光路変更手段46を観察位置移動手段7によって移動させて第2光路変更手段46が反射する方向が変化したとしても、第2光路変更手段46の移動に合わせて第2光路変更手段46の傾き角度を調整することができるため、常に、側方映像を映すことができる。
【0065】
[実施形態2]
なお、本発明は、前記実施形態1に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0066】
図2Aは、本発明の実施形態2に係るマイクロスコープ3Aを示す説明図である。図2Bは、本発明の実施形態2に係るマイクロスコープ3Aと表示装置9の設置状態を示す説明図である。図2Cは、本発明の実施形態2に係るマイクロスコープ3Aを示す図で、立体観察時の表示装置9の画像の表示状態を示す説明図である。
【0067】
図2A図2Cに示すように、本発明のマイクロスコープ3Aは、撮影部42Aを2分割して立体観察を可能にしたものであってもよい。
【0068】
かかる構成によれば、実施形態2のマイクロスコープ3Aは、撮影部42Aを一方側撮影部42Aaと、他方側撮影部42Abと、に二分割することによって、表示装置9の表示画面91に一方側撮影部42Aaの表示91aと、他方側撮影部42Abの表示91bと、を二つに分けて表示して立体観察をすることができる。
【0069】
この場合、図2Aに示すように、マイクロスコープ3Aは、一方側撮影部42Aaと他方側撮影部42Abとから成る撮影部42Aと、一方側第1光路変更手段451Aと他方側第1光路変更手段452Aとから成る第1光路変更手段45Aと、一方側第2光路変更手段461Aと他方側第2光路変更手段462Aとから成る第2光路変更手段46Aと、を線対称に配置して構成されている。
【0070】
撮影部42Aは、一方側撮影部42Aaと他方側撮影部42Abとを備えた双眼のCMOSカメラあるいはCCDカメラから成る。一方側撮影部42Aaは、一方側第1光路変更手段451Aに向けて傾けて配置されている。他方側撮影部42Abは、他方側第1光路変更手段452Aに向けて傾けて配置されている。マイクロスコープ3Aは、一方側撮影部42Aaと、他方側撮影部42Abとに視差を設けて、違う角度から二つの撮影部42Aで撮影することで、被写体Sの立体映像を撮影可能になっている。
【0071】
第1光路変更手段45Aは、ミラーまたはプリズムから成る。第1光路変更手段45Aは、一方側第1光路変更手段451Aと、他方側第1光路変更手段452Aと、によって反射された被写体Sからの光を、一方側撮影部42Aaと他方側撮影部42Abと反射するために、一方側第1光路変更手段451Aと、他方側第1光路変更手段452Aと、を左右対称に略ハの字状に配置して構成されている。
【0072】
第2光路変更手段46A(光路変更手段)は、被写体Sからの光路Pの方向に変換させるための反射部材であって、例えば、被写体Sからの光の進行方向を第1光路変更手段45A(光軸O1)方向に変えるミラーまたはプリズム461から成る。第2光路変更手段46Aは、被写体Sからの光を、一方側第1光路変更手段45Aaと、他方側第1光路変更手段452Aと反射するために、一方側第2光路変更手段461Aと、他方側第2光路変更手段462Aと、を左右方向に適宜な間隔を介在して左右対称に略ハの字状に配置して構成されている。
【0073】
図2Bに示すように、診療装置1Aは、マイクロスコープ3Aと、マイクロスコープ3Aを取り付けた歯科用治療ユニット2と、表示装置9と、特殊眼鏡92Aと、を備えている。
【0074】
歯科用治療ユニット2は、診療椅子23と、診療台(図示省略)と、診療台等に立設された支柱21と、支柱21等に取り付けられたアーム22と、支柱21に設けた表示装置9と、を有している。
【0075】
表示装置9は、複合表示形態と独立表示形態との間で表示形態を切り換える切換スイッチを備えたモニタである。表示装置9の表示画面91には、偏光フィルタが設けられている。このため、表示装置9は、図2Aまたは図2Bに示すように、複合表示形態にある場合に、一方側撮影部42Aa及び他方側撮影部42Abからの像を立体視可能な3DTV画像として表示することが可能である。また、表示装置9は、独立表示形態にある場合に、一方側撮影部42Aaで撮影した左側からの画像と、他方側撮影部42Abで撮影した右側からの画像と、を別々に表示することが可能である。表示装置9は、歯科用治療ユニット2の支柱21等に回動可能に設置されている。
【0076】
アーム22は、アーム22の先端部にマイクロスコープ3Aを保持している。
術者Mは、裸眼により直接観察光学系を覗いてもよいし、一方側撮影部42Aa及び他方側撮影部42Abの映像を表示装置9の表示画面91に映して、映し出された画像を視てもよいし、それら両方を併用してもよい。
【0077】
