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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036595
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/30 20060101AFI20240308BHJP
   B60N 2/12 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
B60N2/30
B60N2/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024017012
(22)【出願日】2024-02-07
(62)【分割の表示】P 2020050356の分割
【原出願日】2020-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】目黒 司
(57)【要約】
【課題】 乗物用シートにおいて、ストライカからアッパレールに加わる荷重を分散させる。
【解決手段】 乗物用シート1は、ロアレール11及びアッパレール12を有するレール装置3と、アッパレールの上部に設けられ、前後に延びるベースブラケット50と、シートクッション6を含むシート本体8と、ベースブラケットの前部に設けられた左右に延びる支持軸53を中心として回動可能に支持されると共に、シートクッションの前部に結合された回動部材60と、ベースブラケットの後部に設けられたストライカ54と、シートクッションの後部に設けられ、ストライカに着脱可能に結合する結合装置5とを有する。ベースブラケットは、底壁51と、左右の側壁52とを有し、上方に開口した溝形に形成され、支持軸及びストライカは、左右の側壁に掛け渡されている。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートであって、
フロアに設けられ、前後に延びるロアレール、及び前記ロアレールに支持されたアッパレールを有するレール装置と、
前記アッパレールの上部に設けられ、前後に延びるベースブラケットと、
乗員の臀部を支持するシートクッションを含むシート本体と、
前記ベースブラケットの前部に設けられた左右に延びる支持軸を中心として回動可能に支持されると共に、前記シートクッションの前部に結合された回動部材と、
前記ベースブラケットの後部に設けられたストライカと、
前記シートクッションの後部に設けられ、前記ストライカに着脱可能に結合する結合装置とを有し、
前記ベースブラケットは、底壁と、左右の側壁とを有し、上方に開口した溝形に形成され、かつ左右に延び、左右の前記側壁のそれぞれに結合した少なくとも1つのスペーサを有し、
前記支持軸及び前記ストライカは、左右の前記側壁に掛け渡されている乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スライドレールと、スライドレールのアッパレールにヒンジ装置を介して結合されたシートクッションとを有する乗物用シートが開示されている。ヒンジ装置は、アッパレールの前端とシートクッションとの前端とを回動可能に連結している。この構成により、乗物用シートは、前傾状態になることができる。シートの後端には、アッパレールの後端に設けられたストライカに結合するフックが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-147165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の衝突時に乗員及びシート本体に生じる荷重は、ストライカを介してアッパレールに局所的に加わる虞がある。そのため、ストライカからアッパレールに加わる荷重を分散させることが望ましい。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、乗物用シートにおいて、ストライカからアッパレールに加わる荷重を分散させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、乗物用シート(1)であって、フロア(2)に設けられ、前後に延びるロアレール(11)、及び前記ロアレールに支持されたアッパレール(12)を有するレール装置(3)と、前記アッパレールの上部に設けられ、前後に延びるベースブラケット(50)と、乗員の臀部を支持するシートクッション(6)を含むシート本体(8)と、前記ベースブラケットの前部に設けられた左右に延びる支持軸(53)を中心として回動可能に支持されると共に、前記シートクッションの前部に結合された回動部材(60)と、前記ベースブラケットの後部に設けられたストライカ(54)と、前記シートクッションの後部に設けられ、前記ストライカに着脱可能に結合する結合装置(5)とを有し、前記ベースブラケットは、底壁(51)と、左右の側壁(52)とを有し、上方に開口した溝形に形成され、前記支持軸及び前記ストライカは、左右の前記側壁に掛け渡されている。
