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特開2024-36470導電性の弾性コアを有する糸、糸から形成された織物及び衣服、及び糸の製法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036470
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】導電性の弾性コアを有する糸、糸から形成された織物及び衣服、及び糸の製法
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/36 20060101AFI20240308BHJP
   D02G 3/32 20060101ALI20240308BHJP
   D03D 15/533 20210101ALI20240308BHJP
   D03D 15/56 20210101ALI20240308BHJP
   D03D 15/47 20210101ALI20240308BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20240308BHJP
   A41D 31/04 20190101ALN20240308BHJP
【FI】
D02G3/36
D02G3/32
D03D15/533
D03D15/56
D03D15/47
A41D31/00 503P
A41D31/00 504D
A41D31/00 503B
A41D31/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024014654
(22)【出願日】2024-02-02
(62)【分割の表示】P 2019511412の分割
【原出願日】2018-05-04
(31)【優先権主張番号】17169397.1
(32)【優先日】2017-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507343327
【氏名又は名称】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
【氏名又は名称原語表記】SANKO TEKSTIL ISLETMELERI SAN. VE TIC. A.S.
【住所又は居所原語表記】Organize Sanayi Bolgesi 3. Cadde 16400 Inegol-Bursa(TR)
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(72)【発明者】
【氏名】エルドアン バルシュ オッデン
(72)【発明者】
【氏名】エルトゥグ エルクシュ
(72)【発明者】
【氏名】セレフ アグズィカラ
(72)【発明者】
【氏名】エルケン エヴラン
(72)【発明者】
【氏名】オズギュル アクデミル
(72)【発明者】
【氏名】オズギュル シバノグル
(57)【要約】
【課題】 1以上の繊維を含んでなる導電性コア及び導電性コアを被覆する非導電性シースを含む伸縮性の導電性糸を提供する。
【解決手段】 コアは、第1の導電性の弾性繊維及び第2の低い弾性の繊維を含み、前記第1及び第2の繊維は、糸のコアにおいて、一緒に混繊及び/又は結合され、前記第1及び第2の繊維は、糸のコアにおいて、一緒に交絡又は加撚されるか、又は機械的に共押出されており、及び前記コアに含まれる第1及び第2の繊維は、それぞれ、エラストマー及びテクスチャード加工されたポリエステル共重合体である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性及び弾性特性を有するコア(2)、及び前記コアを被覆する非導電性のシース(3)を含んでなる伸縮性の導電性糸(1)であって、前記コア(2)は、第1の導電性の弾性繊維(4)及び第2の低い弾性の繊維(5、6)を含み、前記第1及び第2の繊維は、糸のコア(2)において、一緒に混繊及び/又は結合され、前記第1及び第2の繊維は、糸のコア(2)において、一緒に交絡又は加撚されるか、又は機械的に共押出されており、前記コア(2)に含まれる第1及び第2の繊維は、それぞれ、エラストマー及びテクスチャード加工されたポリエステル共重合体であり、及び第2の繊維は、伸ばされ、これにより、伸長される際に、第1の導電性の弾性繊維(4)に対して作用して、第1の導電性の弾性繊維(4)が伸ばされる以前に有していた元の長さに戻ることを助ける、伸縮性の導電性糸(1)。
【請求項2】
コア(2)が、導電性コーティング又は分散された導電性粒子を有する導電性の弾性材料からなる第1の繊維(4)を含むものであり、前記弾性材料は熱可塑性エラストマー又は熱可塑性ポリウレタンである請求項1に記載の伸縮性の導電性糸(1)。
【請求項3】
第2の繊維(5、6)の一部は、分散された導電性粒子を有する請求項1又は2に記載の伸縮性の導電性糸(1)。
【請求項4】
導電性粒子が、ZnS粒子、金属ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、又は炭素ナノ粒子の少なくとも1つを含んでなり、25~50質量%の範囲で存在する請求項1~3のいずれかに記載の伸縮性の導電性糸(1)。
【請求項5】
非導電性シース(3)が、再生セルロース、麻、亜麻、ジュート、ケナフ、サイザル、バナナ、リューゼツラン、竹、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ(アクリロニトリル)、及びポリ(ラクチド)の少なくとも1つから選ばれるステープル繊維を含んでなる請求項1~4のいずれかに記載の伸縮性の導電性糸(1)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の伸縮性の導電性糸(1)を含んでなる織物。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の伸縮性の導電性糸(1)を含んでなるデニム衣服。
【請求項8】
請求項1~5のいずれかに記載の伸縮性の導電性糸を含んでなる伸縮性の導電性部分(74)を含んでなる織物(72)であって、前記糸は、導電性及び弾性を有するコア(2)及び前記コアを被覆する非導電性シース(3)を含んでなり、前記コアは、第1の導電性の弾性繊維(4)及び第2の低い弾性の繊維(5)を含み、前記伸縮性の導電性部分(74)は、前記織物の前記伸縮性の導電性部分の、延伸、又は曲げによる前記伸縮性の導電性部分(74)の長さ又は幅における変化によって変動する電気的特性を有することを特徴とする織物(72)。
【請求項9】
コア(2)が、第1の弾性を有する第1の繊維及び前記第1の弾性よりも低い第2の弾性を有する第2の繊維を含む複数の前記繊維(4、5、6)を含む請求項8に記載の織物(72)。
【請求項10】
第1の繊維(4)及び第2の繊維(5)が一緒に交絡又は加撚されている請求項8に記載の織物(72)。
【請求項11】
第1の繊維(4)及び第2の繊維(5)が共押出されている請求項8に記載の織物(72)。
【請求項12】
織物がデニム織物である請求項8~11のいずれかに記載の織物(72)。
【請求項13】
請求項8~12のいずれかに記載の織物(72)を含んでなる衣服(70)。
【請求項14】
請求項1~5のいずれかに記載の伸縮性の導電性糸(1)を含んでなる請求項8~12のいずれかに記載の織物(72)、及び前記織物の伸縮性の導電性部分(74)と組み合わされたプロセッサー(76)を含んでなるシステムであって、前記プロセッサーは、前記織物を含む衣服を着用する使用者の身体の動きを、前記伸縮性の導電性部分の延伸又は曲げによる前記織物の伸縮性の導電性部分(74)の長さ又は幅における変化を関数として検出することを特徴とするシステム。
【請求項15】
織物が衣服の一部である請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
プロセッサーが、検出された身体の動きに基づき、着用者がとる多数のステップ又は着用者が歩く又は走る速度をモニターすることを特徴とする請求項14又は15に記載のシステム。
【請求項17】
請求項1~5のいずれかに記載の伸縮性の導電性糸(1)を形成する方法であって、該方法は、
エラストマー材料の初期溶液に導電性材料を添加することによって、エラストマー材料及び導電性材料の溶媒溶液を形成する工程(100、102)(ここで、前記エラストマー材料は、熱可塑性エラストマー及び熱可塑性ポリウレタンの1つを含んでなる);
