(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036580
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】トイレ装置
(51)【国際特許分類】
A47K 13/24 20060101AFI20240308BHJP
E03D 9/00 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
A47K13/24
E03D9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024016783
(22)【出願日】2024-02-07
(62)【分割の表示】P 2022007697の分割
【原出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(72)【発明者】
【氏名】島田 光浩
(72)【発明者】
【氏名】倉島 ひな子
(72)【発明者】
【氏名】須澤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山中 勝美
(57)【要約】
【課題】使用者の身体の撮影を確実に防止しつつ、便鉢内を撮影可能なトイレ装置を提供する。
【解決手段】トイレ装置1は、便器9の上方に配置される便座41と、便座41の裏側に設けられ、便器9の便鉢91内を撮影する画像センサ44と、便鉢91から見て画像センサの画角θ1の範囲の一部を遮蔽するように配置され、便座41に着座した使用者の身体の少なくとも一部が画像センサ44により撮影されることを防止する遮蔽部8と、を備えている。遮蔽部8は、遮蔽する範囲を変更可能に構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の上方に配置される便座と、
前記便座の裏側に設けられ、前記便器の便鉢内を撮影する画像センサと、
前記便鉢から見て前記画像センサの画角の範囲の一部を遮蔽するように配置され、前記便座に着座した使用者の身体の少なくとも一部が前記画像センサにより撮影されることを防止する遮蔽部と、を備え、
前記遮蔽部は、遮蔽する範囲を変更可能に構成されていることを特徴とする、トイレ装置。
【請求項2】
前記遮蔽部は、遮蔽する範囲の面積を、第1面積と、該第1面積よりも小さい第2面積と、に変更可能に構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のトイレ装置。
【請求項3】
前記遮蔽部は、操作部材を有し、前記操作部材が操作されることにより、遮蔽する範囲の面積を変更することを特徴とする、請求項2に記載のトイレ装置。
【請求項4】
前記遮蔽部は、前記画像センサの画角の範囲に配置され透光性を有する透明板と、該透明板に着脱自在に取り付けられた不透明なマスキング部材と、を有していることを特徴とする、請求項2に記載のトイレ装置。
【請求項5】
前記遮蔽部は、前記マスキング部材の複数の取付位置を示すガイド部を有していることを特徴とする、請求項4に記載のトイレ装置。
【請求項6】
前記画像センサにより撮影された前記便鉢内の画像に使用者の身体の少なくとも一部が含まれているか否かを判定する判定手段と、
前記画像に使用者の身体の少なくとも一部が含まれていると前記判定手段が判定した場合に、該判定に対応する信号を出力する出力手段と、を備えていることを特徴とする、請求項1乃至5の何れか1項に記載のトイレ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、画像センサを備えた便座装置を開示している。この便座装置は、画像センサにより便器の便鉢内を撮影する。
【0003】
このような便座装置では、画角が広い画像センサを用いることにより、便鉢内の便をより確実に撮影することが可能になる。一方、画角が広い画像センサは、使用者の身体を撮影してしまい、使用者のプライバシーを侵害するおそれがある。
【0004】