また、図2Aまたは図2Cに示すように、一方側撮影部42Aa及び他方側撮影部42Abで撮影した画像を観察時に視る場合、術者Mは、視差を設けた直線偏光式3Dメガネ等の特殊眼鏡92Aを使用することで、術者Mと表示装置9との中間位置に立体画像IMが視えるようにして、立体映像を観察することができる。
【0078】
術者Mは、特殊眼鏡92Aを掛けることで、偏光フィルタ吸収軸d,eの方向しか視認することができない。このため、術者Mは、左目では表示装置9の一方側撮影部42Aaの表示91aしか見えず、右目では表示装置9の他方側撮影部42Abの表示91bしか見えない。
このように、偏光フィルタ吸収軸d,eを互いに直交して重ねた場合、光は遮断される。偏光フィルタ吸収軸d,eが互いに平行な場合、光は透過する。
【0079】
[実施形態3]
図3Aは、本発明の実施形態3に係るマイクロスコープ3Bを示す説明図である。図3Bは、本発明の実施形態3に係るマイクロスコープ3Bと表示装置9Bの設置状態を示す説明図である。図3Cは、本発明の実施形態3に係るマイクロスコープ3Bを示す図で、上方観察時及び側方観察時の表示装置9Bの画像の表示状態を示す説明図である。
【0080】
前記実施形態2では、立体観察可能なマイクロスコープ3Aを説明したが、これに限定されるものではない。図3A図3Cに示すように、マイクロスコープ3Bは、上方観察と、側方観察が可能なものであってもよい。
【0081】
この場合、図3Aに示すように、マイクロスコープ3Bは、一方側撮影部42Baと他方側撮影部42Bbとから成る撮影部42Bと、一方側第1光路変更手段451Bと他方側第1光路変更手段452Bとから成る第1光路変更手段45Aと、一方側第2光路変更手段461Bと他方側第2光路変更手段462Bとから成る第2光路変更手段46Bと、を略線対称に配置して構成されている。
【0082】
撮影部42Bは、実施形態2の撮影部42Aと同様に、一方側撮影部42Baと他方側撮影部42Bbとを備えた双眼のCMOSカメラあるいはCCDカメラから成る。一方側撮影部42Baは、一方側ズーム光学系431Bに向けて傾けて配置されている。他方側撮影部42Bbは、他方側ズーム光学系432Bに向けて傾けて配置されている。マイクロスコープ3Bは、一方側撮影部42Baと、他方側撮影部42Bbとに視差を設けて被写体Sの立体映像を撮影可能になっている。
【0083】
ズーム手段43Bは、観察位置移動手段7によって第2光路変更手段46Bの観察位置を遠くすると観察像が小さくなるので、第2光路変更手段46Bの観察位置に合わせて、ズーム手段43Bの光学倍率を変えて画像を大きくすることが可能になっている。この場合、ズーム手段43Bは、観察位置に応じて手動で倍率を変更してもよく、また、自動で倍率を変更してもよい。
なお、ズーム手段43Bは、この光学系のズーム手段43Bに変えて、他方側ズーム光学系432Bを、デジタル倍率を変えるようにしてもよい。
【0084】
第1光路変更手段45Bは、ミラーまたはプリズムから成る。第1光路変更手段45Bは、一方側第1光路変更手段451Bと、他方側第1光路変更手段452Bと、によって反射された被写体Sからの光を、一方側撮影部42Baと他方側撮影部42Bbと反射するために、一方側第1光路変更手段451Bと、他方側第1光路変更手段452Bと、を略ハの字状に配置して構成されている。
【0085】
第2光路変更手段46B(光路変更手段)は、被写体Sからの光路Pの方向を変換させるための反射部材であって、例えば、被写体Sからの光の進行方向を第1光路変更手段45B(光軸O1)方向に変えるミラーまたはプリズム461から成る。第2光路変更手段46Bは、被写体Sからの光を、一方側第1光路変更手段451Bと、他方側第1光路変更手段452Bと反射するために、一方側第2光路変更手段461Bと、他方側第2光路変更手段462Bと、を左右方向に適宜な間隔を介在して略ハの字状に配置して構成されている。
【0086】
他方側第2光路変更手段462Bは、実施形態1の第2光路変更手段46と同様に、光の進行方向を変えるための反射部材であり、光の進行方向を変えることが可能なミラーまたはプリズムから成る。他方側第2光路変更手段462Bの軸心部は、基台(図示省略)に回動自在に軸支されている。他方側第2光路変更手段462Bは、実施形態1のミラーまたはプリズム461と同様に、観察位置移動手段7によって光軸O1を中心とする半径方向に移動させて側方観察を可能にすると共に、観察位置の移動に合わせて他方側第2光路変更手段462Bを観察角度制御手段8によって回動して傾きを調整することができる。
かかる構成によれば、マイクロスコープ3Bは、他方側第2光路変更手段462Bを設けたことによって、治療用器具10を避けた位置から側方撮影をすることが可能となる。
【0087】
図3Bに示すように、診療装置1Bは、マイクロスコープ3Aと、マイクロスコープ3Aを取り付けた歯科用治療ユニット2と、表示装置9Bと、を備えている。診療装置1Bは、実施形態2の診療装置1Bと相違して、上方観察する場合、特殊眼鏡92Aを備えていない。