前記溶液(22)の前記エラストマー材料を紡糸又は押出して、導電性のエラストマー性繊維(4、38、54)を形成する工程(104);
前記導電性のエラストマー性繊維(4、38、54)を、少なくとも第2の低い弾性の繊維(4、5)と混繊して、少なくとも2つの繊維(4、5、6)の導電性及び弾性を有するコア(2)を形成する工程(106)(前記第1の導電性のエラストマー性繊維繊維(4、38、54)を、少なくとも第2の繊維(5、6)と混繊する前記工程(106)は、前記導電性のエラストマー性繊維(4、38、54)を、前記第2の繊維(4、5)と交絡又は加撚することを含むか、前記第1の導電性のエラストマー性繊維繊維(4、38、54)を、少なくとも第2の繊維(5、6)と混繊する前記工程(106)は、前記繊維(4、5、6)を、前記繊維が一緒に圧縮される空間を通過させることによる共押出を含む);及び
前記少なくとも2つの繊維のコアを、少なくとも1つの非導電性材料(3)と合わせることによって糸を形成する工程(ここで、前記非導電性材料は前記コアを包囲して、シースを形成する)
を含んでなることを特徴とする方法。
【請求項18】
さらに、混繊(106)以前に、導電性のエラストマー性繊維(38、54)及び第2の繊維(5、6)を延伸する工程を含んでなる請求項17に記載の方法。
【請求項19】
さらに、糸を使用して織物(72)を形成する工程を含んでなる請求項17に記載の方法。
【請求項20】
溶媒が、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、及びN-メチル-2-ピロリドンの1つであり、溶液を形成する工程(100、102)が、エラストマー材料の前記溶媒における初期溶液を調製する工程(100)を含み、及び導電性材料が、Ag粒子、金属酸化物粒子、金属ナノ粒子、炭素ナノ粒子、及びZnS粒子の少なくとも1つを含んでなる請求項17~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
さらに、混繊(106)以前に、導電性のエラストマー性繊維(38、54)を延伸して、前記導電性のエラストマー性繊維(38、54)が、混繊(106)の間、延伸された状態にあるようにする工程を含んでなり、前記混繊(106)が、前記導電性のエラストマー性繊維(38、54)を、少なくとも他の弾性繊維に接合させるための共押出を含む請求項17に記載の方法。
【請求項22】
導電性のエラストマー性繊維(38、54)及び少なくとも第2の低い弾性の繊維(5、6)の少なくとも1つは、混繊以前に、その上に接着剤が提供される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
紡糸(104)が複数の微細繊維(28)を形成し、前記微細繊維は、混繊(106)以前に混繊されて、導電性のエラストマー性繊維(38、54)を形成する請求項17又は18に記載の方法。
【請求項24】
紡糸が、湿式紡糸を含んでなり、水-ジメチルホルムアミド混合物、非加水分解性シロキサン-オキシアルキレンブロック共重合体、及び乳化鉱油潤滑剤から形成された溶液(46)を介して、導電性のエラストマー性繊維を処理することによって、導電性のエラストマー性繊維(54)から溶媒を除去することを含む請求項17又は18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最も一般的には、糸及び糸の製法に関し、及びより詳しくは、伸縮性、導電性のエラストマーコア及びシース被覆を有する糸、及びこのような糸にて製造した織物及び衣服に関する。本発明は、導電性の弾性糸を含むシステム及び前記導電性の糸に結合したプロセッサーにも関する。
【背景技術】
【0002】
弾性糸を有する伸縮性タイプの織物は、現在の衣服製造工業において、非常に人気があり、有用になっている。弾性糸及び伸縮性タイプの織物を製造するために使用される方法は多数存在する。このような糸で形成された衣服は、スポーツウエア及びアスレチック用ユニフォーム及びアパレルの分野では、非常に人気があるが、これらの伸縮性タイプの織物は、体にぴったりした衣服を生成し、更なる心地よさを提供し、タイトフィットの衣服が必要とされる又は望まれる場合には、非常に有用である。
【0003】
入手できる伸縮性タイプの織物及び衣服が多数あるとしても、それらの多くは、良好な弾性に欠けている。各種の他の材料は、経時的に、その弾性を失い、たるみ及びひび割れしがちであり、非機能性となる。そのため、衣服用のより良好な弾性物質が必要とされている。
【0004】
今日の急速に進歩しているエレクトロニクス産業については、多くのセンシング装置が開発されつつあり、身体の各種の機能、状態、活性度及び動き、及び運動能力をモニターするために使用されている。例えば、これらの装置は、着用者がとる多数のステップ、着用者が歩く又は走る速度をモニターするために使用され、及び各種の他の身体の動きを感知するために使用される。他の例では、これらのセンシング装置は、各種の代謝状態をモニターするために使用される。これらのセンシング装置は、整形外科及びスポーツの分野、例えば、着用者の運動性能の各種の態様が測定又は評価できるトレーニングにおける特別な用途を有する。
【0005】
この種の一般的な装置は、しばしば、かさばり、付け心地がよくない。一般的な装置は、代表的には、ユーザーによって着用されなければならない金属製部分を含有し、一般的に、付け心地がよくない。これらの装置は、しばしば、使用者の衣服の上又は下で、使用者の身体の上に縛り付けられる。多くの例では、装置自体が、使用者の機敏さを制限するか、さもなければ、装置は、使用者のパフォーマンスに悪影響を及ぼす。
【0006】
このタイプの装置の例は、国際公開第2003/060449号に開示されている。この文献は、多目的の結果伝達性歪みゲージ装置に関するものであり、該歪みゲージ装置は、伸びる際に、その電気特性が変化する伸縮性、導電性の織物と、装置の伸縮性の織物の伸び又は縮みに応答して、信号を発生する調整電気回路を含んでなる。導電性の共役ポリマー被覆繊維又は織物を使用することによって、代表的には、共役ポリマーとして、ポリピロール及びポリアニリンを使用することによって、この装置を着用できるようにする試みがあったが、装置は、布地とは適合しなかった。
【0007】
導電性の弾性糸は公知である。ヨーロッパ特許第1749301号は、アンチモンをドープした酸化スズ又はポリマーマトリックス中に分散した炭素ナノチューブの添加によって、導電性としたエラストマー性ポリマーを含んでなる導電性のエラストマー性構造を有する繊維を開示している。国際公開第2015/150682号は、弾性の導電性糸を開示しており、該糸では、その導電性は、金属コア糸の周囲に合成糸を巻き付け、続いて、このようにして得られた糸を、弾性コア糸の周囲に巻き付けることによって得られる。この場合も、得られた糸は、衣服用の織物での使用には適していない。導電性糸は、導電性糸の電気特性における変化を検出するために、プロセッサーに結合されたセンサー又はセンサーの部品として、織物の分野で使用される。電気特性の変化は、例えば、糸の導電性部分の長さ及び/又は断面積における変化によるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それ故、時間及び使用を通して、その弾性を保持する伸縮性タイプの糸及び織物を提供する必要がある。また、使用者によって快適に着用される電子モニタリング装置を提供することが望ましい。多くの使用サイクルの後にも、電気特性を、実質的に変わることなく保持する導電性の伸縮性/弾性糸を提供する必要がある。例としては、実質的に変化することなく維持されるべき電気特性は、糸の電気抵抗であり、電気抵抗は、ローディング-アンローディングサイクルの間に変化する。ローディング-アンローディングサイクルは、弾性の導電性繊維が伸ばされる場合に起こる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、本発明によって解決されるものであり、本発明は、請求項1によれば、導電性及び弾性特性を有するコアと、該コアを被覆する非導電性シースとを有する伸縮性の導電性糸を提供する。好ましくは、導電性の弾性繊維の戻りの動きを制御するために、コアは、第1の弾性繊維及び第2の弾性繊維を有する。本発明の他の目的は、上述の糸を含んでなる織物及び請求項13によれば、織物から製造された衣服にある。本発明の更なる目的は、請求項23によれば、弾性の導電性糸を形成する方法にある。本発明の他の態様は、請求項20によれば、導電性の弾性糸で形成した織物、及び織物の導電性糸に結合されたプロセッサーを含むシステムにある。