このような観点から、特許文献1は、画像センサの画角のうち使用者の身体に対応する範囲に遮蔽部が設けられた構成を提案している。この構成によれば、画像センサの画角そのものを調整することなく、使用者の身体の撮影を防止することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、人間の体格や着座時の姿勢は多様であるため、従来の便座装置では、画像センサと遮蔽部との相対位置が実際の使用者に適さなくなるおそれがある。例えば、使用者が比較的小柄である場合、その臀部が便座の開口を介して便鉢側に大きく入り込み、画像センサの画角のうち遮蔽部により遮蔽されない範囲に位置してしまうおそれがある。この場合、画像センサが使用者の身体を撮影してしまう。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用者の身体の撮影を確実に防止しつつ、便鉢内を撮影可能なトイレ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1態様に係るトイレ装置は、便器の上方に配置される便座と、便座の裏側に設けられ、便器の便鉢内を撮影する画像センサと、便鉢から見て画像センサの画角の範囲の一部を遮蔽するように配置され、便座に着座した使用者の身体の少なくとも一部が画像センサにより撮影されることを防止する遮蔽部と、を備え、遮蔽部は、遮蔽する範囲を変更可能に構成されている。
【0009】
この構成によれば、使用者の体格や着座時の姿勢に応じて、遮蔽部により遮蔽する範囲を適切なものに変更し、使用者の身体の撮影を確実に防止することが可能になる。
【0010】
本発明の第2態様に係るトイレ装置では、遮蔽部は、遮蔽する範囲の面積を、第1面積と、第1面積よりも小さい第2面積と、に変更可能に構成されている。
【0011】
この構成によれば、身体が画像センサの画角の範囲に位置しやすい体格や着座姿勢の使用者ほど、遮蔽部により遮蔽する範囲の面積を大きくし、使用者の身体の撮影を確実に防止することが可能になる。
【0012】
本発明の第3態様に係るトイレ装置では、遮蔽部は、操作部材を有し、操作部材が操作されることにより、遮蔽する範囲の面積を変更する。
【0013】
この構成によれば、使用者の体格や着座時の姿勢に応じて操作部を操作することにより、遮蔽部により遮蔽する範囲を容易に適切なものに変更することが可能になる。
【0014】
ところで、遮蔽する範囲の変更に複雑な機構を用いると、便鉢で跳ねた使用者の尿がその機構の内部に侵入して清掃が困難になったり、尿中のカルシウムが析出して固着が生じたりするおそれがある。
【0015】
本発明の第4態様に係るトイレ装置では、遮蔽部は、画像センサの画角の範囲に配置され透光性を有する透明板と、透明板に着脱自在に取り付けられた不透明なマスキング部材と、を有している。
【0016】
この構成によれば、予め用意されたサイズが異なる複数のマスキング部材から、使用者の体格等に対応するものを選択し、そのマスキング部材を透明板に取り付けることにより、遮蔽部により遮蔽する範囲を適切なものに変更することが可能になる。これにより、遮蔽部を、清掃が容易で固着等のおそれが低いものとしつつ、使用者の身体の撮影を確実に防止することが可能になる。
【0017】
本発明の第5態様に係るトイレ装置では、遮蔽部は、マスキング部材の複数の取付位置を示すガイド部を有している。
【0018】
この構成によれば、使用者の体格等に対応するように選択したマスキング部材を、そのマスキング部材に適した位置に確実に取り付けることができる。この結果、遮蔽部により遮蔽する範囲を適切なものに変更することが可能になる。
【0019】
本発明の第6態様に係るトイレ装置では、画像センサにより撮影された便鉢内の画像に使用者の身体の少なくとも一部が含まれているか否かを判定する判定手段と、画像に使用者の身体の少なくとも一部が含まれていると判定手段が判定した場合に、判定に対応する信号を出力する出力手段と、を備えている。
【0020】
この構成によれば、画像センサと遮蔽部との相対位置が、使用者の身体の少なくとも一部を撮影するものになっている場合に、出力手段が出力した信号に基づいて、使用者等にその改善を促すことが可能になる。例えば、出力された信号に基づいて、音声や文字により、遮蔽部の位置を変更する必要があることを使用者等に報知することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、使用者の身体の撮影を確実に防止することが可能なトイレ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るトイレ装置が設置されたトイレルームを示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係るトイレ装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0024】
[第1実施形態]
まず、
図1から