【0088】
図3B及び図3Cに示すように、表示装置9Bは、複合表示形態にある場合に、一方側撮影部42Baで撮影した上側からの画像と、他方側撮影部42Bbで撮影した側方からの画像と、を表示画面91Bに別々に表示することが可能である。このため、術者Mは、一方側撮影部42Aaで撮影した上方からの表示91Baと、他方側撮影部42Abで撮影した側方からの表示91Bbとの二つの画像を視ながら治療を行うことができるため、治療中であっても患部の状態を確認することができる。
なお、複合表示は、例えば、表示装置9Bに2画面を左右に分けて表示する。複合表示の場合は、左右画面に視差の異なる2映像を表示して立体に見る場合と、左右の画面に上方からの映像と側方からの映像を同時に表示して観察する場合とがある。
【0089】
[実施形態4]
図4Aは、本発明の実施形態4に係るマイクロスコープ3Cを示す説明図である。図4Bは、本発明の実施形態4に係るマイクロスコープ3Cを示す図で、上方観察時及び側方観察時の表示装置9Cの画像の表示状態を示す説明図である。
【0090】
前記実施形態3では、図3Aに示すように、観察位置の移動に合わせて他方側第2光路変更手段462Bを回動させて傾けることを説明したが、図4Aに示す実施形態4のマイクロスコープ3Cのように、さらに、術者Mの利き腕に対応させて観察アーム47Cを旋回させる旋回機構44Cを設けてもよい。
【0091】
図4Aに示すように、旋回機構44Cは、観察アーム47Cの軸心(光軸O1)上に設けた回転リング441Cを、軸心(光軸O1)を中心として略水平に旋回させることで、観察アーム47Cの向きを適宜な方向に向けるための機構である。このため、旋回機構44Cは、観察アーム47Cを術者Mの利き腕に対応した観察位置に旋回させることができる。
【0092】
かかる構成によれば、マイクロスコープ3Cは、旋回機構44Cを有することで、術者Mの利き腕に対応させて、撮影部42Bと被写体Sを結ぶ直線を軸(光軸O1)にして水平に適宜な位置に旋回させることが可能な水平旋回機能を有している。
【0093】
右利き術者Mの場合は、図4Aに実線で示す治療用器具10のように、他方側第2光路変更手段462Bの視野V1が治療用器具10によって隠れない。しかし、左利き術者Mの場合は、図4Aに仮想線で示す治療用器具10のように、観察アーム47Cの軸心(光軸O1)の右側に配置されるため、他方側第2光路変更手段462Bの視野V1が治療用器具10によって隠れるという問題点がある。
【0094】
その場合、第2光路変更手段46Bを収容した観察アーム47Cを、旋回機構44Cにより、術者Mの利き腕に対応させて、他方側第2光路変更手段462Bの視野V1が治療用器具10によって隠れない観察位置に旋回させる(例えば、180度旋回させる)。これにより、治療用器具10によって他方側第2光路変更手段462Bの視野V1が隠れるという問題点を解消させることができる。
【0095】
また、旋回機構44Cの回転リング441Cを回動させることで、観察アーム47Cを180度旋回させた場合は、図4Bに示すように、一方側撮影部42Ba及び他方側撮影部42Bbで撮影した表示91Ca,91Cbは、観察アーム47Cの旋回に伴って左右が入れ替わった表示91Ca,91Cbとなる。
【0096】
[実施形態5]
図5Aは、本発明の実施形態5に係るマイクロスコープ3Dを示す説明図である。図5Bは、ツマミロック時の図5AのVB-VB拡大概略断面図である。図5Cは、矢視位置設定時の図5AのVB-VB拡大概略断面図である。
【0097】
また、図5Aに示す実施形態5のマイクロスコープ3Dのように、第2光路変更手段46Bを移動させる観察位置移動手段7D、及び、第2光路変更手段46Bの角度を変える観察角度制御手段8Dは、手動で設定するものであってもよい。
【0098】
図5A図5Cに示すように、観察位置移動手段7Dは、他方側第2光路変更手段462Bと、観察アーム47Dと、ツマミ4D1,4D2と、回動軸4D1a,4D2aと、摩擦板4D3と、座金4D4と、ばね部材SP1と、を備えて構成されている。
【0099】
他方側第2光路変更手段462Bは、光を反射して光路を変更させることができるミラーまたはプリズムから成る。他方側第2光路変更手段462Bは、観察アーム47D内に回動自在に配置されている。
【0100】
観察アーム47Dは、他方側第2光路変更手段462Bを収容した中空状のハウジングである。観察アーム47Dは、水平方向に延設されて各筒状の部材から成る。
観察アーム47Dには、前後の側面中央に形成されて、左右方向に延設された長孔から成る回動軸挿入孔47Da,47Dbと、底面に形成された開口部47Dcと、が形成されている。