【0010】
開示は、導電性の弾性糸、及びセンシング及び他の用途のための伸縮性の導電性糸を製造する各種の糸製造法を使用する前記糸の製造に関する。導電性の弾性糸は、1以上の導電性の弾性繊維の導電性コアと、導電性コアを被覆する絶縁性シースとを含む。導電性繊維の1以上は、エラストマー材料(その中に又はその上に、導電性の粒子が添加されるか、又はその上に、コーティングが適用されている)であってもよい。導電性コア及びコアを被覆する絶縁性シースを形成するために、各種の方法が使用される。
【0011】
開示は、導電性の弾性糸にて形成された織物及び導電性の弾性糸を有する織物を使用して形成される衣服を提供する。導電性の弾性糸は、織られた又は編まれた織物構造体において、横糸及び経糸の両方向で使用される。織物及び衣服は、センサー又は他の電子部材として機能する。
【0012】
開示の他の態様は、導電性の弾性糸で形成された織物、及び織物に結合されたプロセッサーを含むシステムにある。プロセッサーは、織物の伸ばし又は曲げによる長さ又は幅における変化の関数として、織物で形成された衣服を着用する使用者の体の動きを検出する。
【0013】
本発明は、添付する非限定的な図面と組み合わせて読む際に、下記の詳細な説明から、最も良好に理解される。慣習によれば、図面の各種の特徴は、必ずしもスケールではないことが強調される。これに対して、図面の寸法は、明瞭性のため、任意に、拡大又は縮小される。同様に、符号は、明細書及び図面の全体を通して、同じ特徴を表す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1a】開示の具体例による各種の導電性の弾性体糸の概略図である。
図1b】開示の具体例による各種の導電性の弾性体糸の概略図である。
図1c】開示の具体例による各種の導電性の弾性体糸の概略図である。
図1d】開示の具体例による各種の導電性の弾性体糸の概略図である。
図2】開示の具体例による導電性のエラストマー性糸の製法のフローチャートである。
図3】開示の具体例による粘稠なポリマー溶液を出発原料とする伸縮性のセンサーコア糸の製法を示すシステムの概略図である。
図4】開示の他の具体例による、粘稠なポリマー溶液を出発原料とする伸縮性のセンサーコア糸の製法を示すシステムの概略図である。
図5】開示の具体例による導電性のエラストマー性繊維の製造に好適な装置の概略図である。
図6】開示の他の具体例による導電性のエラストマー性繊維の製造に好適な装置の概略図である。
図7】開示による、導電性のエラストマー性糸及び衣服に結合された電子部品を含む織物から形成された衣服、パンツを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
開示は、導電性の弾性糸及び各種の糸製造法を使用する、前記糸の製造に関する。導電性の弾性糸は、1以上の弾性繊維の導電性コア及び前記導電性コアを被覆する絶縁シースを含む。導電性の弾性糸は、各種のタイプの衣服及び他の着用できる器具及び装置における各種のセンシング用途に使用される伸縮性、導電性の織物を製造するために使用される。導電性の弾性糸は、織られた又は編まれた織物構造体において、横糸及び経糸の両方向で使用される。伸縮性、導電性の織物から形成された衣服としては、各種のシャツ、パンツ、タイツ、キャップ、ショーツ、ソックス及び他のタイプの服が含まれる。伸縮性、導電性の織物は、袖、圧迫靴下、又は各種のバンド、又は着用者の身体上の各種の位置で着用された他の器具又は装置を形成するためにも使用される。
【0016】
伸縮性、導電性の織物は、センシング装置を形成し、適切な電子装置に結合され、医療、整形、スポーツ、及び他の分野において、各種の用途のために、身体の機能、状態及び活動を測定又はモニターするために、電気センサーとして使用される。
【0017】
いくつかの具体例では、導電性の弾性糸は、弾性繊維用の公知の材料、例えば、熱可塑性エラストマー、及び軟質及び硬質の形成セグメントの良好に組み合わされた構造(優れた弾性を提供する)を有する熱可塑性の弾性ポリウレタン(TPU)を使用して形成される。各種の弾性ポリウレタン材料(集合的には、エラスタンと称される)が使用される。このような具体例では、2つのセグメントは、有利には、それぞれ、低いガラス転移温度(T)を有するポリエーテル及びπ-π相互作用できる芳香族イソシアネートに基づくものである。これらの材料は、当分野では知られており、市場で入手可能である。各種の他の具体例では、糸の導電性の弾性コア繊維を形成するために、他のエラストマー材料及び他の配置が使用される。弾性繊維用の好適な材料は、エラスタン(例えば、ライクラ、Dorlastan)、スパンデックス(RadicciSpandex Co.)、Lastol(Dow Chemical XLA)を生成するポリウレタンである。第1の弾性繊維は、好ましくは、フィラメント又はフィラメントの束の形である。
【0018】
さらに他の各種のタイプの市販の弾性繊維及び開発中の他の弾性材料を、開示による弾性繊維として使用できる。いくつかの具体例では、本発明の糸の弾性コアは、高度に弾性の第1の繊維、及び第1の繊維よりも弾性に劣るが、良好な回復特性を有する少なくとも1の第2の繊維を含む。第1の繊維は、ASTM D3107又はBISFA(The International Bureau for Standardization of Man-made Fibers)、DIN 53835-2、及び基準に従って測定して、少なくとも300%、好ましくは、少なくとも400%伸びることができる。
【0019】
第2の繊維(すなわち、低い弾性の制御繊維)用の好適な材料としては、ポリアミド、例えば、ナイロン(例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,12等);ポリエステル;ポリオレフィン、例えば、ポリプロピレン及びポリエチレン、その混合物及び共重合体;PBT及び2成分系フィラメント、すなわち、エラストマルチエステル、例えば、PBT/PET及びPTT/PETフィラメント、例えば、Invista(登録商標)社製のT400(登録商標)が含まれる。第2の繊維は、通常、その弛緩状態において、テクスチャー加工、又はカールされている。第2の繊維は、実質的に直線状態に張力が掛けられていてもよく、張力が除去された際には、元のカールされた状態に戻る。第2の繊維は、好ましくは、フィラメント又はフィラメントの束の形である。
【0020】
開示によれば、第1の弾性及び導電性の繊維及び第2の低い弾性の繊維は、張力が掛けられた状態で一緒に混繊され、糸のコア内に配置されて、第2の繊維は、伸ばされ、これにより、伸長される際に、第1の繊維に対して作用して、第1の繊維が織物により伸ばされる以前に有していた元の長さに戻ることを助ける。このような効果を得るためには、公知の異なった方法も存在する。米国特許出願公開第20080318485号には、弾性の(エラスタン)繊維及び低い弾性の(ポリエステル)繊維を混繊し、可能であれば、綿スライバーとともに、これらを加撚して、弾性糸を提供することが開示されている。特に、その米国特許出願公開第20080318485号のパラグラフ24、28及び29を参照する。弾性の繊維と低い弾性の繊維との合わせ方についての他の開示は、米国特許出願公開第20100281842号、例えば、パラグラフ22~25及び35に見られ、ここでは、弾性の繊維と混繊される低い弾性の繊維は、「制御フィラメント」と呼ばれている。本願の出願人に係る国際公開第2012/062480号には、第1及び第2の繊維を一緒に混繊して、張力工程及び弛緩工程の間(すなわち、負荷-除荷プロセスの間)、単繊維として機能するようにする繊維を合わせる方法が開示されている。この国際公開第2012/062480号に開示された結合方法は、交絡、大きい撚り数/mでの加撚及び共押出である。
【0021】
本明細書では、共押出は、少なくとも2つのタイプの繊維(例えば、導電性のエラストマー及びポリエステル又は他の低弾性の繊維)を、好ましくは、繊維の少なくとも一方を伸ばした状態で、これらを一緒に圧縮することによって、機械的に一緒に結合する各種の方法を意味するものである。国際公開第2012/062480号の他の結合法におけるように、「共押出」は、繊維を処理する装置に沿って移動しつつある繊維についても行われる。繊維を、一緒に、装置を通過させ、ここで、これらを、低減された容積の同一空間を強制的に通過させるという意味で共押出し、これによって、これらを一緒に圧縮する。繊維を共押出-結合するための例示的装置は、「V」形状を有するロールである。繊維は、ロール「V」の底部に強制的に押し入れられ、ここで、繊維は一緒に圧縮され、このようにして結合されて、単一の繊維束を形成する。