図4を参照しながら、本発明の第1実施形態に係るトイレ装置1について説明する。
図1は、トイレ装置1が設置されたトイレルームRを示す斜視図であり、
図2は、
図1のII-II断面を示す断面図であり、
図3は、トイレ装置1のブロック図である。
図4は、トイレ装置1を示す斜視図であり、
図1の矢印A1の方向に見たトイレ装置1を示している。
図4は、後述する画像センサ44の周囲を拡大して示している。
【0025】
<全体構成>
図1に示すように、トイレルームRの床面F上には便器9が設置されている。便器9は、大便器であり、使用者の便を受ける便鉢91と、便鉢91の周囲で立設するリム92と、を有している。例えば、トイレルームRに設けられた洗浄操作部(不図示)が使用者により操作されると、便鉢91に洗浄水が供給され、便鉢91の洗浄及び便鉢91からの便の排出が行われる。洗浄操作部は、トイレルームRに設けられる操作レバーや、後述する操作装置7に設けられたスイッチ等、種々の形態を採用し得る。
【0026】
トイレ装置1は、この便器9に適用される。トイレ装置1は、便座装置2と、操作装置7とを備える。なお、以下の説明では、後述する便座41に着座した使用者から見て前方を「前」、後方を「後」、左方を「左」、右方を「右」という。また、鉛直方向上方を「上」、鉛直方向下方を「下」という。
【0027】
便座装置2は、便器9の上部に取り付けられ、本体3と、便座41と、ノズル42と、便蓋43とを備えている。便座装置2は、便器9に対して着脱可能に取り付けられてもよいし、便器9と一体となるように取り付けられてもよい。
【0028】
便座41は、使用者が排便の際に着座する要素であり、その着座面41cにより使用者の臀部を支持する。便座41は環状を呈し、その中央部には開口41aが形成されている。開口41aは、便座41がリム92上に載置されているとき、便鉢91を開放する。便座41の後端部は軸支されており、これにより、便座41は、リム92上に載置される姿勢と、リム92から離れて便鉢91を大きく開放する姿勢との間で回動可能とされている。
【0029】
図2に示すように、便座41は、底板5と、天板6とを有している。底板5及び天板6はいずれも樹脂材料で形成されている。底板5の内周縁5aと天板6の内周縁6aとが溶着され、底板5の外周縁5bと天板6の外周縁6bとが溶着されることにより、底板5及び天板6は接合されて便座41を構成している。底板5及び天板6の中央部は互いに間隔を空けて配置されており、これにより、便座41の内部に空隙41bが形成されている。便座41は、この他にも、底板5の上面に立設されたリブと天板6の下面に立設されたリブとを溶着して接合するもの等、種々の形態を採用し得る。
【0030】
便座41が便器9のリム92上に載置されているとき、
図2に示すように、底板5は、その一部がリム92と上下方向に対向するとともに、他部が便鉢91の上方に位置するように配置される。底板5のこの他部には、開口5cが開設されている。便座41の空隙41bには、この開口5cを介して便鉢91内を撮影する画像センサ44が設けられている。画像センサ44は、
図2に示すような側面視で、画角θ1の範囲に存在する物体を撮影し得る。画像センサ44の周辺の構成については後述する。
【0031】
天板6は、曲面である着座面41cを上方に向けるように配置される。天板6の下面には、ヒータ411が取り付けられている。ヒータ411は、電力の供給を受けてジュール熱を発生させる電熱線である。
【0032】
図1に示すノズル42は、使用者の局部の洗浄に用いられる。ノズル42は、電動モータ(不図示)により本体3から便鉢91内に進退可能に構成されている。ノズル42が便鉢91内に位置しているときに電磁バルブ(不図示)が開かれることにより、ノズル42は、使用者の局部に向けて水を吐出する。
【0033】
便蓋43は、その後端部が軸支され、便座41を覆う姿勢と、便座41を開放する姿勢との間で回動可能に構成されている。
【0034】
操作装置7は、例えばトイレルームRの壁面に設置される。操作装置7は、便座装置2の複数の動作(例えば、局部洗浄の開始や停止)にそれぞれ対応する複数のスイッチ(不図示)を有している。
図3に示すように、操作装置7は、さらに、通信部71と、表示部72とを有している。通信部71は、後述する便座装置2の通信部312と無線で信号の送受信を行う。表示部72は、操作装置7の外側面に設けられた液晶パネルであり、種々の情報を表示する。
【0035】