【0007】
この構成によれば、ストライカは前後に延びるベースブラケットに設けられ、ベースブラケットを介してアッパレールに設けられる。そのため、ストライカに加わる荷重は、ベースブラケットを介してアッパレールの各部に分散され、アッパレールに局所的に荷重が加わることが抑制される。これにより、乗物用シートにおいて、ストライカからアッパレールに加わる荷重を分散させることができる。
【0008】
上記の態様において、前記ベースブラケットは、左右に延び、左右の前記側壁のそれぞれに結合した少なくとも1つのスペーサ(56、57)を有するとよい。
【0009】
この態様によれば、左右の側壁がスペーサによって補強される。
【0010】
上記の態様において、前記レール装置は、前記アッパレールに変位可能に支持され、前記ロアレールに選択的に係合可能なスライドロック装置(16)を有し、前記ベースブラケットの底壁は、長手方向における中間部に上方に向けて凹んだ凹部(51A)と、前記凹部の前側に配置され、前記アッパレールに結合された前結合部(51B)と、前記凹部の後側に配置され、前記アッパレールに結合された後結合部(51B)とを有し、前記スライドロック装置は、前記アッパレールにおいて前記凹部に対応する位置に配置されているとよい。
【0011】
この態様によれば、ベースブラケットとスライドロック装置との干渉を避けて、ベースブラケットをアッパレールに配置することができる。
【0012】
上記の態様において、前記凹部は、左右に延び、左右の前記側壁に開口しているとよい。
【0013】
この態様によれば、スライドロック装置をベースブラケットの側方に露出させることができる。
【0014】
上記の態様において、前記スライドロック装置は、前記アッパレールに解除位置とロック位置との間で回動可能に支持され、前記ロック位置において前記ロアレールに形成された係合部に係合するロック爪(16A)と、前記ロック爪の基端を押圧し、前記ロック爪を前記解除位置に回動させる操作レバー(16B)とを有し、前記ロック爪の前記基端は、前記凹部を通過して前記側壁の側方に突出しているとよい。
【0015】
この態様によれば、操作レバーによってロック爪を操作することができる。
【0016】
上記の態様において、前記スライドロック装置を駆動させるための前記操作レバーが前記側壁の一方に回動可能に支持されているとよい。
【0017】
この態様によれば、ベースブラケットが操作レバーの支持構造を兼ねることができる。
【0018】
上記の態様において、前記フロア又は前記ロアレールには、第1係止部(13C)を有する第1係止部材(13)が設けられ、前記ベースブラケットの前記側壁には、前記第1係止部の下方に隙間を介して上下に対向するように配置された第2係止部(70A)を有する第2係止部材(70)が設けられているとよい。
【0019】
この態様によれば、衝突等に起因する慣性力によってベースブラケット及びアッパレールがロアレール及びフロアに対して上方に移動するときには、第1係止部と第2係止部とが互いに係合して荷重に抗することができる。これにより、レール装置に荷重が加わり難くなり、レール装置の変形を抑制することができる。通常時には、第1係止部と第2係止部とは互いに隙間を介して対向しているため、レール装置がスライド移動するときに、第1係止部と第2係止部が摩擦による抵抗力を生じさせることはない。
【0020】
上記の態様において、前記第1係止部及び前記第2係止部は、前後に延在しているとよい。
【0021】
この態様によれば、ロアレールに対してアッパレールが前後にスライド移動しても、第1係止部及び第2係止部は上下において対向することができる。
【0022】
上記の態様において、前記第2係止部材は、板金部材によって形成され、前記第2係止部材は、前記側壁の外面に締結される上板部(70B)と、前記上板部の下縁から下方かつ前記側壁から離れる方向に延びる下板部(70C)とを有し、前記第2係止部は前記下板部の下縁に設けられ、前記第2係止部材は、前記側壁において前記凹部より後方に設けられているとよい。
【0023】
この態様によれば、第2係止部材によってベースブラケットを補強することができる。また、第2係止部材によってベースブラケットのストライカ54が設けられた部分を補強することができる。
【0024】
上記の態様において、前記第1係止部及び前記第2係止部は、左右一対設けられているとよい。
【0025】