【0022】
他の具体例では、結合される張力が掛けられた繊維束を、2個一組のローラーの同じ場所、例えば、溝に供給し、ここで、それらを一緒に圧縮し、このようにして、一緒に結合させる。少なくともいくつかの繊維を、それらの製造の間に、化学剤で処理することができ、前記化学剤は、2つの束の繊維の接着を互いに改善できる。
【0023】
このようにして得られた第1及び第2の繊維の束を、ついで、シース形成装置、好ましくは、リング精紡機(当分野で公知のように、リング精紡プロセスの間に、結合された単一の束にいくらかの撚りも付与する)に供給する。好適な具体例では、2つの束の繊維を結合する装置は、多繊維、弾性、及び導電性のコアを被覆する装置、例えば、リング精紡機の近くに配置される。このようにして、共押出によって結合された繊維は、これらがリング精紡機に供給される前に、偶発的に分離されることはない。
【0024】
本明細書は、それ自体、電気的に絶縁性である材料、例えば、TPU又は他のエラストマー材料から、本来、電気的に絶縁性のエラストマー材料に導電性材料を添加することによって、導電性の糸を形成する方法を提供する。これは、次の材料、すなわち、炭素ナノ物質、金属又は金属酸化物のナノ粒子、他の金属及び非金属粒子、及びその混合物の少なくとも1つの添加を介して行われる。好適な材料は、ZnS、Ag、及び炭素ナノ物質、特に、炭素ナノ粉末である。導電性材料のサイズは、有利には、0.1~約250 nmの範囲である。TPUが弾性材料である有利な具体例では、導電性TPU(c-TPU)は、導電性不純物をTPU材料に配合することによって形成される。導電性糸の他の具体例では、導電性材料は、エラストマー材料内に、各種の様式で、さまざまに、分散される。
【0025】
繊維における導電性不純物の量は、材料のタイプに依存する。一般的には、導電性不純物は、繊維の約1~約50質量%の範囲で、繊維内に存在するが、他の具体例では、例えば、25~50質量%のような他の処方を使用できる。
【0026】
上記例の各々では、導電性不純物は、各種の技術を使用して、エラストマー繊維に導入される。いくつかの具体例では、さらに後述するように、導電性は、エラストマー材料の浸透閾値以上での導電性材料の添加、続く、乾式又は湿式紡糸プロセスによって、生じられる。浸透閾値は、占有確率ρの臨界値、又はより一般的には、一群のパラメーターρ1、ρ2、・・・に関する臨界表面であり、これにより、無限の連結性、すなわち、パーコレーションが、初めに生ずる。他の具体例では、エラストマー繊維に導電性ドーパントを含浸させる他の方法が使用される。いくつかの具体例では、機械的混合が使用される。さらに他の具体例では、導電性不純物を、エラストマー繊維の表面に、外部からコーティングする。コーティングは、上述の導電性ナノ粒子を含むコーティングであるか、又は各種の他の好適な導電性コーティングであってもよい。
【0027】
エラストマー性の導電性材料は、モノフィラメント(好ましくは)及び/又はステープル繊維に成形されるか、又はそのままで又は他の繊維と一緒にともに、糸において使用される。導電性の伸縮性コアは、1つ又は複数個の繊維、すなわち、繊維束を含む。コア繊維の1以上は、弾性を有する。コア繊維の1以上は、導電性を有する。導電性のエラストマーコアは、1以上のコア繊維によって提供される優れた回復性及び反発特性によって特徴付けられる。導電性のエラストマーコアは、伸縮性糸を形成するように、絶縁性のシースによって完全に被覆される。絶縁材、すなわち、シースは、綿繊維シース、好ましくは、綿ステープル繊維であるが、他の具体例では、他の材料が使用される。いくつかの具体例では、使用後を含めいつでも、コア表面が、シースの繊維を通して侵入を阻止するように、絶縁シースは、完全にコアを被覆している。他の具体例では、他の絶縁シース被覆が使用される。伸縮性糸は、単独で、又は織られた、又は編まれた織物構造体内で使用される。
【0028】
c-TPU又は他の導電性エラストマー材料は、着用可能な伸縮性のセンシング材料を提供することによって、糸に、新規かつ進歩した用途、及び現在の糸に、更なる用途を提供し、上記のように、エレクトロニクス産業において各種の用途が見られる。代表的には、弾性繊維の導電度は、基準法ASTM D257及びESD STM11.11によって測定して、1.00×10~1.00×10S/cm(ジーメンス/cm)である。
【0029】
導電性のエラストマー材料は、その抵抗性、誘導性、及び容量性に基づく各種のタイプのセンサーとして機能できる。導電性の伸縮性織物は、伸縮(例えば、肘及び膝の領域)によって誘導されるサイズ(導電性コアの直径)の変化の関数として、身体の動きを感知するために使用される(すなわち、歪みセンサー)。いくつかの具体例では、導電性の伸縮性織物は、電極、信号経路、ヒーター、又は各種の電磁的絶縁材料として機能する。センシング装置は、医療、整形外科、スポーツ、及び他の分野において、用途が認められる。いくつかの具体例では、伸縮性の導電性織物は、使用者が行う多数のステップ、又は着用者が歩く又は走る際の速度をモニターするために使用され、伸縮性の導電性織物は、各種の他の身体の動きを感知するために使用される。他の具体例では、センシング装置は、各種の代謝条件、例えば、体温、心拍数、血圧、及び各種の他の条件を検知するために使用される。各種のプロセッサー及び他の電子部品及びデバイスは、導電性織物と適宜組み合わされ、これによって、c-TPU又は他の導電性織物は、着用可能なエレクトロニクス分野において、センシングプラットフォームとして使用される。衣服の一部であるプロセッサーの例は、国際公開第2017/017260号に開示されている。プロセッサーとの結合は、電線を介する又はワイヤレスでもよい。
【0030】
既に検討したように、弾性の導電性繊維(一般に、フィラメントの形)は、第2の繊維と混繊されて、弾性糸を形成する。第2の、低弾性の、通常、テクスチャード加工された繊維は、糸を伸ばすことによる糸の各延伸後に、弾性繊維に導電性素子が存在するにもかかわらず、弾性繊維が、それらの初期の長さ(又は、実質的の初期の長さ)に戻されるコアを生ずる。コアの弾性成分が、その初期の長さに戻るため、本発明の糸の弾性の、導電性部分は、常に、弛緩された、すなわち、テンションが掛けられていない状態において、同一の形状を有するであろう。弾性繊維のこの同一の形状的初期状態は、負荷-除荷(伸ばし-弛緩)サイクルの開始時、すなわち、糸が伸ばされていない、又は張力が掛けられている際にも、実質的に同じである。前記値の各種の検知された変化は、検知されつつある変形の間における弾性繊維の形状の変化によって生ずるであろう
【0031】
次に図面を参照すると、図1a~1dの各々は、エラストマー性の導電性コア2及びシース3を含む伸縮性の糸1の具体例を示している。エラストマー性の導電性コア2は、ただ1つの露出した、導電性エラストマー繊維又は様々な方法で相互に接触する多数の繊維を含むことができる。図1a~1cの各図は、3本の繊維、すなわち、第1の繊維4、第2の繊維5、及び第3の繊維6を示す。いくつかの具体例では、第3の繊維6は存在せず、好ましくは、第2及び第3の繊維は、T400におけるように、サイド・バイ・サイド配置の複合繊維である。図1dは、エラストマーの導電性コア2が、ただ1つの繊維12を含む具体例を示す。他の具体例では、エラストマーの導電性コア2は、2つの繊維又は混繊してエラストマーの導電性コア2を形成する異なった数の繊維を含む。
【0032】
コアを形成する繊維、すなわち、第1の繊維4、第2の繊維5、及び第3の繊維6は、既に検討したように、例えば、加撚、交絡、又は共押出によって、一緒に結合される。繊維が縒り合されているいくつかの具体例では、これらは、様々な度合いで、縒り合される。各繊維は、様々な度合いで、及び多くの様式で一緒に結合される。各種の具体例では、多数の導電性の弾性繊維は、人造繊維と共押出され、人造の繊維と交絡され、人造繊維とシングルプライ又は2プライ加撚され、又は人造繊維とエアジェットテクチャード加工(AJT)される。
【0033】
