(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036541
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着テープ、及び、電子部品の処理方法
(51)【国際特許分類】
C09J 201/02 20060101AFI20240308BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240308BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C09J201/02
C09J11/06
C09J183/04
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024016391
(22)【出願日】2024-02-06
(62)【分割の表示】P 2020529778の分割
【原出願日】2020-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2019053278
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019053279
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019053280
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】七里 徳重
(57)【要約】
【課題】被着体を固定した状態で300℃以上の高温加工処理を経た後であっても、光を照射することにより容易に剥離することができる粘着剤組成物、該粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着テープ、及び、電子部品の処理方法を提供する。
【解決手段】主鎖にポリイミド骨格を有し、側鎖又は末端に二重結合を有する官能基を有する反応性樹脂、及び、シリコーン化合物又はフッ素化合物を含む、粘着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖にイミド骨格を有し、側鎖又は末端に二重結合を有する官能基を有する反応性樹脂、及び、シリコーン化合物又はフッ素化合物を含む、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記シリコーン化合物又はフッ素化合物は、前記反応性樹脂と架橋可能な官能基を有する、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記二重結合を有する官能基は、置換されてもよいマレイミド基、シトラコンイミド基、ビニルエーテル基、アリル基、又は、(メタ)アクリル基である、請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記二重結合を有する官能基は、前記反応性樹脂の側鎖にある、請求項1~3のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記反応性樹脂は、二重結合を有する官能基当量(重量平均分子量/二重結合を有する官能基の数)が4000以下である、請求項1~4のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記反応性樹脂は、重量平均分子量が5000以上である、請求項1~5のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記反応性樹脂は、下記一般式(1a)で表される構成単位、下記一般式(1b)で表される構成単位、及び、下記一般式(1c)で表される構成単位を有し(ただし、s≧1、t≧0、u≧0)、両末端がそれぞれX
1及びX
2で表される反応性樹脂(1)である、請求項1~6のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【化1】
前記一般式(1a)~(1c)中、P
1、P
2及びP
3は、それぞれ独立して、芳香族基を表し、Q
1は、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族基を表し、Q
2は、置換又は非置換の芳香族構造を有する基を表し、Rは、置換又は非置換の分岐鎖状の脂肪族基又は芳香族基を表す。X
1、X
2及びX
3からなる群より選択される少なくとも1つは、二重結合を有する官能基を表す。
【請求項8】
前記一般式(1a)~(1c)中、P1、P2及びP3は、それぞれ独立して、炭素数5~50の芳香族基であり、Q1は、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数2~100の脂肪族基であり、Q2は、置換又は非置換の炭素数5~50の芳香族構造を有する基であり、Rは、置換若しくは非置換の分岐鎖状の炭素数2~100の脂肪族基又は芳香族基である、請求項7に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
前記一般式(1c)中、X3は二重結合を有する官能基である、請求項7又は8に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
前記一般式(1c)中、Rは芳香族エステル基又は芳香族エーテル基を有する芳香族基であって、Rにおける前記芳香族エステル基又は前記芳香族エーテル基はX3と結合している、請求項7~9のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項11】
前記一般式(1a)中、Q
1はダイマージアミンに由来する脂肪族基であり、前記ダイマージアミンに由来する脂肪族基は、下記一般式(4-1)で表される基、下記一般式(4-2)で表される基、下記一般式(4-3)で表される基、及び、下記一般式(4-4)で表される基からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項7~10のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【化2】
前記一般式(4-1)~(4-4)中、R
1~R
8及びR
13~R
20はそれぞれ独立して、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。
【請求項12】
前記反応性樹脂と架橋可能な官能基を有するシリコーン化合物は、主鎖にシロキサン骨格を有し、側鎖又は末端に二重結合を有する官能基を有するシリコーン化合物であり、前記主鎖にシロキサン骨格を有し、側鎖又は末端に二重結合を有する官能基を有するシリコーン化合物は、下記一般式(I)で表されるシリコーン化合物、下記一般式(II)で表されるシリコーン化合物、及び、下記一般式(III)で表されるシリコーン化合物からなる群より選択される少なくとも1つを含有する、請求項2~11のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【化3】
前記一般式(I)、一般式(II)、又は、一般式(III)式中、X及びYは、それぞれ独立して、0~1200の整数を表し、Rは二重結合を有する官能基を表す。
【請求項13】
更に、分子内に二重結合を有する官能基を二以上有し、分子量が5000以下である多官能モノマー又は多官能オリゴマーを含む、請求項1~12のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項14】
更に、光重合開始剤を含む、請求項1~13のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項15】
更に、光を照射することにより気体を発生する気体発生剤を含む、請求項1~14のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する、粘着テープ。
【請求項17】
請求項16に記載の粘着テープ上に電子部品を仮固定する工程、粘着テープに光を照射する工程、電子部品に熱処理を行う工程、及び、電子部品から粘着テープを剥離する工程を含む、電子部品の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着テープ、及び、電子部品の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の電子部品の加工時においては、電子部品の取扱いを容易にし、破損したりしないようにするために、粘着剤組成物を介して電子部品を支持板に固定したり、粘着テープを電子部品に貼付したりして保護することが行われている。例えば、高純度なシリコン単結晶等から切り出した厚膜ウエハを所定の厚さにまで研削して薄膜ウエハとする場合に、粘着剤組成物を介して厚膜ウエハを支持板に接着することが行われる。
【0003】
このように電子部品に用いる粘着剤組成物や粘着テープには、加工工程中に電子部品を強固に固定できるだけの高い接着性とともに、工程終了後には電子部品を損傷することなく剥離できることが求められる(以下、「高接着易剥離」ともいう。)。