この態様によれば、第1係止部材及び第2係止部材は、レール装置の左方及び右方の2か所において係合することができ、レール装置を確実に保護することができる。
【0026】
上記の態様において、前記第2係止部材は、左右一対設けられ、左右の前記第2係止部材、左右の前記側壁、及び前記スペーサは、それらを貫通するボルト(72)と、前記ボルトに螺合するナット(73)とによって共締めされているとよい。
【0027】
この態様によれば、左右の第2係止部材を締結するボルトによってベースブラケットを補強することができる。
【0028】
上記の態様において、前記スペーサは、前記ストライカの前方に設けられた前スペーサ(56)と、前記ストライカの後方に設けられた後スペーサ(57)とを有するとよい。
【0029】
この態様によれば、左右の第2係止部材はストライカをまたいで前後に左右の第2係止部材を締結するボルトによってベースブラケットを補強することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一態様は、乗物用シート(1)であって、フロア(2)に設けられ、前後に延びるロアレール(11)、及び前記ロアレールに支持されたアッパレール(12)を有するレール装置(3)と、前記アッパレールの上部に設けられ、前後に延びるベースブラケット(50)と、乗員の臀部を支持するシートクッション(6)、及び前記シートクッションの後部から上方に延びるシートバック(7)を含むシート本体(8)と、前記ベースブラケットの前部に設けられた左右に延びる支持軸(53)を中心として回動可能に支持されると共に、前記シートクッションの前部に結合された回動部材(60)と、前記ベースブラケットの後部に設けられたストライカ(54)と、前記シートクッションの後部に設けられ、前記ストライカに着脱可能に結合する結合装置(5)とを有し、前記ベースブラケットは、底壁(51)と、左右の側壁(52)とを有し、上方に開口した溝形に形成され、前記支持軸及び前記ストライカは、左右の前記側壁に掛け渡されている。この構成によれば、ストライカは前後に延びるベースブラケットに設けられ、ベースブラケットを介してアッパレールに設けられる。そのため、ストライカに加わる荷重は、ベースブラケットを介してアッパレールの各部に分散され、アッパレールに局所的に荷重が加わることが抑制される。これにより、乗物用シートにおいて、ストライカからアッパレールに加わる荷重を分散させることができる。
【0031】
上記の態様において、前記ベースブラケットは、左右に延び、左右の前記側壁のそれぞれに結合した少なくとも1つのスペーサ(56、57)を有するとよい。この態様によれば、左右の側壁がスペーサによって補強される。
【0032】
上記の態様において、前記レール装置は、前記アッパレールに変位可能に支持され、前記ロアレールに選択的に係合可能なスライドロック装置(16)を有し、前記ベースブラケットの底壁は、長手方向における中間部に上方に向けて凹んだ凹部(51A)と、前記凹部の前側に配置され、前記アッパレールに結合された前結合部(51B)と、前記凹部の後側に配置され、前記アッパレールに結合された後結合部(51B)とを有し、前記スライドロック装置は、前記アッパレールにおいて前記凹部に対応する位置に配置されているとよい。この態様によれば、ベースブラケットとスライドロック装置との干渉を避けて、ベースブラケットをアッパレールに配置することができる。
【0033】
上記の態様において、前記凹部は、左右に延び、左右の前記側壁に開口しているとよい。この態様によれば、スライドロック装置をベースブラケットの側方に露出させることができる。
【0034】
上記の態様において、前記スライドロック装置は、前記アッパレールに解除位置とロック位置との間で回動可能に支持され、前記ロック位置において前記ロアレールに形成された係合部に係合するロック爪(16A)と、前記ロック爪の基端を押圧し、前記ロック爪を前記解除位置に回動させる操作レバー(16B)とを有し、前記ロック爪の前記基端は、前記凹部を通過して前記側壁の側方に突出しているとよい。この態様によれば、操作レバーによってロック爪を操作することができる。
【0035】
上記の態様において、前記スライドロック装置を駆動させるための前記操作レバーが前記側壁の一方に回動可能に支持されているとよい。この態様によれば、ベースブラケットが操作レバーの支持構造を兼ねることができる。
【0036】