図1a~1cの具体例において、繊維の1以上、すなわち、第1の繊維4、第2の繊維5、第3の繊維6の1以上は、エラストマーであってもよい。また、図1a~1cの具体例においては、繊維の1以上、すなわち、第1の繊維4、第2の繊維5、第3の繊維6の1以上は、導電性であってもよい。いくつかの具体例では、各繊維は弾性であり、及びいくつかの具体例では、各繊維は、導電性である。いくつかの具体例では、繊維、すなわち、第1の繊維4、第2の繊維5、第3の繊維6の各々は、導電性及びエラストマー性の両方である。1具体例では、3つの繊維の少なくとも2つはエラストマー性であり、3つの繊維の少なくとも2つは導電性である。第1の繊維4、第2の繊維5、第3の繊維6の各々が、導電性及び弾性の両方ではない具体例によれば、第1の繊維4、第2の繊維5、第3の繊維6のために、各種の他のタイプの織物を使用できる。図1a~1cは、各種の配置の繊維、すなわち、第1の繊維4、第2の繊維5、第3の繊維6を示す。
【0034】
第1の繊維4、第2の繊維5、第3の繊維6は、同一の又は異なる材料から形成され、少なくとも1つは、異なった弾性度を有する。1具体例では、繊維の1つは、その元の長さの400%の長さに伸びることができものであり、他の繊維の1つは、低弾性ではあるが、元の長さの約20%に伸びることができるものである。いくつかの具体例では、コア繊維を結合する前に、少なくとも1つのコア繊維、例えば、第1の繊維4、第2の繊維5、又は第3の繊維6は、伸ばされ、他の繊維と混繊され、ついで、弛緩され、これにより、伸ばされ、かつ弛緩された繊維は、その長さを回復し、縮小する。これは、他の1つ又は2つの繊維の量及び長さが、コアの多成分糸の引き伸ばしに利用されることにつながる。このように、複合糸は、他の繊維の1つ以上が、他の繊維よりも低弾性であるか、かなり劣るものであっても、顕著に引き伸ばされる。各種の具体例では、開示された糸のコアの相互に結合された繊維は、実質的に単繊維として機能する。上記のように、第1の繊維が引き伸ばされる具体例では、第2及び/又は第3の繊維の高回復特性が、糸、及び特に最終繊維において生じ、同時に、伸縮性となり、優れた回復特性を有する。
【0035】
第1及び第2の繊維を有する弾性の導電性コアの構造及びその優れた弾性及び導電性の糸の電気特性のため、本発明の糸の利点は、弾性及び導電性の糸の電気特性は、その使用を通して、及び本発明の糸と合体する繊維の寿命を通して維持されることである。実際、伸長の後、繊維を引き伸ばす力が弛緩される際、弾性の繊維は、引き伸ばされる前に繊維が有していたサイズを実質的に完全に回復する。繊維又は糸のサイズに依存する弾性特性は、このように、繊維の繰り返し及び頻繁な使用にもかかわらず、実質的に一定を維持する。この回復は、第2の繊維の存在によって(又は第2及び第3の繊維の存在によって)得られる。いくつかの具体例では、裸のエラスタン繊維の1つであり、これにより、弾性糸の元のサイズが維持される。
【0036】
図1aは、実質的に一定して接触する共押出しされた第1の繊維4、第2の繊維5、及び第3の繊維6を示す。共押出しされた繊維4、5、6は実質的に並列であるか、又は共押出しされた繊維は並列様式で混合されるが、絡み合わされず又は加撚されない。繊維4、5、6は、図1aにおいて示された配置では、加撚状態では示されていないが、一般的には、共押出工程後の複合コアにステープルの繊維シースが適用されるリング精紡において、実質的に、いくらかの加撚が生ずる。
【0037】
本明細書では、「共押出」は、少なくとも2つのタイプの繊維、例えば、導電性のエラストマー性繊維及びポリエステル繊維を、これらを一緒に圧縮することによって、機械的に一緒に結合する各種の方法(ただし、機械的に一緒に結合される以前では、繊維の一方又は両方は、有利には、伸ばした状態にある)を意味するものである。機械的手段による繊維の結合は、圧縮による成形を含むことができる。コア繊維を結合する他の方法と同様に、「共押出」は、繊維を処理する装置に沿って動きつつある繊維について行われる。結合以前では、繊維は、有利には、引き伸ばされた状態にある。いくつかの具体例では、繊維の1つは、その元の長さの2~4倍に引き伸ばされ、他の繊維は、その元の長さの1.1~1.5倍に引き伸ばされるが、他の具体例では、他の引っ張り度も使用される。繊維は、追加的に又は二者択一的に、結合以前に、接着を助けるために機械的コーティングを含む。繊維は、一緒に、装置を通過され、ここで、低減された容積の空間に、強制的に、一緒に入れられ、これにより、一緒に機械的に圧縮される。繊維を結合するための例示的装置は、「V」形状を有するロールであり、ここで、繊維は、強制的に、ロールの「V」部分の底に入れられ、ここで、繊維は一緒に圧縮され、このように、結合されて、図1aのコア2の繊維4、5、6のような繊維のただ1つの束を形成する。
【0038】
他の具体例では、一緒に結合される2つ以上の繊維を、1対のローラーの同じ位置、例えば、溝に供給し、ここで、繊維は一緒に圧縮され、このようにして、機械的に一緒に圧縮される。少なくともいくつかの繊維が、その製造の間に及び共押出によって一緒に結合される以前に、化学剤によって処理されていてもよい。化学剤は、2つの束の繊維の相互の接着を改善できる。
【0039】
上記のように、狭い空間を通しての共押出によって得られたコア2の繊維4、5、6の束は、ついで、図5及び6に示すようなシース形成装置(例えば、リング精紡装置)に供給される。コア2を非弾性シース結合するリング精紡機械は、リング精紡プロセスの間に、結合された繊維のただ1つの束、すなわち、コア2に対して、いくらかの加撚を付与できる。1の有利な具体例では、共押出によるコア繊維の束を結合する装置は、多繊維の弾性及び導電性コアを被覆する装置、例えば、リング精紡装置の近くに配置される。この様式では、コア2の結合された繊維は、リング精紡装置に供給される前に、偶発的に分離することはない。
【0040】
このことから、当業者には、コア繊維に関連して、ここで使用する共押出は、2つ以上の繊維を機械的圧縮によって結合させる方法を意味することは明らかである。この機械的圧縮、又は圧縮による成形は、結合した繊維に絶縁シース、通常、導電性の弾性コアの上に紡糸されるステープル繊維のシースを形成する前に行われる。共押出によって結合された繊維は、有利には、一緒に結合される際、引き伸ばされた状態である。当業者には、ここで使用するように共押出された繊維は、共押出によって一緒に結合された2以上の繊維をいい、このような繊維は、初めに、一緒にかつ実質的に並列に機械的に結合され、コアにシースを設けるためにリング精紡装置に供給される前、形成時では、わずかの加撚を有するか、又は全く加撚されていないことも明らかである。
【0041】
図1bは、交絡された第1の繊維4、第2の繊維5、及び第3の繊維6を示している。図1aの具体例におけるように、2つのタイプの繊維のみが要求され、3つの繊維の内の2つ(5及び6)は、好ましくは、サイド・バイ・サイド多成分繊維、例えば、T400ファイバーの形である。繊維の交絡(すなわち、繊維の束)は、当分野において各種の公知及び開発中の技術、例えば、オープン又はクローズド交絡ジェットに従って行われる。交絡は、約50~200ポイント/m、又は約80~120ポイント/m、又はいくつかの具体例では、約95~105ポイント/mの範囲内の多数の結合ポイントを提供する。交絡は、公知の方法又は開発中の方法に従って行われ、及び本願の出願人に係る国際公開第2012/062480に記載された方法に従って行われる。交絡された繊維は、複数のポイントPで結合され、交絡は、公知の技術に従って、又は下記の方法に従って行われる。
【0042】
T-400糸パッケージをクリール(図示していない)に搭載する。T-400糸を送りローラーに案内し、ローラーの周囲に5回巻き付ける。エラストマー、例えば、エラスタン糸パッケージを、ドラフトが提供されるように、ドラフトローラーに搭載し、エラスタン糸を、センサーを通って案内し、送りローラーにおいて、T-400糸と組み合わせる。組み合わされた繊維を、送りローラーから、交絡エアージェット18、例えば、Sincro Jet交絡装置(Fadis、イタリヤ)に案内する。
【0043】
続いて、交絡された繊維を、潤滑ステーションに案内し、最終的には、交絡された繊維を図5及び6の独創的な装置に取り付けた後、複合糸パッケージ206(図5及び6に示す)に巻き取る。システムは、上記したように、交絡された糸に対して多数の結合ポイント(50~200ポイント/mの範囲内)を提供するように配置される。
【0044】