図3に示すように、便座装置2の本体3内には、制御装置31が配置されている。制御装置31は、その一部又は全部が、アナログ回路で構成されるか、デジタルプロセッサとして構成され、機能ブロックとして判定部311及び通信部312を有している。判定部311は、制御装置31が外部から受信した信号等に基づいて種々の判定を行う。通信部312は、便座装置2の外部の機器との信号の送受信を行う。
【0036】
なお、制御装置31に組み込まれるソフトウェアのモジュールは、必ずしも
図3に示される機能ブロックのように分割されている必要はない。すなわち、実際のアナログ回路やモジュールは、
図3に示す複数の機能ブロックの働きをするものとして構成されていてもよいし、更に細分化されていてもよい。制御装置31の構成は、後述する処理を実行できるように構成されていれば、当業者が適宜変更できる。
【0037】
制御装置31は、ヒータ411、ノズル42及び画像センサ44に、制御信号を送信可能に接続されている。また、制御装置31は、画像センサ44から画像信号を受信することができる。
【0038】
<動作例>
制御装置31が着座センサ(不図示)から受信した信号に基づいて、使用者が便座41に着座したと判定部311が判定すると、制御装置31は、ヒータ411に制御信号を送信する(つまり、ヒータ411に電力を供給する)。これにより、ヒータ411が発生させるジュール熱を受けて天板6の温度が上昇し、便座41の暖房が行われる。
【0039】
また、使用者が、局部洗浄の開始に対応する操作装置7のスイッチを操作すると、操作装置7の通信部71がこのスイッチに対応する信号を生成し、無線で便座装置2に送信する。便座装置2は、この信号を制御装置31の通信部312で受信し、制御装置31は、ノズル42に制御信号を送信する。制御信号を受信したノズル42は、本体3から便鉢91内に進出するとともに、開かれた電磁バルブから供給される水を、使用者の局部に向けて吐出する。
【0040】
また、制御装置31は、使用者の排便後又は排便中に、画像センサ44に制御信号を送信し、便鉢91内を撮影させる。画像センサ44は、撮影した便鉢91内の画像に対応する画像信号を制御装置31に送信する。画像信号を受信した制御装置31は、判定部311において、予め定められたプログラムに基づいて、使用者の便の有無、便の色、形、及び量のうち少なくとも1つを判定する。制御装置31の通信部312は、この判定結果に対応する信号を生成し、外部のクラウドサービスCに送信する。医療従事者等は、このクラウドサービスCにアクセスして上記判定結果を取得することにより、使用者の健康状態を把握し、それに基づく助言をすることが可能になる。
【0041】
<使用者の身体の撮影の防止>
トイレ装置1は、画像センサ44による使用者の身体の撮影を防止するための工夫が施されている。以下、この点について説明する。
【0042】
図2に示すように、便座41の空隙41bには、壁体51,52が設けられている。壁体51,52は、いずれも底板5と一体的に形成されている。壁体51,52は、それぞれ下端から上端にかけて互いに接近するように延在し、上端において互いに接続されている。これにより、壁体51,52の間には、開口5cを介して便座41の外部と連通する凹部53が区画形成されている。画像センサ44は、この凹部53内に配置され、壁体52に固定されている。
【0043】
また、画像センサ44と便鉢91との間には、遮蔽部8が配置されている。遮蔽部8は、保持部81と、遮蔽板82とを有している。
【0044】
図4に示すように、保持部81は、底板5の下面の互いに離間した2か所に設けられている。一方の保持部81には、上下方向に貫通するとともに前後方向に延びるスリット81aが形成されている。また、
図2に示すように、保持部81は、底板5の下面との間に溝81bを形成している。溝81bは、前後方向に延び、その前端が開放されている。
【0045】
遮蔽板82は、不透明な材料により形成されており、板形状を呈している。遮蔽板82は、溝81b内に配置されている。
図4に示すように、遮蔽板82の端部には操作部材821が接続されている。操作部材821は、保持部81のスリット81a内に配置されている。使用者等が手指により操作部材821に力を加え、操作部材821をスリット81a内で前後方向に移動させると、それに伴い遮蔽板82も溝81b内で前後方向にスライド移動する。これにより、使用者等は、前後方向における遮蔽板82の位置を任意に変更することができる。
【0046】
図4に示すように、底板5の下面には、ガイド線831,832が前後方向に所定間隔を空けて設けられている。詳細には、ガイド線832は、ガイド線831よりも前方の位置に設けられている。遮蔽板82は、その前端82aが、ガイド線831,832の一方と一致するように配置される。