上記の態様において、前記フロア又は前記ロアレールには、第1係止部(13C)を有する第1係止部材(13)が設けられ、前記ベースブラケットの前記側壁には、前記第1係止部の下方に隙間を介して上下に対向するように配置された第2係止部(70A)を有する第2係止部材(70)が設けられているとよい。この態様によれば、衝突等に起因する慣性力によってベースブラケット及びアッパレールがロアレール及びフロアに対して上方に移動するときには、第1係止部材と第2係止部材とが互いに係合して荷重に抗することができる。これにより、レール装置に荷重が加わり難くなり、レール装置の変形を抑制することができる。通常時には、第1係止部材と第2係止部材とは互いに隙間を介して対向しているため、レール装置がスライド移動するときに、第1係止部材と第2係止部材が摩擦による抵抗力を生じさせることはない。
【0037】
上記の態様において、前記第1係止部及び前記第2係止部は、前後に延在しているとよい。この態様によれば、ロアレールに対してアッパレールが前後にスライド移動しても、第1係止部材及び第2係止部材は上下において対向することができる。
【0038】
上記の態様において、前記第2係止部材は、板金部材によって形成され、前記第2係止部材は、前記側壁の外面に締結される上板部(70B)と、前記上板部の下縁から下方かつ前記側壁から離れる方向に延びる下板部(70C)とを有し、前記第2係止部は前記下板部の下縁に設けられ、前記第2係止部材は、前記側壁において前記凹部より後方に設けられているとよい。この態様によれば、第2係止部材によってベースブラケットを補強することができる。また、第2係止部材によってベースブラケットのストライカ54が設けられた部分を補強することができる。
【0039】
上記の態様において、前記第1係止部及び前記第2係止部は、左右一対設けられているとよい。この態様によれば、第1係止部材及び第2係止部材は、レール装置の左方及び右方の2か所において係合することができ、レール装置を確実に保護することができる。
【0040】
上記の態様において、前記第2係止部材は、左右一対設けられ、左右の前記第2係止部材、左右の前記側壁、及び前記スペーサは、それらを貫通するボルト(72)と、前記ボルトに螺合するナット(73)とによって共締めされているとよい。この態様によれば、左右の第2係止部材を締結するボルトによってベースブラケットを補強することができる。
【0041】
上記の態様において、前記スペーサは、前記ストライカの前方に設けられた前スペーサ(56)と、前記ストライカの後方に設けられた後スペーサ(57)とを有するとよい。この態様によれば、左右の第2係止部材はストライカをまたいで前後に左右の第2係止部材を締結するボルトによってベースブラケットを補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】実施形態に係る乗物用シートのフレームを左前方から見た斜視図
図2】乗物用シートのフレームの正面図
図3図2のIII-III断面図
図4】乗物用シートのフレームの右側面図
図5】乗物用シートの下部の構造の斜視図
図6】乗物用シートの下部の構造の正面図
図7】乗物用シートの下部の構造の平面図
図8】乗物用シートの下部の構造の右側面図
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。乗物用のシートは、自動車の2列目又は3列目の後部座席の右席及び中央席を構成する。
【0044】
図1図4に示すように、シート1は、フロア2に設けられたレール装置3と、ヒンジ装置4及び結合装置5を介してレール装置3に支持されたシートクッション6と、シートクッション6の後部から上方に延びるシートバック7とを有する。シートクッション6及びシートバック7をシート本体8という。シートクッション6は乗員の臀部を支持し、シートバック7は乗員の背部を支持する。
【0045】
レール装置3は、フロア2に設けられ、前後に延びるロアレール11と、ロアレール11に支持されたアッパレール12とを有する。ロアレール11は、上方に向けて開口した溝形に形成されている。アッパレール12は、ロアレール11の内部に配置された下部と、ロアレール11から上方に突出した上部とを有する。アッパレール12の上部の上端は、上方を向く平面に形成されている。アッパレール12は、ロアレール11に対して所定の範囲で前後に移動する。本実施形態では、レール装置3は、ロアレール11及びアッパレール12の組を左右に間隔をおいて一対有する。左側のロアレール11は、第1係止部材13を介してフロア2に結合されている。
【0046】
第1係止部材13は、フロア2の上面に沿って前後に延びる下板部13Aと、下板部13Aの左右の側縁から上方に延びる左右の縦板部13Bとを有して溝形に形成されている。各縦板部13Bの上縁には、第1係止部13Cが設けられている。左右の第1係止部13Cは、上方に向けて凸となる半円形のフックである。左右の第1係止部13Cは、縦板部13Bの上縁から互いに離れる方向に延びている。
【0047】
左側のロアレール11は、下板部13Aの上面上に配置されている。左側のロアレール11、第1係止部材13の下板部13A、及びフロア2はボルトによって共締めされている。