図1cは、加撚された第1の繊維4、第2の繊維5、及び第3の繊維6を示す。複数の繊維が加撚される図1cに示されるような各種の具体例では、撚りの度合いは、約80~600撚り/m、好ましくは、120~600撚り/mの範囲内であり、いくつかの具体例では、約300~600撚り/m又は350~550撚り/mの範囲内である。加撚は、当分野において公知の方法で、例えば、リング撚糸、Hamel又はダブル加撚によって行われる。
【0045】
各種の例示的具体例では、繊維、すなわち、第1の繊維4、第2の繊維5、及び第3の繊維6は、同一直径であるか、又は異なった直径を有することができる。
【0046】
第1の繊維4、第2の繊維5、及び第3の繊維6の1以上が導電性である場合、これらは、異なった導電率を含むことができ、同一又は異なった導電性添加剤で形成される。
【0047】
上述のように、第1の繊維4、第2の繊維5、及び第3の繊維6の1以上が、c-TPU又は各種の他の熱可塑性エラストマーで形成される。c-TPU及び上記した他のエラストマー材料に加えて、第1の繊維4、第2の繊維5、及び第3の繊維6の1以上について好適な材料としては、エラスタン、スパンデックスのようなポリウレタン繊維及び同様の弾性を有する繊維が含まれる。いくつかの具体例では、第1の繊維4、第2の繊維5、及び第3の繊維6の少なくとも1つは、初期長さの400%以上に引き伸ばすことができる繊維が選ばれる。特別な具体例では、第1の繊維4、第2の繊維5、及び第3の繊維6の1以上を、T162C、T178C、CT136C、CT902C及びポリオレフィンエラストマー(例えば、XLA)から形成される。T162C、T178C、CT136C、CT902Cは、Invistaによるスパンデックス製品の種類であり、主に、構成ブロックとして、コポリエーテル系ソフトセグメント及び4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)系ハードセグメントからなる。XLAは、DOW Chemical Co.によって開発された架橋された均質分枝状エチレンポリマーである。第1の繊維4、第2の繊維5、及び第3の繊維6の1以上のために使用される他の市販のエラストマー繊維の例としては、Dowxia、Dorlastan(Bayer、独国)、Lycra(Dupont、米国)、Clerrpan(Globe Mfg. Co.、USA)、Glospan(Globe. Mfg. Co.、USA)、Spandaven(Gomelast C.A、ベネズエラ)、Roica(旭化成、日本)、Fujibo Spandex(富士紡績、日本)、Kanebo LooBell 15(カネボウ、日本)、Spantel(クラレ、日本)、Mobilon(日清紡)、Opelon(東レ-DuPont)、Espa(東洋紡)、Acelan(Teakwang Industrie)、Texlon(Tongkook Synthetic)、Toplon(Hyosung)、Yantai(Yantai Spandex)、Linel、Linetex(Fillatice SpA)が含まれる。これらの及び他の繊維は、一般に良好な弾性特性を提供するために選択され、高度に伸縮性である。ポリオレフィン繊維も使用される。
【0048】
上述の各例では、第1の繊維4、第2の繊維5、及び第3の繊維6の1以上の繊維は、上述のように、導電性の不純物を含む。好ましくは、エラストマー(弾性)繊維は導電性であり、弾性の劣る(コントロール)繊維は非導電性である。
【0049】
図1dにおいて、導電性のエラストマーコア2は、ただ1つの繊維12のみを含む。繊維12は、エラストマーの導電性繊維であり、第1の繊維4、第2の繊維5、及び第3の繊維6とともに、既に上述した各種の導電性のエラストマー繊維材料製であってもよい。
【0050】
他の具体例では、各種の数の繊維を合わせて、導電性のエラストマーコア2を形成できる。
【0051】
再度、図1a~1dを参照すると、シース3のための繊維は、綿、ウール、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、及び弾性糸に天然の外観及び天然の感触を提供する同様の物質の如き繊維である。シース3は、糸1の外殻を形成し、全てのタイプの再生セルロース、麻、亜麻、ジュート、ケナフ、サイザル、バナナ、リューゼツラン、竹、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(ラクチド)又はその混合物のような天然又は合成の材料から製造される。1つの有利な具体例では、綿短繊維を使用する。シース3のために、前記材料の各種の組み合わせも使用される。
【0052】
シース3の材料は、導電性のエラストマーコア2を包囲する。各種の具体例では、シース3は、完全に、エラストマーの導電性コア2を被覆する。エラストマーの導電性コア2を綿又は他の繊維にて被覆して、シース3を形成するために使用される好適な方法が使用される。コア精紡及びリング精紡技術は公知であり、織物工業において広く使用されている方法であり、異なる特性を有する2以上の糸を組み合わせて、1つの糸メンバーを形成することを含む。糸を形成するためにこれらの及び各種の他の紡糸方法を使用できる。シース3内に配置されたコアを有する糸1を生成する各種の紡糸法が、本発明の範囲内にある。リング精紡は、繊維(例えば、綿、亜麻又はウール)を紡糸して糸を生成する方法であり、各種の具体例において、使用される。本発明は、コア精紡を使用して、シース3を形成する綿又は他の材料に供給された弾性の伝導性コア2により、形成されるシース3及び弾性の導電性コア2を含む糸を提供する。コア精紡及びリング精紡とともに、本発明の弾性糸及び織物を達成するために使用される方法の中には、綿、ポリエステル、又はポリアミドと、熱可塑性エラストマー又はTPUとのテクスチャー化がある。
【0053】
1つ又は複数個の弾性特性を有する繊維を含む伸縮性コアを、シース被覆と組み合わせることによって、糸を形成する各種の方法は、上記の国際公開第2012/062480号に提供されており、ここに開示された各種の方法は、本発明に従って、検出及び各種の他の用途のための新規の導電性の弾性糸を生成するために使用される。
【0054】
図2は、本発明の各種の具体例による導電性のエラストマー糸を製造する方法を示すフローチャートである。各種の具体例では、導電性のエラストマー糸を製造する方法は、エラストマー(例えば、エラストマー又はTPU)の溶媒溶液を調製することによってエラストマーの導電性コア繊維を形成することを含む(工程100)。溶媒は、乾式紡糸法において使用される好適な溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)である。これらの溶媒は、いずれも、極性の有機性であり、水と混和性であり、このため、図3及び4に示されるような湿式紡糸法の続くステージにおいて生成物からの溶媒の除去が可能である。
【0055】
いくつかの具体例では、エラストマーは、溶液において、約20~50質量%を構成し、及びいくつかの具体例では、エラストマーは、溶液の約20~30質量%を形成するが、他の具体例では、他の質量百分率及び他の溶媒溶液を使用できる。
【0056】
方法は、エラストマー/TPU溶液と、所望の導電性材料との組み合わせを提供する(工程102)。各種の具体例では、導電性の添加剤を、エラストマー(例えば、ここで示されたエラストマー材料、ただし、これらに限定されない)に添加することによって、連続した導電性コアが製造される。前記のような導電性の添加剤が使用され、エラストマー材料がTPUである具体例によれば、導電性の添加剤の添加はc-TPUを形成する。導電性の添加剤は、添加剤の機械的撹拌及び/又は表面コーティングを介して、エラストマー材料のマトリックスに導入されてもよい。混合は、溶液におけるエラストマー材料の浸透限界を越えるために、導電性の添加剤を、エラストマー材料-コーティング溶液に添加することを含むことができる。溶液における導電性の添加剤の添加は、制御される様式での拡散を介して、分散溶液を形成する。このような添加は、有利には、嵩高で、粘着性の粒子の体積を防止するために、制御された様式で行われる。各種の具体例では、エラストマー材料を含有する溶液と混合する以前に、導電性の添加剤を相溶化剤と混合できる。
【0057】