なお、観察アーム47Dの回動軸挿入孔47Daの近傍には、回動軸挿入孔47Da沿ってツマミ4D1,4D2の移動距離を示す目盛を付設してもよい。
【0101】
ツマミ4D1,4D2は、他方側第2光路変更手段462Bを回動及び移動させるための操作をするための操作部材である。ツマミ4D1,4D2は、円盤状の厚板部材によって形成されている。ツマミ4D1,4D2には、回動軸4D1a,4D2aが一体形成されている。
なお、ツマミ4D1または、ツマミ4D1が対向する観察アーム47Dには、ツマミ4D1の回転角度を示す目盛を付設してもよい。
【0102】
回動軸4D1a,4D2aは、ツマミ4D1,4D2と他方側第2光路変更手段462Bとを連結した棒状部材から成る。回動軸4D1a,4D2aは、回動軸挿入孔47Da,47Dbに回動自在及び摺動自在に挿入されている。
【0103】
摩擦板4D3は、摩擦板4D3は、ツマミ4D1の観察アーム47D側の面全体に固定されて、摩擦板4D3を観察アーム47Dの外壁に押し付けることで、ツマミ4D1が回転するのを抑制するための部材である。摩擦板4D3は、摩擦抵抗の大きな薄い板部材から成る。
【0104】
座金4D4は、回動軸挿入孔47Dbの開口縁と、ばね部材SP1との間に介在されている。
ばね部材SP1は、ツマミ4D1,4D2、回動軸4D1a,4D2a、及び、他方側第2光路変更手段462Bを後方向に付勢させて、摩擦板4D3を観察アーム47Dの外壁に押し付けで固定させるための弾性体である。ばね部材SP1は、回動軸4D2aに遊嵌されて、座金4D4とツマミ4D2との間に介在された圧縮コイルばねから成る。
【0105】
このように、実施形態5のマイクロスコープ3Dは、図5A図5Cに示すように、第2光路変更手段46B(他方側第2光路変更手段462B)は、ミラーまたはプリズムによって構成された第2光路変更手段46B(他方側第2光路変更手段462B)から成り、観察位置移動手段7Dは、第2光路変更手段46B(他方側第2光路変更手段462B)を収容した観察アーム47Dと、観察アーム47Dの側面に形成されて、撮影部42と被写体Sを結ぶ直線(光軸O1)に対して異なる方向に延設された回動軸挿入孔47Daと、第2光路変更手段46B(他方側第2光路変更手段462B)に連結された回動軸4D1aと、回動軸4D1aに設けられて回動軸挿入孔47Daに沿って移動可能なツマミ4D1と、を備え、観察角度制御手段8Dは、ツマミ4D1を回動させることで、第2光路変更手段46B(他方側第2光路変更手段462B)を、観察位置移動手段7によって移動した距離に合わせて回動させて傾き角度を調整する。
【0106】
かかる構成によれば、観察位置移動手段7Dは、観察角度制御手段8Dと同様に、第2光路変更手段46B(他方側第2光路変更手段462B)と、観察アーム47Dと、ツマミ4D1,4D2と、回動軸4D1a,4D2aと、摩擦板4D3と、座金4D4と、ばね部材SP1と、から構成することができる。このため、観察位置移動手段7Dは、部品を観察角度制御手段8Dと共用できるので、部品点数及び組付工数を削減してコストダウンを図ることができる。また、観察位置移動手段7Dは、図5Cに示すように、ツマミ4D1を引いて第2光路変更手段46B(他方側第2光路変更手段462B)を任意の位置に移動させることによって、観察位置を調整することができる。
【0107】
また、観察角度制御手段8Dは、ツマミ4D1を引いて第2光路変更手段46B(他方側第2光路変更手段462B)を任意の位置に移動して、ツマミ4D1を回動させて反射角度を決めた際に、ツマミ4D1をロックするためのばね部材SP1と摩擦板4D3とを有している。
【0108】
かかる構成によれば、観察角度制御手段8Dは、図5Cに示すように、ツマミ4D1を引いて第2光路変更手段46B(他方側第2光路変更手段462B)を任意の位置に移動し、ツマミ4D1を回転して反射角度を決めたら、図5Bに示すように、ツマミ4D1を戻してロックすることができる。ツマミ4D1は、ばね部材SP1のバネ力と、摩擦板4D3の摩擦力とで、回動軸4D1a,4D2aに取り付けられた第2光路変更手段46B(他方側第2光路変更手段462B)を観察アーム47Dに固定することができる。
【0109】
[実施形態6]
図6は、本発明の実施形態6に係るマイクロスコープ3Eを示す説明図である。
【0110】
また、図6に示す実施形態6のマイクロスコープ3Eのように、第2光路変更手段46Bの他方側第2光路変更手段462Bは、他方側第2光路変更手段462Bが移動する移動距離に応じて他方側第2光路変更手段462Bの回動を連動するようにしてもよい。
【0111】
図6に示すように、他方側第2光路変更手段462Bの回動させる観察角度制御手段8Eは、他方側第2光路変更手段462Bと、回転軸462Baと、観察アーム47Eと、ラック4E1と、ピニオン4E2と、第1歯車4E3と、第2歯車4E4と、第3歯車4E5と、基台(図示省略)と、を備えて構成されている。