【0048】
右側のロアレール11は、フロア2に直接に締結されてもよく、フットと呼ばれるマウント部材を介してフロア2に締結されてもよい。
【0049】
図3に示すように、各レール装置3は、各アッパレール12に変位可能に支持され、対応するロアレール11に選択的に係合可能なスライドロック装置16をそれぞれ有する。各スライドロック装置16は、アッパレール12に解除位置とロック位置との間で回動可能に支持され、ロック位置においてロアレール11に形成された係合部に係合するロック爪16Aと、ロック爪16Aをロック位置に付勢する付勢部材(不図示)と、ロック爪16Aの基端を押圧し、ロック爪16Aを解除位置に回動させる操作レバー16Bとを有する。
【0050】
ロック爪16Aは、アッパレール12の前後方向における中間部に支持されている。図6に示すように、ロック爪16Aの先端はロアレール11の内部に配置され、ロック爪16Aの基端はロアレール11の外部に配置されている。ロック爪16Aは、ロック位置において、その先端がロアレール11の内部に形成された係合部に係合する。これにより、ロアレール11に対してアッパレール12の移動が規制される。ロック爪16Aは、解除位置において、その先端が係合部から離脱する。これにより、ロアレール11に対してアッパレール12の移動が可能になる。ロック爪16Aは、前後方向に延びる回動軸線を中心として回動し、その基端部はロック位置から解除位置に向けて下方に移動する。
【0051】
図1に示すように、シートクッション6は、骨格をなすシートクッションフレーム20と、シートクッションフレーム20に支持されたパッドと、パッドを覆う表皮材とを有する。シートクッションフレーム20は、前後に延びる前後メンバと、左右に延びる横メンバとを組み合わせて形成されている。具体的には、シートクッションフレーム20は、前後に延びる左右のクッションサイドメンバ23と、左右に延び、両端において両クッションサイドメンバ23の前端に結合した前メンバ24と、左右に延び、両端において両クッションサイドメンバ23の後端に結合した後メンバ25とを有し、四角形枠形に形成されている。また、シートクッションフレーム20は、左右に延び、両端において両クッションサイドメンバ23の前後における中間部に結合した第1中間クロスメンバ26と、前後に延び、前端において第1中間クロスメンバ26の左右方向における中間部に結合し、後端において後メンバ25の左右方向における中間部に結合した中間前後メンバ27と、左右に延び、右端において中間前後メンバ27の前後方向における中間部と左端において左側のクッションサイドメンバ23の前後方向における中間部とに結合された第2中間クロスメンバ28とを有する。また、シートクッションフレーム20は、前後に延び、前端において第1中間クロスメンバ26の右側のクッションサイドメンバ23と中間前後メンバ27との間の部分に結合し、後端において後メンバ25の右側のクッションサイドメンバ23と中間前後メンバ27との間の部分に結合したパンフレーム29とを有する。
【0052】
前メンバ24、第1中間クロスメンバ26、第2中間クロスメンバ28、後メンバ25、及び左側のクッションサイドメンバ23の前部は金属パイプによって形成されている。前メンバ24、左側のクッションサイドメンバ23の前部、及び第2中間クロスメンバ28は、屈曲された1つのパイプによって形成されている。右側のクッションサイドメンバ23、中間前後メンバ27、及び左側のクッションサイドメンバ23の後部は板金部材によって形成されている。シートクッションフレーム20を構成する各部材は溶接によって互いに結合されている。
【0053】
第1中間クロスメンバ26は、いわゆるサブマリン防止メンバとして機能する。走行中の車両が前突した際に、シート1に着座した着座者の胴部が、シートベルト82に拘束された状態でシート1の表面上を前下方に滑り落ちるサブマリン現象を防止する。第1中間クロスメンバ26は、着座者のヒップポイントよりも前方に配置されている。第1中間クロスメンバ26は、パッドを介して着座者の大腿部に前方から当接することによって、着座者の腰部が前方に移動することを規制する。
【0054】
左右のクッションサイドメンバ23の後端部、及び中間前後メンバ27の後端部のそれぞれには、上方に突出したシートバック支持部30が設けられている。
【0055】
シートバック7は、骨格をなすシートバックフレーム32と、シートバックフレーム32に支持されたパッドと、パッドを覆う表皮材とを有する。
【0056】