工程104では、エラストマー/TPUと導電性の添加剤との溶液は、上述の導電性繊維(エラストマーの導電性コア2として機能できる)を形成するために湿式紡糸又は乾式紡糸法において使用される。乾式及び湿式紡糸法の具体例を、それぞれ、図3及び4に示す。いくつかの具体例では、工程104の湿式又は乾式紡糸法の間に、導電性コーティングが適用される。各種の導電性が使用可能である。いくつかの具体例では、導電性コーティングは、工程104の湿式又は乾式紡糸法後に適用され、及びいくつかの具体例では、繊維は、導電性コーティング及び導電性材料(例えば、繊維内に含侵されたナノ粒子)の両方を含むことができる。
【0058】
工程106では、工程104で形成された導電性のエラストマー繊維を第2の繊維と組み合わせて、例えば、加撚、交絡又は共押出によって、エラストマーの導電性コア2を形成する。エラストマーの導電性コアが多数の繊維を含む具体例によれば、これらは、上述のように、各種の様式で組み合わされる。工程106は、また、エラストマーの導電性コアを被覆する絶縁性シースを形成するために、他の材料(例えば、上述のような、各種の一般的な及び他の天然の及び人造の繊維)を有する弾性の導電性コアのリング精紡又はコア精紡を提供する。弾性の導電性コアは、上述のように、1つ又は多数のコア繊維を含む。弾性特性を有し及び絶縁シースによって被覆された1つ又は多数の繊維を含む伸縮性のコアを有する糸を形成する各種の方法は、例えば、上述の米国特許出願公開第20130260129号に提供されており、図5及び6に示す。
【0059】
図3及び4は、エラストマー材料、溶媒及び導電性添加剤を含有する溶液からエラストマーの導電性繊維を形成する装置及び方法を示している。図3は、乾式紡糸法の使用を示し、及び図4は、湿式紡糸法の使用を示す。
【0060】
導電性添加剤を含むエラストマー材料の均質な溶液を、ノズル、又は紡糸口金を通して加圧して、いくつかの具体例では、直径約1~50μmを有する多数の微細繊維を形成する。使用する紡糸法のタイプに応じて、溶媒を、温風蒸発を介して、或いは水浴での洗浄及び続く薄層蒸発によって除去し、溶媒を再使用のために集めることができる。いくつかの具体例では、乾式又は湿式紡糸法の間に又は後に、弾性繊維を導電性コーティングにて被覆するために、各種の方法が使用できる。いくつかのコーティング法は、噴霧、キスロール、浸漬、及びパディングを含むが、他の具体例では、他の方法が使用される。好適なコーティング材料としては、導電性の金属酸化物、その場でナノ粒子を形成する溶液、カーボンナノ材料が含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
図3は、乾式紡糸を介して伸縮性の糸を製造する装置の具体例を示し、本発明に従って、導電性の弾性糸製造するために使用される。タンク20は、溶解した紡糸化合物22を保持する。溶解した紡糸化合物22は、導電性の添加剤を含むエラストマー材料の均質溶液であり、上述のように、各種の技術を使用して溶液に導入した導電性の添加剤を含む上述のエラストマー成分のいずれでもよい。各種の具体例では、溶解した紡糸化合物22は、熱可塑性のエラストマー又は熱可塑性の弾性ポリウレタン(TPU)の溶液である。所望の導電性の添加剤を含むエラストマー/TPU溶液(溶解された紡糸化合物22を形成する)を形成するために、各種の弾性ポリウレタン材料(一括して、エラスタンと称される)が使用される。紡糸ポンプ24は、紡糸ノズル26を通って、加圧した溶解紡糸化合物22を送り出す。各種のポンプ及び各種の形状のノズルを使用できる。
【0062】
導電性の添加剤を含むエラストマー材料の溶液を、紡糸ノズル24を通って加圧押出して、多数の微細繊維28を形成する(いくつかの具体例では、約1~50μmの範囲の直径を有するが、他の具体例では、他の直径を有する)。多数の微細繊維28は、チャンバー30内で形成される。チャンバー30は入口32を含み、入口を介して、矢印34によって示されるように、空気が導入される。チャンバー30は、また、出口36を含み、出口を介して、蒸発した溶媒が排出される。多数の微細繊維28は、導電性の弾性繊維でもよいし、巻き取りユニット40(ローラー42を含み、該ローラーは繊維38を引き出し、伸す)によって、合わされて繊維38を形成してもよい。
【0063】
図4は、湿式紡糸を介する伸縮性糸を製造する装置の具体例を提示し、該装置は、本発明による各種の導電性の弾性糸を製造するために使用される。図4において、タンク20、溶解した紡糸化合物22、紡糸ポンプ24、紡糸ノズル26、及び繊維28は、上記のとおりである。湿式紡糸の具体例では、溶解した紡糸化合物22は、有利には、湿式紡糸法において、生成した糸から溶媒が除去されるように、水と混和性の極性の有機物質である。紡糸ノズル26によって微細繊維28が生成され、沈殿浴48の溶液46中に導かれる。溶液46は水でもよいが、各種の具体例では、沈殿浴48において、水-ジメチルホルムアミド混合物、非加水分解性のシロキサン-シクロアルキレンブロック共重合体、及び潤滑剤としての乳化した鉱油が使用される(ただし、これらに限定されない)。溶液46は、生成した糸からの溶媒の除去が可能となるように、溶解した紡糸化合物22と合わせて選択される。巻き取りユニット50は、繊維28から一緒に繊維54を形成するローラー52を含む。
【0064】
図5及び6は、本発明に従って、上述の1以上のエラストマーの導電性繊維、例えば、第1の繊維4、第2の繊維5、及び第3の繊維6を含む糸1の製造の具体例を示す。
【0065】
いくつかの具体例では、上述のエラストマーの導電性コア2は、T-400及びエラスタンからなることができ、ここで、T-400繊維は二成分系繊維であって、75デニールを有し、エラスタン繊維は40~70デニールを有する。この複合コアの番手は81.5又は90デニールであり、正規のコアスパンエラスタン糸の2.25~7倍の太さである。「デニール」は、絹、レーヨン、ナイロン等の糸の繊度を測定するための質量の単位である。上述したような好適の導電性の添加剤が含まれる。
【0066】
T-400+エラスタンエラストマーの導電性コア2の寸法のため、適切なボビンは、エラスタンのボビンよりもかなり大きい。従って、図5及び6に示されるように、エラストマーの導電性コア2のボビン206は、綿粗糸糸巻き207に接してフレーム209に配置される。
【0067】
エラストマー性の導電性コア2のT-400及びエラスタン又は他のアレンジメントは、導電性コア2を整列させ及び真直ぐにさせるために、糸に低いプレ張力を与えるために使用される2つのテンションバー210の間に案内される。これは、特に、複合糸が、2つの繊維、すなわち、T-400及びエラスタンの交絡によって得られる場合、エラストマー性の複合コア「糸」2の特質の点から見て有用である。プレテンションバー210から、エラストマーの導電性コア糸2を、重り212が置かれた2つの駆動ローラー211に供給する。エラストマーの導電性コア2を、ローラー211に関するコア糸の動きを防止するために、駆動ローラー及び重り212の間に案内する。しかし、他の具体例では、ローラー211及び重り212の組み合わせの代わりに、エラストマーの導電性コア糸2に制御された速度を付与する他の好適な手段、例えば、当分野において公知のドラフトローラーのような手段を使用することもできる。
【0068】
上記は位置の1つの利点は、標準的なエラスタンコア繊維を製造するためにも、同一の装置を使用できることである。この具体例では、エラスタン繊維は、ローラー211の重り212の位置に置かれたパッケージに積まれる。
【0069】
第1の牽伸配置211、212から、エラストマーの導電性コア2を、回転ガイド213に案内し、ここから、ドラフトローラー214に案内する。ドラフトローラーは、当分野において使用可能なもののように、綿粗糸208のための複数の牽伸ローラーの最高位のカップルである。綿粗糸208を、プレテンションローラー210、駆動ローラー211の前の糸巻き207から、第1のガイド及び第2のガイド216に案内する。図5において見られるように、ガイド215は、粗糸において張力を発生させ、粗糸を特定の位置に保持して、粗糸が自由に動くことを回避するために、第2のガイド216に対してずらして、装置の前方に配置される。
【0070】
ガイド216から、綿粗糸208を、ドラフトローラー220、222、及び214に送る。ドラフトローラー214は、共通して、エラストマーの導電性コア2と粗糸208との間にある。
【0071】