【0047】
遮蔽板82は、便鉢91から見て(
図2の矢印A1で示す方向に見て)、画像センサ44の画角θ1の範囲に位置するように配置される。遮蔽板82は、画角θ1の範囲の一部である角度θ2の範囲を遮蔽するように配置される。この角度θ2は、前後方向における遮蔽板82の位置に応じて決定される。遮蔽板82の前端82aがガイド線832の位置に配置されている場合、前端82aがガイド線831の位置に配置されている場合と比較して、角度θ2は大きい。換言すると、前端82aがガイド線831の位置に配置されている場合に遮蔽板82が遮蔽する面積(本発明の「第2面積」の一例)は、前端82aがガイド線832の位置に配置されている場合に遮蔽板82が遮蔽する面積(本発明の「第1面積」の一例)よりも小さい。
【0048】
遮蔽板82により角度θ2の範囲が遮蔽されることにより、この範囲において画像センサ44による撮影が防止される。一方、遮蔽板82により遮蔽されていない範囲では、画像センサ44は、開口5cを介して便鉢91内を撮影することができる。
【0049】
<作用効果>
この構成によれば、使用者の体格や着座時の姿勢に応じて、遮蔽部8により遮蔽する範囲を適切なものに変更し、使用者の身体の撮影を確実に防止することが可能になる。
【0050】
また、遮蔽部8は、遮蔽する範囲の面積を、第1面積と、第1面積よりも小さい第2面積と、に変更可能に構成されている。
【0051】
この構成によれば、身体が画像センサ44の画角θ1の範囲に位置しやすい体格や着座姿勢の使用者ほど、遮蔽部8により遮蔽する範囲の面積を大きくし、使用者の身体の撮影を確実に防止することが可能になる。
【0052】
また、遮蔽部8は、操作部材821を有し、操作部材821が操作されることにより、遮蔽する範囲の面積を変更する。
【0053】
この構成によれば、使用者の体格や着座時の姿勢に応じて操作部材821を操作することにより、遮蔽部8により遮蔽する範囲を容易に適切なものに変更することが可能になる。
【0054】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るトイレ装置1Aについて、
図3、
図5及び
図6を参照しながら説明する。このトイレ装置1Aは、第1実施形態と同様に、画像センサ44により便器9の便鉢91内を撮影するように構成されている。トイレ装置1Aは、その遮蔽部8Aの構成等が第1実施形態と異なる。トイレ装置1Aのうち、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付して、説明を適宜省略する。
【0055】
図5は、トイレ装置1Aの断面図である。
図5は、トイレ装置1Aのうち、
図1のII-II断面に対応する断面を示している。説明の理解を容易にするため、
図5は、後述するマスキング部材85の厚みを誇張して示している。
図6は、トイレ装置1Aを示す斜視図であり、
図5の矢印A2の方向に見たトイレ装置1Aを示している。
図6は、画像センサ44の周囲を拡大して示している。
【0056】
図5に示すように、画像センサ44と便鉢91との間には、遮蔽部8Aが配置されている。遮蔽部8Aは、透明板84と、マスキング部材85とを有している。
【0057】
透明板84は、透光性を有する材料(例えば、アクリル樹脂やガラス)により形成され、板形状を呈している。
図5に示すように、透明板84は、底板5の開口5cに嵌合している。
【0058】
マスキング部材85は、不透明な薄膜である。
図6に示すマスキング部材85の一側面85aには粘着層が設けられている。マスキング部材85として、サイズが異なるマスキング部材851,852が予め用意されている。
【0059】
図6に示すように、底板5の下面には、ガイド線861,862が前後方向に所定間隔を空けて設けられている。詳細には、ガイド線862は、ガイド線861よりも前方の位置に設けられている。ガイド線861,862は、本発明の「ガイド部」の一例である。
【0060】
マスキング部材851,852のうち選択された1つが、その粘着層を底板5及び透明板84の下面に接合することにより、透明板84を左右方向に跨ぐように貼付される。サイズが比較的小さいマスキング部材851を貼付する場合、作業者は、端辺851aがガイド線861と一致するようにマスキング部材851を配置する。一方、サイズが比較的大きいマスキング部材852を貼付する場合、作業者は、端辺852aがガイド線862と一致するようにマスキング部材852を配置する。粘着層の粘着力は、マスキング部材851,852が透明板84に着脱自在となる程度に設定されている。