高接着易剥離の実現手段として、例えば特許文献1には、ポリマーの側鎖又は主鎖に放射線重合性官能基を有する多官能性モノマー又はオリゴマーが結合された粘着剤を用いた粘着シートが開示されている。放射線重合性官能基を有することにより紫外線照射によりポリマーが硬化することを利用して、剥離時に紫外線を照射することにより粘着力が低下して、糊残りなく剥離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の電子部品の高性能化に伴い、電子部品に種々の加工を施す工程が行われるようになってきた。例えば、電子部品の表面にスパッタリングにより金属薄膜を形成する工程では、300~350℃程度の高温で加工を行うことにより、より導電性に優れた金属薄膜を形成することができる。しかしながら、従来の粘着剤組成物や粘着テープを用いて保護した電子部品に、300℃以上の高温加工処理を行うと、接着亢進を起こして、剥離時に充分に粘着力が低下しなかったり、糊残りが発生したりすることがある。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、被着体を固定した状態で300℃以上の高温加工処理を経た後であっても、光を照射することにより容易に剥離することができる粘着剤組成物、該粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着テープ、及び、電子部品の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、主鎖にイミド骨格を有し、側鎖又は末端に二重結合を有する官能基を有する反応性樹脂、及び、シリコーン化合物又はフッ素化合物を含む、粘着剤組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の一実施態様である粘着剤組成物は、主鎖にイミド骨格を有し、側鎖又は末端に二重結合を有する官能基を有する反応性樹脂(以下、単に「反応性樹脂」ともいう。)を含む。
上記反応性樹脂は、主鎖にイミド骨格を有することにより、極めて耐熱性に優れ、300℃以上の高温加工処理を経た後であっても、主鎖の分解が起こりにくく、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのを防止することができる。また、上記反応性樹脂が、側鎖又は末端に二重結合を有する官能基を有することにより、光の照射により粘着剤組成物の全体が均一にかつ速やかに重合架橋し、弾性率が上昇することにより粘着力が大きく低下して、容易に剥離することができる。
【0009】
上記反応性樹脂の側鎖又は末端に存在する二重結合を有する官能基としては、例えば、置換されてもよいマレイミド基、シトラコンイミド基、ビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アクリル基等が挙げられる。なかでも、より高い耐熱性が得られることから、置換されてもよいマレイミド基が好適である。
【0010】
上記反応性樹脂は、二重結合を有する官能基当量(重量平均分子量/二重結合を有する官能基の数)が4000以下であることが好ましい。上記官能基当量が4000以下であることにより、粘着剤組成物がより高い耐熱性を発揮することができる。これは、反応性樹脂の分子中に一定以上の密度で二重結合を有する官能基を有することにより、架橋間距離が短くなることによって、加熱による接着亢進がより抑えられるためと考えられる。上記官能基当量は、3000以下であることがより好ましく、2000以下であることが更に好ましい。上記官能基当量の下限は特に限定されないが、実質的には600程度が下限である。
【0011】
上記反応性樹脂は、重量平均分子量が5000以上であることが好ましい。上記反応性樹脂の重量平均分子量が5000以上であることにより、成膜が容易となるとともに、得られた膜がある程度の柔軟性を発揮することから、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮することができ、容易に被着体から剥離することができる。上記反応性樹脂の重量平均分子量は10000以上であることがより好ましく、20000以上であることが更に好ましい。上記反応性樹脂の重量平均分子量の上限は特に限定されないが、溶剤への溶解度が低くなるため例えば300000、特に100000である。
なお、上記反応性樹脂の重量平均分子量は、ゲルパミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によりポリスチレン換算分子量として測定される。カラムとしては、例えば、HR-MB-M(品名、ウォーターズ社製)等を用いることができる。
【0012】
上記二重結合を有する官能基は、上記反応性樹脂の側鎖又は末端のいずれにあってもよい。上記二重結合を有する官能基は、上記反応性樹脂の両末端に存在することが好ましく、両末端に加えて更に側鎖にも存在することがより好ましい。上記反応性樹脂の両末端における二重結合を有する官能基は反応性が高く、光の照射により粘着剤組成物をより充分に硬化させることができる。この結果、接着亢進をより抑制することができ、粘着剤組成物がより高い耐熱性を発揮することができる。
更に、上記反応性樹脂の側鎖に二重結合を有する官能基があることにより、粘着剤組成物がより高い耐熱性を発揮することができる。これは、架橋間距離が短くなることによって、加熱による接着亢進がより抑えられるためと考えられる。また、上記反応性樹脂の側鎖に二重結合を有する官能基があることにより、重量平均分子量を5000以上としながら、上記官能基当量を4000以下に調整することが容易となる。これにより、粘着剤組成物が充分な初期粘着力を有すると同時に、耐熱性に優れ、300℃以上の高温加工処理を行っても接着亢進が少なく、光を照射することにより、より容易に剥離することができる。
【0013】
上記反応性樹脂としては、具体的には例えば、下記一般式(1a)で表される構成単位、下記一般式(1b)で表される構成単位、及び、下記一般式(1c)で表される構成単位を有し(ただし、s≧1、t≧0、u≧0)、両末端がそれぞれX1及びX2で表される反応性樹脂(1)が挙げられる。
【0014】
【0015】
上記一般式(1a)~(1c)中、P1、P2及びP3は、それぞれ独立して、芳香族基を表し、Q1は、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族基を表し、Q2は、置換又は非置換の芳香族構造を有する基を表し、Rは、置換又は非置換の分岐鎖状の脂肪族基又は芳香族基を表す。X1、X2及びX3からなる群より選択される少なくとも1つは、二重結合を有する官能基を表す。
【0016】
上記一般式(1a)~(1c)中、P1、P2、P3は、炭素数5~50の芳香族基であることが好ましい。P1、P2、P3が炭素数5~50の芳香族基であることにより、本発明の一実施態様である粘着剤組成物は、特に高い耐熱性を発揮することができる。
【0017】
上記一般式(1a)中、Q1は、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数2~100の脂肪族基であることが好ましい。Q1が置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数2~100の脂肪族基であることにより、本発明の一実施態様である粘着剤組成物を用いて製造した粘着テープが高い柔軟性を発揮することができ、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮できるとともに、剥離性も向上する。
また、Q1は、後述するようなジアミン化合物に由来する脂肪族基であることが好ましい。なかでも、柔軟性を高める観点、及び、上記反応性樹脂(1)の溶媒や他の成分との相溶性が増し粘着テープの製造が容易となる観点から、Q1は、ダイマージアミンに由来する脂肪族基であることが好ましい。
【0018】
上記ダイマージアミンに由来する脂肪族基は特に限定されないが、下記一般式(4-1)で表される基、下記一般式(4-2)で表される基、下記一般式(4-3)で表される基、及び、下記一般式(4-4)で表される基で表される基からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。なかでも、下記一般式(4-2)で表される基がより好ましい。
【0019】
【0020】
上記一般式(4-1)~(4-4)中、R1~R8及びR13~R20はそれぞれ独立して、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。なお、*は結合手を表す。即ち、*は上記一般式(1a)~(1c)中のNと結合する。
【0021】
上記一般式(4-1)~(4-4)中、R1~R8及びR13~R20で表される炭化水素基は特に限定されず、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和炭化水素基であってもよい。なかでも、R1とR2、R3とR4、R5とR6、R7とR8、R13とR14、R15とR16、R17とR18、及び、R19とR20の炭素数の合計が7以上、50以下であることが好ましい。上記炭素数の合計が上記範囲内であることで、本発明の一実施態様である粘着剤組成物を用いて製造した粘着テープがより高い柔軟性を発揮することができ、また、上記反応性樹脂(1)の溶媒や他の成分との相溶性も更に増す。上記炭素数の合計は、より好ましくは9以上、更に好ましくは12以上、更により好ましくは14以上である。上記炭素数の合計は、より好ましくは35以下、更に好ましくは25以下、更により好ましくは18以下である。
【0022】
上記一般式(4-1)で表される基、上記一般式(4-2)で表される基、上記一般式(4-3)で表される基、及び、上記一般式(4-4)で表される基において光学異性は特に限定されず、いずれの光学異性も含む。