本発明によれば、エラストマーの導電性コア2は、綿粗糸と合体される前に緊張され、緊張又は伸長は、ローラー211とローラー214との間の速度の差によって得られ、すなわち、ローラー211と最後のドラフトローラー214との間の速度の差が、複合コア「糸」において、ドラフト比を生ずる。述べたように、複合コアのドラフト比は、1.05~1.16の範囲内、好ましくは、1.10~1.14、最も好ましくは、1.12~1.14の範囲内である。このドラフト比は、ローラー211の速度に対するローラー214の速度の比として算定され、ここで、速度は、ローラーの表面における角速度である。
【0072】
プレテンションバー210は、要求されるドラフト比を得ることに貢献する。追加のプレテンションバー210は、エラストマーの導電性コア2の整列及びわずかの緊張を提供し、このようにして、延伸工程を助成するため、ドラフト比を1.05から1.14に増大させることにおいて有用である。この結果、極度の精度が生じ、これにより、エラストマーの導電性コア2が最終の糸1の中心に維持される。
【0073】
追加のガイド215の使用及びガイド216に対するその千鳥形状の位置により、綿粗糸が常に同じ位置で供給されるようになり、長期にわたる製造の間、綿粗糸の動きが防止される。綿粗糸208の位置を維持するよう良好に制御することと、エラストマーの導電性コア2での大きい張力との組み合わせにより、最終糸1の中心に位置するエラストマーの導電性コア2を保持し、コアをステープル繊維3によって完全に被覆することが可能になる。ドラフトローラー214を出る最終糸1の2つの部分は、ガイド217を通って供給され、紡糸装置218(当分野において公知であり、1具体例では、リング、トラベラー及びスピンドルを含んでなる)において、一緒に紡糸される。
【0074】
シース3の中心に位置するエラストマーの導電性コア2を有する糸1を製造する各種の方法が、本発明の範囲内に含まれる。このような方法としては、例えば、被覆された糸システム(JCBT、Menegato、OMM、RATTI、RPR、Jschikawaの機械を使用する)又は撚糸機(Hamelによる機械,Volkmanの2対1撚糸機,COGNETEX又はZinserによるSiroSpinを使用する)が含まれる。
【0075】
図5及び図6を参照して上述したように、大きな横糸パッケージとして製造された弾性糸は、弾性のデニム織物及び衣服の製造において、特に、横糸として用いられる。デニムを製造する機械及び方法は、当技術分野において公知であり、卓越した弾性及び優れた伸縮回復性を有するデニム織物を製造するために、例えば、Morrison Textile Machinery、Sulzer Machinery、又はそれらの改良が使用される。
【0076】
ついで、得られた織物を、仕上げ加工によって処理する。例えば、織物自体について、所望の伸縮値を付与するために、延伸した織物を熱処理する等の付加加工を行うことができる。これらの処理は、当技術分野において公知であり、織物に要求される最終の性質に応じて実施される。
【0077】
1以上の繊維(その少なくとも1つは導電性の繊維である)の弾性の導電性コアを有する糸(導電性コアは弾性材料であり、上述のように絶縁シースで被覆されている)の新規な製品が製造される。連続した導電性のエラストマーコアを有するコア精紡/リング精紡された糸は、センシング及びモニタリングの用途に使用される。糸は、各種の伸縮性織物、例えば、デニム織物を形成するために、横糸又は縦糸方向で使用される。伸縮性のデニム織物は、各種の衣服又は着用者の各種の身体部位に着用される他のアパレルを形成するために使用される。
【0078】
図7に示すような1具体例では、衣服は、ここに記載する導電性のエラストマー糸で形成された織物72から作製されたパンツ70である。パンツ70は、少なくとも、伸縮性の導電性糸から形成された伸縮性の導電性部分74を含み、いくつかの具体例では、衣服全体が、伸縮性の導電性部分74によって形成されている。図7は、また、センシング装置を形成し、電子部材76と組み合わされた伸縮性の導電性織物を示している。結合は、電線によるか、又はワイヤレスである。パンツ70の伸縮性の導電性織物72は、電子部材76とともに、ここに記載するように、各種の身体の機能、状態及び作用を測定又はモニターするために、電気センサーとして使用される。センシング及びモニタリングは、衣服の曲げ、延伸等による、着用者の動きによる、衣服70の伸縮性の導電性部分74の物理特性の変化に基づくものである。電子部材76は、ここに記載の各種の電気的機能を行う各種の好適なプロセッサーを含むか、又は接続される。
【0079】
他の具体例では、糸は、各種の他の衣服又は他のアパレル、又は着用可能な装置を形成するために使用される。衣服は、着用者の身体にぴったりするように着用される。衣服は、ファッション性の装いとして適しているか、又は運動選手用の整形外科分野又は他の医療分野専用の衣服であろう。導電性の織物は、電極、単一路、歪みセンサー、ヒーター又は各種の電磁気絶縁材料として機能できる。
【0080】
伸縮性の導電性織物は、導電性の伸縮性織物によって得られた情報を処理、ディスプレイ及び分析するために、プロセッサー及び他の電子装置と通ずる各種の電線又はワイヤレスの伝達手段を使用して、例えば、図7に示される電気部材76のような好適な回路と組み合わされる。各種のプロセッサーを使用できる。伸縮性の導電性織物は、少なくとも、伸縮性の導電性糸から形成された伸縮性の導電性部分を有することを特徴としており、この伸縮性の導電性部分は、伸縮性の導電性織物の物理特性とともに変動する電気特性を有する。異なった電気特性を提供するように変動できる物理特性としては、延伸、曲げによる長さ又は幅、又は他のサイズ特性における変化のようなサイズの変化が含まれる。他の具体例では、温度のような他の代謝条件が、伸縮性の導電性織物の異なった電気特性及び効果を生ずる。さらに他の具体例では、伸縮性の導電性繊維の他の物理特性は、検出可能な異なった電気特性を提供する。いくつかの具体例では、伸縮性の導電性織物は、使用者がとる多くのステップ、使用者の身体部分の動きの速度、使用者の身体部分の曲げ度合、及び運動の及び整形外科的動きをモニターするために、好適な電気回路及びプロセッサーと組み合わせて使用される。他の具体例では、センシング装置は、例えば、体温、心拍数、血圧、及び他の状態のような各種の代謝状態をモニターするために使用される。センシング装置は、医療、運動及び他の分野においても用途が認められる。
【0081】
上記の記載は、本発明の具体例の本質を、単に説明するものである。このように、当業者であれば、ここでは、正確には記載又は図示されていないが、本発明の本質を具現化する、その精神及び範囲内に含まれる各種の配置を案出できることは認識されるであろう。さらに、ここに示す全ての実施例及び開示した条件は、原則として、単なる教示的目的のために、本発明の本質及び発明者らによって技術の更なる促進に貢献するように開発された概念を表示するものであり、このような詳述した実施例及び条件に限定されるものではない。さらに、ここに、本発明の本質、態様、及び具体例を示す全ての陳述は、その特別な実施例とともに、その構造的及び機能的均等物の両方を包含することを意図するものである。さらに、このような均等物としては、現在公知の均等物及び将来開発される均等物、すなわち、構造にかかわらず、同一の機能を実行するよう開発される均等物の両方を含むものである。
【0082】
具体例の記載は、添付図面の各図と関連して読まれるものであり、全体の記載の一部と理解されるものである。記載では、「より低い」、「上のほうの」、「水平な」、「垂直の」、「の上に」、「の下に」、「上へ」、「下へ」、「頂部」及び「底部」のような相対的な用語は、その派生語(例えば、「水平に」、「下方に」、「上方に」等)とともに、記載した通りの又は検討中の図面に示されているような方向を示すものとの理解されなければならない。これらの相対的な用語は、記載の都合上のものであり、装置が特別な方向で構築又は作動されることを要求するものではない。連結、結合等に関連する用語、例えば、「結合される」及び「相互に結合される」は、他に明示的に記載しない限り、移動可能に又は固定的な取り付け又は関係の両方とともに、構造体が、介在構造体を介して、相互に固着又は取り付けられている関係をいう。
【0083】
本発明を、具体例の観点から記述したが、本発明はこれに限定されない。むしろ、特許請求の範囲は、本発明の精神及び均等物の範囲を逸脱することなく、当業者によってなされる本発明の他の変形例及び具体例を含むように広く解釈されなければならない。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3
図4
図5
図6
図7