【0112】
他方側第2光路変更手段462Bは、実施形態6と同様に、光を反射して光路を変更させることができるミラーまたはプリズムから成る。他方側第2光路変更手段462Bの中央部に一体に設けられた回転軸462Baは、観察アーム47E内に回動自在に軸支されている。
【0113】
観察アーム47Eは、他方側第2光路変更手段462Bを収容した中空状のハウジングである。観察アーム47Eは、水平方向に延設されて各筒状の部材から成る。観察アーム47Eの底面には、ラック4E1が固定されている。
【0114】
ラック4E1は、観察アーム47Eの延在する方向(矢印j方向)に延設されている。ラック4E1には、ピニオン4E2が回転自在に噛合している。
ピニオン4E2は、観察アーム47E内に観察アーム47Eの延在する方向(矢印j方向)に移動可能に配置された基台(図示省略)に回転自在に軸支されて、ラック4E1に噛合して回転することで、ラック4E1に沿って移動する。ピニオン4E2には、第1歯車4E3が噛合している。
【0115】
第1歯車4E3は、ピニオン4E2に噛合した状態で基台(図示省略)に回転自在に軸支されて、ピニオン4E2が回転することで、基台(図示省略)と共にラック4E1に沿ってラック4E1の延在する方向(矢印j方向)に移動する。第1歯車4E3の回転軸には、第2歯車4E4が固定されて一体に回転する。
【0116】
第2歯車4E4は、他方側第2光路変更手段462Bの回転軸462Baを中心として回転する第3歯車4E5が噛合している。回転軸462Baは、基台(図示省略)と共にラック4E1に沿ってラック4E1の延在する方向(矢印j方向)に移動する。
【0117】
このように、実施形態6のマイクロスコープ3Eは、第2光路変更手段46Bは、ミラーまたはプリズムによって構成され、観察位置移動手段7は、第2光路変更手段46B(他方側第2光路変更手段462B)を、撮影部42Bと前記被写体Sを結ぶ直線に対して略直角方向に移動させ、観察角度制御手段8Eは、第2光路変更手段46B(他方側第2光路変更手段462B)を収容した観察アーム47Eと、観察アーム47E内に設けられて、撮影部42と被写体Sを結ぶ直線に対して異なる方向に延設されたラック4E1と、観察アーム47E内に、撮影部42Bと被写体Sを結ぶ直線に対して略直角方向に移動可能に配置された基台と、基台に回転自在に軸支されて、ラック4E1に噛合して回転することで、ラック4E1に沿って移動するピニオン4E2と、ピニオン4E2に噛合して、第2光路変更手段46B(他方側第2光路変更手段462B)の回転軸462Baを中心として回転させると共に、基台と共にラック4E1に沿って移動可能な歯車(第1歯車4E3、第2歯車4E4、第3歯車4E5)を備えている。
【0118】
かかる構成によれば、第1歯車4E3の軸、第2歯車4E4の軸及び第3歯車4E5の軸は、基台(図示省略)に軸支されていることによって、その三つの軸の位置関係は固定された状態になっている。基台(図示省略)は、第1歯車4E3の軸、第2歯車4E4の軸及び第3歯車4E5の軸を固定した状態で基台(図示省略)と共に左右方向に移動する。このため、観察角度制御手段8Eは、ラック4E1に沿ってピニオン4E2が回転すると、第1歯車4E3と、第2歯車4E4と、第3歯車4E5とに順に回転力が伝達されて移動距離に連動して第2光路変更手段46Bの角度を変えることができる。
【0119】
[実施形態7]
図7は、本発明の実施形態7に係るマイクロスコープ3Fを示す説明図である。
【0120】
また、図7に示す実施形態7のマイクロスコープ3Fのように、第2光路変更手段46Bの他方側第2光路変更手段462Bは、モータ制御によって他方側第2光路変更手段462Bが移動する移動距離に応じて他方側第2光路変更手段462Bの回動を連動するようにしてもよい。
【0121】
図7に示すように、他方側第2光路変更手段462Bの回動させる観察角度制御手段8Fは、観察アーム47Fと、第1モータMT1と、雄ねじ4F1と、雌ねじ4F2と、基台4F3と、他方側第2光路変更手段462Bと、回転軸462Baと、第2モータMT2と、を備えて構成されている。
【0122】
他方側第2光路変更手段462Bは、実施形態5,6と同様に、光を反射して光路Pを変更させることができるミラーまたはプリズムから成る。他方側第2光路変更手段462Bの中央部に一体に設けられた回転軸462Baは、観察アーム47D内に回動自在に軸支されている。
【0123】
観察アーム47Fは、雄ねじ4F1と、雌ねじ4F2と、基台4F3等を収容した中空状のハウジングである。観察アーム47Fは、水平方向に延設されて各筒状の部材から成る。観察アーム47Fの右側端部の下側部位には、第1モータMT1が配置されている。観察アーム47Fの下面中央部は、オープンになっている。
【0124】