【0023】
上記一般式(1b)中、Q2は、置換又は非置換の炭素数5~50の芳香族構造を有する基であることが好ましい。Q2が置換又は非置換の炭素数5~50の芳香族構造を有する基であることにより、本発明の一実施態様である粘着剤組成物は、特に高い耐熱性を発揮することができる。
【0024】
上記一般式(1c)中、Rは、置換又は非置換の分岐鎖状の炭素数2~100の脂肪族基又は芳香族基であることが好ましい。Rが置換又は非置換の分岐鎖状の炭素数2~100の脂肪族基又は芳香族基であることにより、本発明の一実施態様である粘着剤組成物を用いて製造した粘着テープが高い柔軟性を発揮することができ、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮できるとともに、剥離性も向上する。
【0025】
上記一般式(1c)中、Rは芳香族エステル基又は芳香族エーテル基を有する芳香族基であって、Rにおける該芳香族エステル基又は該芳香族エーテル基はX3と結合していることが好ましい。
ここで、「芳香族エステル基」とは、芳香族環にエステル基が直接結合した基を意味し、「芳香族エーテル基」とは、芳香族環にエーテル基が直接結合した基を意味する。このようにエステル基やエーテル基に結合する部分を芳香族基にすることにより、粘着剤組成物が高い耐熱性を発揮することができる。一方、X3が芳香族エステル基又は芳香族エーテル基を介してRに結合することにより、X3中の二重結合がRと共役することがないことから、光を照射したときの重合架橋を妨げることがない。
【0026】
上記反応性樹脂(1)中、二重結合を有する官能基(架橋性不飽和結合)は、X1、X2及びX3からなる群より選択される少なくとも1つであればよいが、少なくともX3が二重結合を有する官能基であることが好ましい。少なくともX3が二重結合を有する官能基であることにより、粘着剤組成物がより高い耐熱性を発揮することができる。
上記X1、X2及びX3のいずれかが二重結合を有する官能基以外の官能基(二重結合を有さない官能基)である場合、該二重結合を有さない官能基としては、それぞれ独立して、例えば、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、酸無水物、アミン化合物等が挙げられる。具体的には、上記反応性樹脂(1)の原料となる酸無水物、ジアミン化合物の片末端未反応物が挙げられる。
上記反応性樹脂(1)中、二重結合を有する官能基としては、例えば、置換されてもよいマレイミド基、シトラコンイミド基、ビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アクリル基等が挙げられる。なかでも、より高い耐熱性が得られることから、置換されてもよいマレイミド基又はアリル基が好適であり、特に高い接着性が得られることから、アリル基を1つ以上有するトリ(イソ)シアヌレート基がより好適である。
【0027】
上記一般式(1a)~(1c)中、sは1以上、好ましくは3以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下である。上記一般式(1a)~(1c)中、tは0以上、好ましくは1以上、より好ましくは3以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下である。上記一般式(1a)~(1c)中、uは0以上、好ましくは1以上、より好ましくは3以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下である。上記一般式(1a)~(1c)においてs、t、及びuが上記範囲内であると、硬化により容易に剥離できる。
なお、上記反応性樹脂(1)中、上記一般式(1a)で表される構成単位、上記一般式(1b)で表される構成単位、及び、上記一般式(1c)で表される構成単位は、それぞれの構成単位が連続して配列したブロック成分からなるブロック共重合体であってもよいし、それぞれの構成単位がランダムに配列したランダム共重合体であってもよい。
【0028】
上記反応性樹脂は、例えば、ジアミン化合物と芳香族酸無水物とを反応させてイミド化合物を調製し、更に、該イミド化合物の官能基に、該官能基と反応する官能基と二重結合を有する官能基とを有する化合物(以下、官能基含有不飽和化合物という。)と反応させることにより得ることができる。
【0029】
上記ジアミン化合物としては、脂肪族ジアミン化合物又は芳香族ジアミン化合物のいずれも用いることができる。
上記ジアミン化合物として脂肪族ジアミン化合物を用いることにより、本発明の一実施態様である粘着剤組成物を用いて製造した粘着テープが高い柔軟性を発揮することができ、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮できるとともに、剥離性も向上する。
上記ジアミン化合物として芳香族ジアミン化合物を用いることにより、本発明の一実施態様である粘着剤組成物の耐熱性がより向上する。
また、上記ジアミン化合物として、官能基を有するジアミン化合物を用い、該官能基に上記官能基含有不飽和化合物を反応させることにより、側鎖に二重結合を有する官能基を有する反応性樹脂を製造することができる。
これらの脂肪族ジアミン化合物、芳香族ジアミン化合物及び官能基を有するジアミン化合物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記脂肪族ジアミン化合物としては、例えば、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、ダイマージアミン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノメンタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、3,3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、ジアミノマレオニトリル、1,3-ジアミノペンタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ(5.2.1.02,6)デカン等が挙げられる。
【0031】
上記芳香族ジアミン化合物としては、例えば、9,10-ジアミノフェナントレン、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル、3,7-ジアミノ-2-メトキシフルオレン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4-ジアミノベンゾフェノン、3,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノアントラキノン、2,6-ジアミノトルエン、2,3-ジアミノトルエン、1,8-ジアミノナフタレン、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、1,4-ジアミノアントラキノン、1,5-ジアミノアントラキノン、1,5-ジアミノナフタレン、1,2-ジアミノアントラキノン、2,4-クメンジアミン、1,3-ビスアミノメチルベンゼン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、2-クロロ-1,4-ジアミノベンゼン、1,4-ジアミノ-2,5-ジクロロベンゼン、1,4-ジアミノ-2,5-ジメチルベンゼン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビストリフルオロメチルビフェニル、ビス(アミノ-3-クロロフェニ)エタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジエチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルジアミノフルオレン、2,3-ジアミノナフタレン、2,3-ジアミノフェノール、-5-メチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルフェニル)メタン、4,4’-ジアミノフェニルスルホン、3,3’-ジアミノフェニルスルホン、2,2-ビス(4,(4アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、4,4’-オキシジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-オキシジアニリン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメトキシビフェニル、Bisaniline M、Bisaniline P、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、o-トリジンスルホン、メチレンビス(アントラニル酸)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,2-ジメチルプロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、4,4’-ジアミノベンザニリド、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ポリオキシアルキレンジアミン類(たとえば、HuntsmanのJeffamine D-230、D400、D-2000およびD-4000)、1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン等が挙げられる。