シートバックフレーム32は、上下に延びる左右一対のバックサイドメンバ33と、左右に延び、両端において両バックサイドメンバ33の上端部に結合した上メンバ34と、左右一対のバックサイドメンバ33の間を上下に延び、上端において上メンバ34の左右方向における中間部に結合したバック中間メンバ35と、左右に延び、右端において右側のバックサイドメンバ33の下部に結合し、左端においてバック中間メンバ35の下部に結合した下メンバ36とを有する。左右のバックサイドメンバ33、バック中間メンバ35、上メンバ34、及び下メンバ36の後方には、板状のバックパンフレーム37が設けられている。
【0057】
左右のバックサイドメンバ33及びバック中間メンバ35の下端部のそれぞれは、対応する各シートバック支持部30に左右に延びる共通の軸線を回転中心として回動可能に支持されている。左右のバックサイドメンバ33及びバック中間メンバ35と、対応する各シートバック支持部30との間には、シートバック支持部30に対してシートバック7の位置を固定するリクライニング機構38が設けられている。
【0058】
図3図5及び図6に示すように、アッパレール12の上部には、前後に延びるベースブラケット50が設けられている。ベースブラケット50は、底壁51と、左右の側壁52とを有し、上方に開口した溝形に形成されている。ベースブラケット50の前部には左右に延びる支持軸53が設けられている。支持軸53の左端は左側の側壁52を貫通し、支持軸53の右端は右側の側壁52を貫通している。支持軸53は、ボルト及びナットによって形成されている。ベースブラケット50の後部には、ストライカ54が設けられている。ストライカ54は、左右に延びる軸状の部材である。ストライカ54の左端は左側の側壁52に結合され、ストライカ54の右端は右側の側壁52に結合されている。支持軸53及びストライカ54は、左右の側壁52に掛け渡されている。
【0059】
ベースブラケット50の底壁51は、長手方向における中間部に上方に向けて凹んだ凹部51Aと、凹部51Aの前側に配置された前結合部51Bと、凹部51Aの後側に配置された後結合部51Cとを有する。支持軸53は前結合部51Bの上方に配置され、ストライカ54は後結合部51Cの上方に配置されている。凹部51Aは、左右に延び、左右の側壁52に開口している。
【0060】
前結合部51Bはアッパレール12の上端の前部に結合されている。後結合部51Cはアッパレール12の上端の後部に結合されている。前結合部51B及び後結合部51Cのそれぞれは、例えばボルトやリベット等の締結部材によって複数個所でアッパレール12に締結されているとよい。凹部51Aは、アッパレール12の前後方向における中間部に対応する。凹部51Aは、スライドロック装置16のロック爪16Aに対応する位置に配置される。換言すると、スライドロック装置16は、アッパレール12において凹部51Aに対応する位置に配置されている。スライドロック装置16のロック爪16Aが凹部51Aに配置されることによって、ロック爪16Aとベースブラケット50との干渉が避けられる。ロック爪16Aの基端は、凹部51Aを通過して側壁52の側方に突出している。
【0061】
操作レバー16Bは、2つの側壁52の一方に回動可能に支持されている。本実施形態では、操作レバー16Bは、右側の側壁52に回動可能に支持されている。操作レバー16Bは前後に延び、中間部において側壁52に回動可能に支持され、後端がロック爪16Aの基端の上面に当接している。これにより、操作レバー16Bの前端が上方に移動すると、操作レバー16Bの後端がロック爪16Aの基端を下方に押す。これにより、ロック爪16Aは、ロック位置から解除位置に移動する。
【0062】
ベースブラケット50は、左右に延び、左右の側壁52のそれぞれに結合した少なくとも1つのスペーサ56、57を有する。前スペーサ56は、後結合部51Cの上方においてストライカ54より前方に配置されている。後スペーサ57は、後結合部51Cの上方においてストライカ54より後方に配置されている。前スペーサ56及び後スペーサ57は、それぞれ両端が開口した円筒形に形成され、左右の端部において対応する側壁52に溶接されているとよい。
【0063】
支持軸53には、回動部材60が支持軸53を中心として回動可能に支持されている。回動部材60は、上壁部60Aと、上壁部60Aの左右の両端から下方に延びた左右の縦壁部60Bとを有する。左右の縦壁部60Bの間に左右の側壁52が配置され、左右の縦壁部60Bは、支持軸53の左右の端部に回動可能に支持されている。ベースブラケット50の前部、支持軸53、及び回動部材60は、左側のヒンジ装置4を構成する。
【0064】
回動部材60の上壁部60Aは、中間前後メンバ27の前端の下面に結合されている。回動部材60の上壁部60Aとベースブラケット50の前結合部51Bとの間には、回動部材60の後部を上方に付勢するねじりコイルばね62が設けられている。ねじりコイルばね62のコイル部は、支持軸53の外周に支持されている。