第1モータMT1は、回転することで、雄ねじ4F1に取り付けられた基台4F3を左右方向に移動させるための電動モータである。第1モータMT1は、例えば、ステッピングモータから成る。第1モータMT1は、減速歯車機構(図示省略)を介在して雄ねじ4F1を減速回転駆動させる。
【0125】
雄ねじ4F1は、第1モータMT1から光軸O1方向に向けて観察アーム47Fに沿って延設されている。雄ねじ4F1の左端部側には、雌ねじ4F2が螺合している。雄ねじ4F1は、観察アーム47F内を観察アーム47Fに延在する方向(左右方向)に移動自在に配置された基台4F3に固定されている。このため、雄ねじ4F1は、第1モータMT1が回転すると、左右方向に進退する。
【0126】
基台4F3には、他方側第2光路変更手段462Bが回転軸46Baを中心に回転可能に取り付けられている。他方側第2光路変更手段462Bは、第2モータMT2の回転制御によって任意の角度に設定することできるように構成されている。基台4F3は、雌ねじ4F2と共に、観察アーム47Fの下部縁端面に沿って左右方向に移動する。
【0127】
第1モータMT1及び第2モータMT2は、予め設定されたパルス数によって制御される。ステッピングモータから成る第1モータMT1及び第2モータMT2は、モータと位置検出器(エンコーダ等)の組み合わせに置き換えてもよい。
【0128】
このように、実施形態7のマイクロスコープ3Fは、第2光路変更手段46Bは、ミラーまたはプリズムによって構成された第2光路変更手段46B(他方側第2光路変更手段462B)から成り、観察位置移動手段7Fは、第2光路変更手段46B(他方側第2光路変更手段462B)を、撮影部42Bと被写体Sを結ぶ直線に対して略直角方向に移動させるための第1モータMT1を備え、観察角度制御手段8Fは、第2光路変更手段46Bを、観察位置移動手段7によって移動した距離に合わせて回動させて傾き角度を調整するための第2モータMT2を備えている。
【0129】
かかる構成によれば、観察角度制御手段8Fは、第2光路変更手段46B(他方側第2光路変更手段462B)を移動させる観察位置移動手段7Fの機能を兼ね備えている。観察角度制御手段8F及び観察位置移動手段7Fは、第1モータMT1及び第2モータMT2によって電動で駆動させることができる。
【0130】
[実施形態8]
図8は、本発明の実施形態8に係るマイクロスコープ3Gを示す説明図である。
【0131】
図3Aに示す実施形態3の一方側第1光路変更手段451Bと、他方側第1光路変更手段452Bと、から成る第1光路変更手段45Bは、図8に二点鎖線で示す実施形態8のマイクロスコープ3Gのように、方側第1光路変更手段451Bと、他方側第1光路変更手段452Bと、を完全に跳ね上げた状態で使用してもよい。
【0132】
この場合、観察光学系4Gのズーム手段43のズーム光学系431は、実施形態1のズーム手段43(図1A参照)と同様に、一つ設けることが好ましい。
また、被写体Sからの光路P上の第2光路変更手段46Bの他方側第2光路変更手段462Bと、第1光路変更手段45Bの他方側第1光路変更手段452Bとの間には、光路長L1,L2(図1D参照)の変化に合わせてピントを調節するピント光学系48Gを設ける。
このようにしても、マイクロスコープ3Gは、物体等(被写体S)を立体体観察したり、側方観察したりすることができる。
【0133】
[変形例]
前記実施形態1では、図1Aに示すように、第2観察光学系5が側方観察手段50(死角観察手段)を具備している場合を説明したが、側方観察手段50は、第1観察光学系4に備えたものであってもよい。
【0134】
また、実施形態2では、図2Bに示すように、マイクロスコープ3Aの設置例として、アーム22を、歯科用治療ユニット2の支柱21に配置した場合を説明したが、それに限定されるものではない。
例えば、マイクロスコープ3Aを保持したアーム22は、スタンドに設けたスタンドアームや、歯科診療室の天井面に設置した天井面設置型アームや、歯科診療室の床面に設置した床面設置型アームや、歯科診用テーブル等のテーブル上に配置した卓上設置型アーム等であってもよい。
【0135】
また、図6に示す実施形態6のマイクロスコープ3Eにおいて、他方側第2光路変更手段462Bの移動距離に他方側第2光路変更手段462Bの回動が連動する機構は、一例であって、それに限定されるものではない。ピニオン4E2に噛合するラック4E1は、観察アーム47E内に屈曲変形可能な状態に配置したフレキシブルラックであってもよい。
【0136】
また、図7に示す実施形態7のマイクロスコープ3Fのステッピングモータから成る第1モータMT1及び第2モータMT2は、他方側第2光路変更手段462Bの位置を検出するポテンショメータと、他方側第2光路変更手段462Bの回転を制御するステッピングモータ以外のモータから成る電動モータと、で構成したものであってもよい。
【0137】