【0032】
上記脂肪族ジアミン化合物のなかでも、柔軟性を高める観点、及び、上記反応性樹脂の溶媒や他の成分との相溶性が増し粘着テープの製造が容易となる観点から、ダイマージアミンが好ましい。
上記ダイマージアミンとは、不飽和脂肪酸の2量体として得られる環式及び非環式ダイマー酸を、還元しアミノ化して得られるジアミン化合物であり、例えば、直鎖型、単環型、多環型等のダイマージアミンが挙げられる。上記ダイマージアミンは、炭素-炭素不飽和二重結合を含んでもよく、水素が付加した水素添加物であってもよい。上記ダイマージアミンとして、より具体的には例えば、上述した一般式(4-1)で表される基、一般式(4-2)で表される基、一般式(4-3)で表される基、及び、一般式(4-4)で表される基を構成することのできるダイマージアミン等が挙げられる。
【0033】
上記官能基を有するジアミン化合物としては、例えば、水酸基を有するジアミン化合物、カルボキシル基を有するジアミン化合物、ハロゲン基を有するジアミン化合物等が挙げられる。
上記水酸基を有するジアミン化合物としては、例えば、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、3,5-ジアミノフェノキシエタノール、2,4-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、2,4-ジアミノベンジルアルコール、4,6-ジアミノレゾルシン2塩酸塩、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。上記カルボキシル基を有するジアミン化合物としては、例えば、3,5-ジアミノ安息香酸等が挙げられる。上記ハロゲン基を有するジアミン化合物としては、例えば、2,4-ジアミノクロロベンゼン等が挙げられる。
【0034】
上記芳香族酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,4,5-ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸、4,4’-スルホニルジフタル酸、1-トリフルオロメチル-2,3,5,6-ベンゼンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、ベンゼン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、2,3,2’,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、フェナンスレン-1,8,9,10-テトラカルボン酸、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、チオフエン-2,3,4,5-テトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,2’,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)-ビス(フタル酸)等が挙げられる。
【0035】
上記官能基含有不飽和化合物としては、上記イミド化合物の末端又は側鎖の官能基に応じて選択して用いる。
例えば、上記イミド化合物の末端又は側鎖の官能基が水酸基の場合には、カルボキシル基を有するマレイミド化合物が挙げられる。該カルボキシル基を有するマレイミド化合物としては、例えば、酢酸マレイミド、マレイミドプロピオン酸、マレイミド酪酸、マレイミドヘキサン酸、trans-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸、19-マレイミド-17-オキソ-4,7,10,13-テトラオキサ-16-アザノナデカン酸等が挙げられる。更に、ブチルビニルエーテル等のエーテル基を有するビニル化合物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等のグリシジル基を有するアリル化合物、アリルグリシジルエーテル、グリセリンジアリルモノグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するアリルエーテル化合物等が挙げられる。更に、グリシジルオキシエチルビニルエーテル、グリシジルオキシブチルビニルエーテル、グリシジルオキシヘキシルビニルエーテル、グリシジルジエチレングリコールビニルエーテル、グリシジルシクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等のグリシジル基を有するビニルエーテル化合物等が挙げられる。更に、アリルイソシアネート等のイソシアネート基を有するアリル化合物、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基を有する(メタ)アクリロイル化合物等が挙げられる。
また、例えば、上記イミド化合物の末端又は側鎖の官能基がカルボキシル基の場合には、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等の水酸基を有するアリル化合物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等のグリシジル基を有するアリル化合物等が挙げられる。更に、アリルグリシジルエーテル、グリセリンジアリルモノグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するアリルエーテル化合物等が挙げられる。更に、グリシジルオキシエチルビニルエーテル、グリシジルオキシブチルビニルエーテル、グリシジルオキシヘキシルビニルエーテル、グリシジルジエチレングリコールビニルエーテル、グリシジルシクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等のグリシジル基を有するビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0036】
本発明の一実施態様である粘着剤組成物は、シリコーン化合物又はフッ素化合物を含む。
シリコーン化合物及びフッ素化合物は、耐熱性に優れることから、300℃以上の高温加工プロセスを経ても粘着剤組成物の焦げ付きを防止し、剥離時には被着体界面にブリードアウトして、剥離を容易にする。
上記シリコーン化合物は特に限定されず、例えば、シリコーンオイル、シリコーンジアクリレート、シリコーン系グラフト共重合体等が挙げられる。上記フッ素化合物は特に限定されず、例えば、フッ素原子を有する炭化水素化合物等が挙げられる。
【0037】
上記シリコーン化合物又はフッ素化合物は、上記反応性樹脂と架橋可能な官能基を有することが好ましい。上記シリコーン化合物又はフッ素化合物が上記反応性樹脂と架橋可能な官能基を有することにより、剥離時の光照射等により上記シリコーン化合物又はフッ素化合物が上記反応性樹脂と化学反応して上記反応性樹脂中に取り込まれることから、被着体に上記シリコーン化合物又はフッ素化合物が付着して汚染することを抑制することができる。
上記反応性樹脂と架橋可能な官能基は特に限定されず、例えば、カルボキシ基、ラジカル重合性の不飽和結合(例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、置換されてもよいマレイミド基)、ヒドロキシ基、アミド基、イソシアネート基、エポキシ基等が挙げられる。
なかでも、環境にやさしく、廃棄が容易であるという観点から、上記反応性樹脂と架橋可能な官能基を有するシリコーン化合物が好適である。
【0038】
上記反応性樹脂と架橋可能な官能基を有するシリコーン化合物としては、主鎖にシロキサン骨格を有し、側鎖又は末端に二重結合を有する官能基を有するシリコーン化合物が好ましい。
上記主鎖にシロキサン骨格を有し、側鎖又は末端に二重結合を有する官能基を有するシリコーン化合物は特に限定されないが、下記一般式(I)で表されるシリコーン化合物、下記一般式(II)で表されるシリコーン化合物、及び、下記一般式(III)で表されるシリコーン化合物からなる群より選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。これらのシリコーン化合物は、耐熱性が特に高く、極性が高いために粘着剤組成物からのブリードアウトが容易である。
【0039】
【0040】
上記一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)中、X及びYは、それぞれ独立して、0~1200の整数を表し、Rは二重結合を有する官能基を表す。
【0041】
上記一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)中、Rで表される二重結合を有する官能基としては、例えば、置換されてもよいマレイミド基、シトラコンイミド基、ビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アクリル基等が挙げられる。なかでも、より高い耐熱性が得られることから、置換されてもよいマレイミド基が好適である。なお、上記一般式(I)、一般式(II)及び一般式(III)において、Rが複数存在する場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。
【0042】