【0065】
回動部材60とベースブラケット50との間には、ベースブラケット50に対する回動部材60の回動範囲を規制するストッパ(不図示)が設けられている。回動部材60が支持軸53を中心としてベースブラケット50に対して上方かつ前方に回転する回転を前方回転、逆方向の回転を後方回転とする。回動部材60は、初期位置と初期位置に対して前方回転した回動位置との間で回動することができる。回動部材60が初期位置にあるとき、シートクッション6は略水平に延在し、人が着座可能な使用位置に配置される。回動部材60が回動位置にあるとき、シートクッション6は前端に対して後端が上方に配置された前傾状態となる。回動部材60が初期位置から回動位置に変化することによって、シートクッション6の角度は、例えば10°以上45°以下変化するとよい。
【0066】
右側のアッパレール12の上端の前端は、右側のヒンジ装置4を介して右側のクッションサイドメンバ23の前部に結合されている。ヒンジ装置4は、アッパレール12の上端の前端に結合された下部材64Aと、下部材64Aに回動可能に支持され、シートクッションサイドメンバの前部に結合された上部材64Bとを有する。右側のヒンジ装置4の回動軸は支持軸53と同軸に配置されている。右側のヒンジ装置4は、ストッパ(不図示)を有し、回動部材60と同じ回動範囲を有する。
【0067】
結合装置5は、シートクッション6の後部に設けられ、ストライカ54に着脱可能に結合する。図3図5及び図7に示すように、左側の結合装置5は、中間前後メンバ27の後端の下面に結合され、中間前後メンバ27の下方に配置されている。結合装置5は、外殻をなすケーシング5Aと、ケーシング5Aに回動可能に支持されたフック5Bとを有する。ケーシング5Aの上端は、中間前後メンバ27の下面に結合されている。ケーシング5Aの下部には上方に向けて凹んだ有底のスロット5Cが形成されている。スロット5Cは、ケーシング5Aを左右方向に貫通し、かつ下方に向けて開口している。スロット5Cは、ストライカ54を受容可能に形成されている。
【0068】
フック5Bは、ケーシング5A内に配置され、スロット5C内を前後に横断するロック位置と、スロット5Cから退避した解除位置との間で回動可能になっている。フック5Bは、ばねによってロック位置に向けて付勢されている。フック5Bがロック位置にあるとき、スロット5C内にあるストライカ54はスロット5Cから離脱できない。フック5Bがロック位置から解除位置に移動することによって、スロット5C内にあるストライカ54はスロット5Cから離脱することができる。フック5Bのスロット5C内に突出した部分の上縁にはカム面が形成されている。ストライカ54がカム面を上方から下方に押すことによって、フック5Bはロック位置から解除位置に移動する。これにより、フック5Bがロック位置にある場合でも、ストライカ54はフック5Bを押し退けてスロット5C内に突入することができる。
【0069】
図1に示すように、フック5Bは、コントロールケーブル(不図示)を介して操作部(不図示)に接続されている。使用者は操作部を操作することによって結合装置5をロック状態から解除状態に変化させることができる。操作部は、シートクッション6の後端やシートバック7の背面に設けられるとよい。
【0070】
右側の結合装置5は、左側の結合装置5と同様の構成を有する。右側の結合装置5は、右側のアッパレール12の上面の後端に設けられたストライカ66に着脱可能に結合する。
【0071】
ベースブラケット50の左右の側壁52のそれぞれには、第1係止部13Cの下方に隙間を介して上下に対向するように配置された第2係止部70Aを有する第2係止部材70が設けられている。第2係止部材70は、板金部材によって形成されている。各第2係止部材70は、対応する側壁52の外面に締結される上板部70Bと、上板部70Bの下縁から下方かつ側壁52から離れる方向に延びる下板部70Cとを有する。第2係止部70Aは、下板部70Cの下縁に設けられている。第2係止部70Aは、下方に向けて凸となる半円形のフックである。第2係止部材70は前後に延び、第2係止部70Aは前後に延びている。第2係止部材70は、側壁52において凹部51Aより後方に設けられている。
【0072】
左右の第2係止部材70、左右の側壁52、及び前スペーサ56は、それらを貫通するボルト72と、ボルト72に螺合するナット73とによって共締めされている。また、左右の第2係止部材70、左右の側壁52、及び後スペーサ57は、それらを貫通するボルト72と、ボルト72に螺合するナット73とによって共締めされている。
【0073】