また、図3Aに示す実施形態3のマイクロスコープ3Bは、撮影部42Bと被写体Sとを結ぶ直線上に設けられた一方側第1光路変更手段451B及び他方側第1光路変更手段452Bから成る第1光路変更手段45Bを説明したが、これに限定されるものではない。第1光路変更手段45B(一方側第1光路変更手段451B及び他方側第1光路変更手段452B)は、撮影部42Bと被写体Sとを結ぶ直線方向の撮影の邪魔にならない位置に回避させて双眼で被写体Sを観察するようにしてもよい。
このように構成しても、撮影部42Bは、一方側第1光路変更手段451Bと、他方側第1光路変更手段452Bとに二分割して構成した分の視差を得ることができるので、奥行のある立体観察をすることが可能となる。
【符号の説明】
【0138】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G 診療装置
3,3A,3B,3C,3D,3E,3F,3G マイクロスコープ
4,4A,4B,4C,4D,4E,4F,4G 第1観察光学系
4D1 ツマミ
4D1a 回動軸
4D3 摩擦板
4E1 ラック
4E2 ピニオン
4E3 第1歯車(歯車)
4E4 第2歯車(歯車)
4E5 第3歯車(歯車)
5 第2観察光学系
6 視野方向切換回転軸
7,7D,7E,7F 観察位置移動手段
8,8D,8E,8F 観察角度制御手段
9,9B,9C 表示装置
10 治療用器具
42,42A,42B 撮影部
43 ズーム手段
431 ズーム光学系
44 旋回機構
441 回転リング
45 第1光路変更手段
46,46A,46B 第2光路変更手段(光路変更手段)
47,47D,47E 観察アーム
47Da 回動軸挿入孔
461 ミラーまたはプリズム
461B 一方側第2光路変更手段
462B 他方側第2光路変更手段
462Ba 回転軸
L1,L2 光路長
MT1 第1モータ
MT2 第2モータ
O1 光軸(撮影部と被写体を結ぶ直線)
O2 光軸
P 光路
S 被写体
SP1 ばね部材
θ1,θ2 視差光軸角度(光路変更手段の角度)
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を観察する第1観察光学系と、
当該第1観察光学系によって前記被写体を観察する向きが異なり、前記第1観察光学系の撮影部を共有する第2観察光学系と、を備えたマイクロスコープであって、
前記第2観察光学系は、
前記被写体からの光路の方向を変換させる光路変更手段と、
前記光路変更手段を、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線に対して異なる方向に移動させるための観察位置移動手段と、
前記光路変更手段の移動に伴って、前記光路変更手段の角度を制御する観察角度制御手段と、
を具備し、
前記第1観察光学系は、前記撮影部を一方側撮影部と他方側撮影部とに二分割して構成されている
マイクロスコープ。
【請求項2】
被写体を観察する第1観察光学系と、
当該第1観察光学系によって前記被写体を観察する向きが異なり、前記第1観察光学系の撮影部を共有する第2観察光学系と、を備えたマイクロスコープであって、
前記第2観察光学系は、
前記被写体からの光路を第1光路変更手段の方向に変換させる第2光路変更手段と、
前記第2光路変更手段を、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線に対して異なる方向に移動させるための観察位置移動手段と、
前記第2光路変更手段の移動に伴って前記第2光路変更手段の角度を制御する観察角度制御手段と、
を具備し、
前記第1観察光学系は、前記撮影部を一方側撮影部と他方側撮影部とに二分割して構成されている
マイクロスコープ。
【請求項3】
前記撮影部を2分割して立体観察を可能にした
請求項1または請求項2に記載のマイクロスコープ。
【請求項4】
前記観察位置移動手段の移動によって得られる前記被写体の映像の大きさを調整するためのズーム手段を具備した、
請求項1または請求項2に記載のマイクロスコープ。
【請求項5】
前記観察位置移動手段は、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線を軸にして水平に旋回可能な旋回機構を具備した、
請求項1または請求項2に記載のマイクロスコープ。
【請求項6】
前記撮影部と前記被写体とを結ぶ直線上に設けられた前記第1光路変更手段を直線方向の撮影の邪魔にならない位置に退避可能な観察位置移動手段を具備した、
請求項2に記載のマイクロスコープ。
【請求項7】
前記異なる方向とは、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線に対して60度から95度の範囲の任意な角度の方向である、
請求項1または請求項2に記載のマイクロスコープ。
【請求項8】