上記一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)で表される、シロキサン骨格に(メタ)アクリル基を有するシリコーン化合物のうち市販されているものは、例えば、EBECRYL350、EBECRYL1360(いずれもダイセル・サイテック社製)等が挙げられる。更に、BYK-UV3500(ビックケミー社製)、TEGO RAD2250(エボニック社製)(いずれもRがアクリル基)等が挙げられる。
【0043】
本発明の一実施態様である粘着剤組成物中の上記シリコーン化合物又はフッ素化合物の含有量は特に限定されないが、上記反応性樹脂100重量部に対する好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は20重量部である。上記シリコーン化合物又はフッ素化合物の含有量がこの範囲内であると、粘着剤組成物が被着体を汚染することなく優れた剥離性を発揮することができる。汚染を抑制しつつも剥離性を更に高める観点から、上記シリコーン化合物又はフッ素化合物の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は10重量部である。
なお、本発明の一実施態様である粘着剤組成物は耐熱性に優れることから、上記シリコーン化合物又はフッ素化合物の含有量を比較的少なくしても充分な効果を発揮することができる。そのため、上記シリコーン化合物又はフッ素化合物による汚染の可能性をより一層少なくすることができる。
【0044】
本発明の一実施態様である粘着剤組成物は、更に、分子内に二重結合を有する官能基を二以上有し、分子量が5000以下である多官能モノマー又は多官能オリゴマー(以下、単に「多官能モノマー又は多官能オリゴマー」ともいう。)を含むことが好ましい。このような多官能モノマー又は多官能オリゴマーを含むことにより、粘着剤組成物は光の照射による三次元網状化がより効率よくなされるようになり、より容易に剥離することができる。
上記多官能モノマー又は多官能オリゴマーにおける二重結合を有する官能基としては、例えば、置換されてもよいマレイミド基、シトラコンイミド基、ビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アクリル基等が挙げられる。なかでも、より高い耐熱性が得られることから、置換されてもよいマレイミド基が好適である。
【0045】
本発明の一実施態様である粘着剤組成物中の上記多官能モノマー又は多官能オリゴマーの含有量は特に限定されないが、上記反応性樹脂と上記多官能モノマー又は多官能オリゴマーとの合計100重量部に占める好ましい下限は5重量部、好ましい上限は100重量部である。上記多官能モノマー又は多官能オリゴマーの含有量がこの範囲内であると、粘着剤組成物が特に優れた剥離性を発揮することができる。剥離性を更に高める観点から、上記多官能モノマー又は多官能オリゴマーの含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は50重量部である。
【0046】
本発明の一実施態様である粘着剤組成物は、更に、光重合開始剤を含むことが好ましい。
上記光重合開始剤としては、例えば、250~800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられる。
上記光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物、フォスフィンオキシド誘導体化合物等が挙げられる。更に、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0047】
本発明の一実施態様である粘着剤組成物中の上記光重合開始剤の含有量は特に限定されないが、上記反応性樹脂100重量部に対する好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記光重合開始剤の含有量がこの範囲内であると、光を照射することにより粘着剤組成物の全体が均一にかつ速やかに重合架橋し、弾性率が上昇することにより粘着力が大きく低下して、容易に剥離することができる。上記光重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0048】
本発明の一実施態様である粘着剤組成物は、更に、光を照射することにより気体を発生する気体発生剤を含んでもよい。上記気体発生剤を含有することにより、300℃以上の高温加工処理を経た後であっても、光を照射することにより発生した気体が被着体との界面に放出されることから、より容易に、かつ、糊残りすることなく被着体を剥離することができる。
【0049】
上記気体発生剤としては、例えば、テトラゾール化合物又はその塩、トリアゾール化合物又はその塩、アゾ化合物、アジド化合物、キサントン酢酸、炭酸塩等が挙げられる。これらの気体発生剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、特に耐熱性に優れることから、テトラゾール化合物又はその塩が好適である。
【0050】
本発明の一実施態様である粘着剤組成物中の上記気体発生剤の含有量は特に限定されないが、上記反応性樹脂100重量部に対する好ましい下限は5重量部、好ましい上限は50重量部である。上記気体発生剤の含有量がこの範囲内であると、粘着剤組成物が特に優れた剥離性を発揮することができる。上記気体発生剤の含有量のより好ましい下限は8重量部、より好ましい上限は30重量部である。
【0051】
本発明の一実施態様である粘着剤組成物は、例えば、光増感剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤等の公知の添加剤を含んでもよい。
【0052】
上記微粒子充填剤としては、ケイ素、チタン、アルミニウム、カルシウム、ホウ素、マグネシウム及びジルコニアの酸化物、並びに、これらの複合物からなる群より選択される少なくとも1種からなる無機充填剤が挙げられる。なかでも、一般的に無機充填剤として用いられるシリカに類似した物性を有することから、ケイ素-アルミニウム-ホウ素複合酸化物、ケイ素-チタン複合酸化物、およびシリカ-チタニア複合酸化物が好ましい。
【0053】
上記無機充填剤の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は30μmである。
上記無機充填剤の含有量は特に限定されないが、上記反応性樹脂100重量部に対して、好ましい下限は30重量部、好ましい上限は150重量部である。上記無機充填剤の含有量のより好ましい下限は60重量部、より好ましい上限は120重量部である。
【0054】
本発明の一実施態様である粘着剤組成物を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記反応性樹脂、シリコーン化合物又はフッ素化合物と、必要に応じて配合する添加剤を、ビーズミル、超音波分散、ホモジナイザー、高出力ディスパー、ロールミル等を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0055】
本発明の一実施態様である粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着テープもまた、本発明の1つである。
本発明の一実施態様である粘着テープは、基材の一方又は両方の面に、本発明の一実施態様である粘着剤組成物からなる粘着剤層を有するサポートテープであってもよく、基材を有しないノンサポートテープであってもよい。
【0056】
上記基材としては、例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の透明な樹脂からなるシートが挙げられる。また、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート等も用いることができる。
【0057】
本発明の一実施態様である粘着剤組成物及び粘着テープは、初期粘着力を有する一方、耐熱性に優れ、300℃以上の高温加工処理を行っても接着亢進が少なく、光を照射することにより容易に剥離することができる。本発明の一実施態様である粘着剤組成物及び粘着テープは、特に耐熱性に優れることから、300℃以上の高温加工処理を行う被着体の保護、仮固定に好適に用いることができる。とりわけ、半導体等の電子部品の加工時において、電子部品の取扱いを容易にし、破損したりしないようにするために、粘着剤組成物又は粘着テープを介して電子部品を支持板に固定したり、粘着テープを電子部品に貼付したりして保護するのに好適に用いることができる。
【0058】
具体的には例えば、本発明の一実施態様である粘着テープ上に電子部品を仮固定する工程、粘着テープに光を照射する工程、電子部品に熱処理を行う工程、及び、電子部品から粘着テープを剥離する工程を含む、電子部品の処理方法が挙げられる。このような電子部品の処理方法もまた、本発明の1つである。
上記粘着テープに光を照射する工程は、上記電子部品から粘着テープを剥離する工程の直前に行ってもよいが、上記粘着テープ上に電子部品を仮固定する工程の後、上記電子部品に熱処理を行う工程の前に行うことが好ましい。上記電子部品に熱処理を行う工程の前に上記粘着テープに光を照射する工程を行うことにより、粘着テープがより優れた耐熱性を発揮することができる。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、被着体を固定した状態で300℃以上の高温加工処理を経た後であっても、光を照射することにより容易に剥離することができる粘着剤組成物、該粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着テープ、及び、電子部品の処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0061】