【0061】
マスキング部材85が貼付された透明板84は、
図5に示すように、便鉢91から見て(
図5の矢印A2で示す方向に見て)、画像センサ44の画角θ1の範囲に位置するように配置される。また、透明板84に貼付されたマスキング部材85は、画角θ1の範囲の一部である角度θ3の範囲を遮蔽するように配置される。この角度θ3は、貼付されたマスキング部材85のサイズに応じて決定される。サイズが比較的大きいマスキング部材852が透明板84に貼付されている場合、マスキング部材851が透明板84に貼付されている場合と比較して、角度θ3も大きい。
【0062】
マスキング部材85により角度θ3の範囲が遮蔽されることにより、この範囲において画像センサ44による撮影が防止される。一方、マスキング部材85により遮蔽されていない範囲では、画像センサ44は、透光性を有する透明板84を介して便鉢91内を撮影することができる。
【0063】
図3に示す制御装置31の判定部311は、画像センサ44により撮影した画像に処理を施し、この画像に使用者の身体が含まれているか否かを判定する。例えば、判定部311は、パターンマッチング等の公知の手法により、画像内の便鉢91以外の部分に物体が存在するか否かを判定し、そのような物体が含まれていた場合は、使用者の身体が撮影されたと判定する。
【0064】
判定部311により画像に使用者の身体が含まれていると判定された場合、通信部312は、この判定に対応する信号を外部に無線で送信する。本実施形態における通信部312は、本発明の「出力手段」の一例である。操作装置7は、この信号を通信部71で受信すると、表示部72に文字情報を表示し、画像に問題があり、遮蔽部8Aの改善が必要であることを使用者に報知する。文字情報としては、例えば、マスキング部材85をよりサイズが大きいものに変更したり、使用者の姿勢を改めたりすることを促すものであってもよい。
【0065】
[作用効果]
第2実施形態では、遮蔽部8Aは、画像センサ44の画角θ1の範囲に配置され透光性を有する透明板84と、透明板84に着脱自在に取り付けられた不透明なマスキング部材85と、を有している。
【0066】
この構成によれば、予め用意されたサイズが異なる複数のマスキング部材85から、使用者の体格等に対応するものを選択し、そのマスキング部材85を透明板84に取り付けることにより、遮蔽部8Aにより遮蔽する範囲を適切なものに変更することが可能になる。これにより、遮蔽部8Aを、清掃が容易で固着等の問題を招来するおそれが低いものとしつつ、使用者の身体の撮影を確実に防止することが可能になる。
【0067】
また、遮蔽部8Aは、マスキング部材85の複数の取付位置を示すガイド線861,862を有している。
【0068】
この構成によれば、使用者の体格等に対応するように選択したマスキング部材85を、そのマスキング部材85に適した位置に確実に取り付けることができる。この結果、遮蔽部8Aにより遮蔽する範囲を適切なものに変更することが可能になる。
【0069】
また、トイレ装置1Aは、画像センサ44により撮影された便鉢91内の画像に使用者の身体の少なくとも一部が含まれているか否かを判定する判定部311を備えている。トイレ装置1Aは、さらに、画像に使用者の身体の少なくとも一部が含まれていると判定部311が判定した場合に、この判定に対応する信号を出力する通信部312を備えている。
【0070】
この構成によれば、画像センサ44と遮蔽部8Aとの相対位置が、使用者の身体の少なくとも一部を撮影するものになっている場合に、通信部312が出力した信号に基づいて、使用者等にその改善を促すことが可能になる。出力された信号に基づいて、音声や文字により、遮蔽部8Aの位置を変更する必要があることを使用者等に報知することができる。
【0071】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記実施形態に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0072】
1,1A…トイレ装置、311…判定部(判定手段)、312…通信部(出力手段)、41…便座、44…画像センサ、5…底板、6…天板、8,8A…遮蔽部、821…操作部材、84…透明板、85…マスキング部材,861,862…ガイド線(ガイド部)、9…便器、91…便鉢、92…リム