前記第2光路変更手段は、ミラーまたはプリズムから成り、
前記観察位置移動手段は、前記ミラーまたはプリズムを、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線に対して略直角方向に移動させ、
前記観察角度制御手段は、前記ミラーまたはプリズムを、前記観察位置移動手段によって移動した距離に合わせて回動させて傾き角度を調整する、
請求項2に記載のマイクロスコープ。
【請求項9】
前記第2光路変更手段は、ミラーまたはプリズムによって構成され、
前記観察位置移動手段は、前記第2光路変更手段を収容した観察アームと、
前記観察アームの側面に形成されて、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線に対して異なる方向に延設された回動軸挿入孔と、
前記第2光路変更手段に連結された回動軸と、
前記回動軸に設けられて前記回動軸挿入孔に沿って移動可能なツマミと、を備え、
前記観察角度制御手段は、前記ツマミを回動させることで、前記第2光路変更手段を、前記観察位置移動手段によって移動した距離に合わせて回動させて傾き角度を調整する、
請求項2に記載のマイクロスコープ。
【請求項10】
前記観察角度制御手段は、前記ツマミを引いて前記第2光路変更手段を任意の位置に移動して、前記ツマミを回動させて反射角度を決めた際に、前記ツマミをロックするためのばね部材と摩擦板とを有している、
請求項9に記載のマイクロスコープ。
【請求項11】
前記第2光路変更手段は、ミラーまたはプリズムによって構成され、
前記観察位置移動手段は、前記第2光路変更手段を、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線に対して略直角方向に移動させ、
前記観察角度制御手段は、前記第2光路変更手段を収容した観察アームと、
前記観察アーム内に設けられて、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線に対して異なる方向に延設されたラックと、
前記観察アーム内に、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線に対して略直角方向に移動可能に配置された基台と、
前記基台に回転自在に軸支されて、前記ラックに噛合して回転することで、前記ラックに沿って移動するピニオンと、
前記ピニオンに噛合して、前記第2光路変更手段の回転軸を中心として回転させると共に、前記基台と共に前記ラックに沿って移動可能な歯車を備えた、
請求項2に記載のマイクロスコープ。
【請求項12】
前記第2光路変更手段は、ミラーまたはプリズムによって構成され、
前記観察位置移動手段は、前記第2光路変更手段を、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線に対して略直角方向に移動させるための第1モータを備え、
前記観察角度制御手段は、前記第2光路変更手段を、前記観察位置移動手段によって移動した距離に合わせて回動させて傾き角度を調整するための第2モータを備えた、
請求項2に記載のマイクロスコープ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明に係るマイクロスコープは、被写体を観察する第1観察光学系と、当該第1観察光学系によって前記被写体を観察する向きが異なり、前記第1観察光学系の撮影部を共有する第2観察光学系と、を備えたマイクロスコープであって、前記第2観察光学系は、前記被写体からの光路の方向を変換させる光路変更手段と、前記光路変更手段を、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線に対して異なる方向に移動させるための観察位置移動手段と、前記光路変更手段の移動に伴って、前記光路変更手段の角度を制御する観察角度制御手段と、を具備し、前記第1観察光学系は、前記撮影部を一方側撮影部と他方側撮影部とに二分割して構成されている
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
また、本発明に係るマイクロスコープは、被写体を観察する第1観察光学系と、当該第1観察光学系によって前記被写体を観察する向きが異なり、前記第1観察光学系の撮影部を共有する第2観察光学系と、を備えたマイクロスコープであって、前記第2観察光学系は、前記被写体からの光路を第1光路変更手段の方向に変換させる第2光路変更手段と、前記第2光路変更手段を、前記撮影部と前記被写体を結ぶ直線に対して異なる方向に移動させるための観察位置移動手段と、前記第2光路変更手段の移動に伴って前記第2光路変更手段の角度を制御する観察角度制御手段と、を具備し、前記第1観察光学系は、前記撮影部を一方側撮影部と他方側撮影部とに二分割して構成されている