(反応性樹脂の調製)
(1)反応性樹脂1の調製
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに250mLのトルエンを投入した。次いで、トリエチルアミン35g(0.35モル)と無水メタンスルホン酸35g(0.36モル)を加えて攪拌し、塩を形成した。10分間撹拌後、ダイマージアミン(クローダ社製、プリアミン1075)56g(0.1モル)と、無水ピロメリット酸19.1g(0.09モル)をこの順に加えた。ディーンスタークトラップとコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を2時間還流し、アミン末端のジイミドを形成した。反応物を室温以下に冷却後、無水マレイン酸12.8g(0.13モル)を加え、次いで、無水メタンスルホン酸5g(0.05モル)を加えた。混合物を、更に12時間還流した後、室温に冷却し、トルエン300mLをフラスコに加え、静置により不純物を沈殿させ除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、琥珀色ワックス状の、主鎖にイミド骨格を有し、両末端にマレイミド基を有する下記式(1-1)で表される反応性樹脂1を得た。
得られた反応性樹脂1について、溶出液としてTHF、カラムとしてHR-MB-M(品名、ウォーターズ社製)を用いたゲルパミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したところ、重量平均分子量は5000であった。
【0062】
【0063】
(2)反応性樹脂2の調製
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに250mLのトルエンを投入した。次いで、トリエチルアミン35g(0.35モル)と無水メタンスルホン酸35g(0.36モル)を加えて攪拌し、塩を形成した。10分間撹拌後、ダイマージアミン(クローダ社製、プリアミン1075)28g(0.05モル)と、1,3-ジアミノ-2-プロパノール4.5g(0.05モル)と、無水ピロメリット酸21.8g(0.1モル)をこの順に加えた。ディーンスターク管とコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を2時間還流し、水酸基含有ポリイミドを合成した。反応混合物を室温に冷却後、マレイミドヘキサン酸(東京化成社製)10.5g(0.05モル)を加え、更に12時間還流した。室温に冷却し、トルエン300mLをフラスコに加え、静置により不純物を沈殿、除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、琥珀色ワックス状の、主鎖にイミド骨格を有し、側鎖にマレイミド基を有する下記式(1-2)で表される反応性樹脂2を得た。
得られた反応性樹脂2について、溶出液としてTHF、カラムとしてHR-MB-M(品名、ウォーターズ社製)を用いたゲルパミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したところ、重量平均分子量は30000であった。
【0064】
【0065】
(3)反応性樹脂3の調製
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに250mLのトルエンを投入した。次いで、トリエチルアミン35g(0.35モル)と無水メタンスルホン酸35g(0.36モル)を加えて攪拌し、塩を形成した。10分間撹拌後、ダイマージアミン(クローダ社製、プリアミン1075)28g(0.05モル)と、1,3-ジアミノ-2-プロパノール4.5g(0.05モル)と、無水ピロメリット酸21.8g(0.1モル)をこの順に加えた。ディーンスターク管とコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を2時間還流し、水酸基含有ポリイミドを合成した。反応混合物を室温に冷却後、大過剰のブチルビニルエーテル(東京化成社製)200gと、酢酸パラジウムフェナントロリン錯体0.1gをフラスコに加え、60℃で14時間還流した。エバポレーターにより過剰のブチルビニルエーテルを留去した。室温に冷却し、トルエン300mLをフラスコに加え、静置により不純物を沈殿、除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、琥珀色ワックス状の、主鎖にイミド骨格を有し、側鎖にビニルエーテル基を有する下記式(1-3)で表される反応性樹脂3を得た。
得られた反応性樹脂3について、溶出液としてTHF、カラムとしてHR-MB-M(品名、ウォーターズ社製)を用いたゲルパミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したところ、重量平均分子量は30000であった。
【0066】
【0067】
(4)反応性樹脂4の調製
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに250mLのトルエンを投入した。次いで、トリエチルアミン35g(0.35モル)と無水メタンスルホン酸35g(0.36モル)を加えて攪拌し、塩を形成した。10分間撹拌後、ダイマージアミン(クローダ社製、プリアミン1075)28g(0.05モル)、3,5-ジアミノ安息香酸7.6g(0.05モル)、及び無水ピロメリット酸21.8g(0.1モル)をこの順に加えた。ディーンスターク管とコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を2時間還流し、カルボン酸含有ポリイミドを合成した。反応混合物を室温に冷却後、トルエン300mLをフラスコに加え、静置により不純物を沈殿、除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート(四国化成製)13.3g(0.05モル)およびトリエチルアミン3g(0.3モル)を加え、更に3時間加熱した。室温に冷却し溶剤を真空除去し、琥珀色ワックス状の、主鎖にイミド骨格を有し、側鎖にジアリルイソシアヌレート基を有する下記式(1-4)で表される反応性樹脂4を得た。
得られた反応性樹脂4について、溶出液としてTHF、カラムとしてHR-MB-M(品名、ウォーターズ社製)を用いたゲルパミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したところ、重量平均分子量は35000であった。
【0068】
【0069】
(5)反応性樹脂5の調製
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに250mLのトルエンを投入した。次いで、トリエチルアミン35g(0.35モル)と無水メタンスルホン酸35g(0.36モル)を加えて攪拌し、塩を形成した。10分間撹拌後、ダイマージアミン(クローダ社製、プリアミン1075)47.8g(0.09モル)、Bis-AP-AF3.7g(0.01モル)、及び無水ピロメリット酸21.8g(0.1モル)をこの順に加えた。ディーンスターク管とコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を2時間還流し、カルボン酸含有ポリイミドを合成した。反応混合物を室温に冷却後、トルエン300mLをフラスコに加え、静置により不純物を沈殿、除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、マレイミドヘキサン酸4.2g(0.02モル)およびトリエチルアミン3g(0.3モル)を加え、更に3時間加熱した。室温に冷却し溶剤を真空除去し、琥珀色ワックス状の、主鎖にイミド骨格を有し、側鎖にマレイミド基を有する下記式(1-5)で表される反応性樹脂5を得た。
得られた反応性樹脂5について、溶出液としてTHF、カラムとしてHR-MB-M(品名、ウォーターズ社製)を用いたゲルパミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したところ、重量平均分子量は35000であった。
【0070】
【0071】
(6)反応性樹脂6の調製
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに250mLのトルエンを投入した。次いで、トリエチルアミン35g(0.35モル)と無水メタンスルホン酸35g(0.36モル)を加えて攪拌し、塩を形成した。10分間撹拌後、ダイマージアミン(クローダ社製、プリアミン1075)31.9g(0.06モル)、Bis-AP-AF14.7g(0.04モル)、及び無水ピロメリット酸21.8g(0.1モル)をこの順に加えた。ディーンスターク管とコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を2時間還流し、カルボン酸含有ポリイミドを合成した。反応混合物を室温に冷却後、トルエン300mLをフラスコに加え、静置により不純物を沈殿、除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、マレイミドヘキサン酸16.9g(0.08モル)およびトリエチルアミン3g(0.3モル)を加え、更に3時間加熱した。室温に冷却し溶剤を真空除去し、琥珀色ワックス状の、主鎖にイミド骨格を有し、側鎖にマレイミド基を有する上記式(1-5)で表される反応性樹脂6を得た。