前メンバ24には、下方に突出するリトラクタブラケット80が設けられている。リトラクタブラケット80にはシートベルトリトラクタ81が取り付けられている。シートベルトリトラクタ81にはシートベルト82が引き出し可能に収容されている。シートベルト82は、シートベルトリトラクタ81から第1中間クロスメンバ26の下方を通過して後方に延び、後メンバ25の下面及び後面に沿って上方に屈曲する。その後、シートベルト82は、バックパンフレーム37の前面に沿って上方に延び、その後に上メンバ34の後方を通過する。その後、シートベルト82は、上メンバ34の前方を通過して下方に延び、端部が後メンバ25に結合されている。シートベルト82にはタング83が、シートベルト82の長手方向に移動可能に支持されている。左側のクッションサイドメンバ23には、タング83と着脱可能に結合するバックル84が設けられている。タング83がバックル84に結合することによって、シートベルト82は、中央席に着座する乗員を拘束することができる。
【0074】
上記のシート1では、ストライカ54は前後に延びるベースブラケット50に設けられ、ベースブラケット50を介してアッパレール12に設けられる。そのため、ストライカ54に加わる荷重は、ベースブラケット50を介してアッパレール12の各部に分散され、アッパレール12に局所的に荷重が加わることが抑制される。これにより、シート1において、ストライカ54からアッパレール12に加わる荷重を分散させることができる。本実施形態では、シートベルトリトラクタ81及びシートベルト82の端部がシート1に設けられているため、車両の衝突時に乗員に加わる慣性力はシートベルト82を介してシート1に加わる。このような場合においても、ストライカ54がベースブラケット50を介してアッパレール12に設けられているため、アッパレール12の変形を抑制することができる。
【0075】
衝突等に起因する慣性力によってベースブラケット50及びアッパレール12がロアレール11及びフロア2に対して上方に移動するときには、第1係止部13Cと第2係止部70Aとが互いに係合して荷重に抗することができる。これにより、レール装置3に荷重が加わり難くなり、レール装置3の変形を抑制することができる。通常時には、第1係止部13Cと第2係止部70Aとは互いに隙間を介して対向しているため、レール装置3がスライド移動するときに、第1係止部13Cと第2係止部70Aが摩擦による抵抗力を生じさせることはない。
【0076】
第1係止部13C及び第2係止部70Aが前後に延在しているため、ロアレール11に対してアッパレール12が前後にスライド移動しても、第1係止部13C及び第2係止部70Aは上下において対向することができる。
【0077】
第2係止部材70の上板部70Bがベースブラケット50の側壁52の外面に沿って設けられている。そのため、ベースブラケット50が第2係止部材70によって補強される。左右の第2係止部材70、左右の側壁52、及び前スペーサ56が、ボルト72及びナット73によって共締めされている。また、左右の第2係止部材70、左右の側壁52、及び後スペーサ57が、ボルト72及びナット73によって共締めされている。前スペーサ56がストライカ54の前方に配置され、かつ後スペーサ57がストライカ54の後方に配置されている。これらにより、ベースブラケット50のストライカ54が設けられた部分の剛性が向上する。
【0078】
ベースブラケット50が凹部51Aを有し、凹部51Aにスライドロック装置16のロック爪16Aが配置される。これにより、ベースブラケット50とスライドロック装置16との干渉を避けて、ベースブラケット50をアッパレール12に配置することができる。
【0079】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、右側のアッパレール12にも左側のアッパレール12と同様のベースブラケット50が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 :シート
2 :フロア
3 :レール装置
4 :ヒンジ装置
5 :結合装置
6 :シートクッション
7 :シートバック
8 :シート本体
11 :ロアレール
12 :アッパレール
13 :第1係止部材
13C :第1係止部
16 :スライドロック装置
16A :ロック爪
16B :操作レバー
50 :ベースブラケット
51 :底壁
51A :凹部
51B :前結合部
51C :後結合部
52 :側壁
53 :支持軸
54 :ストライカ
56 :前スペーサ
57 :後スペーサ
60 :回動部材
62 :ねじりコイルばね
70 :第2係止部材
70A :第2係止部
70B :上板部
70C :下板部
72 :ボルト
73 :ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8