得られた反応性樹脂6について、溶出液としてTHF、カラムとしてHR-MB-M(品名、ウォーターズ社製)を用いたゲルパミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したところ、重量平均分子量は35000であった。
【0072】
(7)反応性樹脂7の調製
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに250mLのトルエンを投入した。次いで、トリエチルアミン35g(0.35モル)と無水メタンスルホン酸35g(0.36モル)を加えて攪拌し、塩を形成した。10分間撹拌後、ダイマージアミン(クローダ社製、プリアミン1075)42.5g(0.08モル)、Bis-AP-AF7.3g(0.02モル)、及び無水ピロメリット酸21.8g(0.1モル)をこの順に加えた。ディーンスターク管とコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を2時間還流し、カルボン酸含有ポリイミドを合成した。反応混合物を室温に冷却後、トルエン300mLをフラスコに加え、静置により不純物を沈殿、除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、GO-BVE(グリシジロキシブチルビニルエーテル、日本カーバイド社製)8.6g(0.04モル)およびトリエチルアミン3g(0.3モル)を加え、更に3時間加熱した。室温に冷却し溶剤を真空除去し、琥珀色ワックス状の、主鎖にイミド骨格を有し、側鎖にビニルエーテル基を有する下記式(1-6)で表される反応性樹脂7を得た。
得られた反応性樹脂7について、溶出液としてTHF、カラムとしてHR-MB-M(品名、ウォーターズ社製)を用いたゲルパミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したところ、重量平均分子量は35000であった。
【0073】
【0074】
(8)反応性樹脂8の調製
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに250mLのトルエンを投入した。次いで、トリエチルアミン35g(0.35モル)と無水メタンスルホン酸35g(0.36モル)を加えて攪拌し、塩を形成した。10分間撹拌後、ダイマージアミン(クローダ社製、プリアミン1075)42.5g(0.08モル)、Bis-AP-AF7.3g(0.02モル)、及び無水ピロメリット酸21.8g(0.1モル)をこの順に加えた。ディーンスターク管とコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を2時間還流し、カルボン酸含有ポリイミドを合成した。反応混合物を室温に冷却後、トルエン300mLをフラスコに加え、静置により不純物を沈殿、除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、DA-MGIC(ジアミノモノグリシジルイソシアヌレート、四国化成社製)10.6g(0.04モル)およびトリエチルアミン3g(0.3モル)を加え、更に3時間加熱した。室温に冷却し溶剤を真空除去し、琥珀色ワックス状の、主鎖にイミド骨格を有し、側鎖にアリル基を有する下記式(1-7)で表される反応性樹脂8を得た。
得られた反応性樹脂8について、溶出液としてTHF、カラムとしてHR-MB-M(品名、ウォーターズ社製)を用いたゲルパミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したところ、重量平均分子量は35000であった。
【0075】
【0076】
(9)反応性樹脂9の調製
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに250mLのトルエンを投入した。次いで、トリエチルアミン35g(0.35モル)と無水メタンスルホン酸35g(0.36モル)を加えて攪拌し、塩を形成した。10分間撹拌後、ダイマージアミン(クローダ社製、プリアミン1075)21.2g(0.04モル)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン12.3g(0.03モル)、Bis-AP-AF11.0g(0.03モル)、及び無水ピロメリット酸21.8g(0.1モル)をこの順に加えた。ディーンスターク管とコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を2時間還流し、カルボン酸含有ポリイミドを合成した。反応混合物を室温に冷却後、トルエン300mLをフラスコに加え、静置により不純物を沈殿、除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、DA-MGIC(ジアミノモノグリシジルイソシアヌレート、四国化成社製)15.9g(0.06モル)およびトリエチルアミン3g(0.3モル)を加え、更に3時間加熱した。室温に冷却し溶剤を真空除去し、琥珀色固形の、主鎖にイミド骨格を有し、側鎖にアリル基を有する下記式(1-8)で表される反応性樹脂9を得た。
得られた反応性樹脂9について、溶出液としてTHF、カラムとしてHR-MB-M(品名、ウォーターズ社製)を用いたゲルパミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したところ、重量平均分子量は35000であった。
【0077】
【0078】
(アクリル系反応性樹脂の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器を用意し、この反応器内に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして2-エチルヘキシルアクリレート94重量部、官能基含有モノマーとしてメタクリル酸ヒドロキシエチル6重量部、ラウリルメルカプタン0.01重量部と、酢酸エチル80重量部を加えた後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤として1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.01重量部を添加し、還流下で重合を開始させた。次に、重合開始から1時間後及び2時間後にも、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンを0.01重量部ずつ添加し、更に、重合開始から4時間後にt-ヘキシルパーオキシピバレートを0.05重量部添加して重合反応を継続させた。そして、重合開始から8時間後に、固形分55重量%、重量平均分子量50万の官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。
得られた官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、官能基含有不飽和化合物として2-イソシアナトエチルメタクリレート3.5重量部を加えて反応させてアクリル系反応性樹脂を得た。
得られたアクリル系反応性樹脂について、溶出液としてTHF、カラムとしてHR-MB-M(品名、ウォーターズ社製)を用いたゲルパミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したところ、重量平均分子量は55万であった。
【0079】
(多官能モノマーの調製)
(1)多官能モノマー1の調製
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに250mLのトルエンを投入した。ダイマージアミン(クローダ社製、プリアミン1075)56g(0.1モル)と、無水マレイン酸19.6g(0.2モル)を加え、次いで、無水メタンスルホン酸5gを加えた。溶液を12時間還流した後、室温に冷却し、トルエン300mLをフラスコに加え、静置により塩を沈殿させ除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、茶色液状、下記式(2-1)で表される多官能モノマー1を得た。
【0080】
【0081】
(2)多官能モノマー2の購入
下記式(2-2)で表される3官能アクリレートであるSR-387(アルケマ社製、Tris(2-acryloxyethyl)Isocyanulate)を購入し、これを多官能モノマー2とした。
【0082】
【0083】
(シリコーンビスマレイミドの調製)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた300mLの丸底フラスコに100mLのトルエンを投入し、マレイミドヘキサン酸(東京化成社製、試薬)10.5g(0.05モル)および両末端に水酸基を有するシリコーン樹脂X-21-5841(信越化学社製)25g(0.025モル)、パラトルエンスルホン酸1水和物1g(モル)を加えた。次いで、100℃にて3時間加熱攪拌した。常温に冷却後、トリエチルアミン5gを加え1時間攪拌後、100gの水で洗浄し、溶媒を揮発させて、下記式(3)で表されるシリコーンビスマレイミド(m=11、n=5)を得た。
【0084】
【0085】
(実施例1)
トルエン150mLに、反応性樹脂1を100重量部、シリコーン化合物として2官能シリコーンアクリレート(ダイセルオルネックス社製、EBECRYL350)を0.3重量部、光重合開始剤としてイルガキュア369(BASF社製)を1重量部加え、粘着剤組成物のトルエン溶液を調製した。
得られた粘着剤組成物のトルエン溶液を、片面にコロナ処理を施した厚さ25μmのポリイミドフィルム(宇部興産社製、カプトン)のコロナ処理面上に、乾燥皮膜の厚さが40μmとなるようにドクターナイフで塗工し、110℃、1分間加熱して塗工溶液を乾燥させた。その後、40℃、3日間静置養生を行い、粘着テープを得た。
【0086】
(実施例2~20、比較例1~3)
反応性樹脂、多官能モノマー、シリコーン化合物又はフッ素化合物、光重合開始剤の種類及び配合量を表1、2のようにした以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物及び粘着テープを得た。
実施例8では、シリコーン化合物として6官能シリコーンアクリレート(ダイセルオルネックス社製、EBECRYL1360)を用いた。
実施例9、比較例1では、フッ素化合物として光反応性フッ素化合物(DIC社製、メガファックRS-56)を用いた。
実施例15では、気体発生剤として5-フェニル-1Hテトラゾール(増田化学社製)と、光増感剤として9,10-ジグリシジルオキシアントラセン(川崎化成社製)を用いた。
【0087】
(評価)
実施例及び比較例で得た粘着テープについて、以下の方法により評価を行った。
結果を表1、2に示した。
【0088】
(1)剥離性の評価
得られた粘着テープを1インチの幅にカットした後、1mm厚のガラスに100℃のラミネーターにて加熱ラミネートした。ラミネート後、ガラス側から超高圧水銀灯を用いて、365nmの紫外線を20mW/cm2の強度で150秒間照射した。紫外線照射後、ガラス側から300℃のホットプレートで10分間加熱した。
ラミネート後、紫外線照射後、及び、300℃で加熱後の試験片に対して、25℃、引張速度30mm/秒の条件にて180°ピール試験を行い、接着強度(N/インチ)を測定した。
【0089】
(2)300℃加熱後の粘着テープの外観の評価
上記剥離性の評価において、300℃で加熱後の粘着テープの外観を目視にて観察して、以下の基準により評価した。
〇:ガラスからの剥離や発泡は認められなかった
△:ガラスとの間に微細な気泡が認められた
×:ガラスとの間が一部剥離していた
【0090】
(3)300℃加熱、剥離後の剥離面の評価
上記剥離性の評価において、300℃で加熱し、その後に粘着テープを剥離した後のガラスの表面を目視にて観察して、以下の基準により評価した。
〇:糊残りは認められなかった
△:糊残りはないものの、剥離面に曇りが認められた
×:糊残りが認められた
【0091】
【0092】
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によれば、被着体を固定した状態で300℃以上の高温加工処理を経た後であっても、光を照射することにより容易に剥離することができる粘着剤組成物、該粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着テープ、及び、電子部品の処理方法を提供することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖にイミド骨格を有し、側鎖又は末端に二重結合を有する官能基を有する反応性樹脂、及び、シリコーン化合物又はフッ素化合物を含む、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記シリコーン化合物又はフッ素化合物の含有量は、前記反応性樹脂100重量部に対して0.1重量部以上20重量部以下である、請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記シリコーン化合物又はフッ素化合物は、前記反応性樹脂と架橋可能な官能基を有する、請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記二重結合を有する官能基は、置換されてもよいマレイミド基、シトラコンイミド基、ビニルエーテル基、アリル基、又は、(メタ)アクリル基である、請求項1~3のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記二重結合を有する官能基は、前記反応性樹脂の側鎖にある、請求項1~4のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記反応性樹脂は、二重結合を有する官能基当量(重量平均分子量/二重結合を有する官能基の数)が4000以下である、請求項1~5のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記反応性樹脂は、重量平均分子量が5000以上である、請求項1~6のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記反応性樹脂は、下記一般式(1a)で表される構成単位、下記一般式(1b)で表される構成単位、及び、下記一般式(1c)で表される構成単位を有し(ただし、s≧1、t≧0、u≧0)、両末端がそれぞれX
1及びX
2で表される反応性樹脂(1)である、請求項1~
7のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【化1】
前記一般式(1a)~(1c)中、P
1、P
2及びP
3は、それぞれ独立して、芳香族基を表し、Q
1は、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族基を表し、Q
2は、置換又は非置換の芳香族構造を有する基を表し、Rは、置換又は非置換の分岐鎖状の脂肪族基又は芳香族基を表す。X
1、X
2及びX
3からなる群より選択される少なくとも1つは、二重結合を有する官能基を表す。
【請求項9】
前記一般式(1a)~(1c)中、P1、P2及びP3は、それぞれ独立して、炭素数5~50の芳香族基であり、Q1は、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数2~100の脂肪族基であり、Q2は、置換又は非置換の炭素数5~50の芳香族構造を有する基であり、Rは、置換若しくは非置換の分岐鎖状の炭素数2~100の脂肪族基又は芳香族基である、請求項8に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
前記一般式(1c)中、X3は二重結合を有する官能基である、請求項8又は9に記載の粘着剤組成物。
【請求項11】
前記一般式(1c)中、Rは芳香族エステル基又は芳香族エーテル基を有する芳香族基であって、Rにおける前記芳香族エステル基又は前記芳香族エーテル基はX3と結合している、請求項8~10のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項12】
前記一般式(1a)中、Q
1はダイマージアミンに由来する脂肪族基であり、前記ダイマージアミンに由来する脂肪族基は、下記一般式(4-1)で表される基、下記一般式(4-2)で表される基、下記一般式(4-3)で表される基、及び、下記一般式(4-4)で表される基からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項
8~11のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【化2】
前記一般式(4-1)~(4-4)中、R
1~R
8及びR
13~R
20はそれぞれ独立して、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。
【請求項13】
前記反応性樹脂と架橋可能な官能基を有するシリコーン化合物は、主鎖にシロキサン骨格を有し、側鎖又は末端に二重結合を有する官能基を有するシリコーン化合物であり、前記主鎖にシロキサン骨格を有し、側鎖又は末端に二重結合を有する官能基を有するシリコーン化合物は、下記一般式(I)で表されるシリコーン化合物、下記一般式(II)で表されるシリコーン化合物、及び、下記一般式(III)で表されるシリコーン化合物からなる群より選択される少なくとも1つを含有する、請求項
3~12のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【化3】
前記一般式(I)、一般式(II)、又は、一般式(III)式中、X及びYは、それぞれ独立して、0~1200の整数を表し、Rは二重結合を有する官能基を表す。
【請求項14】
更に、分子内に二重結合を有する官能基を二以上有し、分子量が5000以下である多官能モノマー又は多官能オリゴマーを含む、請求項1~13のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項15】
更に、光重合開始剤を含む、請求項1~14のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項16】
更に、光を照射することにより気体を発生する気体発生剤を含む、請求項1~15のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する、粘着テープ。
【請求項18】
請求項17に記載の粘着テープ上に電子部品を仮固定する工程、粘着テープに光を照射する工程、電子部品に熱処理を行う工程、及び、電子部品から粘着テープを剥離する工程を含む、電子部品の処理方法。